(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】回路基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20250421BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20250421BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20250421BHJP
【FI】
H05K7/12 F
G06F1/16 312E
G06F1/16 312M
H05K7/14 C
(21)【出願番号】P 2024004114
(22)【出願日】2024-01-15
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】溝口 文武
(72)【発明者】
【氏名】恩田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 紗良
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3234805(JP,U)
【文献】特開2018-082653(JP,A)
【文献】特開平08-011948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0371383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 7/12
H05K 7/14
G06F 1/16 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子モジュールの一端を接続するコネクタと、前記電子モジュールの他端を支持する支持具とが実装された回路基板であって、
前記支持具は、
当該回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、
前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、
前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、
を備え
、
前記トルク発生部は、前記ロック部材と前記突出部との間に回転抵抗を発生させる抵抗部材を含み、
前記突出部は、突出方向に沿う孔部を有し、
前記ロック部材は、
前記ロック位置と前記アンロック位置とに回転することで前記電子モジュールを支持可能なプレート部と、
前記プレート部の表面から突出し、前記孔部に対して相対回転可能に挿入されたシャフト部と、
を有し、
前記抵抗部材は、前記プレート部の表面と、前記シャフト部の外周面と、前記突出部の先端面とで形成された環状の凹状スペースに配置され、これらの表面、外周面及び先端面にそれぞれ接触している
ことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
請求項
1に記載の回路基板であって、
前記抵抗部材は、前記シャフト部の外周面に装着され、前記プレート部と前記突出部の先端面との間に挟まれたOリングである
ことを特徴とする回路基板。
【請求項3】
請求項
2に記載の回路基板であって、
前記シャフト部の外周面には環状の溝部が形成され、
前記Oリングは、前記溝部に嵌められている
ことを特徴とする回路基板。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載の回路基板であって、
前記シャフト部は、前記孔部に挿入された先端部に対し、前記フランジの裏側からねじが締結されることで、前記スタッド部材から抜け止めされている
ことを特徴とする回路基板。
【請求項5】
電子モジュールの一端を接続するコネクタと、前記電子モジュールの他端を支持する支持具とが実装された回路基板であって、
前記支持具は、
当該回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、
前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、
前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、
を備え、
当該回路基板の表面に実装され、前記ロック部材に当接することで前記ロック部材を前記ロック位置と前記アンロック位置とに選択的に位置決め可能な位置決め部材を備える
ことを特徴とする回路基板。
【請求項6】
請求項
5に記載の回路基板であって、
前記突出部は、軸方向に沿う孔部を有し、
前記ロック部材は、
前記孔部に対して相対回転可能に挿入されたシャフト部と、
前記シャフト部の一端に設けられ、前記ロック位置と前記アンロック位置とに回転することで前記電子モジュールを支持可能なプレート部と、
を有し、
前記シャフト部の外周面には、互いに180度反対側に配置された一対の凹部が形成され、
前記位置決め部材は、
前記ロック部材が回転された場合に前記一対の凹部の一方に選択的に係合可能な凸部と、
前記凸部を前記シャフト部の外周面に押圧するばね部と、
を有する
ことを特徴とする回路基板。
【請求項7】
請求項
6に記載の回路基板であって、
前記トルク発生部は、前記シャフト部の外周面に設けられ、前記ロック部材が回転された場合に前記凸部に接触することで、前記ロック部材に回転抵抗を付与する抵抗部を含む
ことを特徴とする回路基板。
【請求項8】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持具と、
を備え、
前記支持具は、
前記回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、
前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、
前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、
を備え
、
前記トルク発生部は、前記ロック部材と前記突出部との間に回転抵抗を発生させる抵抗部材を含み、
前記突出部は、突出方向に沿う孔部を有し、
前記ロック部材は、
前記ロック位置と前記アンロック位置とに回転することで前記電子モジュールを支持可能なプレート部と、
前記プレート部の表面から突出し、前記孔部に対して相対回転可能に挿入されたシャフト部と、
を有し、
前記抵抗部材は、前記プレート部の表面と、前記シャフト部の外周面と、前記突出部の先端面とで形成された環状の凹状スペースに配置され、これらの表面、外周面及び先端面にそれぞれ接触している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項
8に記載の電子機器であって、
前記抵抗部材は、前記シャフト部の外周面に装着され、前記プレート部と前記突出部の先端面との間に挟まれたOリングである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持具と、
を備え、
前記支持具は、
前記回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、
前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、
前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、
を備え
、
前記回路基板の表面に実装され、前記ロック部材に当接することで前記ロック部材を前記ロック位置と前記アンロック位置とに選択的に位置決め可能な位置決め部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板及び該回路基板を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUを実装した回路基板(マザーボード)のコネクタに対してSSD等の電子モジュールを接続して用いている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、通常、電子モジュールは回路基板に実装されたコネクタに一端が接続され、他端が回路基板に対してねじで支持される。ところで、電子モジュールは作業者が工場等で取り付ける場合の他、ユーザ自身が交換等を行う場合もある。この際、ねじが筐体内に落下して回収に手間がかかったり、紛失したりする可能性があり、電子モジュールの着脱作業の作業性を低下させている。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、電子モジュールの着脱作業の作業性を向上することができる回路基板及び該回路基板を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る回路基板は、電子モジュールの一端を接続するコネクタと、前記電子モジュールの他端を支持する支持具とが実装された回路基板であって、前記支持具は、当該回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、コネクタが実装された回路基板と、前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持具と、を備え、前記支持具は、前記回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、電子モジュールの着脱作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図5A】
図5Aは、支持具をアンロック位置とした平面図である。
【
図6】
図6は、支持具で電子モジュールを支持した模式的な側面断面図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係る支持具の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す支持具で電子モジュールを支持した模式的な側面断面図である。
【
図13】
図13は、第3変形例に係る支持具で電子モジュールを支持した模式的な側面断面図である。
【
図14】
図14は、第4変形例に係る支持具及び位置決め部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び回路基板について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10はクラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12とをヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体を有する。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0013】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面(表面12a)にはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0014】
筐体12は、第1カバー材20と第2カバー材21とを厚み方向に重ね合わせて互いに着脱可能に連結したものである。第1カバー材20は、例えば筐体12の上面及び四周側面を形成するものであり、略バスタブ形状を有する。第2カバー材21は、例えば筐体12の下面を形成するものであり、略平板形状を有する。ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12bに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。
【0015】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、第2カバー材21を取り外して第1カバー材20の内部を下面側から見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体12の内部には、回路基板24と、冷却モジュール25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
回路基板24は、電子機器10のマザーボードとなるプリント基板である。回路基板24は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。回路基板24は、CPU(Central Processing Unit)28と、一対のコネクタ30,30を実装している。CPU28は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。コネクタ30は所定の接続規格、本実施形態ではM.2(エムドットツー)規格に準拠している。各コネクタ30にはそれぞれ電子モジュール32,33が接続される。回路基板24、電子モジュール32,33及びこれらの周辺部の具体的な構成は後述する。回路基板24には、さらに、GPU(Graphics Processing Unit)及びメモリ等の各種電子部品を実装できる。回路基板24は、例えばZ1側表面(第1表面24a)が第1カバー材20に対する取付面となり、Z2側表面(第2表面24b)がCPU28やコネクタ30の実装面となる。回路基板24の形状、配置、及び実装する電子部品等は上記に限られないことは言うまでもない。
【0018】
冷却モジュール25は、CPU28が発生する熱を吸熱し、筐体12外へと排出することができる。冷却モジュール25は、ヒートパイプ34と、一対のヒートシンク35,35と、一対のファン36,36とを備える。冷却モジュール25は、CPU28の熱をヒートパイプ34で各ヒートシンク35に輸送し、各ファン36からの送風で各ヒートシンク35の放熱を促進することができる。
【0019】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、回路基板24のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0020】
次に、回路基板24及び電子モジュール32,33の具体的な構成例を説明する。
【0021】
先ず、回路基板24は、絶縁性を有する板材の第2表面24bに所定の導電パターンを形成したプリント基板である。回路基板24は両表面24a,24bに導電パターンを形成した構成でもよい。
【0022】
図2に示すように、回路基板24は、一対のコネクタ30,30と、一対の支持具40,40とを備え、各コネクタ30と各支持具40とで電子モジュール32,33を支持している。回路基板24の第2表面24bには、各支持具40の固定に使用する一対のグランドパッド41,41が設けられている(
図6も参照)。グランドパッド41は、例えば円形の金属パターンで形成されている。金属パターンは、例えばシルクスクリーンで印刷された銅箔である。回路基板24は、例えばスルーホール24cを有し、その第2表面24b側の周縁部にグランドパッド41が形成されている。
【0023】
コネクタ30は第2表面24bに実装されている。コネクタ30の実装タイプは限られないが、例えば落とし込み実装タイプ(Pcie Gen3:PCI Express 3.0)又はオンボード実装タイプ(Pcie Gen4:PCI Express 4.0)等を用いることができる。
【0024】
図3Aは、支持具40の斜視図である。
図3Bは、支持具40を裏側から見た斜視図である。
図4は、支持具40の分解斜視図である。
図5Aは、支持具40をアンロック位置とした平面図である。
図5Bは、
図5Aに示す支持具40をロック位置とした平面図である。
図6は、支持具40で電子モジュール32(33)を支持した模式的な側面断面図である。ここでは、一方の電子モジュール32を支持具40で支持する構成を代表的に説明する。他方の電子モジュール33を支持具40で支持する構成は電子モジュール32の場合と同一又は同様な構成とすることができるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
図3A~
図6に示すように、支持具40は、スタッド部材42と、ロック部材44と、抵抗部材46とを備える。支持具40は、カム状のロック部材44を180度反転させることで、電子モジュール32を支持可能なロック位置(クローズ位置)とアンロック位置(オープン位置)とに切替可能なロック部品である。ロック部材44のロック位置とアンロック位置の切り替えに要する回転角度は180度以外、例えば90度等でもよい。
【0026】
スタッド部材42は、フランジ42aと、突出部42bとを有する金属部品である。
【0027】
フランジ42aは金属円板である。突出部42bはフランジ42aと一体的に形成され、フランジ42aの中心からZ方向に起立した円筒体である。突出部42bには軸中心を突出方向に沿う孔部42cが設けられている。孔部42cはスタッド部材42を軸方向(Z方向)に貫通している。孔部42cは例えば内径が2段に変化した段付き孔である。孔部42cは、軸方向でZ2側開口からフランジ42aの内側までの部分がZ1側開口からフランジ42aまでの部分よりも大径である(
図6参照)。これにより孔部42cのZ1側端部には、内周面が縮径したフランジ状の縁部42c1が形成されている。
【0028】
ロック部材44は、シャフト部44aと、プレート部44bとを有する金属部品である。スタッド部材42及びロック部材44は、例えばステンレス、スチール、アルミニウム、銅又は真鍮等で形成することができる。
【0029】
シャフト部44aは、孔部42cに対してZ2側開口から挿入される回転軸である。シャフト部44aは孔部42cに対してがたつきなく且つ相対回転可能に挿入される。シャフト部44aはプレート部44bのZ2側表面から突出している。シャフト部44aには軸方向(Z方向)に沿うねじ穴44a1が形成されている。ねじ穴44a1は内周面に雌ねじが形成されている。ねじ穴44a1はシャフト部44aの先端面(Z1側端面)に開口している。シャフト部44aの外周面には、環状の溝部44a2が周方向に沿って形成されている。溝部44a2はシャフト部44aの外周面を円弧状に切除した形状を有することで、略ドーナツ形状の溝を形成している。溝部44a2は、シャフト部44aのプレート部44bに対する根本部分に形成されている。
【0030】
プレート部44bは、シャフト部44aの基端に一体的に形成されている。プレート部44bは、シャフト部44aと共に突出部42bの軸周りに回転可能である。プレート部44bは、例えば外径が異なる2つの半円状の金属板(半円板44b1,44b2)を合わせた形状を有する。これによりプレート部44bは平面視で略カム形状或いは略きのこ形状を有する。シャフト部44aは小径の半円板44b1からZ1側に突出するように形成されている。半円板44b1の中心には操作穴45b3が形成されている。操作穴44b3は、例えばプラスドライバー等の工具を嵌合し、ロック部材44を回転操作する際に用いる十字穴である。大径の半円板44b2は、平面視でシャフト部44aの外周面から張り出すように設けられている。これによりロック部材44は、スタッド部材42に対して回転操作すると、大径の半円板44b2がシャフト部44aの軸周りに旋回する(
図5A及び
図5B参照)。
【0031】
ロック部材44は、スタッド部材42の孔部42cに挿入されたシャフト部44aのねじ穴44a1に対してねじ48が締め付けられる。ねじ48は、フランジ42aの裏側から孔部42cに通される。ねじ48の頭部48aは、シャフト部44aの先端面との間に縁部42c1を挟み込む。縁部42c1の板厚は、ねじ穴44a1に締め付けたねじ48の頭部48aとシャフト部44aの先端面(Z1側端面)との間の距離よりも僅かに短い。これによりロック部材44は、スタッド部材42に対してがたつきなく抜け止めされた状態で相対回転可能に支持される。
【0032】
抵抗部材46は、ロック部材44の回転に回転トルクを付与するトルク発生部を構成する。抵抗部材46は例えばOリングである。抵抗部材46はシャフト部44aの溝部44a2に嵌められ、シャフト部44aの外周面に装着されている。抵抗部材46は、プレート部44bのZ1側表面と突出部42bのZ2側端面との間に挟まれ、両者に密着する。これにより抵抗部材46はロック部材44と突出部42bとの間に摩擦による回転抵抗を発生させることができる。
【0033】
図6に示すように、抵抗部材46は、ロック部材44に対しては溝部44a2の内周面及びプレート部44bのZ1側表面に密着する。抵抗部材46は、スタッド部材42に対しては突出部42bの先端面のみに密着する。従って、抵抗部材46は、ロック部材44に対する接触面積がスタッド部材42に対する接触面積よりも大幅に大きい。つまり抵抗部材46とロック部材44との間の摩擦抵抗は、抵抗部材46とスタッド部材42との間の摩擦抵抗よりも大きい。このため抵抗部材46は、ロック部材44がスタッド部材42に対して回転した際、ロック部材44に密着してこれと一体に回転し、そのZ1側表面が突出部42bの先端面を摺動する。これにより抵抗部材46は、ロック部材44及び突出部42bの双方に対して滑り、実質的に摩擦抵抗を発生しない事態が回避される。その結果、支持具40はロック部材44と突出部42bとの間により確実に回転トルクを発生させることができる。
【0034】
次に、電子モジュール32,33は、上記したようにM.2規格に準拠したコネクタ30に接続可能なカード型のモジュール部品である。
【0035】
電子モジュール32は、例えば記憶装置である。本実施形態の電子モジュール32はSSD(Solid State Drive)である。
図2に示すように、電子モジュール32は、モジュール基板32aと、モジュール基板32aの一端32a1に形成された端子32bと、モジュール基板32aに実装された半導体チップ32cとを有する。電子モジュール32は、端子32bがコネクタ30に接続された状態で、モジュール基板32aの他端32a2が支持具40によってZ方向に押さえられる。これにより電子モジュール32が回路基板24に取り付けられる。他端32a2の長手方向の中心には、スタッド部材42の突出部42bを配置可能な半円状の切欠き32dが形成されている(
図4参照)。
【0036】
モジュール基板32aの一面32a3及び他面32a4には、それぞれグランド部32e,32fが設けられている(
図6参照)。グランド部32e,32fは、切欠き32dの周縁部に設けられた金属パターンであり、例えばシルクスクリーンで印刷された銅箔である。
【0037】
電子モジュール33は、例えば通信モジュールである。本実施形態の電子モジュール33はWWAN(Wireless Wide Area Network)に対応している。電子モジュール33が対応する通信規格は、例えばWLAN(Wireless Local Area Network)等でもよい。
図2に示すように、電子モジュール33は、モジュール基板33aと、モジュール基板33aの一端33a1に形成された端子33bと、モジュール基板33aに実装された半導体チップ33cとを有する。電子モジュール33は、端子33bがコネクタ30に接続された状態で、モジュール基板33aの他端33a2が支持具40によってZ方向に押さえられる。これにより電子モジュール33が回路基板24に取り付けられる。電子モジュール33の他端33a2には、筐体12や蓋体11の各所に設置されたアンテナエレメント50からのケーブル51が適宜接続される。
【0038】
電子モジュール33は、電子モジュール32と機能及び大きさ等は異なるが、回路基板24に対する取付構造は同一又は同様とすることができる。従って、電子モジュール33の他端33a2にも、電子モジュール32の切欠き32dと同様な切欠きが設けられている。またモジュール基板33aの一面及び他面にも、それぞれモジュール基板32aのグランド部32e,32fと同様なグランド部が設けられている。
【0039】
次に、支持具40の組付方法と、支持具40による電子モジュール32,33の支持方法について説明する。ここでも一方の電子モジュール32の支持方法を代表的に説明するが、他方の電子モジュール33の支持方法もこれと同一又は同様とすることができる。
【0040】
図2及び
図6に示すように、支持具40は、グランドパッド41に固定される。支持具40は、例えばスタッド部材42の底部をスルーホール24cに挿入し、フランジ42aをグランドパッド41上に載置してリフロー半田付け工程を行う。これによりスタッド部材42がグランドパッド41に固定され、回路基板24に実装される。スタッド部材42の固定は、例えばコネクタ30や他の実装部品を回路基板24に対してリフロー半田付けで実装する工程と同時に行うことができる。
【0041】
続いて、突出部42bの外周面に導電性部材であるガスケット54を通す。ガスケット54は、例えば導電性を有するクッション材である。ガスケット54は、例えば所定の厚みを有し、略C字状に形成される。ガスケット54は、突出部42bを掴むようにしてフランジ42aのZ2側に配置される。
【0042】
次に、溝部44a2に抵抗部材46を嵌めたロック部材44のシャフト部44aを突出部42bの孔部42cに対して挿入する。ねじ48をねじ穴44a1に締め付けてロック部材44をスタッド部材42から抜け止めする。これにより支持具40が回路基板24に取り付けられる。
【0043】
抵抗部材46を構成するOリングははリフロー半田付け工程の温度に耐え得る耐熱性材料で形成したものを用いることもできる。そうすると支持具40は、予めねじ48でロック部材44をスタッド部材42に連結した状態で、そのままスタッド部材42を回路基板24に対してリフロー半田付けで実装できる。これにより回路基板24の製造効率が向上する。ガスケット54は、支持具40を回路基板24に実装した後、設置すればよい。
【0044】
本実施形態の回路基板24に電子モジュール32を取り付ける際は、
図5Aに示すように支持具40のロック部材44をアンロック位置としておく。アンロック位置は、ロック部材44の大径の半円板44b2が電子モジュール32側(X1側)とは反対側(X2側)を向いた位置である。この際、ロック部材44は抵抗部材46からの回転トルクを受けているため、アンロック位置に確実に保持しておくことができる。そして、端子32bをコネクタ30に接続した後、他端32a2をアンロック位置にある支持具40のすぐ横に載置する。そうすると切欠き32dが突出部42bの外周面を半周囲むように配置され、同時に他面32a4のグランド部32fとフランジ42aとの間にガスケット54が挟まれる。
【0045】
次に、
図5Bに示すように、ロック部材44を所定の工具等で回転させてロック位置とする。ロック位置は、ロック部材44の大径の半円板44b2が電子モジュール32側(X1側)を向いた位置である。この際、ロック部材44は抵抗部材46からの回転トルクを受ける。このため、ロック部材44は適度な回転トルクでアンロック位置からロック位置へと円滑に回転させることができ、高い操作感が得られる。これにより電子モジュール32は、一端32a1がコネクタ30に接続され、他端32a2が支持具40で支持され、回路基板24に取り付けられる。この場合もロック部材44は抵抗部材46からの回転トルクを受けているため、ロック位置に確実に保持しておくことができる。このように回路基板24は、支持具40を用いて容易に電子モジュール32を支持することができ、高い作業効率が得られる。
【0046】
図6に示すように、電子モジュール32は回路基板24に取り付けられた状態において、ロック部材44のプレート部44bが一面32a3のグランド部32eに接触して電気的に接続される。電子モジュール32の他面32a4のグランド部32fはガスケット54を介してフランジ42aと電気的に接続される。これにより支持具40は、グランド部32e,32fと回路基板24のグランドパッド41との間を確実に電気接続することができる。電子モジュール32は、例えば他面32a4のグランド部32fを持たない片面グランド構造の場合もある。この場合はガスケット54は省略することもできる。
【0047】
回路基板24から電子モジュール32を取り外す際は、ロック部材44を所定の工具等で回転させて
図5Aに示すアンロック位置とする。そうすると、電子モジュール32はロック部材44による押圧が開放される。その結果、電子モジュール32は、コネクタ30と端子32bとの接続部での付勢力やガスケット54の反発力を受け、一端32a1を回動支点として他端32a2がZ2側に浮上する。これにより回路基板24から電子モジュール32を容易に取り外すことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の回路基板24は、電子モジュール32(33)のコネクタ30側とは反対側の他端32a2(33a2)を支持する支持具40が実装されいる。支持具40は、回路基板24に固定されたフランジ42aと、フランジ42aから起立した突出部42bとを有するスタッド部材42を備える。支持具40は、さらに、突出部42bに対して相対回転可能に支持され、電子モジュール32(33)の他端32a2(33a2)を押さえるロック位置と、押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材44と、ロック部材44の回転に回転トルクを付与するトルク発生部を構成する抵抗部材46とを備える。
【0049】
従って、回路基板24及びこれを搭載した電子機器10は、電子モジュール32,33を回路基板24に支持するためのねじが不要となり、電子モジュール32,33の着脱作業の作業性が向上する。特にノート型PCのような電子機器10は、工場等での作業時のみならず、ユーザ自身が電子モジュール32,33の交換等を行う場合もある。この場合にも電子機器10は、ねじの脱落や紛失のリスクを低減できるため、メンテナンス性や拡張性が一層向上する。
【0050】
しかも支持具40はロック部材44の回転に回転トルクが付与されている。このため、ロック部材44はロック位置及びアンロック位置のいずれの回転位置にも安定して保持しておくことができる。ロック部材44がロック位置で保持されることで、支持具40は、電子モジュール32,33の着脱作業での作業性が一層向上する。ロック部材44がアンロック位置で保持されることで、支持具40は、電子モジュール32,33の一層安定した支持が可能となる。例えば電子機器10の落下等により回路基板24が衝撃を受けた場合にも、ロック部材44がアンロック位置に誤って回転することが抑制されるためである。
【0051】
支持具40において、ロック部材44は孔部42cに挿入されたシャフト部44aの先端部に対し、フランジ42aの裏側からねじ48が締結されることで、スタッド部材42から抜け止めされている。上記のように電子モジュール32,33はユーザ自身が着脱をする場合もある。このため支持具40は、例えばロック部材44の操作穴44b3が工具で損傷し、或いはOリングである抵抗部材46が切れる等の不具合を生じる可能性もある。この際、支持具40は、ねじ48を操作することでロック部材44をスタッド部材42から容易に着脱できる。このため回路基板24及び電子機器10は、上記のような支持具40の不具合発生時にスタッド部材42を実装した回路基板24の全体を交換する必要がない。従って回路基板24及び電子機器10は、メンテナンス性が高く、且つメンテナンスコストも低い。
【0052】
図7は、第1変形例に係る支持具40Aの斜視図である。
図8は、
図7に示す支持具40Aで電子モジュール32(33)を支持した模式的な側面断面図である。
図9は、
図7に示す支持具40Aの分解斜視図である。
図7~
図9において、
図1~
図6に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、以降の
図10A~
図14についても同様とする。
【0053】
図7~
図9に示す支持具40Aは、
図3A~
図6で示した支持具40のスタッド部材42、ロック部材44及び抵抗部材46とは構成が異なるスタッド部材42A、ロック部材44A及び抵抗部材46Aを備える。
【0054】
スタッド部材42Aは、突出部60と、孔部61とを有する。突出部60は、突出部42bよりも外径が小さい。突出部60の外周面には溝部44a2が設けられていない。孔部61は、孔部42cとは形状が異なる。孔部61は、Z1側表面に開口する部分の内径が他の部分よりも拡大されたサグリ部61aを有する。
【0055】
ロック部材44Aは、シャフト部44aよりも外径が小さいシャフト部62を有する。シャフト部62は、円柱形状を有し、ねじ穴44a1は形成されていない。
図9に示すように、ロック部材44Aをスタッド部材42Aに連結する前の状態では、シャフト部62の先端部(Z2側端部)には立壁62aが形成されている。立壁62aは、中心に浅い凹部を形成した円筒状の壁部である。
図8に示すように、立壁62aは、シャフト部62が孔部61に挿通された後にかしめ加工を施されて変形し、かしめ部62aとなる。かしめ部62aはねじ48の代わりである。つまりかしめ部62aはロック部材44Aをスタッド部材42Aに対して相対回転可能な状態で抜け止めする。ロック部材44Aは、プレート部44bの半円板44b2の裏面(Z1側表面)にストッパ凸部63を有する。ストッパ凸部63は例えば円弧状の立壁である。
【0056】
抵抗部材46Aは、ロック部材44Aの回転に回転トルクを付与するトルク発生部を構成する。抵抗部材46Aは、Oリングで構成された抵抗部材46とは異なり、金属板をCリング形状に成形した板ばねである。抵抗部材46Aは、開口部65と、ストッパ凹部66とを有する。
【0057】
開口部65はC字の開口に相当する。抵抗部材46Aの内径はシャフト部62の外径よりも小さい。抵抗部材46Aは開口部65を介してC字を開くように弾性変形させることでシャフト部62の外周面に嵌めることができる。これにより抵抗部材46Aはシャフト部62の外周面に対して所定の回転トルクで相対回転可能に取り付けられる。
【0058】
ストッパ凹部66は、抵抗部材46AのZ2側端面に形成された切欠形状の凹部である。ストッパ凹部66は抵抗部材46Aの直径方向で開口部65とは反対側にある。ストッパ凹部66はロック部材44Aのストッパ凸部63が嵌合される。これによりロック部材44Aは、スタッド部材42Aの突出部60の外周面に対し、抵抗部材46Aと一体的に相対回転可能である。
【0059】
次に、支持具40Aの取付方法と、支持具40Aによる電子モジュール32,33の支持方法について説明する。
【0060】
図8に示すように、支持具40Aにおいても、スタッド部材42Aをグランドパッド41に固定して回路基板24に実装する方法は上記した支持具40の場合と同様に行うことができる。
【0061】
先ず、支持具40Aは、スタッド部材42Aの突出部60の外周面に抵抗部材46Aを嵌める。続いて、ロック部材44Aのシャフト部62を孔部61に挿通させる。この際、ストッパ凸部63をストッパ凹部66に嵌合させる。次に、孔部61を貫通したシャフト部62の先端の立壁62aにかしめ加工を施してかしめ部62aを形成する。これによりロック部材44Aがスタッド部材42Aから抜け止めされ、支持具40Aの組み付けが完了する。支持具40Aは全体が金属部材で構成されている。このため支持具40Aはロック部材44Aをスタッド部材42Aに組み付けた後、容易にリフロー半田付けで回路基板24に実装することもできる。
【0062】
支持具40Aによる電子モジュール32,33の支持方法は、
図5A及び
図5Bに示す支持具40による電子モジュール32,33の支持方法と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。すなわち支持具40Aの場合も、抵抗部材46Aからの回転トルクを受けつつロック部材44Aをアンロック位置からロック位置に回転させることができる。このため支持具40Aを備えた回路基板24及び電子機器10においても、電子モジュール32,33の着脱作業の作業性が向上すると共に、その安定した支持が可能である。
【0063】
支持具40Aにおいてもかしめ部62aに代えてねじ48を用いることもできる。また、上記した支持具40及び後述する支持具40B~40Dにおいてもねじ48に代えてかしめ部62aを用いることもできる。ねじ48を用いた構成は、仮にかしめ部62aが破損した際にもロック部材44等を容易に交換することができる。
【0064】
図10Aは、第2変形例に係る支持具40B及び位置決め部材70の斜視図である。
図10Bは、
図10Aに示す支持具40Bを別の角度から見た斜視図である。
図11Aは、
図10Aに示す支持具40Bをアンロック位置とした平面図である。
図11Bは、
図11Aに示す支持具40Bをロック位置とした平面図である。
図12は、
図10Aに示す支持具40Bで電子モジュール32(33)を支持した模式的な側面断面図である。
【0065】
図10A~
図12に示す支持具40Bは、
図3A~
図6で示した支持具40のロック部材44とは構成の異なるロック部材44Bを備える。支持具40Bは、位置決め部材70と一緒に用いられる。
【0066】
ロック部材44Bは、シャフト部44aとは構成が異なるシャフト部72を有する。シャフト部72は、Z2側の大径部72aと、Z1側の小径部72bとを有する段付きシャフトである。大径部72aは、プレート部44bの半円板44b1と同径に形成され、半円板44b1から連続するようにZ1方向に突出している。小径部72bは、シャフト部44aと同径であり、スタッド部材42の孔部42cに挿入される部分である。
【0067】
シャフト部72の外周面には溝部44a2が設けられていない。シャフト部72は、大径部72aの外周面に一対の凹部74a,74bが形成されている。凹部74a,74bは大径部72aの軸方向(Z方向)に延びた縦溝である。凹部74a,74bはシャフト部72の外周面で互いに180度反対側に配置されている。大径部72aの直径方向を基準として、凹部74aは小径の半円板44b1側に配置され、凹部74bは大径の半円板44b2側に配置されている。
【0068】
位置決め部材70は、側面視で略L字状に形成された板金部品である。位置決め部材70は、回路基板24の第2表面24bに実装され、ロック部材44Bに当接することでロック部材44Bをロック位置とアンロック位置とに選択的に位置決めするものである。位置決め部材70は、固定部70aと、ばね部70bと、凸部70cとを有する。位置決め部材70は、例えばステンレス、スチール、アルミニウム、銅又は真鍮等で形成することができる。
【0069】
固定部70aは、平面視で略U字状に形成されたプレートである。固定部70aは、スタッド部材42に近い位置でグランドパッド41に固定される(
図12参照)。つまり位置決め部材70は、スタッド部材42やコネクタ30等を回路基板24に対してリフロー半田付けで実装する工程と同時に回路基板24に実装することができる。位置決め部材70は、スタッド部材42から見て電子モジュール32,33側(X1側)とは反対側(X2側)に配置される。
【0070】
ばね部70bは、固定部70aからZ2側に屈曲されて起立している。ばね部70bは、例えば全体として略アーチ形状に形成されている。ばね部70bは、Y方向に沿って延在し、少なくともX方向に弾性変形可能な板ばねである。
【0071】
凸部70cは、ばね部70bの長手方向で中央に設けられ、支持具40B側に突出したドーム状の小突起である。凸部70cの先端は、ばね部70bの付勢力を受け、大径部72aの外周面に向かって常に押圧され、接触している。ロック部材44Bが回転した際、凸部70cは、シャフト部72の外周面に形成された凹部74a,74bの一方に対して選択的に係合可能である。
【0072】
次に、支持具40Bの取付方法と、支持具40Aによる電子モジュール32,33の支持方法について説明する。ここでも、一方の電子モジュール32の支持方法を代表的に説明するが、他方の電子モジュール33の支持方法もこれと同一又は同様とすることができる。
【0073】
図12に示すように、支持具40Bにおいても、スタッド部材42をグランドパッド41に固定して回路基板24に実装する方法は上記した支持具40の場合と同様に行うことができる。支持具40Bは、Oリングである抵抗部材46を持たない以外、スタッド部材42に対するロック部材44Bの組付方法も上記した支持具40の場合と同様に行うことができる。
【0074】
支持具40Bを用いて回路基板24に電子モジュール32を取り付ける際は、
図11Aに示すように支持具40Bのロック部材44Bをアンロック位置としておく。この際、ロック部材44Bは、シャフト部72の一方の凹部74bに位置決め部材70の凸部70cが係合している。このため支持具40Bは、上記した支持具40のような抵抗部材46を持たないが、アンロック位置に確実に保持しておくことができる。
【0075】
次に、端子32bをコネクタ30に接続し、他端32a2をアンロック位置にある支持具40Bのすぐ横に載置した後、ロック部材44Bを回転操作する。すなわち、
図11Bに示すように、ロック部材44Bを所定の工具等で回転させてロック位置とする。この際、凸部70cは、ばね部70bが弾性変形することで凹部74bから離脱した後、大径部72aの外周面を摺動する。ロック部材44Bが180度回転されると、今度は凸部70cが他方の凹部74aに係合し、クリック感を発生する。このため支持具40Bは、適度なクリック感を得ながらロック部材44Bを確実にロック位置に位置決めし、保持することができる。これにより電子モジュール32は、一端32a1がコネクタ30に接続され、他端32a2が支持具40Bで支持され、回路基板24に取り付けられる。
【0076】
回路基板24から電子モジュール32を取り外す際は、ロック部材44Bを所定の工具等で回転させて
図11Aに示すアンロック位置とする。この場合も凸部70cは、ばね部70bの弾性変形によって凹部74aから離脱した後、再び凹部74bに係合し、適度なクリック感を発生する。その結果、回路基板24から電子モジュール32を容易に取り外すことができる。
【0077】
従って、このような支持具40Bにおいても、ロック部材44Bをアンロック位置からロック位置に回転させることができると共に、各位置に保持しておくことができる。このため支持具40Bを備えた回路基板24及び電子機器10においても、電子モジュール32,33の着脱作業の作業性が向上すると共に、その安定した支持が可能である。
【0078】
支持具40Bは凸部70cが凹部74a,74bの間を移動する際、ばね部70bの付勢力を受けてシャフト部72の外周面を摺動する。このため、支持具40Bの場合も僅かではあるが、ロック部材44Bの回転に回転トルクが付与される。但し、凸部70c及びシャフト部72はいずれも金属部材であって互いに滑り易いため、回転トルクは極めて微小である。そこで、位置決め部材70を用いたロック部材44Bの位置決め構造は、以下の支持具40C,40Dと一緒に用いることで十分な回転トルクを得るように構成してもよい。
【0079】
図13は、第3変形例に係る支持具40Cで電子モジュール32(33)を支持した模式的な側面断面図である。
【0080】
図13に示す支持具40Cは、
図10A~
図12に示す支持具40Bと比べて、シャフト部72に抵抗部材46が装着されている点が異なる。支持具40Cのシャフト部72は、大径部72aに対する小径部72bの根本部分の外周面に溝部44a2を有する。溝部44a2にはOリングである抵抗部材46が嵌められている。
【0081】
支持具40Cでも、位置決め部材70によってロック部材44Bをロック位置とアンロック位置とに位置決め可能であると共に、回転操作に適度なクリック感が得られる。さらに支持具40Cは、抵抗部材46によってロック部材44Bの回転に十分な回転トルクが付与される。このため、支持具40Cは支持具40Bと比べてロック部材44Bの回転操作時の操作性が一層向上し、ロック位置及びアンロック位置での保持安定性も向上する。
【0082】
図14は、第4変形例に係る支持具40D及び位置決め部材70の斜視図である。
【0083】
図14示す支持具40Dは、
図10A~
図12に示す支持具40Bと比べて、シャフト部72の大径部72aの外周面に抵抗部76を有する点が異なる。
図14ではスタッド部材42の図示を省略している。抵抗部76は、大径部72aの外周面に周方向に沿って等間隔に形成された凹凸形状或いはスプライン溝である。抵抗部76の溝の深さは凹部74a,74bよりも浅く且つ幅狭であり、凸部70cが完全に係合することはできない形状である。
【0084】
支持具40Dでは、ロック部材44Bが回転すると位置決め部材70の凸部70cが抵抗部76の凹凸に連続的に接触するため、ロック部材44Bに回転抵抗及び回転操作感が付与される。つまり抵抗部76及び凸部70cは、ロック部材44Bの回転に回転トルクを付与するトルク発生部として機能する。このため、支持具40Dは支持具40Bと比べてロック部材44Bの回転操作時の操作性が一層向上する。抵抗部76は、例えば凸部70cに摩擦抵抗を付与するゴムシートや表面処理をシャフト部72の外周面に設けて構成することもできる。抵抗部76は、
図13に示す抵抗部材46と同時に用いることもできる。
【0085】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
10 電子機器
12 筐体
24 回路基板
30 コネクタ
32,33 電子モジュール
40,40A~40D 支持具
42,42A スタッド部材
42a フランジ
42b,60 突出部
42c,61 孔部
44,44A,44B ロック部材
44a,62、72 シャフト部
44a1 ねじ穴
44a2 溝部
44b プレート部
46,46A 抵抗部材
48 ねじ
70 位置決め部材
70b ばね部
70c 凸部
74a,74b 凹部
76 抵抗部
【要約】
【課題】電子モジュールの着脱作業の作業性を向上することができる回路基板及び該回路基板を備える電子機器を提供する。
【解決手段】回路基板は、電子モジュールの一端を接続するコネクタと、前記電子モジュールの他端を支持する支持具とが実装された回路基板であって、前記支持具は、当該回路基板の表面に固定されたフランジと、前記フランジから起立した突出部とを有するスタッド部材と、前記突出部に対して相対回転可能に支持され、前記電子モジュールの他端を押さえるロック位置と、前記他端を押さえないアンロック位置とに切替可能なロック部材と、前記ロック部材の回転に回転トルクを付与するトルク発生部とを備える。
【選択図】
図3A