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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】密閉電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20250421BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20250421BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20250421BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20250421BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20250421BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/152
H01M50/342 101
H01M50/531
H01M50/548 201
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021571153
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2021000178
(87)【国際公開番号】W WO2021145247
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020005611
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政幹
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102935(JP,A)
【文献】特開平08-115715(JP,A)
【文献】中国実用新案第208835104(CN,U)
【文献】特開2009-129553(JP,A)
【文献】特開平10-270003(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146078(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143287(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/157748(WO,A1)
【文献】特開2007-018962(JP,A)
【文献】特表2012-506107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/30-50/392
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極タブが接続された電極体と、前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口体とを備えた密閉電池であって、
前記封口体は、ラプチャー板を含み、
前記ラプチャー板は、曲線状の第1薄肉部と、前記第1薄肉部の両端に接続する曲線状の第2薄肉部とから形成された環状の薄肉部を有し、かつ前記第1薄肉部と前記第1薄肉部の両端を結ぶ直線部に囲まれた第1弁部を有し、
前記第1薄肉部の残肉厚みは、前記第2薄肉部の残肉厚みより小さく、
前記第1弁部は、前記電極体に向けて突出する凸部を有し、前記直線部を回転軸として外側に開き、
前記電極タブは、前記凸部の側面に接合され、
前記電極タブと前記凸部の接合面の少なくとも一部は、前記直線部に交差する平面に配置されている、密閉電池。
【請求項2】
電極タブが接続された電極体と、前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口体とを備えた密閉電池であって、
前記封口体は、ラプチャー板と、前記ラプチャー板と前記電極タブの間に介在する連結部材とを含み、
前記ラプチャー板は、曲線状の第1薄肉部と、前記第1薄肉部の両端に接続する曲線状の第2薄肉部とから形成された環状の薄肉部を有し、かつ前記第1薄肉部と前記第1薄肉部の両端を結ぶ直線部に囲まれた第1弁部を有し、
前記第1薄肉部の残肉厚みは、前記第2薄肉部の残肉厚みより小さく、
前記第1弁部は、前記電極体に向けて突出する凸部を有し、前記直線部を回転軸として外側に開き、
前記連結部材は、前記凸部の側面に接合され、
前記電極タブは、前記連結部材の側面に接合され、
前記凸部と前記連結部材の第1接合面、及び前記電極タブと前記連結部材の第2接合面の少なくとも一方の少なくとも一部は、前記直線部に交差する平面に配置されている、密閉電池。
【請求項3】
前記接合面は、前記直線に直交する平面に配置されている、請求項1に記載の密閉電池。
【請求項4】
前記第1接合面及び第2接合面の少なくとも一方は、前記直線に直交する平面に配置されている、請求項2に記載の密閉電池。
【請求項5】
前記第1薄肉部は、前記ラプチャー板の外周部に向けて凸の曲線状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の密閉電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状の外装缶、及び外装缶の開口部を塞ぐ封口体を含む電池ケースを備えた密閉電池が広く知られている。例えば、特許文献1には、電池ケースの内側に凸の下凸形状を有する金属板で構成された封口体を備える円筒形の密閉電池が開示されている。特許文献1には、電池の異常発生時に封口体が反転して封口体と集電部の溶接部が破断することで、電流が遮断され安全性が確保される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-269904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高エネルギー密度の密閉電池が開発される中で異常発生時の安全性はさらに重視され、異常発生時に電池の電流経路を確実に遮断できる電池設計が求められている。しかし、その一方でより安価な電池への要求は大きく、構造の簡素化、部品点数の低減等による低コスト化が必須となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である密閉電池は、電極タブが接続された電極体と、前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口体とを備えた密閉電池であって、前記封口体は、ラプチャー板を含み、前記ラプチャー板は、曲線状の第1薄肉部と前記第1薄肉部の両端を結ぶ直線部に囲まれた第1弁部を有し、前記第1弁部は、前記電極体に向けて突出する凸部を有し、前記電極タブは、前記凸部の側面に接合され、前記電極タブと前記凸部の接合面の少なくとも一部は、前記直線部に交差する平面に配置されている。
【0006】
本開示の他の一態様である密閉電池は、電極タブが接続された電極体と、前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口体とを備えた密閉電池であって、前記封口体は、ラプチャー板と、前記ラプチャー板と前記電極タブの間に介在する連結部材と、を含み、前記ラプチャー板は、曲線状の第1薄肉部と前記第1薄肉部の両端を結ぶ直線部に囲まれた第1弁部を有し、前記第1弁部は、前記電極体に向けて突出する凸部を有し、前記連結部材は、前記凸部の側面に接合され、前記電極タブは、前記連結部材の側面に接合され、前記凸部と前記連結部材の第1接合面、及び前記電極タブと前記連結部材の第2接合面の少なくとも一方の少なくとも一部は、前記直線部に交差する平面に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡素化された安価な構造でありながら、電池の異常発生時に電流経路がより確実に遮断される密閉電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態の一例である密閉電池の断面図である。
図2図2は実施形態の一例である封口体を内面側から見た斜視図である。
図3図3は実施形態の一例である封口体の底面図である。
図4図4図3中のAA線断面図である。
図5図5は実施形態の一例である封口体の弁部が開いた状態を示す図である。
図6A図6Aは封口体の変形例を示す断面図である。
図6B図6Bは封口体の変形例を示す断面図である。
図7A図7Aは実施形態の一例である密閉電池の製造方法を説明するための図である。
図7B図7Bは実施形態の一例である密閉電池の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、本開示に係る密閉電池の実施形態の一例として、巻回型の電極体11が有底円筒状の外装缶12に収容された円筒形電池10を例示するが、電池は有底角筒状の外装缶を備えた角形電池であってもよい。また、電極体は、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型であってもよい。本明細書では、説明の便宜上、外装缶12と封口体13を含む電池ケースの封口体13側を「上」、外装缶12の底面側を「下」として説明する。
【0010】
図1は、実施形態の一例である円筒形電池10の断面図である。図1に例示するように、円筒形電池10は、電極タブが接続された電極体11と、電極体11を収容する有底筒状の外装缶12と、外装缶12の開口部を塞ぐ封口体13とを備えた円筒形の密閉電池である。本実施形態では、外装缶12の内側に突出する溝入部16が外装缶12の上端部に形成されており、外装缶12の上端部に絶縁性のガスケット14を介して封口体13がかしめ固定されている。外装缶12及び封口体13は、いずれも金属製であって、ガスケット14により絶縁されている。
【0011】
電極体11は、正極と負極がセパレータを介して渦巻状に巻回された巻回構造を有する。正極、負極、及びセパレータは、いずれも帯状の長尺体である。正極には正極タブ15が、負極には負極タブ(図示せず)がそれぞれ溶接等により接続される。本実施形態では、正極の長手方向中央部に接続された帯状の正極タブ15が、電極体11の上端から延出して封口体13に接続されている。負極タブは、例えば、負極の巻始め側端部及び巻終り側端部の少なくとも一方に接続され、外装缶12の底部内面に接続される。この場合、封口体13が正極外部端子となり、外装缶12が負極外部端子となる。なお、負極タブを封口体13に接続し、正極タブ15を外装缶12に接続することも可能である。
【0012】
正極は、正極芯体と、正極芯体の表面に形成された正極合剤層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、アセチレンブラック等の導電剤、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着剤を含み、正極タブ15が接続される部分を除く正極芯体の両面に形成されることが好ましい。正極活物質には、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。
【0013】
負極は、負極芯体と、負極芯体の表面に形成された負極合剤層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金など負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)等の結着剤を含み、負極タブが接続される部分を除く負極芯体の両面に形成されることが好ましい。負極活物質には、例えば黒鉛等の炭素系活物質、Siを含有するSi系活物質などが用いられる。なお、負極に負極タブを接続せず、負極芯体の表面を外装缶12の内周面に接触させる集電構造としてもよい。
【0014】
外装缶12の底部内面と電極体11の間には、絶縁板17が配置され、電極体11の正極と外装缶12の電気的接触が防止される。負極タブは、例えば、外装缶12と絶縁板17の隙間を通って外装缶12の底部側に延びる。また、封口体13と電極体11の間には、絶縁性のスペーサ18が配置されている。スペーサ18は、電極体11の負極と封口体13の電気的接触を防止すると共に、電極体11と封口体13の間隔を調整する。詳しくは後述するが、異常発生時に電流経路が切断され易くなるように正極タブ15が撓みなくピンと張った状態であることが好ましい。正極タブ15は、スペーサ18の貫通孔18aを通って封口体13側に延びる。
【0015】
外装缶12には、電極体11と電解質が収容されている。電解質は、水系電解質であってもよいが、好ましくは非水電解質である。非水電解質は、例えば非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等が用いられる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF等のリチウム塩が使用される。
【0016】
以下、図2図4を参照しながら、封口体13の構成、及び封口体13と正極タブ15の接続構造について詳説する。図2は封口体13を内面側から見た斜視図、図3は封口体13の底面図、図4図3中のAA線断面図である。
【0017】
図2図4に例示するように、封口体13は、弁部24を含むラプチャー板20と、弁部24の内面から電極体11側に突出した凸部22と、凸部22に接合された連結部材25とを備える。ラプチャー板20(弁部24)の内面とは、電極体11側を向いた面を意味する。ラプチャー板20は、電池の内圧が所定の圧力に達したときに破断する薄肉部21が形成された1枚の金属板で構成される。好適な金属板の一例は、アルミニウム板、又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金板である。
【0018】
ラプチャー板20は、外装缶12の開口部を塞ぐことが可能な形状、寸法を有する。ラプチャー板20は、例えば、底面視真円形状の円板である。本実施形態では、ラプチャー板20の内面に環状の溝が形成され、当該溝が形成された部分が他の部分よりも厚みが薄く電池の内圧上昇時に優先的に破断する薄肉部21となっている。薄肉部21は、ラプチャー板20の直径よりも小さな直径で、ラプチャー板20の外周円と同心円状(底面視真円形状)に形成されている。薄肉部21は必ずしも真円状に形成されている必要はないが、環状に形成されていることが好ましい。
【0019】
ラプチャー板20の厚みは、特に限定されないが、一例としては薄肉部21及び凸部22以外の部分で0.3mm~2mmである。薄肉部21の厚みは、例えば、弁部24の厚みの10%~50%である。薄肉部21は、全長にわたって同じ厚みで形成されていてもよいが、本実施形態では、それぞれ円弧状に形成された第1薄肉部21Aと第2薄肉部21Bがつながって1つの円環状に形成されている。第1薄肉部21A及び第2薄肉部21Bはいずれも断面略V字形状の溝により形成されているが、第1薄肉部21Aの残肉厚みは第2薄肉部21Bの残肉厚みよりも小さい。
【0020】
ラプチャー板20の薄肉部21で囲まれた部分が、薄肉部21の破断により電池の外側に開く弁部24である。弁部24は、電池の異常により電池の内圧が所定の作動圧(薄肉部21が破断する圧力)に達したときに開き、電池内部のガスを排出することで外装缶12の破裂を防止する。本実施形態では、ラプチャー板20の周縁部を除く部分に底面視真円形状の弁部24が形成されている。そして、弁部24は、2つの弁部(第1弁部24A及び第2弁部24B)を含む。薄肉部21は、全範囲に亘って連続する曲線状であることが好ましいが、弁部24の作動を阻害しない範囲で薄肉部21の一部が非連続であってもよい。なお、図3に示す第1弁部24Aと第2弁部24Bは底面視で同じ面積を有するが、異なる面積を有していてもよい。
【0021】
第1弁部24Aは、第1薄肉部21Aとその両端を結ぶ直線αとで囲まれた部分であって、底面視半円状に形成されている。同様に、第2弁部24Bは、第2薄肉部21Bの円弧とその両端を結ぶ直線αとで囲まれた部分であって、底面視半円状に形成されている。第1薄肉部21A及び第2薄肉部21Bは、底面視曲線状に形成されていればよい。第1薄肉部21A及び第2薄肉部21Bは、ラプチャー板20の外周部に向けて凸の曲線状であることが好ましく、円弧状であることがより好ましい。
【0022】
第1薄肉部21Aの残肉厚みは第2薄肉部21Bの残肉厚みより小さいため、電池の内圧が所定の圧力に達したときに、第1弁部24Aは第2弁部24Bよりも優先的に破断する。このとき第1弁部24Aは、図5に示すように、直線αを回転軸として外側に開く。詳しくは後述するように、第1弁部24Aが開くことで、ガスが排出されると共に、正極外部端子としても機能する封口体13と正極タブ15との接続が切断され、電池の電流経路が遮断される。なお、第1弁部24Aの回転を容易にするため、直線αに沿って折り目線や浅い溝が形成されていてもよい。弁部24は、第1弁部24Aのみで構成することもできるが、第1弁部24Aに第2弁部24Bを組み合わせることで弁部24のガス排出能力を高めることができる。そのため、弁部24は第1弁部24Aと共に、第2弁部24Bを有することが好ましい。
【0023】
凸部22は、上記のように、弁部24の内面に形成された突起であって、弁部24の周縁部に沿って円環状に形成されている。凸部22は、連結部材25が固定される部分であって、連結部材25が溶接等により固定可能で、かつ電極体11と干渉しない突出長さで形成される。凸部22は、例えば、上下方向に沿った側面を有し、当該側面に連結部材25との第1接合面26が形成されている。
【0024】
本明細書において、凸部22及び連結部材25の側面とは、ラプチャー板20の面方向に対して交差する方向に向いた面を意味し、例えば、ラプチャー板20の面方向に垂直な上下方向に対して45°以下の角度で傾斜した面である。
【0025】
凸部22には、第1弁部24Aの回転軸であり第1弁部24Aと第2弁部24Bを区切る直線αと重なる位置に、ラプチャー板20の径方向に並ぶ2つのスリット23が形成されている。この2つのスリット23は、凸部22を第1弁部24Aに形成される第1の部分と、第2弁部24Bに形成される第2の部分とに分離する。これにより、第1弁部24Aは、直線αを回転軸として回転するように開き易くなる。
【0026】
連結部材25は、正極タブ15と弁部24を電気的に接続する導電性部材であって、一端部の側面が凸部22の側面に接合され、他端部の側面が正極タブ15に接合されている。そして、凸部22と連結部材25との第1接合面26、及び正極タブ15と連結部材25との第2接合面27の少なくとも一方の少なくとも一部は、直線αに交差する平面に配置されている。これにより、第1薄肉部21Aが直線αを回転軸として回転するように開くときに、第1接合面26及び第2接合面27の少なくとも一方に回転せん断力が作用する。第1接合面26及び第2接合面27は、例えば、レーザー溶接により形成される。
【0027】
本実施形態では、連結部材25の一端部が第1弁部24Aに形成された凸部22の第1の部分において、回転軸となる直線αから最も離れた位置に接合されている。連結部材25の一端部は、円環状に形成された凸部22の側面に沿うように湾曲した形状を有し、第1接合面26は凸部22の側面に沿って形成されている。凸部22の周方向における第1接合面26の中央部は、第1弁部24Aの回転軸(直線α)と交差しない平面に配置されている。このため、第1接合面26の中央部には、第1弁部24Aが開くときに上下方向にせん断力が作用するものの、回転せん断力は作用しない。
【0028】
一方、凸部22の周方向における第1接合面26の両端部は、第1弁部24Aの回転軸と交差する平面に配置されている。このため、第1接合面26の当該両端部には、第1弁部24Aが開くときに、当該接合面に回転せん断力が作用する。即ち、第1接合面26の少なくとも一部が第1弁部24Aの回転軸に交差する平面に配置されていれば、第1弁部24Aが開くときに回転せん断力が作用する。
【0029】
連結部材25は、底面視において、凸部22の側面に接合される一端部に向かって次第に広がった形状を有する。連結部材25の他端部は、一端部よりも細く、一端部の側面が凸部22の側面に沿って接合された状態で、ラプチャー板20(弁部24)の径方向に沿って延びる。連結部材25は、第1弁部24Aの第1薄肉部21Aの近傍から第1弁部24Aの回転軸の近傍まで延び、第1接合面26のみで封口体13に接合されている。
【0030】
連結部材25の他端部の側面には、正極タブ15が接合されている。本実施形態では、正極タブ15と連結部材25の第2接合面27の全体が、第1弁部24Aの回転軸と略直交する平面に配置されている。このため、第2接合面27には、第1弁部24Aが開くときに、大きな回転せん断力が作用する。第1接合面26と同様に、第2接合面27の少なくとも一部が第1弁部24Aの回転軸に交差する平面に配置されていればよい。しかし、第2接合面27の全体が、第1弁部24Aの回転軸に交差する平面に配置されていることが好ましく、本実施形態のように第1弁部24Aの回転軸と直交する平面に配置されていることがより好ましい。
【0031】
また、第1接合面26は第1薄肉部21Aの近傍に形成されるが、第2接合面27は、第1薄肉部21Aよりも第1弁部24Aの回転軸の近傍に形成されている。第2接合面27は、例えば、弁部24の径方向に沿って一定の幅で、第1弁部24Aの中央部から第1弁部24Aの回転軸の近傍にわたって形成される(図2参照)。連結部材25は、第2弁部24Bとの干渉を防止するために、他端部が第1弁部24Aの回転軸を超えない範囲で回転軸に近接する長さを有する。
【0032】
図5に示すように、第1弁部24Aが開くとき、凸部22と連結部材25との第1接合面26の一部にも回転せん断力が作用するが、第1弁部24Aの回転軸に直交する平面に配置された第2接合面27には、全体に回転せん断力が作用する。さらに、第1弁部24Aが直線αを回転軸として外側に開くときに、図4に示す断面視において、回転軸が支点、第1薄肉部21Aが力点、第2接合面27が作用点となる、第2種のてこが構成され、第2接合面27には大きな力が作用する。したがって、第1接合面26に比べて第2接合面27を容易に破断させることができる。
【0033】
以上のように、上記構成を備えた円筒形電池10によれば、簡素化された安価な構造でありながら、電池の異常発生時に第1弁部24Aの開弁に伴って第2接合面27が容易に外れ、電流経路がより確実に遮断される。例えば、レーザー溶接により、幅約0.5mm、長さ約2.5mmで形成された第2接合面27は、上下方向に対する溶接強度は30N以上であるが、トルク強度は20N・mm程度である。このため、第2接合面27から5mm離れた点に対して当該接合面を回転させる方向の応力が作用すれば、4Nの力で接合面が破断する。なお、従来の一般的な密閉電池では、封口体の底面に面方向に沿って電極タブとの接合面が形成される。当該接合面に垂直方向の引張応力を作用させて接合面を破断させるためには、溶接強度の30Nを超える力が必要となる。
【0034】
図6A及び図6Bは、封口体13の変形例(封口体13X,13Y)を示す断面図である。上述の封口体13には、第1弁部24A及び第2弁部24Bの内面に円環状の凸部22が形成されているが、図6Aに示す封口体13Xには、連結部材25の一端部と同程度の幅を有する底面視円弧状の凸部22Xが形成されている。凸部22Xは、第1弁部24Aのみに形成され、円弧状に形成された第1薄肉部21Aに沿って緩やかに湾曲している。なお、凸部22Xは、第1弁部24Aの回転軸に沿って平板状に形成されてもよい。
【0035】
図6Bに示す封口体13Yは、連結部材を有さず、凸部22Yの側面に正極タブ15が直接接合されている点で、封口体13と異なる。凸部22Yの側面は平坦に形成されるとともに、第1弁部24Aの回転軸に直交する平面に配置されている。これにより、凸部22Yの側面に形成される正極タブ15との接合面27Yには、第1薄肉部21Aが破断して第1弁部24Aが開くときに大きな回転せん断力が作用する。
【0036】
図7A及び図7Bは、円筒形電池10の製造工程を示す図である。図7Aに示すように、円筒形電池10の製造工程には、電極体11に接続された正極タブ15を封口体13に接合する工程が含まれる。正極タブ15は、連結部材25の他端部の側面にレーザー溶接等により接合される。なお、連結部材25は、一端部が封口体13の凸部22の側面にレーザー溶接等により接合される。また、封口体13のラプチャー板20の周縁部には、リング状のガスケット14が装着される。
【0037】
次に、図7Bに示すように、電極体11と封口体13の間にスペーサ18を挿入した状態で、外装缶12の内部に電極体11と電解質を収容し、封口体13で外装缶12の上端の開口部を塞ぐように封口体13を外装缶12の開口部の内側に配置する。この状態で、外装缶12を外側から封口体13の径方向にかしめることで、外装缶12の開口部がガスケット14を介して封口体13で塞がれ、図1に示すような円筒形電池10が得られる。なお、電極体11と外装缶12の底部内面との間には、絶縁板17が配置される。
【0038】
スペーサ18は、上記の通り、電極体11の負極と封口体13の電気的接触を防止すると共に、正極タブ15が撓みなくピンと張るように電極体11と封口体13の間隔を調整する。正極タブ15が撓みのない状態であれば、回転せん断力が撓み部分に吸収されることなく、正極タブ15と連結部材25との第2接合面27に作用し易くなる。
【符号の説明】
【0039】
10 円筒形電池、11 電極体、12 外装缶、13,13X,13Y 封口体、14 ガスケット、15 正極タブ、16 溝入部、17 絶縁板、18 スペーサ、18a 貫通孔、20 ラプチャー板、21 薄肉部、21A 第1薄肉部、21B 第2薄肉部、22,22X,22Y 凸部、23 スリット、24 弁部、24A 第1弁部、24B 第2弁部、25 連結部材、26 第1接合面、27 第2接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B