(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、発電システム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20250422BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20250422BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250422BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/35 G
(21)【出願番号】P 2021122389
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐志
(72)【発明者】
【氏名】織田 昭人
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-054050(JP,A)
【文献】特開2014-117003(JP,A)
【文献】特開2017-041933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサおよび記憶装置を有し、
太陽光発電設備の発電量を予測しようとする日である対象日における当該太陽光発電設備の設置場所における日射量である日射量予測値を取得し、
前記日射量予測値に基づき、前記対象日における前記太陽光発電設備の発電量の予測値である予測発電量を求め、
前記太陽光発電設備から電力系統に供給される電力量の前記予測発電量に対する余剰分もしくは不足分を吸収するように作用する蓄電
池の、前記太陽光発電設備の当日の発電開始時におけるSOC(State Of Charge)である初期SOCを、前記予測発電量が大きい程、その値が大きくなるように設定する、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記対象日に対応する過去の快晴日における前記太陽光発電設備の発電量である快晴日発電量を取得し、
前記予測発電量を前記快晴日発電量で除した値と前記初期SOCとの対応を示すグラフを記憶し、
前記予測発電量を前記グラフと対照することにより前記初期SOCを取得する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
予め設定された下限の蓄電量が確保されるように前記初期SOCを設定する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記日射量予測値として、摂動ランに基づく日射量予測値である日射量予測値(摂動ラン)、およびアンサンブル法に基づく日射量予測値である日射量予測値(アンサンブル)を取得し、
前記日射量予測値として、前記アンサンブル法に基づく日射量予測値のメンバー間のばらつきが予め設定された閾値よりも大きいときは前記日射量予測値(摂動ラン)を選択し、前記アンサンブル法に基づく日射量予測値のメンバー間のばらつきが予め設定された閾値以下のときは前記日射量予測値(アンサンブル)を選択する、
情報処理装置。
【請求項5】
太陽光発電設備と、
太陽光発電設備の発電量を予測しようとする日である対象日における当該太陽光発電設備の設置場所における日射量である日射量予測値を取得し、前記日射量予測値に基づき、前記対象日における前記太陽光発電設備の発電量の予測値である予測発電量を求め、前記太陽光発電設備から電力系統に供給される電力量の前記予測発電量に対する余剰分もしくは不足分を吸収するように作用する蓄電
池の、前記太陽光発電設備の当日の発電開始時におけるSOC(State Of Charge)である初期SOCを、前記予測発電量が大きい程、その値が大きくなるように設定する、情報処理装置と、
前記蓄電
池と、
を備える、発電システム。
【請求項6】
プロセッサおよび記憶装置を備える情報処理装置が、
太陽光発電設備の発電量を予測しようとする日である対象日における当該太陽光発電設備の設置場所における日射量である日射量予測値を取得するステップと、
前記日射量予測値に基づき、前記対象日における前記太陽光発電設備の発電量の予測値である予測発電量を求めるステップと、
前記太陽光発電設備から電力系統に供給される電力量の前記予測発電量に対する余剰分もしくは不足分を吸収するように作用する蓄電
池の、前記太陽光発電設備の当日の発電開始時におけるSOC(State Of Charge)である初期SOCを、前記予測発電量が大きい程、その値が大きくなるように設定するステップと、
を実行する、情報処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
前記対象日に対応する過去の快晴日における前記太陽光発電設備の発電量である快晴日発電量を取得するステップと、
前記予測発電量を前記快晴日発電量で除した値と前記初期SOCとの対応を示すグラフを記憶するステップと、
前記予測発電量を前記グラフと対照することにより前記初期SOCを取得するステップと、
を更に実行する、情報処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、予め設定された下限の蓄電量が確保されるように前記初期SOCを設定するステップ、
を更に実行する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、発電システム、および情報処理方法に関し、とくに再生可能エネルギー利用型の発電設備から電力系統に電力を供給する際のインバランスを補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、再生可能エネルギーを利用する発電設備の発電電力が商用電力系統に対する連系容量を超過することなく系統連系できるようにすることを目的として構成された発電システムについて記載されている。発電システムは、第1発電設備、第2発電設備、蓄電池設備、および蓄電池設備を制御する制御装置を備える。制御装置は、第1発電設備および第2発電設備の発電電力を予測した第1発電設備と第2発電設備の予測合計発電電力値と、蓄電池設備の現時刻の電池容量と、商用電力系統に対する連系容量とから、予測すべき時刻の蓄電池の電池容量目標値を決定する。
【0003】
特許文献2には、発電量が天候に大きく左右される自然エネルギー利用型の発電装置において、当日の天候により発電量の予測がずれた場合、発電量過少で実際の電力需要に応じきれない状況や、逆に発電量過多で蓄電池への過充電等を招来する状況が起こりやすいことに鑑み、発電量を精度よく予測して蓄電池の充電量の過不足を低減し、蓄電池の利用率向上を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-161863号公報
【文献】特開2010-213507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再生可能エネルギーの普及促進等を目的として、我が国においては、2012年よりFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が導入されている。また、大規模太陽光や風力等の競争力のある電源への成長が見込まれるものについては、市場連動型となるFIP制度への移行が予定されている。FIP制度が導入されると、再生可能エネルギーの発電事業者もインバランスリスクを負うこととなり、発電事業者側は計画値同時同量の達成が目標となるが、計画値同時同量を達成するには、発電量の予測精度を向上する必要がある。
【0006】
しかし、予測誤差(計画値と実績値の差分)の抑制には限界があり、余剰分もしくは不足分の電力を蓄電池に吸収(充電または放電)させて予測誤差を補償する必要がある。但し、蓄電池の容量には費用等の制約があるため、限られた容量を効率よく利用する必要があり、とくに明朝の発電開始時までに蓄電池をどの程度充電しておくか、即ち、初期SOC(State Of Charge)をどの程度に設定するかが計画値同時同量を達成する上で重要になる。
【0007】
上記の特許文献1では、第1発電設備と第2発電設備の予測合計発電電力値と、蓄電池設備の現時刻の電池容量と、商用電力系統に対する連系容量とに基づき、予測すべき時刻における蓄電池の電池容量目標値を決定する。また、特許文献2では、発電量の予測がずれた場合、実際の電力需要に応じきれない状況や逆に発電量過多で蓄電池への過充電等を招来する状況が生じやすいことに鑑み、発電量を精度よく予測して蓄電池の充電量の過不足を低減し、蓄電池の利用率向上を図る。しかし、太陽光発電設備の発電量は、自然環境(気象、雲の移動、日照時間等)に大きく影響されるため、予測が外れてしまうことも起こりうるが、特許文献1および特許文献2のいずれにおいても、予測が外れた場合におけるインバランスの補償についてはとくに考慮されていない。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、発電量の予測が外れた場合におけるインバランスを補償するための、情報処理装置、発電システム、および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、情報処理装置であって、プロセッサおよび記憶装置を有し、太陽光発電設備の発電量を予測しようとする日である対象日における当該太陽光発電設備の設置場所における日射量である日射量予測値を取得し、前記日射量予測値に基づき、前記対象日における前記太陽光発電設備の発電量の予測値である予測発電量を求め、前記太陽光発電設備から電力系統に供給される電力量の前記予測発電量に対する余剰分もしくは不足分を吸収するように作用する蓄電池の、前記太陽光発電設備の当日の発電開始時におけるSOC(State Of Charge)である初期SOCを、前記予測発電量が大きい程、その値が大きくなるように設定する。
【0010】
本発明の情報処理装置は、蓄電池の初期SOCを、予測発電量(計画値)が大きい程、その値が大きくなるように設定する。そのため、例えば、対象日の天気が良いと予測される場合は蓄電池の初期SOCは大きな値に設定され、実際には予測が外れて天気が悪かった場合は不足する電力を蓄電池の放電により確実に補償することができる。また例えば、対象日の天気が悪いと予測される場合は蓄電池の初期SOCは小さな値に設定され(蓄電池に十分な空き容量が確保され)、実際には予測が外れて天気が良かった場合は余剰の電力を蓄電池に吸収(充電)させることができる。
【0011】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の一つは、上記情報処理装置であって、前記対象日に対応する過去の快晴日における前記太陽光発電設備の発電量である快晴日発電量を取得し、前記予測発電量を前記快晴日発電量で除した値と前記初期SOCとの対応を示すグラフを記憶し、前記予測発電量を前記グラフと対照することにより前記初期SOCを取得する。
【0012】
このように、本発明の情報処理装置は、予測発電量(計画値)を快晴日発電量で除した値と初期SOCとの対応を示すグラフに基づき初期SOCを算出するので、予測発電量に対する初期SOCを適切に設定することができ、天気の予測が外れた場合に余剰分または不足分を確実に補償することができる。
【0013】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の一つは、上記情報処理装置であって、予め設定された下限の蓄電量が確保されるように前記初期SOCを設定する。
【0014】
このように本発明の情報処理装置は、予め設定された下限の蓄電量が確保されるように初期SOCを設定するので、予測が大きく外れた場合等の緊急時等のために最低限必要とされる蓄電量を割り込むことがないように初期SOCを設定することができる。
【0015】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の一つは、上記情報処理装置であって、前記日射量予測値として、摂動ランに基づく日射量予測値である日射量予測値(摂動ラン)、およびアンサンブル法に基づく日射量予測値である日射量予測値(アンサンブル)を取得し、前記日射量予測値として、前記アンサンブル法に基づく日射量予測値のメンバー間のばらつきが予め設定された閾値よりも大きいときは前記日射量予測値(摂動ラン)を選択し、前記アンサンブル法に基づく日射量予測値のメンバー間のばらつきが予め設定された閾値以下のときは前記日射量予測値(アンサンブル)を選択する。
【0016】
このように、本発明の情報処理装置は、日射量予測値(摂動ラン)と日射量予測値(アンサンブル)のうち、信頼性の高い日射量予測値を選択して予測発電量を求めるので、予測発電量を精度よく算出することができる。
【0017】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発電量の予測が外れた場合におけるインバランスを補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】発電システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】監視制御装置が備える主な機能を示す図である。
【
図4】監視制御装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【
図5】初期SOC設定処理を説明するフローチャートである。
【
図6A】蓄電池によりインバランスが補償される仕組みを説明する図である。
【
図6B】蓄電池によりインバランスが補償される仕組みを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一のまたは類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。以下の説明において、「情報」、「データ」、「テーブル」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態として説明する、発電システム1の概略的な構成を示している。発電システム1は、再生可能エネルギー利用型の発電設備の一つである太陽光発電設備(以下、「PV発電設備20」(PV:PhotoVoltaic)と称する。)と、PV発電設備20の監視や制御を行うための各種の設備や装置を含む。同図に示すように、例示する発電システム1は、PV発電設備20の他、蓄電池30、蓄電池制御装置40、気象情報提供装置60、監視制御装置100、および計測装置70を含む。
【0022】
PV発電設備20、蓄電池30、蓄電池制御装置40、気象情報提供装置60、監視制御装置100、および計測装置70は、通信ネットワーク5を介して互いに双方向通信が可能な状態で接続されている。通信ネットワーク5は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、専用線、電力線通信網、各種公衆通信網等である。また、気象情報提供装置60は、インターネット6に接続されている。
【0023】
PV発電設備20は、例えば、多結晶シリコン型発電素子、単結晶シリコン型発電素子、薄膜型発電素子等を用いて構成される太陽光発電パネルを備える。また、PV発電設備20は、太陽光発電パネルによって発電された直流を交流に変換し、一般電気事業者等によって運用される電力系統3に供給する、インバータまたはパワーコンディショナ(PCS: Power Conditioning Subsystem)を備える。また、PV発電設備20は、電力系統3の周波数、過電圧/電圧不足、停電有無等を検出し電力系統3との接続を切り離す系統連携保護装置を備える。
【0024】
蓄電池30は、例えば、鉛電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、燃料電池、キャパシタ電池等である。蓄電池30は、電力系統3との間で充放電を行うためのインバータまたはパワーコンディショナを備える。蓄電池30は、PV発電設備20の発電量の計画値に対する余剰分もしくは不足分の電力を吸収する役割を果たす。
【0025】
蓄電池制御装置40は、監視制御装置100から通信ネットワーク5を介して送られてくる制御指示に基づき、蓄電池30の充電制御または放電制御(以下、「充放電制御」と称する。)を行う。蓄電池制御装置40は、例えば、蓄電池30の蓄電量(SOC(State Of Charge))が予め設定された目標値(以下、「目標蓄電量」と称する。)になるように、蓄電池30の充放電制御を行う。尚、蓄電池30が蓄電池制御装置40の機能を兼ね備えるとしてもよい。
【0026】
監視制御装置100は、PV発電設備20から電力系統3への電力への供給量が予め設定された電力量(計画値)を超える場合、蓄電池30が余剰電力を吸収するよう、蓄電池制御装置40に蓄電池30の制御指示(充電指示)を送信する。また、監視制御装置100は、PV発電設備20から電力系統3への電力の供給量が上記計画値を下回る場合、不足する電力が蓄電池30から電力系統3に供給されるよう、蓄電池制御装置40に蓄電池30の制御指示(放電指示)を送信する。
【0027】
気象情報提供装置60は、PV発電設備20の設置場所の周辺地域に存在する気象観測所7やインターネット6上の気象情報提供サーバ8等から提供される気象情報に基づき、未来の所定期間(例えば翌日の日中)における、PV発電設備20の設置場所における日射量を予測し、予測した日射量(以下、「日射量予測値」と称する。)を監視制御装置100に随時提供する。また、気象情報提供装置60は、気象観測所7や気象情報提供サーバ8から提供される、過去の所定期間(例えば、過去数年間)における、PV発電設備20の設置場所における日射量(以下、「日射量実測値」と称する。)を蓄積管理し、日射量実測値を監視制御装置100に随時提供する。
【0028】
計測装置70は、電力系統3の状態に関する情報(周波数、過電圧/電圧不足、停電有無等)を計測し、計測した値を通信ネットワーク5を介して監視制御装置100に送信する。
【0029】
図2に、監視制御装置100が備える主な機能を示している。同図に示すように、監視制御装置100は、記憶部110、日射量予測値取得部120、実績値管理部125、予測発電量算出部130、快晴日発電量取得部135、初期SOC算出部140、初期SOC設定部145、および発電出力変動抑制部150を備える。
【0030】
上記機能のうち、記憶部110は、主な情報(データ)として、日射量予測値111、実績値112、予測発電量113、快晴日発電量114、計画値/初期SOCグラフ115、および初期SOC116を記憶する。
【0031】
記憶部110が記憶する上記情報のうち、日射量予測値111は、気象情報提供装置60から受信した日射量予測値(摂動ランに基づく日射量予測値(以下、「日射量予測値(摂動ラン)」と称する。)、アンサンブル法に基づく日射量予測値(以下、「日射量予測値(アンサンブル)」と称する。)等)を含む。
【0032】
図3Aに、日射量予測値111の一例を示す。同図に示すように、例示する日射量予測値111は、日時1111および日射量予測値1112の各項目を有する複数のレコードからなるテーブル構造を有する。日射量予測値111の一つのレコードは、予測日の予測時間帯における日射量予測値(日射量予測値(摂動ラン)、日射量予測値(アンサンブル)等)に対応する。日射量予測値111によれば、未来の所定期間(例えば翌日)の日射量予測値を得ることができる。
【0033】
図2に戻り、記憶部110が記憶する上記情報のうち、実績値112は、過去の所定期間における、PV発電設備20の設置場所における天気、当該設置場所における日射量の実測値(以下、「日射量実測値」と称する。)、およびPV発電設備20の発電量の実績値(以下、「発電量実績値」と称する。)を対応づけた情報を含む。
【0034】
図3Bに、実績値112の一例を示す。同図に示すように、例示する実績値112は、年月日1121、天気1122、日射量実測値1123、および発電量実績値1124の各項目を有する複数のレコードからなるテーブル構造を有する。実績値112の一つのレコードは、過去のある日(年月日)における実測値(日射量実測値やPV発電量実績値)に対応する。実績値112によれば、過去のある日における、天気、日射量実測値、および発電量実績値を得ることができる。
【0035】
図2に戻り、記憶部110が記憶する上記情報のうち、予測発電量113は、日射量予測値に基づき算出される、PV発電設備20の発電量の予測値(以下、「予測発電量」もしくは「計画値」と称する。)である。
【0036】
記憶部110が記憶する上記情報のうち、快晴日発電量114は、実績値112から取得される、過去の所定期間の快晴日における発電量実績値(以下、「快晴日発電量」と称する。)である。
【0037】
記憶部110が記憶する上記情報のうち、計画値/初期SOCグラフ115は、発電量を予測しようとする日(以下、「対象日」と称する。)の発電量予測値(計画値)を、当該日に対応する日(例えば、対応する季節の同じ日のように、対照日に類似する発電量となる可能性の高い日)の快晴日発電量で除した値と、対象日の発電開始時に設定すべき蓄電池30のSOCの初期値(以下、「初期SOC」と称する。)との関係を表すグラフである。計画値/初期SOCグラフ115は、発電システム1の管理者等により設定される。監視制御装置100は、計画値/初期SOCグラフ115を設定するためのユーザインタフェースを提供する。管理者等は、例えば、PV発電設備20の仕様や規模、発電量実績値等を参考にして計画値/初期SOCグラフ115を設定する。
【0038】
図3Cに、計画値/初期SOCグラフ115の一例を示す。同図に示すように、計画値/初期SOCグラフ115の横軸は、発電量予測値(計画値)を、対照日に対応する日の快晴時PV発電量で除した値であり、紙面右側ほど発電量予測値(計画値)が小さく(天気が快晴から大雨に向かって悪く)なるように設定されている。また、計画値/初期SOCグラフ115の縦軸は、初期SOCであり、紙面上方ほど初期SOCが大きくなるように設定されている。同図に示すように、例示する計画値/初期SOCグラフ115は、線形(直線)であり、計画値(予測発電量)が大きい程、即ち、予測される天気が良い程、初期SOCの値が大きくなるように設定されている。尚、計画値/初期SOCグラフ115は、例示するものに限定されず、少なくとも発電量予測値(計画値)が大きい程、初期SOCが大きくなるという特性を有していればよい。例えば、計画値/初期SOCグラフ115は、線形のグラフでなく非線形のグラフでもよい。原点(100%(快晴))における初期SOCの値は、初期SOCの下限値(予め設定された下限の蓄電量を確保するための値)に設定されている。この下限値は、例えば、PV発電設備20の仕様や規模、発電量実績値等に基づき適切な値に設定される。
【0039】
図2に戻り、記憶部110が記憶する上記情報のうち、初期SOC116は、発電量予測値と計画値/初期SOCグラフ115とに基づき算出される(取得される)初期SOCの値を含む。
【0040】
図2に示す機能のうち、日射量予測値取得部120は、気象情報提供装置60から、対照日における日射量予測値(日射量予測値(摂動ラン)、日射量予測値(アンサンブル)等)を取得する。日射量予測値取得部120が取得した日射量予測値は、記憶部110が日射量予測値111として記憶する。
【0041】
実績値管理部125は、実績値112を管理する。実績値管理部125は、実績値112の発電量実績値1124の値を、例えば、監視制御装置100が自ら生成し管理する。また、実績値管理部125は、実績値112の日射量実測値1123の値を、例えば、気象情報提供装置60から取得する。
【0042】
予測発電量算出部130は、日射量予測値111と実績値112とに基づき、所定期間の各日におけるPV発電設備20の発電量予測値(計画値)を算出する。予測発電量算出部130は、例えば、PV発電設備20の仕様や過去実績に基づき、予測発電量を算出する。また、予測発電量算出部130は、例えば、日射量予測値と過去実績との関係を学習したモデル(機械学習モデル、ルールベース)に基づき、予測発電量を算出する。
【0043】
快晴日発電量取得部135は、実績値112から、対象日に対応する快晴日発電量を取得する。
【0044】
初期SOC算出部140は、予測発電量113を快晴日発電量114で除した値を計画値/初期SOCグラフ115に対照することにより、予測発電量(計画値)に対応する初期SOCを算出(取得)する。
【0045】
初期SOC設定部145は、蓄電池30のSOCが初期SOC116になるように、蓄電池制御装置40に対して蓄電池30の充電指示または放電指示を送信する。
【0046】
発電出力変動抑制部150は、PV発電設備20の発電量や計測装置70から送られてくる電力系統3の情報(周波数、過電圧/電圧不足、停電有無等)を監視し、PV発電設備20の余剰分もしくは不足分の電力を蓄電池30に吸収させて出力変動を吸収し、PV発電設備20から電力系統3への供給量が適正(計画値同時同量)になるように蓄電池30の充放電を制御する。発電出力変動抑制部150は、上記制御のための充電指示または放電指示を蓄電池制御装置40に随時送信する。
【0047】
図4は、監視制御装置100の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。監視制御装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0048】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0049】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0050】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0051】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0052】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0053】
入力装置14および出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0054】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信または無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0055】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0056】
監視制御装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、監視制御装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。監視制御装置100は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0057】
図5は、蓄電池30の初期SOCの設定に際して監視制御装置100が行う処理(以下、「初期SOC設定処理S500」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに初期SOC設定処理S500について説明する。尚、初期SOC設定処理S500の実行開始時において、実績値112には、以下の処理で必要となる情報が含まれているものとする。初期SOC設定処理S500は、例えば、発電システム1の管理者等が、監視制御装置100のユーザインタフェースに対して所定の開始操作を行うことにより開始される。
【0058】
まず監視制御装置100は、ユーザインタフェースを介して発電システム1の管理者等から対象日の指定を受け付ける(S511)。
【0059】
続いて、発電システム1の日射量予測値取得部120が、気象情報提供装置60から、対象日における日射量予測値を取得し、取得した日射量予測値を記憶部110が日射量予測値111として記憶する(S512)。
【0060】
続いて、発電システム1の予測発電量算出部130が、予測発電量の算出に用いる日射量予測値を選択する(S513)。例えば、取得した日射量予測値111が、日射量予測値(摂動ラン)と日射量予測値(アンサンブル)を含む場合、日射量予測値(アンサンブル)のメンバー間のばらつきに応じて、日射量予測値(摂動ラン)または日射量予測値(アンサンブル)を選択する。例えば、予測発電量算出部130は、上記ばらつきが大きいとき(例えば、上記ばらつきが予め設定した閾値を超えるとき)は日射量予測値(摂動ラン)を選択し、上記ばらつきが小さいとき(例えば、上記ばらつきが上記閾値以下のとき)は日射量予測値(アンサンブル)を選択する。尚、予測発電量の算出に用いる日射量予測値の種類は必ずしも限定されない。例えば、予測発電量算出部130が、信頼区間の幅が狭い日射量予測値を選択するようにしてもよい。
【0061】
続いて、予測発電量算出部130が、選択した日射量予測値に基づき、予測発電量(計画値)を算出する(S514)。
【0062】
続いて、発電システム1の快晴日発電量取得部135が、実績値112から、対象日に対応する快晴日発電量を取得する(S515)。
【0063】
続いて、発電システム1の初期SOC算出部140が、予測発電量(計画値)を快晴日発電量で除した値を求め、求めた値を計画値/初期SOCグラフ115に対照することにより予測発電量(計画値)に対応する初期SOCを取得する(S516)。
【0064】
続いて、発電システム1の初期SOC設定部145が、蓄電池30の充放電制御のタイミングが到来したか否かを判定する(S517)。上記タイミングは、例えば、対象日の前日の日の入りの時刻後の、対象日当日の日の出の時刻よりも所時間前の時刻である。初期SOC設定部145は、上記タイミングが到来すると(S517:YES)、蓄電池30のSOCが初期SOC116となるように、蓄電池制御装置40に対して蓄電池30の充電指示または放電指示を送信する(S518)。蓄電池制御装置40は、上記充電指示または放電指示に基づき蓄電池30のSOCが初期SOCになるように充電制御または放電制御を行う。
【0065】
以上に説明したように、監視制御装置100が初期SOC設定処理S500を実行することにより、対象日当日の日の出時刻前に蓄電池30のSOCが、算出された初期SOCに設定され、これにより、発電量の予測が外れた場合におけるインバランスをより確実に補償することが可能になる。
【0066】
図6Aおよび
図6Bは、蓄電池30によりインバランスが補償される仕組みを説明する図である。前述したように、計画値/初期SOCグラフ115は、計画値(予測発電量)が大きい程、即ち、天気が良い程、初期SOCが大きくなるように設定されている(
図3C)。そのため、例えば、対象日の天気が良いと予測され、計画値(予測発電量)として大きな値が予測された場合、蓄電池30の初期SOCは大きな値に設定される。そして、例えば、予測が外れて対象日の天気が悪く、発電量実績値が計画値よりも少なかった場合には、蓄電池30から電力系統3に十分な電力を放電することができ、インバランスを確実に補償することができる。一方、例えば、対象日の天気が悪いと予測され、計画値(予測発電量)として小さな値が予測された場合、蓄電池30の初期SOCは小さな値に設定される。そして、例えば、予測が外れて対照日の天気が良く、発電量実績値が計画値よりも多かった場合には、蓄電池30の十分な空き容量を利用して余剰分の電力を吸収(蓄電池30を充電)することができ、インバランスを確実に補償することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態の発電システム1によれば、対象日の天気が良いと予測されていたが実際には天気が悪かった場合、および、対象日の天気が悪いと予測されていたが実際には天気が良かった場合のいずれの場合でも、不足分もしくは余剰分の電力を蓄電池30を充電もしくは放電制御することにより調整し、インバランスを確実に補償することができる。また、初期SOCは、発電システム1の管理者等により適切に設定された計画値/初期SOC115に基づき設定されるので、容量に限りのある蓄電池30を効率よく利用しつつインバランスを補償することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0069】
例えば、以上の実施形態では、再生可能エネルギー利用型の発電設備として太陽光発電設備を例示したが、予測発電量が大きい程、値が大きくなるように蓄電池の初期SOCを設定するという基本概念は、発電量が自然環境等の不確定な因子に左右され、発電量の予測が難しい太陽光発電設備以外の発電設備にも拡張適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 発電システム、3 電力系統、5 通信ネットワーク、6 インターネット、7 気象観測所、20 PV発電設備、60 気象情報提供装置、70 計測装置、100 監視制御装置(情報処理装置)、110 記憶部、111 日射量予測値、112 実績値、113 予測発電量、114 快晴日発電量、115 計画値/初期SOCグラフ、116 初期SOC算出結果、120 日射量予測値取得部、125 実績値管理部、130 予測発電量算出部、135 快晴日発電量取得部、140 初期SOC算出部、145 初期SOC設定部、150 発電出力変動抑制部、S500 初期SOC設定処理