(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法および光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03C 25/6226 20180101AFI20250422BHJP
C03C 25/104 20180101ALI20250422BHJP
C03C 25/12 20060101ALI20250422BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
C03C25/6226
C03C25/104
C03C25/12
G02B6/44 301B
(21)【出願番号】P 2022503368
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007528
(87)【国際公開番号】W WO2021172563
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020030232
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 卓弘
(72)【発明者】
【氏名】相馬 一之
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-131090(JP,A)
【文献】特開2005-162524(JP,A)
【文献】特開平06-293538(JP,A)
【文献】特開2010-117527(JP,A)
【文献】特開2012-025611(JP,A)
【文献】特開2002-087848(JP,A)
【文献】特公平03-061623(JP,B2)
【文献】特開2009-294254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/6226
C03C 25/104
C03C 25/12
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバの周囲に紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造方法であって、
前記ガラスファイバの周囲に紫外線硬化樹脂原料を塗布するステップと、
前記紫外線硬化樹脂原料を塗布した前記ガラスファイバを、紫外線を透過可能な筒状体の内部に通過させるステップと、
光源を用いて紫外線を前記筒状体の外から照射して硬化させ、被覆を形成するステップと、
前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御するステップと、
を含
み、
前記投入電力を制御するステップは、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記投入電力を制御する、光ファイバの製造方法。
【請求項2】
紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、
紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、
前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、
前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、
を備え
、
前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記光源への投入電力を制御する、光ファイバの製造装置。
【請求項3】
紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、
紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、
前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、
前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、
を備え
、
前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とから前記筒状体内における紫外線の照度を求め、求めた前記筒状体内における紫外線の照度に基づいて、前記光源への投入電力を制御する、光ファイバの製造装置。
【請求項4】
前記筒状体内を通過した紫外線の照度を測定する紫外線センサーにガスを吹き付けるガス吹き出し部を備える、
請求項2または請求項3に記載の光ファイバの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの製造方法および光ファイバの製造装置に関する。
本出願は、2020年2月26日出願の日本国特許出願2020-030232号に基づく優先権を主張し、前記出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、石英管を透過した紫外線(以下、石英管の透過光と称する)の照度が一定になるように光源への投入電力を制御する紫外線照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
ガラスファイバの周囲に紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造方法であって、前記ガラスファイバの周囲に紫外線硬化樹脂原料を塗布するステップと、前記紫外線硬化樹脂原料を塗布した前記ガラスファイバを、紫外線を透過可能な筒状体の内部に通過させるステップと、光源を用いて紫外線を前記筒状体の外から照射して硬化させ、被覆を形成するステップと、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御するステップと、を含み、前記投入電力を制御するステップは、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記投入電力を制御する。
【0005】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置は、
紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、を備え、前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記光源への投入電力を制御する。
また、本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置は、紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、を備え、前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とから前記筒状体内における紫外線の照度を求め、求めた前記筒状体内における紫外線の照度に基づいて、前記光源への投入電力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置の概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態における制御装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
光源からの紫外線は、石英管の周壁(詳しくは、光源から見て手前側の周壁)を透過してこの石英管の内部に入り、再び石英管の周壁(詳しくは、光源から見て奥側の周壁)を透過して石英管の外部に出て、石英管の透過光として、石英管の外部に配置されたセンサーで検出される。石英管が曇化していた場合には、石英管の透過光は、手前側の周壁の曇り部分で減衰された後、奥側の周壁の曇り部分でさらに減衰されたものがセンサーで検出されるので、このセンサーでは、石英管の内部における紫外線の照度よりも、奥側の周壁を透過した分だけ小さな値が検出される。
このため、石英管の透過光の照度が一定になるように光源への投入電力を制御した場合には、奥側の周壁を透過してさらに減衰した分を補うために、光源からの紫外線の照度は、石英管の内部で被覆の硬化に本来必要な照度よりも大きくなってしまう。これでは、石英管が曇化するに連れて、石英管の内部における紫外線の照度が次第に高くなり、被覆の硬化度も次第に高くなることから、被覆の硬化度が光ファイバの長手方向で均一にならない。そこで、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にすることが望まれる。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にできる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示に係る光ファイバの製造方法は、(1)ガラスファイバの周囲に紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造方法であって、前記ガラスファイバの周囲に前記紫外線硬化樹脂原料を塗布するステップと、前記紫外線硬化樹脂原料を塗布した前記ガラスファイバを、紫外線を透過可能な筒状体の内部に通過させるステップと、光源を用いて紫外線を前記筒状体の外から照射して硬化させ、被覆を形成するステップと、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御するステップと、を含み、前記投入電力を制御するステップは、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記投入電力を制御する。
光源の紫外線の照度と筒状体を透過した紫外線の照度とを取得し、筒状体内における紫外線の照度が一定となるように、光源への投入電力を制御する。このため、筒状体を透過した紫外線の照度を一定とした場合のような、奥側の周壁を透過した分を補わなくて済む。よって、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にできる。
また、光源の紫外線の照度と筒状体を透過した紫外線の照度との積は、紫外線の照射による被覆の硬化度に相関する特性に相当するので、この積が一定となるように、光源への投入電力を制御すれば、光ファイバの長さ方向における被覆の硬化度の均一化が容易になる。
【0011】
本開示に係る光ファイバの製造装置は、(2)紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、を備え、前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度との積に基づいて、前記光源への投入電力を制御する。
光源の紫外線の照度と筒状体を透過した紫外線の照度とを取得し、筒状体内における紫外線の照度が一定となるように、光源への投入電力を制御する。よって、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にできる。
また、光源の紫外線の照度と筒状体を透過した紫外線の照度との積は、紫外線の照射による被覆の硬化度に相関する特性に相当するので、この積が一定となるように、光源への投入電力を制御すれば、光ファイバの長さ方向における被覆の硬化度の均一化が容易になる。
【0012】
(3)本開示に係る光ファイバの製造装置は、紫外線硬化樹脂を被覆した光ファイバの製造装置であって、紫外線を透過可能に構成され、紫外線硬化樹脂原料を塗布したガラスファイバをその内部に通過させる筒状体と、前記紫外線を前記筒状体の外から前記紫外線硬化樹脂原料に照射する光源を有する紫外線照射炉と、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とに基づいて、前記紫外線硬化樹脂原料が硬化した被覆の硬化度が一定になるように前記光源への投入電力を制御する電力制御部と、を備え、前記電力制御部が、前記光源の紫外線の照度と前記筒状体を透過した紫外線の照度とから前記筒状体内における紫外線の照度を求め、求めた前記筒状体内における紫外線の照度に基づいて、前記光源への投入電力を制御する。
光源の紫外線の照度と筒状体を透過した紫外線の照度とを取得し、筒状体内における紫外線の照度が一定となるように、光源への投入電力を制御する。よって、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にできる。
また、筒状体内における紫外線の照度を求め、この筒状体内における紫外線の照度が一定となるように、光源への投入電力を制御すれば、光ファイバの長さ方向における被覆の硬化度の均一化が容易になる。
(4)本開示の光ファイバの製造装置の一態様では、前記筒状体内を通過した紫外線の照度を測定する紫外線センサーにガスを吹き付けるガス吹き出し部を備える。
紫外線センサーには、ガス吹き出し部からガスが吹き付けられているので、揮発成分の付着を抑制することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る光ファイバの製造方法および光ファイバの製造装置の具体例について説明する。
図1は、光ファイバ製造装置10の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、光ファイバ製造装置10は、最上流位置に、光ファイバ母材Gを加熱して軟化させる線引き炉11を備える。
線引き炉11は、内側に光ファイバ母材Gが供給される円筒状の炉心管12と、この炉心管12を取り囲む発熱体13と、炉心管12内に不活性ガスを供給するガス供給部14とを有している。なお、発熱体13は、抵抗炉でもよいし、誘導炉でもよい。
【0015】
光ファイバ母材Gの上部は母材送りユニットFに把持されており、光ファイバ母材Gは母材送りユニットFにより炉心管12内に送られる。光ファイバ母材Gの下端部分が発熱体13によって加熱されて下方に線引きされると、光ファイバ素線G2の構成部材であるガラスファイバG1が形成される。ガラスファイバG1は、コア部およびクラッド部を有し、標準外径が例えば125μmの光導波路である。
【0016】
光ファイバ製造装置10は、線引き炉11の下流側に冷却ユニット15を備える。冷却ユニット15には、例えばヘリウムガスの冷却ガスが供給されており、光ファイバ母材Gから線引きされたガラスファイバG1は、冷却ユニット15で冷却される。光ファイバ製造装置10は、冷却ユニット15の下流側に外径測定ユニット16を備える。外径測定ユニット16は、例えばレーザ光を用いてガラスファイバG1の外径を測定可能に構成されており、冷却ユニット15で冷却されたガラスファイバG1は、外径測定ユニット16で外径が測定されて、下方に送られる。なお、外径測定ユニット16は、ガラスファイバG1の外径を非接触で測定できれば、レーザ光以外の測定方式であってもよい。
【0017】
光ファイバ製造装置10は、外径測定ユニット16の下流側に紫外線硬化樹脂原料の樹脂塗布装置17と、UV硬化炉1とを備える。なお、UV硬化炉1が、本開示の紫外線照射炉に相当する。樹脂塗布装置17には、例えばガラスファイバ保護用の紫外線硬化樹脂原料が蓄えられている。外径が測定されたガラスファイバG1には、紫外線硬化樹脂原料(例えばウレタンアクリレート樹脂)が樹脂塗布装置17にて塗布され、この紫外線硬化樹脂原料はUV硬化炉1で紫外線が照射されて硬化する。これにより、ガラスファイバG1の周囲に紫外線硬化樹脂による被覆が形成された光ファイバ素線G2となる。
【0018】
なお、ガラスファイバ保護用の紫外線硬化樹脂は、プライマリ(一次)樹脂とセカンダリ(二次)樹脂で構成してもよい。この場合、一次被覆用の樹脂塗布装置と、第1のUV硬化炉が設けられ、この第1のUV硬化炉の下流に、二次被覆用の樹脂塗布装置と、第2のUV硬化炉が設けられる。あるいは、着色用の紫外線硬化樹脂原料を蓄えた樹脂塗布装置を設けておき、光ファイバ素線G2に着色用の紫外線硬化樹脂による被覆を形成した光ファイバ心線であってもよい。このため、光ファイバ素線G2の他、光ファイバ心線も本開示の光ファイバに相当する。
【0019】
光ファイバ製造装置10は、UV硬化炉1の下流側に、直下ローラー18およびガイドローラー19を備える。直下ローラー18は、線引き炉11の直下に配置され、光ファイバ素線G2の走行方向が垂直方向から例えば水平方向へと変更される。直下ローラー18によって走行方向が変更された光ファイバ素線G2は、ガイドローラーに案内されて走行方向が水平方向から例えば斜め上方へと変更される。
【0020】
光ファイバ製造装置10は、ガイドローラー19の下流側に、さらに、引き取り装置20と、ガイドローラー21と、ダンサローラー22と、巻き取り装置23とを備えている。光ファイバ素線G2は、引き取り装置20のキャプスタンで所定の速度で引き取られ、ダンサローラー22を介して巻き取り装置23のボビンBに巻き取られる。
【0021】
図2Aおよび
図2Bは、UV硬化炉1の一例を示す図である。
UV硬化炉1は、筒状の石英管2と、石英管2の外部に配置されたUVバルブ4と、UVバルブ4からの紫外線を光ファイバ素線G2に集光するための反射鏡3とを備える。石英管2は紫外線に対して透光性を有しており、石英管2の中心軸が光ファイバ素線G2の通過位置であるように配置されている。なお、石英管2が本開示の筒状体に相当する。
【0022】
UVバルブ4は、例えばUV-LED(Light Emitting Diode)光源を有し、光ファイバ素線G2に紫外線を照射可能である。なお、UV-LED光源に替えて、水銀蒸気中の放電によって紫外線を放射するようなUVランプでもよい。反射鏡3は、石英管2とUVバルブ4を取り囲むように配置され、UVバルブ4から照射された紫外線は、反射鏡3で反射されて石英管2に照射される。
【0023】
石英管2内には、例えばヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを含むパージガスがダウンフローで供給される。詳しくは、石英管2の上端側はガス供給路に接続されており、流量調節器8で流量調整されたパージガスが、石英管2の上端側から石英管2の内部に供給される。石英管2の下端側はガス排出路に接続されており、石英管2内に供給されたパージガスや、UV硬化炉1の入口5や出口6から石英管2内に入り込んだ空気等の気体が、石英管2の下端側から排出される。
【0024】
石英管2内に酸素が存在すると、紫外線硬化樹脂原料に対する紫外線硬化反応が阻害される。そこで、パージガスの流量を増やすことによって、石英管2内のパージガスの濃度を高くし、石英管2内の酸素濃度を低くしている。なお、石英管2内の酸素濃度は、入口5や出口6に設けたシャッター7の開度を調節したり、排出路に設けた吸引ポンプ9で石英管2内の気体を排気したりすることで、調節されてもよい。また、石英管2の内面には、光触媒コーティング層Cが設けられている。光触媒コーティング層Cは、主に二酸化チタン(TiO2)で構成され、バインダ成分も含まれる。二酸化チタンとバインダ成分を混合したコーティング液が石英管2の内面に塗られており、例えば加熱して石英管2の内面に焼き付けられている。
【0025】
光ファイバ素線G2は、UV硬化炉1の入口5から石英管2の内部に導入される。光ファイバ素線G2は、石英管2の内部を通過し、UV硬化炉1の出口6から石英管2の外部に送出されて直下ローラー18に向かう。UVバルブ4からの紫外線は、石英管2の外から、石英管2の内部を通過している光ファイバ素線G2に照射される。この紫外線の照射により、光ファイバ素線G2の被覆の硬化が進むが、本開示では、石英管2を透過した紫外線の照度を検出しており、制御装置40は、この検出結果に基づいて、被覆の硬化度が一定になるようにUVバルブ4の光源への投入電力を制御している。
【0026】
図3に示すように、紫外線センサー42が、石英管2を挟んでUVバルブ4とは反対側に配置されている。石英管2を透過した紫外線は、反射鏡3に設けられた孔3a(反射鏡3が複数の鏡部で構成される場合、鏡部同士の間隙でもよい)から出て、紫外線センサー42によって検出される。この検出結果は、制御装置40に出力される。制御装置40は、例えば1個あるいは複数個のCPU(Central Processing Unit)等を有し、例えばROM(Read Only Memory)に格納されている各種のプログラムやデータをRAM(Random Access Memory)にロードし、このロードしたRAM内のプログラムを実行する。これにより、光ファイバ製造装置10の動作を制御できる。
【0027】
また、制御装置40は電力制御部41を有する。電力制御部41は、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinと、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutとから、石英管2内における紫外線の照度IFを求め、この求めた紫外線の照度IFに基づいて、光源への投入電力を制御している。なお、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinが、本開示の光源の紫外線の照度に相当する。この紫外線の照度Iinは、光源への投入電力で代用することができるが、モニタしてもよい。モニタする場合は光源と石英管2の中心を結ぶ直線上における、石英管2を透過する前の位置で紫外線の照度を測定する。なお、測定する位置は石英管に近い方が好ましい。
【0028】
石英管2を透過した紫外線は、光源から水平方向(石英管2の径方向と同じ)に沿って同一直線上に透過した光であるとしてモデル化した例を挙げて説明する。この場合、紫外線硬化樹脂原料の揮発成分は、石英管2の内面に均一の厚さで付着したものと仮定する。Lambert-Beerの法則から、石英管2内における紫外線の照度IFは、式1で、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutは、式2でそれぞれ示される。
【0029】
IF=Iine-αl-αglg・・・式1
Iout=IFe-αl-αglg・・・式2
αは石英管2に付着した揮発成分の吸光係数、lは石英管2に付着した揮発成分の厚さ、αgは石英管2の吸光係数、lgは石英管2の厚さである。
これら式1と式2からe-αl-αglgを消去すると、IF=Iin(Iout/IF)となるので、次の式3を得ることができる。
IF=√(Iin×Iout)・・・式3
なお、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutは、紫外線の一部が光ファイバ素線G2により遮られて、紫外線センサー42で測定されるが、光ファイバ素線G2の外径は小さいため、紫外線の一部が遮られることの測定値への影響は小さく、無視してよい。
【0030】
そして、電力制御部41は、被覆の硬化度が所定の範囲内で一定になるようにUVバルブ4の光源への投入電力を制御している。例えば、石英管2内における紫外線の照度IFが小さいと判定された場合、被覆の硬化度が低いため、電力制御部41は、光源への投入電力を増加させる信号をUVバルブ4に出力する。これにより、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinが大きくなるので、石英管2内における紫外線の照度IFを大きくすることができる。
【0031】
このように、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinと石英管2を透過した紫外線の照度Ioutを取得し、石英管2内における紫外線の照度IFが一定となるように、光源への投入電力を制御する。このため、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutを一定とした場合のような、奥側の周壁を透過した分を余分に補うことがない。よって、被覆の硬化度を光ファイバの長さ方向で均一にできる。
【0032】
なお、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutの検出位置は、例えば、石英管2の中央から下端までの間が好ましい。その理由は、石英管の曇化は下端側で悪化しやすいためである。
また、上記実施例では、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinと、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutとの積の平方根から、石英管2内における紫外線の照度IFを求めているが、本開示はこの例に限定されない。例えば、石英管2に向けて照射される紫外線の照度Iinと、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutとを用いた別の関係式に基づいて、光源への投入電力を制御してもよい。
【0033】
あるいは、上記実施例では、石英管2を透過した紫外線の照度Ioutをモニタし、被覆の硬化度が一定になるように光源への投入電力を制御している。しかし、石英管2の例えば下端の開口付近に紫外線センサーを設置しておき、石英管2内における紫外線の照度(光ファイバ素線G2の被覆に直に当たる紫外線の照度)IFをモニタして、被覆の硬化度が一定になるように光源への投入電力を制御することもできる。
【0034】
石英管2内部の照度を求める際の問題点は、揮発成分によりセンサー自体が曇化して正確な測定が難しいことである。そこで、センサー自体にガスを吹き付けて揮発成分の付着を抑制する。酸素による紫外線硬化樹脂原料の硬化阻害を抑制するため、石英管2内は基本的に不活性ガスで満たされている。よって、吹き付けガスは不活性ガスが好ましい。また、付着した揮発成分の酸化分解を狙って酸素含有のガスを吹き付ける変形例も有効である。さらに、センサー自体に光触媒である酸化チタンをコーティングすることも有効である。ガス流量は揮発成分を吹き飛ばす必要があるため、少なくとも5L/min以上が好ましい。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1…UV硬化炉(紫外線照射炉)、2…石英管(筒状体)、3…反射鏡、3a…孔、4…UVバルブ(光源)、5…入口、6…出口、7…シャッター、8…流量調節器、9…吸引ポンプ、10…光ファイバ製造装置、11…線引き炉、12…炉心管、13…発熱体、14…ガス供給部、15…冷却ユニット、16…外径測定ユニット、17…樹脂塗布装置、18…直下ローラー、19、21…ガイドローラー、20…引き取り装置、22…ダンサローラー、23…巻き取り装置、40…制御装置、41…電力制御部、42…紫外線センサー、B…ボビン、C…光触媒コーティング層、F…母材送りユニット、G…光ファイバ母材、G1…ガラスファイバ、G2…光ファイバ素線。