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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】排気部材及び医療用器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20250423BHJP
【FI】
A61M1/00 150
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018191855
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058608
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善悦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正芳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆志
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】小河 了一
【審判官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-325849(JP,A)
【文献】特開昭61-131751(JP,A)
【文献】特開平1-244764(JP,A)
【文献】米国特許第5848993(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧部を備える医療用器具に用いられ、
前記陰圧部に接続可能な第1開口部と、収縮したときに内部から外部にエアを排気可能な第2開口部と、弾性復元可能に構成されて前記第1開口部及び前記第2開口部により前記エアを繰り返し排気可能とする圧搾部と、を備え、
前記圧搾部は、球状に形成されており、
前記圧搾部の内面に複数の突条が形成されており、
前記圧搾部の中心を通る仮想直線を、前記圧搾部の軸とすると、
前記第1開口部は、前記圧搾部の軸方向における一端側に配置されており、
前記第2開口部は、前記軸方向における他端側に配置されており、
前記複数の条は前記軸方向において互いに離間して配置されている複数の第1突条を含み、
前記複数の第1突条の各々の全体は、前記軸対して直交する仮想平面上にあるとともに、前記軸を中心とした緯線方向に全周回に亘って延在しており、
前記複数の第1突条は、前記圧搾部の中央の緯線上に配置されている第1緯線突条と、前記軸方向において前記第1緯線突条を基準として互いに対称に配設されている複数の第2緯線突条と、を含むことを特徴とする排気部材。
【請求項2】
前記複数の突条は、前記複数の第1突条に対して直交する方向に延在している複数の第2突条を更に含み、
前記複数の第1突条と前記複数の第2突条とが互いに直交して格子形状が形成されている請求項1に記載の排気部材。
【請求項3】
前記複数の突条は、複数の第2突条を含み、
前記複数の第2突条は、前記軸を中心とした経線方向に延在しており
前記複数の第2突条は前記圧搾部の周方向において互いに等角度間隔で配設されている請求項1又は2に記載の排気部材。
【請求項4】
前記突条における、前記圧搾部の中心に向かって延在する辺の長さが、前記圧搾部の中心に対向する面における短辺側の長さよりも長い請求項1から3のいずれか一項に記載の排気部材。
【請求項5】
陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用器具であって、
前記陰圧部と、
請求項1から4のいずれか一項に記載の排気部材と、を備える医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰圧部を備える医療用器具に用いられ、陰圧部に接続されて外部にエアを排気する排気部材、及び排気部材を備える医療用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体から体液を、チューブを介して吸引して排出するために、陰圧部を備える医療器具が用いられている。このような医療器具は、陰圧部を陰圧にするための弾性復元可能なゴム球である排気部材(ポンプ)が設けられているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気部材(同文献には、排気手段と記載。)とバルーンとを備える医療用器具(同文献には、医療用吸引器具と記載。)に係る発明が開示されている。
特許文献1に詳細な記載はないものの、従来の排気部材(ゴム球)は、弾性復元力を確保するため、天然ゴムで形成されるものが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-102486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手技者のアレルギー等の観点から、天然ゴムではなくイソプレンゴム等の合成ゴムで形成された排気部材(ゴム球)が求められていた。
しかしながら、イソプレンゴム等の合成ゴムは天然ゴムに比べて弾性力が低く、排気部材を圧搾して変形させた後の復元力が弱い。このため、合成ゴム製の排気部材を用いた場合には、容器内を高い陰圧に吸引することができなくなっていた。このため、陰圧部内を所定の陰圧状態に遷移させるまでの時間がかかっていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、陰圧部内が適当な圧力となるように迅速に調整可能な医療用器具に用いられる排気部材及び医療用器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排気部材は、陰圧部を備える医療用器具に用いられ、
前記陰圧部に接続可能な第1開口部と、収縮したときに内部から外部にエアを排気可能な第2開口部と、弾性復元可能に構成されて前記第1開口部及び前記第2開口部により前記エアを繰り返し排気可能とする圧搾部と、を備え、
前記圧搾部の内面又は外面に突条が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の医療用器具は、陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用器具であって、前記陰圧部と、前記排気部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排気部材及び医療用器具は、陰圧部内が適当な圧力となるように迅速に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る医療用器具を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る排気部材の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
図3】第2実施形態に係る排気部材の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
図4】第3実施形態に係る排気部材の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
図5】第4実施形態に係る排気部材の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
図6】第5実施形態に係る排気部材の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
図7】第6実施形態に係る排気部材の側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の排気部材及び排気部材を備える医療用器具の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下において、「上下方向」は、図1に示すように、医療用器具1を立設させた状態における上下方向をいう。
【0012】
<概要>
まず、本実施形態に係る排気部材4及び排気部材4を備える医療用器具1の概要について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る医療用器具1を示す斜視図、図2は、第1実施形態に係る排気部材4の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
【0013】
本実施形態に係る排気部材4は、図1に示す陰圧部(吸引容器2)を備える医療用器具1に用いられる。
排気部材4は、図1及び図2に示すように、陰圧部に接続可能な第1開口部4bと、収縮したときに内部から外部にエアを排気可能な第2開口部4cと、弾性復元可能に構成された圧搾部4aと、を備える。圧搾部4aは、第1開口部4b及び第2開口部4cによりエアを繰り返し排気可能に構成され、圧搾部4aの内面に突条4dが形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、突条4dにより圧搾部4aの剛性が高められて弾性復元力を高めることができ、エアをスムーズに繰り返し排気することができることで、陰圧部内が適当な圧力となるように迅速に調整することが可能な排気部材4を提供できる。
つまり、圧搾部4aが、イソプレンゴム又はシリコンゴムその他の合成ゴム等、弾性復元力の低い材質又は構造から成るものであっても、排気部材4(医療用器具1)の外部にエアを繰り返し好適に排気可能となる。
【0015】
具体的には、排気部材4の圧搾部4aは、収縮したときに圧搾部4aの内部から外部に第2開口部4cを介してエアを排気し、復元したときに吸引容器2の内部の空気を圧搾部4aの内部に第1開口部4bを介してエアを吸引する機能を有する。この機能は、第1開口部4bと第2開口部4cとを通る流路上のそれぞれに一方弁が配設されることによって実現する。
【0016】
その他、本発明に係る「突条」は、幅寸法よりも長手寸法が十分に大きく、筋状に形成されたものをいう。突条は、少なくとも一本が、圧搾部の全周回に亘って形成されていると、圧搾部の弾性復元力を高めることができる点で好ましいが、そのような構成に本発明は限定されない。具体的には、突条は、断続的に各数本が並んで形成されていてもよい。
【0017】
本実施形態に係る医療用器具1は、陰圧部(吸引容器2)で形成される陰圧により排液を吸引する医療用器具1である。医療用器具1は、陰圧部と、排気部材4と、を備える。
上記構成によれば、突条4dにより剛性が高まることで、弾性復元力を高めることができ、エアをスムーズに繰り返し排気することができることで、陰圧部内が適当な圧力となるように迅速に調整することが可能な医療用器具1を提供できる。
【0018】
<<第1実施形態>>
まず、図1を参照して、医療用器具1の全体構成を説明する。
医療用器具1は、陰圧状態となる吸引容器2と、体液等を収容する収容容器3と、医療用器具1(吸引容器2)内のエアを外部に排気するための排気部材4と、吸引容器2の圧力状態を確認等するためのバルーン5と、を主に備える。
【0019】
吸引容器2の下部には、吸引容器2内のエアを外部と連通させてエアを抜くことが可能なキャップ2aが取り付けられている。また、キャップ2aによってバルーン5が吸引容器2の内部に配設されている。
吸引容器2と収容容器3とは、連結チューブ6によって、内部を連結されている。
収容容器3の上部には、吸引口3aと排出口3cが設けられており、吸引口3aに不図示のチューブが接続されて、収容容器3内に体液等を収容可能に構成され、収容された体液等を、排出口3cを通じて直接排出可能に構成されている。
吸引口3aには、クランプ部材3bが取り付けられており、クランプ部材3bによって吸引口3aに繋がる流路を閉塞することで、人体からの収容容器3内への体液の流入を止めることが可能に構成されている。
【0020】
次に、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る排気部材4について説明する。
排気部材4は、吸引容器2内を陰圧状態とするためのものであり、弾性を有する球体状の圧搾部4aと、圧搾部4aから下方に突出して吸引容器2の上部に接続される円筒状の第1開口部4bと、外部に連通する円筒状の第2開口部4cと、を備える。
第2開口部4cには、図1に示すように、一方弁7が取り付けられており、第1開口部4bに接続される吸引容器2の上部にも不図示の一方弁が取り付けられている。これらの一方弁により、上記のように、排気部材4による、吸引容器2から排気部材4内に吸引したエアを排気部材4の外方(上方)に排気する、一方向のエアの流れを形成することが可能となっている。
【0021】
排気部材4における圧搾部4aの内面のうち、上下方向の中央には、緯線方向に延在して排気部材4の軸心側に突出する断面半円状の突条4dが全周に形成されている。
このように形成された突条4dにより、圧搾部4aの断面積が全周に亘って大きくなることで圧搾部4aの剛性を高めることができ、圧搾部4aが圧搾された後の復元力を高めることができる。このため、圧搾部4aを繰り返し圧搾して、排気部材4からエアを排気して、吸引容器2内を設定された陰圧状態に迅速に遷移させることができる。
【0022】
<<第2実施形態>>
次に、図3を参照して、第2実施形態に係る排気部材14について説明する。図3は、第2実施形態に係る排気部材14の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
圧搾部14aは、球状に形成されており、排気部材14の圧搾部14aの内面には、突条14dが、周方向に均等な間隔(本実施形態では、平面視において圧搾部14aの中心から90度毎)で複数(本実施形態では4本)配設されている。
突条14dは、圧搾部14aの経線方向に延在して排気部材14の軸心側に突出する断面半円状の形状を有する。
【0023】
このように複数の突条14dにより、圧搾部14aの断面積が全周に亘って大きくなることで圧搾部14aの剛性を高めることができ、圧搾部14aが圧搾された後の復元力を高めることができる。このため、圧搾部14aを繰り返し圧搾して、排気部材14からエアを排気して、吸引容器2内を設定された陰圧状態に迅速に遷移させることができる。
特に、圧搾部14aの周方向に均等な間隔で形成された突条14dにより、圧搾部14aが均等に復元しやすくなる。このため、手技者は、吸引容器2を陰圧にする際に、圧搾部14aを円滑に繰り返して圧搾することができる。
【0024】
突条14dは、球状の圧搾部14aのみに形成されており、円筒状の第1開口部4b及び第2開口部4cには形成されていない。このように形成されていることで、第1開口部4bに不図示の一方弁、第2開口部4cに一方弁7を取り付けたときに、突条14dが原因で空気漏れが生じることがない。
【0025】
上記においては、突条14dは、圧搾部14aに均等な間隔で4本形成されているものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、突条14dは、圧搾部14aに均等な間隔で、3本、5本又は7本等奇数本形成されていてもよい。このような構成によれば、手技者が圧搾部14aを圧搾したときに、突条14d同士の当接が抑制され、圧搾部14aを深く圧搾することができ、吸引容器2内を目標とする陰圧状態に迅速に遷移させることができる。
また、突条14dは、圧搾部14aに均等な間隔で形成されているものであれば、圧搾後の圧搾部14aが偏りなく復元しやすくなるため、手技者は、再度の圧搾を好適に行うことができる。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、突条14dは、まばらな間隔で圧搾部14aに形成されていてもよい。
【0026】
<<第3実施形態>>
次に、図4を参照して、第3実施形態に係る排気部材24について説明する。図4は、第3実施形態に係る排気部材24の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
排気部材24の圧搾部24aは、球状に形成されており、突条24dは、圧搾部24aの緯線方向に延在し、中央の緯線に対して対称に複数(本実施形態においては、中央に設けられたものを含めて3本)配設されている。
上記構成によれば、圧搾部24aが均等に復元しやすくなる。このため、手技者は、吸引容器2を陰圧にする際に、圧搾部24aを円滑に繰り返して圧搾することができる。
【0027】
特に、本実施形態に係る突条24dは、断面半円状ではなく、断面台形状又は矩形状に形成されている。そして、突条24dにおける、圧搾部24aの中心に向かって延在する辺の長さL1、L2は、圧搾部24aの中心に対向する面における短辺側の長さL3よりも長い。
上記構成によれば、突条24dの断面二次モーメントを大きくすることができ、圧搾部24aの剛性を効果的に高めて、圧搾部24aの弾性復元力を高めることができる。
【0028】
<<第4実施形態>>
次に、図5を参照して、第4実施形態に係る排気部材34について説明する。図5は、第4実施形態に係る排気部材34の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
第4実施形態に係る排気部材34の圧搾部34aに設けられた突条34d、34eは、複数本が交差して格子状に形成されている。
具体的には、排気部材34の圧搾部34aは、球状に形成されており、突条34dは、圧搾部34aの緯線方向に延在し、中央の緯線に対して対称に複数(本実施形態においては、中央に設けられたものを含めて3本)配設されている。
また、突条34eは、圧搾部34aの経線方向に延在して、周方向に均等な間隔(本実施形態では、平面視において圧搾部14aの中心から90度毎)で複数(本実施形態では4本)配設されている。突条34d、34eは、排気部材34の軸心側に突出する断面半円状の形状を有し、互いに交差するように配設されており、全体として格子状に形成されている。
このように、突条34d、34eが格子状に形成されていることで、圧搾部34aの弾性復元力を高めることができるとともに、圧搾部34aが均等に復元しやすくなる。このため、手技者は圧搾部34aを繰り返し圧搾しやすくなる。
【0029】
<<第5実施形態>>
次に、図6を参照して、第5実施形態に係る排気部材44について説明する。図6は、第5実施形態に係る排気部材44の断面を示す図であり、図1のII-II断面図である。
第5実施形態に係る排気部材44の圧搾部44aに設けられた突条44dは、断面半円状ではなく、断面三角形状に形成されている。
このような構成によれば、手技者が圧搾部44aを圧搾したときに、突条44d同士の当接による干渉が抑制され、圧搾部44aを深く圧搾することができ、吸引容器2内を目標とする陰圧状態に迅速に遷移させることができる。
なお、突条44dが先鋭形状を少なくとも圧搾部44aの中心側に含んでいれば、上記効果を奏することができ、断面三角形状であるものに限定されない。
【0030】
<<第6実施形態>>
次に、図7を参照して、第6実施形態に係る排気部材54について説明する。図7は、第6実施形態に係る排気部材54の側面を示す図である。
第5実施形態に係る排気部材54の圧搾部54aには、その外面に突条54d、54eが形成されている。
突条54d、54eは、図5に示して説明した圧搾部34aの内面に形成された突条34d、34eと同様の構成で、格子状に形成されている。
このように、圧搾部54aの外面に突条54d、54eが形成されているものであっても、圧搾部54aの剛性を高めることができる。
【0031】
例えば、圧搾部54aの外面と内面の両方に突条が形成されていてもよい。このようにすれば、圧搾部の弾性復元力をより高めることができる。
一方で、圧搾部54aの外面にのみ、突条54d、54eが形成され、内面に突条を形成せずに滑らかなものとしてもよい。このようにすれば、圧搾部54aの圧搾時に、突条に変形を阻害されることがなく、圧搾部44aを深く圧搾することができ、吸引容器2内を目標とする陰圧状態に迅速に遷移させることができる。
他の緯線方向に形成されているものや、経線方向に形成されている突条を圧搾部の外面に形成するようにしてもよい。
【0032】
<<成形方法について>>
上記実施形態に係る排気部材4、14、24、34、44、54は、圧縮成形により成形される。
具体的には、不図示の半割一対の外型と、略球状の内型とでゴムを加熱圧縮してから冷却硬化させる。圧搾部の突条に対応する形状の凹溝を内型の外周面に形成することで、圧搾部の内面に突出する突条を有する排気部材4、14、24、34、44を成形することができる。また、圧搾部の突条に対応する形状の凹溝を外型の内周面に形成することで、圧搾部の外面に突出する突条を有する排気部材54を成形することができる。
そして、成型後の排気部材を空気で膨脹させ、筒状の開口部(第1開口部4b又は第2開口部4c)を大きく開かせて内型を排出することにより、排気部材を内型及び外型から取り出すことができる。
【0033】
上記実施形態に係る医療用器具1においては、吸引容器2と収容容器3とを別個に備えるものとして説明したが、本発明は排気部材を備える限り、このような構成に限定されない。つまり、吸引容器2と収容容器3とが一体的に形成されて、陰圧部を構成するものであってもよい。
【0034】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)陰圧部を備える医療用器具に用いられ、
前記陰圧部に接続可能な第1開口部と、収縮したときに内部から外部にエアを排気可能な第2開口部と、弾性復元可能に構成されて前記第1開口部及び前記第2開口部により前記エアを繰り返し排気可能とする圧搾部と、を備え、
前記圧搾部の内面又は外面に突条が形成されていることを特徴とする排気部材。
(2)前記突条は、複数本が交差して格子状に形成されている(1)に記載の排気部材。
(3)前記圧搾部は、球状に形成されており、
前記突条は、前記圧搾部の経線方向に延在し、周方向に均等に複数配設されている(1)又は(2)に記載の排気部材。
(4)前記圧搾部は、球状に形成されており、
前記突条は、前記圧搾部の緯線方向に延在し、中央の緯線に対して対称に複数配設されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の排気部材。
(5)前記圧搾部は、球状に形成されており、
前記突条における、前記圧搾部の中心に向かって延在する辺の長さが、前記圧搾部の中心に対向する面における短辺側の長さよりも長い(1)から(4)のいずれか一項に記載の排気部材。
(6)陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用器具であって、
前記陰圧部と、
(1)から(5)のいずれか一項に記載の排気部材と、を備える医療用器具。
【符号の説明】
【0035】
1 医療用器具
2 吸引容器(陰圧部)
2a キャップ
3 収容容器
3a 吸引口
3b クランプ部材
3c 排出口
4 排気部材
4a 圧搾部
4b 第1開口部
4c 第2開口部
4d 突条
5 バルーン
6 連結チューブ
7 一方弁
14 排気部材
14a 圧搾部
14d 突条
24 排気部材
24a 圧搾部
24d 突条
34 排気部材
34a 圧搾部
34d、34e 突条
44 排気部材
44a 圧搾部
44d、44e 突条
54 排気部材
54a 圧搾部
54d、54e 突条
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7