(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】標的分析に関連する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20250421BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALI20250421BHJP
C12Q 1/6825 20180101ALI20250421BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250421BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250421BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6825 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 D
(21)【出願番号】P 2022506036
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2020044151
(87)【国際公開番号】W WO2021021982
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-24
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グエン フイ クオック
(72)【発明者】
【氏名】チャットラジ シャムタヌ
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ ジョージ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウー チャオ-ティン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/026873(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/161251(WO,A1)
【文献】特表2002-542793(JP,A)
【文献】PLOS Genetics,2018年,14(12): e1007872,pp. 1-35
【文献】Science,2018年,361, eaat5691,pp. 1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析する方法であって、以下のステップ:
a. サンプルを
オリゴヌクレオチドタグと接触させるステップであって、各オリゴヌクレオチドタグが、
i. 分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメイン、および
ii.
カセットを含む少なくとも1つのストリート
を含み、各カセットが、
1. アンカー領域が
両側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域
; ここで、該オリゴヌクレオチドタグのアンカー領域はカセットのセットに対して一定であり、少なくとも1つのリードアウト分子のアンカーハイブリダイゼーション領域と相補的である;
を含み、
ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列がステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、ステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、ステップ;
b. 該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップであって、各リードアウト分子が、
i. ステップ(a)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド
; ここで、該オリゴヌクレオチドはバーコードハイブリダイゼーション領域に隣接しているアンカーハイブリダイゼーション領域を含む; および
ii. 検出分子
を含み、
ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、ステップ;ならびに
c.
オリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序を検出するステップであって、
オリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記バーコード領域が1~10ヌクレオチドを含む
、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリートが少なくとも3つのカセットを含む
、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出分子がフルオロフォアである
、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
検出するステップが、蛍光顕微鏡法により実施される
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出分子が、ビオチン、アミン、金属、アンカリング分子、またはアクリダイトを含む
、請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出するステップが、少なくともシングルセル解像法により実施される
、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、サンプルを少なくとも4つのリードアウト分子と接触させることを含む
、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、サンプルを、少なくとも3つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む
、請求項
1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、サンプルを、少なくとも4つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む
、請求項
1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの標的分子が同時に分析される
、請求項
1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも3つの標的分子が同時に分析される
、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも10の標的分子が同時に分析される
、請求項
1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも20の標的分子が同時に分析される
、請求項
1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
標的分子が核酸
である
、請求項
1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
標的分子がDNAまたはmRNAである
、請求項
1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが、細胞、細胞培養物、または組織サンプルである
、請求項
1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析するためのシステムであって、
a. 少なくとも2つの検出可能な分子を検出できる検出器;
b.
オリゴヌクレオチドタグであって、各オリゴヌクレオチドタグが、
i. 分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメイン、および
ii.
カセットを含むストリート
を含み、各カセットが、
1. アンカー領域が
両側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域
; ここで、該オリゴヌクレオチドタグのアンカー領域は一定であり、リードアウト分子のアンカーハイブリダイゼーション領域と相補的である;
を含み、
ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列が(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、オリゴヌクレオチドタグ;ならびに
c. 少なくとも2つのリードアウト分子であって、各リードアウト分子が、
i. (b)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド
; ここで、該オリゴヌクレオチドはバーコードハイブリダイゼーション領域に隣接しているアンカーハイブリダイゼーション領域を含む; および
ii. 検出分子
を含み、ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、リードアウト分子
を含み、
ここで、サンプルが該
オリゴヌクレオチドタグおよび該少なくとも2つのリードアウト分子と接触され、
該オリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序が検出され;ここで、該
オリゴヌクレオチドタグが該少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月30日に出願された米国仮出願第62/880,216号の35 U.S.C. §119(e)に基づく恩典を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国立衛生研究所によって授与された助成金番号GM123289およびHG008525の下で政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願には、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表が含まれており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2020年7月27日に作成された当該ASCIIコピーは、002806-094580_SL.txtと名付けられ、サイズは1,055バイトである。
【0004】
技術分野
本明細書に記載の技術は、標的分子を分析、検出、および/または可視化するための方法、システム、および組成物に関するものである。
【背景技術】
【0005】
背景
細胞および細胞下レベルでの標的の可視化には、通常、検出分子(例えば、抗体、オリゴ、合成核酸など)に連結されたフルオロフォアが使用される。蛍光顕微鏡法のスペクトル全体の制限のために、同時に可視化できるのは4~5つの標的のみである。しかし、一部のアプリケーションでは、5つを超える標的を同時に可視化する必要があり、例えば、5つより多い構成成分を含む複雑な系、または染色体のような大きな標的分子の場合である。そのため、多くの標的、または1つの標的の多くの領域を同時に検出できる新しい方法が求められている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書に記載の技術は、従来技術で可能であるよりも多くの標的を一度に可視化する能力を提供する、標的分子を分析、検出、および/または可視化するための方法、システム、および組成物に向けられる。一例として、標的生体分子を検出するために蛍光標識を用いる場合、本方法では、4色を用いた検出プローブがグループ内の標的に局在化される;その場合、該プローブは、グループ内のそれぞれ異なる標的で集合し、バーコード化された色の並びを形成する。既存の技術で4色を使用しても、4つの異なる標的しか検出できないだろう。開示された本方法は、2ビットのバーコードのみを使用して、16の標的を同時に検出することができる。
【0007】
本明細書に開示されるように、標的分子の分析は、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を含むOligoCASSEQ技術を用いて実施することが可能である。特定のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のアイデンティティを検出するために、リードアウト分子を非酵素的に使用することができる。
【0008】
一局面では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析する方法が本明細書に記載され、この方法は、(a)サンプルを少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグと接触させるステップであって、各オリゴヌクレオチドタグが、(i)分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメインと、(ii)少なくとも1つのカセットを含む少なくとも1つのストリートとを含み、各カセットが、(1)アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域を含み、ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列がステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、ステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、ステップ;(b)該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップであって、各リードアウト分子が、(i)ステップ(a)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、(ii)検出分子とを含み、ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、ステップ;および(c)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序を検出するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、ステップ、を含む。
【0009】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域は、1~10ヌクレオチドを含む。
【0010】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリートは、少なくとも3つのカセットを含む。
【0011】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域の両側にアンカー領域が隣接している。
【0012】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、全てのオリゴヌクレオチドタグのアンカー領域は一定である。
【0013】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、カセットへのリードアウト分子の特異的ハイブリダイゼーションは、バーコード領域のアイデンティティによって決定される。
【0014】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子は、フルオロフォアである。
【0015】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、蛍光顕微鏡法を用いて実施される。
【0016】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子は、ビオチン、アミン、金属、アンカリング分子、またはアクリダイト(acrydite)を含む。
【0017】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、少なくともシングルセル解像法により実施される。
【0018】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ステップ(b)は、サンプルを少なくとも4つのリードアウト分子と接触させることを含む。
【0019】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ステップ(b)は、サンプルを、少なくとも3つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む。
【0020】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ステップ(b)は、サンプルを、少なくとも4つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む。
【0021】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも2つの標的分子が同時に分析される。
【0022】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも3つの標的分子が同時に分析される。
【0023】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも10の標的分子が同時に分析される。
【0024】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも20の標的分子が同時に分析される。
【0025】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、核酸、ポリペプチド、細胞表面分子、または無機物である。
【0026】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、DNAまたはmRNAである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、細胞、細胞培養物、または組織サンプルである。
【0027】
別の局面では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析するためのシステムが本明細書に記載され、このシステムは、(a)少なくとも2つの検出可能な分子を検出できる検出器;(b)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグであって、各オリゴヌクレオチドタグが、(i)分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメインと、(ii)少なくとも1つのカセットを含むストリートとを含み、各カセットが、(1)アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域を含み、ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列が(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、オリゴヌクレオチドタグ;および(c)少なくとも2つのリードアウト分子であって、各リードアウト分子が、(i)(b)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、(ii)検出分子とを含み、ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、リードアウト分子、を含み、
ここで、サンプルが少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグおよび少なくとも2つのリードアウト分子と接触され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序が検出され;ここで、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1A~
図1Hは、OligoCASSEQを用いた多重ゲノムトレーシングを示す一連の画像および模式図である。
図1Aは、OligoCASSEQ用に改変されたOligopaintを示す模式図である。ゲノム相同領域は、ゲノムDNAとハイブリダイズし、非ゲノム相同領域であるメインストリートとバックストリートによって挟まれている。これらのストリートには、Oligopaintライブラリーの増幅を可能にするユニバーサルプライミング領域が含まれる。また、ストリートには、多重化するために使用されるシーケンシングカセット(例えば、カセット1、カセット2、カセット3、およびカセット4)も含まれる。ここでは4つのカセットが描かれているが、カセットの総数には制限がない。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aからのシーケンシングカセットを示す模式図である。バーコード領域は可変領域(X)を含む。各ビット(X)は、4つのヌクレオチド(例えば、A、C、T、またはG)のうちの1つによってコードされ得る。ここでは5ヌクレオチド(nt)のバーコードが示されるが、バーコードの長さは変化し得る。バーコードの長さを長くすると、多重化が高まる。バーコードは、特定のリードアウトオリゴによる問い合わせを受ける(例えば、
図1Cを参照)。各プローブには、多重化を可能にする異なるバーコードが含まれる。バーコード領域の両側には、全てのプローブ間で一定しているアンカー領域(例えば、ここでは5ntが示されるが、バーコード領域の長さは変化し得る)がある。アンカー領域は安定したハイブリダイゼーションを提供し、かつバーコードの区別を可能にする。
【
図1C】
図1Cは、カセット内の2つの位置に対するリードアウトオリゴの例を示す模式図である。リードアウトオリゴの各プールは、特定のバーコード位置を問い合わせるために使用される。蛍光標識リードアウトオリゴは、特定の位置にあるユニークな塩基(例えば、A、C、G、およびT)と特異的に塩基対合し、非問い合わせ塩基(「N」)ではヌクレオチドが混在する。アンカー(「Anch」)ヌクレオチド配列は、カセット特異的である(例えば、カセット1は特定のアンカーを共有し、カセット2は異なるアンカーを共有する)。
【
図1D】
図1Dは、カセット位置1および2を読み出すためのOligoCASSEQ実験のワークフロー例を示す模式図である。左から右へ、Oligopaintプローブは最初にゲノムDNAにハイブリダイズする。特定のプールのリードアウトオリゴは、カセット1上の配列バーコード位置1(カセット上の「A」)にハイブリダイズする。赤色の「T」リードアウトオリゴは、完全な相補性で該カセットに結合する。ハイブリダイゼーション後、画像を撮影し、リードアウトオリゴを2XSSCT中の60%ホルムアミドで洗い流す。次に、位置2のカセット1オリゴをハイブリダイズさせることにより、カセット1上の位置2を問い合わせることができる。他の位置およびカセットを同じ方法で問い合わせる。
【
図1E】
図1E~1Hは、ヒト2番染色体(Chr.2)に沿った5つの座位のOligoCASSEQの局在を示す一連の画像である。
図1Eは、実証実験に用いたChr.2座位、ヌクレオチドバーコード、およびカラーバーコードを示す模式図である(例えば、
図1F~
図1Hを参照)。
【
図1F】
図1Fは、2つのバーコード位置のOligoCASSEQ問い合わせ(例えば、上段と中段を参照)と、それに続く同じ核内の1番目の位置の再問い合わせ(例えば、下段を参照)の顕微鏡写真を示す画像である。各顕微鏡写真の上の模式図は、異なるバーコード位置での特定の座位のカラーコードを示している。赤とシアンの両方の標識プローブを使用する場合は、顕微鏡のフィルターセットが最適ではないため、赤とシアンの色が重なることに留意されたい。ただし、赤とシアンが重なる場合、シアンの方が赤より明るくなる。顕微鏡写真は、複数のz-スライスから得られた最大強度z-プロジェクションである。細胞はPGP1-F細胞である。
【
図1G】
図1Gは、バーコード識別を示す画像である。少なくとも2つの位置のシーケンシング後、OligoCASSEQ焦点を解読することができる。
【
図1H】
図1Hは、あらゆる焦点のゲノム位置を特定できるため、OligoCASSEQが染色体トレーシングを可能にすることを示す画像である。ラインは、解読された焦点に基づく2次元(2D)トレースである。矢印は染色体の底部(例えば、長腕qのテロメアに最も近い座位)を示す。また、OligoCASSEQは、適合するフルオロフォアを含むリードアウトプローブ(例えば、
図1Cを参照)を使用することにより、超解像顕微鏡法に使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本明細書に記載の技術の態様は、OligoCASSEQを用いて標的分子を分析する方法を含む。本明細書に記載されるように、OligoCASSEQは、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を含む方法、システム、および/または組成物を指す。開示された方法は、少なくとも2つの標的または1つの標的の少なくとも2つの領域を同時に可視化することを可能にする。さらに、バーコード付きカセットを用いることで、開示された方法は、従来のOligopaintで現在検出できるよりも多くの、4つを超える標的を同時に可視化することが可能である。
【0030】
これらの方法は、他の代替法よりも優れている。開示された方法は、代替法では必要とされるリガーゼまたはポリメラーゼなどの酵素を必要としない。また、開示された方法は、代替技術に必要とされるよりも短いオリゴおよび少ないオリゴを必要とする。最後に、開示された方法は、代替法よりも簡便で安価である。
【0031】
したがって、一局面では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析する方法が本明細書に記載され、この方法は、(a)サンプルを少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)と接触させるステップであって、各オリゴヌクレオチドタグが、(i)分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメインと、(ii)少なくとも1つのカセットを含む少なくとも1つのストリートとを含み、各カセットが、(1)アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域を含み、ここで、少なくともストリート内のカセットの空間的順序が異なるという点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、ステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、ステップ;(b)該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップであって、各リードアウト分子が、(i)ステップ(a)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、(ii)検出分子とを含み、ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、ステップ;および(c)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序を検出するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、ステップ、を含む。
【0032】
言い換えれば、OligoCASSEQ法は、サンプルをオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)と接触させるステップ、該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップ、およびバーコード付きカセットの空間的順序を決定するステップを含むことができる。
【0033】
別の局面では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析するためのシステムが本明細書に記載され、このシステムは、(a)少なくとも2つの検出可能な分子を検出できる検出器;(b)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)であって、各オリゴヌクレオチドタグが、(i)分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメインと、(ii)少なくとも1つのカセットを含むストリートとを含み、各カセットが、アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域を含み、ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列が(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、オリゴヌクレオチドタグ;および(c)少なくとも2つのリードアウト分子であって、各リードアウト分子が、(i)(b)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、(ii)検出分子とを含み、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、リードアウト分子、を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグおよび少なくとも2つのリードアウト分子と接触され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序が(例えば、検出器を用いて)検出される;ここで、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出データがディスプレイ上に出力される。
【0034】
本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチドタグ」は、認識ドメインおよび/または少なくとも1つのストリートを含むオリゴヌクレオチドである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグは、Oligopaint、多重エラーロバスト蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(multiplexed error-robust fluorescence in situ hybridization:MERFISH)オリゴ、seqFISHオリゴ、標的のRNAシーケンシャルプロービング(RNA sequential probing of targets:SPOTs)オリゴ、高カバレッジ顕微鏡ベースの技術(high-coverage microscopy-based technology:Hi-M)オリゴ、またはクロマチン構造の光学的再構成(optical reconstruction of chromatin architecture:ORCA)オリゴ、またはFISH法に使用される任意のオリゴヌクレオチドおよび/もしくは標的分子(例えば、オリゴヌクレオチド配列、DNA配列の一部、または特定の染色体もしくは特定の染色体の部分染色体領域)に相補的な配列(例えば、認識ドメイン)を有する任意のオリゴヌクレオチドなどであるがこれらに限定されない、オリゴヌクレオチドを含むか、またはそれによって構成される。さらなる詳細については、例えば、Cardozo et al., Mol Cell. 2019 Apr 4;74(1):212-222; Mateo et al., Nature. 2019 Apr;568(7750):49-54; Wang et al., Scientific Reports volume 8, Article number: 4847 (2018); Shah et al., Neuron, Volume 92, Issue 2, 19 October 2016, Pages 342-357; Eng et al., Nat Methods. 2017 Dec;14(12):1153-1155を参照されたい;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0035】
本明細書で使用する用語「ストリート」は、標的配列との同一性を有しない、または標的配列にハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の一部を指す。本明細書で使用する「カセット」とは、バーコード領域と少なくとも1つのアンカー領域とを含むストリートの領域を指す。本明細書で使用する「バーコード領域」とは、少なくとも1ヌクレオチドを含むカセットの領域を指す。本明細書で使用する「アンカー領域」とは、カセットのセットに特有および/もしくは一定であり、かつ/または少なくとも1つのリードアウト分子のアンカーハイブリダイジング領域に相補的であるカセットの領域を指す。本明細書で使用する「リードアウト分子」とは、1)検出分子または検出部分と、2)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の少なくとも1つのカセットの少なくとも一部に相補的であり、かつ/または少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の少なくとも1つのカセットの少なくとも一部と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列とを含む分子を指す。
【0036】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は少なくとも1つのストリートを含み、該ストリートは少なくとも1つのカセットを含む。本明細書で使用する「カセット」とは、バーコード領域と少なくとも1つのアンカー領域とを含むストリートの領域を指す。非限定的な例として、該ストリートは、1カセット、2カセット、3カセット、4カセット、5カセット、6カセット、7カセット、8カセット、9カセット、または少なくとも10カセットを含む。
【0037】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は少なくとも1カセットを含む;オリゴヌクレオチドタグの集団は、オリゴヌクレオチドタグの亜集団を含み、各亜集団は、オリゴヌクレオチドタグに存在するカセット(複数可)のタイプによって定義される。各カセットタイプは、少なくとも1つのユニークおよび/または識別可能なアンカー領域を含み(すなわち、アンカー領域はカセットタイプに特有であり得る)、個々の各カセットは、ユニークおよび/または識別可能なバーコード領域を含む。非限定的な例として、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の集団は、タイプ1のカセットとタイプ2のカセットを含み、ここで、タイプ1のカセットのセットは、タイプ2のカセットのセットが共有するアンカー領域(複数可)とは異なる、少なくとも1つのアンカー領域を共有する。非限定的な例として、タイプ1のカセットはアンカー領域Aとアンカー領域Bを含み、タイプ2のカセットはアンカー領域Cとアンカー領域Dを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも1つのアンカー領域が各カセット亜集団にユニークおよび/または識別可能である限り、カセット亜集団はアンカー領域を共有することができる。非限定的な例として、タイプ1のカセットはアンカー領域Aとアンカー領域Bを含み、タイプ2のカセットはアンカー領域Aとアンカー領域Cを含む。
【0038】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は複数のカセットを含み、各カセットは異なるタイプである(例えば、オリゴヌクレオチドタグXは、タイプ1のカセットとタイプ2のカセットとタイプ3のカセットを含む)。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は複数のカセットを含み、少なくとも2つのカセットは同じタイプである(例えば、オリゴヌクレオチドタグYは、2つのタイプ1のカセットと1つのタイプ2のカセットを含む)。1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)に同じカセットタイプの複数のコピーを存在させることによって、シグナルを増幅する(例えば、該オリゴヌクレオチドタグに対して2つのリードアウト分子を動員する)ことができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)またはオリゴヌクレオチドタグの集団は、1タイプのカセット、2タイプのカセット、3タイプのカセット、4タイプのカセット、5タイプのカセット、6タイプのカセット、7タイプのカセット、8タイプのカセット、9タイプのカセット、または少なくとも10タイプのカセットを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各タイプのカセットは、特定の識別子(例えば、染色体番号、染色体腕、染色体領域、遺伝子など)をコードすることができる。
【0039】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグのセット内の各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、カセットのユニークな配置を有する;例えば、カセットの並びがユニークであり得、それぞれの異なるオリゴヌクレオチドタグでは、カセットがストリート内に異なる空間的順序で配置される。したがって、前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグのセット内の各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、例えば、少なくとも、各オリゴヌクレオチドタグのストリート内のカセットの空間的順序が異なるという点で、ユニークなストリートを有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグのセット内の各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、ユニークなカセットまたはカセットのセットを有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリート内の全てのカセットは互いに同一である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)内の全てのカセットは互いに同一である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも1つのカセットは、同じストリートまたはオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)内の他のカセットと異なる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、どのカセットも、同じストリートまたはオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)内の他のカセットと異なる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、メインストリートはカセットまたはカセットのセットを含み、バックストリートは異なるカセットまたは異なるカセットのセットを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、メインストリートとバックストリートは、同じカセットまたはカセットのセットを共有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグのセット内の各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、同じカセットまたはカセットのセットを共有する;ここで、オリゴヌクレオチドタグのセットは、異なる標的分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドタグを含む。
【0040】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、カセットはバーコード領域を含む。本明細書で使用する「バーコード領域」とは、少なくとも1ヌクレオチドを含むカセットの領域を指す。非限定的な例として、バーコード領域は、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、または10ヌクレオチドを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域の少なくとも1つのヌクレオチドは、本明細書でさらに説明するように、修飾された核酸塩基を含む。
【0041】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域の配列は、他のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のバーコード領域と異なる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、どのカセットも異なるバーコード領域を有し、例えば、ヌクレオチド配列が異なるバーコード領域を有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリート内のどのカセットも、該ストリート内の他のカセットとは異なるバーコード領域を有し、例えば、ヌクレオチド配列が異なるバーコード領域を有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域の配列は、他のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の少なくとも1つのバーコード領域と同じであり、共有される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域には、少なくとも片側にアンカー領域が隣接している。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域には、両側にアンカー領域が隣接している。
【0042】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、カセットは、少なくとも1つのアンカー領域を含む。本明細書で使用する「アンカー領域」とは、カセットのセットに特有および/もしくは一定であり、かつ/または少なくとも1つのリードアウト分子のアンカーハイブリダイジング領域に相補的であるカセットの領域を指す。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各カセットは、他の全てのカセットの少なくとも1つのアンカー領域と比べてユニークである少なくとも1つのアンカー領域を含む。非限定的な例として、アンカー領域は少なくとも1ヌクレオチドを含む。非限定的な例として、アンカー領域は、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、または10ヌクレオチドを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アンカー領域は少なくとも5ヌクレオチドを含む。
【0043】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、5ヌクレオチド以下(例えば、1、2、3、4、または5ヌクレオチド)を含むアンカー領域は、そのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)へのリードアウト分子の一過性の結合を可能にする。本明細書で使用する用語「一過性の結合」とは、分子間の弱い、可逆的な、かつ/または一時的な、特異的相互作用を指し、すなわち、リードアウト分子は、結合と結合解除を繰り返すことができるような結合親和性を有する。このような結合親和性は、解離定数Kdを用いて測定することができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、一過性の結合は、μMの範囲のKdを有すると定義することができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子に対する結合親和性が低いアンカー領域は、標的分子への一過性の結合が望ましい方法に使用され得る(例えば、DNA-Exchange PAINT、例えば、US 2016/0161472 A1; Jungmann et al., Nano Lett.2010, 10, 11, 4756-4761を参照されたい;これらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0044】
アンカー領域の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:GTCTC (SEQ ID NO: 1); CACTA (SEQ ID NO: 2); GCCCG (SEQ ID NO: 3); およびTGTGC (SEQ ID NO: 4)。
【0045】
非限定的な例として、カセットは、1つのアンカー領域または2つのアンカー領域を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アンカー領域はバーコード領域に対して5'であり、かつ/またはアンカー領域はバーコード領域に対して3'である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコード領域は、両側にアンカー領域が隣接しており、例えば、1つのアンカー領域はバーコード領域に対して5'であり、かつ1つのアンカー領域はバーコード領域に対して3'である。
【0046】
個々のカセットは、任意で、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の他のカセットまたは要素から所望の距離にそれを位置付けるために、追加の配列、例えばリンカーまたはスペーサー配列を含むことができる。
【0047】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のストリートは、そのカセットまたはカセットのセットによって他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のストリートは、少なくとも、ストリート内のカセットの空間的順序が異なるという点で、他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである。非限定的な例として、3つのカセット(例えば、カセット「A」、「B」、および「C」)を5'-A-B-C-3'の空間的順序で含むストリートは、5'-A-C-B-3'、5'-B-A-C-3'、5'-B-C-A-3'、5'-C-A-B-3'、または5'-C-B-A-3'から選択される空間的順序のカセットを含む他のストリートと比べて異なる、ユニークな空間的順序のカセットを有し、前述のストリートのそれぞれは、それらのカセットの空間的順序が互いにユニークであり、異なっている。
【0048】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のストリートは、少なくとも、ストリート内のバーコード領域が異なるという点で、他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである。非限定的な例として、例えば3ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド「X」、「Y」、および「Z」)を5'-X-Y-Z-3'の順序で含むバーコードを含むストリートは、5'-X-Z-Y-3'、5'-Y-X-Z-3'、5'-Y-Z-X-3'、5'-Z-X-Y-3'、または5'-Z-Y-X-3'から選択されるバーコード領域を含む他のストリートと比べて異なる、ユニークなバーコードを有し、前述のストリートのそれぞれは、それらのバーコード領域が互いにユニークであり、異なっている。
【0049】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のストリートは、少なくとも、ストリート内のカセットの空間的順序が異なるという点で、他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークであり、かつ各オリゴヌクレオチドタグのストリートは、少なくとも、ストリート内のバーコード領域が異なるという点で、他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである。
【0050】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、サンプルをリードアウト分子と接触させることを含む。本明細書で使用する「リードアウト分子」とは、1)検出分子または検出部分と、2)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の少なくとも1つのカセットの少なくとも一部に相補的であり、かつ/または少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の少なくとも1つのカセットの少なくとも一部と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列とを含む分子を指す。非限定的な例として、リードアウト分子は、カセットのアンカー領域と相補的でありかつ特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの領域、例えば「アンカーハイブリダイジング領域」を含む。非限定的な例として、リードアウト分子は、カセットのバーコード領域と相補的でありかつ特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの領域、例えば「バーコードハイブリダイジング領域」を含む。非限定的な例として、リードアウト分子は、1つのアンカーハイブリダイジング領域および/または2つのアンカーハイブリダイジング領域を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アンカーハイブリダイジング領域は、バーコードハイブリダイジング領域に対して5'であり、かつ/またはアンカーハイブリダイジング領域は、バーコードハイブリダイジング領域に対して3'である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、バーコードハイブリダイジング領域は、両側にアンカーハイブリダイジング領域が隣接しており、例えば、1つのアンカーハイブリダイジング領域はバーコードハイブリダイジング領域に対して5'であり、かつ1つのアンカーハイブリダイジング領域はバーコードハイブリダイジング領域に対して3'である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アンカーハイブリダイジング領域は、カセットタイプにユニークなアンカー領域について上述したように、カセットタイプにユニークであり得る。
【0051】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウト分子は、検出分子、例えば光学的に検出可能な検出分子を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子はフルオロフォアであり、検出するステップは蛍光顕微鏡を用いて行われる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子は、ビオチン、アミン、金属、アンカリング分子、またはアクリダイトを含む。検出分子、フルオロフォア、および検出技術の非限定的な例については、本明細書でさらに説明する。
【0052】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも2つのリードアウト分子は、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する。非限定的な例として、2つのリードアウト分子は2つの識別可能な検出分子を集合的に構成し、3つのリードアウト分子は3つの識別可能な検出分子を集合的に構成し、4つのリードアウト分子は4つの識別可能な検出分子を集合的に構成し、または少なくとも5つのリードアウト分子は少なくとも5つの識別可能な検出分子を集合的に構成する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウト分子のプールは、識別可能な検出分子よりも多くのリードアウト分子を含み、例えば、同じ検出分子が複数のリードアウト分子上に存在し得る。
【0053】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子はリードアウト分子の5'末端に連結されるか、検出分子はリードアウト分子の3'末端に連結されるか、または検出分子はリードアウト分子の5'末端と3'末端に連結され得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウト分子の5'末端に連結された検出分子は、リードアウト分子の3'末端に連結された検出分子と同じタイプの検出分子である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウト分子の5'末端に連結された検出分子は、リードアウト分子の3'末端に連結された検出分子と異なるタイプの検出分子である。
【0054】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、少なくとも2つのリードアウト分子と接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、少なくとも1つのリードアウト分子と接触される。非限定的な例として、サンプルは、1つのリードアウト分子、2つのリードアウト分子、3つのリードアウト分子、4つのリードアウト分子、または少なくとも5つのリードアウト分子と接触される。
【0055】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、前記方法は、検出分子、例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)にハイブリダイズしたリードアウト分子の検出分子を検出するステップを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、前記方法は、検出分子、例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)にハイブリダイズし、ひいては1つまたは複数の標的にハイブリダイズしたリードアウト分子の検出分子を検出するステップを含む。
【0056】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)にハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序を検出することを含む。リードアウト分子の異なる標識(例えば、色)は、1つまたは複数のカセットとの相関関係を有し、異なるリードアウト分子の空間的順序は、単一のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)上のカセットの順序に関する情報を提供し、これにより、多数の異なるオリゴヌクレオチドタグを、単一のストリートにハイブリダイズしたリードアウト分子のグループにより提供されるバーコード化シグナルによって識別することができる。したがって、前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子の相対的な空間的順序は、どのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)がその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする。
【0057】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、少なくとも1つのカセットにハイブリダイズしたリードアウト分子の検出分子の相対的な空間的順序を検出することを含み、それによって、検出分子の相対的な空間的順序は、どのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)がその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする。
【0058】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、少なくとも1つのカセットにハイブリダイズしたリードアウト分子の相対的な空間的順序を検出することを含み、それによって、リードアウト分子の相対的な空間的順序は、どのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)がその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする。
【0059】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、リードアウト分子のプール、例えば「リードアウトプール」と接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、同じカセットタイプに対するリードアウト分子(例えば、少なくとも1つのユニークなアンカーハイブリダイジング領域を共有するリードアウト分子)を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのカセットタイプに対するリードアウト分子を含む。
【0060】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各リードアウトプールは、オリゴヌクレオチドタグのセット(例えば、特定のカセットタイプを有するOligopaint)のバーコード領域の特定の位置にあるヌクレオチドのアイデンティティを突き止めることに向けられる。非限定的な例として、サンプルは、バーコード領域の少なくとも1つのヌクレオチドを検出するために、少なくとも2つのリードアウトプールと連続的または同時に接触される。非限定的な例として、サンプルは、1つまたは複数のストリートの第1および第2のカセット位置で検出するために、少なくとも2つのリードアウトプールと連続的に接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、2つのリードアウト分子、3つのリードアウト分子、4つのリードアウト分子、または少なくとも5つのリードアウト分子を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、2つの異なる検出分子、3つの異なる検出分子、4つの異なる検出分子、または少なくとも5つの異なる検出分子を含む。
【0061】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、同じタイプの検出分子に連結されたリードアウト分子のセットを含む。非限定的な例として、同じタイプの検出分子に連結されたリードアウト分子のセットは、バーコードハイブリダイジング領域の1つの位置に同じヌクレオチドを含み、かつ(1)バーコードハイブリダイジング領域の他の位置に異なるヌクレオチドを含む、(2)該セットがバーコードハイブリダイジング領域の他の位置で縮重している、または(3)バーコードハイブリダイジング領域の他の位置にユニバーサルヌクレオチドを含む、のうちの少なくとも1つを含む。ユニバーサルヌクレオチドは、任意のヌクレオチドに結合できるユニバーサル塩基を含む。ユニバーサル塩基の非限定的な例は、イノシン、ヒポキサンチン、ニトロアゾール類、イソカルボスチリル類似体、アゾールカルボキサミド類、または芳香族トリアゾール類似体を含む(例えば、Loakes et al., Nucleic Acids Res. 2001 Jun 15;29(12):2437-47; Berger et al., Nucleic Acids Res. 2000 Aug 1; 28(15): 2911-2914; Liang et al., RSC Advances 3(35); June 2013を参照されたい)。
【0062】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、少なくとも2セットのリードアウト分子を含む;ここで、各セットは、同じタイプの検出分子に連結され、この検出分子は、他のセット(複数可)のリードアウト分子に連結された検出分子とは異なる;また、各セットは、バーコード領域内の同じヌクレオチドを検出し、このヌクレオチドは、他のセット(複数可)のリードアウト分子によって検出されるバーコード領域内の同じ位置にあるヌクレオチドとは異なる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウトプールは、少なくとも1セット、2セット、3セット、4セット、または少なくとも5セットのリードアウト分子を含む。
【0063】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第1のヌクレオチドを認識する(またはストリート内の1番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、1番目のリードアウトプールと接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第2のヌクレオチドを認識する(またはストリート内の2番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、2番目のリードアウトプールと接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第3のヌクレオチドを認識する(またはストリート内の3番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、3番目のリードアウトプールと接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第4のヌクレオチドを認識する(またはストリート内の4番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、4番目のリードアウトプールと接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第5のヌクレオチドを認識する(またはストリート内の5番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、5番目のリードアウトプールと接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、各カセットのバーコード領域の第nのヌクレオチドを認識する(またはストリート内のn番目のカセット位置の異なるカセットを認識する)、n番目のリードアウトプールと接触される;ここで、nは1から10までの整数に対応する。
【0064】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは各リードアウトプールと順次接触される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルをn番目のリードアウトプールおよび(n+1)番目のリードアウトプールと接触させる合間に、本明細書に記載されるようにリードアウトプールを検出し、n番目のリードアウトプールを洗い流す(例えば、ハイブリダイゼーション反応で使用するのに適した任意の緩衝液、例えば、2XSSCT中の60%ホルムアミドを用いる;ここで、SSCは生理食塩水-クエン酸ナトリウム緩衝液を指し、TはTWEENを指す)。
【0065】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、少なくとも2つのリードアウトプールと同時に接触される。非限定的な例として、サンプルは、少なくとも2つのリードアウトプール、少なくとも3つのリードアウトプール、少なくとも4つのリードアウトプール、または少なくとも5つのリードアウトプールと同時に接触される。サンプルを1つのリードアウトプールと接触させる場合と比較して、サンプルを少なくとも2つのリードアウトプールと同時に接触させることは、シグナルの増幅、追加の光学的検出可能マーカー(例えば、異なるフルオロフォア類の擬似カラー組み合わせ)の導入、および該プロセスの速度の向上を含むがこれらに限定されない、追加の利益をもたらすことができる。
【0066】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析する方法は、サンプルを少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)と接触させるステップ、該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップ、およびリードアウト分子の相対的な空間的順序を検出するステップを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、リードアウト分子のカセットへの特異的ハイブリダイゼーションは、バーコード領域のアイデンティティによって決定されるか、またはそれに依存する。
【0067】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の組成物および方法は、Oligopaint技術に関連する組成物および方法の改良点を含む。本明細書で使用する用語「Oligopaint」とは、標的分子、例えば、オリゴヌクレオチド配列、DNA配列の一部、または特定の染色体もしくは特定の染色体の部分染色体領域、に相補的な配列を有するポリヌクレオチドを指す。
【0068】
従来、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)用のプローブは、クローン化したゲノム領域またはフロー選別した染色体に由来し、それらは、ニックトランスレーションもしくはフルオロフォア結合ヌクレオチドの存在下でのPCRにより直接的に標識されるか、またはビオチン、ジゴキシゲニンなどのヌクレオチド結合ハプテンで間接的に標識され、その後二次検出試薬で可視化される。従来のFISHプローブは、反復配列および有効性のばらつきによる制約を受ける。さらに、標的領域は、クローンの利用可能性とそれらのゲノムインサートのサイズによって制約される。より大きな領域を従来のFISHプローブでターゲティングすることは可能であるが、各クローンを個別にハイブリダイゼーション用に調製して最適化する必要があるため、このアプローチは、多くの場合、厄介で費用がかかる。
【0069】
Oligopaintは、改良型のFISH技術であって、オリゴライブラリーを大規模な並列合成により作成し、再生可能なプローブ源として使用することができる。オリゴライブラリーは、PCRで増幅することができる(任意で、フルオロフォア結合プライマーを用いてもよい)。増幅産物を酵素的に処理することで、数十キロベースからメガベースまでの範囲の領域を可視化できる、高効率な一本鎖の鎖特異的プローブを得ることができる。Oligopaintは、合成プローブおよびアレイを含むことができ、これらは、任意で、コンピュータによりパターン化され、かつ/またはコンピュータにより設計される。
【0070】
Oligopaintおよび関連技術に関する刊行物については、例えば、以下を参照されたい:Beliveau et al. OligoMiner provides a rapid, flexible environment for the design of genome-scale oligonucleotide in situ hybridization probes. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 2018 115:E2183-E2192; Beliveau et al. In situ super-resolution imaging of genomic DNA with OligoSTORM and OligoDNA-PAINT. Methods Mol Biol 2017 1663:231-252; Wang et al. Spatial organization of chromatin domains and compartments in single chromosomes. Science 2016 353:598-602; Boettiger et al. Super-resolution imaging reveals distinct chromatin folding for different epigenetic states. Nature. 2016 529:418-22; Schmidt et al. Scalable amplification of strand subsets from chip-synthesized oligonucleotide libraries. Nat Commun 2015 Nov 16;6:8634; Murgha et al. Combined in vitro transcription and reverse transcription method to amplify and label complex synthetic oligonucleotide probe libraries. Biotechniques 2015 58:301-7; Beliveau et al. Single-molecule super-resolution imaging of chromosomes and in situ haplotype visualization using Oligopaint FISH probes. Nat Commun 2015 6:7147; Beliveau et al. Visualizing genomes with Oligopaint FISH probes. Curr Protocols Mol Biol 2014 14.23; Beliveau et al. A versatile design and synthesis platform for visualizing genomes with Oligopaint FISH probes. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 2012 109:21301-6; US 2010/0304994 A1; US 2018/0223347 A1; WO 2018/045186 A1; US 2014/0364333 A1; US 2019/0032121 A1; US 2013/0143208 A1; US 10,119,160 B2; US 2018/0057867 A1; US 2019/0127786 A1; US 2018/0292318 A1; WO 2017/189525 A1; WO 2018/183851 A1; WO 2018/183860 A1; WO 2018/045181 A1; US 2016/0040235 A1;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0071】
本明細書で使用する用語「Oligopaint化した」(Oligopainted)および「Oligopaint化領域」とは、1つまたは複数のOligopaintにハイブリダイズした、それぞれ、標的ヌクレオチド配列(例えば、染色体)または標的ヌクレオチド配列の領域(例えば、部分染色体領域)を指す。Oligopaintは、標的ヌクレオチド配列、例えば、細胞周期の様々な段階(間期、プレ前期、前期、前中期、中期、後期、終期および細胞質分裂期を含むがこれらに限定されない)における染色体および染色体の部分染色体領域、を標識するために使用することができる。
【0072】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、FISH法は、以下を含むことができる:Oligopaint、MERFISH(多重エラーロバスト蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)、seqFISH、SPOTs(標的のRNAシーケンシャルプロービング)、Hi-M(高カバレッジ顕微鏡ベースの技術)、もしくはORCA(クロマチン構造の光学的再構成)、またはサンプルと標的分子(例えば、オリゴヌクレオチド配列、DNA配列の一部、または特定の染色体もしくは特定の染色体の部分染色体領域)に相補的な配列(例えば、認識ドメイン)を有するオリゴヌクレオチドとの接触を含む任意の方法。さらなる詳細については、例えば、Cardozo et al., Mol Cell. 2019 Apr 4;74(1):212-222; Mateo et al., Nature. 2019 Apr;568(7750):49-54; Wang et al., Scientific Reports volume 8, Article number: 4847 (2018); Shah et al., Neuron, Volume 92, Issue 2, 19 October 2016, Pages 342-357; Eng et al., Nat Methods. 2017 Dec;14(12):1153-1155を参照されたい;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0073】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析することを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、核酸、ポリペプチド、細胞表面分子、および/または無機物を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、DNAを含み、例えば、ゲノムDNA、染色体として組織化されたゲノムDNA、または相補的DNA(cDNA)を含むがこれらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、RNAを含み、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはリボソームRNA(rRNA)を含むがこれらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、ポリペプチドを含み、例えば、細胞内タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞外タンパク質を含むがこれらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、細胞表面分子を含み、例えば、膜貫通タンパク質、膜脂質、膜受容体、または膜貫通受容体を含むがこれらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、非生物源に由来する任意の材料を含む無機物を含み、例えば、ガラス、セラミック、金属、または他の任意の固体基材を含むがこれらに限定されない。
【0074】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、1つの標的分子が分析される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、少なくとも2つの標的分子が同時に分析される。非限定的な例として、少なくとも2つの標的分子、少なくとも3つの標的分子、少なくとも4つの標的分子、少なくとも5つの標的分子、少なくとも6つの標的分子、少なくとも7つの標的分子、少なくとも8つの標的分子、少なくとも9つの標的分子、少なくとも10の標的分子、または少なくとも20の標的分子が同時に分析される。
【0075】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子の複数の領域が同時に分析される。非限定的な例として、1つの標的分子または複数の標的分子の2つの領域、3つの領域、4つの領域、5つの領域、6つの領域、7つの領域、8つの領域、9つの領域、10の領域、または10を超える領域が分析される。
【0076】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、細胞、細胞培養物、または組織サンプルである。非限定的な例として、細胞、細胞培養物、または組織サンプルは、個々の染色体が識別可能である時期または条件下に、例えば有糸分裂期に、採取される。
【0077】
本明細書で使用する用語「サンプル」または「試験サンプル」とは、生物体から採取または分離されたサンプル、例えば、対象由来の血液または組織サンプルを表す。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本発明は、生体サンプルのいくつかの例を包含する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、生体サンプルは、細胞、組織、末梢血、または体液である。例示的な生体サンプルには、限定するものではないが、生検、腫瘍サンプル、生物流体サンプル;血液;血清;血漿;尿;精子;粘液;組織生検;臓器生検;滑液;胆汁;脳脊髄液;粘膜分泌物;浸出液;汗;唾液;および/または組織サンプルなどが含まれる。この用語には、上記のサンプルの混合物も含まれる。また、用語「試験サンプル」には、未処理のまたは前処理(予備処理)された生体サンプルも含まれる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、対象由来の細胞を含む。
【0078】
試験サンプルは、対象からサンプルを採取して得ることができるが、以前に分離されたサンプル(例えば、前の時点に分離されたもの、および同じ人または他の人によって分離されたもの)を使用しても達成することができる。
【0079】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、未処理の試験サンプルであり得る。本明細書で使用する語句「未処理の試験サンプル」とは、溶液への希釈および/または懸濁を除き、サンプルの先行する前処理を一切行っていない試験サンプルを指す。試験サンプルを処理するための例示的な方法には、限定するものではないが、遠心分離、ろ過、超音波処理、均質化、加熱、凍結と融解、およびこれらの組み合わせが含まれる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、凍結された試験サンプル、例えば、凍結組織であり得る。凍結サンプルは、本明細書に記載の方法、アッセイ、およびシステムを利用する前に、解凍され得る。解凍後、凍結サンプルを遠心分離してから、本明細書に記載の方法、アッセイ、およびシステムにかけることができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、例えば、遠心分離と、清澄な試験サンプルを含む上清の回収により得られる、清澄化された試験サンプルである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、前処理された試験サンプルであり、例えば、遠心分離、ろ過、解凍、精製、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択された処理から得られる上清またはろ液であり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試験サンプルは、化学的および/または生物学的試薬で処理することができる。化学的および/または生物学的試薬は、処理中にサンプルの安定性、例えば、そこに含まれる生体分子(例えば、核酸およびタンパク質)の安定性、を保護および/または維持するために利用され得る。1つの例示的な試薬はプロテアーゼ阻害剤であり、これは一般に、処理中のタンパク質の安定性を保護または維持するために使用される。当業者は、本明細書に記載の発現産物のレベルの測定に必要とされる、生体サンプルの前処理に適した方法およびプロセスについて十分に把握している。
【0080】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の方法、アッセイ、およびシステムは、対象から試験サンプルを取得する、または取得したステップをさらに含むことができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、対象はヒト対象であり得る。
【0081】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、認識ドメインを含む。本明細書で使用する「認識ドメイン」とは、分析される標的分子および/または配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のドメインである。非限定的な例として、認識ドメインは、標的分子および/または配列、例えば染色体の領域、に相補的な核酸配列であり得る。したがって、認識ドメインの配列は、所望の標的のアイデンティティに応じて変化することになる。特定の条件下で所与の標的に特異的にハイブリダイズする認識ドメインを設計することは、例えば、この目的のために広く自由に利用できるソフトウェア(例えば、Primer3またはPrimerBank、両方ともワールドワイドウェブ上で利用可能)を用いて、十分に当業者の技能の範囲内である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、認識ドメインは、標的分子の一部および/または標的配列と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、認識ドメインは、「ゲノム相同」のドメイン、つまりゲノムの領域に特異的に結合するドメインを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、同一または異なるオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)上に見出される複数の認識ドメインは、単一の標的分子および/または標的配列に特異的に結合することができる。非限定的な例として、少なくとも2つの認識ドメイン、少なくとも3つの認識ドメイン、少なくとも4つの認識ドメイン、少なくとも5つの認識ドメイン、少なくとも10の認識ドメイン、少なくとも20の認識ドメイン、少なくとも30の認識ドメイン、少なくとも40の認識ドメイン、または少なくとも50の認識ドメインが、1つの標的分子および/または標的配列に特異的に結合することができる。
【0082】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、認識ドメインは、オリゴヌクレオチドを含むか、またはそれによって構成され、例えば、Oligopaint、MERFISH(多重エラーロバスト蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)オリゴ、seqFISHオリゴ、SPOTs(標的のRNAシーケンシャルプロービング)オリゴ、Hi-M(高カバレッジ顕微鏡ベースの技術)オリゴ、もしくはORCA(クロマチン構造の光学的再構成)オリゴ、またはFISH法に使用される任意のオリゴヌクレオチドおよび/もしくは標的分子(例えば、オリゴヌクレオチド配列、DNA配列の一部、または特定の染色体もしくは特定の染色体の部分染色体領域)に相補的な配列(例えば、認識ドメイン)を有する任意のオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。さらなる詳細については、例えば、Cardozo et al., Mol Cell. 2019 Apr 4;74(1):212-222; Mateo et al., Nature. 2019 Apr;568(7750):49-54; Wang et al., Scientific Reports volume 8, Article number: 4847 (2018); Shah et al., Neuron, Volume 92, Issue 2, 19 October 2016, Pages 342-357; Eng et al., Nat Methods. 2017 Dec;14(12):1153-1155を参照されたい;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0083】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、認識ドメインは、非核酸、例えば、DNA結合性ポリペプチドなどの任意の核酸結合性組成物を含む。非限定的な例として、認識ドメインは、配列特異的な一本鎖DNA結合性タンパク質もしくは因子、配列特異的な二本鎖DNA結合性タンパク質もしくは因子、DNA-RNA結合性タンパク質もしくは因子、またはRNA結合性タンパク質もしくは因子を含む。そのような核酸結合性組成物の非限定的な例には、転写因子、制限酵素、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease:TALEN)、CRISPR-Cas型因子などが含まれるが、これらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸結合性組成物は、ヌクレアーゼ活性を欠いている。
【0084】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子は、非核酸、例えばポリペプチドを含む。したがって、認識ドメインは、標的ポリペプチドに特異的に結合する任意の組成物を含む。そのようなポリペプチド結合性認識ドメインの非限定的な例には、抗体(例えば、ナノボディ)、アプタマー、小分子、リガンド、特定のポリペプチドの公知の結合パートナーなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグは、オリゴヌクレオチドタグが認識ドメインに連結されないで、関心対象のオリゴヌクレオチドタグ付きエンティティ(entity)を検出するためにエンティティに連結されるという点で、標的分子を特異的に認識しない。オリゴヌクレオチドタグは、1つのアンカー領域と少なくともバーコード領域とを含むが、例えば認識ドメインを欠く、核酸であり得る。非限定的な例として、そのようなオリゴヌクレオチドタグ付きエンティティは、小分子(例えば、薬物スクリーニングの目的のため)、ポリペプチド、細胞、または非生体物質(例えば、金属、化学物質など)を含むことができる。そのようなオリゴヌクレオチドタグ付きエンティティを検出する方法は、本明細書に記載されるようなオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を検出するために用いられる方法(例えば、オリゴヌクレオチドタグの特定のカセットタイプにハイブリダイズするリードアウト分子のプールと接触させる)と同一であり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、複数の種類の標的分子および/または複数の種類のタグ付きエンティティは、例えば、DNAを認識する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)、ポリペプチドを認識する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ、および/または少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグ付きエンティティを用いて、一度に検出することが可能である。
【0086】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、少なくとも1つのストリートを含む。本明細書で使用する用語「ストリート」とは、標的配列との同一性を有しないか、または標的配列にハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の部分を指す。ストリートは、検出のための領域および/または増幅のための領域を含む。非限定的な例として、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、2つのストリートを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリートは、「メインストリート」および/または「バックストリート」の1つ以上であり得る。非限定的な例として、メインストリートは認識ドメインに対して5'であり、メインストリートはバックストリートに対して5'であり、かつ/またはメインストリートは認識ドメインとバックストリートに対して5'である。非限定的な例として、バックストリートは認識ドメインに対して3'であり、バックストリートはメインストリートに対して3'であり、かつ/またはバックストリートは認識ドメインとメインストリートに対して3'である。非限定的な例として、メインストリートは認識ドメインに対して3'であり、メインストリートはバックストリートに対して3'であり、かつ/またはメインストリートは認識ドメインとバックストリートに対して3'である。非限定的な例として、バックストリートは認識ドメインに対して5'であり、バックストリートはメインストリートに対して5'であり、かつ/またはバックストリートは認識ドメインとメインストリートに対して5'である。
【0087】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリート(例えば、メインストリートおよび/またはバックストリート)は、少なくとも1つのカセットおよび/または少なくとも1つのユニバーサルプライミング領域を含む。本明細書で説明するように、前記カセットは、少なくとも1つのバーコード領域と少なくとも1つのアンカー領域とを含む。本明細書で使用する「ユニバーサルプライミング領域」とは、ユニバーサルプライマー(例えば、ユニバーサルフォワードプライマー、ユニバーサルリバースプライマー)に結合する領域を指す。本明細書で使用する「ユニバーサルプライマー」とは、複数の個々のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)またはオリゴヌクレオチドタグのセットに対して使用されるプライマーを指す。ユニバーサルプライマーは、例えばオリゴヌクレオチドタグまたはオリゴヌクレオチドタグのセットを作成するために、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を、例えばPCRで、増幅する目的で使用することができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)のユニバーサルプライミング領域は、残りのオリゴヌクレオチドタグ(例えば、サンプルと接触する他のオリゴヌクレオチドタグ)のユニバーサルプライミング領域と同一である。
【0088】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ストリートは、少なくとも1つのユニバーサルプライミング領域および/または少なくとも1つのカセットを含む。非限定的な例として、ユニバーサルプライミング領域は、少なくとも1つのカセットの5'にある。非限定的な例として、ユニバーサルフォワードプライマーに特異的に結合するユニバーサルフォワードプライミング領域は、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の5'末端にある。非限定的な例として、ユニバーサルプライミング領域は、少なくとも1つのカセットの3'にある。非限定的な例として、ユニバーサルリバースプライマーに特異的に結合するユニバーサルリバースプライミング領域は、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の3'末端にある。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ユニバーサルプライミング領域は、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)に存在する任意のカセットに隣接している(5'および3'の両方)。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ユニバーサルリバースプライミング領域は、例えば、ニッキングエンドヌクレアーゼ(NE)に曝露されたときにオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)が一本鎖になるようにするための、NEの認識部位を含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、(例えば、PCRおよび/またはユニバーサルプライミング領域を介して)必ずしも増幅されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、記載されたオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)をデノボ合成して、「管から直接」使用することができる。
【0089】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、少なくともシングルセル解像法により実施される。非限定的な例として、検出するステップは、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも4μm、少なくとも5μm、少なくとも6μm、少なくとも7μm、少なくとも8μm、少なくとも9μm、または少なくとも10μmの解像度で行うことが可能である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出するステップは、個々の標的分子、例えば染色体、を識別できる解像度で行われる。
【0090】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸、例えばオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、安定性または他の有益な特性を高めるために化学的に修飾される。本明細書に記載の核酸は、例えば、“Current protocols in nucleic acid chemistry,” Beaucage, S.L. et al. (編), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USA(参照により本明細書に組み入れられる)に記載の方法のような、当技術分野で十分に確立された方法により合成および/または修飾することができる。修飾には、例えば、以下が含まれる:(a)末端修飾、例えば、5'末端修飾(リン酸化、コンジュゲーション、逆結合など)、3'末端修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆結合など)、(b)塩基修飾、例えば、安定化する塩基、不安定化する塩基、もしくはパートナーの拡張されたレパートリーと塩基対を形成する塩基との置換、塩基(塩基を欠くヌクレオチド)の除去、またはコンジュゲート化された塩基、(c)糖修飾(例えば、2'位もしくは4'位での修飾)または糖の置換、ならびに(d)バックボーン修飾、例えば、ホスホジエステル結合の修飾または置換。本明細書に記載の態様において有用な核酸化合物の具体例としては、限定するものではないが、修飾バックボーンを含む核酸または天然のヌクレオシド間結合を含まない核酸が挙げられる。修飾バックボーンを有する核酸には、とりわけ、バックボーン中にリン原子を有しないものが含まれる。本明細書の目的上、また、当技術分野で時々言及されるように、ヌクレオシド間バックボーンにリン原子を有しない修飾核酸もまた、オリゴヌクレオシドであるとみなすことができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、修飾核酸は、そのヌクレオシド間バックボーンにリン原子を有するものである。
【0091】
修飾核酸バックボーンは、例えば、以下を含むことができる:ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホネート(3'-アルキレンホスホネートを含む)およびキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホルアミデート(3'-アミノホスホルアミデートを含む)およびアミノアルキルホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに、通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合のアナログ、およびヌクレオシド単位の隣接する対が3'-5'から5'-3'、または2'-5'から5'-2'に結合している逆の極性を有するもの。また、各種塩、混合塩、および遊離酸の形態も含まれる。バックボーンにリン原子を含まない修飾核酸バックボーンは、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合型のヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、あるいは1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオシド間結合によって形成されるバックボーンを有する。これらには、以下を有するものが含まれる:モルホリノ結合(一部にはヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサンバックボーン;スルフィド、スルホキシドおよびスルホンバックボーン;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン;アルケン含有バックボーン;スルファメートバックボーン;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノバックボーン;スルホネートおよびスルホンアミドバックボーン;アミドバックボーン;N、O、SおよびCH2の構成部分が混在する他のもの、ならびにヘテロ原子バックボーンを有するオリゴヌクレオシド、特に、-CH2-NH-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-[メチレン(メチルイミノ)またはMMIバックボーンとして知られる]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-および-N(CH3)-CH2-CH2-を有するオリゴヌクレオシド[天然のホスホジエステルバックボーンは、-O-P-O-CH2-として表される]。
【0092】
修飾核酸は、1つまたは複数の置換された糖部分を含むこともできる。本明細書に記載の核酸は、2'位に以下のうちの1つを含むことができる:OH;F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-、またはN-アルキニル;あるいはO-アルキル-O-アルキル;ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例示的な好適な修飾には、O[(CH2)nO] mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2が含まれ、ここで、nおよびmは1~約10である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、dsRNAは、2'位に以下のうちの1つを含む:C1~C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、核酸の薬物動態特性を改善する基、または核酸の薬力学特性を改善する基、および同様の特性を有する他の置換基。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、修飾は、2'メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3;2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78:486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2'-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基(以下で本明細書の実施例に記載される)、および2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野では2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2'-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2(これも以下で本明細書の実施例に記載される)である。
【0093】
その他の修飾には、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)、および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。また、同様の修飾は、核酸の他の位置、特に3'末端ヌクレオチドの糖の3'位、または2'-5'結合dsRNAでは5'末端ヌクレオチドの5'位でも行うことができる。核酸はまた、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分などの糖模倣物を有していてもよい。
【0094】
核酸は、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)の修飾または置換を含むこともできる。本明細書で使用する場合、「未修飾」または「天然の」核酸塩基には、プリン塩基のアデニン(A)とグアニン(G)、およびピリミジン塩基のチミン(T)とシトシン(C)とウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、以下を含むがそれらに限定されない、合成および天然の核酸塩基が含まれ得る:5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンとグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で特徴づけられる阻害性核酸の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6および0-6置換プリン、例えば、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃高めることが示されており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., dsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、特に2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせる場合の例示的な塩基置換である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、修飾核酸塩基は、d5SICSおよびdNAMを含むことができ、これらは、塩基対として別々にまたは一緒に使用できる非天然核酸塩基の非限定的な例である(例えば、Leconte et. al. J. Am. Chem. Soc.2008, 130, 7, 2336-2343; Malyshev et. al. PNAS. 2012. 109 (30) 12005-12010を参照されたい)。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、当技術分野で知られている任意の修飾核酸塩基、すなわち、未修飾および/または天然の核酸塩基から修飾された任意の核酸塩基を含む。
【0095】
上記の修飾された核酸、バックボーン、および核酸塩基の調製は、当技術分野でよく知られている。
【0096】
本発明で特徴づけられる核酸の別の修飾は、核酸の活性、細胞分布、薬物動態特性、または細胞への取り込みを増強する1つまたは複数のリガンド、部分またはコンジュゲートを核酸に化学的に連結することを含む。そのような部分には、限定するものではないが、以下が含まれる:脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4:1053-1060)、チオエーテル、例えばベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306-309; Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49-54)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229-237)、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923-937)。
【0097】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、標的分子、例えば、DNA標的分子、RNA標的分子、またはポリペプチド標的分子の測定および/または検出は、対象から得られたサンプルを、本明細書に記載の試薬または試薬類と接触させることを含む。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試薬は、検出可能に標識される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試薬は、検出可能なシグナルを生成することが可能である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、試薬は、標的分子が存在する場合に検出可能なシグナルを生成する。
【0098】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載される1つまたは複数の試薬は、検出可能な標識を含み、かつ/または(例えば、化合物を検出可能な生成物に変換する反応を触媒することにより)検出可能なシグナルを生成することができる。検出可能な標識は、例えば、光吸収色素、蛍光色素、または放射性標識を含むことができる。検出可能な標識、それを検出する方法、およびそれを本明細書に記載の試薬に組み込む方法は、当技術分野でよく知られている。
【0099】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識、分子、および/または部分には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁的、放射化学的、または化学的手段、例えば、蛍光、化学蛍光、または化学発光など、あるいは他の任意の適切な手段によって検出できるものが含まれ得る。本明細書に記載の方法で使用される検出可能な標識は、一次標識(該標識が、直接検出できる部分を含むか、または直接検出可能な部分を生成する部分を含む場合)、または二次標識(例えば、二次および三次抗体を用いる免疫学的標識でよく見られるように、検出可能な標識が別の部分に結合して、検出可能なシグナルを生成する場合)であり得る。検出可能な標識は、共有結合または非共有結合の手段で試薬に連結され得る。あるいは、検出可能な標識は、例えば、リガンド-レセプター結合対の配置または他のそのような特異的認識分子によって試薬への結合を達成する分子を直接標識することによって、連結することもできる。検出可能な標識としては、放射性同位元素、生物発光化合物、発色団、抗体、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、および酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
他の態様では、検出試薬は蛍光化合物で標識される。蛍光標識された試薬が適切な波長の光にさらされると、その存在は蛍光によって検出され得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識は蛍光色素分子、つまりフルオロフォアとすることができ、それらには、限定するものではないが、以下が含まれる:フルオレセイン、フィコエリスリン、フィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、Cy3(商標)、Cy5(商標)、アロフィコシアニン、テキサスレッド、ペリジニンクロロフィル、シアニン、フィコエリスリン-Cy5(商標)などのタンデムコンジュゲート、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびOregon Green(商標)、ローダミンおよび誘導体(例えば、テキサスレッドおよびテトラローダミンイソチオシアネート(TRITC))、ビオチン、フィコエリスリン、AMCA、CyDyes(商標)、6-カルボキシフルオレセイン(一般にFAMおよびFの略称で知られている)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROXまたはR)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5またはG5)、6-カルボキシローダミン-6G(R6G6またはG6)、およびローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5およびCy7色素;クマリン類、例えばウンベリフェロン;ベンズイミド色素、例えばHoechst 33258;フェナントリジン色素、例えばテキサスレッド;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素、例えばCy3、Cy5などのシアニン色素;BODIPY色素およびキノリン色素。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識は、3H、125I、35S、14C、32P、および33Pを含むがこれらに限定されない放射性標識であり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含むがこれらに限定されない酵素であり得る。酵素標識は、例えば、化学発光シグナル、色シグナル、または蛍光シグナルを生成することができる。抗体試薬を検出可能に標識するために使用することが意図される酵素には、限定するものではないが、以下が含まれる:リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-VI-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼ。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識は化学発光標識であり、限定するものではないが、ルシゲニン、ルミノール、ルシフェリン、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出可能な標識はスペクトル比色標識とすることができ、限定するものではないが、コロイド金、または着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびラテックス)ビーズが含まれる。
【0101】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出試薬は、c-Myc、HA、VSV-G、HSV、FLAG、V5、HIS、またはビオチンなどの検出可能なタグで標識することも可能である。その他の検出システムも使用可能で、例えば、ビオチン-ストレプトアビジンシステムである。このシステムでは、対象となるバイオマーカーと免疫反応性の(すなわち、バイオマーカーに特異的な)抗体がビオチン化される。バイオマーカーに結合したビオチン化抗体の量は、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲートと発色性基質を用いて測定される。そのようなストレプトアビジンペルオキシダーゼ検出キットは、例えば、DAKO社(Carpinteria,CA)から市販されている。試薬はまた、152Euなどの蛍光を発する金属またはランタニド系列の他の金属を用いて検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を利用して試薬に結合させることができる。
【0102】
使用する検出方法(複数可)は、リードアウト分子で使用される特定の検出可能な標識によって異なってくる。ある例示的な態様では、1つ以上のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)および/もしくはそれに結合したリードアウト分子を有する染色体ならびに/または染色体領域は、顕微鏡、分光光度計、チューブ型ルミノメータまたはプレート型ルミノメータ、X線フィルム、シンチレータ、蛍光活性化細胞選別(FACS)装置、マイクロフルイディクス装置などを使って、選択および/またはスクリーニングすることができる。
【0103】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、検出分子は、フルオロフォアまたは蛍光化合物を含む。蛍光を測定するためのシステムおよび装置は、当技術分野でよく知られている。蛍光測定には、適切な吸収または励起波長を含む光を放出する光源が必要である。本明細書に記載の化合物の吸収または励起波長は、約300~800nmである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、光源は、300~870nmの波長を含む光、本質的に該波長からなる光、または該波長からなる光を放出する。その光がサンプルに接触すると、それは、フルオロフォアとしても知られるサンプル内の特定の物質の電子を励起して、該物質に蛍光の形で光を放出(発光)させる。
【0104】
その後、蛍光を測定するシステムまたは装置によって、放出された光が検出される。いくつかの態様では、該システムまたは装置は、所望の波長の光のみがシステムまたは装置の検出器に到達するように、フィルターまたはモノクロメーターを含むことができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、該システムまたは装置は、300~800nmの波長を含む光、本質的に該波長からなる光、または該波長からなる光を検出するように構成される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、該システムまたは装置は、300~800nmの波長を含む光、本質的に該波長からなる光、または該波長からなる光を検出するように構成される。適切なシステムおよび装置は市販されており、例えば、以下を含むことができる:CRAIC社(San Dimas, CA)製の20/30 PV(商標)Microspectrometerまたは508 PV(商標)Microscope Spectrometer、Horiba社(Irvine, CA)製のDuetta(商標)、FluoroMax(商標)、Fluorolog(商標)、QuantaMaster 8000(商標)、DeltaFlex(商標)、DeltaPro、またはNanolog(商標)、あるいはLeica社(Buffalo Grove, IL)製のSP8 Lightning(商標)、SP8 Falcon(商標)、SP8 Dive(商標)、TCS SPE(商標)、HCS A(商標)、またはTCS SP8 X(商標)。
【0105】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、当技術分野で公知のルーチンな方法を用いてインサイチュハイブリダイゼーションの結果を検出して記録するために、蛍光顕微鏡撮影を使用することができる。あるいは、画像処理機能を備えたデジタル(コンピュータ実装)蛍光顕微鏡法を使用してもよい。複数の色標識が結合された染色体のFISHを画像化するための2つのよく知られたシステムとして、マルチプレックス-FISH(M-FISH)とスペクトル核型決定(spectral karyotyping:SKY)が挙げられる。染色体をペインティングしかつペインティングされた染色体を検出する方法のレビューについては、Schrock et al. (1996) Science 273:494; Roberts et al. (1999) Genes Chrom. Cancer 25:241; Fransz et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14584; Bayani et al. (2004) Curr. Protocol. Cell Biol. 22.5.1-22.5.25; Danilova et al. (2008) Chromosoma 117:345; 米国特許第6,066,459号; およびFISH TAG(商標)DNA Multicolor Kitの説明書(Molecular probes社)を参照されたい。
【0106】
ある例示的な態様では、蛍光標識された染色体の画像は、Applied Imaging社製のCytoVision(商標)システム(Applied Imaging Corporation, Santa Clara, Calif.)に改良(例えば、ソフトウェア、Chroma 84000フィルターセット、および強化フィルターホイール)を加えたものなどの、コンピュータ化されたイメージングシステムを用いて検出および記録される。他の適切なシステムとしては、Zeiss Axiophot顕微鏡に接続された冷却CCDカメラ(Photometrics社、Kodak KAF 1400 CCDを備えたNU200シリーズ)を用いたコンピュータ化イメージングシステムがあり、画像は、Ried et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1388に記載されるように処理される。他の適切なイメージングおよび分析システムは、Schrock et al. 前掲;およびSpeicher et al. (1996) Nature Genet. 12:368に記載されている。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、超解像顕微鏡法(例えば、確率的光再構成顕微鏡法(Stochastic Optical Reconstruction Microscopy:STORM)イメージング)で可視化される。
【0107】
本明細書に記載のインサイチュハイブリダイゼーション法は、様々な生体サンプルまたは臨床サンプルに対して、細胞周期の任意の(または全ての)段階(例えば、有糸分裂、減数分裂、間期、G0、G1、Sおよび/またはG2)にある細胞において、実施することができる。例を挙げると、あらゆる種類の細胞培養物、動物または植物組織、末梢血リンパ球、頬側スミア、未培養の原発性腫瘍から調製したタッチプレパレーション、癌細胞、骨髄、生検から得られた細胞または体液(例えば、血液、尿、痰など)中の細胞、羊水からの細胞、母体血からの細胞(例えば、胎児細胞)、精巣および卵巣からの細胞などがある。サンプルは、従来の技術を用いて本発明のアッセイ用に準備されるが、その技術は通常、サンプルまたは標本が採取される供給源に左右される。これらの例は、本明細書に記載の方法および/または組成物に適用できるサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0108】
本発明のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)の標的染色体配列へのハイブリダイゼーションは、標準的なインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)技術によって達成することが可能である(例えば、Gall and Pardue (1981) Meth. Enzymol. 21:470; Henderson (1982) Int. Review of Cytology 76:1を参照されたい)。一般に、ISHは、次の主要なステップを含む:(1)分析される生物学的構造体(例えば、染色体スプレッド)の固定;(2)標的DNAのアクセス性を高めるための生物学的構造体のプレハイブリダイゼーション処理(例えば、熱またはアルカリによる変性);(3)非特異的結合を減らすための(例えば、反復配列のハイブリダイゼーション能力をブロックすることによる)任意のプレハイブリダイゼーション処理;(4)核酸の混合物の、生物学的構造体または組織中の核酸へのハイブリダイゼーション;(5)ハイブリダイゼーションで結合しなかった核酸断片を除去するためのポストハイブリダイゼーション洗浄;および(6)ハイブリダイズした標識オリゴヌクレオチド(例えば、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint))の検出。これらの各ステップで使用される試薬およびそれらの使用条件は、特定の状況に応じて変わる。例えば、本明細書に記載の認識ドメインは、反復配列を避けるように設計することができるため、ステップ3は必ずしも必要でない。ハイブリダイゼーションの条件は、米国特許第5,447,841号にも記載されている。インサイチュハイブリダイゼーションのプロトコルおよび条件の多数のバリエーションが知られており、当業者は本明細書に提供されるガイダンスに従って本発明と共にそれらを使用できることが理解されよう。
【0109】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」とは、2本の一本鎖ポリヌクレオチドが非共有結合で結合して安定な二本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスを指す。「ハイブリダイゼーション」という用語は、三本鎖のハイブリダイゼーションを指すこともある。得られる(通常)二本鎖のポリヌクレオチドは、「ハイブリッド」または「二重鎖」である。「ハイブリダイゼーション条件」は、典型的には、約1M未満、より一般的には約500mM未満、さらに一般的には約200mM未満の塩濃度を含むであろう。ハイブリダイゼーション温度は5℃と低くすることもできるが、典型的には22℃より高く、より典型的には約30℃より高く、多くの場合は約37℃を超える。ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェントな条件、すなわちプローブがその標的部分配列にハイブリダイズする条件下で実施される。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況によって異なる。より長い断片は、特異的なハイブリダイゼーションのために、より高いハイブリダイゼーション温度を必要とするかもしれない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーには、相補鎖の塩基組成と長さ、有機溶媒の存在、塩基のミスマッチの程度など他の要因も影響しうるため、いずれか1つだけの絶対尺度よりも、パラメータの組み合わせが重要である。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHで、特定の配列のTmよりも約5℃低くなるように選択される。例示的なストリンジェントの条件は、pH7.0~8.3での少なくとも0.01M~1M以下のNaイオン(または他の塩)の塩濃度および少なくとも25℃の温度を含む。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mMリン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)および温度25~30℃の条件は、アレル特異的プローブハイブリダイゼーションに適している。ストリンジェントな条件については、例えば、Sambrook, Fritsche and Maniatis, Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Press (1989)およびAnderson Nucleic Acid Hybridization, 1st Ed., BIOS Scientific Publishers Limited (1999)を参照されたい。「~に特異的にハイブリダイズする」または「特異的に~にハイブリダイズする」または同様の表現は、特定のヌクレオチド配列が複雑な混合物(例えば、細胞内の全DNAまたはRNA)中に存在する場合に、ある分子がストリンジェントな条件下で実質的にその配列に、またはその配列にだけ、結合する、二重鎖形成する、またはハイブリダイズすることを意味する。
【0110】
本明細書で使用する用語「特異的結合」とは、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子間の化学的相互作用を指し、この場合、第1のエンティティは、非標的である第3のエンティティに結合するよりも高い特異性および親和性で、第2の標的エンティティに結合する。いくつかの態様では、特異的結合は、第1のエンティティの第2の標的エンティティに対する親和性が、第3の非標的エンティティに対する親和性よりも少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれ以上高いことを指すことができる。所与の標的に特異的な試薬は、利用するアッセイの条件下で、その標的に対して特異的な結合を示すものである。
【0111】
本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には合成手段によって調製される、一本鎖のDNAまたはRNA分子を含むがこれに限定されないことを意図している。本発明のヌクレオチドは、典型的には、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびチミジンに由来するヌクレオチドのような、天然に存在するヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドが「二本鎖」といわれる場合、当業者には理解されるように、一対のオリゴヌクレオチドは、水素結合したらせん配列で存在しており、これは、一般的に、例えばDNAと関係がある。二本鎖オリゴヌクレオチドの100%相補形に加えて、本明細書で使用する「二本鎖」という用語は、バルジおよびループなどの構造的特徴を含む形態をも含むことを意味している(Stryer, Biochemistry, Third Ed. (1988)を参照されたい;あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」は、(例えば、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、重合などによって)一緒に結合された2つ以上のオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されないことを意図している。
【0112】
核酸およびリボ核酸(RNA)分子は、当技術分野で周知の多くの手法のいずれかを用いて、特定の生体サンプルから分離することができ、選ばれる特定の分離手法は、特定の生体サンプルに適したものである。例えば、凍結融解およびアルカリ溶解の手法は、固体材料から核酸分子を取得するのに有用であり得る;加熱およびアルカリ溶解の手法は、尿から核酸分子を取得するのに有用であり得る;プロテイナーゼK抽出は、血液から核酸を取得するために使用され得る(Roiff, A et al. PCR: Clinical Diagnostics and Research, Springer (1994))。
【0113】
ある例示的な態様では、ユニバーサルプライマーを用いて、例えばオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)などの、核酸配列を増幅することができる。「ユニバーサルプライマー」という用語は、複数のポリヌクレオチドの鎖延長/増幅に使用できるプライマーのセット(例えば、フォワードプライマーとリバースプライマー)を指し、例えば、該プライマーは、複数のポリヌクレオチドに共通する部位にハイブリダイズする。例えば、ユニバーサルプライマーは、単一のプールに含まれる全ての、または本質的に全てのポリヌクレオチドの増幅に使用することができる。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、フォワードプライマーとリバースプライマーは、同じ配列を有する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、フォワードプライマーの配列は、リバースプライマーの配列と異なる。さらに他の局面では、複数のユニバーサルプライマー、例えば、数十、数百、数千またはそれ以上が提供される。
【0114】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ユニバーサルプライマーは、酵素的または化学的切断によって増幅後に除去できる一時的なプライマーであり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、ユニバーサルプライマーは、酵素的または化学的切断によって増幅後に除去できる一時的なプライマーであり得る。他の態様では、ユニバーサルプライマーは、鎖伸長時にポリヌクレオチド分子に組み込まれるようになる修飾を含み得る。例示的な修飾には、例えば、3'もしくは5'末端キャップ、標識(例えば、フルオレセイン)、またはタグ(例えば、ビオチンなどの、ポリヌクレオチドの固定化または単離を容易にするタグ)が含まれる。
【0115】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、オリゴヌクレオチド配列、例えばオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)など、の増幅を含む。増幅方法は、核酸を、該核酸に特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマー(例えば、ユニバーサルプライマー)と、ハイブリダイゼーションおよび鎖伸長を促進する条件下で接触させることを含み得る。核酸を増幅するための例示的な方法としては、以下が挙げられる:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、Mullis et al. (1986) Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 51 Pt 1:263およびCleary et al. (2004) Nature Methods 1:241; ならびに米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照)、アンカーPCR、RACE PCR、ライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al. (1988) Science 241:1077-1080; およびNakazawa et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:360-364を参照)、自家持続配列複製法(self sustained sequence replication)(Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:1874)、転写増幅システム(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:1173)、Q-βレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) BioTechnology 6:1197)、再帰的PCR(recursive PCR)(Jaffe et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:2619; およびWilliams et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:7790)、米国特許番号6,391,544、6,365,375、6,294,323、6,261,797、6,124,090および5,612,199に記載の増幅法、または当業者によく知られた技術を用いる他の核酸増幅法。例示的な態様では、本明細書に開示される方法は、PCR増幅を利用する。
【0116】
一般的に、PCR法は、遺伝子増幅の方法を表し、この方法は、(i)核酸サンプルまたはライブラリー内の特定の遺伝子もしくは配列へのプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション;(ii)その後の、熱安定性DNAポリメラーゼを用いた、複数ラウンドのアニーリング、伸長、および変性を伴う増幅;ならびに(iii)正しいサイズのバンドについてのPCR産物のスクリーニング;を含む。使用されるプライマーは、重合の開始をもたらすのに十分な長さと適切な配列のオリゴヌクレオチドであり、すなわち、各プライマーは増幅すべきゲノム座位の鎖に相補的であるように特別に設計される。別の態様では、本明細書に記載の遺伝子発現産物のmRNAレベルが、逆転写(RT)PCRにより、および定量RT-PCR(QRT-PCR)またはリアルタイムPCR法により測定され得る。RT-PCRおよびQRT-PCRの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0117】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、(例えば、PCRおよび/またはユニバーサルプライミング領域を介して)必ずしも増幅されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、記載されたオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)は、デノボ合成して、「管から直接」使用することができる。オリゴヌクレオチドをデノボ合成する方法は、当業者によく知られている。本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド合成」とは、定義された化学構造を持つ核酸の比較的短い断片の化学合成を指す。非限定的な例として、オリゴヌクレオチド合成の方法には、ホスホルアミダイト固相合成、ホスホルアミダイト合成、ホスホジエステル合成、ホスホトリエステル合成、または亜リン酸トリエステル合成が挙げられる。例えば、Beaucage et al. Tetrahedron Volume 48, Issue 12, 20 March 1992, Pages 2223-2311; Caruthers, J Biol Chem. 2013 Jan 11, 288(2):1420-7を参照されたい。いくつかの態様では、各オリゴヌクレオチドは別々に合成される。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドセット全体が、1つの反応で合成される。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドセット全体のサブセットが、1つの反応で合成される。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドセット全体が、多数の別々の反応で合成される。いくつかの態様では、反応生成物は、所望のオリゴヌクレオチドを高純度で得るために、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、単離される。
【0118】
ある例示的な態様では、キットが提供される。本明細書で使用する用語「キット」は、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)、リードアウト分子、および/または本明細書に記載の方法を実施するための試薬類を供給するための任意のデリバリーシステムを指す。アッセイとの関連では、そのようなキットは、反応試薬(例えば、オリゴヌクレオチドタグ、リードアウト分子、プライマー(例えば、存在する全てのオリゴヌクレオチドタグに特異的なプライマーおよび/またはオリゴヌクレオチドタグ配列の1つ以上のサブセットに特異的なプライマーの1つ以上のサブセット)、1つ以上の検出可能および/または回収可能な標識を結合させたプライマー、のうちの1つまたは複数を提供するエンクロージャ)、オリゴヌクレオチドを結合させた支持体(例えば、マイクロアレイ、パレットなど)、および/または補助材料(例えば、緩衝液、本明細書に記載のアッセイを実施するための説明書などを提供するエンクロージャ)をある場所から別の場所に貯蔵、輸送、または供給するためのシステムを含む。例えば、キットは、本明細書に記載のアッセイに関連する反応試薬および/または補助材料を含む1つまたは複数のエンクロージャ(例えば、箱)を含む。一局面では、本発明のキットは、1つまたは複数の標的ヌクレオチド配列(例えば、染色体)あるいは1つまたは複数の標的ヌクレオチド配列の1つまたは複数の領域(例えば、部分染色体領域)に特異的なオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を含む。一局面では、本発明のキットは、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)に特異的なリードアウト分子を含む。別の局面では、キットは、1つまたは複数のプライマー配列、複数の合成オリゴヌクレオチド配列を結合させた1つまたは複数の支持体、ならびに1つまたは複数の検出可能および/または回収可能な標識を含む。このような内容物は、意図されるレシピエントに一緒にまたは別々に配給され得る。例えば、第1の容器にはアッセイに使用するプライマー配列が含まれ、第2の容器には複数の合成オリゴヌクレオチド配列を付着させた支持体が含まれる。
【0119】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、複数の特定のオリゴヌクレオチド配列(例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)および/またはリードアウト分子)を結合させた1つまたは複数のアレイおよび/またはパレットを提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アレイおよび/またはパレットは、ゲノム(例えば、ヒトゲノム)上の結合パターンのセットに特異的な、複数のオリゴヌクレオチドタグ配列(例:Oligopaint)を提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、アレイまたはパレットは、本明細書に記載の1つまたは複数の疾患に関連する染色体異常のセット(例えば、転座、挿入、逆位、欠失、複製、転位、異数性、倍数性、複雑な再配列およびテロメア消失の1つまたは複数)に対して特異的である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載のキットは、臨床環境(例えば、病院、診療所、医院、臨床検査室、研究室など)において本明細書に記載の1つまたは複数の疾患を検出するための診断上および/または予後上の使用(例えば、患者の診断および/または予後、出生前診断および/または予後などのため)に特に適している。
【0120】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、キットに供給される複数の特定のオリゴヌクレオチドタグ配列(例:Oligopaint)を増幅するための説明書を提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、増幅されたオリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)を用いて、1つまたは複数の標的核酸配列(例えば、1つまたは複数の染色体または部分染色体領域)を検出可能および/または回収可能に標識するための説明書を提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint)およびリードアウト分子を用いて、1つまたは複数の標的核酸配列(例えば、1つまたは複数の染色体または部分染色体領域)を検出可能および/または回収可能に標識するための説明書を提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、1つまたは複数の標的核酸配列が検出可能および/または回収可能に標識されなくなるように、除きたいと考えている1つまたは複数のオリゴヌクレオチド配列にハイブリダイズする1つまたは複数の非標識増幅プライマーを含めることによって、増幅ステップ中に複数の特定のオリゴヌクレオチドタグ配列(例:Oligopaint)の1つ以上を効果的に除くための説明書を提供する。
【0121】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、任意のタイプのハードウェアおよび/またはソフトウェアで実行することができ、それは、予めプログラムされた汎用のコンピュータデバイスであり得る。例えば、該システムは、サーバー、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、シンクライアント、または任意の適切なデバイスを用いて実行することができる。本開示および/またはその構成要素は、単一の場所にある単一のデバイス、または単一もしくは複数の場所にある複数のデバイスであり得、複数のデバイスは、電気ケーブル、光ファイバーケーブルなどの任意の通信媒体で、または無線方式で、適切な通信プロトコルを用いて一緒に接続される。
【0122】
また、本開示は、特定の機能を果たす複数のモジュールを有するとして本明細書で例示および説明されることにも留意されたい。これらのモジュールは、明確にする目的でのみ機能に基づいて概略的に示されるだけであり、必ずしも特定のハードウェアまたはソフトウェアを表すものではないことを理解すべきである。これに関して、これらのモジュールは、記載する特定の機能を実質的に果たすために実装されるハードウェアおよび/またはソフトウェアであり得る。さらに、これらのモジュールは、希望する特定の機能に基づいて、本開示内で一緒に組み合わせたり、追加のモジュールに分割したりすることができる。したがって、本開示は、本発明を限定すると解釈されるべきではなく、単にその実現の一例を説明すると理解されるべきである。
【0123】
コンピューティングシステムは、クライアントとサーバーを含むことができる。クライアントとサーバーは通常、互いにリモートであり、典型的には通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバーの関係は、それぞれのコンピュータ上で動作しかつ互いに対してクライアント-サーバー関係を有する、コンピュータプログラムによって生じる。いくつかの実行では、サーバーは、データ(例えば、HTMLページ)をクライアントデバイスに送信する(例えば、クライアントデバイスと対話するユーザーにデータを表示し、ユーザーからのユーザー入力を受信するため)。クライアントデバイスで作成されたデータ(例えば、ユーザーとの対話の結果)は、クライアントデバイスからサーバーで受信することができる。
【0124】
本明細書に記載の主題の実行は、コンピューティングシステムで実行することができ、該コンピューティングシステムは、例えばデータサーバーとしての、バックエンドコンポーネントを含むか、ミドルウェアコンポーネント、例えばアプリケーションサーバーを含むか、フロントエンドコンポーネント、例えばユーザーが本明細書に記載の主題の実行と対話できるグラフィカルユーザーインターフェースまたはWebブラウザを有するクライアントコンピュータを含むか、あるいは1つまたは複数のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含む。該システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体、例えば通信ネットワーク、によって相互接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)とワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えば、インターネット)、およびピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)が挙げられる。
【0125】
本明細書に記載の主題および動作の実行は、デジタル電子回路で、または本明細書に開示される構造物およびその構造等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアで、あるいはそれらの1つまたは複数の任意の組み合わせで実行することができる。本明細書に記載の主題の実行は、1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、すなわち、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ記憶媒体上に符号化された、コンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして、実行することが可能である。代替的にまたは追加的に、プログラム命令は、人工的に生成された伝搬信号、例えば機械により発生される電気、光、または電磁信号、に符号化することができ、こうした信号は、データ処理装置による実行に適する受信装置に伝送するための情報を符号化するために生成される。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶デバイス、コンピュータ可読記憶基板、ランダムアクセスまたはシリアルアクセスのメモリアレイまたはデバイス、あるいはそれらの1つまたは複数の任意の組み合わせであり得るか、またはそれらに含まれ得る。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝搬信号に符号化されるコンピュータプログラム命令のソースまたはデスティネーションであり得る。コンピュータ記憶媒体はまた、1つまたは複数の別個の物理的コンポーネントまたは媒体(例えば、複数のCD、ディスク、または他の記憶デバイス)であり得るか、またはそれらに含まれ得る。
【0126】
本明細書に記載される動作は、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶デバイスに記憶されたまたは他のソースから受信されたデータに対して「データ処理装置」が行う動作として実行することができる。
【0127】
用語「データ処理装置」は、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、および機械を包含し、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システム・オン・チップ、または前述の複合物もしくは組み合わせを含む。この装置は、特殊目的用の論理回路、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)または特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)を含むことが可能である。該装置はまた、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、バーチャルマシン、またはそれらの任意の組み合わせを構成するコードをも含むことができる。該装置および実行環境は、様々な異なるコンピューティングモデルのインフラストラクチャ、例えば、webサービス、分散コンピューティングおよびグリッドコンピューティングのインフラストラクチャを実現することが可能である。
【0128】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイル型またはインタプリタ型言語、宣言型または手続き型言語など、あらゆる形式のプログラミング言語で書くことができ、また、例えば、スタンドアローンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、もしくはコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットとして、任意の形式でデプロイすることができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応し得るが、そうである必要はない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語の文書に保存された1つまたは複数のスクリプト)、問題のプログラム専用の単一のファイル、または複数のコーディネートファイル(例えば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータで実行されるように、あるいは1つのサイトに配置された、または複数のサイトに分散されて通信ネットワークで相互接続された、複数のコンピュータで実行されるようにデプロイすることが可能である。
【0129】
本明細書に記載されたプロセスおよびロジックフローは、入力データに作用して出力を生成することによってアクションを起こすために、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサで行うことができる。該プロセスおよびロジックフローはまた、特殊目的用の論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)によっても行うことができ、また、装置もそのような論理回路として実装することができる。
【0130】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、例として、汎用および特殊目的用の両方のマイクロプロセッサ、ならびにあらゆる種類のデジタルコンピュータのいずれか1つまたは複数のプロセッサが含まれる。一般的に、プロセッサは、リードオンリーメモリもしくはランダムアクセスメモリ、またはその両方から命令とデータを受け取るものである。コンピュータの必須要素は、命令に従って動作を実行するためのプロセッサ、および命令とデータを格納するための1つまたは複数の記憶デバイスである。一般に、コンピュータは、データを受信するか、データを転送するか、またはその両方のために、データを格納するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、もしくは光ディスクを含むか、またはそれらに動作可能に連結されることになる。しかし、コンピュータはそのようなデバイスを持つ必要はない。さらに、コンピュータは、別のデバイス、例えば、ほんの数例を挙げると、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯オーディオもしくはビデオプレーヤ、家庭用ゲーム機、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)受信機、またはポータブル記憶デバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)に組み込むことができる。コンピュータプログラム命令およびデータを格納するのに適したデバイスは、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイスを含み、例を挙げると、半導体メモリデバイス、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク;光磁気ディスク;ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクなどがある。プロセッサとメモリは、特殊目的用の論理回路によって補完され得るか、または該論理回路に組み込み可能である。
【0131】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語および語句の意味が、以下に提供される。特に明示されない限り、または文脈から暗示される場合を除き、以下の用語および語句は、以下に示した意味を含むものとする。定義は特定の態様の説明を補助するために提供され、請求項に係る発明を限定することを意図したものではない;なぜならば、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるためである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用と本明細書で提供されるその定義との間に明らかな食い違いがある場合には、本明細書で提供される定義が優先するものとする。
【0132】
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で採用される特定の用語が、ここに集められる。
【0133】
本明細書で使用する用語「染色体」とは、DNA、タンパク質、RNAおよび他の関連因子を含む、生細胞において遺伝を担っている遺伝子の構造体を指す。本明細書では、ヒトゲノムの染色体を識別しかつ番号を付けるための慣用の国際システムが使用される。個々の染色体のサイズは、多重染色体ゲノム内でも、ゲノムごとにも変化し得る。染色体はどのような生物種からも得ることができる。染色体は、成体対象、若年対象、幼児対象から、生まれる前の対象から(例えば、胎児から、例えば、羊水穿刺、絨毛膜サンプリングなどの出生前検査を介して、または胎児から直接、例えば胎児手術中に)、生体サンプル(例えば、生体組織、体液または細胞(例えば、痰、血液、血球、組織または細針生検サンプル、尿、脳脊髄液、腹水、および胸膜液、またはそれらから得られる細胞))から、または細胞培養サンプル(例えば、初代細胞、不死化細胞、部分不死化細胞など)から得ることができる。ある例示的な態様では、1つまたは複数の染色体は、ヒト属(Homo)、ショウジョウバエ属(Drosophila)、セノラブディティス属(Caenorhabiditis)、ダニオ属(Danio)、コイ属(Cyprinus)、ウマ属(Equus)、イヌ属(Canis)、ヒツジ属(Ovis)、タイヘイヨウサケ属(Ocorynchus)、タイセイヨウサケ属(Salmo)、ウシ属(Bos)、イノシシ属(Sus)、ヤケイ属(Gallus)、ナス属(Solanum)、コムギ属(Triticum)、イネ属(Oryza)、トウモロコシ属(Zea)、オオムギ属(Hordeum)、バショウ属(Musa)、カラスムギ属(Avena)、ヤマナラシ属(Populus)、アブラナ属(Brassica)、サトウキビ属(Saccharum)などを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の属から取得することができる。
【0134】
本明細書で使用する用語「染色体分染」(chromosome banding)とは、個々の染色体または染色体領域に特徴的な、識別可能な(例えば、色違いにまたは交互に着色された)領域の横断バンドのパターン(すなわち、「分染パターン」)をもたらす、染色体の示差的染色を指す。従来型の分染技術には、G分染(ギムザ染色)、Q分染(キナクリンマスタード染色)、R分染(リバースギムザ)、およびC分染(セントロメア分染)が含まれる。
【0135】
本明細書で使用する用語「核型」とは、染色体の数と形態の両方によって定義される、所与の生物種の個々の細胞、細胞株、またはゲノムの染色体特徴を指す。核型は、転座、挿入転座、逆位、欠失、重複、転位、異数性、複雑な再配列、テロメア消失などを含むがこれらに限定されない、様々な染色体再配列を指すことができる。典型的には、核型は、顕微鏡写真またはコンピュータ作成画像からの、前期または中期(または他の凝縮状態)の染色体の体系的配列として提示される。また、間期の染色体も検査されることがある。
【0136】
本明細書で使用する用語「染色体異常」(chromosomal aberration)または「染色体異常」(chromosome abnormality)は、対象の染色体または核型の構造と、正常な(すなわち、異常のない)相同染色体または核型との間の偏差を指す。偏差は1塩基対のこともあれば、多数の塩基対のこともある。染色体または核型に言及する場合の「正常」または「異常のない」という用語は、特定の種および性の健康な個体に見られる核型または分染パターンを指す。染色体異常は、数値的または構造的な性質であり、異数性、倍数性、逆位、転座、欠失、重複などが含まれるが、これらに限定されない。染色体異常は、病的状態の存在、または病的状態を発症する素因と相関している可能性がある。染色体異常はまた、疾患、障害および/または表現型変化と関連しない変化を指すこともある。このような異常は、稀であるか、または低い頻度(例えば、母集団の数パーセント(例えば、多形))で存在し得る。
【0137】
1つまたは複数の染色体異常に関連する疾患には、限定するものではないが、以下が含まれる:常染色体異常(例:トリソミー(ダウン症(21番染色体))、エドワーズ症候群(18番染色体)、パトウ症候群(13番染色体)、9トリソミー、ワルカニー症候群(8番染色体)、22トリソミー/キャットアイ症候群、16トリソミー);モノソミーおよび/または欠失(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4番染色体)、Cri du chat/染色体5q欠失症候群(5番染色体)、ウィリアムズ症候群(7番染色体)、ヤコブセン症候群(11番染色体)、ミラー・ディッカー症候群/スミス・マゲニス症候群(17番染色体)、ディ・ジョージ症候群(22番染色体)、ゲノムインプリンティング(アンジェルマン症候群/プラダー・ウィリ症候群(15番染色体)));X/Y連鎖異常(例えば、モノソミー(ターナー症候群(XO)、トリソミーもしくはテトラソミーおよび/または他の核型もしくはモザイク(クラインフェルター症候群(47(XXY))、48(XXYY)、48(XXXY)、49(XXXYY)、49(XXXXY)、トリプルX症候群(47(XXX))、48(XXXX)、49(XXXXX)、47(XYY)、48(XYYY)、49(XYYYY)、46(XX/XY));転座(例えば、白血病またはリンパ腫(例えば、リンパ系(例:バーキットリンパ腫t(8 MYC;14 IGH)、濾胞性リンパ腫t(14 IGH;18 BCL2)、マントル細胞リンパ腫/多発性骨髄腫t(11 CCND1;14 IGH)、未分化大細胞リンパ腫t(2 ALK;5 NPM1)、急性リンパ性白血病)または骨髄性(例えば、フィラデルフィア染色体t(9 ABL;22 BCR)、成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病 t(8 RUNX1T1;21 RUNX1)、急性前骨髄球性白血病 t(15 PML,17 RARA)、急性巨核芽球性白血病 t(1 RBM15;22 MKL1)))またはその他(例えば、ユーイング肉腫 t(11 FiI1;22 EWS)、滑膜肉腫 t(x SYT;18 SSX)、隆起性皮膚線維肉腫 t(17 COL1A1;22 PDGFB)、粘液型脂肪肉腫t(12 DDIT3;16 FUS)、線維形成性小円形細胞腫瘍t(11 WT1;22 EWS)、胞巣状横紋筋肉腫t(2 PAX3;13 FOXO1)t(1 PAX7;13 FOXO1)));性腺形成不全(例えば、混合性性腺形成不全、XX性腺形成不全);およびその他の異常(例えば、脆弱X症候群、片親性ダイソミー)。また、1つまたは複数の染色体異常に関連する疾患には、限定するものではないが、以下も含まれる:ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、鰓弓耳腎(branchio-oto-renal)症候群、猫鳴き症候群、デランゲ症候群、全前脳胞症、ルビンシュタイン・テイビ症候群、およびWAGR症候群。
【0138】
1つまたは複数の染色体異常に関連する疾患には、細胞増殖性疾患(例えば、癌)も含まれる。本明細書で使用する用語「細胞増殖性疾患」には、多細胞生物における1つまたは複数の細胞サブセットの望ましくないまたは不適切な増殖によって特徴づけられる疾患が含まれる。用語「癌」とは、様々なタイプの悪性新生物を指し、その多くは周囲の組織に浸潤し、異なる部位に転移する可能性がある(例えば、PDR Medical Dictionary第1版、1995年を参照)。「新生物」および「腫瘍」という用語は、正常よりも急速に細胞増殖によって成長し、かつ増殖を開始させた刺激が取り除かれた後も成長し続ける異常な組織を指す(例えば、PDR Medical Dictionary第1版、1995年を参照)。そのような異常な組織は、正常組織との構造的組織化および機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、良性(すなわち、良性腫瘍)または悪性(すなわち、悪性腫瘍)のいずれかであり得る。
【0139】
1つまたは複数の染色体異常と関連する疾患には、脳疾患も含まれ、それらには、限定するものではないが、以下が含まれる:聴神経腫、後天性脳損傷、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、動脈瘤、失語症、動静脈奇形、注意欠陥多動性障害、自閉症、バッテン病、ベーチェット病、眼瞼痙攣、脳腫瘍、脳性麻痺、シャルコー・マリー・トゥース病、キアリ奇形、CIDP、非アルツハイマー型認知症、自律神経障害、ディスレクシア、運動障害、ジストニア、てんかん、本態性振戦、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、ギランバレー症候群、頭痛、片頭痛、ハンチントン病、水頭症、メニエール病、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、ナルコレプシー、パーキンソン病、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、レストレスレッグス症候群、レット症候群、統合失調症、シャイ・ドレーガー症候群、脳卒中、くも膜下出血、シデナム症候群、テイ・サックス病、トゥレット症候群、一過性脳虚血発作、横断性脊髄炎、三叉神経痛、結節性硬化症、およびフォンヒッペル・リンドウ症候群。
【0140】
本明細書で使用する「減少」、「低減」、「低下」、または「抑制」という用語は全て、統計的に有意な量だけ減少することを意味する。いくつかの態様では、「低減」、「低下」もしくは「減少」または「抑制」は、典型的には、基準レベル(例えば、所定の治療または薬剤の非存在)と比較して、少なくとも10%減少することを意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含むことができる。本明細書で使用する「低減」または「抑制」は、基準レベルと比較したときの完全な抑制または低減を包含するものではない。「完全な抑制」とは、基準レベルと比較して100%抑制されることである。減少は、好ましくは、所与の疾患のない個体の正常範囲内として認められたレベルにまで減少することができる。
【0141】
本明細書で使用する「増加」、「増加する」、「高める」、または「活性化する」という用語は全て、統計的に有意な量だけ増加することを意味する。いくつかの態様では、「増加」、「増加する」、「高まる」、または「活性化する」という用語は、基準レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、基準レベルと比較して少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、もしくは100%まで(100%を含む)の増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは基準レベルと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍と10倍の間の任意の増加、またはそれ以上の増加を意味することができる。マーカーまたは症状との関連において、「増加」とは、そのようなレベルの統計的に有意な増加である。
【0142】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、基準サンプルまたはレベルは、本明細書に記載の組成物と接触させる前のサンプルまたはサンプル自体のレベルである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、基準サンプルまたはレベルは、サンプルと接触させる前の本発明に記載の組成物のサンプルまたはレベルである。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、基準は、検出分子を含まない組成物と接触させたサンプルであり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、基準は、サンプルに特異的でない認識ドメインを含む組成物と接触させたサンプルであり得る。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、基準はまた、対照個体のプールしたサンプルである対照サンプルから得られたレベル、またはそれに基づく数値もしくは数値範囲であり得る。
【0143】
本明細書で使用する「対象」とは、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は霊長類、げっ歯類、家畜、狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザル、が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科動物、例えば家ネコ、イヌ科動物、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、トリ類、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、魚類、例えばマス、ナマズ、サケが含まれる。いくつかの態様では、対象は、哺乳類、例えば霊長類、例えばヒトである。本明細書では、「個体」、「患者」および「対象」という用語は、交換可能に使用される。
【0144】
好ましくは、対象は哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。
【0145】
本明細書で使用する用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、交換可能に使用され、隣接残基のα-アミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸残基を示す。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、そのサイズまたは機能に関係なく、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸類似体を含めて、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」と「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多く、一方用語「ペプチド」は、小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複している。「タンパク質」と「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびその断片を指す場合、本明細書では交換可能に使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、ならびに前述の他の同等物、バリアント、断片、および類似体が含まれる。
【0146】
本明細書に記載の様々な態様では、記載された特定のポリペプチドのいずれかのバリアント(天然に存在するかそうでないもの)、アレル、ホモログ、保存的修飾バリアント、および/または保存的置換バリアントが包含されることがさらに企図される。アミノ酸配列に関して、当業者には認識されるように、コードされた配列中の単一のアミノ酸または小割合のアミノ酸を改変する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、その改変が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらし、かつポリペプチドの望ましい活性を保持する「保存的修飾バリアント」である。そのような保存的修飾バリアントは、本開示と一致する多型バリアント、種間ホモログ、およびアレルに追加され、それらを除外しない。
【0147】
所与のアミノ酸は、同様の物理化学的特性を有する残基で置き換えることができ、例えば、ある脂肪族残基を別のものに(例えば、Ile、Val、Leu、またはAlaを互いに)置き換えたり、ある極性残基を別のものに(例えば、LysとArg間、GluとAsp間、またはGlnとAsn間で)置き換えることができる。その他のこのような保存的置換、例えば同様の疎水性特性を有する領域全体の置換は、よく知られている。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、所望の活性、例えば天然または基準ポリペプチドの活性および特異性が保持されていることを確認するために、本明細書に記載のアッセイのいずれか1つで試験することができる。
【0148】
アミノ酸類は、それらの側鎖の特性の類似性によってグループ分けすることができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):(1) 非極性: Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M); (2) 非荷電極性: Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q); (3) 酸性: Asp (D), Glu (E); (4) 塩基性: Lys (K), Arg (R), His (H)。あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖の性質に基づいてグループに分けることができる:(1) 疎水性: ノルロイシン, Met, Ala, Val, Leu, Ile; (2) 中性親水性: Cys, Ser, Thr, Asn, Gln; (3) 酸性: Asp, Glu; (4) 塩基性: His, Lys, Arg; (5) 鎖配向に影響を与える残基: Gly, Pro; (6) 芳香族: Trp, Tyr, Phe。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することが必要である。特定の保存的置換には、例えば、AlaをGlyまたはSerに;ArgをLysに;AsnをGlnまたはHisに;AspをGluに;CysをSerに;GlnをAsnに;GluをAspに;GlyをAlaまたはProに;HisをAsnまたはGlnに;IleをLeuまたはValに;LeuをIleまたはValに;LysをArg、GlnまたはGluに;MetをLeu、TyrまたはIleに;PheをMet、LeuまたはTyrに;SerをThrに;ThrをSerに;TrpをTyrに;TyrをTrpに;および/またはPheをVal、IleまたはLeuに置換することが含まれる。
【0149】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載のアミノ酸配列のうちの1つの機能性断片であり得る。本明細書で使用する「機能性断片」とは、本明細書に後述されるアッセイに従って野生型基準ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持しているペプチドの断片またはセグメントのことである。機能性断片は、本明細書に開示された配列の保存的置換を含むことができる。
【0150】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリペプチドは、本明細書に記載の配列のバリアントであり得る。いくつかの態様では、該バリアントは保存的修飾バリアントである。保存的置換バリアントは、例えば、天然のヌクレオチド配列の変異によって得ることができる。本明細書でいう「バリアント」とは、天然または基準ポリペプチドと実質的に相同なポリペプチドであるが、1つまたは複数の欠失、挿入または置換のために天然または基準ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドのことである。バリアントポリペプチドをコードするDNA配列は、天然または基準DNA配列と比較して、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失または置換を含むが、活性を保持するバリアントタンパク質またはその断片をコードする配列を包含する。PCRをベースにした多種多様な部位特異的変異導入アプローチが当技術分野で知られており、当業者であれば、それらを応用することが可能である。
【0151】
バリアントのアミノ酸またはDNA配列は、天然または基準配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上同一であり得る。天然配列と変異配列の間の相同性の程度(同一性パーセント)は、例えば、ワールドワイドウェブ上でこの目的のために一般的に使用される自由に利用可能なコンピュータプログラム(例えば、デフォルト設定のBLASTpまたはBLASTn)を用いて、2つの配列を比較することによって決定することができる。
【0152】
天然アミノ酸配列の改変は、当業者に知られた多くの手法のいずれかによって達成することができる。変異は、例えば、変異配列(天然配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位がその両側に隣接する)を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の座位に導入することができる。ライゲーション後、得られた再構成配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有する類似体をコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異導入法を使用して、必要とされる置換、欠失、または挿入により改変された特定のコドンを有する改変ヌクレオチド配列を提供することも可能である。このような改変を行う技術はよく確立されており、例えば、以下により開示されたものが含まれる:Walder et al. (Gene 42:133, 1986); Bauer et al. (Gene 37:73, 1985); Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19); Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981); ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号;これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ポリペプチドの適切なコンフォメーションの維持に関与しないシステイン残基もまた、分子の酸化的安定性を改善しかつ異常な架橋を防止するために、一般にはセリンで、置換することができる。逆に、ポリペプチドの安定性を改善したり、オリゴマー化を促進したりするために、システイン結合(複数可)をポリペプチドに追加することも可能である。
【0153】
本明細書で使用する用語「核酸」または「核酸配列」とは、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはその類似体の単位を組み込んだ任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの一方の核酸鎖であり得る。あるいは、それは二本鎖DNAに由来しない一本鎖核酸でもよい。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、一本鎖核酸は、インビトロ転写と、それに続く逆転写によって生成される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、一本鎖核酸は、ニッキングエンドヌクレアーゼへの曝露によって生成される。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、一本鎖核酸はデノボ合成される。一局面では、核酸はDNAであってよい。別の局面では、核酸はRNAであってよい。適切なDNAとしては、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAがある。適切なRNAとしては、例えば、mRNAがある。
【0154】
用語「発現」とは、RNAおよびタンパク質の産生、必要に応じてタンパク質の分泌、に関与する細胞プロセスを指し、該当する場合には、例えば、転写、転写産物のプロセシング、翻訳、ならびにタンパク質の折り畳み、修飾およびプロセシングなどが含まれるが、これらに限定されない。発現は、本発明の核酸断片(複数可)に由来するセンス(mRNA)もしくはアンチセンスRNAの転写と安定な蓄積、および/またはmRNAのポリペプチドへの翻訳を指すことができる。
【0155】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー(複数可)、標的(複数可)、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、組織特異的である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー(複数可)、標的(複数可)、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、グローバルである。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー(複数可)、標的(複数可)、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全身である。
【0156】
「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳により得られるポリペプチドが含まれる。「遺伝子」とは、適切な調節配列に機能的に連結された場合に、インビトロまたはインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域の前後の領域、例えば、5'非翻訳(5'UTR)または「リーダー」配列と3'UTRまたは「トレーラー」配列、および個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも、含まなくてもよい。
【0157】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの標的分子のレベルを測定、検出、または決定することに関する。本明細書で使用する「検出」または「測定」という用語は、サンプル中の被分析物の存在を示すために、例えば、プローブ、標識、または標的分子からのシグナルを観察することを意味する。特定の標識部分を検出するための当技術分野で公知の方法はどれも、検出に使用することができる。例示的な検出方法としては、分光学的、蛍光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的方法が挙げられるが、これらに限定されない。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、測定は、定量的観察であり得る。
【0158】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載のポリペプチド、核酸、または細胞は、人工的に改変され得る。本明細書で使用する「人工的に改変された」(engineered)とは、人の手によって操作されたという側面を指す。例えば、ポリペプチドの少なくとも1つの側面、例えばその配列が、自然界に存在するその側面とは異なるように人の手によって操作された場合、そのポリペプチドは「人工的に改変された」とみなされる。一般的な慣行であるように、また、当業者には理解されるように、実際の操作が以前のエンティティに対して行われたとしても、人工的に改変された細胞の子孫は、一般的に、依然として「人工的に改変された」とみなされる。
【0159】
前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の核酸(例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint))は、外因性である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の核酸(例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint))は、異所性である。前記局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書に記載の核酸(例えば、オリゴヌクレオチドタグ(例:Oligopaint))は、内因性ではない。
【0160】
用語「外因性」とは、天然の供給源以外の細胞に存在する物質を指す。本明細書で使用する用語「外因性」は、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチドが通常見出されない細胞または生物などの生体系(人は、そのような細胞または生物に該核酸またはポリペプチドを導入したいと考えている)に、人の手を必要とするプロセスによって導入された該核酸またはポリペプチドを指すことができる。あるいは、「外因性」は、核酸またはポリペプチドが比較的少量でしか見出されない細胞または生物などの生体系(人は、例えば異所性発現またはレベルをもたらすために、該細胞または生物中の該核酸またはポリペプチドの量を増加させたいと考えている)に、人の手を必要とするプロセスによって導入された該核酸またはポリペプチドを指すこともできる。これに対して、用語「内因性」とは、生体系または細胞にもともと見出される物質を指す。本明細書で使用する「異所性」とは、通常とは異なる場所および/または量で存在する物質を指す。異所性物質は、所与の細胞内に通常見出されるが、はるかに少ない量で、かつ/または異なる時期に見出される物質であり得る。また、異所性には、所与の細胞内にその自然な環境の下ではもともと見出されない、または発現されないポリペプチドまたは核酸などの物質も含まれる。
【0161】
本明細書で使用する「接触」とは、少なくとも1つの細胞に薬剤を供給する、つまり曝露する、ための任意の適切な手段を指す。例示的な供給方法には、細胞培養液への直接供給、灌流、注入、または当業者によく知られた他の供給方法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、接触は、物理的な人間の活動、例えば注入;分配する、混合する、および/もしくはデカントする行為;ならびに/または供給装置もしくは機械の操作を含む。
【0162】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般的には2標準偏差(2SD)以上の差を意味する。
【0163】
実施例以外で、または別途指示された場合を除き、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表す全ての数字は、いかなる場合も「約」という用語で修飾されると理解されたい。パーセンテージに関連して使用される用語「約」は、±1%を意味し得る。
【0164】
本明細書で使用する用語「含む」は、提示された特定の要素に加えて、他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく、包含を示す。
【0165】
用語「からなる」は、その態様の説明に記載されていない要素を除外する、本明細書に記載の組成物、方法、およびそれらの各構成要素を指す。
【0166】
本明細書で使用する用語「本質的に~からなる」は、所与の態様に必要とされる要素を指す。この用語は、本発明の態様の基本的かつ新規なまたは機能的な特性(複数可)に重大な影響を与えない追加要素の存在を許可する。
【0167】
本明細書で使用する用語「~に対応する」は、第1のポリペプチドもしくは核酸中の列挙された位置のアミノ酸もしくはヌクレオチド、または第2のポリペプチドもしくは核酸中の列挙されたアミノ酸もしくはヌクレオチドと同等であるアミノ酸もしくはヌクレオチドを意味する。同等の列挙されたアミノ酸またはヌクレオチドは、当技術分野で知られた相同度プログラム、例えばBLAST、を用いた候補配列のアライメントによって決定することができる。
【0168】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、「および」を含むことが意図される。本開示の実施または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の方法および材料を用いることができるが、好適な方法および材料が以下に記載される。略語の「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0169】
本明細書に開示された本発明の代替的要素または態様のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはそのグループの他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素との任意の組み合わせで言及されかつクレームされ得る。あるグループの1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由のため、グループに含めたり、グループから削除したりすることができる。そのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュグループの記述を満たす、そのように変更されたグループを含むとみなされる。
【0170】
特に本明細書で定義されない限り、本出願に関連して使用される技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。本発明は、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコル、試薬などに限定されず、それ故に変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図したものではない。免疫学および分子生物学における一般的な用語の定義は、以下の文献に見出すことができる:The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 第20版, Merck Sharp & Dohme Corp.発行, 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421); Robert S. Porter et al. (編), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, Blackwell Science Ltd.発行, 1999-2012 (ISBN 9783527600908); およびRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.発行, 1995 (ISBN 1-56081-569-8); Immunology by Werner Luttmann, Elsevier発行, 2006; Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (編), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053); Lewin's Genes XI, Jones & Bartlett Publishers発行, 2014 (ISBN-1449659055); Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第4版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X); Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (編) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542); Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (編), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (編), John Wiley and Sons, Inc., 2005; ならびにCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe (編), John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737);これらの内容は全て、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0171】
その他の用語は、本明細書では、本発明の様々な局面の説明の中で定義されている。
【0172】
本出願を通して引用された全ての特許および他の刊行物(文献参照、発行済み特許、公開済み特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)は、例えば、本明細書に記載の技術に関連して使用される可能性があるそのような刊行物に記載された方法論を説明および開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日前にそれらが開示されたというだけで提供される。この点に関して何ものも、本発明者らが先行発明の理由でまたはその他の理由によりそのような開示に先行する権利を有しないことを容認するものと、解釈されるべきではない。これらの文書の日付に関する全ての記載または内容に関する説明は、本出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性について何ら承認するものではない。
【0173】
本開示の態様の説明は、網羅的であることを意図しておらず、また、開示された正確な形態に本開示を限定することを意図していない。本開示の特定の態様および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、関連技術分野の当業者には理解されるように、様々な等価的変更が本開示の範囲内で可能である。例えば、方法ステップまたは機能は所定の順序で提示されているが、代替的態様では、機能を異なる順序で実行したり、機能を実質的に同時に実行したりすることが可能である。本明細書で提供される本開示の教示は、適宜、他の手順または方法に応用することができる。本明細書に記載された様々な態様は、さらなる態様を提供するために組み合わせることが可能である。本開示の局面は、必要に応じて、上記文献および出願の構成、機能および概念を採用して、本開示のさらに別の態様を提供するように、変更することができる。これらおよび他の変更は、詳細な説明を考慮して、本開示に対して行うことが可能である。そのような全ての変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0174】
前述の態様のいずれかの特定の要素は、他の態様の要素と組み合わせたり、他の態様の要素の代わりに使用したりすることができる。さらに、本開示の特定の態様に関連する利点がこれらの態様との関連で説明されてきたが、他の態様もまた、そのような利点を示す可能性があり、また、全ての態様が本開示の範囲内に入るためにそのような利点を必ずしも示す必要はない。
【0175】
本明細書に記載の技術は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは、決して、さらなる限定として解釈されるべきではない。
【0176】
本明細書に記載の技術のいくつかの態様は、以下の番号を付けた項目のいずれかに従って定義される:
1. サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析する方法であって、以下のステップ:
a. サンプルを少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグと接触させるステップであって、各オリゴヌクレオチドタグが、
i. 分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメイン、および
ii. 少なくとも1つのカセットを含む少なくとも1つのストリート
を含み、各カセットが、
1. アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域
を含み、
ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列がステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、ステップ(a)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、ステップ;
b. 該サンプルを少なくとも2つのリードアウト分子と接触させるステップであって、各リードアウト分子が、
i. ステップ(a)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、および
ii. 検出分子
を含み、
ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、ステップ;ならびに
c. 少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序を検出するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、ステップ
を含む、方法。
2. 前記バーコード領域が1~10ヌクレオチドを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
3. 前記ストリートが少なくとも3つのカセットを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
4. 前記バーコード領域の両側にアンカー領域が隣接している、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
5. 全てのオリゴヌクレオチドタグのアンカー領域が一定である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
6. カセットへのリードアウト分子の特異的ハイブリダイゼーションが、バーコード領域のアイデンティティによって決定される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
7. 前記検出分子がフルオロフォアである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
8. 検出するステップが、蛍光顕微鏡法により実施される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
9. 前記検出分子が、ビオチン、アミン、金属、アンカリング分子、またはアクリダイトを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
10. 検出するステップが、少なくともシングルセル解像法により実施される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
11. ステップ(b)が、サンプルを少なくとも4つのリードアウト分子と接触させることを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
12. ステップ(b)が、サンプルを、少なくとも3つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
13. ステップ(b)が、サンプルを、少なくとも4つの識別可能な検出分子を集合的に構成するリードアウト分子のグループと接触させることを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
14. 少なくとも2つの標的分子が同時に分析される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
15. 少なくとも3つの標的分子が同時に分析される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
16. 少なくとも10の標的分子が同時に分析される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
17. 少なくとも20の標的分子が同時に分析される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
18. 標的分子が、核酸、ポリペプチド、細胞表面分子、または無機物である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
19. 標的分子がDNAまたはmRNAである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
20. 前記サンプルが、細胞、細胞培養物、または組織サンプルである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
21. サンプル中の少なくとも1つの標的分子を分析するためのシステムであって、
a. 少なくとも2つの検出可能な分子を検出できる検出器;
b. 少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグであって、各オリゴヌクレオチドタグが、
i. 分析される標的分子に特異的に結合する認識ドメイン、および
ii. 少なくとも1つのカセットを含むストリート
を含み、各カセットが、
1. アンカー領域が少なくとも片側に隣接している、少なくとも1ヌクレオチドを含むバーコード領域
を含み、
ここで、少なくとも、A.ストリート内のカセットの空間的順序が異なる、またはB.バーコード領域の配列が(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのバーコード領域と異なる、という点で、各オリゴヌクレオチドタグのストリートが、(b)の他のオリゴヌクレオチドタグのストリートと比べてユニークである、オリゴヌクレオチドタグ;ならびに
c. 少なくとも2つのリードアウト分子であって、各リードアウト分子が、
i. (b)で使用される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグのカセットと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、および
ii. 検出分子
を含み、ここで、少なくとも2つのリードアウト分子が、少なくとも2つの識別可能な検出分子を集合的に構成する、リードアウト分子
を含み、
ここで、サンプルが該少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグおよび該少なくとも2つのリードアウト分子と接触され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグにハイブリダイズした検出分子の相対的な空間的順序が検出され;ここで、該少なくとも1つのオリゴヌクレオチドタグが該少なくとも1つの標的分子にハイブリダイズされ、それによって、該検出分子の相対的な空間的順序が、どのオリゴヌクレオチドタグがその位置で標的分子にハイブリダイズされるかを特定することを可能にする、システム。
【実施例】
【0177】
実施例1
既存の技術と比較して、本明細書に記載の方法および組成物は、多重化技術であるOligoCASSEQを利用して、同じ細胞内の数千の標的を可視化および識別することにより、単一細胞レベルでの顕微鏡を用いたDNA、mRNA、タンパク質などの分析を可能にし、細胞プロセスのよりグローバルな全体像を提供する。一度に4~5つの標的を分析することに限られる現在の顕微鏡技術とは異なり、OligoCASSEQは、効率的かつ費用効果の高い方法で高レベルの多重化を実現する。第一に、OligoCASSEQは、費用がかかりかつ非効率的であり得る酵素を使用しない。第二に、OligoCASSEQは、費用を高める一方で精度を低下させる長たらしいオリゴを必要としない。
【0178】
本明細書に記載の技術は、「OligoCASSEQ」と呼ばれることもあり、単一細胞レベルでの高度に多重化された標的識別を可能にする技術である。この例示的態様では、DNAは、「カセット」を含む「ストリート」を有するOligopaintによって標的とされる(例えば、
図1Aを参照)。カセットは、一定のアンカー領域が両側に隣接する可変バーコード領域からなる(例えば、
図1Bを参照)。バーコードは、各バーコード位置のヌクレオチドに特異的な蛍光標識オリゴ(例えば、リードアウト;リードアウト分子とも呼ばれる)を用いて配列決定される(例えば、
図1Cを参照)。リードアウトは、アンカー領域を介してカセットを認識して、カセットに競合的に結合する。相補的結合は、特定のバーコード配列のリードアウト認識によって指示される(例えば、
図1Dを参照)。この設計により、カセットを小型化し、かつ必要なリードアウトの量を減らすことができる。5ヌクレオチドのバーコードは、1024の標的(4
5)を識別することが可能である。
【0179】
OligoCASSEQは、Oligopaint技術を補完するものである。つまり、OligoCASSEQは、オリゴヌクレオチドタグが付いたものなら何でも多重化/解読するように機能することができ、そうしたものには、限定するものではないが、オリゴヌクレオチドタグ付きオリゴ(例えば、Oligopaintまたは他のDNA結合性エンティティ)、オリゴヌクレオチドタグ付き抗体(例えば、ナノボディ)、オリゴヌクレオチドタグ付き小分子(例えば、薬物スクリーニングのため)、オリゴヌクレオチドタグ付き細胞、およびオリゴヌクレオチドタグ付き非生体材料(金属、化学物質など)が含まれる。DNA標的はOligopaintとハイブリダイズする。OligoCASSEQの場合は、ヌクレオチドカセット配列がOligopaintの非ゲノムターゲティング「ストリート」にコードされていることが決定的な違いである。これらのカセットは、Oligopaintのバーコード化を可能にし、それゆえ、高レベルの多重化を可能にする。
【0180】
本明細書に記載されるように、標的はDNAであり得る。OligoCASSEQはまた、他の標的(例えば、RNA、タンパク質など)にも同様に適している。OligoCASSEQにより、顕微鏡法を用いて膨大な数の標的を識別することが可能である。これらの標的には、DNA、RNA、タンパク質、細胞、無機物が含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
本明細書では、染色体をその場でトレースするためのOligoCASSEQの使用が実証される。非限定的な例として、OligoCASSEQを使用して、ヒト2番染色体(Chr.2)に沿った5つの座位の局在を決定することができる(例えば、
図1E~
図1Hを参照)。2ヌクレオチド4カラーバーコードを使用した(例えば、
図1Eを参照)。PGP1-F細胞の顕微鏡写真の画像は、2つのバーコード位置のOligoCASSEQ問い合わせ(例えば、上段と中段を参照)と、それに続く同じ核内の1番目の位置の再問い合わせ(例えば、下段を参照)を示している。各顕微鏡写真の上の模式図は、異なるバーコード位置での特定の座位のカラーコードを示している(例えば、
図1Fを参照)。バーコード上のリードアウトを識別し、次いで解読した(例えば、
図1Gを参照)。その後、各染色体の空間的位置をトレースした(例えば、
図1Hを参照)。
【0182】
OligoCASSEQは、一度に複数(>5)の標的をターゲティングして識別する必要性に対処している。顕微鏡は一度に4~5色しか識別できないため、現在は一度に4~5つの標的を調べられるにすぎない。OligoCASSEQは、バーコーディングと多重化を通してこの問題を解決する。1つの標的が1つの色で表される代わりに、標的は4つの色の並びで表され、これにより、問い合わせできる標的の数が指数関数的に増加する。
【0183】
OligoCASSEQは、1)酵素を必要としない、2)オリゴの長さを短縮できる、3)必要なリードアウトオリゴの複雑さと数を削減できる、という理由のため、他の選択肢よりも優れている。
【配列表】