(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】ポリカーボネートおよび樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08G 64/02 20060101AFI20250421BHJP
【FI】
C08G64/02
(21)【出願番号】P 2021098335
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322004083
【氏名又は名称】株式会社ENEOSマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋
(72)【発明者】
【氏名】曾禰 央司
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-064196(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080205(WO,A1)
【文献】特開2018-027908(JP,A)
【文献】米国特許第3517071(US,A)
【文献】特開2002-322267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64/00-64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中、R
1~R
13は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、
aは、0~10の整数であり、
bは、0~10の整数である]
で表される構成単位を有する、ポリカーボネート。
【請求項2】
上記式(1)中、R
1~R
13は全て水素である、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項3】
上記式(1)中、aは0~3の整数であり、bは0~3の整数である、請求項1または2に記載のポリカーボネート。
【請求項4】
下記式(2):
【化2】
[式中、R
21~R
28は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化3】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される構成単位をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項5】
ジオールと、カルボニル化合物との反応生成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項6】
前記ジオールが、下記式(3):
【化4】
[式中、R
1~R
13はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、
aは、0~10の整数であり、
bは、0~10の整数である]
で表される化合物を含む、請求項5に記載のポリカーボネート。
【請求項7】
前記ジオールが、上記式(3)で表されるもの以外の他のジオールを含む、請求項5または6に記載のポリカーボネート。
【請求項8】
前記他のジオールが、下記式(4):
【化5】
[式中、R
21~R
28はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化6】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される化合物を含む、請求項7に記載のポリカーボネート。
【請求項9】
前記カルボニル化合物が、下記式(5):
【化7】
[式中、R
31およびR
32は、それぞれ独立して、塩素、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を示す]
で表される化合物を含む、請求項5~8に記載のポリカーボネート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリカーボネートを含む、樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートに関する。また、本発明は、該ポリカーボネートを含む樹脂成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルやポリカーボネート等のプラスチック材料は、耐熱性、透明性、および成形性等の様々な特性に優れることから、自動車部品、電子部品、光学部品、および日用品等の様々な分野の成形体に用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、透明性、低吸水性、低光弾性定数、バランスのよい屈折率と分散値を有する光学材料として、トリシクロデカンジメタノールとビスフェノールAとの芳香族-脂肪族ポリカーボネート共重合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において提案されているポリカーボネートの耐熱性には改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、耐熱性に優れたポリカーボネートを提供することである。また、本発明の目的は、このようなポリカーボネートを含む樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の脂環式オレフィン由来の構成単位を有するポリカーボネートを用いることにより、耐熱性に優れたポリカーボネートが得られることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
本発明は以下の発明を包含する。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式中、R
1~R
13は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、
aは、0~10の整数であり、
bは、0~10の整数である]
で表される構成単位を有する、ポリカーボネート。
[2] 上記式(1)中、R
1~R
13は全て水素である、[1]に記載のポリカーボネート。
[3] 上記式(1)中、aは0~3の整数であり、bは0~3の整数である、[1]または[2]に記載のポリカーボネート。
[4] 下記式(2):
【化2】
[式中、R
21~R
28は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化3】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される構成単位をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート。
[5] ジオールと、カルボニル化合物との反応生成物である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート。
[6] 前記ジオールが、下記式(3):
【化4】
[式中、R
1~R
13はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、
aは、0~10の整数であり、
bは、0~10の整数である]
で表される化合物を含む、[5]に記載のポリカーボネート。
[7] 前記ジオールが、上記式(3)で表されるもの以外の他のジオールを含む、[5]または[6]に記載のポリカーボネート。
[8] 前記他のジオールが、下記式(4):
【化5】
[式中、R
21~R
28はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化6】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される化合物を含む、[7]に記載のポリカーボネート。
[9] 前記カルボニル化合物が、下記式(5):
【化7】
[式中、R
31およびR
32は、それぞれ独立して、塩素、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を示す]
で表される、[5]~[8]のいずれかに記載のポリカーボネート。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のポリカーボネートを含む、樹脂成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性に優れたポリカーボネートを提供することができる。さらに、本発明によるポリカーボネートは、靭性、曲げ強度、および曲げ弾性率等の機械物性に優れたものである。特に、本発明によれば、耐熱性および機械物性のバランスに優れたポリカーボネートを提供することができる。また、本発明によれば、このようなポリカーボネートを含む樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリカーボネート]
本発明のポリカーボネートは、下記式(1):
【化8】
[式中、R
1~R
13はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、
aは、0~10の整数であり、
bは、0~10の整数である]
で表される構成単位を有するものである。
【0011】
上記式(1)中、R1~R13は、それぞれ独立して、水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群より選択される。これらの中でも、水素であることが特に好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。また、アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。特に好ましくはR1~R13は全て水素である。
【0012】
上記式(1)中、aは、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは0~3の整数であり、さらに好ましくは1または2であり、さらにより好ましくは1である。
また、bは、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは0~3の整数であり、さらに好ましくは1または2であり、さらにより好ましくは1である。
【0013】
本発明のポリカーボネートは、上記式(1)で表される構成単位に加えて、下記式(2):
【化9】
[式中、R
21~R
28は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化10】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される構成単位を有してもよい。
【0014】
上記式(2)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、およびアリールオキシ基からなる群より選択される。アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。また、アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。シクロアルキル基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。アリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。シクロアルコキシル基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。アリールオキシ基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。
【0015】
また、R29およびR30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R29およびR30とが結合して環を形成していてもよい。アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。また、アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。
【0016】
本発明のポリカーボネート中の上記式(1)で表される構成単位の含有量は、全構成単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下であり、100モル%未満であってもよく、100モル%であってもよい。
本発明のポリカーボネート中の上記式(2)で表される構成単位の含有量は、全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%以下であり、また、好ましくは0モル%以上であり、0モル%超であってもよく、0モル%であってもよい。
【0017】
[ポリカーボネートの製造方法]
本発明のポリカーボネートは、ジオールとカルボニル化合物の重合反応により得ることができる。以下、ポリカーボネートの原料および重合反応の好ましい態様について詳述する。
【0018】
[ジオール]
本発明のポリカーボネートの原料であるジオールは、下記式(3):
【化11】
で表される化合物を含む。
【0019】
上記式(3)中のR1~R13、a、bは、いずれも上記式(1)で定義した通りである。同様に、R1~R13、a、bの好ましい態様も、上記式(1)で説明した通りである。
特に好ましい態様としては、R1~R13がいずれも水素であり、aが1、bが1の化合物である。
【0020】
上記式(3)で表されるジオールを原料として用いたポリカーボネートは、従来公知のトリシクロデカンジメタノールを原料として用いたポリカーボネートに比べて耐熱性を向上させることができる。さらに、上記式(3)で表されるジオールを原料として用いたポリカーボネートは、従来公知のジシクロペンタジエンを原料として用いたポリカーボネートに比べて、靭性、曲げ強度、および曲げ弾性率等の機械物性に優れたものとなる。その理由は、ポリカーボネート中に上記式(3)で表されるジオール由来の環状骨格構造を有する構成単位がジシクロペンタジエンと比較して多く存在するためである。
【0021】
また、上記式(3)で表されるジオールを原料として用いたポリカーボネートは、下記式(6)で表されるジオールを原料として用いたポリカーボネートに比べて、靭性、曲げ強度、および曲げ弾性率等の機械物性に優れており、耐熱性と機械物性のバランスが良好である。
【化12】
[式中、R
2~R
4およびR
6~R
13、a、bは、いずれも上記式(3)で定義した通りである。]
【0022】
上記式(3)で表されるジオールの製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(7)で表される脂環式オレフィンのヒドロホルミル化反応によってアルデヒドを得る工程と、続いて前記アルデヒドの還元反応によってジオールを得る工程とを含むものである。なお、下記式(7)中のR
1~R
13は、いずれも上記式(1)で定義した通りである。同様に、R
1~R
13の好ましい態様も、上記式(1)で説明した通りである。
【化13】
【0023】
(ヒドロホルミル化反応)
上記式(7)で表される脂環式オレフィンのヒドロホルミル化反応により、2つの炭素二重結合にそれぞれホルミル基(-CH=O)を導入することで、アルデヒドを得ることができる。ヒドロホルミル化反応としては、特に限定されず、例えば、内部オレフィンに対し、8族、9族、10族金属化合物を有機リン化合物などの配位子で修飾してなる8族、9族、10族金属錯体からなる触媒の存在下に水素および一酸化炭素と反応させてアルデヒドに変換する方法が挙げられる。
【0024】
ヒドロホルミル化反応に用いられる8族、9族、10族金属化合物としては、内部オレフィンのヒドロホルミル化反応を促進させる触媒能を当初から有するか、またはヒドロホルミル化反応条件下でそのような触媒能を獲得する化合物であり、従来からヒドロホルミル化反応において触媒として使用されているロジウム化合物、コバルト化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物などが挙げられる。これら化合物の中では、ヒドロホルミル化反応の反応条件が温和である観点から、コバルト化合物やロジウム化合物を使用するのが好ましい。
【0025】
コバルト化合物としては、例えば、Co2(CO)8があり、ロジウム化合物としては、例えば、RhO、Rh2O、Rh2O3、RhO2などの酸化ロジウム;硝酸ロジウム、硫酸ロジウム、塩化ロジウム、ヨウ化ロジウム、酢酸ロジウムなどのロジウム塩;Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、RhH(CO)(PPh3)3、RhCl(CO)(PPh3)2、RhCl(PPh3)3、RhBr(CO)(PPh3)2、RhCl(CO)(AsPPh3)2、Rh(acac)(CO)2(ここで、acacはアセチルアセトナト配位子を示す。以下同様)などのロジウム錯化合物などが挙げられる。
【0026】
ヒドロホルミル化反応に用いられる有機リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(パラ-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(パラ-N,N-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、トリス(パラ-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(パラ-クロロフェニル)ホスフィン、トリ-オルト-トルイルホスフィン、トリ-メタ-トルイルホスフィン、トリ-パラ-トルイルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、2-フリルジフェニルホスフィン、2-ピリジルジフェニルホスフィン、4-ピリジルジフェニルホスフィン、メタ-ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸またはその金属塩、パラ-ジフェニルホスフィノ安息香酸またはその金属塩、パラ-ジフェニルホスフィノフェニルホスホン酸またはその金属塩などが挙げられ、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン等が好ましい。これらの有機リン化合物は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
有機リン化合物の使用量は、良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、8族、9族、10族金属原子換算で8族、9族、10族金属化合物1モルに対して、リン原子換算で1~10000モルの範囲であるのが好ましく、1~1000モルの範囲であるのがより好ましく、1.5~100モルの範囲がさらに好ましい。
【0028】
8族、9族、10族金属錯体の調製方法は特に制限はないが、例えばヒドロホルミル化反応に影響を及ぼさない溶媒を用いて別途調製された、8族、9族、10族金属化合物溶液および有機リン化合物溶液をヒドロホルミル化反応系に別個に導入し、その系中で両者を反応させて錯体化することにより調製することができる。また、上記の8族、9族、10族金属化合物溶液に有機リン化合物を入れ、次いでヒドロホルミル化反応に影響を及ぼさない溶媒を添加して均一な溶液とすることにより調製することもできる。
【0029】
ヒドロホルミル化反応に使用される水素と一酸化炭素との混合ガスのH2/COモル比は、仕込み時のガス組成として、0.1~10の範囲が好ましく、0.5~2の範囲が混合ガス組成の維持が容易である観点からより好ましい。反応圧力は、0.1~10MPaの範囲が好ましく、0.5~8MPaの範囲が反応速度の観点から好ましい。反応温度は、40~150℃の範囲が好ましく、60~140℃の範囲が触媒の失活を抑制する観点などからより好ましい。
【0030】
ヒドロホルミル化反応は、攪拌型反応槽、液循環型反応槽、ガス循環型反応槽、気泡塔型反応槽などを用いて行うことができる。また、反応は、連続方式またはバッチ方式で行うことができる。
【0031】
8族、9族、10族金属錯体の使用量は、反応速度及び触媒コストの観点から、原料1000g当たり、8族、9族、10族金属原子換算で0.1~1000mmolの範囲となるような量を選択するのが好ましく、0.5~100mmolの範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0032】
8族、9族、10族金属錯体を用いて内部オレフィンをヒドロホルミル化する場合には、反応系に溶媒を存在させてもよい。溶媒としては、例えば、トルエン、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのような非プロトン性極性溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどのポリアルキレングリコール類などを挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、トルエン、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒を用いるのが好ましい。これらの溶媒の使用量は、ヒドロホルミル化反応混合液中50容量%以下の範囲となるような量を選択するのが好ましく、20容量%以下の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0033】
ヒドロホルミル化反応における原料の仕込み方法に特に制限はないが、内部オレフィン、別途調製された8族、9族、10族金属錯体溶液および必要に応じて溶媒を仕込み、次いで、水素と一酸化炭素との混合ガスを所定圧力で導入し、所定温度で撹拌して均一系で反応を行うのが好ましい。
【0034】
(還元反応)
上記のヒドロホルミル化反応により得られたアルデヒドの2つのホルミル基(-CH=O)の還元反応によってアルコキシ基に変換することで、ジオールを得ることができる。
【0035】
還元反応は特に限定されないが、水素還元反応を行うことが好ましい。水素還元反応としては、特に限定されず、公知の方法で水素還元を行えばよく、例えば、NaBH4(水素化ホウ素ナトリウム)を加え、還元する方法、金属触媒の存在下、水素ガスにより還元する方法などが挙げられる。
【0036】
NaBH4を加えて水素還元する方法では、NaBH4の添加量は、アルデヒドに対して等モル以上加えるのが好ましく、1~3倍モル添加がより好ましく、1.2~1.5倍モル添加がさらに好ましい。また、反応温度は0~100℃が好ましく、10~50℃がより好ましく、10~30℃がさらに好ましい。
【0037】
金属触媒を用い水素ガスにより還元する方法において、水素還元に用いる金属触媒としては、特に限定されないが、Ru、Pd、Rh、Ptをアルミナ、活性炭、シリカ、ジルコニア、シリカアルミナなどに担持した触媒や、Cu-Cr、Cu-Fe、Cu-ZnなどCu系触媒やRaney Ni、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/シリカアルミナなどNi系触媒などが好ましい。また、金属触媒の添加量はアルデヒドに対し20重量%以下が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。反応温度は使用する触媒により異なるが、300℃以下が好ましく、20~250℃がより好ましく、20~150℃がさらに好ましい。水素ガスの圧力は常圧~30MPaが好ましく、常圧~25MPaがより好ましい。
【0038】
[他のジオール]
本発明のポリカーボネートの原料としては、上記の式(3)で表される化合物以外に、他のジオールを含んでもよい。他のジオールは特に限定されないが、例えば、下記式(4):
【化14】
[式中、R
21~R
28はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシル基、またはアリールオキシ基を表し、
Xは、下記式のいずれかであり、
【化15】
R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、R
29およびR
30とが結合して環を形成していてもよい]
で表される化合物を用いることができる。
【0039】
上記式(4)中のR21~R28、Xは、いずれも上記式(2)で定義した通りである。同様に、R21~R28、Xの好ましい態様も、上記式(2)で説明した通りである。
【0040】
他のジオールとしては、具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
[カルボニル化合物]
本発明のポリカーボネートの原料であるカルボニル化合物は、下記式(5):
【化16】
で表される化合物を含む。
【0042】
上記式(5)中、R31およびR32は、それぞれ独立して、塩素、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を示す。アルキルオキシ基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。また、アルキルオキシ基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、アリールオキシ基の炭素数は、6~32であることが好ましく、6~24であることがより好ましく、6~12であることがさらに好ましい。アルキルオキシ基およびアリールオキシ基の置換基としては、塩素および臭素等のハロゲンが挙げられる。
【0043】
上記式(5)中、R31およびR32が塩素を示すカルボニル化合物としては、ホスゲンが挙げられる。
【0044】
上記式(5)中、R31およびR32がアルキルオキシ基を示すカルボニル化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、プロピルイソプロピルカーボネート、メチルイソブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート、プロピルイソブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネートが挙げられる。上記式(5)中、R31およびR32が置換基としてハロゲンを有するアルキルオキシ基を示すカルボニル化合物としては、トリホスゲン、ブロモホスゲン等が挙げられる。
【0045】
上記式(5)中、R31およびR32の少なくとも1つがアリールオキシ基を示すカルボニル化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、フェニルプロピルカーボネート、フェニルイソプロピルカーボネート、ブチルフェニルカーボネート、イソブチルフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
上記式(5)で表されるカルボニル化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。カルボニル化合物の使用量は、反応性の観点から、上記式(2)で表されるジオールおよび他のジオールの合計使用量1モルに対して、1~5モルが好ましく、1~2.5モルがより好ましく、1~1.2モルがより好ましい。
【0047】
(重合反応)
本発明のポリカーボネートの製造において、ジオールとカルボニル化合物との重合反応は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ポリカーボネートは、カルボニル化合物としてホスゲン等を用いる場合には界面重縮合により合成することができる。また、ポリカーボネートは、ジフェニルカーボネート等を用いる場合にはエステル交換反応により合成することができる。
【0048】
重合反応において触媒は使用してもよいし、また使用しなくてもよい。使用する触媒としては、ポリカーボネートの重合用触媒として従来公知のものを使用することができる。触媒としては、塩基性化合物が用いられる。このような塩基性化合物としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素および含リン化合物等が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0050】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム、フェノールのマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
【0051】
含窒素化合物および含リン化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が挙げられる。
【0052】
触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、原料モノマーの総量100重量部に対して、0.0001~0.1重量部であることが好ましい。
【0053】
重合反応装置は特に限定されるものではないが、一般の高粘度流体の反応に用いられる反応装置が好ましく使用される。これらの反応装置の例としては、例えば、錨型、多段型、螺旋帯型、螺旋軸型等、あるいはこれらを変形した各種形状の攪拌翼をもつ攪拌装置を有する攪拌槽型重合反応装置、又は、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等の、一般に樹脂の混練に使用される混合装置等が挙げられる。
【0054】
[樹脂成形体]
本発明の樹脂成形体は、上記のポリカーボネートを含むものである。本発明の樹脂成形体は、その特性を損なわない範囲において、各種添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、シランカップリング剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料や染料等の着色剤、可塑剤、pH調整剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤等が挙げられる。上記したような添加剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0055】
本発明の樹脂成形体の用途としては、特に限定されず、自動車部品、電子部品、光学部品、および日用品等の様々な物に用いることができる。具体的には、金属、樹脂フィルム、ガラス、紙、木材等の基材上に塗布する塗料、半導体素子や有機薄膜素子(例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子)の表面保護膜、ハードコート剤、防汚膜および反射防止膜等のコーティング剤、接着剤、粘着剤、レンズ、プリズム、フィルター、画像表示材料、レンズアレイ、光半導体素子の封止材やリフレクター材料、半導体素子の封止材、光導波路、導光板、光拡散板、回折素子および光学用接着剤等の各種光学部材、注型材料、層間絶縁体、プリント配向基板用保護絶縁膜および繊維強化複合材料等の材料等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
[アルデヒド(A1)の合成例]
アルゴン気流下、3Lオートクレーブに、1997g(10.72mol)の3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-4,9-メタノシクロペンタ〔b〕ナフタレン(以下、DCPBとも言う。)、1.48g(1.608mmol)のRhH(CO)(PPh
3)
3、および28.12g(0.1072mol)のPPh
3を仕込んだ。この容器内にH
2/COガス(3.5MPa)を導入し、内温120℃へ昇温し、30分反応後に、内温130℃へ昇温し、9時間下記式の反応を行った。H
2/COガスを追加で4.5MPaになるまで導入し、2日間反応を継続した。その後、反応液を48Lのテトラヒドロフラン(THF)で希釈し、7.44kgの飽和NaHCO
3水溶液を加えて、アルゴン雰囲気下50℃で終夜反応を行なった。室温まで冷却した後、分液操作によりTHF層を除去し、得られた水層をクロロホルム8Lで2回洗浄した。得られた水層に15wt%NaOH水溶液(13.34kg)を加えることでpH12とし、得られた懸濁液をクロロホルム4Lで3回抽出した。この有機層をまとめてMgSO
4で乾燥、ろ別、濃縮することで純度98%のアルデヒド(A1)2536gを得た。
【化17】
【0058】
[ジオール(B1)の合成例]
アルゴン気流下、10Lのフラスコに上記得られたアルデヒド(A1)634g(2.57mol)と、5LのMeOHを仕込み、20℃以上にならないようにNaBH
4を少量ずつ添加し、最終的に71.1g(1.879mol)添加し、下記式の反応を行った。添加終了後、室温に昇温した。反応液に0.5Lの水を加え反応を終了し、MeOHを留去した。得られた粗体に5LのAcOEtと5Lの水を加え、有機層を分離した。更に、水層を5LのAcOEtで2回抽出し、先の有機層と混合し、2Lの飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥、ろ別、濃縮することで粗体647gを得た。得られた粗体を0.05mmHgにて蒸留精製し、塔頂温度185~193℃で純度99.9%の480gのジオール(B1)を得た。
【化18】
【0059】
[ジオール(B2)の合成例]
DCPBの代わりにジシクロペンタジエン(DCPD)を用いた以外は、アルデヒド(A1)の合成例と同様にして、アルデヒド(A2)を得た。
続いて、アルデヒド(A1)の代わりにアルデヒド(A2)を用いた以外は、ジオール(B1)の合成例と同様にして、ジオール(B2)を得た。
【0060】
(ポリカーボネートの合成例1)
[実施例1]
上記で得られたDCPB由来のジオール(B1)100.2g(0.40mol)、ジフェニルカーボネート86.5g(0.404mol)と炭酸ナトリウム1.0mg(0.012mmol)を撹拌翼および留出装置を有する500mlのフラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃に加熱し30分間攪拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整し、60℃/hrの速度で200℃まで昇温し、40分間その温度に保持し反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、昇温終了の40分後、225℃を保持しながら、1時間かけて1mmHgまで減圧した。1mmHg到達後、105℃/hrの速度で235℃まで昇温し150分反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、内容物を取り出した。次いでこれを室温まで冷却して粗粉砕機で粉砕後、86.1gのポリカーボネート(D1)を得た。
【0061】
[実施例2]
ジフェニルカーボネートを88.3g(0.412mol)添加した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート(D2)を得た。
【0062】
[比較例1]
ジオール(B1)の代わりに、上記で得られたDCPD由来のジオール(B2)39.3g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート44.1g(0.21mol)を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート(D3)を得た。
【0063】
(ポリカーボネートの熱物性評価1)
上記で得られたポリカーボネート(D1)~(D3)について、下記の方法により、ガラス転移温度(Tg)および熱分解温度(Td)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0064】
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量測定(DSC、株式会社日立ハイテクサイエンス製、型番:X-DSC-7000)を用いてガラス転移温度(Tg)を測定した。まず、昇温速度10℃/分で室温から280℃まで昇温した後、速度10℃/分で30℃まで降温し、さらに10℃/分の速度で280℃まで昇温する時に得られる変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0065】
(熱分解温度(Td))
示差熱熱量同時測定装置(SIIナノテクノロジー製、型番:TG/DTA7200)を用いて室温から500℃まで乾燥空気下で10℃/分で等速昇温し、測定開始時から比べてポリカーボネートの重量が1%減少した際の温度(1%Td)を測定した。
【0066】
【0067】
実施例1、2および比較例1の結果から、DCPB由来のジオールを原料として得られたポリカーボネートは、DCPD由来のジオールから得られたポリカーボネートに比べて、耐熱性に優れるものであった。