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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】エレベータシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20250421BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20250421BHJP
【FI】
B66B1/18 P
B66B3/00 L
B66B3/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024098129
(22)【出願日】2024-06-18
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 弘太
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特許第7500838(JP,B1)
【文献】特開2021-143076(JP,A)
【文献】国際公開第2023/073800(WO,A1)
【文献】特開2014-001037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの利用者に関わる情報を解析して、前記エレベータの利用者のうちの少なくとも怒りの感情を有する前記利用者を判定する第1の解析部と、
前記エレベータの利用者に関わる情報を解析して、前記利用者が前記エレベータの乗りかごに乗った出発階と前記利用者が前記乗りかごから降りた目的階とをそれぞれ判定する第2の解析部と、
前記出発階と前記目的階との対応毎の少なくとも怒りの感情を有する前記利用者の人数を集計した時間帯毎の移動表を作成する移動表作成部と、
それぞれの時間帯の前記移動表に基づき、時間帯毎の前記乗りかごの優先度を判定する優先度判定部と、
前記優先度に基づいて、前記乗りかごの運転を群管理制御する運転制御部と、
を具備するエレベータシステムの制御装置。
【請求項2】
前記エレベータの利用者に関わる情報は、前記エレベータの乗場又は前記乗りかごの中に設置されるカメラの画像であり、
前記第1の解析部は、前記カメラの画像における前記利用者の表情に基づいて少なくとも怒りの感情を有する前記利用者を判定する、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項3】
前記エレベータの利用者に関わる情報は、前記エレベータの乗場又は前記乗りかごの中に設置されるカメラの画像であり、
前記第1の解析部は、前記カメラの画像における前記利用者の特定の仕草を検出することにより、少なくとも怒りの感情を有する前記利用者を判定する、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項4】
前記エレベータの利用者に関わる情報は、前記利用者の音声であり、
前記第1の解析部は、前記音声に基づき、少なくとも怒りの感情を有する前記利用者を判定する、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項5】
前記エレベータの利用者に関わる情報は、前記エレベータの乗場又は前記乗りかごの中に設置されるカメラの画像であり、
前記第2の解析部は、同一の前記利用者が撮影されている複数階の前記カメラの画像に基づいてそれぞれの前記利用者の出発階と目的階とを判定する、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項6】
前記優先度判定部は、複数のホール呼びの登録があった場合に、前記複数のホール呼びが登録された時間帯の前記移動表を取得し、取得した前記移動表に基づき、複数のホール呼びの登録があった出発階の中で前記怒りの感情を有する人数の多い出発階に対する前記乗りかごの割り当ての優先度を高くする、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項7】
前記優先度判定部は、現在の時間帯の前記移動表を取得し、取得した前記移動表に基づき、前記怒りの感情を有する人数の多い出発階に対する前記乗りかごの待機の優先度を高くする、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項8】
前記優先度判定部は、優先度の判定に用いる時間帯について作成された前記移動表のデータ数が閾値以下である場合には、前記優先度の判定を実施しない、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【請求項9】
前記第1の解析部は、さらに、喜びの感情を有する前記利用者を判定し、
前記移動表作成部は、前記出発階と前記目的階との対応毎の前記喜びの感情を有する利用者の人数をさらに集計し、
前記優先度判定部は、さらに、前記喜びの感情を有する利用者の人数に基づいて前記乗りかごの割り当ての優先度を判定する、
請求項1に記載のエレベータシステムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの運行については、様々な観点から改善の提案がなされている。例えば、エレベータ利用者の人流によってエレベータの需要を把握し、この需要に応じてエレベータの運行を制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-193072号公報
【文献】特開2012-086922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エレベータの利用者の感情を考慮した運行の制御については、検討の余地がある。
【0005】
実施形態は、エレベータ利用者の感情に配慮した運行の制御をすることができるエレベータシステムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様のエレベータシステムの制御装置は、第1の解析部と、第2の解析部と、移動表作成部と、優先度判定部と、運転制御部とを備える。第1の解析部は、エレベータの利用者に関わる情報を解析して、エレベータの利用者のうちの少なくとも怒りの感情を有する利用者を判定する。第2の解析部は、エレベータの利用者に関わる情報を解析して、利用者がエレベータの乗りかごに乗った出発階と利用者が乗りかごから降りた目的階とをそれぞれ判定する。移動表作成部は、出発階と目的階との対応毎の少なくとも怒りの感情を有する利用者の人数を集計した時間帯毎の移動表を作成する。優先度判定部は、それぞれの時間帯の移動表に基づき、時間帯毎の乗りかごの優先度を判定する。運転制御部は、優先度に基づいて、乗りかごの運転を群管理制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、エレベータの乗場としてのエレベータホールの構成の一例を示す図である。
図3図3は、一例の画像解析部による画像解析結果を示す図である。
図4図4は、一例の移動表を示す図である。
図5図5は、利用者情報管理装置の移動表作成動作を示すフローチャートである。
図6図6は、利用者情報管理装置の優先度判定動作を示すフローチャートである。
図7図7は、割り当て優先度の判定手法の一例を説明するための図である。
図8図8は、待機優先度の判定手法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す図である。図1に示すエレベータシステム1は、エレベータの群管理を行うシステムである。図1に示すエレベータシステム1は、例えば、3台のエレベータの群管理を行う。以下、3台のエレベータをA号機のエレベータ、B号機のエレベータ、C号機のエレベータと記すことがある。ここで、図1では、3台のエレベータシステムの群管理を行うものとして示されているが、エレベータの台数は3台に限るものではない。
【0009】
エレベータシステム1は、エレベータ制御装置11a、11b、11cと、乗りかご12a、12b、12cと、ホール呼び登録装置16と、カメラ17a、17b、17cと、群管理制御装置20と、サーバ30とを含む。ホール呼び登録装置16と、カメラ17a、17b、17cとは、各階のエレベータホール15に設置される。
【0010】
エレベータ制御装置11aは、A号機の乗りかご12aの運転制御を行う。エレベータ制御装置11bは、B号機の乗りかご12bの運転制御を行う。エレベータ制御装置11cは、C号機の乗りかご12cの運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置11a-11cは、それぞれ、対応する乗りかごを昇降動作させるための図示しないモータ(巻上機)の制御及びドアの開閉制御といった対応する乗りかごに関わる制御を行う。エレベータ制御装置11a-11cは、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータを用いて構成される。
【0011】
乗りかご12aは、A号機の乗りかごである。乗りかご12bは、B号機の乗りかごである。乗りかご12cは、C号機の乗りかごである。乗りかご12a-12cは、それぞれ、モータの駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご12aの例えば底部には、荷重センサ13aが設置されている。乗りかご12bの例えば底部には、荷重センサ13bが設置されている。乗りかご12cの例えば底部には、荷重センサ13cが設置されている。荷重センサ13a-13cは、例えばロードセルであり、かご内の積載荷重を検知する。荷重センサ13a-13cによって検知された荷重データは、エレベータ制御装置11a-11cを介して群管理制御装置20に伝送される。
【0012】
また、乗りかご12aの例えば天井部には、カメラ14aが設置されていてもよい。乗りかご12bの例えば天井部には、カメラ14bが設置されていてもよい。乗りかご12cの例えば天井部には、カメラ14cが設置されていてもよい。カメラ14a-14cは、かご内を撮影する。カメラ14a-14cで得られた撮影画像は、エレベータ制御装置11a-11cを通じて、群管理制御装置20へ伝送され得る。
【0013】
群管理制御装置20は、乗りかご12a-12cの運転を群管理制御するためのエレベータシステム1の制御装置である。群管理制御装置20は、エレベータ制御装置11a-11cと同様にプロセッサ及びメモリを含むコンピュータを用いて構成される。群管理制御装置20は、呼び記憶部21、利用者情報管理装置22、運転制御部23を有している。ここで、利用者情報管理装置22の機能の一部又は全部は、サーバ30に設けられてもよい。
【0014】
呼び記憶部21は、ホール呼び登録装置16の操作によって登録されたホール呼びを記憶する。
【0015】
利用者情報管理装置22は、エレベータの利用者の情報を管理する装置である。利用者情報管理装置22は、エレベータの利用者の感情の認識をする。そして、利用者情報管理装置22は、利用者の感情の認識結果に基づき、移動表を作成する。移動表は、例えば怒りの感情を有するそれぞれの利用者が何階から何階に移動したのかを時間帯毎に集計した表である。さらに、利用者情報管理装置22は、作成された移動表に基づき、乗りかご12a-12cについての優先度を判定する。そして、利用者情報管理装置22は、優先度を運転制御部23に通知する。利用者情報管理装置22は、サーバ30との通信を行えるように構成されていてもよい。利用者情報管理装置22の詳細については後で説明する。
【0016】
運転制御部23は、エレベータ制御装置11a-11cを通じて、複数のエレベータの運行を制御する。運転制御部23は、利用者情報管理装置22からの指示が無ければ、一般的な群管理制御を行うが、利用者情報管理装置22から優先度の通知を受けた場合には、その通知を優先して群管理制御を行う。また、運転制御部23は、新たなホール呼びが登録された場合、乗りかご12a-12cの中からホール呼びを割り当てる乗りかごを選出し、選出した乗りかごをホール呼びが登録された階のエレベータホール15に向かわせる。
【0017】
サーバ30は、利用者情報管理装置22が作成した情報を所定の記憶装置に記憶させる。サーバ30に利用者情報管理装置22の機能の一部又は全部が設けられている場合には、サーバ30は、利用者情報管理装置22と同等の処理を行い得る。
【0018】
図2は、エレベータの乗場としてのエレベータホール15の構成の一例を示す図である。ただし、図2で示す構成は一例である。エレベータホール15の構成は、図2に示す構成に限定されるものではない。
【0019】
各階のエレベータホール15には、ホール呼びを登録するためのホール呼び登録装置16が設置されている。図2の例では、便宜的に任意の階に設置されたホール呼び登録装置16が示されているが、実際には各階に少なくとも1つのホール呼び登録装置16が設置されている。ホール呼び登録装置16は、図示しない伝送ケーブルを介して群管理制御装置20に接続されている。ホール呼び登録装置16は、利用者が行先方向を上方向と下方向のうちで指定するためのホール呼びボタンを備えている。
【0020】
ここで、以下の説明において、「ホール呼び」とは、エレベータホール15においてホール呼び登録装置16の操作により登録される呼びの信号のことであり、出発階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご内で行先階ボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、乗りかごと目的階の情報を含む。
【0021】
また、各階のエレベータホール15のそれぞれの号機のエレベータに対応して、カメラ17a、17b、17cが設置されている。カメラ17a-17cは、例えば乗場ドア18a-18cの上部に設置され、乗場ドア18a-18cの付近で待機している利用者の顔を含む範囲を撮影する。カメラ17a-17cで得られた撮影画像は、群管理制御装置20内の利用者情報管理装置22へ伝送される。
【0022】
利用者情報管理装置22についてさらに説明する。図1に示すように、利用者情報管理装置22は、画像解析部22aと、移動表作成部22bと、情報保管部22cと、優先度判定部22dとを有する。利用者情報管理装置22は、例えばメモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、画像解析部22aと、移動表作成部22bと、優先度判定部22dとしての動作を実行し得る。
【0023】
画像解析部22aは、各階のエレベータホール15に設置されたカメラ17a-17cで得られた撮影画像の解析をする。そして、画像解析部22aは、撮影画像の画像解析結果を、情報保管部22cに記憶させる。
【0024】
具体的には、画像解析部22aは、撮影画像に対する顔認識処理によって乗場ドア18a-18cの付近で待機している利用者の顔を認識し、利用者の識別を行う。そして、画像解析部22aは、それぞれの利用者の感情を認識する。画像解析部22aは、例えば撮影画像から顔の特徴量を抽出し、顔の特徴量から表情を認識し、表情から感情を認識する。実施形態では、画像解析部22aは、少なくとも利用者の怒りの感情を認識する。ここで、画像解析部22aは、顔の特徴量と表情との関係をCNN等の深層学習モデルに学習させて構築された感情認識モデルに基づいて感情認識を行ってもよい。また、画像解析部22aは、喜怒哀楽のそれぞれの感情を区別して認識してもよいし、喜怒哀楽のそれぞれの感情をポジティブ感情とネガティブ感情とに分類して認識してもよい。具体的には、画像解析部22aは、喜びの感情及び楽しみの感情をポジティブの感情とし、怒りの感情及び哀しみの感情をネガティブの感情として分類して認識してもよい。さらには、画像解析部22aは、例えば顔の特徴量と表情との関係に基づき、それぞれの感情の程度を数値として認識するように構成されていてもよい。
【0025】
また、画像解析部22aは、複数の階の間でのカメラ17a-17cで得られた撮影画像の解析による利用者の識別結果から、それぞれの利用者が何階から何階に移動したかを推定する。具体的には、画像解析部22aは、複数の階の撮影画像から、それぞれの利用者の乗りかごに乗り込んだ階と、乗りかごから降りた階とを特定する。そして、画像解析部22aは、それぞれの利用者の出発階と目的階を、識別した利用者のIDと対応付ける。
【0026】
図3は、一例の画像解析部22aによる画像解析結果を示す図である。図3に示すように、一例の画像解析結果は、「日付」と、「時間帯」と、「利用者ID」と、「出発階」と、「目的階」と、「感情」の情報を格納するためのフィールドを含む。
【0027】
「日付」は、撮影画像の撮影日付である。「時間帯」は、撮影画像が撮影された時間帯である。時間帯は、例えば各日の1時間毎、1日毎といった時間の単位で決められてもよいし、各日の朝、昼、夕、夜といった単位で決められてもよい。また、時間帯に代えて又は加えて、画像解析結果は、撮影画像が得られた実時刻の情報を記憶するためのフィールドを有していてもよい。
【0028】
「利用者ID」は、撮影画像から認識された個々の利用者にユニークに付されるIDである。同一の利用者には、同一の利用者IDが付与される。
【0029】
「出発階」は、対応する利用者IDの利用者が対応する時間帯において乗りかごに乗った階である。「目的階」は、対応する利用者IDの利用者が対応する時間帯において乗りかごから降りた階である。
【0030】
「感情」は、対応する利用者IDの利用者の対応する時間帯における感情である。図3では、例えば怒りの感情を有している「怒」、怒りの感情を有していない「-」の何れかが格納されている例が示されている。前述したように、感情の情報として、怒りの感情以外の感情も区別して格納されてよい。さらに、感情の程度が数値として認識される場合、「感情」には、感情の種類及びその程度を表す情報が格納されてもよい。
【0031】
ここで、画像解析部22aは、カメラ17a-17cで得られた撮影画像に代えて又は加えてカメラ14a-14cで得られた撮影画像についても同様の画像解析を実施してよい。また、一例では、画像解析部22aは、怒りの感情の判定と、階の移動の判定の双方を行っている。これらの判定は、別々の画像解析部によって行われてもよい。
【0032】
移動表作成部22bは、画像解析部22aによる画像解析結果に基づき、移動表を作成する。そして、移動表作成部22bは、移動表を、情報保管部22cに記憶させる。図4は、一例の移動表を示す図である。移動表は、例えば時間帯毎に作成される。移動表は、例えば、列方向に出発階をとって行方向に目的階をとって作成した表のそれぞれのフィールドに、対応する出発階から目的階に移動した怒りの感情を有する利用者の人数を格納した表である。移動表作成部22bは、同一の時間帯における出発階及び目的階が同一の怒りの感情を有する利用者の人数を集計して、対応するフィールドに格納する。図4の例では、4階から1階に移動した利用者と3階から2階に移動した利用者は怒りの感情を有している人数が多かったことが示されている。このような移動表が蓄積されることにより、怒りの感情を有する利用者がどの階からどの階に行こうとしていたかの時間帯毎のおおよその傾向が把握され得る。
【0033】
ここで、移動表作成部22bは、作成された個々の移動表を情報保管部22cに記憶させるのに代えて、過去に作成された同一の時間帯の移動表の平均の移動表を情報保管部22cに記憶させてもよい。
【0034】
また、移動表は、時間帯毎、かつ、曜日毎に作成されてもよい。または、移動表は、平日と休日とで区別して作成されてもよい。例えば、オフィスビルのエレベータでは、平日の早朝には基準階、すなわちビルの入口に直結している等の利用者の多い傾向にある階からの利用者が多く、結果として怒りの感情を有する利用者の人数も基準階に多く存在する傾向になると考えられる。一方で、休日にはこのような傾向が必ずしも当てはまらない可能性がある。移動表が、時間帯毎、かつ、曜日毎に作成される又は平日と休日とで区別して作成されることで、このような傾向の異なる複数の種類の移動表が考慮されて後で説明する優先度の誤判定がされてしまうことが抑制され得る。
【0035】
また、画像解析部22aにより、喜怒哀楽のそれぞれの感情が認識されている場合、移動表作成部22bは、それぞれのフィールドに喜怒哀楽のそれぞれの感情を有する利用者の人数を格納してもよい。また、移動表作成部22bは、それぞれのフィールドにポジティブ感情とネガティブ感情を有する利用者の人数を格納してもよい。さらに、画像解析部22aにより、それぞれの感情の程度が数値化されている場合には、移動表作成部22bは、それぞれの感情を表す数値に応じて人数のカウントに重み付けをしてもよい。例えば、移動表作成部22bは、怒りの感情の数値を3段階に分け、怒りの感情が高い利用者についての人数のカウントを1、怒りの感情が中程度の利用者についての人数のカウントを0.67、怒りの感情が低い利用者についての人数のカウントを0.33とした上で、図3で示した移動表を作成してもよい。
【0036】
情報保管部22cは、例えばストレージによって構成され、カメラ14a-14cで得られた撮影画像、カメラ17a-17cで得られた撮影画像、画像解析部22aで作成された画像解析結果及び移動表作成部22bで作成された移動表等の各種の情報を記憶している。
【0037】
優先度判定部22dは、情報保管部22cから時間帯毎の移動表を取得し、取得した移動表に基づいて、時間帯毎の乗りかご12a-12cについての優先度を判定する。例えば、優先度判定部22dは、複数のホール呼びが登録された場合には、ホール呼びが登録された階のうちで、怒りの感情を有する利用者の多い階への乗りかごの割り当ての優先度を高くし、怒りの感情を有する利用者の少ない階への乗りかごの割り当ての優先度を低くする。また、優先度判定部22dは、ホール呼びが登録されていない場合には、怒りの感情を有する利用者の多い傾向にある階への乗りかごの待機の優先度を高くし、怒りの感情を有する利用者の少ない傾向にある階への乗りかごの待機の優先度を低くしてもよい。
【0038】
ここで、画像解析部22aにより、喜怒哀楽のそれぞれの感情が認識されている場合、優先度判定部22dは、怒りの感情以外の感情を優先度の判定に使用してもよい。例えば、優先度判定部22dは、怒りの感情を有する利用者の人数に基づいて判定した優先度から、喜びの感情を有する利用者の人数に応じて減らした優先度を最終的な優先度としてもよい。または、優先度判定部22dは、怒りの感情を有する利用者の人数と喜びの感情を有する利用者の人数の比に基づいて優先度を判定してもよい。さらには、優先度判定部22dは、ネガティブ感情を有する利用者の人数とポジティブ感情を有する利用者の人数の比に基づいて優先度を判定してもよい。
【0039】
次に、エレベータシステム1の動作を説明する。図5は、利用者情報管理装置22の移動表作成動作を示すフローチャートである。移動表作成動作は、各日の早朝、夜といった予め決められた時刻に行われる。
【0040】
ステップS1において、画像解析部22aは、例えば情報保管部22cから撮影画像を取得する。ここで、画像解析部22aは、既に移動表の作成に用いた撮影画像は、取得しなくてもよい。
【0041】
ステップS2において、画像解析部22aは、取得したそれぞれの撮影画像に対する画像解析を行う。具体的には、画像解析部22aは、撮影画像に対する顔認識処理によってそれぞれの撮影画像における利用者の顔を認識し、認識したそれぞれの利用者の少なくとも怒りの感情を認識する。さらに、画像解析部22aは、複数の階の間でのカメラ17a-17cで得られた撮影画像の解析による利用者の識別結果から、それぞれの利用者が何階から何階に移動したのかを推定する。そして、画像解析部22aは、撮影日付と、撮影時間帯と、利用者IDと、出発階と、感情とを関連付けて画像解析結果を作成する。前述したように、画像解析部22aは、カメラ14a-14cで得られた撮影画像に対する画像解析を行ってもよい。
【0042】
ステップS3において、画像解析部22aは、作成した画像解析結果を情報保管部22cに記憶させる。
【0043】
ステップS4において、移動表作成部22bは、情報保管部22cから時間帯毎の画像解析結果を取得し、取得した画像解析結果に基づいて移動表を作成する。例えば、移動表作成部22bは、怒りの感情を有するそれぞれの利用者が何階から何階に移動したかの移動人数を集計する。そして、移動表作成部22bは、集計した移動人数を移動表の対応するフィールドに格納する。ここで、移動表作成部22bは、移動人数の平均値をそれぞれのフィールドに格納した平均の移動表を作成してもよい。
【0044】
ステップS5において、移動表作成部22bは、今回作成した移動表及び/又は今回作成した平均の移動表を情報保管部22cに記憶させる。その後、図5の処理は終了する。
【0045】
図6は、利用者情報管理装置22の優先度判定動作を示すフローチャートである。優先度判定動作は、エレベータシステム1の稼働中に周期的に行われる。
【0046】
ステップS11において、優先度判定部22dは、呼び記憶部21に複数の異なる階へのホール呼びが登録されたか否かを判定する。ステップS11において、呼び記憶部21に複数のホール呼びが登録されたと判定された場合には、処理はステップS12に移行する。ステップS11において、呼び記憶部21に複数のホール呼びが登録されていないと判定された場合には、処理はステップS16に移行する。
【0047】
ステップS12において、優先度判定部22dは、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が予め定められた閾値を超えているか否かを判定する。ステップS12において、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えていると判定された場合には、処理はステップS13に移行する。ステップS12において、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えていないと判定された場合には、処理はステップS11に戻る。この場合には、優先度判定部22dは、運転制御部23に優先度の通知を行わない。したがって、運転制御部23は、一般的な群管理制御を行う。
【0048】
ステップS13において、優先度判定部22dは、情報保管部22cから、現在の時間帯の移動表を取得する。優先度判定部22dは、現在の時間帯について過去に作成されたすべての移動表を取得してもよいし、過去の一部の移動表を取得してもよいし、平均の移動表を取得してもよい。
【0049】
ステップS14において、優先度判定部22dは、取得した移動表に基づき、割り当て優先度を判定する。割り当て優先度は、複数のホール呼びに対し、どの階のホール呼びを優先して乗りかごの割り当てをするかを示す優先度である。以下、割り当て優先度の判定手法の一例を説明する。
【0050】
図7は、割り当て優先度の判定手法の一例を説明するための図である。図7は、ある時間帯の移動表を表している。ここで、図7の各フィールドの人数は、過去の複数の移動表の移動人数の平均であるとする。優先度判定部22dは、過去の複数の移動表を情報保管部22cから取得し、取得した複数の移動表から平均の移動表を作成してもよい。
【0051】
一例の割り当て優先度の判定では、優先度判定部22dは、それぞれの出発階における怒りの感情を有する利用者の人数の合計を計算する。この合計が図7に示されている「合計」である。例えば、図7において、出発階が7階である怒りの感情を有する利用者の人数の合計は、1+1+0+6+7+7+2+6+0=30(人)である。
【0052】
同一の時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えている場合、それらの平均の移動表は、その時間帯において、怒りの感情を有している利用者がそれぞれの出発階に何人ずついるかのおおよその傾向を表していると言える。このことから、現在の時間帯においても、怒りの感情を有する利用者の人数の傾向は、この平均の移動表と同様の傾向を有していると考えられ得る。したがって、優先度判定部22dは、ホール呼びが登録された階のうちで、怒りの感情を有する利用者の人数の多い階への乗りかごの割り当ての優先度を高くする。図7の例において、7階と1階においてホール呼びが登録された場合、優先度判定部22dは、7階への乗りかごの割り当ての優先度を1階への乗りかごの割り当ての優先度よりも高くする。
【0053】
ここで、図7の例では、怒りの感情を有する利用者の人数が最も多い出発階は7階である。一方で、7階においてホール呼びが登録されていない場合には、優先度判定部22dは、7階については乗りかごの割り当ての優先度の判定の対象としない。
【0054】
また、優先度判定部22dは、喜びの感情を有する利用者の人数によって優先度の調整をしてもよい。例えば、優先度判定部22dは、7階において、喜びの感情を有する利用者が3人であるときに、「合計」の値を30-3=27(人)とすることで優先度の調整をし得る。優先度判定部22dは、喜びの感情を有する利用者の人数に応じて、直接的に優先度の値を下げる調整をしてもよい。
【0055】
また、優先度判定部22dは、怒りの感情を有する利用者の人数に応じて、優先度に重み付けをしてもよい。すなわち、怒りの感情を有する利用者の人数が多い階への乗りかごの割り当ての優先度に対する重みを大きくし、怒りの感情を有する利用者の人数が少ない階への乗りかごの割り当ての優先度に対する重みを小さくしてもよい。
【0056】
ステップS15において、優先度判定部22dは、割り当て優先度を運転制御部23に通知する。その後、図6の処理は終了する。運転制御部23は、優先度判定部22dによって通知された割り当て優先度を含めて乗りかごの運転の群管理制御をする。このため、ホール呼びが登録された階の中でも怒りの感情を有する利用者の人数の多い階に、優先して乗りかごが到着しやすくなる。ここで、運転制御部23における群管理制御における、優先度判定部22dから通知された割り当て優先度の考慮度合いが重みとして与えられてもよい。例えば、怒りの感情を有する利用者の人数が多い時間帯であれば、割り当て優先度の考慮度合いの重みが多くされ、怒りの感情を有する利用者の人数が少ない時間帯であれば、割り当て優先度の考慮度合いの重みが少なくされてよい。
【0057】
複数のホール呼びが登録されていないと判定された場合のステップS16において、優先度判定部22dは、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が予め定められた閾値を超えているか否かを判定する。ステップS16において、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えていると判定された場合には、処理はステップS17に移行する。ステップS16において、現在の時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えていないと判定された場合には、処理はステップS11に戻る。この場合には、優先度判定部22dは、運転制御部23に優先度の通知を行わない。したがって、運転制御部23は、一般的な群管理制御を行う。
【0058】
ステップS17において、優先度判定部22dは、情報保管部22cから、現在の時間帯の移動表を取得する。優先度判定部22dは、現在の時間帯について過去に作成されたすべての移動表を取得してもよいし、過去の一部の移動表を取得してもよいし、平均の移動表を取得してもよい。
【0059】
ステップS18において、優先度判定部22dは、取得した移動表に基づき、待機優先度を判定する。待機優先度は、どの階に予め乗りかごを待機させておくかを示す優先度である。以下、待機優先度の判定手法の一例を説明する。
【0060】
図8は、待機優先度の判定手法の一例を説明するための図である。図8は、早朝時間帯の移動表を表している。ここで、図8の各フィールドの人数は、過去の複数の移動表の移動人数の平均であるとする。優先度判定部22dは、過去の複数の移動表を情報保管部22cから取得し、取得した複数の移動表から平均の移動表を作成してもよい。
【0061】
一例の待機優先度の判定では、優先度判定部22dは、それぞれの出発階における怒りの感情を有する利用者の人数の合計を計算する。図8に示すように、早朝時間帯では基準階である1階における利用者が多いため、怒りの感情を有する利用者の人数も1階が最も多い傾向にある。
【0062】
割り当て優先度とは異なり、待機優先度の場合、優先度判定部22dは、怒りの感情を有する利用者の人数の多い階への乗りかごの待機優先度を高くする。図8の例においては、1階への乗りかごの待機優先度を最も高くする。
【0063】
割り当て優先度と同様に、優先度判定部22dは、喜びの感情を有する利用者の人数によって優先度の調整をしてもよい。また、優先度判定部22dは、怒りの感情を有する利用者の人数に応じて、優先度に重み付けをしてもよい。
【0064】
ステップS19において、優先度判定部22dは、待機優先度を運転制御部23に通知する。その後、図6の処理は終了する。運転制御部23は、優先度判定部22dによって通知された待機優先度を含めて乗りかごの運転の群管理制御をする。このため、怒りの感情を有する利用者の人数の多くなることが想定される階に、予め優先して乗りかごを待機させる制御が実施されやすくなる。ここで、運転制御部23における群管理制御における、優先度判定部22dから通知された割り当て優先度の考慮度合いが重みとして与えられてもよい。例えば、怒りの感情を有する利用者の人数が多い時間帯であれば、割り当て優先度の考慮度合いの重みが多くされ、怒りの感情を有する利用者の人数が少ない時間帯であれば、割り当て優先度の考慮度合いの重みが少なくされてよい。
【0065】
以上説明したように実施形態によれば、怒りの感情を有する利用者がそれぞれ何階から何階へ移動したのかの時間帯毎の移動表が作成される。そして、時間帯毎の移動表に基づいて、複数のホール呼びが登録された場合の乗りかごの割り当ての優先度及び乗りかごの待機優先度が判定される。このような優先度が考慮された群管理制御により、時間帯毎の利用者の感情に配慮したエレベータシステムの制御がなされることが期待される。
【0066】
また、実施形態では、それぞれの時間帯について作成された移動表のデータ数が閾値を超えていない場合には、優先度の判定が行われない。これにより、不正確な移動表に基づいて判定された優先度に基づく群管理制御がなされることが抑制され得る。
【0067】
(変形例)
以下、実施形態の変形例が説明される。実施形態では、優先度の判定において、例えば平均の移動表が用いられている。これに対し、前述したように、時間帯毎のそれぞれの出発階に存在する怒りの感情を有する利用者の人数には、ある傾向が存在する。したがって、移動表作成部22bは、時間帯の情報を入力とし、移動表を出力する機械学習モデルを有して構成されてもよい。この機械学習モデルに、過去の移動表を教師データとして入力することで学習が実施される。そして、移動表作成部22bは、この学習済みモデルに時間帯の情報を入力してステップS13又はステップS17の現在の移動表を作成してもよい。
【0068】
また、実施形態では、それぞれの出発階における怒りの感情を有する利用者の人数の合計が優先度の判定に用いられている。移動表は、目的階の情報を必ずしも有していなくてもよい。一方で、優先度の判定に目的階の情報が考慮されてもよいことは言うまでもない。例えば、移動表において、人数が多いフィールドは、それだけ多くの利用者がその目的階への移動をしていることを示し、利用者の需要が高いことを意味している。したがって、このような人数が多いフィールドは、合計の計算の際に、重みが付けられて通常よりも多くカウントされてもよい。
【0069】
また、実施形態では、感情の判定は、カメラ14a-14c又は17a-17cで得られた撮影画像から検出される利用者の顔の表情に基づいて行われる。感情の判定は、任意の手法で行われてよい。例えば、カメラ14a-14c又は17a-17cで得られた撮影画像から検出される利用者の怒りの感情を表す特定の行動を検出することによって判定が行われてもよい。怒りの感情を表す特定の行動は、例えば足を踏み鳴らす、腕組みをするといった予め決められた利用者の仕草であり得る。また、感情の判定は、例えばエレベータホール15又は乗りかご12a-12cに設置されたマイクロホンで収集される利用者の音声に基づいて行われてもよい。さらには、感情の判定は、例えばエレベータホール15又は乗りかご12a-12cに設置された脳波センサで収集される利用者の脳波パターンに基づいて行われてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…エレベータシステム、11a,11b,11c…エレベータ制御装置、12a,12b,12c…乗りかご、13a,13b,13c、14a,14b,14c…カメラ、15…エレベータホール、16…呼び登録装置、17a,17b,17c…カメラ、18a,18b,18c…乗場ドア、20…群管理制御装置、21…呼び記憶部、22…利用者情報管理装置、22a…画像解析部、22b…移動表作成部、22c…情報保管部、22d…優先度判定部、23…運転制御部、30…サーバ。
【要約】
【課題】エレベータ利用者の感情に配慮した運行の制御をすることができるエレベータシステムの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータシステムの制御装置は、第1の解析部と、第2の解析部と、移動表作成部と、優先度判定部と、運転制御部とを備える。第1の解析部は、エレベータの利用者に関わる情報を解析して、エレベータの利用者のうちの少なくとも怒りの感情を有する利用者を判定する。第2の解析部は、エレベータの利用者に関わる情報を解析して、利用者が乗りかごに乗った出発階と利用者が乗りかごから降りた目的階とをそれぞれ判定する。移動表作成部は、出発階と目的階との対応毎の少なくとも怒りの感情を有する利用者の人数を集計した時間帯毎の移動表を作成する。優先度判定部は、それぞれの時間帯の移動表に基づき、時間帯毎の乗りかごの優先度を判定する。運転制御部は、優先度に基づいて、乗りかごの運転を群管理制御する。
【選択図】図1
図1
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図8