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特許7670172下肢筋力推定装置、下肢筋力推定システム、下肢筋力推定方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】下肢筋力推定装置、下肢筋力推定システム、下肢筋力推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20250422BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61B5/22 200
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023570506
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048551
(87)【国際公開番号】W WO2023127009
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 史行
(72)【発明者】
【氏名】オウ シンイ
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】野崎 善喬
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/140658(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/230282(WO,A1)
【文献】特開2007-125368(JP,A)
【文献】特開2006-320533(JP,A)
【文献】国際公開第2020/208922(WO,A1)
【文献】特開2020-192307(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113208597(CN,A)
【文献】樋山 貴洋 ほか,「歩行中の加速度・角速度を用いた高齢者の下肢筋力推定」,生体医工学,日本,日本生体医工学会,2019年03月10日,57巻1号,第27頁-第34頁
【文献】塩谷 真帆 ほか,「日常歩行における下腿部の運動計測を用いた男女別下肢筋力の推定」,2020年度人工知能学会全国大会(第34回) [オンライン],日本,一般社団法人 人工知能学会,2020年06月09日,講演番号 1C5-GS-13-03,第1頁-第4頁,[検索日 2022.03.07], インターネット :<URL : https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2020/0/JSAI2020_1C5GS1303/_pdf/-char/ja> ,<URL : https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2020/advanced?query=%E6%97%A5%E5%B8%B8%E6%AD%A9%E8%A1%8C&searchType=subject>も参照。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得するデータ取得手段と、
前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに、取得された前記特徴量データを入力し、前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する推定手段と、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力する出力手段と、を備え
前記データ取得手段は、
足の動きに関する前記センサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、前記下肢筋力指標として立ち座りテストの成績値を推定するために用いられる特徴量を含む前記特徴量データを取得し、
前記推定手段は、
複数の被験者の前記歩行波形データに関して、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量、および遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルに、前記ユーザの歩行に応じて取得された前記特徴量データを入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する下肢筋力推定装置。
【請求項2】
数の被験者に関して、前記下肢筋力指標の推定に用いられる特徴量を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶する記憶手段を備え、
前記推定手段は、
前記ユーザに関して取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する請求項1に記載の下肢筋力推定装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
複数の前記被験者の年齢を含めた説明変数を用いて学習された前記推定モデルを記憶し、
前記推定手段は、
前記ユーザに関する前記特徴量データおよび年齢を前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する請求項2に記載の下肢筋力推定装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、
複数の前記被験者の前記歩行波形データに関して、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量、および遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量、を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶し、
前記推定手段は、
前記ユーザの歩行に応じて取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する請求項2または3に記載の下肢筋力推定装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、
複数の前記被験者に関して、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤から抽出された特徴量と、矢状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された特徴量と、水平面内における角度の前記歩行波形データの遊脚終期の終盤から抽出された特徴量とを説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶し、
前記データ取得手段は、
前記ユーザの歩行に応じて抽出された、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤の特徴量と、矢状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間の特徴量と、水平面内における角度の前記歩行波形データの遊脚終期の終盤の特徴量とを含む前記特徴量データを取得し、
前記推定手段は、
取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する請求項4に記載の下肢筋力推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の下肢筋力推定装置と、
下肢筋力の推定対象であるユーザの履物に設置され、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度を用いて足の動きに関するセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを出力するセンサと、歩容の特徴を含む前記センサデータの時系列データを取得し、前記センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出し、抽出された前記歩行波形データを正規化し、正規化された前記歩行波形データから、前記下肢筋力の推定に用いられる特徴量を、時間的に連続する少なくとも一つの歩行フェーズによって構成される歩行フェーズクラスターから抽出し、抽出された特徴量を含む特徴量データを生成し、生成された前記特徴量データを前記下肢筋力推定装置に出力する特徴量データ生成手段と有する歩容計測装置と、を備える下肢筋力推定システム。
【請求項7】
前記下肢筋力推定装置は、
前記ユーザによって視認可能な画面を有する端末装置に実装され、
前記ユーザの足の動きに応じて推定された前記下肢筋力に関する情報を、前記端末装置の画面に表示させる請求項6に記載の下肢筋力推定システム。
【請求項8】
前記下肢筋力推定装置は、
前記ユーザの足の動きに応じて推定された前記下肢筋力に応じた推薦情報を、前記端末装置の画面に表示させる請求項7に記載の下肢筋力推定システム。
【請求項9】
コンピュータが、
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得し、
取得された前記特徴量データを、前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力し、
前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定し、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力し、
前記取得において、
足の動きに関する前記センサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、前記下肢筋力指標として立ち座りテストの成績値を推定するために用いられる特徴量を含む前記特徴量データを取得し、
前記推定において、
複数の被験者の前記歩行波形データに関して、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量、および遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルに、前記ユーザの歩行に応じて取得された前記特徴量データを入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する下肢筋力推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する処理と、
取得された前記特徴量データを、前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力する処理と、
前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する処理と、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力する処理と、
前記取得する処理において、
足の動きに関する前記センサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、前記下肢筋力指標として立ち座りテストの成績値を推定するために用いられる特徴量を含む前記特徴量データを取得する処理と、
前記推定する処理において、
複数の被験者の前記歩行波形データに関して、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量、および遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルに、前記ユーザの歩行に応じて取得された前記特徴量データを入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、足の動きに関するセンサデータを用いて、下肢筋力を推定する下肢筋力推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアへの関心の高まりに伴って、歩行パターンに含まれる特徴(歩容とも呼ぶ)に応じた情報を提供するサービスに注目が集まっている。例えば、靴等の履物に実装されたセンサによって計測されるセンサデータに基づいて、歩容を解析する技術が開発されている。センサデータの時系列データには、身体状態と関連する歩容事象(歩行イベントとも呼ぶ)の特徴が現れる。
【0003】
特許文献1には、足の運動情報から、個人識別に用いられる特徴量を抽出する情報処理装置について開示されている。特許文献1の装置は、ユーザの足に設けられた運動計測装置によって計測された足の運動情報を取得する。特許文献1の装置は、運動情報に含まれる1歩行周期の時系列データから、ユーザの識別に用いられる特徴量を抽出する。
【0004】
特許文献2には、被験者の歩行能力に応じて、運動機能を向上させる運動を提案する方法について開示されている。特許文献2の方法では、被験者が所定の距離を歩行することから、被験者の歩行能力を求める。特許文献2の方法では、歩行能力の値から、転倒リスクを判別する。特許文献2の方法では、歩行能力や転倒リスクに合わせて、転倒予防や運動機能向上のための運動メニューを提案する。特許文献2の方法では、提案された運動メニューを表示させるとともに、歩行能力や転倒リスクを表示する。
【0005】
立ち座り動作は、日常生活を送る上で重要な動作である。立ち座り動作は、下肢筋力と関連する。下肢筋力は、フレイルや転倒リスクを評価するための重要な指標である。
【0006】
非特許文献1には、30秒間における椅子の立ち座り動作回数を計測する30秒椅子立ち上がり(CS-30)テストの成績と関連する筋肉の検証例が報告されている(CS:Chair-Stand)。非特許文献1には、CS-30テストの成績は、腸腰筋、大殿筋、ハムストリングス、および大腿四頭筋の筋力と相関する結果が報告されている。
【0007】
非特許文献2には、若年女性を対象に行われたCS-30テストの成績と関連する筋肉の検証例が報告されている。非特許文献2には、CS-30テストの成績が、股関節伸展筋の主動筋である大殿筋と、膝関節屈曲筋のハムストリングスを主とする下肢後面筋の筋力と、関係していることを示唆する結果が報告されている。
【0008】
非特許文献3には、立ち上がり動作における下肢筋の筋収縮の順序性について報告されている。非特許文献3には、健常成人の自由な椅子からの立ち上がり動作において、前脛骨筋、腓腹筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋の筋収縮の順序性は、概ね3パターンに集約されると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2020/240751号
【文献】特開2008-229266号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】千木良佑介, “立ち座り動作能力に影響を与える下肢筋肉について, 第2回日本トレーニング指導学会大会, ポスター発表01,2013.
【文献】矢倉千昭ら, “若年女性における30秒椅子立ち上がりテストと下肢筋機能の関係”, 理学療法学 Supplement, Vol.30 Suppl. No.2, (第38回日本理学療法学術大会抄録集), pp.143, 2003.
【文献】木島幸次ら, “立ち上がり動作における下肢筋の筋収縮の順序性”, 理学療法学 Supplement Vol.31 Suppl. No.2, (第39回日本理学療法学術大会抄録集), pp. A0245, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の手法では、ユーザの足に設けられた運動計測装置によって計測された足の運動情報から抽出される特徴量を用いて、個人識別を行う。特許文献1には、履物に設置されたセンサから取得されたデータから抽出された特徴部位の歩行特徴量を用いて、下肢筋力を推定することは開示されていない。
【0012】
特許文献2の手法では、被験者の腰部に設置された加速度計によって計測される加速度に応じて、被験者の歩行能力に関係する推定指標を演算する。特許文献2の手法では、算出された推定指標に応じて、歩行速度や歩幅、膝伸展力、背屈力などの歩行能力を推定する。特許文献2の手法では、腰部の動きに応じた歩行能力を推定するが、足の動きに応じた下肢筋力を検証することはできなかった。
【0013】
非特許文献1~3のように、椅子の立ち座りを評価できれば、下肢筋力を評価できる。しかしながら、非特許文献1~3には、日常生活において、下肢筋力を評価する手法については開示されていない。
【0014】
本開示の目的は、日常生活において、下肢筋力を適宜推定できる下肢筋力推定装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様の下肢筋力推定装置は、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得するデータ取得部と、特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルを記憶する記憶部と、取得された特徴量データを推定モデルに入力し、推定モデルから出力された下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する推定部と、推定されたユーザの下肢筋力に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0016】
本開示の一態様の下肢筋力推定方法においては、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得し、取得された特徴量データを、特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力し、推定モデルから出力された下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定し、推定されたユーザの下肢筋力に関する情報を出力する。
【0017】
本開示の一態様のプログラムは、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する処理と、取得された特徴量データを、特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力する処理と、推定モデルから出力された下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する処理と、推定されたユーザの下肢筋力に関する情報を出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、日常生活において、下肢筋力を適宜推定できる下肢筋力推定装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る歩容計測装置の配置例を示す概念図である。
図4】第1の実施形態に係る歩容計測装置に設定されるローカル座標系と世界座標系の関係の一例について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る歩容計測装置に関する説明で用いられる人体面について説明するための概念図である。
図6】第1の実施形態に係る歩容計測装置に関する説明で用いられる歩行周期について説明するための概念図である。
図7】第1の実施形態に係る歩容計測装置が計測するセンサデータの時系列データの一例について説明するためのグラフである。
図8】第1の実施形態に係る歩容計測装置が計測するセンサデータの時系列データから抽出される歩行波形データの正規化の一例について説明するための図である。
図9】第1の実施形態に係る歩容計測装置の特徴量データ生成部が特徴量を抽出する歩行フェーズクラスターの一例について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える下肢筋力推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムの推定対象である下肢筋力を評価する5回椅子立ち上がりテストについて説明するための概念図である。
図12】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置が5回立ち座り時間を推定するために抽出する特徴量の具体例に関する表である。
図13】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置が抽出した特徴量F1と、実測された5回立ち座り時間との相関関係を示すグラフである。
図14】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置が抽出した特徴量F2と、実測された5回立ち座り時間との相関関係を示すグラフである。
図15】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置が抽出した特徴量F3と、実測された5回立ち座り時間との相関関係を示すグラフである。
図16】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置が抽出した特徴量F4と、実測された5回立ち座り時間との相関関係を示すグラフである。
図17】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える下肢筋力推定装置による5回立ち座り時間(下肢筋力指標)の推定例を示すブロック図である。
図18】性別、年齢、身長、体重、および歩行速度を説明変数とした学習によって生成された推定モデルを用いて推定された5回立ち座り時間の推定値と、5回立ち座り時間の計測値との相関関係を示すグラフである。
図19】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える下肢筋力推定装置によって推定された5回立ち座り時間の推定値と、5回立ち座り時間の計測値との相関関係を示すグラフである。
図20】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える歩容計測装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図21】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムが備える下肢筋力推定装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図22】第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムの適用例について説明するための概念図である。
図23】第2の実施形態に係る学習システムの構成の一例を示すブロック図である。
図24】第2の実施形態に係る学習システムが備える学習装置の構成の一例を示すブロック図である。
図25】第2の実施形態に係る学習システムが備える学習装置による学習の一例について説明するための概念図である。
図26】第3の実施形態に係る下肢筋力推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図27】各実施形態の制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る下肢筋力推定システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の下肢筋力推定システムは、ユーザの歩行に応じた足の動きに関するセンサデータを計測する。本実施形態の下肢筋力推定システムは、計測されたセンサデータを用いて、そのユーザの下肢筋力を推定する。
【0022】
本実施形態では、下肢筋力として、椅子の立ち座りを5回繰り返す5回椅子立ち上がりテストの成績を推定する例を挙げる。以下において、5回椅子立ち上がりテストのことを、SS-5(Sit to Stand-5)テストとも呼ぶ。本実施形態においては、SS-5テストの成績を、椅子の立ち座りを5回繰り返す時間(5回立ち座り時間とも呼ぶ)で評価する。5回立ち座り時間は、SS-5テストの成績値である。5回立ち座り時間が短いほど、SS-5テストの成績が高い。本実施形態の手法は、SS-5テスト以外の立ち座りテストの成績にも適用できる。例えば、本実施形態の手法は、30秒間における椅子の立ち座り動作回数を計測する30秒椅子立ち上がり(CS-30)テストの成績にも適用できる(CS:Chair-Stand)。
【0023】
(構成)
図1は、本実施形態に係る下肢筋力推定システム1の構成の一例を示すブロック図である。下肢筋力推定システム1は、歩容計測装置10と下肢筋力推定装置13を備える。本実施形態においては、歩容計測装置10と下肢筋力推定装置13が別々のハードウェアに構成される例について説明する。例えば、歩容計測装置10は、下肢筋力の推定対象である被験者(ユーザ)の履物等に設置される。例えば、下肢筋力推定装置13の機能は、被験者(ユーザ)の携帯する携帯端末にインストールされる。以下においては、歩容計測装置10および下肢筋力推定装置13の構成について、個別に説明する。
【0024】
〔歩容計測装置〕
図2は、歩容計測装置10の構成の一例を示すブロック図である。歩容計測装置10は、センサ11と特徴量データ生成部12を有する。本実施形態においては、センサ11と特徴量データ生成部12が一体化された例を挙げる。センサ11と特徴量データ生成部12は、別々の装置として提供されてもよい。
【0025】
図2のように、センサ11は、加速度センサ111と角速度センサ112を有する。図2には、加速度センサ111と角速度センサ112が、センサ11に含まれる例を挙げる。センサ11には、加速度センサ111および角速度センサ112以外のセンサが含まれてもよい。センサ11に含まれうる加速度センサ111および角速度センサ112以外のセンサについては、説明を省略する。
【0026】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、足の動きに関する物理量として、加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測する。加速度センサ111は、計測した加速度を特徴量データ生成部12に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。加速度センサ111として用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0027】
角速度センサ112は、3軸周りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、足の動きに関する物理量として、角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。角速度センサ112は、計測した角速度を特徴量データ生成部12に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。角速度センサ112として用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0028】
センサ11は、例えば、加速度や角速度を計測する慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)が挙げられる。IMUは、3軸方向の加速度を計測する加速度センサ111と、3軸周りの角速度を計測する角速度センサ112を含む。センサ11は、VG(Vertical Gyro)やAHRS(Attitude Heading)などの慣性計測装置によって実現されてもよい。また、センサ11は、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)によって実現されてもよい。センサ11は、足の動きに関する物理量を計測できれば、慣性計測装置以外の装置によって実現されてもよい。
【0029】
図3は、右足の靴100の中に、歩容計測装置10が配置される一例を示す概念図である。図3の例では、足弓の裏側に当たる位置に、歩容計測装置10が設置される。例えば、歩容計測装置10は、靴100の中に挿入されるインソールに配置される。例えば、歩容計測装置10は、靴100の底面に配置されてもよい。例えば、歩容計測装置10は、靴100の本体に埋設されてもよい。歩容計測装置10は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。歩容計測装置10は、足の動きに関するセンサデータを計測できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレット等の装飾品に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。図3には、右足の靴100に歩容計測装置10が設置される例を示す。歩容計測装置10は、両足の靴100に設置されてもよい。
【0030】
図3の例では、歩容計測装置10(センサ11)を基準として、左右方向のx軸、前後方向のy軸、上下方向のz軸を含むローカル座標系が設定される。x軸は左方を正とし、y軸は後方を正とし、z軸は上方を正とする。センサ11に設定される軸の向きは、左右の足で同じでもよく、左右の足で異なっていてもよい。例えば、同じスペックで生産されたセンサ11が左右の靴100の中に配置される場合、左右の靴100に配置されるセンサ11の上下の向き(Z軸方向の向き)は、同じ向きである。その場合、左足に由来するセンサデータに設定されるローカル座標系の3軸と、右足に由来するセンサデータに設定されるローカル座標系の3軸とは、左右で同じにある。
【0031】
図4は、足弓の裏側に設置された歩容計測装置10(センサ11)に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、進行方向に正対した状態のユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。なお、図4の例は、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)の関係を概念的に示すものであり、ユーザの歩行に応じて変動するローカル座標系と世界座標系の関係を正確に示すものではない。
【0032】
図5は、人体に対して設定される面(人体面とも呼ぶ)について説明するための概念図である。本実施形態では、身体を左右に分ける矢状面、身体を前後に分ける冠状面、身体を水平に分ける水平面が定義される。なお、図5のように、足の中心線を進行方向に向けて直立した状態では、世界座標系とローカル座標系が一致する。本実施形態においては、x軸を回転軸とする矢状面内の回転をロール、y軸を回転軸とする冠状面内の回転をピッチ、z軸を回転軸とする水平面内の回転をヨーと定義する。また、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角をロール角、y軸を回転軸とする冠状面内の回転角をピッチ角、z軸を回転軸とする水平面内の回転角をヨー角と定義する。
【0033】
図2のように、特徴量データ生成部12(特徴量データ生成装置とも呼ぶ)は、取得部121、正規化部122、抽出部123、生成部125、および特徴量データ出力部127を有する。例えば、特徴量データ生成部12は、歩容計測装置10の全体制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラによって実現される。例えば、特徴量データ生成部12は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。特徴量データ生成部12は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して、角速度や加速度を計測する。例えば、特徴量データ生成部12は、被験者(ユーザ)の携帯する携帯端末(図示しない)の側に実装されてもよい。
【0034】
取得部121は、加速度センサ111から、3軸方向の加速度を取得する。また、取得部121は、角速度センサ112から、3軸周りの角速度を取得する。例えば、取得部121は、取得された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)する。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。取得部121は、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)を正規化部122に出力する。取得部121は、図示しない記憶部に、センサデータを記憶させるように構成されてもよい。センサデータには、デジタルデータに変換された加速度データと、デジタルデータに変換された角速度データとが少なくとも含まれる。加速度データは、3軸方向の加速度ベクトルを含む。角速度データは、3軸周りの角速度ベクトルを含む。加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、取得部121は、加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えてもよい。
【0035】
正規化部122は、取得部121からセンサデータを取得する。正規化部122は、センサデータに含まれる3軸方向の加速度および3軸周りの角速度の時系列データから、一歩行周期分の時系列データ(歩行波形データとも呼ぶ)を抽出する。正規化部122は、抽出された一歩行周期分の歩行波形データの時間を、0~100%(パーセント)の歩行周期に正規化(第1正規化とも呼ぶ)する。0~100%の歩行周期に含まれる1%や10%などのタイミングを、歩行フェーズとも呼ぶ。また、正規化部122は、第1正規化された一歩行周期分の歩行波形データに関して、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように正規化(第2正規化とも呼ぶ)する。立脚相は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している期間である。遊脚相は、足の裏側が地面から離れている期間である。歩行波形データを第2正規化すれば、特徴量が抽出される歩行フェーズのずれが、外乱の影響でぶれることを抑制できる。
【0036】
図6は、右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。左足を基準とする一歩行周期も、右足と同様である。図6の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期である。図6の横軸は、一歩行周期を100%として第1正規化されている。また、図6の横軸は、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように第2正規化されている。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、荷重応答期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。なお、図6は一例であって、一歩行周期を構成する期間や、それらの期間の名称等を限定するものではない。
【0037】
図6のように、歩行においては、複数の事象(歩行イベントとも呼ぶ)が発生する。E1は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HC:Heel Contact)。E2は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。E3は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。E4は、左足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。E5は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。E6は、左足の足裏が接地した状態で、左足と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。E7は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。E8は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HC:Heel Contact)。E8は、E1から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。なお、図6は一例であって、歩行において発生する事象や、それらの事象の名称を限定するものではない。
【0038】
図7は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データ(実線)から、踵接地HCや爪先離地TOを検出する一例について説明するための図である。踵接地HCのタイミングは、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに表れる極大ピークの直後の極小ピークのタイミングである。踵接地HCのタイミングの目印になる極大ピークは、一歩行周期分の歩行波形データの最大ピークに相当する。連続する踵接地HCの間の区間が、一歩行周期である。爪先離地TOのタイミングは、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに変動が表れない立脚相の期間の後に表れる極大ピークの立ち上がりのタイミングである。図7には、ロール角(X軸周り角速度)の時系列データ(破線)も示す。ロール角が最小のタイミングと、ロール角が最大のタイミングとの中点のタイミングが、立脚中期に相当する。例えば、歩行速度や、歩幅、分回し、内旋/外旋、底屈/背屈などのパラメータ(歩容パラメータとも呼ぶ)は、立脚中期を基準として求めることができる。
【0039】
図8は、正規化部122によって正規化された歩行波形データの一例について説明するための図である。正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データから、踵接地HCと爪先離地TOを検出する。正規化部122は、連続する踵接地HCの間の区間を、一歩行周期分の歩行波形データとして抽出する。正規化部122は、第1正規化によって、一歩行周期分の歩行波形データの横軸(時間軸)を、0~100%の歩行周期に変換する。図8には、第1正規化後の歩行波形データを破線で示す。第1正規化後の歩行波形データ(破線)では、爪先離地TOのタイミングが60%からずれている。
【0040】
図8の例において、正規化部122は、歩行フェーズが0%の踵接地HCから、その踵接地HCに後続する爪先離地TOまでの区間を0~60%に正規化する。また、正規化部122は、爪先離地TOから、爪先離地TOに後続する歩行フェーズが100%の踵接地HCまでの区間を60~100%に正規化する。その結果、一歩行周期分の歩行波形データは、歩行周期が0~60%の区間(立脚相)と、歩行周期が60~100%の区間(遊脚相)とに正規化される。図8には、第2正規化後の歩行波形データを実線で示す。第2正規化後の歩行波形データ(実線)では、爪先離地TOのタイミングが60%に一致する。
【0041】
図7図8には、進行方向加速度(Y方向加速度)に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化する例を示した。進行方向加速度(Y方向加速度)以外の加速度/角速度に関して、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)の歩行周期に合わせて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化する。また、正規化部122は、3軸周りの角速度の時系列データを積分することで、3軸周りの角度の時系列データを生成してもよい。その場合、正規化部122は、3軸周りの角度に関しても、進行方向加速度(Y方向加速度)の歩行周期に合わせて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化する。
【0042】
正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)以外の加速度/角速度に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい(図面は省略)。例えば、正規化部122は、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データから、踵接地HCや爪先離地TOを検出してもよい。踵接地HCのタイミングは、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データに表れる急峻な極小ピークのタイミングである。急峻な極小ピークのタイミングにおいては、垂直方向加速度(Z方向加速度)の値がほぼ0になる。踵接地HCのタイミングの目印になる極小ピークは、一歩行周期分の歩行波形データの最小ピークに相当する。連続する踵接地HCの間の区間が、一歩行周期である。爪先離地TOのタイミングは、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データが、踵接地HCの直後の極大ピークの後に変動の小さい区間を経た後に、なだらかに増大する途中の変曲点のタイミングである。また、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)および垂直方向加速度(Z方向加速度)の両方に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい。また、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)および垂直方向加速度(Z方向加速度)以外の加速度や角速度、角度等に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい。
【0043】
抽出部123は、正規化部122によって正規化された一歩行周期分の歩行波形データを取得する。抽出部123は、一歩行周期分の歩行波形データから、下肢筋力の推定に用いられる特徴量を抽出する。抽出部123は、予め設定された条件に基づいて、時間的に連続する歩行フェーズを統合した歩行フェーズクラスターから、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を抽出する。歩行フェーズクラスターは、少なくとも一つの歩行フェーズを含む。歩行フェーズクラスターには、単一の歩行フェーズも含まれる。下肢筋力の推定に用いられる特徴量が抽出される歩行波形データや歩行フェーズについては、後述する。
【0044】
図9は、一歩行周期分の歩行波形データから、下肢筋力を推定するための特徴量を抽出することについて説明するための概念図である。例えば、抽出部123は、時間的に連続する歩行フェーズi~i+mを、歩行フェーズクラスターCとして抽出する(i、mは自然数)。歩行フェーズクラスターCは、m個の歩行フェーズ(構成要素)を含む。すなわち、歩行フェーズクラスターCを構成する歩行フェーズ(構成要素)の数(構成要素数とも呼ぶ)は、mである。図9には、歩行フェーズが整数値の例を挙げるが、歩行フェーズは小数点以下まで細分化されてもよい。歩行フェーズが小数点以下まで細分化される場合、歩行フェーズクラスターCの構成要素数は、歩行フェーズクラスターの区間のデータ点数に応じた数になる。抽出部123は、歩行フェーズi~i+mの各々から特徴量を抽出する。歩行フェーズクラスターCが単一の歩行フェーズjによって構成される場合、抽出部123は、その単一の歩行フェーズjから特徴量を抽出する(jは自然数)。
【0045】
生成部125は、歩行フェーズクラスターを構成する歩行フェーズの各々から抽出された特徴量(第1特徴量)に特徴量構成式を適用して、歩行フェーズクラスターの特徴量(第2特徴量)を生成する。特徴量構成式は、歩行フェーズクラスターの特徴量を生成するために、予め設定された計算式である。例えば、特徴量構成式は、四則演算に関する計算式である。例えば、特徴量構成式を用いて算出される第2特徴量は、歩行フェーズクラスターに含まれる各歩行フェーズにおける第1特徴量の積分平均値や算術平均値、傾斜、ばらつきなどである。例えば、生成部125は、歩行フェーズクラスターを構成する歩行フェーズの各々から抽出された第1特徴量の傾斜やばらつきを算出する計算式を、特徴量構成式として適用する。例えば、歩行フェーズクラスターが単独の歩行フェーズで構成される場合は、傾斜やばらつきを算出できないため、積分平均値や算術平均値などを計算する特徴量構成式を用いればよい。
【0046】
特徴量データ出力部127は、生成部125によって生成された歩行フェーズクラスターごとの特徴量データを出力する。特徴量データ出力部127は、生成された歩行フェーズクラスターの特徴量データを、その特徴量データを使用する下肢筋力推定装置13に出力する。
【0047】
〔下肢筋力推定装置〕
図10は、下肢筋力推定装置13の構成の一例を示すブロック図である。下肢筋力推定装置13は、データ取得部131、記憶部132、推定部133、および出力部135を有する。
【0048】
データ取得部131は、歩容計測装置10から特徴量データを取得する。データ取得部131は、受信された特徴量データを推定部133に出力する。データ取得部131は、ケーブルなどの有線を介して特徴量データを歩容計測装置10から受信してもよいし、無線通信を介して特徴量データを歩容計測装置10から受信してもよい。例えば、データ取得部131は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、特徴量データを歩容計測装置10から受信するように構成される。なお、データ取得部131の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0049】
記憶部132は、歩行波形データから抽出された特徴量データを用いて、下肢筋力指標として5回立ち座り時間を推定する推定モデルを記憶する。記憶部132は、複数の被験者の5回立ち座り時間に関する特徴量データと、5回立ち座り時間との関係を学習した推定モデルを記憶する。例えば、記憶部132は、複数の被験者に関して学習された、5回立ち座り時間を推定する推定モデルを記憶する。5回立ち座り時間には、年齢の影響が出る。そのため、記憶部132は、年齢に関する属性データに応じた推定モデルを記憶してもよい。
【0050】
図11は、5回立ち座りテスト(SS-5テスト)について説明するための概念図である。被験者は、椅子に座った状態から立ち上がる動作を5回繰り返す。椅子に座った状態から計測を開始して、立ち座りを繰り返し、5回立ち上がった時点で計測終了である。
【0051】
下肢筋力は、5回立ち座り時間に応じて評価できる。60~69歳ならば、5回立ち座り時間の平均値は、11~12秒程度である。70~89歳ならば、5回立ち座り時間の平均値は、12~13秒程度である。5回立ち座り時間が14~15秒程度かかると、転倒リスクが高い。ここで挙げた5回立ち座り時間に応じた下肢筋力の評価基準は、目安であって、状況に応じて設定されればよい。
【0052】
推定モデルは、製品の工場出荷時や、下肢筋力推定システム1をユーザが使用する前のキャリブレーション時等のタイミングで、記憶部132に記憶させておけばよい。例えば、外部のサーバ等の記憶装置に保存された推定モデルを用いるように構成してもよい。その場合、その記憶装置と接続されたインターフェース(図示しない)を介して、推定モデルを用いるように構成すればよい。
【0053】
推定部133は、データ取得部131から特徴量データを取得する。推定部133は、取得された特徴量データを用いて、下肢筋力として5回立ち座り時間の推定を実行する。推定部133は、記憶部132に記憶された推定モデルに特徴量データを入力する。推定部133は、推定モデルから出力される下肢筋力(5回立ち座り時間)に応じた推定結果を出力する。クラウドやサーバ等に構築された外部の記憶装置に保存された推定モデルを用いる場合、推定部133は、その記憶装置と接続されたインターフェース(図示しない)を介して、推定モデルを用いるように構成される。
【0054】
出力部135は、推定部133による下肢筋力の推定結果を出力する。例えば、出力部135は、被験者(ユーザ)の携帯端末の画面に、下肢筋力の推定結果を表示させる。例えば、出力部135は、推定結果を使用する外部システム等に対して、その推定結果を出力する。下肢筋力推定装置13から出力された下肢筋力の使用に関しては、特に限定を加えない。
【0055】
例えば、下肢筋力推定装置13は、被験者(ユーザ)が携帯する携帯端末(図示しない)を介して、クラウドやサーバに構築された外部システム等に接続される。携帯端末(図示しない)は、携帯可能な通信機器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンや、スマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する携帯型の通信機器である。例えば、下肢筋力推定装置13は、ケーブルなどの有線を介して、携帯端末に接続される。例えば、下肢筋力推定装置13は、無線通信を介して、携帯端末に接続される。例えば、下肢筋力推定装置13は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、携帯端末に接続される。なお、下肢筋力推定装置13の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。下肢筋力の推定結果は、携帯端末にインストールされたアプリケーションによって使用されてもよい。その場合、携帯端末は、その携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトウェア等によって、推定結果を用いた処理を実行する。
【0056】
〔5回立ち座り時間推定〕
次に、5回立ち座り時間と特徴量データとの相関関係について、検証例を交えて説明する。図12は、5回立ち座り時間の推定に用いられる特徴量をまとめた対応表である。図12の対応表は、特徴量の番号、特徴量が抽出される歩行波形データ、歩行フェーズクラスターが抽出される歩行フェーズ(%)、および関連筋肉を対応付ける。5回立ち座り時間は、大腿四頭筋や、ハムストリングス、前脛骨筋、腓腹筋との間に相関がある。そのため、5回立ち座り時間の推定には、これらの特徴が表れる歩行フェーズから抽出される特徴量F1~F4が用いられる。
【0057】
図13図16は、5回立ち座り時間と特徴量データとの相関関係の検証結果である。図13図16には、年齢が60~85歳の男性27人および女性35人の合計62人の被験者に対して、検証を行った結果を示す。図13図16には、歩容計測装置10が搭載された履物を履いた歩行に応じて抽出された特徴量を用いて推定された推定値と、5回立ち座り時間の計測値(真値)との相関関係を検証した結果を示す。
【0058】
特徴量F1は、矢状面内(X軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGxの歩行フェーズ42~54%の区間から抽出される。歩行フェーズ42~54%は、立脚終期T3から遊脚前期T4にかけた区間である。特徴量F1には、主に、腓腹筋の動きに関する特徴が含まれる。図13は、特徴量F1と5回立ち座り時間との相関関係の検証結果である。図13のグラフの横軸は、正規化角速度である。特徴量F1と5回立ち座り時間との相関係数Rは、-0.394であった。
【0059】
特徴量F2は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ99~100%の区間から抽出される。歩行フェーズ99~100%は、遊脚終期T7の終盤である。特徴量F2には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。図14は、特徴量F2と5回立ち座り時間との相関関係の検証結果である。図14のグラフの横軸は、正規化角速度である。特徴量F2と5回立ち座り時間との相関係数Rは、-0.387であった。
【0060】
特徴量F3は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ10~12%の区間から抽出される。歩行フェーズ10~12%は、立脚中期T2の序盤である。特徴量F3には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、腓腹筋の動きに関する特徴が含まれる。図15は、特徴量F3と5回立ち座り時間との相関関係の検証結果である。図15のグラフの横軸は、正規化角速度である。特徴量F4と5回立ち座り時間との相関係数Rは、-0.387であった。
【0061】
特徴量F4は、水平面内(Z軸周り)における角度(姿勢角)の時系列データに関する歩行波形データEzの歩行フェーズ99%の区間から抽出される。歩行フェーズ99%は、遊脚終期T7の終盤である。特徴量F4には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。図16は、特徴量F4と5回立ち座り時間との相関関係の検証結果である。図16のグラフの横軸は、水平面内(Z軸周り)における角度である。特徴量F4と5回立ち座り時間との相関係数Rは、0.379であった。
【0062】
図17は、下肢筋力として5回立ち座り時間を推定するために予め構築された推定モデル151に、ユーザの歩行に伴って計測されたセンサデータから抽出される特徴量F1~F4を入力する一例を示す概念図である。推定モデル151は、特徴量F1~F4の入力に応じて、下肢筋力指標である5回立ち座り時間を出力する。例えば、推定モデル151は、5回立ち座り時間の推定に用いられる特徴量F1~F4を説明変数とし、5回立ち座り時間を目的変数とする教師データを用いた学習で生成される。5回立ち座り時間を推定するための特徴量データの入力に応じて、下肢筋力の指標である5回立ち座り時間に関する推定結果が出力されれば、推定モデル151の推定結果には限定を加えない。例えば、推定モデル151は、5回立ち座り時間の推定に用いられる特徴量F1~F4に加えて、属性データ(年齢)を説明変数として、5回立ち座り時間を推定するモデルであってもよい。
【0063】
例えば、記憶部132には、重回帰予測法を用いて、5回立ち座り時間を推定する推定モデルが記憶される。例えば、記憶部132には、以下の式1を用いて、5回立ち座り時間Tを推定するためのパラメータが記憶される。
T=a1×F1+a2×F2+a3×F3+a4×F4+a0・・・(1)
上記の式1において、F1、F2、F3、F4は、図12の対応表に示した5回立ち座り時間の推定に用いられる歩行フェーズクラスターごとの特徴量である。a1、a2、a3、a4は、F1、F2、F3、F4に掛け合わされる係数である。a0は、定数項である。例えば、記憶部132には、a0、a1、a2、a3、a4を記憶させておく。
【0064】
次に、上述した62名の被験者の計測データを用いて生成された推定モデル151を評価した結果を示す。ここでは、被験者の属性(歩行速度を含む)を用いて下肢筋力(5回立ち座り時間)を推定した検証例(図18)と、被験者の歩容の特徴量を用いて下肢筋力(5回立ち座り時間)を推定した検証例(図19)とを比較する。図18および図19には、61人の計測データを用いて生成された推定モデルを、LOSO(Leave-One-Subject-Out)の方法によって、残りの1人の計測データを用いてテストした結果を示す。図18および図19には、全員(62人)の被験者に対してLOSOを行い、テストによる予測値と計測値(真値)とを対応させた結果を示す。LOSOのテスト結果は、級内相関係数ICC(Intraclass Correlation Coefficients)、平均絶対誤差MAE(Mean Absolute Error)、決定係数R2の値で評価した。級内相関係数ICCには、検者間信頼性を評価するために、級内相関係数ICC(2、1)を用いた。
【0065】
図18は、性別、年齢、身長、体重、および歩行速度を説明変数とし、5回立ち座り時間を目的変数とした教師データを学習させた比較例の推定モデルの検証結果である。比較例の推定モデルでは、級内相関係数ICC(2、1)が0.20、平均絶対誤差MAEが2.18、決定係数R2が0.06であった。
【0066】
図19は、特徴量F1~F4および年齢を説明変数とし、5回立ち座り時間を目的変数とした教師データを学習させた本実施形態の推定モデル151の検証結果である。本実施形態の推定モデル151は、級内相関係数ICC(2、1)が0.503、平均絶対誤差MAEが1.87、決定係数R2が0.27であった。すなわち、本実施形態の推定モデル151は、比較例の推定モデルと比較して、信頼性が高く、誤差が小さく、説明変数によって目的変数が十分に説明されている。すなわち、本実施形態の手法によれば、属性および歩行速度のみを用いた推定モデルと比較して、信頼性が高く、誤差が小さく、説明変数によって目的変数が十分に説明された推定モデル151を生成できる。
【0067】
(動作)
次に、下肢筋力推定システム1の動作について図面を参照しながら説明する。ここでは、下肢筋力推定システム1に含まれる歩容計測装置10および下肢筋力推定装置13について、個別に説明する。歩容計測装置10に関しては、歩容計測装置10に含まれる特徴量データ生成部12の動作について説明する。
【0068】
〔歩容計測装置〕
図20は、歩容計測装置10に含まれる特徴量データ生成部12の動作について説明するためのフローチャートである。図20のフローチャートに沿った説明においては、特徴量データ生成部12を動作主体として説明する。
【0069】
図20において、まず、特徴量データ生成部12は、足の動きに関するセンサデータの時系列データを取得する(ステップS101)。
【0070】
次に、特徴量データ生成部12は、センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出する(ステップS102)。特徴量データ生成部12は、センサデータの時系列データから踵接地および爪先離地を検出する。特徴量データ生成部12は、連続する踵接地間の区間の時系列データを、一歩行周期分の歩行波形データとして抽出する。
【0071】
次に、特徴量データ生成部12は、抽出された一歩行周期分の歩行波形データを正規化する(ステップS103)。特徴量データ生成部12は、一歩行周期分の歩行波形データを0~100%の歩行周期に正規化する(第1正規化)。さらに、特徴量データ生成部12は、第1正規化された一歩行周期分の歩行波形データの立脚相と遊脚相の比を60:40に正規化する(第2正規化)。
【0072】
次に、特徴量データ生成部12は、正規化された歩行波形に関して、下肢筋力の推定に用いられる歩行フェーズから特徴量を抽出する(ステップS104)。例えば、特徴量データ生成部12は、予め構築された推定モデルに入力される特徴量を抽出する。
【0073】
次に、特徴量データ生成部12は、抽出された特徴量を用いて、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を生成する(ステップS105)。
【0074】
次に、特徴量データ生成部12は、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を統合して、一歩行周期分の特徴量データを生成する(ステップS106)。
【0075】
次に、特徴量データ生成部12は、生成された特徴量データを下肢筋力推定装置13に出力する(ステップS107)。
【0076】
〔下肢筋力推定装置〕
図21は、下肢筋力推定装置13の動作について説明するためのフローチャートである。図21のフローチャートに沿った説明においては、下肢筋力推定装置13を動作主体として説明する。
【0077】
図21において、まず、下肢筋力推定装置13は、足の動きに関するセンサデータを用いて生成された特徴量データを取得する(ステップS131)。
【0078】
次に、下肢筋力推定装置13は、取得した特徴量データを、下肢筋力(5回立ち座り時間)を推定する推定モデルに入力する(ステップS132)。
【0079】
次に、下肢筋力推定装置13は、推定モデルからの出力(推定値)に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する(ステップS133)。例えば、下肢筋力推定装置13は、ユーザの5回立ち座り時間を下肢筋力として推定する。
【0080】
次に、下肢筋力推定装置13は、推定された下肢筋力に関する情報を出力する(ステップS134)。例えば、下肢筋力は、ユーザの携帯する端末装置(図示しない)に出力される。例えば、下肢筋力は、下肢筋力を用いた処理を実行するシステムに出力される。
【0081】
(適用例)
次に、本実施形態に係る適用例について図面を参照しながら説明する。以下の適用例において、靴に配置された歩容計測装置10によって計測された特徴量データを用いて、ユーザが携帯する携帯端末にインストールされた下肢筋力推定装置13の機能が、下肢筋力を推定する例を示す。
【0082】
図22は、歩容計測装置10が配置された靴100を履いて歩行するユーザの携帯する携帯端末160の画面に、下肢筋力推定装置13による推定結果を表示させる一例を示す概念図である。図22は、ユーザの歩行中に計測されたセンサデータに応じた特徴量データを用いた下肢筋力の推定結果に応じた情報を、携帯端末160の画面に表示させる例である。
【0083】
図22は、下肢筋力である5回立ち座り時間の推定値に応じた情報が、携帯端末160の画面に表示される例である。図22の例では、下肢筋力の推定結果として、5回立ち座り時間の推定値が、携帯端末160の表示部に表示される。また、図22の例では、下肢筋力である5回立ち座り時間の推定値に応じて、「下肢筋力が低下しています。」という下肢筋力の推定結果に関する情報が、携帯端末160の表示部に表示される。また、図22の例では、下肢筋力である5回立ち座り時間の推定値に応じて、「トレーニングAを推奨します。下記の動画をご覧ください。」という下肢筋力の推定結果に応じた推薦情報が、携帯端末160の表示部に表示される。携帯端末160の表示部に表示された情報を確認したユーザは、推薦情報に応じて、トレーニングAの動画を参照して運動することによって、下肢筋力の増大につながるトレーニングを実践できる。
【0084】
以上のように、本実施形態の下肢筋力推定システムは、歩容計測装置および下肢筋力推定装置を備える。歩容計測装置は、センサと特徴量データ生成部を備える。センサは、加速度センサと角速度センサを有する。センサは、加速度センサを用いて、空間加速度を計測する。センサは、角速度センサを用いて、空間角速度を計測する。センサは、計測した空間加速度および空間角速度を用いて、足の動きに関するセンサデータを生成する。センサは、生成したセンサデータを特徴量データ生成部に出力する。特徴量データ生成部は、足の動きに関するセンサデータの時系列データを取得する。特徴量データ生成部は、センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出する。特徴量データ生成部は、抽出された歩行波形データを正規化する。特徴量データ生成部は、正規化された歩行波形データから、下肢筋力の推定に用いられる特徴量を、時間的に連続する少なくとも一つの歩行フェーズによって構成される歩行フェーズクラスターから抽出する。特徴量データ生成部は、抽出された特徴量を含む特徴量データを生成する。特徴量データ生成部は、生成された特徴量データを出力する。
【0085】
下肢筋力推定装置は、データ取得部、記憶部、推定部、および出力部を備える。データ取得部は、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する。記憶部は、特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルを記憶する。推定部は、取得された特徴量データを推定モデルに入力して、ユーザの下肢筋力を推定する。出力部は、推定された下肢筋力に関する情報を出力する。
【0086】
本実施形態の下肢筋力推定システムは、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された特徴量を用いて、ユーザの下肢筋力を推定する。そのため、本実施形態の下肢筋力推定システムによれば、下肢筋力を計測するための器具を用いずに、日常生活において下肢筋力を適宜推定できる。
【0087】
本実施形態の一態様において、データ取得部は、足の動きに関するセンサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された特徴量を含む特徴量データを取得する。データ取得部は、下肢筋力指標として立ち座りテストの成績値を推定するために用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する。本態様によれば、足の動きに関するセンサデータを用いることで、下肢筋力を計測するための器具を用いずに、日常生活において下肢筋力を適宜推定できる。
【0088】
本実施形態の一態様において、記憶部は、複数の被験者に関する教師データを用いた学習によって生成された推定モデルを記憶する。推定モデルは、下肢筋力指標の推定に用いられる特徴量を説明変数とし、複数の被験者の下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成される。推定部は、ユーザに関して取得された特徴量データを推定モデルに入力する。推定部は、推定モデルから出力されたユーザの下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する。本態様によれば、下肢筋力を計測するための器具を用いずに、日常生活において下肢筋力を適宜推定できる。
【0089】
本実施形態の一態様において、記憶部は、被験者の属性データ(年齢)を含めた説明変数を用いて学習された推定モデルを記憶する。推定部は、ユーザに関する特徴量データおよび属性データ(年齢)を推定モデルに入力する。推定部は、推定モデルから出力されたユーザの下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する。本態様では、下肢筋力に影響を与える属性データ(年齢)を含めて、下肢筋力を推定する。そのため、本態様によれば、下肢筋力をより高精度に計測できる。
【0090】
本実施形態の一態様において、記憶部は、複数の被験者に関する教師データを用いた学習によって生成された推定モデルを記憶する。推定モデルは、複数の被験者の歩行波形データから抽出された特徴量を説明変数とし、複数の被験者の下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成されたモデルである。例えば、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量が、説明変数に含まれる。例えば、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量が、説明変数に含まれる。例えば、遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量が、説明変数に含まれる。推定部は、ユーザの歩行に応じて取得された特徴量データを推定モデルに入力する。推定部は、推定モデルから出力されたユーザの下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する。本態様によれば、下肢筋力に影響を与える筋肉の活動に応じた特徴量を学習させた推定モデルを用いることによって、身体活動により適合した下肢筋力を推定できる。
【0091】
本実施形態の一態様において、記憶部は、複数の被験者に関して、歩行波形データから抽出された複数の特徴量を説明変数とし、被験者の下肢筋力指標に関する下肢筋力を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された推定モデルを記憶する。例えば、冠状面内における角速度の歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤から抽出された特徴量が、説明変数に含まれる。例えば、矢状面内における角速度の歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された特徴量が、説明変数に含まれる。例えば、水平面内における角度の遊脚終期の終盤から抽出された特徴量が、説明変数に含まれる。データ取得部は、ユーザの歩行に応じて抽出された特徴量を含む特徴量データを取得する。例えば、データ取得部は、冠状面内における角速度の歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤の特徴量を取得する。例えば、データ取得部は、矢状面内における角速度の歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間の特徴量を取得する。例えば、データ取得部は、水平面内における角度の前記歩行波形データの遊脚終期の終盤の特徴量を取得する。推定部は、取得された特徴量データを推定モデルに入力する。推定部は、推定モデルから出力されたユーザの下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する。本態様によれば、下肢筋力に影響を与える筋肉の活動に応じた特徴が含まれる歩行波形データから抽出された特徴量を学習させた推定モデルを用いることによって、足の動きに関するセンサデータを用いて、身体活動により適合した下肢筋力を推定できる。
【0092】
本実施形態の一態様において、下肢筋力推定装置は、ユーザによって視認可能な画面を有する端末装置に実装される。例えば、下肢筋力推定装置は、ユーザの足の動きに応じて推定された下肢筋力に関する情報を、端末装置の画面に表示させる。例えば、下肢筋力推定装置は、ユーザの足の動きに応じて推定された下肢筋力に応じた推薦情報を、端末装置の画面に表示させる。例えば、下肢筋力推定装置は、ユーザの足の動きに応じて推定された下肢筋力に応じた推薦情報として、下肢筋力に関する身体部位を鍛えるためのトレーニングに関する動画を端末装置の画面に表示させる。本態様によれば、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出される特徴量に応じて推定された下肢筋力を、ユーザによって視認可能な画面に表示させることによって、ユーザが自身の下肢筋力に応じた情報を確認できる。
【0093】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る学習システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の学習システムは、歩容計測装置によって計測されたセンサデータから抽出された特徴量データを用いた学習によって、特徴量の入力に応じて下肢筋力を推定するための推定モデルを生成する。
【0094】
(構成)
図23は、本実施形態に係る学習システム2の構成の一例を示すブロック図である。学習システム2は、歩容計測装置20および学習装置25を備える。歩容計測装置20と学習装置25は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。歩容計測装置20と学習装置25は、単一の装置で構成されてもよい。また、学習システム2の構成から歩容計測装置20を除き、学習装置25だけで学習システム2が構成されてもよい。図23には歩容計測装置20を一つしか図示していないが、左右両足に歩容計測装置20が一つずつ(計二つ)配置されてもよい。また、学習装置25は、歩容計測装置20に接続されず、予め歩容計測装置20によって生成されてデータベースに格納されていた特徴量データを用いて、学習を実行するように構成されてもよい。
【0095】
歩容計測装置20は、左右の足のうち少なくとも一方に設置される。歩容計測装置20は、第1の実施形態の歩容計測装置10と同様の構成である。歩容計測装置20は、加速度センサおよび角速度センサを含む。歩容計測装置20は、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。歩容計測装置20は、センサデータの時系列データから、正規化された一歩行周期分の歩行波形データを生成する。歩容計測装置20は、推定対象である下肢筋力の推定に用いられる特徴量データを生成する。歩容計測装置20は、生成された特徴量データを学習装置25に送信する。なお、歩容計測装置20は、学習装置25によってアクセスされるデータベース(図示しない)に、特徴量データを送信するように構成されてもよい。データベースに蓄積された特徴量データは、学習装置25の学習に用いられる。
【0096】
学習装置25は、歩容計測装置20から特徴量データを受信する。データベース(図示しない)に蓄積された特徴量データを用いる場合、学習装置25は、データベースから特徴量データを受信する。学習装置25は、受信された特徴量データを用いた学習を実行する。例えば、学習装置25は、複数の被験者歩行波形データから抽出された特徴量データを説明変数とし、その特徴量データに応じた下肢筋力に関する値を目的変数とする教師データを学習する。学習装置25が実行する学習のアルゴリズムには、特に限定を加えない。学習装置25は、複数の被験者に関する教師データを用いて学習された推定モデルを生成する。学習装置25は、生成された推定モデルを記憶する。学習装置25によって学習された推定モデルは、学習装置25の外部の記憶装置に格納されてもよい。
【0097】
〔学習装置〕
次に、学習装置25の詳細について図面を参照しながら説明する。図24は、学習装置25の詳細構成の一例を示すブロック図である。学習装置25は、受信部251、学習部253、および記憶部255を有する。
【0098】
受信部251は、歩容計測装置20から特徴量データを受信する。受信部251は、受信された特徴量データを学習部253に出力する。受信部251は、ケーブルなどの有線を介して特徴量データを歩容計測装置20から受信してもよいし、無線通信を介して特徴量データを歩容計測装置20から受信してもよい。例えば、受信部251は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、特徴量データを歩容計測装置20から受信するように構成される。なお、受信部251の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0099】
学習部253は、受信部251から特徴量データを取得する。学習部253は、取得された特徴量データを用いて学習を実行する。例えば、学習部253は、被験者の足の動きに応じて計測されたセンサデータから抽出された特徴量データを説明変数とし、その被験者の5回立ち座り時間を目的変数とするデータセットを教師データとして学習する。例えば、学習部253は、複数の被験者に関して学習された、特徴量データの入力に応じて5回立ち座り時間を推定する推定モデルを生成する。例えば、学習部253は、属性データ(年齢)に応じた推定モデルを生成する。例えば、学習部253は、被験者の足の動きに応じて計測されたセンサデータから抽出された特徴量データと、被験者の属性データ(年齢)とを説明変数として、下肢筋力として5回立ち座り時間を推定する推定モデルを生成する。学習部253は、複数の被験者に関して学習された推定モデルを記憶部255に記憶させる。
【0100】
例えば、学習部253は、線形回帰のアルゴリズムを用いた学習を実行する。例えば、学習部253は、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)のアルゴリズムを用いた学習を実行する。例えば、学習部253は、ガウス過程回帰(GPR:Gaussian Process Regression)のアルゴリズムを用いた学習を実行する。例えば、学習部253は、ランダムフォレスト(RF:Random Forest)のアルゴリズムを用いた学習を実行する。例えば、学習部253は、特徴量データに応じて、その特徴量データの生成元の被験者を分類する教師なし学習を実行してもよい。学習部253が実行する学習のアルゴリズムには、特に限定を加えない。
【0101】
学習部253は、一歩行周期分の歩行波形データを説明変数として、学習を実行してもよい。例えば、学習部253は、3軸方向の加速度、3軸周りの角速度、3軸周りの角度(姿勢角)の歩行波形データを説明変数とし、推定対象である下肢筋力の正解値を目的変数とした教師あり学習を実行する。例えば、0~100%の歩行周期において歩行フェーズが1%刻みで設定されている場合、学習部253は、909個の説明変数を用いて学習する。
【0102】
図25は、推定モデルを生成するための学習について説明するための概念図である。図25は、説明変数である特徴量F1~F4と、目的変数である5回立ち座り時間(下肢筋力指標)とのデータセットを教師データとして、学習部253に学習させる一例を示す概念図である。例えば、学習部253は、複数の被験者に関するデータを学習し、センサデータから抽出された特徴量の入力に応じて、5回立ち座り時間(下肢筋力指標)に関する出力(推定値)を出力する推定モデルを生成する。
【0103】
記憶部255は、複数の被験者に関して学習された推定モデルを記憶する。例えば、記憶部255は、複数の被験者に関して学習された、下肢筋力を推定する推定モデルを記憶する。例えば、記憶部255に記憶された推定モデルは、第1の実施形態の下肢筋力推定装置13による下肢筋力の推定に用いられる。
【0104】
以上のように、本実施形態の学習システムは、歩容計測装置および学習装置を備える。歩容計測装置は、足の動きに関するセンサデータの時系列データを取得する。歩容計測装置は、センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出し、抽出された歩行波形データを正規化する。歩容計測装置は、正規化された歩行波形データから、ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を、時間的に連続する少なくとも一つの歩行フェーズによって構成される歩行フェーズクラスターから抽出する。歩容計測装置は、抽出された特徴量を含む特徴量データを生成する。歩容計測装置は、生成された特徴量データを学習装置に出力する。
【0105】
学習装置は、受信部、学習部、および記憶部を有する。受信部は、歩容計測装置によって生成された特徴量データを取得する。学習部は、特徴量データを用いて学習を実行する。学習部は、ユーザの歩行に伴って計測されるセンサデータの時系列データから抽出される歩行フェーズクラスターの特徴量(第2特徴量)の入力に応じて、下肢筋力を出力する推定モデルを生成する。学習部によって生成された推定モデルは、記憶部に保存される。
【0106】
本実施形態の学習システムは、歩容計測装置によって計測された特徴量データを用いて、推定モデルを生成する。そのため、本態様によれば、下肢筋力を計測するための器具を用いずに、日常生活において下肢筋力を適宜推定することを可能とする推定モデルを生成できる。
【0107】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る下肢筋力推定装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の下肢筋力推定装置は、第1の実施形態の下肢筋力推定システムに含まれる下肢筋力推定装置を簡略化した構成である。
【0108】
図26は、本実施形態に係る下肢筋力推定装置33の構成の一例を示すブロック図である。下肢筋力推定装置33は、データ取得部331、記憶部332、推定部333、および出力部335を備える。
【0109】
データ取得部331は、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、ユーザの下肢筋力指標の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する。記憶部332は、特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルを記憶する。推定部333は、取得された特徴量データを推定モデルに入力し、推定モデルから出力された下肢筋力指標に応じて、ユーザの下肢筋力を推定する。出力部335は、推定された下肢筋力に関する情報を出力する。
【0110】
以上のように、本実施形態では、ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された特徴量を用いて、ユーザの下肢筋力を推定する。そのため、本実施形態によれば、下肢筋力を計測するための器具を用いずに、日常生活において下肢筋力を適宜推定できる。
【0111】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図27の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図27の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0112】
図27のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図27においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0113】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0114】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0115】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0116】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0117】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0118】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0119】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0120】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図27のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0121】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0122】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0123】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得するデータ取得部と、
前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルを記憶する記憶部と、
取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する推定部と、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力する出力部と、を備える下肢筋力推定装置。
(付記2)
前記データ取得部は、
足の動きに関する前記センサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、前記下肢筋力指標として立ち座りテストの成績値を推定するために用いられる特徴量を含む前記特徴量データを取得する付記1に記載の下肢筋力推定装置。
(付記3)
前記記憶部は、
複数の被験者に関して、前記下肢筋力指標の推定に用いられる特徴量を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶し、
前記推定部は、
前記ユーザに関して取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する付記2に記載の下肢筋力推定装置。
(付記4)
前記記憶部は、
複数の前記被験者の年齢を含めた説明変数を用いて学習された前記推定モデルを記憶し、
前記推定部は、
前記ユーザに関する前記特徴量データおよび年齢を前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する付記3に記載の下肢筋力推定装置。
(付記5)
前記記憶部は、
複数の前記被験者の前記歩行波形データに関して、立脚中期の序盤から抽出される大腿四頭筋、ハムストリングス、および腓腹筋に関する特徴量、立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された腓腹筋の活動に関する特徴量、および遊脚終期の終盤から抽出された大腿四頭筋、ハムストリングス、および前脛骨筋の活動に関する特徴量、を説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶し、
前記推定部は、
前記ユーザの歩行に応じて取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する付記3または4に記載の下肢筋力推定装置。
(付記6)
前記記憶部は、
複数の前記被験者に関して、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤から抽出された特徴量と、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間から抽出された特徴量と、水平面内における角度の前記歩行波形データの遊脚終期の終盤から抽出された特徴量とを説明変数とし、複数の前記被験者の前記下肢筋力指標を目的変数とする教師データを用いた学習によって生成された前記推定モデルを記憶し、
前記データ取得部は、
前記ユーザの歩行に応じて抽出された、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚中期の序盤および遊脚終期の終盤の特徴量と、冠状面内における角速度の前記歩行波形データの立脚終期から遊脚前期にかけた区間の特徴量と、水平面内における角度の前記歩行波形データの遊脚終期の終盤の特徴量とを含む前記特徴量データを取得し、
前記推定部は、
取得された前記特徴量データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された前記ユーザの前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する付記5に記載の下肢筋力推定装置。
(付記7)
前記推定部は、
前記ユーザに関して推定された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を推定し、
前記出力部は、
推定された前記下肢筋力に関する情報を出力する付記3乃至6のいずれか一つに記載の下肢筋力推定装置。
(付記8)
付記1乃至7のいずれか一つに記載の下肢筋力推定装置と、
下肢筋力の推定対象であるユーザの履物に設置され、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度を用いて足の動きに関するセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを出力するセンサと、歩容の特徴を含む前記センサデータの時系列データを取得し、前記センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出し、抽出された前記歩行波形データを正規化し、正規化された前記歩行波形データから、前記下肢筋力の推定に用いられる特徴量を、時間的に連続する少なくとも一つの歩行フェーズによって構成される歩行フェーズクラスターから抽出し、抽出された特徴量を含む特徴量データを生成し、生成された前記特徴量データを前記下肢筋力推定装置に出力する特徴量データ生成部と有する歩容計測装置と、を備える下肢筋力推定システム。
(付記9)
前記下肢筋力推定装置は、
前記ユーザによって視認可能な画面を有する端末装置に実装され、
前記ユーザの足の動きに応じて推定された前記下肢筋力に関する情報を、前記端末装置の画面に表示させる付記8に記載の下肢筋力推定システム。
(付記10)
前記下肢筋力推定装置は、
前記ユーザの足の動きに応じて推定された前記下肢筋力に応じた推薦情報を、前記端末装置の画面に表示させる付記9に記載の下肢筋力推定システム。
(付記11)
前記下肢筋力推定装置は、
前記ユーザの足の動きに応じて推定された前記下肢筋力に応じた前記推薦情報として、前記下肢筋力に関する身体部位を鍛えるためのトレーニングに関する動画を前記端末装置の画面に表示させる付記10に記載の下肢筋力推定システム。
(付記12)
コンピュータが、
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得し、
取得された前記特徴量データを、前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力し、
前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定し、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力する下肢筋力推定方法。
(付記13)
ユーザの足の動きに関するセンサデータから抽出された、前記ユーザの下肢筋力の推定に用いられる特徴量を含む特徴量データを取得する処理と、
取得された前記特徴量データを、前記特徴量データの入力に応じた下肢筋力指標を出力する推定モデルに入力する処理と、
前記推定モデルから出力された前記下肢筋力指標に応じて、前記ユーザの前記下肢筋力を推定する処理と、
推定された前記ユーザの前記下肢筋力に関する情報を出力する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0124】
1 下肢筋力推定システム
2 学習システム
10、20 歩容計測装置
11 センサ
12 特徴量データ生成部
13 下肢筋力推定装置
25 学習装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
121 取得部
122 正規化部
123 抽出部
125 生成部
127 特徴量データ出力部
131、331 データ取得部
132、332 記憶部
133、333 推定部
135、335 出力部
251 受信部
253 学習部
255 記憶部
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