(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】車両の制御装置、及び、車載用計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/10 20060101AFI20250422BHJP
B60H 3/00 20060101ALI20250422BHJP
B60S 1/54 20060101ALI20250422BHJP
B60S 1/58 20060101ALI20250422BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20250422BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20250422BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
G01N19/10 B
B60H3/00 B
B60S1/54 F
B60S1/58 100K
H05B3/84
B60J1/20 C
B60S1/02 300
(21)【出願番号】P 2021138743
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】研井 暁
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勇真
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-280695(JP,A)
【文献】特開昭62-203855(JP,A)
【文献】特開2009-063390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0143787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/10
B60S 1/02 - 1/60
B60H 3/00
B60J 1/20
H05B 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドウガラスの曇りを解消する防曇装置と、
前記ウインドウガラスの車室内側の表面に沿って伸びると共に、前記ウインドウガラスの表面に固定されている光ファイバと、前記光ファイバに接続されかつ、前記光ファイバに入射された光の反射光を測定する測定器と、を有しかつ、前記ウインドウガラスの表面付近の湿度分布を計測する光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサが接続されると共に、前記光ファイバセンサによって計測された湿度分布に基づいて、前記防曇装置へ制御信号を出力する制御器と、を備え、
前記光ファイバには、湿度変化に応じて膨張及び収縮する吸湿材が被覆され、
前記光ファイバは、長手方向に対して所定周期で湾曲する波形形状を有していると共に、波形形状の前記光ファイバは、前記ウインドウガラスの表面に対して離接している、車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記吸湿材は、前記光ファイバの湾曲箇所における厚みが、前記光ファイバの非湾曲箇所における厚みよりも大きくなるように、前記光ファイバに被覆されている、車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置において、
前記ウインドウガラスは、フロントウインドウガラスであり、
前記光ファイバは、前記フロントウインドウガラスの車幅方向の両側部において上下方向に伸びていると共に、前記フロントウインドウガラスの上縁部において車幅方向に伸びている、車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御装置において、
前記防曇装置は、前記フロントウインドウガラスの表面に向かって送風口から送風するデフロスタシステムを含み、
前記制御器は、前記湿度分布に基づいて、運転席側のフロントウインドウガラスが曇っていると判断した場合、前記デフロスタシステムに、運転席側の第1送風口から送風させると共に、助手席側のフロントウインドウガラスが曇っていると判断した場合、前記デフロスタシステムに、助手席側の第2送風口から送風させる、車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、
前記ウインドウガラスは、リヤウインドウガラスであり、
前記防曇装置は、前記リヤウインドウガラスの表面において平行に並んだ複数の熱線を有するデフォッガシステムを含み、
前記光ファイバは、複数の前記熱線によって区分けされる複数の領域のそれぞれにおいて、前記熱線に沿って伸びている、車両の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の制御装置において、
前記制御器は、前記湿度分布に基づいて、前記複数の領域毎に曇りを判断すると共に、前記デフォッガシステムに、曇っていると判断した領域に対応する熱線をオンさせる、車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、
前記光ファイバセンサは、前記吸湿材が被覆されかつ波形形状を有する第1光ファイバと、波形形状を有しかつ前記第1光ファイバに沿って伸びる第2光ファイバとを有し、前記第1光ファイバによって湿度変化を計測すると共に、前記第2光ファイバによって温度変化を計測し、
前記光ファイバセンサは、計測された湿度変化を、温度変化に基づいて補正する、車両の制御装置。
【請求項8】
車両のウインドウガラスの車室内側の表面に沿って伸びると共に、前記ウインドウガラスの表面に固定されている光ファイバと、前記光ファイバに接続されかつ、前記光ファイバに入射された光の反射光を測定する測定器と、を有しかつ、前記ウインドウガラスの表面付近の湿度分布及び温度分布の少なくとも一方を計測する光ファイバセンサを備え、
前記光ファイバは、長手方向に対して所定周期で湾曲する波形形状を有していると共に、波形形状の前記光ファイバは、前記ウインドウガラスの表面に対して離接している、車載用計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両の制御装置、及び、車載用計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湿度センサが記載されている。この湿度センサは、FBG(Fiber Bragg Grating)を有する光ファイバに、湿度変化に応じて膨張又は収縮する湿度検出材料が塗布されている。湿度センサ周囲の湿度が変化することによって湿度検出材料が膨張又は収縮すると、光ファイバが歪む。光ファイバの歪みは、FBGにおいて反射する光の波長を変化させる。この湿度センサは、反射光の波長に基づいて、周囲の湿度変化を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両のウインドウガラスには、安全性の観点から、曇りを解消するための防曇装置が設けられている。より具体的に、フロントウインドウガラスには、デフロスタシステムが設けられている。デフロスタシステムは、フロントウインドウガラスの表面に向かって送風口から、空調された空気を吹き出すことにより、フロントウインドウガラスの曇りを解消する。リヤウインドウガラスには、デフォッガシステムが設けられている。デフォッガシステムは、リヤウインドウガラスの表面に取り付けられた熱線をオンにすることによって、リヤウインドウガラスの曇りを解消する。これらの防曇装置を作動させると、エネルギを消費する。車両の燃費又は電費性能を高めるためには、防曇装置の消費エネルギを最小化することが求められる。
【0005】
ウインドウガラスの曇りは、ウインドウガラスの表面付近の湿度分布に依存する。ウインドウガラスの表面付近の湿度分布は、車室の空調装置による内気循環/外気導入の選択、乗員数、及び、外気温等の周囲環境によって変化する。本願発明者らの検討によると、ウインドウガラスの表面付近の湿度分布は、ウインドウガラスの面内方向(つまり、ウインドウガラスの表面に沿う方向)、及び、ウインドウガラスの面外方向(つまり、ウインドウガラスの表面に対して直交する方向)において、数mm~数cmのオーダーで大きく変化する。ウインドウガラスの表面付近の湿度分布の変化に伴い、ウインドウガラスは部分的に曇るようになる。消費エネルギを最小にしながら、ウインドウガラスの曇りを防止するためには、ウインドウガラスの全面の曇りを防止するように防曇装置を作動させるのではなく、ウインドウガラスにおいて曇っている箇所に対して曇りを防止するように防曇装置を作動させることが好ましい。そのためには、ウインドウガラスの表面付近の湿度分布を正確に把握した上で、その湿度分布に応じて防曇装置を適切に作動させる必要がある。
【0006】
電気式の湿度センサが、従来から知られている。電気式の湿度センサは、簡単な構造で比較的安価であるが、計測箇所が1箇所だけである。電気式の湿度センサを使ってウインドウガラスの全体に亘る湿度分布を検出しようとすれば、多数のセンサを、ウインドウガラス表面の各所に取り付けなければならない。電気式の湿度センサは、センサ本体とその周辺回路とを含めると数cm程度の大きさを有する。このような湿度センサを、ウインドウガラスの表面に、多数取り付けると、ウインドウガラスの表面付近の環境、例えば空調装置による空気の流れ等が乱れてしまう。また、ウインドウガラスの面外方向の湿度分布を計測しようとすると、ウインドウガラスの表面から離れた位置に湿度センサを配置しなければならないが、電気式の湿度センサをウインドウガラスの表面から離れて配置させることは、容易ではない。
【0007】
本願発明者らは、光ファイバセンサにも着目した。光ファイバセンサは、前述したように、その長手方向の各所における湿度変化を計測できる。光ファイバセンサの使用は、比較的広い範囲における湿度変化の計測を可能にする。しかしながら、光ファイバセンサであっても、ウインドウガラスの面外方向の湿度分布を計測することは困難である。
【0008】
ここに開示する技術は、光ファイバセンサを用いて、ウインドウガラスの面に直交する方向についての湿度分布の計測を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、車両の制御装置に係る。この車両の制御装置は、
車両のウインドウガラスの曇りを解消する防曇装置と、
前記ウインドウガラスの車室内側の表面に沿って伸びると共に、前記ウインドウガラスの表面に固定されている光ファイバと、前記光ファイバに接続されかつ、前記光ファイバに入射された光の反射光を測定する測定器と、を有しかつ、前記ウインドウガラスの表面付近の湿度分布を計測する光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサが接続されると共に、前記光ファイバセンサによって計測された湿度分布に基づいて、前記防曇装置へ制御信号を出力する制御器と、を備え、
前記光ファイバには、湿度変化に応じて膨張及び収縮する吸湿材が被覆され、
前記光ファイバは、長手方向に対して所定周期で湾曲する波形形状を有していると共に、波形形状の前記光ファイバは、前記ウインドウガラスの表面に対して離接している。
【0010】
この構成によると、制御器は、車両のウインドウガラスの表面付近の湿度分布であって、光ファイバセンサによって計測された湿度分布に基づいて、防曇装置へ制御信号を出力する。制御器からの制御信号を受けた防曇装置は、ウインドウガラスの曇りを解消するように動作する。防曇装置が湿度分布に応じた動作を行うため、消費エネルギの無駄が抑制される。車両の燃費性能又は電費性能が向上する。
【0011】
光ファイバセンサは、光ファイバを有している。光ファイバには吸湿材が被覆されている。湿度が変化すると、吸湿材が膨張又は収縮する。吸湿材が膨張又は収縮することに伴い、光ファイバは歪む。光ファイバが歪むと、入射された光の反射光の波長が変化する。測定器が反射孔の波長の変化を測定することによって、光ファイバセンサは、長手方向の各所における湿度の変化を計測できる。光ファイバセンサは、例えばレイリー散乱光を利用したセンサであってもよい。
【0012】
光ファイバは、ウインドウガラスの車室内側の表面に沿って伸びているため、光ファイバセンサは、ウインドウガラスの表面に沿った面内方向の広い範囲に亘る湿度分布を計測できる。
【0013】
光ファイバは、長手方向に対して所定周期で湾曲する波形形状を有していると共に、波形形状の光ファイバは、ウインドウガラスの表面に対して離接している。この構成によって、光ファイバは、部分的に、ウインドウガラスの表面から離れて位置している。光ファイバセンサは、ウインドウガラスの表面から離れた箇所の湿度変化を計測できる。つまり、光ファイバセンサは、ウインドウガラスの表面に直交する面外方向について、湿度分布を計測することができる。
【0014】
制御器は、ウインドウガラスの面内方向及び面外方向それぞれの湿度分布に応じて、曇りが生じた箇所を精度良く特定できる。防曇装置は、特定された曇りが生じた箇所に対して、曇りが解消されるように動作できる。防曇装置は、消費エネルギを最小化できる。車両の燃費性能又は電費性能が、さらに向上する。
【0015】
前記吸湿材は、前記光ファイバの湾曲箇所における厚みが、前記光ファイバの非湾曲箇所における厚みよりも大きくなるように、前記光ファイバに被覆されている、としてもよい。
【0016】
波形形状の光ファイバに被覆された吸湿材において、湾曲箇所における吸湿材には予め応力が付与されている。この場合、湿度が変化しても吸湿材は膨張又は収縮しにくいため、光ファイバが歪みにくい。つまり、湿度変化が計測されにくい。
【0017】
これに対し、湾曲箇所における吸湿材の厚みを相対的に大きくすることによって、湿度が変化した場合の、湾曲箇所の吸湿材の膨張量又は収縮量が大きくなる。吸湿材が大きく膨張又は収縮することに伴い、湾曲箇所の光ファイバが歪む。従って、光ファイバセンサは、波形形状の光ファイバの長手方向の各所において、湿度変化をより精度良く計測できる。
【0018】
前記ウインドウガラスは、フロントウインドウガラスであり、
前記光ファイバは、前記フロントウインドウガラスの車幅方向の両側部において上下方向に伸びていると共に、前記フロントウインドウガラスの上縁部において車幅方向に伸びている、としてもよい。
【0019】
本願発明者らの検討によると、フロントウインドウガラスの車幅方向の両側部、及び、上縁部は、湿度が高くなりやすい箇所であって、曇りが発生しやすい箇所である。前述の通り、フロントウインドウガラスの車幅方向の両側部において上下方向に伸びるように光ファイバを配設すると共に、フロントウインドウガラスの上縁部において車幅方向に伸びるように光ファイバを配設することによって、光ファイバセンサは、フロントガラスにおいて曇りが発生しやすい箇所の湿度変化を、精度良く計測できる。防曇装置は、適切に、フロントガラスの曇りを防止できる。
【0020】
前記防曇装置は、前記フロントウインドウガラスの表面に向かって送風口から送風するデフロスタシステムを含み、
前記制御器は、前記湿度分布に基づいて運転席側のウインドウガラスが曇っていると判断した場合、前記デフロスタシステムに、運転席側の第1送風口から送風させると共に、前記湿度分布に基づいて助手席側のフロントウインドウガラスが曇っていると判断した場合、前記デフロスタシステムに、助手席側の第2送風口から送風させる、としてもよい。
【0021】
こうすることで、デフロスタシステムは、運転席側及び助手席側のうち、曇った側のフロントウインドウガラスの表面のみへ、送風口から送風できる。デフロスタシステムの消費エネルギを最小化しつつ、フロントウインドウガラスの曇りが解消できる。
【0022】
前記ウインドウガラスは、リヤウインドウガラスであり、
前記防曇装置は、前記リヤウインドウガラスの表面において平行に並んだ複数の熱線を有するデフォッガシステムを含み、
前記光ファイバは、複数の前記熱線によって区分けされる複数の領域のそれぞれにおいて、前記熱線に沿って伸びている、としてもよい。
【0023】
この構成によると、複数の熱線のそれぞれが曇りを解消できる領域と、光ファイバの配設された領域とを対応させることができる。デフォッガシステムは、光ファイバセンサの計測結果に基づいて、リヤウインドウガラスにおいて曇っている領域の曇りを、適切に解消できる。
【0024】
前記制御器は、前記湿度分布に基づいて、前記複数の領域毎に曇りを判断すると共に、前記デフォッガシステムに、曇っていると判断した領域に対応する熱線をオンさせる、としてもよい。
【0025】
デフォッガシステムは、曇っている領域に対応する熱線のみをオンする。その結果、デフォッガシステムの消費エネルを最小化しつつ、リヤウインドウガラスの曇りが解消できる。
【0026】
前記光ファイバセンサは、前記吸湿材が被覆されかつ波形形状を有する第1光ファイバと、波形形状を有しかつ前記第1光ファイバに沿って伸びる第2光ファイバとを有し、前記第1光ファイバによって湿度変化を計測すると共に、前記第2光ファイバによって温度変化を計測し、
前記光ファイバセンサは、計測された湿度変化を、温度変化に基づいて補正する、としてもよい。
【0027】
吸湿材が被覆された第1光ファイバは、湿度変化によって歪む他に、温度変化によっても歪む。そこで、光ファイバセンサは、第1光ファイバと、吸湿材が被覆されていない第2光ファイバとを備える。第2光ファイバは、温度変化のみを計測するから、第2光ファイバが計測した温度変化に基づいて、第1光ファイバの歪みから、温度変化の影響分を排除できる。光ファイバセンサは、第1光ファイバ及び第2光ファイバを用いて、ウインドウガラスの表面付近の湿度分布を、より精度良く計測できる。
【0028】
ここに開示する技術は、車載用計測装置に係る。この車載用計測装置は、車両のウインドウガラスの車室内側の表面に沿って伸びると共に、前記ウインドウガラスの表面に固定されている光ファイバと、前記光ファイバに接続されかつ、前記光ファイバに入射された光の反射光を測定する測定器と、を有しかつ、前記ウインドウガラスの表面付近の湿度分布及び温度分布の少なくとも一方を計測する光ファイバセンサを備え、
前記光ファイバは、長手方向に対して所定周期で湾曲する波形形状を有していると共に、波形形状の前記光ファイバは、前記ウインドウガラスの表面に対して離接している。
【0029】
この構成によると、光ファイバセンサは、前記と同様に、ウインドウガラスの面内方向及び面外方向のそれぞれについて、湿度分布及び温度分布の少なくとも一方を計測できる。
【発明の効果】
【0030】
前記の車両の制御装置は、ウインドウガラスの面内方向及び面外方向のそれぞれについて計測した湿度分布に基づいて、防曇装置を適切に制御できる。また、前記の車載用計測装置は、ウインドウガラスの面内方向及び面外方向のそれぞれについて、湿度分布及び温度分布の少なくとも一方を、精度良く計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、光ファイバセンサが設置された車両のフロントウインドウガラスを例示している。
【
図2】
図2は、光ファイバセンサが設置された車両のリヤウインドウガラスを例示している。
【
図3】
図3は、ウインドウガラスに取り付けられた光ファイバを拡大して示している。
【
図4】
図4は、吸湿材が被覆された光ファイバの湾曲箇所を拡大して示している。
【
図6】
図6は、光ファイバセンサの測定器の構成を例示している。
【
図7】
図7は、制御装置が実行する制御全体のフローチャートである。
【
図8】
図8は、光ファイバが歪んだ際のシフト量と、温度変化との関係を例示している。
【
図9】
図9は、光ファイバが歪んだ際のシフト量と、光ファイバの歪みとの関係を例示している。
【
図10】
図10は、光ファイバの歪みと、湿度変化との関係を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、車両の制御装置、及び、車載用計測装置の実施形態が、図面を参照しながら説明される。ここで説明される車両の制御装置、及び、車載用計測装置は、例示である。
【0033】
車両の制御装置は、車両のフロントウインドウガラス、及び、リヤウインドウガラスの曇りを防止する防曇装置を制御する。
図5は、車両の制御装置9の構成を例示している。制御装置9は、車載用計測装置8を備えている。車載用計測装置8は、車両のフロントウインドウガラス11(
図1参照)、及び、リヤウインドウガラス12(
図2参照)それぞれの表面付近の湿度分布、及び、温度分布を計測する。制御装置9は、車載用計測装置8の計測に基づいて、防曇装置7を制御する。尚、対象の車両は、エンジンが搭載されていてもよし、電気モータが搭載されていてもよいし、エンジン及び電気モータの両方が搭載されていてもよい。
【0034】
(車載用計測装置の構成)
車載用計測装置8は、光ファイバセンサ201、202を備えている。光ファイバセンサ201、202は、光ファイバを有している。光ファイバセンサ201、202は、光ファイバの長手方向の各所を計測点として、各計測点における光ファイバの歪みを計測できる。計測点は、例えば1mm間隔である。
【0035】
光ファイバは、温度変化によって歪む。従って、光ファイバセンサ201、202は、各計測点における温度の変化を計測できる。また、後述するように、光ファイバに吸湿材を被覆すれば、湿度変化によって吸湿材が膨張又は収縮することに伴い、光ファイバが歪む。従って、光ファイバセンサ201、202は、各計測点における湿度の変化も計測できる。
【0036】
光ファイバセンサは、第1光ファイバセンサ201と第2光ファイバセンサ202とを含む。第1光ファイバセンサ201は、フロントウインドウガラス11の表面付近の湿度変化及び温度変化を計測する。第2光ファイバセンサ202は、リヤウインドウガラス12の表面付近の湿度変化及び温度変化を計測する。
【0037】
(光ファイバの設置構成)
第1光ファイバセンサ201は、第1光ファイバ21と第2光ファイバ22とを有している。第1光ファイバ21は、湿度計測用の光ファイバである。第2光ファイバ22は、温度計測用の光ファイバである。
図1は、フロントウインドウガラス11に設置された第1光ファイバ21及び第2光ファイバ22を例示している。第1光ファイバ21及び第2光ファイバ22はそれぞれ、フロントウインドウガラス11における、車幅方向(つまり、
図1における紙面の左右方向に対応)の両側部において上下方向(つまり、
図1における紙面の上下方向に対応)に伸びていると共に、上縁部において車幅方向に伸びている。第1光ファイバ21及び第2光ファイバ22はそれぞれ、1本の光ファイバが、車幅方向の一側部から上縁部を介して他側部へ至るように、逆U字状に配設されている。尚、第1光ファイバ21及び/又は第2光ファイバ22は、車幅方向の一側部、他側部、及び、上縁部のそれぞれに、個別に配設してもよい。前述したように、光ファイバを用いることによって、長手方向の各測定点における湿度変化又は温度変化を計測できる。従って、
図1において破線で示すように、フロントウインドウガラス11の面に沿った面内方向について、車幅方向の両側部及び上縁部のそれぞれを、仮想的に、複数に分割した各領域について、第1光ファイバセンサ201は、温度変化及び湿度変化を計測できる。尚、
図1に示す領域の分割数は例示である。
【0038】
第2光ファイバセンサ202は、第3光ファイバ23と第4光ファイバ24とを有している。第3光ファイバ23は、湿度計測用の光ファイバである。第4光ファイバ24は、温度計測用の光ファイバである。
図2は、リヤウインドウガラス12に設置された第3光ファイバ23御及び第4光ファイバ24を例示している。
【0039】
リヤウインドウガラス12には、後述するデフォッガシステム4を構成する複数の熱線41、42、43、44が設置されている。
図2においては、光ファイバ23,24と区別して理解を容易にするために、熱線41、42、43、44は、破線で示されている。熱線41、42、43、44は、リヤウインドウガラス12の面内方向に沿って配設されている。複数の熱線41、42、43、44はそれぞれ、車幅方向に伸びていると共に、上下方向に間隔を空けて設置されている。これにより、リヤウインドウガラス12の表面は、上下方向に、四つの領域に仮想的に分けられている。つまり、複数の熱線41、42、43、44は、各領域に対応して設置されている。具体的に、複数の熱線は、第1領域の曇りを防止する第1領域熱線41と、第2領域の曇りを防止する第2領域熱線42と、第3領域の曇りを防止する第3領域熱線43と、第4領域の曇りを防止する第4領域熱線44とを含んでいる(
図5参照)。
【0040】
第3光ファイバ23及び第4光ファイバ24はそれぞれ、リヤウインドウガラス12における各領域に跨がるように設置されている。具体的には、第3光ファイバ23及び第4光ファイバ24は、各熱線41、42、43、44に沿って車幅方向に伸びて設置されている。また、
図2の構成例では、第3光ファイバ23及び第4光ファイバ24はそれぞれ、1本の光ファイバによって構成されている。つまり、1本の光ファイバは、各熱線41、42、43、44と重ならないように蛇行している。前述したように光ファイバを用いると、長手方向の各測定点における湿度変化又は温度変化を計測できるため、1本の光ファイバを蛇行するように設置することにより、第2光ファイバセンサ202は、リヤウインドウガラス12の面内方向について、複数に分割された各領域(つまり、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域)の、温度変化及び湿度変化を計測できる。
【0041】
(光ファイバセンサの構成)
ここに開示する実施形態において、第1光ファイバセンサ201及び第2光ファイバセンサ202は、レイリー散乱光を利用したセンシングシステムとして構成されている。尚、第1光ファイバセンサ201及び第2光ファイバセンサ202は、この構成に限定されるものではない。
【0042】
第1光ファイバセンサ201は、
図5に例示するように、第1光ファイバ21と、第2光ファイバ22と、第1測定器31と、第1スプリッタ261と、を備えている。第2光ファイバセンサ202は、第3光ファイバ23と、第4光ファイバ24と、第2測定器32と、第2スプリッタ262と、を備えている。
【0043】
第1測定器31及び第2測定器32は、同じ構成である。第1測定器31及び第2測定器32を総称して測定器3と呼ぶ。
図6は、測定器3の構成を例示している。測定器3は、一つのレーザー光源300と、第1分光器301、第2分光器302、第3分光器303と、検出器304とを有している。レーザー光源300は、波長可変レーザー光源であって、周期的に波長が変化する光を光路へ出力する。光路上の第1分光器301は、レーザー光源300からの光を、センシング用として光ファイバへ向かう測定光と、検出器304へ直接向かう参照光とに分光する。光ファイバへ入射された測定光によって、光ファイバの全長にわたり散乱光が発生する。その散乱光が、光ファイバの反射光となる。
【0044】
光路上の第2分光器302は、反射光の方向を、検出器304の方向へ変更する。第3分光器303は、参照光と反射光とを合流させる。検出器304は、参照光と反射光との干渉による光強度変化を測定すると共に、その光強度変化から、光ファイバの各位置における散乱光周波数を測定する。そして、当該光ファイバについて事前に測定をした固有指紋情報(つまり、光ファイバの各位置におけるガラス分子の微少な密度ムラであって、光ファイバの一本一方で異なる密度ムラの情報)に係る固有の周波数と、測定した散乱光周波数とを比較し、それらの周波数のズレ(つまり、固有周波数と測定周波数とのシフト量、
図8又は
図9参照)から、検出器304は、光ファイバのどの位置が、どのぐらい歪んだかを計測する。
【0045】
図5に戻り、第1スプリッタ261は、第1測定器31と、第1光ファイバ21及び第2光ファイバ22との間に介在している。第1スプリッタ261は、第1測定器31から出力される測定光を、第1光ファイバ21と第2光ファイバ22とへ分ける。第1光ファイバセンサ201は、一つの光源を使って、二本の光ファイバのそれぞれにおいて計測を行うため、安価に構成することができる。
【0046】
同様に、第2スプリッタ262は、第2測定器32と、第3光ファイバ23及び第4光ファイバ24との間に介在している。第2スプリッタ262は、第2測定器32から出力される測定光を、第3光ファイバ23と第4光ファイバ24とへ分ける。第2光ファイバセンサ202も、一つの光源を使って、二本の光ファイバのそれぞれにおいて計測を行うため、安価に構成することができる。
【0047】
(光ファイバの構成)
図3は、フロントウインドウガラス11又はリヤウインドウガラス12(以下、ウインドウガラス10と呼ぶ)に取り付けられる光ファイバ2を拡大して示している。光ファイバ2は、第1光ファイバ21、第2光ファイバ22、第3光ファイバ23及び第4光ファイバ24の総称である。光ファイバ2は、長手方向(つまり、
図3においては紙面左右方向に対応)に対して所定周期で湾曲する波形形状を有している。波形形状の光ファイバ2は、ウインドウガラス10の表面に対して離接している。波形形状の光ファイバ2における谷の部分がウインドウガラス10に接していると共に、この部分において光ファイバ2は、ウインドウガラス10に固定されている。光ファイバ2は、ウインドウガラス10に、例えば接着されてもよい。波形形状の光ファイバ2における山の部分はウインドウガラス10の表面から離れている。光ファイバ2の一部がウインドウガラス10の表面から離れているため、光ファイバセンサ20は、ウインドウガラス10の表面での湿度変化だけでなく、ウインドウガラス10の表面から離れた位置における湿度変化を計測することができる。
【0048】
波形形状の光ファイバ2を、ウインドウガラス10の表面に対して離接させるため、光ファイバセンサ20は、ウインドウガラス10の表面に対して直交する方向である面外方向について、
図3に破線で示すように、例えば二つに区分けされた各領域の温度変化及び湿度変化を計測できる。ここで、波形形状の山と谷との距離は、適宜の距離に定めることができる。山と谷との距離は、例えば2~3mmにすればよい。前述の通り、光ファイバ2の計測点の間隔は、長手方向に例えば1mmであるため、山と谷との距離が2~3mmであれば、光ファイバセンサは、ウインドウガラス10の面外方向について、2~3に区分けされた領域のそれぞれについて、温度変化及び湿度変化を計測できる。つあmり、光ファイバ2は、ウインドウガラス10の面に直交する面外方向についての湿度分布及び温度分布の計測が可能である。
【0049】
尚、波形形状の光ファイバ2は、光ファイバ2を波形に曲げた状態で、当該波形形状を固定するための被覆材を、光ファイバ2に塗布することよって製造することができる。後述する吸湿材は、波形形状を固定するための被覆材としても機能する。
【0050】
光ファイバ2は、温度変化に伴い光ファイバ2自体が歪む。従って、温度計測用の光ファイバ2は、光ファイバ2をそのまま利用できる。これに対し、湿度が変化しても、光ファイバ2自体は歪まない。そこで、湿度計測用の光ファイバ2には、
図4に例示するように、吸湿材6が被覆されている。
図4は、湿度計測用の光ファイバ2の構成を拡大して示す断面図である。吸湿材6は、周囲の湿度の変化に伴い膨張又は収縮することにより、光ファイバ2を歪ませる。
【0051】
吸湿材6は、光ファイバ2の全長に亘って同じ厚みで被覆されているのではなく、光ファイバ2の湾曲箇所の厚みT1が、光ファイバ2の非湾曲箇所の厚みT2よりも大きくなるように、光ファイバ2に被覆されている。
【0052】
波形形状の光ファイバ2に被覆された吸湿材6において、湾曲箇所の吸湿材6には予め応力が付与されている。この場合、湿度が変化しても吸湿材6は膨張又は収縮しにくく、その結果、湾曲箇所の光ファイバ2が歪みにくくなる。
【0053】
これに対し、湾曲箇所の吸湿材6の厚みを相対的に大きくすれば、湿度が変化した場合の、湾曲箇所の吸湿材6の膨張量又は収縮量が大きくなる。吸湿材6が大きく膨張又は収縮することに伴い、湾曲箇所の光ファイバ2も歪む。その結果、光ファイバセンサ20は、湿度変化をより精度良く計測できる。
【0054】
(車両の制御装置の構成)
前述したように、制御装置9は、車載用計測装置8及び防曇装置7を備えている。制御装置9は、車載用計測装置8の計測結果に基づいて防曇装置7を制御する。防曇装置7が、フロントウインドウガラス11又はリヤウインドウガラス12の曇りに応じて適切に動作するから、防曇装置7の消費エネルギは、最小化する。
【0055】
防曇装置7は、リヤウインドウガラス12の曇りを解消するデフォッガシステム4の他に、フロントウインドウガラス11の曇りを解消するデフロスタシステム5を含んでいる。デフロスタシステム5は、車室内の空調装置の一部として構成されている。デフロスタシステム5は、
図1に例示するように、第1送風口51と第2送風口52とを有している。第1送風口51及び第2送風口52は共に、インストルメントパネル13の上面に、上向きに開口している。デフロスタシステム5は、第1送風口51及び第2送風口52から、空調された空気を、フロントウインドウガラス11の車室内側の表面へ向けて吹き出す。これにより、フロントウインドウガラス11の曇りが解消される。
【0056】
第1送風口51及び及び第2送風口52は、車幅方向に並んでいる。第1送風口51は、運転席側に位置しており、第2送風口52は、助手席側に位置している。第1送風口51から吹き出された空気は主に、フロントウインドウガラス11の運転席側の表面に吹き付けられるため、運転席側の表面の曇りが解消される。第2送風口52から吹き出された空気は主に、フロントウインドウガラス11の助手席側の表面に吹き付けられるため、助手席側の表面の曇りが解消される。
【0057】
デフロスタシステム5は、
図6に示すように、運転席側デフロスタ53と助手席側デフロスタ54とを備えている。運転席側デフロスタ53は、第1送風口51を使って、フロントウインドウガラス11の、主に運転席側の表面の曇りを解消する。助手席側デフロスタ54は、第2送風口52を使って、フロントウインドウガラス11の、主に助手席側の表面の曇りを解消する。運転席側デフロスタ53と助手席側デフロスタ54とは独立しており、空調制御器55は、運転席側デフロスタ53及び助手席側デフロスタ54に、個別に制御信号を出力する。これにより空調制御器55は、(1)運転席側デフロスタ53及び助手席側デフロスタ54の両方を動作させない状態、(2)運転席側デフロスタ53のみを動作させた状態、(3)助手席側デフロスタ54のみを動作させた状態、及び、(4)運転席側デフロスタ53及び助手席側デフロスタ54の両方を動作させた状態、を切り替える。
【0058】
デフォッガシステム4は、前述したように、第1領域熱線41、第2領域熱線42、第3領域熱線43及び第4領域熱線44を有している。デフォッガ制御器45は、これら第1領域熱線41、第2領域熱線42、第3領域熱線43及び第4領域熱線44に個別に作動させることができる。これにより、デフォッガシステム4が動作すると、(1)第1領域の曇りが解消される状態、(2)第2領域の曇りが解消される状態、(3)第3領域の曇りが解消される状態、(4)第4領域の曇りが解消される状態、の少なくとも一つの状態となる。
【0059】
第1光ファイバセンサ201の第1測定器31は、空調制御器55に接続されている。第1測定器31は、フロントウインドウガラス11の表面付近の、面内方向の各領域の温度変化及び湿度変化の計測信号と、面外方向の各領域の温度変化及び湿度変化の計測信号と、を空調制御器55へ出力する。
【0060】
第2光ファイバセンサ202の第2測定器32は、デフォッガ制御器45に接続されている。第2測定器32は、リヤウインドウガラス12の表面付近の、面内方向の各領域の温度変化及び湿度変化の計測信号と、面外方向の各領域の温度変化及び湿度変化の計測信号と、をデフォッガ制御器45へ出力する。
【0061】
インターフェース71は、車両の乗員が操作を行う操作部である。インターフェース71は、例えば
図1に例示するように、インストルメントパネル13に設けられている。乗員は、インターフェース71を通じて、デフロスタシステム5を、手動でオン・オフすることができると共に、デフォッガシステム4を、手動でオン・オフすることができる。
【0062】
(制御の詳細)
次に、
図7、
図11及び
図12のフローチャートを参照しながら、制御装置9が実行する制御が説明される。
図7は、制御装置9が実行する制御全体に係るフローチャートである。尚、制御装置9においては、第1光ファイバセンサ201及び第2光ファイバセンサ202のそれぞれが、フロントウインドウガラス11付近の湿度分布及び温度分布、及び、リヤウインドウガラス12付近の湿度分布及び温度分布を計測するが、
図7のフローは、これら第1光ファイバセンサ201及び第2光ファイバセンサ202を総称する光ファイバセンサ20が、ウインドウガラス10付近の湿度分布及び温度分布を計測するとして、その制御手順が説明される。つまり、ステップS71~S711において、フロントウインドウガラス11付近の湿度分布及び温度分布、及び、リヤウインドウガラス12付近の湿度分布及び温度分布のそれぞれが演算されて、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12の曇りが判断される。尚、
図7、
図11及び
図12の各ステップは、その順番を、可能な範囲で入れ替えてもよい。また、
図7、
図11及び
図12における複数のステップは、可能な範囲で同時に実行してもよい。また、
図7、
図11及び
図12におけるステップの一部は、省略してもよい。
図7、
図11及び
図12のフローに新たなステップを追加してもよい。
【0063】
先ず、ステップS71において、光ファイバセンサ20は、基準温度を計測する。光ファイバセンサ20は、温度変化を計測できる。基準温度が予め計測されることによって、光ファイバセンサ20は、計測された温度変化と基準温度とから、ウインドウガラス10の表面付近の温度分布を把握できる。光ファイバセンサ20は、例えばフロントウインドウガラス11の近傍に設置された熱電対を使って、フロントウインドウガラス11における基準温度を計測する。同様に、光ファイバセンサ20は、例えばリヤウインドウガラス12の近傍に設置された熱電対を使って、リヤウインドウガラス12における基準温度を計測する。光ファイバセンサ20は、例えば、乗員がイグニッションスイッチをオンにしたタイミングで、フロントウインドウガラス11における基準温度、及び、リヤウインドウガラス12における基準温度を計測してもよい。
【0064】
ステップS72において、光ファイバセンサ20は温度変化の計測値を読み取り、続くステップS73において、ウインドウガラス10における各領域(
図1又は
図2参照)の温度変化を演算する。例えば
図8は、シフト量と温度変化との関係を例示している。シフト量は、固有指紋情報に係る光ファイバ固有の周波数と測定した周波数との間のシフト量である。シフト量が大きいほど、温度変化は大きい。光ファイバセンサ20は、
図8に相当する関係式又はマップを予め記憶している。
【0065】
続くステップS74において、光ファイバセンサ20は、ステップS71で計測した基準温度と、ステップS73で計測した温度変化とから、各領域の温度を算出する。その結果、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12それぞれにおける、面内方向及び面外方向の温度分布が把握される。
【0066】
ステップS75において、光ファイバセンサ20は、温度と同様に、基準となる相対湿度を計測する。光ファイバセンサ20は、予め計測した基準湿度と、計測した湿度変化とから、ウインドウガラス10の表面付近の湿度分布を把握する。光ファイバセンサ20は、例えばフロントウインドウガラス11の近傍に設置された電気式の湿度センサを使って、フロントウインドウガラス11における基準湿度を計測する。同様に、光ファイバセンサ20は、例えばリヤウインドウガラス12の近傍に設置された電気式の湿度センサを使って、リヤウインドウガラス12における基準湿度を計測する。光ファイバセンサ20は、例えば、乗員がイグニッションスイッチをオンにしたタイミングにおいて、フロントウインドウガラス11における基準湿度、及び、リヤウインドウガラス12における基準湿度を計測してもよい。
【0067】
ステップS76において、光ファイバセンサ20は湿度計測用の光ファイバの計測値を読み取り、続くステップS77において、光ファイバの各領域における歪みを演算する。例えば
図9は、シフト量と光ファイバの歪みとの関係を例示している。シフト量は、湿度計測用の光ファイバの固有指紋情報に係る固有の周波数と測定した周波数との間のシフト量である。シフト量が大きいほど、歪みは大きい。光ファイバセンサ20は、
図9に相当する関係式又はマップを、予め記憶している。
【0068】
ステップS78において、光ファイバセンサ20は、歪みから、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12それぞれの各領域における湿度変化を演算する。
図10は、歪みと湿度変化との関係を例示している。歪みが大きいほど、湿度変化は大きい。光ファイバセンサ20は、
図10に相当する関係式又はマップを、予め記憶している。
【0069】
続くステップS79において、光ファイバセンサ20は、湿度変化から、温度変化に起因する歪み分を除す。つまり、湿度計測用の光ファイバは、温度変化によっても歪みが生じており、湿度計測用の光ファイバの歪みは、湿度変化に起因する歪みと、温度変化に起因する歪みとの合計である。そこで、ステップS78において算出した湿度変化から、温度変化に起因する歪み影響分を除する。具体的には、ステップS74で算出した温度計測用の光ファイバの歪みを、湿度計測用の光ファイバにおける温度変化に起因する歪み影響分とみなして、当該歪み影響分を、湿度計測用の光ファイバの歪みから除する(
図10参照)。こうして、光ファイバセンサ20は、湿度変化を正確に計測できる。
【0070】
その後、光ファイバセンサ20は、ステップS710において、ステップS75で計測した基準湿度と、ステップS79で算出した湿度変化とに基づき、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12それぞれにおける、面内方向及び面外方向の湿度分布を算出する。続くステップS711において、光ファイバセンサ20は、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12それぞれの、各領域における相対湿度に基づいて、フロントウインドウガラス11及びリヤウインドウガラス12それぞれについて、どこで曇りが発生しているか、又は、曇りが発生していないかを判断する。波形形状を有する光ファイバ2が、ウインドウガラス10の面外方向についての湿度分布を計測するから、光ファイバセンサ20は、ウインドウガラス10の曇りを精度良く予測できる。
【0071】
その後、プロセスは、ステップS712及びステップS713に進み、ステップS712においては、空調制御器55が、フロントウインドウガラス11の曇りを防止するデフロスタ制御を行い、ステップS713においては、デフォッガ制御器45が、リヤウインドウガラス12の曇りを防止するデフォッガ制御を行う。
【0072】
図11は、空調制御器55によるデフロスタ制御を例示するフローチャートである。このフローチャートにおいて、デフロスタシステム5は、インターフェース71が操作されることにより既にオンされている。
【0073】
先ずステップS111において、空調制御器55は、第1光ファイバセンサ201からの計測結果に基づいて、運転席側が曇っているか否かを判断する。ステップS111の判断がYESの場合、プロセスはステップS112に進み、空調制御器55は、運転席側デフロスタ53をオンする。これにより、運転席側デフロスタ53は、第1送風口51を通じてフロントウインドウガラス11の運転席側へ空気を吹き付けるから、曇りを解消できる。
【0074】
ステップS111の判断がNOの場合、プロセスはステップS112に進まずに、ステップS113へ進む。ステップS113において、空調制御器55は、第1光ファイバセンサ201からの計測結果に基づいて、助手席側が曇っているか否かを判断する。ステップS113の判断がYESの場合、プロセスはステップS114に進み、空調制御器55は、助手席側デフロスタ54をオンする。これにより、助手席側デフロスタ54は、第2送風口52を通じてフロントウインドウガラス11の助手席側へ空気を吹き付けるから、曇りを解消できる。
【0075】
空調制御器55は、第1光ファイバセンサ201が計測したフロントウインドウガラス11の面内方向及び面外方向それぞれの湿度分布に応じて、曇りが生じた箇所に対応するデフロスタを動作させる。これにより、車両の制御装置9は、フロントウインドウガラス11の曇りを解消しつつ、消費エネルギを最小化できる。車両の燃費性能又は電費性能が向上する。
【0076】
図12は、デフォッガ制御器45によるデフォッガ制御を例示するフローチャートである。このフローチャートにおいて、デフォッガシステム4は、インターフェース71が操作されることにより既にオンされている。
【0077】
先ずステップS121において、デフォッガ制御器45は、第2光ファイバセンサ202からの計測結果に基づいて、リヤウインドウガラス12の第1領域が曇っているか否かを判断する。ステップS121の判断がYESの場合、プロセスはステップS122に進み、デフォッガ制御器45は、第1領域熱線41をオンする。第1領域熱線41は、第1領域の曇りを解消する。
【0078】
ステップS121の判断がNOの場合、プロセスはステップS122に進まずに、ステップS123へ進む。ステップS123において、デフォッガ制御器45は、第2光ファイバセンサ202からの計測結果に基づいて、リヤウインドウガラス12の第2領域が曇っているか否かを判断する。ステップS123の判断がYESの場合、プロセスはステップS124に進み、デフォッガ制御器45は、第2領域熱線42をオンする。第2領域熱線42は、第2領域の曇りを解消する。
【0079】
ステップS123の判断がNOの場合、プロセスはステップS124に進まずに、ステップS125へ進む。ステップS125において、デフォッガ制御器45は、第2光ファイバセンサ202からの計測結果に基づいて、リヤウインドウガラス12の第3領域が曇っているか否かを判断する。ステップS125の判断がYESの場合、プロセスはステップS126に進み、デフォッガ制御器45は、第3領域熱線43をオンする。第3領域熱線43は、第3領域の曇りを解消する。
【0080】
ステップS125の判断がNOの場合、プロセスはステップS126に進まずに、ステップS127へ進む。ステップS127において、デフォッガ制御器45は、第2光ファイバセンサ202からの計測結果に基づいて、リヤウインドウガラス12の第4領域が曇っているか否かを判断する。ステップS127の判断がYESの場合、プロセスはステップS128に進み、デフォッガ制御器45は、第4領域熱線44をオンする。第4領域熱線44は、第4領域の曇りを解消する。
【0081】
尚、ステップS127の判断がNOの場合、プロセスはステップS128に進まずに、リターンする。
【0082】
デフォッガ制御器45は、第2光ファイバセンサ202が計測したリヤウインドウガラス12の面内方向及び面外方向それぞれの湿度分布に応じて、曇りが生じて箇所に対応する熱線を動作させる。これにより、車両の制御装置9は、リヤウインドウガラス12の曇りを解消しつつ、消費エネルギを最小化できる。車両の燃費性能又は電費性能が向上する。
【0083】
(他の実施形態)
尚、デフロスタシステム5は、運転席側デフロスタ53と、助手席側デフロスタ54とに分かれる他に、空気の吹き出し方向を変更するルーバーを有してもよい。第1光ファイバセンサ201は、計測したフロントウインドウガラス11の各領域の相対湿度に基づいて、フロントウインドウガラス11の曇りが発生している領域を、より細かく判断し、空調制御器55は、その判断結果に基づいて、曇りが発生している領域に向けて空気が吹き出すように、ルーバーの向きを変更してもよい。こうすることで、フロントウインドウガラス11の曇りがより速やかに解消されるから、車両の制御装置9は、車両の燃費性能又は電費性能を、より一層向上できる。
【0084】
また、空調制御器55は、ルーバーの向きの調整に代えて、又は、ルーバーの向きの調整と共に、空気の吹き出し流量を、曇りが発生している領域の広さに応じて、変更してもよい。つまり、空調制御器55は、曇りが発生している領域が広い場合、吹き出し流量を多くし、空調制御器55は、曇りが発生している領域が狭い場合、吹き出し流量を少なくしてもよい。こうすることで、フロントウインドウガラス11の曇りを解消しつつ、車両の燃費性能又は電費性能のさらなる向上が、期待できる。
【0085】
また、リヤウインドウガラス12に、蛇行させた1本の光ファイバを設置する代わりに、リヤウインドウガラス12の領域毎に、異なる光ファイバを設置してもよい。
【0086】
また、空調制御器55及びデフォッガ制御器45はそれぞれ、乗員がデフロスタシステム5のオン操作、及び、デフォッガシステム4のオン操作を行わなくても、光ファイバセンサ20の計測結果に基づいて、フロントウインドウガラス11又はリヤウインドウガラス12が曇っていると判断した場合、自動的に、フロスタシステム5を作動させる、又は、デフォッガシステム4を作動させてもよい。この場合も、防曇装置7は、消費エネルギを最小化しながら、ウインドウガラス10の曇りを適切に解消するから、車両の燃費性能又は電費性能が向上する。
【符号の説明】
【0087】
11 フロントウインドウガラス
12 リヤウインドウガラス
2 光ファイバ
21 第1光ファイバ
22 第2光ファイバ
23 第3光ファイバ
24 第4光ファイバ
20 光ファイバセンサ
201 第1光ファイバセンサ
202 第2光ファイバセンサ
3 測定器
31 第1測定器
32 第2測定器
41 第1領域熱線
42 第2領域熱線
43 第3領域熱線
44 第4領域熱線
45 デフォッガ制御器(制御器)
51 第1送風口
52 第2送風口
55 空調制御器(制御器)
6 吸湿材
7 防曇装置
8 車載用計測装置
9 車両の制御装置