(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】抗GITR抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250423BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250423BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250423BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250423BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250423BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2023569897
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2022006697
(87)【国際公開番号】W WO2022240161
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060012
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523425120
【氏名又は名称】メディマブバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDIMABBIO INC.
【住所又は居所原語表記】#721, 54, Changeop-ro, Sujeong-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ユヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ホンソク
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526615(JP,A)
【文献】特表2020-510435(JP,A)
【文献】特表2019-537449(JP,A)
【文献】特表2017-523771(JP,A)
【文献】特表2013-503632(JP,A)
【文献】Adam D. COHEN et al.,“Agonist Anti-GITR Monoclonal Antibody Induces Melanoma Tumor Immunity in Mice by Altering Regulatory T Cell Stability and Intra-Tumor Accumulation”,PLoS ONE,2010年05月03日,Vol. 5, No. 5, e10436,pp. 1-12,DOI: 10.1371/journal.pone.0010436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K、C12N
DB名 JSTPlus/JMEDPlus
/JST7580(JDreamIII),
BIOSIS/MEDLINE/CAplus
/EMBASE(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)
を含む、抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号7、8または9のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号10、11、または12のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)
を含む、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号13、14、15、16、17、または18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
配列番号19、20、21、22、23、または24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
GITRタンパク質のアミノ酸残基92-132のうちから選択された一つ以上のアミノ酸残基に結合する、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗GITR抗体は、動物抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗GITR抗体またはその抗原結合断片は抗原結合断片であり、前記抗原結合断片は、前記抗GITR抗体のscFv、scFv-Fc、(scFv)2、Fab、Fab’、またはF(ab’)2である、請求項1に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片を含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記癌は、固形癌または血液癌である、請求項8に記載の癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片を含む、免疫増強用薬学組成物。
【請求項11】
免疫細胞活性化、調節T細胞抑制、および免疫タンパク質生産増加のうちから選択された一つ以上の活性を有する、請求項10に記載の免疫増強用薬学組成物。
【請求項12】
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の抗GITR抗体またはその抗原結合断片を含む、免疫関連疾病の予防または治療用薬学組成物。
【請求項13】
前記免疫関連疾病は、感染性疾患、炎症性疾患、または自己免疫疾患である、請求項12に記載の免疫関連疾病の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年5月10日付大韓民国特許出願第10-2021-0060012号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
新規な抗GITR抗体およびその免疫増強、抗癌および免疫関連疾病の予防および/または治療用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
癌免疫療法は体内免疫作用を用いて癌を治療する方法で、化学療法、外科療法、放射線療法に次いで癌の第4治療法と呼ばれる。癌免疫療法は、免疫系を活性化させて腫瘍細胞に対する認識および反応を増加させるメカニズムを必要とする。免疫系活性化は、抗原-特異的反応の開始に重要な抗原-提示細胞および腫瘍細胞破壊を担当するエフェクター(effector)細胞などのような多様な細胞の機能を伴う複雑なメカニズムである。
【0004】
一方、GITR(グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質)は腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーの一員で、T細胞を活性化して免疫反応を促進する役割を果たす。
【0005】
したがって、GITR作用を活性化して免疫増進効果を有する薬物の開発が要求される。
【発明の概要】
【0006】
GITRに結合する抗GITR抗体またはその抗原結合断片、およびその医薬用途が提供される。
【0007】
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、GITRに対して作動薬(agonist)として作用するものであってもよい。
【0008】
一例は、GITRに結合する抗GITR抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0009】
抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、および配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)を含む重鎖相補性決定領域領域(Complementarity Determining Regions;CDRs)または重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域;および
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)を含む軽鎖相補性決定領域または軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0010】
一例で、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)は配列番号7、8または9のアミノ酸配列を含むものであってもよく、配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)は配列番号10、11、または12のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0011】
一具体例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号13、14、15、16、17、または18のアミノ酸配列を含むの重鎖可変領域;および
配列番号19、20、21、22、23、または24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0012】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む免疫増強剤または免疫増強用薬学組成物を提供する。
【0013】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む抗癌剤または癌の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫増強を必要とする対象に投与する段階を含む免疫増強方法を提供する。
【0016】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む免疫関連疾病の予防および/または治療方法を提供する。
【0017】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を有効性分として含む癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。
【0018】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の免疫増強用途または免疫増強剤製造のための用途を提供する。
【0019】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の免疫関連疾病の予防および/または治療のための用途または免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物の製造のための用途を提供する。
【0020】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の癌の予防および/または治療のための用途または癌の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0021】
他の例は、抗GITR抗体の重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0022】
他の例は、抗GITR抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0023】
他の例は、抗GITR抗体の重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子および抗GITR抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を一つのベクターに共に含むか、それぞれ別個のベクターに含む組換えベクターを提供する。組換えベクターは、核酸分子の発現のための発現ベクターであってもよい。
【0024】
他の例は、組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0025】
他の例は、核酸分子を宿主細胞で発現させる段階を含む抗GITR抗体またはその抗原結合断片の生産方法を提供する。核酸分子を宿主細胞で発現させる段階は、核酸分子またはこれを含む組換えベクターを含む細胞を培養する段階を含むものであってもよい。方法は、発現させる段階以後に培地から抗体を分離および/または精製する段階を追加的に含むことができる。
【0026】
本明細書で、GITRに結合する抗GITR抗体またはその抗原結合断片、およびこれらの医薬用途が提供される。抗GITR抗体またはその抗原結合断片はGITRに対して作動薬(agonist)として作用することによって、免疫を活性化(e.g.、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有し、多様な免疫活性化剤および/または免疫治療剤として適用できる。
【0027】
本明細書で、用語「GITR(glucocorticoid-induced TNFR-related protein)」は、GITRリガンド(GITR-L)に結合するTNF-受容体スーパーファミリーの構成員のうちの一つの受容体を称する。GITRはまた、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、構成員18(TNFRSF18)、AITRおよびCD357とも称することができる。GITRは細胞によって自然発現されるGITRだけでなく、その任意の変異体またはイソ型を含むことができる。一例で、GITRはヒトGITRまたはそのイソ型であってもよく、例えば、UniProt Accession No.Q9Y5U5-1(NCBI Accession No.NP_004186.1;NM_004195.3によって暗号化される)、NCBI Accession No.NP_683699.1(NM_148901.2によって暗号化される)、NCBI Accession No.NP_683700.1(NM_148902.1によって暗号化される)などであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1a】一実施例によるキメラおよびヒト化抗体の重鎖(1a)および軽鎖(1b)の配列整列結果を示す。
【
図2】一実施例による抗GITR抗体のエピトープマッピング結果を示す。
【
図3a】一実施例による抗GITR抗体の抗原(ヒトGITR)に対する結合力を示すグラフである。
【
図3b】一実施例による抗GITR抗体のヒト初代免疫細胞でのGITRに対する結合度を示すグラフである。
【
図4】一実施例による抗GITR抗体のGITR作用性効能を示すグラフである。
【
図5a】一実施例による抗GITR抗体処理時のヒト初代T細胞のサイトカイン生産水準を示すグラフであって、CD4+ T細胞でのIL-2水準を示す。
【
図5b】一実施例による抗GITR抗体処理時のヒト初代T細胞のサイトカイン生産水準を示すグラフであって、CD4+ T細胞でのIFN-gamma水準を示す。
【
図5c】一実施例による抗GITR抗体処理時のヒト初代T細胞のサイトカイン生産水準を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIL-2水準を示す。
【
図5d】一実施例による抗GITR抗体処理時のヒト初代T細胞のサイトカイン生産水準を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIFN-gamma水準を示す。
【
図6】一実施例による抗GITR抗体のヒトT細胞でのサイトカイン生産増加効果を示すグラフである。
【
図7a】一実施例による抗GITR抗体のNK細胞増殖効果を示すものであって、分離されたNK細胞の増殖水準を示す。
【
図7b】一実施例による抗GITR抗体のNK細胞増殖効果を示すものであって、NK細胞含有PBMCの増殖水準を示す。
【
図8】一実施例による抗GITR抗体のT細胞増殖効果を示すグラフである。
【
図9a】一実施例による抗GITR抗体処理時のNK細胞表面でのCD107a発現水準を示すグラフである。
【
図9b】一実施例による抗GITR抗体処理時のTreg細胞数を示すグラフである。
【
図10a】一実施例による抗GITR抗体の腫瘍細胞(卵巣癌細胞)死滅効果を示すグラフである。
【
図11】一実施例による抗GITR抗体の大腸癌患者から分離されたT細胞でのサイトカイン生産増加効果を示すグラフである。
【
図12】一実施例による抗GITR抗体の肺癌患者から分離されたT細胞でのサイトカイン生産増加効果を示すグラフである。
【
図13】一実施例による抗GITR抗体の肝癌患者から分離されたT細胞でのサイトカイン生産増加効果を示すグラフである。
【
図14】一実施例による抗GITR抗体処理時の腫瘍動物モデルでの腫瘍大きさ変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、より詳しく説明する。
【0030】
抗体または抗原結合断片
一例は、GITRに結合する抗GITR抗体またはその抗原結合断片を提供する。
抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)
を含むものであってもよい。
【0031】
一例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号7、8または9のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号10、11、または12のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)
を含むものであってもよい。
【0032】
具体例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むものであってもよい。
【0033】
本明細書において、相補性決定領域(CDR)はkabat systemによるCDR定義を基準にして決定される。
【0034】
一具体例で、本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片に含むことができる6個CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を下記の表1に整理した。
【0035】
【0036】
一例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1(例えば、配列番号7、8、または9)のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含む重鎖可変領域、および
配列番号4のCDR-L1、配列番号5(例えば、配列番号10、11、または12)のCDR-L2、および配列番号6のCDR-L3を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0037】
一具体例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、および
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、および
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域;または
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、および
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0038】
一例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号13、14、15、16、17、または18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
配列番号19、20、21、22、23、または24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0039】
一具体例で、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は以下のものを含むものであってもよい。
配列番号13の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域;
配列番号14の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域;
配列番号15の重鎖可変領域および配列番号21の軽鎖可変領域;
配列番号16の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域;
配列番号17の重鎖可変領域および配列番号23の軽鎖可変領域;または
配列番号18の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域。
【0040】
場合によって(例えば、組換え的に製作時)、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域はN末端に適切なシグナル配列を追加的に含むことができる。
【0041】
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片に含むことができる重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を下記の表2に例示した。
【0042】
【0043】
一例で、本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片はGITRタンパク質、例えば、ヒトGITRタンパク質(配列番号33のアミノ酸残基26-241領域;アミノ酸残基1-25はシグナル配列である)のアミノ酸残基92~132領域内一つ以上のアミノ酸に結合するものであってもよく、例えば、アミノ酸残基92-96(SGTFS、配列番号34)、107-116(TDCTQFGFLT、配列番号35)、および122-132(KTHNAVCVPGS、配列番号36)のうちから選択された一つ以上の領域および/または領域内一つ以上のアミノ酸に結合するものであってもよく、少なくとも、92S(92番目アミノ酸残基のSer(S)、以下、同一に解釈)、96S、107T、110T、116T、122Kおよび132Sからなる群より選択された一つ以上に結合するものであってもよいが、これに制限されるわけではない(ヒトGITRのアミノ酸残基位置はシグナル配列(1-25)を除いた26番目アミノ酸残基から起算する)。
【0044】
[ヒトGITR(UniProt Q9Y5U5-1、配列番号33、アミノ酸残基1-25領域(イタリック体)はシグナル配列である)]
【化1】
【0045】
本明細書で「抗体」とは、特定抗原に特異的に結合するタンパク質を総称するものであって、免疫系内で抗原の刺激によって作られるタンパク質またはこれを化学的合成または組換え的に製造したタンパク質であってもよく、その種類は特に制限されない。抗体は、非自然的に生成されたもの、例えば、組換え的または合成的に生成されたものであってもよい。抗体は、動物抗体(例えば、マウス抗体など)、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であってもよい。抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。
【0046】
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片で、先に定義した重鎖CDRおよび軽鎖CDR部位、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域を除いた残り部位は全てのサブタイプの免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、など)に由来したものであってもよく、例えば、全てのサブタイプの免疫グロブリンのフレームワーク部位、および/または軽鎖定常領域および/または重鎖定常領域に由来したものであってもよい。一例で、本明細書で提供される抗GITR抗体はヒトIgG型抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4形態の抗体であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0047】
完全な抗体(例えば、IgG型)は2つの全長(full length)軽鎖および2つの全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖と二硫化結合で連結されている。抗体の定常領域は重鎖定常領域と軽鎖定常領域に分けられ、重鎖定常領域はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域はカッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0048】
一例で、本明細書で提供される抗GITR抗体は重鎖定常領域としてIgGの定常領域、軽鎖定常領域としてカッパ定常領域を含むことができるが、これに制限されるわけではない。
【0049】
一具体例で、IgG(例えば、ヒトIgG1)の定常領域は野生型であってもよい。他の具体例で、IgGの定常領域は、ヒトIgG1を基準にして、N298A(298番目アミノ酸であるNがAに置換される)の変異を含む変異型であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0050】
用語、「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVHおよび3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3とヒンジ(hinge)を含む全長重鎖およびその断片を全て含む意味として解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVLおよび定常領域ドメインCLを含む全長軽鎖およびその断片を全て含む意味として解釈される。
【0051】
用語、「CDR(complementarity determining region)」は抗体の可変部位中の抗原との結合特異性を付与する部位を意味するものであって、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖および軽鎖はそれぞれ3つのCDRを含むことができる(CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL1、CDRL2、CDRL3)。CDRは、抗体が抗原またはエピトープに結合することにおいて主要な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語、「特異的に結合」または“特異的に認識”は当業者に通常公知されている意味と同一なものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応を行うことを意味する。
【0052】
本明細書に記載された相補性決定領域(CDR)は、kabat systemによるCDR定義を基準にして決定されたものである。
【0053】
本明細書で抗体は、特別な言及がない限り、抗原結合能を保有する抗体の抗原結合断片を含むものと理解できる。
【0054】
用語、「抗原結合断片」は、抗原が結合できる部分(例えば、本明細書で定義された6つのCDR)を含む全ての形態のポリペプチドを意味する。例えば、抗体のscFv、scFv-Fc、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2であってもよいが、これに限定されない。
【0055】
抗原結合断片のうち、Fabは軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域および重鎖の一番目定常領域(CH1)を有する構造で1つの抗原結合部位を有する。
【0056】
Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点からFabと差がある。
【0057】
F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fvは重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体断片で、Fv断片を生成する組換え技術は当業界に広く公知されている。
【0058】
二重鎖Fv(two-chain Fv)は非共有結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は一般にペプチドリンカーを通じて重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合で連結されるかまたはC-末端で直ちに連結されていて二重鎖Fvのようにダイマーのような構造を成すことができる。
【0059】
抗原結合断片はタンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)2断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術を通じて製作することができる。
【0060】
用語「ヒンジ領域(hinge region)」は抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1およびCH2領域の間に存在し、抗体内抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能を果たす領域を意味する。
【0061】
本明細書で提供される抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、当業界に広く知られた方法通りに製造できる。例えば、ファージディスプレイ技法を用いて製造できる。または、抗体は、通常の方法によって動物(例えば、マウス)由来のモノクローナル抗体から製造できる。
【0062】
一方、典型的なELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)フォーマットを用いてGITRの受容体結合ドメインとの結合能に基づいて個別モノクローナル抗体をスクリーニングすることができる。結合体に対して分子的相互作用を検定するための競争的ELISA(Competitive ELISA)のような機能性分析または細胞ベースアッセイ(cell-based assay)のような機能性分析を通じて阻害活性に対して検定することができる。その後、強い阻害活性に基づいて選択されたモノクローナル抗体メンバーに対してGITRの受容体結合ドメインに対するそれぞれの親和度(Kd値)を検定することができる。
【0063】
最終選択された抗体は、抗原結合部位を除いた残り部分がヒトの免疫グロブリン抗体化された抗体だけでなく、ヒト化抗体として製造して使用することができる。ヒト化抗体の製造方法は当業界によく知られている。
【0064】
本明細書で提供される抗GITR抗体の抗原結合断片は抗GITR抗体に由来し抗原(GITR)に対する結合力を保有する断片を意味するものであって、抗GITR抗体の6つのCDRを含む任意のポリペプチド、例えば、scFv、scFv-Fc、scFv-Ck(カッパ定常領域)、scFv-Cλ(ラムダ定常領域)、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2であってもよいが、これに限定されるのではない。一例で、抗原結合断片はscFv、またはscFvが免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)のFc部位と融合された融合ポリペプチド(scFv-Fc)または軽鎖の定常領域(例えば、カッパまたはラムダ)と融合された融合ポリペプチド(scFv-CkまたはscFv-Cλ)であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0065】
本明細書で、抗体(例えば、CDR、可変領域、または重鎖/軽鎖、抗原結合断片など)が「特定アミノ酸配列を含む、または特定アミノ酸配列からなるまたは表現される」とは、アミノ酸配列を必須的に含む場合、およびアミノ酸配列に抗体活性(例えば、抗原親和度、薬理的活性など)に有意な影響がない無意味な変異(例えば、アミノ酸残基の置換、欠失、および/または追加)が導入された場合を全て意味するものであってもよい。
【0066】
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片はGITR(e.g.、ヒトGITR)に対する結合親和度(KD)が、例えば、表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR;例:Biacore)で測定された場合を基準にして、10mM以下、5mM以下、1mM以下、0.5mM以下、0.2mM以下、0.1mM以下、0.05mM以下、0.01mM以下、0.005mM以下、または0.001mM以下であってもよく、例えば、0.0001nM~10mM、0.0005nM~10mM、0.001nM~10mM、0.005nM~10mM、0.01nM~10mM、0.05nM~10mM、0.1nM~10mM、0.5nM~10mM、1nM~10mM、0.0001nM~5mM、0.0005nM~5mM、0.001nM~5mM、0.005nM~5mM、0.01nM~5mM、0.05nM~5mM、0.1nM~5mM、0.5nM~5mM、1nM~5mM、0.0001nM~1mM、0.0005nM~1mM、0.001nM~1mM、0.005nM~1mM、0.01nM~1mM、0.05nM~1mM、0.1nM~1mM、0.5nM~1mM、1nM~1mM、0.0001nM~0.5mM、0.0005nM~0.5mM、0.001nM~0.5mM、0.005nM~0.5mM、0.01nM~0.5mM、0.05nM~0.5mM、0.1nM~0.5mM、0.5nM~0.5mM、1nM~0.5mM、0.0001nM~0.2mM、0.0005nM~0.2mM、0.001nM~0.2mM、0.005nM~0.2mM、0.01nM~0.2mM、0.05nM~0.2mM、0.1nM~0.2mM、0.5nM~0.2mM、1nM~0.2mM、0.0001nM~0.1mM、0.0005nM~0.1mM、0.001nM~0.1mM、0.005nM~0.1mM、0.01nM~0.1mM、0.05nM~0.1mM、0.1nM~0.1mM、0.5nM~0.1mM、1nM~0.1mM、0.0001nM~0.05mM、0.0005nM~0.05mM、0.001nM~0.05mM、0.005nM~0.05mM、0.01nM~0.05mM、0.05nM~0.05mM、0.1nM~0.05mM、0.5nM~0.05mM、1nM~0.05mM、0.0001nM~0.01mM、0.0005nM~0.01mM、0.001nM~0.01mM、0.005nM~0.01mM、0.01nM~0.01mM、0.05nM~0.01mM、0.1nM~0.01mM、0.5nM~0.01mM、または1nM~0.01mMであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0067】
他の例で、先に説明した抗GITR抗体の重鎖相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、またはこれらの組み合わせ)、軽鎖相補性決定領域(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、またはこれらの組み合わせ)、またはこれらの組み合わせ;または重鎖可変領域、軽鎖可変領域、またはこれらの組み合わせを含むポリペプチド分子が提供される。
【0068】
ポリペプチド分子は、抗体の前駆体として抗体製作に使用できるだけでなく、抗体と類似の構造を有するタンパク質骨格体(protein scaffold;例えば、ぺプチボディー、ナノボディー、など)、二重特異抗体、多重特異抗体の構成成分(例えば、CDRまたは可変領域)として含まれてもよい。
【0069】
用語「ぺプチボディー(peptide+antibody)」はペプチドと抗体のFc部分などの定常部位の全部または一部が融合された融合タンパク質であって、抗体と類似の骨格と機能を有するタンパク質を意味する。ここで、先に説明した1種以上のペプチドが抗原結合部位(重鎖および/または軽鎖CDRまたは可変領域)として作用できる。
【0070】
用語「ナノボディー」は単一ドメイン抗体(single-domain antibody)とも呼ばれ、抗体の単一可変ドメインをモノマー形態で含む抗体断片を意味し、完全な構造の抗体と同様に特定抗原に対して選択的に結合する特性を有する。ナノボディーの分子量は一般に約12kDa~約15kDa程度で、完全な抗体(二つの重鎖と二つの軽鎖を含む)の一般的な分子量(約150kDa~約160kDa)と比較して非常に小さく、場合によってはFab断片やscFv断片より小さい。
【0071】
用語「多重結合抗体」(二重結合抗体を含む意味である)は2つまたはそれ以上の異なる抗原を認識および/または結合するか、同一抗原の互いに異なる部位を認識および/または結合する抗体を意味するもので、多重結合抗体のうちの一つの抗原結合部位が先に説明したGITRに結合するポリペプチド、抗体、または抗原結合断片を含むものであってもよい。
【0072】
本明細書に提供されるGITRに結合するポリペプチド、抗体、または抗原結合断片は、有用な重合体、標識物質などからなる群より選択された1種以上と接合された接合体(conjugate)形態で使用できる。
【0073】
有用な重合体は、例えば、ポリペプチド、抗体、および/または抗原結合断片の体内半減期を増加させる、タンパク質以外の重合体であってもよく、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を有するPEG)、デキストラン、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)などからなる群より選択された1種以上の親水性重合体を例示することができるが、これに制限されない。
【0074】
標識物質は、希土類キレート剤、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、オキサレートエステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、安定な遊離ラジカルなどからなる群より選択された1種以上の蛍光または化学発光性小分子化合物(chemical)、放射性同位元素などであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0075】
医薬用途
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、GITRに対して作動薬(agonist)として作用(GITR活性化)して免疫を活性化(e.g.、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有する。したがって、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、免疫増強、免疫関連疾病の予防および/または治療、特に癌の予防および/または治療に有用に適用できる。
【0076】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む免疫増強剤または免疫増強用薬学組成物を提供する。
【0077】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0078】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片を有効性分として含む抗癌剤または癌の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0079】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫増強を必要とする対象に投与する段階を含む免疫増強方法を提供する。免疫増強方法は、投与する段階以前に、免疫増強を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0080】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む免疫関連疾病の予防および/または治療方法を提供する。免疫関連疾病の予防および/または治療方法は、投与する段階以前に、免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0081】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。癌の予防および/または治療方法は、投与する段階以前に、癌の予防および/または治療を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0082】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の免疫増強用途または免疫増強剤製造のための用途を提供する。
【0083】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の免疫関連疾病の予防および/または治療のための用途または免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物の製造のための用途を提供する。
【0084】
他の例は、抗GITR抗体またはその抗原結合断片の癌の予防および/または治療のための用途または癌の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0085】
本明細書で、用語「免疫増強(または免疫強化)」は抗原に対する初期免疫反応を誘導するか既存の免疫反応を増加させることを意味することができ、免疫刺激、免疫強化、免疫活性化などの用語と同等な意味として互換できる。一例で、免疫増強は免疫細胞(エフェクターT細胞、例えば、細胞毒性T細胞;CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞など)機能強化(活性化)および/または増殖、調節T細胞(Treg)活性抑制および/または枯渇(depletion)、免疫タンパク質(例えば、サイトカインなど)生産および/または分泌増加などからなる群より選択された一つ以上を意味することができるが、これに制限されるわけではない。
【0086】
本明細書で、用語「免疫関連疾病」は免疫系の障害および/または不充分な活性によって誘発される全ての疾病を包括するもので、例えば、癌、感染疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患などからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0087】
癌は固形癌または血液癌であってもよく、これに制限されないが、扁平上皮細胞癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌など)、腹膜癌、皮膚癌、黒色腫(例えば、皮膚または眼球内黒色腫など)、直腸癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝癌、胃癌、膵臓癌、膠芽腫、頚部癌、卵巣癌、膀胱癌、乳癌、大腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌など)、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、頭頸部癌、脳癌、骨肉腫などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0088】
癌の予防および/または治療効果は癌細胞の発生および/または成長を抑制する効果だけでなく、移動(migration)、浸湿(invasion)、転移(metastasis)などによる癌の悪化を抑制する効果などを含む。
【0089】
感染性疾患、自己免疫疾患、および炎症性疾患は、先に説明した免疫強化(例えば、免疫細胞(エフェクターT細胞、例えば、細胞毒性T細胞;CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞など)機能強化(活性化)および/または増殖、調節T細胞(Treg)活性抑制および/または枯渇(depletion)、免疫タンパク質(例えば、サイトカイン(IL-2、IFN-gammaなど)など)生産および/または分泌増加など)によって治療、緩和、および/または予防可能な全ての感染性疾患、自己免疫疾患、および炎症性疾患のうちから選択されたものであってもよい。例えば、感染性疾患はウイルス、細菌、真菌、寄生虫のように疾病を起こす病原体が生物体(例、人間を含む動物)内に伝播、侵入して発生する疾病を総称するもので、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などからなる群より選択された一つ以上の病原体の感染または感染による疾病(感染症)であってもよい。自己免疫疾患はリウマチ関節炎、1型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェット症候群、ループス、シェーグレン症候群、重症筋無力症、強皮症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、乾癬、白斑症、多発性硬化症、自己免疫性肝炎、自己免疫性腎臓炎、自己免疫性膵臓炎、自己免疫性脳炎、サイトカインストームなどからなる群より選択できるが、これに制限されるわけではない。炎症性疾患は炎症(例、慢性炎症または急性炎症)または炎症による疾病を総称するもので、例えば、心臓炎症(例、冠状動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心臓膜炎、心筋炎など)、血管炎症(例、粥状硬化症、血管炎、播種性血管内凝固(DIC)、免疫性血小板減少紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、貧血など)、上気道炎症(例、急性鼻咽頭炎、アレルギー鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎など)、下気道および/または肺炎症(例、気管支炎、気管支拡張症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、てんかん性肺疾患、結核など)、上部胃腸管炎症(例、胃炎、食道炎など)、下部胃腸管炎症(例、小腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病、憩室炎、過敏性大腸症候群、虫垂炎、痔瘻など)、肝、胆道および/または膵臓炎症(例、肝炎、脂肪肝、胆管炎、胆嚢炎、膵臓炎、第1型糖尿病など)、腎臓(上部尿路)炎症(例、腎盂腎炎、糸球体腎炎、尿路感染症など)、下部尿路炎症(例、尿路感染症、尿管炎、尿道炎、膀胱炎、前立腺炎/慢性骨盤痛症候群など)、甲状腺および/または副甲状腺炎症(例、甲状腺炎、副甲状腺炎など)、副腎炎症(例、副腎炎など)、生殖器官炎症(例、骨盤内炎症性疾患、卵巣炎、睾丸炎、副睾丸炎など)、骨および/または関節炎症(例、骨関節炎、リウマチ関節炎、骨髄炎、滑膜炎など)、皮膚炎症(例、皮膚:蜂巣炎、丹毒(Erysipelas)、癜風、水虫、にきびなど)、筋肉炎症(例、筋炎など)、脳炎症(例、脳炎、大鬱病性障害など)、神経炎症(例、目、耳など多様な部位の神経炎、複合性局所疼痛症候群、ギランバレー症候群など)、目炎症(例、麦粒腫、ぶどう膜炎、結膜炎など)、耳炎症(例、中耳炎、乳様突起炎など)、口腔炎症(例、口内炎、歯周炎、歯肉炎など)、全身性炎症(例、全身性炎症反応症候群(敗血症など)、代謝症候群関連疾患など)、腹膜炎、再かん流傷害、移植拒絶反応、過敏反応などからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0090】
本明細書で提供される抗GITR抗体、その抗原結合断片、および/またはこれを含む薬学組成物の投与対象は全ての動物または細胞であってもよく、例えば、人間、猿などの霊長類、ラット、マウス、などの齧歯類などを含む哺乳類から選択される動物、または動物に由来する(分離された)細胞、組織、体液(例えば、血清)、またはその培養物であってもよく、例えば、人間または人間から分離された細胞、組織、体液(例えば、血清)であってもよい。
【0091】
薬学的組成物は、有効成分としての抗GITR抗体またはその抗原結合断片に加えて、薬学的に許容可能な担体を追加的に含むことができ、担体はタンパク質薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるのではない。薬学的組成物はまた、薬学組成物製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0092】
抗GITR抗体、その抗原結合断片および/または薬学組成物の投与は、経口または非経口経路を通じて行うことができる。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与および直臓内投与などで投与することができる。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするか胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。
【0093】
また、抗GITR抗体、その抗原結合断片および/または薬学組成物はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤、注射剤などの形態に剤形化でき、剤形化のために分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0094】
薬学組成物内の有効成分である抗GITR抗体またはその抗原結合断片の含有量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方できる。薬学組成物の1日投与量は、有効成分(抗GITR抗体またはその抗原結合断片)を基準にして0.00001~1000mg/kg、0.00001~500mg/kg、0.00001~100mg/kg、0.00001~50mg/kg、0.0001~1000mg/kg、0.0001~500mg/kg、0.0001~100mg/kg、0.0001~50mg/kg、0.001~1000mg/kg、0.001~500mg/kg、0.001~100mg/kg、0.001~50mg/kg、0.01~1000mg/kg、0.01~500mg/kg、0.01~100mg/kg、0.01~50mg/kg、0.1~1000mg/kg、0.1~500mg/kg、0.1~100mg/kg、または0.1~50mg/kg範囲であってもよいが、これに制限されるわけではない。1日投与量は単位容量形態で一つの製剤として製剤化されるか、適切に分量して製剤化されるか、多用量容器内に入れて製造できる。また、本明細書で薬学的有効量は有効成分が目的とする薬学的活性を示すことができる有効成分の量を意味するもので、投与量範囲であってもよい。
【0095】
ポリヌクレオチド、発現ベクター、および抗体の製造
他の例は、抗GITR抗体の重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子を提供する。一例で、核酸分子は、配列番号8または配列番号12の核酸配列を含むものであってもよい。
【0096】
他の例は、抗GITR抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を提供する。一例で、核酸分子は、配列番号10または配列番号14の核酸配列を含むものであってもよい。
【0097】
他の例は、抗GITR抗体の重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子および抗GITR抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を一つのベクターに共に含むか、それぞれ別個のベクターに含む組換えベクターを提供する。組換えベクターは、核酸分子の発現のための発現ベクターであってもよい。
【0098】
他の例は、組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0099】
用語「ベクター(vector)」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクターおよびバクテリオファージベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。組換えベクターとして使用できるベクターは、当業界で時々使用されるプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズおよびpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1およびM13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を操作して製作できる。
【0100】
組換えベクターで、核酸分子はプロモーターに作動可能に連結できる。用語“作動可能に連結された(operatively linked)”は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プロモーター配列)と他のヌクレオチド配列の間の機能的な結合を意味する。調節配列は、「作動可能に連結(operatively linked)」されることによって他のヌクレオチド配列の転写および/または解読を調節することができる。
【0101】
組換えベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築できる。発現用ベクターは、当業界で植物、動物または微生物で外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。組換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を通じて構築できる。
【0102】
組換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にして構築できる。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主にする場合には、転写を行わせることができる強力なプロモーター(例えば、pLλプロモーター、CMVプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位および転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主にする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点はf1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点、およびBBV複製原点などを含むが、これに限定されるのではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、およびHSVのtkプロモーター)が使用でき、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般に有する。
【0103】
組換え細胞は、組換えベクターを適切な宿主細胞に導入させることによって得られたものであってもよい。宿主細胞は組換えベクターを安定的且つ連続的にクローニングまたは発現させることができる細胞として当業界に公知されたいかなる宿主細胞も用いることができ、原核細胞としては、例えば、E.coli JM109、E.coli BL21、E.coli RR1、E.coli LE392、E.coli B、E.coli X1776、E.coli W3110、バチルスサブティリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバシラス属菌株、そしてサルモネラティフィムリウム、セラチアマルセッセンス、および多様なシュードモナス種のような臓内菌と菌株などがあり、真核細胞に形質転換させる場合には、宿主細胞として、酵母(Saccharomyce cerevisiae)、昆虫細胞、植物細胞および動物細胞、例えば、Sp2/0、CHO(Chinese hamster ovary) K1、CHO DG44、CHO S、CHO DXB11、CHO GS-KO、PER.C6、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、Huh7、3T3、RIN、MDCK細胞株などが使用できるが、これに制限されるわけではない。
【0104】
核酸分子またはこれを含む組換えベクターの宿主細胞内への運搬(導入)は、当業界に広く知られた運搬方法を使用することができる。運搬方法は例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、CaCl2方法または電気穿孔方法などを使用することができ、宿主細胞が真核細胞である場合には、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法および遺伝子ボンバードメントなどを使用することができるが、これに限定しない。
【0105】
形質転換された宿主細胞を選別する方法は選択標識によって発現される表現型を用いて、当業界に広く知られた方法によって容易に実施することができる。例えば、選択標識が特定抗生剤耐性遺伝子である場合には、抗生剤が含まれている培地で形質転換体を培養することによって形質転換体を容易に選別することができる。
【0106】
他の例は、核酸分子を宿主細胞で発現させる段階を含む抗GITR抗体またはその抗原結合断片の生産方法を提供する。核酸分子を宿主細胞で発現させる段階は、核酸分子またはこれを含む組換えベクターを含む細胞を培養する段階を含むものであってもよい。製造方法は、培養する段階以後に、任意に、培養培地から抗体または抗原結合断片を分離および/または精製する段階を追加的に含むことができる。
【0107】
本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、GITRに対して作動薬(agonist)として作用して免疫を活性化(例えば、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有し、多様な免疫活性化剤および/または免疫治療剤として適用できる。
【0108】
以下では実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのではない。下記の実施例は発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形できるのは当業者において自明である。
【実施例】
【0109】
実施例1:抗GITR抗体の製作
1.1.抗GITRモノクローナル抗体の生成
10匹のマウス(5 Balb/c及び5 C57/bl6)を免疫原(GITRタンパク質、純度>90%、哺乳動物で発現されたもの;Genscript)で免疫化させた。
免疫化スケジュールは以下の通りである:
初代免疫:1匹当たり50μgのヒトGITRタンパク質のs.c.注射(Q9Y5U5-1);
1回目のブースター:T=14日、1匹当たり25μgのヒトGITRタンパク質のi.p.注射;
2回目のブースター:T=28日、1匹当たり25μgのヒトGITRタンパク質のi.p.注射;および
最後のブースター:T=56±7日、1匹当たり25μgのヒトGITRタンパク質のi.p.注射。
【0110】
細胞融合およびスクリーニング
免疫化されたマウスの脾臓からBリンパ球を収集し、これをSP2/0骨髄腫細胞と融合させて(Cell fusion)ハイブリドーマを製作した。細胞融合は電気細胞融合によって行った。融合効率は大略1のハイブリドーマ/3000のB細胞程度に観察された。それぞれの細胞融合から得られた全ての融合された細胞を96ウェルプレートにプレーティングした。各融合で最大50個プレートを使用した。
【0111】
その後、タンパク質1次スクリーニングおよびFACS確認スクリーニングを行った。タンパク質1次スクリーニングは免疫化抗原(可溶性GITRタンパク質)に対するELISAによって行った。GITRを安定的に発現する細胞株(Genscript)を使用してFACSを行って、1次スクリーニング結果から陽性の上澄みをスクリーニングした。
【0112】
その後、リガンド結合スクリーニングを行った。スクリーニングされた陽性クローンをELISAによってスクリーニングして、クローンがGITRがGITRLに結合することを遮断するかまたは促進するかどうかをチェックした。特定specific 陽性クローンを選定して次のone-round subcloningに使用した。
【0113】
サブクローニング及び拡張
1ラウンドのサブクローニングおよびハイブリドーマ培養上清液の収集:選定されたクローン(親クローン)それぞれのモノクロ-ナル細胞を試験試料用として選定した。24ウェルプレートからそれぞれの拡張クローン(expanded clone)の培養上清液を1mlの量で収集し、培養上清液中の抗体濃度を測定した。
【0114】
Subcloning:選択されたそれぞれの融合から得られたpositive 初代 clonesをlimiting dilutionによってサブクローニングしてサブクローンが単一母細胞に由来したものであるのを確実にした。クローンを最大3世代まで伝達した。
【0115】
サブクローニングとスクリーニング:サブクローニングされたサブクローンをELISAまたはHTP FACSによってスクリーニングした。
【0116】
ハイブリドーマ組織培養の上清液を2ラウンドの間接ELISA(indirect ELISA)を使用して免疫原(Genscript)に対してスクリーニングした。陽性クローンに対して間接ELISAを使用する競合アッセイ(competition assay)を通じてリガンド結合抑制を追加的に試験した。選択されたクローンをGITR過発現CHO細胞と共に培養しFACSを行ってGITR結合を試験した。
【0117】
完全サブクローニング:各細胞融合から得られた選別されたモノクローンに対してサブクローニングを追加的に2ラウンド行って安定なサブクローンを得た。
【0118】
抗体配列シーケンシング
TRIzol(登録商標)試薬(Ambion、 Cat.15596-026)を使用して製造者技術指針に従ってハイブリドーマ細胞から総 RNAを分離した。その後、PrimeScriptTM 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Takara、 Cat.6110A)を使用して製造者技術指針に従ってユニバーサルプライマーまたはアイソタイプ特異的抗センスプライマーを使用して総RNAをcDNAに逆転写した。重鎖および軽鎖の抗体断片を増幅しそれぞれ標準クローニングベクターにクローニングした。コロニーColony PCRを行って正確な大きさの挿入体(insert)を有するクローンを選別した。
【0119】
選別されたクローンを代表して、抗GITRモノクローナル抗体クローン51Bの軽鎖および重鎖の可変領域のDNA配列およびアミノ酸配列分析結果を下記の表3に示した:
【0120】
【0121】
1.2.マウス抗GITRクローンのヒト化
Swiss PDBを使用して抗体可変領域(V regions)の構造モデルを生成し、抗体の結合特性に必須的である可能性があるV領域の重要な「拘束性(constraining)」の”アミノ酸を確認するための分析を行った。多数のフレームワーク残基と共にCDR(KabatおよびChothia定義両方とも使用)内に含まれている大部分の残基が重要なものと評価された。
【0122】
構造分析に基づいてヒト化変異体を生成するのに使用することができるヒト配列断片を選別し、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に結合するペプチドのin silico分析のためにiTope-AI technology(ABZENA plc)を使用して分析した。CDR外部および側面領域の場合、広範囲に選択されたヒト配列断片が新規なヒト化可変領域の構成要素として使用可能であると確認された反面、CDR領域の場合には使用可能な配列の選択範囲が縮小される。可能な場合、ヒトMHCクラスIIに対して有意な非ヒト生殖細胞系結合体と確認された配列断片は廃棄した。これによって断片セットが減少し、これら組み合わせを方法で再び分析して、断片の間の接合部が潜在的T細胞エピトープを含まないことを確認した。
【0123】
有意なT細胞エピトープがないか(可能な場合)減少した完全な可変領域配列を生成するために、選択された配列断片を組み立てた。5個の重鎖(VH1~VH5)および5個の軽鎖(VL1~VL5)配列は哺乳動物細胞発現用遺伝子合成およびペアリングのために設計された(表4)。
【0124】
一つのキメラ抗体(VH0/VL0)および25個ヒト化抗体を生成するための重鎖と軽鎖の組み合わせを下記の表4に例示的に示した。
【0125】
【0126】
表3の51Bクローンに表4の組み合わせを適用したキメラ抗体(VH0xVL0)およびヒト化抗体の配列を表5、表6、および
図1aおよび1bに示した。配列を表5、表6、および
図1a(重鎖可変領域)および1b(軽鎖可変領域)で、Kabat定義によりアミノ酸配列ナンバリングおよびCDR部位を決定し、
図1aおよび1bに上述したように決定されたCDRおよび親配列(VH0またはVL0)において変更されたアミノ酸残基を陰影で表示した。
【0127】
【0128】
【0129】
以下、実施例で、同一の軽鎖クローンがVLまたはVkで全て表示でき、例えば、VL0、VL1、VL2、VL3、VL4、およびVL5はそれぞれVk0、Vk1、Vk2、Vk3、Vk4、およびVk5と同一なクローンを指す。
【0130】
製作された抗体のうち、51B VH0/VL0キメラ抗体の重鎖のFc領域にN298A点変異を導入してFc組換え変異体を製作した。
【0131】
Fc組換え変異体を含む抗体の重鎖および軽鎖配列を表7に記載した。
【0132】
【0133】
1.3.キメラおよびヒト化IgG1抗体の一過性発現(Transient expression)
VH0/VL0キメラ抗体コードDNA、2個の対照抗体コードDNA、およびヒト化の重鎖および軽鎖コードDNAの組み合わせ(総25個ヒト化ペアリング)を6ウェルプレートを用い、PEIトランスフェクション方法でHEK293 EBNA付着細胞(LGC Standards、Teddington、UK)に一過性トランスフェクションさせた後、7日間培養した。サンプルを収集し、ヒトIgG1抗体を基準にして、Protein Aバイオセンサー(Molecular Devices、Wokingham、Berkshire、UK)を使用してOctet QK384上で抗体濃度を測定した。
【0134】
得られた結果を下記の表8に示した。
【0135】
【0136】
上記表8はキメラ抗体(VH0/VL0)および25個ヒト化抗体のHEK細胞での発現後の上澄み液内のIgG濃度(μg/mL)を示す。
【0137】
表8に示されているように、試験された全ての抗体が大体よく発現することを確認した。
【0138】
1.4.キメラおよびヒト化抗GITR抗体のSingle cycle kinetic analysis
選別された全ての変異体(ヒト化抗体)のヒトGITR抗原に対する結合を評価しキメラ(VH0/VL0)抗体に最も近い親和度を有する先導ヒト化IgG抗体を選別するために、形質感染された細胞培養物の上澄み液に対してシングルサイクル動力学的解析を行った。動力学実験は25℃温度条件下でBiacore 8K Control software V3.0.12.15655およびBiacore Insight Evaluation software V3.0.12.15655(Cytiva、Uppsala、Sweden)を実行するBiacore 8Kを使用して行った。
【0139】
1% BSA w/v(Sigma、Dorset、UK)(参照表面に対する非特異的結合を減少させるために)補充されたHBS-P+(Cytiva、Uppsala、Sweden)をランニングバッファーとして使用し、リガンドと分析物の希釈にも使用した。IgGを含む上澄み液をランニングバッファーで1μg/mLに希釈した。各サイクルの開始時に、Protein Aセンサーチップ(Cytiva、Little Chalfont、UK)のチャンネル1~8上のFc2にローディングした。IgG抗体を10μl/minの流速で捕獲して、固定水準(immobilisation level;RL)が~130RUになるようにした。その後、表面を安定化させた。
【0140】
潜在的質量伝達効果(mass transfer effects)を最少化するために40μl/min流速で注入された組換えヒトGITR(Cat No.13643-H08H、Lot No.LC12JA2509、Sino Biological、Beijing、China)を分析物(analyte)として使用してシングルサイクル動力学データを得た。抗原はランニングバッファーに0.6125nM~10nM濃度範囲で2倍ずつ希釈(5個地点)し、各濃度の間に再生が無いようにして使用した。抗原濃度が増加する5個地点のそれぞれの注入に対して200秒間の会合相をモニタリングし、最後の抗原注入以後600秒間の単一解離相を測定した。10mMグリシン(pH1.5)の単回注入によってセンサーチップ表面を再生させた。
【0141】
二重準拠センサーグラムはLangmuir(1:1)結合モデルでフィッティングし、実験曲線とフィットした(観測および予想)曲線の間の偏差を説明するChi二乗値を使用してモデルに対するデータの正確度(closeness)を評価した。フィッティングアルゴリズムはChi二乗値を最少化するようにした。
【0142】
得られた結果を表9に示した。
【0143】
【0144】
表9はBiacore 8Kを使用して測定されたヒトGITR抗原に結合するキメラ(VH0/VL0)およびヒト化変異体(細胞培養上澄み液で試験)のシングルサイクル動力学的パラメータを示す。相対KDは、ヒト化変異体のKDを同一実験で分析されたVH0/VL0キメラ抗体のKDで割って計算した。
【0145】
表9に示したように、試験された全てのヒト化変異体(抗体)のヒトGITRに対する結合と関連したKD値はVH0/VL0と比較して5.9倍以内と示された。相対的発現水準、ヒト化のパーセンテージ、MHCクラスII結合リスクおよび相対的KD値(上澄み液に対するBiacoreシングルサイクル動力学的解析で得られる)を考慮して、6個ヒト化変異体(VH3/VL1、VH3/VL3、VH3/VL4、VH3/VL5、VH4/VL3、およびVH4/VL4)を選択して以後熱安定性分析に使用した。
【0146】
1.5.熱安定性評価(Thermal Stability assessment)
本来状態から変性状態にアンフォールディング(unfolding)される温度から抗体の熱安定性情報を得るために、温度勾配安定性試験(Thermal ramp stability experiment)(TmおよびTagg)を行った。このようなアンフォールディング過程は狭い温度範囲で発生し、このような転移の中間地点を‘溶融温度’または‘Tm’という。この時、タンパク質が形態的変化を経るので、Sypro Range(タンパク質の露出された疎水性領域に結合する)の蛍光を測定して、タンパク質の溶融温度を決定した。
【0147】
サンプルをPBSで最終試験濃度である0.5mg/mlまで希釈し、SyproTM Orange(160xストック溶液;Sigma-Aldrich)を20x溶液の最終濃度で添加した。各サンプル混合物は9μLずつUNiマイクロキュベットに二回ずつローディングした。サンプルに対して15~95℃の温度勾配を実施した(勾配速度が0.3℃/分及び励起が473nm)。250~720nmで全体放出スペクトルを収集し、510-680nmの間の曲線下面積を使用して転移曲線の変曲点(TonsetおよびTm)を計算した。473nmで静的光散乱法(SLS)をモニタリングしてタンパク質凝集を検出し、Tagg(凝集開始)は結果SLSプロファイルから計算した。データ分析はUNcleTM software version 4.0(ABZENA)を使用して行った。
【0148】
上述したようにUNcle biostability platformを使用して得られたヒト化抗体およびキメラ抗体の熱安定性数値を表10に示した。
【0149】
【0150】
表10で確認されるように、大部分のヒト化抗体はキメラ抗体と同等以上の熱安定性を示した。
【0151】
1.6.マルチサイクル動力学的解析を用いたヒト化変異体の親和度測定
キメラ抗体と6個先導ヒト化変異体(VH3/VL1、VH3/VL3、VH3/VL4、VH3/VL5、VH4/VL3、およびVH4/VL4)のヒトGITR抗原に対する結合親和度を測定するために、精製されたタンパク質(抗体)に対するマルチサイクル動力学的解析を行った。動力学的実験は25℃でBiacore 8K Control software V3.0.12.15655およびBiacore Insight Evaluation software V3.0.12.15655(Cytiva、Uppsala、Sweden)を使用して行った。
【0152】
1% BSA w/v(Sigma、Dorset、UK)が補充されたHBS-EP+(Cytiva、Uppsala、Sweden)をランニングバッファーとして使用し、リガンドと分析物希釈にも使用した。精製された先導抗体をランニングバッファーで1μg/mLまで希釈し、各サイクルの開始時に、Protein Aセンサーチップ(Cytiva、Little Chalfont、UK)のチャンネル1~8上のFc2にローディングした。抗体を10μl/min流速でキャプチャーして固定化水準(RL)が~120RUになるようにした。その後、表面が安定化されるように置いた。
【0153】
潜在的物質移動効果を最少化するために30μl/分流速で注入された組換えヒトGITR(Sino Biological、Beijing、China)を分析物として使用してマルチサイクル動力学的データを得た。抗原(GITR)はランニングバッファーに1.25nM~40nM濃度範囲で2倍ずつ希釈(6個地点)した。各濃度で、210秒間、会合相をモニタリングし、1200秒間、解離相を測定した。10mMグリシン(pH1.5)を1回で注入してサイクルの間にセンサーチップ表面再生を行った。動力学的サイクルにわたって表面と分析物全ての安定性を確認するために、ブランクの多回反復および2つ濃度の分析物の反復を動力学的ランでプログラミングした。
【0154】
得られた結果のうちのキメラ抗体(VH0/VL0)と6個先導抗体に対する結果を表11に示した。
【0155】
【0156】
上記表11は、Biacore 8Kを使用して測定した精製された6個のヒト化抗体およびキメラ抗体(VH0/VL0)のヒトGITR抗原に対する結合パラメータを示す。
【0157】
表11に示されているように、試験された抗体全てヒトGITRに対する結合力が優れると示され、ヒト化抗体は全てVH0/VL0キメラ抗体と比較して1.5倍以内の高い結合力を示した。
【0158】
1.7.エピトープマッピング
高解像度でGITR/51B複合体のエピトープを決定するためにタンパク質複合体を重水素架橋剤と共にインキュベーションし、多重酵素切断(multi-enzymatic cleavage)を行った。このように架橋されたペプチドを強化した後、サンプルを高分解能質量分析器(nLC-Q-Exactive MS)で分析し生成されたデータをXQuestおよびStavroxソフトウェアを使用して分析した。
【0159】
分析は、nLCクロマトグラフィーをQ-Exactive質量分析装置と共に使用して行った。
【0160】
hGITR(His tag含む;Cat.GIR-H5228、Acrobiosystems)および51B抗体の混合物を下記の濃度で準備した。
【0161】
【0162】
上述したように準備したGITR/51B混合物20μLを室温で180分培養時間前にDSS d0/d12(2mg/mL、DMF)2μLと混合した後、室温で180分間培養した。培養後、重炭酸アンモニウム 1μL(最終濃度20mM)を添加して反応を中止させた後、室温で1時間培養した。その後、溶液をspeedvacで乾燥させた後、H2Oで8Mの尿素を懸濁した(20μL)。混合後、DTT(500mM)2μlを上記溶液に添加した。その後、混合物を37℃で1時間インキュベーションした。その後、ヨードアセトアミド(1M)2μlを添加した後、暗室および室温条件で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、タンパク質バッファー80μlを添加した。タンパク質バッファーにおいて、トリプシンバッファー(trypsin buffer)は50mMのAmbic pH8.5および5%のアセトニトリルを含み;キモトリプシンバッファー(Chymotrypsin buffer)はTris HCl 100mMおよびCaCl2 10mM pH7.8を含み;ASP-Nバッファーはリン酸バッファー 50mM pH7.8を含み;エラスターゼバッファーはTris HCl 50mM pH8.0を含み;サーモリシンバッファーはTris HCl 50mMおよびCaCl2 0.5mM pH9.0を含む。
【0163】
タンパク質分解酵素反応を以下の通り行った。
-トリプシンタンパク質分解(Trypsin Proteolysis)
準備された還元/アルキル化GITR/51B混合物 100μlをトリプシン(Promega)0.7μlと1/100の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベーションした。
【0164】
-キモトリプシンタンパク質分解(Chymotrypsin Proteolysis)
準備された還元/アルキル化GITR/51B混合物 100μlをキモトリプシン(Promega)0.5μlと1/200の比率で混合した。タンパク質分解混合物を25℃で一晩インキュベーションした。
【0165】
-ASP-N Proteolysis
準備された還元/アルキル化GITR/51B混合物 100μlをASP-N(Promega)0.5μlと1/200の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベーションした。
【0166】
-エラスターゼタンパク質分解(ElastaseProteolysis)
準備された還元/アルキル化GITR/51B混合物 100μlをエラスターゼ(Promega)0.7μlと1/100の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベーションした。
【0167】
-Thermolysin Proteolysis
準備された還元/アルキル化GITR/51B混合物 100μlをサーモリシン(Promega)1.4μlと1/50の比率で混合した。タンパク質分解混合物を70℃で一晩インキュベーションした。
【0168】
分解後、ホルム酸を最終濃度1%(v/v)の量で添加した。
【0169】
架橋ペプチドをXquest version 2.0を使用して分析した。
【0170】
タンパク質複合体GITR/51Bのトリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、およびサーモリシンタンパク質分解(重水素化d0d12使用)後、nLC-orbitrap MS/MS分析を通じてGITRと51Bの間に12個の架橋ペプチドを検出した。
【0171】
分析結果、GITRアミノ酸配列(配列番号33の26-241部位のアミノ酸配列)の92S(配列番号33の26番目アミノ酸から起算して、92番目アミノ酸残基であるSer(S)、以下、同一に解釈)、96S、107T、110T、116T、122Kおよび132Sは51B抗体と特異的に架橋されたことを確認し、下記のアミノ酸配列をGITR上のエピトープで確認した;
1)アミノ酸残基92-96(SGTFS、配列番号34)
2)アミノ酸残基107-116(TDCTQFGFLT、配列番号35)
3)アミノ酸残基122-132(KTHNAVCVPGS、配列番号36)
【0172】
確認されたGITR上のエピトープ領域を
図2に示した。
図2はGITRと51B間相互作用部位を示す。GITR PDB構造7KHDにおいてエピトープ部位を濃い陰影で表示した。GITRタンパク質構造において濃い陰影で表示されたアミノ酸はGITR配列の92-96(SGTPS、配列番号34)、107-116(TDCTQFGFLT、配列番号35)、および122-132(KTHNAVCVPGS、配列番号36)に該当する。
図2で、A、B、C、D、Eはそれぞれ前面図(A)、後面図(B)、側面
図1(C)、側面
図2(D)および平面図(E)のリボン/表面形状を示し、F、G、H、I、およびJはそれぞれ正面図(F)、後面図(G)、側面
図1(H)、側面
図2(I)、および平面図(J)のリボン形状を示す。
【0173】
1.8.抗GITR抗体のヒトGITRタンパク質に対する特異性および結合親和度測定
1.8.1.抗GITR抗体のヒトGITR(hGITR)タンパク質に対する結合力分析(ELISAによる)
ELISAプレートを1μg/ml濃度の組換えヒトGITRタンパク質(PBS内)でコーティングし4℃で一晩インキュベーションした。プレートを遮断緩衝液(PBS内の3%のスキムミルク)で1時間遮断し、連続希釈された抗GITR 51B VH0/Vk0(キメラ aGITR 51B mAb)および抗GITR 51B VH3/Vk4(ヒト化抗GITR 51B mAb)抗体(出発濃度 3μg/ml;1:3連続希釈)をコーティングされたプレートに添加した。インキュベーション後、抗マウス/ヒトIgG-HRP抗体(Abcam)(1:10000希釈)を各ウェルに添加した。プレートにTMB溶液を添加し、1N HClで中止させた。OD値は、450nMでGloMax(登録商標) Explorer Full Loadedで測定した。
【0174】
得られた結果を
図3aに示した。
図3aに示されているように、試験された抗GITR 51B VH0/Vk0キメラ抗体および抗GITR 51B VH3/Vk4ヒト化抗体のhGITRタンパク質結合の特異性を確認した。キメラおよびヒト化抗体両方とも容量依存的方式でhGITRタンパク質に対する相当な結合を示した。
【0175】
1.8.2.ヒト初代免疫細胞での抗GITR抗体のhGITRに対する特異性および結合親和度
T細胞、NK細胞およびNKT細胞を含むヒト初代リンパ球で発現するGITR分子に対する抗GITR抗体結合を測定するために、APEXTM抗体標識キット(Invitrogen)を使用して製造者指針に従って抗GITR 51B VH0/Vk0(キメラmAb)および51BVH3/Vk4(ヒト化mAb)をそれぞれAlexa Fluor(登録商標) 488(AF488)と接合させた。健康な供与者から分離されたヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)をStemCell technologiesから購入し、1μg/mlの抗CD3モノクローナル抗体(BD Biosciences)および1μg/mlの抗CD28モノクローナル抗体(BD Biosciences)の存在下で10%(v/v)FBSおよび400U/mlのヒトIL-2を含むPRMI1640培地と共に5% CO2および37℃条件で2日間培養した。培養中に、IL-2 400U/mlおよびIL-15 20ng/mlを2または3日ごとに添加した。培養後、細胞を、T細胞表面マーカ(CD3、CD4およびCD8)およびNKまたはNKT細胞表面マーカ(CD56)に対する蛍光体結合抗体および多様な容量(50、250、750、1250、および2500ng/ml)のAF488-標識された抗GITR抗体で染色した。細胞をフローサイトメーター(CytoFLEX、Beckman Coulter)で分析し、データはFlowjo software(BD)を使用して分析した。全体T細胞(CD3+)、CD4+ T細胞(CD3+CD4+CD8-)、CD8+ T細胞(CD3+CD8+CD4-)、CD56+ NK細胞(CD3-CD56+)およびNKT細胞(CD3+CD56+)での抗GITR抗体のGITR結合を測定した。
【0176】
得られた結果を
図3bに示した。抗GITR 51Bキメラおよびヒト化抗体は容量依存的に初代 T細胞、NKおよびNKT細胞に結合することを確認した。結果は、免疫細胞で発現されたGITRタンパク質に対する抗GITR 51B抗体の特異性を示す。
【0177】
実施例2.細胞ベースのレポーターアッセイを通じた抗GITR抗体の生物学的活性(抗GITR作動薬の活性)試験
Promega GITR bioassay kitをPromega Corporation(Madison、WI、USA)から購入して使用した。GITRエフェクター細胞(Promeg)の一つのバイアル(0.5mL)をアッセイバッファー(99% RPMI、1% FBS)9.5mLに添加し、細胞懸濁液(50μL)を96ウェル白色の平底アッセイプレート(Greiner Bio-one、Chonburi、Thailand)に移して入れた。アッセイバッファーを使用して抗GITR抗体の連続希釈液(出発濃度:5μg/ml)を製造した後、最終抗体濃度0.0032768μg/mlまでアッセイバッファーで2.5倍ずつ追加的に希釈した。希釈された抗GITR抗体25μLをアッセイプレートに添加した。37℃および5% CO2条件で6時間インキュベーション後、Bio-Glo Reagentを添加し周囲温度(ambient temperature)で10分間インキュベーションした。発光性はPromegaTM GloMax(登録商標)プレートリーダーを使用して発光水準(Luminescence)を測定した。RLU対Log10[抗体]およびフォールド誘導対Log10[抗体]データをグラフで表示した。フィット曲線と抗体反応性のEC50値はcurve fitting software(such as GraphPad Prism(登録商標) software)を使用して測定した。エッセイを通じて、GITR作用型抗体(試験抗体)添加後に検出されるGITR-媒介発光水準を測定し、試験抗体の作用剤活性を確認した。比較抗体として、抗GITR 28F3抗体(BMS;WO2015/187835参照)、抗GITR 110416(R&D Systems;“Heine et al. Oncoimmunology 2017 and Schmiedel et al, Molecular Therapy 2013”参照)および陽性対照群抗GITR抗体(Promega Cat. # K1171)を使用した。
【0178】
得られた結果を
図4に示した。抗GITR 51B VH3/Vk5抗体(抗GITR 51Bと表示)の架橋によって抗GITR抗体の作用剤活性を通じてT細胞活性化信号伝達が増加することを確認した。このような効能は比較抗体と比較して非常に優れることと示された。
【0179】
実施例3:抗GOTR抗体のサイトカイン生産効果
3.1.ヒト初代T細胞での抗GITR抗体の容量依存的抗腫瘍サイトカイン生産誘導確認
サイトカイン生産のために、ヒトPBMC(実施例1.8.2参照)を96ウェル丸底プレート内の10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地で0.5×106細胞/ウェルの量で培養した。抗GITR抗体(キメラ抗体および6種の先導ヒト化抗体、それぞれ10μg/mlおよび20μg/ml)の存在下で、37℃および5% CO2条件で細胞を抗CD3モノクローナル抗体0.2μg/mlおよび抗CD28モノクローナル抗体1μg/mlで19時間活性化させた。比較抗体として抗GITR抗体 110416(R&D Systems)を使用し、培地単独(抗体無添加)は陰性対照群として使用した。共刺激抗体(抗CD3抗体および抗CD28抗体)処理された細胞にBrefeldin Aを添加してサイトカイン分泌を遮断した。収穫した細胞をZombie Aqua固定死細胞染色溶液(Invitrogen)で染色して室温で20分間細胞の生存力を測定した。細胞を30分間氷の上で表面マーカCD3、CD4およびCD8それぞれに対するフルオロフォア接合抗体で標識された抗体(全てBiolegendから入手)で染色した。eBioscienceTM Foxp3/Transcription Factor Fixation/Permeabilization Concentrate and Diluent kit(Thermofisher)で細胞固定および透過化(permeabilization)後、細胞内サイトカイン染色を行った。その次に、透過バッファーで細胞内染色のためのIL-2およびIFN-γそれぞれに対するフルオロフォア接合抗体(全てBiolegendから入手)を使用して室温で30分間細胞を染色した。その後、細胞をフローサイトメーター(CytoFLEX、Beckman Coulter)で測定し、データはflowjo software(BD)を使用して分析した。比較抗体として抗GITR 110416(R&D Systems)を使用した。
【0180】
得られた結果を
図5a(CD4+ T細胞でのIL-2水準)、5b(CD4+ T細胞でのIFN-gamma水準)、5c(CD8+ T細胞でのIL-2水準)、および5d(CD8+ T細胞でのIFN-gamma水準)に示した。
図5a~5dで、各抗体に対する二つの結果のうち、左側は抗体濃度が10μg/mlである場合の結果、右側は抗体濃度が20μg/mlである場合の結果をそれぞれ示す。
【0181】
図5a~5dで示されるように、試験された全ての抗GITR 51B抗体(キメラおよびヒト化)は免疫細胞表面のGITRとの架橋を通じてCD4+およびCD8+T細胞でのTh1/Tc1サイトカイン生産を増加(upregulating)させ、これを通じて免疫反応を向上させることができる。抗GITR 51B抗体処理時のサイトカイン(IL-2およびIFN-ガンマ)の水準は、比較抗体(クローン110416、R&D System)と比較して顕著に高く示された。このような結果は、試験された全ての抗GITR 51B抗体が強力且つ容量依存的にT細胞機能を向上させるのを示す。
【0182】
3.2.ヒトT細胞での抗GITR抗体のサイトカイン生産増加効果確認
ヒトPBMC(実施例1.8.2参照)でのサイトカイン生産を測定した。細胞(500,000細胞/反応)を抗GITR 51B VH3/Vk4-IgG1ヒト化抗体(試験抗体、10μg/ml)の存在下で抗CD3モノクローナル抗体(BD Biosciences、cat no.555336;0.2μg/ml)および抗CD28モノクローナル抗体(BD Biosciences、cat no 555725;1μg/ml)と共に培養した。比較抗体として先に記載した抗GITR抗体28F3(BMS)を試験抗体と同一な容量(10μg/ml)で使用した。培養後、細胞を4℃で10分間400xgでスピンダウンし、CD4+ T細胞内のサイトカイン水準を測定した。このために次の方法で細胞内サイトカインを染色した:細胞をZombie Aqua fixable dead cell dye solution(Invitrogen)で染色し、30分間氷の上でCD4+とCD8+ T細胞表面マーカに対するフルオロフォア(fluorophore)-接合抗体で標識した(抗CD3抗体(Biolegend)、抗CD4抗体(Biolegend)、および抗CD8抗体(Biolegend)を使用してCD4+およびCD8+ T細胞表面を染色する)。eBioscienceTM Foxp3/Transcription Factor Fixation/Permeabilization Concentrate and Diluent kit(ThermoFisher)を使用して製造者指針に従って細胞を固定化し浸透化させた(permeabilized)。細胞を細胞内IL-2およびIFNγに対するフルオロフォア-接合抗体で染色した。細胞をフローサイトメーター(CytoFLEX、Beckman Coulter)で分析し、データはFlowjo software(BD)で分析した。
【0183】
得られた結果を
図6に示した。
図6で示されるように、抗GITR 51BVH3/Vk4-IgG1抗体はCD4+ T細胞でTh1/Tc1サイトカイン生産を増加(upregulation)させ、これによって免疫反応を向上させることができる。また、抗GITR 51BVH3/Vk4-IgG1抗体のサイトカイン生産水準は、比較抗体である28F3と比較して高く示された。このような結果は、抗GITR 51BVH3/Vk5-IgG1抗体が比較抗体28F3より非常に強力にエフェクターT細胞機能を増加させるのを示唆する。
【0184】
実施例4.抗GITR抗体の免疫細胞増殖効果
4.1.IL-15に対する反応においてGITR 架橋によるNK細胞増殖強化
ELISAプレートを抗GITR 51Bヒト化抗体(VH3/Vk1、VH3/Vk3、VH3/Vk4)10μg/mlでコーティングした。NK細胞はNK分離キット(Miltenyi Biotec)を使用して製造者指針に従ってヒトPBMC(実施例1.8.2参照)から分離しcell tracker violet(BioLegend)で37℃で20分間染色した。分離されたNK細胞(
図7a参照)またはNK細胞を含有するPBMC(
図7b参照、500,000細胞/反応)を抗GITR抗体コーティングされたプレートに添加した後、IL-15(5ng/ml)と共に6日間培養した。培養後、細胞をlive/dead reagent(ThermoFisher LIVE/DEAD
TM Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit)、CD3(Biolegend)、CD56(Biolegend)抗体で染色し、フローサイトメーター(CytoFlex、Beckman Coulter)で分析した。その次に、データをFlowjo software(BD)で分析した。
【0185】
得られた結果を
図7a(分離されたNK細胞)および7b(NK細胞を含有するPBMC)に示した。GITRが架橋される時、IL-15-誘導増殖は分離されたNK細胞(A)およびPBMC内のNK細胞(B)で増加する。試験された全ての抗GITR抗体はヒト初代T細胞でNK細胞増殖を増加させた。このような結果は、抗GITR抗体がGITRとのcross-linkingを通じて強化された免疫機能を有するのを立証し、これによって抗腫瘍活性を有することができるのを示唆する。
【0186】
4.2.抗GITR抗体のCD8+ T細胞増殖強化効果
Miltenyi kitsを使用して製造者指針に従ってヒトPBMC(実施例1.8.2参照)からCD8+ T細胞、Treg、およびNK細胞を分離した(Miltenyi kits(Miltenyi Biotec):CD8+ T Cell Isolation Kit、human(130-096-495)、CD4+ CD25+ CD127-dim Treg cell isolation kit II(130-094-775)、およびNK Cell Isolation Kit、human(130-092-657))。分離されたTreg細胞の数はtrypan blue exclusionを通じて測定し、LUNA-IITM Automated Cell Counterを使用した。NK細胞:CD8細胞:Treg細胞の比率が4:4:1になるように細胞をシーディングし、抗GITR抗体51B VH0/Vk0、VH3/Vk5、VH4/Vk3、およびVG4/Vk4をそれぞれ10μg/mLの量でウェルに添加した。準備された細胞および抗GITR抗体の混合物をIL-2(50ng/ml)の存在下でCD3/CD28 Dynabeads(ThermoFisher)と共に96時間培養した。培養後、細胞をCD3、CD8、CD4およびlive/deadマーカに対して染色した後、4℃で20分間CytoFix/CytoPerm(BD n.554722)を使用して固定および透過化した。その後、Ki67の検出のためにKi67抗体で細胞内染色を行い、細胞をフローサイトメーター(CytoFlex、Beckman Coulter)で分析した。
【0187】
得られた結果を
図8に示した。
図8に示されるように、抗GITR抗体はhuman 初代 PBMCsでCD8+ T細胞増殖を増加させ、これは抗GITR抗体によって人間の免疫細胞機能が向上できるのを示唆する。
【0188】
4.3.抗GITR抗体によるT調節細胞(T regulatory cells)およびNK細胞の免疫調節(Immunomodulation)
抗GITR 51BVH3/Vk4抗体と共にPBMC(実施例1.8.2参照)をインキュベーションした後、NK細胞でCD107aを測定してNK細胞活性化を測定し(
図9a参照)、Treg枯渇(depletion)に対する抗GITR抗体の効果を評価した(
図9b参照)。より具体的に、抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(5μg/mlおよび10μg/ml)をCD3およびCD28抗体の存在下でヒトPBMCと共培養し、Treg細胞の頻度をフローサイトメトリーで評価した。抗GITR未処理群を対照群にしてTreg細胞数を比較した。
【0189】
得られた結果(抗体濃度10μg/ml)を
図9a(CD107a水準)および9b(Tregの枯渇)に示した。抗GITR 51BVH3/Vk4抗体を通じたGITR 架橋はCD107aのNK細胞表面発現を誘導する。したがって、抗GITR 51B VH3/Vk4抗体はNK細胞を有意に活性化させる(
図9a参照)。また、抗GITR抗体(抗GITR 51B VH3/Vk4)とヒトPBMCの共培養によってTreg数が減少し(
図9b参照)、これは抗GITR抗体のGITRとの架橋によってNK細胞によるTreg除去を誘導するのを示唆する。したがって、抗GITR抗体は、NK細胞活性化を誘導しTregに対するNK細胞のTreg細胞毒性を促進する。腫瘍微小環境で、Treg細胞の数と機能が増加すれば免疫機能を抑制して抗腫瘍効果を抑制することを考慮する時、試験された抗GITR抗体はTreg細胞数を減少させて抗腫瘍効果を向上させることができる。
【0190】
実施例5.抗GITR抗体の癌細胞死滅効果
抗GITR抗体ヒト化変異体(抗GITR 51B VH3/Vk4および51B VH3/Vk3抗体)のSKOV-3卵巣癌細胞に対する細胞毒性を試験した。このために、エフェクター細胞とターゲット細胞比率(E:T)が10:1になるようにSKOV-3 cells(ATCC、2.5×104cells/well)とPBMCs(実施例1.8.2参照)を抗GITR 51B抗体(各10μg/mL)と共に共培養した。T細胞を活性化させるために、Cytostim(Miltenyi)を各ウェルに添加した。比較抗体として、先に説明した抗GITR抗体110416(R&D System)を使用して同一の方式で試験した。IncuCyte native softwareを使用してターゲット細胞を計数した。
【0191】
得られた結果(抗GITR 51B VH3/Vk4抗体)を
図10aおよび10bに示した。試験された全ての抗GITR 51B抗体の腫瘍細胞死滅効果は、対照群、cytostim処理群、および比較抗体処理群に比べて有意にさらに高かった。試験抗体抗GITR 51BVH3/Vk4および抗GITR 51BVH3/Vk3処理によって卵巣癌細胞死滅程度が増加し、これは抗GITR 51B作用抗体(試験抗体)が強力な抗腫瘍活性を示すということを示唆する。抗GITR 51B抗体(試験抗体)によるGITR 架橋によって、比較抗体と比較して、SKOV3細胞株(卵巣癌)に対してさらに高い細胞毒性を誘導する。
【0192】
実施例6.癌患者のヒトT細胞での抗GITR抗体の強力な抗腫瘍サイトカイン誘導効果
6.1.大腸癌(colorectal cancer;CRC)患者のT細胞でのサイトカイン生産増加効果
GITR発現免疫細胞が癌患者で機能障害を起こすので、抗GITR抗体治療が癌(CRC)患者で免疫反応を向上させて抗腫瘍効果を誘導することができるか調べてみた。
癌患者のサイトカイン生産に対する抗GITR抗体の効果を確認するために、大腸癌(colorectal cancer;CRC)患者に由来したヒトPBMC(500,000細胞/反応)を抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(10μg/mL)または同一容量の比較抗体(抗GITR 28F3;BMS)の存在下で抗CD3抗体(0.2μg/ml、BD Biosciences)および抗CD28抗体(1μg/ml、BD Biosciences)と共に培養した。CRC患者のPBMCはCureline,Inc.から入手した。細胞内サイトカイン生産は実施例3を参照して測定した。
【0193】
得られた結果を
図11に示した(バックグラウンド:細胞のみ(CD3/CD28抗体と抗GITR抗体全て無処理)、刺激あり:CD3/CD28抗体処理および抗GITR抗体無処理)。
図11に示されているように、試験抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(51B VH3/Vk4と表示)は比較抗体である28F3(ref-28F3)に比べてCRC患者のPBMCでさらに高い水準でCD4+およびCD8+ T細胞でのサイトカイン生産を増加させた。IL-2およびIFN-γは、NKおよびT細胞の増殖および腫瘍死滅活性を増加させて免疫系の核心機能を有するサイトカインである。したがって、結果は、試験抗GITR抗体が癌(CRC)患者に対して優れた抗癌効能を有することを示す。
【0194】
6.2.肺癌(非小細胞肺癌;NSCLC)患者のT細胞でのサイトカイン生産増加効果
GITR発現免疫細胞が癌患者で機能障害を起こすので、抗GITR抗体治療が癌(NSCLC)患者で免疫反応を向上させて抗腫瘍効果を誘導することができるか調べてみた。
【0195】
癌患者のサイトカイン生産に対する抗GITR抗体の効果を確認するために、非小細胞肺癌(non-small-cell lung carcinoma;NSCLC)患者に由来したヒトPBMC(500,000細胞/反応)を抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(10μg/mL)または同一容量の比較抗体(抗GITR 28F3;BMS)の存在下で抗CD3抗体(0.2μg/ml、BD Biosciences)および抗CD28抗体(1μg/ml、BD Biosciences)と共に培養した。NSCLC患者のPBMCはCureline,Inc.から入手した。細胞内サイトカイン生産は実施例3を参照して測定した。
【0196】
得られた結果を
図12に示した(バックグラウンド:細胞のみ(CD3/CD28抗体と抗GITR抗体全て無処理)、刺激あり:CD3/CD28抗体処理および抗GITR抗体無処理)。
図12に示されているように、試験抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(51B VH3/Vk4と表示)は比較抗体である28F3(ref-28F3)に比べてNSCLC患者のPBMCでさらに高い水準でCD4+およびCD8+ T細胞でのサイトカイン生産を増加させた。IL-2およびIFN-γは、NKおよびT細胞の増殖および腫瘍死滅活性を増加させて免疫系の核心機能を有するサイトカインである。したがって、結果は、試験抗GITR抗体が癌(NSCLC)患者に対して優れた抗癌効能を有することを示す。
【0197】
6.3.肝癌(肝細胞癌;HCC)患者のT細胞でのサイトカイン生産増加効果
GITR発現免疫細胞が癌患者で機能障害を起こすので、抗GITR抗体治療が癌(HCC)患者で免疫反応を向上させて抗腫瘍効果を誘導することができるか調べてみた。
【0198】
癌患者のサイトカイン生産に対する抗GITR抗体の効果を確認するために、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma;HCC)患者に由来したヒトPBMC(500,000細胞/反応)を抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(10μg/mL)または同一容量の比較抗体(抗GITR 28F3;BMS)の存在下で抗CD3抗体(0.2μg/ml、BD Biosciences)および抗CD28抗体(1μg/ml、BD Biosciences)と共に培養した。HCC患者のPBMCはCureline,Inc.から入手した。細胞内サイトカイン生産は実施例3を参照して測定した。
【0199】
得られた結果を
図13に示した(バックグラウンド:細胞のみ(CD3/CD28抗体と抗GITR抗体全て無処理)、刺激あり:CD3/CD28抗体処理および抗GITR抗体無処理)。
図13に示されているように、試験抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(51B VH3/Vk4と表示)は比較抗体である28F3(ref-28F3)に比べてHCC患者のPBMCでさらに高い水準でCD4+およびCD8+ T細胞でのサイトカイン生産を増加させた。IL-2およびIFN-γは、NKおよびT細胞の増殖および腫瘍死滅活性を増加させて免疫系の核心機能を有するサイトカインである。したがって、結果は、試験抗GITR抗体が癌(HCC)患者に対して優れた抗癌効能を有することを示す。
【0200】
結果で確認されるように、試験抗GITR抗体は広範囲な癌患者のヒトT細胞で強力な抗腫瘍サイトカイン生産を誘導する。
【0201】
実施例7.MC38大腸癌(colon carcinoma)モデルでの抗GITR抗体の抗癌効能確認(in vivo)
MC38腫瘍細胞(Biocytogen)を空気中5% CO2および37℃条件で10%(v/v)fetal bovine serum(FBS)補充されたDMEM+4μg/mlピューロマイシン培地で試験管内(in vitro)維持させた。対数期(exponential growth phase)の細胞を収穫し、腫瘍接種前に細胞計数器で細胞数を測定した。
【0202】
C57BL6 hGITR knock-in マウス(Jiangsu Biocytogen Co.,Ltd.)の右側後方横腹部位に5×105個の腫瘍細胞(in 0.1mL of PBS solution)を皮下接種して腫瘍を発生させた。平均腫瘍大きさが100-150mm3に到達する時、無作為化(Randomization)を行った。各グループは8匹のマウスから構成した。無作為化日付を0日(Day0)と記録した。
【0203】
腫瘍細胞接種後動物の病的状態(morbidity)、死亡率、および体重増加/減少を毎日確認した(無作為化後体重は週3回測定)。死亡率および観察された臨床兆候は個別動物に対して詳しく記録した。腫瘍体積は無作為化後週3回ずつカリパスを使用して2次元で測定し、体積は下記数式を使用してmm3で計算した。
V=(L×W×xW)/2
[Vは腫瘍体積(mm3)、Lは腫瘍長さ(腫瘍の長軸長さ)、Wは腫瘍広さ(Lの垂直中の最も長い長さ)]。
【0204】
投与量および腫瘍および体重測定はLaminar Flow Cabinetで行い、体重および腫瘍体積はStudyDirectorTM software(version 3.1.399.19)を使用して測定した。
【0205】
グルーピング直後、治療を始めた。対照群(グループ1)はビヒクル(PBS溶液)で処理し、CHO細胞で生成された抗GITR 51B VH3/Vk4抗体およびINCAGN1876(Biocytogen)をグループ2およびグループ3にそれぞれ20mg/kg容量で処理した(表13参照)。
【0206】
【0207】
測定された腫瘍大きさ(体積)を
図14に示した。
図14で示されるように、抗GITR 51B VH3/Vk4抗体(グループ2)はPBS処理されたグループ1(対照群)と比較して相当な腫瘍成長抑制効果を示した。例えば、24日目に、抗GITR 51B VH3/Vk4抗体処理試験群(グループ2)は対照群(グループ1)と比較して腫瘍大きさが有意に減少した。また、比較抗体(INCAGN1876)処理試験群(グループ3)と比較しても、抗GITR 51B VH3/Vk4抗体処理試験群(グループ2)で顕著に高い腫瘍減少効能が示された。
【0208】
また、下記数式で腫瘍成長抑制(ΔTGI)を計算した。
ΔTGI(Δ阻害の平均%)=((平均(C)-平均(C0))-(平均(T)-平均(T0)))/(平均(C)-平均(C0))*100%
[T-現状グループの値/T0-現状グループの初期値/C-対照グループの値/C0-対照グループの初期値]
[T:試験群の測定時点の腫瘍大きさ、
T0:試験群の最初腫瘍大きさ、
C:対照群の測定時点の腫瘍大きさ、
C0:対照群の最初腫瘍大きさ]
【0209】
抗GITR 51B VH3/Vk4抗体の腫瘍成長抑制(ΔTGI)は64.8%で、INCAGN1876類似体(ΔTGI=44.7%)と比較して上昇した抑制効果を示した。
【0210】
本実施例に使用された試験動物は抗体の20mg/kg容量投与(i.v.)に寛容的であり、研究期間中にBWLが観察されなかった。
【0211】
統計処理
統計的有意性は通常の一元ANOVA(GraphPad Prism 9 softwareを用いた対応あり又は対応無しのスチューデントのt検定)で評価した。データは平均±SEMで表示した。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、ns=有意性無し。
【配列表フリーテキスト】
【0212】
配列番号1: 合成_CDR-H1、但しXはE、N又はD
配列番号2: 合成_CDR-H2
配列番号3: 合成_CDR-H3
配列番号4: 合成_CDR-L1
配列番号5: 合成_CDR-L2、但しXはA、Q又はE
配列番号6: 合成_CDR-L3
配列番号7: 合成_CDR-H1
配列番号8: 合成_CDR-H1
配列番号9: 合成_CDR-H1
配列番号10: 合成_CDR-L2
配列番号11: 合成_CDR-L2
配列番号12: 合成_CDR-L2
配列番号13: 合成_重鎖可変領域
配列番号14: 合成_重鎖可変領域
配列番号15: 合成_重鎖可変領域
配列番号16: 合成_重鎖可変領域
配列番号17: 合成_重鎖可変領域
配列番号18: 合成_重鎖可変領域
配列番号19: 合成_軽鎖可変領域
配列番号20: 合成_軽鎖可変領域
配列番号21: 合成_軽鎖可変領域
配列番号22: 合成_軽鎖可変領域
配列番号23: 合成_軽鎖可変領域
配列番号24: 合成_軽鎖可変領域
配列番号25: 合成_重鎖定常領域
配列番号26: 合成_軽鎖定常領域
配列番号27: 合成_51BキメラN298A_VH(重鎖)
配列番号28: 合成_51BキメラN298A_VL(軽鎖)
配列番号29: 合成_シグナル配列を含む51B重鎖可変領域であり、1~19位のアミノ酸配列がシグナル配列
配列番号30: 合成_シグナル配列を含む51B重鎖可変領域をコードするDNA
配列番号31: 合成_シグナル配列を含む51B軽鎖可変領域であり、1~22位のアミノ酸配列がシグナル配列
配列番号32: 合成_シグナル配列を含む51B軽鎖可変領域をコードするDNA
配列番号33: 合成_ヒトGITRであり、1~25位のアミノ酸配列がシグナル配列
配列番号34: 合成_ヒトGITR上のエピトープ領域
配列番号35: 合成_ヒトGITR上のエピトープ領域
配列番号36: 合成_ヒトGITR上のエピトープ領域
【配列表】