(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250422BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2024044729
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】森 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】梅津 智樹
(72)【発明者】
【氏名】糸山 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/166866(WO,A1)
【文献】特開2016-115933(JP,A)
【文献】特開2023-149660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートには、
冷媒の通る冷媒流路と、
前記載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されており、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記冷媒流路は、
第1流路と第2流路とに分岐する部分である分岐部と、
前記第1流路と前記第2流路とが再び合流する部分である合流部と、を有し、
前記貫通穴は、前記ベースプレートのうち、前記第1流路と前記第2流路との間の部分を貫くように形成されて
おり、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記貫通穴は、
前記第1流路と前記第2流路との間の部分を貫くように形成された第1貫通穴と、
前記第1流路を挟んで前記第1貫通穴とは反対側となる位置に形成された第2貫通穴と、を含み、
前記冷媒流路の幅が、前記第1流路において局所的に狭くなっており、
前記誘電体基板を加熱するためのヒーターを更に備え、
前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴のそれぞれを通じて前記ヒーターへの給電が行われることを特徴とする静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエッチング装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
エッチング等の処理中においては、基板の温度を適切な温度に維持する必要がある。このため、下記特許文献1に記載されているように、ベースプレートの内部には、冷媒を通すための冷媒流路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベースプレートには、上記の冷媒流路に加えて複数の貫通穴も形成される。このような貫通穴としては、例えば、リフトピンを通すための穴や、ヘリウムガスなどの不活性ガスを基板側に供給するための穴等が挙げられる。冷媒流路は、このような貫通穴を避けるような経路に沿って引き回す必要がある。
【0006】
例えば、互いに近接した一対の貫通穴の間を通るような経路に沿って冷媒流路を引き回す場合等には、冷媒流路の幅を局所的に狭くする必要がある。しかしながら、当該部分では冷媒の流速が局所的に上昇し、冷却性能が上昇するので、その直上において基板の温度低下を引き起こす可能性がある。その結果、基板の面内温度分布がばらついてしまう可能性がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備える。ベースプレートには、冷媒の通る冷媒流路と、載置面に対し垂直な方向に伸びる貫通穴と、が形成されている。載置面に対し垂直な方向から見た場合において、冷媒流路は、第1流路と第2流路とに分岐する部分である分岐部と、第1流路と第2流路とが再び合流する部分である合流部と、を有する。貫通穴は、ベースプレートのうち、第1流路と第2流路との間の部分を貫くように形成されている。
【0009】
このような構成の静電チャックでは、冷媒流路が、貫通穴の近傍において第1流路と第2流路とに分岐している。このため、一方の第1流路を、貫通穴との干渉を避けるために狭くした場合でも、冷媒は第1流路のみならず第2流路をも通るため、第1流路における局所的な流速の上昇が抑制される。その結果、冷媒流路の各部における冷却性能は概ね均等なままとなるので、処理中における基板の面内温度分布のばらつきが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】ベースプレートに形成された冷媒流路の構成を示す図である。
【
図3】
図2の冷媒流路のうち、貫通穴の近傍の部分の構成を拡大して示す図である。
【
図4】
図2の冷媒流路のうち、貫通穴の近傍の部分の構成を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばエッチング装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。被吸着物である基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0014】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、ヒーターユニット300と、を備える。
【0015】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0016】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120は、接合層410を介してヒーターユニット300に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0017】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0018】
誘電体基板100の面120には給電端子132が埋め込まれている。給電端子132は、吸着電極130に印可される電圧を外部から受け入れるための端子である。上面視における給電端子132の形状は円形である。給電端子132と吸着電極130との間は、ビア131によって電気的に接続されている。ビア131は、導電体の充填された細長い穴である。給電端子132には、棒状の導電性部材であるバスバー13の一端が接続されている。吸着電極130に対する外部からの電圧の印可は、バスバー13を介して行われる。バスバー13は、ヒーターユニット300に形成された貫通穴306、及びベースプレートに形成された貫通穴240を通じて、外部へと引き出されている。尚、吸着電極130に対し電圧を印可するための電路の構成は、上記とは異なる構成であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、空間SPには、ガス穴114を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0020】
載置面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0021】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。シールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0022】
図1において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0023】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の載置面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0024】
誘電体基板100にはガス穴114が形成されている。ガス穴114は、空間SPにヘリウムガスを供給するための穴であって、面110に対し垂直に伸びるように形成された円形の貫通穴である。ガス穴114は複数形成されているのであるが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。外部から供給されたヘリウムガスは、ベースプレート200に形成されたガス穴214、及びヒーターユニット300に形成された貫通穴305を通った後、それぞれのガス穴114を通じて空間SPへと供給される。
【0025】
ガス穴114の内部には、例えばアルミナ等により形成された多孔質体が配置されていてもよい。このような構成とすることで、ガス穴114におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴114を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することが可能となる。
【0026】
ベースプレート200は、誘電体基板100及びヒーターユニット300を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属材料により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層420を介してヒーターユニット300に接合される「被接合面」となっている。
【0027】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路260が形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路260に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。冷媒流路260への冷媒の供給及び排出は、ベースプレート200のうち、面210とは反対側の面220に形成された開口266、267(
図1においては不図示、
図2を参照)を介して行われる。
【0028】
図2には、ベースプレート200の内部に形成された冷媒流路260の構成が、上面視で模式的に描かれている。尚、
図2に示される冷媒流路260の構成は模式的なものであり、一部において実際の構成と異なっている。当該部分の構成については、
図3等を参照しながら後に説明する。
【0029】
上記のように、ベースプレート200の面220には開口266、267が設けられている。冷媒流路260は、開口266と開口267との間を繋いでおり、上面視においてベースプレート200の略全体を通るような経路に沿って形成されている。
【0030】
開口266、267はいずれも、上面視において円形の開口であり、面220から冷媒流路260に向けて、面220に対し垂直に伸びるように形成されている。本実施形態では、開口266に対して外部から冷媒が供給される。冷媒流路260を通り基板Wの冷却に供された冷媒は、開口267から外部へと排出される。
【0031】
図1に戻って説明を続ける。ベースプレート200のうち、上面視において給電端子132と重なる部分には、貫通穴240が形成されている。貫通穴240は、面210から面220に向かって垂直に伸びるように形成された円形の貫通穴である。先に述べたように、貫通穴240の内側には、吸着電極130に電圧を印可するためのバスバー13が配置される。ベースプレート200のうち誘電体基板100側の面210には、貫通穴240の上端である円形の開口が形成されている。
【0032】
ベースプレート200のうち、上面視においてガス穴114と重なる部分には、ガス穴214が形成されている。ガス穴214は、面210から面220に向かって垂直に伸びるように形成された円形の貫通穴である。先に述べたように、ガス穴214は、空間SPにヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。ガス穴114と共に、ガス穴214は複数形成されている。ベースプレート200のうち誘電体基板100側の面210には、ガス穴214の上端である円形の開口が複数形成されている。
【0033】
ベースプレート200には貫通穴230が形成されている。貫通穴230は、面210から面220に向かって垂直に伸びるように形成された円形の貫通穴である。貫通穴230は、後述のヒーターユニット300が備える給電端子390や、これに繋がる給電部材を収容するための貫通穴である。貫通穴230は複数形成されているのであるが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。
【0034】
ベースプレート200の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜としては、例えば、溶射により形成されたアルミナの膜を用いることができる。ベースプレート200の表面を絶縁膜で覆っておくことにより、ベースプレート200の絶縁耐圧を高めることができる。
【0035】
ヒーターユニット300は、外部から電力の供給を受けて発熱し、誘電体基板100を加熱するものである。ヒーターユニット300の内部には、線状に引き回された導体である不図示の発熱部が設けられている。外部から発熱部に電流が供給されると、発熱部ではジュール熱が生じる。発熱部は複数配置されており、それぞれの発熱部における発熱量を個別に調整することが可能となっている。各部の発熱量を個別に調整することで、処理中における基板Wの面内温度分布を均等に近づけることができる。
【0036】
ヒーターユニット300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に挟み込まれており、それぞれに対し接合されている。ヒーターユニット300と誘電体基板100との間は接合層410を介して接合されており、ヒーターユニット300とベースプレート200との間は接合層420を介して接合されている。接合層410、420は、例えばシリコーン接着剤を硬化させることにより形成された層である。それぞれの内部には、熱伝導率を高めるための粒子状の充填剤(フィラー)が複数配置されている。充填剤としては、例えばアルミナを主成分とする粒子を用いることができる。
【0037】
ヒーターユニット300には給電端子390が設けられている。給電端子390は、発熱部に供給される電流を外部から受け入れるための端子である。給電端子390は細長い棒状のプラグとして形成されており、ヒーターユニット300からベースプレート200側に向けて突出している。給電端子390は複数設けられているのであるが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。それぞれの給電端子390は、ベースプレート200に形成された貫通穴230の内側に収容されている。つまり、ヒーターユニット300への給電は、貫通穴230を通じて行われる。
【0038】
ヒーターユニット300のうち、上面視において給電端子132と重なる部分には、貫通穴306が形成されている。貫通穴306は、面210に対し垂直な方向に伸びるように形成された円形の貫通孔である。先に述べたように、貫通穴306の内側には、吸着電極130に電圧を印可するためのバスバー13が配置される。
【0039】
ヒーターユニット300のうち、上面視においてガス穴114と重なる部分には、貫通穴305が形成されている。貫通穴305は、面210に対し垂直な方向に伸びるように形成された円形の貫通孔である。先に述べたように、貫通穴305は、空間SPにヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。ガス穴114やガス穴214と共に、貫通穴305は複数形成されている。
【0040】
尚、誘電体基板100を加熱するためのヒーターは、本実施形態のようにヒーターユニット300としてユニット化され、誘電体基板100の外側に配置されてもよいが、その一部または全部が誘電体基板100に内蔵されていてもよい。
【0041】
静電チャック10には、半導体製造装置に設けられたリフトピンを通すためのリフトピン穴が複数形成されているのであるが、
図1においてはその図示が省略されている。リフトピン穴は、ガス穴114、貫通穴305、及びガス穴214と同様に、静電チャック10の全体を上下に貫くように形成された円形の貫通穴である。ベースプレート200のうち誘電体基板100側の面210には、リフトピン穴の上端である円形の開口が複数形成されている。
【0042】
これまでに説明したように、ベースプレート200には、面110(載置面)に対し垂直な方向に伸びる貫通穴が複数形成されている。このような貫通穴には、例えば、
図1に示される貫通穴230、240やガス穴214、及び、不図示のリフトピン穴等が含まれる。また、誘電体基板100の温度を面120側から測定できるように、ベースプレート200に貫通穴が形成されることもある。
図2においては、これら貫通穴230等の図示が省略されているが、冷媒流路260は、上面視において貫通穴230等を避けるような経路に沿って引き回す必要がある。
【0043】
例えば、互いに近接した一対の貫通穴230等の間を通るような経路に沿って冷媒流路260を引き回す場合等には、冷媒流路260の幅を局所的に狭くする必要がある。しかしながら、当該部分では冷媒の流速が局所的に上昇し、冷却性能が上昇するので、その直上において基板Wの温度低下を引き起こす可能性がある。その結果、基板Wの面内温度分布がばらついてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態に係る静電チャック10では、貫通穴230等の近傍における冷媒流路260の構成を工夫することで、上記問題を解決することとしている。
【0045】
図3には、ベースプレート200に形成された貫通穴230と、その近傍において引き回されている冷媒流路260とが、上面視で模式的に描かれている。当該部分においては、一対の貫通穴230が互いに近接する位置に形成されている。これらのうち、一方の貫通穴230のことを、以下では「第1貫通穴231」とも称する。他方の貫通穴230のことを、以下では「第2貫通穴232」とも称する。
【0046】
図3に示される矢印は、冷媒流路260において冷媒が流れる方向を表している。
図3の例において、冷媒流路260は、途中で2つの流路に分岐しており、その下流側において再び合流し1つの流路となっている。分岐した2つの流路のうちの一方のことを、以下では「第1流路261」とも称し、他方のことを、以下では「第2流路262」とも称する。
【0047】
冷媒流路260のうち、冷媒の流れる方向に沿って第1貫通穴231や第2貫通穴232よりも上流側となる部分であって、第1流路261と第2流路262とに分岐している部分のことを、以下では「分岐部263」とも称する。分岐部263よりも下流側の部分であって、第1流路261と第2流路262とが再び合流する部分のことを、以下では「合流部264」とも称する。
【0048】
第1流路261は、上面視において第1貫通穴231と第2貫通穴232との間を通るように伸びている。第2流路262は、上面視において、第1流路261との間に第1貫通穴231を挟みこむように伸びている。換言すれば、第1貫通穴231は、上面視において、ベースプレート200のうち第1流路261と第2流路262との間の部分を貫くように形成されている。第2貫通穴232は、第1流路261を挟んで第1貫通穴231とは反対側となる位置に形成されている。
【0049】
冷媒流路260のうち分岐部263よりも上流側の部分の幅や、合流部264よりも下流側の部分の幅に比べると、第1流路261のうち特に中央部分(流れ方向に沿った中央部分)における幅は狭くなっている。
図3に示される点線DLは、第1流路261の幅を上記のように狭くすることなく、第1貫通穴231と第2貫通穴232との間を通した場合における、当該第1流路261の形状を表している。尚、第1流路261の幅は、本実施形態のようにその途中において局所的に狭くなっていてもよいが、第1流路261の全体において幅が一様に狭くなっていてもよい。いずれの場合であっても、第1流路261のうち少なくとも一部における幅が、冷媒流路260のうち分岐部263よりも上流側における幅に比べて、狭くなっていればよい。換言すれば、冷媒流路260のうち幅が局所的に狭くなっている部分は、第1流路261の一部であってもよく全体であってもよい。
【0050】
本実施形態では、第1貫通穴231と第2貫通穴232とが互いに近接している。このため、両者の間を通るような経路に沿って冷媒流路260を引き回そうとすると、点線DLのように、冷媒流路260と第1貫通穴231とが互いに干渉してしまう可能性が高い。このため、本実施形態における第1流路261のように、第1貫通穴231と第2貫通穴232との間において、冷媒流路260の幅を局所的に狭くする必要がある。その結果、先に述べたように、冷媒の流速が局所的に上昇し、基板Wの面内温度分布がばらついてしまうという問題が生じ得る。
【0051】
そこで、本実施形態では
図3のように、第1貫通穴231と第2貫通穴232との間を通る第1流路261とは別に、当該部分を迂回するような第2流路262を別途設けることとしている。このような構成においては、一方の第1流路261を、第1貫通穴231等との干渉を避けるために狭くした場合でも、冷媒は第1流路261のみならず第2流路262をも通るため、第1流路261における局所的な流速の上昇が抑制される。その結果、冷媒流路260の各部における冷却性能は概ね均等なままとなるので、処理中における基板Wの面内温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、ベースプレート200に形成された一対の貫通穴(第1貫通穴231や第2貫通穴232)が互いに近接しているため、両者の間を通る第1流路261の幅を、他の部分の幅に比べて狭くする必要性が生じている。今後、ヒーターユニット300による温度調整がより細やかに行われるようになり、ヒーターユニット300に設けられる発熱部の数が増加して行くのであれば、上記のように冷媒流路260の幅を局所的に狭くする必要性は更に高くなって行くものと考えられる。そのような場合であっても、冷媒流路260の幅が局所的に狭くなっている部分のそれぞれに、
図3と同様の構成を適用すれば、冷媒の流速の局所的な上昇を抑制し、基板Wの面内温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0053】
尚、冷媒流路260の幅を局所的に狭くする必要性は、第1貫通穴231と第2貫通穴232との間以外の部分でも生じ得る。例えば
図4の例のように、貫通穴230が、ベースプレート200の外周面201に近接する位置に設けられており、貫通穴230と外周面201との間を通るように冷媒流路260を引き回す場合には、当該部分において冷媒流路260の幅を狭くする必要がある。
【0054】
図4の例における冷媒流路260は、上面視において、貫通穴230と外周面201との間を通る第1流路261と、貫通穴230よりも内周側の部分を通る第2流路262と、に分岐している。この例においても、第1流路261はその途中において局所的に狭くなっている。また、貫通穴230は、ベースプレート200のうち、第1流路261と第2流路262との間の部分を貫くように形成されている。このような構成においても、
図3について説明したものと同様の効果を奏する。
【0055】
本実施形態では、給電端子390を配置するための貫通穴230(つまり、ヒーターユニット300への給電を行うための貫通穴230)との干渉を避けるように、第1流路261及び第2流路262が設けられている。しかしながら、ベースプレート200のうち、第1流路261及び第2流路262の近傍にある貫通穴は、上記とは異なる穴であってもよい。例えば、
図1に示される貫通穴240やガス穴214、不図示のリフトピン穴、誘電体基板100の温度を面120側から測定するための不図示の貫通穴、等との干渉を避けるように、第1流路261及び第2流路262が設けられてもよい。
【0056】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110:面
200:ベースプレート
230:貫通穴
231:第1貫通穴
232:第2貫通穴
260:冷媒流路
261:第1流路
262:第2流路
263:分岐部
264:合流部
W:基板
【要約】
【課題】処理中における基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100を支持するベースプレート200と、を備える。ベースプレート200には、冷媒の通る冷媒流路260と、貫通穴230と、が形成されている。上面視において、冷媒流路260は、第1流路261と第2流路262とに分岐する部分である分岐部263と、第1流路261と第2流路262とが再び合流する部分である合流部264と、を有する。貫通穴230は、ベースプレート200のうち、第1流路261と第2流路262との間の部分を貫くように形成されている。
【選択図】
図3