(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】手術システム、プロセッサ及び制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20250422BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
A61B34/35
A61M5/20 550
(21)【出願番号】P 2024008030
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-01-23
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】保田 詩織
(72)【発明者】
【氏名】小川 量平
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-180177(JP,A)
【文献】特開2023-171641(JP,A)
【文献】特開2009-22764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、
先端部に注入針を有する医療用マニピュレータと、
前記医療用マニピュレータを制御して前記注入針の位置を制御する駆動装置と、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項2】
請求項1の手術システムにおいて、
前記局注液が注入された前記処置対象が写る前記内視鏡画像を含む学習データに基づいて学習された第1学習済みモデルを含み、
前記プロセッサは、
前記第1学習済みモデルを用いて、前記内視鏡画像から前記処置対象の形状変化の過不足を判断し、
前記処置対象の形状変化が不足していると判断した場合、前記注入針を所定量引き抜くように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項3】
請求項1の手術システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記所定判断において、前記局注液の注入量の制御値をさらに用いて前記局注の成否を判断し、
前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項4】
請求項3の手術システムにおいて、
前記局注液の前記注入量と、前記注入量に対応した前記局注液が注入された前記処置対象が写る前記内視鏡画像とを含む学習データに基づき学習された第1学習済みモデルを含み、
前記プロセッサは、
前記第1学習済みモデルを用いて、前記内視鏡画像から前記制御値に対する前記処置対象の形状変化の過不足を判断し、
前記処置対象の形状変化が不足している場合、前記注入針を所定量引き抜くように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項5】
請求項1または3の手術システムにおいて、
前記処置対象に前記局注液を注入する際の抵抗力を検出可能な力覚センサを含み、
前記プロセッサは、
前記処置対象の形状変化が不足し、かつ前記力覚センサの検出値が所定値以上である場合、前記注入針を所定量引き抜くように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項6】
請求項1または3の手術システムにおいて、
プランジャの変位量を検出可能な位置センサを含み、
前記プロセッサは、
前記処置対象の形状変化が不足し、かつ前記位置センサの検出値が所定値未満である場合、前記注入針を所定量引き抜くように前記駆動装置を制御することを特徴とする手術システム。
【請求項7】
請求項1の手術システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記処置対象において前記注入針を刺す位置と前記注入針を刺す位置に対応する前記局注液の前記目標量とを、前記内視鏡画像に基づいて決定することを特徴とする手術システム。
【請求項8】
請求項7の手術システムにおいて、
前記処置対象が写る前記内視鏡画像と、前記注入針を刺す位置情報とを含む学習データに基づき学習された第2学習済みモデルを含み、
前記プロセッサは、
前記第2学習済みモデルを用いて、前記内視鏡画像に基づいて、前記注入針を刺す位置を決定する第1決定処理を行うことを特徴とする手術システム。
【請求項9】
請求項8の手術システムにおいて
前記処置対象が写る前記内視鏡画像と、前記注入針を刺す前記位置情報と、前記位置情報に対応した前記局注液の前記目標量とを含む学習データに基づき学習された第3学習済みモデルを含み、
前記プロセッサは、
前記第3学習済みモデルを用いて、前記内視鏡画像と前記第1決定処理において決定された前記位置情報とに基づいて、前記注入針を刺す各々の位置における前記局注液の前記目標量を決定する第2決定処理を行うことを特徴とする手術システム。
【請求項10】
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、先端部に注入針を有する医療用マニピュレータを制御することで前記注入針の位置を制御する駆動装置とを制御するプロセッサであって、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御することを特徴とするプロセッサ。
【請求項11】
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、先端部に注入針を有する医療用マニピュレータを制御することで前記注入針の位置を制御する駆動装置とを制御する制御方法であって、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術システム、プロセッサ及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡等の医療器具をロボットアーム等で制御する手術システムが知られている。特許文献1には、機械学習を用いて自動運転する手術システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、局注に係る工程を自動制御する手法については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、
先端部に注入針を有する医療用マニピュレータと、
前記医療用マニピュレータを制御して前記注入針の位置を制御する駆動装置と、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御する手術システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、先端部に注入針を有する医療用マニピュレータを制御することで前記注入針の位置を制御する駆動装置とを制御するプロセッサであって、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御するプロセッサに関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、
内視鏡画像を撮像するイメージャを含む内視鏡と、先端部に注入針を有する医療用マニピュレータを制御することで前記注入針の位置を制御する駆動装置とを制御する制御方法であって、
前記注入針と接続するシリンジに、目標量の局注液を注入するように制御し、
前記イメージャから処置対象が写る前記内視鏡画像を取得し、
前記内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断を行い、前記所定判断の判断結果に基づいて前記注入針の位置を変更するように前記駆動装置を制御する制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】手術システムの構成例を説明するブロック図。
【
図3】3つの処置具チャネルを含む例を説明する図。
【
図4】3つの処置具チャネルを含む例を説明する別の図。
【
図5】3つの処置具チャネルを含む例を説明する別の図。
【
図8】手術システムの具体的な構成例を説明する図。
【
図10】フットペダルとハンドルによって制御される駆動装置を説明する図。
【
図12】コンソールから送信された制御信号に対する設定の例を説明する図。
【
図13】コンソールのディスプレイに表示される画面例を説明する図。
【
図15】ESDの処置フローの別の例を説明する図。
【
図18】局注処理の処理例を説明するフローチャート。
【
図19】第1判断の処理例を説明するフローチャート。
【
図23】第1判断の別の処理例を説明するフローチャート。
【
図26】局注処理の別の処理例を説明するフローチャート。
【
図27】第2判断の処理例を説明するフローチャート。
【
図28】第2判断の別の処理例を説明するフローチャート。
【
図29】第1学習済みモデルに入出力されるデータの例を説明する図。
【
図31】第1決定処理の処理例を説明するフローチャート。
【
図32】第2学習済みモデルに入出力されるデータの例を説明する図。
【
図34】第2決定処理の処理例を説明するフローチャート。
【
図35】第3学習済みモデルに入出力されるデータの例を説明する図。
【
図37】第2決定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
【
図38】タッチパネルを用いて内視鏡画像を取得する例を説明する図。
【
図39】第3決定処理の処理例を説明するフローチャート。
【
図40】第4学習済みモデルに入出力されるデータの例を説明する図。
【
図42】位置情報と局注液の目標量とを決定する別の手法を説明する図。
【
図43】所定のデータセットを取得する手法を説明する図。
【
図46】ESDの処置フローの別の例を説明する図。
【
図48】第3決定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
【
図50】第1決定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。
【0010】
図1を用いて本実施形態の手術システム1の構成例について説明する。本実施形態の手術システム1は、プロセッサ100を含む制御装置10と駆動装置20と内視鏡40を含む。本実施形態の制御装置10は駆動装置20を制御する。また本実施形態の駆動装置20は少なくとも医療用マニピュレータ500を制御するが、内視鏡40をさらに制御してもよく、詳細は
図2で後述する。
【0011】
本実施形態の手術システム1に係る手法は、以下に述べるように例えばESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の処置に適用できるが、例えばEMR(内視鏡的粘膜切除術)等、他の処置への適用を妨げるものではない。また、以下に述べる手法の一部を他の処置へ適用しても構わない。なおESDはEndoscopic Submucosal Dissectionの略であり、EMRはEndoscopic Mucosal Resectionの略である。以降の説明において本実施形態の内視鏡40は、ESDにおいて主に用いられる軟性内視鏡を例示するが、本実施形態の手法を、硬性内視鏡等、他の内視鏡に適用することを妨げるものではない。また本実施形態の内視鏡40の各構成は軟性内視鏡として十分公知の構成を広く適用できるものであるため、以降において詳細な図示及び説明を適宜省略している。
【0012】
本実施形態の内視鏡40はイメージャ42を含む。イメージャ42はCCD(Charge-Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等からなる撮像センサ、光学部材等を含み、撮像装置として機能する。本実施形態において、イメージャ42により撮像された画像を内視鏡画像といい、イメージャ42は不図示の照明装置から照射された被写体からの戻り光を撮像することで、制御装置10のプロセッサ100に画像信号を不図示のケーブル等を介して出力する。プロセッサ100は、当該画像信号に基づいて表示画像を生成し、その表示画像を例えば
図9等で後述するディスプレイ610等に出力する。なお当該画像信号は映像信号を含み、内視鏡画像は当該映像信号に基づいて生成された映像を静止画にしたものであってもよい。また、本実施形態のイメージャ42は3Dカメラであってもよい。このようにすることで、プロセッサ100は、立体視画像を内視鏡画像として取得できる。なお、この場合、ディスプレイ610等は立体視画像に対応してもよい。ディスプレイ610等が立体視画像に対応するとは、ディスプレイ610に表示された内視鏡画像に立体感があるとユーザが認識できるように、ディスプレイ610のハードウェアが構成されていることをいう。また、ディスプレイ610に表示された内視鏡画像に立体感があるとユーザが認識できることとは、例えばユーザがディスプレイ610を裸眼で見たときに内視鏡画像に立体感があると認識できることに限らず、例えばユーザが専用のゴーグル等を通してディスプレイ610を見たときに内視鏡画像に立体感があることを認識できることも含む。なお、以降の説明において、
図8等で後述するコンソール60を操作する主体である術者をユーザと統一して表記するが、例えば当該術者の作業を補助する補助者をユーザとして扱ってもよい。補助者は、具体的には例えば非検体に対して内視鏡40を挿入する者、後述する処置具50の入れ替え等を行う者である。なお、後述するように、処置具50は複数あってもよく、必要に応じて第1処置具51、第2処置具52、第3処置具53等と具体的にいうことがある。また、不図示の照明装置は、例えば複数の照明モードを有してもよい。例えば当該照明装置を制御し所望の波長の光を透過するフィルタを複数種類含み、制御装置10は状況に応じてフィルタを適宜選択する処理を行い、当該フィルタを透過した光が被写体に照射される。これにより、ユーザは処置を円滑に行うことができる。なお、照明モードは公知の手法が多数提案されているため詳細な説明は省略する。
【0013】
本実施形態のプロセッサ100は、下記のハードウェアにより構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子で構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシタ等である。
【0014】
また、例えば本実施形態のプロセッサ100は、
図1に不図示のメモリ130と、メモリ130に記憶された情報に基づいて動作することもできる。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。なお、プログラムは、例えば
図24で後述する第1学習済みモデル141等を含んでもよい。プロセッサ100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を用いることができる。メモリ130は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリ130はコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサ100により実行されることで、制御装置10の各部の機能が処理として実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサ100のハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。また、メモリ130は記憶装置とも呼ぶ。
【0015】
医療用マニピュレータ500は注入針516を少なくとも含む。なお詳細は
図2で後述するが、医療用マニピュレータ500は複数有ってもよく、必要に応じて、第1医療用マニピュレータ510、第2医療用マニピュレータ520、第3医療用マニピュレータ530等と具体的に言うことがある。注入針516は、例えばシリンジ512に充填された局注液を、後述する粘膜下層に注入するために用いられる。局注液は例えば生理食塩水等であるが、所定の割合からなるヒアルロン酸ナトリウム等を含んでもよい。このようにすることで、局注液の粘性を上げることができる。これにより、詳細は
図22で後述するように、粘膜を高く隆起させる状態を持続させることができる。これにより、
図14等で後述する切開(ステップS610)等において筋層の損傷を最小限にすることができる。これにより、筋層の損傷に伴う合併症が発生する可能性を低くすることができる。また、局注液は所定の色素物質を含んでもよい。所定の色素物質は例えばインジゴカルミン等である。このようにすることで、局注された粘膜下層は青みかかった透明となることから、ユーザは、後述する切開(ステップS610)に適したな領域を容易に判断できる。
【0016】
本実施形態の駆動装置20について説明する。本実施形態の駆動装置20は例えば
図2のように構成することができる。駆動装置20は、第1処置具51の各部を制御する第1処置具駆動装置21と、第2処置具52の各部を制御する第2処置具駆動装置22と、第3処置具53の各部を制御する第3処置具駆動装置23と、内視鏡40の各部を制御する内視鏡駆動装置24を含む。なお
図2は概念的な図であり、説明の便宜上、イメージャ42、シリンジ512等、一部の構成の図示を省略している。後述する
図16、
図17についても同様である。
【0017】
また、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、A軸、UD軸及びLR軸を、
図2以降に適宜図示している。A軸の方向は、内視鏡40の挿入部の先端である先端部を基準に、医療用マニピュレータ500の長手方向に沿った方向に平行な方向である。そして医療用マニピュレータ500が前進する方向をA1方向とし、医療用マニピュレータ500が後退する方向をA2方向とする。なお、以降の説明に置いて前進後退を「進退」と簡略して言うことがある。言い換えれば、A軸の方向は、医療用マニピュレータ500が進退する方向に沿った方向である。また、UD軸に沿った方向をUD軸方向といい、LR軸に沿った方向をLR軸方向という。
【0018】
第1処置具51は、例えば局注針である。この場合、第1処置具51は例えば第1医療用マニピュレータ510と、第1医療用マニピュレータ510の先端に位置する注入針516とを含む。つまり、
図1の医療用マニピュレータ500は、
図2の第1医療用マニピュレータ510に対応している。
【0019】
第2処置具52は、例えば把持鉗子である。この場合、第2処置具52は例えば第2医療用マニピュレータ520と、第2医療用マニピュレータ520の先端に位置する把持部522を含む。
【0020】
また、第3処置具53は例えば高周波ナイフである。この場合、第3処置具53は例えば第3医療用マニピュレータ530を含む。第3処置具53において、第3医療用マニピュレータ530の先端から、ナイフ部が必要に応じて突出できるように構成されている。ナイフ部は、不図示の給電用ワイヤ、高周波電極等を含む。例えば不図示の給電装置から給電用ワイヤを介して高周波電流を高周波電極に通電させる。この状態で当該高周波電極を所望の生体組織に接触させることで、当該生体組織は、高周波電極から発生した熱エネルギーにより焼灼される。当該熱エネルギーを制御すること等により、後述するマーキング、切開(ステップS610)または止血等が行われる。なお、
図2等に示したナイフ部の形状はポール型を例示しているが、これに限らずメス型、ニードル型、フック型、ハサミ型、ピンセット型等であってもよい。つまり本実施形態の第3処置具53の先端は、公知の高周波処置具に係る構成を幅広く適用できる。
【0021】
本実施形態の手術システム1において、少なくとも第1処置具51は後述する手法により電動で制御される。なお、第2処置具52、第3処置具53、内視鏡40の少なくとも1つがさらに電動で制御されてもよい。以降の説明においては、第2処置具52と第3処置具53と内視鏡40のいずれもが電動で制御されている例を示す。また電動とは、医療用マニピュレータ500等の動作を制御するための電気信号に基づいて、モータ等のアクチュエータによって医療用マニピュレータ500が駆動されることをいう。また、医療用マニピュレータ500等が電動で駆動することは、プロセッサ100の判断によって医療用マニピュレータ500等が電動で駆動することの他、ユーザが後述のコンソール60をマニュアル操作することで、医療用マニピュレータ500等が電動で駆動することを含む。
【0022】
このように第1処置具51等を電動で制御することで後述する局注処理(ステップS500)が実現され、ESDの局注に係る工程を、第1処置具51の自動制御により行うことができる。第1処置具51の自動制御とは、ユーザでなくプロセッサ100が判断して第1処置具51等に含まれる各部を制御すること、即ちプロセッサ100が所定の制御アルゴリズムを用いて第1処置具51等に含まれる各部を制御することをいう。
【0023】
このように、本実施形態の手術システム1において、第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53とが内視鏡40とともに体内に挿入され、ESDに係る各処置が行われるが、内視鏡40が3つの処置具チャネルを有する必要はない。例えば、本実施形態の手術システム1はオーバーチューブ46をさらに含んでもよい。そしてオーバーチューブ46内に処置具チャネルを複数有する構成にしてもよい。例えば
図2に示すように、内視鏡40は処置具挿入口44を1つ有し、当該処置具挿入口44に第1処置具51が挿入され、オーバーチューブ46内の2つの処置具チャネルに第2処置具52及び第3処置具53がそれぞれ挿入されている。
【0024】
また、
図2に示すように、本実施形態の手術システム1において、キャップ48をさらに含んでもよい。キャップ48は、公知の形状な種々提案されているが、例えば
図3に示すように、B1に示す内視鏡出口孔と、B2に示す処置具出口孔を含む。
図3のキャップ48は、
図2に示した例に対応するように、1つの内視鏡出口孔と2つの処置具出口孔とが形成されている。つまり、
図3に示すように、第1医療用マニピュレータ510はB1に示す内視鏡出口孔から突出され、第2医療用マニピュレータ520と第3医療用マニピュレータ530はB2に示す処置具出口孔からそれぞれ突出される。なお、説明の便宜上、B1に示す内視鏡出口孔から内視鏡40の先端が突出するように図示しているが、キャップ48は、内視鏡40の先端が突出しない構成にしてもよい。また、便宜上図示は省略しているが、キャップ48の各孔と駆動装置20との間にチャネルを形成するチューブをさらに含んでもよい。このようにすることで、医療用マニピュレータ500の動作を円滑に行うことができる。
【0025】
また、
図2、
図3では1つの処置具50が内視鏡40の挿入部を介してキャップ48から突出し、2つの処置具50がオーバーチューブ46を介してキャップ48から突出しているが、これに限られるものではない。例えば、
図4に示すように、3つの処置具50がオーバーチューブ46を介してキャップ48から突出することで、本実施形態の手法に係るESD等の処置を行ってもよい。
図4のキャップ48は、B3に示す内視鏡出口孔が1つ形成され、B4に示す処置具出口孔が3つ形成されている。また、図示は省略するが、例えば内視鏡40は2つの処置具チャネルを有し、2つの処置具50が内視鏡40の挿入部を介してキャップ48から突出し、1つの処置具50がオーバーチューブ46を介してキャップ48から突出するようにしてもよい。また、図示は省略するが、3つの処置具50が内視鏡40の挿入部を介してキャップ48から突出する例としてもよい。
【0026】
なお、
図2、
図3ではキャップ48は、オーバーチューブ46に嵌合し、オーバーチューブ46と一体化しているように図示しているが、
図5に示すように、例えばキャップ48を内視鏡40に嵌合するようにし、内視鏡40がオーバーチューブ46と独立して変位できるようにしてもよい。例えば処置を開始した時点では、内視鏡40とオーバーチューブ46とキャップ48とを一体化した状態で体内に挿入し、内視鏡40の先端部が処置対象となる場所に近づいてきたらオーバーチューブ46を不図示のバルーンで固定し、キャップ48が嵌合された内視鏡40が、オーバーチューブ46から離れて駆動するようにしてもよい。また、
図2等ではキャップ48の大きさは、オーバーチューブ46の大きさと同一またはそれ以上に図示しているが、例えばキャップ48の大きさを、オーバーチューブ46の大きさより小さくしてもよい。これにより、例えばキャップ48と嵌合した内視鏡40がオーバーチューブ46の内部を駆動できる。
【0027】
また、
図2等には図示していないが、例えば駆動装置20は、オーバーチューブ46を駆動するオーバーチューブ駆動装置をさらに含んでもよい。オーバーチューブ駆動装置は、内視鏡駆動装置24と同等の駆動装置で構成できる。
【0028】
本実施形態の内視鏡40及び処置具50は、必要な自由度の数に応じた駆動ユニットを含む。例えば第2処置具駆動装置22はモータユニット220を含む。モータユニット220は例えば第1湾曲動作駆動部221と、第2湾曲動作駆動部222と、開閉動作駆動部223と、ロール動作駆動部224と、進退動作駆動部225とを含む。
【0029】
第1湾曲動作駆動部221は、制御装置10から受信した制御信号に基づいて不図示の1組のワイヤを牽引又は弛緩することで、第2医療用マニピュレータ520をUD軸に沿う方向に湾曲させる。その結果、D21に示す方向に沿って把持部522の向きが変更される。同様に、第2湾曲動作駆動部222は、制御装置10から受信した制御信号に基づいて第2医療用マニピュレータ520をLR軸に沿う方向に湾曲させる。その結果、把持部522の向きがD22に示す方向に沿って変更される。
【0030】
開閉動作駆動部223は、把持部522の開閉動作を制御する。例えば制御装置10から受信した制御信号に基づいて、把持片の一方がD23に示す方向に沿って、B21に示す回動軸の回りを回動する。なお
図6に示す把持部522は一例であり、公知の構造を幅広く適用できる。
【0031】
ロール動作駆動部224は、第2医療用マニピュレータ520の先端部のロール回転動作を制御する。例えば制御装置10から受信した制御信号に基づいて、第2医療用マニピュレータ520の先端部をD24に示す方向に沿ってロール回転させる。
【0032】
進退動作駆動部225は、第2医療用マニピュレータ520の先端部の進退動作を制御する。進退動作駆動部225は、例えば直動モータを含む駆動機構により、制御装置10から受信した制御信号に基づいて、第2医療用マニピュレータ520をA軸に沿って進退させる。
【0033】
なお、第3処置具駆動装置23と内視鏡駆動装置24の駆動ユニットについても、上述した第2処置具駆動装置22のモータユニット220と同様の駆動ユニットで実現できる。なお、第3処置具駆動装置23においては、例えば前述のロール動作駆動部224に相当する構成を省略してもよい。また、内視鏡駆動装置24においては、例えば
図8で後述するドライビングユニット70が床に対して所定の方向にスライドすることで、前述の進退動作駆動部225と同等の機能を果たしてもよい。
【0034】
また、第1処置具駆動装置21は、例えば
図7に示すように、プランジャ駆動部212と進退動作駆動部215とを含むように構成してもよい。プランジャ駆動部212は、シリンジポンプ214を制御することで、シリンジ512の先端側に向かう方向であるD16に示す方向に向かって、シリンジ512に含まれるプランジャ514を押圧する。これにより、シリンジ512内の局注液は圧縮され、当該圧縮力によって注入針516から局注液が排出される。なお、
図7のD16に示す方向は、
図7に示しているA軸方向と同じ方向でなくてもよい。進退動作駆動部215は、スライダ機構装置217を制御する。スライダ機構装置217は、直動モータまたはラックアンドピニオン等の機構からなり、固定部218とスライダ部219を含む。スライダ部219は、第1医療用マニピュレータ510の一部と一体化され、制御装置10から受信した制御信号に基づいて固定部218に対してD15に示す方向に進退する。なお、
図7のD15に示す方向はA軸方向と同じ方向である。これにより、注入針516はA軸方向に沿って進退する。
【0035】
本実施形態の手術システム1は、より詳細には
図8のように構成してもよい。
図8において、手術システム1は、前述の制御装置10を含む他、コンソール60とドライビングユニット70とをさらに含む。コンソール60は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線通信規格に準拠した通信方式によって制御装置10と無線通信接続するが、例えば有線で通信接続してもよい。本実施形態の手術システム1において、手術台Tに横たわる不図示の被検体の体内に内視鏡40を挿入し、ESD等の処置が行われる。
【0036】
ドライビングユニット70は、
図2の内視鏡駆動装置24に対応し、制御装置10からの制御信号に基づいて内視鏡40の各部を電動で動作させる。なお、図示はしていないが、第1処置具駆動装置21、第2処置具駆動装置22、第3処置具駆動装置23に対応するユニットを、ドライビングユニット70に含めてもよいし、ドライビングユニット70と別に設けてもよく、ユーザが適宜決定すればよい。
【0037】
コンソール60は、例えばディスプレイ610とタッチパネル620とフットペダル630とハンドル640を含む。ディスプレイ610は、制御装置10を介してイメージャ42が撮像した内視鏡画像を表示する。タッチパネル620は、詳細は
図38で後述するがディスプレイ610と同様に内視鏡画像を表示するとともに、ドローイング等の機能を含む。またタッチパネル620は例えばディスプレイ610の中央を含む一部の領域を表示してもよい。なお、フットペダル630とハンドル640は複数有ってもよく、例えば
図9に示すように、本実施形態のコンソール60は、フットペダル630として、第1フットペダル631と第2フットペダル632と第3フットペダル633とを含む。なお、フットペダル630は4つ以上あってもよい。同様に、本実施形態のコンソール60は、ハンドル640として、第1ハンドル641と第2ハンドル642とを含む。このようにすることで、ユーザは2つのハンドル640を用いて、内視鏡40と複数の処置具50を適宜使い分けながら処置を行うことができる。なお、図示は省略しているが、コンソール60は、ハンドル640の他に、他の操作を行うための操作部をさらに含んでもよい。他の操作とは例えば送気送水操作、光源装置の照明モードの変更操作等である。
【0038】
なお、
図9のD1に示す方向は、ユーザがコンソール60に向かう方向に沿う方向であり、前方向ともいう。D2に示す方向は、D1に示す方向と反対の方向であり、後方向ともいう。D1に示す方向とD2に示す方向を合わせて前後方向ともいう。D3に示す方向は、前後方向に直交し、左方向ともいう。D4に示す方向は、D3に示す方向と反対の方向であり、右方向ともいう。D3に示す方向とD4に示す方向を合わせて左右方向ともいう。後述する
図11についても同様である。
【0039】
例えば本実施形態のコンソール60において、フットペダル630は不図示のフットスイッチを含み、ユーザがフットペダル630を踏む操作によって、当該フットスイッチから制御信号が制御装置10に送信される。制御装置10は、フットペダル630の操作に基づく制御信号と、後述するハンドル640の操作に基づく制御信号との組み合わせから、内視鏡40または医療用マニピュレータ500を制御する。
【0040】
より具体的には、例えば制御装置10のメモリ130には、
図10に示すテーブルが記憶されている。例えばユーザが第1フットペダル631を操作し、かつ第1ハンドル641を操作した場合、制御装置10は、第1ハンドル641からの制御信号を第3処置具駆動装置23に送信する。また、ユーザが第1フットペダル631を操作し、かつ第2ハンドル642を操作した場合、制御装置10は、第2ハンドル642からの制御信号を第2処置具駆動装置22に送信する。また、ユーザが第2フットペダル632を操作し、かつ第1ハンドル641を操作した場合、制御装置10は、第1ハンドル641からの制御信号を内視鏡駆動装置24に送信する。また、ユーザが第3フットペダル633を操作し、かつ第1ハンドル641を操作した場合、制御装置10は、第1ハンドル641からの制御信号を第1処置具駆動装置21に送信する。
【0041】
制御装置10が
図10に示すテーブルを記憶することで、例えばユーザがコンソール60の中央にある第2フットペダル632を踏みながら右側の第1ハンドル641を操作することで、内視鏡40を操作できる。また、ユーザがコンソール60の左側にある第3フットペダル633を踏みながら右側の第1ハンドル641を操作することで、第1処置具51を操作できる。また、ユーザがコンソール60の右側にある第1フットペダル631を踏みながら左側の第2ハンドル642を操作することで、第2処置具52を操作し、かつ、右側の第1ハンドル641を操作することで第3処置具53を操作できる。
【0042】
ハンドル640は、より詳細には
図11のように構成してもよい。
図11において、ハンドル640は、第1パーツ651と第2パーツ652と第3パーツ653を含む。第1パーツ651と第2パーツ652は、B61に示すジョイントを介して接続されている。第2パーツ652と第3パーツ653はB62に示すジョイントを介して接続されている。なお、
図11は第2ハンドル642のみを示しているが、第1ハンドル641についても第2ハンドル642と同様である。
【0043】
第1パーツ651はD62に示す方向とD65に示す方向に変位可能である。D62に示す方向は、
図9で前述した左右方向と同じ方向である。D65に示す方向は、
図9で前述した前後方向と同じ方向である。例えばユーザは第2パーツ652を持った状態で、D65に示す方向に沿って第2パーツ652を動かすことで、B61に示すジョイントを介して第1パーツ651が前後方向に変位する。同様に、例えばユーザは第2パーツ652を持った状態で、D62に示す方向に沿って第2パーツ652を動かすことで、B61に示すジョイントを介して第1パーツ651が左右方向に変位する。また、ユーザは、B61に示すジョイントに設けられている回動軸を中心に、第2パーツ652をD61に示す方向に回動させることができる。また、ユーザは、第3パーツ653の長手方向を軸として、第3パーツ653をD64に示す方向にロール回転させることができる。
【0044】
ユーザがハンドル640を操作することによって、不図示のセンサ等から出力される制御信号に基づいて医療用マニピュレータ500の進退、湾曲、ロール回転等が行われる。例えば前述のようにユーザが第1フットペダル631を踏んだ状態で第2ハンドル642を操作することで、第2処置具52を動作させたいとする。例えばユーザが第2パーツ652を
図11のD61に示す方向に回動させることで、第2医療用マニピュレータ520は
図6のD21に示す方向に湾曲する。また、例えばユーザが、第1パーツ651が
図11のD62に示す方向に変位するように第2ハンドル642を操作することで、第2医療用マニピュレータ520は
図6のD22に示す方向に湾曲する。また、例えばユーザが、第3パーツ653を
図11のD64に示す方向にロール回転させることで、第2医療用マニピュレータ520は
図6のD24に示す方向にロール回転する。また、例えばユーザが、第1パーツ651が
図11のD65に示す方向に変位するように第2ハンドル642を操作することで、第2医療用マニピュレータ520は
図6のD25に示す方向に進退する。
【0045】
また、図示は省略するが、ハンドル640はボタン等の操作部をさらに含んでもよい。例えばユーザが第1フットペダル631を踏んだ状態で第1ハンドル641に含まれるボタンを操作することで、第3処置具53の高周波電極へ高周波電流を流せるようにしてもよい。また、例えばユーザが第1フットペダル631を踏んだ状態で第2ハンドル642に含まれるボタンを操作することで、第2処置具52の把持部522の開閉を制御できるようにしてもよい。
【0046】
また、例えば制御装置10は、ハンドル640から送信される制御信号の受信を有効にするか、無効にするかを設定できるようにしてもよい。ハンドル640から送信される制御信号の受信を有効にするとは、ハンドル640から受信した制御信号に基づいて、対応する制御信号を駆動装置20の各部に送信することをいう。ハンドル640から送信される制御信号の受信を無効にするとは、ハンドル640から受信した制御信号に基づく指示を破棄することをいう。具体的には例えば制御装置10のメモリ130には、前述した
図10に示すテーブルの他に、
図12に示すテーブルが記憶されている。例えば
図6で前述したように、第2医療用マニピュレータ520は進退、湾曲、ロール回転のいずれも行うことから、
図12のB71に示すように、第1パーツ651と第2パーツ652と第3パーツ653のいずれの操作に基づく制御信号の受信が有効に設定されている。
【0047】
第3医療用マニピュレータ530は進退、湾曲は行うが、ロール回転は行わない仕様になる場合がある。この場合、
図12のB72に示すように、第1パーツ651と第2パーツ652との操作に基づく制御信号の受信は有効に設定されるが、
図12のB73に示すように、第3パーツ653の操作に基づく制御信号の受信は無効に設定されている。
【0048】
また、例えば前述したように、内視鏡40は進退、湾曲、ロール回転のいずれも行うことから、
図12のB74に示すように、第1パーツ651と第2パーツ652と第3パーツ653とのいずれの操作に基づく制御信号の受信が有効に設定されている。また、
図10のテーブルから、第2フットペダル632を踏むときは、第2ハンドル642の操作に基づく制御信号の送信先となる駆動機構が設定されていないことから、
図12のB75に示すように、第2ハンドル642の操作に基づく制御信号の受信は無効に設定されている。
【0049】
また、例えば
図7で前述したように、第1処置具51は進退のみを行うように第1処置具駆動装置21が構成されていることがある。また、第3フットペダル633を踏むときは、第2ハンドル642の操作に基づく制御信号の送信先となる駆動機構が設定されていない。この場合、
図12のB76に示すように、第1パーツ651の前後方向の操作に基づく制御信号の受信が有効に設定され、第1パーツ651の左右方向の操作に基づく制御信号の受信が無効に設定されている。また、
図12のB77に示すように、他の制御信号の受信は無効に設定されている。
【0050】
なお、フットペダル630の操作とハンドル640の操作との組み合わせは上記に限られるものではない。例えば、駆動装置20が前述のオーバーチューブ駆動装置をさらに含む場合、
図10のテーブル内訳を以下のように変更してもよい。例えばユーザが第2フットペダル632を操作し、かつ第2ハンドル642を操作した場合、制御装置10は、第2ハンドル642からの制御信号を第1処置具駆動装置21に送信してもよい。また、例えばユーザが第3フットペダル633を操作し、かつ第1ハンドル641を操作した場合、制御装置10は、第1ハンドル641からの制御信号をオーバーチューブ駆動装置に送信してもよい。
【0051】
このように構成されたコンソール60によって、例えば
図13に示すように、ユーザはディスプレイ610を見ながら処置具50を適宜操作し、C1に示す処置対象に対してESD等の処置を行う。処置対象は病変部ともいうことができる。ここでの病変部とは、外観上正常な状態とは異なる状態と思われる部分をいい、必ずしも病気が原因のものに限定されない。病変部は例えば腫瘍であるが、これに限らずポリープ、炎症、憩室等であってもよい。なおESDの処置対象となるのは早期腫瘍である。早期腫瘍とは例えば
図20で後述するように、増殖している範囲が粘膜層内または粘膜下層内にとどまっている腫瘍をいう。なお
図13の表示はあくまで例示であり、第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53とが同時にディスプレイ610に表示されることは要さない。
【0052】
図14を用いて、本実施形態の手法を適用した処置のフローについて説明する。ユーザは第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53をセットする(ステップS10)。第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53をセットするとは、内視鏡40または内視鏡40とオーバーチューブ46の組み合わせによって3つの処置具チャネルが構成され、それぞれの処置具チャネルに、第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53をそれぞれ挿入するということである。
【0053】
その後ユーザは局注位置の設定(ステップS100)と、目標量の設定(ステップS200)と、方向情報の設定(ステップS300)を行う。局注位置とは、注入針516を刺す位置をいい、単に「位置」と簡略していうことがある。目標量とは、局注位置に対して注入する局注液の注入量の目標値である。例えばユーザは、病変部の周囲において注入針516を刺す位置の設定と、当該位置に向ける注入針516の角度の設定と、注入針516を刺した後に注入する局注液の目標量の設定を行う。
【0054】
なお、
図14には図示していないが、ステップS300の後にマーキングが行われる。マーキングは後述する局注処理(ステップS500)、切開(ステップS610)等を行うための所定の目印を形成する。所定の目印は、例えば前述の第3処置具53を用いて、病変部の周辺に微小な焼灼を行うことで形成される。なお、例えば撮像された内視鏡画像に対して病変部に係る領域をセグメンテーションすることによって、マーキングとしてもよい。
【0055】
その後プロセッサ100は、局注処理(ステップS500)を行う。局注処理(ステップS500)の詳細は
図18で後述する。プロセッサ100は、ステップS100で設定した全ての位置について局注処理(ステップS500)を実行したか否かについて判断する処理(ステップS600)を行う。ステップS100で設定した全ての位置について局注処理(ステップS500)を実行したと、プロセッサ100が判断した場合(ステップS600でYES)、ユーザは切開(ステップS610)を行う。切開(ステップS610)は例えば第3処置具53を用いて行われるが、例えば第2処置具52の把持部522で病変部を把持することで切開(ステップS610)の作業が円滑に行われる。一方、ステップS600でNOと判断された場合、ユーザは局注処理(ステップS500)を実行していない位置に対して注入針516を刺し、プロセッサ100は局注処理(ステップS500)を再度実行する。
【0056】
その後、ユーザは剥離(ステップS620)を行う。例えばユーザは切開(ステップS610)により、粘膜下層から浮いた病変部を除去する。例えば第2処置具52の把持部522で病変部を把持した状態で、第2医療用マニピュレータ520を体外の位置まで後退させることで、病変部を回収する。あるいは、第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53のいずれかと、ネット処置具等の病変部を回収する専用処置具を入れ替えて、病変部を回収してもよい。なお、出血が発生した場合、例えば第3処置具53を用いて出血が発生した箇所に対して焼灼止血する工程をステップS620に含んでもよい。なお、病変部のサイズが第2医療用マニピュレータ520のチャネルの径より大きい場合、把持部522で病変部を把持した状態で、内視鏡40と医療用マニピュレータ500を体外の位置まで後退させてもよい。
【0057】
なお本実施形態の局注処理(ステップS500)を実現するにあたり、3つの処置具チャネルは要しない。例えば2つの処置具チャネルを有する場合でも、本実施形態の手法を適用できる。その場合、例えば
図15に示すフローでESDを行えばよい。なお
図15において、
図14と同様の処理については説明を適宜省略する。
【0058】
図15において、ユーザは第2処置具52と第3処置具53をセットする(ステップS12)。つまり内視鏡40または内視鏡40とオーバーチューブ46の組み合わせによって2つの処置具チャネルが構成され、それぞれの処置具チャネルに、第2処置具52と第3処置具53をそれぞれ挿入される。例えば
図16に示すように、内視鏡40の処置具挿入口44に第3処置具53が挿入され、オーバーチューブ46に設けられた処置具チャネルに第2処置具52が挿入される。そして
図14と同様にステップS100、ステップS200、ステップS300が行われるとともに、第3処置具53を用いたマーキングが行われる。
【0059】
その後ユーザは、第1処置具51と第3処置具53を入れ替える。つまり
図17に示すように、内視鏡40の処置具挿入口44に第1処置具51が挿入され、第2処置具52は、オーバーチューブ46に設けられた処置具チャネルに継続して挿入されている。そしてプロセッサ100は後述する局注処理(ステップS500)とステップS600を行う。その後ステップS600でYESと判断された場合、ユーザは第1処置具51と第3処置具53を入れ替える。つまりステップS600でYESと判断された場合は局注が終了しているので、第1処置具51を用いる必要はなく、第2処置具52と第3処置具53を用いて切開(ステップS610)と剥離(ステップS620)が行われるようにすればよい。
【0060】
ユーザは、状況に応じて、
図14のフローまたは
図15のフローを適宜選択してESDの処置を行えばよい。なお、
図15は
図14と比較してステップS400、ステップS602が追加されていることから、ユーザは
図14のフローを選択すると、より短い時間で処置を完了させることができる。また、
図46で後述する変形例のフローは、3つの処置具チャネルを含む場合に適用できる。
【0061】
また、フローの図示は省略するが、例えば第2処置具52を用いずに第3処置具53のみで切開(ステップS610)を行うことができる場合は、1つの処置具チャネルを含む内視鏡40を用いてESDを行ってもよい。
【0062】
局注処理(ステップS500)について説明する。局注処理(ステップS500)は、ステップS100で設定された局注位置に対して、ステップS300で設定された方向情報に基づいて第1医療用マニピュレータ510の制御を開始した後のタイミングで行われる。言い換えれば、注入針516が内壁に刺さり、シリンジポンプ214がプランジャ514を
図7のD16に示す方向に押す制御が開始されたタイミングで、ステップS500の実行が開始される。
【0063】
プロセッサ100は、内視鏡画像を取得する(ステップS502)。例えばプロセッサ100は、後述する第1判断(ステップS510)を行うタイミングでイメージャ42が撮像した内視鏡画像を取得する。その後プロセッサ100は、第1判断(ステップS510)を行う。その後プロセッサ100は、第1判断(ステップS510)の判断結果がOKまたはNGかを判断する(ステップS531)。
【0064】
プロセッサ100は、第1判断(ステップS510)の判断結果がNGと判断した場合(ステップS531でNO)、注入針516の位置を変更し(ステップS540)、再度ステップS502を行う。ステップS540は、例えばプロセッサ100は、第1医療用マニピュレータ510の先端の注入針516が所定の長さだけ引き抜かれるように、第1処置具駆動装置21を制御する。
【0065】
図19のフローチャートを用いて、本実施形態の手法に係る所定判断としての第1判断(ステップS510)について説明する。以降において、所定判断としての第1判断を、単に第1判断と簡略して記載する。プロセッサ100は、内視鏡画像に基づいて局注の成否を判断する(ステップS512)。つまり、入力データとしての内視鏡画像を制御装置10に入力すると、プロセッサ100は局注の成否の判断結果を出力する。例えば、図示は省略するが、ユーザはステップS502で取得した内視鏡画像のうち、注入針516が刺さっているエリアの周辺をROI(関心領域)として設定する。そしてプロセッサ100は、局注液が注入されているか否かを判断する。なおROIはRegion of Interestの略である。
【0066】
図20、
図21、
図22を用いて、局注処理(ステップS500)の具体的な作用効果を説明する。
図20は、胃、食道、大腸などの消化管の内壁に対して注入針516が刺さり、局注処理(ステップS500)が開始されるタイミングであることを概念的に示した断面図である。内壁は、L1に示す粘膜層、L2に示す粘膜下層、L3に示す筋層等から構成されている。なお、
図20において筋層より外側の漿膜等の図示は省略している。
図20のC11に示す病変部は、前述したように早期腫瘍であり、L1に示す粘膜層の範囲内にあるものとする。
【0067】
なお、
図20に示すように、内壁の壁面に沿う方向と垂直な方向に対して、傾いた方向に沿って注入針516が内壁に刺さっている。例えば
図7で前述したように第1処置具駆動装置21が第1医療用マニピュレータ510に対して進退動作しかできない場合は、プロセッサ100は前述のステップS300において、内視鏡40を湾曲する制御を行うことで、注入針516の進退方向を調整している。このようにすることで、注入針516が内壁を貫通する可能性を下げることができる。特に、大腸壁は胃壁等に比べて薄いことから、注入針516を内壁の壁面に対して深く刺さらないようにすることが求められる。また、粘膜下層は脂肪で構成されていることから柔らかく、注入針516をL2の粘膜下層の範囲に留まるように刺すことは一般に困難であり、局注処理(ステップS500)が開始されるタイミングにおいては、注入針516の先端は筋層の一部に達することが通常である。
【0068】
筋層は筋繊維からなる硬い層であることから、プランジャ駆動部212がシリンジポンプ214を駆動させても、局注液は筋層に入り込むことはない。つまり、設定したROIにおいて変化が見られない。この場合、プロセッサ100は、第1判定(ステップS510)においてNGと判断する。これにより、プロセッサ100は、ステップS531でNOと判断し、ステップS540により、注入針516の位置を変更する。より具体的には、プロセッサ100は、注入針516を所定量だけA2の方向に移動させるように、進退動作駆動部215を制御する。言い換えれば、ステップS540によって、注入針516は所定量だけ内壁から引き抜かれる。そして再度の第1判定(ステップS510)においてもプロセッサ100がNGと判断した場合は、ステップS540が再度行われることになる。
【0069】
ステップS540が所定回数行われることにより、例えば
図21に示すように、注入針516の先端はL2に示す粘膜下層の層内に位置する。シリンジポンプ214はプランジャ514を押し続けていることから、
図21に示すタイミングにおいて注入針516から局注液が排出され、
図22に示すような状態になる。
図22において、B81に示す局注液により、L11に示す粘膜層とL12に示す粘膜下層とC21に示す病変部は隆起した状態になる。なお
図22のL13に示す筋層は、
図20、
図21のL3に示す筋層と略同一の状態である。これにより、図示は省略するが、設定したROIにおいて各組織が隆起した変化が生じている。
【0070】
この場合、プロセッサ100は、再度の第1判断(ステップS510)でOKと判断する。そしてプロセッサ100は、ステップS531でYESと判断し、局注処理(ステップS500)のフローが終了する。これで、1箇所の位置について局注が完了したことになる。その後、例えばユーザは、切開(ステップS610)において、B82で示す箇所等を第3処置具53で焼灼除去することにより、C21に示す病変部は粘膜下層から浮いた状態になり、剥離(ステップS620)を行うことが可能になる。
【0071】
以上のことから、本実施形態の手術システム1は、内視鏡画像を撮像するイメージャ42を含む内視鏡40と、先端部に注入針516を有する医療用マニピュレータ500と、医療用マニピュレータ500を制御して注入針516の位置を制御する駆動装置20と、プロセッサ100と、を含む。プロセッサ100は、注入針516と接続するシリンジ512に、目標量の局注液を注入するように制御し、イメージャ42から処置対象が写る内視鏡画像を取得し、内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断(第1判断(ステップS510))を行う。また、プロセッサ100は、所定判断の判断結果に基づいて(ステップS531でNO)注入針516の位置を変更するように駆動装置20を制御する(ステップS540)。
【0072】
このようにすることで、局注に係る工程を自動制御することができる。上記したようにESDは、第1処置具51、第2処置具52、第3処置具53を用いる複雑な手技であり、ユーザにとって負担が大きい。その点、本実施形態の手法を適用することで、ユーザの第1処置具51を用いる局注に係る工程の負担が軽減される。これによりユーザは第2処置具52と第3処置具53を用いることに集中できることから、処置を円滑に行うことができる。なお、処置具チャネルを3つ含む場合は、前述のように第1処置具51と第3処置具53を入れ替える工程が無くなるため、手術の時間を短縮できる。
【0073】
また、本実施形態の手法はプロセッサ100によって実現してもよい。つまり、本実施形態のプロセッサ100は、内視鏡画像を撮像するイメージャ42を含む内視鏡40と、先端部に注入針516を有する医療用マニピュレータ500を制御することで注入針516の位置を制御する駆動装置20とを制御する。また、本実施形態のプロセッサ100は、注入針516と接続するシリンジ512に、目標量の局注液を注入するように制御し、イメージャ42から処置対象が写る内視鏡画像を取得し、内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断(第1判断(ステップS510))を行い、所定判断の判断結果に基づいて(ステップS531でNO)注入針516の位置を変更するように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態の手法は制御方法によって実現してもよい。つまり、本実施形態の制御方法は、内視鏡画像を撮像するイメージャ42を含む内視鏡40と、先端部に注入針516を有する医療用マニピュレータ500を制御することで注入針516の位置を制御する駆動装置20とを制御する制御方法である。また、本実施形態の制御方法は、注入針516と接続するシリンジ512に、目標量の局注液を注入するように制御し、イメージャ42から処置対象が写る内視鏡画像を取得し、内視鏡画像を用いて局注の成否を判断する所定判断(第1判断(ステップS510))を行い、所定判断の判断結果に基づいて(ステップS531でNO)注入針516の位置を変更するように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0075】
本実施形態の手法は上記に限らず、他の特徴を追加する等、種々の変形実施が可能である。例えば、前述の第1判断(ステップS510)は、
図23のフローチャートに示す処理例としてもよい。
図23において、プロセッサ100は、第1学習済みモデル141を用いて推論した内視鏡画像を取得する(ステップS514)。例えばプロセッサ100は局注処理(ステップS500)を開始する直前に撮像した内視鏡画像に基づいて、局注が成功した場合はどのような内視鏡画像が取得できるかを推論する。その後プロセッサ100は、推論した内視鏡画像と、実際にイメージャ42から取得した内視鏡画像を比較する(ステップS516)。
図23に示した第1判断(ステップS510)は、制御装置10を
図24に示す構成例のようにすることで、実現できる。
【0076】
図24において、制御装置10は、入力部110と、推論部102を含むプロセッサ100と、出力部120と、第1学習済みモデル141を記憶するメモリ130とを含む。つまりプロセッサ100は、メモリ130から第1学習済みモデル141を読み出し、第1学習済みモデル141に係るプログラムを実行することによって、推論部102として機能する。なお、推論部102は、後述する第2学習済みモデル142、第3学習済みモデル143、第4学習済みモデル144、第5学習済みモデル145、第6学習済みモデル146に係るプログラムも実行できる。
【0077】
本実施形態の第1学習済みモデル141は、教師あり学習としての機械学習を行うことにより生成されたプログラムモジュールである。つまり第1学習済みモデル141は入力データと正解ラベルとを対応付けたデータセットに基づいた教師あり学習によって生成されている。後述する第2学習済みモデル142、第3学習済みモデル143、第4学習済みモデル144、第5学習済みモデル145、第6学習済みモデル146についても同様である。
【0078】
また、本実施形態の第1学習済みモデル141において、モデルの少なくとも一部にニューラルネットワークが含まれている。ニューラルネットワークは、図示は省略するが、データが入力される入力層と、入力層からの出力に基づいて演算を行う中間層と、中間層からの出力に基づいてデータを出力する出力層を有する。中間層の数は特に限定されない。また、中間層における各層に含まれるノードの数は特に限定されない。中間層において所与の層に含まれるノードは、隣接する層のノードと結合される。各結合には重み付け係数が設定されている。各ノードは、前段のノードの出力と重み付け係数を乗算し、乗算結果の合計値を求める。さらに各ノードは、合計値に対してバイアスを加算し、加算結果に活性化関数を適用することによって当該ノードの出力を求める。この処理を、入力層から出力層へ向けて順次実行することによって、ニューラルネットワークの出力が求められる。なお活性化関数としては、シグモイド関数やReLU関数等の種々の関数が知られており、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。なお、後述する第2学習済みモデル142、第3学習済みモデル143、第4学習済みモデル144、第5学習済みモデル145、第6学習済みモデル146も、同様にニューラルネットワークを含んでいる。
【0079】
入力部110は、外部から入力データを受信するインターフェースである。例えば入力部14は、ステップS514において、局注を行う前における処置対象である病変部が撮像された内視鏡画像の画像データが入力部110に入力されることで、入力部110としての機能が果たされる。
【0080】
出力部120は推論部102が推定したデータを外部に送信するインターフェースである。例えばステップS514において、第1学習済みモデル141からの出力データとして、推論部102が推論した内視鏡画像のデータを出力することで、出力部120としての機能が果たされる。
【0081】
第1学習済みモデル141の機械学習は例えば学習装置80によって行われる。
図25は、学習装置80の構成例を示すブロック図である。学習装置80は、例えばプロセッサ800とメモリ830と通信部860とを含み、プロセッサ800は機械学習部802を含む。
【0082】
プロセッサ800は、メモリ830、通信部860等の各機能部との間でデータの入出力制御を行う。プロセッサ800は、
図1で前述したプロセッサ100と同様のハードウェア等で実現できる。プロセッサ800は、メモリ830から読みだした所定のプログラム、
図25に不図示の操作部からの操作入力信号等に基づいて、各種の演算処理を実行し、手術システム1とのデータ入出力動作等を制御する。ここでの所定のプログラムは、不図示の機械学習プログラムを含む。つまり、プロセッサ800は、メモリ830から機械学習プログラムと必要なデータ等を適宜読み出して実行することで、機械学習部802として機能する。メモリ830には、不図示の機械学習プログラムのほか、第1訓練モデル841、第1訓練データ851が記憶されている。メモリ830は、
図1で前述したメモリ130と同様の半導体メモリ等により実現できる。
【0083】
通信部860は、手術システム1と所定の通信方式で通信可能な通信インターフェースである。所定の通信方式は例えば前述のWi-Fi(登録商標)等であるが、これに限らずUSB等の有線通信規格に準拠した通信方式であってもよい。これにより、学習装置80は、機械学習した第1学習済みモデル141を手術システム1に送信し、手術システム1は第1学習済みモデル141を更新することができる。なお
図25は、学習装置80と手術システム1を別々にした例であるが、手術システム1が学習装置80に相当する学習サーバを含む構成例にすることを妨げるものではない。
【0084】
第1訓練データ851は、図示は省略するが、局注を行う前における処置対象としての病変部が写っている内視鏡画像と、局注を行ったことで形状変化している病変部が写っている内視鏡画像を正解ラベルとするデータセットである。
図22で前述したように局注が成功したことにより注入針516を刺した周辺は隆起し、三次元的な形状変化が生じている様子が撮像されている内視鏡画像が正解ラベルである。機械学習部802は、多数の第1訓練データ851を第1訓練モデル841に入力することで、第1訓練モデル841を第1学習済みモデル141に更新させる。
【0085】
そして前述のように、
図23のステップS514において、局注を行う前における病変部が写っている内視鏡画像を入力データとして入力部110に入力することで、推論部102は、局注を行った後における病変部が写っている内視鏡画像を推論し、出力部120を介して出力する。その後プロセッサ100は、ステップS516において、ステップS514で推論した内視鏡画像と、ステップS502で実際に取得した内視鏡画像とを比較し、局注の成否を判断する。そして画像の類似度が所定の閾値以上である場合、第1判断(ステップS510)の判断結果はOKとなり、プロセッサ100はステップS531でYESと判断する。一方、画像の類似度が所定の閾値未満である場合、第1判断(ステップS510)の判断結果はNGとなり、プロセッサ100はステップS531でNOと判断し、ステップS540以降を行う。
【0086】
なお、第1判断(ステップS510)の手法は上記に限らない。例えば、第1訓練データ851は、局注処理(ステップS500)を開始した後の内視鏡画像と、局注が成功しているか否かを示す情報を正解ラベルとするデータセットとしてもよい。機械学習部802は、学習段階として第1訓練データ851を第1訓練モデル841に入力し、第1学習済みモデル141として更新させる。例えば学習段階において第1訓練モデル841に内視鏡画像を入力し、第1訓練モデル841は局注が成功しているか否かについての判定結果を出力する。そして機械学習部802は、当該出力結果と正解ラベルとの誤差に基づいて、第1訓練モデル841に含まれるニューラルネットワークのパラメータを最適化するフィードバックを行う。これにより、第1学習済みモデル141が更新される。なお、学習段階に関する手法は、後述する第2学習済みモデル142、第3学習済みモデル143、第4学習済みモデル144、第5学習済みモデル145、第6学習済みモデル146についても同様であるため、以降において説明を省略する。
【0087】
そして、第1判断(ステップS510)において、ステップS502で取得した内視鏡画像が入力部110に入力され、プロセッサ100はメモリ130から第1学習済みモデル141を読み出し、推論部102は入力された内視鏡画像に基づいて局注の成否を推論する。そして出力部120から局注が成功している旨の情報が出力された場合、第1判断(ステップS510)の判断結果はOKとなり、プロセッサ100はステップS531でYESと判断する。一方、出力部120から局注が成功していない旨の情報が出力された場合、第1判断(ステップS510)の判断結果はNGとなり、プロセッサ100はステップS531でNOと判断し、ステップS540以降を行う。
【0088】
このように、本実施形態の手術システム1は、局注液が注入された処置対象が写る内視鏡画像を含む学習データ(第1訓練データ851)に基づいて学習された第1学習済みモデル141を含む。プロセッサ100は、第1学習済みモデル141を用いて、内視鏡画像から処置対象の形状変化の過不足を判断し(ステップS516)、処置対象の形状変化が不足していると判断した場合(ステップS532でNO)、注入針516を所定量引き抜くように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、内視鏡画像による機械学習を用いて、局注工程を自動制御できる。
【0089】
なお、後述する第2学習済みモデル142の機械学習についても、学習装置80を用いて同様に行うことができる。この場合、学習装置80のメモリ830には第2訓練モデル842と第2訓練データ852が記憶される。そしてプロセッサ800は、第2訓練モデル842に対して第2訓練データ852による機械学習を行い、第2訓練モデル842は第2学習済みモデル142として更新され、手術システム1に出力される。また、後述する第3学習済みモデル143の機械学習についても、学習装置80を用いて同様に行うことができる。この場合、学習装置80のメモリ830には第3訓練モデル843と第3訓練データ853が記憶される。そしてプロセッサ800は、第3訓練モデル843に対して第3訓練データ853による機械学習を行い、第3訓練モデル843は第3学習済みモデル143として更新され、手術システム1に出力される。また、後述する第4学習済みモデル144の機械学習についても、学習装置80を用いて同様に行うことができる。この場合、学習装置80のメモリ830には第4訓練モデル844と第4訓練データ854が記憶される。そしてプロセッサ800は、第4訓練モデル844に対して第4訓練データ854による機械学習を行い、第4訓練モデル844は第4学習済みモデル144として更新され、手術システム1に出力される。また、後述する第5学習済みモデル145の機械学習についても、学習装置80を用いて同様に行うことができる。この場合、学習装置80のメモリ830には第5訓練モデル845と第5訓練データ855が記憶される。そしてプロセッサ800は、第5訓練モデル845に対して第5訓練データ855による機械学習を行い、第5訓練モデル845は第5学習済みモデル145として更新され、手術システム1に出力される。また、後述する第6学習済みモデル146の機械学習についても、学習装置80を用いて同様に行うことができる。この場合、学習装置80のメモリ830には第6訓練モデル846と第6訓練データ856が記憶される。そしてプロセッサ800は、第6訓練モデル846に対して第6訓練データ856による機械学習を行い、第6訓練モデル846は第6学習済みモデル146として更新され、手術システム1に出力される。
【0090】
また、例えば本実施形態の局注処理(ステップS500)は、
図26のフローチャートに示す処理例のようにしてもよい。この場合、本実施形態の所定判断として第2判断(ステップS520)が行われる。以降において、所定判断としての第2判断を、単に第2判断と簡略して記載する。プロセッサ100は、前述のステップS502を行った後、局注液の注入量の制御値を取得する(ステップS504)。例えばプロセッサ100は、プランジャ駆動部212がシリンジポンプ214に送信している制御値の情報を取得する。その後プロセッサ100は、第2判断(ステップS520)を行い、第2判断の判断結果(OKまたはNG)を確認する(ステップS532)。プロセッサ100は、第2判断の判断結果がNGの場合(ステップS532でNO)、前述のステップS540を行い、ステップS502を再度行う。
【0091】
第2判断(ステップS520)は、例えば
図27のフローチャートに示すように、ステップS502で取得した内視鏡画像とステップS504で取得した局注液の注入量の制御値とに基づいて、局注の成否を判断する(ステップS522)。つまり、入力データとして内視鏡画像と局注液の注入量の制御値とを制御装置10に入力すると、プロセッサ100は、局注の成否の判断結果を出力する。言い換えれば、
図27のステップS522は、
図19のステップS512と比較して、局注の成否の判断に用いられる入力データが追加されている点で異なる。
【0092】
例えば図示は省略するが、粘膜及び粘膜下層の物理モデルをメモリ130に記憶させておく。そしてプロセッサ100は、例えば当該制御値に対応する注入量からなる局注液が粘膜下層に入り込んだ場合に隆起する領域である第1領域を、当該物理モデルに基づいて算出する。また、プロセッサ100は、内視鏡画像から実際に隆起している領域である第2領域を抽出する。そしてプロセッサ100は第1領域と第2領域の一致度を求め、当該一致度が所定の基準値以上であれば、局注が成功していることから、第2判断(ステップS520)でOKと判断する。これにより、プロセッサ100は、ステップS532でYESと判断し、局注処理(ステップS500)を終了する。一方、プロセッサ100は、当該一致度が所定の基準値未満であれば、処置対象の形状変化が十分ではないとみなせることから第2判断(ステップS520)でNGと判断する。これにより、プロセッサ100は、ステップS532でNOと判断し、前述のステップS540を行い、注入針516の位置を変更する。その後、再度のステップS522において、第2領域が変化して第1領域と第2領域の一致度が所定の基準値以上となった場合、注入針516の位置の変更により局注が成功したので、第2判断(ステップS520)でOKと判断する。
【0093】
以上のことから、本実施形態の手術システム1において、プロセッサ100は、所定判断(第2判断(ステップS520))において、前記局注液の注入量の制御値をさらに用いて局注の成否を判断し、所定判断の判断結果に基づいて注入針516の位置を変更するように駆動装置20を制御する(ステップS532でNO、ステップS540)。このようにすることで、局注液の注入量の制御値と内視鏡画像に基づいて、局注工程を自動制御できる。
【0094】
また、例えば第2判断(ステップS520)を、
図28のフローチャートに示す処理例のようにしてもよい。
図28において、プロセッサ100は、第1学習済みモデル141を用いて推論した内視鏡画像を取得する(ステップS524)。
図28のステップS524は、
図23のステップS514と文言は同じであるが、推論に用いられるデータセットが異なる。
図29に示すように、ステップS504で取得した局注液の注入量の制御値を入力データとして、推論部102は第1学習済みモデル141を用いて、局注液の注入量の制御値に基づいて隆起した病変部を含む内視鏡画像を推論する。なお、入力データに例えば、局注位置の情報をメタデータとして含んでもよい。そして例えばE11に示すように、推論部102が推論した内視鏡画像のデータが出力データとなる。つまり、
図28の第2判断(ステップS520)における第1学習済みモデル141の機械学習に用いられているデータセットは、内視鏡画像の他に局注液の注入量の制御値をさらに含む点で、
図23の第1判断(ステップS510)と異なる。
【0095】
なお、
図29において、入力部110に入力データが入力され、プロセッサ100が第1学習済みモデル141をメモリ130から読み出し、推論部102が入力データに基づいて推論し、推論した出力データが出力部120を介して出力される様子を、入力データと第1学習済みモデル141と出力データのみを用いて簡略的に図示している。後述する
図32、
図35、
図40、
図43についても同様である。
【0096】
その後プロセッサ100は、推論した内視鏡画像と、イメージャ42から取得した内視鏡画像を比較する(ステップS526)。つまり、
図29のE11に示す内視鏡画像と、E12に示すように、実際に注入針516を刺して局注を行っている内視鏡画像とを比較する。なお、E12に示す内視鏡画像のうち、注入針516等が映る部分を比較の対象から除外する処理を追加してもよい。そしてプロセッサ100は、例えばE11に示す内視鏡画像とE12に示す内視鏡画像の類似度が所定の閾値未満である場合は、処置対象の形状変化が不足しているため、第2判断(ステップS520)でNGと判断する。この場合、プロセッサ100は、ステップS532でNOと判断し、前述のステップS540を行う。その後、再度のステップS522において、E11に示す内視鏡画像とE12に示す内視鏡画像の類似度が所定の閾値以上となった場合、プロセッサ100は、局注が成功したことから第2判断(ステップS520)でOKと判断し、その後のステップS532でYESと判断し、局注処理(ステップS500)を終了する。
【0097】
この場合における第1訓練データ851は、
図30に示すように、例えば局注液の注入液の目標量のデータに、当該目標量の局注液が注入された病変部が映る内視鏡画像データを正解ラベルとして関連づけられたデータセットである。機械学習部802は、このような第1訓練データ851を第1訓練モデル841に入力することで、第1学習済みモデル141を更新する。
【0098】
なお、例えば第1訓練データ851は、上記したデータに対して、局注液が注入される前の病変部が映る内視鏡画像データをさらに追加してもよい。つまり、第1訓練データ851は、局注液の注入液の目標量のデータと局注液が注入される前の病変部が映る内視鏡画像データとの組み合わせからなるデータに、当該目標量の局注液が注入された病変部が映る内視鏡画像データが正解ラベルとして関連づけたデータセットであってもよい。そして推論部102は、このような第1訓練データ851に基づいて学習した第1学習済みモデル141を用いて、ステップS504で取得した局注液の注入量の制御値と局注液が注入される前の病変部が映る内視鏡画像データとに基づいて、隆起した病変部を含む内視鏡画像を推論する。
【0099】
また、例えば図示等は省略するが、第1訓練データ851は、局注液の注入液の目標量のデータに、局注後に隆起した領域の面積の値を正解ラベルとして関連付けたデータセットであってもよい。或いは、局注後に隆起した部分の体積の値を正解ラベルとしてもよい。そして推論部102は、このような第1訓練データ851に基づいて学習した第1学習済みモデル141を用いて、ステップS504で取得した局注液の注入量の制御値に基づいて、隆起した領域の面積等を推論する。そしてプロセッサ100は、内視鏡画像から隆起した領域を抽出する処理と、抽出した領域の面積等と推論した領域の面積等との一致度を求める処理と、求めた一致度が所定の基準値以上であるか否かを判断する処理とを行う。求めた一致度が所定の基準値以上である場合、プロセッサ100は第2判断(ステップS520)でOKと判断し、その後のステップS532でYESと判断し、局注処理(ステップS500)を終了する。
【0100】
このように、本実施形態の手術システム1は、局注液の注入量と、注入量に対応した局注液が注入された処置対象が写る内視鏡画像とを含む学習データ(第1訓練データ851)に基づき学習された第1学習済みモデル141を含む。プロセッサ100は、第1学習済みモデル141を用いて、内視鏡画像から制御値に対する処置対象の形状変化の過不足を判断し、処置対象の形状変化が不足している場合(ステップS532でNO)、注入針516を所定量引き抜くように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、局注液の注入量の制御値と内視鏡画像による機械学習を用いて、局注工程を自動制御できる。
【0101】
また、例えばシリンジ512の周辺に設けたセンサによる測定を、
図19で前述した第1判断(ステップS510)または
図27で前述した第2判断(ステップS520)と併せて行うことで、局注の成否を判断してもよい。
図20で前述したように、注入針516の先端が
図20のL3に示す筋層内に位置している場合は局注液が入り込まない。そのため、プランジャ駆動部212がシリンジポンプ214に送信した制御値に基づいてシリンジポンプ214がプランジャ514を押しても、シリンジポンプ214がプランジャ514を押す力とシリンジポンプ214がプランジャ514から受ける抵抗力とが釣り合い、外観上はプランジャ514が静止しているように見える。
【0102】
そこで、詳細な図示は省略するが、例えばシリンジポンプ214において
図7のB11に示す箇所に、プランジャ514から受ける抵抗力を測定する力覚センサを設ける。そしてプロセッサ100は、前述したように内視鏡画像に基づいて局注液が注入されたことにより処置対象の形状変化の有無を判断するとともに、当該力覚センサの検出値を測定する。注入針516の先端が筋層内に位置している場合はプランジャ514から受ける抵抗力は、シリンジポンプ214がプランジャ514を押す力の上限値に等しくなると考えられる。そこで例えば当該上限値に所定の割合を乗じた値を第1所定値として、当該力覚センサによって測定された当該抵抗力が当該第1所定値以上になった場合は、注入針516の先端が筋層内に位置していると判断できる。これにより、例えば第1判断(ステップS510)または第2判断(ステップS520)の判断結果がNGだった場合、当該判断結果をさらに裏付けることができる。
【0103】
一方、当該力覚センサによって測定された当該抵抗力が当該第1所定値未満である場合は、プランジャ514が前進しているので、注入針516の先端が
図21のL2に示す粘膜下層内に位置していると判断できる。これにより、プロセッサ100は、第2判断(ステップS520)の判断結果としてYESと判断し、局注処理(ステップS500)のフローが終了する。つまり、本実施形態の手術システム1は、処置対象に局注液を注入する際の抵抗力を検出可能な力覚センサを含む。プロセッサ100は処置対象の形状変化が不足し、かつ力覚センサの検出値が第1所定値以上である場合(ステップS531でNO、ステップS532でNO)、注入針516を所定量引き抜くように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、シリンジ512からの抵抗力の測定結果に基づいて、局注の成否をより正確に判断できる。
【0104】
あるいは、図示は省略するが、プランジャ514の変位量を検出可能な位置センサを用いてもよい。プランジャ514は、
図7のD18に示す範囲で変位可能である。ここでの位置センサは、測距センサであってもよいし、エンコーダであってもよい。前述のように注入針516の先端が
図20のL3に示す筋層内に位置している場合、プランジャ514は殆ど移動していないと考えられる。そこで、例えばプランジャ514が実質的に前進していないと扱える変位量に対応する位置センサの検出値を第2所定値とする。そして、測定される当該位置センサの検出値が第2所定値未満である場合は、プランジャ514が実質的に前進していないことから、注入針516の先端が筋層内に位置していると判断できる。これにより、第1判断(ステップS510)または第2判断(ステップS520)の判断結果がNGだった場合、当該判断結果をさらに裏付けることができる。
【0105】
つまり、本実施形態の手術システム1は、プランジャ514の変位量を検出可能な位置センサを含む。プロセッサ100は、処置対象の形状変化が不足し、かつ位置センサの検出値が第2所定値未満である場合(ステップS531でNO、ステップS532でNO)、注入針516を所定量引き抜くように駆動装置20を制御する(ステップS540)。このようにすることで、プランジャ514の移動量の測定結果に基づいて、局注の成否をより正確に判断できる。
【0106】
また、例えば前述のステップS100に替えて、注入針516を刺す位置を機械学習により決定する第1決定処理(ステップS110)を行ってもよい。
図31のフローチャートを用いて、第1決定処理(ステップS110)の処理例を説明する。プロセッサ100は、第2学習済みモデル142を用いて、内視鏡画像に基づいて注入針516を刺す位置を決定する(ステップS118)。
【0107】
例えば
図32のE21に示すように、処置対象となる病変部が写る内視鏡画像を入力データとして入力部110に入力する。そして推論部102は、第2学習済みモデル142を用いて推論を行い、E22に示すように、局注位置の情報が追加された内視鏡画像が出力部120から出力される。より具体的には、E22に示す内視鏡画像において、F21に示す位置情報と、F22に示す位置情報と、F23に示す位置情報と、F24に示す位置情報と、F25に示す位置情報と、F26に示す位置情報とが、病変部の周囲に追加されている。
【0108】
また、
図32のE23に示すように、注入針516を刺す順番を示す情報である順番情報が、出力データとして出力部120から出力される。例えば、F21に示す位置を1番目に注入針516を刺す位置とし、F22に示す位置を2番目に注入針516を刺す位置とし、F23に示す位置を3番目に注入針516を刺す位置として表示される。また、E23に示す順番を示す情報は、F24に示す位置を4番目に注入針516を刺す位置とし、F25に示す位置を5番目に注入針516を刺す位置とし、F26に示す位置を6番目に注入針516を刺す位置として表示される。
【0109】
第2学習済みモデル142は、
図33に示すように、第2訓練モデル842に対して第2訓練データ852をデータセットとした機械学習が行われることにより生成される。第2訓練データ852は、過去の症例に基づいて、病変部が写っている内視鏡画像に、正解ラベルとして局注位置の情報を関連付けたデータセットである。第2訓練データ852は様々な形状からなる病変部と、当該病変部に対して局注位置との組み合わせからなるデータが多数含まれる。また、第2訓練データ852は、順番情報をさらに正解ラベルとして追加してもよい。例えば
図33のG20に示すデータは、病変部に対して、G21、G22、G23、G24に示す位置の順に注入針516が刺された症例に基づいたデータである。
【0110】
以上のことから、本実施形態の手術システム1は、処置対象が写る内視鏡画像と、注入針516を刺す位置情報とを含む学習データに基づき学習された第2学習済みモデル142を含む。プロセッサ100は、第2学習済みモデル142を用いて、内視鏡画像に基づいて、注入針516を刺す位置を決定する第1決定処理(ステップS110)を行う。このようにすることで、ESDの処置等において、注入針516を刺すべき位置を自動で決定できる。
【0111】
また、例えば前述のステップS200に替えて、局注液の目標量を機械学習により決定する第2決定処理(ステップS220)を行ってもよい。
図34のフローチャートを用いて、第2決定処理(ステップS220)の処理例を説明する。プロセッサ100は、第3学習済みモデル143を用いて、内視鏡画像と位置情報とに基づいて、各々の位置における局注液の目標量を決定する(ステップS226)。例えば
図35のE31とE32に示すように、前述のステップS118によって出力された内視鏡画像と位置情報と順番情報からなるデータが、入力部110に入力される。つまり、ステップS110に係る推論によって出力部120から出力されたデータは、そのまま入力部110に入力される。
【0112】
そして推論部102は、第3学習済みモデル143を読み出して推論を行い、
図35のE33に示す内視鏡画像と位置情報の他に、E34に示すように、各位置における局注液の目標量が出力データとして出力部120から出力される。例えばF31に示す位置に対してF131に示す目標量が表示され、F32に示す位置に対してF132に示す目標量が表示され、F33に示す位置に対してF133に示す目標量が表示され、F34に示す位置に対してF134に示す目標量が表示され、F35に示す位置に対してF135に示す目標量が表示され、F36に示す位置に対してF136に示す目標量が表示される。
【0113】
第3学習済みモデル143は、
図36に示すように、第3訓練モデル843に対して第3訓練データ853をデータセットとした機械学習が行われることにより生成される。第3訓練データ853は、G31に示す内視鏡画像に対してG32に示す内視鏡画像に関する情報が正解ラベルとして関連付けられている。G31に示す内視鏡画像は、病変部の画像と、G131に示す局注位置の情報を含む。G32に示す内視鏡画像は、G131に示す局注位置に、局注を行った後の画像である。より具体的には、G132に示す局注液の注入量の情報と、G133に示す、当該注入量によって隆起した病変部の画像情報が関連付けられた内視鏡画像である。
【0114】
以上のことから、本実施形態の手術システム1は、処置対象が写る内視鏡画像と、注入針516を刺す位置情報と、位置情報に対応した局注液の目標量とを含む学習データ(第3訓練データ853)に基づき学習された第3学習済みモデル143を含む。プロセッサ100は、第3学習済みモデル143を用いて、内視鏡画像と第1決定処理(ステップS110)において決定された位置情報とに基づいて、注入針516を刺す各々の位置における局注液の目標量を決定する第2決定処理(ステップS220)を行う。このようにすることで、注入針516を刺す各々の位置における局注液の目標量を自動で決定できる。
【0115】
なお、第3学習済みモデル143は複数有ってもよい。具体的には例えば被検体を性別、年齢等を考慮して複数のカテゴリに分類し、当該カテゴリ毎に対応した第3学習済みモデル143をメモリ130に記憶してもよい。この場合、第2決定処理(ステップS220)は
図37のフローチャートに示す処理例のようにしてもよい。プロセッサ100は、被検体の情報を取得し(ステップS222)、取得した被検体の情報に基づいて対応する第3学習済みモデル143を選択する(ステップS224)。より具体的には、ユーザがカルテ等から被検体が40代の女性である旨の情報を制御装置10に入力し、メモリ130に記憶させる。そしてプロセッサ100は、ステップS222において、被検体が40代の女性である旨の情報を取得する。そしてプロセッサ100は、ステップS224において、40代の女性に対応する第3学習済みモデル143をメモリ130から読み出す。その後プロセッサ100は、ステップS224で読み出した第3学習済みモデル143を用いて、前述のステップS226の処理を行う。
【0116】
また、図示は省略するが、例えば
図35において、E33に示す情報は、各位置における局注液の注入量の代わりに、各位置において局注を行ったことにより変化した三次元形状情報であってもよい。つまり、注入針516を刺す各位置に局注を行うことで、注入針516を刺した周囲をどれだけ隆起させるかを目標の指標とする。この場合、第3訓練データ853は
図36で前述したデータセットにおいて、
図36のG132に示した局注液の注入量に替えて、局注を行ったことにより変化した三次元形状情報を関連付ければよい。
【0117】
また、
図32のE21に示す内視鏡画像は、コンソール60のタッチパネル620を用いて取得できるようにしてもよい。具体的には例えば
図38に示すように、ディスプレイ610にC21に示す病変部が表示され、当該病変部はタッチパネル620にも表示されているとする。このときユーザは、タッチパネル620を操作して、当該病変部の周辺を、B91に示す所定の図形からなるアイコンで囲う。なお、所定の図形は
図38では楕円であるが、多角形であってもよいし、ドローイング機能によってユーザが任意の形状を作成できるようにしてもよい。また、B91に示す所定の図形からなるアイコンは、B92に示すように、ディスプレイ610に表示できるようにしてもよい。そして前述した第1決定処理(ステップS110)、第2決定処理(ステップS220)を通じて、
図35のE32に示す位置情報、E33に示す局注液の注入量の情報がディスプレイ610に表示できるようにしてもよい。以上のことから、本実施形態の手術システム1において、プロセッサ100は、処置対象において注入針516を刺す位置と注入針516を刺す位置に対応する局注液の目標量とを、内視鏡画像に基づいて決定する。このようにすることで、内視鏡画像を取得することによって、注入針516を刺す位置と、当該位置における局注液の注入量を自動で決定するシステムを構築できる。
【0118】
また、
図14等のステップS300に係る方向情報を、機械学習を用いて設定してもよい。具体的には例えばプロセッサ100は、ステップS300に替えて、
図39のフローチャートに示す第3決定処理(ステップS330)を行ってもよい。
【0119】
プロセッサ100は、前述した第3学習済みモデル143からの出力データを取得する(ステップS332)。つまり、ステップS220に係る推論によって出力部120から出力されたデータは、そのまま入力部110に入力される。その後プロセッサ100は、第4学習済みモデル144を用いて注入針516の方向情報を決定する(ステップS334)。
【0120】
例えば、
図40のE41、E42に示すデータが入力部110に入力される。
図40のE41、E42に示すデータは、
図32のE22、E23に示すデータに対応する。そして推論部102は、第4学習済みモデル144を用いて推論を行う。その結果、E43に示すように、E41のデータに含まれる局注位置に対して、前述の局注処理(ステップS500)を行うときの注入針516の向きである注入針方向情報を関連付けたデータが、出力部120を介して出力される。
【0121】
第4学習済みモデル144は、
図41に示すように、第4訓練モデル844に対して第4訓練データ854をデータセットとした機械学習が行われることにより生成される。第4訓練データ854は、局注位置の情報を含む内視鏡画像に対し、当該位置に対応する注入針方向情報を正解ラベルとして関連付けられたデータセットである。
【0122】
図39の説明に戻る。プロセッサ100は、上記したステップS334を行った後、注入針516の方向情報に基づいて注入針516の軌跡情報を決定する(ステップS339)。つまり、第1決定処理(ステップS110)、第2決定処理(ステップS220)、第3決定処理(ステップS330)により取得した画像上の位置情報を実際の処置における内視鏡40等の座標情報に対応させるために、駆動装置20を制御するパラメータの演算処理を行う。このようにすることで、局注処理(ステップS500)を行う位置と、局注液の量と、内視鏡40及び第1医療用マニピュレータ510の駆動情報とが求まり、制御装置10はこれらの情報に対応するように駆動装置20を制御することで、局注の自動制御が実現する。
【0123】
また、
図14等で前述したステップS100とステップS200に替えて、例えば
図42に示す処理例を行うことで、局注を行う位置と当該位置における局注液の目標量を設定してもよい。プロセッサ100は、領域情報を取得する(ステップS710)。例えば前述のようにユーザはタッチパネル620を用いて、C31に示す処置対象である病変部の周囲を、H10に示す所定の図形で指定し、プロセッサ100は、所定の図形に係る領域を領域情報として取得する。
【0124】
プロセッサ100は、ステップS710を行った後、領域情報内に含まれる病変部のエリアを計測する(ステップS720)。また、プロセッサ100は、ステップS710を行った後、領域情報に基づいて、H20に示す所定のデータセットを取得する(ステップS730)。ステップS730の詳細は後述するが、所定のデータセットは、例えば、注入液の目標量と当該目標量に対応して隆起したことによる形状変化を示す所定の画像が対応付けられたデータセットである。つまり、局注液の目標量が少ない場合は、所定の画像は小さく対応づけられ、局注液の目標量が多い場合は、所定の画像は大きく対応づけられている。
【0125】
プロセッサ100は、ステップS720とステップS730に基づいて、ステップS740を行い、フローを終了する。ステップS740は、ステップS720で計測したエリアと、ステップS730で取得した所定のデータセットとに基づいて、局注位置と局注液の目標量を設定する。
【0126】
そしてH30に示すように、C31で示した病変部全体が隆起するような所定画像の大きさと配置の仕方を決定する。これにより、当該病変部に対してどの位置にどの程度の局注液を注入すれば、病変部全体が隆起するかを把握できる。
【0127】
図43を用いて、ステップS730を概念的に説明する。プロセッサ100は、ステップS710で取得した領域情報のデータが入力部110に入力されると、メモリ130から第5学習済みモデル145を読み出す。そして推論部102は、第5学習済みモデル145に基づいて、領域情報に係る組織の特徴量のデータを、出力部120を介して出力する。組織の特徴量とは、例えば組織の粘弾性、組織厚さ等である。
【0128】
また、出力された組織の特徴量のデータは再度入力部110に入力され、プロセッサ100は、メモリ130から第6学習済みモデル146を読み出す。そして推論部102は、第6学習済みモデル146に基づいて、組織の特徴量に対応する所定のデータセットを、出力部120を介して出力する。
【0129】
第5学習済みモデル145は、
図44に示すように、第5訓練モデル845に対して第5訓練データ855をデータセットとした機械学習が行われることにより生成される。第5訓練データ855は、病変部を含む組織が写っている内視鏡画像に対し、当該組織の特徴量の情報を正解ラベルとして関連付けたデータセットである。
【0130】
第6学習済みモデル146は、
図45に示すように、第6訓練モデル846に対して第6訓練データ856をデータセットとした機械学習が行われることにより生成される。第6訓練データ856は、組織の特徴量情報に対して、以下に述べる所定のデータを正解ラベルとして関連づけたデータセットである。所定のデータとは、例えばE60に示す、局注を行ったことにより病変部を含む組織が隆起したことを示す内視鏡画像から抽出した、E61に示す隆起した部分の高さと大きさの情報、局注を行った位置の情報、局注液の注入量の情報等である。
【0131】
また、本実施形態の手法の変形例として、ESDを
図46に示す処置フローによって行ってもよい。前述の
図14は、処置対象である病変部の周囲全体に対して局注処理(ステップS500)を行った後に切開(ステップS610)を行う処置フローであるのに対し、
図46は、局所的に局注処理(ステップS500)と切開(ステップS610)を繰り返し行う処置フローである。より具体的には、第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53とをセット(ステップS10)した後、プロセッサ100は、前述のステップS100により局注位置を1箇所決定する。その後、プロセッサ100は、決定した1箇所の局注位置についてステップS200、ステップS300、局注処理(ステップS500)、切開(ステップS610)を行う。
図46の処置フローの場合、局注を行う位置は1箇所であることから、局注処理(ステップS500)を行った後に直ちに切開(ステップS610)を行うことができる。その後、ユーザは全ての位置について局注処理(ステップS500)と切開(ステップS610)を行ったか否かを判断する(ステップS614)。例えばユーザは、切開(ステップS610)を行った病変部が粘膜下層に対して浮いているか否かを内視鏡画像から判断する。そしてユーザは全ての位置について局注処理(ステップS500)と切開(ステップS610)を行ったと判断した場合(ステップS614でYES)、
図14と同様に剥離(ステップS620)を行う。一方、ユーザは病変部が粘膜下層に対して浮いていないと判断した場合は、ステップS614でNOと判断し、再度ステップS100を行う。
【0132】
なお、
図31等で前述した第1決定処理(ステップS110)、
図34等で前述した第2決定処理(ステップS220)、
図39等で前述した第3決定処理(ステップS330)は、
図46の処置フローに適用してもよい。つまり、図示は省略するが、
図46は、ステップS10の後に、第1決定処理(ステップS110)、第2決定処理(ステップS220)、第3決定処理(ステップS330)、局注処理(ステップS500)、切開(ステップS610)を繰り返す処置フローにしてもよい。
【0133】
変形例における処置例を具体的に示す。ユーザはステップS10により、
図2のように第1処置具51と第2処置具52と第3処置具53とをセット(ステップS10)する。そしてユーザはコンソール60の第2フットペダル632を踏みながら第1ハンドル641を操作することで、
図47のJ10に示す画面例のように、C41に示す処置対象である病変部がディスプレイ610に映るように、内視鏡40を操作する。そしてユーザはタッチパネル620を操作することで、J11に示すように、病変部の一部を選択する。プロセッサ100は、選択した範囲における内視鏡画像に基づいて第1決定処理(ステップS110)を行い、局注処理(ステップS500)を行う位置を決定する。そしてプロセッサ100は、第2決定処理(ステップS220)を行い、当該位置における局注液の目標量を設定する。そしてプロセッサ100は、第3決定処理(ステップS330)を行い、当該位置に対して注入針516を刺す方向情報を決定する。
【0134】
なおプロセッサ100は、第1決定処理(ステップS110)、第2決定処理(ステップS220)及び第3決定処理(ステップS330)のうち少なくとも1つの結果をユーザに提示し、ユーザにOKまたはNGの判断を求める処理をさらに行ってもよい。例えば
図47のJ20の画面例において、J21に示す局注処理(ステップS500)を行う位置に係る位置情報と、J22に示す局注液の目標量に係る情報と、J23に示す注入針516を刺す方向情報に係る情報とが、ディスプレイ610に表示される。
【0135】
図47のJ20に示す画面例は、例えば第3決定処理(ステップS330)を
図48のフローチャートに示す処理例にすること等より実現できる。プロセッサ100は、
図39と同様にステップS322、ステップS334を行った後に、決定した各種情報を提示する処理(ステップS336)を行う。そして、ユーザからOKの指示が有るか否かを判断する処理(ステップS338)を行う。例えばプロセッサ100は、コンソール60の不図示のスイッチ等から送信された制御信号に基づいてOKまたはNGを判断する。プロセッサ100は、ユーザからOKの指示が有った場合(ステップS338でYES)、前述のステップS339を行う。ステップS339が行われた後、ユーザは、コンソール60の第1フットペダル631を踏みながら第1ハンドル641を操作することで、J21に示す位置に対して、第3処置具53を用いてマーキングを行う。なお、フローの図示は省略しているが、ユーザからNGの指示が有った場合(ステップS338でNO)、第3決定処理(ステップS330)のフローを終了し、その後再度ステップS100を実行する。
【0136】
その後、ユーザはマーキングされた位置に注入針516を刺す作業を行うとともに、局注処理(ステップS500)が行われる。例えばユーザはコンソール60の第2フットペダル632を踏みながら第1ハンドル641を操作することで、内視鏡40の先端部がJ21に示す位置に正対するように内視鏡40を操作する。そしてユーザはコンソール60の第3フットペダル633を踏みながら第1ハンドル641を操作することで、第1医療用マニピュレータ510を前進させ、マーキングした位置に対して注入針516を刺す。或いは、ステップS339によって、注入針516を刺すために必要な内視鏡40の駆動情報と第1医療用マニピュレータ510の駆動情報をプログラミングし、注入針516を刺す工程を自動制御してもよい。そして局注処理(ステップS500)により、局注液が粘膜下層に入り込む工程が自動制御される。これにより、ユーザは
図49のJ30に示す画面例を見て、局注の成否を観察していることになるので、ユーザの処置の負担が軽減される。
【0137】
その後ユーザは、局注が成功したと判断した場合、コンソール60の第1フットペダル631を踏みながら第2ハンドル642を操作することで第2処置具52を操作するとともに、第1ハンドル641を操作することで第3処置具53を操作する。これにより、
図49のJ40の画面例に示すように、隆起した病変部が把持部522によって把持された状態で、第3処置具53により所望の箇所が切開される。
【0138】
このように、
図47、
図49の画面例に示す工程が繰り返し行われる。そして病変部全体が粘膜下層から浮いた状態になったら、ユーザはコンソール60の第1フットペダル631を踏みながら第2ハンドル642を操作し、病変部を把持部522で把持した状態で第2医療用マニピュレータ520を体外まで後退させることで、切除した病変部が回収される。
【0139】
なお、
図47のJ10の画面例では、ユーザがタッチパネル620を操作することで局注を行う位置を決定しているが、これに限らず例えばプロセッサ100が自動で局注を行う位置を決定できるようにしてもよい。この場合、第1決定処理(ステップS110)を例えば
図50のフローチャートに示す処理例にすればよい。プロセッサ100は、ステップS112を行った後に、局注を要する領域が存在するか否かを判断する処理(ステップS114)を行う。プロセッサ100は、局注を要する領域が存在すると判断した場合(ステップS114でYES)、所定の領域を指定する処理(ステップS116)を行う。ステップS116は、例えば以下の手法で実現できる。例えば内視鏡40の先端部に位置センサを含ませ、プロセッサ100は、内視鏡40の先端の位置情報を取得する。そしてプロセッサ100は、当該位置情報から想定される内腔表面の内視鏡画像と実際に表示されている内腔表面の内視鏡画像を比較し、異なる場合は、病変部が存在する可能性があるとして、対応する領域を所定の領域として指定する。その後プロセッサ100は、前述のステップS118を行う。
【0140】
また、ステップS114を行うタイミングを自動で決定してもよい。例えば局注処理(ステップS500)を行ってから一定時間ポーリングを行い、一定時間経過後に再度の第1決定処理(ステップS110)におけるステップS114を実行してもよい。或いは、プロセッサ100は、3Dカメラで撮像している内視鏡画像から、局注により隆起していた箇所が平坦に近い形状に変化したと判断したタイミングを局注が終了したタイミングと判断し、ステップS114を行ってもよい。或いは、プロセッサ100は、内視鏡画像から、粘膜下層の色が局注液に含まれる色素の色を反映しているか否かを判断し、当該色素の色の濃さが一定値未満となった場合、局注が終了していると判断してもよい。或いは、第3処置具53に位置センサを含ませ、プロセッサ100は第3処置具53が処置対象の位置から一定距離だけ離れたタイミングを局注が終了したタイミングと判断してもよい。このようにすることで、ステップS114が自動で行われることから、
図46の処置フローのうちループする処理は自動で行われる。つまり第1処置具51を用いた局注は完全に自動化されるので、ユーザは第2処置具52と第3処置具53を用いて切開(ステップS610)と剥離(ステップS620)に集中することができる。
【0141】
以上、本開示を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、開示の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の開示を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0142】
1…手術システム、10…制御装置、14…入力部、20…駆動装置、21…第1処置具駆動装置、22…第2処置具駆動装置、23…第3処置具駆動装置、24…内視鏡駆動装置、40…内視鏡、42…イメージャ、44…処置具挿入口、46…オーバーチューブ、48…キャップ、50…処置具、51…第1処置具、52…第2処置具、53…第3処置具、60…コンソール、70…ドライビングユニット、80…学習装置、100…プロセッサ、102…推論部、110…入力部、120…出力部、130…メモリ、141…第1学習済みモデル、142…第2学習済みモデル、143…第3学習済みモデル、144…第4学習済みモデル、145…第5学習済みモデル、146…第6学習済みモデル、212…プランジャ駆動部、214…シリンジポンプ、215…進退動作駆動部、217…スライダ機構装置、218…固定部、219…スライダ部、220…モータユニット、221…第1湾曲動作駆動部、222…第2湾曲動作駆動部、223…開閉動作駆動部、224…ロール動作駆動部、225…進退動作駆動部、500…医療用マニピュレータ、510…第1医療用マニピュレータ、512…シリンジ、514…プランジャ、516…注入針、520…第2医療用マニピュレータ、522…把持部、530…第3医療用マニピュレータ、610…ディスプレイ、620…タッチパネル、630…フットペダル、631…第1フットペダル、632…第2フットペダル、633…第3フットペダル、640…ハンドル、641…第1ハンドル、642…第2ハンドル、651…第1パーツ、652…第2パーツ、653…第3パーツ、800…プロセッサ、802…機械学習部、830…メモリ、841…第1訓練モデル、842…第2訓練モデル、843…第3訓練モデル、844…第4訓練モデル、845…第5訓練モデル、846…第6訓練モデル、851…第1訓練データ、852…第2訓練データ、853…第3訓練データ、854…第4訓練データ、855…第5訓練データ、856…第6訓練データ、860…通信部、T…手術台