(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】電極活物質、その調製方法、極片及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1391 20100101AFI20250421BHJP
C01G 3/00 20060101ALI20250421BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20250421BHJP
C01G 51/42 20250101ALI20250421BHJP
C01G 53/42 20250101ALI20250421BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250421BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250421BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20250421BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250421BHJP
【FI】
H01M4/1391
C01G3/00
C01G49/00 A
C01G51/42
C01G53/42
H01M4/131
H01M4/36 C
H01M4/485
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2023565976
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2022087500
(87)【国際公開番号】W WO2023201491
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】王▲バン▼▲潤▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼振国
(72)【発明者】
【氏名】王嗣慧
(72)【発明者】
【氏名】柳娜
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112864359(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
C01G 3/00
C01G 49/00
C01G 51/42
C01G 53/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質の調製方法であって、
前記方法は、
炭素複合された酸化物粒子を提供し、
その中の酸化物は、下記式(1)を満たし、
M
aO
b (1)
式(1)中、M元素は、
Fe、Ni、Cu、Coのうちの1種または複数種から選択され、a>0、b>0であるステップと、
前記炭素複合され
た酸化物粒子と
Li源とを焼結処理し
て炭素被覆された金属酸化物粒子を得、
その中の金属酸化物は、
Li
2
NiO
2
、Li
2
CuO
2
、Li
5
FeO
4
、Li
6
CoO
4
のうちの1種または複数種から選択されるステップと、
を含
み、
前記炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、10~200nmの範囲内であることを特徴とする電極活物質の調製方法。
【請求項2】
前記炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率は100Ω・cm未満で
あることを特徴とする請求項
1に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項3】
前記炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率は10Ω・cm未満であることを特徴とする請求項2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項4】
前記炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は
、20~100nmの範囲内であることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項5】
前記炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量は、前記炭素複合された酸化物粒子の全重量に対して10wt%~40wt%で
あることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項6】
前記炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量は、前記炭素複合された酸化物粒子の全重量に対して20wt%~30wt%であることを特徴とする請求項5に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項7】
前記焼結処理の温度は、500~700℃の範囲内であり
、及び/又は
焼結処理の時間は、4~20hの範囲内で
あることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項8】
前記焼結処理の温度は、550~650℃の範囲内であり、及び/又は
焼結処理の時間は、8~12hの範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項9】
前記
Li源は、
Liの酸化物、塩、水酸化物の1種または複数種から選択されることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項10】
前記
Li源は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウムのうちの1種または複数種から選択され、且つ前記
Li源中のリチウム元素と前記炭素複合された酸化物粒子中のM元素とのモル比は
1~5.5の範囲内であることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【請求項11】
前記炭素複合された酸化物粒子は、液相沈殿法により調製されることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の電極活物質の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に電極活物質、その調製方法、極片及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー節約と排出削減は自動車産業の持続可能な発展のカギであり、電気自動車はそのエネルギー節約と環境保護の優勢によって自動車産業の持続可能な発展の重要な構成部分になった。電気自動車にとって電池技術はまた、その発展と関連した重要な要素である。今日の社会の急速な発展に伴い、現存するエネルギーの使用範囲はますます広くなっているが、化石燃料から発生する有害ガスによって環境に大きな副作用をもたらし、同時に化石エネルギーの不足によって人々の現在増加するエネルギー需要を満足させることができない。したがって、化石エネルギーの代わりに新しいクリーンエネルギーを探すことがこの問題を解決する最も効果的な方法の一つである。電池の性能は安定し、比エネルギーが高く、しかも何度も繰り返し循環して使用することができるため、非常に大きな関心を得ており、電極活物質は電池の重要な構成部分として電池の品質を決定するカギである。
【0003】
市場、特に動力電池市場は電池エネルギー密度と充電効率に対する要求がますます高くなるにつれて、電極活物質に対する要求もさらに高い。従来の電極活物質は、次世代電池のエネルギー密度と比容量に対する要求を満たすことができなかった。また、電池の性能を向上させるために、電極活物質に炭素被覆の後処理を施すことにより、電子の電極活物質での伝送を最適化することが多い。しかし、従来の処理方法では電池性能を確実に向上させることができなかった。
【発明の概要】
【0004】
本願は、少なくとも従来技術に存在していた技術的課題のうちの1つを解決することを目的とする。そのため、本願は、グラム当たりの充電容量が高く、電池容量の向上に有利な電極活物質を提供することを目的とする。
【0005】
本願の第1態様は、炭素被覆された金属酸化物粒子を含む電極活物質を提供し、金属酸化物粒子は、下記式(2)満たし、
AcMdOe (2)
式(2)中、A元素は、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素のうちの1種または複数種から選択され、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、c>0、d>0、e>0である。
【0006】
本願により提供される電極活物質において、遷移金属元素の原子質量が相対的に小さく、炭素被覆された金属酸化物粒子は、同じAイオン数を含む場合に、グラム当たりの充電容量がより高く、放電後に残る物質がより軽く、全極片に占める重量が小さく、電池の電極活物質の占める割合およびエネルギー密度を向上させることができる。
【0007】
任意の実施形態において、A元素は、Li、Na、K、Mg、Caのうちの1種または複数種から選択される。上述の金属酸化物は、高いグラム当たりの充電容量と高いエネルギー密度を有し、原材料が豊富且つ入手容易で、各種の電池に適しており、優れた応用展望を有する。
【0008】
任意の実施形態において、金属酸化物は、Li2M1O2、Li2M2O3、Li3M3O4、Li5M4O4、Li6M5O4のうちの1種または複数種から選択され、ここで、M1はNi、Co、Fe、Mn、Cuのうちの1種または複数種から選択され、M2はMn、Sn、Mo、Ru、Irのうちの1種または複数種から選択され、M3はV、Nb、Cr、Moのうちの1種または複数種から選択され、M4はFe、Cr、V、Moのうちの1種または複数種から選択され、M5はCo、V、Cr、Moのうちの1種または複数種から選択される。上記金属酸化物は、高いグラム当たりの充電容量、高いエネルギー密度、及び優れた応用展望を有する。
【0009】
任意の実施形態において、金属酸化物は、Li2NiO2、Li2CuO2、Li2MnO3、Li3VO4、Li5FeO4、Li6CoO4のうちの1種または複数種から選択される。上記リチウム過剰金属酸化物の調製方法は成熟し、高いグラム当たりの充電容量と高いエネルギー密度を有し、次世代の大規模電力網貯蔵と電気自動車に使用する充電可能リチウム電池の需要を満足させることができ、応用展望が高い。
【0010】
任意の実施形態において、A元素とM元素とのモル比は、c:d≧2であり、電極活物質の元素の総モル数に基づいて計算する。上記金属酸化物において、A原子数がM原子に対してより多く、電極活物質のグラム当たりの充電容量がより高くなる。
【0011】
任意の実施形態において、電極活物質の炭素含有量は、電極活物質の全重量に対して2wt%~20wt%であり、選択的には5wt%~15wt%である。適正な含有量の炭素被覆により、電極活物質は、低い粉末抵抗率、高い材料安定性及び電子伝導性、優れた炭素被覆効果を有し、電池容量の向上に有利である。
【0012】
任意の実施形態において、電極活物質はドーピング元素を含み、ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物のそれぞれとの溶解度積定数の比は10-5~105であり、ドーピング元素はMg、Zn、Al、Tiのうちの1種または複数種から選択ことができる。電極活物質はドーピング元素を含み、電極活物質の安定性をさらに向上させ、電池の使用寿命を延ばすことができる。ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物のそれぞれとの溶解度積定数の比が10-5~105であるため、ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物との溶解度積の差が大きすぎてドーピング不均一ひいてはドーピング元素が単独で沈殿することを回避し、ドーピング元素の効用を最大限に発揮し、電極活物質のグラム当たりの充電容量及びエネルギー密度の向上に寄与する。
【0013】
任意の実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率は、1000Ω・cm未満であり、選択的には350Ω・cm未満であり、より選択的には10Ω・cm未満であり、さらに選択的には5Ω・cm未満である。上記炭素被覆された金属酸化物粒子は、粉末抵抗率が低く、材料安定性および電子伝導性が高く、炭素被覆の効果が良く、電池容量の向上に有利である。
【0014】
任意の実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、100~900nmの範囲内であり、選択的には300~700nmの範囲内である。上記炭素被覆された金属酸化物粒子は、適正なメジアン径を有し、電極活物質は充電中のイオン伝送経路が短く、動力学が高く、グラム当たりの充電容量が高く、同時に適正な比表面積を有し、凝集によるグラム当たりの充電容量の低下が発生しにくい。
【0015】
本願の第2態様は、電極活物質の調製方法を提供し、方法は、炭素複合された酸化物粒子を提供し、酸化物は、下記式(1)を満たし、
MaOb (1)
式(1)中、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、a>0、b>0であるステップと、
炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを焼結処理して炭素被覆された金属酸化物粒子を得、金属酸化物は、下記式(2)を満たし、
AcMdOe (2)
式(2)中、A元素は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種から選択され、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種又は複数種から選択され、c>0、d>0、e>0であるステップと、含む。
【0016】
任意の実施形態において、上記の方法により調製された炭素被覆された金属酸化物粒子は、外部の炭素層被覆の完全性が高く、材料の粉末抵抗率が低い。また、炭素複合された酸化物粒子中の表面炭素層を有効的に利用して焼結過程における金属酸化物粒子の成長及び凝集を抑制し、炭素被覆された金属酸化物粒子のサイズをサブミクロン~ナノオーダーに制限することにより、炭素被覆された金属酸化物粒子の充電過程でのイオン伝送経路が短く、動力学が高く、グラム当たりの充電容量がより高くなる。同時に、炭素被覆された金属酸化物粒子に対する炭素被覆の後処理を回避することができ、炭素被覆された金属酸化物粒子の安定性を有効的に高め、製造コストを削減する。
【0017】
任意の実施形態において、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率は100Ω・cm未満であり、選択的には10Ω・cm未満である。炭素複合された酸化物粒子は低い粉末抵抗率を有し、その炭素元素は複合の均一度が高く、分散性が良いため、これを前駆体として調製された電極活物質は炭素被覆の後処理を必要とせず、通常の炭素被覆の後処理による悪影響を解決し、電極活物質の安定性を高め、製造コストを低減する。同時に、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率が低く、炭素分散性が良いため、これを前駆体として調製された炭素被覆された金属酸化物粒子は炭素層の被覆完全性が高く、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率が低くなり、電池容量を向上させる。
【0018】
任意の実施形態において、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、10~200nmの範囲内であり、選択的には20~100nmの範囲内である。炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径を適正な範囲内に制御すると、炭素被覆された金属酸化物の粒径の制御、炭素被覆された金属酸化物の粉末抵抗率の低減、グラム当たりの充電容量の向上に有利である。
【0019】
任意の実施形態において、炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量は、炭素複合された酸化物粒子の全重量に対して10wt%~40wt%であり、選択的には20wt%~30wt%である。炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量を適正な範囲内に制御すると、電極活物質の粉末抵抗率の低減、そのグラム当たりの充電容量の向上に有利である。
【0020】
任意の実施形態において、焼結処理の温度は、500~700℃の範囲内であり、選択的には550~650℃の範囲内であり、及び/又は焼結処理の時間は、4~20hの範囲内であり、選択的には8~12hの範囲内である。焼結処理の温度および/または時間を適正な範囲内に制御すると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50、および高いグラム当たりの充電容量の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製に有利である。
【0021】
任意の実施形態において、A源は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、塩、水酸化物の1種または複数種から選択される。この方法は適用範囲が広く、必要に応じて複数種の炭素被覆された金属酸化物粒子を合成することができる。
【0022】
任意の実施形態において、A源は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウムのうちの1種または複数種から選択され、A源中のリチウム元素と炭素複合された酸化物粒子中のM元素とのモル比は5.5~1の範囲内である。この方法により調製されたリチウム過剰金属酸化物は、低い粉末抵抗率と高いグラム当たりの充電容量を示す。
【0023】
任意の実施形態において、炭素複合された酸化物粒子は、液相沈殿法により調製される。この方法は簡単で、低コストで、広く応用しやすい。
【0024】
本願の第3態様は、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面に設けられ、第1態様の電極活物質を含む電極活物質層と、を含む極片を提供する。この極片は電池が高容量を有するようにする。
【0025】
本願の第4態様は、第1態様の電極活物質または第3態様の極片を含む電池を提供する。この電池は高容量を有する。
【0026】
以上の説明は、本願の技術案の概説に過ぎず、本願の技術的手段をより明確に理解できるように、明細書の内容に従って実施することができ、また、本願の上記および他の目的、特徴、および利点をより明確に理解しやすくするために、以下に本願の具体的な実施形態を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付図面において、複数の添付図面に係る同一の符号は、特に規定しない限り、同一又は類似の部品又は要素を示す。これらの添付図面は必ずしも比例して作図すべきであるものではない。これらの添付図面は、本願に開示されたいくつかの実施形態のみを描いており、これを本願の範囲の制限とみなすべきではないことを理解されたい。
【0028】
【
図1】実施例3に提供されるFe
2O
3@Cの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0029】
【
図2】実施例3に提供されるFe
2O
3@Cの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0030】
【
図3】実施例3に提供されるFe
2O
3@CのX線回折(XRD)図譜である。
【0031】
【
図4】実施例25に提供されるLi
5FeO
4@Cの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0032】
【
図5】実施例25に提供されるLi
5FeO
4@CのX線回折(XRD)図譜である。
【0033】
【
図6】実施例25に提供されるLi
5FeO
4@Cの最初の充電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、本願の技術案の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は、本願の技術案をより明確に説明するためにのみ使用されるため、一例として、本願の保護範囲を限定するものではない。
【0035】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本願の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じであり、本明細書で使用される用語は、単に具体的な実施例を説明するための目的であり、本願を制限することを意図するものではなく、本願の明細書、特許請求の範囲、および上述の図面説明における用語「含む」、「有する」、およびそれらのいかなる変形も、排他的でなく覆う含みを意図している。
【0036】
本願の実施例の説明において、技術用語「第1」、「第2」等は、単に異なるオブジェクトを区別するためのものであり、相対的重要性を指示するか暗示するか、または、指示された技術的特徴の数、特定の順序、または主副関係を暗黙的に示すと理解することができない。本願の実施例の説明において、「複数」とは、特に具体的に限定されない限り、2つ以上の意味を有する。
【0037】
本明細書で「実施例」に言及されることは、実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。明細書における各位置で出現するフレーズは、必ずしも同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と相互排他的に独立した、または代替的な実施例を指すものでもない。当業者は、本明細書で説明する実施例が他の実施例と組み合わされ得ることを明示的かつ暗黙的に理解する。
【0038】
本願の実施例の説明において、「および/または」という用語は、単に関連オブジェクトを記述する関連関係であり、例えば、Aおよび/またはBの3つの関係が存在し得ることを示し、Aが単独で存在し、AとBが同時に存在し、Bが単独で存在することを示すことができる。なお、本明細書における文字「/」は、一般的に前後の関連オブジェクトが「または」の関係であることを表す。
【0039】
本願の実施例の説明において、用語「複数」とは、2つ以上(2つを含む)を意味し、同様に、「複数組」とは、2組以上(2組を含む)を意味し、「複数シート」とは、2シート以上(2シートを含む)を意味する。
【0040】
本願の実施例の説明において、技術用語「中心」、「縦向」、「横向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」等が指示する方位または位置関係は、添付図面に基づく方位または位置関係であり、単に本願の実施例の説明を容易にし、説明を簡略化するためのものであり、指す装置または要素が、必ずしも特定の方位で構成および動作するように特定の方位を有することを指示または暗示するものではなく、従って、本願の実施例の制限と理解できない。
【0041】
本願の実施例の説明において、特に明示的な規定及び限定がない限り、技術用語「取付」、「相互接続」、「接続」、「固定」等は、広義的に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能接続であってもよいし、一体化であってもよいし、機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよいし、直接接続であってもよいし、中間媒体を介して間接接続であってもよいし、2つの要素の内部の連通であってもよいし、2つの要素の相互作用関係であってもよい。本願の実施例における上記用語の具体的な意味は、当業者にとって、具体的な状況に応じて理解され得る。
【0042】
従来技術では、電極活物質と炭素材料を混合して炭素被覆の後処理を行い、電池の電容量を向上させ、特にリチウム過剰金属酸化物を炭素被覆の後処理を行ってリチウム過剰金属酸化物の安定性及び動力学の悪い問題を解決した。しかし、出願者は研究において炭素被覆の後処理が以下の欠点があることを発見した。まず、炭素被覆の後処理の被覆完全性が悪く、ランダム性が強く;次に、リチウム過剰金属酸化物に対する炭素被覆の後処理の過程で、その表面に相転移が発生しやすく、材料内部の活性リチウムが離脱して表面に副生成物である炭酸リチウムが生成され、むしろリチウム過剰金属酸化物のグラム当たりの充電容量が低下し;さらに重要なことは、リチウム過剰金属酸化物に対する炭素被覆の後処理の過程で、リチウム過剰金属酸化物の凝集を増加させ、その粒子の粒径をさらに増大させ、むしろ脱リチウムの動力学を悪化させ、そのグラム当たりの充電容量を低下させる。
【0043】
これに基づき、本願の第1態様に係る実施形態において、炭素複合された酸化物粒子を含む電極活物質の前駆体を提供し、酸化物は、下記式(1)を満たし、
MaOb (1)
式(1)中、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Mg、Ca、Cu、Mn、Sn、Mo、Ru、Ir、V、Nb、Crのうちの1種または複数種から選択されることができ、a>0、b>0であり、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率が100Ω・cm未満である。
【0044】
電極活物質の前駆体は、電極活物質を調製するための原材料とすることができるものを指す。いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率の上限値は、50Ω・cm、40Ω・cm、30Ω・cm、20Ω・cmから選択されることができる。
【0045】
本明細書において、「粉末抵抗率」という用語は、材料自体の導電性を表すためのパラメータであり、極片の抵抗率とは異なる。一般的に、粉末抵抗率は、四プローブ(Four-probe)等のテスターを用いて、「リチウムイオン電池用炭素複合リン酸鉄リチウム正極材料」GB/T30835-2014に従って測定される。
【0046】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子は、炭素と酸化物粒子とを含む複合材料である。炭素と酸化物粒子は、物理混合、化学複合などの任意の方法で複合することができることが理解できる。具体的には、炭素と酸化物粒子は、攪拌、研磨、超音波、原位置成長、グラフト、被覆などの方法で複合することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、MaObは、M1O、M2O2、M3
2O5、M4
2O3、M5Oのうちの1種または複数種から選択される。その中、M1は、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Mg、Ca、Cuのうちの1種または複数種を含み、M2は、Mn、Sn、Mo、Ru、Irのうちの1種または複数種を含み、M3は、V、Nb、Cr、Moのうちの1種または複数種を含み、M4は、Fe、Cr、V、Moのうちの1種または複数種を含み、M5は、Co、V、Cr、Moのうちの1種または複数種を含む。
【0048】
遷移金属元素とは、元素周期表におけるd領域とds領域の一連の金属元素を指し、d領域元素は元素周期表のIIIB~VIIB、VIII族元素を含み、ds領域は元素周期表のIB~IIB族元素を含む。
【0049】
本願において提供される電極活物質の前駆体は、炭素複合された酸化物粒子を含み、その中の炭素元素は複合の均一度が高く、分散性が良いため、炭素複合された酸化物粒子は低い粉末抵抗率を有し、これを前駆体として調製された電極活物質に炭素被覆の後処理が必要となることを回避し、上記通常の炭素被覆の後処理による悪影響を解決し、電極活物質の安定性を向上させ、製造コストを低下する。同時に、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率が低く、炭素の分散性が良いため、これを前駆体として調製された電極活物質では炭素層の被覆完全性が高く、電極活物質の粉末抵抗率が低く、電池容量を向上させる。さらに、炭素複合された酸化物粒子中の表面炭素層を有効的に利用して電極活物質の成長及び凝集を抑制し、電極活物質のサイズをサブミクロン~ナノオーダーに制限することにより、電極活物質の充電過程でのイオン伝送経路が短く、動力学が高く、安定性が高く、充電容量がより高い。しかも、炭素複合された酸化物粒子中の遷移金属元素の原子質量が相対的に小さいため、調製された電極活物質のグラム当たりの充電容量がより高く、放電後の残留物質がより軽く、全極片に占める重量が小さく、電池の電極活物質の占める割合およびエネルギー密度をさらに高めることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率は、10Ω・cm未満、選択的には、1Ω・cm未満であり、粉末抵抗率の上限値は、9Ω・cm、8Ω・cm、7Ω・cm、6Ω・cm、5Ω・cm、4.25Ω・cm、3.58Ω・cm、2.78Ω・cm、2.28Ω・cm、2.15Ω・cm、1.38Ω・cm、1.02Ω・cm、0.98Ω・cm、0.95Ω・cm、0.56Ω・cm、0.42Ω・cm、0.31Ω・cm、0.3Ω・cm、0.28Ω・cm、0.26Ω・cm、0.25Ω・cm、0.24Ω・cm、0.23Ω・cm、0.22Ω・cm、0.21Ω・cm、0.19Ω・cmから選択されることができる。炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率を低下させることにより、調製される電極活物質の抵抗率を低下させ、電極活物質のグラム当たりの充電容量を向上させることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量は10~40%であり、選択的には、20~30%である。いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量は、10%、18%、20%、22%、23%、24%、25%、30%、40%から選択されることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、炭素含有量アナライザを用いて炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量を測定する。本明細書において、炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量は、炭素複合された酸化物の調製過程において、添加炭素源の質量を変化させることにより調整することができる。
【0053】
炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量が高すぎると、炭素複合された酸化物粒子中の酸化物の占める割合が低下し、炭素材料自体が凝集し、複合効果が悪くなりやすい。炭素複合された酸化物粒子中の炭素元素の質量含有量を適正な範囲内に制御し、均一な炭素複合により、粒径分布が均一で炭素元素の分散性の高い炭素複合された酸化物粒子を得ることができ、さらに炭素複合された酸化物粒子及びこれを前駆体として調製された電極活物質の粉末抵抗率を低下し、ひいては電池容量を向上させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、10~200nm、選択的には、20~100nmである。いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、20nm、30nm、40nm、45nm、47nm、58nm、60nm、61nm、62nm、65nm、68nm、70nm、75nm、80nm、83nm、94nm、100nm、110nm、200nmから選択されることができる。
【0055】
本明細書において、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、本分野の周知の意味である。メジアン粒径Dv50は、平均粒径とも呼ばれ、材料の累積体積分布百分率が50%に達したときに対応される粒径を表している。本分野において既知の方法および測定器を用いて測定することができる。例えば、GB/T19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照して、レーザー粒度アナライザを用いて測定することができる。
【0056】
炭素複合された酸化物粒子の粒径が小さすぎると、その比表面積が大きすぎ、比表面エネルギーが高すぎになりやすいため、電極活物質を調製する過程で、炭素複合された酸化物粒子自体が凝集して分散性を低下させる。炭素複合された酸化物粒子の粒径が大きすぎると、炭素と酸化物粒子との複合効果が低下しやすい。炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50を適正な範囲内に制御すると、これを前駆体として調製された電極活物質の粒径の制御に有利であり、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50、高いグラム当たりの充電容量の電極活物質の調製に有利である。
【0057】
本願の第2態様に係る実施形態において、上記電極活物質の前駆体の調製方法を提供する。該方法は、Mイオンを含む水溶液中に炭素源を分散させて混合液を得るステップと、混合液のpH値をアルカリ性になるまで調整制御してアルカリ性混合液を得るステップと、アルカリ性混合液を沈殿反応させて沈殿物を得るステップと、沈殿物を分離、洗浄して前体を得るステップと、前体を脱水乾燥させて電極活物質の前駆体が調製して得られ、電極活物質の前駆体は、炭素複合された酸化物粒子を含み、酸化物は、下記式(1)を満たすステップと、を含み、
MaOb (1)
式(1)中、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Mg、Ca、Cu、Mn、Sn、Mo、Ru、Ir、V、Nb、Crのうちの1種または複数種から選択されることができ、a>0、b>0であり、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率が100Ω・cm未満である。
【0058】
いくつかの実施形態において、Mイオンの水溶液は、Mイオンを有する塩を水に溶解することによって調製される。いくつかの実施形態において、混合液中のM元素の濃度は、0.5~10mol/Lである。いくつかの実施形態において、混合液中の炭素源は、超音波、攪拌等の分散方式など、種々の分散方式によって分散される。Mイオンを含む水溶液中に炭素源を分散させることにより、Mイオンが炭素源に均一に吸着し、炭素源が後続の沈殿反応過程で基質として機能し、Mイオンが核形成の反応物として基質上に均一に分散することにより、生成された沈殿の凝集の成長を回避し、酸化物粒子の成長を抑制する。
【0059】
いくつかの実施形態において、混合溶液のpH値は、強アルカリ溶液を添加する流量および流量を調整することによって調整制御される。強アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの1種または複数種から選択される。強アルカリ溶液中のヒドロキシル基は溶液から急速にイオン化され、沈殿物の成長過程を制御するのに使用される。選択的に、強アルカリ溶液の濃度は1~10mol/Lである。いくつかの実施形態において、強アルカリ溶液は、混合液を一定時間攪拌した後、混合液に添加される。いくつかの実施形態において、強アルカリ溶液は、混合液を0.1~2h攪拌した後、混合液に添加される。いくつかの実施形態において、強アルカリ溶液は、混合液を1h攪拌した後、混合液に添加される。いくつかの実施形態において、強アルカリ溶液と混合液とを反応釜に並流に添加され、強アルカリ溶液の流速は混合液の流速の0.01~0.5倍である。いくつかの実施形態において、強アルカリ溶液と混合液とを反応釜に並流に添加され、強アルカリ溶液の流速は混合液の流速の0.1倍である。強アルカリ溶液の添加前に、混合液の攪拌によりMイオンと炭素源の分散性を高め、Mイオンの炭素源での吸着を補助し、炭素複合された酸化物粒子の急速な成長を回避し、分散度が高く、粒径が均一な炭素複合された酸化物粒子の調製に寄与する。
【0060】
いくつかの実施形態において、沈殿反応は攪拌条件下で行われる。いくつかの実施形態において、攪拌強度は100~500回転/分である。いくつかの実施形態において、沈殿物は反応終了後に抽出濾過または遠心することによって沈殿物を分離させる。いくつかの実施形態において、沈殿物を洗浄するために、蒸留水または無水エタノールで沈殿物を複数回繰り返して湿式洗浄する。いくつかの実施形態において、洗浄後の生成物をオーブンに置いて乾燥させると、炭素複合された酸化物粒子を得ることができる。
【0061】
沈殿反応とは、溶液中の目的生成物を固相として沈殿析出させる反応である。本明細書では、Mイオンはアルカリ性混合液中に沈殿析出し、沈殿物を得る。
【0062】
この調製方法は簡単で実行しやすく、各種の炭素複合された酸化物粒子の調製に適しており、コストが低く、普及しやすい特徴がある。この方法は、反応時に炭素源を添加し、沈殿物の核形成部位として沈殿物の凝集を抑制するとともに、炭素と酸化物との複合効果を高め、炭素複合された酸化物粒子の抵抗率を低下させることができるため、調製して得られた炭素複合された酸化物粒子は、粒径分布が均一で、分散性が高く、粉末抵抗率が小さく、炭素含有量が高いなどの特徴を有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、アルカリ性混合液のpH値は、9~13の範囲内、選択的には10~12の範囲内である。いくつかの実施形態において、アルカリ性混合液のpH値は、8、9、10、11、11.6、11.8、12、13のうちのいずれか1つから選択されることができる。
【0064】
アルカリ性混合液のpH値を調整制御して沈殿物の核形成の成長過程を制御することができる。アルカリ性混合液のpH値が高すぎると、沈殿反応に要する時間が極めて短く、沈殿過程が制御しにくく、大粒の沈殿凝集体が形成されやすい。アルカリ性混合液のpH値が低すぎると、Mイオンを含む水溶液は沈殿を形成させにくくなる。アルカリ性混合液のpH値が適正な範囲内に制御されると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。
【0065】
いくつかの実施形態において、沈殿反応の反応時間は、4~15hの範囲内、選択的には6~12hの範囲内である。いくつかの実施形態において、沈殿反応の反応時間は、4h、6h、8h、12h、15hのうちのいずれか1つから選択されることができる。
【0066】
沈殿反応の反応時間を調整制御して沈殿物の核形成の成長過程を制御することができる。反応時間が短すぎると、沈殿物の核形成の成長が不完全になり、材料の結晶性が悪くなる。反応時間が長すぎると、沈殿物が核形成された後、成長し続け、沈殿物の粒子が大きすぎになる。沈殿反応の反応時間が適正な範囲内に制御されると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。
【0067】
いくつかの実施形態において、沈殿反応の反応温度は、30~80℃の範囲内、選択的には40~60℃の範囲内である。いくつかの実施形態において、沈殿反応の反応温度は、40℃、50℃、60℃、80℃のうちのいずれか一つから選択されることができる。
【0068】
沈殿反応の反応温度を調整制御して沈殿物の核形成の成長過程を制御することができる。反応温度が低すぎると、沈殿物の核形成の成長が不完全になり、材料の結晶性が悪くなる。反応温度が高すぎると、沈殿物が核形成された後、成長が速すぎて大粒の沈殿物を形成させる。沈殿反応の反応温度が適正な範囲内に制御されると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50の電極活物質の前駆体の調製に有利である。また、本願に開示された調製方法は、反応温度が低く、通常の電極活物質または高い温度で反応する必要がある通常の前駆体の調製方法とは異なり、エネルギー消費量を低減し、コストを削減し、普及及び応用に有利である。
【0069】
いくつかの実施形態において、混合液のpH値をアルカリ性に調整制御する前に、混合液に弱アルカリ溶液を添加する。弱アルカリ溶液中のヒドロキシル基が溶液からゆっくりとイオン化されることにより、沈殿物の核形成過程を制御し、Mイオンの炭素源での核形成率を高め、沈殿物の急速な成長析出を回避でき、炭素源に吸着されたMイオンが核形成を分散させるのに十分な時間があり、炭素複合された酸化物粒子の分散性を高め、炭素複合された酸化物の粒径の調整制御に便利するため、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。
【0070】
いくつかの実施形態において、弱アルカリ溶液は、混合液を一定時間攪拌した後、混合液に添加される。いくつかの実施形態において、弱アルカリ溶液は、混合液を0.5h攪拌した後、混合液に添加される。混合液の一定期間の攪拌によりMイオンと炭素源との分散性を向上させ、Mイオンの炭素源での吸着を補助し、分散度が高く粒径が均一な電極活物質の前駆体の調製に寄与する。いくつかの実施形態において、弱アルカリ溶液と混合液とを反応釜に並流に添加され、弱アルカリ溶液の流速は混合液の流速の0.1~0.7倍、好ましくは0.2~0.6倍、より好ましくは0.4倍である。弱アルカリ溶液の流速を制御して核形成速度を制御することにより、分散度が高く、粒径が均一な炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。
【0071】
いくつかの実施形態において、弱アルカリ溶液は、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液のうちの1種または複数種から選択される。いくつかの実施形態において、弱アルカリ溶液の濃度は、好ましいは2~8mol/Lである。上記材料は、簡便及び入手容易で、この方法の普及と応用に便利で、コスト削減が可能である。
【0072】
いくつかの実施形態において、炭素源は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、カーボンマイクロボールのうちの1種または複数種から選択される。何れの炭素材料をいずれも炭素源とすることができ、この方法の適用範囲をさらに拡大することが理解できる。
【0073】
いくつかの実施形態において、Mイオンを含む水溶液は、M元素を含む硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物のうちの1種または複数種を水に溶解して調製されることによって得られる。原材料の簡単及び入手容易はこの方法の汎用性をさらに向上させる。
【0074】
いくつかの実施形態において、前体を100~200℃の間で6~20h乾燥させて電極活物質の前駆体を得る。乾燥温度が低すぎるかまたは時間が短すぎると、前体中の水分除去が不完全になりやすく、乾燥温度が高すぎるかまたは時間が長すぎると、炭素複合された酸化物粒子の凝集の成長を起こしやすい。乾燥温度と時間を制御すると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。
【0075】
本願の第3態様に係る実施形態は、上記のいずれか一項の実施形態における電極活物質の前駆体を原材料として調製して得られた電極活物質を提供する。この電極活物質の前駆体で調製された電極活物質は、最適化された粉末抵抗率および粒径を有し、炭素被覆層が均一かつ完全であり、電極活物質の電子導電率、充電容量および安定性が高いため、電池の容量をさらに高めることができ、この電極活物質は、炭素被覆の後処理を必要とせず、製造コストを削減できる。
【0076】
本願の第4態様に係る実施形態は、炭素被覆された金属酸化物粒子を含む電極活物質を提供し、金属酸化物粒子は、下記式(2)満たし、
AcMdOe (2)
式(2)中、A元素は、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素のうちの1種または複数種から選択され、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、c>0、d>0、e>0である。
【0077】
アルカリ金属元素とは、元素周期表におけるIA族の水素(H)以外の6つの金属元素、すなわちリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)を指す。
【0078】
アルカリ土類金属元素とは、元素周期表におけるベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)の6種類の元素を含むIIA族元素を指す。
【0079】
遷移金属元素とは、元素周期表におけるd領域とds領域の一連の金属元素を指し、d領域元素は元素周期表のIIIB~VIIB、VIII族元素を含み、ds領域は元素周期表のIB~IIB族元素を含む。
【0080】
本実施形態により提供される電極活物質において、遷移金属元素の原子質量が相対的に小さく、炭素被覆された金属酸化物粒子は、同じAイオン数を含む場合に、グラム当たりの充電容量がより高く、放電後に残る物質がより軽く、全極片に占める重量が小さく、電池の電極活物質の占める割合およびエネルギー密度を向上させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、A元素は、Li、Na、K、Mg、Caのうちの1種または複数種から選択される。上述の金属酸化物は、高いグラム当たりの充電容量と高いエネルギー密度を有し、原材料が豊富且つ入手容易で、各種の電池に適しており、優れた応用展望を有する。
【0082】
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、Li2M1O2、Li2M2O3、Li3M3O4、Li5M4O4、Li6M5O4のうちの1種または複数種から選択され、ここで、M1はNi、Co、Fe、Mn、Cuのうちの1種または複数種から選択され、M2はMn、Sn、Mo、Ru、Irのうちの1種または複数種から選択され、M3はV、Nb、Cr、Moのうちの1種または複数種から選択され、M4はFe、Cr、V、Moのうちの1種または複数種から選択され、M5はCo、V、Cr、Moのうちの1種または複数種から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態において、電極活物質の形状、組成、構造、表面の原子価状態および電気化学性能は、上記金属酸化物中のM元素の種類および割合を調整制御することによって調整することができる。いくつかの実施形態において、M元素は豊富な原子価状態を有し、M元素の金属酸化物中の原子価状態は、いずれもその自体の最高酸化原子価状態よりも低い。上記金属酸化物は、高いグラム当たりの充電容量、高いエネルギー密度、及び優れた応用展望を有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、Li2NiO2、Li2CuO2、Li2MnO3、Li3VO4、Li5FeO4、Li6CoO4のうちの1種または複数種から選択される。上記リチウム過剰金属酸化物の調製方法は成熟し、高いグラム当たりの充電容量と高いエネルギー密度を有し、次世代の大規模電力網貯蔵と電気自動車に使用する充電可能リチウム電池の需要を満足させることができ、応用展望が高い。
【0085】
いくつかの実施形態において、A元素とM元素とのモル比は、c:d≧2であり、電極活物質の元素の総モル数に基づいて計算する。上記金属酸化物において、A原子数がM原子に対してより多く、電極活物質のグラム当たりの充電容量がより高くなる。
【0086】
いくつかの実施形態において、電極活物質の炭素含有量は、電極活物質の全重量に対して2wt%~20wt%であり、選択的には5wt%~15wt%である。いくつかの実施形態において、電極活物質の炭素含有量は、炭素被覆された金属酸化物の全重量に対して2wt%~20wt%、選択的には5wt%~15wt%である。適正な含有量の炭素被覆により、電極活物質は、低い粉末抵抗率、高い材料安定性及び電子伝導性、優れた炭素被覆効果を有し、電池容量の向上に有利である。
【0087】
いくつかの実施形態において、電極活物質はドーピング元素を含み、ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物のそれぞれとの溶解度積定数の比は10-5~105であり、ドーピング元素はMg、Zn、Al、Tiのうちの1種または複数種から選択ことができる。電極活物質はドーピング元素を含み、電極活物質の安定性をさらに向上させることができる。いくつかの実施形態において、溶解度積とは、沈殿の溶解平衡定数を指し、Kspで表され、溶解度積の大きさは難溶性の電解質の溶解能力を反映する。ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物のそれぞれとの溶解度積定数の比が10-5~105であるため、ドーピング元素の水酸化物とM元素の水酸化物との溶解度積の差が大きすぎてドーピング不均一ひいてはドーピング元素が単独で沈殿することを回避し、ドーピング元素の効用を最大限に発揮し、電極活物質のグラム当たりの充電容量及びエネルギー密度の向上に寄与する。
【0088】
いくつかの実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率は、1000Ω・cm未満、選択的には350Ω・cm未満、より選択的には10Ω・cm未満、さらに選択的には5Ω・cm未満である。いくつかの実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率は、選択的には100Ω・cm未満、より選択的には50Ω・cm未満である。いくつかの実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率は、選択的には1.24Ω・cm、2.12Ω・cm、2.83Ω・cm、3.18Ω・cm、6.54Ω・cm、10.13Ω・cm、17.24Ω・cm、21.34Ω・cm、25.36Ω・cm、32.41Ω・cm、35.76Ω・cm、45.32Ω・cm、48.35Ω・cm、50.13Ω・cm、56.21Ω・cm、60.28Ω・cm、81.22Ω・cm、89.13Ω・cm、236.11Ω・cm、313.87Ω・cmである。本実施形態により提供された炭素被覆された金属酸化物粒子は、粉末抵抗率が低く、材料安定性および電子伝導性が高く、炭素被覆の効果が良く、電池容量の向上に有利である。
【0089】
いくつかの実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、100~900nmの範囲内、選択的には300~700nmの範囲内である。いくつかの実施形態において、炭素被覆された金属酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、100~800nmの範囲内、選択的には400~900nmの範囲内、より選択的には200~600nmの範囲内である。本願により提供される炭素被覆された金属酸化物粒子は、適正なメジアン径を有し、充電中のイオン伝送経路が短く、動力学が高く、グラム当たりの充電容量がより高く、同時に適正な比表面積を有し、凝集によるグラム当たりの充電容量の低下が発生しにくい。
【0090】
本願の第5態様に係る実施形態において、電極活物質の調製方法を提供する。該方法は、炭素複合された酸化物粒子を提供し、上記酸化物は、下記式(1)を満たし、
MaOb (1)
式(1)中、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種または複数種から選択され、a>0、b>0であるステップと、
炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを焼結処理して炭素被覆された金属酸化物粒子を得、金属酸化物は、下記式(2)を満たし、
AcMdOe (2)
式(2)中、A元素は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種から選択され、M元素は、相対原子質量が65未満の遷移金属元素のうちの1種又は複数種から選択され、c>0、d>0、e>0であるステップと、含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子は、炭素と酸化物粒子とを含む複合材料である。炭素と酸化物粒子は、物理混合、化学複合などの任意の方法で複合することができることが理解できる。具体的には、炭素と酸化物粒子は、攪拌、研磨、超音波、原位置成長、グラフトなどの方法で複合することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、MaObは、M1O、M2O2、M3
2O5、M4
2O3、M5Oのうちの1種または複数種から選択される。その中、M1はNi、Co、Fe、Mn、Zn、Mg、Ca、Cuのうちの1種または複数種を含み、M2はMn、Sn、Mo、Ru、Irのうちの1種または複数種を含み、M3はV、Nb、Cr、Moのうちの1種または複数種を含み、M4はFe、Cr、V、Moのうちの1種または複数種を含み、M5はCo、V、Cr、Moのうちの1種または複数種を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、A源は、任意の1種または複数種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む原材料であり、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムのうちの1種または複数種から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態において、炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを焼結処理する前に、炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを均一に混合して均一な焼結を実現する。炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを任意の方法で均一に混合することができ、例えば、機械的攪拌、ボールミル、化学的混合など方法で混合の均一性を向上させることができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、焼結処理は、焼結生成物の純度を向上させるために、不活性ガスを含む雰囲気中で行われる。雰囲気は、窒素、アルゴン、水素/アルゴンの混合ガスの1種または複数種であってもよい。不活性ガスは、窒素、アルゴン等の任意の不活性ガスであってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、炭素複合された金属酸化物粒子とA源とを焼結処理した後、焼結生成物を破砕および/またはふるい分け処理して炭素被覆された金属酸化物粒子を得る。
【0097】
上記の方法により調製された炭素被覆された金属酸化物粒子は、外部の炭素層被覆の完全性が高く、材料の粉末抵抗率が低い。また、炭素複合された酸化物粒子中の表面炭素層を有効的に利用して焼結過程における金属酸化物粒子の成長及び凝集を抑制し、金属酸化物粒子の粒子サイズをサブミクロン~ナノオーダーに制限することにより、炭素被覆された金属酸化物粒子の充電過程でのイオン伝送経路が短く、動力学が高く、グラム当たりの充電容量がより高くなる。同時に、炭素被覆された金属酸化物粒子に対する炭素被覆の後処理を回避することができ、炭素被覆された金属酸化物粒子の安定性を有効的に高め、製造コストを削減する。
【0098】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率は100Ω・cm未満であり、選択的には10Ω・cm未満である。炭素複合された酸化物粒子は低い粉末抵抗率を有し、その炭素元素は複合の均一度が高く、分散性が良いため、これを前駆体として調製された電極活物質は炭素被覆の後処理を必要とせず、通常の炭素被覆の後処理による悪影響を解決し、電極活物質の安定性を高め、製造コストを低減する。同時に、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率が低く、炭素分散性が良いため、これを前駆体として調製された炭素被覆された金属酸化物粒子は炭素層の被覆完全性が高く、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率が低くなり、電池容量を向上させる。
【0099】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、10~200nmの範囲内であり、選択的には20~100nmの範囲内である。炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径を適正な範囲内に制御すると、調製された炭素被覆された金属酸化物の粒径の制御、炭素被覆された金属酸化物の粉末抵抗率の低減、グラム当たりの充電容量の向上に有利である。
【0100】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量は、炭素複合された酸化物粒子の全重量に対して10wt%~40wt%であり、選択的には20wt%~30wt%である。炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量を適正な範囲内に制御すると、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率の低減、そのグラム当たりの充電容量の向上に有利である。
【0101】
いくつかの実施形態において、焼結処理の温度は、500~700℃の範囲内であり、選択的には550~650℃の範囲内であり、及び/又は焼結処理の時間は、4~20hの範囲内であり、選択的には8~12hの範囲内である。いくつかの実施形態において、焼結処理の温度は550℃、590℃、600℃、610℃、620℃、650℃から選択することができる。いくつかの実施形態において、焼結処理の時間は、8h、10hおよび12hから選択することができる。
【0102】
焼結処理の温度が低すぎるかまたは焼結処理の時間が短すぎると、炭素被覆された金属酸化物粒子の結晶性が悪く、不完全な相を呈し、グラム当たりの充電容量が低い。焼結温度が高すぎるかまたは焼結処理の時間が長すぎると、炭素被覆された金属酸化物粒子のメジアン粒径Dv50が大きすぎ、脱リチウム経路が大きくなり、動力学が低下し、グラム当たりの充電容量が低くなる。焼結処理の温度および/または時間を適正な範囲内に制御すると、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50、および高いグラム当たりの充電容量の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製に有利である。
【0103】
いくつかの実施形態において、A源は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、塩、水酸化物の1種または複数種から選択される。例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウムのうちの1種または複数種から選択される。この方法は適用範囲が広く、必要に応じて複数種の炭素被覆された金属酸化物粒子を合成することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、A源は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウムのうちの1種または複数種から選択され、A源中のリチウム元素と炭素複合された酸化物粒子中のM元素とのモル比は5.5~1の範囲内である。いくつかの実施形態において、A源中のリチウム元素と炭素複合された酸化物粒子中のM元素とのモル比は5.2~1の範囲内である。この方法により調製されたリチウム過剰金属酸化物は、低い粉末抵抗率と高いグラム当たりの充電容量を示す。
【0105】
いくつかの実施形態において、炭素複合された酸化物粒子は、液相沈殿法により調製される。液相沈殿法は、溶液中の目的生成物を固相として沈殿析出させる沈殿反応を含む。この方法は簡単で、低コストで、広く応用しやすい。
【0106】
本願の第6態様に係る実施形態は、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面に設けられ、任意の実施形態における電極活物質を含む電極活物質層と、を含む極片を提供する。この極片は電池が高容量を有するようにする。
【0107】
本願の第7態様に係る実施形態は、いずれか一項の実施形態における電極活物質または極片を含む電池を提供する。この電池は高容量を有する。
実施例
【0108】
以下、本願の実施例について説明する。以下に説明する実施形態は例示的であり、本願を解釈するためのものであり、本願の制限として理解されることはできない。実施例において具体的な技術または条件が明記されていないことは、本分野内の文献に記載されている技術または条件または製品明細書に従って行う。使用する試薬または器具にメーカーを明記していないことは、いずれも市販で入手できる通常品である。
【0109】
下記実施例では、Fe2O3を例として、加水分解沈殿によりFe(OH)3前駆体を得、脱水乾燥によりFe2O3@Cを得る電極活物質の前駆体を提供し、具体的な調製方法は以下のようである。
実施例1
【0110】
以下、実施例を参照して、本願の特徴および性能についてさらに詳細に説明する。
【0111】
FeSO4・7H2Oを原料として、蒸留水を加え、Fe元素の濃度が5mol/Lとなる溶液を調製し、次いで、攪拌条件下で上記溶液にカーボンブラックを加え、生成物中の炭素元素の質量含有量が25%となるようにカーボンブラックを適量加えて混合液を得る。
【0112】
A溶液の調製:5mol/L濃度の炭酸水素アンモニウム溶液を調製する。B溶液の調製:2mol/L濃度の水酸化ナトリウム溶液を調製する。混合液を反応釜に入れ、A溶液を混合液投入後の0.5h後に反応釜に入れ、B溶液を混合液投入後の1h後に反応釜に入れ、アルカリ性混合液を得、A溶液の流速は混合液の流速の0.4倍、B溶液の流速は混合液の流速の0.1倍、アルカリ性混合液のpH値は9であり、アルカリ性混合液は攪拌強度300回転/分で沈殿反応し、沈殿反応の反応温度は50℃、沈殿反応の反応時間は8hである。
【0113】
反応終了後、沈殿物を抽出濾過または遠心し、蒸留水または無水エタノールで沈殿物を複数回繰り返して湿式洗浄し、前体を得る。
【0114】
前体をオーブンに入れて150℃で12h乾燥させると、炭素複合された三酸化二鉄粒子を得ることができ、Fe2O3@Cと表記する。
実施例2
【0115】
本実施例は、実施例1におけるアルカリ性混合液のpH値を10に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例3
【0116】
本実施例は、実施例1におけるアルカリ性混合液のpH値を11に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例4
【0117】
本実施例は、実施例3におけるアルカリ性混合液のpH値を12に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例5
【0118】
本実施例は、実施例3におけるアルカリ性混合液のpH値を13に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例6
【0119】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応時間を4hに設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例7
【0120】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応時間を6hに設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例8
【0121】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応時間を12hに設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例9
【0122】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応時間を15hに設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例10
【0123】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応温度を30℃に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例11
【0124】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応温度を40℃に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例12
【0125】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応温度を60℃に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例13
【0126】
本実施例は、実施例3における沈殿反応の反応温度を80℃に設定し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例14
【0127】
本実施例は、実施例3におけるカーボンブラックの添加量を低減し、生成物中の炭素元素の質量含有量が10%となるようにする点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例15
【0128】
本実施例は、実施例3におけるカーボンブラックの添加量を低減し、生成物中の炭素元素の質量含有量が20%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例16
【0129】
本実施例は、実施例3におけるカーボンブラックの添加量を増加させ、生成物中の炭素元素の質量含有量が30%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例17
【0130】
本実施例は、実施例3におけるカーボンブラックの添加量を増加させ、生成物中の炭素元素の質量含有量が40%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例18
【0131】
本実施例は、実施例3における炭素源をカーボンブラックからカーボンナノチューブ(CNTs)に置換し、添加されたカーボンナノチューブの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が20%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例19
【0132】
本実施例は、実施例3における炭素源をカーボンブラックからグラファイト(Gr)に置換し、添加されたグラファイトの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が18%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例20
【0133】
本実施例は、実施例3における金属塩FeSO4・7H2OをNiSO4・6H2Oに置換し、また、アルカリ性混合液のpH値を11.8に設定し、沈殿反応の反応時間を8hに設定し、反応温度を55℃に置換し、添加されたカーボンブラックの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が23%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例21
【0134】
本実施例は、実施例3における金属塩FeSO4・7H2OをCuSO4・5H2Oに置換し、また、アルカリ性混合液のpH値を11.6に設定し、沈殿反応の反応時間を6hに設定し、反応温度を45℃に設定し、添加されたカーボンブラックの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が22%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
実施例22
【0135】
本実施例は、実施例3における金属塩FeSO4・7H2OをCoSO4・7H2Oに置換し、また、アルカリ性混合液のpH値を12に設定し、沈殿反応の反応時間を10hに設定し、反応温度を60℃に設定し、添加されたカーボンブラックの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が24%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例1
【0136】
本実施例は、実施例3におけるアルカリ性混合液のpH値を8に設定し、添加されたカーボンブラックの質量は生成物中の炭素元素の質量含有量が45%となるようにし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、実施例3とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例2
【0137】
本比較例は、比較例1におけるアルカリ性混合液のpH値を14に設定し、沈殿反応の反応時間を2hに設定し、生成物中の炭素元素の質量含有量を5%とし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例3
【0138】
本比較例は、比較例1におけるアルカリ性混合液のpH値を11に設定し、沈殿反応の反応時間を2hに設定し、沈殿反応の反応温度を90℃に設定し、生成物中の炭素元素の質量含有量を16%とし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例4
【0139】
本比較例は、比較例1におけるアルカリ性混合液のpH値を11に設定し、沈殿反応の反応時間を20hに設定し、沈殿反応の反応温度を25℃に設定し、生成物中の炭素元素の質量含有量を35%とし、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例5
【0140】
本比較例は、比較例1においてカーボンブラックを添加せず、比較例1におけるアルカリ性混合液のpH値を11に設定し、沈殿反応の反応時間を8hに設定し、沈殿反応の反応温度を50℃に置換し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
比較例6
【0141】
本比較例は、比較例5におけるFe2O3とカーボンブラックとを炭素質量比25%でボールミル混合して比較例6を調製し、ボールミル回転数は200回転毎分であり、ボールミル6hであり、調製して得られた生成物をFe2O3/Cと記す点を除いて、比較例1とほぼ同様の方法で調製した電極活物質の前駆体を提供する。
【0142】
上記実施例1~22、比較例1~6の炭素複合された酸化物粒子に関するパラメータを下記表1に示す。
【表1】
【0143】
以下の実施例および比較例は、特に説明のない限り、いずれも上記実施例で説明した方法により調製された材料を電極活物質の前駆体として選択したものである。
実施例23
【0144】
以下、実施例を参照して、本願の特徴および性能についてさらに詳細に説明する。
【0145】
本実施例は電極活物質を提供し、Li5FeO4@Cを例にとると、具体的な調製方法は以下の通りである。
【0146】
原料混合:電極活物質の前駆体として炭素含有量25%のFe2O3@Cを選択し、Fe2O3@CのDv50を10nmとし、粉末抵抗率を1.02Ω・cmとし、また、A源として水酸化リチウム(LiOH・H2O)を選択し、機械融合機にLi:Feの金属モル比5.1:1の割合で加え、機械融合方式で混合し、回転数を300回転毎分とし、混合時間を6hとした。
【0147】
焼結:混合した原料を窒素ガス下で3℃/Minで焼結温度600℃にまで昇温し、焼結時間を10h行った後、自然降温して生成物を得る。
【0148】
破砕分級:生成物を破砕分級してふるいにかけると、炭素被覆された金属酸化物粒子(Li5FeO4@C)が得られる。
実施例24
【0149】
本実施例は、実施例23におけるFe2O3@CのDv50を20nmに変更し、粉末抵抗率を0.56Ω・cmとした点を除いて、実施例23とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例25
【0150】
本実施例は、実施例23におけるFe2O3@CのDv50を60nmに変更し、粉末抵抗率を0.22Ω・cmとした点を除いて、実施例23とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例26
【0151】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@CのDv50を100nmに変更し、粉末抵抗率を3.58Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例27
【0152】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@CのDv50を200nmに変更し、粉末抵抗率を8.32Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例28
【0153】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@Cの炭素含有量を10%に変更し、粉末抵抗率を15.34Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例29
【0154】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@Cの炭素含有量を20%に変更し、粉末抵抗率を10.13Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例30
【0155】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@Cの炭素含有量を30%に変更し、粉末抵抗率を0.48Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例31
【0156】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@Cの炭素含有量を40%に変更し、粉末抵抗率を0.71Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例32
【0157】
本実施例は、実施例25における焼結温度を500℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例33
【0158】
本実施例は、実施例25における焼結温度を550℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例34
【0159】
本実施例は、実施例25における焼結温度を650℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例35
【0160】
本実施例は、実施例25における焼結温度を700℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例36
【0161】
本実施例は、実施例25における焼結時間を4hに変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例37
【0162】
本実施例は、実施例25における焼結時間を8hに変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例38
【0163】
本実施例は、実施例25における焼結時間を12hに変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例39
【0164】
本実施例は、実施例25における焼結時間を20hに変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例40
【0165】
本実施例は、実施例25における炭素源をカーボンブラックからカーボンナノチューブに置換し、前駆体Fe2O3@CNTsの粉末抵抗率を0.24Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例41
【0166】
本実施例は、実施例25における炭素源をカーボンブラックからグラファイトに置換し、前駆体Fe2O3@Grの粉末抵抗率を0.23Ω・cmとした点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例42
【0167】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@CをNiO@Cに変更し、NiO@CのDv50を58nmとし、粉末抵抗率を0.21Ω・cmとし、NiO@Cの炭素含有量を23%に変更し、焼結温度を620℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例43
【0168】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@CをCuO@Cに変更し、CuO@CのDv50を62nmとし、粉末抵抗率を0.25Ω・cmとし、CuO@Cの炭素含有量を22%に変更し、焼結温度を590℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
実施例44
【0169】
本実施例は、実施例25におけるFe2O3@CをCo3O4@Cに変更し、Co3O4@CのDv50を61nmとし、粉末抵抗率を0.19Ω・cmとし、Co3O4@Cの炭素含有量を24%に変更し、焼結温度を610℃に変更した点を除いて、実施例25とほぼ同様の調製方法で調製した電極活物質を提供する。
比較例7
【0170】
本比較例は電極活物質を提供し、Li5FeO4@Cを例にとると、具体的な調製方法は以下の通りである。
【0171】
原料混合:電極活物質の前駆体として炭素含有量1%のFe2O3@Cを選択し、Fe2O3@CのDv50を320nmとし、粉末抵抗率を25.16Ω・cmとし、また、A源として水酸化リチウム(LiOH・H2O)を選択し、機械融合機にLi:Feの金属モル比5.1:1の割合で加え、機械融合方式で混合し、回転数を300回転毎分とし、混合時間を6hとした。
【0172】
焼結:混合した原料を窒素ガス下で3℃/Minで焼結温度600℃にまで昇温し、焼結時間を10h行った後、自然降温して生成物を得る。
【0173】
破砕分級:生成物を破砕分級してふるいにかけると、炭素被覆された金属酸化物粒子(Li5FeO4@C)が得られる。
比較例8
【0174】
本比較例は、比較例7におけるFe2O3@CのDv50を420nmに変更し、粉末抵抗率を36.78Ω・cmとし、Fe2O3@Cの炭素含有量を5%とし、焼結温度を750℃に変更し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例7とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する
比較例9
【0175】
本比較例は、比較例7におけるFe2O3@CのDv50を250nmに変更し、粉末抵抗率を18.36Ω・cmとし、Fe2O3@Cの炭素含有量を25%とし、焼結温度を450℃に変更し、焼結時間を2hに変更し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例7とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
比較例10
【0176】
本比較例は、比較例7におけるFe2O3@CのDv50を350nmに変更し、粉末抵抗率を28.74Ω・cmとし、Fe2O3@Cの炭素含有量を50%とし、焼結温度を800℃に変更し、焼結時間を22hに変更し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例7とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
比較例11
【0177】
本比較例は、比較例5のステップによりFe2O3を調製し、Fe2O3のDv50を2500nmとし、粉末抵抗率を68201.39Ω・cmとし、Fe2O3を電極活物質の前駆体とし、その他の動作フローは比較例7と一致し、直接Li5FeO4を電極活物質とした点を除いて、比較例7とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
比較例12
【0178】
本比較例は、比較例6のステップによりFe2O3を調製し、カーボンブラックの質量をFe2O3質量の25%とし、Fe2O3/CのDv50を2600nmとし、粉末抵抗率を2310.23Ω・cmとし、これを電極活物質の前駆体とし、比較例7のフローを用いてLi5FeO4を焼結して調製し、その他の動作フローをそのまま維持した点を除いて、比較例7とほぼ同様の方法で調製した電極活物質を提供する。
【0179】
上記実施例23~44、比較例7~12の炭素被覆された金属酸化物粒子に関するパラメータを下記表2に示す。
【表2】
試験方法
【0180】
メジアン粒径Dv50:GB/T19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照し、レーザー粒度アナライザ英国MalvernMastersizer2000Eを用いて測定した。
【0181】
炭素含有量の測定:炭素含有量アナライザCcontentanalyzer、設備型番HCS-140を用いて、鋼鉄の総炭素硫黄含有量の測定に基づき、高周波誘導炉燃焼後赤外線吸収法(一般的な方法)GBT20123-2006により、粉末中の炭素含有量を測定する。
【0182】
粉末抵抗率の測定:炭素複合された酸化物粒子または炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末を乾燥して適量の粉末を秤量した後、粉末抵抗率試験機、設備型番ST2722型デジタル式四プローブを使用して《リチウムイオン電池用炭素複合リン酸鉄リチウム正極材料》GB/T30835-2014に基づいてサンプルの粉末抵抗率を測定する。
【0183】
炭素被覆された金属酸化物粒子の最初のグラム当たりの充電容量試験:炭素被覆された金属酸化物粒子、導電剤カーボンブラック、結着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比80:10:10で溶媒N-メチルピロリドン(NMP)に分散させ、均一に混合するように十分に攪拌し、正極スラリーを得る。正極集電体アルミニウム箔の一方の表面に正極スラリーを塗布し、乾燥、冷間プレスした後、正極極片を得る。エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを質量比30:70で均一に混合して有機溶媒を得、さらにリチウム塩LiPF6を上記有機溶媒に溶解し、均一に混合して電解液を得、その中、LiPF6の濃度は1mol/Lである。電極対としてリチウムシートを用い、正極極片と組み立て、ボタン型電池を構成する。ボタン型電池を4.25Vまで0.1C倍率で定電流充電し、5分間静置し、このときのボタン型電池の充電容量を記録する。電池の充電容量を炭素被覆された金属酸化物粒子の質量で割ったことを最初のグラム当たりの充電容量とする。
試験結果
【0184】
走査型電子顕微鏡SEMにより、調製された炭素複合された酸化物粒子に対して形状特徴付けを行い、その結果、
図1に示すように、形態が均一で、構造がしっかりし、均一に分布する粒子が多数存在する。透過型電子顕微鏡TEMにより、炭素複合された酸化物粒子に対してさらに形状特徴付けを行い、その試験結果、
図2に示すように、図中の明暗コントラストにより分かるように、酸化物粒子は炭素中に均一に被覆され、酸化物粒子の粒径は均一で、明らかな凝集は生じず、実施例3で調製した炭素複合された酸化物粒子に対してX線回折XRDを結合して構造試験を行い、その結果、
図3に示すように、結晶型の比較から分かるように、合成生成物はFe
2O
3@Cである。
【0185】
上記実施例1~22、比較例1~6の炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率及びメジアン粒径の試験結果は下記表3に示すようである。
【表3】
【0186】
実施例1~22および比較例1~4と比較例5、6との比較から分かるように、本願開示の炭素複合された酸化物粒子は、低い抵抗率、適正なメジアン粒径および炭素含有量を有する。
【0187】
実施例1-5及び比較例1、2の比較から分かるように、アルカリ性混合液のpH値を調整制御することにより、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率およびメジアン粒径を調整することができる。適正なアルカリ性混合液のpH値は、低い粉末抵抗率と適正なメジアン粒径の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。実施例6-13から分かるように、沈殿反応の反応温度又は反応時間を調整制御することにより、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率及びメジアン粒径を調整することができる。適正な沈殿反応の反応温度および反応時間は、低い粉末抵抗率および適正なメジアン粒径の炭素複合された酸化物粒子の調製に有利である。実施例14-17と比較例3、4との比較から分かるように、炭素複合された酸化物粒子の炭素含有量を調整制御することにより、炭素複合された酸化物粒子の粉末抵抗率およびメジアン粒径を調整することができる。炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50及び粉末抵抗率は炭素含有量が増加するにつれて先に低下した後に増加する。
【0188】
実施例18-19から分かるように、本願開示の炭素複合された酸化物粒子の調製方法は、カーボンナノチューブ、グラファイト等の種々の炭素源に適している。
【0189】
実施例20~22から分かるように、本願開示の炭素複合された酸化物粒子の調製方法は、炭素複合酸化銅、炭素複合酸化ニッケル等の種々の炭素複合された酸化物の調製に適しており、調製された生成物は、いずれも低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径を有する。
【0190】
透過型電子顕微鏡TEMを用いて炭素被覆された金属酸化物粒子の形状特徴付けを行い、その試験結果、
図4に示すように、図中の明暗コントラストから分かるように、活物質粒子は炭素中に均一に被覆され、粒子粒径はナノオーダーで、明らかな凝集は生じず、実施例25の方法で調製した炭素被覆された金属酸化物粒子に対してX線回折XRDを結合して試験を行い、その結果、
図5に示すように、結晶型の比較により分かるように、合成生成物は炭素被覆リチウム過剰鉄酸化物であり、Li
5FeO
4@Cと記し、これを電極材料として組み立てた電池の最初の充電曲線は、
図6を参照し、これにより、電池の最初のグラム当たりの充電容量を算出する。
【0191】
上記実施例23~44、比較例7~12の炭素被覆された金属酸化物粒子の試験結果は下記表4に示すようである。
【表4】
【0192】
実施例23-44、比較例7-12の比較から分かるように、上記合成した粒径分布が均一で粉末抵抗率が低く分散性の良い炭素複合された酸化物粒子を原料として、一定の条件下で焼結して調製された炭素被覆された金属酸化物粒子は、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径Dv50、及び高いグラム当たりの充電容量を有する。
【0193】
実施例23-27および比較例7-9の比較から分かるように、炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50を調整制御することにより、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率およびメジアン粒径を調整することができる。適正な炭素複合された酸化物粒子のメジアン粒径Dv50は、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径及び高いグラム当たりの充電容量の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製に有利である。実施例28~31から分かるように、炭素複合された酸化物粒子の炭素含有量を調整制御することにより、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率とメジアン粒径を調整することができる。適正な炭素複合された酸化物粒子中の炭素含有量は、低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製に有利であり、ひいてはグラム当たりの電池容量を向上させる。実施例32-39および比較例9-10の比較から分かるように、焼結温度および時間を調整制御することにより、炭素被覆された金属酸化物粒子の粉末抵抗率およびメジアン粒径を調整できる。
【0194】
実施例40~41から分かるように、各種炭素源から調製された炭素複合された酸化物は、いずれも低い粉末抵抗率、高いグラム当たりの充電容量の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製に用いることができる。
【0195】
実施例42-44から分かるように、本願開示の炭素被覆された金属酸化物粒子の調製方法は、Li2NiO2@C、Li2CuO2@C、Li6CoO4@C等の種々の電極活物質の調製に適しており、調製された生成物は、いずれも低い粉末抵抗率、適正なメジアン粒径及び高いグラム当たりの充電容量を有すし、この調製方法が汎用性を有することを説明する。
【0196】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲内に含まれる。また、本願の主旨を逸脱しない範囲内で、当業者が想到できる各種の変更を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に含まれる。