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特許7670168計測装置、光センサ、生体データ計測システム、生体情報推定システム、計測方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】計測装置、光センサ、生体データ計測システム、生体情報推定システム、計測方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20250422BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/0245 200
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023565830
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045471
(87)【国際公開番号】W WO2023105741
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「スーパーバイオイメージャーのモジュール化技術およびデータクリーニング技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩幸
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121420(JP,A)
【文献】特開平11-164826(JP,A)
【文献】特開2005-198828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0360316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/00
A61B 5/1455
A61B 5/16-5/18
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、複数の前記受光素子の全てに対して継続的な本計測に先立つ予備計測を指示する第1計測指示と、複数の前記受光素子のうち選択された前記受光素子に対して前記本計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する計測指示出力手段と、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する受信信号取得手段と、
取得された前記受信信号の時系列データを用いて、生体データである拍動の時系列データ前記受光素子ごとに生成する生体データ生成手段と、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて生成された前記生体データを用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算する計算手段と、
記生体データの前記偏差が閾値を超えた前記受光素子を含む領域を、前記第2計測指示に応じた前記本計測に用いられる計測領域設定する計測領域設定手段と、を備える計測装置。
【請求項2】
前記計測指示出力手段は、
前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子の全てを用いた計測を指示する前記第1計測指示と、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子のうち、前記計測領域の範囲内の前記受光素子を用いた計測を指示する前記第2計測指示とを、前記光センサに出力する請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記計算手段は、
前記受光素子ごとの前記生体データの代表値と、複数の前記受光素子の全ての前記生体データの代表値との差を、前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差として計算し、
前記計測領域設定手段は、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差に応じて計測候補領域を設定し、
前記計測候補領域の範囲内に前記計測領域を設定する請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第2計測指示に応じた第2計測において計測された前記生体データを出力する生体データ出力手段を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の計測装置と、
生体データの計測対象の被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置され、前記被験者の皮膚に向けて光信号を出射する複数の発光器と、
前記基板の前記計測面に配置され、複数の前記発光器から出射された前記光信号の反射光を受光する複数の受光素子が二次元状に配置された受光素子アレイと、
前記計測装置からの計測指示に応じて、複数の前記発光器に前記光信号を出射させ、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子によって受光される前記光信号の反射光に応じた前記受光素子ごとの受信信号を受信し、受信した前記受光素子ごとの前記受信信号を前記計測装置に出力し、前記計測装置からの第2計測指示に応じた第2計測の期間において、前記計測装置によって設定された計測領域の範囲内の前記受光素子による前記受信信号を前記計測装置に出力する制御手段と、を備える光センサ。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の計測装置と、
生体データの計測対象の被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置され、前記被験者の皮膚に向けて光信号を出射する複数の発光器と、前記基板の前記計測面に配置され、複数の前記発光器から出射された前記光信号の反射光を受光する複数の受光素子が二次元状に配置された受光素子アレイと、前記計測装置からの計測指示に応じて、複数の前記発光器に前記光信号を出射させ、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子によって受光される前記光信号の反射光に応じた前記受光素子ごとの受信信号を受信し、受信した前記受光素子ごとの前記受信信号を前記計測装置に出力し、前記計測装置からの第2計測指示に応じた第2計測の期間において、前記計測装置によって設定された計測領域の範囲内の前記受光素子による前記受信信号を前記計測装置に出力する制御手段とを有する光センサと、を備える生体データ計測システム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の計測装置と、
前記計測装置によって計測された被験者の生体データを取得し、取得した前記生体データに基づいて前記被験者の生体情報を推定する推定装置と、を備える生体情報推定システム。
【請求項8】
前記計測装置は、
前記生体データとして前記被験者の脈拍信号を計測し、
前記推定装置は、
前記被験者の前記脈拍信号を用いて前記被験者の脈拍数を推定し、
推定された前記脈拍数に応じた情報を出力する請求項7に記載の生体情報推定システム。
【請求項9】
コンピュータが、
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、複数の前記受光素子の全てに対して継続的な本計測に先立つ予備計測を指示する第1計測指示と、複数の前記受光素子のうち選択された前記受光素子に対して前記本計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力し、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得し、
取得された前記受信信号の時系列データを用いて、生体データである拍動の時系列データ前記受光素子ごとに生成し、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて生成された前記生体データを用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算し、
記生体データの前記偏差が閾値を超えた前記受光素子を含む領域を、前記第2計測指示に応じた前記本計測に用いられる計測領域設定する計測方法。
【請求項10】
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、複数の前記受光素子の全てに対して継続的な本計測に先立つ予備計測を指示する第1計測指示と、複数の前記受光素子のうち選択された前記受光素子に対して前記本計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する処理と、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する処理と、
取得された前記受信信号の時系列データを用いて、生体データである拍動の時系列データ前記受光素子ごとに生成する処理と、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて生成された前記生体データを用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算する処理と、
記生体データの前記偏差が閾値を超えた前記受光素子を含む領域を、前記第2計測指示に応じた前記本計測に用いられる計測領域設定する処理とをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光センサを用いて生体データを計測する計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサを用いて、動脈の拍動波形(脈波形)等の生体データを測定する測定装置が開発されている。脈拍等の生体データには、自律神経の活動が反映される。そのため、生体データを用いて、被験者の感情を推定する技術が開発されている。感情推定を行う場合、生体データを常時計測することが好ましい。
【0003】
非特許文献1には、高解像度のアレイ状センサがフレキシブル基板上に実装された、フレキシブルイメージングデバイスが開示されている。非特許文献1のデバイスは、多結晶シリコン薄膜トランジスタ読み出し回路と、近赤外領域で高感度の有機フォトダイオードとが組み合わされた構造を有する。非特許文献1のデバイスは、被験体の皮膚に貼付されることにより、その被験体の脈拍や静脈像等の生体情報を、高解像度に取得できる。
【0004】
特許文献1には、脈波形を測定する測定装置について開示されている。特許文献1の装置は、光源、検出部、および解析部を備える。光源は、生体の少なくとも一部からなる測定領域に対して、所定の波長帯域に属する少なくとも1種類の測定光を射出する。検出部には、複数のセンサが所定の配置で規則的に配設される。検出部は、光源から射出され、生体を透過した測定光を当該複数のセンサで検出する。解析部は、検出部により検出された検出結果を用いて、検出された測定光の光量の時間変化に基づいて、生体の活動に伴う脈動に関する情報を測定するための測定位置を、測定領域の中から特定する解析処理を行う。
【0005】
特許文献2には、脈拍を検出する脈拍検出装置について開示されている。特許文献2の装置は、発光素子および受光素子を含み、該発光素子からの投射光の被験体による反射光もしくは透過光を受光素子により受光し、その光量の変化により脈拍を検知するセンサを複数個有する脈拍検知器を備える。特許文献2の装置は、脈拍検知器が有する各々のセンサの受光素子が受光する脈拍時における受光量変化の振幅を検出する。特許文献2の装置は、複数個のセンサによる受光量変化の振幅の大きさを比較し、一番振幅が大きいセンサを特定する。特許文献2の装置は、一番振幅が大きいセンサの出力信号を演算することにより、脈拍数を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-121420号公報
【文献】特開平7-299043号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】T. Yokota, et al., “A conformable imager for biometric authentication and vital sign measurement”, Nature Electronics, volume 3, p.p.113-121(2020).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1のように、二次元型光センサを用いれば、一回の計測タイミングにおいて、広範囲の生体データを計測できる。二次元型光センサを構成する受光素子アレイの素子数が多いほど、脈波形を確実に測定できるが、消費電力や通信速度等の都合により、常時計測を実現することは難しい。その一方で、受光素子アレイの素子数が少ないと、体動による計測箇所のずれ等の要因で、測定不能になることがあり、常時計測を実現することは難しい。
【0009】
特許文献1の手法によれば、測定光の光量の時間変化に基づいて、測定領域の中から測定位置を特定することによって、脈波形を精度よく測定できる。特許文献1には、微小領域でのデータの時間変化に着目し、着目する微小領域での脈波形データを算出することが開示されている。また、特許文献1には、事前に予め測定された脈波形を用いて、この予め測定された脈波形と、それぞれの微小領域での脈波形データとの類似度を算出することが開示されている。ドリフトやノイズ等の要因があるため、実際に計測される脈波形データの時系列データの類似度を算出することは、容易ではない。そのため、特許文献1の手法では、測定領域の中から測定位置を適切な特定できず、生体データを常時計測することは難しい。
【0010】
特許文献2の手法では、受光量変化の振幅が最大のセンサを選定し、選定されたセンサの出力信号を用いて脈拍数を求める。そのため、特許文献2の手法は、ドリフトやノイズ等の要因を受けにくい。特許文献2の手法では、受光素子の数が数個程度の場合には、受光量変化の振幅が最大のセンサを特定できる。しかしながら、特許文献2の手法では、受光素子の数が1万画素程度に及ぶと、受光量変化の振幅が最大のセンサを特定することが難しくなるため、生体データを常時計測することは難しい。
【0011】
本開示の目的は、光センサを用いた生体データの常時計測を実現できる計測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様の計測装置は、複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する計測指示出力部と、計測指示に応じて複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する受信信号取得部と、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成する生体データ生成部と、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて生成された生体データを用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算する計算部と、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する計測領域設定部と、を備える。
【0013】
本開示の一態様の計測方法においては、複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力し、計測指示に応じて複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得し、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成し、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて生成された生体データを用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算し、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。
【0014】
本開示の一態様のプログラムは、複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する処理と、計測指示に応じて複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する処理と、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成する処理と、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて生成された生体データを用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算する処理と、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、光センサを用いた生体データの常時計測を実現できる計測装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る生体データ計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの計測面の一例を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの構成の一例を示す断面図である。
図4】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサによる光信号の出射と受光の位置例について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの受光素子アレイによって受光される反射光の一例について説明するためのグラフである。
図6】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの構成の一例を示すブロック図である。
図7】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの受光素子アレイを構成する受光素子ごとに計測される生体データの時系列データの一例である。
図9】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置による計測チャネル設定処理について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置による計測チャネル設定処理について説明するための概念図である。
図11】第1の実施形態に係る生体データ計測システムの計測装置によって算出された偏差が、複数の受光素子に関するチャネル偏差の標準偏差と比べて大きな受光素子の位置を、受光素子アレイの受光面に対応付けてマッピングしたヒートマップである。
図12】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置によって選択された計測チャネルの一例について説明するための概念図である。
図13】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置によって計測された生体データ(脈拍数)を画面に表示させる一例を示す概念図である。
図14】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置によって計測された生体データの時系列データを画面に表示させる一例を示す概念図である。
図15】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図16】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置による計測チャネル設定処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図17】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える計測装置による計測チャネル設定処理の別の一例について説明するためのフローチャートである。
図18】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図19】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサによる第1計測処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図20】第1の実施形態に係る生体データ計測システムが備える光センサによる第2計測処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図21】第2の実施形態に係る光センサの構成の一例を示すブロック図である。
図22】第2の実施形態に係る光センサの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図23】第3の実施形態に係る生体情報推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
図24】第3の実施形態に係る生体情報推定システムの推定装置が脈拍信号に基づいて推定する感情について説明するための概念図である。
図25】第3の実施形態に係る生体情報推定システムの推定装置による感情の推定に用いられる推定モデルを生成するための学習の一例について説明するための概念図である。
図26】第3の実施形態に係る生体情報推定システムの推定装置による感情の推定の一例について説明するための概念図である。
図27】第3の実施形態に係る生体情報推定システムの推定装置が推定した被験者の感情に関する情報を、端末装置の画面に表示させる一例を示す概念図である。
図28】第4の実施形態に係る計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図29】各実施形態の制御や処理を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る生体データ計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の生体データ計測システムは、被験者の皮膚に貼付された光センサによって検出される受光信号に応じて、動脈の拍動(脈拍)を計測する。以下においては、生体データとして脈拍を計測する例について説明する。本実施形態の手法は、光センサを用いた計測であれば、脈拍以外の生体データの計測にも適用できる。
【0019】
(構成)
図1は、本実施形態に係る生体データ計測システム1の構成の一例を示すブロック図である。生体データ計測システム1は、光センサ10と計測装置16を備える。光センサ10は、被験者の人体に貼付される。計測装置16は、被験者の携帯する携帯端末(図示しない)に実装される。計測装置16は、被験者の携帯する携帯端末を介して接続可能なクラウドやサーバに構築されてもよい。
【0020】
光センサ10は、複数の受光素子がアレイ状に配列された受光素子アレイを含む。光センサ10は、被験者の皮膚上から光を照射し、その光の反射光を受光する。計測装置16は、被験者の皮膚に貼付された光センサ10によって計測さえる受光信号に応じて、動脈の拍動(脈拍)を計測する。計測装置16は、受光した反射光の強度変化に応じて、その被験者の脈拍を計測する。以下において、光センサ10と計測装置16について個別に説明する。
【0021】
〔光センサ〕
図2図3は、光センサ10の構成の一例を示す概念図である。図2は、光センサ10を計測面側から見た図である。図3は、図2のA-A切断線で光センサ10を切断した断面図である。光センサ10は、複数の発光器11、受光素子アレイ12、および制御部13を有する。
【0022】
複数の発光器11、受光素子アレイ12、および制御部13は、基板110の面上に配置される。複数の発光器11と受光素子アレイ12は、基板110の第1面(計測面とも呼ぶ)に形成される。複数の発光器11と受光素子アレイ12の周囲には、被験者の皮膚に光センサ10を貼付するための粘着層111が設置される。光センサ10は、被験者の皮膚に貼付された状態で、基板110の計測面の側に外部からの光が進入しないように、皮膚に貼付される。図3には、計測面の対向面に制御部13が配置される例を示す。制御部13が配置される位置は、計測面の対向面に限定されない。例えば、制御部13は、基板110の内部や、複数の発光器11および受光素子アレイ12から離れた位置に配置されてもよい。
【0023】
発光器11は、脈拍の計測に用いられる光を出射する出射面を有する。脈拍計測時において発光器11が出射する光を、光信号とも呼ぶ。複数の発光器11は、それらの出射面を同じ向きに向けて配列される。複数の発光器11の出射面と、受光素子アレイ12の受光面とは、同じ向きに向けて配置される。発光器11の出射面は、光センサ10が被験者の皮膚に貼付された状態で、その被験者の皮膚に向けられる。
【0024】
図2には、受光素子アレイ12の4辺に沿って、12個の発光器11が配置される例を示す。発光器11の数は、12個に限定されない。また、発光器11が配置される位置は、受光素子アレイ12の4辺に沿って配置されなくてもよい。発光器11から出射された光信号が受光素子アレイ12によって受光可能であれば、発光器11の配置される位置には限定を加えない。
【0025】
発光器11は、制御部13の制御に応じて、脈拍を計測可能な波長帯の光信号を出射する。例えば、発光器11は、LED(Light Emitting Diode)によって実現される。例えば、発光器11は、緑色の波長帯の光信号を出射する。脈拍の計測であれば、緑色の波長帯の光信号が好適である。例えば、発光器11は、近赤外線の波長帯の光信号を出射する。静脈全体を計測する場合は、例えば1.1マイクロメートル程度の近赤外線が好適である。例えば、複数の発光器11が赤色の波長帯と赤外の波長帯を出射できれば、それらの吸光度の違いに応じて、動脈血中酸素飽和度を計測できる。発光器11が出射する光信号の波長帯は、生体データを計測可能な波長帯であれば、特に限定されない。複数の発光器11の光出力は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数の発光器11の光出力は、一定であってもよいし、調整可能であってもよい。複数の発光器11の光出力が調整可能であれば、発光器11ごとに光出力を調整できる。
【0026】
受光素子アレイ12は、発光器11から出射された光信号の反射光を受光する受光面を有する。反射光は、発光器11から出射された光信号のうち、被験者の皮膚下(体内)で反射/散乱されて、受光素子アレイ12の受光面に到達した光成分である。受光素子アレイ12の受光面には、複数の受光素子が二次元アレイ状に配列される。例えば、受光素子アレイ12の受光面には、一万個程度の受光素子が二次元アレイ状に配列される。二次元アレイ状に配列された複数の受光素子の各々によって受光された反射光の光強度は、それらの受光素子の位置(アドレス)に対応付けられて、計測される。
【0027】
例えば、受光素子アレイ12は、非特許文献1に開示されたシート型イメージセンサによって実現できる(非特許文献1:T. Yokota, et al., “A conformable imager for biometric authentication and vital sign measurement”, Nature Electronics, volume 3, p.p.113-121(2020))。非特許文献1のシート型イメージセンサは、有機フォ
トダイオード、薄膜トランジスタ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)、および光検出器を組み合わせた構成を有する。本実施形態においては、発光器11
と受光素子アレイ12を別々の構成としているが、非特許文献1のシート型イメージセンサのように、発光器11と受光素子アレイ12が一体化されてもよい。
【0028】
図4は、発光器11から出射された光信号が、被験者の皮膚下(体内)で反射/散乱される様子を示す概念図である。複数の発光器11の各々から出射された光信号の反射光は、異なる経路を経て、受光素子アレイ12によって受光される。複数の発光器11から出射された光信号は、皮膚や血管、筋肉、脂肪、骨などの身体構成組織による光の吸収特性や散乱特性に応じて、光強度が変化する。そのため、受光素子によって受光される反射光の光強度は、光信号/反射光の経路の長さや、皮膚下の環境、被験者の体動に応じて、変動する。本実施形態では、被験者の皮膚上から体内に向けて、発光器11から光信号を出射し、その光信号の反射光に応じて、その被験者の脈拍を計測する。例えば、本実施形態では、脈動による体内の血液容積の変動を、吸光度の変化(光強度変化とも呼ぶ)として計測する。
【0029】
図5は、受光素子アレイ12によって受光される反射光の一例について説明するためのグラフである。反射光には、変動成分と不動成分とが含まれる。変動成分は、AC(Alternating Current)成分とも呼ばれる。AC成分は、脈動によって変動する。不動成分は
、DC(Direct Current)成分とも呼ばれる。DC成分は、脈動によってほとんど変動しない。脈拍は、AC成分の変動に応じた反射光の光強度変化に基づいて、計測される。本実施形態では、AC成分の変動を脈動として計測する。
【0030】
制御部13は、複数の発光器11を制御する。例えば、制御部13は、マイクロコンピュータ(マイコンとも呼ぶ)やマイクロコントローラによって実現される。例えば、制御部13は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、R
OM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。制御部13は、予め記憶されたプログラムに応じた制御や処理を実行する。制御部13は、予め設定されたスケジュールや、外部からの指示等に応じて、プログラムに応じた制御や処理を実行する。
【0031】
図6は、光センサ10の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部13は、計測指示取得部131、発光制御部132、記憶部133、信号取得部134、および信号出力部135を有する。
【0032】
計測指示取得部131は、計測装置16から計測指示を取得する。計測指示取得部131は、予備計測を行う指示(第1計測指示とも呼ぶ)を、計測装置16から取得する。第1計測指示は、受光素子アレイ12の全ての受光素子で、一定期間の予備計測を行う指示である。計測指示取得部131は、取得した第1計測指示を、発光制御部132および信号取得部134に出力する。また、計測指示取得部131は、後述する計測チャネルにおける計測を行う指示(第2計測指示とも呼ぶ)を、計測装置16から取得する。第2計測指示は、受光素子アレイ12の受光素子のうち、選択された計測チャネルにおいて、継続的な本計測を行う指示である。選択された計測チャネルは、計測領域を形成する。計測指示取得部131は、取得した第2計測指示を発光制御部132および信号取得部134に出力する。
【0033】
発光制御部132は、計測装置16による計測指示を、計測指示取得部131から取得する。発光制御部132は、予備計測を行う第1計測指示を、計測指示取得部131から取得する。発光制御部132は、第1計測指示に応じて、複数の発光器11を発光させる制御を行う。発光制御部132は、記憶部133に記憶された、第1計測指示に応じた制御方式で、複数の発光器11を制御する。また、発光制御部132は、継続的な計測(本計測)を行う第2計測指示を、計測指示取得部131から取得する。発光制御部132は、第2計測指示に応じて、複数の発光器11を発光させる制御を行う。発光制御部132は、記憶部133に記憶された、第2計測指示に応じた制御方式で、複数の発光器11を制御する。例えば、発光制御部132は、第1計測指示および第2計測指示に応じて、複数の発光器11の全てを、同様に制御する。例えば、発光制御部132は、第1計測指示および第2計測指示に応じて、複数の発光器11の各々を、異なるパターンで制御してもよい。発光制御部132による複数の発光器11の制御方式には、特に限定を加えない。
【0034】
記憶部133は、複数の発光器11を発光させる制御方式が記憶される。記憶部133に記憶された制御方式は、発光制御部132によって参照される。記憶部133に記憶された制御方式には、特に限定を加えない。
【0035】
信号取得部134は、計測装置16による計測指示を、計測指示取得部131から取得する。信号取得部134は、予備計測を行う第1計測指示を、計測指示取得部131から取得する。信号取得部134は、第1計測指示に応じて、受光素子アレイ12を構成する全ての受光素子によって受光された反射光に応じた受光信号を取得する。信号取得部134は、全ての受光素子の受光信号を、信号出力部135に出力する。また、信号取得部134は、継続的な計測(本計測)を行う第2計測指示を、計測指示取得部131から取得する。信号取得部134は、第2計測指示に応じて、計測装置16によって選択された計測チャネルに設定された受光素子によって受光された反射光に応じた受光信号を取得する。信号取得部134は、計測チャネルに設定された受光素子の受光信号を、信号出力部135に出力する。
【0036】
信号出力部135は、信号取得部134から受信信号を取得する。信号出力部135は、取得した受信信号を計測装置16に出力する。例えば、信号出力部135は、受光素子アレイ12から取得した受信信号を、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶させておき、所定期間における受信信号を一括で計測装置16に送信してもよい。
【0037】
基板110は、折り曲げ可能な基板である。基板110は、折り曲げ可能な板状の形状を有する。例えば、基板110は、ポリイミド製の基層の表面に、銅箔などの導電層が形成され、プラスチックフィルムの被覆層で導電層がラミネートされた構造を有する。例えば、基板110の基層や被覆層は、ウレタン不織布や塩化ビニル、伸縮性綿布、スポンジシート、ウレタンフィルム、オレフィンフィルムを主成分としてもよい。基板110に実装される発光器11や受光素子アレイ12、制御部13は、基板110の変形に応じて、変形するように構成されてもよいし、変形できないように構成されてもよい。
【0038】
基板110の計測面(第1面とも呼ぶ)には、複数の発光器11と受光素子アレイ12が配置される。基板110の計測面における周辺部分には、粘着層111が形成される。粘着層111が形成される部分は、その他の部分とは異なる材質や構造であってもよい。例えば、粘着層111が形成される部分をメッシュ状の構造にすれば、粘着層111の部分が蒸れにくくなり、汗などに起因する粘着層111の粘着力の低下を抑制できる。基板110の計測面に対向する第2面には、制御部13が配置される。制御部13は、基板110の内部に配置されてもよい。例えば、防水性を向上させるために、基板110の内部に制御部13が配置されてもよい。例えば、防水性を向上させるために、防水性のフィルム等で制御部13が被覆されてもよい。例えば、光センサ10が被験者の体に貼付される際に、基板110は、貼付される部分の形状に応じて変形する。基板110の材料や構造、形状には、特に限定を加えない。
【0039】
粘着層111は、基板110の計測面における周辺部分に形成される。粘着層111は、光センサ10を被験者の体に貼付するための粘着剤を含む。例えば、粘着層111は、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤を含む。粘着層111は、外部からの光が発光器11や受光素子アレイ12に及ばないように、遮光性を有することが好ましい。粘着層111の材料には、特に限定を加えない。例えば、粘着層111には、皮膚に対する刺激が少ない材料方を用いる方がよい。例えば、粘着層111には、皮膚に対する不快感を軽減する物質が含有されていてもよい。例えば、粘着層111には、メントールなどが含有されてもよい。例えば、粘着層111には、汗等の水分の吸収による粘着力の低下を抑制する物質が、含有されていてもよい。例えば、粘着層111には、高分子吸収体などが含有されてもよい。本実施形態においては、粘着層111によって光センサ10を被験者の体に装着する例を示すが、光センサ10は、バンド(図示しない)などによって被験者の体に装着されてもよい。
【0040】
〔計測装置〕
図7は、計測装置16の機能構成の一例を示すブロック図である。計測装置16は、計測指示出力部161、受信信号取得部162、生体データ生成部163、計算部164、計測領域設定部165、および生体データ出力部166を有する。

【0041】
計測指示出力部161は、計測装置16が起動すると、継続的な本計測に先立って、予備計測を行う第1計測指示を光センサ10に出力する。第1計測指示は、受光素子アレイ12の全ての受光素子で、一定期間の予備計測を行う指示である。また、計測指示出力部161は、計測領域設定部165によって選択された計測チャネルのアドレスを取得する。計測指示出力部161は、選択された計測チャネルにおける計測を行う第2計測指示を光センサ10に出力する。第2計測指示は、受光素子アレイ12の受光素子のうち、選択された計測チャネルにおいて、継続的な本計測を行う指示である。
【0042】
また、計測指示出力部161は、予め決められた更新タイミングにおいて、計測チャネルを更新するために、第1計測指示を光センサ10に出力する。例えば、計測指示出力部161は、計測中の計測チャネルを含む領域に関して、第1計測指示を行う指示を、光センサ10に出力してもよい。また、計測指示出力部161は、本計測を行っている最中に、生体データの値や変動に応じて、計測チャネルを更新してもよい。
【0043】
受信信号取得部162は、計測指示出力部161の計測指示に応じた受信信号を、光センサ10から取得する。第1計測指示に応じた受信信号は、光センサ10の受光素子アレイ12を構成する全ての受光素子からの信号である。第2計測指示に応じた受信信号は、光センサ10の受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子のうち、計測チャネルに設定された受光素子からの信号である。受信信号取得部162は、取得した受信信号を生体データ生成部163に出力する。例えば、受信信号取得部162は、受光素子アレイ12から取得した受信信号をフラッシュメモリ(図示しない)に記憶させてもよい。
【0044】
生体データ生成部163は、計測指示出力部161の計測指示に応じた受信信号を、受信信号取得部162から取得する。生体データ生成部163は、取得した受信信号を用いて、生体データを生成する。例えば、生体データ生成部163は、取得した受信信号の時系列データを用いて、脈拍データを生成する。生体データ生成部163によって生成される生体データについては、特に限定を加えない。
【0045】
生体データ生成部163は、第1計測指示に応じた受信信号を用いて生成した生体データを、計算部164に出力する。一方、生体データ生成部163は、第2計測指示に応じた受信信号を用いて生成した生体データを、生体データ出力部166に出力する。例えば、予め決められた検証タイミングにおいて、生体データ生成部163は、第2計測指示に応じた受信信号を用いて生成した生体データを、計算部164に出力してもよい。検証タイミングにおいて計算部164に出力された生体データは、選択中の計測チャネルの検証に用いられる。例えば、生体データ生成部163は、生成した生体信号をフラッシュメモリ(図示しない)に記憶させてもよい。
【0046】
図8は、チャネルごとの計測値(振幅)に基づいて生成された生体データ(拍動)の時系列データの一例である。図8の生体データ(拍動)の時系列データには、数回の拍動が含まれる。例えば、各拍動の最大値と最小値の差分が、そのチャネルの代表値である。図8のように、チャネルごとの計測値に基づく生体データには、ドリフトやノイズが含まれる。そのため、チャネルごとの平均値では、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)の計測値を比較することは難しい。本実施形態では、チャネルごとの計測値の偏差を用いることで、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)の計測値を比較しやすくする。また、受光素子アレイ12の受光面の面内で漏れなく生体データを計測すると、全ての受光素子の計測値が必要になる。例えば、受光素子アレイ12の受光素子が120×160画素である場合、全ての受光素子の計測値を用いることは、通信速度等の制約で難しい。例えば、生体データを感情推定に用いる場合、100Hz(ヘルツ)程度の分解能が求められる、1万画素分の生体データをリアルタイムで収集することは難しい。本実施形態では、受光素子アレイ12を構成する受光素子のうち、生体データの計測に用いられる受光素子を選択するため、計算や通信の負荷を軽減できる。
【0047】
計算部164は、第1計測指示に応じて受信された受信信号に基づく生体データを用いて、本計測を行うチャネルを選択する。計算部164は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)の全てについて、チャネルごとに、生体データの振幅の代表値を計算する。例えば、計算部164は、チャネルごとの代表値として、生体データの振幅の最大値を計算する。また、計算部164は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を計算する。計算部164は、受光素子(チャネル)ごとの代表値から、複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を引いた偏差(チャネル偏差とも呼ぶ)を、チャネルごとに計算する。計算部164は、チャネルごとに算出したチャネル偏差を、計測領域設定部165に出力する。
【0048】
例えば、受光素子アレイ12の受光素子の数をmとすると、計算部164は、下記の式1を用いて、チャネルmのチャネル偏差Dmを計算できる(mは自然数)。
m=Mm-A・・・(1)
上記の式1において、Mmは、チャネルmにおける生体データ(振幅)の最大値である。
Aは、複数の受光素子(チャネル)に関する生体データ(振幅)の最大値の平均値である。
【0049】
図9は、受光素子アレイ12を構成する受光素子(チャネルCh)ごとに、代表値から平均値を引いたチャネル偏差を計算する一例について説明するための概念図である。図9は、受光素子アレイ12の受光面に対応する画素イメージ121である。図9の例は、左上の受光素子(チャネル)によって受信された受信信号に基づく生体データに関して、チャネル偏差を計算する様子を示す。チャネル偏差は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)に関して、一括して計算されてもよい。図9の例の場合、計算部164は、複数の受光素子(チャネル)の全てに関して、チャネル偏差を計算する。例えば、計算部164は、受光素子アレイ12を構成する全ての受光素子(チャネル)ではなく、範囲を絞って、チャネル偏差を計算してもよい。
【0050】
計算部164は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)による計測値の偏差を、単一のチャネルごとではなく、複数のチャネルごとに計算してもよい。例えば、制御部13は、2×2の4個のチャネルからなる領域(計算領域とも呼ぶ)を設定し、その計算領域ごとに計測値の偏差を計算してもよい。例えば、制御部13は、計算領域に含まれる受光素子(チャネル)による計測値の代表値の平均値から、複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を引いた値を、計算領域の偏差(領域偏差とも呼ぶ)として計算する。計算部164は、計算領域ごとに算出した領域偏差を、計測領域設定部165に出力する。
【0051】
計算領域の配列は、2×2のみならず、任意に設定できる。例えば、計算領域に含まれるチャネルの数や配列は、予め設定される。計算領域に含まれるチャネルの数や配列は、後述する計測候補領域に含まれるチャネルの選択状況に応じて、自動的に設定されてもよい。例えば、計算部164は、計測候補領域に含まれるチャネルの数に応じて、計算領域に含まれるチャネルの数や配列を変更する。
【0052】
図10は、2×2の4個の受光素子からなる計算領域Rcごとに、代表値から平均値を
引いた領域偏差を計算する一例について説明するための概念図である。図10は、受光素子アレイ12の受光面に対応する画素イメージ122である。図10の例は、左上の計算領域Rcに含まれる複数の受光素子(チャネル)によって受信された受信信号に基づく生
体データに関して、領域偏差を計算する様子を示す。領域偏差は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)に設定された複数の計算領域Rcに関して、一括し
て計算されてもよい。図10の例の場合、計算部164は、複数の計算領域Rcの全てに
関して、領域偏差を計算する。例えば、計算部164は、受光素子アレイ12を構成する複数の受光素子(チャネル)の全てに設定された複数の計算領域Rcではなく、範囲を絞
って、領域偏差を計算してもよい。計算部164は、2×2の4個の受光素子のみならず、任意の数の受光素子に関して、計算領域Rcを設定してもよい。例えば、複数の受光素
子(チャネル)は、複数の計算領域Rcによって共有されてもよい。
【0053】
また、計算部164は、複数の受光素子(チャネル)に関して算出されたチャネル偏差の標準偏差を計算する。計算部164は、算出された複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差を、計測領域設定部165に出力する。
【0054】
計測領域設定部165は、チャネルごとに算出されたチャネル偏差や、計算領域ごとに算出された領域偏差、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差を、計算部164から取得する。計測領域設定部165は、チャネル偏差や領域偏差に基づいて、生体データの本計測に用いられるチャネル(計測チャネルとも呼ぶ)を選択する。例えば、計測領域設定部165は、チャネル偏差や領域偏差などの偏差が所定の閾値を越えるチャネルの領域を、計測候補領域に設定する。例えば、計測領域設定部165は、チャネル偏差や領域偏差などの偏差と、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差との比較結果に基づいて、計測チャネルを選択する。例えば、計測領域設定部165は、チャネル偏差や領域偏差などの偏差が、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差が1.5倍以上の受光素子(チャネル)を、計測候補領域に設定する。計測領域設定部165は、計測候補領域に設定された受光素子(チャネル)の中から、計測チャネルを選択する。計測領域設定部165は、選択された計測チャネルを計測領域に設定する。
【0055】
図11は、計測装置16によって算出された偏差が、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差と比べて大きな受光素子(チャネル)の位置を、受光素子アレイ12の受光面に対応付けてマッピングしたヒートマップである。図11は、受光素子アレイ12の受光面に対応する画素イメージ123である。図11の例では、計測装置16によって算出された偏差の大きさに応じたハッチングを示す。実用上は、偏差の大きさを、色分けして表示させてもよい。領域R1は、領域偏差が標準偏差の1.5倍以上であるチャネルの領域である。領域R1は、計測候補領域に設定される。領域R2は、領域偏差が標準偏差の0.5倍以上であるチャネルの領域である。領域R3は、計算領域の領域偏差が標準偏差の0.5倍未満であり、かつ計算領域の内部における振幅の総和が0よりも大きいチャネルの領域である。領域R3は、検出された人体の範囲に相当する。例えば、領域R3の外縁部分を異なるハッチングや色で表示させ、検出された人体の範囲を明示させてもよい。例えば、図11のヒートマップは、端末装置(図示しない)の画面に表示されてもよい。例えば、光センサ10を装着する被験者は、画面に表示されたヒートマップを参照すれば、光センサ10を装着する位置を調整できる。
【0056】
図12は、計測候補領域に設定された領域R1から選択された計測領域RMの一例につ
いて説明するための概念図である。図12は、受光素子アレイ12の受光面に対応する画素イメージ124である。計測領域RMは、計測候補領域に設定された領域R1の範囲内
のチャネルから選択される。図12のように、計測領域RMに含まれる計測チャネルの数
は、画素イメージ124に含まれるチャネルの総数と比較して、大幅に少ない。そのため、本実施形態によれば、生体データの計測における、受信信号の受信や、受信信号の通信、生体データの計算等に掛かる負荷を、大幅に軽減できる。
【0057】
生体データ出力部166は、第2計測指示に応じた生体データを、生体データ生成部163から取得する。生体データ出力部166は、取得した生体データを出力する。例えば、生体データ出力部166は、複数の受光素子によって受信された受光信号に基づいて生成された生体データの代表値を、生体データとして出力する。例えば、生体データ出力部166は、複数の受光素子によって受信された受光信号に基づいて生成された生体データの平均値を、生体データとして出力する。生体データ出力部166は、ケーブルなどの有線を介して生体データを出力してもよいし、無線通信を介して生体データを出力してもよい。例えば、生体データ出力部166は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、生体データを出力するように構成される。生体データ出力部166の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。生体データの出力先や用途については、特に限定を加えない。例えば、生体データ出力部166は、画面を有する専用の端末装置(図示しない)に生体データを出力する。例えば、生体データ出力部166は、ユーザの携帯するスマートフォンやタブレットなどの携帯端末(図示しない)に生体データを出力する。例えば、生体データ出力部166は、サーバやクラウドに構築された外部システム(図示しない)に生体データを出力する。
【0058】
図13は、計測装置16から出力された生体データに応じて計測される脈拍数を、端末装置100の画面に表示させる例である。脈拍数は、単位時間当たりの脈動(脈拍)の回数に相当する。ここでは、一分間における脈動の回数を脈拍数と定義する。画面に表示された脈拍数を視認したユーザは、被験者の脈拍数を確認できる。例えば、脈拍数に応じて、被験者の身体状態等について検証できる。脈拍は、心臓の拍動(心拍)に由来する。そのため、脈拍数は、心拍数に相当する。被験者の脈拍数をリアルタイムで計測/表示できれば、その被験者の身体状態をリアルタイムで正確にモニターできる。例えば、運動時心拍数と安静時心拍数の値に応じて、被験者の主観的運動強度を定量化することもできる。定量化された主観的運動強度や、主観的運動強度に応じた疲労度を、端末装置100の画面に表示させてもよい。
【0059】
図10は、計測装置16から出力された生体データ(脈拍)の時系列データの波形を、端末装置100の画面に表示させる例である。計測装置16は、領域偏差の大きな計測チャネルによって受信された受信信号を用いて、生体データを生成する。そのため、計測装置16から出力された生体データ(脈拍)の時系列データの波形は、図10のように、ドリフトやノイズが少なく滑らかである。画面に表示された波形を視認したユーザは、被験者の脈拍の状態を確認できる。例えば、脈拍の強度や間隔、時間変化に基づいて、被験者の身体や健康、精神、感情等の状態について検証できる。
【0060】
(動作)
次に、本実施形態の生体データ計測システム1の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、生体データ計測システム1を構成する光センサ10と計測装置16について、個別に説明する。
【0061】
〔計測装置〕
図15は、計測装置16の動作の一例について説明するためのフローチャートである。図15のフローチャートに沿った処理においては、計測装置16を動作主体として説明する。
【0062】
図15において、まず、計測装置16は、第1計測指示を光センサ10に出力する(ステップS11)。
【0063】
次に、計測装置16は、計測チャネル設定処理を実行する(ステップS12)。計測チャネル設定処理は、第1計測指示に応じて受信された受信信号に基づく生体データの値に応じて、本計測に用いられるチャネルを設定する処理である。計測チャネル設定処理の詳細については、後述する。
【0064】
次に、計測装置16は、光センサ10から受光信号を取得する(ステップS13)。この段階で光センサ10から取得する受信信号は、第2計測指示に応じた本計測によって計測された信号である。
【0065】
次に、計測装置16は、取得した受光信号に応じた生体データを生成する(ステップS14)。
【0066】
次に、計測装置16は、生成された生体データを出力する(ステップS15)。
【0067】
計測チャネルの更新タイミングの場合(ステップS16でYes)、ステップS11に戻る。更新タイミングにおいて、計測装置16は、計測チャネルを含む領域に絞って、第1計測処理を実行する第1計測指示を、光センサ10に出力してもよい。
【0068】
ステップS15の次に、計測チャネルの更新タイミングではない場合(ステップS16でNo)、計測を継続するのであれば(ステップS17でYes)、ステップS13に戻る。一方、計測を終了する場合(ステップS17でNo)、図15のフローチャートに沿った処理は終了である。計測の継続/終了に関しては、予め設定されたタイミングや、計測値が計測されなくなったタイミングなどに応じて判定されればよい。
【0069】
<チャネルごとの計測チャネル設定処理>
次に、計測装置16による、チャネルごとの計測チャネル設定処理について、図面を参照しながら説明する。図16は、チャネルごとの計測チャネル設定処理について説明するためのフローチャートである。
【0070】
図16において、まず、計測装置16は、第1計測指示に応じた光センサ10によって計測された生体データを取得する(ステップS111)。
【0071】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12のチャネルごとに、生体データの代表値を計算する(ステップS112)。例えば、計測装置16は、チャネルごとに、生体データの最大値を計算する。
【0072】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12の全てのチャネルに関する生体データの代表値の平均値を計算する(ステップS113)。
【0073】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12を構成するチャネルごとの生体データの代表値から、全てのチャネルに関する生体データの代表値の平均値を引いて、チャネルごとのチャネル偏差を計算する(ステップS114)。
【0074】
次に、計測装置16は、偏差が閾値を越える計測候補領域を設定する(ステップS115)。
【0075】
次に、計測装置16は、計測候補領域に含まれるチャネルから、少なくとも一つの計測チャネルを選択する(ステップS116)。言い換えると、計測装置16は、計測候補領域の範囲内に計測領域を設定する。
【0076】
次に、計測装置16は、選択された計測チャネルを用いる第2計測指示を、光センサ10に出力する(ステップS117)。
【0077】
<計算領域ごとの計測チャネル設定処理>
次に、計測装置16による、計算領域ごとの計測チャネル設定処理について、図面を参照しながら説明する。図17は、計算領域ごとの計測チャネル設定処理について説明するためのフローチャートである。
【0078】
図17において、まず、計測装置16は、第1計測指示に応じた光センサ10によって計測された生体データを取得する(ステップS121)。
【0079】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12の計算領域ごとに、生体データの代表値を計算する(ステップS122)。例えば、計測装置16は、計算領域ごとに、生体データの最大値を計算する。
【0080】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12の全ての計算領域に関する生体データの代表値の平均値を計算する(ステップS123)。
【0081】
次に、計測装置16は、全ての受光素子に関するチャネル偏差の標準偏差を計算する(ステップS124)。
【0082】
次に、計測装置16は、受光素子アレイ12に設定された計算領域ごとの生体データの代表値から、全ての計算領域に関する生体データの代表値の平均値を引いて、計算領域ごとの領域偏差を計算する(ステップS125)。
【0083】
次に、計測装置16は、領域偏差と標準偏差との比較結果に応じて、計測候補領域を設定する(ステップS126)。例えば、計測装置16は、領域偏差が標準偏差よりも1.5倍以上の選択領域を、計測候補領域として選択する。
【0084】
次に、計測装置16は、計測候補領域に含まれるチャネルから、少なくとも一つの計測チャネルを選択する(ステップS127)。言い換えると、計測装置16は、計測候補領域の範囲内に計測領域を設定する。
【0085】
次に、計測装置16は、選択された計測チャネルを用いる第2計測指示を、光センサ10に出力する(ステップS128)。
【0086】
〔光センサ〕
図18は、光センサ10の動作の一例について説明するためのフローチャートである。図18のフローチャートに沿った処理においては、光センサ10を動作主体として説明する。
【0087】
図18において、まず、光センサ10は、第1計測指示を取得すると(ステップS131でYes)、第1計測処理を実行する(ステップS132)。第1計測処理の詳細については、後述する。一方、第1計測指示を取得していない場合(ステップS131でNo)、光センサ10は、第1計測指示を取得するまで待機する。
【0088】
ステップS132の後、第2計測指示を取得すると(ステップS133でYes)、光センサ10は、第2計測処理を実行する(ステップS134)。第2計測処理の詳細については、後述する。一方、第2計測指示を取得していない場合(ステップS133でNo)、光センサ10は、第2計測指示を取得するまで待機する。
【0089】
ステップS134の後、第1計測指示を取得すると(ステップS135でYes)、光センサ10は、ステップS132に戻って、第1計測処理を実行する。一方、第1計測指示を取得していない場合(ステップS135でNo)、計測を継続するのであれば(ステップS136でYes)、ステップS134に戻って、第2計測処理を継続する。一方、計測を終了する場合(ステップS136でNo)、図18のフローチャートに沿った処理は終了である。計測の継続/終了に関しては、予め設定されたタイミングや、計測値が計測されなくなったタイミングなどに応じて判定されればよい。
【0090】
<第1計測処理>
次に、光センサ10による第1計測処理について図面を参照しながら説明する。第1計測処理は、計測装置16からの第1計測指示に応じて実行される。図19は、光センサ10による第1計測処理について説明するためのフローチャートである。
【0091】
図19において、光センサ10は、第1計測用の光信号を出射するように、発光器11を制御する(ステップS141)。
【0092】
次に、光センサ10は、発光器11から出射された光信号の反射光を、受光素子アレイ12の全てのチャネルで受光する(ステップS142)。
【0093】
次に、光センサ10は、受光素子アレイ12の全てのチャネルによって受信された受光信号を、計測装置16に出力する(ステップS143)。
【0094】
<第2計測処理>
次に、光センサ10による第2計測処理について図面を参照しながら説明する。第2計測処理は、計測装置16からの第2計測指示に応じて実行される。図20は、光センサ10による第2計測処理について説明するためのフローチャートである。
【0095】
図20において、光センサ10は、第2計測用の光信号を出射するように、発光器11を制御する(ステップS151)。
【0096】
次に、光センサ10は、発光器11から出射された光信号の反射光を、受光素子アレイ12の中から選択された計測チャネルで受光する(ステップS152)。
【0097】
次に、光センサ10は、受光素子アレイ12の中から選択された計測チャネルによって受信された受光信号を、計測装置16に出力する(ステップS153)。
【0098】
以上のように、本実施形態の生体データ計測システムは、光センサおよび計測装置を備える。光センサは、複数の発光器、受光素子アレイ、および制御部を有する。複数の発光器は、生体データの計測対象である被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置される。複数の発光器は、被験者の皮膚に向けて光信号を出射する。受光素子アレイは、二次元状に配置された複数の受光素子を含む。受光素子アレイは、基板の計測面に配置される。受光素子アレイは、複数の発光器から出射された光信号の反射光を受光する。制御部は、計測装置からの計測指示に応じて、複数の発光器に光信号を出射させる。制御部は、受光素子アレイを構成する複数の受光素子によって受光される光信号の反射光に応じた受光素子ごとの受信信号を受信する。制御部は、受信した受光素子ごとの受信信号を計測装置に出力する。制御部は、計測装置からの第2計測指示に応じた第2計測の期間において、計測装置によって設定された計測領域の範囲内の受光素子による受信信号を計測装置に出力する。
【0099】
本実施形態の計測装置は、計測指示出力部、受信信号取得部、生体データ生成部、計算部、計測領域設定部、および生体データ出力部を備える。計測指示出力部は、複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する。受信信号取得部は、計測指示に応じた複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する。生体データ生成部は、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成する。計算部は、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて生成された生体データを用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算する。計測領域設定部は、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。生体データ出力部は、第2計測指示に応じた第2計測において計測された生体データを出力する。
【0100】
本実施形態では、光センサを用いた生体データの計測において、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、本計測に相当する第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。本実施形態によれば、本計測に相当する第2計測において、光センサによる計測や通信の負荷を軽減できる。そのため、本実施形態によれば、光センサを用いた生体データの常時計測を実現できる。
【0101】
本実施形態の一態様において、計測指示出力部は、受光素子アレイを構成する複数の受光素子の全てを用いた計測を指示する第1計測指示を、光センサに出力する。また、計測指示出力部は、受光素子アレイを構成する複数の受光素子のうち、計測領域の範囲内の受光素子を用いた計測を指示する第2計測指示を、光センサに出力する。本態様では、予備計測に相当する第1計測において、複数の受光素子の全てに関して受光素子ごとの生体データの偏差を検証する。そのため、本態様によれば、受光素子アレイの受光面において、最適な計測領域を漏らすことなく設定できる。また、本態様によれば、第2計測の対象となる受光素子を絞り込むことによって、第2計測における負荷を軽減できる。
【0102】
本実施形態の一態様において、計算部は、受光素子ごとの生体データの代表値と、複数の受光素子の全ての生体データの代表値との差を、受光素子ごとの生体データの偏差として計算する。計測領域設定部は、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて計測候補領域を設定する。計測領域設定部は、計測候補領域の範囲内に計測領域を設定する。本態様によれば、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて設定された計測候補領域の範囲内に計測領域を設定することによって、第2計測における負荷を確実に軽減できる。
【0103】
本実施形態の一態様において、計測領域設定部は、受光素子ごとの生体データの偏差が所定の閾値を越える受光素子からなる領域を、計測候補領域に設定する。本態様によれば、所定の閾値に応じて、計測領域を明確に設定できる。
【0104】
本実施形態の一態様において、計算部は、複数の受光素子の全てに関する生体データの偏差の標準偏差を計算する。計測領域設定部は、標準偏差に対して偏差が所定倍以上の受光素子からなる領域を計測候補領域に設定する。計算部は、計測候補領域の範囲内に計測領域を設定する。本態様によれば、標準偏差に対する偏差の値に応じて、計測領域を明確に設定できる。
【0105】
本実施形態の一態様において、計算部は、複数の受光素子を含む複数の計算領域ごとの生体データの代表値と、複数の計算領域の全てに関する生体データの代表値の平均値との差を、計算領域ごとの生体データの領域偏差として計算する。計測領域設定部は、計算領域ごとの生体データの領域偏差に応じて計測候補領域を設定する。本態様によれば、計算領域ごとの生体データの領域偏差に応じて計測領域を設定することによって、第1計測に応じた計測領域の設定に掛かる負荷を軽減できる。
【0106】
本実施形態の一態様において、計測指示出力部は、第2計測指示に応じた第2計測が開始されてから所定期間が経過したタイミングにおいて、第1計測指示を光センサに出力して、計測領域を更新する。本態様によれば、タイミングよく計測領域を更新することによって、継続的な生体データの計測を実現できる。
【0107】
本実施形態の一態様において、計測指示出力部は、第2計測指示に応じた第2計測において生体データの計測値が基準値を下回ると、第1計測指示を光センサに出力して、計測領域を更新する。本態様によれば、生体データの計測値に応じて計測領域を更新することによって、継続的な生体データの計測を実現できる。
【0108】
本実施形態の一態様において、計測指示出力部は、計測領域を更新する際に、計測領域の周辺領域および計測領域に絞り込んで第1計測を行う指示を含む第1計測指示を、光センサに出力する。本態様によれば、計測領域を更新における第1計測において計測範囲を絞り込むことによって、第1計測に掛かる負荷を軽減できる。
【0109】
本実施形態の一態様において、計測領域設定部は、第2計測指示に応じた第2計測において生体データの計測値が途切れると、偏差のランクが高い領域を計測領域として再設定する。計測指示出力部は、再設定された計測領域で計測を継続させる指示を含む第2計測指示を、光センサに出力する。本態様によれば、生体データの計測値が途切れた状況において、計測領域を再設定することによって、継続的な生体データの計測を実現できる。
【0110】
本実施形態の一態様において、生体データ出力部は、受光素子アレイの受光面に対応付けて計測領域が強調表示されたヒートマップを出力する。本態様によれば、例えば、ヒートマップを画面に表示させることによって、画面を視認した人物に対して、適切な計測領域が設定されていることを確認させることができる。
【0111】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る光センサについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態の光センサは、第1の実施形態の計測装置の機能を内含する。
【0112】
図21は、本実施形態の光センサ20の構成の一例を示すブロック図である。光センサ20は、複数の発光器21、受光素子アレイ22、および制御部23を備える。複数の発光器21、受光素子アレイ22、および制御部23は、第1の実施形態(図2図3)と同様に、基板に配置される。基板については、第1の実施形態の基板110と同様であるため、詳細な説明を省略する。光センサ20を人体に装着させる粘着層等については、説明を省略する。
【0113】
発光器21は、第1の実施形態の発光器11と同様の構成である。発光器21は、脈拍の計測に用いられる光を出射する出射面を有する。複数の発光器21は、それらの出射面を同じ向きに向けて配列される。複数の発光器21の出射面と、受光素子アレイ22の受光面とは、同じ向きに向けて配置される。発光器21の出射面は、光センサ20が被験者の皮膚に貼付された状態で、その被験者の皮膚に向けられる。発光器21は、制御部23の制御に応じて、脈拍を計測可能な波長帯の光信号を出射する。
【0114】
受光素子アレイ22は、第1の実施形態の受光素子アレイ12と同様の構成である。
受光素子アレイ22は、発光器21から出射された光信号の反射光を受光する受光面を有する。反射光は、発光器21から出射された光信号のうち、被験者の皮膚下(体内)で反射/散乱されて、受光素子アレイ22の受光面に到達した光成分である。受光素子アレイ22の受光面には、複数の受光素子が二次元アレイ状に配列される。二次元アレイ状に配列された複数の受光素子の各々によって受光された反射光の光強度は、それらの受光素子の位置(アドレス)に対応付けられて、計測される。
【0115】
制御部23は、第1の実施形態の制御部13と同様の構成である。制御部23は、第1の実施形態の計測装置16の機能を含む点において、第1の実施形態の制御部13とは異なる。制御部23は、複数の発光器21を制御する。例えば、制御部23は、マイクロコンピュータ(マイコンとも呼ぶ)やマイクロコントローラによって実現される。
【0116】
図21のように、制御部23は、計測指示取得部231、発光制御部232、記憶部233、信号取得部234、信号出力部235、および計測部236を有する。以下においては、第1の実施形態の計測装置16の機能を、計測部236が発揮するように記載する。計測部236の機能は、複数の構成に分割されてもよい。
【0117】
計測部236は、第1の実施形態の計測装置16と同様の機能を有する。計測部236は、光センサ10が起動すると、継続的な本計測に先立って、予備計測を行う第1計測指示を発光制御部232に出力する。第1計測指示は、受光素子アレイ22の全ての受光素子で、一定期間の予備計測を行う指示である。また、計測部236は、選択された計測チャネルにおける計測を行う第2計測指示を光センサ20に出力する。第2計測指示は、受光素子アレイ22の受光素子のうち、選択された計測チャネルにおいて、継続的な本計測を行う指示である。
【0118】
また、計測部236は、予め決められた更新タイミングにおいて、計測チャネルを更新するために、第1計測指示を発光制御部232に出力する。例えば、計測部236は、計測中の計測チャネルを含む領域に関して、第1計測指示を行う指示を、発光制御部232に出力してもよい。また、計測部236は、本計測を行っている最中に、生体データの値や変動に応じて、計測チャネルを更新してもよい。
【0119】
計測部236は、信号取得部234から受信信号を取得する。計測部236は、取得した受信信号を用いて、生体データを生成する。例えば、計測部236は、取得した受信信号の時系列データを用いて、脈拍データを生成する。計測部236によって生成される生体データについては、特に限定を加えない。
【0120】
計測部236は、第1計測指示に応じて受信された受信信号に基づく生体データを用いて、本計測を行うチャネルを選択する。計測部236は、受光素子アレイ22を構成する複数の受光素子(チャネル)の全てについて、チャネルごとに、生体データの振幅の代表値を計算する。また、計測部236は、受光素子アレイ22を構成する複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を計算する。計測部236は、受光素子(チャネル)ごとの代表値から、複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を引いた偏差(チャネル偏差とも呼ぶ)を、チャネルごとに計算する。
【0121】
計測部236は、受光素子アレイ22を構成する複数の受光素子(チャネル)による計測値の偏差を、単一のチャネルごとではなく、複数のチャネルごとに計算してもよい。例えば、計測部236は、複数の受光素子からなる領域(計算領域とも呼ぶ)を設定し、その計算領域ごとに計測値の偏差を計算してもよい。例えば、計測部236は、計算領域に含まれる受光素子(チャネル)による計測値の代表値の平均値から、複数の受光素子(チャネル)の代表値の平均値を引いた値を、計算領域の偏差(領域偏差とも呼ぶ)として計算する。また、計測部236は、複数の受光素子(チャネル)に関して算出されたチャネル偏差の標準偏差を計算する。
【0122】
計測部236は、チャネルごとに算出されたチャネル偏差や、計算領域ごとに算出された領域偏差、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差に基づいて、生体データの本計測に用いられるチャネル(計測チャネルとも呼ぶ)を選択する。例えば、計測部236チャネル偏差や領域偏差などの偏差が所定の閾値を越えるチャネルの領域を、計測候補領域に設定する。例えば、計測部236は、チャネル偏差や領域偏差などの偏差と、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差との比較結果に応じて、計測チャネルを選択する。計測部236は、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差に対して、チャネル偏差や領域偏差などの偏差が所定倍以上の受光素子(チャネル)を、計測候補領域に設定する。例えば、計測部236は、複数の受光素子(チャネル)に関するチャネル偏差の標準偏差に対して、チャネル偏差や領域偏差などの偏差が1.5倍以上の受光素子(チャネル)を、計測候補領域に設定する。計測部236は、計測候補領域に設定された受光素子(チャネル)の中から、計測チャネルを選択する。計測部236は、選択された計測チャネルを計測領域に設定する。
【0123】
計測部236は、計測候補領域に含まれるチャネルのうち、チャネル偏差や領域偏差のランクが高い計測チャネルを記憶しておいてもよい。例えば、チャネル偏差や領域偏差に応じて選択されていた計測チャネルにおける計測が途切れた場合、計測部236は、チャネル偏差やのランクが高い領域から計測チャネルを選択しなおす。言い換えると、計測部236は、計測領域における計測が途切れると、チャネル偏差や領域偏差のランクが高い領域を計測領域として再設定する。このようにすれば、計測チャネルにおける計測が突然途切れた場合であっても、生体データの計測を継続できる。このような処理は、第1の実施形態にも適用できる。
【0124】
計測指示取得部231は、第1の実施形態の計測指示取得部131と同様の構成である。計測指示取得部231は、計測部236から計測指示を取得する。計測指示取得部231は、予備計測を行う指示(第1計測指示とも呼ぶ)を、計測部236から取得する。計測指示取得部231は、取得した第1計測指示を、発光制御部232および信号取得部234に出力する。また、計測指示取得部231は、計測チャネルにおける計測を行う指示(第2計測指示とも呼ぶ)を、計測部236から取得する。計測指示取得部231は、取得した第2計測指示を発光制御部232および信号取得部234に出力する。なお、計測指示取得部231を省略し、発光制御部232および信号取得部234に対して、計測部236が、第1計測指示や第2計測指示を出力するように構成してもよい。
【0125】
発光制御部232は、第1の実施形態の発光制御部132と同様の構成である。発光制御部232は、計測部236による計測指示を、計測指示取得部231から取得する。発光制御部232は、予備計測(第1計測処理)を行う第1計測指示を、計測指示取得部231から取得する。発光制御部232は、第1計測指示に応じて、複数の発光器21を発光させる制御を行う。発光制御部232は、記憶部233に記憶された、第1計測指示に応じた制御方式で、複数の発光器21を制御する。また、発光制御部232は、継続的な本計測(第2計測処理)を行う第2計測指示を、計測指示取得部231から取得する。発光制御部232は、第2計測指示に応じて、複数の発光器21を発光させる制御を行う。発光制御部232は、記憶部233に記憶された、第2計測指示に応じた制御方式で、複数の発光器21を制御する。
【0126】
記憶部233は、第1の実施形態の記憶部133と同様の構成である。記憶部233は、複数の発光器21を発光させる制御方式が記憶される。記憶部233に記憶された制御方式は、発光制御部232によって参照される。記憶部233に記憶された制御方式には、特に限定を加えない。
【0127】
信号取得部234は、第1の実施形態の信号取得部134と同様の構成である。信号取得部234は、計測部236による計測指示を、計測指示取得部231から取得する。信号取得部234は、予備計測(第1計測処理)を行う第1計測指示を、計測指示取得部231から取得する。信号取得部234は、第1計測指示に応じて、受光素子アレイ22を構成する全ての受光素子によって受光された受光信号を取得する。信号取得部234は、全ての受光素子によって受光された受光信号を、計測部236に出力する。また、信号取得部234は、継続的な本計測(第2計測処理)を行う第2計測指示を、計測指示取得部231から取得する。信号取得部234は、第2計測指示に応じて、計測部236によって選択された計測チャネルに設定された受光素子によって受光された受光信号を取得する。信号取得部234は、計測チャネルに設定された受光素子によって受光された受光信号を、計測部236に出力する。
【0128】
計測部236は、第2計測指示に応じて、信号取得部234から取得された受光信号を用いて、生体データを生成する。計測部236は、第2計測指示に応じて計測された生体データを、信号出力部235に出力する。
【0129】
信号出力部235は、第2計測指示に応じて計測された生体データを、計測部236から取得する。信号出力部235は、取得した生体データを出力する。信号出力部235は、ケーブルなどの有線を介して生体データを出力してもよいし、無線通信を介して生体データを出力してもよい。例えば、信号出力部235は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、生体データを出力するように構成される。信号出力部235の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。生体データの出力先や用途については、特に限定を加えない。例えば、信号出力部235は、画面を有する専用の端末装置(図示しない)に生体データを出力する。例えば、信号出力部235は、ユーザの携帯するスマートフォンやタブレットなどの携帯端末(図示しない)に生体データを出力する。例えば、信号出力部235は、サーバやクラウドに構築された外部システム(図示しない)に生体データを出力する。例えば、信号出力部235は、計測部236から取得した生体データを、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶させておき、所定期間に計測された生体データを一括で出力してもよい。
【0130】
(動作)
次に、本実施形態の光センサ20の動作について図面を参照しながら説明する。図22は、光センサ20の動作の一例について説明するためのフローチャートである。図22のフローチャートに沿った処理においては、光センサ20を動作主体として説明する。
【0131】
図22において、まず、光センサ20は、起動すると、第1計測処理を実行する(ステップS21)。ステップS21の第1計測処理の詳細は、図19の第1計測処理と同様である。
【0132】
次に、光センサ20は、計測チャネル設定処理を実行する(ステップS22)。ステップS22の計測チャネル設定処理は、図16図17の計測チャネル設定処理と同様である。
【0133】
次に、光センサ20は、第2計測処理を実行する(ステップS23)。ステップS23の第2計測処理は、図20の第2計測処理と同様である。
【0134】
計測チャネルの更新タイミングの場合(ステップS24でYes)、ステップS21に戻る。更新タイミングにおいて、光センサ20は、計測チャネルを含む領域に絞って、第1計測処理を実行してもよい。
【0135】
ステップS23の次に、計測チャネルの更新タイミングではない場合(ステップS24でNo)、計測を継続するのであれば(ステップS25でYes)、ステップS23に戻る。一方、計測を終了する場合(ステップS25でNo)、図22のフローチャートに沿った処理は終了である。計測の継続/終了に関しては、予め設定されたタイミングや、計測値が計測されなくなったタイミングなどに応じて判定されればよい。
【0136】
以上のように、本実施形態の光センサは、複数の発光器、受光素子アレイ、および制御部を有する。複数の発光器は、生体データの計測対象の被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置される。複数の発光器は、被験者の皮膚に向けて光信号を出射する。受光素子アレイは、二次元状に配置された複数の受光素子を含む。受光素子アレイは、基板の計測面に配置される。受光素子アレイは、複数の発光器から出射された光信号の反射光を受光する。
【0137】
本実施形態の制御部は、計測指示取得部、発光制御部、記憶部、信号取得部、計測部、および信号出力部を有する。計測部は、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する。計測指示取得部は、計測部による計測指示を取得する。発光制御部は、計測装置からの計測指示に応じて、複数の発光器に光信号を出射させる。信号取得部は、受光素子アレイを構成する複数の受光素子によって受光される光信号の反射光に応じた受光素子ごとの受信信号を取得する。計測部は、計測指示に応じた複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する。計測部は、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成する。計測部は、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて生成された生体データを用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算する。計測部は、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。信号出力部は、第2計測指示に応じた第2計測において計測された生体データを出力する。
【0138】
本実施形態の光センサは、生体データの計測において、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、本計測に相当する第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。本実施形態によれば、光センサにおいて、計測や通信の負荷を軽減し、生体データを常時計測できる。
【0139】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る生体情報推定システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の生体情報推定システムは、第1~第2の実施形態の計測装置から出力された生体データ(脈拍信号)に基づいて、被験者の生体情報を推定する。
【0140】
(構成)
図23は、本実施形態に係る生体情報推定システム3の構成の一例を示すブロック図である。生体情報推定システム3は、光センサ30、計測装置36、および推定装置37を備える。光センサ30は、第1の実施形態の光センサ10である。計測装置36は、第1の実施形態の計測装置16である。光センサ30や計測装置36の詳細については、説明を省略する。なお、生体情報推定システム3は、第2の実施形態の光センサ20を含んでもよい。第2の実施形態の光センサ20を生体情報推定システム3が含む場合、計測装置36を省略できる。生体情報推定システム3は、計測装置36および推定装置37によって構成されてもよい。
【0141】
推定装置37は、光センサ30から出力される脈拍信号を取得する。推定装置37は、取得した脈拍信号に応じて、被験者の生体情報を推定する。被験者の生体情報には、脈拍や身体状態、感情などが含まれる。
【0142】
例えば、推定装置37は、脈拍信号に基づいて、被験者の脈拍を推定する。例えば、推定装置37は、脈拍信号の時系列データに表れる極大値/極小値の間隔に応じて、脈拍を推定する。例えば、推定装置37は、脈拍信号の時系列データから抽出される特徴量の発現周期に応じて、脈拍を推定する。推定装置37は、推定された脈拍の間隔や、脈拍信号の強度などの脈拍に関する情報を出力する。
【0143】
例えば、推定装置37は、脈拍信号に基づいて、被験者の身体状態を推定する。例えば、推定装置37は、脈拍信号の時系列データに基づいて、被験者の身体状態を推定する。被験者が安静にしている場合、脈拍信号の強度が小さくなり、脈拍の間隔が大きくなる。被験者が運動している場合、脈拍信号の強度が大きくなり、脈拍の間隔が小さくなる。被験者に不整脈がある場合、脈拍のリズムが不規則になったり、脈拍が途切れたりする。被験者の身体状態は、脈拍信号の時系列データのベースラインにも影響を与える。被験者の身体状態が安定している場合、ベースラインの変動は小さい。それに対し、被験者の身体状態が不安定な場合、ベースラインの変動が大きくなる。例えば、ベースラインは、被験者の身体状態に応じて、上昇傾向を示したり、下降傾向を示したりする。また、被験者が何等かの病気に罹っている場合、その病気に特有の特徴が脈拍信号に表れる場合がある。病気が原因となって脈拍信号に表れる特徴を予め学習させた推定モデルを用いれば、被験者の脈拍信号に応じて、その被験者が罹っている病気を推定することができる。推定装置37は、推定された被験者の身体状態に関する情報を出力する。
【0144】
例えば、被験者の抱えているストレスや疲労、眠気などの身体状態も、脈拍信号に影響を及ぼす。推定装置37は、脈拍の時系列データから、ストレスや疲労、眠気などの身体状態に応じた特徴量を抽出する。例えば、推定装置37は、脈拍の時系列データの平均値や標準偏差、変動係数、二乗平均の平方根、周波数成分など特徴量を、脈拍の時系列データから抽出する。推定装置37は、抽出された特徴量に応じて、被験者の身体状態を推定する。推定装置37は、推定された被験者の身体状態に関する情報や、推定された身体状態に応じた推薦情報などを出力する。
【0145】
例えば、推定装置37は、脈拍信号に基づいて、被験者の感情を推定する。被験者の感情は、脈拍の強度や変動によって推測できる。例えば、推定装置37は、脈拍の時系列データの変動に応じて、喜怒哀楽などの感情の度合を推定する。例えば、推定装置37は、脈拍に関する時系列データのベースラインの変動に応じて、被験者の感情を推定してもよい。例えば、被験者の「怒」が次第に大きくなると、被験者の興奮度(覚醒度)の増大に応じて、ベースラインに上昇傾向が表れる。例えば、被験者の「哀」が次第に大きくなると、被験者の興奮度(覚醒度)の減少に応じて、ベースラインに下降傾向が表れる。
【0146】
図24は、推定装置37が脈拍信号に基づいて推定する感情について説明するための概念図である。図24の例の場合、感情価(横軸)と覚醒度(縦軸)の関係に応じて感情を推定する。感情価(横軸)は、感情の快適さを定量化する。感情価(横軸)は、右に向かうほど快適な状態であり、左に向かうほど不快な状態であることを示す。覚醒度(縦軸)は、感情の高ぶりを定量化する。覚醒度(縦軸)は、上に向かうほど興奮した状態であり、下に向かうほど落ち着いた状態であることを示す。図24の例では、感情価(横軸)と覚醒度(縦軸)によって規定される各象限に、喜怒哀楽の感情が対応付けられる。第一象限には、「喜」が対応付けられる。感情価が大きく、覚醒度が大きいほど、「喜」の度合が大きい。第二象限には、「怒」が対応付けられる。感情価が小さく、覚醒度が大きいほど、「怒」の度合が高い。第三象限には、「哀」が対応付けられる。感情価が小さく、覚醒度が小さいほど、「哀」の度合が高い。第四象限には、「楽」が対応付けられる。感情価が大きく、覚醒度が小さいほど、「楽」の度合が高い。なお、図24のグラフに対する感情の対応付けは、一例であって、本実施形態の生体情報推定システム3による感情推定の基準を限定するものではない。例えば、被験者の感情は、喜怒哀楽といった四つの感情状態に分類されるのではなく、より詳細な感情状態に分類されてもよい。被験者の感情は、図24のような二次元座標系だけではなく、任意の感情状態の分類方法で分類されてもよい。
【0147】
心拍数は、交感神経や副交感神経などの自律神経に関する活動の影響を受けて変動する。同様に、脈拍数は、交感神経や副交感神経などの自律神経に関する活動の影響を受けて変動する。例えば、脈拍数の時系列データの周波数解析によって、低周波数成分や高周波数成分を抽出できる。低周波数成分には、交感神経や副交感神経の影響が反映される。高周波数成分には、副交感神経の影響が反映される。そのため、例えば、高周波数成分と低周波数成分の比に応じて、自律神経機能の活動状態を推定できる。
【0148】
交感神経は、被験者が興奮した状態において活発になる傾向がある。被験者の交感神経が活発になると、脈動が早くなる。すなわち、脈拍数が大きいほど、覚醒度が大きい。副交感神経は、被験者がリラックスしている状態で活発になる傾向がある。被験者がリラックスすると、脈動が遅くなる。すなわち、脈拍数が小さいほど、覚醒度が小さい。このように、推定装置37は、脈拍数に応じて、覚醒度を計測できる。例えば、感情価に関しては、脈拍の間隔の変動に応じて評価できる。快い感情状態であるほど、感情が安定して、脈拍間隔の変動が小さくなる。すなわち、脈拍間隔の変動が小さいほど、感情価が大きい。それに対し、不快な感情状態であるほど、感情が不安定になり、脈拍の間隔の変動が大きくなる。すなわち、脈拍の間隔の変動が大きいほど、感情価が大きい。このように、推定装置37は、脈拍間隔に応じて、感情価を計測できる。ただし、覚醒度や感情価の計測方法は、光センサ30から出力される脈拍信号を用いさえすれば、ここで挙げた方法や基準に限定されない。
【0149】
推定装置37は、脈拍信号の時系列データに基づいて、覚醒度および感情価を推定する。推定装置37は、図24のグラフの座標系における、計測された覚醒度と感情価の座標に応じて、感情を推定する。ある被験者に関して計測された覚醒度と感情価の座標が第1象限の場合、推定装置37は、その被験者の感情状態が「喜」であると推定する。ある被験者に関して計測された覚醒度と感情価の座標が第2象限の場合、推定装置37は、その被験者の感情状態が「怒」であると推定する。ある被験者に関して計測された覚醒度と感情価の座標が第3象限の場合、推定装置37は、その被験者の感情状態が「哀」であると推定する。ある被験者に関して計測された覚醒度と感情価の座標が第4象限の場合、推定装置37は、その被験者の感情状態が「楽」であると推定する。例えば、感情価と覚醒度が閾値を越えていない場合、推定装置37は、被験者の感情状態が平常状態であると判定する。例えば、図24の座標系の中央に示す破線の円の内側に感情価と覚醒度の座標があれば、推定装置37は、被験者の感情状態が平常状態であると判定する。被験者の感情状態が平常状態であると判定するための閾値の値は、任意に設定できる。例えば、そのような閾値は、喜怒哀楽の感情ごとに異なってもよい。
【0150】
推定装置37は、機械学習の手法を用いて、感情を推定するように構成されてもよい。図25は、脈拍信号から抽出される特徴量(説明変数)と感情(応答変数)のデータセットを教師データとして、学習装置340に学習させる一例を示す概念図である。教師データは、喜怒哀楽のいずれかの感情状態にある被験者について計測された脈拍信号から抽出された特徴量に、その時点における感情状態のラベルを付与したデータである。教師データは、喜怒哀楽のいずれかの感情状態にある被験者について計測された脈拍信号に、その時点における感情状態のラベルを付与したデータであってもよい。学習装置340は、教師データを用いた教師あり学習によって、推定モデルを生成する。例えば、複数の被験者に関する教師データを学習装置340に学習させることで、予め推定モデル370を生成しておく。推定モデル370は、脈拍信号から抽出される特徴量の入力に応じて、被験者の感情の推定結果を出力する。機械学習の具体的な手法については、特に限定を加えない。
【0151】
図26は、推定装置37が、推定モデル370用いて、感情を推定する一例について説明するための概念図である。図26の例では、被験者の脈拍信号の入力に応じて、喜怒哀楽のいずれかの感情の推定結果が、推定モデル370から出力される。例えば、推定モデル370から出力される感情の推定結果に関する情報は、端末装置等(図示しない)の画面に表示される。
【0152】
図27は、光センサ30から出力された脈拍信号に応じて、推定装置37が推定した被験者の感情に関する情報を、端末装置300の画面に表示させる例である。図27の例では、被験者の感情状態に応じた推薦情報も、端末装置300の画面に表示させる。図27の例では、被験者の感情状態は「怒」である。例えば、被験者の感情状態を示す顔文字やアイコンを、端末装置300の画面に表示させてもよい。画面に表示された感情状態を視認した被験者は、自身の感情状態を確認できる。また、画面に表示された推薦情報を視認した被験者は、その推薦情報を気に掛けることによって、自身の感情状態を平常状態に近づけることができる。ただし、画面に表示された推薦情報は、必ずしも期待通りの感情状態の変化を被験者にもたらすとは限らない。例えば、推定された被験者の感情状態を、その被験者の家族や知人の所有する端末装置(図示しない)に送信するように構成してもよい。そのように構成すれば、画面に表示された無機的な情報ではなく、被験者と親しい間柄の他者の行動に応じて、その被験者の感情状態を平常状態に近づけられる可能性がある。
【0153】
図27の例では、被験者の感情状態を平常状態に向けて和らげるために、端末装置300の画面に花の画像も表示させている。画面に表示させる画像は、被験者の感情状態を和らげる可能性があれば、どのような画像であってもよい。端末装置300の画面に表示させるのは、画像のみならず、映像であってもよい。また、被験者の感情状態を和らげるような音楽を、端末装置300のスピーカー(図示しない)から流してもよい。例えば、被験者の感情状態が「哀」であった場合は、被験者の慰めになるような画像や映像、音楽などのコンテンツを被験者に提供すればよい。例えば、被験者の感情状態が「喜」や「楽」であった場合は、それらの感情状態が持続するようなコンテンツを被験者に提供すればよい。被験者に提供されるコンテンツは、被験者の感情ごとに設定されていることが好ましい。例えば、提供された情報が被験者の感情に適合しているか否かを入力する機能が追加されてもよい。推定された感情に応じて提供された情報へのユーザの反応を学習し、それ以降の感情推定にフィードバックするように構成されれば、より正確に被験者の感情を推定できる。
【0154】
例えば、自動車の運転手に光センサ30を装着させて、その運転手の感情状態に応じた推薦情報を提供してもよい。例えば、運転手の感情状態の推定結果に応じて、その運転手に休憩を薦めたり、次のパーキングエリアまでの到達予測時間を通知したりすれば、安全な運転環境を提供できる。例えば、自動車の運転手の感情状態が「怒」や「哀」であった場合、その運転手の感情をなだめたり、慰めたりする音楽やメッセージを流すようにしてもよい。例えば、自動車の運転手の感情状態が「楽」であった場合、多少の緊張感をその運転手に促す音楽やメッセージを流すようにしてもよい。例えば、自動車の運転手の感情状態が「喜」であった場合、その感情状態が維持されやすい音楽やメッセージを流すようにしてもよい。例えば、運転手の感情状態と運転時間に応じた推薦情報が提供されるように構成されてもよい。例えば、運転時間が長時間になり、感情に「怒」の傾向が表れた場合、その運転手に対して「次のパーキングエリアに入り、立ち上がって運動しましょう」などといった推薦情報を提供してもよい。例えば、運転時間が長時間になり、感情に「哀」の傾向が表れた場合、その運転手に対して「次のパーキングエリアに入り、仮眠しましょう」などといった推薦情報を提供してもよい。
【0155】
例えば、運転手の感情状態に基づいて、その運転手の注意散漫度を推定してもよい。注意散漫度は、極端な感情状態である場合に、高い傾向がある。そのため、例えば、覚醒度や感情価が、極端に大きかったり、極端に小さかったりする場合、注意散漫度が高いと推定される。注意散漫度に関する閾値を覚醒度や感情価に対して設定し、その閾値との関係に応じて、運転手の注意散漫度を推定するようにすればよい。例えば、注意散漫度が閾値を越えた場合、注意喚起するための通知音を発するようにすればよい。
【0156】
例えば、日常生活を送るユーザに光センサ30を装着させて、その被験者の感情状態に応じた推薦情報を提供してもよい。例えば、ユーザの感情状態が「怒」や「哀」であった場合、そのユーザの気を紛らわすために、散歩やランニング等の運動を薦める推薦情報を提供するようにしてもよい。例えば、ユーザの感情状態が「怒」や「哀」であった場合、そのユーザの感情状態が「楽」や「喜」にシフトさせやすい音楽や情報を提供するようにしてもよい。例えば、ユーザの感情状態が「楽」や「喜」であった場合、その感情状態を増長できる音楽や情報を提供するようにしてもよい。例えば、ユーザの感情状態が「楽」や「喜」であった場合、その時点における環境が維持されるように、邪魔な情報提供をしないようにしてもよい。
【0157】
以上のように、本実施形態の生体情報推定システムは、光センサ、計測装置、および推定装置を備える。光センサは、第1または第2の実施形態の光センサである。計測装置は、第1または第2の実施形態の計測装置である。推定装置は、計測装置によって計測された被験者の生体データを取得する。推定装置は、取得した生体データに基づいて被験者の生体情報を推定する。本実施形態によれば、計測装置によって計測された生体データを用いて、被験者の生体情報を推定できる。
【0158】
本実施形態の一態様において、計測装置は、生体データとして被験者の脈拍信号を計測する。推定装置は、被験者の脈拍信号を用いて被験者の脈拍数を推定する。推定装置は、推定された脈拍数に応じた情報を出力する。本態様によれば、例えば、計測装置によって計測された生体データを用いて推定された脈拍数を画面に表示させることによって、画面を視認した人物に対して、被験者の脈拍数を確認させることができる。
【0159】
本実施形態の一態様において、推定装置は、被験者の脈拍信号を用いて、被験者の感情状態を推定する。推定装置は、推定された感情状態に応じた情報を出力する。本態様によれば、例えば、計測装置によって計測された生体データを用いて推定された感情状態を画面に表示させることによって、画面を視認した人物に対して、被験者の感情状態を確認させることができる。
【0160】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る計測装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の計測装置は、第1~第3の計測装置や計測部を簡略化した構成である。図28は、本実施形態に係る計測装置46の構成の一例を示すブロック図である。計測装置46は、計測指示出力部461、受信信号取得部462、生体データ生成部463、計算部464、および計測領域設定部465を備える。
【0161】
計測指示出力部461は、複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する。受信信号取得部462は、計測指示に応じて複数の受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する。生体データ生成部463は、取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データを生成する。計算部464は、第1計測指示に応じて取得された受信信号を用いて、受光素子ごとの生体データの偏差を計算する。計測領域設定部465は、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、第2計測指示に応じた第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。
【0162】
本実施形態では、光センサを用いた生体データの計測において、受光素子ごとの生体データの偏差に応じて、本計測に相当する第2計測に用いられる受光素子を含む計測領域を設定する。本実施形態によれば、本計測に相当する第2計測において、光センサによる計測や通信の負荷を軽減できる。そのため、本実施形態によれば、光センサを用いた生体データの常時計測を実現できる。
【0163】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図29の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図29の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0164】
図29のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図29においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、
主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0165】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0166】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0167】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0168】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0169】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0170】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0171】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0172】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図29のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial
Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0173】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0174】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0175】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する計測指示出力部と、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する受信信号取得部と、
取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの生体データを生成する生体データ生成部と、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算する計算部と、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差に応じて、前記第2計測指示に応じた第2計測に用いられる前記受光素子を含む計測領域を設定する計測領域設定部と、を備える計測装置。
(付記2)
計測指示出力部は、
前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子の全てを用いた計測を指示する前記第1計測指示と、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子のうち、前記計測領域の範囲内の前記受光素子を用いた計測を指示する前記第2計測指示とを、前記光センサに出力する付記1に記載の計測装置。
(付記3)
前記計算部は、
前記受光素子ごとの前記生体データの代表値と、複数の前記受光素子の全ての前記生体データの代表値との差を、前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差として計算し、
前記計測領域設定部は、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差に応じて計測候補領域を設定し、
前記計測候補領域の範囲内に前記計測領域を設定する付記1または2に記載の計測装置。
(付記4)
前記計測領域設定部は、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差が所定の閾値を越える前記受光素子からなる領域を、前記計測候補領域に設定する付記3に記載の計測装置。
(付記5)
前記計算部は、
複数の前記受光素子の全てに関する前記生体データの前記偏差の標準偏差を計算し、
前記計測領域設定部は、
前記標準偏差に対して前記偏差が所定倍以上の前記受光素子からなる領域を前記計測候補領域に設定し、
前記計測候補領域の範囲内に前記計測領域を設定する付記4に記載の計測装置。
(付記6)
前記計算部は、
複数の前記受光素子を含む複数の計算領域ごとの前記生体データの代表値と、複数の前記計算領域の全てに関する前記生体データの代表値の平均値との差を、前記計算領域ごとの前記生体データの領域偏差として計算し、
前記計測領域設定部は、
前記計算領域ごとの前記生体データの前記領域偏差に応じて前記計測候補領域を設定する付記3乃至5のいずれか一つに記載の計測装置。
(付記7)
前記計測指示出力部は、
前記第2計測指示に応じた前記本計測が開始されてから所定期間が経過したタイミングにおいて、前記第1計測指示を前記光センサに出力し、前記計測領域を更新する付記1乃至6のいずれか一つに記載の計測装置。
(付記8)
前記計測指示出力部は、
前記第2計測指示に応じた前記本計測において前記生体データの計測値が基準値を下回ると、前記第1計測指示を前記光センサに出力して、前記計測領域を更新する付記1乃至7のいずれか一つに記載の計測装置。
(付記9)
前記計測指示出力部は、
前記計測領域を更新する際に、前記計測領域の周辺領域および前記計測領域に絞り込んで前記予備計測を行う指示を含む前記第1計測指示を、前記光センサに出力する付記7または8に記載の計測装置。
(付記10)
前記計測領域設定部は、
前記第2計測指示に応じた前記本計測において前記生体データの計測値が途切れると、前記偏差のランクが高い領域を前記計測領域として再設定し、
前記計測指示出力部は、
再設定された前記計測領域で計測を継続させる指示を含む前記第2計測指示を、前記光センサに出力する付記1乃至9のいずれか一つに記載の計測装置。
(付記11)
前記第2計測指示に応じた前記本計測において計測された前記生体データを出力する生体データ出力部を備える付記1乃至10のいずれか一つに記載の計測装置。
(付記12)
前記生体データ出力部は、
前記受光素子アレイの受光面に対応付けて前記計測領域が強調表示されたヒートマップを出力する付記11に記載の計測装置。
(付記13)
付記1乃至12のいずれか一つに記載の計測装置と、
生体データの計測対象の被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置され、前記被験者の皮膚に向けて光信号を出射する複数の発光器と、
前記基板の前記計測面に配置され、複数の前記発光器から出射された前記光信号の反射光を受光する複数の受光素子が二次元状に配置された受光素子アレイと、
前記計測装置からの計測指示に応じて、複数の前記発光器に前記光信号を出射させ、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子によって受光される前記光信号の反射光に応じた前記受光素子ごとの受信信号を受信し、受信した前記受光素子ごとの前記受信信号を前記計測装置に出力し、前記計測装置からの第2計測指示に応じた本計測の期間において、前記計測装置によって設定された計測領域の範囲内の前記受光素子による前記受信信号を前記計測装置に出力する制御部と、を備える光センサ。
(付記14)
付記1乃至12のいずれか一つに記載の計測装置と、
生体データの計測対象の被験者の皮膚に装着される基板の計測面に配置され、前記被験者の皮膚に向けて光信号を出射する複数の発光器と、前記基板の前記計測面に配置され、複数の前記発光器から出射された前記光信号の反射光を受光する複数の受光素子が二次元状に配置された受光素子アレイと、前記計測装置からの計測指示に応じて、複数の前記発光器に前記光信号を出射させ、前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子によって受光される前記光信号の反射光に応じた前記受光素子ごとの受信信号を受信し、受信した前記受光素子ごとの前記受信信号を前記計測装置に出力し、前記計測装置からの第2計測指示に応じた本計測の期間において、前記計測装置によって設定された計測領域の範囲内の前記受光素子による前記受信信号を前記計測装置に出力する制御部とを有する光センサと、を備える生体データ計測システム。
(付記15)
付記1乃至12のいずれか一つに記載の計測装置と、
前記計測装置によって計測された被験者の生体データを取得し、取得した前記生体データに基づいて前記被験者の生体情報を推定する推定装置と、を備える生体情報推定システム。
(付記16)
前記計測装置は、
前記生体データとして前記被験者の脈拍信号を計測し、
前記推定装置は、
前記被験者の前記脈拍信号を用いて前記被験者の脈拍数を推定し、
推定された前記脈拍数に応じた情報を出力する付記15に記載の生体情報推定システム。
(付記17)
前記推定装置は、
前記被験者の前記脈拍信号を用いて前記被験者の感情状態を推定し、
推定された前記感情状態に応じた情報を出力する付記16に記載の生体情報推定システム。
(付記18)
コンピュータが、
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力し、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得し、
取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの生体データを生成し、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算し、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差に応じて、前記第2計測指示に応じた第2計測に用いられる前記受光素子を含む計測領域を設定する計測方法。
(付記19)
複数の受光素子が二次元状に配列された受光素子アレイを含む光センサに対して、予備計測に相当する第1計測を指示する第1計測指示と、本計測に相当する第2計測を指示する第2計測指示とを含む計測指示を出力する処理と、
前記計測指示に応じて複数の前記受光素子のうち少なくともいずれかの受信信号を取得する処理と、
取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの生体データを生成する処理と、
前記第1計測指示に応じて取得された前記受信信号を用いて、前記受光素子ごとの前記生体データの偏差を計算する処理と、
前記受光素子ごとの前記生体データの前記偏差に応じて、前記第2計測指示に応じた第2計測に用いられる前記受光素子を含む計測領域を設定する処理とをコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0176】
1 生体データ計測システム
3 生体情報推定システム
10、20、30 光センサ
11、21 発光器
12、22 受光素子アレイ
13、23 制御部
16、36、46 計測装置
37 推定装置
100、300 端末装置
110 基板
111 粘着層
131、231 計測指示取得部
132、232 発光制御部
133、233 記憶部
134、234 信号取得部
135、235 信号出力部
161、461 計測指示出力部
162、462 受信信号取得部
163、463 生体データ生成部
164、464 計算部
165、465 計測領域設定部
166 生体データ出力部
236 計測部
340 学習装置
370 推定モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29