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▶ エーブイエム・バイオテクノロジー・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】免疫除去療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20250423BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250423BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250423BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250423BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250423BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61P3/10
A61P11/06
A61P17/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P31/18
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/08
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019182659
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2020059703
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】18198491.5
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16/227,068
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513164509
【氏名又は名称】エーブイエム・バイオテクノロジー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】デイシャー、 テレサ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063539(JP,A)
【文献】特表2002-509101(JP,A)
【文献】特表2009-500310(JP,A)
【文献】国際公開第2018/044948(WO,A1)
【文献】特表2018-522881(JP,A)
【文献】特表2000-510113(JP,A)
【文献】米国特許第04554271(US,A)
【文献】特表平10-507758(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078442(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/183927(WO,A1)
【文献】特表2011-524421(JP,A)
【文献】Jennifer Theiss-Suennemann, et al.,Glucocorticoids attenuate acute graft-versus-host disease by suppressing the cytotoxic capacity of CD8+ T cells,The Journal of Pathology,2015年,Volume 235, Issue 4,646-655,DOI:,10.1002/path.4475
【文献】Tom J. Creed et al.,The Effects of Cytokines on Suppression of Lymphocyte Proliferation by Dexamethasone,J. Immunol.,2009年,183,164-171,DOI:10.4049/jimmunol.0801998
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるリンパ球媒介性疾患の処置における使用のための、グルココルチコイドを含む医薬組成物であって、前記処置は、前記医薬組成物の単一の急性用量を患者に投与して~26mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量の前記グルココルチコイドを送達することを含み、
前記医薬組成物は、単一の静脈内(IV)または経口用量として投与され、
前記グルココルチコイドは、デキサメタゾン、デキサメタゾン塩基、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、またはベタメタゾンのうちのいずれか1つであり、
前記医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、保存剤、および/またはキレート剤を含み、
前記リンパ球媒介性疾患は、自己免疫疾患、癌、残余HIV疾患、移植片対宿主病、およびアレルギー性障害から選択される、
医薬組成物。
【請求項2】
前記リンパ球媒介性疾患がアレルギー性障害であり、前記アレルギー性障害が喘息である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記リンパ球媒介性疾患が癌であり、前記癌が胚中心リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記リンパ球媒介性疾患が癌であり、前記癌が白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記リンパ球媒介性疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、天疱瘡、および狼瘡からなる群から選択される自己免疫疾患である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
保存剤を含み、前記保存剤は亜硫酸塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
キレート剤を含み、前記キレート剤はEDTAである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記グルココルチコイドはデキサメタゾンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記グルココルチコイドはデキサメタゾン塩基、リン酸デキサメタゾンナトリウム、および酢酸デキサメタゾンからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記グルココルチコイドがリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物の用量が、0.25~2時間にわたる単一IV用量として投与される単一急性用量である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物はグルココルチコイド水溶液である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、少なくとも9mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも11mg/kg、少なくとも12mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも18mg/kg、または少なくとも24mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量において投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
対象におけるリンパ球媒介性疾患の処置における使用のための、グルココルチコイドを含む医薬組成物であって、前記処置は、前記医薬組成物の用量を患者に投与して~26mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な単一の急性用量の前記グルココルチコイドを送達することを含み、
前記グルココルチコイドは、デキサメタゾン、デキサメタゾン塩基、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、またはベタメタゾンのうちのいずれか1つであり、
前記医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、保存剤、および/またはキレート剤を含み、
前記リンパ球媒介性疾患は、自己免疫疾患、癌、残余HIV疾患、およびアレルギー性障害から選択される、
医薬組成物。
【請求項15】
前記リンパ球媒介性疾患がアレルギー性障害であり、前記アレルギー性障害が喘息であるか;
前記リンパ球媒介性疾患が癌であり、前記癌が胚中心リンパ腫であるか;
前記リンパ球媒介性疾患が癌であり、前記癌が白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫であるか;または
前記リンパ球媒介性疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、天疱瘡、および狼瘡からなる群から選択される自己免疫疾患である、
請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫除去(immunoablation)による疾患の処置における使用のための組成物に関する。特に、本発明の組成物は、リンパ球のような免疫細胞により媒介される疾患の処置における使用のためのものであり得る。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、以前、高濃度のグルココルチコイドを使用して、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)のような細胞性免疫療法の効力を増強させるために患者を条件付けできることを発見した。これは国際特許出願PCT/US2018/025517(WO2018/183927として公開)に記述されている。その出願において、発明者は、化学療法および放射線を介するプレコンディショニングに関連する毒性を記載しており、これは脾臓の細胞充実性を非選択的に破壊すると考えられている。発明者は、細胞性免疫療法を受ける癌患者を助けるための、急性用量におけるグルココルチコイド(ステロイドのサブクラス)その他の非毒性リンパ球枯渇剤を提供した。
【0003】
WO2018/183927は、高用量のグルココルチコイドがリンパ組織の除去を引き起こして、リンパ組織(特に、リンパ節における胚中心および辺縁帯ならびに脾臓における胚中心および辺縁帯)への細胞性免疫療法の結合を減らすことができることを記載している。WO2018/183927はさらに、高用量グルココルチコイドが(化学療法剤または放射線療法を用いるプレコンディショニングの細胞毒性機序とは対比される)生物学的機序を介して末梢血リンパ球もリンパ球枯渇(lymphodeplete)させることを記載している。
【0004】
ACTに先立って患者をプレコンディショニングするためのステロイドの使用を調べた先行研究は、このアプローチが有効でないことを示していた。Hinrichs (J Immunother. 2005 Nov-Dec;28(6):517-24.)は、ACTに先立つプレコンディショニング処置としてデキサメタゾンを評価した。Hinrichsは、全身照射(TBI:total body irradiation)と比較して、-6日目、-4日目、および-2日目に投与された0.8 mg/kgのHEDが、5Gy TBIと同等にリンパ球枯渇をもたらしたことを実証した。Hinrichsは、ACT 前の-6、-4、および-2日目における10 mg/kg(HED 0.81 mg/kg)の腹腔内(intraperitoneal)全身投与のデキサメタゾンによる前処置が放射線と比べて同等のリンパ球枯渇を誘導したことを実証しているが、しかしこの前処置は、ACTによる殺腫瘍を増強させはしなかった。Hinrichsは、対照的に、放射線による前処置はACTによる殺腫瘍を増強したことを開示している。Hinrichs論文において、デキサメタゾンは、99%低減した脾臓細胞充実性により示されるように、脾臓のリンパ球枯渇を引き起こしたとされている。しかしながら、Hinrichsは99%のリンパ球枯渇を報告している一方、ACTによる殺腫瘍の増強は観察されなかった。Hinrichsは、対照的に、放射線はACTによる殺腫瘍を増強することを観察している。Hinrichsの報告によるリンパ球枯渇を再現するための実験は、しかし、-6日目、-4日目、および-2日目における10 mg/kg(HED 0.81 mg/kg)の腹腔内デキサメタゾンというHinrichs用量が、末梢血リンパ球は効果的にリンパ球枯渇させないことを実証している。Hinrichs用量では、末梢血中のBリンパ球のみが有意にリンパ球枯渇され、これはCD3-CD19+細胞のフローサイトメトリーにより測定される生存事象(live events)が10680(媒体対照)から3733となる、65%の減少であった。対照的に、CD3+ Tリンパ球は生存事象が3370から2441へと減少し、非有意な33%減少に過ぎなかった。CD3+CD4+ Tリンパ球は生存事象が1779から902へと減少し、非有意な50%減少に過ぎなかった。CD3+CD8_ Tリンパ球は生存事象が1318から1277へと減少し、非有意な3%減少に過ぎなかった。CD3+CD4+CD25+FoxP3+ Tregは生存事象が198から70へと減少し、非有意な65%減少に過ぎなかった。そしてナチュラルキラー(NK)細胞は生存事象が1153から958へと減少し、非有意な17%減少に過ぎなかった。
***
【0005】
自己免疫は、免疫系が対象者自身の構成要素に対する異常な攻撃を開始する現象である。(健常者においては、免疫系は、対象者自身の構成要素に対する寛容を確立することによって、有害な自己免疫反応を回避している。)有害な自己免疫反応によりもたらされる疾患は自己免疫疾患と呼ばれる。異なる自己免疫疾患は身体の異なる部分を侵す。これらは、衰弱性(例えば、関節を侵す関節リウマチの場合)、神経変性/神経破壊性(例えば多発性硬化症の場合)であり得、場合によっては、例えば糖尿病のように、かなりの死亡率を伴う(Thomas et al., 2010)。
【0006】
自己免疫性障害の病態形成は、自己抗原を不適切に認識して細胞媒介性もしくは体液性またはその両方の反応を開始するというTおよびBリンパ球の重要な役割によって広く説明され、これが炎症性の組織と血管の損傷をもたらす(Sullivan et al,. 2010; Shlomchik et al., 2001)。
【0007】
自己免疫疾患は、非常に多くの場合、ステロイドのような免疫抑制剤の長期的投与によって治療される。例えば、天疱瘡の患者は、3日間にわたる日毎に2時間のIV注入による100 mgデキサメタゾンを用いて治療されてきた(Pasricha et al., 2008)。この用量はリンパ球枯渇性ではない。天疱瘡患者はこのようにして治癒するまで28日ごとに処置された。治癒するまでには3~12カ月かかった。再発率は15%であり、全ての患者がさらなるデキサメタゾン(Dexa)治療で寛解に向かった。Dexaのこの用量は約1~2 mg/kgである。自己免疫疾患を管理し症状を減少する助けにはなるが、そのような治療レジメンは治癒的ではなく、いくつかの長期的副作用および感染リスクの上昇が関わる(Patt et al., 2013)。
【0008】
免疫性損傷をコントロールするために、リンパ球枯渇療法が試験されることが増えている。そのような療法についての1つの魅力的な前提は、それが免疫系を「リブート(reboot)」することができ免疫寛容を回復させ得るというものである(Lu et al., 2011)。しかしながら、リンパ球枯渇療法の寛容取得能力についてはまだ議論されている。その議論は、免疫枯渇薬のプロトタイプである抗胸腺細胞グロブリン(ATG:anti-thymocyte globulin)についての複数の研究からの、特にそれがCD4+ CD25+ Foxp3+制御性T(Treg)細胞を誘導するか否かについての相反する証拠によって例示される(Lu et al., 2011)。インビボでクローンレベルでのT細胞に対するATGの影響を理解するために、Luらは、Tリンパ球レパートリーが生理的な自己抗原に特異的な病理的Tエフェクター(Teff)細胞の単一クローンからなる還元主義的モデルにおいて、抗マウス胸腺細胞グロブリン(mATG)の効果を調べた。mATG処置は、胸腺の関与とは独立に、本来モノクローナルであるTeffレパートリーから抗原特異的Treg細胞の末梢的誘導をもたらした。この新規のTreg細胞誘導は、一貫して局所的流入領域リンパ節において起こり、血中の誘導Treg細胞の持続は、自己免疫的破壊からの長期的保護と相関しており(Lu et al., 2011)、従って、免疫枯渇療法の場面における、病理的な自己抗原特異的Teff細胞からTreg細胞へのクローン転換のインビボ証拠を提供している。
***
【0009】
1型糖尿病(T1D)は、漸進的にインスリン分泌性β細胞の枯渇をもたらし最終的には臨床的に有意な高血糖および代謝的不安定性に達する、自己免疫疾患である(Atkinson et al., 2014)。全体として、T1Dは、糖尿病のおよそ5%を占め、全世界で約2千万人が罹患している(Menke et al., 2013)。約125万人のアメリカ人がT1Dを有し、米国において毎年推定40,000人が新たにT1Dと診断される(米国糖尿病学会、Diabetes Care 37, 2014)。TD1は米国において、医療費および逸失収入のような間接的なコストも考慮に入れると、年間144億ドルの経済負担と関連している。
【0010】
治療的インスリンおよび外的血糖降下剤に基づくその他の治療は、T1Dを治癒はせず、単に血中のグルコースレベルを管理する解決策を提供するだけである。患者は血中グルコースレベルが変動しやすいままであり、微小血管および大血管の糖尿病性合併症が発生しやすいままとなる(Peng et al., 2018)。
【0011】
糖尿病患者から自己免疫基質を除去するための安全な治療介入が欠けている。TD1における自己免疫は多くの方面の免疫応答を含む(Snarski et al 2016; Cantu-Rodriguez et al., 2016)。従って、抗体、融合タンパク質、サイトカイン、制御性T細胞、および小分子阻害剤の使用に基づく抗原特異的免疫療法は、T1Dの患者において、いくらかの程度のβ細胞保存と血中グルコースレベル低減をもたらすだけである(Kim et al., 2013)。組み合わされたとしても、自己免疫レパートリーの特定の成分を標的とする免疫療法はインスリン非依存性の回復を保証することができなかった(Bone et al., 2017)。
【0012】
自己造血幹細胞移植(HSCT:hematopoietic stem cell transplantation)は、これまでのところT1D治癒が証明された唯一の戦略である(Voltarelli et al., 2007)。多発性硬化症、全身性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病その他のような自己免疫疾患(AD:autoimmune disease)のための治療的選択肢として、12年間に渡り自己HSCTが行われてきた(Swart et al., 2017)。より強力でより広範なこの免疫学的アプローチは、高用量免疫抑制を用いて行われる「免疫リセット」にあり、それは自己反応性T-およびB-細胞応答の非特異的抑止とそれに続く寛容性免疫系の再構築のための造血幹細胞移植とを含む。特筆すべきことに、臨床治験において、このアプローチにより、80%に及ぶT1D患者が、インスリン非依存の期間、およびそれに並行して混合食負荷試験における関連するC-ペプチドレベルの増加を経験することができた(Couri et al., 2018)。しかしながら、T1Dのための治療的アプローチとしての免疫リセットの採用は、深刻な懸念によって妨げられている。
【0013】
HSCT手順に付随するリスクは、T1Dのために提供されるポジティブな効果を超えていた。HSCTは依然として著しい毒性および3%にも及ぶ死亡率と関連付けられている(Alexander et al., 2018; Pallera et al., 2004; Henig et al., 2014)。さらに、免疫リセットのための現行のプロトコールは、細胞毒性免疫抑制レジメン(例えば化学療法、放射線療法)に基づいており、これは、感染の短期的リスク、急性臓器不全および死亡、ならびに悪性腫瘍および二次的自己免疫疾患の長期的リスクを含む一連の安全性問題に患者を晒すものである(Daikeler et al., 2012)。
【0014】
HSCTで治療されたほとんど全てのT1D患者が外的インスリンの使用を再開し、プレコンディショニング(PC)後の自己免疫性病態生理学的基質の不完全な除去の効果として(Loh et al., 2007)、後にCペプチドレベルの減少を伴った(Magdalena et al., 2018)。移植コンディショニングレジメンの強度を増加したり、治療成績を改善させるために手順を反復したりすることは、過度なリスクと毒性に患者を晒すことになる(Couri et al., 2018)。
【0015】
HSCTは高いコストを付随しており、それは、HSCT前に投与されるコンディショニングレジメン、移植の種類、および入院加療に関連する入院費用に依存しておよそ80,000から300,000米ドルに渡る(Broder et al., 2017)。
***
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
自己免疫性障害およびその他のリンパ球媒介性疾患のさらなる処置法の必要性が存在する。HSCTよりもシンプルで費用が低いさらなる処置法が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、高用量のグルココルチコイドが、他の細胞の細胞カウントに実質的に影響を与えることなく末梢血リンパ球のリンパ球枯渇を起こすように作用し得るという驚くべき発見に基づく。胚中心の除去のようなさらなる作用も、この発明の特定の側面を支える。本発明は、リンパ球媒介性疾患の処置における使用のために、高用量グルココルチコイドアゴニストのこれらの作用の医学的応用を提供する。
【0018】
従って、第1の側面において、本発明は、対象におけるリンパ球媒介性疾患の処置における使用のための、グルココルチコイドを含む医薬組成物を提供し、その処置は、デキサメタゾン塩基(dexamethasone base)の約3~26 mg/kgヒト等価用量(HED:human equivalent dose)と等価な用量においてグルココルチコイドを患者に送達する医薬組成物の用量を投与することを含む。グルココルチコイドのこの用量は、「急性高用量」と呼ばれ得る。いくつかの実施形態において、患者への医薬組成物の用量は、デキサメタゾン塩基の約10~26 mg/kgまたは約12~26 mg/kgのヒト等価用量(HED)と等価な用量においてグルココルチコイドを送達する。医薬組成物は、本明細書で定義される、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい(含まなくてもよい)。医薬組成物は、本明細書で定義される、薬学的に許容される保存剤を含んでいてもよい(含まなくてもよい)。医薬組成物は、本明細書で定義される、薬学的に許容されるキレート剤を含んでいてもよい(含まなくてもよい)。しかしながら、この側面の全ての実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、保存剤、および/またはキレート剤からなる群から選択される1つ以上の成分を含む。医薬組成物は、いくつかの実施形態では賦形剤も含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数の薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数の薬学的に許容される保存剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数の薬学的に許容されるキレート剤を含む。本発明の実施形態は、対象において全身性のリンパ球枯渇を達成するように作用するものとして定義され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、リンパ球媒介性疾患は自己免疫疾患であり、例えば1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、天疱瘡、および狼瘡からなる群から選択される自己免疫疾患である。本発明のリンパ球枯渇作用がこれらの実施形態の効力を支える。
【0020】
グルココルチコイドは、多くの自己免疫性状態において確立された用途を有するが(Flammer et al., 2011)、免疫リセットのために考慮されたことは全くなかった。さらに、自己細胞移植に先立って患者をプレコンディショニングするための薬学的低用量の使用に基づく研究は、このアプローチが有効ではないことを示していた(Medicines Agency; 2017)。本発明の医薬組成物の、複数のインビボ効果に基づく複雑な作用様式は、糖尿病のような自己免疫性状態の処置のための安全な免疫リセットレジメンとして使用することができる、化学療法の最初の有効な代替を提供する。
【0021】
いくつかの有利な点が、医薬組成物の作用に関して本発明に付随しており、それらは以下の点を含む。(i)骨髄非破壊的な免疫リセット:本医薬組成物は、例えば、糖尿病自己免疫の原因となる島特異的自己反応性T細胞を含む、末梢血リンパ球の全タイプを枯渇させることができるが、特異的受容体媒介による作用様式に基づいて好中球、血小板、RBC、および幹細胞(HSCとMSCの両方)を温存させる。従って本発明は、感染のリスクを低減させ、免疫リセット後に血液細胞を回復させるというHSCTの必要性を除去する。その結果が、化学療法に匹敵する効力を有する安全な免疫リセットを実行できる、骨髄非破壊的なレジメンとなる。(ii)二次リンパ組織中の胚中心(GC:germinal center)および辺縁帯(marginal zone)の低減。本医薬組成物は、自己免疫病態生理学的基質に対する効力を増加させる抗親和性抗体と長期生存形質細胞を生成する二次リンパ器官における胚中心(DeFranco et al., 2016)を一時的に除去する。(iii)シンプルな投与様式。本医薬組成物は、経口または静脈内の投与ルートのために製剤することができるため数時間以内で有効になり、リンパ球およびGCの回復は7~14日以内に起こる。リンパ球枯渇の完了が入院を必要としないのはこれが初めてのことである。(iv)再発の可能性の低減。化学療法や放射線とは異なり、本発明の医薬組成物は、再発の原因となるメモリーTおよびB細胞を除去するための完全なリンパ球枯渇用量において安全に投与することができる。(v)再投与の許容性。自己免疫病態生理学的基質が再発する場合に、高用量のグルココルチコイドの安全性プロファイルにより、本発明の医薬組成物の反復的投与が許容される。
【0022】
本明細書で開示される、本発明に関連するこれらの作用および利点は、自己免疫疾患および本明細書で論じられるその他のリンパ球媒介性疾患を処置するための有効な戦略を本発明が提供することを当業者が理解することを意味する。
【0023】
いくつかの実施形態において、リンパ球媒介性疾患は残存HIV疾患である。これらの実施形態では、本明細書に記述されるように、対象のリンパ器官中の胚中心数の減少が、これらの中心におけるニッチに結合する残存HIV感染T細胞を循環中へと押しやり、そこで残存HIV感染T細胞が免疫系または標準的療法によって除去されることができるようになる。本開示の文脈において、ウイルスがTリンパ球に感染するという意味でHIVはリンパ球媒介性疾患であることを当業者は理解する。本発明のリンパ球枯渇作用はこれらの実施形態の効力にも寄与する。
【0024】
他の実施形態において、リンパ球媒介性疾患はリンパ腫であり、例えば胚中心リンパ腫(GCリンパ腫)または辺縁帯リンパ腫である。これらの実施形態では、本明細書に記述されるように、対象のリンパ器官中の胚中心数の減少が、これらの中心におけるニッチに結合する癌細胞(例えば胚中心リンパ腫)を循環中へと押しやり、そこで癌細胞が免疫系または標準的療法によって除去されることができるようになる。標準的な癌療法には例えば化学療法が含まれることを当業者は認識するであろう。従って、本明細書で記述されるグルココルチコイドに基づく療法は、化学療法と組み合わされて使用されてもよく、好ましくは強度が低減された細胞毒性化学療法と組み合わされて使用され得る(その場合、本明細書記載の高用量グルココルチコイドと組み合わされない同じ化学療法の有効用量よりも、本明細書記載の高用量グルココルチコイドに基づく療法と組み合わされて使用されるときの化学療法の有効用量の方が小さい)。本発明のリンパ球枯渇作用はこれらの実施形態の効力にも寄与する。特定の実施形態において、バーキットリンパ腫(BL:Burkitt’s Lymphoma)の処置が特に企図される。アフリカでは、BLの治療は、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびメトトレキサートという3つの化学療法薬の組合せ(全身および髄腔内)を中心とする。この組合せが12週間合計6サイクルに渡り2週間間隔で繰り返される(Burkitt’s Lymphoma National Treatment Guidelines. 2009)。より低用量のデキサメタゾンは現在WHOの必須医薬のリストに掲載されているが、しかしながら、既存WHOリスト上のデキサメタゾン製品はBL処置には適していない。なぜなら、本発明の高用量では、コンタミネーションおよび患者における重篤もしくは致死的な感染をもたらし得る複合バイアルが必要になり、複合により毒性レベルに達するベンジルアルコールもしくはパラベンのような賦形剤ももたらし得るからである。
【0025】
さらに別の実施形態において、リンパ球媒介性疾患は移植片対宿主疾患(GvHD:graft versus host disease)である。GvHDは、遺伝子が異なる人からの移植組織を提供された後の医学的合併症である。GvHDは自己移植片の場合でも起こり得るが、これは、自己細胞のプロセスおよび貯蔵により、移植細胞が身体を外来性と認識するようになることによって引き起こされる可能性が高い。GvHDでは、供与される組織(移植片)内に残るドナーの免疫系の白血球が、レシピエント(宿主)を外来性(非自己)として認識する。移植される組織内に存在する白血球は、その後レシピエントの身体の細胞を攻撃し、この疾患状態をもたらす。GvHDは、例えば骨髄移植で起こるもののように、幹細胞移植に一般的に付随する。GvHDは、実質臓器移植のような他の形態の移植組織にも適用される。本発明のリンパ球枯渇作用はこれらの実施形態の効力にも寄与する。
【0026】
別の実施形態において、リンパ球媒介性疾患はアレルギー性障害である。これには慢性アレルギーおよび急性アレルギーが含まれる。例えば、本発明の医薬組成物は喘息の処置において使用され得る。本発明のリンパ球枯渇作用はこれらの実施形態の効力にも寄与する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、保存剤および/またはキレート剤を含む。いくつかの実施形態において、本医薬組成物は保存剤を含む。好ましくは、保存剤は亜硫酸塩である。いくつかの実施形態において、本医薬組成物はキレート剤を含み、それはEDTAであり得る。
【0028】
好ましい実施形態において、医薬組成物のグルココルチコイドはデキサメタゾンを含む。これは、デキサメタゾン塩基、リン酸デキサメタゾンナトリウム、または酢酸デキサメタゾンの形態であり得る。最も好ましくは、グルココルチコイドはリン酸デキサメタゾンナトリウムである。
【0029】
上述したように、また特許請求の範囲により規定されるように、本発明の医薬組成物は、リンパ球媒介性疾患の処置における使用のためのものである。処置は、医薬組成物の用量を単一の急性用量として投与することを含み得る。あるいは、処置は、医薬組成物の用量を約72時間の期間に渡り投与される合計用量として投与することを含む。
【0030】
リンパ球媒介性疾患の処置は、抗炎症、免疫抑制、リンパ球除去、胚中心除去、IL-2、IL-7、IL-12および/もしくはIL-15の上昇、間葉系幹細胞の上昇、G-CSF増加、または好中球増加を必要とする患者への組成物の投与を含む。さらに、リンパ球媒介性疾患の処置は、PD-1もしくはPD-L1またはCTLA-4の発現における検出可能な変化をもたらし得る。
【0031】
上述したように、また特許請求の範囲により規定されるように、本発明の医薬組成物は、リンパ球媒介性疾患の処置における使用のためのものであり、その処置は、医薬組成物の用量を患者に投与することを含む。医薬組成物は静脈内(IV)または経口で投与され得る。静脈内投与が行われる場合、好ましくは、用量は0.25~2時間にわたる単一IV注入として投与される。注入される組成物は、生理食塩水もしくは2分の1生理食塩水、もしくは乳酸リンゲル液もしくは5%デキストロースまたはその他の標準的IV溶液中にあり得る。経口投与のためには、組成物は、少量のジュースまたは甘味料と混合された単一経口用量として提供され得る。
【0032】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、グルココルチコイド水溶液として提供される。これは、これらの実施形態の医薬組成物では溶媒として水が使用されることを意味することを当業者は理解するであろう。
【0033】
本発明に従う使用のための医薬組成物は、少なくとも約3 mg/kg、少なくとも約4 mg/kg、少なくとも約5 mg/kg、少なくとも約6 mg/kg、少なくとも約7 mg/kg、少なくとも約8 mg/kg、少なくとも約9 mg/kg、少なくとも約10 mg/kg、少なくとも約11 mg/kg、少なくとも約12 mg/kg、または少なくとも約13 mg/kg、または少なくとも約14 mg/kg、または少なくとも約15 mg/kg、または少なくとも約16 mg/kg、または少なくとも約17 mg/kg、または少なくとも約18 mg/kg、または少なくとも約19 mg/kg、または少なくとも約20 mg/kg、または少なくとも約21 mg/kg、または少なくとも約22 mg/kg、または少なくとも約23 mg/kg、または少なくとも約24 mg/kg、または少なくとも約25 mg/kg、または少なくとも約26 mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量のグルココルチコイドを送達するように投与される。医薬組成物の用量は、デキサメタゾン塩基のHEDと等価な用量の「範囲」からとられる値と等価な用量におけるグルココルチコイドを送達するものとして定義され得、ここでいう範囲は、上記の値のリストから選択されるエンドポイントにより定義され、例えば約10 mg/kg~26 mg/kg、あるいは約15 mg/kg~25 mg/kg(または上記リストからの任意の2つの値)である。好ましい実施形態において、対象はヒトであり、グルココルチコイドはデキサメタゾン塩基を含有し、医薬組成物は、約3.0~約18.0 mg/kgのデキサメタゾン塩基の用量にてヒト対象に投与される。
【0034】
本発明により達成されるリンパ球枯渇は、従来からの手法を利用して測定できることを当業者は理解する。例えば、本医薬組成物が投与された後に(例えばその投与の48時間後に)、CD4+、CD8+、Tregおよび/またはB細胞の集団を測定することができる。フローサイトメトリーは細胞カウントを実行するために使用され得る1つの典型的な方法である。
【0035】
本発明は、本明細書に記述されるように他の治療的アプローチと共に、例えば化学療法および/または細胞ベースの療法と共に使用され得ることを当業者は理解する。これらの実施形態において、対象には化学療法が投与され得る。これらの実施形態において、対象には細胞ベースの療法が投与され得る。しかしながら、本発明のほとんどの実施形態には、化学療法も細胞ベースの療法も関わらない。すなわち、いくつかの実施形態では、対象には化学療法が投与されない。いくつかの実施形態では、対象には細胞ベースの療法が投与されない。
【0036】
本発明の作用機序は本明細書において詳細に論じられるが、これらの機序は、いくつかの例においては本発明を区別させる特徴の一部を形成し得、特にその機序が新たな臨床的状況を切り開く(例えば患者のサブグループを対象として選別できるようにすることにより)場合にはそうである。
【0037】
ここで、添付の図面を参照しながら、本発明の原理を例証する実施形態および実験を論ずる。図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】急性高用量のデキサメタゾンは、マウスの脾臓および二次リンパ組織における結合ニッチを除去する。脾臓摘出の96時間前にヒト等価用量(HED)9.3 mg kgのデキサメタゾン塩基をIP投与されたマウスからの新鮮な脾臓厚切片をFITC-PNAで染色して胚中心を定量化したものである、白黒スケールの明視野(上)および免疫蛍光(下)画像を示す。グラフは、脾臓摘出の96時間前にIPプラセボ対照およびIP HED 9.3 mg kgデキサメタゾン塩基(Dex)を投与されたマウスについての、脾臓面積あたりの平均胚中心数と標準誤差(SEM)の棒グラフを示す。対照マウスは著しいFITC-PNA免疫蛍光を有する一方、デキサメタゾンを注射されたマウスは免疫蛍光シグナルをほとんど有していない。
【0039】
図2】急性高用量デキサメタゾンは、マウス脾臓における結合ニッチを用量依存的に除去する。FITC-PNAで染色された新鮮な脾臓厚切片の免疫蛍光染色を使用して測定された、平均胚中心染色強度の棒グラフを示す。免疫蛍光強度は、閾値化(thresholding)およびMetaMorph画像分析を使用して算出した。棒グラフは平均プラスSEMである。脾臓摘出の48時間前に、プラセボ、または3mg/kg HED、6 mg/kg HED、9 mg/kg HED、もしくは12 mg/kg HEDのデキサメタゾン塩基がマウスに投与された。HED 6 mg/kgにおいて胚中心の低減が明らかであり、9および12 mg/kg用量のHEDでは著しく低減している。
【0040】
図3】急性高用量デキサメタゾンは、ラット脾臓(MZ:辺縁帯)における結合ニッチを除去する。脾臓摘出の48時間前に、プラセボ、または20 mg/kg(HED 3.23 mg/kg)、40 mg/kg(HED 6.45 mg/kg)もしくは80 mg/kg(HED 12.9 mg/kg)のデキサメタゾン塩基でIVまたはPO処置されたラットからの5ミクロン脾臓切片で測定された辺縁帯幅の棒フラフを示す。辺縁帯面積は、全てのデキサメタゾン用量において低減し、12.9 mg/kg HEDにおいて最大抑制が得られた。n = 群あたり5。* p<0.05 ANOVA(ダネットの事後検定)vs.ビヒクルIV;†p<0.05 ANOVA(ダネットの事後検定)vs.ビヒクルPO;‡p<0.05ステューデントのt検定vs. ビヒクルIV。
【0041】
図4】急性高用量デキサメタゾンは、ラット脾臓における結合ニッチを除去する。切片あたりの平均として与えられる胚中心数の測定値としての、5ミクロン固定脾臓切片BCL-6染色の脾臓当たり面積の棒グラフを示す。脾臓摘出の48時間前に、プラセボ、または20 mg/kg(HED 3.23 mg/kg)、40 mg/kg(HED 6.45)もしくは80 mg/kg(HED 12.9 mg/kg)のデキサメタゾン塩基でラットをIVまたはPO処置した。胚中心面積は、全てのデキサメタゾン用量において低減し、12.9 mg/kg HEDにおいて最大抑制が得られた。群(Group)1-4 IV:1 = 20 mg/kg (HED 3.23 mg/kg)、2 = 40 mg/kg (HED 6.45 mg/kg)、3 = 80 mg/kg (HED 12.9 mg/kg)、4 = プラセボ。群5-9 PO:5 = 20 mg/kg (HED 3.23 mg/kg)、6 = 40 mg/kg (HED 6.45 mg/kg)、7 = 80 mg/kg (HED 12.9 mg/kg)、8 = プラセボ。
【0042】
図5】急性高用量デキサメタゾンは、胸腺質量を低減させる。写真は、プラセボ処置されたマウス対象からの胸腺(上写真)および本発明の医薬組成物の6 mg/kg HED用量で処置されたマウス対象の胸腺(下写真)のサイズを示す。下パネルは、プラセボ処置された対象(対照)、ならびに3 mg/kg HED、6 mg/kg HED、9 mg/kg HEDおよび12 mg/kg HEDにおける本発明の医薬組成物で処置された対象の胸腺の、体重(body weight)に対する胸腺重量のパーセンテージを示す。
【0043】
図6】急性高用量デキサメタゾンは、ラットのリンパ球数を低減させる。プラセボ、または20 mg/kg(HED 3.23 mg/kg)、40 mg/kg(HED 6.45)もしくは80 mg/kg(HED 12.9 mg/kg)のデキサメタゾン塩基でラットをIV(右)またはPO(左)処置した48時間後に全血球計算により測定した、個々のリンパ球絶対数および平均値のグラフを示す。デキサメタゾンは採血の48時間前に投与された。IV投薬(右)であるか経口投薬(左)であるかに関わらず、ラットにおいて、対照と比較してすべての用量において著しいリンパ球枯渇が観察された。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。
【0044】
図7】急性高用量デキサメタゾンは、ラットの好中球数を減少させない。プラセボ、または20 mg/kg(HED 3.23 mg/kg)、40 mg/kg(HED 6.45)もしくは80 mg/kg(HED 12.9 mg/kg)のデキサメタゾン塩基でラットをIV(右)またはPO(左)処置した48時間後に全血球計算により測定した、個々の好中球絶対数および平均値のグラフを示す。図3、46のデータは同じラットからのものである。急性高用量デキサメタゾンは好中球を温存するリンパ球枯渇プロファイルを有している。経口(左)およびIV(右)の用量は採血の48時間前に1回投与された。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。
【0045】
図8】CD3およびCD4陽性リンパ球。プラセボ、またはHED 3 mg/kg、HED 6 mg/kg、HED 9 mg/kg、もしくはHED 12.mg/kgのデキサメタゾン塩基でマウスをPO処置した48時間後に、フローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され、全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のCD3+(左)およびCD4+(右)リンパ球ならびに平均数のグラフ。相対カウント/ul=フローサイトメトリーと全血球計算が組み合わされている。対照と比較して、12 mg/kg群では、CD3+細胞の65%低減、CD4+細胞の75%低減があった。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。一元配置ANOVAに続いてチューキーの検定を組み入れて、処置群間の統計学的有意差を決定した;* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001。
【0046】
図9】急性高用量デキサメタゾンは、マウスのCD8陽性リンパ球およびTregを低減させる。プラセボ、またはHED 3 mg/kg、HED 6 mg/kg、HED 9 mg/kg、もしくはHED 12.mg/kgのデキサメタゾン塩基でマウスをPO処置した48時間後に、フローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され、全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のCD8+(左)およびTreg(右)リンパ球ならびに平均数のグラフを示している。Tregリンパ球はCD3+CD4+CD25+FoxP3+であることによって同定された。相対カウント/ul=フローサイトメトリーと全血球計算が組み合わされている。対照と比較して、12 mg/kg群では、CD8+細胞の56%低減、マウスTregの78%低減があった。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。一元配置ANOVAに続いてチューキーの事後検定を組み入れて、処置群間の統計学的有意差を決定した;* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001。
【0047】
図10】急性高用量デキサメタゾンは、マウスのNK細胞およびBリンパ球を低減させる。プラセボ、またはHED 3 mg/kg、HED 6 mg/kg、HED 9 mg/kg、もしくはHED 12.mg/kgのデキサメタゾン塩基でマウスをPO処置した48時間後に、フローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され、全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のナチュラルキラー(NK)細胞(左)およびBリンパ球(右)ならびに平均数のグラフを示している。NK細胞はCD3-CD49b+であることによって同定された。Bリンパ球はCD3-B220+であることによって同定された。相対カウント/ul=フローサイトメトリーと全血球計算が組み合わされている。対照と比較して、12 mg/kg群では、NK細胞の87%低減、Bリンパ球の83%低減があった。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。一元配置ANOVAに続いてチューキーの事後検定を組み入れて、処置群間の統計学的有意差を決定した;* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001。
【0048】
図11】急性高用量デキサメタゾンは、マウスのリンパ球絶対数を低減させるが好中球は温存させる。プラセボ、またはHED 3 mg/kg、HED 6 mg/kg、HED 9 mg/kg、HED 12.mg/kg、もしくはHED 17.5 mg/kgのデキサメタゾン塩基でマウスをPO処置した24~48時間後に全血球計算により測定された、個々の好中球絶対数(左)およびリンパ球総数(右)ならびに平均数のグラフを示している。細胞/ul=全血球計算(CBC:complete blood counts)から得られた絶対数。急性高用量デキサメタゾンは、12 mg/kg超のHED用量においてほぼ完全なリンパ球除去を引き起こすが、好中球には影響しない。したがって急性高用量デキサメタゾンは、輸液の必要性を排除し、化学療法レジメンより安全で非毒性な代替物を提供する。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。
【0049】
図12】急性高用量デキサメタゾンは、マウスのRBCおよび血小板を温存させる。プラセボ、またはHED 3 mg/kg、HED 6 mg/kg、HED 9 mg/kg、HED 12.mg/kg、もしくはHED 17.5 mg/kgのデキサメタゾン塩基でマウスをPO処置した24~48時間後に全血球計算により測定された、個々のRBC(左)および血小板(右)絶対数ならびに平均数のグラフを示している。細胞/ul=CBCから得られた絶対数。急性高用量デキサメタゾンはRBCおよび血小板には影響せず、輸液の必要性を排除し、したがって化学療法レジメンより安全で非毒性な代替物を提供する。用量はHED(ヒト等価用量)として示している。
【0050】
図13】プラセボ(ベヒクル)、または急性高用量デキサメタゾンの低用量もしくは高用量でナイーブマウスを処置した48時間後に測定された生存造血幹細胞の数を示している。急性高用量デキサメタゾンの高用量であっても生存造血幹細胞の数を有意に変えることはなかった。急性高用量デキサメタゾンにより表されるこの骨髄非破壊的レジメンは、したがって、免疫リセット後の造血回復のための幹細胞の注入の必要性を除去し得る。
【0051】
図14】3 mg/kgデキサメタゾン塩基を用いて処置されたヒト患者のうち50パーセント(4人のうち2人)が、CD3、CD4およびCD8陽性リンパ球を枯渇させた。4人のヒト患者への3 mg/kgデキサメタゾン塩基の経口投与の、処置前および処置48時間後の、フローサイトメトリーによって測定されたCD3+、CD4+およびCD8+リンパ球の個々の値および線プロットを示している。各患者の処置前の値は、接続線によって処置後の値とつなげられている。CD4+細胞はCD3+でもある。CD8+細胞はCD3+でもある。
【0052】
図15】3mg/kgデキサメタゾン塩基を用いて処置されたヒト患者のうち25パーセント(4人のうち1人)が、TregおよびBリンパ球を枯渇させた。線は、4人のヒト患者への3mg/kgデキサメタゾン塩基の経口投与の前および48時間後の、フローサイトメトリーによって測定されたTregおよびBリンパ球の個々の値および線プロットである。各患者の処置前の値は、接続線によって処置後の値とつなげられている。Tregは、CD3+CD4+CD25+FoxP3+であることによって同定される。Bリンパ球は、CD3-CD19+であることによって同定される。
【0053】
図16】3mg/kgデキサメタゾン塩基を用いて処置されたヒト患者のうち75パーセント(4人のうち3人)が、造血幹細胞は温存させながらNK細胞を枯渇させた。線は、4人のヒト患者への3mg/kgデキサメタゾン塩基の経口投与の、処置前および処置48時間後の、フローサイトメトリーによって測定されたNK細胞および造血幹細胞(HSC:Hematopoietic Stem Cell)の個々の値および線プロットである。各患者の処置前の値は、接続線によって処置後の値とつなげられている。NK細胞は、CD3-CD16/56+であることによって同定される。HSCは、CD34+CD38-であることによって同定される。
【0054】
図17】3mg/kgデキサメタゾン塩基を用いて処置されたヒト患者のうち100パーセントが、血清IL-2および/またはIL-15レベルの増大を示したが、IL-6の上昇は示さなかった。4人のヒト患者への3mg/kgデキサメタゾン塩基の経口投与の、処置前(Pre)および処置48時間後(Post)に、ProCartaPlex-9plx Luminexアッセイによって測定されたインターロイキン2およびインターロイキン15の血漿レベルの、各患者のカラムプロット。図14図15図16および図17は、同じ4人のヒト患者から得たデータを示す。
【0055】
図18】3mg/kgデキサメタゾン塩基の経口投与が、48時間後の骨髄MSC数を増加させた。31人の歴史的未処置対照ヒトから得たデータのカラムプロットと標準偏差、および、MarrowCellution(商標)ニードルを使用して腸骨稜から濃骨髄を吸引する48時間前に3mg/kgデキサメタゾン塩基を用いて処置された2人のヒト患者から得たデータのカラムプロット。プロットは骨髄CFU/ml +/-標準偏差を示している。骨髄は、制御された室温での採取および発送の24時間後に、さらなる操作を行わずにコロニー形成単位アッセイ線維芽細胞(CFU-F)培地に直接添加された。CFU-Fコロニー数は、出発材料中の間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)数の尺度である。3mg/kgのデキサメタゾン塩基の経口投与の48時間後に、腸骨稜(ileac crest)骨髄MSC数は、31人の歴史的対照の約2倍まで高く現れる。3 mg/kg経口デキサメタゾン塩基は48時間後に、患者MおよびPと同じようにMarrowCellution(商標)ニードルを使用して吸引が行われた31人の歴史的対照と比較して、ml当たりのヒト骨髄CFU-Fを上昇させる。
【0056】
図19】-2日目における12 mg/kgおよび17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基の経口用量を、-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgとの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたもの、ならびに、-5および-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)と比較する図である。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目におけるIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後に全血球計算により測定された、個々のリンパ球絶対数および平均数(左)のグラフを示す。これらのレジメンのマウスにおける投薬スケジュールを表したものも示している(右)。
【0057】
図20】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、-5日目と-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)と比べて、CD3+およびCD4+リンパ球を同等にリンパ球枯渇させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後にフローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のCD3+(左)およびCD4+(右)リンパ球数と平均数のグラフを示す。CD3+のプロット(左)およびCD4+のプロット(右)の両方において、12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基のデータは各々の右側のカラムに示している(相対カウントが「92」「71」「37」および「25」である)。
【0058】
図21】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、-5日目と-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)と比べて、CD8+リンパ球およびTregを同等にリンパ球枯渇させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後にフローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のTreg(右)およびCD8+リンパ球(左)数と平均数のグラフを示す。CD8+のプロット(左)およびCD4+のプロット(右)の両方において、12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基のデータは各々の右側のカラムに示している(相対カウントが「33」「1.4」「0.2」および「0.5」である)。
【0059】
図22】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、-5日目と-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)と比べて、NK細胞およびBリンパ球を同等にリンパ球枯渇させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後にフローサイトメトリーにより相対カウントとして測定され全血球計算を用いた相対的絶対数に対して標準化した、個々のBリンパ球(左)およびNK細胞(右)数と平均数のグラフを示す。B細胞のプロット(左)およびNK細胞のプロット(右)の両方において、12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基のデータは各々の右側のカラムに示している(相対カウントはB細胞について「111」「58」である;NK細胞については示していない)。
【0060】
図23】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、-5日目と-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)と比べて、リンパ球絶対数を同等にリンパ球枯渇させたが、好中球は温存させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後に全血球計算により測定した、個々の好中球絶対数(左)およびリンパ球絶対数(右)数と平均数のグラフを示す。好中球のプロット(左)およびリンパ球のプロット(右)の両方において、12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基のデータは各々の右側のカラムに示している(相対カウントが「321」「605」「521」および「88」である)。
【0061】
図24】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)の単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、赤血球(RBC:red blood cell)および血小板を温存させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後に全血球計算により測定した、個々の血小板絶対数(左)およびRBC絶対数(右)数と平均数のグラフを示す。RBCのプロット(左)および血小板のプロット(右)の両方において、12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基のデータは各々の右側のカラムに示している(相対カウントが「10」「10」「348」および「373」である)。
【0062】
図25】-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)とフルダラビン10 mg/kgの単回用量を-2日目における12 mg/kgまたは17~18 mg/kgのデキサメタゾン塩基と組み合わせたものは、-5日目と-4日目における2日間の反復シクロホスファミド166 mg/kgおよび-5、-4、-3、-2日目における4日間のフルダラビン10 mg/kgと比べて、毒性の尺度である体重を温存させた。マウスに、PBS(ベヒクル)によるIP処置、または、-5日目および-4日目における反復IPシクロホスファミド166 mg/kgと-5、-4、-3、-2日目における4日間のIPフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)による処置(Flu+Cy)、または、どちらも-5日目におけるシクロホスファミド166 mg/kg(HED 500 mg/m2)の単回IP用量とIPフルダラビン10 mg/kgによる処置に続く-2日目における12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(Flu+Cy + AVM0703(12 mg/kg);Flu+Cy + AVM0703(17 mg/kg))、または、12 mg/kgもしくは17~18 mg/kgの経口デキサメタゾン塩基の処置(AVM0703(12 mg/kg);AVM0703(17 mg/kg))をしてから48時間後の体重を、処置前の体重から差し引くことにより計算された、個々の体重変化および平均値のグラフを示す(左)。急性高用量デキサメタゾンの群は、化学療法の群と違って、体重減少を伴っていない。従って急性高用量デキサメタゾンは、化学療法と同様のリンパ球枯渇効果を提供するが毒性は伴わない。これらのレジメンにおける投薬スケジュールを表したものも示している(右)。
【0063】
図26】15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)と標準的化学療法レジメンとの比較:抗腫瘍効力。20匹のB細胞リンパ腫マウス(8~10週齢)を、PBS(対照)、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)、または1サイクルもしくは2サイクルのシクロホスファミド100 mg/kg i.p、ドキソルビシン6 mg/kg i.p、ビンクリスチン0.1 mg/kg i.pおよびデキサメタゾン0.2 mg/kg i.p(CHOP)で処置した。1サイクルCHOPのための投薬は第0日目に行い、2サイクルchopマウスは第0日目と第10日目に投薬され、デキサメタゾン投薬は第7、10、18、23、24、28、35、および42日目に行った(矢印で示している)。腫瘍体積(mm3)を2~3日毎に測定して、腫瘍成長についてマウスを追跡調査した。腫瘍体積のコントロールという点において、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDの効力は1サイクルのCHOPより大きいが、2サイクルのCHOPほど効果的ではない。しかしながら、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDは、2サイクルのCHOPと比べてはるかに好ましい毒性プロファイルを伴っていた。
【0064】
図27】15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)と標準的化学療法レジメンとの比較:毒性。パネルAは、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)についてのパーセント体重変化をPBS対照と比較して示している。パネルBは、1サイクルもしくは2サイクルのシクロホスファミド100 mg/kg i.p、ドキソルビシン6 mg/kg i.p、ビンクリスチン0.1 mg/kg i.pおよびデキサメタゾン0.2 mg/kg i.p(CHOP)についてのパーセント体重変化をPBS対照と比較して示している。2サイクルのCHOPで処置されたマウスで見られる体重減少(B)は、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDで処置されたマウスで見られるもの(A)よりはるかに大きい。さらに、2サイクルのCHOPで処置されたマウスの18%がCHOP処置により死亡したが、デキサメタゾン処置により死亡したマウスはいなかった。
【0065】
図28】15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)とPBS対照との統計学的比較。20匹のB細胞リンパ腫マウス(8~10週齢)を、PBS(対照)または15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(AVM0703)で処置した。デキサメタゾン投薬は第7、10、18、23、および24日目に行った(矢印で示している)。腫瘍体積(mm3)を2~3日毎に測定して、腫瘍成長についてマウスを追跡調査した。腫瘍成長の低減により示されるように、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HED(黒四角)の効力はPBS対照(黒丸)より大きかった。腫瘍体積における統計学的に有意な差が15、17、および20日目に見られた。
【0066】
図29】グルココルチコイド療法は、有効な化学療法のための必要用量を低減させる。PBSのみ(「対照」)またはデキサメタゾン塩基(「AVM0703」)で処置された、腫瘍を有する対象は、継続した腫瘍成長を示し、20日経過後には概して高い成長率を有している。第11日目にAVM0703で処置された後に第14日目に一用量のCy/Flu化学療法で処置された(「組合せ」)腫瘍を有する対象は、腫瘍体積の着実かつ持続した低減を示し、それは11日目および14日目における二用量のCy/Flu化学療法(「Cy/Flu」)で処置された対象の腫瘍と同様の態様である。
【0067】
図30】高用量グルココルチコイド療法は、体重に有意な影響を与えることなく、腫瘍密度を低減させる。腫瘍の確立後、週に6 mg/Kg HED、週に15 mg/Kg HED、または週に21 mg/Kg HEDにおけるグルココルチコイドAVM0703の週毎の用量の投与に続いて対象の腫瘍密度を測定した(左パネル)。調査期間にわたるマウスの体重も示している(右パネル)。点線は、調査の開始時におけるマウスの平均重量の20%損失を表す。毒性による有意な体重損失は見られず、斃れるマウスはいなかった。
【発明を実施するための形態】
【0068】
細胞毒性化学療法剤は、受容体媒介性ではない機序または手段を介して細胞死を引き起こす。細胞毒性化学療法剤は、細胞分裂、代謝、または細胞生存のために必要な機能に干渉することにより細胞死を引き起こす。この作用機序のために、急速に成長している細胞(増殖していることまたは分裂していることを意味する)、または代謝的に活発な細胞は、そうでない細胞よりも優先的に殺される。身体中で分裂しているまたはエネルギーを使用している(これは細胞の機能を支持する代謝活動である)ときの異なる細胞の状態が、細胞死を引き起こす化学療法剤の用量を決定する。本発明で利用されるグルココルチコイドは細胞毒性化学療法剤ではないことを当業者は理解するであろう。細胞毒性化学療法とは、非排他的に、アルキル化剤、抗代謝剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗悪性腫瘍薬および三酸化ヒ素、カルムスチン、フルダラビン、IDA ara-C、マイロターグ、GO、マスタージェン、シクロホスファミド、ゲムシタビン、ベンダムスチン、全身照射法、シタラビン、エトポシド、メルファラン、ペントスタチン、および放射線に関係する。
【0069】
本発明は、免疫除去による疾患の処置における使用のための、グルココルチコイドを含む医薬組成物に関する。特に、本発明の組成物は、リンパ球のような免疫細胞により媒介される疾患の処置における使用のためのものであり得る。処置は、医薬組成物の用量を患者に投与して、約3~26 mg/kgヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量のグルココルチコイドを送達することを含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、グルココルチコイドという用語は、グルココルチコイド受容体アゴニスト、およびグルココルチコイド受容体に結合するあらゆる化合物を含む。そのような化合物は、デキサメタゾン、デキサメタゾン含有剤、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾン、プレドニゾン、コルチコン、ブデソニド、ベタメタゾン、およびベクロメタゾンに関係するがこれらに限定されない。ほかのグルココルチコイドとしては、プレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、およびメチルプレドニゾロンが挙げられる。グルココルチコイドにはさらにグルココルチコイド受容体調節アゴニストが含まれる。さらに、選択的グルココルチコイド受容体アゴニストが、本明細書に開示される医薬組成物において使用され得る。そのようなアゴニストあるいは調節剤としては、例えば、選択的グルココルチコイド受容体調節剤(SEGRM:selective glucocorticoid receptor modulator)および選択的グルココルチコイドアゴニスト(SEGRA:selective glucocorticoid receptor agonist)が挙げられる。本明細書に開示される方法および組成物において利用され得るグルココルチコイド、グルココルチコイド受容体調節剤、および選択的グルココルチコイド受容体アゴニスト(SEGRA)は当業者によく知られている。
【0071】
グルココルチコイドおよびグルココルチコイド受容体(GR:glucocorticoid receptor)調節剤は、膜グルココルチコイド受容体と、遺伝子発現を活性化または抑制する細胞質GRとの両方を通してその効果を発揮する。グルココルチコイドおよびGR調節剤の望ましいリンパ球枯渇効果のいくらかは、ゲノム性効果に加えて、膜GRまたはその他の非ゲノム性効果を介していると見られる。興味深いことに、デキサメタゾンを用いた同時処置はグルココルチコイド耐性を低減させることができることが示されている(Serafin et al., 2017)。
【0072】
グルココルチコイドの効果は複雑であり、GRおよびミネラロコルチコイド受容体(MR:mineralocorticoid receptor)に対するそれぞれの特定のグルココルチコイドの親和性に依存する。加えて、現在、細胞質GRのアイソフォームが9つ知られており、同定されたが完全に特徴解析されていないさらなる膜発現性GR受容体が存在している。グルココルチコイドは、投与されるグルココルチコイドの濃度および処置の長さに依存してリンパ球レベルに対して異なる効果を有することが報告されている。一般的に、慢性療法のために典型的に使用される低用量では、グルココルチコイドはリンパ球を末梢血から骨髄中へと再分配させ、中用量ではグルココルチコイドは白血球増多症を引き起こすと報告されておりこれは骨髄、脾臓および胸腺から末梢血中への白血球の再分配であると考えられており、高用量ではグルココルチコイドはアポトーシスおよびネクロトーシスを引き起こすことによりリンパ球に対してリンパ毒性作用を有する。効果の長さも用量レベルに依存し、例えばFauci et al (1976)は、単一経口0.24 mg/kgデキサメタゾン用量が末梢血TおよびBリンパ球を80%抑制し、12時間で回復が開始し24時間までに正常レベルとなると報告している。しかしながら、本発明は、投与後24~48において末梢血TおよびB細胞を低減させるためには3 mg/kg以上の急性経口用量が必要であり、ベースラインレベルへの回復は投薬の5~14日後頃に起こることを実証する。
【0073】
例示的なグルココルチコイドの望まれるインビボ効果は、二次リンパ組織における胚中心および辺縁帯の低減、ある種の癌の直接的腫瘍殺傷(特に、多発性骨髄腫、腎細胞癌、白血病およびリンパ腫、非小細胞肺癌(NSCLC:non-small cell lung cancer)、前立腺癌および乳癌)、全ての末梢血リンパ球タイプの枯渇、BMその他の器官へのリンパ球再分配の欠如、ならびに、IL-2、および/またはIL-7、および/またはIL-12、および/またはIL-15を含む血漿サイトカインの、好ましくは20 pg/ml以上のレベルへの増加を含むがこれらに限定されない。例示的なグルココルチコイドは、ACT誘導性のサイトカイン放出症候群(CRS:cytokine release syndrome)への主要な寄与因子の1つであるIL-6の血漿レベルは増加させない。例示的なグルココルチコイドは、ACT誘導性の神経浮腫への主要な寄与因子の1つであるGM-CSFの血漿レベルは増加させない。約HED 6 mg/kg以上のデキサメタゾンの急性用量は、二次リンパ組織における胚中心および辺縁帯を低減させる。48時間の期間内における約1.6 mg/kg HEDのデキサメタゾンの急性用量は、多発性骨髄腫およびその他の癌細胞系統に対して約50%の直接的腫瘍殺傷能を有し、これは約12 mg/kg HEDまでの用量でも維持されるが増加はしない。約HED 3 mg/kg超のデキサメタゾンの急性用量がリンパ球枯渇のためには必要であり、このことは3 mg/kg HEDで処置された患者の50%がリンパ球増加症を示したという観察により例証されている(図14)。血漿IL-2およびIL-15サイトカイン増加は、約HED 3 mg/kg以上のデキサメタゾン塩基の用量において観察される(図17)。本願に開示される適応症における所望のインビボ効果に基づけば、最も好ましい急性デキサメタゾン塩基用量(公知の計算に基づいて、または本明細書に開示されているように、他のグルココルチコイドの等価用量に変換することができる)は、約HED 9 mg/kg以上となる可能性が最も高い。
【0074】
グルココルチコイドの単一高用量を、経口投与または約1時間のIV注入として与えることができる。約24~約72時間の期間内に合計用量(例えばデキサメタゾンの)が約3 mg/kg~約26 mg/kgとなるように、任意の量における反復的なIVまたは経口用量として合計用量を与えてもよい。
【0075】
別のグルココルチコイドまたはグルココルチコイド受容体調節剤の等価用量は、公的に利用可能なコルチコイド変換アルゴリズム、好ましくはhttp://www.medcalc.comを使用して、簡便にかつ容易に計算することができる。例えば、3~12 mg/kgのデキサメタゾンは、19~75 mg/kgのプレドニゾンに換算される。プレドニゾンの生物学的半減期は約20時間である一方、デキサメタゾンの生物学的半減期は約36~54時間である。従って、等価な生物学的投薬のためにプレドニゾンは24時間毎に19~75 mg/kgが投薬される。より具体的には、12 mg/kgの一用量のデキサメタゾンは、1) 24時間毎の約2~約3用量の反復投薬を要する75 mg/kgの一用量のプレドニゾロンに相当する。10mg/kgの一用量のベタメタゾンは約12 mg/kgのデキサメタゾンでありデキサメタゾンと同様の薬力学的(生物学的)半減期を有する。しかしながらベタメタゾンは約24 mg/50 kgの用量にてRBCを低減させる(Gaur 2017)。
【0076】
本願の実施例におけるDEX(デキサメタゾン塩基)用量はヒト等価用量(HED)として記載される。記載された実施例におけるAVM0703(AugmenStem(商標)またはPlenaStem(商標)としても言及される)は、専売バッファー中のリン酸デキサメタゾンナトリウムとしてのDex(デキサメタゾン塩基)である。
【0077】
ヒト等価用量(HED)を計算するための方法は当技術分野で知られている。例えば、FDAの薬剤評価研究センター(CDER:Centre for Drug Evaluation and Research)は、よく引用されるガイダンス文書を2005年に発行し(米国保健省CDER、2005)、この文書の第7頁の表1において、体表面積に基づいて動物用量をHEDに換算するための確立されたアルゴリズムが提示されている(これは種間で用量を外挿するための、一般に受け容れられている方法である)。参照のために表1を下記に再掲する。下記で説明されるmg/kg単位の動物用量、HEDは、表1の右側列の標準的換算因子を用いて容易に計算されることを当業者は理解する。
【0078】
【表1】

a 60 kgのヒトを前提としている。列記されていない種、または標準的範囲外の重量については、HEDは以下の式から計算することができる:
HED = mg/kg単位の動物用量x(kg単位の動物重量/ kg単位のヒト重量)0.33
b 健常な子供がフェーズ1試験のボランティアになることは稀なので、このkm値は参考のためだけに提供されている。
c 例えばカニクイザル、アカゲザル、およびベニガオザル。
【0079】
本明細書で記述される用量は、「重量ベースの用量」として、または「体表面積(BSA:body surface area)ベースの用量」として表され得る。重量ベースの用量は、患者の重量に基づいて計算される、患者に投与される用量であり、例えばmg/kgである。BSAベースの用量は、患者の表面積に基づいて計算される、患者に投与される用量であり、例えばmg/m2である。これら2つの形態の用量測定は、上記表1に示されているように、ヒト投薬の文脈内では重量ベースの用量に37を掛ける、あるいはBSAベースの用量を37で割ることによって換算することができる。
【0080】
「対象」および「患者」という用語は本明細書において互換的に用いられ、ヒトまたは動物を表す。
【0081】
デキサメタゾンは、等価用量の他のグルココルチコイドステロイドと同じく、リンパ組織における胚中心の形成および増殖を阻害し、末梢血をリンパ球枯渇させる。グルココルチコイド、特にデキサメタゾンの用量は、好ましくは75%超のリンパ球枯渇を達成する。より好ましくは、グルココルチコイド、特にデキサメタゾンの用量は、80%超のリンパ球枯渇を達成する。最も好ましくは、グルココルチコイド、特にデキサメタゾンの用量は、95%超のリンパ球枯渇を達成する。リンパ球枯渇は全血球計算値(CBC)を測定することによって容易に測定できることを当業者は理解するであろう。
【0082】
デキサメタゾンおよびその他の好ましいグルココルチコイドは好中球を温存させ、好中球の機能を阻害せず(Schleimer RP, J Pharmacol Exp Ther 1989;250:598-605)、赤血球(RBC)、血小板、間葉系幹細胞(MSC)および造血幹細胞(HSC)を温存させる。ヒトにおける好中球温存は、mm3当たり500超の好中球絶対数(ANC:absolute neutrophil count)である。好中球、RBCおよび血小板を温存することにより、リンパ球除去性グルココルチコイドは輸注の必要性を低減または除去する。リンパ球除去性グルココルチコイドは骨髄(bone marrow)間葉系幹細胞(MSC)も温存させ、軟骨細胞、骨細胞、または脂肪細胞へと分化する骨髄MSCの能力に影響を与えない。リンパ球除去性グルココルチコイドはまた、ヒトおよびウマの両方において、内在性BM MSCの数またはそれらのエクスビボ生存性を増加させる。リンパ球除去性グルココルチコイドは血漿IL-2、IL-7、IL-12およびIL-15のレベルを増加させるが、IL-6やGM-CSFのレベルは増加させない。本発明のいくつかの実施形態では、これらのサイトカインのうちの1つ以上の血漿レベルの測定値に基づいて、対象が処置の前に選別され、および/または処置の後に評価される。
【0083】
デキサメタゾンは、処置される疾患に応じて1日当たり0.5~9 mgに渡るリン酸デキサメタゾンナトリウム注入の初回投与量による使用について認可されており、これは50 kg BWに基づけば0.01~0.18 mg/kgの一日量である。より重篤度の低い疾患では、0.5 mg未満の用量でも十分であり得る一方、重篤な疾患では9 mg超の用量が必要になり得る。現行の医療プラクティスにおいては、無応答性ショックの処置のためには(薬理的に)高い用量のコルチコステロイドを使用する傾向がある。脳浮腫については、一般的に10 mgの初回投与量におけるリン酸デキサメタゾンナトリウム注入が静脈内投与され、続いて、脳浮腫の症状が鎮まるまで6時間毎に4 mgが筋肉内投与される。この総用量は、合計24時間で約0.34~0.48 mg/kgの用量、および72時間で0.8~1.12 mg/kgの合計72時間用量に相当し、これは本発明による有効用量(約3 mg/kg~約26 mg/kgの用量を用いる)ではない。
【0084】
急性アレルギー性障害については、リン酸デキサメタゾンナトリウム注入USP 4 mg/mLが以下のように推奨されている:1日目、1または2 mL(4または8 mg)筋肉内、続いてリン酸デキサメタゾンナトリウム錠剤0.75 mg;2日目および3日目、各日に4錠剤を2つに分けた用量で;4日目、2錠剤を2つに分けた用量で;5日目および6日目、各日に1錠剤;7日目、処置なし;8日目、経過受診。救急治療室においてデキサメタゾンは重い急性小児喘息のために2 mg/kgにて使用されており、これは本発明で規定されるグルココルチコイド用量より低い用量である。
【0085】
デキサメタゾンのようなグルココルチコイドの従来型製剤は、本発明の治療的応用における使用には向いていないことがあり得る。例えば、リン酸デキサメタゾンナトリウム(DSP:dexamethasone sodium phosphate)は現在、ベンジルアルコール(BA:benzyl alcohol)およびプロピルパラベン(PP:propyl paraben)のような抗微生物保存剤を含有する低用量(2~4 mg/ml)および低体積の製剤として入手可能となっている(例えばAPP Pharmaceuticals、Mylan)。完全なリンパ球除去を実施するために求められるDSPの標的用量は、多数のバイアルを使用することとなり、賦形剤の過剰摂取をもたらす。ベンジルアルコールおよびプロピルパラベンの両方のWHO許容一日摂取量(ADI:acceptable daily intake)を超えることは、遺伝子毒性および癌リスク上昇(Darbre et al., 2014)、生殖毒性(Aker et al., 2016)、アレルギー性疾患のリスク上昇(Savage et al., 2012; Spanier et al., 2014)、および新生児CNS機能不全(Medicines Agency, 2017)と関連付けられている。さらに、市販のDSPの添付文書によると、ステロイドを受ける患者の約6%に深刻な精神神経性作用が起こる(Malmegrim et al., 2017)。本発明には高用量のグルココルチコイドの投与が関わるので、潜在的に毒性な保存剤のレベルが低い製剤、または毒性な保存剤を有さない製剤が使用されるべきである。保存剤は好ましくは抗酸化剤である。
【0086】
本発明の医薬組成物は、組成物の安定性を維持するために亜硫酸ナトリウムのような保存剤(例えば抗酸化剤)添加剤を含み得る。亜硫酸塩は医薬産業において保存剤および抗酸化添加剤として広く使われてもいる。そのような亜硫酸塩への曝露は、感受性の個体において、皮膚炎、じん麻疹、潮紅、血圧低下、および腹部痛から、生命を脅かすアナフィラキシー性および喘息性反応に至るまで、広範な有害臨床作用を誘発することが報告されている。亜硫酸誘発性症状は、ある個体では穏やかであるが他の個体では重くなり、反応が生命を脅かすようになり得る個体もいる。好ましい実施形態では、亜硫酸ナトリウムが抗酸化剤として含まれる場合、その濃度は0~70 ppm亜硫酸ナトリウム(無水物)である。
【0087】
抗酸化剤は、グルココルチコイド含有組成物で通常利用されるレベルより低減された量において添加され得、それによって、そのような抗酸化剤の使用に関連する毒性および有害副作用を低減させ得る。いくつかの例では、本発明の製剤は抗酸化剤の添加を欠いていてもよい。
【0088】
本明細書において用いられる場合、抗酸化剤とは、分子の酸化プロセスを遅延させまたは阻害することによって組成物の安定性を増加させる賦形剤である。使用され得る抗酸化剤としては例えば、アスコルビン酸、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソール、システイン塩酸塩、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸塩、チオグリコール酸ナトリウム、α-チオグリセロール、トコフェロールアルファ、アルファこはく酸水素トコフェロール、およびチオグリコール酸ナトリウムが挙げられる。
【0089】
本明細書に開示される医薬組成物には、活性グルココルチコイドおよび抗酸化剤に加えて、当業者によく知られる追加的成分が含まれ得る。医薬組成物は、安全で効果的とみなされる材料から構成される、薬学的に許容される「担体」を用いて調製され得る。「薬学的に許容される」とは、「一般的に安全とみなされる」分子実体および組成物、例えばヒトに投与された場合に生理学的に容認可能でありアレルギー性反応あるいは胃の不調等のような同様な有害反応を通常生じないものを表す。いくつかの実施形態では、この用語は、米国の連邦政府または州政府の規制当局に認可された分子実体および組成物を表し、例えば、FDAによる販売前審査および認可の対象となる連邦食品・薬剤・化粧品法のセクション204(s)および409下のGRASリストまたは同様のリスト、米国薬局方または動物(より具体的にはヒト)における使用について一般に認知されている他の薬局方がある。
【0090】
「担体」という用語は、希釈材、結合剤、潤滑剤、および崩壊剤を表す。当業者は、そのような医薬担体、およびそのような担体を用いて医薬組成物を調合する方法に精通している。
【0091】
本明細書で提供される医薬組成物は、例えば溶媒、溶解性増強剤、懸濁剤、緩衝剤、等張化剤、抗酸化剤、および抗微生物性保存剤のような1つ以上の賦形剤を含み得る。使用される場合には、組成物の賦形剤は、活性成分(すなわち組成物に用いられるグルココルチコイド)の安定性、バイオアベイラビリティ、安全性、および/または効力に不利な作用は与えないであろう。すなわち、投与剤形のどの成分間にも不適合性がない組成物が提供されることを当業者は理解するであろう。賦形剤は、緩衝剤、安定化剤、浸透圧剤、キレート剤、抗酸化剤、抗微生物剤、および保存剤からなる群から選択され得る。
【0092】
本発明の医薬組成物は、組成物中に存在し得る金属イオンを捕捉してその活性を減少させるために用いられるキレート剤を含み得る。カルシウム二ナトリウムEDTA 0.01~0.1%(EDTA=エチレンジアミン四酢酸あるいはエデト酸)、二ナトリウムEDTA 0.01~0.11%、ナトリウムEDTA 0.20%、カルシウムベルセタミドナトリウム2.84%、カルテリドール0.023%、DTPA 0.04~1.2%(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)は可能なキレート剤である。好ましい実施形態において、二ナトリウムEDTA(エデト酸)の濃度は0~500 ppmである。
***
【0093】
WO2018/183927に記載されているように、グルココルチコイドは、養子細胞治療(ACT:adoptive cell therapies)と合わせてプレコンディショニング剤としても使用され得る。グルココルチコイド、特に細胞免疫療法投与の約12~約72時間前に投薬される約3 mg/kg~約26 mg/kgの単回急性用量または細胞療法投与の約12~約72時間前に投薬される約3 mg/kg~約26 mg/kgの合計用量のデキサメタゾンは、血漿のIL-2およびIL-15のレベルを上昇させる。
【0094】
グルココルチコイド、特に、単独でまたは低減強度の細胞毒性プレコンディショニングと組み合わされて投薬される、約3 mg/kg~約26 mg/kgの単回急性用量または約72時間の期間に渡る約3 mg/kg~約26 mg/kgの合計用量のデキサメタゾンは、自己免疫疾患の処置のために有用となり得る。自己免疫疾患の処置のためには、自己免疫認識細胞を全滅させる取組みとして、疾患の原因となっている免疫細胞にACTが標的化され得る。それに加えて、自己免疫疾患については、ACTは、自己免疫攻撃が起こっている身体の領域または器官により特異的または選択的に発現される抗原に対するCARまたはTCRまたは発現抗体により標的化されるTregであり得る。Treg(複数形Tregs)は、非排他的に、CD4+ Tregs、CD4+CD45RA+ Tregs、CD4+CD25+CD45RA+ Tregs、FoxP3+ Tregs、CD4+CD25+FoxP3+CD152+ Tregs、CD4+CD25+CD152+ Tregs、CD8+ Tregs、CD8+CD28- Tregs、CD4+CD25int/high、CD127low、CTLA4+、GITR+、FoxP3+、CD127low、CD4+CD25--誘導性Tregs、またはタイプI T regsであり得る。
【0095】
元々はCD4およびCD25の恒常的発現により認識された「ナチュラル」制御性T細胞は、転写因子foxP3および表面CD152の発現によりさらに定義され得る。これらの細胞の生成およびその抑制性活性のいくらかはTGF-ベータに依存し、これらは、CD152媒介によるCD80/86のライゲーションによって、適切なDCにおいてIDOを誘導することができることが示されている。共刺激の不在下における抗原刺激により生成されるアネルギー性CD4+ T細胞は、GRAIL、c-cblおよびItchのようなE3ユビキチンリガーゼの発現により維持され得る、抗原刺激に対する許容限界の内因的上昇により特徴付けられると見られる。アネルギー性細胞は、抗原提示の部位において競合してIL-2のような刺激性サイトカインを吸着してしまうことによって、制御性T細胞として振舞い得る。Tr1細胞は、CD4ヘルパーT細胞の誘導化サブセットを表わし、その分化のために、およびその制御的特性のいくらかについて、IL-10に依存する。これらはfoxP3は発現しないが、Th2細胞に関連するマーカーおよびGATA抑制因子(ROG:repressor of GATA)を発現し得る。ナチュラルTregと同様に、それらは高レベルの表面CD152を発現し、適切なDCにおいてIDOおよびトリプトファン異化を誘導することができる。CD8+CD28-抑制性T(Ts)細胞は、最初にヒトで解析されたが、最近はげっ歯類でも実証されている。Tr1細胞と同様に、これらはIL-10の不在下で誘導され、IL-10は、樹状細胞(dendritic cell)共刺激の下方制御、および、抗原を提示してT細胞のさらなるコホートを寛容化させることにおいて重要な役割を果たすと見られるILT-3とILT-4の上方制御(ヒトDCの場合)に関与し得る。
【0096】
制御性T細胞(Treg)は、免疫ホメオスタシスの維持において重要な役割を果たす。Tregは他のT細胞の機能を抑制して、免疫応答を制限する。Tregの数および機能における改変が、多発性硬化症、活動性関節リウマチ、および1型糖尿病を含むいくつかの自己免疫疾患に関係付けられてきた。肺癌、膵臓癌、および乳癌を含む多くの悪性障害において高レベルのTregが見出されている。Tregは抗腫瘍免疫応答を妨げる可能性もあり、これは死亡率上昇につながる。
【0097】
今日までに、CD4 TregおよびCD8 Tregという、Tregの2つの主要なクラスが同定されている。CD4 Tregは、CD25およびFoxP3を恒常的に発現する「ナチュラル」Treg(nTreg)と、いわゆる適応性Tregあるいは誘導性Treg(iTreg)という、2つのタイプからなる。
【0098】
ナチュラルTreg(nTreg)は、高レベルのCD25と共に転写因子(分化系列マーカーでもある)FoxP3を発現するCD4+細胞として胸腺に起源を発する。nTregは全CD4+ T細胞集団のおよそ5~10%を占め、Tリンパ球発生のシングルポジティブ段階において最初に見出され得る。これらは、自己抗原に対して比較的高い結合活性を有する、ポジティブセレクションされた胸腺細胞である。(Fehervari Z, Sakaguchi S. Development and function of CD25+CD4+regulatory T cells. Curr Opin Immunol. 2004;16:203-208.)
【0099】
Treg細胞へと発達するためのシグナルは、T細胞受容体と、胸腺間質で発現される自己ペプチドを伴うMHC IIの複合体との間の相互作用から来ると考えられている。nTregは本質的にサイトカイン非依存性である。
【0100】
適応性あるいは誘導性Tregは、シングルポジティブCD4細胞として胸腺に起源を発する。それらは、対応する抗原と、TGF-β、IL-10、およびIL-4のような特化された免疫調節性サイトカインとの存在下における十分な抗原性刺激の後に、CD25とFoxP3を発現するTreg(iTreg)へと分化する。(Chatenoud L, Bach JF. Adaptive human regulatory T cells: myth or reality? J Clin Invest. 2006;116:2325-2327.)
【0101】
FoxP3- Tregの少数集団の報告もあるが、FoxP3は、現在最も受け入れられているTregマーカーである。Tregについてのマーカーとしての転写因子FoxP3の発見により、科学者らがTreg集団をより明確に定義することが可能になり、CD127を含む追加のTregマーカーの発見につながった。
【0102】
グルココルチコイド、特に、単独でまたは低減強度の細胞毒性化学療法または放射線と組み合わされて投薬される、約3 mg/kg~約26 mg/kgの単回急性用量または約72時間の期間に渡る約3 mg/kg~約26 mg/kgの合計用量のデキサメタゾンは、残存HIV疾患の処置のために、およびバーキットリンパ腫のような胚中心リンパ腫の処置のために有用となり得る。
【0103】
二次リンパ組織内のB細胞濾胞中に存在する濾胞性ヘルパー(Follicular helper)CD4 T細胞、すなわちTFHは、AIDSウイルスにより感染されやすく、ウイルス複製が比較的コントロールされているにも関わらず持続するウイルスの主要な源となる。この持続性は、B細胞濾胞からは有効な抗ウイルス性CD8 T細胞が比較的排除されることが少なくとも部分的な原因となっている。有効な薬物療法下にある個体あるいはウイルス血症を自発的にコントロールする個体におけるAIDSウイルス持続性は、決定的な治療に対する障壁となり続けている。B細胞濾胞の内部に存在する感染された濾胞性ヘルパーCD4 T細胞、TFHは、この残存ウイルスの主要な源を表す。有効なCD8 T細胞応答は、薬物療法と合わさって、または稀な例では自発的に、ウイルス複製をコントロールすることができるが、ほとんどの抗ウイルス性CD8 T細胞はB細胞濾胞に入らず、入ったとしても、TFH集団におけるウイルス複製をロバストにコントロールすることができない。従って、これらの部位は複製中AIDSウイルスにとっての保護区かつ蓄積所となる。リンパ球枯渇および脾臓における胚中心と辺縁帯の低減は、残存HIV感染細胞を血流へと押しやり、そこでそれらは既存の療法により殺傷されることができる。潜伏感染された休止CD4 T細胞は、HIV-1感染個体の末梢血、胃腸(GI)管、およびリンパ節において検出されており、リンパ組織を含有するほかの器官にも存在する可能性が高い。
【0104】
高活性抗レトロウイルス剤療法(HAART:Highly active antiretroviral therapy)は、感染された人における血漿HIV-1負荷を長期的に抑制できるが、低レベルのウイルスは持続し治療の休止後にリバウンドする。HAARTのあいだこのウイルスは、休止CD4 T細胞のような潜伏感染細胞、および残存ウイルス複製をサポートし得る他の細胞型中にいる。治療的根絶のためには、全ての蓄積所からウイルスを除去することが必要となる。
【0105】
バーキットリンパ腫(BL:Burkitt’s Lymphoma)は、二次リンパ系内で生じ成長する、胚中心リンパ腫であり、c-Myc活性化染色体転位を常に伴う。これは最も成長速度の速い癌の1つであり、14~18時間毎に大きさが倍増し得る。BLは脾臓および二次リンパ組織の胚中心に見出される高悪性度のB細胞リンパ腫である。BLは、1958年に赤道アフリカで働きながらこの疾患を最初に記述した外科医であるDenis Parsons Burkitt博士に因んで名付けられている(Burket, D., 1958)。BLはサブサハラアフリカに住む子供に最も多くみられ、最も高い発生率および死亡率は東アフリカに見られる(Orem, J., et al.)。女児よりも男児の方がBLになりやすい。アフリカの外では、BLは、免疫系が弱まった人々において起こる可能性が最も高い。
【0106】
B細胞悪性病変のなかで、CLLがイブルチニブに最も応答し、残念ながらイブルチニブはバーキットリンパ腫その他の胚中心リンパ腫にかかった人々には特に有益になる可能性が低い。しかしながら、二次リンパ組織胚中心を除去する薬剤の使用により、バーキットリンパ腫のような胚中心リンパ腫に関して、化学療法感受性が高まり増殖度が低くなる循環中へとB細胞癌を再分布させるという同じ結果を達成することができる。従って、いくつかの実施形態において本発明は、化学療法に対するリンパ腫の感受性を増加させ、および/または、例えばデキサメタゾンのようなグルココルチコイドに加えて低減強度の細胞毒性化学療法が関わる組合せ療法を提供する。好適な様々な化学療法が本明細書において開示される。
【0107】
慢性リンパ球性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)の治療についてのブルトンのチロシンキナーゼ阻害剤イブルチニブの能力の臨床的観察により、リンパ組織から血流へのCLL細胞の再分布が、CLLにおけるその有益性に寄与する作用機序であることが実証されてきた。循環するCLL細胞は増殖性ではなく、クローンの増殖はリンパ組織微小環境に限定される。従って、血流への再分布は癌増殖を減少させる。同様に、骨髄から血流へのALLの再分布も、標準的化学療法に対する感受性を増強させることが報告されている(Chang BY, Blood 2013 122 : 2412-24;)。
【0108】
グルココルチコイドは、用量、投薬期間および調査された種に応じて、リンパ球に対して複数の相反する作用を有することが報告されてきた。グルココルチコイドは、リンパ球増加誘導剤、すなわち循環中のリンパ球数を増加させる薬剤として1943年から研究されており(総説としてはBurger et al., 2013参照)、これは典型的には0.5~1 mg/kgのプレドニゾンの使用であり、0.1~0.2 mg/kgのデキサメタゾン用量と等価である。不応性CLLのために使用される高用量メチルプレドニゾン(HDMP:High dose methylpredメチルプレドニゾンnisone)は、対照的に、プレドニゾンがリンパ球増加を誘導した0.5~1.0 mg/kgのメチルプレドニゾン等価用量においてリンパ球増加を誘導しないと見られる。リンパ毒性高用量ステロイドは典型的には1日当たりおよそ100 mgのプレドニゾン等価量と考えられており、これは16 mgのデキサメタゾン等価用量であっておよそ0.23~0.32 mg/kgであり、効果的なプレコンディショニング用量ではないことを本発明者らが示した。デキサメタゾンはマウスにおいて、約3 mg/kg以上のHEDが投与されるまで胚中心を低減させない。プレドニゾンは、マウスにおいて13週間にわたり1日2.5 mg/kg po超の用量で使用されるまで、脾臓重量にも胚中心にも有意な影響を与えない(Yan et al., 2015)。ヒト狼瘡患者では1日当たり30 mgの用量(約0.48~0.72 mg/kg)が高用量とみなされるから、このヒト用量は許容できないミネラロコルチコイド活性を有することになるであろう。
【0109】
COPADMのような標準的化学療法レジメンを用いたバーキットリンパ腫(BL)の治療のために、プレドニゾンは典型的には60 mg/m2で様々なサイクルにおいて含められ、これは1.62 mg/kgプレドニゾンおよび0.3 mg/kgデキサメタゾン等価用量に換算され、有効なプレコンディショニング用量ではない。デキサメタゾンも、典型的には1日40 mgで4~5日間の経口レジメンあるいは5日間にわたる6 mg/m2で、B細胞癌の治療のために臨床的に使用される。ALLのようなある種の適応症では、デキサメタゾンは数週間に渡り日毎に投与されるが、骨壊死と関連付けられることがある(特に思春期以降の少年において)。骨壊死のリスクは、デキサメタゾンの投薬を隔週とすることにより実質的に排除することができるが、アスパラギナーゼレジメンがALLの治療の一部分をなすため特にALLにおいてそのリスクが存在し得る(Chang BY, Blood 2013 122 : 2412-24)。
【0110】
エプスタイン・バーウイルス(EBV:Epstein-Barr virus)感染はほとんど全てのアフリカBL患者に見出され、慢性マラリアがEBVに対する耐性を低減させてそれを根付かせると考えられている。この疾患は、下顎もしくはその他の顔面骨、遠位回腸、盲腸、卵巣、腎臓、または乳房に関わることを特徴とする。それに加えて、BLは、HIVを有する人々のような免疫欠陥の人々を襲う。
【0111】
BLは、風土性バリアント、孤発性バリアント、および免疫不全関連性バリアントという3つの主要な臨床的バリアントに分類され、風土性バリアント(「アフリカバリアント」とも呼ばれる)は、世界のうちマラリア風土性地域に住む子供達に最もよく起こる。
【0112】
本発明の1つの効果は、胚中心および/または辺縁帯を除去してBLおよびその他の胚中心癌細胞または辺縁帯癌細胞を選択的に胚中心または辺縁帯から循環中(そこでは癌細胞が化学療法その他の薬剤によってより容易に殺傷されることができる)へと追いやることであり得る。これは劇的、安全、かつコスト効果的にBL治療成績を進展させ得る。
喘息は、肺組織におけるCD8+ 1型Tリンパ球およびマクロファージならびに気道管腔における好中球の数増加により特徴付けられる慢性的炎症である。2つの炎症性状態において著しく相違するリンパ球が、喘息およびCOPDの病態形成において重要な役割を果たす。喘息においてT細胞が主要な役割を果たすこと、特にアトピー性アレルギー喘息ならびに非アトピー性および職業性喘息におけるTヘルパー2型(Th2)細胞の関与を支持する圧倒的証拠が今や存在する。T細胞毒性2型CD8+T細胞からの小さな寄与も存在し得る。いくつかのTh2サイトカインが、気道炎症をモジュレートする潜在能力を有しており、特にインターロイキン13は動物モデルにおいてIgEとは独立した気道過敏と好酸球増加症とを誘導する。喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は肺の2つの異なる炎症性障害であり、共通の機能的異常すなわち気流制限を共有する(Baraldo et al., 2007)。
【0113】
喘息において、気流制限は、自発的にあるいは処置によって、おおかた可逆的であり、ほとんどの場合には進行しない。一方、COPDにおける気流制限は、通常は進行性であり可逆性が乏しい。喘息では、慢性炎症が、様々な刺激に対する気道の反応性の付随的増加を引き起こし、喘鳴、息切れ、胸部絞扼感、および咳嗽の(特に夜および早朝における)反復的発症をもたらす。多くの細胞が喘息における炎症性応答に関与しており、その中でも、CD4+ 2型リンパ球、マスト細胞、および好酸球が重要な役割を果たすと考えられている。COPDにおいては、可逆性の乏しい気流制限は、有害粒子およびガスに対する肺の異常な炎症性応答と関連している。この慢性炎症は、肺組織におけるCD8+ 1型Tリンパ球とマクロファージおよび気道管腔における好中球の数の増加により特徴付けられる。これら2つの炎症性状態において著しく相違しているリンパ球が、喘息およびCOPDの病態形成において重要な役割を果たしている(Baraldo et al., 2007)。
【0114】
[定義]
以下は、本発明の実施形態を記述するために使用される定義である。
【0115】
リンパ球枯渇の生物学的機序は、アポトーシスまたはネクロトーシスまたはパイロトーシスまたはオートファジーまたは壊死を介するプログラム細胞死の誘導を意味する。様々な刺激が、ネクロトーシスと呼ばれる非アポトーシス形態の細胞死を起こすことができ、これはアポトーシスに必要なカスパーゼが阻害されているときに起こる。パイロトーシスはカスパーゼ依存形態のプログラム細胞死であるが、多くの点においてアポトーシスとは異なる。アポトーシスとは違って、パイロトーシスは、カスパーゼ1またはカスパーゼ11(ヒトではカスパーゼ5の活性化に依存する。オートファジーはリソソーム依存性のプロセスである。
【0116】
アポトーシス:プログラムされた一連の事象により、周囲領域に有害物質を放出することなく細胞の除去がもたらされる、細胞死の一形態。アポトーシスは、古い細胞、不要な細胞、および不健康な細胞を除去することにより、身体の健常性の発達および維持において重要な役割を果たす。
【0117】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、その2つの特定された特徴または成分の各々が他方を伴うかまたは伴わないものの具体的な開示として解されるべきである。従って、本明細書において「Aおよび/またはB」というような語句において使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」というような語句において使用される「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB; BまたはC;AおよびC;AおよびB; BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0118】
「約」という用語は、量や時間の長さなどのような測定可能値を指している場合には、+/- 20%あるいは+/- 10%の変動を表す。
【0119】
「投与する」は、当業者に知られる様々な方法および送達システムのいずれかを用いて対象に薬剤を物理的に導入することを表す。本明細書に開示される製剤についての例示的投与ルートは、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、またはその他の非経口投与ルート、例えば注射もしくは注入によるものを含む。本明細書で用いられる「非経口投与」という語句は、経腸投与と局所投与以外の投与の方式を意味し、通常は注射によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入、ならびにインビボ電気穿孔が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、製剤は非経口的ではないルート、例えば経口で投与される。非経口的ではないルート他のルートとしては、局所、上皮、または粘膜のルートが挙げられ、例えば鼻腔内、経膣、直腸、舌下、または局所のものである。
【0120】
薬理学的用量とは、身体における通常のレベルをはるかに超えさせる用量である。
【0121】
本明細書で用いられる「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移数の減少、全般的生存もしくは無増悪生存の増加、平均余命の増加、または腫瘍に関連する様々な生理的症状の緩和として呈し得る生物学的効果を表す。抗腫瘍効果は腫瘍の発生の防止(例えばワクチン)も表し得る。
【0122】
治療剤とは、それを伴わない細胞免疫療法と比べて細胞免疫療法の効力を増強させる薬剤である。
【0123】
「自家の(autologous)」とは、後でそれが再導入されるのと同じ個体に由来する物質を表し、その個体はヒトであっても他の動物であってもよい。
【0124】
「同種異系間の(allogeneic)」とは、一個体に由来し同じ種の別の個体に導入される物質を表し、その個体はヒトであっても他の動物であってもよい。
【0125】
デキサメタゾンという用語(Dexとも表される)は、非排他的に、液体状溶液、液体状懸濁液、経口溶液、錠剤形態、デキサメタゾンの活性成分を含有する液に溶解された錠剤形態、注射用形態、ゲル製剤、パッチ製剤、または活性成分デキサメタゾンを含有する何らかの製剤であり得る、あらゆる製剤に関する
【0126】
グルココルチコイド受容体調節剤という用語は、非排他的に、グルココルチコイド受容体アゴニストまたはグルココルチコイド受容体調節剤(モジュレーター)に関し、化合物A[CpdA;(2-((4-アセトフェニル)-2-クロロ-N-メチル)エチルアンモニウムクロリド)]およびN-(4-メチル-1-オキソ-1H-2,3-ベンゾキサジン-6-イル)-4-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)-4-メチルペンタンアミド(ZK216348)、AL-438、マプラコラト、LGD-5552、RU-24858、フォスダグロコラト、PF-802、化合物10、MK5932、C108297、LGD5552、およびORG 214007-0を含むがこれらに限定されない。
【0127】
免疫毒素とは、標的細胞に特異的に結合する抗体または成長因子と共に毒素を含有するタンパク質である。免疫毒素は、天然の結合ドメインを欠く全長タンパク質毒素に抗体を化学的にコンジュゲート化することにより創出される。成長因子およびサイトカインのような、モノクローナル抗体(MoAbs:monoclonal antibodies)より小さい免疫関連タンパク質も、タンパク質毒素に化学的コンジュゲート化され、遺伝子融合されてきた。免疫毒素構築物において用いられる毒素は、細菌、真菌、および植物に由来し、ほとんどのものはタンパク質合成を阻害することによって機能する。免疫毒素中に一般的に用いられる細菌毒素としては、ジフテリア毒素(DT:Diphtheria toxin)、およびシュードモナス外毒素(PE:Pseudomonas exotoxin)からの毒素が挙げられる。免疫毒素中に利用される植物毒素としては、リシンのA鎖(RTA:A chain of ricin)、およびリボソーム不活性化タンパク質(RIP:ribosome inactivating protein)ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、およびドデカンドロンが挙げられる。酵素であるため、1つの毒素分子が多くの基質分子に対して作用することができ、細胞に対して壊滅的な効果を有する。ジフテリア毒素(DT)およびシュードモナス外毒素(PE)のような毒素は伸長因子2(EF-2)に対する作用によりタンパク質合成を阻止する。
【0128】
本明細書で用いられる全身性注射という用語は、非排他的に、細胞免疫療法が迅速に(数秒間あるいは2~3時間以内に)循環するレベルに至る投与のルートに関し、非排他的に、静脈内、腹腔内、皮下、経鼻粘膜下層、舌、気管支鏡媒介性、静脈内、動脈内、筋肉内、眼球内、線条体内、皮下、皮内、経皮パッチによるもの、皮膚パッチによるもの、パッチによるもの、脳脊髄液内へのもの、門脈内へのもの、脳内へのもの、リンパ系内へのもの、胸膜内、後眼窩、真皮内、脾臓内へのもの、リンパ管内等に関する。
【0129】
本明細書で用いられる「注射部位」という用語は、非排他的に、腫瘍内、または腎臓もしくは肝臓もしくは膵臓もしくは心臓もしくは肺もしくは脳もしくは脾臓もしくは眼のような器官内、筋肉内、眼球内、線条体内、皮内、経皮パッチによるもの、皮膚パッチによるもの、パッチによるもの、脳脊髄液内へのもの、脳内へのもの等に関する。
【0130】
本明細書で用いられるリンパ球枯渇(lymphodepletion)という用語は、非排他的に、骨髄、胸腺、リンパ節、肺もしくは脾臓またはその他の器官のような別の器官にリンパ球を再分布させることなく末梢血中のリンパ球数を低減させることに関する。
【0131】
本明細書で用いられるリンパ球除去(lymphoablation)という用語は、非排他的に、骨髄、胸腺、リンパ節、肺もしくは脾臓またはその他の器官のような別の器官にリンパ球を再分布させることなく末梢血中のリンパ球数をマイクロリットル当たり200未満に、好ましくはマイクロリットル当たり100未満に低減させることに関する。
【0132】
本明細書で用いられる細胞毒性(細胞傷害性)リンパ球枯渇という用語は、リンパ球のADCC、細胞媒介性細胞傷害もしくは直接的溶解もしくは細胞傷害性除去の機序、化学療法、または放射線による、末梢血中のリンパ球数の低減に関する。
【0133】
抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)は、抗体依存性細胞性細胞傷害とも言われ、膜表面抗原が特異的抗体に結合された標的細胞を、免疫系のエフェクター細胞が能動的に溶解する、細胞媒介性の免疫防御の機序である。
【0134】
本明細書で用いられる「細胞免疫療法」、「養子細胞免疫療法」、「養子細胞療法」(ACT:adoptive cellular therapy)、または細胞免疫療法もしくは細胞療法という用語は、非排他的に、免疫系が疾患と闘うことを補助するために使用される細胞、または、癌、自己免疫疾患、およびある種のウイルスによる感染のような疾患と直接闘う免疫系列由来細胞を含有する治療(物)に関する。細胞免疫療法は、自家または同種異系のどちらかの供給源からのものであり得る。好ましい実施形態において、本明細書に開示される方法で使用される養子免疫療法は養子T細胞免疫療法すなわち「T細胞療法」であり得る。
【0135】
本明細書で用いられるプレコンディショニングという用語は、ACTに先立って細胞毒性リンパ球枯渇剤または非毒性リンパ球枯渇剤により患者を準備させることに関する。
【0136】
本明細書で用いられる免疫療法という用語は、生物学的療法とも呼ばれ、非排他的に、癌、自己免疫疾患、または感染症治療の治療種類であって、身体の自然防御をブーストしてその癌、自己免疫疾患、または感染と闘うように設計されたものに関する。それは、免疫系機能を改善または回復させるために身体によりまたは実験室において作られる物質を使用する。「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導、増強、抑制、または他の態様で調節することを含む方法によって、疾患に罹患した対象、または疾患に罹患するリスクを有するもしくは疾患の再発が起こっている対象を治療することに関する。免疫療法の例としてはT細胞療法が挙げられるが、これに限定されない。T細胞療法は、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL:tumor-infiltrating lymphocyte)免疫療法、自家細胞療法、組換え自家細胞療法(eACT:engineered autologous cell therapy)、および同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、本明細書に開示されるコンディショニング方法はあらゆる移植T細胞療法の有効性を増強するであろうことを当業者は認識するであろう。T細胞療法の例は米国特許公報第2014/0154228号および第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号、ならびに国際公報第WO 2008/081035号に記載されている。
【0137】
本明細書で用いられる「免疫調節」という用語は、非排他的に、癌、自己免疫疾患、または感染症において、腫瘍、自己免疫を引き起こしている細胞、またはウイルスの、コントロール、安定化、および疾患根絶の可能性を達成するために患者の免疫系を利用することを狙った広範な処置に関する。
【0138】
本明細書で用いられる免疫調節剤という用語は、非排他的に、免疫応答または免疫系の機能を(抗体形成の刺激または白血球細胞活性の阻害のように)修正する、化学製剤(例えばデキサメタゾン)または生物製剤(例えばヒュミラ(登録商標)およびリツキシマブ)に関する。免疫抑制剤である伝統的な免疫調節薬剤は、非排他的に、グルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗剤、およびアルキル化剤に関する。代謝拮抗剤は、非排他的に、プリン類縁体(例えばアザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチル)、および葉酸拮抗剤(例えばメトトレキサートおよびダプソン)に関する。
【0139】
免疫抑制剤(immunesuppressant)(イムノサプレッサント(immunosuppressant)ともいう)は、面応答を抑制または阻止することができる化学製剤または生物製剤であり得る。例えば、CD26に対するアンタゴニストおよびデキサメタゾンは免疫抑制剤である。本発明において使用されるNTLAは、NTLA免疫抑制剤であり得る。
【0140】
「コンディショニング」および「プレコンディショニング」という用語は本明細書において互換的に用いられ、T細胞療法を必要とする患者または動物を適切な条件のために準備させることを示す。本明細書で用いられるコンディショニングには、T細胞療法に先立って、胚中心および辺縁帯の数を低減させること、内因性リンパ球の数を低減させること、サイトカインシンクを除去すること、恒常性サイトカインもしくは炎症促進性因子の1つまたは複数の血清レベルを上昇させること、コンディショニング後に投与されるT細胞のエフェクター機能を増強させること、抗原提示細胞の活性化および/もしくは利用可能性を増強させること、またはそれらのいずれかの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0141】
本明細書で用いられる「養子免疫療法」または「細胞養子免疫療法」という用語は、非排他的に、患者(自家あるいは自源性)または関係するもしくは無関係なドナー(同種異系)から採取され実験室で生育される免疫細胞に関する。これは、癌細胞、自己免疫疾患を引き起こす細胞を殺すことができる細胞あるいは感染と闘うことができる免疫細胞の数を増加させる。これらの免疫細胞は、患者に戻されて、免疫系が疾患と闘うのを助ける。これは細胞養子免疫療法とも呼ばれる。免疫細胞は、非排他的にマクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、顆粒球、貪食細胞、マスト細胞、好塩基球、胸腺細胞、もしくは自然リンパ球系細胞、またはこれらのいずれかの組合せに関する、T細胞および/または他の免疫系細胞であり得る。
【0142】
本明細書で用いられるアゴニストという用語は、非排他的に、特定の受容体を活性化させる、あるいは受容体の作用(複数可)を媒介するために必須な下流シグナル伝達経路を活性化させる実体に関する。アゴニストは、非排他的に、抗体、抗体断片、可溶性リガンド、小分子、環状ペプチド、架橋剤に関し得るがこれらに限定されない。
【0143】
本明細書で用いられるアンタゴニストという用語は、非排他的に、受容体の相手構造(複数可)の結合に干渉する、または特定の受容体の活性化もしくは受容体の作用(複数可)を媒介するために必須な下流シグナル伝達経路の活性化に干渉する実体に関する。アンタゴニストは、非排他的に、抗体、抗体断片、可溶性リガンド、Fc融合受容体、キメラ受容体、小分子、環状ペプチド、ペプチドに関し得るがこれらに限定されない。
【0144】
本明細書で用いられる阻害剤という用語は、非排他的に、特定の受容体の標的作用を減少させる実体に関する。阻害剤は、小分子、アンチセンス剤、siRNAおよびマイクロRNAを含む核酸であり得る。
【0145】
本明細書で用いられる「リンパ球」という用語は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、またはB細胞を含む。NK細胞は、本来的な免疫系の主要成分である細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種類である。NK細胞は、腫瘍、およびウイルス感染細胞を拒絶する。それはアポトーシスあるいはプログラム細胞死のプロセスを通じて作用する。細胞を殺すために活性化を必要としないためそれらは「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は細胞媒介性免疫(抗体が関与しない)において主要な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR:T-cell receptor)は他のリンパ球種から分化する。免疫系の特化された器官である胸腺が、T細胞の成熟を主に担っている。T細胞には6種類ある。すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、T-キラー細胞、細胞溶解性T細胞、CDS+ T細胞、またはキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i) 幹細胞メモリーT scM細胞は、ナイーブ細胞と同様にCD45RO-、CCR 7 +、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Ra+であるが、ただし多量のCD95、IL-2R~、CXCR3、およびLFA-1も発現し、メモリー細胞に特徴的な多数の機能的帰属性を示す;(ii) セントラルメモリーTcM細胞はL-セレクチンおよびCCR7を発現し、IL-2を分泌するが、IFNyもIL-4も発現しない;(iii) しかしエフェクターメモリーT EM細胞はL-セレクチンもCCR7も発現しない反面IFNyおよびIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、抑制性T細胞、あるいはCD4+CD25+制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、およびガンマデルタT細胞である。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)において主要な役割を果たす。それは抗体と抗原を作製して抗原提示細胞(APC:antigen presenting cell)の役割を担い、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞に転ずる。哺乳類では、未成熟B細胞は骨髄(bone marrow)において形成され、それが名前の由来である。
【0146】
「癌」という用語は、異常な細胞の無制御的成長により特徴付けられる疾患を表す。癌細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分へと、広がり得る。様々な癌の例が本明細書に記載されており、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌等を含むがこれらに限定されない。「腫瘍」および「癌」という用語は本明細書において互換的に用いられ、例えば両方の用語とも、固形腫瘍および液性腫瘍、例えばびまん性または循環性腫瘍を包含する。本明細書で用いられる「癌」または「腫瘍」という用語は、前悪性および悪性の癌および腫瘍を含む。
【0147】
特定の癌は、化学療法または放射線療法に対して応答し得、あるいは、癌は不応性であり得る。不応性癌とは、外科的介入に服しやすくない癌を表し、その癌は、最初から化学療法または放射線療法に対して不応であるか、または時間を経て不応になる。
【0148】
本明細書で用いられる「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移数の減少、全般的生存もしくは無増悪生存の増加、平均余命の増加、または腫瘍に関連する様々な生理的症状の緩和として呈し得る生物学的効果を表す。抗腫瘍効果は腫瘍の発生の防止(例えばワクチン)も表し得る。
【0149】
本明細書で用いられる「無増悪生存(progression-free survival)」という用語は、PFSと略され得るが、処置の日付から、疾患増悪(改訂IWG悪性リンパ腫応答基準による)の日付まで、または原因を問わず死亡の日付までの時間を表す。
【0150】
「疾患増悪」は、X線写真その他の方法での悪性病変の測定により評価され、有害事象として報告されるべきでない。兆候および症状の不在下における疾患増悪による死亡は、原発腫瘍型として報告されるべきである(例えばDLBCL)。
【0151】
本明細書で用いられる「応答の持続時間(duration of response)」は、DORと略され得るが、対象の最初の客観的応答から、確認された疾患増悪(改訂IWG悪性リンパ腫応答基準による)の日付まで、または死亡の日付までの時間を表す。
【0152】
「全般的生存(overall survival)」という用語は、OSと略され得るが、処置の日付から死亡の日付までの時間として定義される。
【0153】
本明細書において、「低減」および「減少」という用語は互換的に用いられ、元よりも小さくなる何らかの変化を示す。「低減」および「減少」は相対的な用語であり、事前および事後の測定間の比較を必要とする。「低減」および「減少」には完全な枯渇も含まれる。
【0154】
対象の「処置」あるいは「処置すること」とは、疾患に関連する症状、合併症、もしくは状態、または生化学的兆候の開始、進行、発達、重症度、または再発を反転、寛解、改善、阻害、遅延、または防止する目的で対象に対して行われる、あらゆる種類の介入もしくは処理または活性剤の投与を表す。一実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」は完全寛解を含む。
【0155】
代替の使用(例えば「または」)は、それらの代替物の一方、両方、またはそれらのあらゆる組合せを意味するものと解されるべきである。本明細書で用いられる不定冠詞「a」または「an」は、記載または列挙された成分の「1つ以上」を表すものと解されるべきである。
【0156】
「約」または「~から実質的に構成される」という用語は、その特定の値または組成に関して当業者によって決定される許容誤差範囲内の値または組成を表し、これは、その値または組成がどのように測定または決定されるか、すなわち測定系の限界に部分的に依存するであろう。例えば、「約」または「~から実質的に構成される」は、技術分野の慣習に従って、1標準偏差または1標準偏差超の範囲内を意味し得る。あるいは、「約」または「~から実質的に構成される」は、20%までの範囲(すなわち±20%)を意味し得る。例えば、約3 mg は、2.3 mgと3.6 mgの間のあらゆる数を含み得る(20%に関して)。さらに、特に生物学的なシステムまたはプロセスに関しては、これらの用語は、数値の一桁違いまでまたは5倍までを意味し得る。出願および特許請求の範囲において特定の値または組成が提示される場合、特に言及されない限り、「約」または「~から実質的に構成される」の意味は、その特定の値または組成についての許容誤差範囲内であると推定されるべきである。
【0157】
本明細書に記載される、濃度範囲、百分率範囲、比率範囲、または整数範囲は、特に示されない限り、記載された範囲内のあらゆる整数の値を含み、適切な場合にはその分数(例えば整数の十分の一および百分の一)を含むと解されるべきである。
【0158】
範囲:発明の様々な側面が、範囲の形式で提示される。範囲の形式による記載は便宜および簡潔性のためのものであり、発明の範囲に対する非柔軟な限定として解釈されるべきではない。従って、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示したものとしてみなされるべきである。例えば、3~12という範囲は、3.1、3.2、3.3等を含む。
【0159】
リンパ球により媒介されHSCTよりも単純で費用が低い処置を必要とする自己免疫性障害その他の疾患は、以下に列記するものに関するがこれらに限定されない:アレルギー、喘息、残存HIV、バーキットリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のような胚中心リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、移植片対宿主病(GvHD:graft versus host disease)、ステロイド抵抗性GvHD、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED:Autoimmune inner ear disease)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性じん麻疹、軸索性および神経性ニューロパチー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD:Castleman disease)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP:Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO:Chronic recurrent multifocal osteomyelitis)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS:Churg-Strauss Syndrome)あるいは好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、ヘルペス状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic esophagitis)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、線維筋痛症、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP:Henoch-Schonlein purpura)、妊娠性疱疹あるいは妊娠性類天疱瘡(PG:pemphigoid gestationis)、化膿性汗腺炎(HS:Hidradenitis Suppurativa)(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP:Immune thrombocytopenic purpura)、封入体筋炎(IBM:Inclusion body myositis)、間質性膀胱炎(IC:Interstitial cystitis)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM:Juvenile myositis)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎(MPA:Microscopic polyangiitis)、混合性結合組織病(MCTD:Mixed connective tissue disease)、ムーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー(MMN:Multifocal Motor Neuropathy)あるいはMMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児狼瘡、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ(PR:Palindromic rheumatism)、PANDAS、傍腫瘍性小脳変性症(PCD:Paraneoplastic cerebellar degeneration)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)、パリー・ロムベルグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺部ぶどう膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA:Pernicious anemia)、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多腺性症候群I型、II型、III型、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆(PRCA:Pure red cell aplasia)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグス症候群(RLS:Restless legs syndrome)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子と睾丸の自己免疫、スティッフパーソン症候群(SPS:Stiff person syndrome)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE:Subacute bacterial endocarditis)、スザック症候群、交感性眼炎(SO:Sympathetic ophthalmia)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP:Thrombocytopenic purpura)、トロサ・ハント症候群(THS:Tolosa-Hunt syndrome)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative colitis)、未分化結合組織病(UCTD:Undifferentiated connective tissue disease)、ブドウ膜炎、血管炎、白斑症、フォークト・小柳・原田病。
【0160】
本発明の特定の実施形態では、以下のような疾患を除外することを望みうる:アレルギー、喘息、残存HIV、バーキットリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のような胚中心リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、移植片対宿主病(GvHD:graft versus host disease)、ステロイド抵抗性GvHD、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED:Autoimmune inner ear disease)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性じん麻疹、軸索性および神経性ニューロパチー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD:Castleman disease)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP:Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO:Chronic recurrent multifocal osteomyelitis)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS:Churg-Strauss Syndrome)あるいは好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、ヘルペス状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic esophagitis)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、線維筋痛症、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP:Henoch-Schonlein purpura)、妊娠性疱疹あるいは妊娠性類天疱瘡(PG:pemphigoid gestationis)、化膿性汗腺炎(HS:Hidradenitis Suppurativa)(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP:Immune thrombocytopenic purpura)、封入体筋炎(IBM:Inclusion body myositis)、間質性膀胱炎(IC:Interstitial cystitis)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM:Juvenile myositis)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎(MPA:Microscopic polyangiitis)、混合性結合組織病(MCTD:Mixed connective tissue disease)、ムーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー(MMN:Multifocal Motor Neuropathy)あるいはMMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児狼瘡、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ(PR:Palindromic rheumatism)、PANDAS、傍腫瘍性小脳変性症(PCD:Paraneoplastic cerebellar degeneration)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)、パリー・ロムベルグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺部ぶどう膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA:Pernicious anemia)、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多腺性症候群I型、II型、III型、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆(PRCA:Pure red cell aplasia)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグス症候群(RLS:Restless legs syndrome)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子と睾丸の自己免疫、スティッフパーソン症候群(SPS:Stiff person syndrome)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE:Subacute bacterial endocarditis)、スザック症候群、交感性眼炎(SO:Sympathetic ophthalmia)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP:Thrombocytopenic purpura)、トロサ・ハント症候群(THS:Tolosa-Hunt syndrome)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative colitis)、未分化結合組織病(UCTD:Undifferentiated connective tissue disease)、ブドウ膜炎、血管炎、白斑症、フォークト・小柳・原田病。
【0161】
本発明の免疫セッティングのさらなる考察
脾臓は、白脾髄と赤脾髄の両方を含んでいる。脾臓の赤脾髄は、老化したもしくは欠陥のある赤血球(RBC)、および抗体で被覆された細菌もしくは赤血球を循環から通常濾過し除去するマクロファージを保持する。脾臓の白脾髄はリンパ系区画を含み、免疫の監視機構と応答のために重要である。白脾髄は、侵入する病原体に対する抗体を合成し、出血または感染に応答して血小板および好中球を放出する。発生の際には、脾臓は、最初の造血部位となること(妊娠6週において)を含む複数の役割を有すると考えられている。細胞毒性化学療法プレコンディショニング無しでは、細胞免疫療法物は、大部分が投与後1時間以内に循環から排除され脾臓に蓄積することが、前臨床および臨床治験によって示されてきた。細胞免疫療法物を循環中に維持するためには、細胞毒性化学療法プレコンディショニングが細胞免疫療法の投与に近接していなければならない(典型的には、細胞免疫療法の投与の48時間前)。細胞毒性化学療法プレコンディショニングが4週間前または骨髄回復を可能にする前処置時間において施された場合には、細胞免疫療法物を効果的に循環中に維持できない(Ritchie DS et al. Mol Ther. Nov;21(11):2122-9 (2013))。
【0162】
脾臓の白脾髄の動脈周囲リンパ鞘(PALS:periarterial lymphoid sheath)は主にT細胞で占められており、リンパ系(lymphoid)部分は主にB細胞で占められている。胚中心(GC)は、末梢リンパ組織におけるリンパ節またはリンパ小節内の、および脾臓の白脾髄における部位であり、中心細胞としても知られる著しい成熟Bリンパ球が抗体応答の際に急速に増殖し、分化し、体細胞超変異およびクラススイッチを通して突然変異をする部位である。胚中心はB細胞液性免疫応答の重要な部分である。それらは、T依存性抗原によるB細胞の活性化後に動的に発達する。組織学的には、GCはリンパ組織における顕微鏡的に識別可能な部分を記述するものである。活性化B細胞は一次反応巣から一次濾胞の濾胞系へと移動し、濾胞内樹状細胞(FDC:follicular dendritic cell)の環境中でモノクローナル性増殖を始める。
【0163】
数日間の増殖後、B細胞はその抗体コードDNAを変異させ、それによって胚中心においてクローンの多様性を生じさせる。これには体細胞超変異によるランダムな置換、欠損、および挿入が関わる。FDCから未同定の何らかの刺激があると、成熟中のB細胞(中心芽細胞)は暗領域から明領域へと移動して自身の表面に抗体を露出させ始めるが、この段階が中心細胞と呼ばれる。中心細胞は活性化されたアポトーシスの状態にあり、抗原を提示するFDCからの生存シグナルに関して競合する。この救出プロセスは、抗原に対する抗体の親和性に依存すると考えられている。最終的な分化シグナルを得るためには、機能的B細胞はその後ヘルパーT細胞と相互作用しなければならない。これには例えばIgMからIgGへのアイソタイプスイッチも関わる。T細胞との相互作用が自己反応性抗体の生成を防止すると考えられている。B細胞は、抗体を放散する形質細胞になるか、または、以後同じ抗原に接触した場合に活性化されるメモリーB細胞になる。リサイクリング仮説によればそれらは増殖、変異、および選択の全プロセスを改めて開始することもできる。
【0164】
脾臓の白脾髄領域内に含まれるB細胞は、特定の分子マーカーを用いた染色によって同定される特定の部分にさらに分けることができる。脾臓の辺縁帯は、白脾髄を縁取る非循環成熟B細胞を含有して、白脾髄と赤脾髄の間の分離を形成し、高いレベルのCD21およびIgMおよびCD24およびCD79aならびに測定可能レベルのCD9およびCD22を発現する。マントル帯は、正常な胚中心濾胞を包囲し、CD21、CD23、およびCD38を発現する。濾胞帯は胚中心内に含有され、高いレベルのIgDとCD23、中間レベルのCD21とCD24を発現し、PNA染色によっても同定され得る。胚中心は、PNA結合によって最もよく識別され、濾胞帯よりも高いレベルのCD54を発現する。胚中心はヘルパーT細胞の特別な集団を有しており、これらは全ての胚中心に均等に分布していると見られる。胚中心は伝統的に、Tヘルパー細胞を要する免疫応答に関連付けられるが、これは絶対的ではない。胚中心は、高頻度可変性の遺伝子突然変異が起こり高親和性IgG産生 B細胞が生成される場所である。活性胚中心は明白なマクロファージおよびCD21発現樹状細胞を有する。濾胞中心はCD45R(B220)の発現によっても同定され得る(Cytotoxicologic Pathology, 35:366-375, 2007)。CD45R濾胞中心は胚中心を囲んで見出されBcl6とBcl2を発現している。BioEssays 29:166-177, 2007;Cytotoxicol Pathol 34(5): 648-655, (2006)]
【0165】
病原体または癌細胞に対する応答は、免疫応答に関与する多くの数の多様な細胞型の複雑な相互作用と活性により編成される。自然免疫応答は防御の第一陣であり、病原体への曝露のすぐ後に起こる。好中球およびマクロファージのような貪食細胞、細胞傷害性ナチュラルキラー(NK)細胞ならびに顆粒球によってそれは遂行される。それに続く適応免疫応答は、抗原特異的防御機序を誘発させるが、発達するのには数日かかり得る。適応免疫において決定的役割を有する細胞型は、マクロファージおよび樹状細胞を含む抗原提示細胞である。T細胞のサブセット、B細胞、およびマクロファージを含む様々な細胞型の抗原依存性刺激がすべて、宿主防御において決定的役割を果たす。免疫細胞は、非排他的に、B細胞、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ球系細胞(ILC:Innate Lymphoid Cell)、巨核球、単球/マクロファージ、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC:Myeloid-derived Suppressor Cell)、ナチュラルキラー(NK)細胞、血小板、赤血球(RBC)、T細胞、胸腺細胞に関する。
【0166】
Zwang et al (2014)は、リンパ球枯渇後にリンパ球が、胸腺リンパ球新生の増強および残余の非枯渇末梢リンパ球の増殖の両方を通じて免疫スペースに再帰(repopulate)することを示した。恒常性増殖(あるいは恒常性拡張またはリンパ球減少誘導性増殖)という用語は後者を表す。恒常性増殖(homeostatic prolifiration)は、移植術における免疫枯渇療法後のリンパ球コンパートメントの再構成に特に関連性が高い。再帰中のリンパ球は、移植片拒絶、自己免疫、あるいは同種異系骨髄移植の場合には移植片対宿主病を引き起こすことができるエフェクターメモリー型に偏り得る。
【0167】
アレムツズマブおよびウサギ抗胸腺細胞グロブリンという2つの免疫枯渇剤は、再帰中のリンパ球においてエフェクター・メモリー表現型を誘導する能力についてよく解析されている。
【0168】
恒常性増殖についての初期の研究は、リンパ球枯渇を生き残ったT細胞が分裂し、メモリー表現型・機能を発達させ、それから支配的な様式で作用して、共刺激遮断を介する心または腎同種移植片寛容に対して動物を抵抗性にしたことを示した。1,2 これらの発見に合致して、最近の研究は、リンパ球減少自体が、安定な共刺激遮断に基づく末梢性寛容を破るのに十分であることを示している。3 MHC不一致心移植のマウスモデルでは、リンパ球減少(照射または抗CD4+/CD8+モノクローナル抗体のどちらかによって達成されるもの)が、TおよびB細胞媒介性急性拒絶を誘導し、これはCD44hiエフェクター・メモリー(EM)表現型へのT細胞シフトおよび宿主特異的抗体の出現を伴っていた。恒常性増殖のプロセスは、「遅い」(24~36時間当たり1回の細胞分裂)または「速い」(6~8時間当たり1回の細胞分裂)動態に分けることができる。遅い増殖は「空のスペースの感知」に応答して起こる一方、速い増殖は主に腸抗原によって駆り立てられるプロセスである。4 マウスモデルにおけるリンパ球枯渇後の恒常性増殖では、遅い恒常性増殖が優勢である。さらに、T細胞およびB細胞の両方が恒常性増殖を起こし得る。
【0169】
アレムツズマブ(抗CD52)は、強力なリンパ球枯渇剤であり、移植および多発性硬化症治療のための導入療法として使用されてきた。CD4+細胞、およびより程度は低いがナイーブCD8+細胞が、アレムツズマブ誘導性リンパ球枯渇を最も受けやすい。5,6,7,8 しかしながら、より大きなナイーブT細胞集団は枯渇を免れ得、これは、アレムツズマブによる誘導後に末梢リンパ節がこれらの細胞の貯蔵所となり得るからである。9 アレムツズマブ療法は、腎移植レシピエントにおいてメモリーCD4+およびCD8+表現型への偏りをもたらす。アレムツズマブ療法後に拒絶のエビデンス(生検による、新規またはドナー特異的抗体)を示すレシピエントは、CD8+エフェクターメモリー細胞(CD45RO-CD62L-)の割合が増加している。10 同じこれらの患者は、さらに、CD4+細胞のうち制御性T細胞(Treg)の頻度が減少している。他の研究は対照的に、アレムツズマブ誘導後のFoxp3+細胞の頻度の上昇を示唆した。11 この例におけるFoxp3発現は、T細胞活性化の一時的マーカーに過ぎない可能性がある。12,13,14 多発性硬化症の患者では、アレムツズマブ療法後の恒常性増殖は、活性化度が高く、増殖性で、オリゴクローナルでメモリー様であるCD4+およびCD8+細胞の集団の回復をもたらす。15 特に、CD8のプールは、パーフォリンとグランザイムBを発現する最終分化型のエフェクターメモリーCD28-CD57+CD8集団によって支配される。そのような集団は自己免疫に関連することが知られており、実際、87人の患者に関するこの研究では、3分の2が(主に甲状腺の)自己免疫を発生させた。
【0170】
腎移植における導入療法として投与されたrATG後のリンパ球枯渇の動態に関する最近の調査は、バシリキシマブ後のごく限られたT細胞枯渇または導入療法なしの場合と比べて、rATGは6か月の時点でT細胞コンパートメントを250 CD3+細胞/uL未満のカウントまで持続的に枯渇させることを見出した。19 先行の研究とは対照的に、この最近の調査は、rATG導入の1か月後に胸腺リンパ球新生(すなわち、CD4+またはCD8+細胞のうちのCD31+細胞)の増加を見出さなかった。むしろ、rATG療法後の最初の1か月において、Stat5を介したIL-7とIL-15による末梢サイトカイン媒介性シグナル伝達が増加した(特にメモリーT細胞サブセットのなかで)。これらの研究は、ATG後のT細胞回復は胸腺リンパ球新生の高まりよりむしろ末梢T細胞プールから来ることを示している。
【0171】
ヒトでは、マウスと異なり、増殖T細胞の大部分が胸腺ではなく末梢に由来する。20 従って、リンパ球充実状態を維持し、リンパ球減少症においてT細胞コンパートメントを再帰させるためには末梢サイトカインのシグナル伝達が必須である。IL-7はT細胞恒常性増殖を担う主要なサイトカインである。若年の胸腺摘除者および高齢の成人においては、循環IL-7レベルが健常対照のものよりも高い。21 胸腺機能が無いあるいは低いこれらの患者におけるIL-7は、STAT5シグナル伝達を介してT細胞増殖を刺激していると見られる。IL-7自体が、T細胞コンパートメントを維持するための「レオスタット」として記述されてきた。22 リンパ球減少症では、過剰なIL-7がT細胞増殖を刺激する。増殖T細胞はIL-7を消費し、T細胞コンパートメントが再帰するにつれ基底状態までレベルが落ちる。この機序が過剰な増殖を防ぎ、T細胞恒常性を保たせる。最近の研究により、IL-7誘導による増殖は、(連続的ではなく)間欠的なシグナル伝達を必要とすること、およびTCRの会合がこの間欠性を提供することが見出された。23 末梢(自己)TCRリガンドに対する親和性が不十分なT細胞は、長引くIL-7シグナル伝達の後に死んでしまう。この機序が、自己リガンドに対する適切な親和性を有するT細胞の集団を維持させる。IL-7に加えて、IL-15シグナル伝達がCD8+ T細胞の生存および増殖のために重要である。24,25,26 IL-15はメモリーCD8+細胞の恒常性増殖を増強させるが、IL-15単独ではナイーブCD8 T細胞の恒常性増殖のために不十分である。27 ナイーブCD8+細胞では、恒常性増殖のためにMHC I会合も必要となる。28 最近出ているデータは、メモリーCD4+もIL-15に応答し得ることを示している。29,30,31 最後に、TGB-βが、IL-15シグナル伝達を減弱させて恒常性増殖誘導による自己免疫に対するブレーキとして作用し得る。32,33,34,35,36,37
【0172】
タンパク質チロシンホスファターゼ遺伝子産物であるPTPN2は、CD4+およびCD8+細胞におけるTCRシグナル伝達を弱めるものであるが、ヒトの自己免疫に関係付けられている。38,39 マウスモデルにおけるPTPN2のT細胞ノックアウトは、対照動物と比べて、より速いリンパ球減少症誘導性CD8+増殖をもたらした。PTPN2欠損CD8+細胞を類遺伝子性宿主に養子移植すると、対照CD8+細胞の養子移植と比較して、エフェクター/メモリー分化および自己免疫をもたらした。40 この応答はIL-7非依存性であった。miRNA-181aは、TCRシグナル伝達を増強させるが、これは部分的に、他のタンパク質ホスファターゼの発現を抑制することによるものである。41 従って、miRNA-181あるいは他のmiRNAは、PTPN2発現を阻害しそれによってリンパ球減少症誘導性増殖を弱めるのかもしれない。転写因子が、リンパ球コンパートメントを再帰させる造血幹細胞の能力を制御し得ることが示唆されてきた。例えば、Hoxb4シグナル伝達は、リンパ球減少に応答して造血幹細胞CD4+セントラルメモリー(CD44hiCD62L+)表現型を促進させ得る。42 競合的養子移植実験において、Hoxb4-過剰発現セントラルメモリー細胞は、リンパ器官の再構築への寄与が野生型セントラルメモリー細胞より小さかった。最後に、インテグリンCD18(リンパ球機能関連抗原1、あるいはLFA-1)は、腸と二次リンパ器官との間のナイーブT細胞の輸送において機能し43,44、腸自己免疫に関係付けられている。45 Rag-/-宿主へのCD4+ CD18-/-細胞の養子移植は、速いものと遅いものの両方のリンパ球減少症誘導性増殖のためにCD18が必要であることを示した。46 上述してきた研究は、恒常性増殖における、エフェクターメモリー表現型へと偏らせる非サイトカイン制御因子の重要性を例証している。
【0173】
移植に対する障壁としての恒常性増殖を克服するためのもう1つの可能性のあるアプローチは、移植レシピエントにおいて潜在的に病理的なCD8+細胞を特異的に欠失させることである。Yamada et alは、非ヒト霊長類でのMHC不適合腎移植の混合キメリズムモデルにおいて、リンパ球枯渇時に抗CD8 mAbsを使用することによるこのアプローチを利用した。54 CD8-枯渇動物におけるTmem応答の減少という彼らの発見は希望を持たせるものである。この同じグループはその後アレファセプトの研究を行ったが、これはヒト白血球機能抗原3(LFA-3:leukocyte function antigen-3)接着分子の細胞外CD2結合部分の融合タンパク質である。55 この薬剤は、エフェクター・メモリーCD2+細胞とLFA-3の間の相互作用を阻止することにより細胞傷害性エフェクターメモリーT細胞増殖を妨害すると考えられている。乾癬についてのアレファセプト療法はCD4+CD45RO+エフェクターメモリー細胞を優先的に枯渇させ、それが皮膚病変の臨床的改善と相関した。56 アレファセプトは、非ヒト霊長類移植モデルにおいてCD8+エフェクターメモリー(CD28-CD95+)細胞を優先的かつ可逆的に枯渇させた。l57 このモデルにおけるCD28-細胞はCD2hiであり、CD8+細胞を優先的に枯渇させるアレファセプトの能力を説明する一助となっている。
【0174】
移植後のシクロホスファミド投与は、通常ならば導入療法を生き残るかもしれないアロ反応性のCD8+細胞を枯渇させることによりGVHDを防止する魅力的なアプローチである。58,59 最近のデータは、移植後シクロホスファミド投与が、急速分裂しているアロ特異的細胞を主に標的とし、HSCT後の免疫能の維持のために必須なナイーブ細胞は比較的温存することを示唆している。60 CD4+Foxp3+ Tregはシクロホスファミドに耐性と見られ、同種骨髄移植のためのシクロホスファミド導入後に速やかに回復する。61 Tregの温存が、シクロホスファミドがGVHDを防止する機序の部分的要因となり得る。
【0175】
Thangavelu et al. (2005)は、リンパ球枯渇療法後の関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)患者において、長期化しかつ重度の高いCD4+ T-リンパ球減少症を実証した。再構築の乏しさは、胸腺を通じた新規T細胞産生の低減か、または残余T細胞の乏しい末梢拡張のどちらかからもたらされ得る。インターロイキン7(IL-7)は、胸腺を刺激して新しいT細胞を産生させ、循環する成熟T細胞を拡張させ、それによってT細胞恒常性に決定的役割を果たすことが知られている。本研究で我々は、RA患者のクロスセクションにおける循環IL-7のレベルの低減を実証した。骨髄間質細胞培養物によるIL-7産生も、RAでは損なわれていた。そのようなIL-7欠乏が、治療的リンパ球枯渇後のRAにおいて観察される長期的なリンパ球減少症を説明し得るかを調べるために、我々は、高用量化学療法および自家前駆細胞レスキューで処置されたRA患者と固形癌患者とを比較した。化学療法は全ての患者を同様にリンパ球減少状態にしたが、癌患者では3~4ヵ月までに催告地区が起こったのに対し、RA患者ではこれが12ヵ月の時点でも維持された。どちらのコホートも、T細胞受容体切除サークルを含有するナイーブT細胞を産生した。群間の区別となる主だった特徴は、RAにおいて末梢T細胞を拡張できなかったこと(特に、処置後の最初の3ヵ月のあいだのメモリーT細胞)であった。最も重要なことに、リンパ球減少時に非RA対照個体では血清IL-7レベルの4倍上昇があったのに対し、RAでは血清IL-7レベルの上昇がなかった。従って我々のデータは、RA患者は比較的IL-7欠乏性であること、そしてこの欠乏が、治療的リンパ球枯渇後のRAにおける初期T細胞再構築の乏しさへの重要な寄与因子である可能性が高いことを示唆している。さらに、疾患が安定でよくコントロールされているRAの患者では、IL-7のレベルがCD4+ T細胞のT細胞受容体切除サークル含量と正に相関しており、このコホートにおける胸腺活性に対するIL-7の直接的影響を実証していた。
【実施例
【0176】
以下の実施例は、高用量のグルココルチコイド受容体アゴニストが末梢血リンパ球のほぼ完全なリンパ球枯渇を引き起こすことができ、さらに、リンパ器官における胚中心の数を減少させ胸腺リンパ球を枯渇させることができることを実証する。これらの効果は、好中球、血小板、RBCおよび幹細胞(HSCおよびMSCのどちらも)の細胞カウントに実質的に影響を与えずに達成される。
【0177】
これらの実施例はまた、高用量のグルココルチコイドアゴニストのこのリンパ球枯渇プロファイルは、標準的化学療法レジメン(シクロホスファミド(Cy)およびフルダラビン(Flu)に基づく)のものと同様であるが、付随する体重減少(そのような化学療法レジメンの毒性の一般的尺度)は誘発しないことを示す。
【0178】
高用量のグルココルチコイドアゴニストは、このように、化学療法に匹敵する効力で「免疫リセット」を生じさせることができるが付随毒性は有さない、骨髄非破壊的レジメンを表す。従って、高用量グルココルチコイド受容体アゴニストは、リンパ球のような免疫細胞により媒介される疾患の処置において使用するための有望な療法を表す。
【0179】
[実施例1―免疫抑制剤による二次および一次リンパ部位の低減]
急性高用量デキサメタゾンは本明細書においてDex、AugmenStem(商標)、PlenaStem(商標)、またはAVM0703とも呼ばれ得る。
【0180】
マウスについては、第0日に114.6 mg/kgデキサメタゾン塩基(HED 9.32 mg/kg)となるリン酸デキサメタゾンナトリウムを雄マウスに腹腔内注射し、デキサメタゾン注射の96時間後に屠殺した。マウスは瀉血により屠殺し、その後、5Uヘパリン/ml PBSを用いて逆行灌流を介して胸部頸静脈へと残余血細胞を流し出した。脾臓を除去し、湿重量を測定し、それから10%ホルマリン中で固定した。続いて専売的方法によって脾臓を切片化し、それから4℃で24時間 FITC-PNAとインキュベートし、洗浄し、スライドに載せ、免疫蛍光イメージを獲得した。Metamorphソフトウェアを用いて免疫蛍光シグナルを定量化した。サンプル画像と、脾臓面積に対して標準化(normalized)した結果とを図1に示す。
【0181】
対照マウスは著しいFITC-PNA免疫蛍光を有する一方、リン酸デキサメタゾンナトリウムで注射されたマウスはほとんど免疫蛍光シグナルを有していない。FITC-PNAは胚中心(非排他的に、脾臓およびリンパ節に関する)を標識する。この実施例は、リンパ器官において胚中心(GC)の数を低減させる高用量デキサメタゾンの能力を実証し、これは自己反応性免疫記憶を除去することができる。リンパ器官における胚中心の数の低減はまた、これらの中心のニッチに結合する癌細胞(例えば胚中心リンパ腫)または残余HIV感染T細胞を循環中に押しやることができ、そこでそれらは免疫系または標準的療法により除去され得る。
【0182】
図2は、マウスの脾臓における胚中心数に対する急性高用量デキサメタゾン(HED)効果の用量応答を示す。胚中心低減はHED 6 mg/kgで見られるが、9および12 mg/kg用量のHEDになるまで有意に低減しない。
【0183】
ラットについては、3.23、6.45、および12.9 mg/kgのあいだのデキサメタゾンHED(ラット用量20、40、および80 mg/kg)を投与して(IVまたはPO)、48時間後のGCおよび辺縁帯の抑制を決定した。ラットでは、図3および図4に示すように、12.9 mg/kgのHED Dex用量がGCおよび辺縁帯の両方の数および面積を最大限抑制した。ホルマリン固定脾臓を5片のクロスセクションとし、トリムしてパラフィンに包埋し、切片化してヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。PALの直径が最も大きい白脾髄の領域における脈周囲リンパ鞘(PAL)直径および辺縁帯(MZ:marginal zone)の幅の測定値は、接眼ミクロメーターを用いて測った。自動画像分析法を使用してGC面積を決定するために、ラット脾臓におけるBCL-6免疫組織化学染色を評価した。
【0184】
急性高用量デキサメタゾンはまた、胸腺の質量および体積を低減させる(図5)。マウスについては、第0日にベヒクルまたは3、6、9および12 mg/kg HEDデキサメタゾン塩基となるリン酸デキサメタゾンナトリウムを雄マウスに経口投与し、デキサメタゾン処置の48時間後に屠殺した。マウスは瀉血により屠殺し、その後、5Uヘパリン/ml PBSを用いて逆行灌流を介して胸部頸静脈へと残余血細胞を流し出した。各マウスから胸腺を取り出し、湿重量を測定し、胸腺重量/体重としてグラフ化した。
【0185】
[実施例2―好中球、RBC、血小板、および幹細胞を温存させる特性を有するデキサメタゾンの急性投与の24~48時間後のマウスおよびラットにおける免疫抑制剤リンパ球枯渇]
ナイーブマウスとラットのモデルにおいて行った予備的な用量上昇実験では、高用量デキサメタゾンの投与が完全なリンパ球枯渇をもたらすことが示された(図11、右側)。デキサメタゾンの高用量は、投与の48時間後に測定されるCD4+、CD8+、Tregs、およびB細胞集団の~98%低減を誘導することができ、自己免疫病態生理学的基質の迅速な除去をサポートしている。初期ステージの検証によると、急性高用量デキサメタゾンは、薬物動態学的には2~3時間の半減期および4~5日間の薬物動力学的半減期を有することが示されており、これは長期化する免疫抑制を除外する。それに加えて、急性高用量デキサメタゾンの経口投薬はIV投薬に匹敵する効果を有しており、単一経口処置としての急性高用量デキサメタゾンの使用をサポートしている。
【0186】
図6に示されているように、250~300グラム重量の雄Lewisラットへの、20(3.2 HED)、40(6.5 HED)または80(12.9 HED)mg/kgでのデキサメタゾンのIVまたはPO投与は、投与の48時間後に、プラセボと比べて、全ての用量においてリンパ球カウントを著しく低減させた。対照的に、図7に示されているように、好中球は急性高用量デキサメタゾンによって低減されなかった。実際、デキサメタゾンの全ての用量によって好中球数は増加するが、これはおそらく脱マージネーション(demargination)効果によるものである。RBC、血小板、Hct、HgBはデキサメタゾン処置によって影響されなかった。
【0187】
C57Bl雄マウスへの3 mg/kg (n=4)のHED、HED 6 mg/kg (n=6)、9 mg/kg (n=4)、12 mg/kg (n=4)、15 mg/kg (n=4)、または17.5 mg/kg (n=4)におけるデキサメタゾンの経口急性投与は、プラセボ(n=7)と比べて、CD3+ Tリンパ球を65%低減させCD4+ Tリンパ球を75%低減させ(図8)、CD8+ Tリンパ球を56%低減させTregを78%低減させ(図9)、ナチュラルキラー細胞(NK)を87%低減させBリンパ球を83%低減させ(図10)、リンパ球絶対数を84%低減させたが、好中球(図11)、RBC(図12)および血小板(図12)は温存させた。経管経口によるデキサメタゾン投与の24~48時間後に、全血化学(CBC:complete blood chemistry)およびフローサイトメトリーのために採血した。正常マウスにおいて12 mg/kg超のHED用量ではほとんど完全なリンパ球除去が観察された。腫瘍を有するマウスでは、ほぼ完全なリンパ球除去用量は6 mg/kg超のHEDとなる。
【0188】
急性高用量デキサメタゾンは、カスパーゼ経路を介して受容体媒介性アポトーシスを活性化させ、使用される用量に応じて全てのリンパ球のリンパ球枯渇またはリンパ球除去を起こす。その受容体媒介性作用機序から予測されるように、デキサメタゾンはリンパ球枯渇を誘導するが好中球、血小板、および赤血球(RBC)の細胞はグルココルチコイド受容体の欠如または違いのために温存される。高用量のデキサメタゾンでは、末梢血および骨髄の両方においてプラセボの場合を超える好中球カウント上昇の傾向が観察され、リンパ球枯渇処置のあいだの感染に対する保護の可能性が支持される。
【0189】
特筆すべきことに、高用量のデキサメタゾンはマウスにおいて造血幹細胞の量を有意に変化させなかった(図13)。従って、急性高用量デキサメタゾンで表される非骨髄非破壊的レジメンは、免疫リセット後の造血回復のための幹細胞輸注の必要性を除去し得る。
【0190】
[実施例3―好中球、RBC、血小板、および幹細胞を温存させる特性を有するデキサメタゾンの急性投与の36~48時間後のヒトにおける免疫抑制剤リンパ球枯渇]
四人のヒト患者(三人は変形性膝関節炎を有し一人は大動脈瘤を有する)に、3 mg/kgデキサメタゾン塩基等量(これらの実施例において記載される全ての用量はデキサメタゾン塩基等量である)の経口急性投与が施された。リンパ球およびその他の血液細胞集団を決定するためのCBC分析およびフローサイトメトリーのために、薬剤処置の前および処置の48時間後に採血した。サイトカインレベルについて血清を分析した。一人の患者については、処置前CBCが採られず、従って標準化フローサイトメトリーデータは3患者のみについて示している。未標準化フローサイトメトリーデータによると、4患者のうち2患者だけがリンパ球枯渇を伴ってデキサメタゾンに応答した一方(図14、15、および16)、この用量のデキサメタゾンに対して4患者のうち2患者がCD3およびCD4リンパ球においてリンパ球増加応答を示し4患者のうち1患者がCD8、Bリンパ球およびNK細胞においてリンパ球増加応答を示した。急性経口デキサメタゾン塩基(3 mg/kg)の48時間後に4患者のうち3患者がIL-2のレベルの上昇を示し4患者のうち4患者がIL-15のレベルの上昇を示した(図17)。致死の可能性を有するサイトカイン放出症候群(CRS)の主要な駆動因子であることが知られるサイトカインであるIL-6は、いずれの患者においても上昇しなかった。3 mg/kg用量において4人の非癌患者のうち2人で観察されたリンパ球増加応答に基づけば、デキサメタゾンに対する腫瘍罹患マウスの上昇した感度(最低致死用量は健常マウスではHED 114 mg/kgであったのと比べて腫瘍罹患マウスではHED 43 mg/kgであった(Scorza Barcellona, 1984))に基づいて好ましいリンパ球枯渇用量は3 mg/kg以上となる。
【0191】
デキサメタゾン投与の48時間後に骨髄を採取し、コロニー形成アッセイ線維芽細胞(CFU-F)によって間葉系幹細胞(MSC)数を決定した。デキサメタゾン塩基3 mg/kgの経口投与は腸骨稜骨髄(BM:bone marrow)MSCをほぼ2倍増加させた(図18)。BM MSCの三系統分化能力もウマの実験において決定された。6 mg/kg HEDは、ウマへの一時間のIV注入投与の48時間後に胸骨BM MSC幹細胞数を二倍にしたが、骨細胞、軟骨細胞、および脂肪細胞へのMSCの三系統分化能力は改変しなかった。
【0192】
[実施例4―急性12 mg/kgおよび17.5 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDと標準的Cy(シクロホスファミド)Flu(フルダラビン)化学療法レジメンとの比較]
第-2日に、12 mg/kgまたは17.5 mg/kg HEDにてデキサメタゾン塩基を成体オスマウスに経管経口投与した。別の群のマウスに、第-5日および第-4日に166 mg/kg(HED 500 mg/m2)のCyを、第-5日、第-4日、第-3日、第-2日にフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)をIP投与した。第三の群のマウスには、第-5日に166 mg/kg(HED 500 mg/m2)のCyを、第-5日にフルダラビン10 mg/kg(HED 30 mg/m2)をIP投与し、それから第-2日に12 mg/kgまたは17.5 mg/kg HEDのデキサメタゾン塩基を経口投与した。CBCおよびフローサイトメトリーの結果を図19~24に示し、体重を図25に示している。
【0193】
採血の12~72時間前に投与されたデキサメタゾン塩基の12 mg/kgまたは17.5 mg/kg HEDは、標準的な2日間 Cyと4日間 Fluに匹敵するリンパ球枯渇プロファイルをもたらし、第-5日の単一Cyおよび第-5日の単一Fluと第-2日の12 mg/kgデキサメタゾンHEDとの組み合わせも然りである(図23)。単一Cyと単一Fluの用量は第-6日、第-4日、または第-3日に投与しても同等の効果が得られる。CyFluの場合ほど劇的にリンパ球絶対数が枯渇しないのでデキサメタゾン単独のリンパ球枯渇プロファイルが好ましくなり得、CyFlu後に養子細胞療法が投与される場合にはこのリンパ球枯渇の度合いが神経浮腫と関係し得る。
【0194】
標準的反復CyFluレジメンは、毒性の一般的尺度としての体重を著しく減少させたのに対し、12 mg/kgまたは17.5 mg/kg デキサメタゾン塩基HEDは体重に影響を与えなかった。第-5日のCy一用量およびFlu一用量と12 mg/kgデキサメタゾンHEDとの組合せは、体重に対する影響が標準的CyFluレジメンより有意に少なかった一方、第-5日のCy一用量およびFlu一用量と17.5 mg/kgデキサメタゾンHEDとの組合せは体重に影響を与えなかった(図25)。これは、急性高用量デキサメタゾンがシクロホスファミド(Cy)とフルダラビン(Flu)に基づく標準的化学療法と同等のリンパ球枯渇プロファイルを有するが体重減少は伴わないことを実証しており、化学療法と比べたデキサメタゾン製剤の安全性を確証するものである。
【0195】
それに加えて、急性高用量デキサメタゾンを用いた二重盲検コントロールのウマ治験では、70日間に至るまで有害副作用は観察されなかった。
【0196】
今日までに集められてきたデータは、急性高用量デキサメタゾンが、認可されたDSP製品のものと合致する安全性プロファイルを提供することを示唆している。提示される急性高用量デキサメタゾンの用量(HED 3~18 mg/kg)は、様々な状態に関して5日間までの日毎のパルス療法で安全にかつ有効に使用されるDSPの累積用量と同等以下であり、DSPは、医師主導による高用量パルス療法の臨床的使用においてよく耐容されてきた(Han et al, 2014; Annane et al, 2004; Ayache et al, 2014)。少数のヒト変形性関節炎患者において行われた予備的研究は、急性高用量デキサメタゾンが血漿IL-2およびIL-15サイトカインのレベルを上昇させるが、化学療法レジメンの後に見られるような(US9855298B2)炎症促進性サイトカイン(例えばIL-6)の濃度には影響しないことを明らかにした。増加させたHED用量(6~12 mg/kg)における急性高用量デキサメタゾンで処置されたマウスにおける臨床化学の全分析は、急性経口用量は安全であり、コレステロールおよび総タンパク質を含め正常範囲を出る臨床化学レベルの上昇は起こさないことを示した。さらに、DSPの慢性的低用量は、体重増およびグルコース上昇を含む望ましくない副作用を引き起こすことが示されてきたが(Ferris & Kahn, 2012)、急性高用量デキサメタゾン後のグルコースレベルは正常範囲より上昇していないことが見出された。全体として、急性高用量デキサメタゾンのリンパ球枯渇活性およびその安全なプロファイルは、自己免疫疾患のための化学療法に匹敵する効力を有する免疫リセット処置としてのその使用を強くサポートしている。
【0197】
第-1日または第-2日または第-3日または第-4日または第-5日における単一用量(複数可)として投与され第-2日における約3~約12 mg/kgのデキサメタゾンと組み合わせられ得る他の標準的化学療法レジメンとしては、以下のものが挙げられる:Cy 120 mg/kgおよびFlu 75 mg/m2;30 mg/m2 fluおよび50 mg/kg Cyおよび200 cGy TBI;Cy 1500 mg/m2およびベンダムスチン120 mg/m2;約300 mg/m2から約2300 mg/m2の間のCy;約10 mg/m2から約900 mg/m2の間のFlu;Cy 600 mg/m2およびFlu 30 mg/m2;ブスルファンおよびメルファランおよびFlu;ブスルファン(体重に応じて用量調節)およびチオテパ(10 mg/kg)およびフルダラビン(160 mg/m2);Flu 30 mg/m2およびCy 300 mg/m2およびメンサ300 mg/m2;Flu 30 mg/m2およびCy 60 mg/m2およびアレムツズマブ0.2 mg/kg。
【0198】
[実施例5―自己免疫疾患を有する患者の処置]
例えばSLE、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、I型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、セリアック病、アジソン病、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群、胆汁性胆管炎であるがこれらに限定されない自己免疫疾患を有する患者を、グルココルチコイド免疫抑制剤、またはデキサメタゾンの用量で処置することができる。急性高用量デキサメタゾン(塩基として)の用量は約3 mg/kgから約24 mg/kgにわたり、約9 mg/kg~約18 mg/kgの用量が好ましい。
【0199】
急性高用量デキサメタゾンの用量によってBリンパ球数が90%以上低減し、20歳超の人々においてメモリーB細胞がB細胞コンパートメントのおよそ50%を占めるから、メモリーB細胞集団も90%超の低減をする。患者の自己免疫攻撃性B細胞はアポトーシスし、患者は活発な自己免疫攻撃を有さなくなる。患者の身体的症状は改善または消失する。ほとんどの患者においては自己免疫疾患からの寛解は無期限に持続するが、しかし再発が起こった場合には、グルココルチコイド免疫抑制剤、デキサメタゾン塩基、またはCD26のアンタゴニストの反復用量を投与し得る。反復的処置は必要ならば1カ月に一度に及ぶ高頻度で行われ得るが、好ましくは1年に一度以下であり、最も好ましくは5年に一度以下である。
【0200】
[実施例6―残余HIVの処置]
残余HIVを有する患者がグルココルチコイド免疫抑制剤、またはデキサメタゾンで処置される。急性高用量デキサメタゾン(塩基として)の用量は約3 mg/kgから約24 mg/kgにわたり、約9 mg/kg~約18 mg/kgの用量が好ましい。この処置は、HIVが隠れる脾臓中のニッチを除去し、感染したT細胞を循環中に送り出し、そこでそれらは抗レトロウイルス薬(ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NTRI:nucleoside reverse transcriptase inhibitor)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI:non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor)、プロテアーゼ阻害剤(PI:protease inhibitor)、融合・侵入阻害剤、薬物動態増強剤、およびインテグラーゼストランド転移阻害剤(INSTI:integrase strand transfer inhibitor)を含むがこれらに限定されない)を含む標準的HIV療法により殺されることができる。
【0201】
[実施例7―胚中心リンパ腫(例えばバーキットリンパ腫)の処置]
例えばバーキットリンパ腫またはびまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)であるがこれらに限定されない胚中心リンパ腫を有する患者がグルココルチコイド免疫抑制剤、またはデキサメタゾンで処置される。急性高用量デキサメタゾン(塩基として)の用量は約3 mg/kgから約24 mg/kgにわたり、約9 mg/kg~約18 mg/kgの用量が好ましい。この処置は、胚中心リンパ腫が結合する脾臓中のニッチを除去し、それら細胞を循環中に送り出し、そこでそれら細胞は、R-CHOPのような標準的化学療法、またはリツキサン、ベキサール、もしくはゼヴァリンのようなCD20に対する抗体、またはリンフォサイドもしくはボルセツズマブマホドチンのようなCD22もしくはCD70に対する抗体、またはオブリメルセンナトリウム、ABT-737(経口形態ナビトクラックス、ABT-263)、もしくはフェンレチニドのようなBcl-2阻害剤、またはフォスタマチニブもしくはタマチニブのようなSyk阻害剤、またはボルテゾミブ(ベルケイド)のようなプロテアソーム阻害剤、またはCOMPADME、CODOX-M/IVACによって、より完全に、またはより低用量で、除去され得る。再発率は低下し無疾患生存率が上昇する。
【0202】
[実施例8―デキサメタゾン用量から別のグルココルチコイドの等価用量への換算]
別のグルココルチコイドの等価投薬量を算出するために、デキサメタゾンの用量を、公的に利用可能なグルココルチコイド換算計算手段、好ましくは、http://www.medcalc.comに入力する。続いて、総投薬量をグルココルチコイドの半減期に基づいて決定する。例えば、3~12 mg/kgのデキサメタゾンは、19~75 mg/kgのプレドニゾンに換算される。プレドニゾンの生物学的半減期は約20時間であり、デキサメタゾンの生物学的半減期は、約36~54時間である。従って、プレドニゾンは、等価な生物学的投薬量のために、24時間毎に19~75mg/kgの間で投薬される。
【0203】
[実施例9―プレドニゾンによる自己免疫疾患患者の処置]
例えばSLE、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、I型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、セリアック病、アジソン病、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群、胆汁性胆管炎であるがこれらに限定されない自己免疫疾患を有する患者を、急性高用量プレドニゾンで処置することができる。急性高用量プレドニゾンの用量は約19 mg/kgから約150 mg/kgにわたり、約56 mg/kg~約112 mg/kgの用量が好ましく、24時間後におけるこの用量の反復(2回目)投与および最初の用量の48~72時間後におけるこの用量の任意の反復(3回目)投与を伴う。
【0204】
急性高用量プレドニゾンの用量によってBリンパ球数が90%以上低減し、20歳超の人々においてメモリーB細胞がB細胞コンパートメントのおよそ50%を占めるから、メモリーB細胞集団も90%超の低減をする。患者の自己免疫攻撃性B細胞はアポトーシスし、患者は活発な自己免疫攻撃を有さなくなる。患者の身体的症状は改善または消失する。ほとんどの患者においては自己免疫疾患からの寛解は無期限に持続するが、しかし再発が起こった場合には、プレドニゾンの反復用量を投与し得る。反復的処置は必要ならば1カ月に一度に及ぶ高頻度で行われ得るが、好ましくは1年に一度以下であり、最も好ましくは5年に一度以下である。
【0205】
[実施例10―15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDと標準的化学療法レジメンとの比較]
以前の研究は、A20 B細胞リンパ腫マウスモデルにおいて高悪性度非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma)のための標準的化学療法レジメンが著しい毒性を有することを示していた(Bascus et al., 2016)。
【0206】
患者における高悪性度NHLのための標準的化学療法レジメンも緩徐進行性NHLのために最もよく使用されるレジメンも、6~8サイクルにわたり21日毎に投与されるシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン/ステロイドの組合せ(CHOP)である。Bascus et al. (2016)は、A20 B細胞リンパ腫マウスモデルにおいてCHOPの効力および毒性を評価した。
【0207】
Bascus et al. (2016)の研究では、8~10週齢メスBALB/cマウスがインビトロ実験のために使用された。動物は、食事と水が自由に与えられフィルターされた空気を有するラック中で12:12 h明/暗サイクルで収容された。A20細胞株は、老齢のBALB/cAnNマウスからの自然発生の細網細胞肉腫のBリンパ球由来のものであり、アメリカ培養細胞系統保存機関(米国ヴァージニア州マナッサス)から入手した。各々の化学療法サイクルにおいて以下の用量を用いた:シクロホスファミド100 mg/kg i.p、ドキソルビシン6 mg/kg i.p、ビンクリスチン0.1 mg/kg i.p、およびデキサメタゾン0.2 mg/kg i.p。腫瘍移植後(p.t.i.:post-tumor implantation)25日において、A20細胞株が接種されたマウスの群(n = 9)は、1サイクルの化学療法(CHOP×1)、2サイクルの化学療法(CHOP×2)、または対照としてのPBSによって処置され、腫瘍成長について追跡された。2~3日毎に腫瘍体積(mm3)を測定した。インビボ毒性を評価するために、CHOP投与の前および後に体重を測定した。
【0208】
本研究では、Bascus et al. (2016)の研究で報告されているのと同じ態様でマウスを収容し、接種し、処置した。マウスは15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDまたは対照としてのPBSによって処置され、腫瘍成長について追跡された。デキサメタゾン投薬はA20 2M腫瘍細胞接種後の第7、10、18、23、24、28、35、および42日に15mg/kg HEDにて行われた。2~3日毎に腫瘍体積(mm3)を測定した。インビボ毒性を評価するために、デキサメタゾン投与の前および後に体重を測定した。
【0209】
CHOPおよびPBS対照と比較した15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDの効力を図26に示す。図26に見られるように、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDの効力は1サイクルのCHOPより大きく、しかし腫瘍体積のコントロールの点で2サイクルのCHOPほど効果的ではなかった。
【0210】
しかしながら、図27は、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDが2サイクルのCHOPと比べて好ましい毒性プロファイルを有することを実証している。2サイクルのCHOPで処置されたマウスで見られた体重減少(図27B)は、15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDで処置されたマウスについて見られた体重減少(図27A)よりはるかに大きかった。加えて、2サイクルのCHOPで処置されたマウスの18%がCHOP処置により死亡したのに対し、デキサメタゾン処置によって死亡したマウスはいなかった。従って、デキサメタゾンは、付随する毒性なしで、伝統的な化学療法処置と同じくらい効果的となり得ると結論付けることができる。
【0211】
PBS対照と比較した15 mg/kgデキサメタゾン塩基HEDの統計学的分析の結果を図28Aに示す。これは、試験中の複数の時点での腫瘍体積における有意差を実証しており、デキサメタゾン処置マウスは有意に低減した腫瘍体積を有している。
【0212】
[実施例11―化学療法に対する感作]
この実施例は、グルココルチコイド療法が、効果的な化学療法のための必要用量を低減させることを示す。
【0213】
A20 B細胞リンパ腫マウスモデルを、実施例10に記載したのと本質的に同じように使用したが、ただしメスマウスではなくオスマウスを用いた。マウスは第0日に接種された。PBSのみで処置されたマウス(「対照」)または第11日および第14日にHED 15 mg/kgデキサメタゾン塩基で処置されたマウス(「AVM0703」)は、継続的な腫瘍成長を示し、20日以降には高い成長率を伴っていた(図29参照)。「組合せ療法」は、第11日におけるHED 15 mg/kgデキサメタゾン塩基の投与に続いて第14日にCy/Flu療法(13.5 mg/kg HEDシクロホスファミドおよび0.8 mg/kg HEDフルダラビン)を投与するものであったが、腫瘍体積の着実な低減を示し、24および26日後には、第11日および第14日におけるCy/Flu化学療法(13.5 mg/kg HEDシクロホスファミドおよび0.8 mg/kg HEDフルダラビン)の2回の投与で処置されたマウスにおける腫瘍サイズと同様の程度にまで低減した(図29)。組合せ療法またはCy/Fluのダブル用量のどちらかで処置された対象は14日後に腫瘍体積の低減を示している。
【0214】
[実施例12―リンパ腫におけるグルココルチコイドの腫瘍選択性]
この実施例は、高用量デキサメタゾンの投与が癌細胞に優先的に影響を与えることを示す。
【0215】
A20 B細胞リンパ腫マウスモデルを、実施例10に記載したのと本質的に同じように使用したが、ただしメスマウスではなくオスマウスを用いた。マウスは第0日に接種され、第28日にPBS(プラセボ)または15 mg/kg HEDデキサメタゾンのどちらかで処置された。全血カウント分析機(CBC(Complete Blood Count)分析機)を用いることによって細胞カウントを測定し、その結果は下記表2に示されている。
【表2】
表2に示されたデータは、腫瘍を有するマウスがデキサメタゾンに対する増加した感度を有するという知見を支持している(本明細書に記述されている;例えば実施例3参照)。デキサメタゾンは腫瘍によって吸収されると見られるため、腫瘍を有するマウスでは末梢リンパ球枯渇が観察されない。対照的に、健常マウスはリンパ球枯渇を示している。このことは、デキサメタゾンが腫瘍に対して直接的作用を有していることを示し、腫瘍における根深いリンパ球枯渇の可能性を、従って本明細書に記載される高用量グルココルチコイド療法に関する優れた腫瘍標的プロファイルの可能性を提示している。デキサメタゾンは、腫瘍を有するマウスで試験された場合、末梢リンパ球よりも腫瘍浸潤リンパ球(TIL:tumor infiltrating lymphocyte)に対してより特異的である。
【0216】
[実施例13―増加用量のグルココルチコイド処置に対する腫瘍の応答]
この研究の目的は、腫瘍に対する異なる用量のデキサメタゾンの効果を評価することであった。10週齢BALB/cマウスにおいて腫瘍を確立した後、エクセルによって、ほぼ同等の平均腫瘍体積を有する4つの群にマウスを無作為に分けた。週毎の6 mg/Kg HEDデキサメタゾン、週毎の15 mg/Kg HEDデキサメタゾン、または週毎の21 mg/Kg HEDデキサメタゾンで4サイクルに渡ってマウスに投薬した(各投与群に5匹のマウス)。腫瘍が、刊行された式V = L x W2 x 0.5を用いて1500 mm3の体積に達したら、マウスはエンドポイントにあるとみなされて撤収された。図30に示すように、増加用量のデキサメタゾンは腫瘍あたりの平均細胞数としての密度を低減させる。
【0217】
参考文献
発明およびその発明が関係する技術水準をより十分に説明し開示するために、多数の刊行物が上記において引用されている。これらの参考文献の完全な引用が以下に提供される。
【0218】
番号付きパラグラフ
以下の番号付きパラグラフは、発明者らの提唱の異なる側面を記述するものであり、詳細な説明の一部をなす。

1.対象におけるリンパ球媒介性疾患の処置における使用のための、グルココルチコイドを含む医薬組成物であって、前記処置は、前記医薬組成物の用量を患者に投与して約3~26 mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量の前記グルココルチコイドを送達することを含み、
前記医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、保存剤、および/またはキレート剤を含む、
医薬組成物。
2.前記リンパ球媒介性疾患は自己免疫疾患である、パラグラフ1に記載の医薬組成物。
3.前記リンパ球媒介性疾患は残余HIV疾患である、パラグラフ1に記載の医薬組成物。
4.前記リンパ球媒介性疾患は胚中心リンパ腫である、パラグラフ1に記載の医薬組成物。
5.前記リンパ球媒介性疾患は移植片対宿主病である、パラグラフ1に記載の医薬組成物。
6.前記リンパ球媒介性疾患はアレルギー性障害であり、任意で前記アレルギー性障害は喘息である、パラグラフ1に記載の医薬組成物。
7.前記自己免疫疾患は1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、天疱瘡、および狼瘡からなる群から選択される、パラグラフ2に記載の医薬組成物。
8.保存剤を含み、前記保存剤は亜硫酸塩である、パラグラフ1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
9.キレート剤を含み、前記キレート剤はEDTAである、パラグラフ1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
10.前記グルココルチコイドはデキサメタゾンを含み、任意で前記デキサメタゾンはデキサメタゾン塩基、リン酸デキサメタゾンナトリウム、および酢酸デキサメタゾンからなる群から選択される、パラグラフ1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
11.前記デキサメタゾンがリン酸デキサメタゾンナトリウムである、パラグラフ10に記載の医薬組成物。
12.前記医薬組成物の用量が、単一の急性用量であるか、または約72時間の期間に渡って投与される合計用量である、パラグラフ1~11のいずれかに記載の医薬組成物。
13.前記医薬組成物は、静脈内(IV)または経口用量として投与され、任意で前記IVまたは経口用量は単一のIVまたは経口用量として投与される、パラグラフ1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
14.前記医薬組成物はグルココルチコイド水溶液である、パラグラフ1~13のいずれかに記載の医薬組成物。
15.前記医薬組成物は、少なくとも約4 mg/kg、少なくとも約5 mg/kg、少なくとも約6 mg/kg、少なくとも約7 mg/kg、少なくとも約8 mg/kg、少なくとも約9 mg/kg、少なくとも約10 mg/kg、少なくとも約11 mg/kg、少なくとも約12 mg/kg、少なくとも約15 mg/kg、少なくとも約18 mg/kg、または少なくとも約24 mg/kgのヒト等価用量(HED)のデキサメタゾン塩基と等価な用量において投与される、パラグラフ1~14のいずれかに記載の医薬組成物。

図1
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