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特許7669897カーボンナノチューブ分散液およびその利用
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  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液およびその利用
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20250422BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250422BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250422BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20250422BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20250422BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20250422BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20250422BHJP
【FI】
H01B1/24 A
H01M4/62 Z ZNM
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
C01B32/174
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021160281
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2022063234
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2020171017
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄
(72)【発明者】
【氏名】岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】枡岡 友明
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533175(JP,A)
【文献】特表2018-534731(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230820(WO,A1)
【文献】特開2020-011873(JP,A)
【文献】特開2020-011872(JP,A)
【文献】特開2020-105316(JP,A)
【文献】国際公開第2022/075387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/24
H01M 4/62
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/04
C01B 32/174
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、分散剤と、溶媒とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、下記(1)~(4)を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
(1)カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、カーボンナノチューブのG/D比が、5~100であること
(2)カーボンナノチューブ100質量部に対して、分散剤を30質量部以上250質量部未満含有すること
(3)カーボンナノチューブ分散液の25℃、周波数1Hzにおける複素弾性率が5Pa以上650Pa未満であり、位相角が5°以上50°未満であること
(4)カーボンナノチューブのBET比表面積が、550~1200m2/gであること
【請求項2】
カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、カーボンナノチューブのG/D比が、10~50であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項3】
25℃のカーボンナノチューブ分散液を、レオメーターを用いて、せん断速度1(s-1)で測定した粘度が、5Pa・s以上40Pa・s未満であることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項4】
動的光散乱法によって測定した累積粒径D10が、200nm以上500nm未満であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項5】
動的光散乱法によって測定した累積粒径D50が、500nm以上3000nm未満であることを特徴とする請求項1~いずれか記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項6】
分散剤の重量平均分子量が、1万~10万であることを特徴とする請求項1~いずれか記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項7】
請求項1~いずれか記載のカーボンナノチューブ分散液と、バインダーとを含むことを特徴とするカーボンナノチューブ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項記載のカーボンナノチューブ樹脂組成物と活物質とを含むことを特徴とする合材スラリー。
【請求項9】
請求項記載の合材スラリーの塗工膜である電極膜。
【請求項10】
正極と、負極と、電解質とを具備してなる非水電解質二次電池であって、正極または負極の少なくとも一方が、請求項記載の電極膜を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの分散液に関する。さらに詳しくは、カーボンナノチューブ分散液、カーボンナノチューブ分散液と樹脂とを含む樹脂組成物、カーボンナノチューブ分散液と樹脂と活物質とを含む合材スラリー、それを膜状に形成してなる電極膜、電極膜と電解質とを具備してなる非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及や携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いる非水電解質二次電池、特に、リチウムイオン二次電池が多くの機器に使われるようになっている。
【0003】
これらリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料としては、リチウム(Li)に近い卑な電位で単位質量あたりの充放電容量の大きい黒鉛に代表される炭素材料が用いられている。しかしながら、これらの電極材料は質量当たりの充放電容量が理論値に近いところまで使われており、電池としての質量当たりのエネルギー密度は限界に近づいている。従って、電極としての利用率を上げるため、放電容量には寄与しない導電助剤やバインダーを減らす試みが行われている。
【0004】
導電助剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、グラフェン、微細炭素材料等が使用されている。特に微細炭素繊維の一種であるカーボンナノチューブが多く使用されている。例えば、黒鉛やシリコン負極にカーボンナノチューブを添加することにより、電極の導電性、密着性や膨張収縮性等の電極強度、リチウムイオン二次電池のレート特性およびサイクル特性が向上することが知られている。(例えば、特許文献1参照)また、正極にカーボンナノチューブを添加することにより、電極抵抗を低減する検討も行われている。(例えば、特許文献2および特許文献3参照)中でも、外径10nm~数10nmの多層カーボンナノチューブは比較的安価であり、実用化が期待されている。
【0005】
平均外径が小さいカーボンナノチューブを用いると、少量で効率的に導電ネットワークを形成することができ、リチウムイオン二次電池用の正極および負極中に含まれる導電助材量を低減することができる。また、繊維長が大きいカーボンナノチューブを用いた場合も同様の効果があることが知られている。(例えば、特許文献4参照)しかしながら、これらの特徴を有するカーボンナノチューブは凝集力が強く分散が困難であるため、十分な分散性を有するカーボンナノチューブ分散液を得ることができなかった。
【0006】
そこで、様々な分散剤を用いてカーボンナノチューブを分散安定化する方法が提案されている。例えば、水溶性高分子等のポリマー系分散剤を用いた水及びNMP(N-メチル-2-ピロリドン)への分散が提案されている。(特許文献1、特許文献5および特許文献6参照)引用文献1では、単層カーボンナノチューブをポリビニルピロリドン含有NMP溶媒中にジルコニアビーズを用いて、分散を行っているが、分散時間が長く、カーボンナノチューブの分散粒径が小さくなってしまう問題があり、電極の導電性は向上するものの、電極強度が向上できなかった。引用文献5では、酸化処理された二層カーボンナノチューブをカルボキシメチルセルロース水溶液中に超音波ホモジナイザーを用いて、分散を行っているが、溶媒中にカーボンナノチューブを高濃度分散することが困難であった。また、引用文献6では、単層カーボンナノチューブをポリビニルピロリドン含有NMP溶媒中に超音波を用いて、分散を行っているが、溶媒中にカーボンナノチューブを高濃度分散することが困難であった。また、ニトリル系ゴムを分散剤として用いて、多層カーボンナノチューブを分散安定化する方法が提案されている(特許文献7参照)。引用文献7では、特定の複素弾性率を有する多層カーボンナノチューブ分散液を作製することで、電極の出力特性が向上することが提案されている。しかしながら、外径10nm以上の多層カーボンナノチューブでは、電極強度の向上が不十分であり、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を改善することが困難であった。
【0007】
したがって、単層カーボンナノチューブを分散媒に高濃度かつ均一に分散したカーボンナノチューブ分散液を得ることは、用途拡大に向けた重要な課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-105316号公報
【文献】特開2011-70908号公報
【文献】特開2014-19619号公報
【文献】特開2012-221672号公報
【文献】特開2010-254546号公報
【文献】特開2005-162877号公報
【文献】特表2018-533175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、電極強度および導電性に優れた電極膜を得るために、高い分散性および弾性率を有するカーボンナノチューブ分散液、カーボンナノチューブ樹脂組成物および合材スラリーを提供することである。さらに詳しくは、優れたレート特性およびサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブと、分散剤と、溶媒とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、下記(1)~(4)を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ分散液に関する。
(1)カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、カーボンナノチューブのG/D比が、5~100であること
(2)カーボンナノチューブ100質量部に対して、分散剤を30質量部以上250質量部未満含有すること
(3)カーボンナノチューブ分散液の25℃、周波数1Hzにおける複素弾性率が5Pa以上650Pa未満であり、位相角が5°以上50°未満であること
(4)カーボンナノチューブのBET比表面積が、550~1200m/gであること
【0011】
また、本発明は、カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、カーボンナノチューブのG/D比が、10~50であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0012】
また、本発明は、25℃のカーボンナノチューブ分散液を、レオメーターを用いて、せん断速度1(s-1)で測定した粘度が、5Pa・s以上40Pa・s未満であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0013】
また、本発明は、動的光散乱法によって測定した累積粒径D10が、200nm以上500nm未満であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0014】
また、本発明は、カーボンナノチューブの体積抵抗率が、1.0×10-3Ω・cm~1.0×10-2Ω・cmであることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0015】
また、本発明は、動的光散乱法によって測定した累積粒径D50が、500nm以上3000nm未満であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0016】
また、本発明は、分散剤の重量平均分子量が、1万~10万であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0017】
また、本発明は、溶媒が、水を含むことを特徴とする前記カーボンナノチューブ分散液に関する。
【0018】
また、本発明は、前記カーボンナノチューブ分散液と、バインダーとを含むことを特徴とするカーボンナノチューブ樹脂組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、前記カーボンナノチューブ樹脂組成物と活物質とを含むことを特徴とする合材スラリーに関する。
【0020】
また、本発明は、前記合材スラリーの塗工膜である電極膜に関する。
【0021】
また、本発明は、正極と、負極と、電解質とを具備してなる非水電解質二次電池であって、正極または負極の少なくとも一方が、前記電極膜を含むことを特徴とする非水電解質二次電池に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカーボンナノチューブ分散液を使用することにより、電極強度および密着性に優れた樹脂組成物、合材スラリー、電極膜が得られる。また、レート特性およびサイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。よって高い導電性、耐久性が求められる様々な用途分野において、本発明のカーボンナノチューブ分散液を使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の実施例および比較例で使用したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のカーボンナノチューブ分散液、樹脂組成物、合材スラリーおよびそれの塗工膜である電極膜、非水電解質二次電池について詳しく説明する。
【0025】
(1)カーボンナノチューブ
本実施形態のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブが混在するものであってもよい。単層カーボンナノチューブは、一層のグラファイトが巻かれた構造を有し、多層カーボンナノチューブは、二又は三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有するものである。
【0026】
本実施形態のカーボンナノチューブの平均外径は0.5nm~5nmであり、1nm~3nmであることが好ましく、1nm~2nmであることがより好ましい。カーボンナノチューブの平均外径は、透過型電子顕微鏡(日本電子社製)によって、カーボンナノチューブの形態観察を行い、100本の短軸の長さを計測し、その数平均値により、算出することができる。
【0027】
本実施形態のカーボンナノチューブのBET比表面積は550m/g~1200m/gであり、600~1200m/gであることが好ましく、800m/g~1200m/gであるものがより好ましく、800m/g~1000m/gであるものがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態のカーボンナノチューブは、ラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、G/D比が、5~100であり、10~50であることがより好ましく、20~50であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態のカーボンナノチューブの体積抵抗率は1.0×10-3Ω・cm~3.0×10-2Ω・cmであることが好ましく、1.0×10-3Ω・cm~1.0×10-2Ω・cmであることがより好ましい。カーボンナノチューブの体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用いて測定することができる。
【0030】
本実施形態のカーボンナノチューブの炭素純度はカーボンナノチューブ中の炭素原子の含有率(%)で表される。炭素純度はカーボンナノチューブ100質量%に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0031】
本実施形態のカーボンナノチューブ中に含まれる金属量はカーボンナノチューブ100質量%に対して、20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%未満がさらに好ましい。カーボンナノチューブに含まれる金属としては、カーボンナノチューブを合成する際に触媒として使用される金属や金属酸化物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、シリカ、マンガンやモリブデン等の金属、金属酸化物やこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0032】
本実施形態のカーボンナノチューブは、表面処理を行ったカーボンナノチューブでもよい。またカーボンナノチューブは、カルボキシル基に代表される官能基を付与させたカーボンナノチューブ誘導体であってもよい。また、有機化合物、金属原子、又はフラーレンに代表される物質を内包させたカーボンナノナノチューブも用いることができる。
【0033】
本実施形態のカーボンナノチューブは、粉砕処理されたカーボンナノチューブでもよい。粉砕処理とは、ビーズ、スチールボール等の粉砕メディアを内蔵した粉砕機を使用して、実質的に液状物質を介在させないでカーボンナノチューブを粉砕するものであり、乾式粉砕ともいわれる。粉砕は、粉砕メディア同士の衝突による粉砕力や破壊力を利用して行なわれる。粉砕は主にカーボンナノチューブの二次粒子を小さくする効果があり、カーボンナノチューブの分散性を向上させることができる。乾式粉砕装置としては、乾式のアトライター、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどの公知の方法を用いることができ、粉砕時間はその装置によって任意に設定できる。
【0034】
本実施形態のカーボンナノチューブはどのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法及び燃焼法で製造できるが、これらに限定されない。
【0035】
(2)分散剤
本実施形態の分散剤は、カーボンナノチューブを分散安定化できる範囲で特に限定されず、界面活性剤、樹脂型分散剤を使用することができる。界面活性剤は主にアニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性に分類される。カーボンナノチューブの分散に要求される特性に応じて適宜好適な種類の分散剤を、好適な配合量で使用することができる。
【0036】
アニオン性界面活性剤を選択する場合、その種類は特に限定されない。具体的には脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩及びβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
またカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類及び第四級アンモニウム塩類がある。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド及びドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。また両性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
またノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びアルキルアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
選択される界面活性剤は単独の界面活性剤に限定されない。このため二種以上の界面活性剤を組み合わせて使用することも可能である。例えばアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせ、又はカチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが利用できる。その際の配合量は、それぞれの界面活性剤成分に対して好適な配合量とすることが好ましい。組み合わせとしてはアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが好ましい。アニオン性界面活性剤はポリカルボン酸塩であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤はポリオキシエチレンフェニルエーテルであることが好ましい。
【0040】
また樹脂型分散剤として具体的には、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル系重合体等が挙げられる。特にメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル系重合体が好ましい。
【0041】
カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのヒドロキシ基をカルボキシメチルナトリウム基で置換したカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩等の塩の形態で使用することができる。
【0042】
本実施形態の分散剤は、プルラン換算の重量平均分子量で、5,000以上30,0000以下が好ましく、10,000以上10,0000以下がより好ましく、10,000以上50,000以下がさらに好ましい。適度な重量平均分子量を有する分散剤を使用するとCNTへの吸着性が向上し、カーボンナノチューブ分散液の安定性がより向上する。また、上記範囲を超える分散剤を使用する場合、カーボンナノチューブ分散液の粘度が高くなり、ノズル式の高圧ホモジナイザーなどの狭い流路を被分散液が通過する分散機を用いた場合、分散効率が低下する場合がある。なお、樹脂型分散剤は、分散能に加えて結着能を有する場合があり、上記のような樹脂型分散剤をバインダーとして用いることもでき、バインダーとして、樹脂型分散剤と同一の種類の樹脂を用いてもよい。樹脂型分散剤と同一の種類の樹脂をバインダーとして用いる場合には、樹脂型分散剤の重量平均分子量よりも大きい重量平均分子量の樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態の分散剤に加えて、無機塩基および無機金属塩を含んでも良い。無機塩基および無機金属塩としては、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物であることが好ましく、詳しくは、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。また、これらの中でも容易にカチオンを供給できる面でアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩が好ましい。アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。これらの中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0044】
また、本実施形態の分散剤に加えて、酸を含んでも良い。酸を添加することで、分散系中の電荷状態や親水部・疎水部のバランスが変化し、分散性が向上する場合がある。酸の種類は特に限定されず、1種類でも、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、シュウ酸、乳酸、クエン酸、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、酢酸、マロン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0045】
また、本実施形態の分散剤に加えて、消泡剤を含んでも良い。消泡剤は、市販の消泡剤、湿潤剤、親水性有機溶剤水溶性有機溶剤等、消泡効果を有するものであれば任意に用いることができ、1種類でも、複数を組み合わせて用いてもよい。
例えば、アルコール系;エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、プロピレングリコール、その他グリコール類等、
脂肪酸エステル系;ジエチレングリコールラウレート、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウレート、天然ワックス等、
アミド系;ポリオキシアルキレンアミド、アクリレートポリアミン等、
リン酸エステル系;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等、
金属セッケン系;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等、
油脂系;動植物油、胡麻油、ひまし油等、
鉱油系:灯油、パラフィン等、
シリコーン系;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン、フルオロシリコーン油等が挙げられる。
【0046】
(3)溶媒
本実施形態の溶媒は、カーボンナノチューブが分散可能な範囲であれば特に限定されないが、水、及びまたは、水溶性有機溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましく、水を含むことがより好ましい。水を含む場合は、溶媒100質量%に対して95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0047】
水溶性有機溶媒としては、アルコール系(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ベンジルアルコールなど)、多価アルコール系(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど)、多価アルコールエーテル系(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなど)、アミン系(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなど)、アミド系(N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。
【0048】
(4)カーボンナノチューブ分散液
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブと分散剤と溶媒を含むものである。
【0049】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の25℃、周波数1Hzにおける複素弾性率は、5Pa以上650Pa未満であり、5Pa以上400Pa未満であることが好ましく、10Pa以上400Pa未満であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ分散液の複素弾性率は、カーボンナノチューブ分散液の硬さを示し、カーボンナノチューブの分散性が良好で、カーボンナノチューブ分散液が低粘度であるほど小さくなる傾向にある。一方で、カーボンナノチューブの繊維長が大きい場合、分散が良好であっても、カーボンナノチューブ自体の構造粘性があるため、複素弾性率が高い数値となる場合がある。
【0050】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の25℃、周波数1Hzにおける位相角は、5°以上50°未満であり、10°以上50°未満であることがより好ましい。位相角は、カーボンナノチューブ分散液に与えるひずみを正弦波とした場合の応力波の位相ズレを意味している。純弾性体であれば、与えたひずみと同位相の正弦波となるため、位相角0°となる。一方で、純粘性体であれば90°進んだ応力波となる。複素弾性率と位相角の値が上記の範囲にあるカーボンナノチューブ分散体は、カーボンナノチューブの分散粒径および分散状態が良好であり、電極強度および導電性を向上させるためのカーボンナノチューブ分散液として適している。
カーボンナノチューブ分散液の複素弾性率及び位相角は、直径35mm、2°のコーンにてレオメーターを用い、25℃、周波数1Hzにて、ひずみ率0.01%から5%の範囲で動的粘弾性測定を実施すること求めることができる。測定値が小数点以下を含む場合はJISZ8401:1999の規則Bに従って整数位に丸める。
【0051】
カーボンナノチューブの繊維長が破断により短くならないように、一定以上の長さを保ったまま均一かつ良好に分散させることで、発達した導電ネットワークが形成される。したがって、単に導電材分散体の粘度が低く(見かけ上の)分散性が良好であればよいのではなく、複素弾性率および/または位相角を、粘度等の従来の指標と組み合わせて分散状態を判断することが特に有効である。複素弾性率および/または位相角を上記範囲とすることで、導電性および電極強度の良好な導電材分散体を得ることができる。
【0052】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の粘度は、レオメーターを用いて、せん断速度1(s-1)で測定した際、5Pa・s以上60Pa未満であることが好ましく、10Pa・s以上40Pa・s未満であることがより好ましく、20Pa・s以上40Pa・s未満であることがさらに好ましい。また、レオメーターを用いて、せん断速度10(s-1)で測定した際、1Pa・s以上10Pa未満であることが好ましい。せん断速度1(s-1)における、せん断粘度を測定することで、カーボンナノチューブ分散液の分散性が判断でき、上記範囲のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの分散粒径および分散状態が良好であり、電極強度および導電性を向上させるためのカーボンナノチューブ分散液として適している。
カーボンナノチューブ分散液の粘度は、カーボンナノチューブ分散液を25℃の恒温槽に1時間以上静置した後、カーボンナノチューブ分散液を十分に撹拌してから、直径35mm、2°のコーンにてレオメーターを用い、25℃、せん断速度1s-1および10s-1におけるせん断粘度を測定して求めることができる。測定値が小数点以下を含む場合はJISZ8401:1999の規則Bに従って整数位に丸める。
【0053】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の動的光散乱法によって測定した累積粒径D10は、200nm以上500nm未満であることが好ましく、200nm以上400nm未満であることがより好ましく、300nm以上400nm未満であることがさらに好ましい。また、カーボンナノチューブ分散液の動的光散乱法によって測定した累積粒径D50は、500nm以上3000nm未満であることが好ましく、500nm以上2000nm未満であることがより好ましく、500nm以上1500nm未満であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ分散液の累積粒径D10およびD50は粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、Nanotrac UPA、model UPA-EX)を用いて測定することができる。動的光散乱法によって測定した粒径はカーボンナノチューブの繊維長と相関があり、累積粒径D10が上記範囲にあるカーボンナノチューブ分散液は、分散液中のカーボンナノチューブの分散状態が良好である。
【0054】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液を得るには、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。
【0055】
分散装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(BRANSON社製Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液のカーボンナノチューブの量は、カーボンナノチューブ分散液100質量部に対して、0.2質量部~1.5質量部が好ましく、0.4質量部~1.2質量部が好ましく、0.4質量部~1.0質量部がより好ましい。
【0057】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液中の分散剤の量は、カーボンナノチューブ100質量部に対して、30質量部~250質量部使用することが好ましく、50質量部~150質量部使用することがより好ましく、50質量部~100質量部使用することがさらに好ましい。
【0058】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることがより好ましく、8~11であることがさらに好ましく、9~11であることが特に好ましい。カーボンナノチューブ分散液のpHはpH計(株式会社堀場製作所社製、pH METER F-52)を用いて測定することができる。
【0059】
(5)バインダー
バインダーとは、カーボンナノチューブなどの物質間を結着するための樹脂である。
【0060】
本実施形態のバインダーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。この中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸が好ましい。
【0061】
バインダー樹脂としてのカルボキシメチルセルロースは、高粘度であることが好ましく、例えば、1%水溶液を作製した際の粘度が500~6000mPa・sであることが好ましく、1000~3000mPa・sであることがさらに好ましい。カルボキシメチルセルロース1%水溶液の粘度は25℃の条件下で、B型粘度計ローター回転速度60rpmで測定することができる。
【0062】
バインダー樹脂としてのカルボキシメチルセルロースは、エーテル化度が高いことが好ましい。例えば、エーテル化度が0.6~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがさらに好ましい。
【0063】
バインダーの種類や量比は、カーボンナノチューブ、活物質など共存する物質の性状に合わせて、適宜選択される。例えば、カルボキシメチルセルロースを使用する量については、活物質の質量を100質量%とした場合、カルボキシメチルセルロースの割合が0.5~3.0質量%が好ましく、1.0~2.0質量%がさらに好ましい。
【0064】
スチレンブタジエンゴムは、水中油滴エマルションであれば、一般に電極の結着材として用いられているものを使用することができる。スチレンブタジエンゴムを使用する量については、活物質の質量を100質量%とした場合、スチレンブタジエンゴムの割合が0.5~3.0質量%が好ましく、1.0~2.0質量%がさらに好ましい。
【0065】
ポリアクリル酸を使用する量については、活物質の質量を100質量%とした場合、ポリアクリル酸の割合が1~25質量%が好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
【0066】
ポリフッ化ビニリデンを使用する量については、活物質の質量を100質量%とした場合、ポリアクリル酸の割合が1~10質量%が好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0067】
(5)カーボンナノチューブ樹脂組成物
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物は、カーボンナノチューブと分散剤と溶媒とバインダーとを含むものである。
【0068】
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物を得るには、カーボンナノチューブ分散液とバインダーとを混合し、均一化することが好ましい。混合方法としては、従来公知の様々な方法を行うことができる。カーボンナノチューブ樹脂組成物は前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて作製することができる。
【0069】
(6)合材スラリー
本実施形態の合材スラリーとは、カーボンナノチューブと分散剤と溶媒とバインダーと活物質とを含むものである。
<活物質>
本実施形態の活物質とは、電池反応の基となる材料のことである。活物質は起電力から正極活物質と負極活物質に分けられる。
【0070】
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0071】
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2(xは0<x<1の数である。)、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0072】
本実施形態の負極活物質としては、シリコン合金やケイ素酸リチウム等のシリコンを含む負極活物質であるシリコン系負極活物質が好ましい。
【0073】
シリコン系負極活物質としては、例えば、二酸化珪素を炭素で還元して作製される所謂冶金グレードシリコンや、冶金グレードシリコンを酸処理や一方向凝固などで不純物を低減した工業グレードシリコン、そしてシリコンを反応させて得られたシランから作製される高純度の単結晶、多結晶、アモルファスなど結晶状態の異なる高純度シリコンや、工業グレードシリコンをスパッタ法やEB蒸着(電子ビーム蒸着)法などで高純度にすると同時に、結晶状態や析出状態を調整したシリコンなどが挙げられる。
【0074】
また、シリコンと酸素の化合物である酸化珪素や、シリコンと各種合金及びそれらの結晶状態を急冷法などで調整したシリコン化合物も挙げられる。中でも、外側がカーボン皮膜で被覆された、珪素ナノ粒子が酸化珪素中に分散した構造を有するシリコン系負極活物質が好ましい。
【0075】
本実施形態の負極活物質は、シリコン系負極活物質に加えて、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末を使用することが好ましい。その中でも、人造黒鉛や天然黒鉛等の炭素質粉末を使用することが好ましい。
【0076】
シリコン系負極活物質の量は、人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末100質量%とした場合、3~50質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0077】
本実施形態の活物質のBET比表面積は0.1~10m2/gのものが好ましく、0.2~5m2/gのものがより好ましく、0.3~3m2/gのものがさらに好ましい。
【0078】
本実施形態の活物質の平均粒子径は0.5~50μmの範囲内であることが好ましく、
2~20μmであることがより好ましい。本明細書でいう活物質の平均粒子径とは、活物質を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0079】
(7)合材スラリーの製造方法
【0080】
本実施形態の合材スラリーは従来公知の様々な方法で作製することができる。例えば、カーボンナノチューブ樹脂組成物に活物質を添加して作製する方法や、カーボンナノチューブ分散液に活物質を添加した後、バインダーを添加して作製する方法が挙げられる。
【0081】
本実施形態の合材スラリーを得るには、カーボンナノチューブ樹脂組成物に活物質を加えた後、分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。合材スラリーは前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて、合材スラリーを得ることができる。
【0082】
本実施形態の合材スラリー中の活物質の量は合材スラリー100質量部に対して、20~85質量部であることが好ましく、30~75質量部であることがより好ましく、40~70質量部であることがさらに好ましい。
【0083】
本実施形態の合材スラリー中のカーボンナノチューブの量は活物質100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~5質量部であることが好ましく0.03~1質量部であることが好ましい。
【0084】
本実施形態の合材スラリー中のバインダーの量は活物質100質量%に対して、0.5~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがさらに好ましく、2~20質量%であることが特に好ましい。
【0085】
本実施形態の合材スラリーの固形分の量は、合材スラリー100質量%に対して、30~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、40~75質量%であることが好ましい。
【0086】
(8)電極膜
本実施形態の電極膜とは、合材スラリーを形成してなるものである。例えば、集電体上に合材スラリーを塗工乾燥することで、電極合材層を形成した塗工膜である。
【0087】
本実施形態の電極膜に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0088】
集電体上に合材スラリーを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0089】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0090】
(8)非水電解質二次電池
本実施形態の非水電解質二次電池とは正極と、負極と、電解質とを含むものである。
【0091】
正極としては、集電体上に正極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。
【0092】
負極としては、集電体上負極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。
【0093】
電解質としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh(ただし、Phはフェニル基である)等リチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されず、ナトリウム塩やカルシウム塩を含むものも使用できる。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0094】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0095】
本実施形態の非水電解質二次電池には、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0096】
本実施形態の非水電解質二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例
【0097】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、「カーボンナノチューブ」を「CNT」と略記することがある。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0098】
<物性の測定方法>
後述の各実施例及び比較例において使用されたCNTの物性は以下の方法により測定した。
【0099】
<CNTのG/D比>
ラマン顕微鏡(XploRA、株式会社堀場製作所社製)にCNTを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100~3000cm-1とした。測定用のCNTはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560~1600cm-1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をCNTのG/D比とした。
【0100】
<CNTのBET比表面積>
CNTを電子天秤(sartorius社製、MSA225S100DI)を用いて、0.03g計量した後、110℃で15分間、脱気しながら乾燥させた。その後、全自動比表面積測定装置(MOUNTECH社製、HM-model1208)を用いて、CNTのBET比表面積を測定した。
【0101】
<CNTの平均外径>
CNTを電子天秤(sartorius社製、MSA225S100DI)を用いて、450mLのSMサンプル瓶(株式会社三商社製)に0.2gを計量し、トルエン200mLを加えて、超音波ホモジナイザー(Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、BRANSON社製)を使用し、振幅50%で5分間氷冷下分散処理を行い、CNT分散液を調整した。その後、CNT分散液を適宜希釈し、コロジオン膜状に数μL滴下し、室温で乾燥させた後、直接透過型電子顕微鏡(H-7650、株式会社日立製作所社製)を用いて、観察した。観察は5万倍の倍率で、視野内に10本以上のCNTが含まれる写真を複数撮り、任意に抽出した300本のCNTの外径を測定し、その平均値をCNTの平均外径(nm)とした。
【0102】
<CNTの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51)を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cmの密度におけるCNTの体積抵抗率の値について評価した。
【0103】
<CNT分散液の粒度分布>
CNT分散液を25℃の恒温槽に1時間以上静置した後、CNT分散液を十分に撹拌および希釈してから、粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、Nanotrac UPA、model UPA-EX)を用いて、CNT分散液の累積粒径D10およびD50を測定した。透過性は吸収、CNTの密度は1.8、形状は非球形とした。溶媒の屈折率は1.333とした。測定の際は、ローディングインデックスの数値が0.8~1.2の範囲になるようにCNT分散液の濃度を希釈して行った。
【0104】
<CNT分散液の複素弾性率及び位相角>
CNT分散液の複素弾性率及び位相角は、直径35mm、2°のコーンにてレオメーター(Thermo Fisher Scientific株式会社製RheoStress1回転式レオメーター)を用い、25℃、周波数1Hzにて、ひずみ率0.01%から5%の範囲で動的粘弾性測定を実施することで評価した。
【0105】
<CNT分散液の粘度>
CNT分散液を25℃の恒温槽に1時間以上静置した後、CNT分散液を十分に撹拌してから、直径35mm、2°のコーンにてレオメーター(Thermo Fisher Scientific株式会社製RheoStress1回転式レオメーター)を用い、25℃、せん断速度1s-1および10s-1におけるせん断粘度を測定することで評価した。
【0106】
<負極用の電極膜の剥離強度>
負極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が8mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
【0107】
<正極用の電極膜の剥離強度>
正極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が20mg/cmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
【0108】
<標準正極の作製>
まず、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)93質量部、アセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標)HS100)4質量部、PVDF(株式会社社クレハ・バッテリー・マテイラルズ・ジャパン社製、クレハKFポリマー W#1300)3質量部を容量150cmのプラスチック容器に加えた後、ヘラを用いて粉末が均一になるまで混合した。その後、NMPを20.5質量部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。その後、プラスチック容器内の混合物をヘラを用いて、均一になるまで混合し、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらにその後、NMPを14.6質量部添加し、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。最後に、高速攪拌機を用いて、3000rpmで10分間撹拌し、正極用合材スラリーを得た。その後、正極用合材スラリーを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が20mg/cmとなるように調整した。さらにロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cmとなる標準正極を作製した。
【0109】
<標準負極の作製>
容量150mlのプラスチック容器にアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS‐100、デンカ製)0.5質量部と、MAC500LC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 サンローズ特殊タイプ MAC500L、日本製紙社製、不揮発分100%)1質量部と、水98.4質量部とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに活物質として人造黒鉛(CGB-20、日本黒鉛工業製)87質量部、シリコン10質量部添加し、高速撹拌機を用いて、3000rpmで10分間撹拌した。続いてSBR(TRD2001、JSR社製)を3.1質量部加えて、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、負極用合材スラリーを得た。その後、負極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が8mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。さらに、ロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が1.7g/cmとなる標準負極を作製した。
【0110】
<リチウムイオン二次電池のレート特性評価>
ラミネート型リチウムイオン二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流11mA(0.2C)にて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流1.1mA(0.02C))を行った後、放電電流11mA(0.2C)にて、放電終止電圧2.5Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電電流11mA(0.2C)にて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流(1.1mA0.02C))を行い、放電電流0.2Cおよび3Cで放電終止電圧2.5Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と3C放電容量の比、以下の式1で表すことができる。
(式1) レート特性 = 3C放電容量/3回目の0.2C放電容量 ×100 (%)
【0111】
<リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価>
ラミネート型リチウムイオン二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流55mA(1C)にて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流1.38mA(0.025C))を行った後、放電電流55mA(1C)にて、放電終止電圧2.5Vで定電流放電を行った。この操作を200回繰り返した。1Cは正極の理論容量を1時間で放電する電流値とした。サイクル特性は25℃における3回目の1C放電容量と200回目の1C放電容量の比、以下の式2で表すことができる。
(式2)サイクル特性 = 3回目の1C放電容量/200回目の1C放電容量×100(%)
【0112】
<分散剤(A)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アセトニトリル100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、アクリロニトリル85.0部、アクリル酸15.0部、および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を(日油社製;V-65)5.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに70℃で1時間反応させた後、パーブチルOを0.5部添加し、さらに70℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮して分散媒を完全に除去し、分散剤(A)を得た。分散剤(A)の重量平均分子量(Mw)は38,000であった。
【0113】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
製造した分散剤(A)の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件にて、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。分子量はプルラン換算値である。
測定サンプル:0.1質量%水溶液
装置:HLC-8320GPC(東ソー製)
溶離液:0.1M NaCl水溶液
カラム:TSKgel SuperMultiporePW-M(東ソー製)
流速:1.0mL/min
温度:25℃
注入量:100μl
【0114】
(エーテル化度の測定方法)
300mL共栓三角フラスコに、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.0g、硝酸メタノール100mLを加え、2時間振とうして、カルボキシメチルセルロースナトリウムをカルボキシメチルセルロースに置換した。その後、カルボキシメチルセルロースをガラスフィルターにて吸引ろ過し、80%メタノール200mLで洗浄した。その後、無水メタノール50mLで置換し、吸引ろ過した後、105℃で2時間乾燥させた。乾燥したカルボキシメチルセルロース1.0~1.5gを秤量し、300mL共栓三角フラスコに入れ、80%メタノール15mLを加え湿潤させ、1/10N水酸化ナトリウム50mLを加え、2時間振とうした。その後、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、1/10N硫酸で、過剰の水酸化ナトリウムを逆滴定し、(式3)、(式4)に従ってエーテル化度を算出した。
(式3) A=(50×F1―X×F2)/(Y×10)
X:硫酸の滴下量、Y:乾燥カルボキシメチルセルロースの重量、
F1:硫酸のファクター、F2:水酸化ナトリウムのファクター
(式4)エーテル化度 = 0.162A/(1-0.058A)
【0115】
表1に実施例および比較例で使用したCNT、CNTの外径、CNTの比表面積、G/D比、体積抵抗率を示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表2に実施例、比較例および参考例で使用した分散剤を示す。
【0118】
【表2】

【0119】
(実施例1)
ステンレス容器にイオン交換水98.25部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、分散剤(A)0.75部を加えて、ディスパーで均一になるまで撹拌した。その後、CNT(A)1部を計量し、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を5回行い、CNT分散液(WA1)を得た。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。
【0120】
(実施例2~15)、(実施例19~20)、(比較例1~2)
表3に掲載したCNT種、CNT添加量、分散剤種、分散剤添加量、イオン交換水添加量、パス回数に変更した以外は実施例1と同様の方法により、CNT分散液(WA2~WF4)を得た。
【0121】
(実施例16)
容量150cmのプラスチック容器に、実施例1で作製したCNT分散液(WA1)4質量部、イオン交換水6質量部を計量した。その後、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、CNT分散液(WA13)を得た。
【0122】
(実施例17)
実施例3で作製したCNT分散液(WA3)を用いた以外は実施例16と同様の方法により、CNT分散液(WA14)を得た。
【0123】
(実施例18)
実施例11で作製したCNT分散液(WA11)を用いた以外は実施例16と同様の方法により、CNT分散液(WA15)を得た。
【0124】
(実施例21)
ポリプロピレン製のボトル容器に、CNT(C)を20部、直径8mmのジルコニアビーズ480部を粉砕メディアとして仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーにて、40分間粉砕処理を行った。その後、ジルコニアビーズを分離して、CNT(C)を回収した。次いで、ステンレス容器にイオン交換水98.38部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、分散剤(C)1.13部を加えて、ディスパーで均一になるまで撹拌した。その後、回収したCNT(C)1.5部を計量し、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を20回行い、CNT分散液(WC27)を得た。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。
【0125】
(実施例22)
ステンレス容器にイオン交換水98.40部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、分散剤(C)0.50部、ポリアクリル酸(富士フィルム和光純薬社製、分子量25000)0.10部を加えて、ディスパーで均一になるまで撹拌した。その後、CNT(A)1.0部を計量し、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を20回行い、CNT分散液(WA28)を得た。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。
【0126】
(比較例3)
ガラス瓶(M-140、柏洋硝子株式会社製)に、CNT(A)1部、分散剤(A)0.75部、イオン交換水98.25部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)120部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて8時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズの分離を試みたが、粘度が高く、CNT分散液が得られなかった。
【0127】
(比較例4~6)
表3に掲載したCNT添加量、分散時間、ビーズ径に変更した以外は、比較例3と同様の方法により、分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(WA17~WA19)を得た。
【0128】
【表3】



【0129】
(実施例23)
ステンレス容器にNMP99.3部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、分散剤(E)0.3部を加えて、ディスパーで分散剤(E)が溶解するまで撹拌した。その後、CNT(A)0.4部を計量し、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を20回行い、CNT分散液(A20)を得た。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。
【0130】
(実施例24~26)
表4に掲載したパス回数に変更した以外は実施例23と同様の方法により、CNT分散液(A21~A23)を得た。
【0131】
(比較例7)
ガラス瓶(M-140、柏洋硝子株式会社製)に、CNT(A)0.4部、分散剤(E)0.3部、NMP99.3部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)120部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて8時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズの分離を行い、CNT分散液(A24)を得た。
【0132】
【表4】



【0133】
表5に実施例1~26、比較例1~7で作製したCNT分散液の評価結果を示す。CNT分散液の位相角の評価は、10以上50未満を〇(良)、5以上10未満を△(可)、5未満または50以上を×(不可)とした。CNT分散液の25℃、周波数1Hzにおける複素弾性率の評価は、5以上400未満を〇(良)、400以上650未満を△(可)、5未満を×(不可)とした。CNT分散液の粘度評価は、せん断速度1の時のせん断粘度が、20以上40未満を◎(優良)、10以上20未満、または40以上60未満を〇(良)、5以上10未満を△(可)、5未満を×(不可)とした。CNT分散液の粒度評価は、粒度分布D10の時の粒度分布が、200以上300未満を◎(優良)、300以上500未満を〇(良)、200未満を×(不可)とした。
【0134】
【表5】

【0135】
(実施例28)
容量150cmのプラスチック容器にCNT分散液(WA1)0.63質量部、CMC(ダイセルファインケム株式会社製、#1190)を2質量%溶解した水溶液を12.5質量部、イオン交換水13.8質量部計量した。その後、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、CNT樹脂組成物(WA1)を得た。その後、一酸化珪素(株式会社大阪チタニウムテクノロジー社製、SILICON MONOOXIDE、SiO 1.3C 5μm)を2.92質量部添加し、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、人造黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、CGB-20)を21.44質量部添加し、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらにその後、スチレンブタジエンエマルション(JSR株式会社製、TRD2001)0.78質量部を加えて、前記自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、負極用合材スラリー(WA1)を得た。
【0136】
(実施例29~49)、(比較例8~12)
表6に掲載したCNT分散液に変更し、合材スラリー100質量部中のCNTが0.025質量部となるようにCNT分散液とイオン交換水の添加量を調節した以外は実施例28と同様の方法により、CNT樹脂組成物(WA2~WA19)、負極用合材スラリー(WA2~WA19)を得た。負極用合材スラリーの不揮発分は48質量%とした。
【0137】
(実施例50)
容量150cmのプラスチック容器にPVDF(Solvey社製、Solef#5130)を8質量%溶解したNMPを7.0質量部計量した。その後、CNT分散液(A20)0.19質量部を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、CNT樹脂組成物(A20)を得た。さらにその後、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)36.9部を加えて、前記自転・公転ミキサーを用いて2000rpmで2.5分間撹拌し、正極用合材スラリー(A20)を得た。
【0138】
(実施例51~53)、(比較例13)
表6に掲載したCNT分散液に変更した以外は、実施例50と同様の方法により、CNT樹脂組成物(A21~A24)、正極用合材スラリー(A21~A24)を得た。
【0139】
【表6】

【0140】
(実施例54)
負極用合材スラリー(WA1)を、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が8mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させ電極膜(WA1)を得た。
【0141】
(実施例55~75)、(比較例14~18)
表7に掲載した負極用合材スラリーに変更した以外は実施例54と同様の方法により、電極膜(WA2)~(WA19)を得た。
【0142】
(実施例76)
正極用合材スラリー(A20)を、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が20mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させ電極膜(A20)を得た。
【0143】
(実施例77~79)、(比較例19)
表7に掲載した正極用合材スラリーに変更した以外は実施例76と同様の方法により、電極膜(A21)~(A24)を得た。
【0144】
表7に実施例54~79、比較例14~19で作製した電極膜の評価結果を示す。密着性評価は、剥離強度(Ω・cm)が0.5以上を◎(優良)、0.3以上0.5未満を〇(良)、0.1以上0.3未満を△(可)、0.1未満を×(不可)とした。
【0145】
【表7】


【0146】
(実施例80~101)、(比較例20~24)
電極膜(WA1~WA19)をロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が1.7g/cmとなる負極を作製した。
【0147】
(実施例102~105)、(比較例25)
電極膜(A20~A24)をロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が3.2g/cmとなる正極を作製した。
【0148】
表8に実施例80~105、比較例20~25で作製した負極および正極を示す。
【0149】
【表8】


【0150】
(実施例106)
負極(WA1)と標準正極を各々50mm×45mm、45mm×40mm、に打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、電気オーブン中、60℃で1時間乾燥した。その後、アルゴンガスで満たされたグローブボックス内で、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートを3:5:2(体積比)の割合で混合した混合溶媒を作製し、さらに添加剤として、VC(ビニレンカーボネート)とFEC(フルオロエチレンカーボネート)を混合溶媒100質量部に対してそれぞれ1質量部加えた後、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を2mL注入した後、アルミ製ラミネートを封口してラミネート型リチウムイオン二次電池(WA1)を作製した。
【0151】
(実施例107~127)、(比較例26~30)
表9に掲載された負極に変更した以外は同様の方法により、ラミネート型リチウムイオン二次電池(WA2~WA19)を作製した。
【0152】
(実施例128)
標準負極と正極(A20)を各々50mm×45mm、45mm×40mm、に打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、電気オーブン中、60℃で1時間乾燥した。その後、アルゴンガスで満たされたグローブボックス内で、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートを3:5:2(体積比)の割合で混合した混合溶媒を作製し、さらに添加剤として、VC(ビニレンカーボネート)とFEC(フルオロエチレンカーボネート)を混合溶媒100質量部に対してそれぞれ1質量部加えた後、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を2mL注入した後、アルミ製ラミネートを封口してラミネート型リチウムイオン二次電池(A20)を作製した。
【0153】
(実施例129~131)、(比較例31)
表9に掲載された正極に変更した以外は同様の方法により、ラミネート型リチウムイオン二次電池(A21~A24)を作製した。
【0154】
【表9】



【0155】
表10に実施例106~131、比較例26~31で作製したラミネート型リチウムイオン二次電池の評価結果を示す。レート特性は、レート特性が80%以上のものを◎(優良)、70%以上80%未満のものを〇(良)、60%以上70%未満のものを△(可)、60%未満のものを×(不可)とした。サイクル特性は、サイクル特性が90%以上を◎(優良)、85%以上90%未満を〇(良)、80%以上85%未満を△(可)、80%未満を-(不可)とした。
【0156】
【表10】


【0157】
上記実施例では、カーボンナノチューブと、分散剤と、溶媒とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、カーボンナノチューブのG/D比が5~100であり、カーボンナノチューブ100質量部に対して、分散剤が30質量部以上250質量部未満含有するカーボンナノチューブ分散液であり、カーボンナノチューブ分散液の25℃、周波数1Hzにおける複素弾性率が5Pa以上650Pa未満であり、位相角が5°以上50°未満であるカーボンナノチューブ分散液を用いた。実施例では、比較例に比べて、電極の密着性が向上する傾向にあった。加えて、導電性および電極強度が向上したことにより、レート特性およびサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られた。よって、本発明は従来のカーボンナノチューブ分散液では実現しがたい高容量、高出力かつ高耐久性を有するリチウムイオン二次電池を提供できることが明らかとなった。
【0158】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0159】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
図1