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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】包装材及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20250422BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20250422BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250422BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B23/08
B32B27/32 C
B32B27/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021136242
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030866
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】油家 佑紀
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055171(JP,A)
【文献】特開2010-111440(JP,A)
【文献】特開昭59-192596(JP,A)
【文献】特開2013-028353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0338879(US,A1)
【文献】特開平10-016156(JP,A)
【文献】特開昭61-130042(JP,A)
【文献】特開平05-125672(JP,A)
【文献】特開2018-009170(JP,A)
【文献】特開2019-059923(JP,A)
【文献】特開2020-066452(JP,A)
【文献】特許第6875765(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された透明樹脂層とを備える包装材であって、
前記包装材は、平均直径が8000μm以下の貫通孔を有し、かつ40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量が5g/m・day以上であり、
前記透明樹脂層がニトロセルロースを含む、包装材。
【請求項2】
食品用包装材である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
電子レンジ加熱食品用包装材である、請求項2に記載の包装材。
【請求項4】
青果物用包装材である、請求項2又は3に記載の包装材。
【請求項5】
前記印刷層がポリウレタンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項6】
前記透明樹脂層がポリウレタンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材を用いて得られた包装体であって、前記基材フィルム同士の一部が接着され、収容空間が形成されており、前記印刷層が前記透明樹脂層よりも前記収容空間の側に配置されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、包装材及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
目的物を収容して保存するために、種々の保存用の包装体が用いられている。例えば、保存対象物が青果物等の非加熱処理食品である場合には、包装体には、この対象物の鮮度を保持しつつ保存できることが求められる。また、包装体に用いられる包装材は、包装体に内容物を表示するため、さらに、意匠性を向上させるために、印刷層が形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓋材と、樹脂シートまたは樹脂フィルムを成形した容器と、容器内に収容したゼラチンを含む内容物とからなる包装体において、前記蓋材にはニトロセルロース系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む印刷層、着色層またはコート層のいずれか一層以上が設けられている包装体が開示されている。特許文献2には、磁化可能インキによって提供された磁化可能部分を有する包装材料を製造する方法であって、前記包装材料は、折畳みおよびシール加工を経て食品用の包装容器へと再形成される、紙または板紙の基材層を含む包装積層材のウェブまたはシートである方法が開示されている。
【0004】
食品容器は、電子レンジにそのまま入れて加熱する形態の容器、所謂レンジアップ容器として使用されるケースが増えつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005―313938号公報
【文献】特開2015―214694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の印刷層が形成された包装材を用いて形成された包装体を、電子レンジにそのまま入れて加熱した場合、印刷層が剥がれて、電子レンジの底又は皿に転写してしまう現象、すなわち、インキ移りが生じるという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持でき、電子レンジで加熱しても、インキ移りが生じるおそれのない包装材、及び、前記包装材を用いて得られた包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、印刷層上にニトロセルロースを含む透明樹脂層を形成し、所定の貫通孔を形成することにより、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持でき、電子レンジで加熱しても、インキ移りが生じるおそれのない包装材となることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の技術を提供するものである。
【0009】
[1] 二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された透明樹脂層とを備える包装材であって、
前記包装材は、平均直径が8000μm以下の貫通孔を有し、かつ40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量が5g/m・day以上であり、
前記透明樹脂層がニトロセルロースを含む、包装材。
[2] 食品用包装材である、[1]に記載の包装材。
[3] 電子レンジ加熱食品用包装材である、[2]に記載の包装材。
[4] 青果物用包装材である、[2]又は[3]に記載の包装材。
[5] 前記印刷層がポリウレタンを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の包装材。
[6] 前記透明樹脂層がポリウレタンを含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の包装材。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の包装材を用いて得られた包装体であって、前記基材フィルム同士の一部が接着され、収容空間が形成されており、前記印刷層が前記透明樹脂層よりも前記収容空間の側に配置されている、包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持でき、電子レンジで加熱しても、インキ移りが生じるおそれのない包装材、及び、前記包装材を用いて得られた包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の包装材1を模式的に示した断面図である。
図2】本発明の他の実施形態の包装材1Aを模式的に示した断面図である。
図3】本発明の他の実施形態の包装材1Bを模式的に示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態の包装体2を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である包装材およびこれを用いた包装体について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<<包装材>>
本発明の包装材は、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された透明樹脂層とを備える包装材である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の包装材を模式的に示した断面図である。本実施形態の包装材1は、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルム10と、基材フィルム10上に形成された印刷層21と、印刷層21上に形成された透明樹脂層30とを備える包装材1であって、透明樹脂層30がニトロセルロースを含む。
【0015】
基材フィルム10は二軸延伸ポリプロピレンを含む。基材フィルム10が二軸延伸されていることにより、基材フィルム10の酸素透過量をより低下させることができる。また、より安価な材料を使用することができ、また伸びの異方性を低減させることができる。
【0016】
基材フィルム10における、基材フィルム10の全質量に対する、ポリプロピレンの含有量の割合は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。前記割合が、前記下限値以上であると、透明性を担保することができる。
【0017】
基材フィルム10は、二軸延伸されている効果と、ポリプロピレンを含んでいることによる効果が、共に得られる。
【0018】
基材フィルム10の構成材料は、1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0019】
基材フィルム10の構成材料は、ポリプロピレンの他、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリビニル等が挙げられる。基材フィルム10の構成材料は、ポリプロピレン以外のポリオレフィンが含まれていてもよい。基材フィルム10の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0020】
基材フィルム10は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材フィルム10が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0021】
なお、本明細書においては、基材フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0022】
基材フィルム10の厚さは、特に限定されないが、5~200μmであることが好ましく、10~150μmであることがより好ましく、15~100μmであることが特に好ましい。基材フィルム10の厚さが前記下限値以上であることで、基材フィルムの強度がより向上する。また、基材フィルム10の厚さが前記上限値以下であることで、柔軟性を担保できる。
基材フィルム10が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい基材フィルムの厚さとなるようにするとよい。
【0023】
本実施形態の包装材1は、基材フィルム10の一方の面10a上に印刷層21が形成されている。本実施形態の包装材1は、印刷層21が形成されているので、包装材1で構成された包装体に収容された内容物を表示することができ、包装材1の意匠性を向上させることができる。
【0024】
印刷層21は、基材フィルム10の一方の面10aに、公知のインキを用いて形成することができる。インキとしては、着色剤と、バインダーとを含む固形分、並びに、溶剤を含むグラビアインキが挙げられる。着色剤として、汎用の有機顔料若しくは無機顔料又は染料を用いることができる。バインダーとしては、ニトロセルロース、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミドが挙げられる。インキの全質量に対する固形分濃度は、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。印刷層21は、バインダーとしてポリウレタンを含むことが好ましい。
【0025】
溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族系溶剤等、が挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0026】
本実施形態の包装材1は、基材フィルム10の一方の面10aのうち、その上に印刷層21が設けられていない領域14が形成されている。基材フィルム10上の、印刷層21が設けられていない領域14を通して、包装材1で構成された包装体に収容された内容物を視認することができる。
【0027】
印刷層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。
【0028】
本実施形態の包装材1は、印刷層21上にニトロセルロースを含む透明樹脂層30が形成されている。これにより、電子レンジで加熱しても、インキ移りが生じるおそれのない包装材とすることができる。
【0029】
前記透明樹脂層30は、印刷層21の上に、ニトロセルロースを含む透明インキを用いて印刷して形成することができる。ニトロセルロースを含む透明インキとしては、ニトロセルロースを含む固形分、及び、溶剤を含むインキが挙げられる。固形分としては、ニトロセルロースの他、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド等を含んでいてもよい。インキの全質量に対する固形分濃度は、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
溶剤としては、上述の、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、脂肪族系溶剤等、が挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0031】
本実施形態の包装材は、上述のような積層構造を有するのに加え、平均直径が8000μm以下の貫通孔40が形成されている。
【0032】
包装材の表面における前記貫通孔の開口部の形状、及び前記貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部の形状は、特に限定されず、例えば、円形状;楕円形状;三角形状、四角形状等の多角形状;円形、楕円形及び多角形からなる群より選択される2種以上の形が組み合わされた形状等、いずれであってもよい。ただし、貫通孔の形成が容易である点から、前記形状は、円形状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「貫通孔の開口部」とは、特に断りのない限り、上述の包装材の表面における貫通孔の開口部と、貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部と、の両方を意味するものとする。
【0033】
貫通孔の前記開口部の形状が、円形状以外である場合、貫通孔の直径は、前記開口部の異なる2点間を結ぶ線分の長さのうち、最大の長さ(最大径)を意味するものとする。
【0034】
前記貫通孔の平均直径は、30~8000μmであることが好ましく、40~800μmであることがより好ましく、50~500μmであることが特に好ましい。貫通孔の平均直径がこのような範囲であることで、包装材を用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品)を保存するときに、酸素、二酸化炭素及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。さらに、貫通孔の平均直径が前記下限値以上であることで、包装材の製造がより容易となる。
【0035】
包装材が有する前記貫通孔の数は、特に限定されないが、10~500個/mであることが好ましく、10~400個/mであることがより好ましく、10~300個/mであることがさらに好ましく、10~280個/mであることが特に好ましい。貫通孔の数がこのような範囲であることで、包装材1を用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品)を保存するときに、酸素、二酸化炭素及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。
【0036】
包装材が有する前記貫通孔の数、すなわち、包装材の単位面積(1m)あたりの貫通孔の数は、包装材の面積と、包装材1枚あたりの貫通孔の数と、のいずれか一方又は両方を調節することで、調節できる。
【0037】
包装材の面積は、包装材の用途に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、例えば、0.01~1.5mであることが好ましく、0.015~1.2mであることがより好ましく、0.02~1mであることが特に好ましく、例えば、0.02~0.5m、0.02~0.3m、及び0.02~0.1m等のいずれかであってもよい。
【0038】
包装材1枚あたりの貫通孔の数は、1個以上であればよく、1個でもよいし、2個以上でもよく、包装材の面積や用途に応じて適宜調節すればよい。
包装材1枚あたりの貫通孔の数は、例えば、1~30個であることが好ましく、1~25個であることがより好ましく、1~20個であることが特に好ましい。
【0039】
包装材における貫通孔40の位置は、特に限定されない。透明樹脂層30、印刷層21及び基材フィルム10を貫通する位置に貫通孔40が設けられていてもよく、基材フィルム10のみを貫通する位置に貫通孔40が設けられていてもよい。図1は、透明樹脂層30、印刷層21及び基材フィルム10を貫通する位置に貫通孔40が設けられている包装材1を模式的に示した断面図である。図2は、基材フィルム10のみを貫通する位置に貫通孔40が設けられている包装材1Aを模式的に示した断面図である。
【0040】
包装材の、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量は、5g/m・day以上であり、6g/m・day以上であることが好ましく、8g/m・day以上であることがより好ましく、10g/m・day以上であることが特に好ましい。包装材の前記水蒸気透過量が前記下限値以上であることで、包装材を用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物でのカビの発生が顕著に抑制される。
【0041】
包装材の、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量の上限値は、特に限定されない。ただし、包装材を用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品、特に青果物)の乾燥及び萎れの抑制効果がより高くなる点では、包装材の前記水蒸気透過量は、500000g/m・day以下であることが好ましく、5000g/m・day以下であることがより好ましく、50g/m・day以下であることが特に好ましい。
包装材の前記水蒸気透過量は、上述のいずれかの下限値と上限値とが適宜任意に組み合わされて設定された範囲内であることが好ましい。
【0042】
包装材の前記水蒸気透過量は、例えば、前記貫通孔の大きさ若しくは数、又は包装材を構成する各層の構成材料の種類若しくは厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0043】
包装材の前記水蒸気透過量は、JIS K 7129Bに準拠して、測定できる。
【0044】
包装材の、20℃、80%RHの雰囲気下における酸素透過量は、特に限定されないが、2.0×10cc/m・day以下であることが好ましく、1.5×10cc/m・day以下であることがより好ましく、1.0×10cc/m・day以下であることが特に好ましい。包装材の前記酸素透過量が前記上限値以下であることで、包装材を用いて作製された包装体の収容空間内において、特に、非加熱処理食品の収容物を、より好ましい品質で保存できる。特に、非加熱処理食品が青果物である場合、保存中の青果物は呼吸を行うが、収容空間内における酸素濃度の上昇を抑制することで、青果物の呼吸を抑制し、青果物の消耗を抑制して、青果物をより高い鮮度で保存できる。
【0045】
包装材の、20℃、80%RHの雰囲気下における酸素透過量の下限値は、特に限定されない。ただし、収容物(非加熱処理食品、特に青果物)が、前記包装体の収容空間内において、酸欠となるのを抑制するという点では、包装材の前記酸素透過量は、0.5×10cc/m・day以上であることが好ましく、1.0×10cc/m・day以上であることがより好ましい。
包装材の前記酸素透過量は、上述のいずれかの下限値と上限値とが適宜任意に組み合わされて設定された範囲内であることが好ましい。
【0046】
包装材の前記酸素透過量は、例えば、前記貫通孔の大きさ若しくは数、又は包装材を構成する各層の構成材料の種類若しくは厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0047】
包装材の前記酸素透過量は、例えば、以下の方法で測定できる。
すなわち、大気下において、包装材を用いて包装体を作製し、密封した後、包装体の収容空間内の雰囲気を、純度99.9%以上のV(cc)の窒素ガスで置換し、窒素ガスでの置換完了時からの経過時間をt(h)とし、このときの袋の内部の酸素濃度をC(%)として、t=0(すなわち、窒素ガスでの置換完了時)の場合のCを測定し、Cを測定後、この包装体を、20℃、80%RHの条件下で保管し、t≧3の段階でCを測定して、下記式(i)により、酸素透過量F(cc/m・day)を算出する。
密封した後の包装体の収容空間内の雰囲気は、例えば、注射針を用いることで、純度99.9%以上の窒素ガスで置換できる。また、Cは、あらかじめ検量線を作成しておき、この検量線を使用して求める。
F=1.143×(C-C)×V/t ・・・・(i)
【0048】
図2は、他の実施形態の包装材1Aを模式的に示した断面図である。
なお、図2図3及び図4において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0049】
包装材1Aは、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルム10と、基材フィルム10上に形成された印刷層21と、印刷層21上に形成された透明樹脂層30とを備える包装材1であって、透明樹脂層30がニトロセルロースを含む。包装材1Aは、基材フィルム10の一方の面10aのうち、その上に印刷層21が設けられていない領域14が形成され、印刷層21が設けられていない領域14の基材フィルム10に、貫通孔40が形成されている。
【0050】
図3は、他の実施形態の包装材1Bを模式的に示した断面図である。
【0051】
包装材1Bは、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材フィルム10と、基材フィルム10上に形成された印刷層21と、印刷層21上に形成された印刷層22と、印刷層22上に形成された印刷層23と、印刷層23上に形成された透明樹脂層30とを備え、透明樹脂層30がニトロセルロースを含む。印刷層21、印刷層22及び印刷層23は、複数層からなる印刷層20を形成している。包装材1Bは、基材フィルム10の一方の面10aのうち、その上に印刷層20が設けられていない領域14が形成され、印刷層20が設けられていない領域14の基材フィルム10に、貫通孔40が形成されている。
【0052】
印刷層20が複数層からなる場合、これら印刷層21、印刷層22、印刷層23のうち、基材フィルム10の側の印刷層21は、薄い色であることが好ましく、具体的には白色であることが好ましい。複数層の印刷層20のうち、透明樹脂層30の側の印刷層22及び印刷層23は、基材フィルム10の側の印刷層21よりも濃い色であることが好ましい。
【0053】
本発明の包装材は、食品用包装材として使用することができ、特に、電子レンジ加熱食品用包装材として好適に使用することができる。
【0054】
本発明の包装材は、非加熱処理食品の包装用であることが好ましい。例えば、本発明の包装材は、野菜、果物、穀物等の青果物用包装材であることが好ましい。
【0055】
<<包装体>>
本発明の包装体は、前述の実施形態の包装材を用いて得られた包装体であって、前記基材フィルム同士の一部が接着され、収容空間が形成されており、前記印刷層が前記透明樹脂層よりも前記収容空間の側に配置されている。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態の包装体2を模式的に示した断面図である。
本実施形態の包装体2は、図1に示す包装材1を用いて得られたものである。包装体2は、一対の包装材1,1の基材フィルム10,10の、印刷層21とは反対側の他方の面10b同士の一部が接着され、収容空間Sが形成されている。印刷層21が透明樹脂層30よりも収容空間Sの側に配置されている。すなわち、包装材1,1は、透明樹脂層30が最外層になるように、これらの基材フィルム10,10同士が対向するように配置されている。
包装体2の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
なお、図4においては、基材フィルム、印刷層及び透明樹脂層の層構成を省略している。
【0057】
本実施形態の包装体は、前述の実施形態の包装材を用いて作製されおり、透明樹脂層30がニトロセルロースを含むので、電子レンジで加熱しても、インキ移りが生じるおそれをなくすことができる。本実施形態の包装体は、貫通孔が設けられているので、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持できる。
【実施例
【0058】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<インキ>
・透明インキ1(ニトロセルロース(製品等コード:1431-5346、昭和化学株式会社製)に、溶剤:酢酸エチル70質量%、イソプロパノール20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10質量%を、インキの全質量に対する固形分濃度が15質量%となるよう調製したもの。)
・透明インキ2(ニトロセルロース(製品等コード:1431-5346、昭和化学株式会社製)とアクリルレジン(三菱ケミカル株式会社製、「ダイヤナール(登録商標)GR5679」、重量平均分子量30000、Tg40℃)に、溶剤:酢酸エチル70質量%、イソプロパノール20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10質量%を、インキの全質量に対する固形分濃度が15質量%(固形分中のニトロセルロースとアクリルレジンの質量割合は70:30)となるよう調製したもの。)
・透明インキ3(ポリウレタン樹脂(ユリアーノ(登録商標)KL-593、荒川化学工業株式会社製)に、溶剤:酢酸エチル70質量%、イソプロパノール20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10質量%を、インキの全質量に対する固形分濃度が15質量%となるよう調製したもの。)
【0060】
・色付きインキ1(ポリウレタン樹脂(ユリアーノ(登録商標)KL-593、荒川化学工業株式会社製)とニトロセルロース(製品等コード:1431-5346、昭和化学株式会社製)に、顔料(カーボンブラック)43質量%、溶剤:酢酸エチル70質量%、イソプロパノール30質量%を、インキの全質量に対する固形分濃度が15質量%(固形分中のニトロセルロースとアクリルレジンの質量割合は2:1)となるよう調製したもの。)
・色付きインキ2(ポリウレタン樹脂(ユリアーノ(登録商標)KL-593、荒川化学工業株式会社製)に、顔料(カーボンブラック)43質量%、溶剤:酢酸エチル70質量%、イソプロパノール30質量%を、インキの全質量に対する固形分濃度が15質量%となるよう調製したもの。)
【0061】
<包装材の作製>
[実施例1]
基材フィルムとしての二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、AF-642、厚さ25μm)に対して、色付きインキ1を塗工し、80℃で乾燥させることで、印刷層を形成した。印刷層は、グラビア印刷機を使用して印刷した。
【0062】
印刷層上に、透明インキ1を塗工し、80℃で乾燥させることで、透明樹脂層を形成した。透明樹脂層は、グラビア印刷機を使用して印刷した。
次いで、互いに十分に離れた部位に針を突き刺すことにより、平均直径が60μmの貫通孔を1mあたり15個形成して、実施例1の包装材を得た。
【0063】
[実施例2]
色付きインキ2を用いて印刷層を形成し、印刷層上に、透明インキ1を用いて透明樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例2の包装材を得た。
【0064】
[実施例3]
色付きインキ1を用いて印刷層を形成し、印刷層上に、透明インキ2を用いて透明樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例3の包装材を得た。
【0065】
[実施例4]
色付きインキ2を用いて印刷層を形成し、印刷層上に、透明インキ2を用いて透明樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例4の包装材を得た。
【0066】
[比較例1]
色付きインキ1を用いて印刷層を形成し、印刷層上に透明樹脂層を形成しなかった他は、実施例1と同様にして、比較例1の包装材を得た。
【0067】
[比較例2]
色付きインキ2を用いて印刷層を形成し、印刷層上に透明樹脂層を形成しなかった他は、実施例1と同様にして、比較例2の包装材を得た。
【0068】
[比較例3]
色付きインキ1を用いて印刷層を形成し、印刷層上に、透明インキ3を用いて透明樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして、比較例3の包装材を得た。
【0069】
[比較例4]
色付きインキ2を用いて印刷層を形成し、印刷層上に、透明インキ3を用いて透明樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして、比較例4の包装材を得た。
【0070】
<包装材の水蒸気透過量の測定>
上記で得られた包装材について、JIS K 7129Bに準拠して、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量(g/m・day)を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0071】
<包装材の酸素透過量の測定>
上記で得られた包装材について、下記方法で酸素透過量を測定した。包装材の大きさ、厚さ、1m当たりの貫通孔の数とともに、結果を表1及び表2に示す。
【0072】
(I)袋の作製
大気下において、上記の包装材を用いて、ヒートシールにより袋を作製し、密封した。
【0073】
(II)袋への窒素ガスの封入
袋の両面が貼りつくまで袋の内部を脱気した後、袋の内部に純度99.9%以上の窒素ガスを充填した。脱気及び窒素ガスの注入は、注射針を袋に突き刺して行った。窒素ガスの充填量V(cc)は、包装材に過度なテンションがかからず、僅かにゆるんでいる状態となるように極力多くし、注射筒の目盛りによって、測定した。注射針を袋に刺すときは、包装材の該当する箇所に両面テープを貼り、さらにこの両面テープの上にポリプロピレンフィルム製粘着テープ(以下「PPテープ」と略記する)を貼り付けた。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針孔を塞いだ。PPテープの面積は、4.5cm以下とした。なお、両面テープ及びPPテープを貼るときは、これらテープで包装材の貫通孔を塞がないようにした。
【0074】
(III)初期酸素濃度測定
窒素ガスの充填完了時(t=0)の袋の内部から、10cc以下のガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(TCD)により、袋の内部の初期酸素濃度C(%)を測定した。なお、本明細書においては、窒素ガスの充填完了時からの経過時間をt(h)とし、このときの袋の内部の酸素濃度を「C(%)」で表す。Cは0.2%以下となるため、0.2%を超えた場合には、上記の作業をやり直すことにした。ガスクロマトグラフィーを行う場合のサンプリングガスの注入量は、1cc程度の一定量とした。さらに、酸素濃度が約1%、約10%の場合を含む2水準以上の標準ガスについても、ガスクロマトグラフィーを行い、検量線を作成した。
【0075】
(IV)袋の保管
初期酸素濃度を測定した袋を、20℃、80%RHの条件下の恒温恒湿庫内で保管した。このとき、袋の上に物が載ったり、恒温恒湿庫のファンの風が袋に直撃したりしないようにして、袋を静置した。
【0076】
(V)保管中の袋の内部の酸素濃度の測定及び酸素透過量の算出
窒素ガス充填完了時(t=0)から3時間以上経過後(t≧3)に、袋の内部の酸素濃度が1~7%の範囲内となるような2回以上のタイミングも含めて、合計で3~5回のタイミングで、C測定時と同じ方法で、袋の内部からガスをサンプリングし、酸素濃度C(%)を測定した。tとCとの間に、相関係数が0.98以上の比例関係が成立しない場合には、試験をやり直すこととした。そして、tが最も大きい場合について、下記式(i)により、酸素透過量F(g/m・day)を算出した。
【0077】
なお、包装材の酸素透過量が大き過ぎて、袋の内部の酸素濃度の上昇が速すぎ、上記の比例関係が成立しない場合には、包装材の一部に、この包装材と同じ材質で、かつこの包装材よりも酸素透過量が既知の小さい値である包装材を貼り合わせ、これにより得られた改良袋で、上記と同様に袋の内部の酸素濃度を測定することにした。このときは、元の袋の表面積から、酸素透過量が小さい方の包装材を貼り合わせた領域の面積を差し引き、改良袋での包装材の酸素透過量から、上記の既知の酸素透過量を差し引いた値を、目的とする包装材の酸素透過量とすることにした。
F=1.143×(C-C)×V/t ・・・・(i)
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
<包装体の作製>
実施例1の包装材を200mmx400mmに切断し、透明樹脂層の側を外側に、基材フィルムを収容空間の側にすることで、印刷層が透明樹脂層よりも収容空間の側に配置させた。そして、これら包装材の間に、約100gのカットエリンギを挟んだ状態で合掌袋に製袋し、密閉した。以上により、実施例1の包装材から作製された袋の内部に、上述のカットエリンギが収容され、密封された実施例1の包装体を18袋作製した。製袋は、縦ピロー包装機(株式会社ダイケン、縦ピロー自動包装機、DK-4500型)を用いて、常温下で行った。同様に、実施例2~4、比較例1~4の包装材を用いて、それぞれ包装体を作製した。
上記で得られた包装体を下記基準で評価した。
【0081】
<レンジアップテスト>
レンジアップ時に包装体の全体が加熱されるように、包装体の中身のカットエリンギを包装体の全体に広げた。
背貼り部を上面にして、印刷層及び透明樹脂層を形成した面が強化ガラス(ホウケイ酸ガラス)製の皿と良く密着するように置き、電子レンジにて、500W、1.5min;500W、2.0min;500W、2.5min;600W、1.5min;600W、2.0min;600W、2.5minの6通りの条件で加熱した。
同様に、背貼り部を上面にして、印刷層及び透明樹脂層を形成した面がマイカ(KAl(AlSi)O10(OH))製の電子レンジの底と良く密着するように直に置き、電子レンジにて、上記と同じ6通りの条件で加熱した。
同様に、背貼り部を上面にして、印刷層及び透明樹脂層を形成した面が磁器製の皿と良く密着するように置き、電子レンジにて、上記と同じ6通りの条件で加熱した。
【0082】
レンジアップ時には、カットエリンギから出た水分が包装体の底に溜まり、沸騰する様子が見られた。
サーモカメラで観察したところ、包装体の表面温度は約100℃(水の沸点)まで上昇した。皿の表面温度も約100℃であり、電力、時間が大きくなるに伴い、最高温度を示す領域は大きくなった。
【0083】
レンジアップ後に、それぞれ、強化ガラス製の皿、マイカ製の電子レンジの底、又は、磁器製の皿への印刷層のインキ移りの有無(すなわち、転写の有無)を観察して評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0084】
<鮮度保持テスト>
上記の<包装体の作製>と同様にして、各実施例・比較例の包装材を用いて、約100gのカットエリンギが収容され、密封された包装体を18袋作製した。その後、25℃、1週間保管した後に、以下の評価基準に沿って、カットエリンギの官能評価(軟腐、結露、臭気の劣化の有無)を行った。
【0085】
<評価基準>
4:劣化が認められない。
3:わずかな劣化が認められるが、商品性あり。
2:明らかな劣化が認められる、商品に適さないが、食用可能である。
1:著しい劣化が認められ、食用に適さない。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
透明樹脂層を形成しなかった比較例1及び比較例2の包装体では、強化ガラス製の皿及びマイカ製の電子レンジの底にインキ移りすることはなかったが、磁器製の皿にインキ移りが観察された。
透明樹脂層を形成した比較例3及び比較例4の包装体では、マイカ製の電子レンジの底にインキ移りすることはなかったが、強化ガラス製の皿及び磁器製の皿にインキ移りが観察された。
これらに対して、ニトロセルロースを含む透明樹脂層を備える実施例1~4の包装体では、強化ガラス製の皿、マイカ製の電子レンジの底、及び、磁器製の皿のいずれにも、インキ移りすることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の包装材は、包装体等の材料として利用可能性があり、本発明の包装材を用いて作製される包装体は、青果物等の電子レンジ加熱食品等を包装するための包装容器等への利用可能性がある。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B・・・包装材、2・・・包装体、10・・・基材フィルム、10a・・・一方の面、10b・・・他方の面、14・・・領域、20・・・印刷層、21・・・印刷層、22・・・印刷層、23・・・印刷層、30・・・透明樹脂層、40・・・貫通孔、S・・・収容空間
図1
図2
図3
図4