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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250422BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024044728
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】森 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】梅津 智樹
(72)【発明者】
【氏名】糸山 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-109671(JP,A)
【文献】特開2023-070861(JP,A)
【文献】特開2023-058845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートには、
冷媒の通る冷媒流路と、
前記載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されており、
前記冷媒流路のうち前記貫通穴の近傍の部分には、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための乱流発生部が設けられており、
前記乱流発生部は、
前記冷媒流路のうち、冷媒の流れる方向に沿って前記貫通穴よりも上流側となる位置に設けられた第1乱流発生部と、
前記貫通穴よりも下流側となる位置に設けられた第2乱流発生部と、を含み、
前記第1乱流発生部及び前記第2乱流発生部のそれぞれにおいて、前記冷媒流路は、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、円弧状に突出する経路であって、その曲率半径が局所的に小さくなっている経路に沿って引き回されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記第1乱流発生部及び前記第2乱流発生部のそれぞれにおいて、前記冷媒流路は、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、前記貫通穴が設けられている方に向けて円弧状に突出する経路に沿って引き回されていることを特徴とする、請求項に記載の静電チャック。
【請求項3】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートには、
冷媒の通る冷媒流路と、
前記載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されており、
前記冷媒流路のうち前記貫通穴の近傍の部分には、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための乱流発生部が設けられており、
前記乱流発生部において、前記冷媒流路は、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、円弧状に突出する経路であって、その曲率半径が局所的に小さくなっている経路に沿って引き回されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項4】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートには、
冷媒の通る冷媒流路と、
前記載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されており、
前記冷媒流路のうち前記貫通穴の近傍の部分において、前記冷媒流路は、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、円弧状に突出する経路であって、その曲率半径が局所的に小さくなっている経路に沿って引き回されていることを特徴とする静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエッチング装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
エッチング等の処理中においては、基板の温度を適切な温度に維持する必要がある。このため、下記特許文献1に記載されているように、ベースプレートの内部には、冷媒を通すための冷媒流路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-028960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベースプレートには、上記の冷媒流路に加えて複数の貫通穴も形成される。このような貫通穴としては、例えば、リフトピンを通すための穴や、ヘリウムガスなどの不活性ガスを基板側に供給するための穴等が挙げられる。
【0006】
誘電体基板のうち、ベースプレートに形成された貫通穴の直上となる部分では、ベースプレート側への熱引きが行われにくい。このため、当該部分において局所的な温度上昇が生じ、基板の面内温度分布がばらついてしまう可能性がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備える。ベースプレートには、冷媒の通る冷媒流路と、載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されている。冷媒流路のうち貫通穴の近傍の部分には、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための乱流発生部が設けられている。
【0009】
このような構成の静電チャックでは、冷媒流路を通る冷媒は、乱流発生部を通る際において乱流を発生させた状態となり、その状態のまま貫通穴の近傍の部分を通過する。ベースプレートのうち貫通穴の近傍の部分は、乱流発生部が無い場合に比べて効率的に冷却され、その温度を低下させる。その結果、貫通穴の直上における局所的な温度上昇が生じにくくなるので、基板の面内温度分布のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
図2】ベースプレートに形成された冷媒流路の構成を示す図である。
図3図2の冷媒流路のうち、貫通穴の近傍の部分の構成を拡大して示す図である。
図4】冷媒流路における冷媒の流れを模式的に示す図である。
図5】第2実施形態に係る冷媒流路のうち、貫通穴の近傍の部分の構成を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る静電チャック10は、例えばエッチング装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。被吸着物である基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0014】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、を備える。
【0015】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0016】
誘電体基板100のうち図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち図1における下方側の面120は、接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0017】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、本実施形態のように所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよいが、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよい。
【0018】
誘電体基板100の面120には給電端子132が埋め込まれている。給電端子132は、吸着電極130に印可される電圧を外部から受け入れるための端子である。上面視における給電端子132の形状は円形である。給電端子132と吸着電極130との間は、ビア131によって電気的に接続されている。ビア131は、導電体の充填された細長い穴である。給電端子132には、棒状の導電性部材であるバスバー13の一端が接続されている。吸着電極130に対する外部からの電圧の印可は、バスバー13を介して行われる。バスバー13は、ベースプレートに形成された貫通穴240を通じて、外部へと引き出されている。尚、吸着電極130に対し電圧を印可するための電路の構成は、上記とは異なる構成であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、空間SPには、ガス穴114を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0020】
載置面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0021】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。シールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0022】
図1において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0023】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の載置面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0024】
誘電体基板100にはガス穴114が形成されている。ガス穴114は、空間SPにヘリウムガスを供給するための穴であって、面110に対し垂直に伸びるように形成された円形の貫通穴である。ガス穴114は複数形成されているのであるが、図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。外部から供給されたヘリウムガスは、ベースプレート200に形成されたガス穴214を通った後、それぞれのガス穴114を通じて空間SPへと供給される。
【0025】
ガス穴114の内部には、例えばアルミナ等により形成された多孔質体が配置されていてもよい。このような構成とすることで、ガス穴114におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴114を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することが可能となる。
【0026】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属材料により形成されている。ベースプレート200のうち、図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0027】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。本実施形態では、上記接着剤としてシリコーン接着剤を用いている。ただし、接合層300は、他の種類の接着剤を硬化させたものであってもよい。いずれの場合であっても、誘電体基板100とベースプレート200との間の熱抵抗が小さくなるように、接合層300の材料としては、可能な限り熱伝導率が高い材料を用いるのが好ましい。
【0028】
ベースプレート200の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜としては、例えば、溶射により形成されたアルミナの膜を用いることができる。ベースプレート200の表面を絶縁膜で覆っておくことにより、ベースプレート200の絶縁耐圧を高めることができる。
【0029】
ベースプレート200には、面110に対して垂直な方向に伸びるような貫通穴が複数形成されている。このような貫通穴には、これまでに説明したガス穴114や貫通穴240の他、図1においては不図示のリフトピン穴260(図2を参照)も含まれる。これらはいずれも、ベースプレート200の全体を貫くように形成された円形の貫通穴である。
【0030】
ベースプレート200の内部には、冷媒を通すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。冷媒流路250への冷媒の供給及び排出は、ベースプレート200のうち、面210とは反対側の面220に形成された開口251、252(図1においては不図示、図2を参照)を介して行われる。
【0031】
冷媒流路250の構成について説明する。図2には、ベースプレート200の内部に形成された冷媒流路250の構成が、上面視で模式的に描かれている。先に述べたように、ベースプレート200の面220には開口251、252が設けられている。冷媒流路250は、開口251と開口252との間を繋いでおり、上面視においてベースプレート200の略全体を通るような経路に沿って形成されている。
【0032】
開口251、252はいずれも、上面視において円形の開口であり、面220から冷媒流路250に向けて、面220に対し垂直に伸びるように形成されている。本実施形態では、開口251に対して外部から冷媒が供給される。冷媒流路250を通り基板Wの冷却に供された冷媒は、開口252から外部へと排出される。
【0033】
図2には、ベースプレート200に形成された複数の貫通穴のうち、リフトピン穴260が図示されている。リフトピン穴260は、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンを挿通するための穴である。リフトピン穴260は計3つ形成されており、上面視においてこれらが120度等配となるように配置されている。リフトピン穴260を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。リフトピン穴260は、図1に示されるガス穴214と同様に、静電チャック10の全体を貫くように形成された貫通穴の一部となっている。図2においては、ベースプレート200に形成されたその他の貫通穴(ガス穴214や貫通穴240等)の図示が省略されている。
【0034】
それぞれのリフトピン穴260は、上面視において冷媒流路250と重ならない位置に形成されている。図2に示される範囲Aには、1つのリフトピン穴260と、冷媒流路250のうち当該リフトピン穴260の近傍の部分が含まれる。図3には、ベースプレート200のうち範囲Aの内側部分の構成が、上面視で模式的に描かれている。
【0035】
図3に示される点線DL0は、リフトピン穴260の中心を通り、且つ、冷媒流路250を冷媒が流れる方向に対して垂直な方向に伸びている仮想的な線である。冷媒流路250のうち、点線DL0と交差している部分は、リフトピン穴260に対して最も近接している部分ということができる。
【0036】
図3に示される点線DL1は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿って点線DL0よりも上流側となる位置を通り、且つ、同方向に対して垂直な方向に伸びている仮想的な線である。点線DL2は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿って点線DL0よりも下流側となる位置を通り、且つ、同方向に対して垂直な方向に伸びている仮想的な線である。
【0037】
冷媒流路250のうち、点線DL1で示される位置、及び、点線DL2で示される位置、のそれぞれには、突起270が形成されている。突起270は、冷媒流路250の内壁面の一部である矩形の領域を、冷媒流路250の内側に向けて突出させたものである。突起270は、本実施形態では冷媒流路250の底面(面220側の内壁面)から突出するように形成されているが、他の部分に形成されていてもよい。点線DL1の位置に形成された突起270のことを、以下では「突起271」とも称する。点線DL2の位置に形成された突起270のことを、以下では「突起272」とも称する。
【0038】
図4には、冷媒流路250のうち突起271の近傍部分の構成が、側面視で模式的に描かれている。冷媒流路250を通る冷媒は、矢印FL1の方向に沿って流れ、その一部が突起271に衝突する。冷媒は、突起271に衝突することによって乱流FL2を発生させた状態となり、その状態のままリフトピン穴260の近傍の部分を通過する。
【0039】
仮に、冷媒の流れる方向が上記とは逆方向であった場合、すなわち、開口251ではなく開口252に対して外部から冷媒が供給される場合には、冷媒は、突起272に衝突することによって乱流を発生させた状態となり、その状態のままリフトピン穴260の近傍の部分を通過する。
【0040】
このように、突起271、272は、いずれもリフトピン穴260の近傍となる位置に形成されており、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための「乱流発生部」として機能する。突起271は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも上流側となる位置に設けられており、本実施形態における「第1乱流発生部」に該当する。突起272は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも下流側となる位置に設けられており、本実施形態における「第2乱流発生部」に該当する。図4とは逆の方向に冷媒が流れる場合には、突起272が「第1乱流発生部」に該当し、突起271が「第2乱流発生部」に該当することになる。
【0041】
このような構成としたことの理由について説明する。誘電体基板100のうち、ベースプレート200に形成されたリフトピン穴260の直上となる部分は、直下にベースプレート200が存在しないので、ベースプレート200側への熱引きが行われにくい。このため、誘電体基板100の上記部分においては局所的な温度上昇が生じ、その更に上にある基板Wの面内温度分布がばらついてしまう可能性がある。
【0042】
そこで、本実施形態では上記のように、冷媒流路250のうちリフトピン穴260の近傍の部分に、乱流発生部である突起270を設けることとしている。図4に示されるように、冷媒流路250を通る冷媒は、突起270の位置を通る際において乱流FL2を発生させた状態となり、その状態のままリフトピン穴260の近傍の部分を通過する。ベースプレート200のうちリフトピン穴260の近傍の部分は、突起270が設けられていない場合に比べて効率的に冷却され、その温度を低下させる。その結果、リフトピン穴260の直上における局所的な温度上昇が生じにくくなるので、基板Wの面内温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0043】
先に述べたように、本実施形態では、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも上流側となる位置(点線DL1)と、リフトピン穴260よりも下流側となる位置(点線DL2)と、の両方に突起270(乱流発生部)が設けられている。このような構成とすることで、開口251、252のどちらから冷媒を供給した場合であっても、図3に示される範囲AR1において乱流を発生させ、リフトピン穴260の近傍の部分を効率的に冷却することができる。
【0044】
突起270(乱流発生部)は、3つあるリフトピン穴260の近傍となる位置のそれぞれに設けられている。リフトピン穴260以外の貫通穴(ガス穴214や貫通穴240等)の近傍にも、上記と同様の突起270が設けられていてもよい。
【0045】
冷媒の流れる方向が、特定の方向に定まっている場合には、突起271、272のうちの一方のみが設けられている態様であってもよい。この場合、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも上流側となる位置に、突起270が設けられていればよい。
【0046】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0047】
図5には、本実施形態における冷媒流路250の構成が、図3と同様の視点で描かれている。冷媒流路250のうち図5に示される部分は、第1実施形態における範囲A(図2を参照)と同じ部分である。また、図5に示される点線DL0、DL1、DL2は、いずれも図3に示されるものと同じである。
【0048】
本実施形態では、冷媒流路250の内壁面に突起270が形成されていない。本実施形態では、冷媒流路250のうち点線DL1と対応する位置、及び点線DL2と対応する位置のそれぞれに、突出部280が形成されている。それぞれの突出部280においては、冷媒流路250は円弧状に突出するような経路に沿って引き回されている。「円弧状に突出するような経路」とは、上面視において単一の真円に沿うような形状であってもよいが、経路の曲率中心が場所によって互いに異なっているような形状であってもよい。また、突出部280の一部においては冷媒流路250が直線状に伸びていてもよい。点線DL1の位置に形成された突出部280のことを、以下では「突出部281」とも称する。点線DL2の位置に形成された突出部280のことを、以下では「突出部282」とも称する。
【0049】
冷媒流路250を通る冷媒は、突出部281を通る際にその流れ方向を急変させることにより、乱流を発生させた状態となり、その状態のままリフトピン穴260の近傍の部分を通過する。仮に、冷媒の流れる方向が本実施形態とは逆方向であった場合、すなわち、開口251ではなく開口252に対して外部から冷媒が供給される場合には、冷媒は、突出部282を通る際に乱流を発生させた状態となり、その状態のままリフトピン穴260の近傍の部分を通過する。
【0050】
このように、突出部281、282は、いずれもリフトピン穴260の近傍となる位置に形成されており、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための「乱流発生部」として機能する。突出部281は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも上流側となる位置に設けられており、本実施形態における「第1乱流発生部」に該当する。突出部282は、冷媒流路250のうち、冷媒の流れる方向に沿ってリフトピン穴260よりも下流側となる位置に設けられており、本実施形態における「第2乱流発生部」に該当する。本実施形態とは逆の方向に冷媒が流れる場合には、突出部282が「第1乱流発生部」に該当し、突出部281が「第2乱流発生部」に該当することになる。このような構成においても、図5に示される範囲AR1において乱流が発生することとなるので、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0051】
突出部281が円弧状に突出している方向が、図5においては矢印A1で示されている。当該方向は、点線DL1に沿ったいずれかの方向のうち、上面視においてリフトピン穴260が設けられている方に向かう方向、ということができる。
【0052】
突出部282が円弧状に突出している方向が、図5においては矢印A2で示されている。当該方向は、点線DL2に沿ったいずれかの方向のうち、上面視においてリフトピン穴260が設けられている方に向かう方向、ということができる。
【0053】
このように、本実施形態では、突出部281(第1乱流発生部)及び突出部282(第2乱流発生部)のそれぞれにおいて、冷媒流路250が、上面視においてリフトピン穴260が設けられている方に向けて円弧状に突出する経路、に沿って引き回されている。このような構成とすることで、リフトピン穴260の近傍における局所的な温度上昇を更に抑制することができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110:面
200:ベースプレート
250:冷媒流路
260:リフトピン穴
270,271,272:突起
280,281,282:突出部
W:基板
【要約】
【課題】処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に接合されたベースプレート200と、を備える。ベースプレート200には、冷媒の通る冷媒流路250と、リフトピン穴260と、が形成されている。冷媒流路250のうちリフトピン穴260の近傍の部分には、冷媒の流れにおいて乱流を発生させるための突起270が設けられている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5