(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20250422BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
(21)【出願番号】P 2021079950
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】北谷 司
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6863495(JP,B1)
【文献】特開2009-040156(JP,A)
【文献】特表2018-529565(JP,A)
【文献】特開2017-109592(JP,A)
【文献】特開2018-043628(JP,A)
【文献】特開2019-043308(JP,A)
【文献】特開2021-133731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に配された第1ショルダー周方向溝を含み、
前記複数の陸部は、前記第1トレッド端を含む第1ショルダー陸部を含み、
前記第1ショルダー陸部には、前記第1ショルダー周方向溝から前記第1トレッド端を超えた位置まで延びる複数の第1ショルダーサイプ
と、前記第1ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向内側で途切れる複数のショルダー途切れサイプとが設けられ、
前記第1ショルダーサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記面取り部は、トレッド平面視において、面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなって
おり、
前記ショルダー途切れサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の40%~70%である、
タイヤ。
【請求項2】
前記面取り部は、前記面取り幅が最小となる最小面取り幅部を含み、
前記最小面取り幅部は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記面取り部は、前記面取り幅が最大となる最大面取り幅部を含み、
前記最大面取り幅部は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向外側に位置している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1ショルダー陸部には、溝幅が2.0mmを超える溝が設けられていない、請求項
1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の陸部は、前記第1ショルダー周方向溝を介して前記第1ショルダー陸部と隣接する第1ミドル陸部を含み、
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の第1ミドルサイプが設けられ、
前記第1ミドルサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記第1ミドルサイプの前記面取り部は、トレッド平面視の面取り幅がタイヤ軸方向内側に向かって大きくなる内側拡幅部と、前記内側拡幅部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなる外側拡幅部とを含む、請求項
1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記内側拡幅部の最大の前記面取り幅は、前記外側拡幅部の最大の前記面取り幅よりも大きい、請求項
5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1ショルダーサイプ及び前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項
5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1ミドルサイプのタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記第1ショルダーサイプのタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい、請求項
5ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショルダー陸部に複数のショルダーサイプが設けられた空気入りタイヤが種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショルダーサイプは、接地時のピッチ音が小さい傾向があり、ノイズ性能の向上に寄与し得る。一方、ショルダーサイプは、ウェット性能への寄与が小さく、改善が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ノイズ性能及びウェット性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に配された第1ショルダー周方向溝を含み、前記複数の陸部は、前記第1トレッド端を含む第1ショルダー陸部を含み、前記第1ショルダー陸部には、前記第1ショルダー周方向溝から前記第1トレッド端を超えた位置まで延びる複数の第1ショルダーサイプが設けられ、前記第1ショルダーサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、前記面取り部は、トレッド平面視において、面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなっている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記面取り部は、前記面取り幅が最小となる最小面取り幅部を含み、前記最小面取り幅部は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置しているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記面取り部は、前記面取り幅が最大となる最大面取り幅部を含み、前記最大面取り幅部は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向外側に位置しているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ショルダー陸部には、前記第1ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向内側で途切れる複数のショルダー途切れサイプが設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ショルダー陸部には、溝幅が2.0mmを超える溝が設けられていないのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記第1ショルダー周方向溝を介して前記第1ショルダー陸部と隣接する第1ミドル陸部を含み、前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の第1ミドルサイプが設けられ、前記第1ミドルサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、前記第1ミドルサイプの前記面取り部は、トレッド平面視の面取り幅がタイヤ軸方向内側に向かって大きくなる内側拡幅部と、前記内側拡幅部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなる外側拡幅部とを含むのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記内側拡幅部の最大の前記面取り幅は、前記外側拡幅部の最大の前記面取り幅よりも大きいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ショルダーサイプ及び前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ミドルサイプのタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記第1ショルダーサイプのタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きいのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ノイズ性能及びウェット性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の第1ショルダー陸部及び第1ミドル陸部の拡大図である。
【
図7】
図1の第2ショルダー陸部及び第2ミドル陸部の拡大図である。
【
図9】トレッド部の接地時の接地面形状を示す拡大図である。
【
図10】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0018】
図1に示されるように、本発明のトレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、これらの周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3及び5つの陸部4で構成された所謂5リブのタイヤとして構成されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態のトレッド部2は、例えば、車両への装着の向きが指定されている。これにより、第1トレッド端T1は、車両装着時に車両外側に位置することが意図されている。第2トレッド端T2は、車両装着時に車両内側に位置することが意図されている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されず、車両への装着の向きが指定されないものでも良い。
【0020】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の50%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面(以下、「50%荷重時接地面」という場合がある。)の端に相当する。
【0021】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0025】
周方向溝3は、複数の周方向溝3のうち、最も第1トレッド端T1側に配された第1ショルダー周方向溝5を含む。さらに、本実施形態の周方向溝3は、第2ショルダー周方向溝6、第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8を含む。第2ショルダー周方向溝6は、複数の周方向溝3のうち、最も第2トレッド端T2側に配されている。第1クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に配されている。第2クラウン周方向溝8は、第2ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に配されている。
【0026】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~30%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝7又は第2クラウン周方向溝8の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0027】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0028】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0%~8.5%であるのが望ましい。本実施形態では、第1ショルダー周方向溝5が、複数の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。
【0029】
複数の陸部4は、第1トレッド端T1を含む第1ショルダー陸部11を含む。第1ショルダー陸部11は、第1ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されている。また、本実施形態において、複数の陸部4は、第2ショルダー陸部12、第1ミドル陸部13、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15を含む。第2ショルダー陸部12は、第2トレッド端T2を含み、第2ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されている。第1ミドル陸部13は、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝7との間に区分されている。第2ミドル陸部14は、第2ショルダー周方向溝6と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝7と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。
【0030】
図2には、第1ショルダー陸部11及び第1ミドル陸部13の拡大図が示されている。
図4に示されるように、第1ショルダー陸部11には、サイプ9が設けられている。具体的には、第1ショルダー陸部11には、第1ショルダー周方向溝5から第1トレッド端T1を超えた位置まで延びる複数の第1ショルダーサイプ20が設けられている。
【0031】
図3には、本実施形態におけるサイプ9の一態様を示す断面図が示されている。
図4には、本実施形態におけるサイプ9の別の一態様を示す断面図が示されている。
図3及び
図4に示されるように、本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合って略平行に延びる2つのサイプ壁9w間の幅W2が2.0mm以下であるものを意味する。また、「略平行」とは、2つのサイプ壁9wの間の角度が10°以下である態様を意味する。サイプ9の幅W2は、望ましくは1.5mm以下であり、より望ましい態様では0.4~1.0mmとされる。また、サイプ9の全深さd1は、例えば、3.0~5.5mmとされる。
【0032】
図3に示されるように、サイプ9は、例えば、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部16で形成されても良い。以下、サイプエッジの全体が面取り部16で構成されたサイプ9を面取りサイプという場合がある。面取り部16は、接地面とサイプ壁9wとに連なる傾斜面17を含んで構成される。サイプ9の深さ方向に対する傾斜面17の角度は、例えば、30~60°である。面取り幅W3は、例えば、0.3~3.0mmである。なお、前記面取り幅W3は、1つのサイプエッジに設けられた傾斜面17のトレッド平面視における幅(サイプの長さ方向と直交する方向の幅)を意味する。
【0033】
面取りサイプの開口幅は、2.0mmを超えても良い。また、本発明において、サイプ9の底部には、幅が2.0mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0034】
図4に示されるように、サイプ9は、接地面の開口部から底部まで一定の幅で延びるものでも良い。本明細書において、サイプ9のサイプエッジの全体が
図4で示される形状で構成されたサイプを非面取りサイプという場合がある。なお、本明細書において、陸部の接地面とサイプ壁9wとの間に形成される稜線10の幅が0.3mm未満のものは、面取り部が構成されていないものとして扱うものとする。また、本明細書において、
図3で示される断面形状と、
図4で示される断面形状とを含んだ1つのサイプ9を混合サイプという場合がある。
【0035】
図5には、第1ショルダーサイプ20をその中心線で切断した拡大斜視図が示されている。
図2及び
図5に示されるように、第1ショルダーサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジの少なくとも一方、本実施形態では両方について、少なくとも一部が面取り部22で構成されている。また、第1ショルダーサイプ20の面取り部22は、トレッド平面視において、面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなっている。本発明では、上記の構成を採用したことによって、ノイズ性能及びウェット性能を向上させることができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0036】
本発明では、第1ショルダー陸部11に複数の第1ショルダーサイプ20が設けられているため、第1ショルダー陸部11が接地するときの打撃音が緩和される。また、第1ショルダーサイプ20は、ピッチ音が小さいため、ノイズ性能の向上に寄与する。また、第1ショルダーサイプ20を介してタイヤ周方向に隣接する2つのブロック片は、互いに接触し易いため、路面から離れるときに振動し難く、これらブロック片の振動に起因したノイズが抑制される。
【0037】
一方、従来のタイヤにおいて、ショルダー陸部に配されたサイプが非面取りサイプとして構成された場合や、面取りサイプであっても、面取り部の面取り幅がサイプの長さ方向に一定の場合には、十分な排水性が発揮されない傾向があった。これに対し、本発明では、第1ショルダーサイプ20の面取り部22は、面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなっている。これにより、第1ショルダーサイプ20がウェット路面に接地するときにおいて、面取り部22が積極的に水膜をタイヤ軸方向外側に押し退けることができ、高い排水性を発揮できる。本発明では、このようなメカニズムにより、優れたノイズ性能及びウェット性能を発揮できると考えられる。
【0038】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態では、少なくとも第1ショルダー陸部11において、溝幅が2.0mmを超える溝が設けられておらず、サイプ9のみが設けられている。また、
図1に示されるように、より望ましい態様では、トレッド部2に区分された陸部4のそれぞれには、接地面内において、溝幅が2.0mmを超える溝が設けられておらず、かつ、サイプ9のみが設けられている。これにより、溝によるピッチ音が発生せず、ノイズ性能が向上する。
【0040】
前記溝は、少なくとも、前記50%荷重時接地面で規定される溝縁間の溝幅が2.0mmを超えるものを意味する。より具体的には、前記溝は、前記溝縁間の溝幅が2.0mmを超えており、かつ、溝の上層部、中層部、下層部のいずれにおいても、2つの溝壁間の距離が2.0mmを超えているものを指す。なお、前記上層部は、溝を深さ方向に3等分したときの、最も接地面側の領域を指す。前記下層部は、溝を深さ方向に3等分したときの、最も溝底側の領域を指す。前記中層部は、前記上層部と前記下層部との間の領域を指す。
【0041】
図2に示されるように、第1ショルダーサイプ20のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、第1ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の90%~120%である。
【0042】
第1ショルダーサイプ20は、混合サイプとして構成されている。すなわち、第1ショルダーサイプ20は、非面取りサイプとして構成された領域21(以下、非面取り領域21という。)を一部に含んでいる。本実施形態では、第1ショルダーサイプ20の非面取り領域21は、第1ショルダー周方向溝5に連なっている。
【0043】
第1ショルダーサイプ20の非面取り領域21のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、第1ショルダー陸部11の接地面の幅W4の70%~90%である。これにより、第1ショルダーサイプ20の面取り部22に起因した第1ショルダー陸部11の接地面の減少が最小限に抑制され、優れたノイズ性能が得られる。
【0044】
第1ショルダーサイプ20の面取り部22は、非面取り領域21のタイヤ軸方向外側に連なり、第1ショルダーサイプ20のタイヤ軸方向の外端まで面取り幅が連続して大きくなっている。これにより、面取り部22の内、面取り幅が最小となる最小面取り幅部22aが、第1トレッド端T1よりもタイヤ軸方向内側に位置している。一方、面取り部22の内、面取り幅が最大となる最大面取り幅部22bが、第1トレッド端T1よりもタイヤ軸方向外側に位置している。これにより、ウェット性能が向上するとともに、第1トレッド端T1付近において第1ショルダーサイプ20のエッジが接地するときの打音が緩和される。
【0045】
第1トレッド端T1から第1ショルダーサイプ20の外端までのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、第1ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の50%~65%である。これにより、ウェット性能及びノイズ性能がバランス良く向上する。
【0046】
最大面取り幅部22bにおける面取り幅は、例えば、1.5~3.0mmであり、望ましくは2.0~2.5mmである。また、最大面取り幅部22bにおける面取り深さは、0.5~3.0mmであり、望ましくは2.0~2.5mmである。また、第1トレッド端T1上における面取り部22の面取り幅及び面取り深さは、例えば、0.3~1.0mmであり、望ましくは0.4~0.6mmである。このような面取り部22は、ノイズ性能とウェット性能とをバランス良く高めることができる。
【0047】
同様の観点から、第1トレッド端T1における面取り部22の面取り幅は、最大面取り幅部22bの面取り幅の10%~25%であり、望ましくは15%~20%である。また、第1トレッド端T1における面取り部22の面取り深さは、最大面取り幅部22bの面取り深さの10%~25%であり、望ましくは15%~20%である。
【0048】
第1ショルダーサイプ20のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10°以下である。本実施形態の第1ショルダーサイプ20は、タイヤ軸方向に対して右下がりに配されている。以下、本明細書では、このような傾斜の向きをタイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜しているという場合がある。望ましい態様では、第1ショルダーサイプ20の前記角度は、例えば、3~10°である。
【0049】
本実施形態の第1ショルダー陸部11には、複数のショルダー途切れサイプ25が設けられている。ショルダー途切れサイプ25は、第1ショルダー周方向溝5から延び、かつ、第1トレッド端T1よりもタイヤ軸方向内側で途切れている。第1ショルダーサイプ20とショルダー途切れサイプ25とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。このようなショルダー途切れサイプ25は、第1ショルダー陸部11の剛性を維持しつつ、ウェット性能を向上させる。
【0050】
ショルダー途切れサイプ25のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、第1ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の40%~70%であり、望ましくは50%~60%である。このようなショルダー途切れサイプ25は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く向上させる。
【0051】
ショルダー途切れサイプ25は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。ショルダー途切れサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、3~10°である。本実施形態では、第1ショルダーサイプ20とショルダー途切れサイプ25との角度差が10°以下とされており、望ましい態様ではこれらが平行とされている。このようなサイプの配置は、第1ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制することができる。
【0052】
第1ミドル陸部13には、複数の第1ミドルサイプ30が設けられている。複数の第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、例えば、第1ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W5の100%~150%であり、本実施形態では、第1ショルダーサイプ20の前記1ピッチ長さP1と同一とされる。
【0053】
第1ミドルサイプ30は、タイヤ軸方向に対して傾斜して第1ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断している。第1ミドルサイプ30は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。すなわち、第1ショルダーサイプ20及び第1ミドルサイプ30は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。
【0054】
第1ミドルサイプ30のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、例えば、15~45°であり、望ましくは25~35°である。第1ミドルサイプ30のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、第1ショルダーサイプ20のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きいのが望ましい。このような第1ミドルサイプ30は、タイヤ軸方向にも摩擦力を発揮でき、ウェット路面での旋回性能を高めるのに役立つ。
【0055】
第1ミドルサイプ30の第1ショルダー周方向溝5側の端30aから、第1ショルダーサイプ20の第1ショルダー周方向溝5側の端20aまでのタイヤ周方向の距離L6は、例えば、複数の第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2の10%~50%であり、望ましくは30%~50%である。これにより、操縦安定性及びノイズ性能がバランス良く向上する。
【0056】
また、第1ミドルサイプ30の前記端30aから、ショルダー途切れサイプ25の第1ショルダー周方向溝5側の端25aまでのタイヤ周方向の距離は、例えば、前記1ピッチ長さP2の20%以下であり、望ましくは10%以下である。本実施形態では、上述の距離が実質的に0とされている。換言すれば、前記端30aが前記端25aと対向している。
【0057】
第1ミドルサイプ30は、例えば、面取りサイプとして構成されている。具体的には、第1ミドルサイプ30は、両側のサイプエッジの全体が面取り部で形成されている。第1ミドルサイプ30の面取り部32は、例えば、定幅部32aと、内側拡幅部32bと、外側拡幅部32cとを含む。定幅部32aは、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部32bは、例えば、面取り幅がタイヤ軸方向内側に向かって大きくなっている。本実施形態の内側拡幅部32bは、定幅部32aの第1クラウン周方向溝7側に連なっており、定幅部32aから第1クラウン周方向溝7まで連続して面取り幅が大きくなっている。外側拡幅部32cは、面取り幅がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなっている。本実施形態の外側拡幅部32cは、定幅部32aの第1ショルダー周方向溝5側に連なっており、定幅部32aから第1ショルダー周方向溝5まで連続して面取り幅が大きくなっている。このような面取り部32を有する第1ミドルサイプ30は、ウェット路面に接地するとき、水膜を積極的にタイヤ軸方向の両側に押し退けることができる。
【0058】
定幅部32aは、例えば、第1ミドル陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりも第1トレッド端T1側に位置ずれして設けられている。これにより、内側拡幅部32bのタイヤ軸方向の長さL7は、外側拡幅部32cのタイヤ軸方向の長さL8よりも大きい。具体的には、内側拡幅部32bの前記長さL7は、第1ミドル陸部13の接地面の前記幅W5の40%~60%である。外側拡幅部32cの前記長さL8は、第1ミドル陸部13の接地面の前記幅W5の25%~35%である。これにより、第1ミドル陸部13のタイヤ赤道C側に大きな面取り部が形成され、ノイズ性能がより一層向上する。
【0059】
同様の観点から、内側拡幅部32bの最大の面取り幅W6は、外側拡幅部32cの最大の面取り幅W7よりも大きいのが望ましい。具体的には、内側拡幅部32bの前記面取り幅W6は、外側拡幅部32cの前記面取り幅W7の1.3~2.0倍である。
【0060】
内側拡幅部32bの最大の面取り幅W6は、例えば、1.5~3.0mmであり、望ましくは2.0~2.5mmである。外側拡幅部32cの最大の面取り幅W7は、例えば、0.5~1.5mmmであり、望ましくは0.9~1.3mmである。定幅部32aの面取り幅は、例えば、0.3~1.0mmであり、望ましくは0.4~0.6mmである。但し、面取り幅は、このような寸法に限定されるものではない。
【0061】
図6には、
図2のA-A線断面図が示されている。
図6に示されるように、内側拡幅部32bの最大の深さd2は、外側拡幅部32cの最大の深さd3よりも大きい。具体的には、内側拡幅部32bの前記深さd2は、外側拡幅部32cの前記深さd3の1.5~2.5倍である。
【0062】
内側拡幅部32bの最大の深さd2は、例えば、1.5~3.0mmであり、望ましくは2.0~2.5mmである。外側拡幅部32cの最大の深さd3は、0.5~1.5mmmであり、望ましくは0.9~1.3mmである。定幅部32aの深さd4は、例えば、0.3~1.0mmであり、望ましくは0.4~0.6mmである。
【0063】
第1ミドルサイプ30は、例えば、底部が局部的に隆起した第1ミドルタイバー34を含んでいる。第1ミドルタイバー34は、例えば、第1ミドルサイプ30をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。第1ミドルタイバー34のタイヤ軸方向の長さL9は、第1ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W5(
図2に示す)の30%~50%である。なお、第1ミドルタイバー34のタイヤ軸方向の長さが、タイヤ半径方向で変化する場合、前記長さは、タイヤ半径方向の中心位置で測定するものとする。第1ミドル陸部13の接地面から第1ミドルタイバー34の外面までの深さd6は、第1ミドルサイプ30の最大の深さd5の50%~70%である。このような第1ミドルタイバー34は、ノイズ性能を高めつつ、転がり抵抗を低減させるのにも役立つ。
【0064】
図7には、第2ショルダー陸部12及び第2ミドル陸部14の拡大図が示されている。
図7に示されるように、第2ショルダー陸部12には、複数の第2ショルダーサイプ35が設けられている。本実施形態の第2ショルダーサイプ35には、上述の第1ショルダーサイプ20の構成を適用することができ、ここでの説明は省略される。
【0065】
第2ショルダー陸部12には、複数の小幅サイプ37が設けられるのが望ましい。小幅サイプ37のサイプ幅は、第2ショルダーサイプ35のサイプ幅よりも小さい。また、小幅サイプ37は、第2ショルダー周方向溝6から第2トレッド端T2を超えた位置まで延びている。但し、小幅サイプ37のタイヤ軸方向の長さは、第2ショルダーサイプ35のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。また、小幅サイプ37は、非面取りサイプとして構成されている。これにより、第2ショルダーサイプ35及び小幅サイプ37が接地するときのノイズがホワイトノイズ化し易くなり、ノイズ性能及びウェット性能がバランス良く向上する。
【0066】
小幅サイプ37は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。小幅サイプ37のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、3~10°である。本実施形態では、第2ショルダーサイプ35と小幅サイプ37との角度差が10°以下であり、望ましい態様ではこれらが平行とされる。このようなサイプの配置は、第2ショルダー陸部12の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0067】
第2ミドル陸部14には、複数の第2ミドルサイプ40が設けられている。第2ミドルサイプ40には、以下で説明される事項を除き、上述された第1ミドルサイプ30の構成を適用することができる。
【0068】
第2ミドルサイプ40は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜している。第2ミドルサイプ40のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~45°であり、望ましくは25~35°である。このような第2ミドルサイプ40は、ウェット路面での旋回性能を高めることができる。
【0069】
図8には、
図1のクラウン陸部15の拡大図が示されている。
図8に示されるように、クラウン陸部15タイヤ軸方向の中心位置がタイヤ赤道Cよりも第1トレッド端T1(
図1に示す)側に位置している。これにより、クラウン陸部15において、タイヤ赤道Cよりも第1トレッド端T1側の外側領域15aの接地面の幅W9は、タイヤ赤道Cよりも第2トレッド端T2側の内側領域15bの接地面の幅W10よりも大きい。具体的には、前記外側領域15aの前記幅W9は、クラウン陸部15の接地面の幅W8の51%~55%である。このようなクラウン陸部15は、舵角の変化に伴うコーナリングフォースの変化をリニアにし、操縦安定性及び乗り心地性を高めるのに役立つ。
【0070】
クラウン陸部15には、複数の第1クラウンサイプ46及び複数の第2クラウンサイプ47が設けられている。第1クラウンサイプ46は、例えば、第1クラウン周方向溝7から延び、かつ、クラウン陸部15内で途切れている。第2クラウンサイプ47は、例えば、第2クラウン周方向溝8から延び、かつ、クラウン陸部15内で途切れている。
【0071】
第1クラウンサイプ46及び第2クラウンサイプ47は、それぞれ、クラウン陸部15のタイヤ軸方向の中心位置を横断しておらず、かつ、タイヤ赤道Cを横断していない。第1クラウンサイプ46又は第2クラウンサイプ47のタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、クラウン陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W8の15%~30%である。これにより、クラウン陸部15の剛性が確実に維持され、優れた操縦安定性が発揮される。
【0072】
第1クラウンサイプ46及び第2クラウンサイプ47は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。第1クラウンサイプ46又は第2クラウンサイプ47のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。より望ましい態様では、第1クラウンサイプ46と第2クラウンサイプ47との角度差が5°以下とされ、本実施形態ではこれらが平行に配されている。このような第1クラウンサイプ46及び第2クラウンサイプ47は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を提供し得る。
【0073】
第1クラウンサイプ46及び第2クラウンサイプ47は、それぞれ、非面取りサイプとして構成されている。このような第1クラウンサイプ46及び第2クラウンサイプ47は、クラウン陸部15の偏摩耗を抑制することができる。
【0074】
本実施形態では、各陸部において、上述のサイプの他には、サイプが設けられていない。これにより、上述の各種の性能がバランス良く発揮される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0075】
図9には、本実施形態のトレッド部2の接地時の接地面形状を示す拡大図が示されている。
図9に示されるように、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた状態において、第1ショルダー陸部11、第1ミドル陸部13、クラウン陸部15、第2ミドル陸部14及び第2ショルダー陸部12のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1s、W1m、Wc、W2m及びW2sとしたとき、前記幅W1sは、他の陸部の前記幅W1m、Wc、W2m及びW2sのいずれよりも大きいのが望ましい。具体的には、前記幅W1sは、クラウン陸部15の前記幅Wcの115~130%が望ましい。これにより、第1ショルダー陸部11が十分に高い剛性を有し、優れた操縦安定性が発揮される。
【0076】
本実施形態では、前記幅幅W1m、Wc、W2m及びW2sが互いに近似した大きさで構成されている。具板的には、前記幅W1m、W2m及びW2sが、それぞれ、クラウン陸部15の前記幅Wcの90%~110%の範囲とされている。これにより、各陸部の偏摩耗が抑制される。
【0077】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0078】
図1の基本パターンを有するサイズ235/45R19のタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、比較例として、
図10に示されるように、各ショルダーサイプaが非面取りサイプとして構成されたタイヤが試作された。
【0079】
また、ノイズ性能を比較するための基準となるタイヤ(基準タイヤ)として、トレッド部の各陸部の幅が
図1に示されるものと同一であり、かつ、各陸部には溝及びサイプが設けられていないタイヤが試作された。
【0080】
各テストタイヤのノイズ性能及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×7.5J
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪210kPa
テスト車両:排気量2000cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0081】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で70km/hの速度でドライ路面を走行したときの車外騒音の最大の音圧が測定された。結果は、前記基準タイヤの前記音圧との差である音圧減少量が、比較例の前記音圧減少量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、前記ノイズの最大の音圧が小さく、優れたノイズ性能を発揮していることを示す。
【0082】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記ウェット性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0083】
【0084】
テストの結果、実施例のタイヤは、ノイズ性能及びウェット性能が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0085】
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
5 第1ショルダー周方向溝
11 第1ショルダー陸部
20 第1ショルダーサイプ
22 面取り部
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端