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特許7668974放熱部材、照明装置、および放熱部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】放熱部材、照明装置、および放熱部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/70 20150101AFI20250418BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20250418BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
F21V29/70
H01L23/36 C
H01L23/36 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024567569
(86)(22)【出願日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2024020753
【審査請求日】2024-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】三田村 昌哉
(72)【発明者】
【氏名】正木 元基
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-228855(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097027(WO,A1)
【文献】特開2012-216711(JP,A)
【文献】特開2014-045086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/70
H01L 23/36
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する第1の突起と、
前記第1の面に面している第2の面を有する第2の突起と
を備え、
前記第1の面の材料と前記第2の面の材料はいずれも金属ではない材料で構成され、
前記第1の面の材料は、前記第2の面の材料と異なっており、
前記第1の面の前記材料の放射スペクトルおよび前記第2の面の前記材料の放射スペクトルの各々は、2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持っており、
2.5μm以上25μm以下の前記波長領域における30%以上の領域において、前記第1の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率と前記第2の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上である
ことを特徴とする放熱部材。
【請求項2】
前記第1の面の材料および前記第2の面の材料はいずれもセラミック材料、樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記第1の面か前記第2の面の少なくともいずれかの表面粗さRaは、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記第1の突起は、前記第1の面を含む第1の表面層を有し、
前記第2の突起は、前記第2の面を含む第2の表面層を有し、
前記第1の表面層か前記第2の表面層の少なくともいずれかは、膜厚が10μm以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記第1の突起および前記第2の突起に熱を伝えるベースプレートをさらに備え、
前記ベースプレートの熱伝導率は、20W/mK以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱部材。
【請求項6】
発光素子と、
前記発光素子の熱を放熱する請求項1又は2に記載の放熱部材と
を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
第1の面を有する第1の突起と、前記第1の面に面している第2の面を有する第2の突起とを有する放熱部材の製造方法であって、
前記第2の面が前記第1の面に面するように前記第1の突起および前記第2の突起をベースプレートに設けることと、
前記第2の面の材料とは異なる材料で、前記第1の面の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように前記第1の面を形成することと、
前記第1の面の材料とは異なる材料で、前記第2の面の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように前記第2の面を形成することと
を備え、
前記第1の面の材料と前記第2の面の材料はいずれも金属ではない材料で構成され、
2.5μm以上25μm以下の前記波長領域における30%以上の領域において、前記第1の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率と前記第2の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上である
ことを特徴とする放熱部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱部材、照明装置、および放熱部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低放射率面を持つ放熱フィンと高放射率面を持つ放熱フィンとを備えたヒートシンクなどの放熱部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-41929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、低放射率面では放熱量が減少するため、放熱部材の放熱性能が下がるという問題がある。放熱量を増加させるために低放射率面を大きくすると、放熱部材が大型化するという問題がある。したがって、従来の技術では、高い放熱性能および小型化を両立することが難しい。
【0005】
本開示の目的は、上記の課題を解決するものであり、高い放熱性能および小型化を両立する、放熱部材、照明装置、または放熱部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る放熱部材は、
第1の面を有する第1の突起と、
前記第1の面に面している第2の面を有する第2の突起と
を備え、
前記第1の面の材料と前記第2の面の材料はいずれも金属ではない材料で構成され、
前記第1の面の材料は、前記第2の面の材料と異なっており、
前記第1の面の前記材料の放射スペクトルおよび前記第2の面の前記材料の放射スペクトルの各々は、2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持っており、
2.5μm以上25μm以下の前記波長領域における30%以上の領域において、前記第1の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率と前記第2の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上である
ことを特徴とする。
本開示の一態様に係る照明装置は、
発光素子と、
前記発光素子の熱を放熱する前記放熱部材と
を備えたことを特徴とする。
本開示の一態様に係る放熱部材の製造方法は、
第1の面を有する第1の突起と、前記第1の面に面している第2の面を有する第2の突起とを有する放熱部材の製造方法であって、
前記第2の面が前記第1の面に面するように前記第1の突起および前記第2の突起をベースプレートに設けることと、
前記第2の面の材料とは異なる材料で、前記第1の面の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように前記第1の面を形成することと、
前記第1の面の材料とは異なる材料で、前記第2の面の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように前記第2の面を形成することと
を備え、
前記第1の面の材料と前記第2の面の材料はいずれも金属ではない材料で構成され、
2.5μm以上25μm以下の前記波長領域における30%以上の領域において、前記第1の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率と前記第2の面の前記材料の前記放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い放熱性能および小型化を両立する、放熱部材、照明装置、または放熱部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る放熱部材を示す斜視図である。
図2図1に示される放熱部材の断面図である。
図3】放熱部材の他の例を示す斜視図である。
図4図3に示される放熱部材の断面図である。
図5】実施の形態1に係る放熱部材の製造方法の例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1の実施例および比較例の放熱性能を示す表である。
図7】実施の形態2に係る放熱部材を示す斜視図である。
図8】実施の形態3に係る放熱部材を示す断面図である。
図9】実施の形態4に係る放熱部材を示す斜視図である。
図10】実施の形態5に係る照明装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る放熱部材1を示す斜視図である。
図2は、図1に示される放熱部材1の断面図である。
以下、図を用いて、実施の形態1に係る放熱部材1について説明する。放熱部材1は、ベースプレート2と、ベースプレート2の表面に設けられた複数の突起3とを有する。
【0010】
各突起3は、熱を放出する面を含む表面層4を有する。図1に示される例では、複数の突起3のうちの、第1の突起31および第2の突起32が互いに隣接している。第1の突起31は、熱を放出する第1の面41を含む第1の表面層4aを有する。第2の突起32は、熱を放出する第2の面42を含む第2の表面層4bを有する。第2の表面層4bは、第1の表面層4aに面している。したがって、第2の突起32の第2の面42は、第1の突起31の第1の面41に面している。
【0011】
ベースプレート2は、熱源で発生した熱を第1の突起31および第2の突起32に伝える。ベースプレート2は、第1の突起31および第2の突起32に直接接触していると好ましい。
【0012】
ベースプレート2は、突起3を形成できるものを適宜選択すればよく、例えば、アルミニウム、鉄、銅などの金属、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、結晶シリカ、酸化チタン、マンガン・フェライト((FeMn))、酸化第二鉄(Fe)等のセラミック材料、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、およびポリイミド樹脂等の樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料等が使用できる。
【0013】
ベースプレート2の形状は、放熱部材1として使用可能な形状を適宜選択すればよく、例えば、円盤、平板、または使用環境に合わせ任意の形状にした板等が使用できる。また、ベースプレート2の断面の形状も同様に放熱部材1として使用可能な形状を適宜選択すればよく、例えば、厚みの均一な板、湾曲した板、場所によって厚みの異なる板等が使用できる。ベースプレート2の厚みは、突起3の設けられた面とその反対側の面との熱伝導を妨げないよう10mm以下とするのが好ましい。ベースプレート2の厚みに突起3の高さは含まない。
【0014】
突起3は、第1の表面層4aと第2の表面層4bを形成できるよう形状と大きさを適宜選択すればよい。例えば、図1および図2に示す断面が山型の形状とし、突起の高さを1mmから10mmの範囲とすることで、第1の表面層4aと第2の表面層4bを容易に形成できる。
【0015】
突起3は、第1の表面層4aと第2の表面層4bとが互いに向かい合うように配置されていればよい。例えば、図1および図2に示すように、突起3の側面の一方に第1の表面層4aを形成し、他方に第2の表面層4bを形成し、隣接する突起3にも同じ配置パターンで第1の表面層4aと第2の表面層4bを形成することで、第1の表面層4aと第2の表面層4bが、互いに向かい合う配置とすることができる。
【0016】
図3は、放熱部材1の他の例を示す斜視図である。
図4は、図3に示される放熱部材1の断面図である。
図3および図4に示されるように、突起3(具体的には、第1の突起31)の側面の両方に第1の表面層4aを形成し、隣接する突起3(具体的には、第2の突起32)の側面の両方に第2の表面層4bを形成し、第1の突起31と第2の突起32とを交互に並べてもよい。これにより、第1の表面層4aと第2の表面層4bとが、互いに向かい合う配置とすることができる。図1に示される配置および図3に示される配置は組み合わせてもよい。
【0017】
第1の面41の材料は、第2の面42の材料と異なっている。したがって、第1の表面層4aの材料は、第2の表面層4bの材料と異なっている。
【0018】
第1の面41の材料の放射スペクトルおよび第2の面42の材料の放射スペクトルの各々は、2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持っていると好ましい。同様に、第1の表面層4aの放射スペクトルおよび第2の表面層4bの放射スペクトルの各々は、2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持っていると好ましい。
【0019】
第1の表面層4aの材料として、2.5μm以上25μm以下の波長領域の平均放射率が0.5以上の材料を適宜選択すればよく、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、結晶シリカ、酸化チタン、マンガン・フェライト((FeMn))、酸化第二鉄(Fe)等のセラミック材料、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、およびポリイミド樹脂等の樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料を用いることができる。
【0020】
また、ベースプレート2および突起3がセラミック材料、樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料で構成されている場合は、突起3の素地を露出させ第1の表面層4aとしてもよい。
【0021】
突起3は、表面層4と、表面層4を支持する支持部材とを有してもよい。この場合、支持部材は、例えば、金属部材である。ベースプレート2および突起3が金属の場合は、第1の表面層4aを形成する方法として、例えば陽極酸化などを用いて突起3の表面を酸化させ、生成された金属酸化物で金属の表面を覆う方法で第1の表面層4aを形成してもよい。
【0022】
第2の表面層4bの材料は、第1の表面層4aの材料と同様の材料から選択することができ、例えば、セラミック材料、樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料を用いることができる。
【0023】
また、ベースプレート2および突起3がセラミック材料、樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料で構成されており、それと同一の材料を第1の表面層4aとして選択していない場合は、突起3の素地を露出させ第1の表面層4aとしてもよい。
【0024】
また、ベースプレート2および突起3が金属であり、その酸化物を第1の表面層4aとして選択していない場合は、第1の表面層4aを形成する方法として、例えば陽極酸化などを用いて突起3の表面を酸化させ、生成された金属酸化物で金属の表面を覆う方法で第1の表面層4aを形成してもよい。
【0025】
放射率は、黒体の赤外線放射の強度に対する物質の赤外線放射の強度の割合を指し、フーリエ変換赤外分光光度計で測定する。平均放射率は2.5μm以上25μm以下の波長領域における放射率を平均したものである。放射スペクトルは、波長ごとの放射率を表す。放射率の差は、同じ波長における第1の表面層4aと第2の表面層4bの放射率の差を表す。2.5μm以上25μm以下の波長領域における30%以上の領域において、第1の面41の材料の放射スペクトルの放射率と第2の面42の材料の放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上であると好ましい。
【0026】
放射率が高いほど放熱性能を高めることができるため、第1の表面層4aか第2の表面層4bの少なくとも一方の平均放射率が0.6以上であれば放熱性能をより高めることができ、0.7以上であればさらに高めることができる。
【0027】
一般に、物質に当たった赤外線放射の一部は吸収されて熱となる。その吸収割合は、物質の放射スペクトルと一致する。そのため、放射率の差が小さい波長の赤外線放射は、突起どうしの向かい合う面でお互いに吸収してしまい、放熱部材の放熱性能を劣化させる。例えば、放射率の差が0.3未満では、お互いに吸収される赤外線放射の割合が多くなり放熱性能が劣化してしまう。また、お互いの放射を吸収することを防ぐことができる領域が30%未満では、放熱部材全体でお互いに吸収される赤外線放射の割合が多くなり放熱性能が劣化してしまう。
【0028】
放射率の差が大きく、差が大きい領域が広いほど、お互いの放射を吸収することを防ぎ放熱性能を高めることができるため、放射率の差は50%以上であればより好ましい。また、放射率の差は、0.4以上であればより好ましく、0.5以上であればさらに好ましい。
【0029】
第1の表面層4aと第2の表面層4bは、鏡面研磨を施すなどの方法で表面粗さRaが0.1μm未満とすると、放射率が低下し放熱性能が低下する。そのため、第1の表面層4aか第2の表面層4bの少なくともいずれかの表面粗さRaは、0.1μm以上であると好ましい。すなわち、第1の面41か第2の面42の少なくともいずれかの表面粗さRaは、0.1μm以上であると好ましい。第1の表面層4aと第2の表面層4bの両方の表面粗さRaが0.1μm以上であればより好ましい。すなわち、第1の面41および第2の面42の両方の表面粗さRaが0.1μm以上であればより好ましい。
【0030】
第1の表面層4aと第2の表面層4bを表面コーティングによって形成する場合、厚みが10μmより薄いと放射率が低下し放熱性能が低下する。そのため、第1の表面層4aか第2の表面層4bの少なくともいずれかは、膜厚が10μm以上であると好ましい。
【0031】
表面コーティングとは、セラミック材料、樹脂材料、樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料、または陽極酸化などを用いて突起3の表面を酸化させた金属酸化物で、第1の表面層4aまたは第2の表面層4bを形成することをいう。
【0032】
ベースプレート2および突起3の熱伝導率の各々は、熱源で発生した熱を第1の表面層4aおよび第2の表面層4bに伝える経路となるため、熱伝導の妨げとならないよう20W/mK以上であると好ましい。ベースプレート2および突起3の熱伝導率の各々は、熱伝導率が30W/mK以上の材料で構成されるとより好ましい。
【0033】
図5は、実施の形態1に係る放熱部材1の製造方法の例を示すフローチャートである。
本実施の形態に係る放熱部材1の製造方法について図5のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1では、ベースプレート2を用意する。用意する方法は、その素材に合わせ任意の方法を選択する。例えば、セラミック材料、樹脂材料、または樹脂材料にセラミック材料の粉末をフィラーとして混合させた材料を用意し、切断または切削等の方法で任意の形状に成形する。
【0034】
ステップS2では、ベースプレート2の表面に突起3を設ける。例えば、第2の面42が第1の面41に面するようにベースプレート2の表面に第1の突起31および第2の突起32を設ける。突起3を設ける方法は、例えば、ベースプレート2を構成する材料を切削する方法、ベースプレート2と同様に切断または切削する等の方法で任意の形状に成形した突起3をベースプレート2に接着する方法等が挙げられる。
【0035】
ステップS3では、第1の面41を含む第1の表面層4aの材料と第2の面42を含む第2の表面層4bの材料との組み合わせを決定する。この場合、第1の表面層4aの材料として、第2の表面層4bの材料とは異なる材料を選択する。さらに、第1の面41の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように第1の面41を含む第1の表面層4aの材料を決定する。同様に、第2の面42の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように第2の面42を含む第2の表面層4bの材料を決定する。
【0036】
ステップS4では、第2の面42の材料とは異なる材料で、第1の面41の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように第1の面41を形成する。例えば、まず第1の突起31に第1の表面層4aを形成する。第1の表面層4aを形成する方法は、セラミック材料を表面で焼結させる、樹脂材料またはフィラーを混合させた樹脂材料をスプレー法、浸漬法、刷毛塗法、スクリーン印刷法、または転写法等を用いて塗布する等が挙げられる。
【0037】
ベースプレート2および突起3と同一の材料で第1の表面層4aを形成する場合は、突起3に表面コーティングを施さず、素地を露出させ第1の表面層4aとしてもよい。ベースプレート2および突起3が金属の場合は、陽極酸化などを用いて表面を酸化させ第1の表面層4aとしてもよい。第1の表面層4aを形成する際、のちに第2の表面層4bを形成する面には、第2の表面層4bの形成を阻害することの無いよう、第1の表面層4aを形成しないことが好ましい。その方法としては、例えば、第1の表面層4aの表面をマスキングテープなどで覆ってから第1の表面層4aを形成し、その後マスキングテープを剥がす方法、または第1の表面層4aを形成したのちサンドブラストなどでのちに第2の表面層4bを形成する面を覆う部分を除去するといった方法が挙げられる。
【0038】
ステップS5では、第1の面41の材料とは異なる材料で、第2の面42の材料の放射スペクトルが2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持つように第2の面42を形成する。例えば、まず第1の表面層4aに向かい合う面に第1の表面層4aを覆わないよう第2の表面層4bを形成する。第2の表面層4bは、第1の表面層4aの上に形成して覆ってしまうことの無いよう形成できる方法であればどのような方法でもよい。その方法としては、例えば、第1の表面層4aの表面をマスキングテープなどで覆ってから第2の表面層4bを形成し、その後マスキングテープを剥がす方法、または第2の表面層4bを形成したのちサンドブラストなどで第1の表面層4aを覆う部分を除去するといった方法が挙げられる。
【0039】
第2の表面層4bを形成する方法は、第1の表面層4aの形成方法として例示したものと同様の方法を用いることができ、例えば、セラミック材料を表面で焼結させる、樹脂材料またはフィラーを混合させた樹脂材料をスプレー法、浸漬法、刷毛塗法、スクリーン印刷法、または転写法等を用いて塗布する等が挙げられる。また、ベースプレート2および突起3と同一の材料で第2の表面層4bを形成する場合は、突起3に表面コーティングを施さず、素地を露出させ第2の表面層4bとしてもよい。ベースプレート2および突起3が金属の場合は、陽極酸化などを用いて表面を酸化させ第2の表面層4bとしてもよい。
【0040】
ステップS4およびステップS5において、2.5μm以上25μm以下の波長領域における30%以上の領域において、第1の面41の材料の放射スペクトルの放射率と第2の面42の材料の放射スペクトルの放射率との差が0.3以上となるように第1の面41および第2の面42が形成されればよい。
【0041】
<実施例>
本開示に係る放熱部材1の利点について、図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態1の実施例および比較例の放熱性能を示す表である。
実施例1から4には実施の形態1が適用されており、比較例1および2には実施の形態1が適用されていない。
【0042】
[実施例1]
実施例1は、アルミナ製のベースプレートの表面を切削し、断面が山型となる突起を形成し、すべての突起の同じ方向の側面をそのまま第1の表面層4aとし、もう一方の側面にシリコーン樹脂を塗布したサンプルである。
【0043】
[実施例2]
実施例2は、シリコーン樹脂を塗布した後にシリコーン樹脂を塗布した表面をやすりで荒らし、表面粗さRaを0.1μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして得られたサンプルである。
【0044】
[実施例3]
実施例3は、シリコーン樹脂を塗布する際に厚く塗布し、膜厚を10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして得られたサンプルである。
【0045】
[実施例4]
実施例4は、ベースプレートの材料として熱伝導率が20W/mKの高純度アルミナを用いたこと以外は、実施例1と同様にして得られたサンプルである。
【0046】
[比較例1]
比較例1は、シリコーン樹脂の代わりに、平均放射率が0.1となるアルミテープを貼り付けたこと以外は、実施例1と同様にして得られたサンプルである。
【0047】
[比較例2]
比較例2は、シリコーン樹脂の代わりに、アルミナ粉とシリコーン樹脂を混合させた塗料を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして得られたサンプルである。シリコーン樹脂と混合させた塗料の放射率の差が0.3以上となる領域は20%である。
【0048】
上述した実施例1から4および比較例1,2のサンプルに対して、以下のようにして、放熱性能を評価した。この評価方法においては、放熱部材1の大きさはいずれも50mm×50mmとし、突起3は5mmの高さで形成した。また、放熱部材1における突起3が設けられた面とは反対側に位置する面に、セラミックヒーターが取り付けられている。各サンプルは、セラミックヒーターに電力が印加され、各サンプルの温度とセラミックヒーターの温度が飽和温度に達するまで、数時間放置される。その後、セラミックヒーターの表面温度が、熱電対等を用いて計測される。
【0049】
放熱性能の評価結果は、実施例1のサンプルで得られた飽和温度を基準とし、実施例2から4および比較例1,2の各サンプルで得られた飽和温度が、実施例1の飽和温度よりも低い場合を「優」、同等の場合を「良」、高い場合を「低」とする。
【0050】
実施例2のサンプルにおいては、シリコーン樹脂表面の表面粗さRaを0.1μmとしたことで放熱性能が向上し、飽和温度が低下した。実施例3のサンプルにおいては、シリコーン樹脂の膜厚を10μmとしたことで放熱性能が向上し、飽和温度が低下した。実施例4のサンプルにおいては、ベースプレートの熱伝導率を20W/mKとしたことで放熱性能が向上し、飽和温度が低下した。
【0051】
比較例1のサンプルにおいては、アルミテープを用いて、第1の面41か第2の面42のいずれかの平均放射率を0.5未満としたことで放熱性能が劣化し、飽和温度が上昇した。比較例2のサンプルにおいては、アルミナ粉とシリコーン樹脂を混合させた塗料を用いて、第1の面41の放射率と第2の面42の放射率との差が0.3以上となる領域が30%未満である場合、放熱性能が劣化し、飽和温度が上昇した。
【0052】
実施の形態1によれば、高い放熱性能および小型化を両立する、放熱部材1または放熱部材1の製造方法を提供することができる。
【0053】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2に係る放熱部材101を示す斜視図である。
以下、図を用いて、実施の形態2に係る放熱部材101について説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
放熱部材101は、ベースプレート2と、ベースプレート2の表面に設けられた複数の突起103とを有する。複数の突起103は、第1の突起31と第2の突起32とを含む。図7に示される例では、各突起103は、ピラミッド型の突起である。実施の形態1で説明したように、第1の突起31は、第1の面41を含む第1の表面層4aを有し、第2の突起32は、第2の面42を含む第2の表面層4bを有する。各突起103は、第1の表面層4aおよび第2の表面層4bを形成できるよう形状と大きさを適宜選択すればよい。
【0055】
突起103は、第1の表面層4aと第2の表面層4bとが互いに向かい合うように配置されていればよい。例えば、図7に示されるように、1つの突起103(例えば、第1の突起31)の側面が第1の表面層4aであり、なお且つ、隣接する突起103(例えば、第2の突起32)の側面が第2の表面層4bであるように、各突起103が配置される。
【0056】
実施の形態2によれば、第1の面41および第2の面42をいずれも放射率の高い材料としつつ放射スペクトルが異なる組み合わせとすることで、各面からの放熱性能を高めつつ向かい合う面でお互いの放射を吸収することを防ぎ、放熱部材101全体の放熱性能を高めることができる。そのため、放熱部材101に求められる放熱性能を達成するのに必要な体積を縮小し、高い放熱性能と小型化を両立する放熱部材101を提供することができる。
【0057】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3に係る放熱部材201を示す断面図である。
以下、図を用いて、実施の形態3に係る放熱部材201について説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
放熱部材201は、ベースプレート2と、ベースプレート2の表面に設けられた複数の突起203とを有する。複数の突起203は、第1の突起31と第2の突起32とを含む。図8に示される例では、各突起203は、板状の突起である。実施の形態1で説明したように、第1の突起31は、第1の面41を含む第1の表面層4aを有し、第2の突起32は、第2の面42を含む第2の表面層4bを有する。各突起203は、第1の表面層4aおよび第2の表面層4bを形成できるよう形状と大きさを適宜選択すればよい。
【0059】
突起203は、第1の表面層4aと第2の表面層4bとが互いに向かい合うように配置されていればよい。例えば、図8に示されるように、1つの突起203(例えば、第1の突起31)の側面が第1の表面層4aであり、なお且つ、隣接する突起203(例えば、第2の突起32)の側面が第2の表面層4bであるように、各突起203が配置される。
【0060】
実施の形態3によれば、第1の面41および第2の面42をいずれも放射率の高い材料としつつ放射スペクトルが異なる組み合わせとすることで、各面からの放熱性能を高めつつ向かい合う面でお互いの放射を吸収することを防ぎ、放熱部材201全体の放熱性能を高めることができる。そのため、放熱部材201に求められる放熱性能を達成するのに必要な体積を縮小し、高い放熱性能と小型化を両立する放熱部材201を提供することができる。
【0061】
<実施の形態4>
図9は、実施の形態4に係る放熱部材301を示す斜視図である。
以下、図を用いて、実施の形態4に係る放熱部材301について説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
放熱部材301は、ベースプレート2と、ベースプレート2の表面に設けられた複数の突起303とを有する。複数の突起303は、第1の突起31と第2の突起32とを含む。図9に示される例では、各突起303は、立方体の突起である。実施の形態1で説明したように、第1の突起31は、第1の面41を含む第1の表面層4aを有し、第2の突起32は、第2の面42を含む第2の表面層4bを有する。各突起303は、第1の表面層4aおよび第2の表面層4bを形成できるよう形状と大きさを適宜選択すればよい。
【0063】
突起303は、第1の表面層4aと第2の表面層4bとが互いに向かい合うように配置されていればよい。例えば、図9に示されるように、1つの突起303(例えば、第1の突起31)の側面が第1の表面層4aであり、なお且つ、隣接する突起303(例えば、第2の突起32)の側面が第2の表面層4bであるように、各突起203が配置される。
【0064】
実施の形態4によれば、第1の面41および第2の面42をいずれも放射率の高い材料としつつ放射スペクトルが異なる組み合わせとすることで、各面からの放熱性能を高めつつ向かい合う面でお互いの放射を吸収することを防ぎ、放熱部材301全体の放熱性能を高めることができる。そのため、放熱部材301に求められる放熱性能を達成するのに必要な体積を縮小し、高い放熱性能と小型化を両立する放熱部材301を提供することができる。
【0065】
<実施の形態5>
図10は、実施の形態5に係る照明装置5を示す断面図である。
以下、図を用いて、実施の形態5に係る照明装置5について説明する。
実施の形態5に係る照明装置5は、放熱部材51と、熱源としての発光素子52とを有する。放熱部材51は、実施の形態1から4で説明したいずれかの放熱部材1,101,201,または301である。発光素子52は、例えば、発光ダイオード(LED)である。この場合、照明装置5は、LED照明装置である。放熱部材51は、発光素子52の熱を放熱する。
【0066】
放熱部材51と発光素子52とは、発光素子52の熱を効率的に放熱できるように接続されていればよい。例えば、発光素子52を放熱部材51に直接接着する方法、ねじ止めする方法、セラミックや金属等の熱伝導率の高い材質からなる取付治具を介して接続する方法などを用いることができる。
【0067】
放熱部材51と発光素子52との間に、実施の形態1で説明したベースプレート2を配置してもよい。
【0068】
実施の形態5に係る照明装置5によれば、実施の形態1から4で説明したいずれかの放熱部材1,101,201,または301を有するので、高い放熱性能と小型化を両立した照明装置5を提供することができる。
【0069】
以上に説明した各実施の形態における特徴は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1,51,101,201,301 放熱部材、 2 ベースプレート、 3,103,203,303 突起、 4 表面層、 4a 第1の表面層、 4b 第2の表面層、 5 照明装置、 31 第1の突起、 32 第2の突起、 41 第1の面、 42 第2の面、 52 発光素子。
【要約】
放熱部材(1)は、第1の面(41)を有する第1の突起(31)と、第1の面(41)に面している第2の面(42)を有する第2の突起(32)とを有する。第1の面(41)の材料は、第2の面(42)の材料と異なっている。第1の面(41)の材料の放射スペクトルおよび第2の面(42)の材料の放射スペクトルの各々は、2.5μm以上25μm以下の波長領域において0.5以上の平均放射率を持っている。2.5μm以上25μm以下の波長領域における30%以上の領域において、第1の面(41)の材料の放射スペクトルの放射率と第2の面(42)の材料の放射スペクトルの放射率との差は、0.3以上である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10