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特許7669076テンプレート引き剥がし試験方法、及びテンプレート引き剥がし試験体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】テンプレート引き剥がし試験方法、及びテンプレート引き剥がし試験体
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/00 20060101AFI20250421BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20250421BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20250421BHJP
【FI】
E04G21/00
G01N3/00 M
E04G21/18 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024098434
(22)【出願日】2024-06-19
【審査請求日】2025-01-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594171492
【氏名又は名称】小川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】小川 潔
(72)【発明者】
【氏名】辻 英行
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-329974(JP,A)
【文献】実開昭52-73794(JP,U)
【文献】特開2007-270503(JP,A)
【文献】特開2010-117210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00
G01N 3/00
E04G 21/18
G01N 19/04
E02D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通するナットを備えた板状のテンプレートを、水平にかつ上面を露出させた状態で硬化前の模擬基礎コンクリートに埋設し、該模擬基礎コンクリートの硬化後に前記テンプレートを持ち上げることにより前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリートから引き剥がして、前記テンプレートと前記模擬基礎コンクリートの密着度を確認するテンプレート引き剥がし試験方法であって、
前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリート内に埋設した状態で前記模擬基礎コンクリートを硬化させる試験準備工程と、
前記ナットに上側から剥離用ボルトを螺通し、前記剥離用ボルトの下端を、前記模擬基礎コンクリート内に下降不能に設けられた下降拘束部材に当接させた状態で、前記剥離用ボルトを前記テンプレートに対し相対的に下方に螺進させることにより、前記テンプレートを持ち上げて、前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリートから引き剥がす引き剥がし工程を備えることを特徴とするテンプレート引き剥がし試験方法。
【請求項2】
前記試験準備工程は、
前記ナットの雌螺子孔に上側から前記剥離用ボルトを螺入するとともにその雄螺子部を前記ナットの下側から延出させて前記雄螺子部に下側から長ナットを途中まで螺合し、前記長ナットの雌螺子孔に下側から寸切ボルトを螺入するテンプレート組立工程と、
前記テンプレートを、模擬基礎コンクリート成型用の型枠内に載置するテンプレート載置工程と、
前記模擬基礎コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記剥離用ボルトを取り外したのち、前記長ナットの雌螺子孔に棒状部材からなるシャフトを挿入するシャフト挿入工程と、
を有し、
前記テンプレート引き剥がし工程は、
前記シャフトを前記下降拘束部材として、前記剥離用ボルトが前記長ナットに螺入する前に、前記剥離用ボルトの下端を前記シャフトに当接させるようにする請求項1に記載のテンプレート引き剥がし試験方法。
【請求項3】
板状のテンプレートを、水平にかつ上面を露出させた状態で硬化前の模擬基礎コンクリートに埋設し、該模擬基礎コンクリートの硬化後に前記テンプレートを持ち上げることにより前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリートから引き剥がして、前記テンプレートと前記模擬基礎コンクリートの密着度を確認するために用いるテンプレート引き剥がし用試験体であって、
厚み方向に貫通するナットを備えた板状のテンプレートと、
前記板状のテンプレートを埋設する模擬基礎コンクリートと、
前記ナットに上側から螺通される剥離用ボルトと、
前記模擬基礎コンクリート内に設けられ、前記剥離用ボルトの下端に当接して、前記剥離用ボルトが前記テンプレートに対し相対的に下方に螺進する際に、前記剥離用ボルトの下降を拘束する下降拘束部材と
を備えることを特徴とするテンプレート引き剥がし試験体。
【請求項4】
前記ナットに螺通された剥離用ボルトに下側から螺結される長ナットと、
前記長ナットの雌螺子孔に対し下側から途中まで螺入された寸切ボルトと
を備え、
前記下降拘束部材が、前記長ナットの雌螺子孔に上側から挿入され、前記寸切ボルトにより下降が拘束された棒状部材のシャフトからなり、
前記ナットの上側から螺入された前記剥離用ボルトが、前記長ナットに螺入する前に前記シャフトに当接するよう構成されている請求項3に記載のテンプレート引き剥がし試験体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎コンクリートに埋設した建築・土木用テンプレートと基礎コンクリートとの密着度を確認するための引き剥がし試験の試験方法、及びこれに用いる試験体に関する。
【背景技術】
【0002】
免震建造物における免震部材取付けボルトや一般建造物における鉄骨柱のアンカーボルト、鉄筋コンクリート建造物の柱主筋(鉄筋)等の位置決めには、鋼板やコンクリート製の板状部材にアンカーボルトや主筋を挿通する位置決め用の貫通孔を設けたテンプレートが広く用いられている。かかるテンプレートは、地震発生時に下部基礎から剥がれないように下部基礎と十分に密着している必要があり、事前に同じ工法により施工されたテンプレートを用いてテンプレート引き剥がし試験が実施される。
【0003】
従来、この引き剥がし試験は、図7に示すように、テンプレート910を、ワイヤーWにより4点吊りしてクレーン(不図示)で持ち上げて模擬基礎コンクリート20から剥離させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の引き剥がし試験では、模擬基礎コンクリートが床面に固定されていない場合、テンプレートとともに模擬基礎コンクリートが持ち上がってしまうという問題や、テンプレートがプレキャストコンクリート製の場合、4点吊りすると、ワイヤーの方向がテンプレートの厚み方向に平行でないためテンプレートに曲げ応力が働いて、コンクリートの脆性によりテンプレートが割れてしまうという問題がある。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、模擬基礎コンクリートが床面に固定されていない場合でも、模擬基礎コンクリートまで持ち上がってしまうことを抑制し、かつテンプレートがコンクリート製であってもテンプレートが割れることの少ないテンプレート引き剥がし試験方法、及びテンプレート引き剥がし試験体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明は、厚み方向に貫通するナットを備えた板状のテンプレートを、水平にかつ上面を露出させた状態で硬化前の模擬基礎コンクリートに埋設し、該模擬基礎コンクリートの硬化後に前記テンプレートを持ち上げることにより前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリートから引き剥がして、前記テンプレートと前記模擬基礎コンクリートの密着度を確認するテンプレート引き剥がし試験方法である。
本発明に係るテンプレート引き剥がし試験方法は、前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリート内に埋設した状態で前記模擬基礎コンクリートを硬化させる試験準備工程と、前記ナットに上側から剥離用ボルトを螺通し、前記剥離用ボルトの下端を、前記模擬基礎コンクリート内に下降不能に設けられた下降拘束部材に当接させた状態で、前記剥離用ボルトを前記テンプレートに対し相対的に下方に螺進させることにより、前記テンプレートを持ち上げて、前記テンプレートを前記模擬基礎コンクリートから引き剥がす引き剥がし工程を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明のテンプレート引き剥がし試験方法では、このように、テンプレートのナットの上側から螺入した剥離用ボルトの下端を、下降不能に設けられた下降拘束手段に当接させて拘束した状態で、剥離用ボルトを螺回する。剥離用ボルトはテンプレートに対し螺進して下側から下端を突出させるが、剥離用ボルトは下降拘束手段に下端が当接して下降しないため、この剥離用ボルトが突出した分だけテンプレートが模擬基礎コンクリートに対し持ち上がることになる。こうして、テンプレートが模擬基礎コンクリートから剥離される。
【0007】
この際、剥離用ボルトは、テンプレートに対しては上向きに力を加える一方で、模擬基礎コンクリートに対しては下向きに力を加えることとなるため、模擬基礎コンクリートが、テンプレートと共に持ち上がることがない。また、剥離用ボルトは、テンプレートに対し、その厚み方向に垂直な方向に力を加えることができるため、テンプレートに曲げ応力を加えることを抑制でき、これによりテンプレートがプレキャスト製(コンクリート製)であっても、割れることを防止できる。
【0008】
本発明のテンプレート引き剥がし試験方法では、前記試験準備工程は、前記ナットの雌螺子孔に上側から前記剥離用ボルトを螺入するとともにその雄螺子部を前記ナットの下側から延出させて前記雄螺子部に下側から長ナットを途中まで螺合し、前記テンプレートを、模擬基礎コンクリート成型用の型枠内に載置するテンプレート載置工程と、前記模擬基礎コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、前記剥離用ボルトを取り外したのち、前記長ナットの雌螺子孔に棒状部材からなるシャフトを挿入するシャフト挿入工程と、を有し、前記テンプレート引き剥がし工程は、前記シャフトを前記下降拘束部材として、前記剥離用ボルトが前記長ナットに螺入する前に、前記剥離用ボルトの下端を前記シャフトに当接させるようにすることが好ましい。
このように、テンプレート組立工程において、剥離用ボルト、寸切ボルト、及び長ナットを連結しておくことで、テンプレート載置工程において、これらを模擬基礎コンクリートの型枠内に、同時にかつ一体的に設置することができる。そして、シャフト挿入工程において、長ナット内に棒状のシャフトを挿入すると、当該シャフトは下端が寸切ボルトに当接するので下降が拘束される。テンプレート引き剥がし工程において、シャフトを下降拘束部材として剥離用ボルトが長ナットに螺入する前に、剥離用ボルトの下端をシャフトに当接させることで、剥離用ボルトが長ナットに連結されないので、螺回用ボルトを螺回してテンプレートに対し下方に突出させると、その分だけテンプレートを模擬基礎コンクリートから持ち上げることが出来る。
【0009】
本発明は、厚み方向に貫通するナットを備えた板状のテンプレートと、前記板状のテンプレートを埋設する模擬基礎コンクリートと、前記長ナットに上側から螺通される剥離用ボルトと、前記模擬基礎コンクリート内に下降不能に設けられ、前記剥離用ボルトの下端に当接して、前記剥離用ボルトが下方に螺進する際に、前記剥離用ボルトの下降を拘束する下降拘束部材とを備えるテンプレート引き剥がし試験体を含む。
【0010】
本発明のテンプレート引き剥がし試験体は、前記ナットに螺通された剥離用ボルトに下側から螺結される長ナットと、前記長ナットの雌螺子孔に対し下側から途中まで螺入された寸切ボルトとを備え、前記下降拘束部材が、前記長ナットの雌螺子孔に上側から挿入され、前記寸切ボルトにより下降が拘束された棒状部材のシャフトからなり、前記ナットの上側から螺入された前記剥離用ボルトが、前記長ナットに螺入する前に前記シャフトに当接するよう構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明のテンプレート引き剥がし試験方法、及びテンプレート引き剥がし試験体によれば、模擬基礎コンクリートがテンプレートとともに持ち上がることを抑制できる。また、テンプレートがプレキャスト製であっても、持ち上げることにより割れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るテンプレート引き剥がし試験体を示す平面図である。
図2図1におけるX-X線断面図である。
図3図1のテンプレート引き剥がし試験体を形成したのち、テンプレート引き剥がし試験の準備を行う様子を示す説明図である。
図4図3の準備完了後、テンプレート引き剥がし試験を行う様子を示す説明図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るテンプレート引き剥がし試験体を示す側面視断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るテンプレート引き剥がし試験体を示す側面 視断面図である。
図7】従来のテンプレート引き剥がし試験を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るテンプレート引き剥がし試験体100を示している。テンプレート引き剥がし試験体100は、免振ゴムを備えた免振装置を基礎コンクリートに取り付ける取り付けボルトの位置決め用テンプレートを模したものであり、本実施形態のテンプレート引き剥がし試験は、当該テンプレートと基礎コンクリートの密着性を確認するために実施される。ただし、本発明は、免振装置用に限らず、一般建造物における鉄骨柱のアンカーボルトや、鉄筋コンクリート建造物の柱主筋(鉄筋)等の位置決め等に用いるテンプレートの引き剥がし試験に広く用いることができる。
【0015】
(テンプレート引き剥がし試験体)
テンプレート引き剥がし試験体100は、図1図2に示すように、テンプレート10と、テンプレート10を埋設する模擬基礎コンクリート20と、模擬基礎コンクリート20からテンプレート10を剥離するために用いる複数の剥離用ボルト2,2,…と、テンプレート10を下方から支持すべく模擬基礎コンクリート20に埋設される長ナット3、及び寸切ボルト4と、長ナット3内に収容される棒状のシャフト(下降拘束部材)5とを備えている。
【0016】
テンプレート10は、図1図2に示すように、円板状のテンプレート本体1と、テンプレート本体1の厚み方向に貫通するとともにテンプレート本体1の周縁に沿って等間隔に並ぶ複数(図示の例では12個)のナット11,…とを備えている。
【0017】
テンプレート本体1は、プレキャストされたコンクリート製からなり、図1に示すように、中央に設けられるやや大径の円形孔12と、テンプレート本体1の径方向の内外2つの円形状に等角度間隔で並ぶ多数の小孔13,…と、ナット11をかわしながら縦横に交差するよう下端近傍に埋設される下端筋14,…とを有している。テンプレート本体1中央の円形孔12は、模擬基礎コンクリート20の打設用コンクリートを投入するために用いられ、小孔13,…は、このコンクリートを流し込む際にテンプレート本体1の下の空気を逃すために用いられる。
【0018】
ナット11は、図3に示すように、軸方向に貫通する雌螺子孔11aと、テンプレート本体1内に、その上面1a、下面1bとそれぞれ面一に埋設される2つのフランジ11b,11bと、テンプレート本体1の下面1bから下方へ延出する脚部11cとを備えている。脚部11cは、模擬基礎コンクリート20に埋設される。
【0019】
剥離用ボルト2は、六角ボルトからなり、図3(a)に示すように、引き剥がし試験を行う前は、ナット11の雌螺子孔11aに上側から頭部2aがナット11に当接するまで羅入され、雄螺子部2bの先端側をナット11の下側開口から下方へ突出させている。
【0020】
長ナット3は、円筒状をなし、内面にナット11と同じ雌ねじを有する雌螺子孔3aを備え、図3(a)に示すように、引き剥がし試験を行う前は、ナット11の下側へ突出した剥離用ボルト2の雄螺子部2bに上端がナット11の下端に当接するまで羅合されている。
【0021】
寸切ボルト4は、図3(a)に示すように、長ナット3の下方からその雌螺子孔3aに上端を羅入させて、長ナット3に連結されている。寸切ボルト4の下端近傍には、模擬基礎コンクリート20から長ナット3、及び寸切ボルト4が脱出することを防止する円形環状の定着板41が羅合・溶接されている。
【0022】
シャフト5は、ステンレス等の金属製の丸棒(棒状部材)からなり、図4(a)に示すように、下端を寸切ボルト4の上端に当接させることにより下降不能に設けられている。シャフト5は、長ナット3内に収容されると、上端側がナット11内まで延出する長さに設けられている。
【0023】
(テンプレート引き剥がし試験方法)
次に、本実施形態にかかるテンプレート引き剥がし試験方法について説明する。本実施形態にかかるテンプレート引き剥がし試験方法は、テンプレート引き剥がし試験体100を用いて行うものであり、テンプレート10を模擬基礎コンクリート20内に埋設した状態で模擬基礎コンクリート20を硬化させる試験準備工程S1と、テンプレート10を持ち上げて、テンプレート10を模擬基礎コンクリート20から引き剥がす引き剥がし工程S2とを備えている。
【0024】
本実施形態のテンプレート引き剥がし試験では、テンプレート本体1は、鋼板製であってもコンクリート製やモルタル製であっても適用できるが、特に曲げ応力により割れやすいコンクリート製やモルタル製のテンプレートに好適に用いられる。また、本発明のテンプレート引き剥がし試験は、テンプレート本体1が、図1に示したような円形であってもよいし、正方形状、円環状、矩形環状であっても適用できる。
【0025】
(試験準備工程S1)
試験準備工程S1は、テンプレート10を模擬基礎コンクリート20内に埋設した状態で模擬基礎コンクリート20を硬化させる工程である。試験準備工程S1は、 テンプレート組立工程S11と、型枠組立工程S12と、テンプレート載置工程S13と、コンクリート打設工程S14と、シャフト挿入工程S15とを有している。
【0026】
(テンプレート組立工程S11)
テンプレート組立工程S11は、図3(a)に示すように、テンプレート10を支持する寸切ボルト4を、剥離用ボルト2と長ナット3を介してナット11の下端に連結する工程である。テンプレート組立工程S11では、まずナット11の雌螺子孔11aに上側から剥離用ボルト2を頭部2aがナット11の上面に当接するまで螺入し、剥離用ボルト2の雄螺子部2bの先端をナット11の下側から突出させる。次に剥離用ボルト2の雄螺子部2bの先端に長ナット3を上端がナット11の下端に当接するまで螺合する。この際、剥離用ボルト2の雄螺子部2bは、長ナット3の雌螺子孔3aに上側から途中まで羅入する。続けて、予め定着板41が溶接された寸切ボルト4を長ナット3の雌螺子孔3aに下側から螺入する。
【0027】
(型枠組立工程S12)
型枠組立工程S12は、模擬基礎コンクリート20の打設に用いる型枠8を組み立てる工程である。型枠8は、テンプレート組立工程S11と並行又は前後して組み立てる。型枠8は、それぞれコンクリートパネルを角材で補強した四方の側壁81,…と、底壁82とを備えている。型枠8が底壁82を備えることで、模擬基礎コンクリート20は、現場のスラブ面等から独立して形成される。配筋21は、多数本のコ字状の主筋21a,…を縦横に並べて格子状に組み、その周縁を上下複数本の外周筋21b,…で補強するようにしている。配筋21は、型枠8の底壁82に載置されているのみで、底壁82には固定されていない。
【0028】
(テンプレート載置工程S13)
工程S11、S12でテンプレート10と型枠8の組み立てが終わったら、型枠8内にテンプレート10を設置する。テンプレート10は、図1図2に示すように、型枠8内の配筋21の間に寸切ボルト4を通し、寸切ボルト4の下端を型枠8の底壁82に当接させるようにして設置し、テンプレート本体1のレベルを調節する。寸切ボルト4の一部(図2の例では4つ)には、寸切ボルト4の長ナット3からの突出長さを調節するために長ナット3を回動するレベル調節用ナット42が溶接されており、これによりテンプレート本体1のレベルを調節する。
【0029】
(コンクリート打設工程S14)
テンプレート載置工程S13が完了したら、テンプレート本体1の中央の円形孔12から生コンクリートを流し込んで、型枠8内に模擬基礎コンクリート20を打設する。テンプレート本体1の上面1aと模擬基礎コンクリート20の上面1aとが面一になるように模擬基礎コンクリート20を打設する。
【0030】
(シャフト挿入工程S15)
模擬基礎コンクリート20が固化したら、図3(b)に示すように、剥離用ボルト2をナット11、及び長ナット3から取り外し、図3(c)に示すように、ナット11の上側から、ナット11の雌螺子孔11a、長ナット3の雌螺子孔3aにシャフト5を挿入する。これで、試験準備工程S1が完了する。
【0031】
(引き剥がし工程S2)
試験準備工程S1が完了したら、引き剥がし工程S2を実施する。図4(a)に示すように、剥離用ボルト2をナット11に上方から螺入して、先端をシャフト5に衝突させる。この状態で、図4(b)に示すように、さらに剥離用ボルト2をテンプレート本体1に対し相対的に下方へ螺進させると、剥離用ボルト2の先端がシャフト5により下降を拘束されているため、剥離用ボルト2が下降する代わりにテンプレート本体1が持ち上がる。而して、図4(c)に示すように、模擬基礎コンクリート20からテンプレート本体1が引き剥がされる。
【0032】
しかるのち、コンクリートが剥がれた面積を測定し、コンクリートが剥がれた面積のテンプレート本体1の下面1bの面積に対する割合を算出して、テンプレート本体1と模擬基礎コンクリート20の密着度を評価する。密着度の評価は、模擬基礎コンクリート20の打設後、一定時間ごとに複数回のテンプレート引き剥がし試験を行って得られた結果から行う。
【0033】
(第2実施形態)
以上、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば、図5のテンプレート引き剥がし試験体200では、ナット11、剥離用ボルト2、及びシャフト5が第1実施形態と共通する一方で、シャフト5は、長ナット203の下端部に設けた中実部203bにより下降が拘束されている点で第1実施形態とは異なる。このように、シャフト5の下降を拘束するのは、寸切ボルト4に限られない。尚、符号241は、中実部203bの外周から円環状に突出する定着板である。
【0034】
(第3実施形態)
また、図6のテンプレート引き剥がし試験体300では、第1実施形態のテンプレート引き剥がし試験体100とナット11、長ナット3、寸切ボルト4が共通する一方で、剥離用ボルト702の先端に雄螺子のない丸棒状部分702aを設けて、これを寸切ボルト4の上端に当接させることにより剥離用ボルト702の下降を拘束している。この場合、寸切ボルト4が下降拘束部材に相当する。
なお、第2、第3実施形態において、第1実施形態と共通する部材は、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
その他、試験準備工程において、長ナットや寸切ボルトを予め型枠底壁に立設しておき、これにテンプレート本体を載置するようにしてもよい。シャフトは上下に積み重ねるようにして複数本を用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
100,200,300 テンプレート引き剥がし用試験体
10 テンプレート
11 ナット
20 模擬基礎コンクリート
2,702 剥離用ボルト
5 シャフト(下降拘束部材)
3,203 長ナット
3a 雌螺子孔
5 寸切ボルト
【要約】      (修正有)
【課題】テンプレート引き剥がし試験で、模擬基礎コンクリートがテンプレートと共に持ち上がったり、プレキャスト製のテンプレートが割れたりしないようにする。
【解決手段】本発明のテンプレート引き剥がし試験方法は、テンプレート10を模擬基礎コンクリート20内に埋設した状態で模擬基礎コンクリートを硬化させる試験準備工程と、テンプレート10を厚み方向に貫通するナット11に上側から剥離用ボルトを螺通し、剥離用ボルト2の下端を、模擬基礎コンクリート20内に下降不能に設けられた下降拘束部材5に当接させた状態で、剥離用ボルト2をテンプレート10に対し相対的に下方に螺進させることにより、テンプレート10を持ち上げて、テンプレート10を模擬基礎コンクリート20から引き剥がす、引き剥がし工程を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7