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特許7669393バッテリの真贋判定方法、バッテリの真贋判定装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】バッテリの真贋判定方法、バッテリの真贋判定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250421BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20250421BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20250421BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20250421BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20250421BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/396
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022573911
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033871
(87)【国際公開番号】W WO2022149311
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021000865
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】田崎 信昭
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-60032(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2461172(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
G01R 31/382
G01R 31/385
G01R 31/387
G01R 31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得し、
前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、
前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出し、
前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行い、
前記真贋判定の結果を出力する、
バッテリの真贋判定方法。
【請求項2】
前記状態量は、満充電容量を含む、請求項1に記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項3】
前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが満充電される毎に前記満充電容量を算出することにより、複数の満充電容量値を算出し、
前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記満充電容量の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、
前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の満充電容量値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記満充電容量値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する、請求項2に記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項4】
前記状態量は、残容量率に応じた開放端子間電圧を含む、請求項1~3のいずれか一つに記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項5】
前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが充電される毎に前記開放端子間電圧を算出することにより、複数の開放端子間電圧値を算出し、
前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記開放端子間電圧の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、
前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の開放端子間電圧値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記開放端子間電圧値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する、請求項4に記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項6】
前記状態量は、残容量率及び放電電流率に応じた降下電圧を含む、請求項1~5のいずれか一つに記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項7】
前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが放電される毎に前記降下電圧を算出することにより、複数の降下電圧値を算出し、
前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記降下電圧の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、
前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の降下電圧値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記降下電圧値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する、請求項6に記載のバッテリの真贋判定方法。
【請求項8】
バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得する取得部と、
前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出する算出部と、
前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う判定部と、
前記真贋判定の結果を出力する出力部と、
を備える、バッテリの真贋判定装置。
【請求項9】
コンピュータを、
バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得する取得手段と、
前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出する算出手段と、
前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う判定手段と、
前記真贋判定の結果を出力する出力手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの真贋判定方法、バッテリの真贋判定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バッテリパックのECUに付与されたバッテリパックIDに基づいてバッテリの真贋を判定するバッテリ認証システムが開示されている。
【0003】
上記特許文献1に開示されたバッテリ認証システムによると、バッテリセルだけが模造品に交換された場合には、そのバッテリを模造品として正しく判定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-222945号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、バッテリセルだけが模造品に交換された場合であっても、そのバッテリを模造品として正しく判定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係るバッテリの真贋判定方法は、判定対象であるバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得し、前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出し、前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行い、前記真贋判定の結果を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態に係るバッテリ管理システムの構成を簡略化して示すブロック図である。
図2】サーバ装置が実行する真贋判定処理の第1の例を示すフローチャートである。
図3】バッテリパックの満充電容量値の時系列変化の一例を示す図である。
図4】サーバ装置が実行する真贋判定処理の第2の例を示すフローチャートである。
図5】バッテリパックのSOCに応じたOCV値の分布の一例を示す図である。
図6】サーバ装置が実行する真贋判定処理の第3の例を示すフローチャートである。
図7】バッテリパックの放電動作に伴って発生する電圧降下を示す図である。
図8】バッテリパックのSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値の分布の一例を示す図である。
図9】サーバ装置が実行する真贋判定処理の第4の例を示すフローチャートである。
図10】システム構成の第1の変形例を示す図である。
図11】システム構成の第2の変形例を示す図である。
図12】システム構成の第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
電動バイク等に使用される純正のバッテリパックは高価であり、転売が可能なことから、模造品が広く流通することが予想される。粗悪な模造品の使用に起因する事故又は車両故障等の発生を防止し、また、正規品の適正価格を維持するためには、市場における模造品の流通を抑止する必要がある。
【0009】
上記特許文献1には、電気自動車に搭載されるバッテリを対象としたバッテリ認証システムが開示されている。当該システムにおいて、イモビユニットは、バッテリパックが備えるECUのメモリに格納された第1のバッテリパックIDと、車両が備えるECUのメモリに格納された第2のバッテリパックIDとを比較し、両者が一致すれば車両の起動を許可し、両者が一致しなければ車両の起動を禁止する。
【0010】
しかし、上記特許文献1に開示されたバッテリ認証システムによると、バッテリパックにおいて正規品のECUを使用しつつバッテリセルだけが模造品に交換された場合には、ECUのメモリに格納された第1のバッテリパックIDは変わらないため、イモビユニットは当該バッテリパックを正規品として誤って判定する。
【0011】
このような課題を解決するために、本発明者は、バッテリの充放電履歴を記録しておき、充放電履歴から算出できるバッテリの状態量に基づいてバッテリの真贋を判定することにより、状態量が突然に大きく変動したことによってバッテリセルの交換を検出できるとの知見を得て、本開示を想到するに至った。
【0012】
次に、本開示の各態様について説明する。
【0013】
本開示の一態様に係るバッテリの真贋判定方法は、コンピュータが、バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得し、前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出し、前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行い、前記真贋判定の結果を出力する。
【0014】
この態様によれば、第1データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、第2データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量の推定値を示す第2状態量を算出する。純正品のバッテリセルが模造品に交換された場合には、交換の前後で第1状態量と第2状態量とが大きく異なるため、第1状態量と第2状態量とに基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、バッテリセルが交換されたことを検出することができる。その結果、バッテリセルだけが模造品に交換された場合であっても、そのバッテリを模造品として正しく判定することが可能となる。
【0015】
上記態様において、前記状態量は、満充電容量を含む。
【0016】
この態様によれば、バッテリの充放電履歴に基づいてバッテリの満充電容量を正確に算出できるため、バッテリの満充電容量に基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。
【0017】
上記態様において、前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが満充電される毎に前記満充電容量を算出することにより、複数の満充電容量値を算出し、前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記満充電容量の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の満充電容量値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記満充電容量値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する。
【0018】
この態様によれば、バッテリが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリが模造品である確率を示す疑い率を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0019】
上記態様において、前記状態量は、残容量率に応じた開放端子間電圧を含む。
【0020】
この態様によれば、バッテリの充放電履歴に基づいてバッテリの残容量率に応じた開放端子間電圧を正確に算出できるため、バッテリの残容量率に応じた開放端子間電圧に基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。
【0021】
上記態様において、前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが充電される毎に前記開放端子間電圧を算出することにより、複数の開放端子間電圧値を算出し、前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記開放端子間電圧の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の開放端子間電圧値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記開放端子間電圧値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する。
【0022】
この態様によれば、バッテリが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリが模造品である確率を示す疑い率を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0023】
上記態様において、前記状態量は、残容量率及び放電電流率に応じた降下電圧を含む。
【0024】
この態様によれば、バッテリの充放電履歴に基づいてバッテリの残容量率及び放電電流率に応じた降下電圧を正確に算出できるため、バッテリの残容量率及び放電電流率に応じた降下電圧に基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。
【0025】
上記態様において、前記第1状態量の算出では、前記第1データに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが放電される毎に前記降下電圧を算出することにより、複数の降下電圧値を算出し、前記第2状態量の算出では、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記降下電圧の推定値と、当該推定値を挟む許容上限値及び許容下限値とを算出し、前記真贋判定では、前記第1期間における、前記複数の降下電圧値の総数に対する、前記許容上限値超又は許容下限値未満である前記降下電圧値の数の割合を、前記バッテリが模造品である疑い率として算出する。
【0026】
この態様によれば、バッテリが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリが模造品である確率を示す疑い率を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0027】
本開示の一態様に係るバッテリの真贋判定装置は、バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得する取得部と、前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出する算出部と、前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う判定部と、前記真贋判定の結果を出力する出力部と、を備える。
【0028】
この態様によれば、算出部は、第1データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、第2データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量の推定値を示す第2状態量を算出する。純正品のバッテリセルが模造品に交換された場合には、交換の前後で第1状態量と第2状態量とが大きく異なるため、判定部が第1状態量と第2状態量とに基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、バッテリセルが交換されたことを検出することができる。その結果、バッテリセルだけが模造品に交換された場合であっても、そのバッテリを模造品として正しく判定することが可能となる。
【0029】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、バッテリセルを有するバッテリに関して、第1期間における充放電履歴を示す第1データと、前記第1期間より前の第2期間における充放電履歴を示す第2データとを取得する取得手段と、前記第1データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、前記第2データに基づいて、前記第1期間における前記バッテリの前記状態量の推定値を示す第2状態量を算出する算出手段と、前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第1期間において前記バッテリが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う判定手段と、前記真贋判定の結果を出力する出力手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0030】
この態様によれば、算出手段は、第1データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量を示す第1状態量を算出し、第2データに基づいて第1期間におけるバッテリの状態量の推定値を示す第2状態量を算出する。純正品のバッテリセルが模造品に交換された場合には、交換の前後で第1状態量と第2状態量とが大きく異なるため、判定手段が第1状態量と第2状態量とに基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、バッテリセルが交換されたことを検出することができる。その結果、バッテリセルだけが模造品に交換された場合であっても、そのバッテリを模造品として正しく判定することが可能となる。
【0031】
本開示は、このような方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現し、あるいは、このコンピュータプログラムに基づいて動作する装置又はシステムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な不揮発性の記録媒体として流通させ、あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0032】
なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0033】
(本開示の実施形態)
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0034】
図1は、本開示の実施形態に係るバッテリ管理システムの構成を簡略化して示すブロック図である。本実施形態の例において、バッテリ管理システムは、電動バイク等の複数の車両1A,1Bに搭載される複数のバッテリパック2A,2Bを管理する。
【0035】
バッテリ管理システムは、通信ネットワーク4に接続されたサーバ装置5を備えている。通信ネットワーク4は、例えば公衆回線網である。サーバ装置5は、例えばクラウドサーバであり、本実施形態に係るシステム構成において真贋判定装置として機能する。
【0036】
サーバ装置5は、通信部31、制御部32、及び記憶部33を備えている。通信部31は、IP等の任意の通信方式によって無線通信を行うための通信モジュールを用いて構成されている。記憶部33は、ハードディスク、SSD、又は半導体メモリ等を用いて構成されている。記憶部33には、プログラム51及び履歴データ52が記憶されている。制御部32は、CPU等のデータ処理装置を用いて構成されている。当該CPUがプログラム51を実行することによって実現される機能として、制御部32は、取得部41、算出部42、判定部43、及び出力部44を有している。
【0037】
車両1Aは、バッテリパック2A及び車両制御装置3Aを備えている。バッテリパック2Aは、車両1Aに搭載されている走行モータ等を駆動するための電力を供給する。また、バッテリパック2Aは、車両1Aに外部接続された商用電源等から電力の供給を受けることによって、プラグイン方式での充電が可能である。
【0038】
バッテリパック2Aは、制御部11A、通信部12A、電流センサ13A、電圧センサ14A、及びバッテリセル15Aを備えている。制御部11Aは、CPU等のデータ処理装置を用いて構成されている。通信部12Aは、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式によって無線通信を行うための通信モジュールを用いて構成されている。バッテリセル15Aは、リチウムイオンバッテリ等の充電可能な二次電池を用いて構成されている。電流センサ13Aは、バッテリセル15Aの充放電電流(充電電流及び放電電流)の電流値を検出し、その検出した電流値を示す電流値データを出力する。電圧センサ14Aは、バッテリセル15Aの両極(正極及び負極)間の電圧値を検出し、その検出した電圧値を示す電圧値データを出力する。
【0039】
車両制御装置3Aは、車両1Aの例えばナビゲーション装置の機能の一部を用いて構成されている。車両制御装置3Aは、制御部21A及び通信部22A,23Aを備えている。制御部21Aは、CPU等のデータ処理装置を用いて構成されている。通信部22Aは、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式によってバッテリパック2Aの通信部12Aと無線通信を行うための通信モジュールを用いて構成されている。通信部23Aは、IP等の任意の通信方式によってサーバ装置5の通信部31と無線通信を行うための通信モジュールを用いて構成されている。
【0040】
車両1Bの構成は、車両1Aの構成と同様である。車両1Bは、バッテリパック2B及び車両制御装置3Bを備えている。バッテリパック2Bは、制御部11B、通信部12B、電流センサ13B、電圧センサ14B、及びバッテリセル15Bを備えている。車両制御装置3Bは、制御部21B及び通信部22B,23Bを備えている。
【0041】
本実施形態に係るバッテリ管理システムにおいて、サーバ装置5は、車両1A,1Bに搭載されているバッテリパック2A,2Bを管理する。バッテリパック2A,2Bには、複数のバッテリパックを個々に識別するための識別情報であるバッテリパックIDが付与されている。
【0042】
バッテリセル15Aに充放電電流が流れると、電流センサ13Aから制御部11Aに電流値データが入力されるとともに、電圧センサ14Aから制御部11Aに電圧値データが入力される。制御部11Aは、電流値データ及び電圧値データを通信部12Aに入力する。この電流値データ及び電圧値データには、バッテリパック2AのバッテリパックIDが含まれている。通信部12Aは、電流値データ及び電圧値データを車両制御装置3Aに送信する。車両制御装置3Aの通信部22Aは、電流値データ及び電圧値データを受信し、その受信した電流値データ及び電圧値データを制御部21Aに入力する。制御部21Aは、電流値データ及び電圧値データを通信部23Aに入力する。通信部23Aは、電流値データ及び電圧値データをサーバ装置5に送信する。サーバ装置5の通信部31は、電流値データ及び電圧値データを受信し、その受信した電流値データ及び電圧値データを制御部32に入力する。制御部32は、電流値データ及び電圧値データを、それに含まれているバッテリパック2AのバッテリパックIDと関連付けて記憶部33に記憶する。車両1Bについても車両1Aと同様に、制御部32は、電流値データ及び電圧値データを、バッテリパック2BのバッテリパックIDと関連付けて記憶部33に記憶する。このようにして、各バッテリパック2A,2BのバッテリパックIDと関連付けられて各バッテリパック2A,2Bの充放電履歴を示す履歴データ52が、記憶部33に蓄積される。
【0043】
図2は、サーバ装置5が実行する真贋判定処理の第1の例を示すフローチャートである。以下ではバッテリパック2Aを判定対象とする例について説明するが、バッテリパック2Bを判定対象とする場合もこれと同様である。
【0044】
バッテリパック2Aを判定対象とする真贋判定処理の実行命令が制御部32に入力されると、まずステップSP101において取得部41は、バッテリパック2Aに関する履歴データ52を記憶部33から読み出すことによって取得する。
【0045】
次にステップSP102において算出部42は、判定対象期間を設定する。以下では、1ヶ月を単位期間としてバッテリの真贋判定処理を実行する例について説明する。但し、単位期間は1ヶ月に限らず、数週間又は数ヶ月等の任意の期間であって良い。
【0046】
図3は、バッテリパック2Aの満充電容量値(FCC値)の時系列変化の一例を示す図である。図3に示した例において、この年の5月がバッテリパック2Aの出荷月であり、同年7月まではバッテリパック2Aが正規品であることが判定済みであるものとする。この場合、算出部42は、未判定の最初の月である同年8月を、判定対象期間(判定対象月)として設定する。
【0047】
次にステップSP103において算出部42は、判定対象月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52の中から、満充電状態まで充電が行われた充電動作に対応する全ての履歴データ(以下「満充電データ」と称す)を抽出する。算出部42は、抽出した全ての満充電データの各々について、FCC値(第1状態量)を算出する。満充電データに含まれる電流値データ及び電圧値データからFCC値を算出するアルゴリズムとしては、任意のものを用いることができる。例えば、バッテリの初期状態と劣化状態との内部抵抗比率と、初期状態と劣化状態との満充電容量比率とを関連付ける関連データを予め作成して、記憶部に記憶しておく。算出部42は、電流値データ及び電圧値データと既知のマップ情報とに基づいて、バッテリの内部抵抗値を推定する。算出部42は、その推定した内部抵抗値から算出した内部抵抗比率に対応する満充電容量比率を、上記関連データから割り出すことによって、各満充電データに対応するFCC値を推定する。
【0048】
次にステップSP104において算出部42は、既判定月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52に基づいて、判定対象月におけるバッテリパック2AのFCC値の推定値(第2状態量)を算出する。算出部42は、既判定月である5~7月の各月の全ての満充電データの各々について、上記と同様のアルゴリズムによってFCC値を算出し、各月における複数のFCC値の平均値X5~X7を算出する。算出部42は、最小二乗法による近似又は機械学習による予測モデル等の任意の推定アルゴリズムを用いて複数の平均値X5~X7から例えば近似直線Lを導出し、その近似直線Lを判定対象月である8月に適用することによって、8月におけるFCC値の推定値X8を算出する。
【0049】
また、算出部42は、判定対象月の直近の既判定月における履歴データ52に基づいて、判定対象月におけるFCC値の推定値に対する許容値を算出する。算出部42は、例えば、7月における複数のFCC値を統計的に処理することによって標準偏差σを算出し、推定値X8に2×σを加算した値として許容上限値XUを算出し、推定値X8から2×σを減算した値として許容下限値XLを算出する。
【0050】
次にステップSP105において判定部43は、上記第1状態量と上記第2状態量とに基づいて、判定対象月においてバッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う。判定部43は、例えば、第1状態量としての複数のFCC値の各々が、第2状態量としての推定値X8を含む許容範囲(即ち許容上限値XU以下かつ許容下限値XL以上の範囲)に含まれているか否かを判定する。そして、判定部43は、第1状態量としての複数のFCC値の総数(Z1)に対する、許容上限値XUを超える又は許容下限値XL未満であるFCC値の数(Y1)の割合として、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K1(=Y1/Z1×100)を算出する。
【0051】
次にステップSP106において出力部44は、判定部43による真贋判定の結果である疑い率K1を示すデータを出力する。バッテリ管理システムの管理者は、自身が操作する端末から通信ネットワーク4を介してサーバ装置5にアクセスすることにより、疑い率K1を示すデータをサーバ装置5から取得することが可能である。
【0052】
第1の例によれば、バッテリパック2Aの充放電の履歴データ52に基づいてバッテリパック2AのFCC値を正確に算出できるため、バッテリパック2AのFCC値に基づいてバッテリパック2Aの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。
【0053】
また、バッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K1を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0054】
図4は、サーバ装置5が実行する真贋判定処理の第2の例を示すフローチャートである。以下ではバッテリパック2Aを判定対象とする例について説明するが、バッテリパック2Bを判定対象とする場合もこれと同様である。
【0055】
バッテリパック2Aを判定対象とする真贋判定処理の実行命令が制御部32に入力されると、まずステップSP201において取得部41は、上記第1の例と同様に、バッテリパック2Aに関する履歴データ52を取得する。
【0056】
次にステップSP202において算出部42は、上記第1の例と同様に、判定対象期間を設定する。
【0057】
次にステップSP203において算出部42は、判定対象月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52の中から、バッテリパック2Aの充電動作に対応する全ての履歴データ(以下「充電データ」と称す)を抽出する。算出部42は、抽出した全ての充電データの各々について、バッテリパック2Aの残容量率(SOC)に応じた開放端子間電圧値(OCV値。第1の状態量)を算出する。算出部42は、例えば電流積算法によってSOCを算出することができる。また、算出部42は、充電データに含まれる電圧値データを近似的にOCV値として扱うことができる。算出部42は、SOCの分布範囲(例えば40-100%)を所定の刻み幅(例えば10%)で刻むことによって複数のSOC領域に分割し、各充電データに関して、各SOC領域に含まれる複数のOCV値の平均値を、そのSOC領域に対応するOCV値として算出する。
【0058】
次にステップSP204において算出部42は、既判定月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52に基づいて、判定対象月におけるバッテリパック2AのSOCに応じたOCV値の推定値(第2状態量)を算出する。
【0059】
図5は、バッテリパック2AのSOCに応じたOCV値の分布の一例を示す図である。算出部42は、既判定月である5~7月の各月の全ての充電データの各々について、上記と同様のアルゴリズムによってSOCに応じたOCV値を算出し、各SOC領域における既判定月の複数のOCV値の平均値を、各SOC領域に応じたOCV値の推定値Y8A~Y8Fとして算出する。
【0060】
また、算出部42は、判定対象月の直近の既判定月における履歴データ52に基づいて、判定対象月におけるOCV値の推定値に対する許容値を算出する。算出部42は、例えば、7月における複数のOCV値を統計的に処理することによってSOC領域別に標準偏差σを算出し、各推定値Y8A~Y8Fに2×σを加算した値としてSOC領域別に許容上限値YUを算出し、各推定値Y8A~Y8Fから2×σを減算した値としてSOC領域別に許容下限値YLを算出する。
【0061】
次にステップSP205において判定部43は、上記第1状態量と上記第2状態量とに基づいて、判定対象月においてバッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う。判定部43は、例えば、第1状態量としての複数のOCV値の各々が、第2状態量としての各推定値Y8A~Y8Fを含む許容範囲(即ち許容上限値YU以下かつ許容下限値YL以上の範囲)に含まれているか否かを判定する。そして、判定部43は、第1状態量としての複数のOCV値の総数(Z2)に対する、許容上限値YUを超える又は許容下限値YL未満であるOCV値の数(Y2)の割合として、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K2(=Y2/Z2×100)を算出する。
【0062】
次にステップSP206において出力部44は、判定部43による真贋判定の結果である疑い率K2を示すデータを出力する。
【0063】
第2の例によれば、バッテリパック2Aの充放電の履歴データ52に基づいてバッテリパック2AのSOCに応じたOCV値を正確に算出できるため、バッテリパック2AのSOCに応じたOCV値に基づいてバッテリパック2Aの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。
【0064】
また、バッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K2を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0065】
図6は、サーバ装置5が実行する真贋判定処理の第3の例を示すフローチャートである。以下ではバッテリパック2Aを判定対象とする例について説明するが、バッテリパック2Bを判定対象とする場合もこれと同様である。
【0066】
バッテリパック2Aを判定対象とする真贋判定処理の実行命令が制御部32に入力されると、まずステップSP301において取得部41は、上記第1の例と同様に、バッテリパック2Aに関する履歴データ52を取得する。
【0067】
次にステップSP302において算出部42は、上記第1の例と同様に、判定対象期間を設定する。
【0068】
次にステップSP303において算出部42は、判定対象月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52の中から、バッテリパック2Aの放電動作に対応する全ての履歴データ(以下「放電データ」と称す)を抽出する。算出部42は、抽出した全ての放電データの各々について、バッテリパック2AのSOC及び放電電流率(最大放電電流値に対する放電電流値の割合)に応じた降下電圧値(第1の状態量)を算出する。
【0069】
図7は、バッテリパック2Aの放電動作に伴って発生する電圧降下を示す図である。時刻T1において車両1Aのスロットルが開かれることによってバッテリパック2Aの放電動作が開始され、時刻T2において電圧降下速度が所定値(例えば0.1V/sec)以下となったことにより電圧降下が終了する。時刻T1におけるバッテリセル15Aの両極(正極及び負極)の端子間電圧値V1と、時刻T2における端子間電圧値V2との差(=V1-V2)が、降下電圧値である。
【0070】
算出部42は、例えば電流積算法によってSOCを算出することができる。また、算出部42は、放電データに含まれる電流値データを放電電流値として扱うことができる。また、算出部42は、放電データに含まれる電圧値データを端子間電圧値として扱うことができる。算出部42は、SOCの分布範囲(例えば50-100%)を所定の刻み幅(例えば10%)で刻むことによって複数のSOC領域に分割する。また、算出部42は、放電電流率の分布範囲(例えば50-100%)を所定の刻み幅(例えば10%)で刻むことによって複数の電流率領域に分割する。算出部42は、各放電データにおいて電圧降下を検出すると、その時のバッテリパック2AのSOC及び放電電流率に応じたSOC領域及び電流率領域に対応させて、降下電圧値を算出及び記録する。
【0071】
次にステップSP304において算出部42は、既判定月におけるバッテリパック2Aに関する履歴データ52に基づいて、判定対象月におけるバッテリパック2AのSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値の推定値(第2状態量)を算出する。
【0072】
図8は、バッテリパック2AのSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値の分布の一例を示す図である。算出部42は、既判定月である5~7月の各月の全ての放電データの各々について、上記と同様のアルゴリズムによってSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値を算出し、各SOC領域及び各電流率領域における既判定月の複数の降下電圧値の平均値を、各SOC領域及び各電流率領域に応じた降下電圧値の推定値として算出する。
【0073】
また、算出部42は、判定対象月の直近の既判定月における履歴データ52に基づいて、判定対象月における降下電圧値の推定値に対する許容値を算出する。算出部42は、例えば、7月における複数の降下電圧値を統計的に処理することによってSOC領域及び電流率領域別に標準偏差σを算出し、各推定値に2×σを加算した値としてSOC領域及び電流率領域別に許容上限値を算出し、各推定値から2×σを減算した値としてSOC領域及び電流率領域別に許容下限値を算出する。
【0074】
次にステップSP305において判定部43は、上記第1状態量と上記第2状態量とに基づいて、判定対象月においてバッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかの真贋判定を行う。判定部43は、例えば、第1状態量としての複数の降下電圧値の各々が、第2状態量としての各推定値を含む許容範囲(即ち許容上限値以下かつ許容下限値以上の範囲)に含まれているか否かを判定する。そして、判定部43は、第1状態量としての複数の降下電圧値の総数(Z3)に対する、許容上限値を超える又は許容下限値未満である降下電圧値の数(Y3)の割合として、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K3(=Y3/Z3×100)を算出する。
【0075】
次にステップSP306において出力部44は、判定部43による真贋判定の結果である疑い率K3を示すデータを出力する。
【0076】
第3の例によれば、バッテリパック2Aの充放電の履歴データ52に基づいてバッテリパック2AのSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値を正確に算出できるため、バッテリパック2AのSOC及び放電電流率に応じた降下電圧値に基づいてバッテリパック2Aの真贋判定を行うことにより、判定の精度を向上することが可能となる。なお、バッテリパックが搭載される車両の出力に応じて降下電圧値が異なる場合もあるため、車両の種別毎に降下電圧値を分別して算出しても良い。
【0077】
また、バッテリパック2Aが正規品であるか模造品であるかという二者択一ではなく、バッテリパック2Aが模造品である確率を示す疑い率K3を、真贋判定の結果として出力することが可能となる。
【0078】
図9は、サーバ装置5が実行する真贋判定処理の第4の例を示すフローチャートである。この第4の例は、上記第1~第3の例を組み合わせたものである。但し、上記第1~第3の例の全てが組み合わされる必要はなく、また、上記第1~第3の例以外の例が組み合わされても良い。
【0079】
サーバ装置5で管理している全てのバッテリパックを判定対象とする真贋判定処理の実行命令が制御部32に入力されると、まずステップSP401において取得部41は、バッテリパックIDを更新することにより、最初に判定を行うバッテリパック2AのバッテリパックIDを設定する。
【0080】
次にステップSP402において取得部41は、上記第1の例と同様に、バッテリパック2Aに関する履歴データ52を取得する。
【0081】
次にステップSP403において算出部42は、上記第1の例と同様に、判定対象期間を設定する。
【0082】
次にステップSP404において算出部42及び判定部43は、上記ステップSP103~SP105と同様に、疑い率K1を算出する。
【0083】
次にステップSP405において算出部42及び判定部43は、上記ステップSP203~SP205と同様に、疑い率K2を算出する。
【0084】
次にステップSP406において算出部42及び判定部43は、上記ステップSP303~SP305と同様に、疑い率K3を算出する。
【0085】
次にステップSP407において判定部43は、下記式(1)で示されるように、疑い率K1~K3に対して「0」以上の係数W1~W3を用いて重み付けを行うことにより、疑い率K4を算出する。
【0086】
K4=(W1×K1+W2×K2+W3×K3)/(W1+W2+W3) :(1)
【0087】
次にステップSP408において出力部44は、バッテリパック2Aを判定対象とする判定部43による真贋判定の結果である疑い率K4を示すデータを出力する。
【0088】
次にステップSP409において取得部41は、サーバ装置5で管理している全てのバッテリパックを判定対象とする真贋判定処理が完了したか否かを判定する。
【0089】
未判定のバッテリパックが存在する場合(ステップSP409:NO)は、次にステップSP401において取得部41は、バッテリパックIDを更新することにより、次に判定を行うバッテリパック2BのバッテリパックIDを設定する。以下、ステップSP402以降の処理が実行される。
【0090】
全てのバッテリパックを判定対象とする真贋判定処理が完了した場合(ステップSP409:YES)は、制御部32は処理を終了する。
【0091】
(まとめ)
本実施形態に係るバッテリ管理システムによれば、算出部42は、判定対象期間(第1期間)における履歴データ52(第1データ)に基づいて、第1期間におけるバッテリパック2A(バッテリ)の状態量を示すFCC値(第1状態量)を算出する。また、算出部42は、第1期間より前の既判定期間(第2期間)における履歴データ52(第2データ)に基づいて、第1期間におけるバッテリの状態量の推定値を示すFCC値(第2状態量)を算出する。純正品のバッテリセル15Aが模造品に交換された場合には、交換の前後で第1状態量と第2状態量とが大きく異なるため、判定部43が第1状態量と第2状態量とに基づいてバッテリの真贋判定を行うことにより、バッテリセル15Aが交換されたことを検出することができる。その結果、バッテリセル15Aだけが模造品に交換された場合であっても、そのバッテリを模造品として正しく判定することが可能となる。
【0092】
(第1変形例)
図10は、システム構成の第1の変形例を示す図である。本変形例において、バッテリパック2A,2Bは、記憶部16A,16Bを備えている。記憶部16A,16Bは、半導体メモリ等を用いて構成されている。
【0093】
バッテリパック2A,2B及びサーバ装置5はいずれもブロックチェーンのノードとして機能し、各ノードの記憶部16A,16B,33において同一の履歴データ52を共有する。いずれかのバッテリパック2A,2Bにおいて充放電履歴が更新された場合には、その更新内容を示す更新情報が通信ネットワーク4を介して他のバッテリパック2B,2A及びサーバ装置5に送信され、全てのノードにおいて履歴データ52が共通に更新される。
【0094】
本変形例によれば、第三者による履歴データ52の改ざんが困難となるため、システムのセキュリティ性を向上することが可能となる。
【0095】
(第2変形例)
図11は、システム構成の第2の変形例を示す図である。本変形例では、クラウドサーバ等のサーバ装置5が真贋判定装置として機能するのではなく、ローカルPC又は専用の模造品判定器が真贋判定装置6として機能する。
【0096】
バッテリパック2は、制御部11、通信部12、電流センサ13、電圧センサ14、バッテリセル15、及び記憶部16を備えている。記憶部16は、半導体メモリ等を用いて構成されている。通信部12は、真贋判定装置6の通信部31と有線又は無線によって相互に通信可能である。
【0097】
車両の運転動作に伴ってバッテリセル15に充放電電流が流れると、電流センサ13から制御部11に電流値データが入力されるとともに、電圧センサ14から制御部11に電圧値データが入力される。制御部11は、電流値データ及び電圧値データを含む履歴データ52を記憶部16に入力し、記憶部16は履歴データ52を蓄積する。
【0098】
バッテリパック2が車両から取り出されて真贋判定装置6に接続されると、制御部11は、記憶部16から履歴データ52を読み出して、その履歴データ52を通信部12に入力する。通信部12は、履歴データ52を真贋判定装置6に送信する。真贋判定装置6の通信部31は、履歴データ52を受信し、その受信した履歴データ52を制御部32に入力する。制御部32は、履歴データ52を記憶部33に記憶する。また、制御部32は、記憶部33から読み出した履歴データ52に基づいて、上記実施形態と同様の手法によってバッテリパック2を判定対象とする真贋判定処理を実行する。
【0099】
本変形例によれば、ローカルPC等を真贋判定装置6として用いた簡易な構成によって、バッテリパック2を対象とする真贋判定処理を実現することが可能となる。
【0100】
(第3変形例)
図12は、システム構成の第3の変形例を示す図である。本変形例では、バッテリパック2を充電するための充電器7が、通信ネットワーク4を介してサーバ装置5に接続されている。
【0101】
車両の運転動作に伴ってバッテリセル15に充放電電流が流れると、電流センサ13から制御部11に電流値データが入力されるとともに、電圧センサ14から制御部11に電圧値データが入力される。制御部11は、電流値データ及び電圧値データを含む履歴データ52を記憶部16に入力し、記憶部16は履歴データ52を蓄積する。
【0102】
バッテリパック2が車両から取り出されて充電器7に接続されると、制御部11は、記憶部16から履歴データ52を読み出して、その履歴データ52を通信部12に入力する。通信部12は、履歴データ52を充電器7に送信する。充電器7の通信部22は、履歴データ52を受信し、その受信した履歴データ52を制御部21に入力する。制御部21は、履歴データ52を通信部23に入力する。通信部23は、履歴データ52をサーバ装置5に送信する。サーバ装置5の通信部31は、履歴データ52を受信し、その受信した履歴データ52を制御部32に入力する。制御部32は、履歴データ52を記憶部33に記憶する。また、制御部32は、記憶部33から読み出した履歴データ52に基づいて、上記実施形態と同様の手法によってバッテリパック2を判定対象とする真贋判定処理を実行する。
【0103】
本変形例によれば、プラグイン方式に非対応の車両に搭載されるバッテリパック2に対しても、真贋判定処理を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、複数の電動バイク等に搭載された複数のバッテリパックの状態を管理するバッテリ管理システムへの適用が特に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12