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特許7671036薄切片搬送装置及び薄切標本作製システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】薄切片搬送装置及び薄切標本作製システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20250423BHJP
【FI】
G01N1/28 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2025004738
(22)【出願日】2025-01-14
(62)【分割の表示】P 2024187772の分割
【原出願日】2024-10-24
【審査請求日】2025-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517380514
【氏名又は名称】パスイメージング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】吉野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄大
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109326(JP,A)
【文献】特開2008-026176(JP,A)
【文献】特開2007-212386(JP,A)
【文献】特開2008-151755(JP,A)
【文献】特開2014-095589(JP,A)
【文献】特開2007-040826(JP,A)
【文献】米国特許第09041922(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0019725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本ブロックから薄切された薄切片を基板上に転写する薄切標本作製システムにおいて、薄切片を搬送する薄切片搬送装置であって、
標本ブロックを薄切する薄切刃の下流側に配置された水路であって、上流側の領域である冷水路と、下流側の領域である温水路とに仕切られ、前記薄切片が液体に浮かんだ状態で前記冷水路から前記温水路に移動可能となるように構成された水路と、
前記冷水路を流通する液体の温度を第1の温度範囲に制御するように構成された第1の温度コントロールシステムと、
前記温水路を流通する液体の温度を前記第1の温度範囲よりも高い第2の温度範囲に制御するように構成された第2の温度コントロールシステムと、
を備える薄切片搬送装置。
【請求項2】
前記水路の上流側に配置され、前記薄切刃の刃先に向けて液体を流して前記水路を注入するように構成された1つ以上のノズルをさらに備え、
前記第1の温度コントロールシステムは、前記1つ以上のノズルから前記冷水路に注入される液体の温度を第1の温度範囲に制御するように構成されている、請求項1に記載の薄切片搬送装置。
【請求項3】
前記第1の温度範囲は、20℃以下であり、
前記第2の温度範囲は、40℃以上55℃以下である、
請求項1に記載の薄切片搬送装置。
【請求項4】
前記水路に、前記冷水路における液面が所定の高さ以上となった場合に前記液体を排出する排液口が設けられ、
前記水路を収容可能な水槽であって、前記冷水路から前記排液口を通じて流出した液体を貯留するように構成された第1の貯留部と、前記温水路から流出した液体を貯留するように構成された第2の貯留部と、を有する水槽をさらに備え、
前記第1の温度コントロールシステムは、
前記第1の貯留部から排出された液体を冷却するように構成された冷却ユニットと、
前記冷却ユニットにより冷却された液体を前記冷水路に循環させるように構成された第1のポンプと、
を有し、
前記第2の温度コントロールシステムは、
前記第2の貯留部から排出された液体を加温するように構成された加温ユニットと、
前記加温ユニットにより加温された液体を前記温水路に循環させるように構成された第2のポンプと、
を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の薄切片搬送装置。
【請求項5】
前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間に断熱領域が設けられている、請求項4に記載の薄切片搬送装置。
【請求項6】
前記水路は、底部と、該底部に接続された互いに対向する2つの壁部とを有し、
前記2つの壁部に沿って設けられた2組の回転ベルトであって、前記2つの壁部の間においてそれぞれのベルト面が所定の間隔を空けて互いに対向するように配置され、互いに対向しているベルト部分が前記水路の下流側に向かって移動するように構成された2組の回転ベルトをさらに備え、
前記薄切片を、前記互いに対向しているベルト部分の間を流れる液体に浮かべて搬送するように構成されている、請求項4に記載の薄切片搬送装置。
【請求項7】
前記水路は、前記水槽に対し、当該水路の先端側を引き上げ可能に取り付けられている、請求項6に記載の薄切片搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の薄切片搬送装置と、
前記基板を把持し、前記薄切刃により薄切され前記冷水路から前記温水路に移動してきた薄切片を前記基板により掬い上げるように構成されたハンドリングユニットと、
を備える薄切標本作製システム。
【請求項9】
請求項1に記載の薄切片搬送装置と、
前記薄切片搬送装置の上流側の端部に取り付けられ、前記薄切刃を、刃先が延在する方向が前記水路の長手方向と所定の角度をなすように保持するカッターユニットと、
を備える薄切標本作製システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を包埋した標本ブロックから薄切された薄切片を搬送する薄切片搬送装置及び薄切標本作製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から採取された試料を検査する方法として、病理検査が知られている。病理検査においては、まず、生体試料をパラフィン等の包埋材により包埋した標本ブロックが作製される。この標本ブロックを数μm(例えば、2~5μm)程度の厚さでスライス(薄切)することにより得られる薄切片をスライドガラス上に移し(転写とも呼ばれる)、乾燥及び染色を施すことにより、薄切標本が作製される。この薄切標本を顕微鏡観察することにより、診断が行われる。なお、標本ブロックは包埋ブロックとも呼ばれる。
【0003】
標本ブロックをスライスして薄切片を作製する装置として、ミクロトームが知られている(例えば、特許文献1参照)。通常、顕微鏡標本を作製する技師は、ミクロトームに設けられたハンドルを操作することにより、標本ブロックから薄切片を1枚ずつ切り出し、薄切片を水槽内の水又は湯に浮かべる。それにより、スライスした際に生じた薄切片のカールや皺を伸ばすことができる。その後、技師は、水面に浮かんだ薄切片を1枚ずつ、ピンセットやブラシ等を用いてスライドガラスに移動させる。
【0004】
また、近年では、切り出された薄切片をスライドガラスに転写する作業を自動で行う装置の開発も行われている(例えば、特許文献2~6参照)。
【0005】
特許文献2には、作製された薄切片を基板上に固定して、薄切片標本を自動的に作製する自動薄切片標本作製装置が開示されている。この装置においては、切り出された薄切片をアーム部の先端に吸着して搬送し、水槽の上方にアーム部が達したときに、該アーム部を下降させて先端を水の中に入れることにより、薄切片を水の中に浸漬させて浮かんだ状態とし、この薄切片を、スライドガラスハンドリングロボットに把持させたスライドガラスにより掬い上げることとされている。
【0006】
特許文献3には、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された矩形状の薄切片を、該薄切片が搬送されてきた搬送ポイントから、基板に掬い取られて処理される処理ポイントまで搬送する薄切片搬送装置が開示されている。この装置において、水路は、薄切片が処理ポイントに達したときに、該薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させることとされている。
【0007】
特許文献4には、貯留した液体に搬送体の端部が浸かった液槽と、薄切片の一辺に対して基板の横幅方向が平行になるように基板を把持する把持部と、把持部を基板に沿って引き上げる引き上げ機構と、該機構の作動タイミング及び引き上げ速度を制御する制御部と、を備え、搬送体から離脱しながら液面上に浮かぶ薄切片を基板上に掬い取る薄切片標本作製装置が開示されている。
【0008】
特許文献5には、搬送手段で搬送された矩形状の薄切片を、搬送手段から離間して配置された矩形状の基板に受け渡して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置が開示されている。この装置においては、薄切片が着脱可能に定着される定着面を有する中継体を搬送手段に移動させ、搬送手段で搬送された薄切片を定着面で受け取って定着させた後、中継体を基板に移動させ、定着面に定着された薄切片を離脱させて基板に受け渡している。
【0009】
特許文献6には、切り出された薄切片を貯留槽まで搬送して液面に浮かべる薄切片搬送機構と、貯留槽に浮かべられた薄切片をスライドガラス上に載置するスライドガラスハンドリング機構と、薄切片搬送機構とスライドガラスハンドリング機構との間に設けられ、外面上に薄切片が載置された状態で回転することで、薄切片をスライドガラスハンドリング機構に向けて搬送する回転体とを備える薄切片作製装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2019-534461号公報
【文献】特開2007-192606号公報
【文献】特開2008-26176号公報
【文献】特開2009-180546号公報
【文献】特開2010-261794号公報
【文献】特開2014-95589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、診断目的の病理検査においては、1つの標本ブロックから一度に十数枚の標本が作製される。また、病院などの施設の規模にもよるが、1人の技師が1日に数十個~百個以上の標本ブロックを扱うことがある。そのため、上記のような標本ブロックのスライスから転写までを手作業で行うことは、技師にとって身体的・精神的に大きな負担となっている。また、薄切片の品質は、技師の熟練度に負うところが多く、技師の育成に時間がかかるという問題もある。さらに、手作業の場合には、標本の品質にばらつきが生じ易いという問題もある。例えば、1つの標本ブロックについて、後日再検査を行うことになった場合、前回作製した標本と今回作製した標本との間で薄切片の質にばらつきがあると、染色に影響を与えてしまうこともある。
【0012】
このような事情から、標本ブロックからの薄切片の切り出しからスライドガラスへの転写までを自動で行うシステムが切望されている。
【0013】
しかしながら、薄切片をコンベアなどの搬送手段や中継体を用いて搬送する場合、薄切片の切断面が搬送手段等の表面に直接接触することになるため、切断面が何等かの影響を受けてしまうことが懸念される。
【0014】
一方、薄切片を水流によって搬送する場合、スライドガラスの向きに合わせて薄切片を水流に乗せたとしても、薄切片の向きは水流の僅かな変化によって容易に変わってしまう。そのため、薄切片の向きを維持することが非常に困難である。
【0015】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、標本ブロックから切り出された薄切片を、基板によって掬い取られる位置まで、適切な向きを維持したまま水流によって搬送することができる薄切片搬送装置及び薄切標本作製システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である薄切片搬送装置は、標本ブロックから薄切された薄切片を基板上に転写する薄切標本作製システムにおいて、薄切片を搬送する薄切片搬送装置であって、標本ブロックを薄切する薄切刃の下流側に配置され、底部と、該底部に接続された互いに対向する2つの壁部とを有する水路と、前記2つの壁部に沿って設けられた2組の回転ベルトであって、前記2つの壁部の間においてそれぞれのベルト面が所定の間隔を空けて互いに対向するように配置され、互いに対向しているベルト部分が前記水路の下流側に向かって移動するように構成された2組の回転ベルトと、を備え、前記薄切片を、前記互いに対向しているベルト部分の間を流れる液体に浮かべて搬送するように構成されている。
【0017】
上記薄切片搬送装置において、前記2組の回転ベルトは、互いに同じ速度で回転するように構成されていても良い。
【0018】
上記薄切片搬送装置において、前記2組の回転ベルトの互いに対向するベルト面の間隔は、25mm以上30mm以下であっても良い。
【0019】
上記薄切片搬送装置において、前記2組の回転ベルトの各々は、スチール又は樹脂材料により形成されていても良い。
【0020】
上記薄切片搬送装置は、前記2組の回転ベルトの互いに対向するベルト面の間隔を調整可能なピンチローラをさらに備えても良い。
【0021】
上記薄切片搬送装置において、前記水路の前記底部は、前記水路の上流側に位置し、前記2つの壁部の上端部に対して第一の深さを有する第一の領域と、前記水路の下流側に位置し、前記第一の深さよりも深い第二の深さを有する第二の領域と、前記第一の領域と前記第二の領域との間に位置し、前記第一の深さから前記第二の深さに向かって深さを増す中間領域と、を含んでも良い。
【0022】
上記薄切片搬送装置において、前記第一の領域の深さは、1mm以上5mm以下であり、前記第二の領域の深さは、5mm以上30mm以下であっても良い。
【0023】
上記薄切片搬送装置は、前記底部の前記中間領域に配置され、前記水路の下流側の上方に向かって液体を注入する1つ以上のノズルをさらに備えても良い。
【0024】
上記薄切片搬送装置は、前記水路を収容可能で、前記水路から流出した液体を貯留可能な水槽をさらに備えても良い。
【0025】
上記薄切片搬送装置において、前記水路は、前記水槽に対し、当該水路の先端側を引き上げ可能に取り付けられていても良い。
【0026】
上記薄切片搬送装置は、前記水路を該水路の下流側において保持する保持ブロックであって、前記水槽に対し、前記水路の長手方向と直交する軸回りに回転可能に取り付けられた保持ブロックをさらに備えても良い。
【0027】
上記薄切片搬送装置は、前記2つの回転ベルトを駆動するためのモータ及び該モータの動力を伝達するための動力伝達手段をさらに備え、前記モータ及び前記動力伝達手段は、前記保持ブロックに取り付けられていても良い。
【0028】
上記薄切片搬送装置において、前記水路の後端側壁部の少なくとも一部の高さは、該水路の前記2つの壁部の上端の高さよりも低く、前記水槽に、前記水路から前記後端側壁部の前記少なくとも一部を通って流出した液体を貯留する領域が設けられていても良い。
【0029】
上記薄切片搬送装置は、前記水路の上流側に配置され、前記水路に液体を注入するように構成された1つ以上の第2のノズルと、前記貯留する領域に溜まった液体を前記1つ以上の第2のノズルに循環させるように構成されたポンプと、をさらに備えても良い。
【0030】
上記薄切片搬送装置は、前記貯留する領域の上部に配置され、前記水路から流出した液体から固形物を除去するためのフィルタをさらに備えても良い。
【0031】
上記薄切片搬送装置は、前記水路の上流側に配置され、前記薄切刃の刃先に向けて液体を流して前記水路を注入するように構成された1つ以上の第2のノズルをさらに備えても良い。
【0032】
上記薄切片搬送装置において、前記水路は、上流側の領域である冷水路と、下流側の領域である温水路とに仕切られ、前記薄切片が液体に浮かんだ状態で前記冷水路から前記温水路に移動可能となるように構成され、前記冷水路を流通する液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成された第1の温度コントロールシステムと、前記温水路を流通する液体の温度を前記第1の範囲よりも高い第2の範囲温度に制御するように構成された第2の温度コントロールシステムと、をさらに備えても良い。
【0033】
上記薄切片搬送装置において、前記水路は、上流側の領域である冷水路と、下流側の領域である温水路とに仕切られ、前記薄切片が液体に浮かんだ状態で前記冷水路から前記温水路に移動可能となるように構成され、前記冷水路を流通する液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成された第1の温度コントロールシステムと、前記温水路を流通する液体の温度を、前記第1の範囲よりも高い第2の範囲温度に制御するように構成された第2の温度コントロールシステムと、をさらに備え、前記第1の温度コントロールシステムは、前記1つ以上のノズルから前記冷水路に注入される液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成されていても良い。
【0034】
上記薄切片搬送装置において、前記第1の温度範囲は、20℃以下であり、前記第2の温度範囲は、40℃以上55℃以下であっても良い。
【0035】
上記薄切片搬送装置において、前記水路に、前記冷水路における液面が所定の高さ以上となった場合に前記液体を排出する排液口が設けられ、前記水路を収容可能な水槽であって、前記冷水路から前記排液口を通じて流出した液体を貯留するように構成された第1の貯留部と、前記温水路から流出した液体を貯留するように構成された第2の貯留部と、を有する水槽をさらに備え、前記第1の温度コントロールシステムは、前記第1の貯留部から排出された液体を冷却するように構成された冷却ユニットと、前記冷却ユニットにより冷却された液体を前記冷水路に循環させるように構成された第1のポンプと、を有し、前記第2の温度コントロールシステムは、前記第2の貯留部から排出された液体を加温するように構成された加温ユニットと、前記加温ユニットにより加温された液体を前記温水路に循環させるように構成された第2のポンプと、を有ししても良い。
【0036】
上記薄切片搬送装置において、前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間に断熱領域が設けられていても良い。
【0037】
本発明の別の態様である薄切標本作製システムは、上記薄切片搬送装置と、前記基板を把持し、前記薄切刃により薄切され前記2組の回転ベルトの間を流れてきた薄切片を前記基板により掬い上げるように構成されたハンドリングユニットと、を備える。
【0038】
本発明の別の態様であるさらに薄切標本作製システムは、上記薄切片搬送装置と、前記薄切片搬送装置の上流側の端部に取り付けられ、前記薄切刃を、刃先が延在する方向が前記水路の長手方向と所定の角度をなすように保持するカッターユニットと、を備える。
上記薄切標本作製システムにおいて、前記刃先が延在する方向と前記水路の長手方向とが直交していなくても良い。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、標本ブロックから切り出された薄切片を、基板によって掬い取られる位置まで、適切な向きを維持したまま水流によって搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1の実施形態に係る薄切標本作製システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る薄切標本作製システムの概略構成を示す側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る薄切片搬送装置を後端側から見た模式図である。
図4A】本発明の第1の実施形態に係る薄切片搬送装置の上面図である。
図4B図4AのA-A断面図である。
図5A】第1の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える搬送水路の上面図である。
図5B】第1の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える搬送水路の側面図である。
図6A】第1の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える水槽の上面図である。
図6B】第1の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える水槽の側面図である。
図7】搬送水路を保持する保持ブロックを示す模式図である。
図8】回転ベルトへの動力伝達手段を説明するための模式図である。
図9】カッターユニットを示す断面図である。
図10】搬送水路の先端側の引き上げた状態を示す模式図である。
図11A】本発明の第2の実施形態に係る薄切片搬送装置の模式図である。
図11B図11AのC-C面における一部断面図である。
図12A】第2の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える搬送水路の上面図である。
図12B図12AのD-D断面拡大図である。
図13A】第2の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える水槽の上面図である。
図13B】第2の実施形態に係る薄切片搬送装置が備える水槽の側面図である。
図13C図13AのE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態に係る薄切片搬送装置及び薄切標本作製システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0042】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0043】
<第1の実施形態>
(薄切標本作製システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄切標本作製システムの概略構成を示す模式図である。図2は、同システムの概略構成を示す側面図である。第1の実施形態に係る薄切標本作製システム1は、標本ブロック2から薄切された薄切片3をスライドガラス等の基板4上に転写するシステムである。標本ブロック2は、生体組織をパラフィン等の包埋材によって包埋したものである。
【0044】
図1及び図2に示すように、薄切標本作製システム1は、標本ブロック2を薄切するように構成されたカッターユニット20と、薄切された薄切片3を液体によって搬送するように構成された薄切片搬送装置30と、薄切片搬送装置30を流れてきた薄切片を基板4によって掬い上げるように構成されたハンドリングユニット40とを備える。これらの各部は、ボルト等により台座1aに固定されている。また、薄切標本作製システム1は、標本ブロックスライドユニット10と、基板4の保管庫であるマガジンユニット60と、制御部90と、各種センサとをさらに備えても良い。センサとしては、薄切片搬送装置30の上方に設けられたカメラ91、及び、薄切刃の近傍に配置された薄切刃センサ(カメラ)93等が挙げられる。さらに、薄切標本作製システム1に、薄切片搬送装置30に供給される水を貯水するための一時貯水タンク73を設けても良い。
【0045】
以下においては、薄切片搬送装置30における薄切片3の搬送方向を基準として、上流側を先端側ということもあり、下流側を後端側ということもある。
【0046】
ここで、薄切片3を搬送する液体としては、通常の水(水道水)を用いることができるが、これに限定されるわけではない。例えば、界面活性剤を加えた水溶液や、特定のフロート液等を使用することも可能である。以下においては、薄切片3を搬送する液体として水が用いられるものとして説明する。
【0047】
カッターユニット20は、薄切刃を保持するものであり、薄切片搬送装置30の先端に取り付けられている。また、カッターユニット20の上流側には、標本ブロックスライドユニット10が設置されている。標本ブロックスライドユニット10は、標本ブロック2を保持し、薄切刃に対して標本ブロック2を所定の角度を維持したままスライドさせる。それにより、薄切刃に接触した標本ブロック2の部分が薄くスライスされる。
【0048】
薄切刃に対して標本ブロック2をスライドさせる方向(以下、試料送り方向v1とも記す)は特に限定されない。ここで、図2に示すように、標本ブロック2の切断面2aと平行な面内において、薄切刃の刃先が延在する向き(後述する図4Aに示す向きv3参照)と直交する軸v0に対する試料送り方向v1の角度のことを切れ刃傾斜角θとも記す。切れ刃傾斜角θは、搬送方向の下流側(図1参照)から見て、軸v0を基準として反時計回りの方向を正とする。例えば、試料送り方向v1に対して薄切刃が直交している場合、切れ刃傾斜角θは0°となる。また、例えば図2に示す向きの場合、切れ刃傾斜角θは、0°より大きく90°未満の範囲となる。切れ刃傾斜角θは0°であっても良いし、0°より大きく90°未満(例えば、30°~60°程度、或いは、45°近傍)、又は、-90°より大きく0°未満であっても良い。
【0049】
薄切片搬送装置30においては、カッターユニット20側から流れる水流が形成されている。薄切刃によりスライスされた薄切片3は、そのまま、薄切片搬送装置30の水面に浮かべられ、水流に乗って下流側に搬送される。
【0050】
ハンドリングユニット40は、基板4を把持する把持部41と、把持部41を鉛直軸R1回りに旋回させる旋回機構42と、把持部41を軸R2回りに回転させるスイング機構44とを有する。
【0051】
制御部90は、薄切片搬送装置30を含む薄切標本作製システム1全体の動作を制御する。例えば、制御部90は、後述する回転ベルト375,376のベルト面が適切な速度で移動するように、モータ362の動作を制御する。また、制御部90は、カメラ91により撮影された画像に基づき、標本ブロック2から薄切されて薄切片搬送装置30により搬送された薄切片3を基板4により掬い上げ、マガジンユニット60に収納するというハンドリングユニット40の動作を制御する。
【0052】
(薄切標本作製システム1の動作)
次に、薄切標本作製システム1の動作の概略を説明する。
まず、薄切片搬送装置30において水流を発生させた状態で、標本ブロック2の面出し(プレカット)が行われる。即ち、標本ブロックスライドユニット10により標本ブロック2をスライドさせ、薄切刃により、生体組織が含まれる面が露出するまでスライスする。この時点では、標本ブロック2から削り出された削りかすは、水流に乗って排出される。
【0053】
プレカットの終了後、薄切片3のスライス(本カット)が行われる。なお、プレカットの終了後、本カットが行われる前の間、標本ブロックスライドユニット10の動作を一旦停止し、その間に、ハンドリングユニット40に基板4を保持させるなどの準備を行っても良い。標本ブロック2からスライスされた薄切片3は、そのまま、薄切片搬送装置30の水面に浮かべられ、水流に乗って搬送される。また、薄切片3を水に浮かべることにより、薄切片3が伸展される。ハンドリングユニット40は、保持した基板4の少なくとも一部を水路(2つの回転ベルト375,376の間の領域)に差し入れた状態で待機し、流れてきた薄切片3を基板4により掬い上げる。その後、ハンドリングユニット40は、基板4をマガジンユニット60に収容する。
【0054】
(薄切片搬送装置の構成)
次に、第1の実施形態に係る薄切片搬送装置30の詳細な構成について説明する。図3は、薄切片搬送装置30を後端側から見た模式図である。図2及び図3に示すように、薄切片搬送装置30は、内部に搬送水路34が配置された水槽32と、水槽32への水の給排水を行う水回りユニット72と、水槽32を長手方向に沿って移動させる移動ユニット80とを有する。水回りユニット72の構成については後述する。
【0055】
移動ユニット80は、水槽32が固定される台座801と、台座801に取り付けられたスライドブロック802と、ベアリング803を介してスライドブロック802と連結されたスライドレール804と、スライドブロック802を駆動するモータ805とを有する。移動ユニット80は、水槽32の移動をミクロン単位で移動させることができる。薄切片3がスライスされる毎に、移動ユニット80が水槽32を所定距離(例えば数μm)ずつ上流側に移動させることにより、水槽32の上流側に設置された薄切刃により、標本ブロック2の新たな面を切り出すことができる。
【0056】
図4Aは、薄切片搬送装置30の上面図である。図4Bは、図4AのA-A断面図である。図5Aは、薄切片搬送装置30が備える搬送水路の上面図である。図5Bは、同搬送水路の側面図である。図6Aは、薄切片搬送装置30が備える水槽の上面図である。図6Bは、同水槽の側面図である。なお、図4A及び図4Bにおいては、移動ユニット80の記載を省略している。
【0057】
図4A及び図4Bに示すように、薄切片搬送装置30は、水槽32と、水槽32の内部に配置された搬送水路34とを備える。水槽32は、搬送水路34を収容可能、且つ、搬送水路34から流出した水を貯留可能な容量を有している。
【0058】
上述したカッターユニット20は、水槽32の外側に取り付けられ、搬送水路34の上流側の端部において、薄切刃を、刃先が延在する向きが搬送水路34の長手方向(即ち、搬送方向)に対して所定の角度をなすように保持する。ここで、図4Aに示すように、搬送方向v2に対する刃先が延在する向きv3の角度のことを、刃の設置角αとも記す。刃の設置角αは、上面から見て、搬送方向v2を基準として反時計回りの方向を正とする。刃の設置角αは、切れ刃傾斜角θに応じて設定しても良い。例えば、切れ刃傾斜角θが0°である場合には、刃の設置角αを90°としても良い。また、切れ刃傾斜角θが0°以外である場合、搬送方向v2と向きv3とを直交させなくても良い。例えば、切れ刃傾斜角θを0°より大きくする場合には刃の設置角αを90°未満としても良し、切れ刃傾斜角θを0°未満とする場合には刃の設置角αを90°より大きくしても良い。好ましくは、刃の設置角αをα=90°-θと設定することができる。例えば、切れ刃傾斜角θが30°~60°である場合には、刃の設置角αを60°~30°にしても良いし、切れ刃傾斜角θが45°近傍である場合には、刃の設置角αを45°近傍にしても良い。このように刃の設置角αを設定する場合、切れ刃傾斜角θを0°より大きくすることにより薄切刃から斜めの向きとなって送り出される薄切片3を、搬送方向に対して平行な向きとなるように、搬送水路23に導入することができる。
【0059】
搬送水路34の上流側には、薄切刃の刃先に向けて水を流し、搬送水路34に注入するように構成された1つ以上のノズル353が配置されている。標本ブロック2を薄切する間、ノズル353から薄切刃の刃先に液体を流し続けることにより、切り出された薄切片3が刃先からスムースに離れ、搬送水路34に導入される。また、搬送水路34に流入した水により、搬送水路34に水流を生じさせることができる。
【0060】
ノズル353は、限定されないが、図4Aに例示するように、薄切刃の両端側に設置することが好ましい。その場合、両ノズル353から概ね同程度の流速で水を放出することがより好ましい。それにより、両ノズル353から放出された水が薄切刃の概ね中央付近で出会い、お互いの流速を打ち消し合うので、薄切刃により薄切された薄切片3に与える薄切刃と平行な方向の力を低減することができる。それにより、薄切片3を、位置ずれさせることなく、水路(後述する2つの回転ベルト375,376の間の領域)に導入することができる。
【0061】
ノズル353から放出する水の流速は、少なくとも、薄切刃の略中央付近まで水が到達する程度であれば良く、薄切刃の刃渡り、両ノズル353の間隔、薄切片3の厚さ等に応じて適宜調整すれば良い。
【0062】
もちろん、ノズル353を薄切刃の一方の端部近傍にのみ設けることとしても良いし、複数のノズル353を薄切刃の刃先近傍の複数箇所に設けても良い。
【0063】
搬送水路34は、下流側において保持ブロック361に保持されており、この保持ブロック361を介して水槽32に取り付けられている。第1の実施形態において、保持ブロック361は、水槽32に対し、搬送水路34の長手方向と直交する軸355を介して、軸355回りに回転可能に取り付けられている。
【0064】
搬送水路34は、その後端側において水槽32との間にスペースが確保されるように取り付けられる。このスペースが、搬送水路34の後端側から流出した水を受けるオーバーフロー領域331となる。オーバーフロー領域331の内壁には、フィルタ333を取り付けるためのフィルタ取り付け部332が設けられている。フィルタ333は、オーバーフロー領域331の上部に、該オーバーフロー領域331全体を覆うように取り付けられる。なお、図4Aにおいては、図が不明瞭になることを避けるため、フィルタ333の記載を省略している。フィルタ333を設けることにより、搬送水路34の後端側から流出した水に含まれる固形物を除去して、フィルタ333を通過した水を搬送水路34に再循環させることができる。固形物には、薄切時に発生する削り屑や、プレカット時に発生するスライス等が含まれる。
【0065】
搬送水路34は、底部340と、該底部340に接続された互いに対向する2つの壁部341とを有する。この搬送水路34の内側に、2つの壁部341に沿って、2組の回転ベルト375,376が設けられている。回転ベルト375,376は、2つの壁部341の間において、それぞれのベルト面が所定の間隔を空けて互いに平行に、対向するように配置されている。第1の実施形態において、これらの回転ベルト375,376は、互いに対向しているベルト部分が搬送水路34の下流側に向かって移動するように構成されている。薄切片3は、これらのベルト部分の間を流れる液体に浮かべられて搬送される。回転ベルト375,376は、好ましくは、互いに同じ速度で回転するように制御される。回転ベルト375,376の速度は、カッターユニット20における薄切の頻度、搬送水路34の長さ、搬送速度、液体(水など)の種類等に応じて適宜設定することができる。一例として、水道水を流す場合、回転ベルト375,376の直線部分の速度を、5~30mm/秒程度とすることができる。
【0066】
回転ベルト375,376の互いに対向するベルト面の間隔wは、基板4のサイズに応じて決定することができる。ここで、病理標本の基板4として用いられるスライドガラスには規格サイズがあり、一般には、75×25mm、又は、76×26mmというサイズが使用される。なお、日本産業規格(JIS R3703)においては、顕微鏡用スライドガラス(標準形)のサイズとして、長さ76.0mm、幅26.0mmが規定されている。これらの場合、ベルト面の間隔wを、25mm~30mm程度に設定することができる。もちろん、薄切標本作成システム1において使用可能な基板4のサイズは上記規格サイズに限定されない。上記規格サイズ以外のサイズの基板を使用する場合には、ベルト面の間隔wを適宜調整すれば良い。
【0067】
詳細には、ベルト面の間隔wは、使用される基板4の短辺の長さ(幅)と同じかそれよりも若干長くなるように設定される。つまり、間隔wは、基板4が水路に差し入れられたときに、対向するベルト面の間に基板4がちょうど収まるか、基板4と両側のベルト面との間に若干の隙間が生じる程度である。具体的には、間隔wを、基板4の短辺の長さプラス4mm(片側に2mmずつの隙間)以下とすることが好ましく、短辺の長さプラス3mm(片側に1.5mmずつの隙間)以下とすることがより好ましく、短辺の長さプラス2mm(片側に1mmずつの隙間)以下とすることがさらに好ましい。
【0068】
例えば、短辺の長さが25mmの基板4を使用する場合、間隔wの下限を25mm以上とし、上限を29mm以下とすることが好ましく、28mm以下とすることがより好ましく、27mm以下とすることがさらに好ましい。また、短辺の長さが26mmの基板4を使用する場合、間隔wの下限を26mm以上とし、上限を30mm以下とすることが好ましく、29mm以下にとすることがより好ましく、28mm以下にとすることがさらに好ましい。
【0069】
搬送水路34の2つの壁部341の内側には、所定の間隔を空けてプーリが2つずつ配置されている。回転ベルト375は、プーリ371,373の周囲を回転し、回転ベルト376は、プーリ372,374の周囲を回転している。このうち、上流側のプーリ373,374は、搬送水路34の底部340に形成された貫通孔345,346(図5A参照)にその回転軸を嵌め込むことにより、搬送水路34に取り付けられている。また、下流側のプーリ371,372は、保持ブロック361に取り付けられている(図4B参照)。また、後述するように、保持ブロック361には、モータ362(図3参照)や、モータ362の動力をプーリ371,372に伝達するための動力伝達手段も、回転ベルト375に取り付けられている。
【0070】
各回転ベルト375,376の内側には、ベルト面の間隔wを調整可能なピンチローラ381をさらに設けてもよい。この場合、ピンチローラ381は、保持ブロック361に固定されたローラーユニット38を介して設置することができる。
【0071】
各回転ベルト375,376の素材は、搬送水路34を流れる液体(例えば、水)に対して耐性(例えば、耐腐食性)がある素材であれば、特に限定されない。具体的には、回転ベルト375,376として、例えば、スチールベルトや樹脂製のベルトを使用することができる。また、回転ベルト375,376の表面側の特性は、粘着性がないか、又は、極めて低いことが好ましい。万が一、薄切片3が回転ベルト375,376に接触したときに、回転ベルト375,376への巻き込みを防ぐためである。
【0072】
このように、搬送水路34の内側に回転ベルト375,376を設け、互いに対向するベルト部分を共に下流側に移動させることにより、流速のばらつきが少ない、安定した水流を形成することができる。それにより、搬送中の薄切片3の水面における回転を抑制することができ、薄切片3が搬送水路34に導入されたときの向きとほぼ同じ向きのまま、薄切片3を掬い上げポイントP1まで搬送することが可能となる。
【0073】
なお、第1の実施形態においては、回転ベルト375,376の全体が搬送水路34の内側に配置されているが、回転ベルト375,376の一部が搬送水路34の外側に跨っていても良い。要は、回転ベルト375,376の互いに対向するベルト面が搬送水路34の内側に配置されていれば良い。
【0074】
図5A及び図5Bに示すように、搬送水路34の底部340は、搬送水路34上流側に位置し、2つの壁部341の上端部に対して第一の深さd1を有する第一の領域342と、搬送水路34の下流側に位置し、第一の深さd1よりも深い第二の深さd2を有する第二の領域343と、第一の領域342と第二の領域343との間に位置し、第一の深さd1から第二の深さd2に向かって深さを増す中間領域344とを含む。ハンドリングユニット40により把持された基板4は、第二の領域343に差し入れられ、搬送水路34を流れる薄切片3を待機する。
【0075】
第一の領域342の深さd1は、1mm以上5mm以下とすることが好ましい。深さd1をこの範囲とすることにより、深さ方向においても流速を均一にして、安定した水流を形成することができる。それにより、薄切刃から離れて搬送水路34に導入された後の薄切片3を安定して搬送することができる。一方、第二の領域343の深さd2は、5mm以上30mm以下にすることが好ましい。深さd2をこの範囲とすることにより、ハンドリングユニット40が基板4を掬い上げ領域P1に差し入れた際に、基板4が搬送水路34の底部340に接触することを防ぐことができる。
【0076】
中間領域344には、1つ以上(図5A及び図5Bにおいては2つ)の貫通孔347が形成されており、この貫通孔347に、下流側の上方に向けて注水する1つ以上(同上)のノズル348がそれぞれ嵌め込まれている。これらのノズル348には、外部のポンプ(図示せず)から水が供給されている。ノズル348から注水することにより、中間領域344における深さの増加に伴う流速の低下を抑制することができる。
【0077】
搬送水路34の後端側の底部340には、搬送水路34を保持ブロック361に固定するためのボルト孔350が設けられている。図5Aに示すように、搬送水路34自体の後端側は開放されており、搬送水路34を保持ブロック361に取り付けることにより、搬送水路34の後端側壁部を設けることができる。
【0078】
また、搬送水路34の先端領域351には、薄切刃の刃先に水をかけるノズル353を保持するためのノズル保持部352が設けられている。
さらに、搬送水路34に、該搬送水路34を持ち上げるためのハンドル357を設けても良い。
【0079】
図6A及び図6Bに示すように、水槽32は、左右及び後端側の壁部321と、底部322とを有する。底部322は、水槽32の全体にわたって同一平面に設けられていても良いが、図6Bに示すように、底部322の先端側の一部(上げ底部323)を底上げしても良い。搬送水路34に干渉しない範囲で上げ底部323を設けることにより、水槽32の容量を抑えることができる。
【0080】
水槽32には、該水槽32を台座801(図2参照)に上面からボルトで固定するための固定部324と、側面からボルトで固定するための固定部325とが設けられている。このように、水槽32を2方向から台座801に固定することにより、台座801に対する水槽32の位置ずれを防ぐことができる。
【0081】
水槽32の一方の側面の壁部321には、水槽32から水を排出するための開口326,327が設けられている。開口326は、水槽32からの溢流防止のため、オーバーフロー領域331よりも上流側の上端近傍に設けられている。開口326には、水回りユニット72(図3参照)のドレンパイプ721が接続される。ドレンパイプ721から流出した水は、排水槽724(図2参照)を経て排水される。
【0082】
他方の開口327は、オーバーフロー領域331の下端近傍に設けられている。この開口327には、ドレンパイプ722(図3参照)が接続される。ドレンパイプ722にはバルブ723が設けられており、バルブ723を開放することにより、水槽32内の水を排出することができる。ドレンパイプ722から流出した水は、排水槽724を経て排水される。
【0083】
水槽32内には、保持ブロック361に設けられた貫通孔36g(後述)を塞ぐための栓329と、栓329を支持する支持部328が配置されている。
【0084】
水槽32の先端領域334は、底が抜けた状態となっている。カッターユニット20は、この先端領域334に嵌め込まれる。
【0085】
図7は、搬送水路34を保持する保持ブロック361を示す模式図である。このうち、図7の(a)は上面、図7の(b)は後端面、図7の(c)は右側面、図7の(d)は左側面、図7の(e)は底面をそれぞれ示す。
【0086】
図7の(a)~(e)に示すように、保持ブロック361は、天井板36aと壁部36bと底板36cとが略コの字状となるように接続された部材である。搬送水路34は、コの字の開口部分36dに嵌め込まれ、図7の(e)に示すボルト孔36eにおいて締結される(図5Aに示すボルト孔350参照)。これにより、壁部36bが、搬送水路34の後端側壁部となる。
【0087】
図7の(b)に示すように、壁部36bの上部は大きく切り欠かれている。切り欠き部36fの高さは、図3に示すように、搬送水路34の壁部341の上端面34aよりも低くなっている。この切り欠き部36fが、搬送水路34の後端から水槽32のオーバーフロー領域331に水を流出させる流出口となる。
【0088】
壁部36bの下方には貫通孔36gが形成されている。貫通孔36gは、搬送水路34から水を排出するための排出口であり、図4Bに示すように、薄切中には栓329によって塞がれる。
【0089】
図7の(a)に示すように、天井板36aには、モータ362(図3参照)を嵌め込むための凹部36hと、モータ362の回転軸が挿通される貫通孔36iと、プーリ371,372の回転軸が挿通されるための貫通孔36j,36kとが形成されている。また、図7の(e)に示すように、底板36cには、貫通孔36i,36j,36kに対応する貫通孔36l,36m,36nが形成されているほか、ギアの回転軸が挿通される貫通孔36p,36qが形成されている。
【0090】
図7の(c)に示すように、保持ブロック361には、側面方向に貫く貫通孔36rが形成されている。貫通孔36rには、水槽32に固定される軸355が挿通される。
【0091】
図8は、回転ベルト375,376への動力伝達手段を説明するための模式図である。保持ブロック361の下方(図3も参照)には、ギア363,364,365,366,367が取り付けられている。これらのギア363,364,365,366,367は、貫通孔36l,36m,36p,36q,36nに挿通された回転軸に固定されている。モータ362の回転を、ギア363,364を介してプーリ371に伝達すると共に、さらに、ギア364と歯合するギア365,366,367を介してプーリ372に伝達することにより、回転ベルト375,376の互いに対向するベルト部分を同じ方向に移動させることができる。
【0092】
図9は、カッターユニット20を示す断面図である。図9に示すように、カッターユニット20は、薄切刃201と、薄切刃201を挟持する第一ブロック202及び第二ブロック203と、を含む。第一ブロック202と第二ブロック203とは、ボルト204により締結されており、ボルト204を緩めることにより、薄切刃201を取り外して交換することができる。カッターユニット20は、薄切刃201を、その刃先が搬送水路34の2つの壁部341の高さと略一致するように保持している。
【0093】
カッターユニット20は、図6Aに示す水槽32の先端領域334に嵌め込まれ、ボルト205により、移動ユニット80の台座801に固定される。第二ブロック203の上部には、搬送水路34の底部340の先端領域351(図5A参照)を受ける平面部206が形成されている。水槽32の先端領域334に、第二ブロック203の上端との間における水漏れを防止するため、シール部材359を貼り付けても良い。シール部材359は、例えば、ゴムシートで構成することができる。
【0094】
図10は、搬送水路34の先端側を引き上げた状態を示す模式図である。上述したように、搬送水路34は、水槽32に対して軸355周りに回転可能に取り付けられている。そのため、ハンドル357を持ち上げることにより、図10に示すように、搬送水路34の先端側を引き上げことができる。それにより、カッターユニット20において、薄切刃201の交換を容易に行うことができる。
【0095】
搬送水路34の先端側を引き上げると、保持ブロック361の貫通孔36gから栓329が抜ける。それにより、搬送水路34に溜まっていた水を貫通孔36gから水槽32に排出することができる。
【0096】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態においては、搬送水路34に2組の回転ベルト375,376に設け、搬送水路34の内側において、互いに対向するベルト部分を同じ方向に移動させる。それにより、互いに対向するベルト部分の間に安定した水流を形成することができる。従って、標本ブロック2から切り出された薄切片3を、この水流に乗せて、基板4に掬い取られる位置まで適切な向きを維持したまま搬送することが可能となる。
【0097】
また、本発明の第1の実施形態によれば、薄切する際の切れ刃傾斜角θに応じて、搬送方向に対する刃の設置角αを設定することにより、切れ刃傾斜角θを0°より大きくした場合であっても、搬送方向に対して平行な向きとなるように、薄切片3を搬送水路23に導入することができる。
【0098】
<変形例>
第1の実施形態においては、搬送水路34に設けられた2つの回転ベルト375,376を1つのモータ805により駆動し、互いに対向しているベルト部分が同じ方向に同じ速度で移動するように構成した。しかしながら、これらの回転ベルト375,376をそれぞれ回転させるための2つのモータを設けても良い。また、回転ベルト375,376の回転速度及び回転方向を個別に制御しても良い。例えば、2つの回転ベルト375,376の回転速度を互いに異ならせたり、一方の回転ベルトのみを一時的に停止させたりしても良い。或いは、2つの回転ベルト375,376を、一時的に互いに逆方向に回転(対向するベルト部分を逆方向に移動)させても良い。このような制御を行うことにより、水路(2つの回転ベルト375,376の間の領域)において搬送される薄切片3の姿勢を調整することが可能となる。
【0099】
各回転ベルト375,376の回転速度及び回転方向の制御は、薄切片搬送装置30の上方に設けられたカメラ91、又は、カメラ91の上流側に追加で設けられるカメラにより撮影された画像に基づいて、制御部90が実行しても良い。
【0100】
<第2の実施形態>
図11Aは、本発明の第2の実施形態に係る薄切片搬送装置の模式図である。図11Bは、図11AのC-C面における一部断面図である。図12Aは、同薄切片搬送装置が備える搬送水路の上面図である。図12Bは、図12AのD-D断面拡大図である。図13Aは、同薄切片搬送装置が備える水槽の上面図である。図13Bは、同水槽の側面図である。図13Cは、図13AのE-E断面図である。
【0101】
図11A及び図11Bに示すように、第2の実施形態に係る薄切片搬送装置30Aは、薄切片搬送装置30Aを流通させる液体(例えば、水道水)の温度を制御するシステムを備える。このような薄切片搬送装置30Aは、図1に示す薄切片作製システム1において、薄切片搬送装置30(図4A及び図4B参照)の代わりに適用することができる。
【0102】
ここで、薄切刃による標本ブロック2の薄切は、標本の種類にもよるが、標本ブロック2の軟化を防ぐため、なるべく低温(例えば、20℃以下)の環境下で行うことが好ましい。一方、薄切後には、薄切片3を温かい液体(例えば、40℃程度)に浸すことにより、薄切片3を伸展することが好ましい。そこで、薄切片搬送装置30Aにおいては、上流側(カッターユニット20側)の水路に低温の液体(例えば、冷水)を流通させ、下流側(ハンドリングユニット40側)の水路に温かい液体(例えば、温水)を流通させている。以下、薄切片搬送装置30Aの構成について、液体として水道水を流通させる場合を例として説明する。
【0103】
図11Aに示すように、薄切片搬送装置30Aは、薄切刃の下流側に配置された搬送水路34Aを備える。後で詳述するように、搬送水路34Aは、上流側の領域である冷水路74aと、下流側の領域である温水路74bとに仕切られ、薄切片3が水に浮かんだ状態で冷水路74aから温水路74bに移動できるように構成されている。また、薄切片搬送装置30Aは、冷水路74aを流通する水の温度を第1の範囲温度に制御するように構成された冷水コントロールシステム(第1の温度コントロールシステム)76と、温水路74bを流通する水の温度を上記第1の温度範囲よりも高い第2の範囲温度に制御するように構成された温水コントロールシステム(第2の温度コントロールシステム)78とを備える。
【0104】
冷水路74aを流通する水(冷水)の温度範囲は、限定されないが、20℃以下とすることが好ましく、例えば10℃~20℃程度とすることができる。冷水コントロールシステム76は、1つ以上のノズル(例えば、薄切刃に水をかけるノズル353)から冷水路74aに、所定の範囲温度の冷水を注入する。注入される冷水の温度は、上記温度範囲(例えば、10℃~20℃程度)としても良いし、冷水路74aにおいて若干温度が上昇する可能性を考慮して、上記温度範囲よりも低い温度の冷水を注入することとしても良い。
【0105】
温水路74bを流通する水(温水)の温度範囲は、薄切片3を伸展させることができる温度範囲であり、限定されないが、40℃~55℃程度とすることができる。温水コントロールシステム78は、1つ以上のノズル(例えば、中間領域344に注水するノズル348)から温水路74bに、所定の温度範囲の温水を注入する。注入される温水の温度は、上記温度範囲(例えば、40℃~55℃程度)としても良いし、温水路74bにおいて若干温度が低下する可能性を考慮して、パラフィン等の包埋材が溶融しない範囲で、上記温度範囲よりも高い温度の温水を注入することとしても良い。
【0106】
冷水コントロールシステム76及び温水コントロールシステム78は、制御部90の制御の下で動作することとしても良いし、手動で取り扱うことができるようにしても良い。
【0107】
図12Aに示すように、搬送水路34Aの全体的な構成は、第1の実施形態における搬送水路34の構成と概ね同様であるが、第2の実施形態における搬送水路34Aには、該搬送水路34Aを上流側の領域と下流側の領域とに仕切る仕切り741が設けられている。この仕切り741よりも上流側の領域が、冷水を流通させる冷水路74aであり、仕切り741よりも下流側の領域が、温水を流通させる温水路74bである。仕切り741の位置は、底部330の上流側に位置する第一の領域342内、又は、第一の領域342と中間領域344との境界近傍とすることが好ましい。中間領域344に配置されたノズル348は、温水路74b側に位置することになる。
【0108】
図12Bに示すように、仕切り741の上端面の一部には切り欠き742が形成されている。切り欠き742部分の幅は、薄切片3の幅と同程度、又は、薄切片3の幅よりも若干大きい。また、切り欠き742部分の高さh1は、搬送水路34Aの壁部341の高さh2よりも低い。それにより、切り欠き742部分と搬送水路34Aとの上端面との間にギャップが生じ、水位(液面5参照)を切り欠き742の高さよりも高くすることにより、薄切片3が水に浮かんだ状態で冷水路74aから温水路74bに移動できるようになる。なお、切り欠き742を形成する代わりに、仕切り741全体の高さを壁部341の高さh2より低くしても良い。
【0109】
仕切り741には、回転ベルト375,376との干渉を防ぐため、回転ベルト375,376が差し込まれるスリット743が4箇所に形成されている。
このような仕切り741を設けることにより、水流により薄切片3を冷水路74aから温水路74bに搬送しつつ、冷水路74aから温水路74bに流入する冷水の量を抑制することができる。
【0110】
冷水路74aの1つ以上の箇所(図12Aにおいては2箇所)には、排液口745が設けられている。図12Aに示すように、排液口745は、上面が開口した筒状をなしており、冷水路74aにおいて水面が所定の高さ以上となった場合に冷水を排出するために設けられている。図12Bに示すように、排液口745の開口の高さは、仕切り741の切り欠き742の高さh1よりも高く、壁部341の高さh2よりも低い。これにより、切り欠き742上を薄切片3が通過できる水位を維持しつつ、冷水路74aから温水路74bや周囲に冷水が溢れ出てしまうことを防ぐことができる。
【0111】
なお、排液口745の開口の形状は特に限定されず、図12Aに示すような矩形状であっても良いし、それ以外の形状(例えば、円形状や楕円形状)であっても良い。また、排液口745の位置は、回転ベルト375,376や、それらの間を流れる薄切片3と干渉しない位置であれば特に限定されない。図12Aにおいて、排液口745は、各回転ベルト375,396の内側に配置されている。
【0112】
温水路74bに位置する中間領域344には、ノズル348とは別に設けられるノズル789(図11B参照)が挿通される貫通孔746が形成されている。
【0113】
再び図11A及び図11Bを参照すると、薄切片搬送装置30Aは、搬送水路34Aを収容可能で、搬送水路34Aから流出した液体を貯留可能な水槽32Aをさらに備える。図13A及び図13Bに示すように、水槽32Aの全体的な構成は、第1の実施形態における水槽32と概ね同様であるが、第2の実施形態における水槽32Aには、水槽32Aを上流側と下流側とに仕切る仕切り751,752が設けられている。仕切り751の上流側が、冷水路34aの排液口745から流出した冷水を貯留するように構成された冷水貯留部(第1の貯留部)75aであり、仕切り752の下流側が、温水路74bの後端から流出した温水を貯留するように構成された温水貯留部(第2の貯留部)75bである。なお、第1の実施形態において説明した上げ底部323(図4B参照)は、後述する配管に干渉しない程度であれば設置しても良いし、設置しなくても良い。
【0114】
仕切り751,752は互いに同じ形状をなしている。図13Cに示すように、仕切り751,752の上面には、搬送水路34Aを嵌め込むための切り欠き754が形成されている。また、仕切り751と仕切り752との間には断熱領域としての空間753が設けられている。これにより、冷水貯留部75aと温水貯留部75bとの間で断熱効果を得ることができる。なお、空間753に断熱材を充填しても良い。もちろん、仕切りを1枚のみ設けることとしても良いし、この場合、断熱材により仕切りを形成しても良い。
【0115】
図13Bに示すように、冷水貯留部75a及び温水貯留部75bの各側面には、ドレンパイプ721(図2参照)が接続される開口326と、ドレンパイプ722(同上)が接続される開口327とが設けられている。開口326は、冷水貯留部75a及び温水貯留部75bの各々からの溢流防止のため、上端近傍に設けられている。開口327は、冷水貯留部75a及び温水貯留部75bの各々からの排水のため、下端近傍に設けられている。
【0116】
なお、一体化された水槽に仕切り751,752を設置する代わりに、冷水貯留部75aと温水貯留部75bとを別々に形成し、これらを連結することにより水槽32Aを構成しても良い。
【0117】
図13Aに示すように、水槽32Aの先端領域334は、カッターユニット20が嵌め込まれるため、底が抜けた状態となっている。そのため、底部322の先端とカッターユニット20との隙間における漏水を防ぐため、底部322の先端部分にシール部材を取り付けても良い。或いは、底部322の先端部分に、カッターユニット20の側面形状に沿った側壁を設けても良い。
【0118】
冷水貯留部75aの底部322の上流寄りの領域には、1つ以上のノズル767(図11A及び図11B参照)が挿通される1つ以上(図13Aにおいては1つ)の貫通孔755が形成されている。また、冷水貯留部75aの底部322の下流寄りの領域には、排液口となる1つ以上(図13Aにおいては3つ)の貫通孔756が形成されている。
【0119】
温水貯留部75bの底部322の上流寄りの領域には、1つ以上のノズル787(図11B参照)が挿通される1つ以上(図13Aにおいては3つ)の貫通孔757が形成されている。また、温水貯留部75bの底部322の下流寄りの領域には、排液口となる1つ以上(図13Aにおいては3つ)の貫通孔758が形成されている。
【0120】
図11A及び図11Bに示すように、冷水コントロールシステム76は、冷水路74aに供給される水を冷却するように構成された冷却ユニット761と、配管764,765,766とを含む。このうち、冷却ユニット761は、冷水タンク762及び冷水機763と、配管765,766に冷水をそれぞれ供給するポンプP1,P2とを含む。
【0121】
冷水タンク762には水位センサS1及び温度センサT1が設置されている。冷水タンク762内の水位が所定値以下になったことが検知されると、冷水タンク762に外部から水道水が供給される。また、冷水タンク762内の水温が所定値以上になったことが検知されると、冷水機763が作動し、冷水タンク762内の水を冷却する。
【0122】
冷水貯留部75aの貫通孔756には、配管764が接続されている。配管764は、冷水タンク762内を通過するように配設され、ポンプP1を介して、ノズル353に冷水を供給するための配管765に接続されている。
【0123】
配管765にはバルブB1が設けられており、薄切片3の搬送時には、バルブB1が開放される。それにより、ノズル353から冷水路74aに冷水が注入される。この冷水の流れと回転ベルト375,376の回転とにより、薄切片3を搬送するための水流が形成される。冷水の一部は、仕切り741を越えて温水路74bに流入し、残りは、排液口745を通って冷水貯留部75aに流入する。
【0124】
冷水貯留部75aの貫通孔756から配管764に流入した水は、冷水タンク762を通過することにより冷却され、ポンプP1を介して配管765に供給される。このようにして、冷水が循環する。
【0125】
冷水貯留部75aには、水位センサS2が設置されている。冷水貯留部75aの水位が所定値以下になったことが検知されると、ポンプP2により冷水タンク762から冷水が汲み上げられると共にバルブB2が開放され、配管766及びノズル767を通じて、冷水が冷水貯留部75aに注入される。
【0126】
冷水路74aには、温度センサT2が設置されている。冷水路74a内の水温が所定値以上になったことが検知されると、冷水機763が作動し、冷水タンク762内の水及び水中に配設された配管764が冷却される。
【0127】
温水コントロールシステム78は、温水路74bに供給される水を加温するように構成された加温ユニット781と、配管784,785,786,788とを含む。このうち、加温ユニット781は、温水タンク782及びヒーター783と、配管785,786,788に温水をそれぞれ供給するポンプP3,P4,P5とを含む。
【0128】
温水タンク782には、水位センサS3及び温度センサT3が設置されている。温水タンク782内の水位が所定値以下になったことが検知されると、温水タンク782に外部から水道水が供給される。また、温水タンク782内の水温が所定値以下になったことが検知されると、ヒーター783が作動し、温水タンク782内の水を加温する。
【0129】
温水貯留部75bの貫通孔758には、配管784が接続されている。配管784は、温水タンク782内を通過し、その後、分岐するように配設されている。分岐した一方の配管は、ポンプP3を介して、ノズル348に温水を供給するための配管785に接続され、他方の配管は、ポンプP4を介して、ノズル787に温水を供給するための配管786に接続されている。
【0130】
配管785にはバルブB3が設けられており、薄切片3の搬送時には、バルブB3が開放される。それにより、ノズル348から温水路74bに温水が注入される。この温水の流れと回転ベルト375,376の回転とにより、薄切片3を搬送するための水流が形成される。
【0131】
温水路74bに供給された温水は、搬送水路34Aの後端側から流出し、オーバーフロー領域331に設けられたフィルタ333を経て温水貯留部75bに流入する。温水貯留部75bの貫通孔758から配管784に流入した水は、温水タンク782を通過することにより加温され、ポンプP3を介して配管785に供給される。このようにして、温水が循環する。
【0132】
配管786にはバルブB4が設けられており、このバルブB4が開放されると、ノズル787から温水貯留部75bに温水が注入される。それにより、温水貯留部75bにおいて温水が循環し、水温が均一に保たれる。
【0133】
温水路74bには、水位センサS4が設置されている。温水路74bの水位が所定値以下になったことが検知されると、ポンプP5により温水タンク782から温水が汲み上げられると共にバルブB5が開放され、配管788及びノズル789を通じて、温水が温水路74bに注入される。
【0134】
温水路74bには、温度センサT4が設置されている。温水路74b内の水温が所定値以下になったことが検知された場合も同様に、ポンプP5により温水タンク782から温水が汲み上げられると共にバルブB5が開放され、ノズル789を通じて温水が温水路74bに注入される。
【0135】
なお、冷水を供給するための配管765,766、及び、温水を供給するための配管785,786,788は、好ましくは、保温部材により被覆される。或いは、断熱性を有する材料により、配管765,766,785,786,788を形成しても良い。また、ポンプP1~P5の種類は特に限定されず、例えばダイアフラムポンプ等の一般的なポンプを用いることができる。温水路74bに温水を注入するためのノズル348,789に接続される配管785,788のレイアウトは特に限定されず、例えば、水槽32Aの底部322を貫通するように設置しても良いし、壁部321を貫通するように設置しても良い。
【0136】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、冷水路74aにおいて低温の環境下で標本ブロック2を薄切した後、温水路74bにおいて薄切片3を伸展し、伸展された薄切片3を基板4によって掬い上げることができる。
【0137】
以上説明した第2の実施形態に係る薄切片搬送装置30Aにおける温度コントロールシステムは、回転ベルト375,376が設けられた薄切片搬送装置30Aだけでなく、薄切された薄切片を水流によって搬送する一般的な薄切片搬送装置に適用すること可能である。
【0138】
以上説明した本発明は、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に限定されるものではなく、上記第1及び第2実施形態並びに変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【0139】
(付記1)
標本ブロックから薄切された薄切片を基板上に転写する薄切標本作製システムにおいて、薄切片を搬送する薄切片搬送装置であって、
標本ブロックを薄切する薄切刃の下流側に配置された水路であって、上流側の領域である冷水路と、下流側の領域である温水路とに仕切られ、前記薄切片が液体に浮かんだ状態で前記冷水路から前記温水路に移動可能となるように構成された水路と、
前記冷水路を流通する液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成された第1の温度コントロールシステムと、
前記温水路を流通する液体の温度を前記第1の範囲よりも高い第2の範囲温度に制御するように構成された第2の温度コントロールシステムと、
を備える薄切片搬送装置。
【0140】
(付記2)
標本ブロックから薄切された薄切片を基板上に転写する薄切標本作製システムにおいて、薄切片を搬送する薄切片搬送装置であって、
標本ブロックを薄切する薄切刃の下流側に配置された水路であって、上流側の領域である冷水路と、下流側の領域である温水路とに仕切られ、前記薄切片が液体に浮かんだ状態で前記冷水路から前記温水路に移動可能となるように構成された水路と、
前記水路の上流側に配置され、前記薄切刃の刃先に向けて液体を流して前記水路を注入するように構成された1つ以上のノズルと、
前記冷水路を流通する液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成された第1の温度コントロールシステムと、
前記温水路を流通する液体の温度を前記第1の範囲よりも高い第2の範囲温度に制御するように構成された第2の温度コントロールシステムと、
を備え、
前記第1の温度コントロールシステムは、前記1つ以上のノズルから前記冷水路に注入される液体の温度を第1の範囲温度に制御するように構成されている、薄切片搬送装置。
【0141】
(付記3)
前記水路に、前記冷水路における液面が所定の高さ以上となった場合に前記液体を排出する排液口が設けられ、
前記水路を収容可能な水槽であって、前記冷水路から前記排液口を通じて流出した液体を貯留するように構成された第1の貯留部と、前記温水路から流出した液体を貯留するように構成された第2の貯留部と、を有する水槽をさらに備え、
前記第1の温度コントロールシステムは、
前記第1の貯留部から排出された液体を冷却するように構成された冷却ユニットと、
前記冷却ユニットにより冷却された液体を前記冷水路に循環させるように構成された第1のポンプと、
を有し、
前記第2の温度コントロールシステムは、
前記第2の貯留部から排出された液体を加温するように構成された加温ユニットと、
前記加温ユニットにより加温された液体を前記温水路に循環させるように構成された第2のポンプと、
を有する、付記1又は2に記載の薄切片搬送装置。
【0142】
(付記4)
前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間に断熱領域が設けられている、付記3に記載の薄切片搬送装置。
【符号の説明】
【0143】
1…薄切標本作製システム、1a…台座、2…標本ブロック、2a…切断面、3…薄切片、4…基板、5…液面、10…標本ブロックスライドユニット、20…カッターユニット、30・30A…薄切片搬送装置、32・32A…水槽、34・34A…搬送水路、34a…上端面、36a…天井板、36b…壁部、36c…底板、36d…開口部分、36e…ボルト孔、36f…切り欠き部、36g・36i・36j・36K・36l・36m・36n・36p・36q・36r・746・755・756・757・758…貫通孔、36h…凹部、38…ローラーユニット、40…ハンドリングユニット、41…把持部、42…旋回機構、44…スイング機構、60…マガジンユニット、72…水回りユニット、73…一時貯水タンク、74a…冷水路、74b…温水路、75a…冷水貯留部、75b…温水貯留部、76…冷水コントロールシステム、78…温水コントロールシステム、80…移動ユニット、90…制御部、91…カメラ、93…薄切刃センサ、201…薄切刃、202…第一ブロック、203…第二ブロック、204・205…ボルト、206…平面部、321…壁部、322…底部、323…上げ底部、324・325…固定部、326・327…開口、328…支持部、329…栓、331…オーバーフロー領域、332…フィルタ取り付け部、333…フィルタ、334…先端領域、340…底部、341…壁部、342…第一の領域、343…第二の領域、344…中間領域、345・346・347…貫通孔、348・353・767・787・789…ノズル、350…ボルト孔、351…先端領域、352…ノズル保持部、357…ハンドル、359…シール部材、355…軸、361…保持ブロック、362…モータ、363・364・365・366・367…ギア、371・372・373・374…プーリ、375・376…回転ベルト、381…ピンチローラ、721・722…ドレンパイプ、723…バルブ、724…排水槽、743…スリット、745…排液口、741・751・752…仕切り、753…空間、761…冷却ユニット、762…冷水タンク、763…冷水機、764・765・766・784・785・786・788…配管、781…加温ユニット、782…温水タンク、783…ヒーター、801…台座、802…スライドブロック、803…ベアリング、804…スライドレール、805…モータ、B1~B5…バルブ、P1~P5…ポンプ、S1~S4…水位センサ、T1~T4…温度センサ
【要約】
【課題】標本ブロックから切り出された薄切片を、基板によって掬い取られる位置まで、適切な向きを維持したまま水流によって搬送することができる薄切片搬送装置等を提供する。
【解決手段】薄切片搬送装置は、標本ブロックから薄切された薄切片を基板上に転写する薄切標本作製システムにおいて、薄切片を搬送する薄切片搬送装置であって、標本ブロックを薄切する薄切刃の下流側に配置され、底部と、該底部に接続された互いに対向する2つの壁部とを有し、該2つの壁部の間を液体が流れるように構成された水路と、2つの壁部に沿って設けられた2組の回転ベルトであって、2つの壁部の間においてそれぞれのベルト面が所定の間隔を空けて互いに対向するように配置され、互いに対向しているベルト部分が水路の下流側に向かって移動するように構成された2組の回転ベルトとを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C