(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】金型回転装置および圧造機
(51)【国際特許分類】
B21J 13/02 20060101AFI20250422BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20250422BHJP
B21J 13/14 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B21J5/06 Z
B21J13/14 B
(21)【出願番号】P 2021072713
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】赤林 将
(72)【発明者】
【氏名】森田 真
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085889(JP,A)
【文献】特開2006-272753(JP,A)
【文献】特開2005-296982(JP,A)
【文献】特開平06-055377(JP,A)
【文献】特開2019-188429(JP,A)
【文献】実開昭58-096829(JP,U)
【文献】特許第2821553(JP,B2)
【文献】特開平06-304693(JP,A)
【文献】特開平02-117736(JP,A)
【文献】特開2018-099697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0257344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/02
B21J 5/06
B21J 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有してワークを保持する固定金型と、
前記中心軸線の延在方向の位置に配置されて前記固定金型に対向し、前記固定金型と共同して前記ワークに所定の作業を実施する可動金型と、
前記固定金型および前記可動金型のいずれかである回転金型を前記中心軸線の周りに回転させる回転駆動機構と、を備え、
前記回転駆動機構は、
前記中心軸線を共有しつつ、前記中心軸線の延在方向に移動可能な操作部材と、
前記中心軸線に対して傾斜するように前記回転金型および前記操作部材の一方に設けられたらせん溝と、
前記回転金型および前記操作部材の他方に立設されて、前記らせん溝に係入するガイドピンと、
前記操作部材を前記中心軸線の延在方向に駆動して、前記ガイドピンを前記らせん溝に沿って相対的に移動させることにより、前記回転金型を回転させる駆動部と、
前記操作部材が前記中心軸線の周りに回転することを防止する回転防止部と、を有し、
前記回転防止部は、
前記回転金型の外周側に配置される円筒形状の前記操作部材の外周面に形成されて、前記中心軸線の延在方向、および延在方向に直交する幅方向に拡がる平面部と、
前記幅方向に延在し、前記操作部材が前記中心軸線の延在方向に移動する間を通して前記平面部の前記幅方向に接する回転防止体と、を有する、
金型回転装置。
【請求項2】
前記回転駆動機構は、周方向の複数箇所にそれぞれ前記らせん溝および前記ガイドピンを有する、請求項1に記載の金型回転装置。
【請求項3】
それぞれが固定金型および可動金型を含み、ワークが順番に搬送される三工程以上の圧造工程と、
前記可動金型を中心軸線に沿って往復動作させ、前記ワークへの圧造加工作業を実施させる主駆動源と、
前記中心軸線を有して前記ワークを保持する前記固定金型と、前記中心軸線の延在方向の位置に配置されて前記固定金型に対向し、前記固定金型と共同して前記ワークに所定の作業を実施する前記可動金型と、前記固定金型および前記可動金型のいずれかである回転金型を前記中心軸線の周りに回転させる回転駆動機構と、を備えて、前記可動金型の往動時および復動時の少なくとも一方の時に前記回転金型を回転させる金型回転装置と、を備え、
前記金型回転装置は、途中の前記圧造工程に設けられ、前記圧造加工作業に代えて、前記ワークの前記中心軸線の周りの回転姿勢を変更する姿勢変更作業を実施し、姿勢変更後の前記ワークを下流の前記圧造工程に搬送させる、
圧造機。
【請求項4】
前記回転駆動機構は、前記可動金型の復動時に前記固定金型を前記中心軸線の周りに回転させることにより、前記ワークの前記中心軸線の周りの回転姿勢を変更する姿勢変更作業を前記固定金型に実施させる、請求項
3に記載の圧造機。
【請求項5】
前記金型回転装置が設けられた前記圧造工程の前記可動金型は、往動時に、前記圧造加工作業に代えて、前記ワークの前記中心軸線に対する傾斜姿勢を変更する第二姿勢変更作業を実施する、請求項
3または
4に記載の圧造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された固定金型および可動金型のいずれかを回転させる金型回転装置、および、この金型回転装置を備える圧造機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧造機では、対向配置されたダイス(固定金型)およびパンチ(可動金型)が共同してワークに圧造加工作業を実施し、塑性変形を発生させて所定形状の部品を生産する。この種の圧造機の一構成例が特許文献1に開示されている。特許文献1の横型連続多段圧造機は、第1方向に前進および後退が自在のラムと、ラムの第2方向に配列された複数のパンチと、第2方向に固定配列されるとともに複数のパンチのそれぞれに対応する複数のダイスと、ワークを移送するトランスファユニットと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランスファユニットがワークを搬送する動作を安定化するために、圧造加工作業が実施されたワークの姿勢を保つのでなく、姿勢を変更したほうが好ましい場合がある。例えば、ワークの重心位置や掴み位置を考慮しつつ、ワークを掴むフィンガの形状および動作形態に適合するようにワークの姿勢を変更することにより、ワークが落下するおそれを低減できる場合がある。しかしながら、従来の圧造機では、ダイスから突き出されたワークの姿勢を把持される直前に変更することが難しい。このため、ワークを保持したダイスを中心軸線の周りに回転させて、ダイスとともにワークの姿勢を変更する技術が必要となる。
【0005】
また、金型を中心軸線の周りに回転させる技術は、ダイスを回転させる構成やワークの姿勢を変更する用途に限定されず、構成を変形したり、別の用途に適用したりすることが可能である。例えば、回転させる対象はダイスでなく、パンチであってもよい。また例えば、金型を回転させることによって、ワークに切削加工作業やねじり加工作業を実施することが可能となる。
【0006】
本発明は、上述した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、対向配置された固定金型および可動金型のいずれかを回転させて、圧造加工作業と異なる作業用途に適用できるようにした金型回転装置、および、この金型回転装置を備える圧造機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金型回転装置は、中心軸線を有してワークを保持する固定金型と、前記中心軸線の延在方向の位置に配置されて前記固定金型に対向し、前記固定金型と共同して前記ワークに所定の作業を実施する可動金型と、前記固定金型および前記可動金型のいずれかである回転金型を前記中心軸線の周りに回転させる回転駆動機構と、を備え、前記回転駆動機構は、前記中心軸線を共有しつつ、前記中心軸線の延在方向に移動可能な操作部材と、前記中心軸線に対して傾斜するように前記回転金型および前記操作部材の一方に設けられたらせん溝と、前記回転金型および前記操作部材の他方に立設されて、前記らせん溝に係入するガイドピンと、前記操作部材を前記中心軸線の延在方向に駆動して、前記ガイドピンを前記らせん溝に沿って相対的に移動させることにより、前記回転金型を回転させる駆動部と、前記操作部材が前記中心軸線の周りに回転することを防止する回転防止部と、を有し、前記回転防止部は、前記回転金型の外周側に配置される円筒形状の前記操作部材の外周面に形成されて、前記中心軸線の延在方向、および延在方向に直交する幅方向に拡がる平面部と、前記幅方向に延在し、前記操作部材が前記中心軸線の延在方向に移動する間を通して前記平面部の前記幅方向に接する回転防止体と、を有する。
【0008】
また、本発明の圧造機は、それぞれが固定金型および可動金型を含み、前記ワークが順番に搬送される三工程以上の圧造工程と、前記可動金型を前記中心軸線に沿って往復動作させ、前記ワークへの圧造加工作業を実施させる主駆動源と、前記中心軸線を有してワークを保持する固定金型と、前記中心軸線の延在方向の位置に配置されて前記固定金型に対向し、前記固定金型と共同して前記ワークに所定の作業を実施する可動金型と、前記固定金型および前記可動金型のいずれかである回転金型を前記中心軸線の周りに回転させる回転駆動機構と、を備えて、前記可動金型の往動時および復動時の少なくとも一方の時に前記回転金型を回転させる金型回転装置と、を備え、前記金型回転装置は、途中の前記圧造工程に設けられ、前記圧造加工作業に代えて、前記ワークの前記中心軸線の周りの回転姿勢を変更する姿勢変更作業を実施し、姿勢変更後の前記ワークを下流の前記圧造工程に搬送させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金型回転装置および圧造機において、回転駆動機構は、固定金型および可動金型のいずれかを中心軸線の周りに回転させることができるので、金型の回転を圧造加工作業と異なる作業用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の金型回転装置を適用可能な圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】金型回転装置の回転金型に相当するダイス、および回転駆動機構の構成を示す側面断面図である。
【
図3】金型回転装置の一部分を斜め下方からみた拡大斜視図である。
【
図4】多工程の圧造機で製造するワークの各工程における形状および姿勢を例示する斜視図である。
【
図5】
図4に示される圧造機の第3圧造工程で、金型回転装置によりワークの姿勢を変更するときの動作を説明するタイムチャートの図である。
【
図6】第2実施形態の金型回転装置において、回転金型に相当するパンチがワークに切削加工作業を実施する構成例を模式的に示す図である。
【
図7】
図6の構成例における動作を説明するタイムチャートの図である。
【
図8】第3実施形態の金型回転装置において、ワークにねじり加工作業を実施する構成例を模式的に示す図である。
【
図9】
図8の構成例によって製造される部品の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.圧造機1の全体構成
まず、第1実施形態の金型回転装置5を適用可能な圧造機1の全体構成について、
図1および
図2を参考にして説明する。圧造機1は、横型の多工程の圧造機である。圧造機1は、フレーム2、ラム3、5組のパンチ41およびダイス44、ワーク搬送部49、ならびに主駆動部9などで構成される。圧造機1は、5組のパンチ41およびダイス44により構成された第1~第5圧造工程で、ワークWに圧造加工作業を実施する。パンチ41は、可動金型の別称であり、ダイス44は、固定金型の別称である。
図1において、第1~第5圧造工程は、上側から下側へと並んでいる。なお、圧造機1の圧造工程数は、5工程に限定されず、1~8工程程度の範囲とされる。
【0012】
フレーム2は、各部を配設するための筐体であり、鉄製で堅牢に形成されている。5個のダイスホルダ21は、フレーム2の幅方向に並んで設けられる。5個のダイス44は、各ダイスホルダ21の前側(
図1の左側)に交換可能に取り付けられる。各ダイス44の前側に、所定の加工型が形成されている。ダイス44は、中心軸線CL(
図2参照)を有し、加工型にワークWを保持する。
【0013】
ラム3は、平面視で概ね矩形であり、フレーム2を基準とする前後方向(
図1の左右方向)に往復動作する。5個のパンチホルダ31は、ラム3の前側(
図1の右側)の幅方向に並んで設けられる。5個のパンチ41は、各パンチホルダ31の前側に交換可能に取り付けられる。各パンチ41の前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ41は、ラム3とともに往復動作する。パンチ41は、中心軸線CLの延在方向の位置に配置され、ダイス44に対向する。パンチ41は、ダイス44と共同してワークWに圧造加工作業を実施する。なお、パンチ41およびダイス44が共同して実施する作業は、加工型による圧造加工作業に限定されず、他の作業であってもよい。
【0014】
圧造機1は、図略の切断機構部を備える。切断機構部は、環形の可動カッタ、線材送り機構、およびプッシャ機構を有する。可動カッタは、線材送り機構によって環形の内部に挿入された長尺線材を切断し、所定寸法の円柱状のワークを作成する。プッシャ機構は、可動カッタからワークをプッシュアウトする。線材およびワークの材質として、アルミや鉄、各種の合金などを例示できる。
【0015】
ワーク搬送部49は、ダイスホルダ21の上方からダイス44の前方にかけて配設される。ワーク搬送部49は、トランスファ装置と呼称されることもある。ワーク搬送部49は、ワークを掴む6対のフィンガ対を有する。最上流の第1のフィンガ対は、切断機構部で作成されたワークを掴んで、第1圧造工程まで搬送する。第2~第5のフィンガ対は、上流側の圧造工程でワークを掴んで、下流側の圧造工程まで搬送する。最下流の第6のフィンガ対は、第5圧造工程でワークを掴んで、図略の搬出部まで搬送する。
【0016】
ラム3を往復駆動するために主駆動部9が設けられる。主駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。主駆動部9は、ワーク搬送部49および切断機構部を併せて駆動する。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、ディスクブレーキ93、および減速機構94を介して、ラム3を駆動するクランク軸95に入力される。さらに、クランク軸95から分岐歯車対96を介してサイド軸97へと、駆動力が分岐伝達される。
【0017】
サイド軸97は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム98を回転駆動する。トランスファカム98は、ワーク搬送部49を駆動する。また、サイド軸97からトランスファドライブ99を経由した先に、6個のオープンクローズカム9Aが回転駆動されるように連結されている。オープンクローズカム9Aは、幅方向に等間隔で配置されている。オープンクローズカム9Aは、それぞれフィンガ対を開閉駆動する。
【0018】
さらに、サイド軸97には、カッタカム9Bが設けられるとともに、プッシャカム9C、フィードカム9D、線材送り装置9E、および5個のキックアウトカム9Fが連結されている。カッタカム9B、プッシャカム9C、フィードカム9D、および線材送り装置9Eは、切断機構部を駆動する。キックアウトカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第5圧造工程の位置にそれぞれ対応する。キックアウトカム9Fは、後述するキックアウトピン4Aを駆動する。
【0019】
2.ダイス44の付近の構成
次に、ダイス44の付近の構成について、
図2を参考にして説明する。便宜的に、
図2の右方を前側とし、左方を後側とする。図示されるように、ダイスホルダ21は、ホルダ部材211、バックプレート212、およびダイスフレーム213が前側から後側へと連結されて構成される。これら3部材は、前後方向に延びる中心軸線CLを共有する筒状にそれぞれ形成されている。かつ、これら3部材は、前後方向に圧接されて結合される。
【0020】
筒状のホルダ部材211は、内周面に段差を有しており、前端および、中間位置から後端までの範囲で内径が大きい。ホルダ部材211の前端の内径が大きな部位に、スラストベアリング214が設けられる。ホルダ部材211の後寄りの内径が大きな部位に、回転操作空間215が区画される。筒状のバックプレート212は、その内径がダイス44の外径よりも小さく形成される。筒状のダイスフレーム213は、前側の内径が大きく、後側の内径が小さく形成される。
【0021】
ダイス44は、スラストベアリング214とバックプレート212の間に、前後方向に移動不能に保持される。かつ、ダイス44は、ホルダ部材211の内側において中心軸線CLの周りに回転可能に保持される。なお、バックプレート212の前側にスラストベアリングが設けられて、ダイス44が回転する際の摩擦力が低減されてもよい。ダイス44は、前側に形成された加工型の内部にワークWを保持する。加工型の形状は、様々に変更可能であるので、具体的な形状の図示および説明は省略する。ダイス44は、概ね円筒状に形成されており、その内側に後方からキックアウトピン4Aが挿入される。
【0022】
キックアウトピン4Aは、圧造加工作業が実施されたワークWをダイス44から突き出す突き出し動作を行う。キックアウトピン4Aは、中心軸線CL上に配置され、前後方向に移動可能に支持される。キックアウトピン4Aは、数箇所で直径のサイズが変化する段差付きの丸棒形状に形成される。キックアウトピン4Aの先端4Cは、ダイス44の後部に入り込んでワークWに当接可能となっている。キックアウトピン4Aの先端4Cは、ダイス44の加工型の一部分の役割を果たしてもよい。
【0023】
キックアウトピン4Aは、後側寄りに大径の鍔部4Bを有する。キックアウトピン4Aの鍔部4Bよりも後側の部分は、略円筒形の首下調整ねじ4Fの内部に収容される。キックアウトピン4Aは、鍔部4Bが首下調整ねじ4Fに当接することによって後退位置が定められる。首下調整ねじ4Fは、枠体841(後述)に螺合されており、その位置が前後方向に調整される。これにより、キックアウトピン4Aの後退位置が調整される。キックアウトピン4Aの後端4Dは、キックアウトカム9Fを介して主駆動源91から駆動される。
【0024】
パンチ41がダイス44に接近して圧造加工作業が進捗する間、キックアウトピン4Aは、
図2に示された後退位置を維持する。圧造加工作業が終了してパンチ41がダイス44から遠ざかるにつれ、キックアウトピン4Aは、キックアウトカム9Fによって前進位置まで駆動され、ワークWをダイス44の前側まで突き出す。この後、キックアウトピン4Aは、後述する付勢バネ4Eによって後方に押動され、キックアウトカム9Fに追従しつつ後退位置まで戻る。
【0025】
3.第1実施形態の金型回転装置5の構成および動作
次に、第1実施形態の金型回転装置5の構成および動作について、
図2および
図3を参考にして説明する。金型回転装置5は、圧造機1の少なくともひとつの圧造工程に適用可能である。金型回転装置5は、ダイス44、パンチ41、および回転駆動機構6などで構成される。回転駆動機構6は、ダイス44およびパンチ41のいずれかである回転金型を中心軸線CLの周りに回転させる。第1実施形態において、回転駆動機構6は、回転金型となるダイス44を回転させて、ワークWの姿勢を変更する姿勢変更作業をダイス44に実施させる。回転駆動機構6は、操作部材61、らせん溝62、ガイドピン63、回転防止部7、および駆動部8などで構成される。
【0026】
図3において、ダイス44および操作部材61の下側半分が図示されており、上側半分は省略されている。操作部材61は、円筒形状に形成され、ダイス44の外周側に配置される。操作部材61の内径は、ダイス44の外径と同一でプラスの公差を有するか、あるいは、ダイス44の外径よりもわずかに大きく定められる。操作部材61は、
図2に示されるように、ホルダ部材211の内部の回転操作空間215に配置される。操作部材61は、中心軸線CLを共有しつつ、中心軸線CLの延在方向に移動可能となっている。
【0027】
らせん溝62は、
図3に示されるように、中心軸線CLに対して傾斜するように操作部材61に設けられる。らせん溝62は、中心軸線CLに対して一定の傾斜角度をもつように直線状に形成される。あるいは、らせん溝62は、傾斜角度が徐々に変化するように曲線状に形成されてもよい。ダイス44を回転させる所望の回転角度範囲に対応するように、らせん溝62の傾斜角度および溝長さが定められる。第1実施形態において、らせん溝62は、ダイス44の25°の回転角度範囲に対応するように形成される。らせん溝62は、操作部材61の周方向の複数箇所に設けられることが好ましい。第1実施形態において、らせん溝62は、操作部材61の周方向に180°離れた2箇所の側面位置に設けられる。
【0028】
ガイドピン63は、円柱形状の部材であり、ダイス44の外周面に径方向外向きに立設される。ガイドピン63の本数は、らせん溝62の箇所数と同数である。各ガイドピン63は、それぞれ異なるらせん溝62に係入する。ガイドピン63の長さは、らせん溝62の溝深さに一致するか、溝深さよりもわずかに大きめに設定される。また、ガイドピン63の直径は、らせん溝62の溝幅よりも少し小さめに設定される。これによれば、らせん溝62に対するガイドピン63の係入状態が安定する。
【0029】
回転防止部7は、操作部材61が中心軸線CLの周りに回転することを防止する。回転防止部7は、周方向の複数箇所に設けられることが好ましい。第1実施形態において、回転防止部7は、操作部材61の下側および上側(
図2参照)の2箇所に設けられる。回転防止部7は、平面部71および回転防止体72からなる。平面部71は、操作部材61の外周面に設けられ、例えば切削加工によって形成される。平面部71は、中心軸線CLの延在方向、および延在方向に直交する幅方向に拡がる概ね長方形の平面部分である。
【0030】
回転防止体72は、幅方向に延在する丸棒状の部材で形成される。回転防止体72の両端は、ホルダ部材211の内周面に固定されている。回転防止体72は、操作部材61が中心軸線CLの延在方向に移動する間を通して、平面部71の幅方向の概ね全長に常に接する。これによれば、操作部材61の回転が防止されるので、後述するダイス44の回転動作が安定化される。さらに、複数組のらせん溝62とガイドピン63の組み合わせ、ならびに複数の回転防止部7が周方向に交互に配置されることにより、ダイス44の回転動作が円滑化される。
【0031】
駆動部8は、操作部材61を中心軸線CLの延在方向(前後方向)に駆動する。駆動部8は、複数の操作ピン81、駆動ピン83、駆動源部84、液源容器8A、液路操作部8B、作動液制御部8C、およびプレート位置検出部8Dなどで構成される。
【0032】
複数の操作ピン81は、中心軸線CLから等距離に位置し、かつ周方向に等間隔で配置される。複数の操作ピン81は、中心軸線CLに平行して延在し、バックプレート212の貫通孔216を突き抜けるように配置される。
図3には、6本の操作ピン81が例示されている。各操作ピン81の前端は、操作部材61の後端に結合される。各操作ピン81の後端は、鍔形状の鍔部82に結合される。
【0033】
鍔部82と、キックアウトピン4Aの鍔部4Bとの間に、コイル形状の付勢バネ4Eが挿入される。付勢バネ4Eは、キックアウトピン4Aを後方に付勢している。付勢バネ4Eの外周側に、円筒形状の駆動ピン83が配置される。駆動ピン83の前端は、鍔部82に結合される。駆動ピン83の後端は、結合プレート842(後述)に結合される。
【0034】
駆動源部84は、ダイスホルダ21のダイスフレーム213の後側に配置される。駆動源部84は、枠体841、2個の液圧駆動源85、2組の前側液路88および後側液路89、ならびに結合プレート842などで構成される。なお、1個の液圧駆動源85では所望する操作力が得られないため、2個の液圧駆動源85が並列で用いられる。枠体841は、前方に開口する中空の枠形状の部材であり、ダイスフレーム213の後側に接して配置される。
【0035】
2個の液圧駆動源85は、枠体841の内部の後寄りに設けられる。かつ、2個の液圧駆動源85は、中心軸線CLから見て上下対称の位置に離隔して配置される。2個の液圧駆動源85の間に、首下調整ねじ4Fが配置される。
【0036】
それぞれの液圧駆動源85は、シリンダ86およびピストン87を有する。シリンダ86は、前側に開口する有底円筒状に形成される。ピストン87は、シリンダ86の内部に配設され、前側に突出している。ピストン87は、前側の小径部および後側の大径部からなる丸棒状の部材である。大径部の外周には、液密用の溝およびOリング(符号略)が設けられる。これにより、シリンダ86とピストン87の間の液密構造が構成される。
【0037】
結合プレート842は、上下に長く形成される。結合プレート842は、
図2に示されるように、ボルト843を用いて2個のピストン87の前側に結合されている。結合プレート842の中央に設けられた孔に、首下調整ねじ4Fが遊嵌している。結合プレート842の前側に、駆動ピン83の後端が結合される。したがって、2個のピストン87、結合プレート842、駆動ピン83、操作ピン81、および操作部材61は、一体的に前後方向に動作する。
【0038】
ピストン87の小径部の外面とシリンダ86の内面で区画された閉鎖空間は、前側液室861となっている。ピストン87の後面とシリンダ86の内底面で区画された閉鎖空間は、後側液室862となっている。シリンダ86の側面を貫いて、外部から前側液室861に連通する前側連通口863が設けられる。同様に、シリンダ86の側面を貫いて、外部から後側液室862に連通する後側連通口864が設けられる。
【0039】
前側連通口863は、前側液路88および液路操作部8Bを経由して、液源容器8Aに連通される。後側連通口864は、後側液路89および液路操作部8Bを経由して、液源容器8Aに連通される。2個の液圧駆動源85の前側液路88および後側液路89、換言すると4つの液路は、互いに等長かつ等断面積とされている。これにより、2個の液圧駆動源85が同期して動作するときの動作特性が良く一致する。前側液路88および後側液路89には、樹脂製チューブや金属製パイプなどが用いられる。液圧駆動源85に用いる作動液として作動油を例示でき、これに限定されない。
【0040】
液路操作部8Bは、図略のポンプや弁類の組み合わせによって構成される。液路操作部8Bは、2個の液圧駆動源85と液源容器8Aとの間を流れる作動液の流れを操作する。作動液制御部8Cは、液路操作部8Bの動作を制御する。作動液制御部8Cは、例えば、制御信号の入出力機能をもつコンピュータ装置を用いて構成される。作動液制御部8Cには、プレート位置検出部8Dが付属される。
【0041】
プレート位置検出部8Dは、結合プレート842の前後方向の位置を検出する。プレート位置検出部8Dは、エンコーダ8Eおよびリニアゲージ8Fで構成される。リニアゲージ8Fは、結合プレート842の上部に設けられ、結合プレート842とともに前後に動作する。リニアゲージ8Fには、前後方向に所定ピッチで刻まれた目盛りが設けられている。エンコーダ8Eは、枠体841に固定取り付けされて、リニアゲージ8Fに対向配置される。エンコーダ8Eは、リニアゲージ8Fの目盛りを読み取ってコード化し、作動液制御部8Cに出力する。プレート位置検出部8Dとして、例えば磁気検出方式のセンサを用いることができる。
【0042】
作動液制御部8Cは、エンコーダ8Eの出力を受け取るとともに、主駆動源91の動作状況に関する情報を受け取る。作動液制御部8Cは、エンコーダ8Eから受け取った出力に基づいて、操作部材61の現在位置求める。かつ、作動液制御部8Cは、主駆動源91の動作状況を参照して、タイムリーに液路操作部8Bを制御し、操作部材61の動作を制御する。
【0043】
図2において、前側液室861が最大容積で、後側液室862が最小容積となっている。このとき、ピストン87は、後退位置に位置する。作動液制御部8Cからの制御により、前側液室861から作動液が流出して、後側液室862に作動液が流入すると、ピストン87は、作動液の流入出量に対応する移動量だけ前進動作する。逆に、後側液室862から作動液が流出して、前側液室861に作動液が流入すると、ピストン87は後退動作する。ピストン87の前進動作および後退動作に同期して、操作部材61が前進動作および後退動作する。
【0044】
なお、仮に片方の液圧駆動源85で作動液の流入出が先行した場合、結合プレート842に出力される操作力が瞬間的に片方だけとなる。このとき、操作部材61は、動作しないか、または動作できても低速動作となる。すると、短時間のうちに他方の液圧駆動源85における作動液の流入出が追いついて、両方の液圧駆動源85から結合プレート842に操作力が出力されるようになる。この後、2個の液圧駆動源85は、同期して動作する。したがって、2個の液圧駆動源85から出力される操作力が加算され、操作部材61は、大きな操作力を発揮することができる。
【0045】
図3の矢印M1に示されるように、操作部材61が後退位置から中心軸線CLの延在方向に前進すると、ガイドピン63は、矢印M2に示されるように、らせん溝62に沿って相対的に移動する。このとき、ガイドピン63は、ダイス44に固定されているため中心軸線CLの延在方向に移動することはできず、実際には周方向の回転動作のみを行う。これにより、ダイス44は、矢印M3に示されるように、中心軸線CLの周りに回転する。操作部材61が最も前側の前進位置に到達したとき、ダイス44は25°回転した状態となる。また、操作部材61が前進位置から後退位置に戻ると、ダイス44は25°逆回転して元の状態に戻る。ダイス44の回転動作は、圧造加工作業と異なる作業用途に適用することができる。
【0046】
ここで、駆動部8は、主駆動源91と相違するものであり、主駆動源91から独立した駆動の自由度を有している。したがって、駆動部8がダイス44の回転を駆動するときの駆動タイミングや駆動速度を様々に設定することにより、ダイス44の回転動作を多様な作業用途に適用することが可能となっている。加えて、液圧駆動源85を用いる駆動部8は、キックアウトカム9Fを用いる駆動などと比較して精度の高い制御が可能であるので、ダイス44の正確な回転角度や回転速度、および適正な回転時期が実現される。
【0047】
4.圧造機1の動作例
次に、金型回転装置5を適用した圧造機1の動作例について、
図4および
図5を参考にして説明する。動作例において、圧造機1は、第1~第6圧造工程(#1~#6)を有し、第3圧造工程(#3)に金型回転装置5が適用されている。また、動作例において、ワークWは、
図4に示されるように圧造加工作業および姿勢変更作業が実施される。
図4の紙面右上方向が圧造機1の上側に対応し、紙面左下方向が圧造機1の下側に対応する。中心軸線CLは、
図4の上下方向に延在する。また、第3圧造工程(#3)以外の各圧造工程(#1、#2、#4、#5、#6)では、圧造加工作業が実施された後のワークWの形状が図示されている。なお、第2および第4圧造工程(#2、#4)では、ワークWの四分の一を切り取った部分断面が図示されている。
【0048】
圧造機1の動作例では、始めに切断機構部で円柱形状のワークWが切断される。次の第1圧造工程(#1)で、ワークWの切断された二つの端面が矯正されるとともに、二つの端面に下穴H1が形成される。次の第2圧造工程(#2)で、ワークWの二つの端面に、下穴H1を少し拡げた有底穴H2が形成される。次の第3圧造工程(#3)で、圧造加工作業に代えて、ワークWの姿勢を変更する姿勢変更作業が実施される(詳細後述)。
【0049】
次の第4圧造工程(#4)で、ワークWの外形形状を円柱形状から直方体形状に変形する据え込み加工作業が実施される。次の第5圧造工程(#5)で、概ね矩形断面を有する貫通孔H3がワークWに形成される。最後の第6圧造工程(#6)で、ワークWの貫通孔H3の内部の形状補正が実施される。
【0050】
次に、第3圧造工程(#3)におけるワークWの姿勢変更作業について、詳細に説明する。
図5には、ワークWの姿勢変更作業を実施するときのタイムチャートが示されている。
図5の横軸は、共通の時間軸tである。3つのグラフは、上から順番にパンチ41のストローク特性、キックアウトピン4Aの動作特性、および操作部材61の動作特性を示している。
図5には、パンチ41が後死点PRから前死点PFまで往動して後死点PRまで復動する1周期の動作が描かれている。キックアウトピン4Aの動作特性は、キックアウトカム9Fのカム形状によって実現される。また、操作部材61の動作特性は、作動液制御部8Cからの制御および液路操作部8Bの動作によって実現される。
【0051】
図5の時刻t0において、パンチ41は後死点PRに位置する。このとき、キックアウトピン4Aは、前進位置KFに位置する。同時に、操作部材61は、後退位置SRに位置し、ダイス44は、回転していない状態にある。パンチ41は、時刻t0以降の時間経過に伴って正弦波状のストローク特性で往動し、時刻t2に前死点PFに到達する。一方、キックアウトピン4Aは、時刻t2以前の時刻t1に、既に前進位置KFから後退位置KRまで戻っている。操作部材61は、パンチ41が往動している間を通して、後退位置SRを維持する。
【0052】
パンチ41は、往動時に、圧造加工作業に代えて、ワークWの中心軸線CLに対する傾斜姿勢を変更する姿勢変更作業を実施する。具体的には、
図4の矢印A1に示されるように、パンチ41は、ワークWが中心軸線CLに対して平行する水平姿勢を、ワークWが中心軸線CLに対して鉛直方向に直交する直立姿勢に変更する。本願出願人は、ワークWの中心軸線CLに対する傾斜姿勢を変更する圧造工程の構成例を、特開2018-024007号に開示済みである。第3圧造工程(#3)は、上記した開示済みの構成と、第1実施形態の金型回転装置5と、を複合させた構成になっている。
【0053】
さらに、パンチ41は、時刻t2に復動を開始し、時刻t9に後死点PRに戻る。パンチ41が復動する途中の時刻t3に、キックアウトピン4Aが後退位置KRから前進を開始する。続いて、時刻t4に、操作部材61が後退位置SRから前進を開始し、時刻t5に、操作部材61が前進位置SFに到達する。時刻t5において、
図3の矢印M1~M3に示される動作が終了しており、ダイス44は、25°回転した状態となっている。これにより、ワークWは、
図4の矢印A2に示されるように、直立姿勢から25°傾斜した傾斜姿勢に変更される。要約すると、回転駆動機構6は、パンチ41の復動時にダイス44を中心軸線CLの周りに回転させることにより、ワークWの中心軸線CLの周りの回転姿勢を変更する姿勢変更作業をダイス44に実施させる。
【0054】
時刻t5よりもわずかに遅い時刻t6に、キックアウトピン4Aが前進位置KFに到達する。これにより、傾斜姿勢のワークWは、ダイス44の前側に突き出される。この後、傾斜姿勢のワークWは、ワーク搬送部49によって次の第4圧造工程(#4)に搬送される。第4圧造工程以降(#4~#6)では、ワークWは、傾斜姿勢を維持した状態で圧造加工作業および搬送が行われる。時刻t6の後から時刻t7にかけて、操作部材61が前進位置SFから後退位置に戻る。ダイス44は、ワークWが突き出された後に25°逆回転して元の状態に戻り、次のワークWの搬入を待ち受ける。
【0055】
ここで、ワークWが直立姿勢から25°傾斜した傾斜姿勢は、ワーク搬送部49のフィンガ対の形状および動作形態に適合している。つまり、ワークWの傾斜姿勢は、フィンガ対が安定して掴み、さらには搬送するのに好適な姿勢となっている。これによれば、搬送途中のワークWが落下したり、姿勢が変化して下流工程のダイス44に保持されなくなったりする不具合が抑制される。結果として、圧造機1の動作信頼性が高められる。これに対比して、回転駆動機構6を備えない従来の圧造機では、フィンガ対が直立姿勢のワークWの側面を挟んで掴むことになるため、ワークWが真下に滑り落ちるおそれが大きい。
【0056】
第1実施形態の金型回転装置5において、回転駆動機構6は、ダイス44を中心軸線CLの周りに回転させることができるので、ダイス44の回転動作を圧造加工作業と異なる作業用途に適用することができる。例えば、金型回転装置5を適用した圧造機1において、ダイス44の回転動作をワークWの姿勢変更作業に適用して、ワークWの落下を抑制することができる。
【0057】
5.第2実施形態の金型回転装置5A
次に、第2実施形態の金型回転装置5Aについて、
図6および
図7を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態の金型回転装置5Aは、圧造機1のいずれかの圧造工程に適用することができる。ただし、第2実施形態において、回転駆動機構6Aは、回転金型となるパンチ41Aを回転させて、切削加工作業を行わせる。以下、詳述する。
【0058】
図6に示されるように、パンチ41Aは、先端に切削刃41Kを有する。切削刃41Kは、中心軸線CLを中心とする傘形状に形成されており、放射状に延びる複数の刃をもつ。回転駆動機構6Aは、ラム3に搭載されており、パンチ41Aの周りに操作部材61を有する。そして、パンチ41Aおよび操作部材61の一方にらせん溝62が設けられ、パンチ41Aおよび操作部材61の他方にガイドピン63が設けられる。回転駆動機構6Aは、第1実施形態と同様の構成を有し、同様の作用によりパンチ41Aを中心軸線CLの周りに回転させる。一方、ダイス44Aに保持されるワークWAは、中心軸線CLを中心とする回転対称形状であり、パンチ41Aに対向する面に有底の丸穴WHを有する。
【0059】
図7には、ワークWAの切削加工作業を実施するときのタイムチャートが示されている。
図7の横軸は、共通の時間軸tである。3つのグラフは、上から順番にパンチ41Aのストローク特性、キックアウトピン4Aの動作特性、および回転駆動機構6Aの操作部材61の動作特性を示している。
図7の時刻t10において、パンチ41は後死点PRに位置し、キックアウトピン4Aは前進位置KFに位置し、操作部材61は後退位置SRに位置する。パンチ41Aが前死点PFに到達する時刻t12よりも以前の時刻t11に、キックアウトピン4Aは、既に前進位置KFから後退位置KRまで戻っている。
【0060】
同じ時刻t11に、操作部材61は後退位置SRから前進を開始し、時刻t12に、操作部材61は前進位置SFに到達する。これにより、時刻t11から時刻t12までの間、パンチ41Aは回転動作する。そして、パンチ41Aが前死点PFに到達する以前に、切削刃41Kは、ワークWAの丸穴WHの前部内縁に当接して切削加工作業を実施する。これにより、ワークWAの丸穴WHの前部内縁に、面取り部WMが形成される。
【0061】
この後、パンチ41は、時刻t12に復動を開始し、時刻t19に後死点PRに戻る。キックアウトピン4Aは、時刻t13から時刻t14の間に後退位置KRから前進位置KFまで移動して、ワークWAを突き出す。一方、操作部材61は、時刻t14から時刻t15の間に前進位置SFから後退位置SRまで移動し、パンチ41Aが逆回転して元の状態に戻る。
【0062】
第2実施形態の金型回転装置5Aにおいて、回転駆動機構6Aは、パンチ41Aを往動時に中心軸線CLの周りに回転させることにより、前記パンチ41Aに圧造加工作業に替わる切削加工作業を実施させる。なお、パンチ41Aが回転して実施する切削加工作業は、上記した面取り加工に限定されない。例えば、パンチ41Aの先端にドリル形状の切削刃を設け、ワークWAに対して切削による穴あけ加工を行うことができる。
【0063】
さらに、金型回転装置5Aを適用した圧造機1では、圧造加工作業と切削加工作業とを併用することができる。したがって、圧造機1で製造可能なワークWAの形状範囲が拡張される。
【0064】
6.第3実施形態の金型回転装置5B
次に、第3実施形態の金型回転装置5Bについて、
図8および
図9を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態の金型回転装置5Bは、ワークWBにねじり加工作業を実施する。この金型回転装置5Bでは、パンチ41Bが中心軸線CLに沿って往復動作しない。したがって、金型回転装置5Bは、圧造機1に適用されず、単独の装置として構成される。金型回転装置5Bは、ダイス44B、パンチ41B、および回転駆動機構6Bなどで構成される。
【0065】
ダイス44Bは、中心軸線CLを有し、図略のフレームに固定して設けられる。パンチ41Bは、中心軸線CLの延在方向の位置に設けられ、フレームに回転可能に支持されて、ダイス44Bに対向配置される。
図8に示されるように、ダイス44Bおよびパンチ41Bは、角棒形状のワークWBの端部をそれぞれ把持する。回転駆動機構6Bは、ワークWBを把持した状態のパンチ41Bを、中心軸線CLの周りに所定角度だけ回転させる。
【0066】
これにより、ダイス44Bおよびパンチ41Bは、共同してワークWBにねじり加工作業を実施する。ねじり加工作業が終了した後、ワークWBは、把持されていた部分が切断される。最終的に、
図9に示されるねじれ形状の部品Pが製造される。第3実施形態において、パンチ41Bの回転動作をねじり加工作業に適用することができる。
【0067】
7.実施形態の変形および応用
なお、第1実施形態において、駆動部8のプレート位置検出部8Dを省略し、作動液の流量に基づいて操作部材61の位置を演算により求める構成とすることができる。また、駆動部8の駆動源部84は、液圧駆動源85に限定されず、操作部材61を駆動する別種の駆動源、例えばモータなどでもよい。さらに、第1実施形態の構成とは逆に、ダイス44の外周面にらせん溝62を設け、操作部材61にガイドピン63を径方向内向きに立設してもよい。また、らせん溝62とガイドピン63の組み合わせ以外の回転駆動方式を用いることが可能である。例えば、回転可能に保持されたダイス44に径方向外向きに延びる操作レバーを設け、駆動部が操作レバーを回動操作する構成とすることができる。
【0068】
さらに、
図4の第3圧造工程(#3)において、パンチ41は往動して圧造加工作業を実施し、パンチ41の復動時にダイス44が回転して姿勢変更作業を実施するように構成することができる。また、ダイス44の回転を利用する用途は、ワークWの姿勢変更作業に限定されない。例えば、キックアウトピン4Aがヘリカルギヤの形状をもつワークを突き出す際に、ダイス44を回転させることにより、突き出しに要する操作力を低減させることができる。また、パンチ41が往動して圧造加工作業を開始する以前に、ダイス44が回転してワークWの姿勢を変更してもよい。本発明は、実施形態の構成に限定されるものではなく、上述した以外にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:圧造機 2:フレーム 3:ラム 41、41A、41B:パンチ
44、44A、44B:ダイス 49:ワーク搬送部 4A:キックアウトピン
5、5A、5B:金型回転装置 6、6A、6B:回転駆動機構
61:操作部材 62:らせん溝 63:ガイドピン
7:回転防止部 71:平面部 72:回転防止体
8:駆動部 81:操作ピン 83:駆動ピン 842:結合プレート
85:液圧駆動源 86:シリンダ 87:ピストン 8A:液源容器
8B:液路操作部 8C:作動液制御部 8D:プレート位置検出部
9:主駆動部 91:主駆動源
CL:中心軸線 W、WA、WB:ワーク WM:面取り