(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20250422BHJP
H03F 3/60 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
H01P5/08 L
H03F3/60
(21)【出願番号】P 2022070701
(22)【出願日】2022-04-22
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶木 伸
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-47101(JP,A)
【文献】特開平2-111102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H03F 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCパッドを有するMMICと、
バイアス基板と、
前記バイアス基板の上に実装された複数のMIMキャパシタと、
前記バイアス基板の上に設けられ、前記複数のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続された複数のパッドと、
前記DCパッドを前記複数のパッドの何れかに接続するワイヤとを備え、
前記複数のパッドは、平面視で前記DCパッドと前記複数のMIMキャパシタとの間に配置され、横並びした前記複数のMIMキャパシタの列に対して平行に延びていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数のMIMキャパシタは、一列に順に配置された第1から第3のMIMキャパシタを有し、
前記複数のパッドは、前記第1から第3のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続された第1から第3のパッドを有し、
前記第1から第3のパッドの各々は、前記第1から第3のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のパッドは、前記第1のMIMキャパシタに対向する位置から第3のMIMキャパシタに対向する位置まで延び、
前記第3のパッドは、前記第3のMIMキャパシタに対向する位置から第1のMIMキャパシタに対向する位置まで延び、
前記第2のパッドは、前記第2のMIMキャパシタに対向する位置から分岐して第1のMIMキャパシタに対向する位置と第3のMIMキャパシタに対向する位置までそれぞれ延びていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数のMIMキャパシタは、前記第1から第3のMIMキャパシタと共に一列に配置された第4のMIMキャパシタを更に有し、
前記複数のパッドは、前記第4のMIMキャパシタの上地電極に接続された第4のパッドを更に有し、
前記第4のパッドは、前記第1から第4のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数のMIMキャパシタは、前記第1から第3のMIMキャパシタの列に対して平行に配置された第4から第6のMIMキャパシタを有し、
前記複数のパッドは、前記第4から第6のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続され、平面視で前記DCパッドと前記第1から第3のパッドとの間に配置された第4から第6のパッドを有し、
前記第4から第6のパッドの各々は、前記第1から第3のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数のパッドは、互いに隣接する凹凸形状の2つのパッドを有し、一方のパッドの凸部が他方のパッドの凹部にはめ込まれるように配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数のMIMキャパシタは互いに異なる容量を持つことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1から第3のMIMキャパシタの容量値をC1,C2,C3として、C1:C2:C3=4:2:1であることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バイアス基板の上に設けられ、前記複数のMIMキャパシタの下地電極にそれぞれ接続された複数の接地パッドを更に備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記バイアス基板を貫通し、前記複数のMIMキャパシタの下地電極にそれぞれ接続された複数のビアホールを更に備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯又はミリ波帯のMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。MMICをパッケージに実装した半導体装置において、MMICのDCパッドの近傍にMIMキャパシタを配置し、両者をワイヤで接続する。このMIMキャパシタにより不要な低周波信号をショートして、増幅器MMIC回路の発振又はバイアス回路側へのRF信号の漏れ込みを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MIMキャパシタのサイズはDCパッドのサイズと比較して例えば3倍程度大きい。このため、DCパッドが複数個、特に3個以上近接して配置されている場合、それらにワイヤ接続する3個以上のMIMキャパシタを横に並べて配置すると、ワイヤが斜めになる。従って、ワイヤの長さが長くなり、インダクタンス値が大きくなる。低周波信号がワイヤのインダクタンス成分で回路側に反射され、ショートすることができず、発振の原因になる場合があった。
【0005】
ワイヤ本数を増やせば、インダクタンスの並列化によりトータルインダクタンス値を低減することができる。しかし、MIMキャパシタの大きさの制約からワイヤ本数の上限が決まってしまうため、インダクタンス低減に制約があった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はワイヤのインダクタンス値を低減することができる半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体装置は、DCパッドを有するMMICと、バイアス基板と、前記バイアス基板の上に実装された複数のMIMキャパシタと、前記バイアス基板の上に設けられ、前記複数のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続された複数のパッドと、前記DCパッドを前記複数のパッドの何れかに接続するワイヤとを備え、前記複数のパッドは、平面視で前記DCパッドと前記複数のMIMキャパシタとの間に配置され、横並びした前記複数のMIMキャパシタの列に対して平行に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、複数のパッドが平面視でDCパッドとMIMキャパシタとの間に配置され、横並びしたMIMキャパシタの列に対して平行に延びている。これにより、パッドに対するワイヤのボンディング位置の自由度が増すため、ワイヤを短くすることができる。ワイヤの本数もMIMキャパシタのサイズに依存しなくなる。よって、ワイヤのインダクタンス値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係るバイアス基板を示す平面図である。
【
図6】比較例2に係る半導体装置のワイヤ長の一例を示す平面図である。
【
図7】実施の形態1に係る半導体装置のワイヤ長の一例を示す平面図である。
【
図8】実施の形態1に係るバイアス基板の変形例を示す平面図である。
【
図9】実施の形態2に係るバイアス基板を示す平面図である。
【
図10】実施の形態2に係るバイアス基板の変形例を示す平面図である。
【
図11】実施の形態3に係るバイアス基板を示す平面図である。
【
図12】実施の形態4に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図13】実施の形態4に係るバイアス基板を示す平面図である。
【
図14】実施の形態4に係るバイアス基板の寸法を示す平面図である。
【
図15】実施の形態5に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図16】実施の形態5に係る半導体装置の等価回路を示す図である。
【
図17】ワイヤの接続方法の組合せで実現できる容量値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態に係る半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る半導体装置を示す平面図である。パッケージ1内にMMIC2が設けられている。MMIC2はマイクロ波帯又はミリ波帯の増幅器MMIC回路であり、上面に一列に配置された3個のDCパッド3a~3cを有する。パッケージ1内にMMIC2に隣接してバイアス基板4が設けられている。バイアス基板4の材料は、一般に高周波回路に用いられる基板材料であり、例えばGaAs、GaN、SiC、セラミック等である。
【0012】
3個のMIMキャパシタ5a~5cがバイアス基板4の上に実装されている。MIMキャパシタ5a~5cは、平面視で一列に順に配置されている。3個のパッド6a~6cがバイアス基板4の上に設けられている。パッド6a~6cは、MIMキャパシタ5a~5cの上地電極にそれぞれエアブリッジ等(図示せず)により接続されている。パッド6a~6cは、平面視でDCパッド3a~3cとMIMキャパシタ5a~5cとの間に配置され、横並びしたMIMキャパシタ5a~5cの列に対して平行に延びている。
【0013】
ワイヤ7a~7cがそれぞれDCパッド3a~3cをパッド6a~6cに接続する。ただし、全てのパッドにワイヤを接続する必要はなく、少なくとも1本のワイヤがDCパッド3a~3cの何れかをパッド6a~6cの何れかに接続すればよい。
【0014】
MIMキャパシタ5a~5cの上地電極がそれぞれパッケージ1のリード接続部8にワイヤ接続されている。ただし、MIMキャパシタの上地電極に直接ワイヤボンドするとダメージ等の懸念があるならば、MIMキャパシタに対してMMIC2とは反対側に、上地電極に接続された別のパッドを設け、そのパッドとリード接続部8をワイヤ接続してもよい。
【0015】
図2は実施の形態1に係るバイアス基板を示す平面図である。パッド6a~6cの各々は、3つのMIMキャパシタ5a~5cに対向する位置に延在している。具体的には、パッド6aは、MIMキャパシタ5aの上地電極からMMIC2に向かって延びた後にMIMキャパシタ5aに対向する位置からMIMキャパシタ5cの少なくとも一部に対向する位置まで延びる。パッド6cは、MIMキャパシタ5cの上地電極からMMIC2に向かって延びた後にMIMキャパシタ5cに対向する位置からMIMキャパシタ5aの少なくとも一部に対向する位置まで延びる。パッド6bは、MIMキャパシタ5bの上地電極からMMIC2に向かって延びた後にMIMキャパシタ5bに対向する位置から分岐してMIMキャパシタ5aの少なくとも一部に対向する位置とMIMキャパシタ5cの少なくとも一部に対向する位置までそれぞれ延びる。従って、パッド6a~6cは3つのMIMキャパシタ5a~5cの長さに相当する長さを持つ。
【0016】
図3は
図2のI-IIに沿った断面図である。MIMキャパシタ5cは下から順に積層された下地電極9、絶縁膜10、上地電極11を有する。MIMキャパシタ5cの容量値は、絶縁膜10の比誘電率とその厚み、MIMキャパシタ5cの面積で決まる。接地パッド12がバイアス基板4の上に設けられ、MIMキャパシタ5cの下地電極9に接続されている。接地パッド12は、平面視でMIMキャパシタ5cに対してMMIC2とは反対側に引き出されている。複数のビアホール13がバイアス基板4を貫通し、MIMキャパシタ5cの下地電極9に接続されている。MIMキャパシタ5cの下地電極9はビアホール13を介してGNDに接続される。MIMキャパシタ5a,5bの構造も同様である。
【0017】
ただし、MIMキャパシタ5a~5cがそれぞれビアホール13によって予めGNDと接続されている場合、MIMキャパシタ5a~5cの直列接続が困難となる。従って、MIMキャパシタ5a~5cを直列に接続する必要がある場合、必ずしもビアホール13を形成する必要はない。ビアホール13が無い場合は、MIMキャパシタ5a~5cの下地電極9に接続された接地パッド12をワイヤによりGNDに接続する。なお、接地パッド12を省略し、接地パッド12と同じ形状の下地電極9のみを用いてGNDに接続することも可能である。
【0018】
なお、
図2では引き出された接地パッド12は正方形に近い形状である。これに限らず、接地パッド12をGNDに複数本のワイヤで接続したい場合には、接地パッド12をMIMキャパシタ5a~5cの辺に沿って長方形としたり、パッドの面積を大きくしてもよい。
【0019】
続いて、本実施の形態の効果を比較例1,2と比較して説明する。比較例1,2では、バイアス基板4及びパッド6a~6cを用いず、MIMキャパシタ5a~5cとDCパッド3a~3cを直接的にワイヤ接続する。
図4は比較例1に係る半導体装置を示す図である。MIMキャパシタ5a~5cを一列に並べて配置している。右端のDCパッド3cとMIMキャパシタ5cを接続するワイヤ7cが最も長くなる。
【0020】
図5は比較例2に係る半導体装置を示す図である。中央のMIMキャパシタ5bだけをMMIC2から遠くに配置し、左右のMIMキャパシタ5a,5cをMMIC2の近くに並べて配置している。中央のDCパッド3bとMIMキャパシタ5bを接続するワイヤ7bの長さが左右のワイヤ7a,7cの2倍以上になっている。
【0021】
このように比較例1,2では一部のワイヤの長さが長くなるため、効果的に低周波信号をショートできず、発振のリスクが高くなる。これに対して、本実施の形態では、複数のパッド6a~6cが平面視でDCパッド3a~3cとMIMキャパシタ5a~5cとの間に配置され、横並びしたMIMキャパシタ5a~5cの列に対して平行に延びている。これにより、パッド6a~6cに対するワイヤ7a~7cのボンディング位置の自由度が増すため、ワイヤ7a~7cを短くすることができる。ワイヤ7a~7cの本数もMIMキャパシタ5a~5cのサイズに依存しなくなる。よって、ワイヤ7a~7cのインダクタンス値を低減することができる。
【0022】
ワイヤ7a~7cのインダクタンスをLw、抵抗をRとすると、ワイヤ7a~7cの遮断周波数fcはfc=R/(2×π×Lw)となる。Lwが大きくなるとfcは小さくなり、通過する低周波帯域が狭くなる。従って、低周波信号をショートしようとした時にLwが大きくなると、DCに近い領域はショートできるが、DCから離れた低周波領域はMMIC2側に反射されてしまい、発振するリスクが高くなる。インダクタンスはローパスフィルタとして機能するため、fc以上の周波数は通過せずに反射されることになる。
【0023】
図6は、比較例2に係る半導体装置のワイヤ長の一例を示す平面図である。MMIC2の3個のDCパッド3a~3cと3個のMIMキャパシタ5a~5cがそれぞれ直接ワイヤ接続されている。DCパッド3a~3cのサイズは150um×100umである。MIMキャパシタ5a~5cのサイズは300um×300umである。DCパッド3a~3cからMMIC2の端部までの寸法は50umである。MMIC2とMIMキャパシタ5a~5cとの間隔は50umである。ワイヤ7a~7cはDCパッド3a~3cの中央とMIMキャパシタ5a~5cの中央に打つ。この場合、左側と右側のDCパッド3a,3cとMIMキャパシタ5a,5cを接続するワイヤ7a,7cの長さは、ワイヤのループ形状の高さを無視すると300umとなる。MIMキャパシタ5a~5c間の距離を100umとすると、中央のDCパッド3bとMIMキャパシタ5bを接続するワイヤ7bの長さは700umとなる。
【0024】
図7は、実施の形態1に係る半導体装置のワイヤ長の一例を示す平面図である。パッド6a~6cの幅は50umである。パッド6a~6c同士の間隔は10umである。左側のDCパッド3aのワイヤ7aの長さは195umとなる。中央のDCパッド3bのワイヤ7bの長さは255umとなる。右側のDCパッド3cのワイヤ7cの長さは315umとなる。従って、実施の形態1のワイヤ7a~7cの長さは、比較例2の中央のワイヤ7bの長さ700umの1/2以下になる。
【0025】
表1は、ワイヤ長とそれに対応するインダクタンス値Lと遮断周波数fcの関係を示す。ここで、ワイヤ長とインダクタンス値との関係は、電磁界解析によって見積もった1nH/mmを使用して見積もった。計算においてワイヤ径は30umとした。
【0026】
【0027】
比較例2のワイヤ長700umの場合、インダクタンス値Lは0.70nH、遮断周波数fcは22.7MHzとなる。従って、22.7MHz以上の周波数は反射されてしまう。一方、実施の形態1のワイヤ長315umの場合、インダクタンス値Lは0.315nH、遮断周波数fcは50.6MHzとなる。従って、より高い周波数50.6MHzまでショートすることが可能となり、発振のリスクは大きく低減される。なお、今回の見積ではワイヤの高さ方向の長さを無視したが、高さ方向を考慮するとワイヤ長は上記長さの約1.5倍となり、表1に示した遮断周波数fcは実際には低い側にシフトすることになる。
【0028】
比較例1,2ではMIMキャパシタの面積に依存してワイヤ本数が制限されるため、最大のワイヤ本数は少なくなる。例えば、300um×300umのMIMキャパシタの場合、周辺回路の制約が無くてもワイヤ本数の上限は3本と考えられる。これに対して、本実施の形態では、MIMキャパシタ5a~5cの上地電極に接続されたパッド6a~6cの長手方向の長さがMIMキャパシタ5a~5cの一辺の長さの約3倍となっている。従って、ワイヤ本数を増やしてワイヤのインダクタンス値を低減することができる。
【0029】
図8は、実施の形態1に係るバイアス基板の変形例を示す平面図である。MMIC2のDCパッド3bのサイズを大きくすることで、ワイヤ本数を増やすことができる。例えばワイヤを5本打つことができれば、ワイヤのインダクタンス値をワイヤ1本の場合の1/5に低減することができる。そこで、中央のパッド6bに接続されるワイヤを5本にし、左側のパッド6cに接続されるワイヤを2本にしている。
【0030】
MIMキャパシタの最適な容量値は、増幅器MMICの使用周波数帯、バイアス条件、MMICの回路構成、MMIC周辺の回路構成等によって変化する。従って、従来は、条件に応じて容量値の異なるMIMキャパシタを選択して搭載するために、全ての種類を必要な数量だけ組立開始前に準備していた。しかし、チップコンデンサは異なる容量であっても見かけが殆ど変わらず、判別が難しい場合があるため、MIMキャパシタの種類が多いと作業ミスを誘発する場合があった。また、MIMキャパシタの共通化ができず、品種数が多くなり、品種当たりの使用数が少なくなることから、原価低減の制約になる場合があった。同じ容量値のMIMキャパシタを使用できる場合でも、MMICのDCパッド毎にMIMキャパシタを設けた場合、ダイボンドする部品点数が多くなる。例えば、比較例1,2では3個のMIMキャパシタ5a~5cをそれぞれパッケージ1にダイボンドする。ダイボンドに要する時間が長くなることでスループットが低下する。一方、本実施の形態では3個のMIMキャパシタ5a~5cを設けた1枚のバイアス基板4をパッケージ1にダイボンドする。従って、本実施の形態の方がダイボンドする部品数が少なくなるため、スループットが向上する。
【0031】
また、パッド6a~6cは3列に配置されているが、パッド幅はワイヤを打つことが可能な最小寸法とすることが望ましい。パッド間隔もプロセス上で可能な最小間隔とすることが望ましい。パッド幅とパッド間隔を最小とすることで、DCパッド3a~3cとパッド6a~6cとを接続するワイヤ7a~7cの長さを短くすることができる。なお、必要な電流容量によってパッド幅が決まる場合もある。
【0032】
MIMキャパシタの容量値、即ちMIMキャパシタの面積を大きくしたい場合等で、バイアス基板4のサイズに制約がある場合は、MIMキャパシタの個数を2個以下にしてもよい。また、本実施の形態では3個のMIMキャパシタの容量値を同じにしているが、多くのMIMキャパシタを用いる場合に3個毎に容量値を変更してもよい。
【0033】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2に係るバイアス基板を示す平面図である。MIMキャパシタ5dがMIMキャパシタ5a~5cの列の右側に設けられている。MIMキャパシタ5a~5dは一列に配置されている。パッド6dがバイアス基板4の上に更に設けられている。パッド6dは、MIMキャパシタ5dの上地電極に接続され、平面視でMMIC2に向かって延びた後にDCパッド3a~3cとパッド6a~6cとの間に回り込んでいる。パッド6dは、横並びしたMIMキャパシタ5a~5dの列に対して平行に延び、MIMキャパシタ5a~5dに対向する位置に延在している。従って、パッド6dは4つのMIMキャパシタ5a~5dの長さに相当する長さを持つ。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
図10は、実施の形態2に係るバイアス基板の変形例を示す平面図である。MIMキャパシタ5eがMIMキャパシタ5a~5dの列の左側に更に設けられている。MIMキャパシタ5a~5eは一列に配置されている。パッド6eがバイアス基板4の上に更に設けられている。パッド6eは、MIMキャパシタ5eの上地電極に接続され、平面視でMMIC2に向かって延びた後にDCパッド3a~3cとパッド6a~6dとの間に回り込んでいる。パッド6eは、横並びしたMIMキャパシタ5a~5eの列に対して平行に延び、MIMキャパシタ5a~5eに対向する位置に延在している。従って、パッド6eは5つのMIMキャパシタ5a~5eの長さに相当する長さを持つ。
【0035】
図9では実施の形態1のMIMキャパシタの列の右側に1個のMIMキャパシタが追加され、
図10では列の両側にそれぞれ1個のMIMキャパシタが追加されている。従って、バイアス基板4は横方向に長くなる。ただし、追加したMIMキャパシタに接続されたパッド6d,6eも、横並びしたMIMキャパシタ5a~5cの列に対して平行に延びている。このため、MMIC2のDCパッドが近接して4個又は5個配置されていたとしても、実施の形態1と同様にワイヤを短くすることができる。
【0036】
なお、MIMキャパシタ5a~5cに最も近いパッド6bと接続するワイヤは長くなってしまう。そのワイヤのインダクタンス値が許容できない場合は、
図8と同様にパッド6bと接続するDCパッドのサイズを大きしてワイヤ本数を増やせばよい。
【0037】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係るバイアス基板を示す平面図である。バイアス基板4に6個のMIMキャパシタ5a~5fを2列に並べて実装している。MIMキャパシタ5d~5fは、MIMキャパシタ5a~5cよりもMMIC2から遠くに配置され、MIMキャパシタ5a~5cの列に対して平行に配置されている。パッド6d~6fは、MIMキャパシタ5d~5fの上地電極にそれぞれ接続され、平面視で両サイドからMMIC2に向かって延びた後にDCパッド3a~3cとパッド6a~6cとの間に回り込んでいる。パッド6d~6fの各々は、横並びしたMIMキャパシタ5a~5cの列に対して平行に延び、MIMキャパシタ5a~5cに対向する位置に延在している。
【0038】
MMIC2の長手寸法が短い場合であって、パッド数が多数かつ近接して配置される場合に本実施の形態の構造は有効である。なお、MMIC2のサイズとパッドの位置関係によっては実施の形態1のバイアス基板4を2枚、横方向に並べて使用することも可能である。
【0039】
実施の形態4.
図12は実施の形態4に係る半導体装置を示す平面図である。
図13は実施の形態4に係るバイアス基板を示す平面図である。パッド6a~6dの平面形状が凹凸形状である。互いに隣接するパッド6b,6cの一方のパッドの凸部が他方のパッドの凹部にはめ込まれるように配置されている。互いに隣接するパッド6a,6dの一方のパッドの凸部が他方のパッドの凹部にはめ込まれるように配置されている。これにより、バイアス基板4のMMIC2側の端部とMIMキャパシタ5a~5dとの距離を短縮することができる。従って、ワイヤ長を短縮し、低周波信号を効果的にショートすることが可能となる。
【0040】
図14は実施の形態4に係るバイアス基板の寸法を示す平面図である。左側のパッド6aに接続されるワイヤの長さは195umとなる。中央のパッド6bに接続されるワイヤの長さは215umとなる。右側のパッド6cに接続されるワイヤの長さは275umとなり、
図7の場合の長さ315umより40um短くなる。表1によるとワイヤ長さ315umの場合、インダクタンス値Lは0.315nH、遮断周波数fcは50.6MHzである。一方、ワイヤ長さ275umの場合、インダクタンス値Lは0.275nH、遮断周波数fcは57.9MHzとなる。従って、本実施の形態の方が高い周波数までショートすることが可能となり、発振のリスクは更に低減されることがわかる。
【0041】
実施の形態5.
図15は実施の形態5に係る半導体装置を示す平面図である。本実施の形態ではMIMキャパシタ5a~5cは互いに異なる容量を持つ。MIMキャパシタ5a~5cの容量値をそれぞれC1,C2,C3とすると、ワイヤの接続方法を選択することで、容量を最大容量C1+C2+C3と最小容量C1×C2×C3/(C1×C2+C2×C3+C1×C3)の間でデジタル的に選択することができる。同一の部品で選択的に容量値を決めることができるため、部品の種類・点数を少なくすることができる。
【0042】
図15ではDCパッド3がパッド6a,6cにワイヤ接続されている。MIMキャパシタ5bの上地電極がMIMキャパシタ5cの接地パッド12にワイヤ接続されている。MIMキャパシタ5a,5bの接地パッド12はGNDにワイヤ接続されている。MIMキャパシタ5aの上地電極とパッド6cがリード接続部8にワイヤ接続されている。
【0043】
図16は実施の形態5に係る半導体装置の等価回路を示す図である。直列に接続された容量C2,C3が、容量C1に並列にGNDに接続されている。これは容量値をC1+C2×C3/(C2+C3)に設定した場合である。なお、本実施の形態ではMIMキャパシタを直列に接続して使用することを想定し、実施の形態1で言及した下地電極9とGNDを接続するビアホール13は設けられていない。
【0044】
また、C1:C2:C3=4:2:1とすることが望ましい。例えばC1,C2,C3をそれぞれ200pF、100pF、50pFとする。
図17は、ワイヤの接続方法の組合せで実現できる容量値を示す図である。ワイヤの接続方法を選択することで、容量を最大容量C1+C2+C3と最小容量C1×C2×C3/(C1×C2+C2×C3+C1×C3)の間でデジタル的に選択することができる。
図15,16のワイヤ接続方法での容量値はC1+C2×C3/(C2+C3)から算出すると約233.33pFとなる。なお、C1、C2、C3が並ぶ順番は入替ってもかまわない。
【0045】
容量値の微調整が必要な場合は、例えば、容量値をC1:C2:C3=3:1.5:1に設定する。容量値の間隔が荒くなってもダイナミックレンジを大きく取りたい場合は、例えば、容量値をC1:C2:C3=6:3:1に設定する。
【0046】
また、性能が異なるMMICを使用する場合又はバイアス条件を変更して使用する場合に容量値を変更したい場合がある。従来技術では異なる部品を使用する必要があったが、容量値を選択できる本実施の形態では同一の部品を使うことができるため、コストを削減することができる。
【0047】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
DCパッドを有するMMICと、
バイアス基板と、
前記バイアス基板の上に実装された複数のMIMキャパシタと、
前記バイアス基板の上に設けられ、前記複数のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続された複数のパッドと、
前記DCパッドを前記複数のパッドの何れかに接続するワイヤとを備え、
前記複数のパッドは、平面視で前記DCパッドと前記複数のMIMキャパシタとの間に配置され、横並びした前記複数のMIMキャパシタの列に対して平行に延びていることを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記複数のMIMキャパシタは、一列に順に配置された第1から第3のMIMキャパシタを有し、
前記複数のパッドは、前記第1から第3のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続された第1から第3のパッドを有し、
前記第1から第3のパッドの各々は、前記第1から第3のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第1のパッドは、前記第1のMIMキャパシタに対向する位置から第3のMIMキャパシタに対向する位置まで延び、
前記第3のパッドは、前記第3のMIMキャパシタに対向する位置から第1のMIMキャパシタに対向する位置まで延び、
前記第2のパッドは、前記第2のMIMキャパシタに対向する位置から分岐して第1のMIMキャパシタに対向する位置と第3のMIMキャパシタに対向する位置までそれぞれ延びていることを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記複数のMIMキャパシタは、前記第1から第3のMIMキャパシタと共に一列に配置された第4のMIMキャパシタを更に有し、
前記複数のパッドは、前記第4のMIMキャパシタの上地電極に接続された第4のパッドを更に有し、
前記第4のパッドは、前記第1から第4のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする付記2又は3に記載の半導体装置。
(付記5)
前記複数のMIMキャパシタは、前記第1から第3のMIMキャパシタの列に対して平行に配置された第4から第6のMIMキャパシタを有し、
前記複数のパッドは、前記第4から第6のMIMキャパシタの上地電極にそれぞれ接続され、平面視で前記DCパッドと前記第1から第3のパッドとの間に配置された第4から第6のパッドを有し、
前記第4から第6のパッドの各々は、前記第1から第3のMIMキャパシタに対向する位置に延在していることを特徴とする付記2又は3に記載の半導体装置。
(付記6)
前記複数のパッドは、互いに隣接する凹凸形状の2つのパッドを有し、一方のパッドの凸部が他方のパッドの凹部にはめ込まれるように配置されていることを特徴とする付記1~5の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記複数のMIMキャパシタは互いに異なる容量を持つことを特徴とする付記1~6の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記第1から第3のMIMキャパシタの容量値をC1,C2,C3として、C1:C2:C3=4:2:1であることを特徴とする付記2又は3に記載の半導体装置。
(付記9)
前記バイアス基板の上に設けられ、前記複数のMIMキャパシタの下地電極にそれぞれ接続された複数の接地パッドを更に備えることを特徴とする付記1~8の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
前記バイアス基板を貫通し、前記複数のMIMキャパシタの下地電極にそれぞれ接続された複数のビアホールを更に備えることを特徴とする付記1~8の何れか1項に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0048】
2 MMIC、3,3a~3c DCパッド、4 バイアス基板、5a~5f MIMキャパシタ、6a~6f パッド、7a~7c ワイヤ、9 下地電極、11 上地電極、12 接地パッド、13 ビアホール