(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】リスク評価装置、リスク評価方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20250422BHJP
E02D 1/08 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
G06Q50/08
E02D1/08
(21)【出願番号】P 2023570572
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048772
(87)【国際公開番号】W WO2023127090
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
(72)【発明者】
【氏名】横手 俊倫
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】水越 優介
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-57192(JP,A)
【文献】特開2020-77322(JP,A)
【文献】特開2020-184175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
E02D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する地表変位取得手段と、
前記センサ情報
、前記地層情報
及び前記地表変位に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価するリスク評価手段と、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力する出力手段と、
を備えるリスク評価装置。
【請求項2】
前記リスク評価手段は、データベースから取得した前記構造物の環境に関する情報を更に用いて前記構造物に対するリスクを評価する
請求項
1に記載のリスク評価装置。
【請求項3】
前記リスク評価手段は、前記データベースから気象情報を取得して前記構造物に対するリスクを評価する
請求項
2に記載のリスク評価装置。
【請求項4】
前記地層情報として、水を含みやすい地層が含まれる場合、
前記リスク評価手段は、凍上によるひび割れのリスクがあると評価する
請求項1~
3のいずれか一項に記載のリスク評価装置。
【請求項5】
前記地層情報として盛土が含まれる場合、
前記リスク評価手段は、盛土又は盛土の軟弱地盤による地盤沈下のリスクがあると評価する
請求項1~
3のいずれか一項に記載のリスク評価装置。
【請求項6】
前記評価した前記構造物に対するリスクの対応方針を提案する提案手段を更に備え、
前記出力手段は、前記構造物に対するリスクと前記対応方針を出力する、請求項1~
5のいずれか一項に記載のリスク評価装置。
【請求項7】
前記センサ情報が、移動体が走行する構造物を撮影した画像データである
請求項1~
6のいずれか一項に記載のリスク評価装置。
【請求項8】
コンピュータが、
センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得し、
前記センサ情報
、前記地層情報
及び前記地表変位に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価し、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力する
リスク評価方法。
【請求項9】
センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得し、
前記センサ情報
、前記地層情報
及び前記地表変位に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価し、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力すること
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リスク評価装置、リスク評価方法、及び、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたドライブレコーダーが取得した画像を用いて、道路や滑走路の状態を判定する技術がある。例えば、特許文献1には、自車両に備えられたカメラ等が撮影した画像に対して画像認識処理を行い、例えば、道路の陥没、その他の災害の発生等の道路の異常状態を検出する車載装置が開示されている。
【0003】
また、構造物の表面の種類に応じて、劣化の度合いを判定する技術がある。例えば、特許文献2には、撮影された道路画像、撮影位置情報から道路の舗装種別を自動判定し、道路画像、撮影位置情報、舗装種別判定結果に基づいて舗装種別毎に劣化の度合いを自動判定する舗装劣化判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-049442号公報
【文献】特開2020-147961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、道路、橋梁、及び、滑走路等の大きな構造物においては、構造物全体に影響する地盤(表層地層)の変位が発生した場合、ひび割れ等の表面の劣化が発生する。この表面の劣化は、表面部材の劣化(個別劣化)等の構造物自体の劣化に起因する変位とは別に発生する。このため、地盤の変位に伴う劣化と、個別劣化とは、修繕等の対応が異なる。
【0006】
地盤には、様々な種類があり、種類ごとに地盤沈下等の変位の進行が違うため、地盤上の構造物の劣化も異なる。よって、地盤の種類に応じて劣化を判定する手法が異なる。特許文献2に記載された舗装劣化判定装置は、道路の舗装種別として、アスファルトやコンクリート等の道路の舗装種別に基づいて、劣化の度合いを判定している。しかし、同じ舗装が施された道路であっても、場所によってその地盤構造が大きく異なるため、適切な構造物の劣化の評価が難しい。
【0007】
本開示の目的の一例は、構造物に対する適切なリスク評価が可能なリスク評価装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態におけるリスク評価装置は、センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、センサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価するリスク評価手段と、評価した構造物に対するリスクを出力する出力手段と、を備える。
【0009】
本発明の一形態におけるリスク評価方法は、センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得し、構造物下の地盤の地層情報を取得し、センサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価し、評価した構造物に対するリスクを出力する。
【0010】
本発明の一形態における記録媒体は、センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得し、構造物下の地盤の地層情報を取得し、センサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価し、評価した構造物に対するリスクを出力することをコンピュータに実行させるプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0011】
本開示による効果の一例は、構造物に対する適切なリスク評価ができることにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置とその周辺の構成の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態にかかるリスク評価装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態にかかるリスク評価装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。各図面は、本発明の実施形態を説明するためのものである。ただし、本発明の実施形態は、各図面の記載に限られるわけではない。また、各図面の同様の構成には、同じ番号を付し、その繰り返しの説明を、省略する場合がある。また、以下の説明に用いる図面において、本発明の課題の解決に関係しない部分の構成については、記載を省略し、図示しない場合もある。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置10の構成の一例を示すブロック図である。リスク評価装置10は、センサ情報取得部101と、地層情報取得部102と、リスク評価部103と、出力部104とを備える。なお、各構成は、図示しない記憶部に、各構成が特定した情報、取得した情報、及び、判定した情報の少なくとも一部を保存してもよい。この場合、各構成は、記憶部から必要な情報を取得してもよい。リスク評価装置10は、センサ情報取得装置から取得したセンサ情報及び構造物下の地盤の地層情報に基づいて、構造物の劣化等のリスクを評価するための装置である。構造物としては、例えば、道路、橋梁、のり枠、堤防、桟橋、護岸、又は、滑走路等の土木構造物が挙げられる。
【0015】
図2は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置10とその周辺の構成の一例を示す概念図である。
図2に示すように、リスク評価装置10は、コンピュータ510、センサ情報取得装置の一例としてドライブレコーダー520、合成開口レーダーシステム(以下SAR)としてSAR530、表示装置の一例として端末装置540、及び、移動体の一例として車両550を含むシステムとして利用される。但し、本実施形態において、SAR530は必須の構成ではない。ネットワーク580は、各装置及びシステムを相互に接続する通信路である。なお、リスク評価装置10(コンピュータ510)とドライブレコーダー520とは、直接的に接続する場合もあるが、ネットワーク等を介して接続する場合もある。
【0016】
ドライブレコーダー520は、リスク評価装置10に、センサ情報を出力する。センサ情報とは、構造物の状況及びその周辺の状況を判定するために、センサから取得された情報である。センサとしては、例えば、カメラ、速度計、又は加速度計が挙げられる。ドライブレコーダー520は、例えば、移動体に搭載されて、センサ情報を取得する。移動体としては、車両やドローン等が挙げられる。また、ドライブレコーダー520ではなく、移動体に取り付けられた固定カメラ、人等が移動体に持ち込んだカメラ又は道路に設置された固定カメラを用いてセンサ情報を取得してもよい。また、ドライブレコーダー520ではなく、移動体に取り付けられた全天カメラ又は車載内蔵カメラ等の固定カメラでも構わない。また、人等が移動体に持ち込んだスマートフォンやタブレットに搭載されたカメラ又は道路に設置された固定カメラを用いてセンサ情報を取得してもよい。
【0017】
SAR530とは、人工衛星や航空機等の飛翔体が移動しながら電波を送信及び受信して、大きな開口を持ったアンテナの場合と等価な画像を得るレーダーシステムである。SAR530は、リスク評価装置10に、測定画像(SAR画像)又は地表変位を出力する。
【0018】
端末装置540は、リスク評価装置10が出力する構造物に対するリスク情報を表示する。端末装置540は、構造物に対するリスク情報を表示できれば、任意の装置でよい。端末装置540は、例えば、自治体等の道路管理者の端末装置であってもよい。
【0019】
図2に含まれる構成の数は、一例である。例えば、ドライブレコーダー520は、単数でも複数でも構わない。あるいは、少なくとも一部のドライブレコーダー520は、車両550に搭載されていなくてもよい。なお、
図2は、理解を容易にするため、ドライブレコーダー520を、車両550の外に表示している。ただし、ドライブレコーダー520は、車両550の内部に搭載されてもよい。
【0020】
図1に戻って、センサ情報取得部101は、センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得する。センサ情報取得部101は、任意のセンサ情報取得のタイミングでセンサ情報を取得する。センサ情報取得部101は、センサ情報として画像データを取得する場合は、画像データと共に画像データが取得された日時及び撮影された位置の情報を取得する。位置の情報は、例えば、マップ上の位置、緯度と経度、GNSS(Global Navigation Satellite System)、又は、GPS(Global Positioning System)による位置情報を含む。センサ情報取得部101は、センサ情報と共に明暗、影の有無、逆光の有無又は周辺の天候等のセンサ取得時の情報を取得してもよい。
【0021】
地層情報取得部102は、構造物下の地盤の地層情報を取得する。地盤とは、構築物の基礎を支える地面の表層部である。地層情報取得部102は、リスク評価対象の構造物が存在する地盤の地層情報を、例えば、公開されたデータベース等より取得する。
【0022】
地層情報とは、造成地情報、表層地層、土壌情報又は地形情報を含む。造成地情報とは、宅地以外の土地を住宅地等にするために土地に対して施した工事情報である。造成地情報としては、例えば、既設盛土、腹付け盛土、谷埋め、地山、非盛土等の盛土を含む。表層地層とは、地表面近くに堆積した地層である。表層地層としては、低湿地堆積物、自然堤防、砂州堆積物、飯室層、柿生層、武蔵野ローム層、武蔵野礫層、小原台砂礫層・善行礫層、下末吉ローム層・下末吉層、早田ローム層、舞岡ローム層、鶴見層・舞岡層等の地質名称、又は、中・後期更新世、前期更新世、宗新世、後期更新世、第四紀等の地層時代を示す情報を含む。土壌情報としては、例えば、砂丘未熟土、黒ボク土、褐色低地土、灰色低地土、岩屑土、暗赤土、人工改変土、人工改変地土等の土壌種類、又は、細砂、粗砂、シルト、粘土等の土性を含む。なお、シルト又は粘土等の水を含みやすい地層や土壌は、軟弱であることが多い。地形情報としては、ローム(火山灰)台地、土石流堆積地、山地斜面、旧水部、旧河道、減低地、川原・河川敷、湿地、現水部、砂礫大地、自然堤防、谷低地、麓屑面・崖錐等の自然地形又は人工平坦地、切土地、埋立地、盛土地、砂利採取跡地等の人口地形を含む。
【0023】
また、地層情報として、地層以外の土地及び土壌に関連する情報を含んでいてもよい。例えば、(平均)傾斜角度、急傾斜地指定、年間降水量、雨水浸透桝、排水困難低地、土砂災害警戒区域、液状化危険度、揺れやすさ、土砂災害警戒指定区域、土地利用種別、登記地目等が挙げられる。これらの情報により、地盤の軟弱さが把握できる。土地利用種別としては、高層建物、低層建物、低層建物密集地、公共施設、工場、展示場、駐車場、公園・緑地、森林、空き地、道路、鉄道、河川、湖沼、海岸である。登記地目としては、宅地、田、畑、牧場、原野、塩田、泉地、池沼、山林、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤井溝(せいこう)、保安林、公衆用道路、公園、鉄道用地、学校用地、雑種地が挙げられる。例えば、河川や池沼等付近によくみられる低地は軟弱であることが多い。
【0024】
また、地層情報取得部102は、地層情報として、地層の時系列的な情報(地層履歴)を取得してもよい。例えば、造成地における、造成前後の土壌の状態、過去の河川の流域の変化や移動、地表の開発・変更予定、造成計画、改良計画、地下トンネルの工事又は大型ビルの建築の計画等の開発計画等周辺の工事計画等を関連付けてもよい。過去に河川流域であった地盤は軟弱であることが多い。なお、リスク評価部103で用いる地層情報は、一つでもよく、複数でもよい。また、リスク評価部103で用いる地層情報は、固定でもよいが、ユーザが任意に指定することもできる。
【0025】
リスク評価部103は、センサ情報取得部101及び地層情報取得部102からそれぞれ入力されたセンサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価する。リスク評価部103は、学習済モデルを用いて劣化している構造物の個所を特定する。この学習モデルは、構造物を撮像した画像や加速度等のセンサ情報を教師データとして学習させたモデルであり、センサ情報に対して、構造物の劣化の有無を出力する。但し、リスク評価部103による劣化個所の特定方法は、これに限られない。リスク評価部103は、学習済みモデルを用いずに劣化個所を特定しても構わない。例えば、リスク評価部103は、画像処理により検出した構造物のエッジや線に基づき、劣化個所を特定しても構わない。また、リスク評価部103は、加速度データを所定の方法で、後述する国際ラフネス指数(International Roughness Index(IRI))に変換し、IRIを用いて劣化個所を特定しても構わない。IRIとは、路面と運転手の乗り心地を関連付けた指数であり、凸凹の程度を数値として表現したものである。
【0026】
次いで、リスク評価部103は、劣化が特定された構造物下の地盤の地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価する。リスク評価とは、構造物の劣化の原因となり得る要素に基づき、リスクの有無とリスクの程度に関して評価することである。例えば、シルト又は粘土等の水を含みやすい土壌を含む地層は地層内部での凍結により膨張し(凍上)、構造物表面でひび割れが発生する可能性がある。よって、リスク評価部103は、地層情報として、水を含みやすい地層が含まれる場合、凍結を原因とする構造物のひび割れのリスクがあると評価する。一方、砂層、砂礫層、岩盤等の水分が少ない又は排水性のよい地層は凍上の影響を受けにくい。この場合、リスク評価部103は、凍上を原因とする構造物の劣化のリスクは少ないと評価する。また、リスク評価部103は、熱や圧力により変動しやすい地層が含まれる場合、地層内部の膨張圧縮が構造物のひび割れに影響する可能性があると評価する。
【0027】
リスク評価部103は、地層情報として盛土が含まれる場合、盛土又は盛土の軟弱地盤による地盤沈下のリスクがあると評価する。すなわち、谷間や斜面に盛土がなされた地盤は、盛土自体の土の重さによって地盤沈下する可能性がある。また盛土がなされた土壌にガラス等の建築廃材が混入している場合、地盤が軟弱であり、地盤沈下する可能性がある。このように、リスク評価部103は、盛土がなされた土地の地盤の地層情報に応じて、それぞれ起こりうる構造物に対するリスクを評価する。
【0028】
リスク評価部103は、リスクを評価するにあたり、更にデータベースから取得した構造物の環境に関する情報を用いても構わない。データベースとは、例えば、気象データや交通データが格納されたデータベースである。データベースは、ユーザが独自に作成したデータベースでもよいし、一般に公開されているものでもよい。気象データは、例えば、気象庁等のホームページで公開されている降水量情報や気温情報である。リスク評価部103は、例えば、降水量が多かった地域や極端に低温であった地域は、降水量又は気温を原因とした劣化のリスクがあると評価する。リスク評価部103は、例えば、交通量が多かった道路や橋梁は、交通量を原因とした劣化のリスクがあると評価する。
【0029】
出力部104は、リスク評価部103により評価された構造物に対するリスクを出力する。例えば、出力部104は、リスク評価部103が構造物のリスクを評価すると、端末装置540に、リスク評価部103の判定した構造物の位置とリスクを示す情報を通知する。出力部104は、通知先を選択してもよい。出力部105は、例えば、自治体等の道路管理者の端末装置540に出力してもよい。なお、出力部104は、リスクを示す情報を、道路地図、ハザードマップ又は大規模盛土造成地マップ等の地図上に重畳表示させても構わない。この地図は、市町村名、道路名、鉄道の名称又は河川名等を選択的に表示可能であってもよい。また、出力部104は、地図上の特定の地点(施設)を中心としたリスクを示す情報を表示させても構わない。
【0030】
[動作の説明]
図3は、第1の実施形態にかかるリスク評価装置10の動作の一例を示すフロー図である。センサ情報取得部101は、センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得する(ステップS101)。地層情報取得部102は、構造物下の地盤の地層情報を取得する(ステップS102)。リスク評価部103は、センサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価する(ステップS103)。次いで、出力部104は、リスク評価部103により評価した構造物のリスクを出力する(ステップS104)。
【0031】
リスク評価装置10は、リスク評価部103が、センサ情報及び地層情報に基づいて、構造物に対するリスクを評価する。これにより、センサ情報による構造物表面の劣化情報だけではなく、地盤の地層情報を加味して構造物に対するリスクを評価できる。よって、リスク評価装置10によれば、構造物に対する適切なリスク評価が可能となる。
【0032】
[ハードウェア構成]
次に、リスク評価装置10のハードウェア構成について説明する。リスク評価装置10の各構成部は、ハードウェア回路で構成されてもよい。あるいは、リスク評価装置10において、各構成部は、ネットワークを介して接続した複数の装置を用いて、構成されてもよい。例えば、リスク評価装置10は、クラウドコンピューティングを利用して構成されてもよい。あるいは、リスク評価装置10において、複数の構成部は、1つのハードウェアで構成されてもよい。あるいは、リスク評価装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ装置として実現されてもよい。リスク評価装置10は、上記構成に加え、さらに、ネットワークインターフェース回路(NIC:Network Interface Circuit)を含むコンピュータ装置として実現されてもよい。
【0033】
図4は、リスク評価装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。リスク評価装置10は、CPU610と、ROM620と、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを含み、コンピュータ装置を構成している。CPU610は、ROM620及び/又は記憶装置640からプログラムを読み込む。そして、CPU610は、読み込んだプログラムに基づいて、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを制御する。そして、CPU610を含むコンピュータは、これらの構成を制御し、
図1に示されている、センサ情報取得部101と、地層情報取得部102と、リスク評価部103と、出力部104としての各機能を実現する。
【0034】
CPU610は、各機能を実現する際に、RAM630又は記憶装置640を、プログラム及びデータの一時的な記憶媒体として使用してもよい。あるいは、CPU610は、コンピュータで読み取り可能にプログラムを記憶した記録媒体690が含むプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。あるいは、CPU610は、NIC650を介して、図示しない外部の装置からプログラムを受け取り、RAM630又は記憶装置640に保存して、保存したプログラムを基に動作してもよい。
【0035】
ROM620は、CPU610が実行するプログラム及び固定的なデータを記憶する。ROM620は、例えば、P-ROM(Programmable-ROM)又はフラッシュROMである。RAM630は、CPU610が実行するプログラム及びデータを一時的に記憶する。RAM630は、例えば、D-RAM(Dynamic-RAM)である。記憶装置640は、リスク評価装置10が長期的に保存するデータ及びプログラムを記憶する。また、記憶装置640は、CPU610の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置640は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)又はディスクアレイ装置である。ROM620と記憶装置640とは、不揮発性(non-transitory)の記録媒体である。一方、RAM630は、揮発性(transitory)の記録媒体である。そして、CPU610は、ROM620、記憶装置640、又は、RAM630に記憶されているプログラムを基に動作可能である。つまり、CPU610は、不揮発性記録媒体又は揮発性記録媒体を用いて動作可能である。
【0036】
NIC650は、ネットワークを介した外部の装置(ドライブレコーダー520、SAR530、端末装置540、車両550等)とのデータのやり取りを中継する。NIC650は、例えば、LAN(Local Area Network)カードである。さらに、NIC650は、有線に限らず、無線を用いてもよい。
【0037】
<第1の実施形態の変形例>
第1の実施形態の変形例では、主に構造物として道路である場合を想定して説明する。第1の実施形態では、リスク評価部103が、学習済みモデル、画像処理又はIRI等を用いて構造物の劣化個所を特定した。しかし、リスク評価部103は、道路劣化の程度を表す指標に基づいて、道路の劣化箇所及び劣化の進み具合を特定しても構わない。この場合、リスク評価部103は、構造物の劣化の進み具合の情報も加味して構造物に対するリスクを評価する。
【0038】
ここで、各道路劣化の程度を表す指標について説明する。道路劣化には複数の種類がある。道路劣化は、例えば、ひび割れ、ポットホール、わだち掘れ、及び、道路の平坦性異常を含む複数の種類に分類される。ひび割れは、形状によって、直線ひび、及び、亀甲ひびの異なる種類に分類されてもよい。直線ひびとは、単独の線状のひびである。亀甲ひびとは、例えば、縦横の直線ひびが繋がった場合等に生じる亀甲状のひびである。道路のひび割れは、一般的に、直線ひび、亀甲ひび、ポットホールの順で進行する傾向がある。
【0039】
ひび割れ度は、ひび割れの形状、長さ、面積、本数のいずれか、又は、これらの組み合わせによって表される。ひび割れ率はひび割れ度の一例である。ひび割れ率は、例えば、100×(ひび割れの面積/道路区間の面積)によって表される。この場合、劣化度の値は、0%から100%の範囲となる。ひび割れの面積は任意の方法で算出される。なおひび割れ率の算出方法は特に限定されず、上記の他に既知の算出方法を適用可能である。
【0040】
ポットホールの大きさは、例えば、ポットホールの面積、幅、長さ、深さのいずれか、又は、これらの組み合わせによって表される。わだち掘れ量とは、交通荷重により車の車輪通過位置(わだち部)に生じる道路延長方向に連続した凹みの深さである。
【0041】
ひび割れ度、ポットホールの数と大きさ、及び、わだち掘れ量は、センサで道路表面を測定した測定データに基づいて算出されてもよい。あるいは、これらの指標は、道路を撮像した画像から道路劣化を認識した認識結果に基づいて算出されてもよい。
【0042】
平坦性は、IRIによって表されてもよい。IRIは、センサで道路表面を測定した測定データに基づいて算出されてもよい。あるいは、IRIは、車両に取り付けられた走行中の加速度センサの値に基づいて算出されてもよい。具体的には、例えば、IRIは、検出位置において取得された加速度に含まれる上下方向の加速度の値に基づいて算出される。なお、IRIの算出方法は、上記に限られず、既知の算出方法を採用することが可能である。
【0043】
劣化度は、上述の指標に限られず、例えば、MCI(Maintenance Control Index:維持管理指数)を含む道路劣化を表す任意の指標が用いられてもよい。MCIの値は、ひび割れ率、わだち掘れ量、及び平坦性を用いる4つの定義式を計算した結果の最小値である。道路の劣化に伴いMCIは低下する。なお、構造物が滑走路である場合、平坦性を表す指標であるBBI(Boeing Bump Index)を用いることができる。
【0044】
上述した第1の実施形態の変形例では、リスク評価部103が、構造物の劣化の進み具合の情報も加味して構造物に対するリスクを評価する。これにより、構造物に対するリスクの大きさを評価することができる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0046】
図5は、第2の実施形態にかかるリスク評価装置11の構成の一例を示すブロック図である。リスク評価装置11は、センサ情報取得部111と、地層情報取得部112と、地表変位取得部113と、リスク評価部114と、提案部115と、出力部116とを備える。第2の実施形態は、第1の実施形態とは地表変位取得部113及び提案部115を備えている点で異なる。センサ情報取得部111と、地層情報取得部112の構成は、第1の実施形態のそれぞれ対応する構成と同様のため、説明を割愛する。
【0047】
地表変位取得部113は、地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する。地表変位取得部113は、具体的には、SAR530が撮影したSAR画像を取得し、取得したSAR画像を分析して地表変位を取得する。あるいは、地表変位取得部113は、SAR530が撮影したSAR画像を分析して得られた地表変位を直接取得してもよい。地表変位には、地盤沈下・隆起、建物の建設・撤去等の地表状態についての情報も含まれていても構わない。なお、地表変位取得部113は、SAR530からマルチスペクトルを用いた観測結果を取得してもよい。この場合、地表変位取得部113は、取得した測定画像を用いて、地表変位に加え、地表の種類を分析できる。地表の種類としては、水面、泥土、ゴミ、乾燥土壌、草原、森林、農地、及び、積雪の少なくとも一つを含む。地表変位取得部113は、ビル等の建築物の変位を用いてもよい。また、地表変位取得部113は、ドライブレコーダー520が接続されたクラウドコンピューティングを用いて構成されたクラウドシステムに保存されたSAR画像を用いて地表変位を取得しても構わない。地表変位取得部113は、取得した地表変位をリスク評価部114に出力する。
【0048】
リスク評価部114は、センサ情報、地層情報及び地表変位に基づいて、構造物に対するリスクを評価する。リスク評価部114は、リスク評価部103のリスク評価の機能に加え、地表変位も加味して構造物に対するリスクを評価する。リスク評価部114は、例えば、地表変位が予測値よりも大きいほど構造物に対するリスクが高いと評価する。リスク評価部114は、地表変位が予測値よりも大きくなくても、地表が急激に変位しており、地表変位が非線形な動きをしている地表についてリスクが高いと評価してもよい。ここで、予測値とは、例えば、構造物や地層情報に基づいて予測された地表変位である。また、リスク評価部114は、地表変位に基づいた構造物付近の災害発生の可能性も加味して、構造物に対するリスクを評価しても構わない。リスク評価部114は、評価した取得しリスクを提案部115に出力する。
【0049】
提案部115は、構造物に対するリスクの対応方針を提案する。提案部115は、リスクに基づいて、構造物の劣化を修繕又は補修するための方針を提案する。提案部115は、予めデータベース等に蓄積されていた対応方針の事例を参照して、リスクや、その地点の地層情報や地表変位等が類似する事例を出力する。例えば、地盤が軟弱である場合、有効な対策のないまま構造物の表面だけを補修すると、地盤沈下が生じて再度構造物が劣化するリスクがある。よって、この場合、提案部115は、構造物下の軟弱地盤を補強するような工事をすることを提案する。また、提案部115は、地盤が液状化する可能性がある場合、地盤を締固める等の液状化対策工法を提案する。また、谷間や斜面に盛土がなされた地盤は、盛土の重さによって、地盤沈下する可能性がある。この場合、提案部115は、擁壁等を設ける工事をすることを提案する。更に盛土がなされた土壌にガラス等の建築廃材が混入している場合、地盤が軟弱である。よって、提案部115は、地盤を補強する工事をすることを提案する。また別の例として、提案部115は、構造物下の地盤が水分を含みやすい土壌を含む場合、排水性のよい土壌に置き換える等の方針を提案する。但し、提案部115による対応方針の例はこれに限られない。
【0050】
出力部116は、所定の通知先に、構造物に対するリスクに加えて対応方針を出力する。例えば、出力部116は、提案部115がリスクの対応方針を提案すると、所定の通知先に、リスク評価部114の判定した構造物に対するリスクを示す情報及びその対応方針を通知する。出力部116は、通知先を選択してもよい。出力部116は、例えば、自治体等の道路管理者の端末装置540に出力してもよい。
【0051】
[動作の説明]
図6は、第2の実施形態にかかるリスク評価装置11の動作の一例を示すフロー図である。本実施形態におけるステップS201~ステップS202は、第1の実施形態におけるステップS101~ステップS102と同様のため、説明を省略する。地表変位取得部113は、地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する(ステップS203)。次に、リスク評価部114は、センサ情報、地層情報及び地表変位に基づいて、構造物に対するリスクを評価する(ステップS204)。次に、提案部115は、リスク評価部114により評価されたリスクの対応方針を提案する(ステップS205)。最後に、出力部116は、リスク評価部114により評価した構造物に対するリスクに加えて、提案部115により提案された対応方針を出力する(ステップS206)。
【0052】
第2の実施形態にかかるリスク評価装置11は、リスク評価部114がセンサ情報及び地層情報に加え、地表変位に基づいて、構造物に対するリスクを評価する。これにより、リスク評価に地表変位の大きさを含む情報を用いることでリスクの大きさを評価することができる。したがって、構造物に対するリスクをより精度よく評価することができる。また、リスク評価装置11は、提案部115が、リスクの対応方針を提案する。これにより、構造物を管理する担当者等が対応方針を参照してリスク対応に取り掛かることができる。
【0053】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、提案部115は、センサ情報、地層情報及び地表変位に基づいて評価された構造物に対するリスクについて対応方針を提案した。しかし、提案部115は、センサ情報及び地層情報のみに基づき評価された構造物に対するリスクについて対応方針を提案しても構わない。すなわち、第1の実施形態にかかるリスク評価装置10が、提案部115に相当する構成を備えていても構わない。
【0054】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0055】
(付記1)
センサ情報取得装置から構造物のセンサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、
構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、
前記センサ情報及び前記地層情報に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価するリスク評価手段と、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力する出力手段と、
を備えるリスク評価装置。
【0056】
(付記2)
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する地表変位取得手段を更に備え、
前記リスク評価手段は、前記センサ情報、前記地層情報及び前記地表変位に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価する
付記1に記載のリスク評価装置。
【0057】
(付記3)
前記リスク評価手段は、データベースから取得した前記構造物の環境に関する情報を更に用いて前記構造物に対するリスクを評価する
付記1又は付記2に記載のリスク評価装置。
【0058】
(付記4)
前記リスク評価手段は、前記データベースから気象情報を取得して前記構造物に対するリスクを評価する
付記3に記載のリスク評価装置
【0059】
(付記5)
前記地層情報として、水を含みやすい地層が含まれる場合、
前記リスク評価手段は、凍結を原因とするひび割れのリスクがあると評価する
付記1~4のいずれかに記載のリスク評価装置。
【0060】
(付記6)
前記地層情報として盛土が含まれる場合、
前記リスク評価手段は、盛土又は盛土の軟弱地盤による地盤沈下のリスクがあると評価する
付記1~4のいずれかに記載のリスク評価装置。
【0061】
(付記7)
前記評価した前記構造物に対するリスクの対応方針を提案する提案手段を更に備え、
前記出力手段は、前記構造物に対するリスクと前記対応方針を出力する、付記1~6のいずれかに記載のリスク評価装置。
【0062】
(付記8)
前記センサ情報が、移動体が走行する構造物を撮影した画像データである
付記1~7のいずれかに記載のリスク評価装置。
【0063】
(付記9)
前記構造物が道路である
付記8に記載のリスク評価装置。
【0064】
(付記10)
センサ情報取得装置からセンサ情報を取得し、
構造物下の地盤の地層情報を取得し、
前記センサ情報及び前記地層情報に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価し、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力する
状況判定方法。
【0065】
(付記11)
センサ情報取得装置からセンサ情報を取得し、
構造物下の地盤の地層情報を取得し、
前記センサ情報及び前記地層情報に基づいて、前記構造物に対するリスクを評価し、
前記評価した前記構造物に対するリスクを出力すること
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する記録媒体。
【符号の説明】
【0066】
10、11 リスク評価装置
101、111 センサ情報取得部
102、112 地層情報取得部
103、114 リスク評価部
104、116 出力部
113 地表変位取得部
115 提案部
510 コンピュータ
520 ドライブレコーダー
530 SAR
540 端末装置
550 車両
580 ネットワーク
610 CPU
620 ROM
630 RAM
640 記憶装置
650 NIC