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特許7669874調光シートの製造方法および調光シートの評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】調光シートの製造方法および調光シートの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20250422BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/13 505
G02F1/1334
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021134323
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023028551
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 泰佑
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052375(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178230(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/020299(WO,A1)
【文献】特開2020-144261(JP,A)
【文献】特開2012-137620(JP,A)
【文献】特開2000-171783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、前記調光層及び一対の前記透明電極層を挟む一対の透明支持層とを備え、前記液晶化合物の駆動によって透明状態および不透明状態を切り替える調光シートの製造方法であって、
前記透明状態とした前記調光シートに、平行光束である入射光が入射するときの入射角が20°以上60°以下の範囲内の一定の角度になるように、前記調光シートの角度を調整し、且つ、
前記角度が調整された前記調光シートに、前記入射光を入射させたときの全光線透過率及びヘイズを測定し、且つ、
前記全光線透過率及び前記ヘイズを乗算した斜め拡散透過率を算出する、測定工程を含むとともに、
前記入射角を異ならせた前記測定工程を複数回行い、前記測定工程の各々において算出された全ての前記斜め拡散透過率が閾値以下である調光シートを選別する
調光シートの製造方法。
【請求項2】
前記斜め拡散透過率が6.0%以下である前記調光シートを選別する
請求項1に記載の調光シートの製造方法。
【請求項3】
前記液晶化合物、吸光度に異方性を有する二色性色素、および樹脂組成物を添加して前記調光層の塗液を、一対の前記透明電極層のうち少なくとも一方に塗工し、前記樹脂組成物を硬化させて前記調光層を形成する工程をさらに有する
請求項1又は2に記載の調光シートの製造方法。
【請求項4】
前記調光シートの一対の表面の少なくとも一方に、可視光の一部を吸収する有色透明の光吸収層を接合する工程をさらに有する
請求項1又は2に記載の調光シートの製造方法。
【請求項5】
前記液晶化合物、屈折率に異方性を有する液晶性高分子を含む液晶性樹脂を含む塗液を一対の前記透明電極層のうち少なくとも一方に塗工し、前記液晶性高分子の配向軸を、前記透明状態における前記液晶化合物の配向軸に合わせて配向させて前記液晶性樹脂を硬化させる工程をさらに有する
請求項1又は2に記載の調光シートの製造方法。
【請求項6】
液晶化合物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、前記調光層及び一対の前記透明電極層を挟む一対の透明支持層とを備え、前記液晶化合物の駆動によって透明状態および不透明状態を切り替える調光シートの評価方法であって、
前記透明状態とした前記調光シートに、平行光束である入射光が入射するときの入射角が20°以上60°以下の範囲内の一定の角度になるように、前記調光シートの角度を調整し、且つ、
前記角度が調整された前記調光シートに、前記入射光を入射させたときの全光線透過率及びヘイズを測定し、且つ、
前記全光線透過率及び前記ヘイズを乗算した斜め拡散透過率を算出する、測定工程を含むとともに、
前記入射角を異ならせた前記測定工程を複数回行い、前記測定工程の各々において算出された全ての前記斜め拡散透過率が閾値以下である調光シートを、斜めから観察したときの視認性が高い調光シートとして評価する、調光シートの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートの製造方法および調光シートの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、第1透明電極層、第2透明電極層、および第1透明電極層と第2透明電極層とに挟まれた調光層を備える。調光層に含まれる液晶化合物の配向状態は、2つの透明電極層の間の電位差の変化に追従し、調光シートの光透過率を変える。例えば、液晶化合物の配向秩序が構築されるとき、調光シートは透明の状態となり、高い光透過率を示す。液晶化合物の長軸方向が無秩序であるとき、調光シートは白濁し、低い光透過率を示す不透明状態となる。調光層が白濁した状態とは、調光層で光が散乱している状態であるから、白濁の度合いは、JIS‐K‐7136:2000に準拠するヘイズの測定方法を用いて評価されていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-200414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶化合物は、その長軸方向と短軸方向とで屈折率が異なり、長軸方向と平行な方向における屈折率は、短軸方向と平行な方向における屈折率よりも大きい。液晶化合物の配向秩序が構築された状態で、調光シートの表面に垂直に可視光が入射するとき調光シートは透明な状態であるが、調光シートの表面に対し例えば60°等の入射角で斜めに可視光が入射するとき、正面から見た場合に比べ白濁の度合いが大きくなる。つまり、観察者が調光シートを斜めの方向に視認したとき、調光シートがやや白濁して見えることがある。この白濁の度合いは小さいものが好ましいが、斜めの方向から視認された場合の白濁の度合いを示す斜め視認性を評価する方法は確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する調光シートの製造方法は、液晶化合物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、前記調光層及び一対の前記透明電極層を挟む一対の透明支持層とを備え、前記液晶化合物の駆動によって透明状態および不透明状態を切り替える調光シートの製造方法であって、前記透明状態とした前記調光シートの表面に対して20°以上90°未満の入射角で可視光を含む光を入射したときの拡散透過率である斜め拡散透過率が閾値以下である調光シートを選別する。
【0006】
上記課題を解決する調光シートの評価方法は、液晶化合物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、前記調光層及び一対の前記透明電極層を挟む一対の透明支持層とを備え、前記液晶化合物の駆動によって透明状態および不透明状態を切り替える調光シートの評価方法であって、前記透明状態とした前記調光シートの表面に対して20°以上90°未満の入射角で可視光を含む光を入射したときの拡散透過率である斜め拡散透過率が閾値以下である調光シートを、斜めから観察したときの視認性が高い調光シートとして評価する。
【0007】
上記製造方法および評価方法によれば、観察者が透明状態の調光シートを斜めの方向から観察したときの白濁の度合いを、ヘイズと全光線透過率の積に基づき、数値として評価することができる。このため、斜めの方向から観察したときの白濁の度合いが小さい、斜め視認性が高い調光シートを選別することができる。
【0008】
上記調光シートの製造方法について、前記全光線透過率および前記ヘイズの積が6.0×10以下である前記調光シートを選別することが好ましい。
上記方法によれば、斜め拡散透過率が閾値以下の調光シートを選別することで、斜め視認性が高い調光シートを選別することができる。
【0009】
上記調光シートの製造方法について、前記液晶化合物、吸光度に異方性を有する二色性色素、および樹脂組成物を添加して前記調光層の塗液を、一対の前記透明電極層のうち少なくとも一方に塗工し、前記樹脂組成物を硬化させて前記調光層を形成する工程と、をさらに有することが好ましい。
【0010】
上記方法によれば、調光層に含まれる二色性色素が液晶化合物によって散乱された光を吸収する。このため、斜め視認性を高め、選別工程で斜め視認性が高いものとして選別されやすい調光シートを製造することができる。
【0011】
上記調光シートの製造方法について、前記調光シートの一対の表面の少なくとも一方に、可視光の一部を吸収する有色透明の光吸収層を接合する工程を有することが好ましい。
上記方法によれば、光吸収層が液晶化合物によって散乱された可視光を吸収する。このため、斜め視認性の高い調光シートを得ることができる。
【0012】
上記調光シートの製造方法について、前記液晶化合物、屈折率に異方性を有する液晶性高分子を含む液晶性樹脂を含む塗液を一対の前記透明電極層のうち少なくとも一方に塗工し、前記液晶性高分子の配向軸を、前記透明状態における前記液晶化合物の配向軸に合わせて配向させて前記液晶性樹脂を硬化させる工程をさらに有することが好ましい。
【0013】
上記方法によれば、液晶性樹脂の配向軸の方向を、透明状態の液晶化合物の配向軸の方向に揃えることで、調光シートが透明状態とされた場合に、液晶化合物および液晶性樹脂の屈折率の差が小さくなる。このため、斜め視認性が高い調光シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、調光シートを斜めに視認したときの視認性を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における調光装置の概略構成を示す構成図である。
図2】同実施形態におけるノーマル型の調光シートの要部の断面図である。
図3】従来の調光シートを正面から見た場合の視認性を説明する図である。
図4】従来の調光シートを斜めから見た状態を説明する図である。
図5】従来の調光シートを斜めから見た場合の視認性を説明する図である。
図6】同実施形態の調光シートを斜めから見た場合の視認性を説明する図である。
図7】同実施形態におけるリバース型の調光シートの要部の断面図である。
図8】同実施形態の調光シートの評価方法を説明する図である。
図9】第2実施形態における調光装置の概略構成を示す構成図である。
図10】第3実施形態における調光装置の概略構成を示す構成図である。
図11】実施例および比較例の組成及び特性を示す表。
図12】調光シートの拡散透過率と目視レベルとの相関関係を説明する図である。
図13】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図14】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図15】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図16】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図17】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図18】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
図19】同実施形態の目視レベルの見本を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
調光シートの製造方法および調光シートの評価方法の第1実施形態を説明する。
調光シートは、取付対象物である透明基材に貼り付けられる。透明基材は、ガラス基板や樹脂基板である。透明基材の一例は、車両や航空機等の移動体が搭載する窓ガラス、建物に設置された窓ガラス、車内や屋内に配置された間仕切りである。調光シートが貼り付けられる面は、平面状あるいは曲面状である。調光シートは、2つの透明基材によって挟まれてもよい。
【0017】
調光シートの駆動型式は、ノーマル型、あるいはリバース型である。ノーマル型の調光シートは、電圧印加によって不透明状態から透明状態に遷移し、当該電圧印加の解除によって透明状態から不透明状態に戻る。リバース型の調光シートは、電圧印加によって透明状態から不透明状態に遷移し、当該電圧印加の解除によって不透明状態から透明状態に戻る。
【0018】
なお、ノーマル型とリバース型とは、2つの透明電極層と調光層とを備える点において共通する。以下では、ノーマル型の構成と作用とを説明した後で、ノーマル型とリバース型について説明する。
【0019】
[調光装置の構造]
図1を参照して調光装置10および調光シート11の概略的な構造について説明する。調光装置10は、調光シート11と、駆動部12とを有する。調光シート11は、調光層31、第1透明電極層34、第2透明電極層35、第1透明支持層36、第2透明支持層37を有する。調光シート11の外側面11Fの少なくとも一方は、取付対象物である透明基材によって支持される。以下、調光層31、第1透明電極層34、第2透明電極層35、第1透明支持層36、および第2透明支持層37が積層される方向を、積層方向Xとする。外側面11Fは調光シート11の表面に対応する。
【0020】
調光層31は、第1透明電極層34と第2透明電極層35との間に位置する。第1透明電極層34は、第1接続端子22Aと第1配線23Aとを通じて、駆動部12に接続される。第1透明電極層34は、第1透明支持層36と調光層31との間に位置し、第1透明支持層36と調光層31とに接する。第2透明電極層35は、第2透明支持層37と調光層31との間に位置し、第2透明支持層37と調光層31とに接する。
【0021】
調光層31は、例えば、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、カプセル型ネマティック液晶(NCAP:Nematic Curvilinear Aligned Phase)等の構造を有する。高分子分散型液晶を含む調光層31は、独立した多数の空隙、又は独立した形状の一部が接合された形状を有する空隙を有機高分子層のなかに備え、空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子ネットワーク型液晶は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークが有する空隙に、配向粒子として液晶分子を保持する。カプセル型ネマティック液晶層は、カプセル状を有した液晶組成物を樹脂層のなかに保持する。本実施形態の調光層31は、高分子分散型液晶を含む。なお、調光層31は、高分子分散型、高分子ネットワーク型、カプセル型のいずれかの型式に必ずしも区別されなくてもよい。例えばこれらの型式が混合されたハイブリッド型式であってもよい。
【0022】
第1透明電極層34と第2透明電極層35とは、それぞれ無色透明である。第1透明電極層34と第2透明電極層35とを構成する材料は、それぞれ導電性無機酸化物、金属、あるいは導電性有機高分子化合物である。導電性無機酸化物の一例は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種である。金属は、金や銀のナノワイヤーである。導電性有機高分子化合物の一例は、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか1種である。
【0023】
第1透明支持層36と第2透明支持層37とを構成する材料は、それぞれ有機高分子化合物、あるいは無機高分子化合物である。有機高分子化合物の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンからなる群から選択されるいずれか一種である。無機高分子化合物の一例は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択されるいずれか一種である。第1透明支持層36と第2透明支持層37とは、それぞれ無色透明であることが好ましい。
【0024】
なお、液晶化合物LCMの配向状態の変化に基づいて、調光シート11の透明状態と不透明状態とを切り換える構成であれば、調光シート11は、1乃至複数の他の機能層を備えてもよい。他の機能層は、調光層31に向けた酸素や水分の透過を抑えるガスバリア層でもよいし、調光層31に向けた特定波長以外の紫外光線の透過を抑える紫外線バリア層でもよい。他の機能層は、調光シート11の各層を機械的に保護するハードコート層でもよいし、調光シート11における層間の密着性を高める接着層でもよい。
【0025】
駆動部12は、第1透明電極層34と第2透明電極層35とに接続される。駆動部12は、第1透明電極層34と第2透明電極層35に、駆動電圧を印加して、第1透明電極層34と第2透明電極層35との間の電位差に応じて液晶化合物LCMの配向を制御する。駆動電圧は、液晶化合物LCMの配向状態を変えるための電圧である。駆動部12は、液晶化合物LCMの配向状態を変えて、透明状態と不透明状態とのうちの一方から他方に調光シート11を切り替える。
【0026】
[調光層]
次に、図2を参照しつつ調光層31について詳述する。図2は、調光シート11の一部であって、調光層31、第1透明電極層34および第2透明電極層35の断面を示す。ここでは、調光層31の一例として、高分子分散型液晶を含むものとして説明する。
【0027】
調光層31は、有機高分子層31P、液晶組成物31LC、およびスペーサSPを含む。有機高分子層31Pは、光重合性化合物である樹脂組成物の硬化体である。樹脂組成物は、紫外線硬化性化合物でもよいし、電子線硬化性化合物でもよい。樹脂組成物は、液晶組成物31LCと相溶性を有する。
【0028】
有機高分子層31Pは調光層31内で空隙31Dを区画する。液晶組成物31LCは有機高分子層31Pの空隙31Dを埋める。空隙31Dの大きさは2種類以上であり、空隙31Dの形状は、球形状、楕円体状、あるいは不定形状である。空隙31Dにおける寸法の制御性を高めることを要する場合、樹脂組成物は、紫外線硬化性化合物であることが好ましい。紫外線硬化性化合物の一例は、分子構造の末端に重合性不飽和結合を含む。あるいは、紫外線硬化性化合物は、分子構造の末端以外に重合性の不飽和結合を含む。樹脂組成物は、1種の重合性化合物、あるいは2種以上の重合性化合物の組み合わせである。紫外線硬化性化合物は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。アクリレート化合物は、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物の一例は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物である。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
【0029】
調光層31に対する有機高分子層31Pの含有率の下限値は20質量%であり、より好ましい含有率の下限値は30質量%である。有機高分子層31Pと液晶組成物31LCとの総量に対する有機高分子層31Pの含有率の上限値は70質量%であり、より好ましい含有率の上限値は60質量%である。
【0030】
有機高分子層31Pの含有率の下限値、および上限値は、樹脂組成物の硬化過程において、液晶化合物LCMが樹脂組成物の硬化体から相分離可能な範囲に応じて決まる。有機高分子層31Pの機械的な強度を高めることを要する場合、有機高分子層31Pの含有率の下限値が高いことが好ましい。液晶組成物31LCの駆動電圧を低めることを要する場合、有機高分子層31Pの含有率の上限値が低いことが好ましい。
【0031】
液晶組成物31LCは、液晶化合物LCMを含む。液晶化合物LCMは細長い形状を有している。液晶化合物LCMの長軸方向の誘電率は、液晶化合物LCMの短軸方向の誘電率よりも大きい、正の誘電異方性を有する。あるいは、液晶化合物LCMの長軸方向の誘電率は、液晶化合物LCMの短軸方向の誘電率よりも低い、負の誘電異方性を有する。液晶化合物LCMの誘電異方性は、調光シート11における各配向層の有無、および駆動型式に基づいて適宜選択される。また、液晶化合物LCMは光学異方性を有し、長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。液晶化合物LCMは、可視光の波長と同程度又はそれ以上の大きさであって、可視光を散乱することにより調光層31を白濁させる。
【0032】
液晶化合物LCMは、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。非重合性液晶化合物は、1種の液晶化合物、あるいは2種以上の液晶化合物の組み合わせである。また、液晶組成物31LCは、さらに粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、溶剤を含有してもよい。耐候剤の一例は、紫外線吸収剤や光安定剤である。
【0033】
本実施形態における液晶組成物31LCは、液晶化合物LCMおよび二色性色素DPを含んでいる。二色性色素DPは、細長い形状を有し、分子長軸方向における可視領域の吸光度が分子短軸方向における吸光度よりも大きい。本実施形態における二色性色素DPは、光の入射方向と平行又は略平行な場合に配向する状態でほぼ透明に見える。また、二色性色素DPは、光の入射方向に対して分子長軸方向が垂直又は略垂直な状態において呈色する。つまり、二色性色素DPは、調光層31の第1透明電極層34との接触面および第2透明電極層35との接触面の法線方向に対して分子長軸方向が垂直又は略垂直となるように配向されたときに呈色する。二色性色素DPが呈する色は、黒色又は黒色に近い色が好ましい。二色性色素DPは、液晶化合物LCMをホストとしたゲストホスト型式によって駆動されて呈色する。
【0034】
二色性色素DPは、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。二色性色素DPは、1種の色素、あるいは2種以上の色素の組み合わせである。耐光性を高めること、および二色比を高めることを要する場合、二色性色素は、アゾ化合物、およびアントラキノン化合物からなる群から選択される少なくとも一種であり、よりが好ましくはアゾ化合物である。
【0035】
二色性色素DPの含有率は、調光層31の重量に対して10重量%以下である。二色性色素DPの含有率を1重量%以上10重量%以下とすると、観察者が調光シート11を斜めから肉眼で見たときの視認性を高めることができる。二色性色素DPの含有率が1重量%以下であると、調光層31における色の濃度が小さくなり、美観に優れた調光シート11を得ることができる。
【0036】
スペーサSPは、有機高分子層31Pの全体にわたり分散されている。スペーサSPは、スペーサSPの周辺において調光層31の厚さを定めると共に、調光層31の厚さを均一化する。スペーサSPは、ビーズスペーサでもよいし、フォトレジストの露光および現像によって形成されるフォトスペーサでもよい。スペーサSPは、透光性を有し、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。有色透明のスペーサSPを用いる場合、スペーサSPが呈する色は、二色性色素DPの呈する色と同色であることが好ましい。
【0037】
駆動電圧の印加が解除されているとき、液晶化合物LCMおよび二色性色素DPの長軸方向は、無秩序になる。これにより、調光シート11は、可視光全域にわたり調光層31での散乱を生じ、不透明状態となる。また、二色性色素DPも、その長軸方向が無秩序になる。少なくとも二色性色素DPのうち、長軸方向と調光層31の積層方向Xとがなす角度のうち小さい角度が90°に近い角度であるものは呈色する。
【0038】
駆動電圧が印加されると、液晶化合物LCMは、電界による配向規制力を受け、液晶化合物LCMおよび二色性色素DPの長軸方向は、電界方向に沿う配向状態となる。これにより、調光シート11の全光線透過率は、不透明状態よりも高くなる。また、二色性色素DPの長軸方向も電界方向に沿う配向状態となる。このため、調光シート11を正面からみたとき、調光シート11の色が無色又は無色に近い状態になる。
【0039】
[調光シートの斜め視認性]
図3図6を参照して、観察者が調光シート11を斜めから観察したときの視認性を数値化することについて説明する。なお、以下では、この視認性を「斜め視認性」という。
【0040】
図3は、従来の調光シート11であって、透明状態の調光シート11の調光層31の一部を示す。液晶化合物LCMの配向秩序が構築され、液晶化合物LCMの長軸が調光層31の積層方向Xと平行又は略平行である。調光シート11の積層方向Xと平行又は略平行に可視光を含む光100が入射するとき、液晶化合物LCMの屈折率は常光の屈折率noとなる。この屈折率noは、有機高分子層31Pの屈折率npとの差が小さい。このため、液晶化合物LCMによる光100の散乱光101は比較的小さい。つまり、観察者が、透明状態の調光シート11を正面から観察したとき、調光シート11は透明度が高く、白濁は肉眼でほぼ認められない。
【0041】
図4は、観察者105が調光シート11を斜めから視認する状態を示す。本実施形態では、観察者105から調光シート11の外側面11Fに最短距離で向かう方向106(方向ベクトル)と、調光層31の積層方向X、換言すると調光シート11の外側面11Fの法線方向とがなす視認角度θ1が20°以上90°未満となる状態が、観察者105が斜めから視認した状態である。視認角度θ1が20°以下である場合には散乱が小さいため、斜め視認性が認められず適切に評価できない。また、視認角度θ1は、20°以上60°以下であってもよい。視認角度θ1が60°を超えると、視認可能なサンプル面積が狭くなり、また観察者105側の外側面11Fでの全反射光の影響も強くなるため、測定精度が低下する。本実施形態では、視認角度θ1に相当する可視光の入射角が20°以上60°以下である範囲を、斜め視認性を数値化して評価する範囲とする。なお、観察者105は、調光シート11の左側又は右側に位置する状態であってもよく、調光シート11の上方又は下方に位置する状態であってもよい。
【0042】
図5に示すように、光100が積層方向Xに対して斜めとなる方向で調光シート11に光が入射するとき、液晶組成物31LCの屈折率は屈折率neとなる。この屈折率neは、屈折率noよりも大きい。その結果、液晶化合物LCMの屈折率neと、有機高分子層31Pの屈折率npとの差Δnが大きくなる。屈折率の差Δnが大きくなることによって、液晶化合物LCMによる散乱光101の強度は、積層方向Xと平行又は略平行に光100が入射する図3に示すような場合に比べて大きくなる。これにより調光層31内で多重散乱が生じる。つまり、観察者が、透明状態の調光シート11を斜めから観察したときに白濁した状態として視認される。なお、このときの白濁の度合いは、調光シート11が不透明状態であるときの白濁の度合いよりも小さい。
【0043】
図6は、本実施形態の調光シート11の調光層31の一部を示す。光100が積層方向Xに対して斜めとなる方向で調光シート11に光が入射するとき、光100の散乱は図5に示す状態と同様に大きいものの、散乱光101の一部は、散乱の過程で液晶化合物LCMの周囲に存在する二色性色素DPによって吸収される。このため、調光層31内で生じる多重散乱が少なくなり、二色性色素DPを含まない従来の調光シート11と比較して、透明状態における白濁の度合いが小さくなる。その結果、調光シート11の斜め視認性が高くなる。
【0044】
[リバース型の調光シートの構造]
次に図7を参照してリバース型の調光シート11について説明する。リバース型の調光シート11は、調光層31と第1透明電極層34との間に第1配向層32を備え、調光層31と第2透明電極層35との間に第2配向層33を備える点で、ノーマル型の調光シート11と相違する。また、調光層31には、ノーマル型の調光シート11と同様に、二色性色素DPが含まれている。
【0045】
第1透明電極層34および第2透明電極層35への駆動電圧の印加が解除されているとき、液晶化合物LCMは、第1配向層32と第2配向層33とから配向規制力を受け、液晶化合物LCMの長軸方向は積層方向Xに沿う。これにより、調光シート11は、可視光全域にわたり調光層31での散乱を抑えて透明状態となる。調光層31が二色性色素DPを含有しているため、調光層31が二色性色素DPを含有していない場合に比べて、斜め視認性が高くなる。
【0046】
駆動電圧が印加されはじめると、液晶化合物LCMは、電界による配向規制力を受け、液晶化合物LCMの長軸方向は、電界方向と直交する方向に向けて移動しはじめる。この際、液晶化合物LCMの長軸方向は、液晶組成物31LCでの分子間の相互作用と空隙31Dの大きさとによる制約を受け、十分に移動しきれず、無秩序になる。これにより、調光シート11は、可視光全域にわたり調光層31での散乱を生じ、不透明状態となる。
【0047】
[調光シートの評価方法]
図8図16を参照して、斜め視認性についての評価方法について説明する。
斜め視認性は、調光シート11に対し斜めに光線を入射したときの拡散透過率によって評価する。本実施形態では、この拡散透過率を、斜め拡散透過率Td(%)という。本実施形態において斜め拡散透過率Tdは、調光シート11に斜めに光を入射させたときの斜め全光線透過率Tt(%)と斜めヘイズH(%)との積に基づく値である。
【0048】
斜め全光線透過率Ttは、光の入射角を変更するものの一般的な全光線透過率と同様に測定される。一般的な全光線透過率は、JIS‐K‐7375:2008の定義に基づく。つまり全光線透過率は、試験片55への平行入射光束に対する全透過光束の割合である。本実施形態の斜め全光線透過率Ttは、試験片55の入射面に対して斜めに入射する入射光束に対する全透過光束の割合をいう。斜め全光線透過率Ttは、調光シート11への入射角が大きくなるほど小さい値となる。
【0049】
斜めヘイズHは、光の入射角を変更するものの一般的なヘイズと同様に測定される。一般的なヘイズは、JIS‐K‐7136の定義に基づく。つまり、試験片55を透過した全光束に対する、試験片55および測定装置で拡散した光束の割合から、装置で拡散した光束の割合を減算したものである。ヘイズは、全光線透過率に対する拡散透過率の百分率で示すことができる({Td/Tt}×100)。斜めヘイズHは、試験片55の入射面に対して斜めに光束を入射させたときのヘイズである。つまり、斜めに光束を入射させたときの全光線透過率に対する、斜めに入射した光束と平行又は略平行な平行光束を除いた拡散透過率の百分率に相当する。斜めヘイズHは、調光シート11への入射角が大きくなるほど大きい値となる。なお、本実施形態では、斜め全光線透過率Tt(%)と斜めヘイズH(%)との積を、100%以下の値となるように、「1/100」の係数αを乗算して斜め拡散透過率Tdとしている。
【0050】
なお、調光シート11の白濁の度合いが大きくなると、斜めヘイズHも大きくなる傾向にある。しかし、斜めヘイズHは、全光線透過率に対する拡散透過率の割合を示すため、全透過光の光束の大きさに影響される。つまり、拡散透過率が同じ調光シート11であっても、一方の調光シート11が平行光を含む光を吸収する構成を有している場合、その調光シート11の全光線透過率が小さくなるため、他方の調光シート11よりもヘイズ値が大きくなる傾向となる。一方、斜め拡散透過率Tdは、入射光束に対し、試験片55を透過および拡散された光束の割合を示す。このため、斜め拡散透過率Tdは、全光線透過率に影響を受けにくい。
【0051】
図8は、斜め全光線透過率Ttおよび斜めヘイズHを測定するシステムの一例を示す模式図である。測定システムは、ヘイズメータ50を備える。ヘイズメータ50は、光源、集光レンズおよび絞りなどの光学機構を備える発光部51と、積分球、受光素子などの光学機構を備える受光部52を備えている。発光部51は、平行光線を受光部52に射出する。また、測定システムは、角度調整部53を備える。角度調整部53は、調光シート11を所定の大きさに切断した試験片55を保持する保持部、保持部の角度を調整する調整機構を有する。角度調整部53は、試験片55を発光部51および受光部52の間で保持する。また、角度調整部53は、保持部の角度を調整することで、発光部51から射出される光束56が試験片55へ入射するときの入射角θを調整する。
【0052】
ヘイズメータ50は、斜め全光線透過率Ttおよび斜めヘイズHを測定する。斜め全光線透過率Ttは、JIS‐K‐7375:2008に規定された「プラスチック‐全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠する方法で測定される。また、斜めヘイズHは、JIS‐K‐7136:2000に規定された「プラスチック‐透明材料のヘーズの求め方」に準拠する方法で測定される。但し、全光線透過率に関する前者の規定では試験片に対して垂直に平行光線を入射させ、ヘイズに関する後者の規定では、光束に対し試験片を-2°以上+2°以下の範囲に固定するのに対し、本実施形態では、発光部51から射出される平行光線である光束56を、試験片55に対して20°以上60°以下の入射角θで入射させる点が異なる。
【0053】
評価を行う際、評価対象の調光シート11を所定の大きさの試験片55とし、角度調整部53の保持部によって試験片55を保持する。そして調節機構によって試験片55の角度を調整し、入射角θを、20°以上60°以下の範囲内の一定角度として、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとを測定する。そして、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとの積に係数αを乗算した斜め拡散透過率Tdを得る。なお、入射角θを20°以上60°以下の範囲内で、例えば10°等、所定角度ずつ変化させて斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとを測定し、これらの積を求めてもよい。そして、それらの積のうち、最大値又は最小値に係数αを乗算したものを斜め拡散透過率Tdとしてもよい。
【0054】
調光シート11は、斜め拡散透過率Tdが閾値以下であるものが、斜め視認性が高いものとして選別される。閾値は、10%であることが好ましい。白濁を確実に抑える上では、斜め拡散透過率Tdの閾値は、6%であることが特に好ましい。なお、係数αを乗算しない場合は、斜め拡散透過率Tdの閾値は、「10.0×10」、又は「6.0×10」である。
【0055】
調光シート11の斜め拡散透過率Tdが6%を超えると、観察者105が調光シート11を斜めに観察した場合に、調光シート11が白濁して見え、調光シート11を隔てて観察者105と対向する対象物が認識できない状態となる。斜め拡散透過率Tdが6%以下となると、観察者105が調光シート11を斜めに観察した場合に、透明な状態又は透明性を維持しつつもやや白濁した状態に見え、調光シート11を隔てて観察者105と対向する対象物を認識できる状態となる。
【0056】
上述したように調光層31が二色性色素DPを含有している場合には、二色性色素DPが散乱光101を吸収する。このため、調光層31が二色性色素DPを含有していない調光シート11に比べ、斜め拡散透過率Tdを低下させ、斜め拡散透過率Tdを6%以下にしやすくすることができる。
【0057】
[調光シートの製造方法]
次に調光シート11の製造方法の一例について説明する。第1透明電極層34を備えた第1透明支持層36からなるシートと、第2透明電極層35とを備えた第2透明支持層37からなるシートとを準備する。次に、これらのシートの少なくとも一方に、塗液を塗工して塗膜を形成する。そして、これらのシートを貼り合わせ、第1透明電極層34および第2透明電極層35との間に塗膜を形成する。なお、リバース型の調光シート11では、第1配向層32および第2配向層との間に塗膜を形成する。
【0058】
塗膜は、光重合性化合物である樹脂組成物、液晶組成物31LC、二色性色素DPおよび樹脂組成物の重合を開始するための重合開始剤を含む。この塗膜に光を照射し、塗膜の樹脂組成物を重合させることによって液晶化合物LCMを樹脂組成物から相分離させる。樹脂組成物を重合させる光は、第1透明支持層36に向けて照射されてもよいし、第2透明支持層37に向けて照射されてもよいし、第1透明支持層36および第2透明支持層37の両方に向けて照射されてもよい。また、塗液は、可塑剤、硬化助剤を含んでいてもよい。なお、両方のシートに塗膜を形成し、それらを貼り合わせてもよい。また、スペーサSPを介してシートを貼り合わせてシートの間に塗液を注入するようにしてもよい。
【0059】
液晶組成物31LCの相分離では、液晶粒子の大きさを所望の大きさとするように、また液晶粒子の数量が所望の数量となるように、樹脂組成物に照射される光の強度、照射時間、および樹脂組成物の重合時の処理温度が設定される。すなわち、液晶組成物31LCの相分離では、空隙31Dの大きさを所望の大きさとするように、また空隙31Dの数量が所望の数量となるように、樹脂組成物に照射される光の強度、照射時間、および樹脂組成物の重合時の処理温度が設定される。これにより、調光層31、第1透明電極層34および第2透明電極層35、第1透明支持層36および第2透明支持層37からなる積層体を有する調光シート11が構成される。さらに、この調光シート11のうち所定の領域の第2透明支持層37、第2透明電極層35および調光層31を剥離して、第1透明電極層34を露出させ、第1透明電極層34に第1接続端子22Aを電気的に接続する。また、調光シート11のうち所定の領域の第1透明支持層36、第2透明電極層35および調光層31を剥離して、第2透明電極層35を露出させ、第2透明電極層35に第2接続端子22Bを電気的に接続する。
【0060】
次に測定工程を行う。測定工程では、この調光シート11から試験片55を作製し、測定システムを用いて、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとを測定する。そして、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとの積に係数αを乗算して、斜め拡散透過率Tdを求める。
【0061】
次に選別工程を行う。斜め拡散透過率Tdが、例えば0.6といった閾値以下である調光シート11を選別する。この選別工程はロット毎に行ってもよく、調光シート11の種別毎に行ってもよい。
【0062】
第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1‐1)観察者が透明状態の調光シート11を斜めの方向から観察したときの白濁の度合いである斜め視認性を、ヘイズと全光線透過率の積に基づいて、数値として評価することができる。このため、斜め視認性の高い調光シートを選別することができる。
【0063】
(1-2)斜め全光線透過率Ttおよび斜めヘイズHとの積が閾値である6.0×10 以下である調光シート11を斜め視認性が高いものとして判定した。換言すると、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとの積に係数αを乗算した斜め拡散透過率Tdが6%以下ある調光シート11を斜め視認性が高いものとして判定した。このため、斜め視認性が高い調光シート11を選別することができる。
【0064】
(1-3)調光層31に含まれる二色性色素DPが液晶化合物LCMによって散乱された光を吸収する。このため、斜め視認性を高め、斜め視認性が高いものとして選別されやすい調光シートを製造することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、図9を参照して、調光シートの製造方法の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、調光シート11が可視光を吸収する層を有する点が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
第1実施形態では、調光層31が二色性色素DPを含有することで目視レベルLVを低くするようにした。これに代えて、第1透明支持層36および第2透明支持層37の外側に有色透明の第1光吸収層38および第2光吸収層39を設けるようにしてもよい。第1光吸収層38および第2光吸収層39は、例えば黒色の樹脂フィルムである。第1光吸収層38および第2光吸収層39は、有機高分子化合物、あるいは無機高分子化合物である。例えばポリエチレンテレフタラート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどである。なお、調光層31に二色性色素DPを含め、且つ第1光吸収層38および第2光吸収層39を設けるようにしてもよい。
【0067】
第1光吸収層38および第2光吸収層39は、調光シート11の外側面11Fに対して斜めに入射した可視光が散乱した散乱光を吸収する。光吸収性および透明性を維持する点では第1光吸収層38および第2光吸収層39の全光線透過率は、例えば20%以上60%以下が好ましい。
【0068】
この調光シート11の第1透明支持層36および第2透明支持層37に、第1光吸収層38および第2光吸収層39をそれぞれ接合する。第1光吸収層38および第2光吸収層39は、接着剤によって接着してもよく、溶着により接合してもよい。
【0069】
第2実施形態によれば、上記(1-1),(1-2)に記載の効果に加え、以下に列挙する効果を得ることができる。
(2-1)第1光吸収層38および第2光吸収層39が、液晶化合物LCMによって散乱された可視光を吸収する。このため、斜め視認性の高い調光シート11を得ることができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図10を参照して、調光シートの製造方法及び評価方法の第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態では、調光層31の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0071】
第1実施形態では、調光層31が二色性色素DPを含有することで二色性色素DPが散乱光を吸収して斜め視認性を高めるようにした。これに代えて、有機高分子層31Pに屈折率に異方性を有する液晶性高分子を添加するようにしてもよい。なお、第3実施形態の調光シート11の調光層31に二色性色素DPを含めてもよい。また、第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えるようにしてもよく、これらの両方の構成を有していてもよい。
【0072】
図10は、調光層31の一部を示す。有機高分子層31Pは、液晶性高分子310からなる液晶性高分子310を含んでいる。液晶性高分子310は細長い形状を有している。液晶性高分子310は、配向軸である長軸の方向が、透明状態における液晶化合物LCMの長軸の方向と揃っている。
【0073】
液晶性高分子310は、以下の式1で表される液晶性モノマーである第1モノマー(2-Propenonic acid,2-methyl-,6-[4-(4-heptylcyclohexyl)phenoxy]hexyl este)の重合体である。
【0074】
又は、液晶性高分子310は、以下の式2で表される液晶性モノマーである第2モノマーの重合体である。なお、シクロヘキサン環の中に示される「t」はトランス体を示す。
【0075】
【化1】
【0076】
【化2】
【0077】
調光層31内での散乱は、有機高分子層31Pにおける入射光の屈折率と、液晶化合物LCMの入射光の屈折率との差が大きいほど、大きくなる。このように液晶性高分子310と液晶化合物LCMとの配向軸が揃っていると屈折率差が小さくなるため、散乱が小さくなる。
【0078】
調光シート11の製造方法の一例について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
塗膜は、液晶組成物31LC、液晶性高分子310からなる溶融状態の液晶性樹脂、および樹脂組成物の重合を開始するための重合開始剤を含む。塗膜の樹脂組成物を重合させることによって液晶化合物LCMを樹脂組成物から相分離させる。また、塗液は、可塑剤、硬化助剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、例えばアジピン酸自ブチル、硬化助剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を用いることができる。この塗液を、第1透明電極層34を備えた第1透明支持層36からなるシートと、第2透明電極層35とを備えた第2透明支持層37からなるシートとの少なくとも一方に塗工する。そして、液晶性高分子310の配向制御処理を行って、液晶性高分子310の配向軸を揃える。液晶、液晶性高分子の配向は、既知の水平配向膜を用いて行われる。例えば、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子膜をラビングして得る手法が挙げられる。配向制御処理を行った後、塗膜を冷却して配向状態を維持させたまま液晶性樹脂を固化させる。
【0079】
さらに、これらのシートを貼り合わせて、第1透明電極層34および第2透明電極層の間に塗膜を挟んだ状態とする。そして1組のシートの外側から光を照射し、塗膜の樹脂組成物を重合させることによって液晶化合物LCMを樹脂組成物から相分離させる。なお、両方のシートに塗膜を形成してそれらを貼り合わせてもよいし、塗膜の形成方法は特に限定されない。
【0080】
第3実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(3-1)第3実施形態では、調光層31は、液晶性高分子310からなる液晶性樹脂を含む。そして、液晶性高分子310の配向軸の方向を、透明状態の液晶化合物LCMの配向軸の方向に揃えることで、調光シート11が透明状態とされた場合に、液晶化合物および液晶性樹脂の屈折率の差が小さくなる。このため、斜め視認性が高い調光シート11を得ることができる。
【0081】
[実施例]
図11を参照して、実施例及び比較例について具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0082】
[実施例1]
実施例1の調光シート11は、第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えるものである。厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートからなる透明支持層及び、厚さ30nmの酸化インジウムスズ(ITO)透明電極層を含む一対のシートを準備した。塗液は以下の組成とした。なお、以下の実施例および比較例の塗液を構成する材料の含有率は、塗液の全固形分量に対する比率である。
【0083】
液晶化合物LCM:ポジ型ネマチック液晶(ネマチック‐等方相転移温度110℃、メルク社製、MNC‐6609)、50質量%
光重合性化合物:イソボニルアクリレート(製品名:A-IB、新中村化学工業株式会社製)、47質量%
硬化助剤:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製)、1質量%
重合開始剤:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.製)、1質量%
スペーサSP:PMMA製の真球状粒子、粒径15μm、(積水化成品工業株式会社製)、1質量%
この塗液を用いて、塗膜を一方のシートの上に形成し、第1透明電極層34と第2透明電極層35とによってラミネートし、第1透明支持層36、第2透明電極層35両面に365nmの紫外光線を照射することによって、積層体を得た。この際、紫外光線の強度を片側5mW/cmに設定し、紫外線の照射時間を100秒とした。
【0084】
さらにこの積層体の両面に、黒色の第1光吸収層38および第2光吸収層39(シルフィード SC-7045、アイケーシー株式会社製)を貼り付けて、実施例1の調光シート11とした。
【0085】
[実施例2]
実施例2の調光シート11は、調光層31に二色性色素DPを含むものである。実施例2の調光シート11は、実施例1の調光シート11に対して第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えていない点、および塗液の組成のみが異なる。塗液は以下の組成とした。硬化助剤、重合開始剤、スペーサSPの種類および含有率は実施例1と同様である。
【0086】
液晶化合物LCM:フェニル‐シクロヘキシル系液晶(メルク社製、MNC‐6609)、50質量%
光重合性化合物:イソボニルアクリレート(製品名:A-IB、新中村化学工業株式会社製)、44質量%
二色性色素:アジピン酸ジブチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)、3質量%
[実施例3]
実施例3の調光シート11は、調光層31に屈折率に異方性を有する液晶性高分子を用いる。実施例3の調光シート11は、実施例1の調光シート11に対して、第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えていない点、および塗液の組成のみが異なる。塗液は以下の組成とした。硬化助剤、重合開始剤、スペーサSPの種類および含有率は実施例1と同様である。
【0087】
液晶化合物LCM:フェニル‐シクロヘキシル系液晶(メルク社製、MNC‐6609)、塗液の全固形分量に対して50質量%
光重合性化合物:イソボニルアクリレート(製品名:A-IB、新中村化学工業株式会社製)、29.5質量%
液晶性モノマー:第3実施形態に記載の第1モノマー(2-Propenonic acid,2-methyl-,6-[4-(4-heptylcyclohexyl)phenoxy]hexyl este)、17.5質量%
[実施例4]
実施例3の調光シート11は、調光層31に屈折率に異方性を有する液晶性高分子を用いる。実施例3の調光シート11は、実施例1の調光シート11に対して、第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えていない点、および塗液の組成のみが異なる。塗液は以下の組成とした。硬化助剤、重合開始剤、スペーサSPの種類および含有率は実施例1と同様である。
【0088】
液晶化合物LCM:フェニル‐シクロヘキシル系液晶(メルク社製、MNC‐6609)、塗液の全固形分量に対して50質量%
光重合性化合物:イソボニルアクリレート(製品名:A-IB、新中村化学工業株式会社製)、29.5質量%
液晶性モノマー:第3実施形態に記載の第2モノマー、17.5質量%
[実施例5]
実施例5の調光シート11は、調光層31が屈折率に異方性を有する液晶性高分子および二色性色素DPを含む。液晶性高分子を形成するモノマーは、第1モノマーであり、実施例3と同様である。実施例5の調光シート11は、実施例3の調光シート11に対し、光重合性化合物の含有率が26.5質量%、二色性色素DPの含有率が3質量%である点のみが異なる。なお、二色性色素DPは実施例2で用いた二色性色素DPと同じである。
【0089】
[実施例6]
実施例6の調光シート11は、調光層31が屈折率に異方性を有する液晶性高分子および二色性色素DPを含む。液晶性高分子を形成するモノマーは、第2モノマーであり、実施例4と同様である。実施例6の調光シート11は、実施例4の調光シート11に対し、光重合性化合物の含有率が26.5質量%、二色性色素DPの含有率が3質量%である点のみが異なる。なお、二色性色素DPは実施例2で用いた二色性色素DPと同じである。
【0090】
[比較例1]
比較例1の調光シート11は、第1光吸収層38および第2光吸収層39、二色性色素DP、および屈折率に異方性を有する液晶性高分子のいずれも備えないものである。つまり、比較例1の調光シート11は、実施例1の調光シート11に対し、第1光吸収層38および第2光吸収層39を備えていない点のみが異なる。
【0091】
(斜め視認性の評価)
測定システムとして、ヘーズメーター(NDH7000SP、日本電色工業株式会社製)と、保持部および角度を調整する調整機構を有する角度調整部53(自作)を用いた。角度調整部53は、発光部51と受光部52との間に配置した。そして、各実施例の試験片55に対し、入射角θを変えながら、斜め全光線透過率Ttおよび斜めヘイズHを測定した。ヘーズメーターの測定条件は、斜め全光線透過率Ttの測定条件がJIS K 7361-1:1997(ISO 1468-1)に準拠し、斜めヘイズHの測定条件がJIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠するよう設定した。入射角θは、20°,30°,40,50°,60°とした。
【0092】
さらに、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとの積を求め、積を「1/100」とする係数を乗算して、斜め拡散透過率Tdとした。
図11に示すように、比較例1における斜め拡散透過率Tdは、5.05~9.35であり、入射角θが大きくなるにつれ斜め拡散透過率Tdは大きくなった。
【0093】
実施例1~実施例6における斜め拡散透過率Tdと、比較例1における斜め拡散透過率Tdとを同じ入射角θで比較すると、実施例1~実施例6における斜め拡散透過率Tdはいずれも比較例1の斜め拡散透過率Tdよりも小さくなった。
【0094】
実施例1における斜め拡散透過率Tdは、1.69~5.41となり、実施例2における斜め拡散透過率Tdは、0.45~4.42となった。実施例1における斜め拡散透過率Tdと実施例2における斜め拡散透過率Tdとを、同じ入射角θで比較すると、実施例2における斜め拡散透過率Tdが実施例1に比べ小さくなった。つまり、二色性色素DPの含有率にもよるが、二色性色素DPが散乱光を吸収する効果が高いことが認められた。
【0095】
実施例3における斜め拡散透過率Tdは、0.35~2.70であり、実施例4における斜め拡散透過率Tdは、0.24~2.87であった。また、実施例3の調光シート11に二色性色素DPを含めた実施例5では、斜め拡散透過率Tdは0.27~3.21であって実施例3における斜め拡散透過率Tdよりも入射角が60°の場合を除き小さくなった。また、実施例6における斜め拡散透過率Tdは、0.27~3.02であって実施例4における斜め拡散透過率Tdよりも入射角が60°の場合を除き小さくなった。つまり、液晶性高分子に加え、二色性色素DPを調光層31に含めることによって、散乱光を吸収する効果が高められることが認められた。
【0096】
(目視レベルの評価)
角度調整部53によって試料の角度を変えながら、試験片55に対して発光部51と同じ方向から観察者が肉眼で試験片55を視認し、白濁度の度合いを示す見本と比較して目視レベルLVを判定した。観察者から試験片55に向かう方向と試験片55の法線方向とがなす視認角度θ1を、斜め視認性の入射角θと同様に20°,30°,40°,50°,60°とした。そして、試験片55の白濁の度合いを、「目視レベル0」~「目視レベル6」の見本と比較して、試験片55の目視レベルを判定した。
【0097】
図13図19に示すように「目視レベル0」~「目視レベル6」の見本60~66は、撮影対象の調光シート11は文字が印刷された文字盤の上に重ねられている。文字盤には、「凸版印刷株式会社」のロゴである「TOPPAN」(登録商標)を、文字の色、文字の背景色を変えた複数のパターンが表示されている。見本60~66は、肉眼で調光シート11を視認したときに認められる白濁の度合いに応じて、目視レベル0~目視レベル6までの7段階に分けられ、目視レベル0から目視レベル6に向かうにつれて白濁度が高くなる。目視レベル0以上目視レベル2以下は白濁が認められず透明である状態を示し、目視レベル2超目視レベル4以下はやや白濁が認められる状態を示す。目視レベル2超目視レベル4以下は、観察者が調光シート11を隔てて対象物を認識できる程度の白濁の度合いである。目視レベル4以上は白濁の度合いが強い状態を示す。目視レベル4以上では、観察者が調光シート11を隔てて対象物を認識できない。
【0098】
比較例1における目視レベルは2~5であり、入射角θが大きくなるほど目視レベルも大きくなった。
実施例1~6における目視レベルと比較例1における目視レベルとを同じ入射角θで比較すると、実施例1~6における目視レベルは、いずれも比較例1における目視レベルよりも小さくなった。実施例1における目視レベルは1~4、実施例2,3における目視レベルは1.5~4、実施例4における目視レベルは1~4、実施例5,6における目視レベルは0.5~2となった。特に液晶性高分子および二色性色素DPの両方を備える実施例5,6における目視レベルは、液晶性高分子のみを備える実施例3,4の調光シートに比べ目視レベルが小さくなることが認められた。
【0099】
(斜め視認性および目視レベルとの対比)
実施例1~6および比較例1の各入射角θにおける斜め拡散透過率Tdと、入射角θと同じ視認角度θ1の方向から肉眼で白濁の有無を評価した目視レベルLVとを、縦軸を斜め拡散透過率Tdとし、横軸を目視レベルLVとするグラフにプロットした。
【0100】
図12は、斜め拡散透過率Tdと目視レベルLVとの相関性を示す散布図である。目視レベルLVがレベル0以上レベル2以下の「透明」である状態では、斜め拡散透過率Tdは0.3%以上5.0%以下である。また、目視レベルLVがレベル2超4以下の「やや白濁」である状態では、斜め拡散透過率Tdは2.2%以上5.6%以下であり、目視レベルLVがレベル0以上レベル2未満における斜め拡散透過率Tdに比べ大きい。さらに目視レベルLVが4超6以下の「白濁」である状態では、斜め拡散透過率Tdは6.4%以上9.3%以下であり、目視レベルLVがレベル2超4以下の「やや白濁」である状態よりも斜め拡散透過率Tdが高くなる傾向となった。
【0101】
このように、斜め拡散透過率Tdが高くなるに伴い目視レベルLVが高くなる傾向があり、斜め拡散透過率Tdと目視レベルLVとの間には相関性が認められた。特に、斜め拡散透過率Tdが6%以下である場合には、試験片55が「白濁」のときの斜め拡散透過率Tdとの差が顕著であり、目視レベルLVが「透明」又は「やや白濁」であるため、斜め視認性が高いことが認められた。
【0102】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0103】
・上記実施形態では、斜め全光線透過率Ttと斜めヘイズHとを測定し、それらの積を求めることによって斜め拡散透過率Tdを測定した。これに代えて若しくは加えて、斜め拡散透過率Tdを直接測定するようにしてもよい。この場合、図8と同様に、発光部51から射出された平行光線に対し試験片55を斜めとなるように配置し、受光部52によって拡散透過率を測定する。
【0104】
・上記実施形態では、スペーサSPを、不透明状態で調光層が呈する黒色と同色を呈するとした。これに代えて若しくは加えて、スペーサSPを、不透明状態で調光層31が呈する黒色と同系色のものとしてもよい。又は調光層31に添加される複数のスペーサSPの一部又は全てを無色透明とし、粒径を調整することによって、スペーサが目立たない外観としてもよい。
【0105】
・上記実施形態では、調光層31を、有機高分子層31Pおよび液晶組成物31LCを有する構造とした。これに代えて、調光シート11を、配向粒子としての光調整粒子を有するSPD(SuspendedParticleDevice)方式のものとしてもよい。SPD方式は、光調整粒子を含む光調整懸濁液を、樹脂マトリックス中に分散させる方式である。
【符号の説明】
【0106】
DP…二色性色素
LCM…液晶化合物
SP…スペーサ
10…調光装置
11…調光シート
図1
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