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特許7671359対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20250423BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20250423BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20250423BHJP
   H04N 23/40 20230101ALI20250423BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B23/26 C
H04N23/55
H04N23/40 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023549192
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034548
(87)【国際公開番号】W WO2023047458
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】井口 善仁
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203897(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186123(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/190785(WO,A1)
【文献】特開2008-293029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G02B 23/24 - 23/26
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体像を形成するレンズ群と、
前記レンズ群の光軸と交差する第1光路と、前記光軸の延長線上に存在する第2光路とに分割する光路分割面を有する偏光ビームスプリッターと、
前記第1光路上に設けられている第1反射面と、
前記第2光路上に設けられている第2反射面と、
前記偏光ビームスプリッターと前記第1反射面との間に配置された1/4波長板と、を有し、
以下の条件式(1)を満たす対物光学系。
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧1.25 (1)
ここで、
Tp(単位%)は、前記光路分割面のP偏光の透過率、
Ts(単位%)は、前記光路分割面のS偏光の透過率、
である。
【請求項2】
以下の条件式(2)を満たす請求項1に記載の対物光学系。
80≦Tp (2)
【請求項3】
前記第1光路上における前記物体像と、前記第2光路上における前記物体像と、が同一の平面上に形成される請求項1または2に記載の対物光学系。
【請求項4】
前記光路分割面から前記平面までの前記第1光路の光路長と、前記光路分割面から前記平面までの前記第2光路の光路長は異なる請求項3に記載の対物光学系。
【請求項5】
請求項3または4に記載の前記対物光学系と、
形成された前記物体像の位置に撮像面を有し、前記第1光路上における前記物体像と前記第2光路上における前記物体像との2つの前記物体像を撮像する単一の撮像素子と、を有する撮像ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像ユニットを有する内視鏡。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡と、
2つの前記物体像を合成する画像処理部と、を有する内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像ユニットでは、輝度の明暗差が大きい被写体を撮影するために、ハイダイナミックレンジと呼ばれる技術が開発されている。ハイダイナミックレンジは、露光量、即ち明るさが異なる複数の画像を合成してダイナミックレンジが拡大された画像を作る技術である。これにより、ハイダイナミックレンジの画像を得ることができる。
【0003】
以下の特許文献1に開示された内視鏡撮像システムは、第1のフレームデータで得られる明るさの異なる2つの画像と、第2のフレームデータで得られる明るさの異なる2つの画像と、によりハイダイナミックレンジの画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6463573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定したハイダイナミックレンジを得るためには3枚以上の複数画像を合成させることが好ましいことが一般に知られている。特許文献1の構成は、2つの画像の明るさを変えるために、一方の画像に関してNDフィルターのような吸収フィルターを使用する。このため特許文献1の構成では、光量を損失してしまうという課題を有する。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジの広い画像を取得できる対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る対物光学系は、物体像を形成するレンズ群と、レンズ群の光軸と交差する第1光路と、光軸の延長線上に存在する第2光路に分割する光路分割面を有する偏光ビームスプリッターと、第1光路上に設けられている第1反射面と、第2光路上に設けられている第2反射面と、偏光ビームスプリッターと第1反射面との間に配置された1/4波長板と、を有し、以下の条件式(1)を満たす。
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧1.25 (1)
ここで、
Tp(単位%)は、光路分割面のP偏光の透過率、
Ts(単位%)は、光路分割面のS偏光の透過率、
である。
【0008】
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る別の撮像ユニットは、上述の対物光学系と、形成された物体像の位置に撮像面を有し、第1光路上における物体像と前記第2光路上における物体像との2つの物体像を撮像する単一の撮像素子と、を有する。
【0009】
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る内視鏡は、上述の撮像ユニットを有する。
【0010】
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る内視鏡装置は、上述の内視鏡と、2つの物体像を合成する画像処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジの広い画像を取得できる対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る対物光学系と、撮像ユニット及びプロセッサを示す図である。
図2】第1実施形態における偏光ビームスプリッターと撮像素子の構成を示す図である。
図3】第1実施形態における撮像素子の撮像領域を示す図である。
図4】(a)、(b)、(c)は、それぞれ光路分割面の透過率特性を示す。
図5】(a)、(b)は、それぞれ光路分割面の他の透過率特性を示す。
図6】第2実施形態における偏光ビームスプリッターの構成を示す図である。
図7】第2実施形態における撮像素子の撮像領域を示す図である。
図8】第2実施形態における2つの物体像を合成する場合の流れを示すフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る内視鏡及び内視鏡装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例の説明に先立ち、本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、後述する実施例の場合と同様に、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る対物光学系10と、撮像ユニット60及びプロセッサ3の概略構成を示す図である。
【0015】
対物光学系10は、物体像を形成するレンズ群1と、レンズ群1の光軸AXと交差する第1光路A(図2)と光軸AXの延長線上に存在する第2光路Bとに分割する光路分割面21d(図2)を有する偏光ビームスプリッター20と、第1光路A上に設けられている第1反射面REF1(図2)と、第2光路B上に設けられている第2反射面REF2(図2)と、偏光ビームスプリッター20と第1反射面REF1との間に配置された1/4波長板21eと、を有する。
【0016】
偏光ビームスプリッター20は、以下の条件式(1)を満たす。
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧1.25 (1)
ここで、
Tp(単位%)は、光路分割面21dのP偏光の透過率、
Ts(単位%)は、光路分割面21dのS偏光の透過率、
である。
【0017】
なお、透過率は、光軸AXが光路分割面21dへ45度で入射した時の、可視域の平均波長の値である。
【0018】
撮像ユニット60は、対物光学系10と、形成された物体像の位置に撮像面Iを有し、2つの物体像を撮像する撮像素子22と、を有する。
【0019】
図2は、偏光ビームスプリッター20と撮像素子22との概略構成図である。本実施形態の好ましい態様によれば、対物光学系10は、物体からの光束を結像させるためのレンズ群1と、レンズ群1の結像位置近傍に配置された1つの撮像素子22と、レンズ群1と撮像素子22との間に配置され、レンズ群1からの光束を反射光束と透過光束の2つの光束に分割するための光路分割面21dを有する偏光ビームスプリッター20と、を有する。
【0020】
偏光ビームスプリッター20は、光路分割面21dで反射した光束を折り返して反射させるための第1反射面REF1と、光路分割面21dを透過した光を反射させるための第2反射面REF2と、を有する。
【0021】
第1の物体像(A画像)は、光路分割面21dを介して第1反射面REF1で反射した光束を撮像素子22における第1受光領域22a(図3)に結像される。第2の物体像(B画像)は、第2反射面REF2で反射した光束を撮像素子22における第1受光領域22a(図3)とは異なる第2受光領域22b(図3)に結像される。
【0022】
図1に示すプロセッサ3が有する前処理部33は、第1の物体像と第2の物体像とを光電変換し、それぞれ第1の撮像信号と第2の撮像信号として出力する。プロセッサ3に関しては、後述する。
【0023】
図2を参照して、偏光ビームスプリッター20の構成を説明する。本実施形態の偏光ビームスプリッター20は、偏光を利用して光束を分割する構成である。
【0024】
レンズ群1を射出した光は、偏光ビームスプリッター20に入射する。偏光ビームスプリッター20は、光路分割面21dにより被写体像を2つの物体像に分割する。偏光ビームスプリッター20の射出側(像面側)には、形成された2つの物体像を撮像して2つの画像を取得する撮像素子22が配置されている。
【0025】
偏光ビームスプリッター20は、図2に示すように、物体側のプリズム21a、像側のプリズム21c、ミラー21b、及び1/4波長板21eを有している。物体側のプリズム21a(物体側のプリズム)及び像側のプリズム21c(像側のプリズム)は共に光軸AXに対して45度の斜度である光路分割面21dを有している。
【0026】
物体側のプリズム21aの光路分割面21dは、偏光分離膜で形成されている。そして、物体側のプリズム21a及び像側のプリズム21cは、互いの光路分割面21dである偏光分離膜を介して当接させて偏光ビームスプリッター20を構成している。
【0027】
また、ミラー21bは、物体側のプリズム21aの端面近傍に1/4波長板21eを介して設けられている。像側のプリズム21cの端面には、カバーガラスCGを介して撮像素子22が取り付けられている。Iは、結像面(撮像面)である。
【0028】
レンズ群1からの被写体像は、物体側のプリズム21aにおいて光路分割面21dによりP偏光の透過光とS偏光の反射光とに分離され、反射光側の物体像と透過光側の物体像との2つの物体像に分離される。
【0029】
光路分割面21dの透過率特性に関しては、後述する。
【0030】
S偏光の物体像は、光路分割面21dで撮像素子22に対して対面側に反射されA光路を通り、1/4波長板21eを透過後、ミラー21bの第1反射面REF1で反射され、撮像素子22側に折り返される。折り返された物体像は、1/4波長板21eを再び透過する事で偏光方向が90°回転し、光路分割面21dを透過して撮像素子22に低露光量のA画像(図3)として結像される。
【0031】
P偏光の物体像は、光路分割面21dを透過するB光路を通り、撮像素子22に向かって垂直に折り返す像側のプリズム21cの光路分割面21dの透過側に設けられた第2反射面REF2によって反射され、撮像素子22に高露光量のB画像(図3)として結像される。
【0032】
第1反射面REF1の反射率と第2反射面REF2の反射率は、それぞれ基本的に高反射率であることが望ましい。さらに、異露光量画像の光量を微調整するために、反射率を微調整しても良い。
【0033】
このように、物体側のプリズム21aと像側のプリズム21cは、被写体像を異露光量の明るさが異なる2つの物体像に分離する。
【0034】
図3は、撮像素子22の第1受光領域(有効画素領域)22a、第2受光領域(有効画素領域)22bを示す図である。
【0035】
撮像素子22は、図3に示すように、明るさが異なる2つの物体像を各々個別に受光して撮像するために、撮像素子22の全画素領域の中に、2つの第1受光領域(有効画素領域)22a、第2受光領域(有効画素領域)22bが設けられている。
【0036】
第1受光領域22aと第2受光領域22bは、形成された2つの物体像を撮像するために、これらの物体像の結像面と各々一致するように配置されている。
【0037】
また、第1受光領域22aと第2受光領域22bの周囲には、形成された2つに分割された物体像の幾何的なズレを補正するための補正画素領域22cが設けられている。補正画素領域22c内において製造上の誤差を抑え、後述する画像補正処理部32a(図1)にて画像処理による補正を行なうことで、上記した物体像の幾何学的なズレを解消するようになっている。
【0038】
上述のように、本実施形態では、物体側のプリズム21aと第1反射面REF1との間に、光路分割面21dで反射した光束の位相を変更するための1/4波長板21eを有し、第1反射面REF1で反射した光束が1/4波長板21eを透過し、偏光ビームスプリッター20を介して撮像素子22における第1受光領域22aに結像される。これにより、より有効な光量を用いながら、光束を分割し、第1の物体像を取得できる。
【0039】
また、本実施形態では、光路分割面21dを透過した光束は、撮像素子22に向かって垂直に折り返す像側のプリズム21cの光路分割面21dの透過側に設けられた第2反射面REF2によって反射され、撮像素子22における第2受光領域22bに結像される。これにより、より有効な光量を用いながら、光束を分割し、第2の物体像を取得できる。
【0040】
図1に示す、IDメモリ40は、撮像素子22における第1の物体像と第2の物体像との異露光量情報を格納する。
【0041】
次に、プロセッサ3(図1)について説明する。プロセッサ3は、制御部31と、画像処理部32と、前処理部33と、CCD駆動部34と、を有する。
【0042】
制御部31は、前処理部33、電源回路、信号処理回路及びCCD駆動部34を含む各種回路を制御する。
【0043】
前処理部33は、撮像素子22からの撮像信号(2つの異露光量の物体像に係る撮像信号)を入力して所定の前信号処理を施す。前処理部33は、公知の信号増幅部、プロセス回路、A/Dコンバータ、ホワイトバランス回路等により構成される。
【0044】
画像処理部32は、画像補正を行う画像補正処理部32aと、補正された2つの画像を合成する画像合成処理を行う画像合成処理部32bと、表示装置5に合成した画像を出力する画像出力部32cと、を有する。
【0045】
画像補正処理部32aは、撮像素子22の第1受光領域22aと第2受光領域22bにそれぞれ結像される2つの物体像に係る画像に対し、相対的な位置、角度及び倍率が略同一となるように補正を行う。
【0046】
CCD駆動部34は、内視鏡2(図9)における撮像素子22を駆動する。
【0047】
被写体像を2つに分離して撮像素子22に各々結像させる場合、幾何的な差異が生じる場合がある。すなわち、撮像素子22の第1受光領域22aと第2受光領域22b(図3)にそれぞれ結像される各々の物体像は、相対的に倍率ズレ、位置ズレ、角度すなわち回転方向のズレ等が発生する場合がある。
【0048】
これらの差異を製造時などにおいて、完全に解消することは困難である。それらのズレ量が大きくなると、合成画像が2重画像となったり、不自然な明るさムラ等を生じたりする。このため、画像補正処理部32aにて上述した幾何的な差異、明るさ差異を補正する。
【0049】
また、画像合成処理部32bは、2つの画像を1つの画像に合成する処理、色マトリクス処理、輪郭強調、ガンマ補正等の後段画像処理を行う。画像出力部32cは、後段画像処理された画像を出力する。画像出力部32cから出力される画像は画像表示部5に出力される。
【0050】
本実施形態では、以下に具体的に述べる構成により、異露光量の2つの画像を合成する。以下の条件式(1)を満足することにより、光量を損失する事無く、ダイナミックレンジを拡大できる。
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧1.25 (1)
【0051】
異露光量の画像を合成することでダイナミックレンジを拡大できる。条件式(1)を満足する場合、ダイナミックレンジを25%以上拡大できる。このため、光量の損失無く、異露光量の画像を得られる。ダイナミックレンジが拡大されない場合と比較して、特にノイズに埋もれている暗部の構造などが解像可能となる。
【0052】
さらに、光量を減光させる素子が必要無いため、製造コストを低減し、スペースを増加できる。
【0053】
さらに、条件式(1)に代えて、条件式(1’)、(1’’)、(1’’’)が望ましい。
【0054】
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧1.5 (1’)
これにより、画像の暗部のノイズ感(ダークノイズ)の低減効果を得られる。
【0055】
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧2 (1’’)
これにより、画像の明部のハレーションを十分低減できる。
【0056】
(Tp+Ts)/(100-Ts)≧3 (1’’’)
これにより、画像の暗部のノイズ感を十分に低減する効果を得られる。
【0057】
図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ光路分割面21dの透過率特性を示す。
【0058】
図4(a)は、ダイナミックレンジの拡大比(拡大Dレンジ比)が1.0倍である時の、光路分割面21dにおけるP偏光透過率、S偏光透過率を示す。
【0059】
図4(b)は、ダイナミックレンジの拡大比(拡大Dレンジ比)が1.25倍である時の、光路分割面21dにおけるP偏光透過率、S偏光透過率を示す。
【0060】
図4(c)は、ダイナミックレンジの拡大比(拡大Dレンジ比)が1.5倍である時の、光路分割面21dにおけるP偏光透過率、S偏光透過率を示す。
【0061】
図5(a)、(b)は、それぞれ光路分割面21dの他の透過率特性を示す。
【0062】
図5(a)は、ダイナミックレンジの拡大比(拡大Dレンジ比)が2.0倍である時の、光路分割面21dにおけるP偏光透過率、S偏光透過率を示す。
【0063】
図5(b)は、ダイナミックレンジの拡大比(拡大Dレンジ比)が3.0倍である時の、光路分割面21dにおけるP偏光透過率、S偏光透過率を示す。
【0064】
以下の表1に、各拡大Dレンジ比における諸元値を示す。表1において、透過率、反射率の単位は%である。A画像強度、B画像強度の単位は、相対的な任意単位である。
【0065】
【表1】
【0066】
また、本実施形態の望ましい態様では、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。
80≦Tp (2)
【0067】
条件式(2)は、光路分割面21dにおけるP偏光透過率の適切な値を規定する。条件式(2)を満足することで、光量損失をさらに低減でき、光量を有効に利用できる。
【0068】
また、本実施形態の望ましい態様では、第1光路A上における物体像と、第2光路B上における物体像と、が偏光ビームスプリッター20の射出側の同一の平面I(撮像面)上に形成されることが望ましい。
【0069】
これにより、単一の撮像素子22(単板)で異露光量画像を得ることができる。
【0070】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る対物光学系が有する偏光ビームスプリッター120の構成を示す図である。第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
本実施形態は、第1実施形態で上述したようなハイダイナミックレンジを達成し、さらに被写界深度を大きくできる構成である。装置構成は、図1に示す構成と同じである。そして、得られた物体像の処理フローが上述の実施形態とは異なる。
【0072】
本実施形態では、光路分割面21dから平面I(撮像面)までの第1光路A1の光路長と、光路分割面21dから平面Iまでの第2光路B1の光路長は異なる。
【0073】
図6は、本実施形態における偏光ビームスプリッター120の構成を示す。物体側のプリズム221aと像側のプリズム221cにより、被写体像をピント位置が異なる2つの光学像、即ち物体像に分離する。光路分割面21dから撮像素子22に至る透過光側の光路長(硝路長)に対して、光路分割面21dから撮像素子22に至る反射光側の光路長が短く(小さく)なるように偏光ビームスプリッター120を構成する。
【0074】
図7に示すように、第1受光領域222a、第2受光領域222bは、2つの物体像を撮像するために、物体像の結像面と各々一致するように配置されている。そして、撮像素子22において、第1受光領域222aは第2受光領域222bに対してそのピント位置が相対的に近点側にシフトしており(ずれており)、第2受光領域222bは第1受光領域222aに対してそのピント位置が相対的に遠点側にシフトしている。これにより、ピントが異なる2つの物体像を撮像素子22の受光面に結像させるように構成されている。
【0075】
撮像素子22は、ピント位置が異なる2つの物体像AA画像とBB画像を各々個別に受光して撮像する。例えば、近点側は低露光量のAA画像である。また、遠点側は高露光量のBB画像である。
【0076】
なお、物体側のプリズム221aと像側のプリズム221cにおける両者の硝材の屈折率を異ならせることにより、撮像素子22に至る光路長を変えて第1受光領域222a、第2受光領域222bに対するピント位置を相対的にずらすようにしても良い。
【0077】
本実施形態の画像合成処理部32b(図1)は、上述したハイダイナミックレンジ拡大の機能に加えて、被写界深度の拡大機能を有する。画像合成処理部32bは、2つの画像間の対応する所定領域において、相対的にコントラストが高い画像を選択して合成画像を生成する。つまり、2つの画像における空間的に同一の画素領域それぞれにおけるコントラストを比較し、相対的にコントラストが高い方の画素領域を選択することにより、2つの画像から合成された1つの画像としての合成画像を生成する。
【0078】
画像出力部32cは、後段画像処理された画像を出力する。画像出力部32cから出力される画像は画像表示部5に出力される。
【0079】
これにより、ピントの異なる2つの物体像に係る画像を取得し、これらの画像を画像合成処理部32dで合成して合成被写界深度を得ることができる。内視鏡検査で広い範囲を俯瞰してスクリーニングする際には遠方観察が適しており、病変の詳細を観察したり、診断したりする際には、近接観察が適している。
【0080】
ここで、近点側と遠点側とで、暗い側を近点に、明るい側を遠点にすることが好ましい。この理由は、近点側は、遠点側よりも明るいことと、遠点側は近点側よりも暗いためである。
【0081】
次に、図8は、本実施形態において、被写界深度を拡大するために、2つの物体像を合成する場合の流れを示すフローチャートである。
【0082】
ステップS101において、撮像素子22において取得された、ピントの異なる遠点像に係る画像と近点像に係る画像とが、画像補正処理部32aにおいて、遠近2画像の補正処理が行なわれる。すなわち、予め設定された補正パラメータに従って、2つの画像の各光学像における相対的な位置、角度及び倍率が略同一となるように2つの画像に対して補正を行い、補正後の画像を画像合成処理部32bに出力する。なお、必要に応じて2画像の明るさや色の差異を補正してもよい。
【0083】
ステップS102において、補正処理が行なわれた2つの画像が画像合成処理部32bにて合成される。この際、遠近2画像の各々対応する画素領域において、コントラスト値が各々算出され、比較される。
【0084】
ステップS103において、比較されたコントラスト値に所定値以上の差があるか否か判断し、コントラストに差がある場合、ステップS105に進み、コントラスト値の高い領域を選択して合成される。
【0085】
ここで、比較するコントラスト値の差が小さい乃至はほぼ同じである場合には、遠近2画像のどちらを選択するかに関して処理上の不安定要因となる。例えば、ノイズ等の信号の揺らぎがあると、合成画像に不連続領域が生じたり、本来は解像している被写体像がボケてしまうといった不具合を生じさせたりする。
【0086】
そこで、ステップS104に進み、重み付けを行う。ステップS104において、コントラス比較を行なう画素領域において、2画像でコントラスト値がほぼ同一である場合には、いずれか一つの画素に重み付けを行い、重み付けを行った画像の加算処理を行う事で、画像選択の不安定さを解消している。ステップ105において、コントラスト値の高い画素領域を選択して画像合成を行う。
【0087】
このように、本実施形態によれば、近接観察及び遠方観察の何れにおいても、ノイズ等によって合成画像に不連続領域が発生したり、光学像がぼけたりすることを防止しながら、被写界深度を拡大させた画像を取得することができる。
【0088】
このような構成をとることで、ハイダイナミックレンジを達成しつつ、より多画素化した撮像素子を使用しても解像力を落とすことなく被写界深度を拡大することが可能となる。
【0089】
以下、レンズ群1の数値実施例について説明する。
【0090】
(数値実施例)
【0091】
レンズ群1は、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凹負レンズL1と、平行平板L2と、両凹負レンズL3と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL5と、両凸正レンズL6と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL7と、明るさ絞りSと、両凸正レンズL8と、両凸正レンズL9と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と、からなる。
【0092】
ここで、負レンズL3と正レンズメニスカスL4とは接合されている。正レンズL6と負メニスカスレンズL7とは接合されている。正レンズL9と負メニスカスレンズL10とは接合されている。
【0093】
レンズ群1の像側に、偏光ビームスプリッター20を配置している。偏光ビームスプリッター20中のプリズムでは、光路分割面で光路が折り曲げられる。なお、平行平板L2は、特定の波長、例えばYAGレーザーの1060nm、半導体レーザーの810nm、あるいは赤外域をカットするためのコーティングが施されたフィルターである。Iは、結像面(撮像面)である。
【0094】
以下に、上記各実施例の数値データを示す。記号は、rは各レンズ面の曲率半径、dは各レンズ面間の間隔、ndは各レンズのd線の屈折率、νdは各レンズのアッベ数、FNOはFナンバー、ωは半画角である。また、バックフォーカスfbは、最も像側の光学面から近軸像面までの距離を空気換算して表したものである。全長は、最も物体側のレンズ面から最も像側の光学面までの距離(空気換算しない)にバックフォーカスを加えたものである。絞りは明るさ絞りである。
【0095】
数値実施例
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 ∞ 0.49 1.88300 40.76
2 1.812 0.79
3 ∞ 0.84 1.52100 65.12
4 ∞ 0.34
5 -4.881 0.56 1.88300 40.76
6 1.866 2.13 1.84666 23.78
7 77.332 可変
8 2.010 0.81 1.48749 70.23
9 2.149 可変
10 3.354 1.13 1.64769 33.79
11 -1.665 0.32 2.00330 28.27
12 -9.987 0.04
13(絞り) ∞ 0.56
14 512.363 0.95 1.69895 30.13
15 -3.552 0.36
16 9.128 0.94 1.48749 70.23
17 -2.180 0.39 1.92286 18.90
18 -4.093 4.59
19(撮像面) ∞

各種データ
焦点距離 1.00
FNO. 3.58
画角2ω 144.9
fb (in air) 4.59
全長 (in air) 17.15
d7 0.47
d9 1.43
【0096】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る内視鏡2と内視鏡装置1の構成を示す。本実施形態は、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジを拡大し、かつ被写界深度も拡大した内視鏡2、内視鏡装置1である。
【0097】
内視鏡2は、第1実施形態で説明した撮像ユニット60を有する。
【0098】
内視鏡装置1は、内視鏡2と、2つの物体像を合成する画像処理部32と、を有する。
【0099】
図9に示すように第3実施形態の内視鏡装置1は、内視鏡2と、内視鏡2が着脱自在に接続され、所定の信号処理を行うプロセッサ3と、内視鏡2が着脱自在に接続され、内視鏡2に対して照明光を供給する光源装置4と、プロセッサ3により生成された画像信号を内視鏡画像として表示する表示装置5と、を有する。
【0100】
内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部6と、挿入部6の後端に設けられた操作部7と、操作部7から延出されたユニバーサルコード8とを有する。ユニバーサルコード8は、その基端付近または途中でライトガイドコード9と、信号コード(信号ケーブル)10aに分岐する。
【0101】
ライトガイドコード9の端部の光源用コネクタ11は、光源装置4に着脱自在に接続され、信号コード10aの端部の信号用コネクタ12は、プロセッサ3に着脱自在に接続される。
【0102】
また、信号用コネクタ12には、内視鏡2ごとの個別の情報、たとえば偏光ビームスプリッター20、撮像素子22に関する個別の情報を記憶する記憶部であるIDメモリ40が配設されている。
【0103】
挿入部6、操作部7及びユニバーサルコード8内には照明光を伝送するライトガイド13が挿通されている。そして、光源用コネクタ11を光源装置4に接続することにより、光源装置4からの照明光をライトガイド13により伝送し、挿入部6の先端部14に設けられた照明窓に取り付けられたライトガイド先端面13aから、伝送した照明光を出射する。
【0104】
なお、光源用コネクタ11と信号用コネクタ12とが一体となったコネクタを光源装置4に接続し、信号用コネクタ12の信号を、光源装置4とプロセッサ3を接続するケーブルにより、プロセッサ3とやり取りする構成にしても良い。
【0105】
先端部14には照明窓に隣接して観察窓(撮像窓)が設けられ、観察窓には照明された患部等の被写体の光学像を、撮像する対物光学系1を含む撮像ユニット60が設けられている(図1参照)。
【0106】
撮像素子22は、たとえばCCDイメージセンサにより構成され、挿入部6及びユニバーサルコード8内に挿通されたケーブルを経たのち信号用コネクタ12を介してプロセッサ3に接続される。
【0107】
また、撮像素子22は、本実施形態においては上述したように、互いに別々の光学像である第1の物体像と第2の物体像とを、CCDの同一撮像面上における各物体像に対応する所定の領域に結像するようになっている。
【0108】
また、本実施形態においては、偏光ビームスプリッター20に関し、低露光量の第1の物体像と高露光量の第2の物体像との露光量差異情報をIDメモリ40に記憶するようになっている。
【0109】
また、制御部31は、上述したようにプロセッサ3内における各種回路を制御するとともに、内視鏡2がプロセッサ3に接続された際、信号用コネクタ12におけるIDメモリ40に記憶された、内視鏡2の個別の情報であるところの結像位置情報及び露光量差異情報を入手する。
【0110】
上述したように、本実施形態は、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジを拡大した内視鏡、内視鏡装置である。
【0111】
さらに、第3実施形態において、第2実施形態で述べた偏光ビームスプリッター120を用いることで、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジを拡大し、かつ被写界深度も拡大した内視鏡、内視鏡装置を得ることができる。
【0112】
なお、上述の対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置は、複数の構成を同時に満足してもよい。このようにすることが、良好な内視鏡装置を得る上で好ましい。また、好ましい構成の組み合わせは任意である。また、各条件式について、より限定した条件式の数値範囲の上限値あるいは下限値のみを限定しても構わない。
【0113】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態のみに限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、これら実施形態の構成を適宜組合せて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上のように、本発明は、光量の損失を低減し、ダイナミックレンジを拡大した対物光学系、撮像ユニット、内視鏡及び内視鏡装置に適している。
【符号の説明】
【0115】
1 内視鏡装置
2 内視鏡
3 プロセッサ
4 光源装置
5 表示装置
6 挿入部
7 操作部
8 ユニバーサルコード
9 ライトガイドコード
10a 信号コード
10 対物光学系
11 光源用コネクタ
12 信号用コネクタ
13 ライトガイド
13a ライトガイド先端面
14 先端部
20、120 偏光ビームスプリッター
21a、221a 物体側のプリズム
21c、221c 像側のプリズム
21b ミラー
21e 1/4波長板
AX 光軸
21d 光路分割面
REF1 第1反射面
REF2 第2反射面
22 撮像素子
22a、222a 第1受光領域
22b、222b第2受光領域
31 制御部
32 画像処理部
32a 画像補正処理部
32b 画像合成処理部
32c 画像出力部
33 前処理部
34 CCD駆動
40 IDメモリ
60 撮像ユニット
A、A1 第1光路
B、B1 第2光路
I 平面、撮像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9