(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】介護用おむつ及び介護用ロボット並びに介護設備
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20250423BHJP
【FI】
A61F5/44 S
A61F5/44 W
(21)【出願番号】P 2023203329
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】榎原 邦晃
(72)【発明者】
【氏名】西本 昌悟
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1839896(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の腰部及び骨盤背面部に重なる腰側重合要素と、前記腰側重合要素と一体に連
続していて被介護者の股部に重なる股部重合要素と、前記股部重合要素と一体に連続して
いて被介護者の腹部に重なる腹側重合要素と、前記腰側重合要素に一体に設けた左右の腰
側フラップと、前記左右の腰側フラップに設けた固定用のサイドテープと、
を有して、前記腰側重合要素と股部重合要素と腹側重合要素と腰側フラップとによって本
体部が構成されており、
前記本体部及びサイドテープに、カメラで撮像して画像処理することによって認識され
るセルが配置されており、前記セルの画像データに基づいてロボットによる装着作業又は
脱がし作業が実行可能になっている、
介護用おむつであって、
a:前記本体部のセルは、前記被介護者を向く内面に配置されている内面側本体セルと
、前記被介護者と反対側を向く外面に配置されている外面側本体セルとを有する、
b:前記内面側本体セルと外面側本体セルとは互いに異なる画像として認識される態様
であると共に、前記内面側本体セルと外面側本体セルとはそれぞれ固有の番地を有するよ
うに異なる態様である、
c:前記サイドテープは、被介護者への装着前及び装着後の両方において前記ロボット
のハンドで摘むことができる摘み片を有している、
介護用おむつ。
【請求項2】
前記サイドテープにおける前記摘み片の内面と外面とに、前記サイドテープのセルとし
てテープセルが配置されている、
請求項1に記載した介護用おむつ。
【請求項3】
前記サイドテープは、テープ状の基材に粘着層と前記摘み片とを設けた構造であり、前
記摘み片は、前記基材の素材厚よりも厚く形成されている、
請求項1又は2に記載した介護用おむつ。
【請求項4】
前記本体部のセルは、所定の密度で前記本体部の全体に亙ってドット状に多数整列配置
されている、
請求項1又は2に記載した介護用おむつ。
【請求項5】
前記内面側本体セルの群と前記外面側本体セルの群とは、内外に重なるように配置され
て対を成したものが多数存在している、
請求項1又は2に記載した介護用おむつ。
【請求項6】
前記腰側重合要素と股部重合要素と腹側重合要素との内面及び外面に、前記カメラで撮
像して画像処理することによって認識できるセンターラインがそれぞれ設けられている、
請求項1又は2に記載した介護用おむつ。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか1項に記載したおむつの交換作業を行うことができるロボットであって、
前記カメラと作業用の左右ハンドと制御装置とを備えており、前記制御装置は、
被介護者の大きさと性別と姿勢とを認識する第1プログラムと、
被介護者から服を脱がして装着中の前記おむつを露出させる行為を実行するための第2プログラムと、
被介護者が装着中の前記おむつをカメラで撮像して前記装着中のおむつの立体的形状を認識する第3プログラムと、
交換用おむつを所定の姿勢に広げる行為を実行するための第4プログラムと、
前記所定の姿勢に広げられた交換用おむつを被介護者の下方に配置する行為を実行するための第5プログラムと、
前記装着中のおむつを前記被介護者から取り外しつつ前記被介護者の汚れた部位を浄化する行為を実行するための第6プログラムと、
前記被介護者が装着していたおむつを丸めて取り外すことを実行するための第7プログラムと、
前記交換用のおむつを被介護者に装着することを実行するための第8プログラムと、が含まれており、
前記第4プログラムは
、端部セルの画像データに基づいて前記サイドテープの位置を認識してから、前記左右の摘み片を前記ハンドで摘んで前記左右のハンドを動かす行為を含んでおり、
前記第5プログラムは、前記左右の摘み片を摘んで前記おむつを広げた状態で前記左右のハンドを前記被介護者の下方に動かす行為を含んでおり、
前記第6プログラムは、前記外面側
の端部セルを前記カメラによって認識してから前記左右の摘み片を前記ハンドで摘んで左右に広げることによって被介護者に対する固定を解除する行為と、前記腹側重合要素を手前に剥いて被介護者の股部を露出させる行為と、前記ハンドによって被介護者の股部を浄化する行為とを含んでおり、
前記第7プログラムは、前記カメラによって前記本体部のセルの群を読み取り続けることによって前記おむつの立体形状の変化を把握しつつ前記ハンドを動かすように設定されており、
前記第8プログラムは、前記交換用おむつの端部セルの画像を前記カメラで認識してから前記摘み片をハンドで摘む行為を含んでいる、
介護用ロボット。
【請求項8】
人と同様に胴体部と四肢部と頭部とを有して自立歩行可能であり、前記頭部に前記カメ
ラが配置されている、
請求項7に記載した介護用ロボット。
【請求項9】
キャスタ付きスタンドに、人の胴部と両手と頭部に相当する部分を設けている、
請求項7に記載した介護用ロボット。
【請求項10】
請求項7~9のうちの何れかに記載したロボットと、ベッドに寝た被介護者を撮影可能
な室内カメラとを有しており、
前記ロボットの制御装置に、前記室内カメラで撮影された前記被介護者及びおむつの画
像データが送信されるように設定されている、
介護設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、介護用おむつ及び介護用ロボット並びに介護設備に関するものである。こ
こに、ロボットは少なくとも人の手に相当する部分(ハンド)を備えた装置を指しており
、頭部、胴部、四肢を備えた人形とは限らない。
【背景技術】
【0002】
我が国を初めとして多くの国で高齢化が進んでおり、これに伴って要介護者の数も増大
している。要介護のレベルには段階があるが、介護作業において、介護者及び被介護者の
双方にとって最も大変なのが被介護者が寝たきりの場合のおむつの交換である。
【0003】
寝たきりの人が使用するおむつとしては、一般に左右のテープで固定する開きタイプが
使用されており、介護者は、被介護者の身体を仰向けに寝た状態や右向きに寝た状態、左
向きに寝た状態と姿勢を変えながら、古いおむつの取り外しと新しいおむつの装着、そし
て陰部等の洗浄を一連に行っている。
【0004】
寝たきりの人のおむつ交換は細かい作業の連続であるため人手に頼っているが、おむつ
の交換において被介護者は陰部を曝して介護者の作業に委ねるため、介護者にとって重労
働であるだけでなく、被介護者の羞恥心や介護者の心苦しさなどがあって、被介護者と介
護者との双方にとって心理的負担を感じる問題もある。我が国において、寝たきりの介護
の大半は家庭での介護が占めているが、家庭での介護は特定の人に犠牲が強いられる側面
があるため、特に、福祉政策において直視すべき問題である。
【0005】
従って、おむつ交換に関して、介護者及び被介護者の双方の肉体的・心理的負担を軽減
できる技術が要請されているといえるが、本願出願人はこのような要請に応えるべく、特
許文献1において、寝たきりの被介護者のおむつ交換を可能にするロボットシステムを開
示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のロボットが実現すると、介護者及び被介護者の双方の肉体的・心理的負担
を軽減したおむつ交換が可能になって、介護を取り巻く厳しい状況を大きく改善できると
期待されるが、人手による交換を前提にして作られている現状のおむつでは、ロボットに
よる交換に対応しにくいことが懸念される。従って、おむつについてもロボットによる効
果が容易となるような改善が要請されているといる。
【0008】
本願発明は、この要請に応えるべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は多くの構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。このうち請
求項1の発明は介護用おむつを対象にしており、
「被介護者の腰部及び骨盤背面部に重なる腰側重合要素と、前記腰側重合要素と一体に連
続していて被介護者の股部に重なる股部重合要素と、前記股部重合要素と一体に連続して
いて被介護者の腹部に重なる腹側重合要素と、前記腰側重合要素に一体に設けた左右の腰
側フラップと、前記左右の腰側フラップに設けた固定用のサイドテープと、
を有して、前記腰側重合要素と股部重合要素と腹側重合要素と腰側フラップとによって本
体部が構成されており、
前記本体部及びサイドテープに、カメラで撮像して画像処理することによって認識され
るセルが配置されており、前記セルの画像データに基づいてロボットによる装着作業又は
脱がし作業が実行可能になっている、
介護用おむつにおいて、
a:前記本体部のセルは、前記被介護者を向く内面に配置されている内面側本体セルと
、前記被介護者と反対側を向く外面に配置されている外面側本体セルとを有する、
b:前記内面側本体セルと外面側本体セルとは互いに異なる画像として認識される態様
であると共に、前記内面側本体セルと外面側本体セルとはそれぞれ固有の番地を有するよ
うに異なる態様である、
c:前記サイドテープは、被介護者への装着前及び装着後の両方において前記ロボット
のハンドで摘むことができる摘み片を有している」
という特徴を備えている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記サイドテープにおける前記摘み片の内面と外面とに、前記サイドテープのセルとし
てテープセルが配置されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は請求項1又は2の展開例であり、
「前記サイドテープは、テープ状の基材に粘着層と前記摘み片とを設けた構造であり、前
記摘み片は、前記基材の素材厚よりも厚く形成されている」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は2において、
「前記本体部のセルは、所定の密度で前記本体部の全体に亙ってドット状に多数整列配置
されている」
という構成になっている。
【0013】
請求項5の発明も請求項1又は2の展開例であり、
「前記内面側本体セルの群と前記外面側本体セルの群とは、内外に重なるように配置され
て対を成したものが多数存在している」
という構成になっている。
【0014】
請求項6の発明も請求項1又は2の展開例であり、
「前記腰側重合要素と股部重合要素と腹側重合要素との内面及び外面に、前記カメラで撮
像して画像処理することによって認識できるセンターラインがそれぞれ設けられている」
という構成になっている。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
請求項3では、厚肉部に加えて、エンボス加工したり係合穴を形成したりすることも可
能である。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
請求項7の発明は、請求項1~6に記載したおむつの交換作業を行うロボットを対象にしている。そして、このロボットは、
「前記カメラと作業用の左右ハンドと制御装置とを備えており、前記制御装置は、
被介護者の大きさと性別と姿勢とを認識する第1プログラムと、
被介護者から服を脱がして装着中の前記おむつを露出させる行為を実行するための第2プログラムと、
被介護者が装着中の前記おむつをカメラで撮像して前記装着中のおむつの立体的形状を認識する第3プログラムと、
交換用おむつを所定の姿勢に広げる行為を実行するための第4プログラムと、
前記所定の姿勢に広げられた交換用おむつを被介護者の下方に配置する行為を実行するための第5プログラムと、
前記装着中のおむつを前記被介護者から取り外しつつ前記被介護者の汚れた部位を浄化する行為を実行するための第6プログラムと、
前記被介護者が装着していたおむつを丸めて取り外すことを実行するための第7プログラムと、
前記交換用のおむつを被介護者に装着することを実行するための第8プログラムと、が含まれており、
前記第4プログラムは、端部セルの画像データに基づいて前記サイドテープの位置を認識してから、前記左右の摘み片を前記ハンドで摘んで前記左右のハンドを動かす行為を含んでおり、
前記第5プログラムは、前記左右の摘み片を摘んで前記おむつを広げた状態で前記左右のハンドを前記被介護者の下方に動かす行為を含んでおり、
前記第6プログラムは、前記外面側の端部セルを前記カメラによって認識してから前記左右の摘み片を前記ハンドで摘んで左右に広げることによって被介護者に対する固定を解除する行為と、前記腹側重合要素を手前に剥いて被介護者の股部を露出させる行為と、前記ハンドによって被介護者の股部を浄化する行為とを含んでおり、
前記第7プログラムは、前記カメラによって前記本体部のセルの群を読み取り続けることによって前記おむつの立体形状の変化を把握しつつ前記ハンドを動かすように設定されており、
前記第8プログラムは、前記交換用おむつの端部セルの画像を前記カメラで認識してから前記摘み片をハンドで摘む行為を含んでいる」
という構成になっている。
【0026】
請求項8の発明は請求項7の展開例であって、
「人と同様に胴体部と四肢部と頭部とを有して自立歩行可能であり、前記頭部に前記カメ
ラが配置されている」
という構成になっており、請求項9の発明も請求項7の展開例であって、
「キャスタ付きスタンドに、人の胴部と両手と頭部に相当する部分を設けている」
という構成になっている。
【0027】
請求項10の発明は介護設備を対象にしている。すなわち、この介護設備は、
「請求項7~9のうちの何れかに記載したロボットと、ベッドに寝た被介護者を撮影可能
な室内カメラとを有しており、
前記ロボットの制御装置に、前記室内カメラで撮影された前記被介護者及びおむつの画
像データが送信されるように設定されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0028】
本願発明によると、おむつに補助機能部として被検知用のセルを設けたことにより、ロ
ボットによる交換作業の実現に向けて大きく前進できる。従って、介護者及び被介護者の
双方にとって朗報である。
【0029】
ロボットによるおむつ交換作業では、ロボットが被介護者やおむつの形態(の変化)を
立体的に把握することが必要不可欠であり、本願発明のようにカメラで撮像されるセルを
設けることにより、おむつの形状変化などをロボットに容易に認識させて、ロボットによ
るおむつ交換の実現に大きく貢献できる。
【0030】
なお、おむつの交換作業では被介護者の姿勢などの形態も立体的に認識することが不可
欠であるが、被介護者の立体的認識は、ロボットに設けたカメラのみで撮像して行うこと
も可能であるし、室の天井などに設けた室内カメラで撮像したデータを併用することも可
能である。ベッドに圧力センサを設けて、被介護者の姿勢の認識に供することも可能であ
る。
【0031】
既述のように、寝たきりの被介護者のおむつとしては、交換の容易性の視点から一般に
開きタイプが使用されており、この点、本願発明でも開きタイプを採用している。そして
、請求項6のようにセンターラインを設けると、開きタイプの腰側重合要素及び腹側重合
要素を被介護者に正確に装着することができる。他方、ギャザー被検知部を設けると、股
部重合要素に配置された吸収体をロボットがギャザーで覆うことを正確に行える。従って
、吸収体がはみ出て排泄物がにじみ出ることを防止できる。センターラインとギャザー被
検知部との両方を設けると好適である。
【0032】
被検知部は様々な態様を採用できるが、請求項4のように被検知部をドット状に配置す
ると、立体形状をきめ細かく検知できる。従って、ロボットがおむつの取り外しや装着を
正確に行うことを助長して、被介護者の満足度を向上できる。
【0033】
被検知部はおむつの表面に一体に設けることも可能であるし、後付けによって設けるこ
とも可能である。後付け方式を採用すると、現状のおむつをそのまま使用できる利点があ
る。例えば、導電性インクや導電性塗料を塗布したり含浸させたりして磁気センサで読み
取ることも可能であり、光学的な検知と併用することにより、被介護者の体格の違いなど
に対応してきめ細かな交換作業を実現できる。
【0034】
開きタイプのおむつの装着に当たっては、展開した状態から、股部重合要素を被介護者
の股間に巻き込んで腹側重合要素を腹部に重ね、そして腹側重合要素と腰側重合要素とに
設けたフラップを被介護者の側に重ねてテープで止めており、従って、展開した状態と被
介護者に重ねた状態とでおむつの形態を認識できると、身体への装着を正確に行える。お
むつを取り外す場合も同様である。
【0035】
そして、本願発明のようにおむつの表面側と裏面側とに被検知部を設けると、展開した
状態から装着した状態への形態の変化やその逆の形態の変化を正確に把握できるため、お
むつの着脱を正確に行えて好適である。
【0036】
おむつの取り外しと装着とを一連に行う場合、ロボットが古いおむつと新しいおむつと
を区別できることが必要である。この点、光学的に撮像して画像処理によって古いおむつ
と新しいおむつとを認識することも可能である。
【0037】
被介護者が排泄してから時間を経過すると、被介護者にとって不快であるだけでなく、
交換に際しての処理にも手間が掛かる。この点、排泄があったことの検知を可能にすると
、おむつの迅速な交換を可能にできる。従って、被介護者の不快感を抑制できると共に、
おむつ交換の手間の権限にも貢献できる。ベッドに臭いセンサや水分センサを配置するこ
とによって排泄を検知できる構成でも、同じ効果を享受できる。
【0038】
ロボットによるおむつ交換においても、人手による場合と同様におむつをロボットの手で摘むことが必要であるが、ロボットの指先の摘み力を人の指先と同様に加減することは非常に難しい。この点、請求項3のように摘み片を厚くすると、ロボットの指先を微細に制御したり摘み力を過剰に大きくしたりすることなく、指先の滑りを防止した状態でおむつをしっかりと摘むことができる。従って、ロボットによるおむつ交換の実現に貢献できる。また、摘み容易化部として請求項3のように厚い摘み片を設けると、現状の形態を大きく変更することなく、ロボットの指先で的確に摘むことができる。従って、現実性が高い。
【0039】
現状の開きタイプのおむつでは、被介護者の腰に当たる部位に左右のフラップを設けて
、左右の腰側フラップを畳んでサイドテープで固定しており、サイドテープに摘み片を設
けているが、本願発明では、ロボットによる被介護者への装着のために、腰側重合要素や
股部重合要素、腹側重合要素などの適宜部位に摘み片を新設することが可能である。この
ようにロボットのための摘み片を設けることにより、既存の作業態様に囚われることなく
、ロボットによるおむつ交換の実現に向けて前進できる。
【0040】
現状のロボットに人と全く同じ動きを行わせることは難しいため、現状への適応性とし
て、ロボットのぎごちない手や指の動きであっても被介護者に違和感を与えることなく交
換をできるおむつの構造が想定される。この点、固定部材を引っ張るだけで被介護者に対
するおむつの固定を解除できる構造を採用すると、ロボットによるおむつの交換を大きく
促進できる。
【0041】
おむつの交換は、古いおむつを被介護者から脱がせることと、新しいおむつを装着する
ことがセットになっているが、おむつにベッドから滑りやすくなる処理を施していると、
古いおむつを速やかに脱がすことができる。従って、作業性を向上できると共に、被介護
者にとっても不快な状態からの早く脱することができて好適である。
【0042】
さて、冒頭において述べたように、現在の人手によるおむつ交換作業では、被介護者を
仰向けに寝た状態と横向きに寝た状態とのに姿勢変更してもらうようになっており、介護
者は被介護者の腰に手を当てて横向き姿勢や仰向け姿勢に変更しているが、被介護者の寝
た姿勢を変えることは力の掛け加減を微妙に調節しながら行うため、ロボットにとっては
非常に苦手である。従って、被介護者が仰向けに寝た姿勢のままでおむつの交換を行える
と、ロボットによる作業を大きく前進できて好適であるし、被介護者にとって肉体的・身
体的負担を軽減できて好適である。
【0043】
この点は、実施形態のようにベッドの一部を下降させて、被介護者の身体の一部の下方
に空間を形成することによって実現できるが、おむつを巻き取りできるように構成してお
くと、身体の下方にできる空間を利用しておむつを被介護者に装着したり脱がしたりする
において、おむつの取り扱いを容易化でき。従って、ロボットによるおむつの交換の実現
に貢献できる。
【0044】
請求項7~9の発明はロボットを対象にしているが、改良されたおむつを有効利用でき
るため、ロボットによるおむつの交換の実現に向けて大きく前進できる。
請求項10のように室内カメラを併用すると、おむつの形状や被介護者の姿勢の認識な
どの正確度を格段に向上できるため、おむつ交換のロボット化を更に前進させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】(A)は実施形態を適用できるベッドの平面図、(B)は第1実施形態のロボットを模式的に表示した介護現場の模式図である。
【
図2】(A)は第1実施形態のおむつを広げて内面を露出させた状態での平面図(外面図)、(B)は(A)のB-B視方向から見た断面図である。
【
図3】第1実施形態のおむつを広げて外面を露出させた状態での平面図(裏面図)である。
【
図4】第1実施形態のおむつの折り返しの第1段階を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態のおむつの折り返しの第2~4段階を示す平面図である。
【
図6】被介護者の骨格との関係を示すベッドの平面図である。
【
図7】(A)はベッドの側面図、(B)は昇降式支持体の駆動手段の一例を示す側面図、(C)は支持体の構造の一例を示す断面図、(D)は洗浄用トレーの斜視図である。
【
図8】(A)~(C)はおむつ交換の準備としてズボンを脱がす工程を示す側面図、(D)(E)はおむつの取り外しのためにおむつを広げる工程を示す平面図である。
【
図9】おむつの取り外し及び洗浄の第1~第3工程を示す側面図である。
【
図10】おむつの取り外しの第4~第5工程を示す側面図である。
【
図11】おむつを背部から巻き取っていく脱がし方を示す側面図である。
【
図12】おむつ装着の第1~第4工程を示す側面図である。
【
図13】おむつ装着の第5工程を示す側面図である。
【
図14】第2実施形態に係るロボットの模式図である。
【
図15】第2実施形態のロボットを使用した場合の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、本願発明の実施形態と周辺技術を説明する。以下では、被介護者とおむつに関し
て上下左右の文言を使用するが、この場合の上下方向は、被介護者の頭の側を上、足の側
を下として定義している。左右は被介護者を基準にした左右である。おむつに関して内面
・外面の文言を使用するが、内面は被介護者に重なる側の面、外面は被介護者の外側に露
出する面である。
【0047】
(1).現場の概要
図1において、介護現場の一例を模式的に示している。介護現場は病院や介護施設の部
屋、或いは一般家庭の居室である。被介護者1は寝たきりの人を想定しており、骨格のみ
を表示してベッド2に寝た状態を描いているが、被介護者1の骨格を表示しているのは、
ベッド2の構造との対比を意図している。
【0048】
図1に表示した介護用のロボット3は多関節自足歩行タイプの人型であり、人と同様の
骨格を有して人と同様の動きを実現できる。ロボット3の目はカメラ4(アイカメラ)に
なっており、口はスピーカ5になっており、耳はマイク6になっている。左右の手(ハン
ド)は)は5本の指を備えており、人の手と同様に物を掴んで持ち上げたり移動させたり
することができる。
図1ではロボット3は骨格しか表示していないが、被介護者1との親
近感を確保するために、肉付けして衣服を装着してアンドロイド形の外観に構成するのが
好ましい。ロボット3に名前を付けるのは好ましいことである。
【0049】
被介護者1が会話可能である場合は、制御装置に会話プログラムを挿入して被介護者1
と世間話を行うように設定すると好適である。当然ながら、会話には学習効果を持たせて
、日々アップデートさせるべきである。被介護者1が会話できない場合でも、作業に際し
ては適宜声をかけるように設定されている。
【0050】
ベッド2の側部に後付け式のスタンド7を立設して、これに室内カメラ8を設けている
。室内カメラ8は被介護者1の姿勢等を認識するものであるが、ロボット3に設けたアイ
カメラ4とは異なって固定式であるため、被介護者1の姿勢の認識などの機能に優れてい
る。室内カメラ8は部屋の天井や壁に固定式に設けることも可能であるが、被介護者1の
プライバシー尊重の点から、おむつの交換時のみ使用する後付け方式とするのが好ましい
。
【0051】
ベッド2の傍には、移動式の補助台9を配置している。補助台9には、交換用のおむつ
などの各種物品を載置できる。使用済みおむつや拭き取りシートなどの汚物を投入するゴ
ミ箱は補助台9の内部に設けている。洗浄液スプレーや拭き取りシート、トレーなどの補
助具類を補助台9に載置できる。洗浄部を温風で乾燥させるのは被介護者1にとって心地
よいと解され、その手段としてロボット3に温風噴出機能を持たせることも可能ではある
が、被介護者1の人としての尊厳を尊重する趣旨から、ロボット3の行為はできるだけ人
に似せて、補助台9においたドライヤーを使用して乾燥させるのが好ましいと云える。
【0052】
さて、被介護者1は、左右の腕10、左右の手(指)11、頭12、背部(肩甲骨や脊
椎、胴部)13、腰部(腰椎)14、骨盤15、大腿部(大腿骨)16、足間接17、脛
18、接地する足19を備えている。他方、ベッド2は、脚20で支持された基台21と
、その上に支持部材(図示せず)を介して配置されたベッドプレート22とを有しており
、ベッドプレート22は複数に分割されている。
【0053】
すなわち、ベッドプレート22は、被介護者1の頭12の側から順に、
◎被介護者1の頭12を支持する頭部支持体23、
◎被介護者1の背部13を支持する背部支持体24、
◎被介護者1の主として腰部14を支持する腰部支持体25、
◎被介護者1の骨盤15の上部を支持する骨盤アッパ支持体26、
◎ベッド2の左右中間部において被介護者1の骨盤15の上下中間部を支持する骨盤ミドル支持体27、
◎骨盤ミドル支持体27の左右両側に位置した一対の第1サイド支持体28、
◎ベッド2の左右中間部において被介護者1の骨盤15の下部を支持する骨盤ロア支持体29、
◎骨盤ロア支持体29の左右両側に位置した一対の第2サイド支持体30、
◎ベッド2の左右中間部において被介護者1の大腿部16の上部を支持する大腿部アッパ支持体31、
◎大腿部アッパ支持体31の左右両側に位置した一対の第3サイド支持体32、
◎概ね被介護者1の大腿部16の下部を支持する大腿部ロア支持体33、
◎被介護者1の足関節17及び脛18を支持する脛部支持体34、
◎被介護者1の足19を支持する足支持体35、
に分割されている。これらの各支持体23~35は、独立して又は複数個を一体として動かすことができる。動き(制御)の詳細は後述する。
【0054】
実施形態では、被介護者1の骨盤15及び大腿部16の箇所で支持体を左右に3分割ず
つしているが、左右に分割せずに全体として下降するように構成してもよい。すなわち、
骨盤ミドル支持体27と第1サイド支持体28とを一体化し、骨盤ロア支持体29と第2
サイド支持体30とを一体化し、大腿部アッパ支持体31と第3サイド支持体32とを一
体化してもよい。
【0055】
(2).おむつの構造・着脱方法
第1実施形態のおむつの形態・構造を、
図2,3で示している。このおむつ38は開き
タイプであり、被介護者の腰部14及び骨盤15の背面部に重なる腰側重合要素39と、
被介護者1の股部(骨盤15の下面部)に重なる股部重合要素40と、被介護者1の腹部
に重なる腹側重合要素41とを備えており、これらは一体に連続している。
【0056】
股部重合要素40の内面(被介護者1に向いた面)には、綿状の素材に吸水ポリマーを
含ませた吸収体42が離脱不能に保持されている(吸収体42は、
図2で実線の平行斜線
で示して、
図3では点線の平行斜線で示している。)。吸収体42は、股部重合要素40
の左右側縁よりも内側に位置しており、腰側重合要素39の上下中途部及び腹側重合要素
41の上下中途部まで延びていて、内面側のうち吸収体42の左右両側には、ゴムで伸縮
するインナーギャザー43が配置されている。股部重合要素40の左右側部には、アウタ
ーギャザー44が配置されている。
【0057】
腰側重合要素39の左右両側縁には角形の腰側フラップ45が一体に連接されて、腹側
重合要素41の左右両側縁は角形の腹側フラップ46が一体に連接されている。腰側フラ
ップ45の左右幅は腰側重合要素39の左右幅よりも少し小さい寸法であり、腹側フラッ
プ46の左右幅は、腹側重合要素41の左右幅よりも少し小さい寸法である。
【0058】
左右腰側フラップ45の両端には、上下2本のサイドテープ47が配置されている。図
2(B)に示すように、サイドテープ47は、腰側フラップ45に溶着等で固定された基
材47aと、基材47aに設けた粘着層47b(又は面ファスナー層)と、粘着層47b
の外側に露出した摘み片47cとを有しており、摘み片47cは二つ折りして厚肉化され
ている。
【0059】
腰側重合要素39と股部重合要素40と腹側重合要素41とは、一連にのびるベースシ
ートを共有しており、フラップ45,46は、ベースシートを延長した状態で形成されて
いる。すなわち、おむつ38は、フラップ45,46を有するベースシートが外観を形成
する本体になっており、この本体たるベースシートに吸収体42やギャザー43,44な
どの部材を固定した構造になっている。
【0060】
図4,5において、被介護者1におむつ38を装着する手順の一例を示している。すな
わち、
図4に示すように、まず、広げた状態で被介護者1(図示せず)の下方に配置して
から、腹側重合要素41の腹側フラップ46を折り畳み、次いで、
図5(B)に示すよう
に、腹側フラップ46が畳まれた腹側重合要素41を被介護者1の腹部に向けて折り返し
、次いで、
図5(B)に示すように、一方の腰側フラップ45を腹側重合要素41に折り
重ねてこれをサイドテープ47で固定し、最後に、他方の腰側フラップ45を一方の腰側
フラップ45に折り重ねてサイドテープ47で固定する。
【0061】
図5(B)(C)では、サイドテープ47は単純な横向きの姿勢で固定した状態に表示
しているが、被介護者1に対するフィット性を高くするためには、下方のサイドテープ4
7を斜め上向きに延ばして、上方のサイドテープ47は斜め下向きに延びる姿勢とするの
が好ましい。おむつ38を脱がす場合は基本的には装着と逆の手順になるが、汚物の処理
のために丸めたり畳んだりするため、広げた状態に戻ることはない。
【0062】
(3).被検知部
おむつ38には、複数種類の被検知部を設けている。まず、
図2に示すように、おむつ
38の内面に、腰側重合要素39と股部重合要素40と腹側重合要素41とを左右に分断
する中心線48に沿って延びる内面側センターライン49aが形成されており、
図3に示
すように、おむつ38の外面には、中心線48に沿って延びる外面側センターライン49
bが形成されている。
【0063】
内外のセンターライン49a,49bは、例えば、アイカメラ4及び室内カメラ8で撮
像できる光学式センター被検知部の一例であり、おむつ38(ベースシート)の地色とは
区別できる色として表示されている。センターライン49a,49bは、インクジェット
等の印刷手段による印刷や、帯状部材の溶着や接着などの手段で形成できるが、インクや
塗料を用いるのが好適と解される。特に、内面側センターライン49aは吸収体42にも
形成されることから、吸収体42の機能を損なったり被介護者1に違和感を与えたりする
ことがないように配慮する必要があるため、印刷による形成が好ましい。特に、インクジ
ェット方式が好適である。
【0064】
図ではセンターライン49a,49bを一連に表示しているが、断続的に延びている形
態も採用できる。また、おむつ38がロボット3によって交換される専用品として提供さ
れる場合は、赤外線カメラによって認識できるインクを使用して、肉眼では視認できない
状態に形成することも可能である。介護者が交換する場合も、中心線48が明示されてい
ると作業に便宜であるので、センターライン49a,49bは、人が視認できる色として
表示するのが好ましいともいえる。外面側センターライン49bは、帯状テープの後付け
(接着など)であっても差し支えない。
【0065】
図3に示すように、外面側センターライン49bには、ベッド2の基準線(例えば中心
線)との関係で外面側センターライン49bの位置と姿勢を特定するために、補助センタ
ーセンシングセル51を多数設けている。補助センターセンシングセル51は、例えば金
属部であり、アルミ箔等の微細な金属箔を貼着したり、金属含有塗料(導電性塗料)を塗
布したりして構成されている。これらの補助センターセンシングセル51は、ベッド2に
設けたセンター検知センサ(金属センサ、近接センサ)50で読み取られて、ベッド2の
基準線(例えば中心線)との比較から、ベッド2に対する外面側センターライン49bの
姿勢が認識される。
【0066】
他方、ベッド2の基準線と被介護者1の姿勢との関係は室内カメラ8で撮像した画像か
ら認識できるので、おむつ38のセンターライン49a,49bが被介護者1の体軸と重
なるように、おむつ38を配置可能になる。センターライン49a,49bを、被介護者
1が接触しても違和感がない程度の細い糸で構成して、この糸を人及びカメラ4,8が明
瞭に把握できる色に設定することも可能である(この場合は、少なくとも外部センターラ
イン49bを構成する糸に、補助センターセンシングセル51として金属線を縒り込むと
よい。)。
【0067】
図2に示すように、おむつ38の内面には、請求項に記載した被検知用セルの例として
、外周に沿って延びる内面側外周センシングセル52の群と、外周の内側に位置した内面
側内部センシングセル53の群とを設けている。同様に、
図3に示すように、おむつ38
の外面にも、請求項に記載した被検知用セルの例として、外周に沿って延びる外面側外周
センシングセル54の群と、外周の内側に位置した外面側内部センシングセル55の群と
を設けている。従って、おむつ38の内面と外面とに、多数のセンシングセル52~55
の群がドット状に配置されている。
【0068】
この場合、内面のセンシングセル52,53と外面のセンシングセル54,55との形
状を変えることにより、おむつ38の内面と外面とを認識できるように配慮している。更
に、おむつ38の内外において、外周センシングセル52,54と内部センシングセル5
3,55とを区別するのが好適であるが、この点は、例えば、外周センシングセル52,
54と内部センシングセル53,55との大きさを異ならせることで対応できる。
【0069】
更に、内面のセンシングセル52,53と外面のセンシングセル54,55とについて
、個々のセンシングセル52,53に番地を付けることが好適であるが、この点について
は、各セル52~55に形状や大きさ等が異なる図形を表示することで対応できる。色を
変えることによっても区別できる。
図2(A)のとおり、サイドテープ47における摘み
片47cの内面と外面とに、カメラ4,8で検知されるテープセル56,57を設けてい
る。内外のテープセル56,57は、例えば、摘み片47cの表裏の全体に異なる色を施
すことによって異なる態様に構成できる。
【0070】
図3に示すように、排泄状態を検知する被検知部の例として、吸収体42の内部に、左
右長手のセンシングコード58を多段に配置している。センシングコード58はある程度
の腰の強さを有する含水性樹脂糸であり、金属糸を縒り込んでいる。すなわち、導電性の
含水性糸からなっている。センシングコード58は金属を含んでいるため、加振すると磁
場又は電場が発生する。
【0071】
そして、センシングコード58が排泄物を吸収して重量が増大すると振動しにくくなっ
て磁場又は電場の強さも低下するため、ベッド2に設けた超音波加振装置によって特定の
センシングコード58に所定の強さで微細な振動を付与し、振動によって生じる磁場又は
電場の強さをベッド2に設けたセンサ(磁力計又は電流計)で計測することにより、個々
のセンシングコード58の汚れ具合を検知可能である。この場合、どの部位のセンシング
コード58が汚れているかによって排泄内容を把握できる。或いは、大便の場合と小便の
場合とで重量増大の程度が異なることからも、排泄内容を認識できる。計測は、例えば1
0分間隔のように断続的に行ったらよい。
【0072】
ギャザー被検知部の例として、インナーギャザー43には、その縁部に基材の色とは異
なる色彩を施したインナーギャザーセル43aを断続的に形成している。アウターギャザ
ー44にも、その縁部に基材の色とは異なる色彩を施したアウターギャザーセル44aを
断続的に形成しているが、インナーギャザー43におけるセル43aの色とアウターギャ
ザー44におけるセル44aの色とは異ならせている。従って、画像処理によってインナ
ーギャザー43とアウターギャザー44とを峻別できると共に、形状の変化も容易に把握
できる。
【0073】
図2に一点鎖線で示すように、補助機能部の例として、腹側フラップ46の側縁にサイ
ド補助摘み片38bを設けたり、腹側重合要素41の下端にロア補助摘み片38bを設け
たりすることが可能である。図示していないが、腰側重合要素39の上端に補助摘み片を
設けたり、股部重合要素40の左右側縁に補助摘み片を設けたりすることも可能である。
【0074】
(4).ベッドの構造
図6において、ベッド2と被介護者1の骨格との関係を明示している。
図6は、基本的
には
図1(A)と同じである。
【0075】
既述のとおり、ベッドプレート22は複数の支持体23~35に分割されているが、図
7(A)に示すように、頭部支持体23と背部支持体24と腰部支持体25と骨盤アッパ
支持体26と骨盤ミドル支持体27とは全体として連続した状態で上向きに起こし回動可
能であり、更に、頭部支持体23は背部支持体24に対して相対的に起こし回動可能であ
る。
【0076】
このため、頭部支持体23~骨盤ミドル支持体27の群を支えて起こし回動可能な第1
傾動体61が、基台21(又は図示しない機枠)に回動可能に連結されており、かつ、頭
部支持体23が取り付いた第2傾動体62が、第1傾動体61に回動可能に連結されてい
る。傾動体61,62は、モータで個別に駆動することも可能であるし、ワイヤーやリン
クなどの連動部材を介して図示しない共通のモータで駆動することも可能である。
【0077】
腰部支持体25~足支持体35の各支持体は、個別に下降させることができる。駆動機
構の一例を
図7(B)に示している。この例では、昇降式の支持体25~35をガイド軸
63及びガイド筒64によって基台21(又は図示しない機枠)で昇降自在に保持しつつ
、カム65の回転によって昇降させるように構成されている。カム65はピニオン66と
前後長手のラック67とによって回転するようになっており、各ラック67は1台の共通
モータ68で駆動される。従って、共通モータ68の回転を任意のラック67に伝達する
クラッチ機構が別途配置されている。
【0078】
頭部支持体23~骨盤ミドル支持体27の起こし回動と各昇降式支持体25~35の昇
降とは、1台の共通モータ68で行うことが可能である。また、昇降式の各支持体25~
35は、図示しないばねで上向きに付勢することが可能である。ラック67による駆動に
代えて、ワイヤーの引っ張りで下降させることも可能である。或いは、油圧シリンダで駆
動することも可能である。個別にモータで昇降させることも可能である。
【0079】
支持体23~35は、ベース板69にクッション材70を張ってこれを張地71で覆っ
た構造であるが、
図7(C)のように、クッション材70を下層70aと上層70bとの
2層構造に構成できる。例えば、下層70aとして、多数の樹脂繊維を絡ませて係合した
立体網状体を使用して、上層70bとして柔らかい不織布を使用できる。ベッド2にむれ
防止のための吸引機を設置可能であるが、クッション材70を立体網状体と不織布とで構
成すると、被介護者1の皮膚表面からの湿気の吸引を確実化できる。
【0080】
おむつ38の交換に際して、例えば
図12に示すように、被介護者1には一時的に膝を
立てた状態(曲げた状態)に保持していただく必要があるが、
図12に一点鎖線で示すよ
うに、膝を立てた状態に保持する支持具71を使用すると好適である。支持具71は軽量
な素材で作られており、ベッド2の上に安定して載置できる。
【0081】
(5).古いおむつの脱がし作業・洗浄手順
次に、おむつ38の交換の手順の例を説明する。寝たきりの被介護者1のおむつ38を
交換する手順として、古いおむつ38の脱がし作業と新しいおむつ38の装着と汚れ部洗
浄との作業を同時並行で行う方式(現状の手作業の方式)と、古いおむつ38を脱がすこ
とと洗浄とを先に行って、それから新しいおむつ38を装着する方式との2つの方式があ
り得るが、
図8~
図10では、後者の例として、古いおむつ38を脱がす手順の例を表示
している。
【0082】
この例では(他の例でも同様である)、被介護者1は上下のパジャマを装着しているこ
とを前提にしており、従って、前提として、パジャマのズボン72を脱がす必要である。
そこで、
図8(B)に一部だけを示すように、腰部支持体25~足部支持体35の各支持
体25~35を順番に下降させてその下降箇所に作業空間74を形成していきつつ、ズボ
ン72をずり下げていくことにより、ズボン72を被介護者1から脱がしている。
【0083】
ベッドプレート22が多数の支持体23~35で構成されていることにより、被介護者
1は仰向けに寝た状態のままでズボン72を脱がせることが可能である。換言すると、被
介護者1に肉体的な負担をかけることなく、ズボン72を脱がすことができる。この場合
、ズボン72の裾を外側に丸めていきながら、昇降式の各支持体25~35を順番に下降
させて尺取り虫方式でズボン72をずらしていくと、好適である。ズボン72を穿かせる
ことは、逆の手順で行う。
【0084】
さて、人が仰向けに寝た状態で骨盤15が宙に浮いた状態になると、人の腹筋に大きな
テンションが作用して、人に大きな肉体的負担がかかる。特に、寝たきりの人は腹筋が殆
ど存在しない状態になっているため、骨盤15の支持は必要不可欠である。従って、ズボ
ン72の脱着にしてもおむつ38の脱着にしても重要なことは、骨盤15の少なくとも一
部を下方から常に支持していることである。
【0085】
ズボン72を脱がしたら、
図8(C)に示すように、被介護者1に膝を立てた状態にし
てもらって、おむつ38の腰側フラップ45を広げ、次いで、腹側重合要素41と股部重
合要素40とを下方に広げる。腹側フラップ46は畳んだ状態のままでよい。次いで、図
9(F)に示すように、骨盤ミドル支持体27と骨盤ロア支持体29と大腿部アッパ支持
体31とを下降させ、おむつ38の腹側重合要素41と股部重合要素40とを上向きに畳
んで(或いは丸めて)、これを骨盤ミドル支持体27の下方に格納し、次いで、骨盤ロア
支持体29と大腿部アッパ支持体31との箇所にトレー73を配置して陰部の洗浄を行う
。トレー73の開口縁にはフランジ73aが形成されている。
【0086】
洗浄は、ウエットティッシュやドライティッシュによる拭き取りなど、状況に応じて行
われる。適宜、お湯のような洗浄液も使用できる。本実施形態ではベッド2に空所が形成
されてこれにトレー73を配置できるため、お湯の使用も容易である。寝たきりの被介護
者1の場合、皮膚が弱っていて強く擦ると皮膚が剥がれることも有り得るが、本実施形態
では、トレー73を配置してお湯や洗浄液を自由に使用できるため、排泄物がこびりつい
ている場合でも、皮膚にダメージを与えることなく排泄物を洗い流すことができる。従っ
て、被介護者1の満足度は高いと云える。
【0087】
ズボン72を脱がす作業などの一連の作業に際して、当初から又は途中から、
図9(F
)に一点鎖線で示すように、被介護者1の上半身を僅かの角度だけ起こすことも可能であ
るし、頭12だけを起こすことも可能である。陰部を露出させて排泄物を処理してもらう
ことには人として心理的な抵抗が大きいが、少なくとも頭12を起こして作業の様子を視
認できると、羞恥心や恐怖心は多少なりとも和らぐと解される。
【0088】
排泄物の処理を終了したら、ドライティッシュを押し当てたりドライヤーで温風をあて
たりして、陰部の表面から水分(湿気)を除去する。次いで、
図9(G)に示すように、
上半身の全体を傾斜状態に起こしつつ、骨盤ミドル支持体27は下降させたままで骨盤ロ
ア支持体29と大腿部アッパ支持体31とを上昇させ、次いで、骨盤アッパ支持体26と
腰部支持体25とを下降させる。
【0089】
従って、この状態では、腰部支持体25と骨盤アッパ支持体26と骨盤ミドル支持体2
7とが下降しているが、この状態で、被介護者1の腰部に排泄物が付着している場合にこ
れの拭き取りを行う。この場合、専用のトレーを使用することも可能である。
【0090】
骨盤ロア支持体29と被介護者1との間には畳まれた股部重合要素40と腹側重合要素
41とが介在しているので、骨盤ロア支持体29を原位置まで上昇させると、被介護者1
を却って突き上げてしまう可能性がある。従って、骨盤ロア支持体29の上昇量は股部重
合要素40と腹側重合要素41との厚さを差し引いた寸法に設定しておくのが好ましい。
骨盤ロア支持体29などに圧力センサを設けておいて、圧力センサの数値が過剰にならよ
うに上昇量を制御することも可能である。
【0091】
また、腰部支持体25と骨盤アッパ支持体26と骨盤ミドル支持体27とを下降させることによって人の腰の下方に作業空間74を形成しているが、この作業空間74は人の陰になって上から視認しにくいため、基台21のうち被介護者1の下方に位置した部位にミラーを配置して、被介護者1の身体の状態を視認できるようにしてもよい。ミラーは固定しておいてもよいし、作業時のみ載置してもよい。
【0092】
被介護者1の腰部の浄化が終了したら、
図9(H)に示すように、おむつ38の腰側重
合要素39を上向きに畳んだ状態で、腰部支持体25と骨盤アッパ支持体26とを上昇さ
せ、次いで、
図10(I)に示すように、骨盤ミドル支持体27は下降させたままで骨盤
ロア支持体29を下降させて、おむつ38の腰側重合要素39を股部重合要素40及び腹
側重合要素41に上から重ね、次いで、
図10(J)に示すように、骨盤ロア支持体29
を下降させたままで、骨盤ミドル支持体27は上昇させて大腿部アッパ支持体31を下降
させ、その状態で古いおむつ38を取り除く。
【0093】
このようにして、古いおむつ38を脱がすと共に被介護者1の汚れを清浄化できる。以
上の説明では、最初に股部重合要素40と腹側重合要素41とを巻き込んで陰部の洗浄を
行い、それから腰部の清浄化を行ったが、
図11に示すように、最初に腰部支持体25と
骨盤アッパ支持体26とを下降させて被介護者1の腰部の清浄化を行い、それから股部の
洗浄に移行することも可能である。
【0094】
(6).新しいおむつの装着手順・他の交換手順
古いおむつ38を脱がしてから新しいおむつ38を装着する手順は、
図12に表示して
いる。すなわち、まず、骨盤ロア支持体29と大腿部アッパ支持体31を下降させ、その
空間に畳んだおむつ38を配置する。この場合、第2サイド支持体30及び第3サイド支
持体32も下降させておいてもよい。
【0095】
次いで、大腿部アッパ支持体31を上昇させて腹側重合要素41を下方に伸ばしつつ、
骨盤ミドル支持体27を下降させ、腰側重合要素39を上方に送り込み、次いで、
図12
(C)に示すように、骨盤ロア支持体29は上昇させて骨盤アッパ支持体26と腰部支持
体25を下降させることにより、腰側重合要素39の上方に広げ、それから、腰部支持体
25と骨盤アッパ支持体26を下降させ、次いで、腹側重合要素41の巻き上げと腰側フ
ラップ46,45の折り畳みと固定とを行う。
【0096】
以上の説明は、いったん古いおむつ38を脱がしてから新しいおむつ38を装着する手
順であったが、
図13に示すように、古いおむつ38を装着した状態のままで新しいおむ
つ38を広げた状態で被介護者1の下方に配置し、それから、古いおむつ38の取り外し
と洗浄とを行うことも可能である。すなわち、現状の人手による交換作業と同様の手順も
採用できる。
【0097】
この場合、古いおむつ38を脱がすことと陰部を洗浄することとは、
図8(A)~
図1
0のように、最初に陰部を洗浄してから洗浄を上方に移行させていってもよいし、
図11
のように、最初に腰部を洗浄してから洗浄を下方に移行させていってもよい。
【0098】
(7).ロボットの別例・制御機構
図1では歩行可能な人形ロボット3を表示したが、
図14では、上半身を多関節とした
スタンド式のロボット75を表示している。両者とも、人と同様に、頭76と背部(脊椎
及び腰椎)77と左右の腕78(ハンド)と骨盤79とを備えており、両腕78は5本の
指80を備えている。
【0099】
図1のロボット3は、骨盤79が左右の歩行用脚81で支持されているが、
図14のロ
ボット75は、骨盤79はスタンド82に設けた支柱83に固定されており、支柱83は
、スタンド82に昇降自在で左右動自在に装着されている。
図14において、スタンド8
2は4本足方式であり、各足84の下端にはキャスタ85を設けている。キャスタ85は
ロック機構を備えている。従って、
図14のロボット75は自足・自走はできないが移動
可能な定置式である。
【0100】
図14において、ロボット75の背部77は、骨盤79に対して前後傾動可能であると
共に水平旋回可能である。従って、
図1の人型ロボット3と同じ動きを行える。
図14の
固定式ロボット75は、
図1の人型ロボット3に比べて安定性が高いと云える。また、昇
降自在であるため、被介護者1の腰部の洗浄も無理なく行えると云える。歩行の制御は不
要であるため、構造は簡単になってコスト面でも有利である。
【0101】
図15では、ロボット3とベッド2との制御ブロック図を表示している。この図は、図
14のロボット75を対象にしている。図のとおり、制御装置は、制御の中枢になるCP
U(中央演算装置)と、入力系としてのロボット系センサ群及びベッド系センサ群と、出
力系(駆動系)としてのロボット駆動系及びベッド駆動系とを備えている。すなわち、セ
ンサからの信号をインプット変数として、プログラムに基づいてアウトプットを演算する
ことにより、駆動系の部材が予め設定された手順で駆動される。
【0102】
ロボット系センサ群は、既述のアイカメラ4、支柱83の高さを検知するセンサ、ロボ
ット75の右手の屈伸状態を検知する右手屈伸センサ、ロボット75の右指の動きを検知
する右指センサ群、ロボット75の左手の屈伸状態を検知する左手屈伸センサ、ロボット
75の右指の動きを検知する左指センサ群備えている。図で表示したセンサは一部であり
、この他にもロボット系センサ群は、支柱の左右位置を検出するセンサ、背部の傾動や水
平姿勢を検知するセンサなど、既述のマイク6など、大量のセンサを備えている。
【0103】
ベッド系センサとしては、既述の室内カメラ8、臭いセンサ59(
図7(A)参照)、
センター検知センサ50、各支持体23~35の高さを検知する昇降センサの群、各支持
体23~35に作用している圧力を検知する圧力センサの群、傾動体61,62の角度を
検知する角度センサの群を例示しているが、他にもトレー検知センサなどの多数のセンサ
を使用できる。
【0104】
ロボット駆動系は、ロボット75を左右動する駆動装置、支柱83を昇降駆動する装置
、支柱83を前後に傾動させる駆動装置、スピーカ5、右腕の屈伸駆動装置、右手(右指
)の屈伸駆動装置群、左腕の屈伸駆動装置、左指の屈伸駆動装置群などを備えている。
【0105】
ベッド駆動系は、第1傾動体61の駆動装置、第2傾動体62の駆動装置、頭部支持体
昇降装置、腰部支持体昇降装置・・・・脛部支持体昇降装置、足部支持体昇降装置などを
備えている。既述のように、1台の共通モータ68で各部位の駆動を行う場合は、動力伝
達を継断する動力伝達装置が必要になる。この場合、複数の支持体を下降させた状態に保
持しておく必要があるため、動力伝達装置は複数必要になる。
【0106】
(8).まとめ
本実施形態は以上の構成であり、ロボット3,75とベッド2とを、制御装置に組み込
まれたプログラムを基準にしつつ、センサ類で検知した入力信号を変数として演算して出
力信号を生成することにより、駆動部を駆動していく。多数の動きの連続により、おむつ
38の交換を実行できる。
【0107】
そして、本実施形態のおむつ38には、センターライン49a,49bなどの被検知部
を設けているため、ロボット3,75によっておむつ38の交換を行うに際して、おむつ
38の形状や姿勢、その変化をカメラ4,8などのセンサ手段で正確に認識して、古いお
むつ38の脱がし作業や被介護者1の洗浄作業、新しいおむつ38の装着作業を正確に行
える。本実施形態のおむつ38は人手による交換にも使用できるが、センターライン49
a,49bがあると姿勢合わせを正確に行えて好適である。
【0108】
このように、本実施形態では、おむつ38に検知手段を設けたことにより、ロボット3
,75に人と同様の動きをとらせることができて、体格や姿勢が相違する被介護者1に違
和感のないおむつ交換作業を提供できる。従って、おむつ交換を人手で行うことによる被
介護者及び介護者の心理的な負担を軽減できる。
【0109】
本実施形態では、インナーギャザー43にこれを光学的に検知できる検知用セル43a
を設けているため、吸収体42がインナーギャザー43の外側に露出しないように、ロボ
ット3,75の指先をインナーギャザー43の内周面をなぞることにより、インナーギャ
ザー43で吸収体42を覆った状態に設定できる。従って、排泄物が漏れ出ることを防止
できる。
【0110】
実施形態のように、可動式の多数の支持体23~35で構成されたベッド2とおむつ3
8を併用すると、被介護者1が横向き姿勢になることなく仰向けに寝た姿勢のままでおむ
つ交換を行えるため、被介護者1の肉体的・心理的負担の軽減に一層貢献できる。おむつ
交換を人手によって行う場合も同様である。
【0111】
また、実施形態のようにベッド2に臭いセンサ86を設けたり、おむつ38にセンシン
グコード58などの排泄物検知手段を設けると、排泄があったら速やかにおむつ38を交
換できるため、被介護者1の快適性の向上に貢献できるのみならず、処理作業の手間軽減
にも貢献できる。
【0112】
また、おむつ38に設けたセル等の被検知部の検知を室内カメラ8やベッド2のセンサ
類で行うと、ロボット3,75のみでセンシングする場合に比べて、おむつ38の形状や
被介護者1の姿勢などの認識の正確度を格段に向上できる。従って、おむつ交換のロボッ
ト化を更に前進させることができる。
【0113】
上記の実施形態では、ベッド2に寝た被介護者1のおむつ38を交換する作業として説
明したが、被介護者1に座付き洗浄装置に移動してもらって、ここでおむつ38の交換と
洗浄とを行うことも可能である。例えば、被介護者1は、基本的には立ったような姿勢で
洗浄を受けてもらい、次いで、温風など乾燥してからおむつの装着を行うが、おむつの装
着は、背板に持たれた状態で行える。この場合は、大まかには、広げた状態のおむつをま
ず被介護者1の腰部に後ろから当てて、次いで、腹側重合要素を上に起こしてからテープ
で固定する、といった手順を採用できるが、この場合は、
図2に表示した補助摘み片38
a,38bをロボットの指で摘むことにより、おむつ38を無理なく被介護者1に当てる
ことができる。
【0114】
つまり、人手によっておむつ38を装着する場合、人は指先を微妙に動かせるため、お
むつ38の縁を指で摘みつつ、指先を被介護者1に当てることなくおむつ38を被介護者
1の身体に重ねることが可能であるのに対して、ロボットの場合は、指先の制御が不完全
であると、指先が被介護者の身体に触れて被介護者に不快な思いをさせるおそれがあるが
、おむつ38にその縁からはみ出た補助摘み片38a,38bを設けておくと、ロボット
の指先を被介護者の身体に当てることなく、おむつ38を被介護者1の身体に重ねること
ができる。従って、被介護者の満足度を向上できると云える。
【0115】
ロボット3,75の指先はウレタン樹脂で構成するなどして人の指に近い柔らかさにし
ているが、摘み力の加減が難しいことにより、おむつ38を摘んでも滑りが発生するおそ
れがある。さりとて、強く摘むように設定すると、おむつ38の破れなどの問題が発生す
る可能性があるし、そもそも、強く摘むように設定しにくいという側面もある。
【0116】
この点については、実施形態において摘み片47cを厚肉化したように、被摘み部を厚
肉化すると、指先の摘み力が弱くてもしっかりと持つことができて好適である。摘み易く
するための手段としては、厚肉化することに加えて又はこれに代えて、エンボス加工を施
したり、多数の突起又は凹所若しくは両方を設けたり、多数の抜き穴を形成したり、
図4
に一点鎖線で示すように係合穴38cを形成したり、同じく
図4に一点鎖線で示すように
、摘み片47等の縁部のみを厚くして指先の引っ掛かりを良くするなどの、各種の構造を
採用できる。
【0117】
被摘み部をウレタン樹脂のような摩擦係数が大きい素材で構成することも好適である。
或いは、ロボット3,75の指先を鉤状に形成して、被摘み部に空けた係合穴に係合させ
ることも可能である。
【0118】
図16では、パンツ型のおむつ86に適用した参考例を表示している。この例のおむつ
86は、外観は通常のパンツ型であるが、左右の側部に、固定部材として連結糸87を配
置している。連結糸87は、腰側重合要素88(後ろ見頃)と腹側重合要素89(前身頃
)とを縫い止めて連結している糸であり、所定の力で上下いずれかに引っ張ると、腰側重
合要素88(後ろ見頃)と腹側重合要素89(前身頃)との連結が解除されて開き型と同
様の形態になる。当然なから、腰側重合要素88と腹側重合要素89とは股部重合要素9
0を介して繋がっている。
【0119】
そして、このパンツ型のおむつ86は、装着に際しては、開口縁を外側に丸めた状態に
しておいて、ベッド2を構成する支持体を順次下降していきつつ、丸めを戻していくこと
によって被介護者1に装着できる。
【0120】
他方、脱がす場合は、排泄物で内面が汚れていることと被介護者1の洗浄の必要がある
こととを考慮して、装着した状態で連結糸87を引っ張っておむつ86を開き型と同様の
状態に広げ、そして、例えば
図8(C)~
図10(J)と同様の手順で、丸めながら後退
させつつ洗浄を行って取り外す。従って、パンツ型の特徴としての装着の容易性や漏れ防
止の確実性といった利点を損なうことなく、寝たきりの人への使用も可能にして、古いお
むつ86の取り外しと洗浄とを行える。
【0121】
図示していないが、この参考例でも、少なくともおむつ86の外面にセル状等の被検知
部を設けている。広げてから取り外すに際しての認識容易性のために、内面にも被検知部
を設けておくことは好ましい。連結糸87の端部(係止部、摘み部)は、ロボット3の指
でしっかりホールドできるように、厚手で柔らかいテープ状に形成することも可能である
。
【0122】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例え
ば、おむつに便を固める凝固剤を含ませることも可能である。また、おむつに脱臭剤を含
ませることも可能である。脱臭剤としては市販されている活性炭も使用できるが、コーヒ
ーの抽出滓を乾燥させたものを使用すると、廃品を使用して高い脱臭効果を享受できて好
適である。インスタントコーヒーの製造に際して発生するコーヒー滓も検討に値する。
【0123】
おむつの引っ張りによって肌の汚れを拭き取りできるように構成することも可能である
。古いおむつは丸めたり折り畳んだりして取り外されているが、折り畳みや丸めを補助す
るテープ状等の部材をおむつに内蔵したり、別体として設けたりすることも可能である。
【0124】
おむつを丸めるに際して、おむつの端部をクランプする細長い治具を使用して、これを
回転させながら使用済みのおむつを巻き取ったり、新しいおむつを巻き戻したりすること
ができる。この治具をロボットの手に装着して、治具の回転とベッドの支持体の昇降とを
制御することにより、使用済みのおむつの巻き取りや新しいおむつの装着を行うことも可
能である。
【0125】
また、被介護者の排泄では大便よりも小便の回数が多いことから、尿取りパッドが使用
されているが、本願発明は、尿取りパッドを装着できるおむつにも適用できる。ロボット
による尿取りパッドの交換を容易化するため、おむつの腹側重合要素及び股部重合要素に
、尿取りパッドの位置を明示する目印を設けておくことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本願発明は、おむつ及びおむつ交換用ロボットに具体化できる。従って、産業上利用で
きる。
【符号の説明】
【0127】
1 被介護者
2 ベッド
3,75 ロボット
4 アイカメラ(目)
5 スピーカ(口)
6 マイク(耳)
8 室内カメラ
12 被介護者の頭
13 被介護者の背部
14 被介護者の腰部
15 被介護者の骨盤
16 被介護者の大腿部
17 被介護者の足間接
18 被介護者の脛
19 被介護者の足
21 ベッドの基台
22 ベッドプレート
23~35 ベッドプレートを構成する支持体
38 開き型おむつ
39 腰側重合要素
40 股部重合要素
41 腹側重合要素
42 吸収体
43 インナーギャザー
43a 被検知部となるインナーギャザーセル
44 アウターギャザー
44a アウターギャザーセル
45 腰側フラップ
46 腹側フラップ
47 サイドテープ
47c 厚肉化した摘み片
48 中心線
49a,49b センター被検知部の一例としてセンターライン
51~55 本体部のセル
56,57 テープセル
61,62 ベッド傾動体
68 ベッドの駆動用のモータ
74 作業空間
78 ハンドを構成する腕
80 ハンドを構成する腕
86 第2実施形態に係るパンツ型おむつ
89 固定部材の一例としての連結糸
【要約】
【課題】ロボットによる交換が可能な介護用おむつを提供する。
【解決手段】おむつ38は、例えば、腰側重合要素39と股部重合要素40と腹側重合要素41とが一体に連続した開きタイプであり、その内面や外面などに、ロボットによる交換を容易化する補助手段を設ける。補助機能部は、例えば、光学式等のセンサで検知可能な被検知部である。被検知部は、中心線48に沿ってセンターライン49a,49bや、おむつ38の内面又は外面に多数配置したセンシングセル51~54,56,57である。サイドテープ47の摘み片47cを厚肉化することも、ロボット3,75の指での摘みを容易化する補助機能部たり得る。おむつ38の形状や姿勢の変化を正確に把握できるため、交換を的確に行える。
【選択図】
図2