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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】環式化合物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/86 20060101AFI20250422BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20250422BHJP
   C07C 33/22 20060101ALI20250422BHJP
   C07C 33/32 20060101ALI20250422BHJP
   C07C 227/40 20060101ALI20250422BHJP
   C07C 229/56 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
C07C29/86
C07C29/80
C07C33/22
C07C33/32
C07C227/40
C07C229/56
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020199605
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087593
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】橘 賢也
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174482(JP,A)
【文献】特開2000-290205(JP,A)
【文献】特開2014-076973(JP,A)
【文献】国際公開第98/008806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/86
C07C 29/80
C07C 33/22
C07C 33/32
C07C 227/40
C07C 229/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離定数pKaが13~20である精製前の環式化合物と、水と、を含む原料液のpHを、10~12の範囲内の値に調整し、pH被調整液を得るpH調整工程と、
前記pH被調整液を、有機溶媒を用いる液液抽出処理に供し、前記環式化合物と前記有機溶媒とを含む抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出液を蒸留処理に供し、精製後の前記環式化合物を取り出す蒸留工程と、
を有し、
前記精製前の環式化合物は、
前記環式化合物として、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、β-フェニルエチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール、または、メチルアンスラニレートと、
不純物として、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、酪酸、安息香酸、アミノ酸、または、フマル酸と
を含むことを特徴とする環式化合物の精製方法。
【請求項2】
前記pH調整工程と前記抽出工程との間に設けられ、前記pH被調整液を吸着剤に接触させる吸着工程を有する請求項1に記載の環式化合物の精製方法。
【請求項3】
前記原料液における前記環式化合物の濃度は、0質量%超10質量%以下である請求項1または2に記載の環式化合物の精製方法。
【請求項4】
前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルアセタートまたはベンジル酢酸を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の環式化合物の精製方法。
【請求項5】
前記環式化合物は、水への20℃における溶解度が100,000mg/L以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の環式化合物の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環式化合物の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の構造を有する環式化合物は、例えば香料、化粧料、医薬品、農薬等の各種用途の原料に用いられている。これらの用途においては、原料中の不純物が用途に影響を及ぼすことから、環式化合物を十分に精製する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルカリ洗浄工程と、抽出蒸留工程と、を有するβ-フェニルエチルアルコールの精製方法が開示されている。
【0004】
このうち、アルカリ洗浄工程は、粗製β-フェニルエチルアルコールをアルカリ水溶液で洗浄する工程である。
【0005】
また、抽出蒸留工程は、アルカリ洗浄後の粗製β-フェニルエチルアルコールを抽出蒸留塔に供給するとともに、水と1,2プロパンジオールとの混合液を抽出溶媒(A)として抽出蒸留塔に供給し、抽出蒸留塔の塔頂からは揮発性の高い抽出溶媒(A)と不純物とを留出させ、塔底からはβ-フェニルエチルアルコールを取り出す工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-290205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の精製方法は、例えば酸化スチレンの水素還元による方法等の各種製造方法によって粗製されたβ-フェニルエチルアルコールを、さらに精製する方法である。
【0008】
したがって、特許文献1に記載の精製方法では、粗製β-フェニルエチルアルコールを、ある程度濃縮した状態で抽出蒸留塔に供給することが前提となっている。このため、供給される原料におけるβ-フェニルエチルアルコールの濃度が低い場合には、精製効率が低くなる場合がある。
【0009】
具体的には、高濃度の粗製β-フェニルエチルアルコールは、抽出蒸留工程において不純物を十分に除去することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、原料の濃度が低い場合でも、高純度の環式化合物を取り出すことができる環式化合物の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(5)に記載の本発明により達成される。
(1) 酸解離定数pKaが13~20である精製前の環式化合物と、水と、を含む原料液のpHを、10~12の範囲内の値に調整し、pH被調整液を得るpH調整工程と、
前記pH被調整液を、有機溶媒を用いる液液抽出処理に供し、前記環式化合物と前記有機溶媒とを含む抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出液を蒸留処理に供し、精製後の前記環式化合物を取り出す蒸留工程と、
を有し、
前記精製前の環式化合物は、
前記環式化合物として、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、β-フェニルエチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール、または、メチルアンスラニレートと、
不純物として、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、酪酸、安息香酸、アミノ酸、または、フマル酸と
を含むことを特徴とする環式化合物の精製方法。
【0012】
(2) 前記pH調整工程と前記抽出工程との間に設けられ、前記pH被調整液を吸着剤に接触させる吸着工程を有する上記(1)に記載の環式化合物の精製方法。
【0013】
(3) 前記原料液における前記環式化合物の濃度は、0質量%超10質量%以下である上記(1)または(2)に記載の環式化合物の精製方法。
【0014】
(4) 前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルアセタートまたはベンジル酢酸を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の環式化合物の精製方法。
【0015】
(5) 前記環式化合物は、水への20℃における溶解度が100,000mg/L以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の環式化合物の精製方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原料の濃度が低い場合でも、高純度の環式化合物を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る環式化合物の精製方法を説明するための工程図である。
図2図1の精製方法に用いられる精製装置の一例を示す模式図である。
図3】実施形態の変形例に係る環式化合物の精製方法を説明するための工程図である。
図4図3の精製方法に用いられる精製装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の環式化合物の精製方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る環式化合物の精製方法を説明するための工程図である。図2は、図1の精製方法に用いられる精製装置の一例を示す模式図である。
【0020】
本実施形態に係る環式化合物の精製方法では、精製前の環式化合物を精製し、高純度の環式化合物を取り出す。環式化合物は、例えば、化成品、香料、化粧料、医薬品、農薬等の各種用途の原料に用いられる。用途の実現にあたっては、原料となる環式化合物の高純度化が不可欠である。
【0021】
図1に示す環式化合物の精製方法は、pH調整工程S102と、吸着工程S104と、抽出工程S106と、濃縮工程S108と、蒸留工程S110と、を有する。
【0022】
このような精製方法は、例えば図2に示す精製装置1を用いて行われる。以下、精製装置1について説明する。
【0023】
1.精製装置
図2に示す精製装置1は、pH調整槽2と、吸着槽3と、抽出槽4と、濃縮槽5と、蒸留塔6と、を備える。なお、図2に示す精製装置1は、連続して精製処理を行う連続式の装置である。なお、本実施形態に係る環式化合物の精製方法は、バッチ式の装置を用いて行うこともできる。
【0024】
pH調整槽2は、精製前の環式化合物を含む原料液22と、pH調整剤24と、を混合する容器である。この混合により、混合液26を得る。
【0025】
吸着槽3は、吸着剤32を保持し、混合液26を吸着剤32に接触させる吸着処理を行う容器である。この吸着処理により、吸着処理済み液34を得る。
【0026】
抽出槽4は、吸着処理済み液34を抽出剤である有機溶媒42に接触させ、抽出液44を得る液液抽出処理を行う容器である。この液液抽出処理により、抽出液44の他、抽残液46を得る。
【0027】
濃縮槽5は、抽出液44に含まれる有機溶媒42を除去して濃縮する濃縮処理を行う容器である。この濃縮処理により、少なくとも一部の有機溶媒42を除去し、濃縮液52を得る。
【0028】
蒸留塔6は、濃縮液52に蒸留処理を行う容器である。この蒸留処理により、蒸留塔6の塔頂から低沸点不純物62を除去するとともに、蒸留塔6の塔底から高沸点不純物64を除去する。そして、蒸留塔6の塔中間から精製後の環式化合物を抜き出すことができる。図2では、精製後の環式化合物を「精製環式化合物66」とする。蒸留塔6は、図示しないものの、塔底に設けられたリボイラーと、塔頂に設けられたコンデンサーと、を備えている。また、蒸留塔6は、図2に示す単蒸留塔であってもよいし、図示しない多段蒸留塔であってもよい。
【0029】
以上、精製装置1について説明したが、この精製装置1は、後述する環式化合物の精製方法に用いられる装置の一例であり、説明した構成に限定されない。
【0030】
2.精製方法
次に、図1に示す環式化合物の精製方法について説明する。
【0031】
2.1.pH調整工程
pH調整工程S102では、まず、pH調整処理に供する原料液22、および、pH調整剤24をpH調整槽2に供給する。pH調整槽2では、供給された原料液22およびpH調整剤24を混合する。これにより、混合液26を得る。
【0032】
原料液22は、精製前の環式化合物と、水と、を含む。以下、精製前の環式化合物を「未精製環式化合物」という。未精製環式化合物に含まれる精製対象の環式化合物は、酸解離定数pKaが9~20の範囲内にある化合物である。酸解離定数pKaがこの範囲内にあれば、pHが高い系でも、未精製環式化合物は疎水性を維持しやすくなる。このため、pH調整槽2において混合液26のpHを高く調整した上で、pH調整後の混合液26を後述する吸着工程S104の吸着処理や後述する抽出工程S106の液液抽出処理に供したとき、吸着処理における不純物の吸着率や液液抽出処理における環式化合物の抽出率を高めやすくなる。
【0033】
なお、環式化合物の酸解離定数pKaは、好ましくは10~20であり、より好ましくは13~16である。特に、酸解離定数pKaが13~16であれば、pH調整後の混合液26のpHが酸解離定数pKaより低くなるので、上記の効果がより顕著になる。なお、混合液26(pH被調整液)のpHは、環式化合物の酸解離定数pKaより2以上低いことが好ましい。
【0034】
本実施形態で精製する環式化合物は、水への20℃における溶解度が100,000mg/L以下であるのが好ましく、50,000mg/L以下であるのがより好ましい。このような環式化合物は、十分に高い疎水性を有しているため、後述する吸着工程S104における環式化合物の純度低下を抑制することができ、かつ、後述する抽出工程S106においても環式化合物が水へ混入しにくくなる。このため、最終的な精製環式化合物66の高収率化および高純度化をより確実に図ることができる。
【0035】
原料液22における環式化合物の濃度は、特に限定されないが、0質量%超10.0質量%以下であるのが好ましく、0.05質量%以上5.0質量%以下であるのがより好ましく、0.10質量%以上3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。本実施形態に係る環式化合物の精製方法は、このような比較的低濃度の原料液22を用いた場合でも、優れた収率で環式化合物を精製することができる。また、原料液22における環式化合物の濃度が前記範囲内であれば、水の含有比率を十分に高めることができるので、本工程によって得られる混合液26を吸着工程S104に供する場合、混合液26と吸着剤32との接触機会が十分に高くなり、吸着効率を十分に高めることができる。
【0036】
また、原料液22における水の含有割合は、特に限定されないが、50質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましい。原料液22がこのような割合で水を含むことにより、例えば吸着工程S104において、不純物の吸着効率を高めやすくなる一方、環式化合物が吸着されてしまう確率を低下させることができる。また、本実施形態に係る環式化合物の精製方法は、このように水を多く含む原料液22を濃縮することなく用いることができるので、工数の削減といった観点から有用である。
【0037】
pH調整剤24は、原料液22に添加され、pHを変化させる。これにより、原料液22のpHを10~12の範囲内に調整する。このようなpH調整処理の結果、pHが10~12の混合液26を得る。なお、pH調整剤24の添加前から原料液22のpHが10~12の範囲内である場合には、pH調整剤24の添加は不要である。
【0038】
なお、未精製環式化合物は、化石資源由来の化合物であってもよいが、バイオマス由来の化合物であるのが好ましい。バイオマスとは、植物由来の有機性資源を指す。具体的には、デンプンやセルロース等の形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体、植物体や動物体を加工してできる製品等が挙げられる。未精製環式化合物としてバイオマス由来の化合物を用いることにより、精製後の環式化合物は、地球温暖化の抑制に寄与するものとなる。
【0039】
2.2.吸着工程
吸着工程S104では、吸着槽3に吸着剤32を保持させた状態で、吸着槽3に混合液26を供給する。これにより、吸着剤32に混合液26を接触させる。その結果、未精製環式化合物に含まれている不純物を吸着剤32に吸着させ、吸着処理済み液34を得る。
【0040】
吸着剤32としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、活性白土、モレキュラーシーブ、モレキュラーシービングカーボン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
吸着工程S104に供される混合液26は、前述したように、pHが10~12に設定されている。混合液26のpHをこの範囲内に設定したとき、混合液26中の環式化合物は、十分な疎水性を示す。このため、環式化合物は吸着剤32に吸着されにくくなる。これにより、混合液26に含まれる不純物を、吸着剤32に効率よく吸着させ、最終的に環式化合物の高純度化を図ることができる。なお、混合液26のpHが前記下限値を下回ると、不純物の吸着率が低下し、環式化合物の吸着率が高くなるため、最終的な環式化合物の純度および収率が低下する。一方、混合液26のpHが前記上限値を上回ると、後述する抽出工程S106における環式化合物の抽出率が低下し、最終的に環式化合物の収率が低下する。
【0042】
なお、混合液26のpHは、好ましくは10.0~11.5とされ、より好ましくは10.0~11.0とされる。
また、吸着工程S104は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0043】
2.3.抽出工程
抽出工程S106では、抽出槽4において、吸着処理済み液34を抽出剤である有機溶媒42に接触させ、抽出液44を得る液液抽出処理を行う。液液抽出処理は、抽出剤に対する溶解性の違いを利用して、吸着処理済み液34中に含まれている環式化合物を選択的に抽出する処理である。この液液抽出処理により、環式化合物を有機溶媒42に選択的に移行させるとともに、不純物を吸着処理済み液34中の水に選択的に移行させることができる。そして、環式化合物および有機溶媒42を含む抽出液44と、不純物および水を含む抽残液46と、を得る。
【0044】
有機溶媒42としては、水と混和しにくい溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ヘキサン、n-ブタノール、イソブタノール、イソ-n-ペンタノール、イソペンチルアルコール、n-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-ブタノン、プロピレングリコールモノメチルアセタート、ベンジル酢酸等が挙げられる。
【0045】
このうち、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルアセタートまたはベンジル酢酸が好ましく用いられる。これらの溶媒は、水との混和性が特に低く、かつ、幅広い極性の環式化合物に対して溶解力が高いため、環式化合物の抽出率を高めることができ、有機溶媒42として特に有用である。
【0046】
有機溶媒42の添加量は、特に限定されないが、吸着処理済み液34に対して10質量%以上の割合であるのが好ましく、10~100質量%の割合であるのがより好ましく、20~90質量%の割合であるのがさらに好ましい。有機溶媒42の添加量を前記範囲内に設定することにより、有機溶媒42と環式化合物との接触機会および水と不純物との接触機会がそれぞれ十分に得られる。その結果、環式化合物の抽出率を特に高めることができ、最終的に、精製環式化合物66の高収率化および高純度化をより確実に図ることができる。
【0047】
なお、抽出工程S106に供される吸着処理済み液34も、pHが10~12に設定されているのが好ましい。吸着処理済み液34のpHをこの範囲内に設定することにより、吸着処理済み液34中の環式化合物は十分な疎水性を有するため、液液抽出処理において環式化合物と不純物の分離をより精度よく行うことができる。その結果、環式化合物の抽出率をより高めることができ、最終的に、精製環式化合物66の高収率化および高純度化をより確実に図ることができる。
【0048】
なお、吸着処理済み液34のpHは、好ましくは10.0~11.5とされ、より好ましくは10.0~11.0とされる。
【0049】
2.4.濃縮工程
濃縮工程S108では、濃縮槽5において、抽出液44に含まれる有機溶媒42を除去して濃縮する濃縮処理を行う。この濃縮処理により、少なくとも一部の有機溶媒42を除去し、濃縮液52を得る。
【0050】
濃縮処理は、抽出液44に含まれる有機溶媒42を蒸発させる処理である。濃縮処理の具体的な操作としては、例えば、加熱、減圧、ガス吹付等が挙げられ、これらのうちの1種または複数を組み合わせた操作が用いられる。
【0051】
このうち、加熱操作が好ましく用いられる。加熱温度は、有機溶媒42を揮発させ得る温度であり、かつ、環式化合物の沸点を下回る温度であれば、特に限定されないが、雰囲気圧力に応じて適宜設定される。例えば、雰囲気圧力が大気圧(50~110kPa)である場合、加熱温度は70~100℃であるのが好ましく、80~100℃であるのがより好ましい。また、雰囲気圧力が大気圧未満(50kPa未満)である場合、加熱温度は30~70℃であるのが好ましく、40~60℃であるのがより好ましい。なお、大気圧未満にした場合の圧力は、減圧コスト等を考慮した場合、20~50kPaであるのが好ましい。
【0052】
加熱時間は、特に限定されないが、1~120分であるのが好ましく、5~90分であるのがより好ましい。
【0053】
また、図2に示す精製装置1は、濃縮処理で蒸発させた有機溶媒42を、抽出槽4に戻すように構成されている。これにより、有機溶媒42を再利用することができるので、精製コストの削減を図ることができる。
なお、濃縮工程S108は、必要に応じて設けられればよく、抽出液44における環式化合物の濃度が十分に高い場合には、省略されていてもよい。
【0054】
2.5.蒸留工程
蒸留工程S110では、蒸留塔6において、濃縮液52に蒸留処理を行う。この蒸留処理により、蒸留塔6の塔頂から低沸点不純物62を除去するとともに、蒸留塔6の塔底から高沸点不純物64を除去する。そして、蒸留塔6の塔中間から精製環式化合物66を抜き出すことができる。
【0055】
蒸留処理は、物質の沸点の違いを利用して精製環式化合物66を分離する処理である。図2に示す蒸留塔6は、精製環式化合物66と、低沸点不純物62および高沸点不純物64と、を分離することができるように、サイドカットとして精製環式化合物66を取り出すことができるようになっている。
【0056】
サイドカット位置は、蒸留塔6の塔頂および塔底以外であれば、特に限定されず、環式化合物の沸点等に応じて適宜設定される。
【0057】
また、蒸留塔6の塔底温度および減圧度は、濃縮液52に含まれる環式化合物や有機溶媒42の種類、濃度等を考慮して、適宜設定される。一例として、塔底温度は、100~250℃であるのが好ましい。また、塔内減圧度は、絶対圧で110kPa以下であるのが好ましく、5~50kPaであるのがより好ましい。
【0058】
精製環式化合物66としては、例えば、芳香族アルコール類、芳香族エステル類、芳香族アルデヒド類、芳香族エーテル類等が挙げられる。このうち、精製環式化合物66は、芳香族アルコール類または芳香族エステル類であるのが好ましい。これらは、香料として有用な物質であり、かつ、不純物が香りに比較的強く影響を及ぼす物質である。したがって、本実施形態によれば、香料として特に有用な芳香族アルコール類または芳香族エステル類を精製することができる。
【0059】
芳香族アルコール類としては、例えば、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、β-フェニルエチルアルコール(フェネチルアルコール)、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール等が挙げられる。
【0060】
芳香族エステル類としては、例えば、メチルアンスラニレート(アントラニル酸メチル)、エチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート(メチルN-メチルアンスラニレート)等が挙げられる。
【0061】
なお、これら芳香族アルコール類および芳香族エステル類の酸解離定数pKaおよび沸点は、以下の表1の通りである。
【0062】
【表1】
【0063】
一方、低沸点不純物62および高沸点不純物64のような各種不純物としては、例えば、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、酪酸、安息香酸、アミノ酸、フマル酸等、またはこれらの誘導体が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が含まれ得る。
【0064】
精製環式化合物66中の不純物の含有比率は、特に限定されないが、1.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、精製環式化合物66は、十分に精製されたものとなる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る環式化合物の精製方法は、少なくとも、pH調整工程S102と、吸着工程S104と、抽出工程S106と、蒸留工程S110と、を有する。pH調整工程S102では、酸解離定数pKaが9~20である精製前の環式化合物と、水と、を含む原料液22のpHを、10~12の範囲内の値に調整し、pH被調整液である混合液26を得る。吸着工程S104は、pH調整工程S102と抽出工程S106との間に設けられ、混合液26を吸着剤32に接触させ、吸着処理済み液34を得る。抽出工程S106では、pHを前記範囲内に設定したpH被調整液である吸着処理済み液34を、有機溶媒を用いた液液抽出処理に供し、環式化合物と有機溶媒42とを含む抽出液44を得る。蒸留工程S110では、抽出液44を蒸留処理に供し、精製環式化合物66(精製後の環式化合物)を取り出す。
【0066】
このような構成によれば、原料液22が水を含み、かつ、環式化合物の酸解離定数pKaに対してpH被調整液である混合液26のpHを最適化したことにより、原料液22における精製前の環式化合物(原料)の濃度が低い場合でも、環式化合物が疎水性を維持しやすくなる。このため、吸着工程S104における不純物の吸着効率が高くなり、環式化合物の高純度化を効率よく図ることができる。このため、高純度の環式化合物を比較的低コストで製造することができる。
【0067】
なお、本明細書における「pH被調整液」とは、pH調整工程S102でpHが調整され、抽出工程S106に供されるまでの供給液のことを指す。本実施形態に係る環式化合物の精製方法は、吸着工程S104を有しているので、吸着工程S104に供される混合液26、および、抽出工程S106に供される吸着処理済み液34が、それぞれpH被調整液に相当する。
【0068】
3.変形例
次に、上述した実施形態の変形例に係る精製方法について説明する。
図3は、実施形態の変形例に係る環式化合物の精製方法を説明するための工程図である。図4は、図3の精製方法に用いられる精製装置の一例を示す模式図である。
【0069】
以下、変形例について説明するが、以下の説明では、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図3および図4において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0070】
図3に示す精製方法は、吸着工程S104が省略されている以外、図1に示す精製方法と同様である。また、図4に示す精製装置1Aは、吸着槽3が省略されている以外、図2に示す精製装置1と同様である。つまり、図3に示す精製方法は、pH調整工程S102と、抽出工程S106と、濃縮工程S108と、蒸留工程S110と、を有する。また、図4に示す精製装置1Aは、図2に示す吸着槽3が省略され、pH調整槽2で得られた混合液26が、抽出槽4に供給されるように構成されている。
以下、図3に示す精製方法の各工程について説明する。
【0071】
本変形例では、まず、前記実施形態と同様にして、pH調整工程S102を行い、混合液26を得る。
次に、混合液26に対して抽出工程S106を行い、抽出液44を得る。本変形例に係る環式化合物の精製方法は、吸着工程S104を有していないので、抽出工程S106に供される混合液26がpH被調整液に相当する。
【0072】
抽出工程S106では、抽出槽4において、混合液26を抽出剤である有機溶媒42に接触させ、抽出液44を得る液液抽出処理を行う。液液抽出処理は、抽出剤に対する溶解性の違いを利用して、混合液26中に含まれている環式化合物を選択的に抽出する処理である。この液液抽出処理により、環式化合物を有機溶媒42に選択的に移行させるとともに、不純物を混合液26中の水に選択的に移行させることができる。そして、環式化合物および有機溶媒42を含む抽出液44と、不純物および水を含む抽残液46と、を得る。
【0073】
抽出工程S106に供される混合液26は、前述したように、pHが10~12に設定されている。混合液26のpHをこの範囲内に設定したとき、混合液26中の環式化合物は十分な疎水性を有するため、液液抽出処理において環式化合物と不純物の分離をより精度よく行うことができる。その結果、環式化合物の抽出率をより高めることができ、最終的に、精製環式化合物66の高収率化および高純度化をより確実に図ることができる。
【0074】
なお、混合液26のpHは、好ましくは10.0~11.5とされ、より好ましくは10.0~11.0とされる。
【0075】
取り出された精製環式化合物66は、前述したように、例えば、化成品、香料、化粧料、医薬品、農薬等の原材料または中間体として特に有用なものである。なお、原材料には、中間体を含む。
【0076】
以上、本発明の環式化合物の精製方法を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の環式化合物の精製方法は、前記実施形態に任意の工程が付加されたものであってもよい。
【実施例
【0077】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
4.環式化合物の製造
(実施例1)
実施例1では、図2に示す精製装置を用いて精製前のβ-フェニルエチルアルコールを精製した。
【0078】
具体的には、まず、精製前のβ-フェニルエチルアルコールと水とを含む原料液に、pH調整剤を添加するpH調整処理を行った。これにより、原料液のpHを10に調整してなる混合液を得た。なお、pH調整剤には、水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0079】
次に、得られた混合液に対し、吸着剤に接触させる吸着処理を行った。これにより、吸着処理済み液を得た。吸着剤には、活性白土を用いた。
次に、得られた吸着処理済み液に対し、抽出剤である有機溶媒を接触させる液液抽出処理を行った。これにより、抽出液を得た。有機溶媒には、吸着処理済み液に対して50質量%の酢酸エチルを用いた。
【0080】
次に、得られた抽出液に対し、大気圧下、90℃で20分間加熱する濃縮処理を行うことにより、有機溶媒を除去した。これにより、濃縮液を得た。
次に、得られた濃縮液に対し、蒸留処理を行った。これにより、不純物を除去し、精製後のβ-フェニルエチルアルコールを得た。蒸留塔の塔底温度は195℃、塔内減圧度は30kPaとした。
【0081】
(実施例2)
実施例2では、図4に示す精製装置を用いて精製前のβ-フェニルエチルアルコールを精製した。
【0082】
具体的には、まず、精製前のβ-フェニルエチルアルコールと水とを含む原料液に、pH調整剤を添加するpH調整処理を行った。これにより、原料液のpHを10に調整してなる混合液を得た。なお、pH調整剤には、水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0083】
次に、得られた混合液に対し、抽出剤である有機溶媒を接触させる液液抽出処理を行った。これにより、抽出液を得た。有機溶媒には、吸着処理済み液に対して50質量%の酢酸エチルを用いた。
【0084】
次に、得られた抽出液に対し、大気圧下、90℃で20分間加熱する濃縮処理を行うことにより、有機溶媒を除去した。これにより、濃縮液を得た。
次に、得られた濃縮液に対し、蒸留処理を行った。これにより、不純物を除去し、精製後のβ-フェニルエチルアルコールを得た。蒸留塔の塔底温度は195℃、塔内減圧度は30kPaとした。
【0085】
(実施例3~12)
精製条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1または2と同様にして精製後のβ-フェニルエチルアルコールを得た。
【0086】
(比較例1)
pH調整処理を省略した以外は、実施例1と同様にして精製後のβ-フェニルエチルアルコールを得た。
【0087】
(比較例2)
pH調整処理を省略した以外は、実施例2と同様にして精製後のβ-フェニルエチルアルコールを得た。
【0088】
(参考例1)
市販されているβ-フェニルエチルアルコールの試薬を用意した。
【0089】
(実施例7)
実施例7では、図2に示す精製装置を用いて精製前のアントラニル酸メチル(メチルアンスラニレート)を精製した。
具体的には、表3に示す精製条件で行った以外は、実施例1と同様にして精製後のアントラニル酸メチルを得た。
【0090】
(実施例8)
実施例8では、図4に示す精製装置を用いて精製前のアントラニル酸メチル(メチルアンスラニレート)を精製した。
具体的には、表3に示す精製条件で行った以外は、実施例2と同様にして精製後のアントラニル酸メチルを得た。
【0091】
(実施例9~12)
精製条件を表3に示すように変更した以外は、実施例7または8と同様にして精製後のアントラニル酸メチルを得た。
【0092】
(比較例3)
pH調整処理を省略した以外は、実施例7と同様にして精製後のアントラニル酸メチルを得た。
【0093】
(比較例4)
pH調整処理を省略した以外は、実施例8と同様にして精製後のアントラニル酸メチルを得た。
【0094】
(参考例2)
市販されているアントラニル酸メチルの試薬を用意した。
【0095】
(実施例13)
実施例13では、図2に示す精製装置を用いて精製前のシンナミックアルコールを精製した。
具体的には、表4に示す精製条件で行った以外は、実施例1と同様にして精製後のシンナミックアルコールを得た。
【0096】
(実施例14)
実施例14では、図4に示す精製装置を用いて精製前のシンナミックアルコールを精製した。
具体的には、表4に示す精製条件で行った以外は、実施例2と同様にして精製後のシンナミックアルコールを得た。
【0097】
(実施例15~18)
精製条件を表4に示すように変更した以外は、実施例13または14と同様にして精製後のシンナミックアルコールを得た。
【0098】
(比較例5)
pH調整処理を省略した以外は、実施例13と同様にして精製後のシンナミックアルコールを得た。
【0099】
(比較例6)
pH調整処理を省略した以外は、実施例14と同様にして精製後のシンナミックアルコールを得た。
【0100】
(参考例3)
市販されているシンナミックアルコールの試薬を用意した。
【0101】
5.環式化合物の評価
5.1.β-フェニルエチルアルコールの評価
各実施例および各比較例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコール、ならびに参考例として用意したβ-フェニルエチルアルコールの試薬について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、β-フェニルエチルアルコールの純度を測定した。なお、純度は、回収した物質の全質量に対するβ-フェニルエチルアルコールの質量の割合(単位:質量%)とした。
【0102】
測定条件は、以下の通りである。
<β-フェニルエチルアルコールのHPLC分析条件>
カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II(φ4.6mm×250mm)ナカライテスク社製
移動相:水/メタノール/過塩素酸=4/1/0.0075(vol/vol/vol)イソクラティック溶出
流量:1mL/mmin
カラム温度:40℃
検出方法:フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(210nm)
測定結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から明らかなように、各比較例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールは、各実施例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールに比べて純度が低かった。また、イソ酪酸、酢酸、フマル酸等の有機酸、硫酸イオンのようなアニオン、ナトリウムイオンやアンモニウムイオンのようなカチオンが、不純物として検出された。さらに、各比較例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールからは、参考例として用意した試薬と比較して、不快な臭気が確認された。
【0105】
一方、各実施例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールは、十分な高純度であることが認められた。また、各比較例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールが含有していた不純物についても、ほとんど検出されなかった。さらに、各実施例で得られた精製後のβ-フェニルエチルアルコールからは、前述した不快な臭気が確認できなかった。
【0106】
5.2.アントラニル酸メチルの評価
各実施例および各比較例で得られた精製後のアントラニル酸メチル、ならびに参考例として用意したアントラニル酸メチルの試薬について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、アントラニル酸メチルの純度を測定した。なお、純度は、回収した物質の全質量に対するアントラニル酸メチルの質量の割合(単位:質量%)とした。
【0107】
測定条件は、前述したβ-フェニルエチルアルコールの測定条件と同様である。測定結果を表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3から明らかなように、各比較例で得られた精製後のアントラニル酸メチルは、各実施例で得られた精製後のアントラニル酸メチルに比べて純度が低かった。また、各比較例で得られた精製後のアントラニル酸メチルからは、参考例として用意した試薬と比較して、不快な臭気が確認された。
【0110】
一方、各実施例で得られた精製後のアントラニル酸メチルは、十分な高純度であることが認められた。また、各比較例で得られた精製後のアントラニル酸メチルが含有していた不純物についても、ほとんど検出されなかった。さらに、各実施例で得られた精製後のアントラニル酸メチルからは、前述した不快な臭気が確認できなかった。
【0111】
5.3.シンナミックアルコールの評価
各実施例および各比較例で得られた精製後のシンナミックアルコール、ならびに参考例として用意したシンナミックアルコールの試薬について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、シンナミックアルコールの純度を測定した。なお、純度は、回収した物質の全質量に対するシンナミックアルコールの質量の割合(単位:質量%)とした。
【0112】
測定条件は、前述したシンナミックアルコールの測定条件と同様である。測定結果を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
表4から明らかなように、各比較例で得られた精製後のシンナミックアルコールは、各実施例で得られた精製後のシンナミックアルコールに比べて純度が低かった。また、各比較例で得られた精製後のシンナミックアルコールからは、参考例として用意した試薬と比較して、不快な臭気が確認された。
【0115】
一方、各実施例で得られた精製後のシンナミックアルコールは、十分な高純度であることが認められた。また、各比較例で得られた精製後のシンナミックアルコールが含有していた不純物についても、ほとんど検出されなかった。さらに、各実施例で得られた精製後のシンナミックアルコールからは、前述した不快な臭気が確認できなかった。
【0116】
以上のことから、本発明によれば、投入される原料液中の原料の濃度が低い場合でも、環式化合物の高純度化が効率よく図られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0117】
1 精製装置
1A 精製装置
2 pH調整槽
3 吸着槽
4 抽出槽
5 濃縮槽
6 蒸留塔
22 原料液
24 pH調整剤
26 混合液
32 吸着剤
34 吸着処理済み液
42 有機溶媒
44 抽出液
46 抽残液
52 濃縮液
62 低沸点不純物
64 高沸点不純物
66 精製環式化合物
S102 pH調整工程
S104 吸着工程
S106 抽出工程
S108 濃縮工程
S110 蒸留工程
図1
図2
図3
図4