(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】送電設備監視システム、伝送装置、基地局および送電設備監視方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20250422BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250422BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20250422BHJP
H02J 50/30 20160101ALI20250422BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J50/10
H02J50/20
H02J50/30
(21)【出願番号】P 2021116170
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】雲藤 勝義
(72)【発明者】
【氏名】梅村 侑史
(72)【発明者】
【氏名】岩間 成美
(72)【発明者】
【氏名】長野 宏治
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205070621(CN,U)
【文献】特開2020-129857(JP,A)
【文献】特表2016-517261(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得し、前記電力を非接触で伝送可能に構成された伝送装置と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する基地局と、
を備え
、
前記基地局は、前記設備情報を前記伝送装置に送信し、
前記伝送装置は、前記基地局から受信した前記設備情報を、前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、外部に送信する
送電設備監視システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の送電設備監視システムに用いられる
伝送装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の送電設備監視システムに用いられる
基地局。
【請求項4】
伝送装置を用い、電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する工程と、
前記伝送装置から基地局に向けて前記電力を非接触で伝送する工程と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を前記基地局にて取得する工程と、
前記設備情報を前記基地局から前記伝送装置に送信する工程と、
前記伝送装置が前記基地局から受信した前記設備情報を、前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、前記伝送装置から外部に送信する工程と、
を備える
送電設備監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電設備監視システム、伝送装置、基地局および送電設備監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電設備を監視する送電設備監視装置(送電設備監視システム)において、電池を充電するために、太陽電池が用いられることがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得し、前記電力を非接触で伝送可能に構成された伝送装置と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する基地局と、
を備える
送電設備監視システムが提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、
上述の送電設備監視システムに用いられる
伝送装置が提供される。
【0007】
本開示の更に他の態様によれば、
上述の送電設備監視システムに用いられる
基地局が提供される。
【0008】
本開示の更に他の態様によれば、
伝送装置を用い、電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する工程と、
前記伝送装置から基地局に向けて前記電力を非接触で伝送する工程と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を前記基地局にて取得する工程と、
を備える
送電設備監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る送電設備監視システムを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、伝送装置を示す概略ブロック図である。
【
図3】
図3は、基地局を示す概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る送電設備監視方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0012】
従来、送電設備を監視する送電設備監視システムにおいて、以下の(i)および(ii)の課題が生じることがあった。
【0013】
(i)電力確保について
従来の送電設備監視システムでは、上述の特許文献1のように、電池を充電するために、太陽電池が用いられることがあった。例えば、天候が良い日の太陽光によって、太陽電池において起電力を発生させ、電池を充電していた。
【0014】
しかしながら、例えば、天候が悪い日が続いた期間では、太陽光が現れないため、太陽電池において起電力を発生させることが困難であった。そのため、送電設備監視システムにおいて、電池を充分に充電することができず、各種センサに対して設備情報の取得に必要な電力を充分に供給できなかった。
【0015】
天候が悪い日に送電設備の異常が起こりやすいことから、このような状況下で設備情報を取得できないと、送電設備監視システムの本来の目的を果たすことが困難となるおそれがあった。
【0016】
したがって、天候によらず安定的に設備情報を取得可能な送電設備監視システムが望まれていた。
【0017】
(ii)通信について
送電設備監視システムでは、センサからの設備情報を収集する必要がある。
【0018】
従来では、例えば、上述の特許文献1のように、情報取得装置を用いた無線通信により、設備情報を監視装置から取得していた。
【0019】
すなわち、特許文献1では、鉄塔に設けられた監視装置において、設備情報を取得し、記録部に記録する。設備情報を収集する場合には、情報取得装置を持参した保守員が、監視装置に通信可能な距離まで近づく。接近後、保守員が、情報取得装置を用い、監視装置に向けて無線により送信要求を送信する。その後、監視装置から情報取得装置に無線により設備情報を受信する。このようにして設備情報が収集される。
【0020】
或いは、従来では、例えば、送電設備監視システムにおいて、鉄塔ごとに配置された複数の子機装置を数珠つなぎ状に介して、設備情報を無線通信により伝送することもあった。このような無線通信は、マルチホップ無線通信(またはバケツリレー無線通信)と呼ばれている。
【0021】
このように、従来では、近距離の無線通信により設備情報を収集していた。
【0022】
しかしながら、上述の特許文献1の方法では、保守員の情報収集作業が必要となっていた。このため、送電設備監視システムの運用に多大な労力と時間を要していた。
【0023】
また、上述の近距離のマルチホップ無線通信による方法では、通信経路中に山脈または建物などの障害物があった場合に、電波障害が生じる可能性があった。この場合、障害物を迂回するために、子機装置を増設する必要があった。このため、送電設備監視システムのコストが増大していた。
【0024】
したがって、長距離に亘って設備情報を安定的に伝送可能な送電設備監視システムが望まれていた。
【0025】
本開示は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0026】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0027】
[1]本開示の一態様に係る送電設備監視システムは、
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得し、前記電力を非接触で伝送可能に構成された伝送装置と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する基地局と、
を備える。
この構成によれば、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保することができる。
【0028】
[2]上記[1]に記載の送電設備監視システムにおいて、
前記基地局は、前記設備情報を前記伝送装置に送信し、
前記伝送装置は、前記基地局から受信した前記設備情報を、前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、外部に送信する。
この構成によれば、長距離に亘って、設備情報を安定的に伝送することができる。
【0029】
[3]本開示の他の態様に係る伝送装置は、
上記[1]又は[2]に記載の送電設備監視システムに用いられる。
この構成によれば、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保することができる。
【0030】
[4]本開示の更に他の態様に係る基地局は、
上記[1]又は[2]に記載の送電設備監視システムに用いられる。
この構成によれば、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保することができる。
【0031】
[5]本開示の更に他の態様に係る送電設備監視方法は、
伝送装置を用い、電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する工程と、
前記伝送装置から基地局に向けて前記電力を非接触で伝送する工程と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を前記基地局にて取得する工程と、
を備える。
この構成によれば、送電設備監視システムにおいて安定的に電力を確保することができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
<本開示の一実施形態>
(1)送電設備監視システム
本開示の一実施形態に係る送電設備監視システム10について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る送電設備監視システムを示す概略斜視図である。
図2は、伝送装置を示す概略ブロック図である。
図3は、基地局を示す概略ブロック図である。なお、
図1は、送電設備の一部を示しており、簡略化のため、電力線100などの一部を省略している。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の送電設備監視システム10は、例えば、伝送装置(PLC変換器)30と、基地局50と、管理センタ(監視センタ)70と、を備えている。
【0035】
[送電設備]
図1に示すように、本実施形態の送電設備監視システム10が適用される送電設備は、例えば、複数の鉄塔900と、複数の電力線100と、を有している。
【0036】
複数の鉄塔900は、例えば、所定の間隔で設けられている。それぞれの鉄塔900は、電力線100を支持している。
【0037】
複数の電力線100は、例えば、複数の鉄塔900の間に架線されている。電力線100は、例えば、1相あたり4本設けられている。電力線100は、例えば、いわゆる架空送電線として構成されている。具体的には、電力線100は、例えば、鋼心アルミ撚線(ACSR)などである。
【0038】
[伝送装置]
図1および
図2に示すように、本実施形態の伝送装置30は、例えば、電力線100に装着され、基地局50への電力の非接触伝送と、基地局50から管理センタ70への設備情報の伝送(中継)と、を行うよう構成されている。
【0039】
具体的には、伝送装置30は、例えば、カレントトランス部(以下、「CT部」ともいう)322と、電源部(電力変換部、電力調整部)324と、給電部340と、受信部360と、送信部380と、を有している。
【0040】
(CT部)
図2に示すように、CT部322は、例えば、電力線100に流れる電流に基づいて電力線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させるように構成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態のCT部322は、例えば、コア322aと、コイル322bと、を有している。コア322aは、例えば、電力線100の外周を囲むように環状(円弧状、楕円弧状)に配置される。また、コア322aは、フェライトなどの磁性体を含んでいる。コイル322bは、コア322aの少なくとも一部に巻回されている。このような構成により、電力線100に流れる電流によって電力線100の周囲でコア322aに生じる磁束の変化に基づいて、電磁誘導によりコイル322bに誘導電流を生じさせることができる。
【0042】
(電源部)
図2に示すように、電源部324は、例えば、CT部322、給電部340、受信部360および送信部380に接続されている。電源部324は、例えば、CT部322で発生した電力を、CT部322以外の各部に適した電力に変換して供給するよう構成されている。具体的には、電源部324は、例えば、CT部322で発生した交流電力を各部に適した直流電力に変換するよう構成されている。また、電源部324は、例えば、CT部322で発生した電圧を各部に適した電圧に変圧するよう構成されている。
【0043】
(給電部)
給電部340は、例えば、電源部324に接続され、基地局50に向けて電力を非接触で伝送するよう構成されている。
【0044】
非接触給電(ワイヤレス給電)の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、結合型または空間伝送型などが挙げられる。結合型の方法としては、例えば、磁界結合または電界結合などが挙げられる。一方で、空間伝送型の方法としては、例えば、マイクロ波伝送またはレーザ伝送などが挙げられる。
【0045】
本実施形態では、電力線100に装着される伝送装置30が基地局50から離れているため、比較的長距離の伝送に適した空間伝送型の非接触給電が好ましい。
【0046】
本実施形態では、給電部340は、空間伝送型として、例えば、送信アンテナ342からのマイクロ波により電力を伝送するよう構成されている。
【0047】
給電部340から伝送されるマイクロ波の周波数帯は、高ければ高いほど、伝送効率を高くすることができるため、好ましい。ただし、給電部340からのマイクロ波の周波数帯は、後述の基地局50からの無線通信の周波数帯と重ならないことが好ましく、互いに離れていることがより好ましい。具体的には、給電部340からの非接触給電の周波数帯は、GHz帯とし、基地局50からのデータ無線通信の周波数帯は、MHz帯とする。これにより、給電部340から基地局50への電力伝送と、基地局50から伝送装置30への情報伝送との干渉を抑制することができる。
【0048】
(受信部)
受信部360は、例えば、基地局50からの設備情報をアンテナ362により受信するよう構成されている。なお、受信部360は、例えば、設備情報を一時的に保持するメモリ(不図示)を有していてもよい。
【0049】
(送信部)
送信部380は、例えば、受信部360に接続され、受信部360から設備情報を取得するよう構成されている。また、送信部380は、例えば、電力線100を通信回線として用いた電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)により、設備情報を外部に送信するよう構成されている。
【0050】
送信部380によるPLCの結合方式としては、特に限定されるものではないが、1線大地間結合方式、または、線間結合方式などが挙げられる。本実施形態の送信部380では、1線大地間結合方式または線間結合方式のどちらも採用することができる。
【0051】
例えば、1線大地間結合方式の場合、変電所もしくは発電所内の結合コンデンサを介して、送信部380と大地と接続することができる。
【0052】
しかしながら、漏洩電界を考慮すると、本実施形態での送信部380は、例えば、線間結合方式により構成されていることが好ましい。
【0053】
具体的な構成としては、
図2に示すように、送信部380は、例えば、信号生成部382と、回路部384と、を有している。
【0054】
信号生成部382は、例えば、設備情報を変調して設備情報信号(以下、単に「信号」ともいう)を生成するよう構成されている。なお、信号生成部382は、結合フィルタなどを有していてもよい。
【0055】
回路部384は、例えば、電力線100(の電力波)に対して、信号生成部382からの高周波の信号を重畳させるよう構成されている。具体的には、回路部384は、例えば、ブロッキングコイル384aと、結合コンデンサ384bと、を有している。ブロッキングコイル384aは、例えば、電力線100に直列に挿入され、外部(例えば発電所または変電所側)への設備情報信号の搬送波の流失を抑制するよう構成されている。結合コンデンサ384bは、例えば、電力線100と信号生成部382とを接続している。このような構成により、電力線100への信号の重畳が可能となる。
【0056】
なお、
図2に示した回路部384は、あくまで簡略化した一例であって、必ずしも同じ回路構成である必要はない。
【0057】
[基地局]
図1および
図3に示すように、基地局50は、伝送装置30から離れた位置に配置されている。具体的には、基地局50は、例えば、電力線100を支持する鉄塔900の下端付近に設けられ、鉄塔900の高さに相当する距離だけ伝送装置30から離れている。また、基地局50は、鉄塔900に対して強固に固定されている。
【0058】
本実施形態では、基地局50は、例えば、伝送装置30から非接触で伝送された電力により、送電設備に関する設備情報を取得するよう構成されている。したがって、基地局50は、伝送装置30に対して有線では接続されていない。
【0059】
具体的には、基地局50は、例えば、受電部512と、整流部514と、電池516と、レギュレータ518と、情報取得部520と、送信部530と、制御部540と、を有している。
【0060】
(受電部)
受電部512は、例えば、伝送装置30から伝送された電力を非接触で取得(受電)するよう構成されている。
【0061】
本実施形態では、上述のように、給電部340がマイクロ波を伝送するよう構成されているため、受電部512は、例えば、受信アンテナ512aによりマイクロ波を受信し、電力を取得するよう構成されている。
【0062】
(整流部)
整流部514は、例えば、受電部512に接続され、受電部512で得られたマイクロ波(すなわち、高周波)の電力を直流に変換するよう構成されている。具体的には、整流部514は、例えば、整流性を有するダイオード、波形を整形するフィルタなどを有している。
【0063】
上述の受電部512と整流部514とにより、マイクロ波伝送で用いられる、いわゆる「レクテナ(Rectenna)」を構成していると考えてもよい。
【0064】
(電池)
電池516は、例えば、整流部514に接続され、受電部512から整流部514を介して得た電力を蓄えるよう構成されている。また、電池516は、例えば、制御部540およびレギュレータ518に接続され、制御部540およびレギュレータ518に電力を供給するよう構成されている。
【0065】
具体的な電池516としては、例えば、鉛蓄電池またはリチウムイオン電池が挙げられる。
【0066】
(レギュレータ)
レギュレータ518は、例えば、電池516、情報取得部520、送信部530および制御部540に接続され、電池516から各部に供給される電力を調整するよう構成されている。
【0067】
(情報取得部)
情報取得部520は、例えば、受電部512からレギュレータ518を経由して供給される電力により、送電設備に関する設備情報(監視データ)を取得するよう構成されている。
【0068】
具体的な情報取得部520としては、例えば、カメラ522、センサ524などが挙げられる。
【0069】
カメラ522は、設備情報として、例えば、送電設備付近の画像を取得するよう構成されている。なお、カメラ522が取得する送電設備付近の画像としては、例えば、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また、カメラ522は例えば、AIカメラ(Artificial Intelligence Camera)として構成されており、正常時の画像を基準として現在の画像を比較し、現在の異常個所を撮像するよう構成されていてもよい。
【0070】
センサ524としては、例えば、測位センサ、振動センサ、環境センサなどが挙げられる。
【0071】
測位センサは、例えば、鉄塔900などに取り付けられ、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)により鉄塔900などの位置の変化を検出するよう構成されている。
【0072】
振動センサは、例えば、鉄塔900または電力線100などに取り付けられ、鉄塔900などの振動を検知するよう構成されている。
【0073】
環境センサとしては、例えば、送電設備付近の温度を測定する温度センサ、送電設備付近の風向および風速を測定する風向風速センサ、腐食センサ、雷撃センサなどが挙げられる。
【0074】
(送信部)
送信部530は、例えば、情報取得部520からの設備情報を伝送装置30に向けて、アンテナ532により無線で送信するよう構成されている。
【0075】
送信部530からの通信方式としては、特に限定されるものではないが、例えば、特定小電力無線などが挙げられる。
【0076】
(制御部)
制御部540は、例えば、受電部512、レギュレータ518、情報取得部520および送信部530を制御するよう構成されている。
【0077】
具体的には、制御部540は、例えば、コンピュータとして構成され、例えば、CPU(Central Processing Unit)542と、RAM(Random Access Memory)544と、記憶装置546と、I/Oポート548と、を有している。RAM544、記憶装置546およびI/Oポート548は、CPU542とデータ交換可能に構成されている。I/Oポート548は、例えば、受電部512、レギュレータ518、情報取得部520および送信部530に接続されている。
【0078】
記憶装置546は、例えば、送電設備監視プログラム、情報取得部520から得られた各種設備情報などを記憶するよう構成されている。記憶装置546は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などである。
【0079】
RAM544は、CPU542によって記憶装置546から読み出されるプログラムや情報等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0080】
CPU542は、記憶装置546に格納された所定のプログラムを実行することで、例えば、電力制御部542a、情報集約部542bおよび送信制御部542cとして機能するように構成されている。
【0081】
電力制御部542aは、例えば、伝送装置30から電力を取得するとともに、各部に適した電力を供給するよう、受電部512およびレギュレータ518を制御する。
【0082】
情報集約部542bは、例えば、情報取得部520からの設備情報を集約するよう構成されている。
【0083】
送信制御部542cは、例えば、集約された設備情報を伝送装置30に送信するよう、送信部530を制御する。
【0084】
上述の制御部540の各部を実現するための所定プログラムは、例えば、制御部540が構成するコンピュータにインストールして用いられる。プログラムは、例えば、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。或いは、プログラムは、例えば、図示されていない受信部を通じて当該コンピュータへ提供されるものであってもよい。
【0085】
上述の制御部540が機能する各部による送電設備監視方法については、詳細を後述する。
【0086】
[伝送装置および基地局の設置数]
本実施形態では、伝送装置30および基地局50は、例えば、互いに異なる位置に複数組設けられている。これにより、長距離の送電力線路に亘って、設備情報を取得し、設備情報をPLCにより伝送することができる。
【0087】
[管理センタ]
図1に示すように、管理センタ70は、例えば、伝送装置30から離れた位置に設けられている。管理センタ70は、例えば、基地局50から伝送装置30を介して設備情報を取得し、設備情報に基づいて送電設備を監視するよう構成されている。管理センタ70は、例えば、少なくとも受信部780を有している。
【0088】
管理センタ70の受信部780は、例えば、電力線100を通信回線として用いたPLCにより、伝送装置30から設備情報を受信するよう構成されている。また、受信部780は、例えば、伝送装置30からの設備情報信号を復調して設備情報を取得するよう構成されている。
【0089】
なお、管理センタ70の受信部780の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、伝送装置30の送信部380と同様の構成(これらの間の中央を挟んで送信部380と対称の構成)とすることができる。
【0090】
また、管理センタ70において、受信部780と本体部との送受信は、有線であっても無線であってもよい。
【0091】
(2)送電設備監視方法
次に、
図4を参照し、本実施形態の送電設備監視方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る送電設備監視方法を示すフローチャートである。なお、送電設備監視方法は、電力情報伝送方法として考えてもよい。
【0092】
本実施形態の送電設備監視方法は、例えば、準備工程S100と、電力取得工程S220と、非接触給電工程S240と、情報取得工程S320と、情報中継工程S340と、PLC工程S420と、終了判断工程S440と、を有している。以下、基地局50の各部の動作は、制御部540により制御される。
【0093】
(S100:準備工程)
まず、送電設備監視システム10を準備する。
【0094】
具体的には、例えば、送電設備における送電が停止されている期間において、電力線100に対して伝送装置30を装着し、給電および情報伝送が可能な状態に伝送装置30を準備する。また、受電、情報取得および情報送信が可能な状態に基地局50を準備する。また、管理センタ70を情報受信可能な状態に準備する。
【0095】
(S220:電力取得工程)
送電設備監視システム10の準備が完了したら、伝送装置30のCT部322を用い、送電中の電力線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する。
【0096】
(S240:非接触給電工程)
CT部322により電力を取得したら、伝送装置30の給電部340から基地局50の受電部512に向けて、例えば、マイクロ波により非接触で電力を伝送する。
【0097】
基地局50において、受電部512が電力を取得したら、受電部512で得られた電力を、整流部514により直流に変換する。電力を変換したら、電池516を充電する。
【0098】
上述の電力取得工程S220および非接触給電工程S240は連続的に実施され、後述の終了まで継続される。
【0099】
(S320:情報取得工程)
基地局50において、電池516が満充電された状態、または、電池516への充電が継続されている状態で、受電部512からレギュレータ518を経由して供給される電力により、それぞれの情報取得部520において、送電設備に関する設備情報を取得する。
【0100】
それぞれの情報取得部520により設備情報を取得したら、情報取得部520からの設備情報を制御部540に集約し、集約した設備情報を記憶装置546に記録する。
【0101】
(S340:情報中継工程)
設備情報を集約したら、基地局50の送信部530から伝送装置30に向けて、設備情報を無線で送信する。送信部530から設備情報を送信したら、基地局50からの設備情報を、伝送装置30の受信部360により受信する。
【0102】
(S420:PLC工程)
伝送装置30が設備情報を受信したら、伝送装置30の送信部380から、電力線100を通信回線として用いたPLCにより、設備情報を送信する。
【0103】
伝送装置30から設備情報を送信したら、管理センタ70の受信部780において、PLCにより設備情報を受信する。これにより、基地局50から伝送装置30を介して得た設備情報を、管理センタ70に集約する。
【0104】
管理センタ70では、集約した設備情報に基づいて、送電設備を監視する。例えば、設備情報に基づいて、送電設備またはその周辺において、異常がないかを確認する。
【0105】
(S440:終了判断工程)
PLC工程S420が完了したら、送電設備監視システム10による監視を終了させるか否かを判断する。
【0106】
送電設備監視システム10による監視を終了させない場合には(S440でNo)、伝送装置30からの非接触給電が継続された状態で、情報取得工程S320以降の工程を繰り返す。
【0107】
一方で、送電設備監視システム10による監視を終了させる場合には(S440でYes)、伝送装置30による給電並びに情報伝送、基地局50による情報取得並びに情報送信、および管理センタ70による監視などを終了させる。
【0108】
以上により、本実施形態の送電設備監視工程を終了する。
【0109】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0110】
(a)本実施形態では、伝送装置30は、送電中の電力線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得し、電力を非接触で伝送可能に構成されている。基地局50は、伝送装置30から非接触で伝送された電力により、送電設備に関する設備情報を取得するよう構成されている。
【0111】
伝送装置30において送電中の電力線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得することで、送電設備周辺における天候によらず、絶え間なく安定的に電力を取得することができる。
【0112】
伝送装置30から基地局50に向けて非接触で電力を供給することで、超高電圧で送電している電力線100と基地局50との接触を回避し、伝送装置30から基地局50への電力伝送に起因した地絡(事故電流)を抑制することができる。これにより、伝送装置30から基地局50に向けて、安全、且つ、安定的に電力を伝送することができる。
【0113】
以上のように、本実施形態では、送電設備監視システム10において必要な電力を安定的に確保することができる。その結果、天候によらず設備情報を取得し、送電設備を安定的に監視することが可能となる。
【0114】
(b)本実施形態では、上述の伝送装置30を用いることで、基地局50への電力供給の効率性を向上させることができる。
【0115】
ここで、上述の特許文献1のように、太陽電池を用いた方法では、太陽電池のエネルギー変換効率が高くても20%程度であるため、電力供給の効率性が良くなかった。
【0116】
これに対し、本実施形態の伝送装置30を用いた電力供給効率は、例えば、簡易的に以下のように見積もることができる。すなわち、伝送装置30のCT部322により、電力線100の電力に対して80%以上の変換効率で電力を取得することができる。また、給電部340によるマイクロ波給電では、周波数、距離およびアンテナサイズなどに伝送効率が依存するが、低く見積もっても数十%の伝送効率で非接触で電力を伝送することができる。したがって、電力線100から伝送装置30を介して基地局50に電力を供給(伝送)したときの電力供給効率は、低く見積もっても数%以上、確保することができる。
【0117】
電力線100に送電される電力がメガワット超のオーダーであることから、電力線100の電力に上述の電力伝送効率を乗算すると、電力線100から伝送装置30を介して基地局50に供給される電力は、数百W以上となる。
【0118】
基地局50で使用する電力は多くとも100W程度であることから、本実施形態の伝送装置30により、基地局50において必要な電力を、容易かつ連続的に供給することができる。すなわち、本実施形態によれば、基地局50への電力供給の効率性を向上させることが可能となる。
【0119】
(c)本実施形態では、伝送装置30は、基地局50から受信した設備情報を、電力線100を通信回線として用いたPLCにより、外部に送信するよう構成されている。これにより、送電線路において電力線100が繋がっている限り、設備情報を確実に伝送することができる。すなわち、基地局50から管理センタ70までの間に、たとえ山脈または建物などの障害物があったとしても、電波障害のような通信障害の発生を抑制することができる。その結果、長距離に亘って、設備情報を安定的に伝送することが可能となる。
【0120】
上述のように長距離に亘って設備情報を伝送することで、保守員の情報収集作業を不要とすることができる。これにより、送電設備監視システム10の運用における労力を軽減することができる。すなわち、送電設備監視システム10を効率よく運用することが可能となる。
【0121】
(d)本実施形態では、伝送装置30は、電力取得、電力伝送、情報受信およびPLC送信を一貫して、電力線100以外の他の部材と直接接続されることなく(接触することなく)、実施可能に構成されている。つまり、伝送装置30は、スタンドアローンで動作可能であり、自己が消費する電力を自給自足で賄うことが可能である。
【0122】
上述のように伝送装置30をスタンドアローンで動作可能に構成することで、伝送装置30において電池を不要とすることができる。これにより、電池交換などのメンテナンスを削減することができる。また、伝送装置30を長期に亘って連続的に使用することができる。この観点においても、送電設備監視システム10を効率よく運用することが可能となる。
【0123】
(e)本実施形態では、伝送装置30は、電力伝送および情報伝送のみを行い、設備情報としての環境測定などは行わない。一方で、基地局50が情報取得部520により設備情報を取得する。このように、伝送装置30と基地局50とで機能を切り分けることで、鉄塔900などに強固に固定された基地局50において、情報取得部520を容易に増やすことができる。これにより、設備情報の伝送効率の向上と、多様な設備情報の取得と、を両立することができる。
【0124】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0125】
上述の実施形態では、伝送装置30の給電部340が空間伝送型としてマイクロ波により電力を伝送する場合について説明したが、この場合に限られない。給電部340は、空間伝送型として、レーザ光により電力を伝送するよう構成されていてもよい。この場合、基地局50の受電部512は、例えば、レーザ光を受光し電力に変換する受光素子(フォトダイオード、太陽電池)として構成される。なお、この場合、受電部512から直流の電力が出力されるのであれば、整流部514を省略してもよい。
【0126】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
【0127】
(付記1)
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得し、前記電力を非接触で伝送可能に構成された伝送装置と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する基地局と、
を備える
送電設備監視システム。
【0128】
(付記2)
前記基地局は、前記設備情報を前記伝送装置に送信し、
前記伝送装置は、前記基地局から受信した前記設備情報を、前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、外部に送信する
付記1に記載の送電設備監視システム。
【0129】
(付記3)
付記1又は付記2に記載の送電設備監視システムに用いられる
伝送装置。
【0130】
(付記4)
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得するカレントトランス部と、
前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する基地局に向けて、前記電力を非接触で伝送する給電部と、
を有する
伝送装置。
【0131】
(付記5)
前記基地局から前記設備情報を受信する受信部と、
前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、前記設備情報を外部に送信する送信部と、
を有する
付記4に記載の伝送装置。
【0132】
(付記6)
付記1又は付記2に記載の送電設備監視システムに用いられる
基地局。
【0133】
(付記7)
電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する伝送装置から、電力を非接触で取得する受電部と、
前記受電部からの電力を蓄える電池と、
前記受電部を経由して供給される電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部からの前記設備情報を前記伝送装置に送信する送信部と、
を有する
基地局。
【0134】
(付記8)
伝送装置を用い、電力線の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を取得する工程と、
前記伝送装置から基地局に向けて前記電力を非接触で伝送する工程と、
前記伝送装置から非接触で伝送された電力により、前記電力線を有する送電設備に関する設備情報を前記基地局にて取得する工程と、
を備える
送電設備監視方法。
【0135】
(付記9)
前記基地局から前記伝送装置に向けて前記設備情報を送信する工程と、
前記伝送装置において、前記基地局から受信した前記設備情報を、前記電力線を通信回線として用いた電力線搬送通信により、外部に送信する
付記8に記載の送電設備監視方法。
【符号の説明】
【0136】
10 送電設備監視システム
30 伝送装置
50 基地局
70 管理センタ
100 電力線
322 CT部
322a コア
322b コイル
324 電源部
340 給電部
342 送信アンテナ
360 受信部
362 アンテナ
380 送信部
382 信号生成部
384 回路部
384a ブロッキングコイル
384b 結合コンデンサ
512 受電部
512a 受信アンテナ
514 整流部
516 電池
518 レギュレータ
520 情報取得部
522 カメラ
524 センサ
530 送信部
532 アンテナ
540 制御部
542 CPU
542a 電力制御部
542b 情報集約部
542c 送信制御部
544 RAM
546 記憶装置
548 I/Oポート
780 受信部
900 鉄塔