(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス取り付け用クリップ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20250422BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20250422BHJP
F16B 5/12 20060101ALI20250422BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20250422BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20250422BHJP
F16L 3/14 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B5/06 Q
F16B5/12 K
F16B19/00 E
F16B2/08 U
F16L3/14 Z
(21)【出願番号】P 2022001242
(22)【出願日】2022-01-06
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸介
(72)【発明者】
【氏名】櫂作 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴大
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-180080(JP,U)
【文献】特開2021-158878(JP,A)
【文献】特開2010-047141(JP,A)
【文献】実開昭62-165714(JP,U)
【文献】特開2021-023067(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157517(WO,A1)
【文献】特開平10-009445(JP,A)
【文献】特開平09-120716(JP,A)
【文献】特開2010-081761(JP,A)
【文献】実開昭62-019028(JP,U)
【文献】特開2019-047622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
F16B 5/06
F16B 5/12
F16B 19/00
F16B 2/08
F16L 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
クリップ本体と、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドと、を備えており、
前記クリップ本体は、
前記結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部
のうち前記挿通孔の幅方向
の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有
しており、
前記挿通孔の内周面は、前記結束バンドの内周面及び外周面にそれぞれ対向する第1対向面及び第2対向面と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に位置する一対の内側面と、を有しており、
前記第1対向面及び前記第2対向面の少なくとも一方には、突起が設けられており、
前記突起は、前記一対の内側面の少なくとも一方との間に隙間が形成されるように配置されている、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項2】
前記突起は、前記第1対向面に設けられている、
請求項1に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項3】
前記突起は、前記第1対向面における前記幅方向の中央部に設けられており、
前記結束バンドの幅は、前記幅方向における前記内側面と前記突起との間の距離よりも小さい、
請求項2に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項4】
前記ベロ部は、前記幅方向に対して傾斜している、
請求項1から請求項3
のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項5】
前記ベロ部における前記ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面には、前記ベロ部の延在方向における前記テープの移動を規制する規制突起が設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項6】
複数の前記規制突起が、前記ベロ部の延在方向において互いに間隔を空けて設けられている、
請求項
5に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項7】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
クリップ本体と、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドと、を備えており、
前記クリップ本体は、
前記結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部のうち前記挿通孔の幅方向の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有しており、
前記ベロ部は、前記幅方向に対して傾斜している、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項8】
前記ベロ部における前記ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面には、前記ベロ部の延在方向における前記テープの移動を規制する規制突起が設けられている、
請求項7に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項9】
複数の前記規制突起が、前記ベロ部の延在方向において互いに間隔を空けて設けられている、
請求項8に記載のワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項10】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
クリップ本体と、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドと、を備えており、
前記クリップ本体は、
前記結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部のうち前記挿通孔の幅方向の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有しており、
前記ベロ部における前記ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面には、前記ベロ部の延在方向における前記テープの移動を規制する規制突起が設けられており、
複数の前記規制突起が、前記ベロ部の延在方向において互いに間隔を空けて設けられている、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項11】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部のうち前記挿通孔の幅方向の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有しており、
前記挿通孔の内周面は、前記結束バンドの内周面及び外周面にそれぞれ対向する第1対向面及び第2対向面と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に位置する一対の内側面と、を有しており、
前記第1対向面及び前記第2対向面の少なくとも一方には、突起が設けられており、
前記突起は、前記一対の内側面の少なくとも一方との間に隙間が形成されるように配置されている、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項12】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部のうち前記挿通孔の幅方向の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有しており、
前記ベロ部は、前記幅方向に対して傾斜している、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【請求項13】
ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、
前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、
前記ベース部のうち前記挿通孔の幅方向の端から延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、
前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有しており、
前記ベロ部における前記ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面には、前記ベロ部の延在方向における前記テープの移動を規制する規制突起が設けられており、
複数の前記規制突起が、前記ベロ部の延在方向において互いに間隔を空けて設けられている、
ワイヤーハーネス取り付け用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス取り付け用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤーハーネスを車体に固定するクリップが記載されている。クリップは、ワイヤーハーネスを締結するバンド部と、バンド部に固定された係止部とを備えている。係止部は、直線状に延びる脚部と、脚部の根本に設けられた挟持用鍔部と、脚部の先端よりも根本側に向かって徐々に広がるテーパ状に設けられた一対の弾性係止爪とを有している。
【0003】
クリップは、プロテクタの取付口に係止部を挿入することで取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のクリップの場合、ワイヤーハーネスを2箇所において拘束するためには、2つのクリップが必要となったり、クリップとは別の経路規制部材が必要となったりする。このため、部品点数が増加するという問題がある。
【0006】
また、ワイヤーハーネスの太さや配策経路に応じてワイヤーハーネスの拘束態様を変更するためには、バンド部の幅の異なる複数種類のクリップを用意する必要がある。このようなことから、ワイヤーハーネスの拘束性能の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するワイヤーハーネス取り付け用クリップは、ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、クリップ本体と、前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドと、を備えており、前記クリップ本体は、前記結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、前記ベース部から少なくとも前記挿通孔の幅方向に延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、ワイヤーハーネスの第1部分が、ベース部の挿通孔に挿通された結束バンドによってクリップ本体に結束される。また、ワイヤーハーネスの第2部分は、ベロ部に沿って配置された状態でベロ部とともにテープにより巻かれる。そして、固定部を取付対象に差し込むことによって、上記の2箇所で拘束された状態のワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けることができる。
【0009】
ここで、結束バンドがクリップ本体に対して別体として構成されているため、挿通孔に対して幅の異なる複数種類の結束バンドを挿通できる。これにより、ワイヤーハーネスの太さや配策経路に応じて結束バンドを選択することで、ワイヤーハーネスの第1部分の拘束態様を調整できる。
【0010】
また、ベロ部の延在方向におけるテープにより巻かれる位置を変更することによって、ワイヤーハーネスの第2部分の拘束態様を調整できる。したがって、ワイヤーハーネス取り付け用クリップは、部品点数を増加させることなくワイヤーハーネスの拘束性能を向上させることができる。
【0011】
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、前記挿通孔の内周面は、前記結束バンドの内周面及び外周面にそれぞれ対向する第1対向面及び第2対向面と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に位置する一対の内側面と、を有しており、前記第1対向面及び前記第2対向面の少なくとも一方には、突起が設けられており、前記突起は、前記一対の内側面の少なくとも一方との間に隙間が形成されるように配置されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、例えば挿通孔の幅方向における内側面と突起との間の距離よりも小さい幅の結束バンドを内側面と突起との間に配置した場合、幅方向における結束バンドの移動が内側面と突起とによって規制されるようになる。これにより、挿通孔の幅を大きくしながらも結束バンドの位置ずれを抑制できる。したがって、ワイヤーハーネスの第1部分を適切に拘束できる。
【0013】
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、前記突起は、前記第1対向面に設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、挿通孔の第1対向面に突起が設けられている。第1対向面は結束バンドによって締め付けられるため、結束バンドは突起を一層乗り越えにくくなる。したがって、結束バンドの位置ずれを適切に規制できる。
【0014】
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、前記突起は、前記第1対向面における前記幅方向の中央部に設けられており、前記結束バンドの幅は、前記幅方向における前記内側面と前記突起との間の距離よりも小さいことが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、挿通孔の幅方向において突起の一側及び他側のいずれにも結束バンドを配置できる。これにより、結束バンドの位置に応じてワイヤーハーネスの拘束態様を調整できる。
【0016】
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、前記ベロ部は、前記幅方向に対して傾斜していることが好ましい。
クリップの取り付け位置に応じてワイヤーハーネスの曲がり具合が変わる。
【0017】
その点、上記構成によれば、ベース部に対してベロ部が傾斜している。これにより、ベロ部の傾斜角度を調整することでワイヤーハーネスの曲がり具合に適合したワイヤーハーネスの経路の規制を実現できる。
【0018】
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、前記ベロ部における前記ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面には、前記ベロ部の延在方向における前記テープの移動を規制する規制突起が設けられていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、ベロ部の延在方向におけるテープの移動が規制されるため、ワイヤーハーネスの第2部分を適切に拘束できる。
上記のワイヤーハーネス取り付け用クリップにおいて、複数の前記規制突起が、前記ベロ部の延在方向において互いに間隔を空けて設けられていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、テープの移動を規制しつつ、ワイヤーハーネスの第2部分の拘束態様の自由度を高めることができる。
上記課題を解決するワイヤーハーネス取り付け用クリップは、ワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けるクリップであって、前記ワイヤーハーネスの第1部分を結束する結束バンドが挿通される挿通孔を有するベース部と、前記ベース部から少なくとも前記挿通孔の幅方向に延在するとともに前記ワイヤーハーネスの第2部分とともにテープにより巻かれることによって前記ワイヤーハーネスの経路を規制するベロ部と、前記挿通孔の挿通方向及び前記幅方向の双方に交差する方向において、前記ベース部から突出し、前記取付対象に対して差し込まれて固定される固定部と、を有する。
【0021】
上記構成によれば、ワイヤーハーネスの第1部分が、ベース部の挿通孔に挿通された結束バンドによってベース部に結束される。また、ワイヤーハーネスの第2部分が、ベロ部に沿って配置された状態でベロ部とともにテープにより巻かれる。そして、固定部を取付対象に差し込むことによって、上記の2箇所で拘束された状態のワイヤーハーネスを取付対象に対して取り付けることができる。
【0022】
ここで、結束バンドがクリップに対して別体として構成されているため、挿通孔に対して幅の異なる複数種類の結束バンドを挿通できる。これにより、ワイヤーハーネスの太さや配策経路に応じて結束バンドを選択することで、ワイヤーハーネスの第1部分の拘束態様を調整できる。
【0023】
また、ベロ部の延在方向におけるテープにより巻かれる位置を変更することによって、ワイヤーハーネスの第2部分の拘束態様を調整できる。したがって、ワイヤーハーネス取り付け用クリップは、部品点数を増加させることなくワイヤーハーネスの拘束性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、部品点数を増加させることなくワイヤーハーネスの拘束性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】クリップによるワイヤーハーネスの拘束態様を示す斜視図である。
【
図3】クリップの挿通孔の近傍を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、ワイヤーハーネス取り付け用クリップを具体化した一実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。なお、以下ワイヤーハーネス取り付け用クリップを、クリップと記載する。
【0027】
<クリップの構成>
図1に示すように、クリップ10は、ワイヤーハーネスWhを車体100に対して取り付ける。車体100は、ワイヤーハーネスWhの取付対象の一例である。クリップ10は、クリップ本体20と、結束バンド30とを備えている。
【0028】
<クリップ本体の構成>
図1及び
図2に示すように、クリップ本体20は、ベース部40と、固定部50と、ベロ部60とを有している。ベース部40は、長板状をなしている。ベース部40の長縁が延びる方向を長辺方向Aとする。ベース部40の短縁が延びる方向を短辺方向Bとする。ベース部40の厚さ方向をCとする。長辺方向Aと短辺方向Bとは直交している。長辺方向Aと厚さ方向Cとは直交している。短辺方向Bと厚さ方向Cとは直交している。厚さ方向Cは、長辺方向A及び短辺方向Bの双方に交差している。
【0029】
ベース部40は、第1面40aと、第2面40bとを有している。第2面40bは、ベース部40の厚さ方向Cにおいて第1面40aとは反対側に位置している。ベース部40は、一対の側面40cを有している。一対の側面40cは、ベース部40の短辺方向Bの両端に位置する面である。
【0030】
ベース部40は、挿通孔41を有している。挿通孔41は、ベース部40を短辺方向Bに貫通している。短辺方向Bは、挿通孔41の挿通方向の一例である。側面40cを正面に見たとき、挿通孔41は、長辺方向Aに長辺の延びる長孔である。挿通孔41の長辺方向Aの寸法は、挿通孔41の厚さ方向Cの寸法よりも長い。長辺方向Aは、挿通孔41の幅方向の一例である。
【0031】
図2に示すように、固定部50は、ベース部40の第2面40bに設けられている。固定部50は、脚部51と、一対の弾性係止爪52とを有している。脚部51は、第2面40bから直線状に突出している。一対の弾性係止爪52は、脚部51の先端に設けられている。一対の弾性係止爪52は、脚部51の根本に向かって徐々に広がるテーパ状である。固定部50は、ベース部40から突出している。固定部50は、車体100に設けられた係止孔101に差し込まれる。固定部50を係止孔101に差し込むとき、一対の弾性係止爪52は、係止孔101の内周面により互いに近づくように弾性変形する。一対の弾性係止爪52は、係止孔101を通過したとき、互いに離れるように弾性変形する。すると、一対の弾性係止爪52の先端が、係止孔101よりも外側に位置する。厚さ方向Cにおいて、一対の弾性係止爪52の先端とベース部40の第2面40bとにより車体100が挟み込まれる。固定部50は、車体100に対して差し込まれて固定される。車体100に固定部50を固定した状態において、ベース部40の第1面40aは、上方を向いている。車体100に固定部50を固定した状態において、ベース部40の第2面40bは、下方を向いている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、ベロ部60は、長板状である。ベロ部60は、ベース部40と一体である。ベロ部60は、長辺方向Aにベース部40から離れるほど固定部50の突出方向に向かうように傾斜している。ベロ部60は、長辺方向Aに対して傾斜している。ベロ部60は、少なくとも長辺方向Aにベース部40から延びている。ベロ部60は、長辺方向Aにベース部40から離れる方向に長縁が延びている。ベロ部60の短縁が延びる方向は、短辺方向Bに一致している。ベース部40からベロ部60が延びる方向をベロ部60の延在方向Dとする。延在方向Dと長辺方向Aとは、交差している。
【0033】
ベロ部60は、第1面60aと、第2面60bとを有している。第1面60aは、ベース部40の第1面40aに連続している。第2面60bは、ベロ部60の厚さ方向において第1面60aとは反対側に位置している。第2面60bは、ベース部40の第2面40bと連続している。
【0034】
<ベース部の構成>
以下、ベース部40の構成を更に詳細に説明する。
図3に示すように、挿通孔41の内周面は、第1内面41aと、第2内面41bと、一対の内側面41cとを有している。第1内面41aと第2内面41bとは、厚さ方向Cにおいて対向している。第1内面41aは、厚さ方向Cにおいて第2内面41bよりも上方に位置している。第1内面41aと第2内面41bとは、平行である。一対の内側面41cは、厚さ方向Cにおいて第1内面41aと第2内面41bとの間に位置している。一対の内側面41cは、第1内面41aと第2内面41bとを接続している。一対の内側面41cは、平行である。
【0035】
ベース部40は、突起42を有している。突起42は、第1内面41aに設けられている。突起42は、第1内面41aから第2内面41bに向けて突出している。突起42の先端は、第2内面41bに接触していない。突起42は、第1内面41aの長辺方向Aの中央部に設けられている。一対の内側面41cの一方と突起42との間には隙間S1が形成されており、且つ一対の内側面41cの他方と突起42との間には隙間S2が形成されている。突起42は、一対の内側面41cとの間に隙間S1,S2が形成されるように配置されている。
【0036】
図1に示すように、突起42は、第1内面41aの短辺方向Bの全長に亘って設けられている。
図3に示すように、一対の内側面41cの一方と突起42との間の距離をL1とする。一対の内側面41cの他方と突起42との間の距離をL2とする。距離L1は、距離L2よりも小さい。なお、距離L1は距離L2と同じ大きさであってもよいし、距離L2よりも大きくてもよい。
【0037】
<ベロ部の構成>
以下、ベロ部60の構成を更に詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、ベロ部60は、2つの規制突起61を有している。2つの規制突起61は、ベロ部60の第2面60bに設けられている。2つの規制突起61は、第2面60bから突出している。2つの規制突起61は、第2面60bに直交する方向に突出している。2つの規制突起61は、第2面60bにおける短辺方向Bの全長に亘って延びている。2つの規制突起61は、延在方向Dにおいて互いに間隔を空けて配置されている。2つの規制突起61の1つは、ベース部40から所定の距離を空けて配置されている。2つの規制突起61の残りの1つは、ベロ部60の延在方向Dの先端から所定の間隔を空けて配置されている。換言すると、2つの規制突起61は、第2面60bを延在方向Dにおいて3つの領域に分割するように配置されている。分割された領域を例えば、第1領域R1、第2領域R2、及び第3領域R3とする。第1領域R1は、2つの規制突起61の1つとベース部40との間に位置する。第2領域R2は、2つの規制突起61の間に位置する。第3領域R3は、2つの規制突起61の残りの1つと、ベロ部60の先端との間に位置する。第1領域R1、第2領域R2、及び第3領域R3は、延在方向Dにおいてこの順に並んでいる。
【0038】
<結束バンドの構成>
以下、結束バンド30の構成を説明する。
図1に示すように、結束バンド30は、バンド部31と、基端部32とを有している。バンド部31は、撓み変形可能な紐状であるとともに長板状である。なお、結束バンド30は、例えば合成樹脂により形成されている。バンド部31の長縁が延びる方向を撓み方向Eとする。撓み方向E、及びバンド部31の厚さ方向の双方に直交する方向をバンド部31の幅方向Fとする。
【0039】
バンド部31は、第1面31aと、第2面31bとを有している。第1面31aには、幅方向Fに延びる長溝31cが複数形成されている。複数の長溝31cは、撓み方向Eに互いに隣り合うように配置されている。第1面31aには、複数の長溝31cが形成されることにより複数の長歯31dが形成されている。複数の長歯31dは、第1面31aの幅方向Fの全長に延びている。第2面31bは、平面である。
【0040】
基端部32には、バンド部31の撓み方向Eの基端が固定されている。基端部32は、バンド部31の撓み方向Eの先端が挿通される挿通孔33を有している。挿通孔33の内部には、バンド部31の長溝31c及び長歯31dに噛み合う図示しない規制構造が設けられている。長溝31c、長歯31d、及び規制構造が互いに噛み合うことにより、バンド部31は、挿通孔33への進入を許容されつつ、挿通孔33からの離脱不能となる。バンド部31が挿通孔33へ挿通された状態において、バンド部31は、環状となる。バンド部31が環状である状態において、第1面31aは結束バンド30の外周面となり、且つ第2面31bは結束バンド30の内周面となる。
【0041】
図2及び
図3に記載したバンド部31の幅方向Fの幅Wは、距離L1よりも小さい。
<ワイヤーハーネスの拘束態様>
ワイヤーハーネスWhの一部分をベース部40の第1面40aに接触させた状態において、結束バンド30が挿通孔41に挿通されている。バンド部31は、挿通孔41の隙間S1に挿通されている。環状のバンド部31の第2面31bは、ワイヤーハーネスWhの表面に押し付けられている。環状のバンド部31の第2面31bは、第1内面41aに押し付けられている。よって、ワイヤーハーネスWhの一部分は結束バンド30によりベース部40に結束される。第1内面41aは、結束バンド30の第2面31bと対向する第1対向面の一例である。第2内面41bは、結束バンド30の第1面31aと対向する第2対向面の一例である。
【0042】
図1及び
図2に示すように、ワイヤーハーネスWhの別の一部分は、テープ70によりベロ部60に固定されている。テープ70は、延在方向Dにおいて2つの規制突起61の間を通過している。テープ70は、ワイヤーハーネスWhの一部とともに第2領域R2に巻かれている。2つの規制突起61は、延在方向Dにおけるテープ70の移動を規制している。ベロ部60は、第2部分Wh2とともにテープ70により巻かれることによってワイヤーハーネスWhの経路を規制している。
【0043】
ワイヤーハーネスWhには、第1部分Wh1と、第2部分Wh2とが形成される。第1部分Wh1は、ワイヤーハーネスWhのうちベース部40の第1面40a上に位置する部分である。結束バンド30は、ワイヤーハーネスWhの第1部分Wh1を結束する。第2部分Wh2は、ワイヤーハーネスWhのうちベロ部60の第1面60a上に位置する部分である。第1面60aは、請求項上におけるワイヤーハーネスに対向する面である。
【0044】
<本実施形態の作用>
ワイヤーハーネスWhの第1部分Wh1が、ベース部40の挿通孔41に挿通された結束バンド30によってクリップ本体20に結束される。また、ワイヤーハーネスWhの第2部分Wh2は、ベロ部60に沿って配置された状態でベロ部60とともにテープ70により巻かれる。そして、固定部50を車体100に差し込むことによって、上記の2箇所で拘束された状態のワイヤーハーネスWhが車体100に対して取り付けられる。
【0045】
結束バンド30がクリップ本体20に対して別体として構成されているため、挿通孔41に対して幅Wの異なる複数種類の結束バンド30を挿通できる。これにより、ワイヤーハーネスWhの太さや配策経路に応じて結束バンド30を選択することで、ワイヤーハーネスWhの第1部分Wh1の拘束態様が調整される。
【0046】
例えば、
図2の二点鎖線で示すように結束バンド30が隙間S2に配置されている場合を想定する。結束バンド30を起点として第1部分Wh1が曲がったとき、第1部分Wh1の曲がり具合が急峻である場合がある。この場合、第1部分Wh1に必要以上に応力が集中してしまうため、本実施形態で説明した隙間S1に結束バンド30を挿通することにより、第1部分Wh1の曲がり具合が緩和される。すなわち、ワイヤーハーネスWhの第1部分Wh1の拘束態様が調整される。
【0047】
また、ベロ部60の延在方向Dにおけるテープ70により巻かれる位置を変更することによって、ワイヤーハーネスWhの第2部分Wh2の拘束態様が調整される。
例えば、
図2の二点鎖線で示すように、第2部分Wh2とともに第3領域R3がテープ70により巻かれている場合を想定する。結束バンド30とテープ70との距離が長くなると、第2部分Wh2がベロ部60から離れやすくなる。すると、ベロ部60により第2部分Wh2の経路の規制が緩くなる。この場合、本実施形態で説明した位置にテープ70を設けることにより、第2部分Wh2がベロ部60に沿った状態を維持しやすくなる。また、第2部分Wh2とともに第1領域R1がテープ70により巻かれた状態にしてもよい。このようにすると、テープ70を起点として延在方向Dに延びる第2部分Wh2の曲がり具合が緩和されることにより、第2部分Wh2に必要以上の応力が作用しにくくなる。すなわち、第2部分Wh2をテープ70により拘束する際のワイヤーハーネスWhの配策経路に応じて、テープ70が巻かれる位置を適宜変更できる。すなわち、ワイヤーハーネスWhの第2部分Wh2の拘束態様が調整される。
【0048】
上記した各想定に限らず、ワイヤーハーネスWhを車体100に取り付ける際にワイヤーハーネスWhの拘束態様に求められるニーズに応じて結束バンド30及びテープ70の位置が調整される。
【0049】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)1つのクリップ10によりワイヤーハーネスWhを2箇所で拘束することができる。このため、1つのクリップでワイヤーハーネスWhの1箇所のみを拘束する構成と比較すると、ワイヤーハーネスWhを拘束するためのクリップの数を減らすことができる。また、ワイヤーハーネスWhの拘束態様に求められるニーズに応じて結束バンド30及びテープ70の位置が調整できる。したがって、部品点数を増加させることなくワイヤーハーネスWhの拘束性能を向上させることができる。
【0050】
(2)幅Wの異なる複数種類の結束バンド30を使用する場合、挿通孔41の幅を大きくする必要がある。例えば距離L1よりも小さい幅Wの結束バンド30を内側面41cと突起42との間に配置した場合、突起42が設けられていないと、結束バンド30が長辺方向Aに位置ずれする量が多くなる虞がある。
【0051】
その点、第1内面41aに突起42が設けられることにより、距離L1よりも小さい幅Wの結束バンド30を内側面41cと突起42との間に配置した場合、長辺方向Aにおける結束バンド30の移動が内側面41cと突起42とによって規制されるようになる。これにより、挿通孔41の幅を大きくしながらも結束バンド30の位置ずれを抑制できる。したがって、ワイヤーハーネスWhの第1部分Wh1を適切に拘束できる。
【0052】
(3)第1内面41aに突起42が設けられている。第1内面41aは結束バンド30によって締め付けられるため、結束バンド30は突起42を一層乗り越えにくくなる。したがって、結束バンド30の位置ずれを適切に規制できる。
【0053】
(4)結束バンド30の幅Wは、距離L1,L2よりも小さい。よって、長辺方向Aにおいて突起42の一側及び他側のいずれにも結束バンド30を配置できる。これにより、結束バンド30の位置に応じてワイヤーハーネスWhの拘束態様を調整できる。
【0054】
(5)クリップ10の取り付け位置に応じてワイヤーハーネスWhの曲がり具合が変わる。本実施形態では、ベロ部60は、長辺方向Aに対して傾斜している。これにより、ベロ部60の傾斜角度を調整することでワイヤーハーネスWhの曲がり具合に適合したワイヤーハーネスWhの経路の規制を実現できる。
【0055】
(6)2つの規制突起61が、延在方向Dにおいて互いに間隔を空けて設けられている。このため、各規制突起61は、延在方向Dへのテープ70の移動を規制しつつ、ワイヤーハーネスWhの第2部分Wh2の拘束態様の自由度を高めることができる。
【0056】
<変更例>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・クリップ10は、クリップ本体20のみにより構成されてもよい。結束バンド30は、市販されている結束バンドに代替できる。すなわち、結束バンド30は、本実施形態のクリップ10の専用の結束バンドである必要はなく、汎用的な結束バンドでもよい。このよう変更しても、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0058】
・規制突起61は、1つだけ採用されてもよいし、3つ以上採用されてもよい。規制突起61の数が増えるほど、テープ70を配置する位置の調整が細かく実施できる。ただし、規制突起61の数は、テープ70の巻きやすさを考慮した数にするとよい。
【0059】
・規制突起61は、ベロ部60の第1面60aに設けるように変更してもよい。
・規制突起61を割愛してもよい。
・ベロ部60は、長辺方向Aに対して傾斜していなくてもよい。ベロ部60は、長辺方向Aにのみ延びていてもよい。すなわち、ベロ部60は、ベース部40と同じ方向に延びていてもよい。
【0060】
・突起42は、2つ以上採用されていてもよい。突起42の数が増えるほど、結束バンド30を配置する位置の調整が細かく実施できる。突起42の数は、使用する結束バンド30の種類に応じて適宜変更するとよい。
【0061】
・突起42は、第1内面41aの短辺方向Bの全長に延びていたが、短辺方向Bの寸法は適宜変更してもよい。
・突起42の先端と第2内面41bとの間の距離は、バンド部31の厚さよりも大きくてもよい。このように変更すると、例えば、距離L2よりも幅Wの大きい結束バンド30を採用した場合、当該結束バンド30を突起42の先端と第2内面41bとの間に挿入することができる。すると、クリップ10に適用できる結束バンド30の種類を増やすことができる。よって、ワイヤーハーネスWhの拘束態様の調整のバリエーションを増やすことができる。
【0062】
・突起42は、第1内面41aの長辺方向Aにおける中央部に設けられていなくてもよい。例えば、突起42は、一対の内側面41cのいずれかと一体的に設けられていてもよい。すなわち、隙間S1,S2のいずれか一方を割愛してもよい。
【0063】
・突起42は、第2内面41bの長辺方向Aにおける中央部に設けられていてもよい。このように変更する場合、突起42の第2内面41bからの高さは、バンド部31の移動を規制できる程度の大きさであるとよい。
【0064】
・突起42は、第2内面41bの長辺方向Aにおける中央部に設けられていなくてもよい。例えば、突起42は、一対の内側面41cのいずれかと一体的に設けられていてもよい。
【0065】
・突起42は、第1内面41a及び第2内面41bの両方に設けられていてもよい。
・突起42は、割愛されてもよい。
・挿通孔41の内周面の構成は、結束バンド30を挿通できる構成であれば、適宜構成を変更してもよい。
【0066】
・固定部50の構成は、車体100に差し込まれて固定することができれば適宜構成を変更してもよい。
・クリップ10は、車体100に取り付けられていたが、取付対象を適宜変更してもよい。例えば、車体100の所定の位置に設けられた部品を取付対象としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…クリップ
20…クリップ本体
30…結束バンド
31a…結束バンドの外周面としての第1面
31b…結束バンドの内周面としての第2面
40…ベース部
41…挿通孔
41a…第1対向面としての第1内面
41b…第2対向面としての第2内面
41c…一対の内側面
42…突起
50…固定部
60…ベロ部
60a…ワイヤーハーネスに対向する面としての第1面
60b…ワイヤーハーネスに対向する面とは反対側の面としての第2面
61…規制突起
70…テープ
100…取付対象としての車体
Wh…ワイヤーハーネス
Wh1…ワイヤーハーネスの第1部分
Wh2…ワイヤーハーネスの第2部分
A…挿通孔の幅方向としての長辺方向
B…挿通孔の挿通方向としての短辺方向
C…挿通孔の挿通方向及び挿通孔の幅方向の双方向に交差する方向としてのベース部の厚さ方向
D…ベロ部の延在方向
S1,S2…隙間
W…結束バンドの幅
L1,L2…距離