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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20250418BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20250418BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/46
F24F11/62
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024505731
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2022010328
(87)【国際公開番号】W WO2023170828
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊圭
(72)【発明者】
【氏名】西村 有理子
(72)【発明者】
【氏名】中園 純一
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148790(JP,A)
【文献】特開2016-142491(JP,A)
【文献】特開平05-306848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/80
F24F 11/46
F24F 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調区画に備わる空気調和機室内ユニットと、
前記空調区画において人の存在又は不在を示す在室情報を検出する在室検出部と、
前記在室検出部により検出した前記在室情報が前記空調区画における人の不在を示している場合に、前記空気調和機室内ユニットの運転条件を、前記空気調和機室内ユニットに対して設定された運転条件で運転したときよりも空調能力が大きくなるように変更する制御部と、
前記空気調和機室内ユニットの運転データであって、前記空調区画の熱負荷を含む運転データ履歴として蓄積する熱負荷履歴情報蓄積部と
を具備し、
前記制御部は、
前記熱負荷履歴情報蓄積部に蓄積された前記空調区画の前記運転データと、電力の需給調整期間及び当該需給調整期間における電力調整量に関する指令を含む電力需給調整指令とに基づいて実際に消費電力を調整する期間である電力需給調整期間における前記空調区画の熱負荷を予測する熱負荷予測部と、
前記電力需給調整期間の前に蓄熱運転を行う期間である電力需給調整準備期間において前記空調区画に蓄熱できる蓄熱許容量を計算する蓄熱許容量計算部と、
前記熱負荷予測部によって予測された前記電力需給調整期間における前記空調区画の熱負荷と、前記蓄熱許容量計算部によって計算された前記電力需給調整準備期間において前記空調区画に蓄熱できる蓄熱許容量とに基づいて、空調運転及び蓄熱運転の運転計画を作成する運転計画作成部と
を具備し、
前記運転計画作成部により作成された前記運転計画を実行した際の前記電力需給調整期間における前記空調運転及び前記電力需給調整準備期間における前記蓄熱運転の期間運転効率を計算する期間運転効率計算部と、
前記空調区画の外部への放熱量を計算する放熱量予測部と、
前記放熱量予測部により計算された前記空調区画の放熱量と、前記期間運転効率計算部により計算された前記空調区画の前記蓄熱運転における前記期間運転効率とに基づいて、前記複数の空調区画の蓄熱優先順位を決定する蓄熱優先順位設定部と、を具備し、
前記空調区画は複数であり、
前記制御部は、前記蓄熱優先順位設定部により決定された優先順位に基づいて前記複数の空調区画に対する空調運転を行う
空気調和システム。
【請求項2】
前記在室情報が前記空調区画における人の不在を示している場合に、前記制御部は、冷房時には前記空調区画における前記空気調和機室内ユニットの設定温度を低く、暖房時には前記空調区画における前記空気調和機室内ユニットの前記設定温度を高くする
請求項1記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記期間運転効率計算部により計算された前記期間運転効率から前記電力需給調整期間における消費電力量を計算する消費電力計算部と
を具備する請求項1又は2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記電力需給調整指令を受信する電力需給調整指令受信部を具備し、
前記熱負荷予測部は、前記電力需給調整指令受信部にて受信した前記電力需給調整指令から前記電力需給調整期間を取得する
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記消費電力計算部によって計算された消費電力量から、前記電力需給調整期間に電力需給調整できる電力量である電力需給調整許容量を計算する電力需給調整許容量計算部
を具備する請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記空気調和機室内ユニットは、熱交換器を備えた第1室内ユニットと、熱交換器を備えた第2室内ユニットとを有し、
前記第1室内ユニットと前記第2室内ユニットとの一方が冷房運転を実行するときには、他方の前記熱交換器を凝縮器として機能させ、前記第1室内ユニットと前記第2室内ユニットとの一方が暖房運転を実行するときには、他方の前記熱交換器を蒸発器として機能させる
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、躯体蓄熱型の空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前日の蓄熱量から必要な蓄熱量を算出することで、必要以上に蓄熱することによる消費電力の増加を抑制する躯体蓄熱型の空気調和システムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-248879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような躯体蓄熱型の空気調和システムでは、対象となる空調区画を使用する際の設定温度になるまでしか蓄熱することができず、蓄熱量が小さいという問題がある。一方、蓄熱量を大きくするために、対象となる空調区画を設定温度から大きく逸脱する温度になるまで蓄熱すると、対象となる空調区画の利用者の快適性が損なわれる。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、対象となる空調区画の快適性を損なうことなく蓄熱を増加することができる躯体蓄熱型の空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空気調和システムは、空調区画に備わる空気調和機室内ユニットと、前記空調区画において人の存在又は不在を示す在室情報を検出する在室検出部と、前記在室検出部により検出した前記在室情報が前記空調区画における人の不在を示している場合に、前記空気調和機室内ユニットの運転条件を、前記空気調和機室内ユニットに対して設定された運転条件で運転したときよりも空調能力が大きくなるように変更する制御部と、前記空気調和機室内ユニットの運転データであって、前記空調区画の熱負荷を含む運転データ履歴として蓄積する熱負荷履歴情報蓄積部とを具備し、前記制御部は、前記熱負荷履歴情報蓄積部に蓄積された前記空調区画の前記運転データと、電力の需給調整期間及び当該需給調整期間における電力調整量に関する指令を含む電力需給調整指令とに基づいて実際に消費電力を調整する期間である電力需給調整期間における前記空調区画の熱負荷を予測する熱負荷予測部と、前記電力需給調整期間の前に蓄熱運転を行う期間である電力需給調整準備期間において前記空調区画に蓄熱できる蓄熱許容量を計算する蓄熱許容量計算部と、前記熱負荷予測部によって予測された前記電力需給調整期間における前記空調区画の熱負荷と、前記蓄熱許容量計算部によって計算された前記電力需給調整準備期間において前記空調区画に蓄熱できる蓄熱許容量とに基づいて、空調運転及び蓄熱運転の運転計画を作成する運転計画作成部とを具備し、前記運転計画作成部により作成された前記運転計画を実行した際の前記電力需給調整期間における前記空調運転及び前記電力需給調整準備期間における前記蓄熱運転の期間運転効率を計算する期間運転効率計算部と、前記空調区画の外部への放熱量を計算する放熱量予測部と、前記放熱量予測部により計算された前記空調区画の放熱量と、前記期間運転効率計算部により計算された前記空調区画の前記蓄熱運転における前記期間運転効率とに基づいて、前記複数の空調区画の蓄熱優先順位を決定する蓄熱優先順位設定部と、を具備し、前記空調区画は複数であり、前記制御部は、前記蓄熱優先順位設定部により決定された優先順位に基づいて前記複数の空調区画に対する空調運転を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、空気調和システムの制御部が、在室検出部が空調区画の不在を示している場合に、空気調和機室内ユニットの運転条件を能力が大きくなるように変更する。従って、空気調和システムは、利用者が不在の空調区間を蓄熱槽として利用でき、対象となる空調区画の快適性を損なうことなく空調区画に蓄熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る空気調和システムを備えた建物を示す概略図である。
図2】実施形態1に係る空気調和機室内ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
図3】実施形態2に係る空気調和システムにおける空気調和機室内ユニットを示す図である。
図4】実施形態2に係る空気調和システムにおける制御部の機能を示す機能ブロック図である。
図5】実施形態2に係る空気調和システムの運転制御のフローチャートである。
図6】実施形態3に係る空気調和システムにおける制御部の機能を示す機能ブロック図である。
図7】実施形態3に係る空気調和システムの運転制御のフローチャートである。
図8】実施形態4に係る空気調和システムを備えた建物を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る空気調和システムについて説明する。なお、図面において、同一の構成要素には同一符号を付して説明し、重複説明は必要な場合にのみ行う。本開示は、以下の各実施形態で説明する構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含み得る。
【0010】
実施形態1.
図1は、実施形態1に係る空気調和システム20を備えた建物Bを示す概略図である。図1に示すように、空気調和システム20は、空気調和機室内ユニット1、在室検出部2、制御部3及び空調区画利用情報蓄積部15を有する。
【0011】
建物B内には、空調区画14は複数存在する。空気調和機室内ユニット1は空調区画14毎に設けられる。空気調和機室内ユニット1は、空調区画14内に冷却された空気を供給する冷房運転と、加熱された空気を供給する暖房運転とのいずれかを実行する。建物B内の1フロアを1つの空調区画14としてもよいし、1部屋を1つの空調区画14としてもよいし、1部屋内の一部の領域を1つの空調区画14としてもよい。本実施形態の空気調和システム20は、いずれか1つ以上の空調区画14を蓄熱槽として利用する躯体蓄熱型の空気調和システム20である。
【0012】
在室検出部2は、空気調和機室内ユニット1が設置されている空調区画14の少なくとも一つに設けられる。図1においては、人が示されている空調区画14と、人が示されていない空調区画14のそれぞれに在室検出部2が設けられている場合を示している。在室検出部2は、空調区画14において人の存在又は不在を示す在室情報を検出する。在室検出部2は、赤外線センサ、カードリーダーの検出情報、熱画像センサ、照度センサ又は空調区画14における機器等である。在室検出部2は,検出した在室情報を制御部3に入力する。
【0013】
制御部3は、インターネットなどの通信回線を介して、制御対象となる空気調和機室内ユニット1と通信可能に接続されている。制御部3は、空気調和機室内ユニット1を制御する。制御部3は、在室検出部2により検出した在室情報が空調区画14における人の不在を示している場合に、空気調和機室内ユニット1の運転条件を、当該空気調和機室内ユニット1に対して設定された運転条件で運転したときよりも空調能力が大きくなるように変更する。具体的には、制御部3は、在室検出部2により検出した在室情報が空調区画14における人の不在を示している場合に、冷房時には空気調和機室内ユニット1の空調区画14の設定温度を低く、暖房時には空気調和機室内ユニット1の設定温度を高くする。
【0014】
制御部3の処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部が一つのハードウェアで実現されてもよい。制御部3の処理回路がCPUの場合、処理回路が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、記憶部109に格納される。CPUは、記憶部に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、処理回路の各機能を実現する。なお、処理回路の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0015】
空調区画利用情報蓄積部15は、将来の空調区画14の利用予定の情報を蓄積する。空調区画利用情報蓄積部15は、インターネットなどの通信回線を介して、制御部3と通信可能に接続されている。空調区画利用情報蓄積部15には、会議室の予約システムなどを用いても良い。
【0016】
動作.
次に、実施形態1に係る空気調和システム20における空気調和機室内ユニット1の動作について説明する。図2は、実施形態1に係る空気調和機室内ユニット1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0017】
図2に示すように、在室検出部2が空調区画14における人の存在又は不在を示す在室情報を検出する(ステップS1)。次に、制御部3は、在室検出部2により検出した在室情報が空調区画14における人の不在を示しているか否かを判断する(ステップS2)。
【0018】
制御部3は、空調区画利用情報蓄積部15に蓄積された将来の空調区画14の利用予定の情報に基づいて、利用する予定のない空調区画14を識別することができる。制御部3は、識別された利用する予定のない空調区画14のみの在室情報を判断しても良い。
【0019】
ステップS3において、制御部3が在室検出部2により検出した在室情報が空調区画14における人の不在を示していないと判断した場合(ステップS3のNO)、制御部3は、在室検出部2が設けられた空調区画14の空気調和運転を継続するように、空気調和機室内ユニット1を制御する(ステップS4)。
【0020】
ステップS3において、制御部3が在室検出部2により検出した在室情報が空調区画14における人の不在を示している判断した場合(ステップS3のYES)、冷房時には空気調和機室内ユニット1の空調区画14の設定温度を低く、暖房時には空気調和機室内ユニット1の設定温度を高くする(ステップS5)。
【0021】
不在の空調区画14に蓄えられた熱は、その後の人が在室する際の空調運転時などに、空調区画14間の壁から空気への伝熱及び輻射などにより、空調区画14の空気調和に利用される。
【0022】
なお、空気調和機室内ユニット1の運転条件を、当該空気調和機室内ユニット1に対して設定された運転条件で運転したときよりも空調能力が大きくなるように変更する他の例としては、次のようなものが挙げられる。具体的に、制御部3は、不在であることを確認できた空調区画14において、空気調和機室内ユニット1が運転していなかった場合に、空気調和運転を開始しても良い。また、制御部3は、不在であることを確認できた空調区画14の空気調和機室内ユニット1のファンの風量を増加しても良い。
【0023】
制御部3は、ステップS3において、例えば30分~1時間程度の不在判定期間に在室検出部2から在室情報を繰り返し取得し、この不在判定期間の在室情報がすべて人の不在を示している場合に、人が不在であると判断してもよい。これにより、制御部3は、人の存在及び不在の誤識別を防ぐことができる。
【0024】
制御部3は、過去の利用情報に基づいて選択された利用頻度が少ない空調区画14を、優先的に蓄熱槽として使用するようにしてもよい。具体的に、空調区画利用情報蓄積部15は、過去の空調区画14の利用履歴の情報を蓄積し、制御部3は、蓄積された利用履歴に基づいて、それぞれの空調区画14の利用頻度を判定する。そして、制御部3は、在室検出部2からの在室情報に基づいて複数の空調区画14において人が不在であると判断された場合には、必要な蓄熱量に応じた数の空調区画14の数に応じて、利用頻度の低い空調区画14の空気調和機室内ユニット1を優先的に動作させる。利用頻度の低い空調区画14を優先的に蓄熱槽として利用することで、建物Bの利用者の快適性を損ないにくい。
【0025】
制御部3は、空調区画利用情報蓄積部15に蓄積された将来の空調区画14の利用予定の情報に基づいて、消費電力量を削減したい期間に空調区画14の利用が予定されている場合に、消費電力量を削減したい期間の前に空気調和機室内ユニット1を稼働しても良い。消費電力量を削減したい期間の前に、空調区画14に蓄熱するのである。これにより、消消費電力量を削減したい期間の空気調和機室内ユニット1の消費電力を削減することができる。
【0026】
実施形態1の空気調和システム20によれば、在室検出部2により得られた在室情報から、不在であることを確認できた空調区画14の空気調和機室内ユニット1の運転条件を、当該空気調和機室内ユニット1に対して設定された運転条件で運転したときよりも空調能力が大きくなるように変更する。従って、実施形態1の空気調和システム20によれば、人が不在の空調区画14に冷熱、又は温熱を蓄えることができる。そのため、快適性を損なうことなく空調区画14を蓄熱槽として利用することができる。また、蓄熱槽としての空調区画14に蓄えた冷熱又は温熱は、その後の空気調和システム20の空調運転に利用される。
【0027】
また、冷房時には、人が不在の空調区画14に対応した空気調和機室内ユニット1の設定温度を、人が在室するときの冷房時の設定温度よりも下げる。また、暖房時には、人が不在の空調区画14に対応した空気調和機室内ユニット1の設定温度を、人が在室するときの暖房時の設定温度よりも上げる。これにより、人が不在の空調区画14における蓄熱量を増加することができる。
【0028】
実施形態2.
実施形態2では、空気調和システム20が電力需給調整指令を受信してから電力需給調整期間が終了するまでの動作を説明する。「電力需給調整期間」は、電力需給調整指令に基づいて実際に空気調和システム20の消費電力を調整する期間を示す。ここで、「電力需給調整期間」における消費電力の調整には、消費電力を増加させるポジワット型の調整と、消費電力を低減させるネガワット型の調整とがある。「電力需給調整期間」において消費電力を増加させる場合には、「電力需給調整期間」に空気調和システム20が蓄熱運転を行う。また、「電力需給調整期間」において消費電力を低減させる場合には、「電力需給調整期間」の前に「電力需給調整準備期間」が設けられる。「電力需給調整準備期間」は、電力需給調整期間の前に蓄熱運転を行う期間を示す。
【0029】
なお、実施形態1における人の在、不在に合わせて設定を変更する動作は、上記の「電力需給調整期間」及び「電力需給調整準備期間」における空気調和システム20の蓄熱運転の動作である。
【0030】
実施形態2に係る空気調和システム20の構成は、図1に示した空気調和システム20と同様であり、図1と同一の部分には同一符号を付して説明する。図3は、実施形態2に係る空気調和システム20における空気調和機室内ユニット1を示す図である。図2に示すように、空調区画14に設けられる空気調和機室内ユニット1は、温度センサ30を有する。
【0031】
温度センサ30は、制御部3と接続されており、空調区画14の室温を測定し、測定された室温を制御部3に出力する。
【0032】
図4は、実施形態2に係る空気調和システム20における制御部3の機能を示す機能ブロック図である。
【0033】
図4に示すように、制御部3は、電力需給調整指令受信部5、熱負荷履歴情報蓄積部6、熱負荷予測部4、蓄熱許容量計算部9、運転計画作成部18、期間運転効率計算部17、消費電力計算部19及び電力需給調整許容量計算部16を具備する。
【0034】
電力需給調整指令受信部5は、外部からの電力需給調整指令をインターネットなどの通信回線を介して受信する。電力需給調整指令受信部5は、受信した電力需給調整指令に基づいて、電力需給調整期間、電力調整量及び電力調整対価等を取得する。なお、電力需給調整指令受信部5は、電力需給調整指令に基づいて、電力需給調整期間、電力調整量及び電力調整対価等を他のサーバ等から取得しても良い。
【0035】
電力需給調整指令は、アグリゲータ、電力会社等から発令される。電力需給調整指令は、例えば、「明日の16時から19時まで電力使用量を100kW以下にする」等の内容の電力需給調整指令である。電力需給調整指令には、需給調整期間、電力調整量、及び電力調整対価等の情報が含まれるが、これらの情報の一部又は全部が、別途契約などで予め定められていても良い。電力需給調整指令のすべての情報が契約などで予め定められている場合には、電力需給調整指令受信部5は、制御部3の図示しないメモリに予め記憶された情報を読み出す。
【0036】
熱負荷履歴情報蓄積部6は、過去の空気調和機室内ユニット1の運転データを蓄積する。ここで、運転データには、空調区画14の熱負荷、空調区画14の室温、若しくは空気調和機室内ユニット1の消費電力、風量設定、冷媒温度、冷媒圧力又は圧縮機周波数等がある。
【0037】
空調区画14の熱負荷とは、空気調和機室内ユニット1によって空調区画14に供された冷房又は暖房の熱量を表している。空気調和機室内ユニット1の風量設定とは、空気調和機室内ユニット1に設けられ冷却又は加熱された空気を空調区画14に送出するファンの風量を表している。冷媒温度は、空気調和システム20が冷凍サイクルを熱源として用いる場合の、圧縮機、凝縮器又は蒸発器のいずれか1つ以上における冷媒の温度をいう。冷媒圧力は、空気調和システム20が冷凍サイクルを熱源として用いる場合の、圧縮機の吐出側又は膨張弁の下流側のいずれか1つ以上における冷媒の圧力をいう。圧縮機周波数は、空気調和システム20が冷凍サイクルを熱源として用いる場合に冷媒を循環させる圧縮機の、駆動周波数をいう。以下、本実施形態では、空気調和システム20が冷凍サイクルを熱源として用いる場合を例に説明する。
【0038】
熱負荷予測部4は、電力需給調整期間の熱負荷を予測する。例えば、熱負荷予測部4は、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている過去の空気調和システム20の運転データに基づいて、電力需給調整期間における空調区画14の熱負荷を予測する。熱負荷予測部4は、複数の空調区画14の熱負荷を空調区画14毎に予測する。
【0039】
次に、熱負荷の測定方法について説明する。例えば、空気調和機室内ユニット1が吸い込む空調区画14の室温と、吐き出す空気の温度差、及びファンの風量から熱負荷を求めることができる。又は、空気調和機室内ユニット1の冷媒の入口圧力と出口圧力との差、及び入口温度と出口温度との差から求めることもできる。
【0040】
次に、熱負荷の予測方法について説明する。熱負荷予測部4は、過去の運転での熱負荷の蓄積データと、そのときの外気温、日射量、在室情報、室温情報、湿度情報及び換気熱量等とを紐づけたデータベースを記憶している。熱負荷予測部4は、予測したい時間帯の気象予測(外気温、日射量)、空調区画14の利用情報、室温の温度推移等の情報を、記憶したデータベースと照合することで、熱負荷量を予測する。これにより、熱負荷の予測の精度が向上する。
【0041】
また、熱負荷予測部4は、赤外線センサによる空調区画14の熱画像及び湿度センサによるセンサ情報を利用することで、熱負荷の予測精度を向上できる。
【0042】
ここで、新たに得られる熱負荷のデータにより、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている蓄積データを更新し、AI学習を行うことによって予測精度を向上できる。
【0043】
熱負荷予測部4は、熱負荷予測部4によって予測して得られた将来の熱負荷により、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積された過去の運転データを更新し、AI学習を行うことにより、熱負荷の予測精度を向上することができる。
【0044】
例えば、予測した熱負荷と、測定した熱負荷とから、どの情報が予測に最も影響が大きいかをAI学習により順位付けを行い、その結果をもとに予測の際に用いる情報の重みづけを調整する。
【0045】
蓄熱許容量計算部9は、電力需給調整準備期間において空調区画14に蓄熱できる蓄熱許容量を計算する。蓄熱許容量計算部9は、各空調区画14の過去の温度データなどから蓄熱できる量を予測する。蓄熱許容量計算部9は、例えば、過去の運転データから電力需給調整準備期間に蓄熱運転をした際の熱負荷と、電力需給調整期間に空気調和システム20が運転を停止又は熱負荷を低減した際に、どれだけの間、各空調区画14で所定の温度範囲を維持できたかから求めることができる。
【0046】
蓄熱許容量計算部9は、熱負荷の予測と同様に、外気温、気象情報、対象となる空調区画14の利用人数の情報も参照することで蓄熱許容量の計算精度を向上することができる。
【0047】
次に蓄熱量の測定方法について説明する。蓄熱許容量計算部9は、空調区画14に与えた熱負荷に対する室温の変化量から空調区画14の蓄熱量を測定する。蓄熱許容量計算部9は、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積された過去の運転データから、与えた熱負荷に対する室温の変化量に関するデータを蓄積することにより、蓄熱量の推定精度を向上することができる。
【0048】
次に、蓄熱許容量計算部9による蓄熱許容量の計算方法について説明する。蓄熱許容量計算部9は、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積された過去の空調区画14に与えた熱負荷に対する室温の変化量のデータを元に、目的温度まで室温が変化した際の蓄熱許容量を計算することができる。また、蓄熱許容量計算部9は、過去の運転データと、そのときの外気温、日射量、在室情報、湿度情報及び換気熱量から計算する蓄熱許容量の精度を向上することができる。
【0049】
運転計画作成部18は、熱負荷予測部4によって予測された電力需給調整期間における空調区画14の熱負荷と、蓄熱許容量計算部9によって計算された電力需給調整準備期間において空調区画14に蓄熱できる蓄熱許容量とに基づいて、空調運転及び蓄熱運転の運転計画を作成する。
【0050】
期間運転効率計算部17は、運転計画作成部18により作成された運転計画を実行した際の電力需給調整期間における空調運転及び電力需給調整準備期間における蓄熱運転の期間運転効率を計算する。
【0051】
期間運転効率計算部17は、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている運転データに含まれる外気温と室内温度、室内機風量及び室内設定温度等に基づいて、期間運転効率を定める。その他影響を与えるパラメータとして、気象予測データ、室外機への日射量、室内の熱負荷(人、機械類からの排熱)等を含めても良い。これにより、運転期間の運転効率を正確に計算することができる。
【0052】
消費電力計算部19は、期間運転効率計算部17により計算された電力需給調整期間における期間運転効率から、電力需給調整期間における消費電力量を計算する。また、消費電力計算部19は、期間運転効率計算部17により計算された電力需給調整準備期間における期間運転効率から、電力需給調整準備期間における消費電力量を計算する。消費電力計算部19は、電力需給調整準備期間及び電力需給調整期間中に計算された消費電力量を更新する。
【0053】
電力需給調整許容量計算部16は、消費電力計算部19によって計算された消費電力量から、電力需給調整できる電力需給調整許容量を計算する。具体的には、電力需給調整許容量計算部16は、消費電力計算部19によって計算された消費電力量と、従来の制御方法で運転した場合の期間消費電力量(予測値)との差から電力需給調整許容量を計算する。ここで従来の制御方法は、電力需給調整を実施しない場合の運転制御方法を指す。また、電力需給調整許容量計算部16は、空気調和機室内ユニット1に備わっている温度センサ30により検出される温度情報と、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている過去の空気調和機室内ユニット1の運転データとから電力需給調整許容量を計算することができる。さらに、電力需給調整許容量計算部16は、在室検出部2から得られる情報、空調区画利用情報蓄積部15により得られる情報から電力需給調整許容量を計算することによって、正確に電力需給調整許容量を計算することができる。従って、必要以上に蓄熱することによる運転効率の低下及び需給調整指令値から消費電力量が大きく外れることを防ぐことができる。
【0054】
電力需給調整許容量計算部16により計算された電力需給調整許容量は、インターネットなどの通信回線を介して外部に送信される。
【0055】
図5は、実施形態2に係る空気調和システム20の運転制御のフローチャートである。以下、空気調和システム20が電力調整指令を受信してから需給調整期間が終了するまでの動作について、図5を参照して説明する。
【0056】
電力需給調整指令受信部5が、外部からの電力需給調整指令をインターネットなどの通信回線を介して受信する(ステップS11)。電力需給調整指令受信部5は、受信した電力需給調整指令に基づいて、電力需給調整期間、電力調整量及び電力調整対価等を取得する。
【0057】
次に、熱負荷予測部4が、熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている過去の空気調和システム20の運転データに基づいて、電力需給調整期間における空調区画14の熱負荷を予測する(ステップS12)。次に、蓄熱許容量計算部9が、電力需給調整準備期間において空調区画14に蓄熱できる蓄熱許容量を計算する(ステップS13)。
【0058】
次に、運転計画作成部18が、熱負荷予測部4によって予測された電力需給調整期間における空調区画14の熱負荷と、蓄熱許容量計算部9によって計算された電力需給調整準備期間において空調区画14に蓄熱できる蓄熱許容量とに基づいて、空調運転及び蓄熱運転の運転計画を作成する(ステップS14)。
【0059】
次に、期間運転効率計算部17が、運転計画作成部18により作成された運転計画を実行した際の電力需給調整期間における空調運転及び電力需給調整準備期間における蓄熱運転の期間運転効率を計算する(ステップS15)。
【0060】
次に、消費電力計算部19が、期間運転効率計算部17により計算された期間運転効率から消費電力量を計算する(ステップS16)。電力需給調整許容量計算部16が、消費電力計算部19によって計算された消費電力量から、電力需給調整期間における電力需給調整許容量を計算する(ステップS17)。
【0061】
次に、空気調和システム20が電力需給調整空調及び蓄熱運転を開始する(ステップS18)。
【0062】
制御部3は、運転開始後も定期的に熱負荷の予測値、気象予測データ及び空調区画利用情報、計算された消費電力量(予測値)を更新する(ステップS19)。
【0063】
次に、制御部3は、更新された消費電力量が当初の予測電力量(閾値)よりも小さいか否かを判断する(ステップS20)。
【0064】
制御部3は、更新された消費電力量が当初の予測電力量よりも小さい場合(ステップS20のYES)、電力需給調整期間が満了しているかを判断する(ステップS22)。電力需給調整期間が満了している場合(ステップS22のYES)、処理を終了する。電力需給調整期間が満了していない場合(ステップS22のNO)、運転を継続し、ステップS19の処理に戻る。
【0065】
一方、ステップS20において、更新された消費電力量が当初の予測電力量以上である場合(ステップS20のNO)、制御部3は、圧縮機周波数に上限を設けてピークカットする等の省電力運転を行い(ステップS21)、ステップS19に戻る。すなわち、制御部3は、省電力運転を開始後、定期的に計算された消費電力量を更新し、当初の予測電力量と比較する操作を繰り返し行う。
【0066】
電力需給調整期間が終了した後、得られたデータは学習データとして次回の電力需給調整空調及び蓄熱運転計画の作成時(ステップS14)に参照される。
【0067】
従って、実施形態2に係る空気調和システム20によれば、外部からの電力需給調整指令に対応した運転計画の実行を行うことができる。
【0068】
また、電力需給調整準備期間及び電力需給調整期間中に消費電力計算部19によって計算された消費電力量を更新する。計算された消費電力量が閾値以上だった場合には、省電力運転を開始する。
【0069】
これにより、実施形態2に係る空気調和システム20によれば、電力需給調整要請が消費電力を増加するポジワット型の内容であれば、電力需給調整期間に空調運転に加えて蓄熱運転を行い、消費電力量を増加することができる。電力需給調整期間に蓄えられた熱は、電力需給調整期間が終了した後に空調区画14にて使用される。また、電力需給調整要請が消費電力を削減するネガワット型の内容であれば、需給調整準備期間に、空調運転の他に蓄熱運転を行い、電力需給調整期間にその蓄えた熱を用いて空調運転を行うことによって、消費電力量を削減することができる。この蓄熱運転においては、実施形態1で説明したように、空調区画14における人の在室情報に基づいて、空調能力が調整される。
【0070】
また、電力需給調整期間中又は電力需給調整準備期間中に更新された消費電力量が当初の予測電力量(閾値)よりも大きい場合には、省電力運転を行なうので、空気調和システム20の消費電力量を削減することができる。
【0071】
さらに、実施形態2によれば、電力需給調整指令に応じることによって得られる金銭的な対価(例えば、電気料金から値引き等のインセンティブ)に照らし合わせて、電力需給調整期間中及び電力需給調整準備期間中の空気調和システム20の運転を制御することもできる。電力需給調整指令に応じることによって得られる対価(閾値)を損なわない範囲で、空気調和システム20の従来制御に対する効率低下を許容するように、制御部3の各機能部が電力需給調整期間中及び電力需給調整準備期間中の運転条件を決定できる。実施形態2によれば、経済性、デマンドレスポンス力及び目的に応じて最適な制御アルゴリズムを選択できる。
【0072】
実施形態3.
実施形態3では、蓄熱優先順位の判定を行うことにより、空気調和システム20の期間運転効率を向上するものである。
【0073】
図6は、実施形態3に係る空気調和システム20における制御部3の機能を示す機能ブロック図である。なお、図4と同一部分には、同一符号を付し、ここでは新たに示した放熱量予測部21及び蓄熱優先順位設定部8について説明する。
【0074】
放熱量予測部21は、各空調区画14の外部への放熱量を計算して予測する。放熱量予測部21は、蓄熱対象である各空調区画に最小蓄熱量を蓄熱した際の放熱量を計算する。放熱量は、対象となる空調区画14の室温の温度変化から計算する。
【0075】
ここで、温度変化は、空気調和機室内ユニット1に備え付けられた温度センサ30、又は別途空調区画14内に設けられた温度センサ30のデータを利用して測定される。
【0076】
また、外気温、日射量などの気象予測データ、又は空調区画14の利用情報などと温度データとを組み合わせることで、放熱量の予測精度を向上できる。
【0077】
蓄熱優先順位設定部8は、放熱量予測部21により予測された各空調区画14の放熱量と、期間運転効率計算部17により計算された空調区画14の蓄熱運転における期間運転効率とに基づいて、各空調区画14の蓄熱優先順位を決定する。また、蓄熱優先順位設定部8は、期間運転効率計算部17により計算された各空調区画14の蓄熱運転における運転効率と、放熱量予測部21より予測された各空調区画14の放熱量予測結果から蓄熱する優先順位及び各空調区画14の蓄熱量を計算する。蓄熱優先順位は、運転効率だけではなく、予め設定しておくこともできる。
【0078】
以下、蓄熱優先順位設定の手順について説明する。図7は、実施形態3に係る空気調和システム20の運転制御のフローチャートである。
【0079】
まず、在室検出部2により得られる在室情報、空調区画利用情報蓄積部15により得られる将来の空調区画14の利用情報などから、蓄熱対象を抽出する(ステップS30)。ここで、蓄熱対象は空気調和機室内ユニット1を有する空調区画14である。
【0080】
次に、決定した蓄熱対象区画の総蓄熱量と、各蓄熱対象に蓄熱する蓄熱量の比率を決定するための指標となる蓄熱運転時の期間運転効率の閾値を決定する(ステップS31)。ここで、運転効率の閾値は、蓄熱運転における許容蓄熱量を決めるために設定する運転効率の下限値である。この下限値を下まわらない範囲で、以降のフローで蓄熱許容量を求める。
【0081】
次に、放熱量予測部21により、各空調区画14に最小蓄熱量を蓄熱した際の放熱量を計算する(ステップS32)。
【0082】
次に、計算された放熱量と熱負荷履歴情報蓄積部6に蓄積されている過去の運転データとから蓄熱時の各空調区画14の運転効率を計算する(ステップS33)。運転効率は、計算した各空調区画14の放熱量と、各空調区画14において必要となる蓄熱時の熱負荷から求めることができる。条件として与える蓄熱量の初期値は、過去の実績データなどから仮に与える。
【0083】
次に、計算された各空調区画14の運転効率が高い順に蓄熱優先順位を決定する(ステップS34)。
【0084】
次に、期間運転効率が最大になるように、各空調区画14の蓄熱量の比率を変更する(ステップS35)。ここで、期間運転効率は、空気調和システム20の全対象区画の計算対象期間の運転効率である。
【0085】
次に、求められた期間運転効率が閾値よりも小さいかを判断する(ステップS36)。ここで、期間運転効率は、蓄熱運転時の運転効率である。
【0086】
次に、計算された期間運転効率が閾値以上であれば(ステップS36のNO)、まだ蓄熱する能力があるため、総蓄熱量を増加し(ステップS37)、ステップS32に戻り、再度放熱量の計算行う。期間運転効率が閾値よりも小さければ(ステップS36のYES)、蓄熱優先順位の決定を終了する。
【0087】
制御部3は、設定された蓄熱優先順位に従って処理を行なう。具体的には、制御部3の熱負荷予測部4、蓄熱許容量計算部9、運転計画作成部18、期間運転効率計算部17、消費電力計算部19、電力需給調整許容量計算部16及び放熱量予測部21は、設定された蓄熱優先順位に従って空調区画14における蓄熱運転を行なう。蓄熱運転中に、在室情報又は空調区画14の利用情報が更新された際には、蓄熱優先順位を更新する。
【0088】
実施形態3に係る空気調和システム20によれば、蓄熱運転時の運転効率を向上し、消費電力を削減することができる。また、各空調区画14の放熱量に応じた運転効率を用いて、各空調区画14の蓄熱運転の優先順位が決定される。例えば屋外に面していない空調区画14は、屋外への放熱量が少ないことから蓄熱運転の優先順位が高くなり、屋外に面していて屋外への放熱量が多い空調区画14の蓄熱運転の優先順位が低くなる。このため、空調区画14からの放熱ロスを削減することができ、空気調和システム20の期間運転効率を向上することができる。
【0089】
ここで、蓄熱対象とする空調区画14は、空気調和機室内ユニット1が備えられた空調区画14の壁、天井及び床、これらとは別に設けられた蓄熱槽、又は空調区画14の壁等の周囲にある建物躯体などを利用することができる。
【0090】
ここで、蓄熱優先順位は、あらかじめ設定されていてもよい。蓄熱優先順位をあらかじめ設定しておくことによって外部からの需給調整指令に迅速に対応することができる。
【0091】
ここで、期間運転効率の閾値を、非蓄熱運転時の期間運転効率とすることで、消費電力量を非蓄熱運転時よりも削減することができる。
【0092】
ここで、期間運転効率の閾値を、電力需給調整に応じることによって得られる金銭的な対価から求めることで、コストパフォーマンスの高い空調運転を行うことができる。
【0093】
実施形態4.
図8は、実施形態4に係る空気調和システム20を備えた建物を示す概略図である。実施形態4の空気調和システム20は、冷凍サイクルを熱源として用いる。
【0094】
実施形態4に係る空気調和システム20は、1つの空気調和機室外ユニット10に、冷媒中継機22を介して複数の空気調和機室内ユニット1が接続されているマルチ空気調和機を少なくとも一つ備えている。空気調和機室外ユニット10、冷媒中継機22及び空気調和機室内ユニット1は互いに配管接続されており、この配管を冷媒が循環する。空気調和機室外ユニット10には、冷媒と空気との間で熱交換する熱交換器が設けられている。冷媒中継機22には、複数の空気調和機室内ユニット1のそれぞれへ向かう冷媒の流路を切り換える流路切替装置が設けられている。流路切替装置が制御部3によって切り換えられることによって、空気調和機室内ユニット1に設けられた熱交換器が、冷媒の凝縮器又は蒸発器として機能する。
【0095】
制御部3は、空調区画14を用いた躯体蓄熱による蓄熱量が、要求される熱負荷よりも大きい場合には、人が不在である空調区画14の空気調和機室内ユニット1の空気熱交換器を、凝縮器又は蒸発器として使用する。具体的に、人が存在する空調区画14の空気調和機室内ユニット1を第1室内ユニットと称し、人が不在の空気調和機室内ユニット1を第2室内ユニットと称すると、第1室内ユニットで冷房運転をするときには、第2室内ユニットに備わる空気熱交換器を凝縮器として機能させるよう、冷媒中継機22の流路切替装置を制御する。第1室内ユニットで暖房運転をするときには、第2室内ユニットに備わる空気熱交換器を蒸発器として機能させるよう、冷媒中継機22の流路切替装置を制御する。
【0096】
実施形態4の空気調和システム20は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3にも起用することはできる。
【0097】
従って、実施形態4に係る空気調和システム20によれば、蓄えた熱量を部屋の壁面を介した熱伝導で伝熱するよりも早く熱量を移動することができる。電力需給調整期間の熱負荷が当初の想定よりも大きくなった場合に、外気温よりも低い温度の空気を熱源にすることができるため、電力需給調整期間の消費電力を削減することができる。
【0098】
実施形態は、例として提示したものであり、請求の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、実施形態の範囲及び要旨に含まれる。また、実施形態1~3は、冷凍サイクルを熱源として用いる空気調和システムのほか、電気ヒータ又はガスファーネスを熱源として用いる空気調和システムにも適用される。
【符号の説明】
【0099】
1 空気調和機室内ユニット、2 在室検出部、3 制御部、4 熱負荷予測部、5 電力需給調整指令受信部、6 熱負荷履歴情報蓄積部、7 必要蓄熱量計算部、8 蓄熱優先順位設定部、9 蓄熱許容量計算部、10 空気調和機室外ユニット、11 冷媒分配器、12 部屋利用予約情報蓄積部、13 蓄熱タンク、14 空調区画、15 空調区画利用情報蓄積部、16 電力需給調整許容量計算部、17 期間運転効率計算部、18 運転計画作成部、19 消費電力計算部、20 空気調和システム、21 放熱量予測部、22 冷媒中継機、30 温度センサ、B 建物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8