IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図1
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図2
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図3
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図4
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図5
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図6
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図7
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図8
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図9
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図10
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図11
  • 特許-光増幅器および光通信システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】光増幅器および光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20250422BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20250422BHJP
【FI】
H01S3/067
H04B10/291
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021111469
(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公開番号】P2023008146
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 節文
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510253(JP,A)
【文献】特開2012-151313(JP,A)
【文献】特開2019-075450(JP,A)
【文献】特開2021-028688(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208048(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/115275(WO,A1)
【文献】特開平03-054529(JP,A)
【文献】特開平03-180087(JP,A)
【文献】特開2017-097347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0163072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが一または複数のコアを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバと、
前記希土類元素添加光ファイバに添加されている希土類元素を励起させる励起光を駆動電流に応じて発し、前記希土類元素添加光ファイバの前記コア一つあたり一つを超える数の励起光源と、
前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源それぞれにより発せられた前記励起光を合成する合成部と、を備え、
前記コアは合計二つ以上あり、
前記コアそれぞれに対し、前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源により発せられた前記励起光が合成されて導入され
前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源は、直列に接続されている複数の駆動回路から供給される駆動電流によって駆動される、光増幅器。
【請求項2】
それぞれが一または複数のコアを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバと、
前記希土類元素添加光ファイバに添加されている希土類元素を励起させる励起光を駆動電流に応じて発し、前記希土類元素添加光ファイバの前記コア一つあたり一つを超える数の励起光源と、
前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源それぞれにより発せられた前記励起光を合成する合成部と、を備え、
前記コアは合計二つ以上あり、
前記コアそれぞれに対し、前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源により発せられた前記励起光が合成されて導入され、
前記合成部は、偏波合成方式、光注入同期方式、複合共振器方式および主発振器出力増幅器方式のうち、少なくとも一つの方式により、前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源それぞれにより発せられた前記励起光を合成し、
前記偏波合成方式は、偏波素子を用いて複数の異なる偏波を合成する方式であり、
前記光注入同期方式は、自ら発振している半導体レーザに外部から発振波長に近い波長を有する光が入射することにより、入射する光の波長に前記半導体レーザの発振波長が引き込まれる光注入同期現象を利用して複数の異なる光を合成する方式であり、
前記複合共振器方式とは、複数の共振器が接続されている複合共振器を用いて複数の異なる光を合成する方式であり、
前記主発振器出力増幅器方式は、主発振器出力増幅器を用いて複数の異なる光を合成する方式であり、
前記主発振器出力増幅器は、第1の発振器および第2の発振器それぞれにより発せられた光が合成された光を前記第2の発振器側から取り出す、光増幅器。
【請求項3】
前記合成部は、偏波合成方式、光注入同期方式、複合共振器方式および主発振器出力増幅器方式のうち、少なくとも一つの方式により、前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源それぞれにより発せられた前記励起光を合成し、
前記偏波合成方式は、偏波素子を用いて複数の異なる偏波を合成する方式であり、
前記光注入同期方式は、自ら発振している半導体レーザに外部から発振波長に近い波長を有する光が入射することにより、入射する光の波長に前記半導体レーザの発振波長が引き込まれる光注入同期現象を利用して複数の異なる光を合成する方式であり、
前記複合共振器方式とは、複数の共振器が接続されている複合共振器を用いて複数の異なる光を合成する方式であり、
前記主発振器出力増幅器方式は、主発振器出力増幅器を用いて複数の異なる光を合成する方式であり、
前記主発振器出力増幅器は、第1の発振器および第2の発振器それぞれにより発せられた光が合成された光を前記第2の発振器側から取り出す、請求項1に記載の光増幅器。
【請求項4】
前記コア一つあたり一つを超える数の前記励起光源は、直列に接続されている複数の半導体レーザを含む半導体レーザ群を少なくとも一部に含み、
前記半導体レーザ群に含まれている前記複数の半導体レーザは、共通する前記駆動電流により駆動される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光増幅器。
【請求項5】
前記希土類元素添加光ファイバは、複数の前記コアが単一のクラッドで覆われたマルチコア光ファイバである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光増幅器。
【請求項6】
前記複数のコアのうち、隣接するコア間のパワー結合係数は、10[/m]以上である、請求項5に記載の光増幅器。
【請求項7】
光信号を伝送する一または複数の光ファイバと、
前記光ファイバにより伝送される前記光信号を増幅する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光増幅器と、を備える、光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光増幅器および光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、光海底ケーブルと、陸揚げ局舎に設置された給電装置から給電線を通して電力供給される光増幅器と、を備える光通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】NEC技報、2009、Vol.62、No4、p.20-23、32-35、44-47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の光増幅器は動作電流が大きく、光通信システムの抵抗損が光増幅器の動作電流に応じて大きくなる。そのため、動作電流が小さい光増幅器が求められている。
【0005】
そこで、本開示は、動作電流が小さい光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光増幅器Gは、それぞれが一または複数のコアCeを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバEFと、希土類元素添加光ファイバEFに添加されている希土類元素を励起させる励起光を動作電流に応じて発し、希土類元素添加光ファイバEFのコアCe一つあたり一つを超える数の励起光源Lと、コアCe一つあたり一つを超える数の励起光源Lそれぞれにより発せられた励起光Lpを合成する合成部PBと、を備え、コアCeは合計二つ以上あり、コアCeそれぞれに対し、コアCe一つあたり一つを超える数の励起光源Lにより発せられた励起光Lpが合成されて導入される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る光通信システムの給電構成を例示する等価回路図である。
図2】第1実施形態に係る光増幅器の構成を例示する図である。
図3】エルビウム添加光ファイバの構成を例示する断面図である。
図4】第1実施形態に係る光増幅器の半導体レーザ駆動回路の等価回路図である。
図5】光増幅器の動作電流と光通信システムの消費電力等および供給電圧との関係の第1例を示す図である。
図6】光増幅器の動作電流と光通信システムの消費電力および供給電圧との関係の第2例を示す図である。
図7】変形例に係る光増幅器の構成を例示する図である。
図8】第2実施形態に係る光増幅器の構成を例示する図である。
図9】第3実施形態に係る光増幅器の半導体レーザ駆動回路の等価回路図である。
図10】第4実施形態に係る光増幅器における半導体レーザを例示する図である。
図11】第5実施形態に係る光増幅器の半導体レーザ駆動回路の等価回路図である。
図12】第6実施形態に係る光増幅器の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一態様に係る光増幅器は、それぞれが一または複数のコアを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバと、希土類元素添加光ファイバに添加されている希土類元素を励起させる励起光を駆動電流に応じて発し、希土類元素添加光ファイバのコア一つあたり一つを超える数の励起光源と、コア一つあたり一つを超える数の励起光源それぞれにより発せられた励起光を合成する合成部と、を備え、コアは合計二つ以上あり、コアそれぞれに対し、コア一つあたり一つを超える数の励起光源により発せられた励起光が合成されて導入される。
【0010】
コア一つあたり一つを超える数をKとすると、上記の光増幅器は、K個の励起光源それぞれにより発せられた光が合成されて一つのコアに導入され、該コアを励起させる。この構成により、該コアを励起させる光パワーを得るために要求される励起光源の駆動電流を略1/Kにできるため、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0011】
光増幅器とは、光信号を電気信号に変換せず、直接光の状態で増幅する増幅器をいう。また、それぞれが一または複数のコアを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバには、一つのコアを含む一つの希土類元素添加光ファイバ、複数のコアを含む一つの希土類元素添加光ファイバ、それぞれが一つのコアを含む複数の希土類元素添加光ファイバおよびそれぞれが複数のコアを含む複数の希土類元素添加光ファイバ等が含まれる。複数のコアを含む希土類元素添加光ファイバには、結合型マルチコア光ファイバ、数モード光ファイバおよび非結合型マルチコア光ファイバ等が含まれる。以下説明の用語において「マルチコア光ファイバ」は、結合型マルチコア光ファイバ、数モード光ファイバおよび非結合型マルチコア光ファイバの少なくとも一つを意味するものとする。
【0012】
コア一つあたり一つを超える数は、整数または小数を意味する。例えば上記の光増幅器がコア二つあたりに四つの励起光源を備える場合には、コア一つあたり一つを超える数は2である。上記の光増幅器がコア二つあたりに三つの励起光源を備える場合には、コア一つあたり一つを超える数は1.5である。
【0013】
光増幅器の動作電流とは、所望の増幅率を得るために光増幅器を動作させるための電流をいう。励起光源を駆動させるための駆動電流は、光増幅器の動作電流のうちの少なくとも一部である。駆動電流が小さくなるに従って、光増幅器の動作電流は小さくなる。
【0014】
上記の光増幅器では、コア一つあたり一つを超える数の励起光源は、直列に接続されている複数の駆動回路から供給される駆動電流によって駆動されてもよい。例えば、K個の励起光源に駆動電流を供給する場合に、K個の駆動回路が並列に接続されていると、K個の駆動回路一つずつに略等しい駆動電流Iを供給する必要があるため、合計K×Iの駆動電流が必要となって光増幅器の動作電流が増大する。K個の駆動回路が直列に接続されていることにより、K個の駆動回路全体を駆動電流Iにより駆動させることができ、K個の駆動回路が並列に接続されている場合と比較して、駆動電流を略1/Kにできる。
【0015】
上記の光増幅器では、合成部は、偏波合成方式、光注入同期方式、複合共振器方式および主発振器出力増幅器(Master Oscillator Power Amplifier:MOPA)方式のうち、少なくとも一つの方式により、コア一つあたり一つを超える数の励起光源それぞれにより発せられた励起光を合成してもよい。上記の光増幅器は、各方式によって、あるいは各方式の組合せによって、コア一つあたり一つを超える数の励起光源それぞれにより発せられた励起光を合成できる。
【0016】
偏波合成方式とは、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)等の偏波素子を用いて複数の異なる偏波を合成する方式をいう。偏波とは、電場および磁場の振動方向が規則的な光または電波等の電磁波のことをいう。光注入同期方式とは、光注入同期現象を利用して複数の異なる光を合成する方式をいう。光注入同期現象とは、自ら発振している半導体レーザに外部から発振波長に近い波長を有する光が入射することにより、入射する光の波長に該半導体レーザの発振波長が引き込まれる現象をいう。
【0017】
複合共振器方式とは、複合共振器を用いて複数の異なる光を合成する方式をいう。複合共振器とは、複数の共振器が所定方向に沿って接続されている共振器をいう。主発振器出力増幅器方式とは、主発振器出力増幅器を用いて複数の異なる光を合成する方式をいう。主発振器出力増幅器は、第1主発振器(または種光)と、高出力な第2の発振器と、を独立に制御し、第1の発振器および第2の発振器それぞれにより発せられた光が合成された高出力な光を第2の発振器側から取り出す。
【0018】
上記の光増幅器では、コア一つあたり一つを超える数の励起光源は、直列に接続されている複数の半導体レーザを含む半導体レーザ群を少なくとも一部に含み、該半導体レーザ群に含まれている複数の半導体レーザは、共通する駆動電流により駆動されてもよい。上記の「半導体レーザ群を少なくとも一部に含む」には、コア一つあたり一つを超える数の励起光源が、複数の該半導体レーザ群により構成されている場合と、該半導体レーザ群を一部に含んで構成されている場合の、両方が含まれる。
【0019】
例えば、励起光源を駆動させる駆動回路が電流源を備える場合には、電流源は抵抗を含むため、駆動回路の数が増えるほど電圧降下が大きくなり、光増幅器の動作電流が増大する。これに対し、上記の光増幅器は、半導体レーザ群に含まれている複数の半導体レーザを共通する駆動電流により駆動させることによって、半導体レーザ群の数に対応して駆動回路の数を減らすことができる。これにより、電圧降下を抑制し、光増幅器の動作電流を小さくすることができる。また上記の光増幅器は、駆動回路の数を減らすことにより、駆動回路が配置される面積を小さくすることができる。
【0020】
上記の光増幅器では、希土類元素添加光ファイバは、複数のコアが単一のクラッドで覆われたマルチコア光ファイバであることが好ましい。光増幅器が備えるマルチコア光ファイバを備えることにより、光増幅器が備えるコアの数が増え、コアの数が増えるにつれで、一つのコアあたりにおける光増幅器の動作電流を抑制する効果が大きくなるためである。
【0021】
希土類元素添加光ファイバが結合型マルチコア光ファイバである場合には、複数のコアのうち、隣接するコア間のパワー結合係数は、10[/m]以上であることが好ましい。実用的な特性を有する希土類元素添加光ファイバを備える光増幅器では、希土類元素添加光ファイバの長さは略10[m]以上となる。この場合には、隣接するコア間のパワー結合係数が10[/m]以上の結合型マルチコア光ファイバを用いることにより、モード依存利得(Mode Dependent Gain:MDG)を十分に抑制できる。MDGを抑制することによって得られる冗長性により、上記の光増幅器は、コアそれぞれに導入される励起光の光パワーが最適な状態から大きく外れた場合にも、モード間における利得の差を低減できる。
【0022】
パワー結合係数とは、所定の導波モードが単位長さを伝搬する際に別の導波モードに結合する成分におけるパワーの比率をいい、パワー結合方程式の係数として定義される。[m]はメートルを意味する単位を表し、[/m]はメートルの逆数を意味する単位を表す。以下においては、[]を付して表記する英字は単位を意味するものとする。
【0023】
また、本開示の光通信システムは、光信号を伝送する一または複数の光ファイバと、光ファイバにより伝送される光信号を増幅する上記の光増幅器と、を備える光通信システムである。この光通信システムでは、上記の光増幅器を備えることにより、光増幅器の動作電流を小さくでき、光通信システムの抵抗損を小さくすることができる。また光増幅器における励起光源やパワートランジスタ等の素子の温度が上昇することを抑え、各素子の寿命を長くすることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光増幅器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は適宜省略する。
【0025】
[実施形態]
(光通信システム100の構成)
本開示の実施形態に係る光増幅器Gを備える光通信システム100について説明する。光通信システム100は、例えば、太平洋を横断して設けられている光海底ケーブルを用いて、日本と米国との間等において長距離光通信を行う光海底ケーブルシステムである。光通信システム100は、光信号を伝送する一または複数の光ファイバと、該光ファイバにより伝送される光信号を増幅する光増幅器Gと、を備えている。
【0026】
一または複数の光ファイバは、光海底ケーブル内に設けられている。光通信システム100では、光ファイバにより伝送される光信号の伝送損失を補償するために、該光ファイバによる伝送路途中の海底に複数の中継器が配置されている。光増幅器Gは、この複数の中継器それぞれに設けられている。
【0027】
図1は、光通信システム100において複数の中継器それぞれに電力を供給する給電系の構成を例示する等価回路図である。光通信システム100は、給電系の構成として、第1給電装置10と、第2給電装置20と、給電線PLから給電線PLN+1と、を備えている。なお、Nは自然数であり、給電線PLおよび給電線PLN+1等における添え字(下付き文字)は、N+1個の給電線それぞれを区別するために付したものである。以下の説明においては、N+1個の給電線を特に区別しない場合には、添え字を省略して給電線PLと総称表記する場合がある。この点は、以下の説明において添え字を用いて表記する中継器T、光増幅器G、半導体レーザL、駆動回路Dおよびエルビウム添加光ファイバEF等においても同様とする。
【0028】
光通信システムでは、給電系の信頼性を向上させるため、必要な電力を給電可能な給電装置が複数の陸揚げ局それぞれに設置される。陸揚げ局とは、海底に設置されてきた光海底ケーブルを地上に引き揚げる拠点をいう。
【0029】
光通信システム100では、第1給電装置10は、第1陸揚げ局(例えば日本)に設けられており、直流電流源Aiから中継器に対して直流の定電流を供給する。第2給電装置20は、第2陸揚げ局(例えば米国)に設けられており、直流電流源Aoから中継器に対して直流の定電流を供給する。第1給電装置10および第2給電装置20は、それぞれ海中アースがなされている。光通信システム100は、第1陸揚げ局および第2陸揚げ局により電力供給を分担する両局給電を行うことができる。
【0030】
給電線PLから給電線PLN+1は、第1給電装置10および第2給電装置20のそれぞれから供給される電力を、直列に接続されている中継器Tから中継器TN+1それぞれに送電する送電路である。
【0031】
電圧Vsは、中継器Tから中継器TN+1全体に供給される電圧を表している。電圧VLから電圧VLN+1は、中継器Tから中継器TN+1のそれぞれに対をなして供給される電圧を表している。抵抗Rから抵抗RN+1は、給電線PLから給電線PLN+1のそれぞれに対をなす電気抵抗を表している。
【0032】
光通信システム100等の光海底ケーブルシステムでは、抵抗Rから抵抗RN+1等の抵抗によって抵抗損が生じる。抵抗損は電流の2乗に比例するため、供給される電流を小さくすることが好ましい。しかしながら、光海底ケーブルシステムでは、中継器に直流で給電するために電圧と電流との比率調整に制限があり、中継器で必要とされる電流を給電線に流すことが求められる。従って、中継器に含まれている光増幅器には、光海底ケーブルシステムの抵抗損を小さくするために、動作電流が小さいものが求められる。
【0033】
[第1実施形態]
(光増幅器Gの構成)
図2および図3を参照して、光増幅器Gの構成について説明する。図2は、光通信システム100の中継器Tに含まれている光増幅器Gの構成を例示する図である。図3は、光増幅器Gが備えているエルビウム添加光ファイバEFの構成を例示する断面図である。図3の断面図は、エルビウム添加光ファイバEFを光の伝送方向と略直交する平面で切断した場合に、光の伝送方向側からエルビウム添加光ファイバEFを視た図に対応する。
【0034】
図2に示すように、中継器Tは、光増幅器Gと、光増幅器Gと、光増幅器Gと、を含むM個の光増幅器Gを備えている。なお、図1に示した中継器Tから中継器TN+1は、いずれも図2に示す構成と同じ構成を備えている。Mは、第1陸揚げ局から第2陸揚げ局への上り方向または第2陸揚げ局から第1陸揚げ局への下り方向のいずれかの方向において、光信号を伝送する光ファイバに含まれている、光信号を伝送するコア(以下、「信号コア」という。)の数を表す自然数である。本実施形態では、Mは8である。但し、これに限定されるものではなく、Mの値は適宜変更可能である。
【0035】
中継器Tには、第1陸揚げ局側から第2陸揚げ局側に向けて光信号を伝送する上り光ファイバFuと、第2陸揚げ局側から第1陸揚げ局側に向けて光信号を伝送する下り光ファイバFdと、がそれぞれ接続している。上り光ファイバFuは、信号コアCs、信号コアCsおよび信号コアCs2M-1(奇数番目の信号コアCs)を含む8個の信号コアCsが単一のクラッドで覆われたマルチコア光ファイバである。下り光ファイバFdは、信号コアCs、信号コアCsおよび信号コアCs2M(偶数番目の信号コアCs)を含む8個の信号コアCsが単一のクラッドで覆われたマルチコア光ファイバである。上り光ファイバFuおよび下り光ファイバFdは、例えば波長が略1550[nm]である信号光Lsを光信号として伝送する。但し、信号光Lsの波長は、略1550[nm]に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0036】
光増幅器Gは、上り光ファイバFuを通して第1陸揚げ局側から中継器Tに入射してきた信号光Lsを増幅し、増幅された信号光Lsを、上り光ファイバFuを通して第2陸揚げ局側に出射させる。また光増幅器Gは、下り光ファイバFdを通して第2陸揚げ局側から中継器Tに入射してきた信号光Lsを増幅し、増幅された信号光Lsを、下り光ファイバFdを通して第1陸揚げ局側に出射させる。
【0037】
図2において、光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLと、偏波素子PBと、を備えている。より詳しくは、光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの四つの半導体レーザLと、偏波素子PBからPBの二つの偏波素子PBと、を備えている。光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの四つの半導体レーザLと、偏波素子PBからPBの二つの偏波素子PBと、を備えている。光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEF2M-1と、エルビウム添加光ファイバEF2Mと、半導体レーザL4M-3から半導体レーザL4Mの四つの半導体レーザLと、偏波素子PB2M-1からPB2Mの二つの偏波素子PBと、を備えている。
【0038】
エルビウム添加光ファイバEFは、それぞれが一または複数のコアを含む一または複数の希土類元素添加光ファイバの一例である。希土類元素添加光ファイバにおいて信号光が増幅されるコア(以下、「励起コア」という)Ceは、希土類元素添加光ファイバに含まれている一または複数のコアの一例である。
【0039】
図3に例示するように、エルビウム添加光ファイバEF2M-1およびエルビウム添加光ファイバEF2Mは、それぞれ8個の励起コアCeが単一のクラッドCLで覆われたマルチコア光ファイバである。なお、エルビウム添加光ファイバEFからエルビウム添加光ファイバEF2Mのエルビウム添加光ファイバEFは、いずれも同じ構成である。
【0040】
本実施形態では、上り光ファイバFuおよび下り光ファイバFdも、8個の信号コアCsが単一のクラッドCLで覆われたマルチコア光ファイバである。本実施形態では、信号コアCsの数と励起コアCeの数が等しい構成を例示するが、両者の数は必ずしも等しくなくてもよい。
【0041】
エルビウム添加光ファイバEF2M-1は、励起コアCeからCe2M-1の8個の励起コアCeを備えており、奇数番目の信号コアCsから信号コアCs2M-1それぞれを通して伝送される信号光Lsを増幅する。エルビウム添加光ファイバEF2Mは、励起コアCeからCe2Mの8個の励起コアCeを備えており、偶数番目の信号コアCsから信号コアCs2Mそれぞれを通して伝送される信号光Lsを増幅する。エルビウム添加光ファイバEFとして結合型マルチコア光ファイバを用いる場合には、複数の励起コアCeのうち、隣接する励起コアCe間のパワー結合係数は、10[/m]以上であることが好ましい。
【0042】
図2において、半導体レーザLは、エルビウム添加光ファイバEFに添加されているエルビウムを励起させる励起光Lpを駆動電流に応じて発する励起光源の一例である。半導体レーザLは、例えば、エルビウムを励起可能な略1480[nm]あるいは略980[nm]の波長を有する励起光Lpを発する。但し、励起光源は半導体レーザLに限定されるものではなく、エルビウムを励起可能な波長を有する励起光を発することができれば、他の光源であってもよい。
【0043】
本実施形態では、光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLを備えている。具体的には、上り光ファイバFuと下り光ファイバFdとに含まれる合計16個の信号コアCsそれぞれを通して伝送される信号光Lsを増幅するために、光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeを16個備えている。また光増幅器Gは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe一つあたり二つで、合計32個の半導体レーザLを備えている。
【0044】
半導体レーザLおよび半導体レーザLは、励起コアCeに添加されているエルビウムを励起させる。半導体レーザLおよび半導体レーザLは、励起コアCeに添加されているエルビウムを励起させる。半導体レーザLおよび半導体レーザLは、励起コアCeに添加されているエルビウムを励起させる。半導体レーザLおよび半導体レーザLは、励起コアCeに添加されているエルビウムを励起させる。半導体レーザL4M-3および半導体レーザL4M-2は、励起コアCe2M-1に添加されているエルビウムを励起させる。半導体レーザL4M-1および半導体レーザL4Mは、励起コアCe2Mに添加されているエルビウムを励起させる。
【0045】
光増幅器Gにおいて、半導体レーザLおよび半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは、それぞれ偏波素子PBに入射する。偏波素子PBは、励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLおよび半導体レーザLそれぞれにより発せられた励起光Lpを合成する合成部の一例である。偏波素子PBにより励起光Lpを合成させる方式は偏波合成方式に対応する。
【0046】
偏波素子PBは、P偏光成分を透過し、S偏光成分を反射する光学面を含む偏光ビームスプリッタである。偏波素子PBは、例えば、半導体レーザLにより発せられたP偏光の直線偏光である励起光Lpを透過し、半導体レーザLにより発せられたS偏光の直線偏光である励起光Lpを反射することによって両者を合成する。偏波素子PBは、偏光を利用することにより、半導体レーザLおよび半導体レーザLそれぞれにより発せられた励起光Lpを効率的に合成できる。半導体レーザLにより発せられる励起光Lpは直線偏光に限定されるものではなく楕円偏光等であってもよいが、光損失を抑制する観点では直線偏光が好適である。
【0047】
同様に、半導体レーザLおよび半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは、それぞれ偏波素子PBに入射し、偏波素子PBによって合成される。
【0048】
偏波素子PBにより合成された励起光Lp、並びに偏波素子PBにより合成された励起光Lpは、それぞれ3DBカプラBに入射する。3DBカプラBは、入射してきた二つの光を合成した後、分岐比が略1対1になるように二つに分岐させる受動光素子である。3DBカプラBにより分岐された励起光Lpのうちの一方は、ポンプ合流器Pに向けて導光された後、ポンプ合流器Pに入射する。
【0049】
ポンプ合流器Pは、例えば波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)カプラである。3DBカプラBにより分岐された励起光Lpのうちの一方は、ポンプ合流器Pの作用により信号コアCsを通して伝送されてきた信号光Lsと合流し、該信号光Lsと共にエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。
【0050】
換言すると、半導体レーザLおよび半導体レーザLの二つの半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは、偏波素子PBに合成された後、ポンプ合流器Pを介して励起コアCeに対して導入される。
【0051】
エルビウム添加光ファイバEFは、入射してきた励起光Lpにより励起コアCeに添加されているエルビウムが励起されることによって反転分布を形成する。エルビウム添加光ファイバEFは、反転分布状態にあるエルビウムイオンにより、エルビウム添加光ファイバEFを通して伝送される信号光Lsを誘導放出させて増幅させる。増幅された信号光Lsは、第2陸揚げ局側に向けて信号コアCsを通して再び伝送される。
【0052】
一方、3DBカプラBにより分岐された励起光Lpのうちの他方は、ポンプ合流器Pに入射し、信号コアCsを通して伝送されてきた信号光Lsと合流した後、該信号光Lsと共にエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。
【0053】
エルビウム添加光ファイバEFは、入射してきた励起光Lpにより励起コアCeに添加されているエルビウムが励起されることによって反転分布を形成する。エルビウム添加光ファイバEFは、反転分布状態にあるエルビウムイオンにより、エルビウム添加光ファイバEFを通して伝送される信号光Lsを誘導放出させて増幅させる。増幅された信号光Lsは、第1陸揚げ局側に向けて信号コアCsを通して再び伝送される。
【0054】
光増幅器Gは、上り光ファイバFuに含まれる信号コアCsを通して伝送される信号光Lsと、下り光ファイバFdに含まれる信号コアCsを通して伝送される信号光Lsと、を対にして増幅させることにより、中継器Tによる中継接続を冗長化している。つまり、光増幅器Gは、半導体レーザLから半導体レーザLのうちの一部が故障等により励起光Lpを発せられなくなった場合にも、その影響を分散させ、上り光ファイバFuおよび下り光ファイバFdを通して伝送される光信号の一部が増幅されなくなることを防ぐことができる。
【0055】
同様に、光増幅器Gは、半導体レーザLから半導体レーザLの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCsおよび信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。光増幅器Gは、半導体レーザL4M-3から半導体レーザL4Mの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCs2M-1および信号コアCs2Mを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0056】
光増幅器Gから光増幅器Gは、光増幅対象となる信号コアCsが異なる点を除き、構成および機能は光増幅器Gと同じである。
【0057】
(半導体レーザLの駆動回路Dの構成例)
図4は、光増幅器Gに含まれている半導体レーザLを駆動させる駆動回路Dの構成を例示する等価回路図である。光増幅器Gは、半導体レーザLから半導体レーザL4M(M=8)の32個の半導体レーザLを駆動させるために、駆動回路Dから駆動回路D4Mの32個の駆動回路Dを備えている。駆動回路Dから駆動回路D4Mは直列に接続されている。駆動回路Dから駆動回路D4Mは、第1給電装置10から供給される動作電流Sの少なくとも一部である駆動電流Iに応じて、半導体レーザLから半導体レーザL4Mの各半導体レーザLを発光駆動させる。電圧VLは中継器Tに供給される電圧を表している。
【0058】
図4において、駆動回路Dは、定電圧回路Cvと、定電流回路Ciと、を備えている。定電圧回路Cvは、ツェナーダイオードZを含み、駆動回路Dにかかる基準電圧Vが略一定になるように定電圧制御する。
【0059】
定電流回路Ciは、電流源A1と、電流源A2と、を含み、駆動回路Dに流れる電流が略一定になるように定電流制御する。電流源A1は、半導体レーザLに直列接続されており、半導体レーザLに流れる駆動電流Iが略一定になるように電流を供給する。電流源A1は、半導体レーザLに並列接続されており、駆動回路Dにおける半導体レーザL以外を流れる電流Is1が略一定になるように電流を供給する。駆動電流I、電流Is1および定電圧回路Cvを流れた基準電流Iは、駆動回路Dを流れた後に合流して、駆動回路Dに動作電流Sとして供給される。基準電流Iと駆動電流Iと電流Is1の和は、動作電流Sに略等しい。
【0060】
駆動回路Dから駆動回路D4Mの構成および機能は、駆動対象となる半導体レーザLが異なる点を除き、駆動回路Dと同じである。
【0061】
(光増幅器Gの作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る光増幅器Gは、8個の励起コアCe(コア)を含む一つのエルビウム添加光ファイバEF(希土類元素添加光ファイバ)と、エルビウム添加光ファイバEFに添加されているエルビウム(希土類元素)を励起させる励起光Lpを駆動電流に応じて発し、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザL(励起光源)と、を備える。また光増幅器Gは、励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLそれぞれにより発せられた励起光Lpを合成する偏波素子PB(合成部)を備える。励起コアCeは合計8個あり、8個の励起コアCeそれぞれに対し、励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLにより発せられた励起光Lpが合成されて導入される。
【0062】
光増幅器Gは、駆動電流Iによって二つの半導体レーザLを共に駆動させ、二つの半導体レーザLそれぞれによる励起光Lpが合成された励起光Lpによって一つの励起コアCeを励起させる。そのため、光増幅器Gは、一つの半導体レーザからの励起光により一つの励起コアを励起させる場合と比較して駆動電流Iを略1/2にできる。駆動電流Iを減少させることによって、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0063】
ここで、図5および図6は、光増幅器の動作電流と、光通信システムの消費電力および光通信システムへの供給電圧との関係を示すシミュレーション結果を説明する図である。図5は、励起コアCeが4個の場合を示し、図6は、励起コアCeが8個の場合を示している。
【0064】
図5および図6の横軸は光増幅器の動作電流[A]を示し、縦軸は消費電力[kW]および供給電圧[kV]を示している。また図5および図6における破線のグラフは供給電圧を表し、実線のグラフは消費電力を表している。
【0065】
図5において、消費電力Gp1Xは、比較例に係る光増幅器GXの消費電力を示し、供給電圧Gv1Xは、比較例に係る光増幅器GXの供給電圧を示している。比較例は、非特許文献1に記載されている数値条件に基づいてシミュレーションを行った結果である。消費電力Gp1は、本実施形態に係る光増幅器Gの消費電力を示し、供給電圧Gv1は、本実施形態に係る光増幅器Gの供給電圧を示している。
【0066】
同様に、図6おいて、消費電力Gp2Xは、比較例に係る光増幅器GXの消費電力を示し、供給電圧Gv2Xは、比較例に係る光増幅器GXの供給電圧を示している。消費電力Gp2は、本実施形態に係る光増幅器Gの消費電力を示し、供給電圧Gv2は、本実施形態に係る光増幅器Gの供給電圧を示している。
【0067】
光増幅器GXの動作電流は約1.1[A]であるのに対し、光増幅器Gの動作電流は約半分である0.5[A]程度である。図5の例では、動作電流の減少に伴って、消費電力Gp1Xの約12[kW]に対し、消費電力Gp1が6[kW]程度にまで減少した。また供給電圧Gv1Xの約11[kV]に対し、供給電圧Gv1は、9[kV]程度にまで減少した。
【0068】
図6の例では、消費電力Gp2Xの約15[kW]に対し、消費電力Gp2が9[kW]程度まで減少した。また供給電圧Gv2Xの約14[kV]に対し、供給電圧Gv1は15[kV]程度で、約1[kV]増加した。
【0069】
これらの結果から、本実施形態に係る光増幅器Gを備えることにより、光通信システムの抵抗損が小さくなり、光通信システムの消費電力が比較例に対して半分程度に抑制できることが分かった。また供給電圧は比較例に対して減少するか、あるいは増加してもわずかな増加であることが分かった。
【0070】
(変形例)
変形例に係る光増幅器Gaについて説明する。なお、第1実施形態と同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は適宜省略する。この点は、以降で説明する他の実施形態においても同様とする。
【0071】
本変形例では、光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe二つあたり三つの半導体レーザLを備えている。
【0072】
図7は、中継器Taに含まれている光増幅器Gaの構成を例示する図である。図7において、光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの三つの半導体レーザLと、偏波素子PBからPBの三つの偏波素子PBと、を備えている。光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの三つの半導体レーザLと、偏波素子PBからPBの三つの偏波素子PBと、を備えている。光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEF2M-1と、エルビウム添加光ファイバEF2Mと、半導体レーザL3M-2から半導体レーザL3Mの三つの半導体レーザLと、偏波素子PB3M-2からPB3Mの三つの偏波素子PBと、を備えている。
【0073】
上り光ファイバFuと下り光ファイバFdとに含まれる合計16個の信号コアCsそれぞれを通して伝送される信号光Lsを増幅するために、光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeを16個備えている。また光増幅器Gaは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe二つあたり三つで、合計24個の半導体レーザLを備えている。
【0074】
光増幅器Gaにおいて、半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは偏波素子PBに入射する。半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは偏波素子PBに入射する。半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは偏波素子PBに入射する。
【0075】
半導体レーザLによる励起光Lpのうち、偏波素子PBにより偏波分離された一部と、半導体レーザLによる励起光Lpと、が合成されて3DBカプラBに入射する。同様に、半導体レーザLによる励起光Lpのうち、偏波素子PBにより偏波分離された一部と、半導体レーザLによる励起光Lpと、が合成されて3DBカプラBに入射する。
【0076】
半導体レーザLにより発せられた励起光Lpは、偏波素子PBによって略均等な光パワーにより偏波分離されることが好ましく、それぞれの偏波の光パワーの差異は1[dB]以下であることが特に好ましい。
【0077】
3DBカプラBは、入射してきた二つの励起光Lpを合成した後、分岐比が略1対1になるように二つに分岐させる。3DBカプラBにより分岐された励起光Lpのうちの一方は、ポンプ合流器Pに入射し、信号コアCsを通して伝送されてきた信号光Lsと合流して、該信号光Lsと共にエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。エルビウム添加光ファイバEFは、励起光Lpにより励起されたエルビウムによって反転分布を形成し、エルビウム添加光ファイバEFを通る信号光Lsを増幅させる。
【0078】
一方、3DBカプラBにより分岐された励起光Lpのうちの他方は、ポンプ合流器Pに入射し、信号コアCsを通して伝送されてきた信号光Lsと合流して、該信号光Lsと共にエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。エルビウム添加光ファイバEFは、励起光Lpにより励起されたエルビウムにより反転分布を形成し、エルビウム添加光ファイバEFを通る信号光Lsを増幅させる。
【0079】
同様に、光増幅器Gaは、半導体レーザLから半導体レーザLの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCsおよび信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。光増幅器Gaは、半導体レーザL3M-2から半導体レーザL3Mの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCs2M-1および信号コアCs2Mを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0080】
光増幅器Gaから光増幅器Gaは、光増幅対象の信号コアCsが異なる点を除き、構成および機能は光増幅器Gaと同じである。
【0081】
光増幅器Gaが備えている半導体レーザLを駆動させる駆動回路は、半導体レーザLの数に合わせて数が3M個になる点を除き、図4に示した駆動回路Dと同様である。
【0082】
このように、光増幅器Gaは、駆動電流Iによって三つの半導体レーザLを共に駆動させ、三つの半導体レーザLそれぞれによる励起光Lpが合成された励起光Lpにより二つの励起コアCeを励起させる。これにより光増幅器Gaは、一つの半導体レーザからの励起光により励起コアを励起させる場合と比較して駆動電流Iを略2/3にできる。駆動電流Iを減少させることによって、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0083】
第1実施形態では、励起コアCe二つあたり四つの半導体レーザLによる励起光Lpが合成されて導入される構成を例示し、変形例では、励起コアCe二つあたり三つの半導体レーザLによる励起光Lpが合成されて導入される構成を例示したが、これに限定されるものではない。励起コアが合計二つ以上あり、励起コアそれぞれに対し、コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLにより発せられた励起光が合成されて導入されれば、励起コアCeの数と半導体レーザLに特段の制限はない。
【0084】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る光増幅器Gbについて説明する。本実施形態では、光増幅器Gbは、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLそれぞれにより発せられた励起光Lpを光注入同期方式により合成する。
【0085】
図8は、中継器Tbに含まれている光増幅器Gbの構成を例示する図である。図8において、光増幅器Gbは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの四つの半導体レーザLと、を備えている。半導体レーザLから半導体レーザLのうち、半導体レーザLと半導体レーザLは直列接続しており、また半導体レーザLと半導体レーザLは直列接続している。
【0086】
光増幅器Gbは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLから半導体レーザLの四つの半導体レーザLと、を備えている。半導体レーザLから半導体レーザLのうち、半導体レーザLと半導体レーザLは直列接続しており、また半導体レーザLと半導体レーザLは直列接続している。
【0087】
光増幅器Gbは、エルビウム添加光ファイバEF2M-1と、エルビウム添加光ファイバEF2Mと、半導体レーザL4M-3から半導体レーザL4Mの四つの半導体レーザLと、を備えている。半導体レーザL4M-3から半導体レーザL4Mのうち、半導体レーザL4M-3と半導体レーザL4M-2は直列接続しており、また半導体レーザL4Mと半導体レーザL4M-1は直列接続している。
【0088】
上り光ファイバFuと下り光ファイバFdとに含まれる合計16個の信号コアCsそれぞれを通して伝送される信号光Lsを増幅するために、光増幅器Gbは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeを16個備えている。また光増幅器Gbは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe一つあたり二つで、合計32個の半導体レーザLを備えている。
【0089】
光増幅器Gaにおいて、自ら発振している半導体レーザLに対し、半導体レーザLにより発せられた励起光Lpを入射させると、入射する励起光Lpの波長に半導体レーザLの発振波長が引き込まれる光注入同期現象が生じると共に、半導体レーザLによる励起光Lpと半導体レーザLによる励起光Lpとが合成される。合成された励起光Lpは、3DBカプラBに入射する。
【0090】
同様に、自ら発振している半導体レーザLに対し、半導体レーザLにより発せられた励起光Lpを入射させると、入射する励起光Lpの波長に半導体レーザLの発振波長が引き込まれる光注入同期現象が生じると共に、半導体レーザLによる励起光Lpと半導体レーザLによる励起光Lpとが合成される。合成された励起光Lpは、3DBカプラBに入射する。
【0091】
3DBカプラBは、入射してきた二つの励起光Lpを合成した後、分岐比が略1対1になるように二つに分岐させる。分岐された励起光Lpのうちの一方は、ポンプ合流器Pを介してエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射してエルビウムを励起させることにより、信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。また分岐された励起光Lpのうちの他方は、ポンプ合流器Pを介してエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射してエルビウムを励起させることにより、信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0092】
同様に、光増幅器Gbは、半導体レーザLから半導体レーザLの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCsおよび信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。光増幅器Gbは、半導体レーザL4M-3から半導体レーザL4Mの各半導体レーザLにより発せられた励起光Lpによって、信号コアCs2M-1および信号コアCs2Mを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0093】
光増幅器Gbから光増幅器Gbは、光増幅対象の信号コアCsが異なる点を除き、構成および機能は光増幅器Gbと同じである。
【0094】
光増幅器Gbが備えている半導体レーザLを駆動させる駆動回路は、図4に示した駆動回路Dと同様である。
【0095】
以上のように光増幅器Gbは、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLそれぞれにより発せられた励起光Lpを光注入同期方式により合成する。これにより、駆動電流Iを減少させ、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0096】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る光増幅器Gcについて説明する。本実施形態では、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLcは、直列に接続されている複数の半導体レーザLcを含む複数の半導体レーザ群LGにより構成されている。該半導体レーザ群LGに含まれている複数の半導体レーザLcは、共通する駆動電流により駆動される。なお、半導体レーザ群LGは、複数の半導体レーザ群の総称表記である。
【0097】
図9は、光増幅器Gcに含まれている半導体レーザLcを駆動させる駆動回路Dcの構成を例示する等価回路図である。半導体レーザLcから半導体レーザLc4M(M=8)の32個の半導体レーザLcは、半導体レーザ群LGから半導体レーザ群LG2Mの16個の半導体レーザ群LGにより構成されている。
【0098】
光増幅器Gcは、半導体レーザ群LGから半導体レーザ群LG2Mの16個の半導体レーザ群LGを駆動させるために、駆動回路Dcから駆動回路Dc2Mの16個の駆動回路Dcを備えている。駆動回路Dcから駆動回路Dc2Mは、直列に接続されている。駆動回路Dcから駆動回路Dc2Mは、第1給電装置10から供給される動作電流Sの少なくとも一部である駆動電流Iに応じて、半導体レーザLcから半導体レーザLc4Mの各半導体レーザLcを発光駆動させる。
【0099】
16個の半導体レーザ群LGそれぞれは、直列に接続されている二つの半導体レーザLcを含む。具体的には、半導体レーザ群LGは、直列に接続されている半導体レーザLcおよび半導体レーザLcを含む。半導体レーザLcおよび半導体レーザLcは、共通の駆動電流Iにより駆動される。半導体レーザ群LGは、直列に接続されている半導体レーザLcおよび半導体レーザLcを含む。半導体レーザLcおよび半導体レーザLcは、共通の駆動電流Iにより駆動される。半導体レーザ群LG2Mは、直列に接続されている半導体レーザLc4M-1および半導体レーザLc4Mを含む。半導体レーザLc4M-1および半導体レーザLc4Mは、共通の駆動電流I2Mにより駆動される。
【0100】
半導体レーザLcの構成以外の駆動回路Dcの構成および機能は、第1実施形態で説明した駆動回路Dと同じである。
【0101】
光増幅器Gcは、二つの半導体レーザLcを共通する駆動電流Iにより駆動させることによって、第1実施形態に係る光増幅器Gと比較して、励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLcを駆動させる駆動回路Dcの数を減らし、電流源A1の数を減らすことができる。これにより光増幅器Gcは、電圧降下を抑制し、光増幅器Gcの動作電流を小さくすることができる。また光増幅器Gcは、駆動回路Dcの数を減らすことにより、駆動回路Dcの配置面積を小さくすることができる。これら以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0102】
半導体レーザ群LGを構成する半導体レーザLcの数は二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。また駆動回路Dcは、光増幅器Gaおよび光増幅器Gbそれぞれにも適用可能である。駆動回路Dcを光増幅器Gaに適用する場合には、例えば、一つの駆動回路Dcには三つの半導体レーザLcが設けられる。
【0103】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る光増幅器Gdについて説明する。本実施形態では、光増幅器Gdは、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLdそれぞれにより発せられた励起光Lpを複合共振器方式により合成する。
【0104】
図10は、光増幅器Gdに含まれている複数の半導体レーザLdのうち、半導体レーザLdおよび半導体レーザLdを例示する図である。
【0105】
図10に示すように、半導体レーザLdおよび半導体レーザLdは、共振方向50に沿って縦続接続しており、複合共振器を構成している。半導体レーザLdおよび半導体レーザLdは、上面電極51と、下面電極52と、上面電極51側に電流ブロック層53と、を備えている。また半導体レーザLdおよび半導体レーザLdは、半導体レーザLdと半導体レーザLdとが向き合うそれぞれの端面に、反射防止膜54を備えている。半導体レーザLdおよび半導体レーザLdそれぞれにおいて、半導体レーザLdと半導体レーザLdとが向き合う端面に対し、反対側の端面には反射面が設けられている。上面電極51は、配線55を介して電流源A1に接続している。
【0106】
駆動電流Iは、電流源A1から配線55および上面電極51を通って半導体レーザLdに供給される。駆動電流Iは、半導体レーザLdを流れた後、配線56を通って半導体レーザLdに供給される。つまり、半導体レーザLdおよび半導体レーザLdには共通の駆動電流Iが供給される。
【0107】
半導体レーザLdおよび半導体レーザLdは、それぞれの活性層57に駆動電流Iが流れることにより発光した光を活性層57内で共振方向50に沿って往復させ、誘導放出によりレーザ光を発振する。半導体レーザLdおよび半導体レーザLdは、それぞれにより発せられたレーザ光が合成されたレーザ光を、励起光Lpとして出力方向58側に出力させる。
【0108】
電流ブロック層53は、例えば、活性層57内に光を閉じ込めるために設けられている。反射防止膜54は、例えば、共振方向50に沿って光が活性層57内を往復する際に、半導体レーザLdと半導体レーザLdとの境界面での反射を防止し、レーザ光の発振効率を高めるために設けられている。
【0109】
光増幅器Gdにおける駆動回路には、図9の駆動回路Dcを適用できる。この場合には、図10における半導体レーザLdは、図9における半導体レーザLcに対応し、図10における半導体レーザLdは、図9における半導体レーザLcに対応する。
【0110】
光増幅器Gdに含まれている複数の半導体レーザLdのうち、半導体レーザLdおよび半導体レーザLd以外の半導体レーザLdにおいても、構成および機能は半導体レーザLdおよび半導体レーザLdと同じである。
【0111】
以上のように光増幅器Gdは、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLdそれぞれにより発せられた励起光Lpを複合共振器方式により合成する。これにより、駆動電流Iを減少させ、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0112】
また光増幅器Gdは、共通する駆動電流Iにより二つの半導体レーザLdを駆動させることによって、第1実施形態に係る光増幅器Gと比較して、励起コアCe一つあたり二つの半導体レーザLdに駆動電流を供給する駆動回路Dcの数を減らし、電流源A1の数を減らすことができる。これにより光増幅器Gdは、電圧降下を抑制し、光増幅器Gdの動作電流を小さくすることができる。また光増幅器Gdは、駆動回路の数を減らすことにより、駆動回路の配置面積を小さくすることができる。これら以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0113】
本実施形態では、複合共振器方式による励起光Lpの合成について例示したが、主発振器出力増幅器方式を適用してもよい。主発振器出力増幅器方式の場合には、図10において、半導体レーザLdは、第1の発振器に対応し、半導体レーザLdは第2の発振器に対応する。第1発振器は、例えば高品位ビーム発生用の高安定な発振器である。第2発振器は、例えば高出力な発振器である。半導体レーザLdによる励起光Lpと、半導体レーザLdによる励起光Lpと、が合成された高出力な励起光Lpは、出力方向58に沿って半導体レーザLd側から取り出される。
【0114】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る光増幅器Geについて説明する。本実施形態では、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLeは、直列に接続されている複数の半導体レーザLeを含む半導体レーザ群LGを一部に含んで構成されている。該半導体レーザ群LGに含まれている複数の半導体レーザLeは、共通する駆動電流により駆動される。
【0115】
光増幅器Geの構成には、図7に示した中継器Taに含まれている光増幅器Gaと同じ構成を適用できる。
【0116】
図11は、光増幅器Geに含まれている半導体レーザLeを駆動させる駆動回路Deの構成を例示する等価回路図である。駆動回路Deから駆動回路De2Mは直列に接続されている。駆動回路Deから駆動回路De2Mは、第1給電装置10から供給される動作電流Sの少なくとも一部である駆動電流Iに応じて、半導体レーザLeから半導体レーザLe4Mの各半導体レーザLcを発光駆動させる。
【0117】
駆動回路Deから駆動回路De2Mのうち、奇数番目の駆動回路Deには、一つの半導体レーザLeが設けられている。偶数番目の駆動回路Deには、直列に接続されている二つの半導体レーザLeを含む半導体レーザ群LGが設けられている。
【0118】
具体的には、駆動回路Deには、一つの半導体レーザLeが設けられている。駆動回路Deには、直列に接続されている半導体レーザLeおよび半導体レーザLeを含む半導体レーザ群LGが設けられている。半導体レーザLeおよび半導体レーザLeは、共通の駆動電流Iにより駆動される。駆動回路De2Mには、直列に接続されている半導体レーザLe3M-1および半導体レーザLe3Mを含む半導体レーザ群LG2Mが設けられている。半導体レーザLe3M-1および半導体レーザLe3Mは、共通の駆動電流Iにより駆動される。
【0119】
半導体レーザLeの構成以外の駆動回路Deの構成および機能は、第1実施形態で説明した駆動回路Dと同じである。
【0120】
以上のように、光増幅器Geは、三つの半導体レーザLeを駆動電流Iにより共に駆動させ、三つの半導体レーザLeそれぞれによる励起光Lpが合成された励起光Lpによって二つの励起コアCeを励起させる。これにより光増幅器Geは、一つの半導体レーザからの励起光により励起コアを励起させる場合と比較して、駆動電流Iを略2/3にできる。駆動電流Iを減少させることにより、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。
【0121】
また光増幅器Geは、三つの半導体レーザLeのうち、二つの半導体レーザLeを共通する駆動電流Iにより駆動させることによって、第1実施形態に係る光増幅器Gと比較して、励起コアCe二つあたり三つの半導体レーザLeに駆動電流を供給する駆動回路Deの数を減らし、電流源A1の数を減らすことができる。これにより光増幅器Geは、電圧降下を抑制し、光増幅器Geの動作電流を小さくすることができる。また光増幅器Geは、駆動回路Deの数を減少させることにより、駆動回路Deの配置面積を小さくすることができる。これら以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0122】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る光増幅器Gfについて説明する。本実施形態では、励起コアCe一つあたり一つを超える数の半導体レーザLfは、直列に接続されている複数の半導体レーザLfを含む半導体レーザ群LGを含んで構成されている。該半導体レーザ群LGに含まれている複数の半導体レーザLfは、共通する駆動電流により駆動される。またエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe二つあたり三つの半導体レーザLfを備えており、三つの半導体レーザLfそれぞれにより発せられた励起光Lpを、光注入同期方式により合成する。
【0123】
図12は、中継器Tfに含まれている光増幅器Gfの構成を例示する図である。
【0124】
図12において、光増幅器Gfは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLfから半導体レーザLfの三つの半導体レーザLfと、を備えている。半導体レーザLfから半導体レーザLfは直列接続している。
【0125】
光増幅器Gfは、エルビウム添加光ファイバEFと、エルビウム添加光ファイバEFと、半導体レーザLfから半導体レーザLfの三つの半導体レーザLfと、を備えている。半導体レーザLfから半導体レーザLfは直列接続している。
【0126】
光増幅器Gfは、エルビウム添加光ファイバEF2M-1と、エルビウム添加光ファイバEF2Mと、半導体レーザLf3M-2から半導体レーザLf3Mの三つの半導体レーザLfと、を備えている。半導体レーザLf3M-2から半導体レーザLf3Mは直列接続している。
【0127】
光増幅器Gfは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeを16個備えている。また光増幅器Gfは、エルビウム添加光ファイバEFの励起コアCe二つあたり三つで、合計24個の半導体レーザLfを備えている。
【0128】
光増幅器Gfにおいて、自ら発振している半導体レーザLfに対し、半導体レーザLfにより発せられた励起光Lpを入射させると、半導体レーザLfの発振波長が入射する励起光Lpの波長に引き込まれる光注入同期現象が生じると共に、半導体レーザLfによる励起光Lpと半導体レーザLfによる励起光Lpとが合成される。合成された励起光Lpは、3DBカプラBに入射する。
【0129】
同様に、自ら発振している半導体レーザLfに対し、半導体レーザLfにより発せられた励起光Lpを入射させると、半導体レーザLfの発振波長が入射する励起光Lpの波長に引き込まれる光注入同期現象が生じると共に、半導体レーザLfによる励起光Lpと半導体レーザLfによる励起光Lpとが合成される。合成された励起光Lpは、3DBカプラBに入射する。
【0130】
半導体レーザLfから半導体レーザLfおよび半導体レーザLfのそれぞれに入射される光パワーは略均等であることが好ましく、両者間での光パワーの差異は1[dB]以下であると特に好ましい。
【0131】
3DBカプラBは、入射してきた二つの励起光Lpを合成した後、分岐比が略1対1になるように二つに分岐させる。分岐された励起光Lpのうちの一方は、ポンプ合流器Pを介してエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。分岐された励起光Lpのうちの他方は、ポンプ合流器Pを介してエルビウム添加光ファイバEFの励起コアCeに入射する。光増幅器Gfは、励起光Lpによりエルビウムを励起させることにより、信号コアCsおよび信号コアCsを通してそれぞれ伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0132】
同様に、光増幅器Gfは、半導体レーザLfから半導体レーザLfの各半導体レーザLfにより発せられた励起光Lpにより、信号コアCsおよび信号コアCsを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。光増幅器Gfは、半導体レーザLf3M-3から半導体レーザLf3Mの各半導体レーザLfにより発せられた励起光Lpにより、信号コアCs2M-1および信号コアCs2Mを通して伝送される信号光Lsを増幅させる。
【0133】
光増幅器Gfから光増幅器Gfは、光増幅対象の信号コアCsが異なる点を除き、構成および機能は光増幅器Gfと同じである。
【0134】
光増幅器Gfが備えている半導体レーザLfを駆動させる駆動回路は、図11に示した駆動回路Deを適用できる。
【0135】
以上のように光増幅器Gfは、励起コアCe二つあたり三つの半導体レーザLfそれぞれにより発せられた励起光Lpを光注入同期方式により合成することによって、駆動電流Iを減少させ、動作電流が小さい光増幅器を提供できる。また光増幅器Gfは、電圧降下を抑制し、光増幅器Geの動作電流を小さくすると共に、駆動回路Deの配置面積を小さくすることができる。
【0136】
本実施形態では光注入同期方式を例示したが、複合共振器方式または主発振器出力増幅器方式を適用することもできる。また光増幅器Gfは、偏波合成方式、光注入同期方式、複合共振器方式または主発振器出力増幅器方式を組み合わせて、励起光Lpを合成してもよい。
【0137】
以上、各実施形態および変形例を説明してきたが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0138】
上述した実施形態では、光通信システムとして光海底ケーブルシステムを例示したが、これに限定されるものではない。実施形態は、光海底ケーブルシステム以外の光通信システムにも適用可能である。
【0139】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【符号の説明】
【0140】
100…光通信システム、
10…第1給電装置、
20…第2給電装置、
50…共振方向、
51…上面電極、
52…下面電極、
53…電流ブロック層、
54…反射防止膜、
55,56…配線、
57…活性層、
58…出力方向、
M…信号コアの数、
Ai,Ao…直流電流源、
T,Ta,Tb,Tf…中継器、
PL…給電線、
R…抵抗、
V,Vs,VL…電圧、
G,Ga,Gb,Gc,Gd,Ge,Gf…光増幅器、
L,Lc,Ld,Le,Lf…半導体レーザ(励起光源)、
PB…偏波素子(合成部)、
B…3DBカプラ、
P…ポンプ合流器、
EF…エルビウム添加光ファイバ(希土類元素添加光ファイバ)、
Fu…上り光ファイバ、
Fd…下り光ファイバ、
Lp…励起光、
Ls…信号光、
Cs…信号コア、
Ce…励起コア(コア)、
CL…クラッド、
Cv…定電圧回路、
Ci…定電流回路、
I…駆動電流、
Is…電流、
Vr…基準電圧、
Ir…基準電流、
A1,A2…電流源、
Gv1,Gv1X,Gv2,Gv2X…供給電圧、
Gp1,Gp1X, Gp2,Gp2X…消費電力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12