(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】基板の製造方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20250421BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20250421BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20250421BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250421BHJP
【FI】
H05K3/00 V
G01N27/26 351A
H01L25/04 C
H05K3/00 T
(21)【出願番号】P 2023552449
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036864
(87)【国際公開番号】W WO2023058126
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-09-22
【審判番号】
【審判請求日】2024-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 士
(72)【発明者】
【氏名】中原 賢太
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭一
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】丸山 高政
【審判官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-262094(JP,A)
【文献】特開2004-14888(JP,A)
【文献】特開平7-231162(JP,A)
【文献】特開平7-249845(JP,A)
【文献】特開平5-149989(JP,A)
【文献】国際公開第2007/132721(WO,A1)
【文献】特開2007-327787(JP,A)
【文献】特開平9-304325(JP,A)
【文献】特開平7-63721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/18
H05K 3/00
G01N 21/956
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路パターンが形成された基板を、純水または腐食性溶液に浸し、
前記基板を純水または腐食性溶液に浸した状態で、前記複数の回路パターンの間に電圧を印加し、
前記複数の回路パターンに前記電圧の印加によるトリーの発生がある場合に前記基板を不良品と判別し、前記トリーの発生が無い場合に前記基板を良品と判別することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
基板を前記腐食性溶液に浸し、
前記腐食性溶液は、純水に腐食性ガスを混ぜることで得られることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記腐食性溶液は、硫黄を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記電圧により前記複数の回路パターン間に印加される電界は10V/mm以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板を純水または腐食性溶液に浸してから前記トリーの有無の判別までを330秒以内で実施することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
複数の回路パターンが形成された基板を、純水または腐食性溶液に浸し、
前記基板を純水または腐食性溶液に浸した状態で、前記複数の回路パターンの間に電圧を印加し、
前記複数の回路パターンに前記電圧の印加によるトリーの発生がある場合に前記基板を不良品と判別し、前記トリーの発生が無い場合に前記基板を良品と判別し、
前記良品と判別された基板に半導体チップを搭載することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体チップは、ワイドバンドギャップ半導体から形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の製造方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレクトロケミカルマイグレーション評価システムが開示されている。この評価システムは、エレクトロケミカルマイグレーション(ECM)が評価される電極を格納する恒温恒湿器と、電極間に電圧を印加する電源装置を備える。さらに評価システムは、インピーダンス算出手段、評価手段、撮像装置を備える。インピーダンス算出手段は、電極間に流れる電流を計測し、計測結果に基づいて電極間のインピーダンスを算出する。評価手段は、インピーダンスの算出結果に基づいて電極間のECM評価を行う。撮像装置は、電極の表面を撮影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の評価システムでは不良検出のためにインピーダンス検出回路を用いた測定が必要である。このため、不良検出が容易に実施できない可能性がある。
【0005】
本開示は、容易に不良検出が可能な基板の製造方法および半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示に係る基板の製造方法は、複数の回路パターンが形成された基板を、純水または腐食性溶液に浸し、前記基板を純水または腐食性溶液に浸した状態で、前記複数の回路パターンの間に電圧を印加し、前記複数の回路パターンに前記電圧の印加によるトリーの発生がある場合に前記基板を不良品と判別し、前記トリーの発生が無い場合に前記基板を良品と判別する。
【0007】
第2の開示に係る半導体装置の製造方法は、複数の回路パターンが形成された基板を、純水または腐食性溶液に浸し、前記基板を純水または腐食性溶液に浸した状態で、前記複数の回路パターンの間に電圧を印加し、前記複数の回路パターンに前記電圧の印加によるトリーの発生がある場合に前記基板を不良品と判別し、前記トリーの発生が無い場合に前記基板を良品と判別し、前記良品と判別された基板に半導体チップを搭載する。
【発明の効果】
【0008】
第1の開示に係る基板の製造方法および第2の開示に係る半導体装置の製造方法では、トリーの有無により容易に不良を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る基板の検査装置の平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施の形態に係る基板の製造方法および半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る基板の検査装置100の平面図である。検査装置100は、純水、腐食性溶液等の浸漬用液体14を保持するケース10と、検査対象に電圧を印加する電圧印加回路12を備える。ケース10は絶縁性であり、プラスチック等で形成される。本実施の形態では、浸漬用液体14として純水を用いる。
【0012】
検査対象は基板30である。基板30は絶縁基板、セラミック基板とも呼ばれる。基板30は、絶縁層32と、絶縁層32の表面に形成された複数の回路パターン34を有する。絶縁層32は、例えばSiN等のセラミックで形成される。複数の回路パターン34は、Cu、Alなどの金属層を絶縁層32に接合することで形成される。金属層は絶縁層32の両面に形成されても良い。金属層の内、絶縁層32の表面に形成されものを回路パターン34と呼ぶ。絶縁層32の表面は、半導体チップが搭載される面である。
【0013】
複数の回路パターン34は互いに離間している。電圧印加回路12は、基板30を浸漬用液体14に浸した状態で、外部電源16から複数の回路パターン34の間に電圧を印加するための回路である。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図2を用いて、検査装置100を用いた半導体装置の製造方法を説明する。まず、ステップ1として純水をケース10に注入する。次に、ステップ2として、基板30を純水に投入する。このとき、基板30の全体が純水に浸かると良い。
【0015】
次に、ステップ3として、基板30を純水に浸した状態で、複数の回路パターン34の間に電圧を印加する。このとき、回路パターン34に電圧印加回路12の電極を接触させて、外部電源16から電圧の印加を行う。電極間電圧は例えば20Vである。
【0016】
次に、ステップ4としてトリーの有無を確認する。ステップ3において、回路パターン34の金属と水が反応し、エレクトロケミカルマイグレーションが発生する場合がある。このとき、陽極側では金属イオンが発生し、陰極側では金属が析出する。この結果、トリーが観察される。このように、トリーの有無によりイオンマイグレーションの発生有無を確認できる。トリーの発生傾向は、一般に絶縁基板の耐圧劣化傾向に対応する。製品が高湿に曝されるほど、一般に耐圧が下がるためである。
【0017】
図3は、トリー80の一例を示す図である。
図3の例では、陽極35と陰極36が隣接する領域において、陰極36側にトリー80が発生している。トリーの発生の有無の確認は、例えば顕微鏡を用いて行う。
【0018】
ステップ4においてトリーがあった場合、ステップ5に進み基板30を廃棄する。ステップ4においてトリーが無かった場合、ステップ6に進む。このように、複数の回路パターン34に電圧の印加によるトリーの発生がある場合、基板30を不良品と判別し、トリーの発生が無い場合に基板30を良品と判別する。
【0019】
次に、ステップ6として、良品と判別された基板30を洗浄する。以降の工程は
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1に係る半導体装置60の断面図である。ステップ7として、良品と判別された基板30に半導体チップ40を搭載する。半導体チップは、例えばパワー半導体チップである。次に、ステップ8として、基板30をベース板42に搭載する。次に、ステップ9としてワイヤボンディングを行う。ワイヤボンディングでは、半導体チップ40間、半導体チップ40と回路パターン34の間、回路パターン34間などがワイヤ44で接続される。
【0020】
次に、ステップ10として端子接合が行われる。ここでは、例えば端子46と回路パターン34とが接合される。次に、ステップ11としてケース接合が行われる。ここでは、ケース48がベース板42に接合される。次に、ステップ12として端子曲げが行われる。ここでは、端子46が曲げられる。次に、ステップ13としてゲル封止およびフタ閉めが行われる。ここでは、ケース48内が封止体50で封止される。また、ケース48の上にフタ52が搭載される。以上で、半導体装置60が完成する。半導体装置60は、例えば電力半導体装置である。
【0021】
本実施の形態では、基板30を純水に浸して回路パターン34間に電圧を印加することで、容易にエレクトロケミカルマイグレーションの発生有無を確認できる。従って、容易にスクリーニングが可能となり、品質の向上が期待できる。また、本実施の形態では、基板30を浸漬用液体14から取り出して、トリーの有無を確認することで不良検出ができる。このため、不良の有無を判別する工程で、さらに電気化学反応が発生することを抑制できる。また、短時間での不良検出が可能となる。
【0022】
基板30を浸漬用液体14に浸してからトリーの有無の判別までを330秒以内で実施しても良い。つまり、ステップ1からステップ4までを330秒以内で実施しても良い。このような迅速な検査により、品質の向上が期待できる。
【0023】
また、複数の回路パターン34の間に印加される電圧により複数の回路パターン34間に印加される電界は10V/mm以上であると良い。電界を10V/mm以上とすることで、電気化学反応を発生させることができる。これにより、トリーの有無による不良検出を精度よく実施できる。
【0024】
半導体チップ40は、ワイドバンドギャップ半導体から形成されていても良い。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドである。本実施の形態によれば、半導体チップ40がワイドバンドギャップ半導体から形成されて高電流が流れるような場合にも、半導体装置60の製造工程で不良を容易に検出して、信頼性を向上できる。
【0025】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る基板の製造方法および半導体装置の製造方法について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る基板の製造方法および半導体装置の製造方法については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0026】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態では、浸漬用液体14として腐食性溶液が用いられる点が実施の形態1と異なる。腐食性溶液は例えば硫黄を含む。他の製造工程は実施の形態1の製造工程と同様である。
【0027】
腐食性溶液は、純水に腐食性ガスを混ぜることで得られる。これにより、不要な物質が混ざることを抑制して、腐食性溶液を製造できる。腐食性ガスとして、硫黄ガス、塩素ガス、亜硫酸ガスなどを用いることができる。
【0028】
本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。まず、ステップ201として、ケース10に腐食性溶液を注入する。ステップ202からステップ213は、それぞれ実施の形態1のステップ2からステップ13と同じである。
【0029】
本実施の形態では、純水に腐食性ガスを混ぜることで、電気化学反応を活性化させることができる。従って、不良の摘出精度を向上できる。
【0030】
各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 ケース、12 電圧印加回路、14 浸漬用液体、16 外部電源、30 基板、32 絶縁層、34 回路パターン、35 陽極、36 陰極、40 半導体チップ、42 ベース板、44 ワイヤ、46 端子、48 ケース、50 封止体、52 フタ、60 半導体装置、80 トリー、100 検査装置