IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本金銭機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-硬貨処理装置 図1
  • 特許-硬貨処理装置 図2
  • 特許-硬貨処理装置 図3
  • 特許-硬貨処理装置 図4
  • 特許-硬貨処理装置 図5
  • 特許-硬貨処理装置 図6
  • 特許-硬貨処理装置 図7
  • 特許-硬貨処理装置 図8
  • 特許-硬貨処理装置 図9
  • 特許-硬貨処理装置 図10
  • 特許-硬貨処理装置 図11
  • 特許-硬貨処理装置 図12
  • 特許-硬貨処理装置 図13
  • 特許-硬貨処理装置 図14
  • 特許-硬貨処理装置 図15
  • 特許-硬貨処理装置 図16
  • 特許-硬貨処理装置 図17
  • 特許-硬貨処理装置 図18
  • 特許-硬貨処理装置 図19
  • 特許-硬貨処理装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 3/06 20060101AFI20250423BHJP
【FI】
G07D3/06 GBN
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024040887
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-033791(JP,A)
【文献】特許第7410257(JP,B1)
【文献】特開平06-266922(JP,A)
【文献】特開2010-015495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて排出するための捌き部を備え、
前記捌き部は、
硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、
前記回動部材の下方に配置されて、前記孔部内の硬貨を支持するベースと、
前記ベースにおける前記硬貨を排出するエリアに配置され、前記硬貨を排出口に案内するための凸部と、
前記排出口を閉じる向きに付勢され、前記凸部によって案内された前記硬貨によって押しのけられるシャッタと、
前記ベースに固定されて、前記孔部と重なる位置であって、前記回動部材の外側寄りの部分に、前記孔部内の複数の硬貨のうちの外側に位置する部分を前記ベースから浮き上がった状態に維持するための、上方に向けた1または複数の凸部が形成されたガイド部材と、を含み、
前記1または複数の凸部は、前記硬貨を排出するエリア以外の部分の、前記ベースの略全周囲に渡って形成される、硬貨処理装置。
【請求項2】
複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて排出するための捌き部を備え、
前記捌き部は、
前記硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、
前記回動部材の下方に配置されて、前記孔部内の硬貨を支持するベースと、
前記ベースにおける前記硬貨を排出するエリアに配置され、前記硬貨を排出口に案内するための凸部と、
前記排出口を閉じる向きに付勢され、前記凸部によって案内された前記硬貨によって押しのけられるシャッタと、を備え、
前記ベースに対して固定され、前記孔部内の前記回動部材の外側寄りの部分に、前記孔部内の複数の硬貨のうちの外側に位置する部分を前記ベースから浮き上がった状態に維持するためのリブが形成され
前記リブは、前記硬貨を排出するエリア以外の部分の、前記ベースの略全周囲に渡って形成される、硬貨処理装置。
【請求項3】
複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて排出するための捌きユニットであって、
硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、
前記回動部材の下方に配置されて、前記孔部内の硬貨を支持するベースと、
前記ベースにおける前記硬貨を排出するエリアに配置され、前記硬貨を排出口に案内するための凸部と、
前記排出口を閉じる向きに付勢され、前記凸部によって案内された前記硬貨によって押しのけられるシャッタと、
前記ベースに固定されて、前記孔部と重なる位置であって、前記回動部材の外側寄りの部分に、前記孔部内の複数の硬貨のうちの外側に位置する部分を前記ベースから浮き上がった状態に維持するための、上方に向けた1または複数の凸部が形成されたガイド部材と、を備え
前記1または複数の凸部は、前記硬貨を排出するエリア以外の部分の、前記ベースの略全周囲に渡って形成される、捌きユニット。
【請求項4】
複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて排出するための捌きユニットであって、
前記硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、
前記回動部材の下方に配置されて、前記孔部内の硬貨を支持するベースと、
前記ベースにおける前記硬貨を排出するエリアに配置され、前記硬貨を排出口に案内するための凸部と、
前記排出口を閉じる向きに付勢され、前記凸部によって案内された前記硬貨によって押しのけられるシャッタと、を備え、
前記ベースに対して固定され、前記孔部内の前記回動部材の外側寄りの部分に、前記孔部内の複数の硬貨のうちの外側に位置する部分を前記ベースから浮き上がった状態に維持するためのリブが形成され、
前記リブは、前記硬貨を排出するエリア以外の部分の、前記ベースの略全周囲に渡って形成される、捌きユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を受け付けて種類別に収納するための硬貨処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬貨を受け付けて種類毎に選別するための装置が知られている。たとえば、特開2022-177387号公報(特許文献1)には、硬貨処理装置が開示されている。特許文献1によると、硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌き部と、捌き部から硬貨を1枚ずつ受け入れて、硬貨を円弧に沿って移動させながら、硬貨の種類を判断して、種類毎の経路に誘導する選別部と、を備える硬貨処理装置が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2024-67367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より正確に硬貨を1枚ずつ送り出すことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のある態様に従うと、複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌き部を備える硬貨処理部が提供される。捌き部は、硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、回動部材の下方に配置され、硬貨を排出口に案内するための凸部と、排出口を閉じる向きに付勢され、凸部によって案内された硬貨によって押しのけられるシャッタと、孔部内における、回動部材の外側部分に、上方に向けた凸部が形成された部材と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、より正確に硬貨を1枚ずつ送り出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態にかかる硬貨処理装置の全体を示すイメージ図である。
図2】本実施の形態にかかる硬貨処理装置の全体構成を示す側面断面図である。
図3】本実施の形態にかかる硬貨処理装置の硬貨識別選別部を示す平面図である。
図4】本実施の形態にかかる入金時の硬貨の流れを示す硬貨処理装置の全体正面断面図である。
図5】本実施の形態にかかる入金時の硬貨の流れを示す硬貨処理装置の全体側面断面図である。
図6】本実施の形態にかかる出金時の硬貨の流れを示す硬貨処理装置の全体正面断面図である。
図7】本実施の形態にかかる出金時の硬貨の流れを示す硬貨処理装置の全体側面断面図である。
図8】本実施の形態にかかる硬貨識別選別部を示す上方斜視図である。
図9】本実施の形態にかかる搬送回転体を取り外した状態の硬貨識別選別部を示す上方斜視図である。
図10】本実施の形態にかかる捌き部の構成を示す平面図である。
図11】本実施の形態にかかるガイドピンの構成を示す上方斜視図である。
図12】本実施の形態にかかる2枚の硬貨が孔部に入り込んだ状態の捌き部の構成を示す側面断面図である。
図13】本実施の形態にかかる捌き部の構成を示す平面図である。
図14】本実施の形態にかかる捌き部の各部品のサイズ構成を示す平面図である。
図15】本実施の形態にかかる硬貨を排出するときの捌き部の構成を示す側面断面図である。
図16】本実施の形態にかかる選別部と捌き部とを示す上方斜視図である。
図17】本実施の形態にかかる選別部の識別部の水平変位センサを示す平面図である。
図18】本実施の形態にかかる識別部の構成を示す側面透視図である。
図19】本実施の形態にかかる識別部の上面変位センサと下面変位センサとの構成を示す側面図である。
図20】本実施の形態にかかる上面変位センサによる計測結果と下面変位センサによる計測結果とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<硬貨処理装置100の全体構成>
【0009】
まず、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の外観図である。図1を参照して、硬貨処理装置100は、略直方体の筐体101から構成されており、上部に硬貨投入口102が設けられ、下部に硬貨排出口103が設けられる
【0010】
図2は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な内部構造を示す側面断面図である。図2を参照して、硬貨処理装置100は、上部に、硬貨を種類別に選別して送り出すための硬貨識別選別部105が設けられ、中部に、硬貨を種類毎に蓄積したり払い出したりするための硬貨払出部150が設けられ、下部に、制御部190が設けられる。なお、本実施の形態においては、硬貨払出部150は、4金種分の上払出部151と、4金種分の下払出部152から構成される。制御部190には、硬貨処理装置100の各部を制御するためのマイコン191やその他の通信インターフェイスなどが配置される。マイコン191は、たとえば、CPUや各種のメモリなどを含む。
【0011】
図3は、本実施の形態にかかる硬貨識別選別部105の平面図である。図3を参照して、投入された複数の硬貨は、捌き部110によって1枚ずつ順に選別部120に送られる。選別部120は、硬貨毎に、硬貨の種別を識別して、選別部の外側に形成されるリジェクト搬送経路1510に送ったり、選別部の外側に形成される第1の搬送経路1511に送ったり、選別部の内側に形成される第2の搬送経路1512に送ったり、選別部の外側に形成される第3の搬送経路1513に送ったり、選別部の内側に形成される第4の搬送経路1514に送ったり、選別部の外側に形成される第5の搬送経路1515に送ったり、選別部の内側に形成される第6の搬送経路1516に送ったり、選別部の外側に形成される第7の搬送経路1517に送ったり、選別部の内側に形成される第8の搬送経路1518に送ったり、選別部の外側に形成されるオーバーフロー搬送経路1519に送ったりする。
【0012】
図4は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な内部構造を示し、特に、投入された硬貨を選別して収納する際の流れを示す正面断面図である。図5は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な内部構造を示し、特に、投入された硬貨を選別して収納する際の流れを示す側面断面図である。図4および図5を参照して、リジェクト搬送経路1510に送られた硬貨は、正面視において右端部であって、側面視において前端部を下方に移動して、硬貨排出口103からリジェクトされる。オーバーフロー搬送経路1519に送られた硬貨は、正面視において左端部であって、側面視において前端部を下方に移動して、硬貨処理装置100の下方に配置される容器に送られる。選別部120の外側の第1の搬送経路1511、第3の搬送経路1513、第5の搬送経路1515、第7の搬送経路1517に送られた硬貨は、金種毎に、上払出部151の所定の収容部に蓄積される。選別部120の内側の第2の搬送経路1512、第4の搬送経路1514、第6の搬送経路1516、第8の搬送経路1518に送られた硬貨は、金種毎に、下払出部152の所定の収容部に蓄積される。
【0013】
図6は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な内部構造を示し、特に硬貨を出金または図示しない回収BOXに回収する際の流れを示す正面断面図である。図7は、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100の全体的な内部構造を示し、特に硬貨を出金または回収する際の流れを示す側面断面図である。図6および図7を参照して、選別部120の外側から第1の経路、第3の経路、第5の経路、第7の経路を介して蓄積された硬貨は、制御部190からの指令に従って、上払出部151を前方に送られてから下降して、排出口103から排出されたり、回収口104から回収BOXに送られたりする。選別部120の下側から第2の経路、第4の経路、第6の経路、第8の経路を介して蓄積された硬貨は、制御部190からの指令に従って、下払出部152を前方に送られてから下降して、排出口103から排出されたり、回収口104から回収BOXに送られたりする。
<硬貨識別選別部105の構成>
【0014】
次に、硬貨処理装置100の上部の硬貨識別選別部105の構成について説明する。図8および図9を参照して、硬貨識別選別部105は、主に、捌き部110と、選別部120と、を含む。捌き部110は、硬貨処理装置100の正面側すなわち前部に配置されて、硬貨投入口102から次々と投入されてくる硬貨を1枚ずつ選別部120に送り出すためのものである。選別部120は、硬貨処理装置100の背面側すなわち後部に配置されて、捌き部110から送られてきた硬貨の種類を特定して、種類に応じた搬送経路に送り出すものである。
<捌き部110の構成>
【0015】
以下では、捌き部110について説明する。図8から図10を参照して、捌き部110には、円形のベース111と円筒の側壁112が設けられる。ベース111の上面には、取込回転盤113が配置される。取込回転盤113には、硬貨が嵌まり込む孔113Xが複数個形成される。本実施の形態においては、3つの孔113Xが形成される。すなわち、駆動軸を中心に120°毎に孔113Xが形成される。取込回転盤113は、図示しないモータによって駆動されることによって、孔113Xに嵌った硬貨を、1枚ずつ、側壁112の後部の排出口から外側に押し出して選別部120に送り込む。
【0016】
より詳細には、硬貨は、取込回転盤113の孔113Xの動きに合わせて、平面視において時計方向に回動していき、ガイドピン114,114,114にぶつかると、ガイドピン114,114,114の並びに沿って後方へ、すなわち側壁112の外側へと押し出されていく。なお、ガイドピン114,114,114は、図11に示すように構成されるものであって、上方に付勢されている。
【0017】
ここで、捌き部110から、1枚ずつ硬貨を選別部120に送り出すための機構について説明する。本実施の形態にかかる硬貨処理装置100に関しては、1つの孔113X内に複数枚の硬貨が重なった状態のままで、取込回転盤113によって硬貨が搬送され始めた場合においても、1つの孔113Xからは1枚の硬貨だけを捌き部110の排出口113Yから出力するための機構が搭載されている。以下、このような構成について説明する。
【0018】
図10から図13を参照して、本実施の形態にかかる捌き部110には、円形のベース111と円筒の側壁112が設けられる。ベース111の上面には、取込回転盤113が配置される。取込回転盤113には、硬貨が嵌まり込む孔113Xが複数個形成される。本実施の形態においては、3つの孔113Xが形成される。すなわち、駆動軸を中心に120°毎に孔113Xが形成される。
【0019】
そして、3つの孔113Xの各々には、外側寄りの斜め後方に、硬貨1枚分の排出口113Yが形成される。排出口113Yの各々には、スクレーパ115が設けられる。スクレーパ115は、上下方向にスライド可能に構成されつつ、バネなどによって下方に付勢される。本実施の形態にかかるスクレーパ115は、上方に押し上げられたときに、想定している硬貨C1の厚みよりも+αmmだけ高い位置で止まるように構成されている。なお、スクレーパ115が下方に閉じられた状態において、スクレーパ115の下端部とベース111との間には、1mm~1.5mm程度の隙間が生じるように形成されている。
【0020】
本実施の形態においては、平面視において、スクレーパ115の先端の面が、取込回転盤113の孔113Xの内周と同じ曲率の曲面形状に形成されている。つまり、平面視において、孔113Xとスクレーパ115とが1つの滑らかな円を構成する。
【0021】
そして、特に、本実施の形態においては、取込回転盤113の下方に、ベースガイド119が配置される。より詳細には、側壁112の下方には、円形のベース111の周囲に渡って、ベースガイド119から立設されたリブ119Xが設けられる。リブ119Xは、ベース111の略全周囲に連続する形状のものであってもよいし、別の形態の複数の突起であってもよい。
【0022】
リブ119Xは、選別部120との硬貨C1の受け渡しエリアには設けられていない。つまり、リブ119Xは、選別部120との受け渡しエリア以外の場所において、孔113X,113X,113Xの内側のうちの外周付近で、上方に向けて突出している。
【0023】
これによって、孔113X,113X,113Xに入った1または複数の硬貨は、その外側に位置する部分がベース111から浮き上がった状態で維持される。その結果、孔113Xに入り込んだ2枚以上の硬貨が2枚ともベース111の上面に完全に横たわる可能性が低減でき、2枚以上の硬貨が一度に排出口113Yから排出されてしまう可能性を低減することができる。
【0024】
以上のように、本実施の形態にかかる捌き部110に関しては、取込回転盤113が回動されることによって、孔113Xに落ちた硬貨C1がスクレーパ115や孔113Xの側面によって押されていきながら、1枚ずつ、孔113Xの排出口113Yと側壁112の後部の排出口112Xから外側に押し出されて、選別部120に送り込まれていく。
【0025】
そして、図14に示すように、本実施の形態においては、ガイドピン114,114,114の、ベース111の表面より上方に突出する部分の高さが、装置が対象としている最薄の硬貨よりもさらに低く設定されている。たとえば1mm程度などである。
【0026】
また、取込回転盤113のベース111からの硬貨排出口113Yの高さ(隙間)が対象最大厚の硬貨の厚み+αmmとなっているため、最大厚と最小薄の差が2倍程度ある種類の当該最小の硬貨が投入されると、それらが重なって搬送される可能性がある。しかしながら、繰り出し用のガイドピン114,114・・・の高さは対象最小薄の硬貨よりもさらに低く設定されているため、取込回転盤113の孔113Xに薄い硬貨が2枚重なって入っていても、上側の硬貨C2はガイドピン114,114・・・には衝突することなく、側壁112や孔113Xの内側に押し返されるようになっている。
【0027】
これによって、図15に示すように、取込回転盤113の孔113Xに薄い硬貨が2枚重なって入っていても、一番下の硬貨C1だけが、ガイドピン114,114,114に押されて、スクレーパ115の斜面115Xを後上方に押しのける。すなわち、スクレーパ115が付勢力に抗して上方に持ち上げられる。一方、上側の硬貨C2はガイドピン114には衝突することなく、スクレーパ115に止められて、側壁112や孔113Xの内側に押し返されるようになっている。その結果、一番下の硬貨C1だけが、排出口113Yと側壁112の排出口112Xとを通って、選別部120へと排出される。
<選別部120の構成>
【0028】
次に、選別部120について説明する。図8図9図16を参照して、選別部120には、円形のベース121とベース121の外周に設けられる側壁122が設けられる。ベース121の上方には、搬送回転体123が配置される。搬送回転体123には、硬貨を後方から押しながら進めていくための搬送ピン123X,123X・・・が複数個形成される。本実施の形態においては、5つの搬送ピン123X,123X・・・が形成される。すなわち、搬送回転体123の軸を中心にして、72°毎に搬送ピン123X,123X・・・が取り付けられる。搬送回転体123は、駆動モータ106によって駆動されることによって、硬貨を、1枚ずつ、平面視において反時計回りに、側壁122と搬送ガイド139との間の通路をスライドさせていく。つまり、本実施の形態においては、選別部120は、最大で5枚の硬貨を同時に搬送したり、搬送経路に送り出したりすることができるものである。
【0029】
より詳細には、選別部120の側壁122のうちの、前端部、すなわち捌き部110側の壁面が開放されて、捌き部110から硬貨が送り込まれてくる。受け入れた硬貨は、搬送ピン123Xに押されて、側壁122と搬送ガイド139との間を、右方向に進んでいく。すなわち、平面視において、硬貨は円形のベース121の周囲を、反時計回りに進んでいく。
【0030】
識別部130は、変位センサや磁気センサなどを利用して、搬送ピン123Xによって送られてきた硬貨に対して、真偽の判断をしたり、硬貨の種類を特定したりする。以下では、本実施の形態にかかる識別部130の構成について説明する。
【0031】
図16図17図18を参照して、識別部130は、水平変位センサ131と、表面変位センサ132と、裏面変位センサ133と、磁気センサ134とを含む。
【0032】
水平変位センサ131は、捌き部110から送られてきた硬貨C1の幅や直径を計測するためのものである。より詳細には、図17に示すように、水平変位センサ131には、直接的または間接的に水平検知レバー131Xが連結されている。水平検知レバー131Xは、水平方向に回動可能に構成され、側壁122に向けて付勢されている。硬貨C1が検知レバー1311に接触すると、検知レバー131Xが内側に押されて、水平変位センサ131が水平検知レバー131Xが押し込まれた量を検知することによって硬貨C1の幅や直径が測定される。
【0033】
表面変位センサ132は、硬貨C1の表面側の高さを計測するためのものである。より詳細には、図18および図19に示すように、表面変位センサ132には、直接的または間接的に表面検知レバー132Xが連結されている。表面検知レバー132Xは、上下方向に回動可能に構成され、下方の搬送面に向けて付勢されている。硬貨C1が表面検知レバー132Xに接触すると、表面検知レバー132Xが上方に押されて、表面変位センサ132が表面検知レバー132Xが押し上げられた量を検知することによって硬貨C1の表面の高さの推移が測定される。
【0034】
裏面変位センサ133は、硬貨C1の裏面側の高さを計測するためのものである。より詳細には、図18および図19に示すように、裏面変位センサ133には、直接的または間接的に裏面検知レバー133Xが連結されている。裏面検知レバー133Xは、上下方向に回動可能に構成され、上方の搬送面に向けて付勢されている。硬貨C1が裏面検知レバー133Xに接触すると、裏面検知レバー133Xが下方に押されて、裏面変位センサ133が裏面検知レバー133Xが押し下げられた量を検知することによって硬貨C1の裏面の高さの推移が測定される。
【0035】
磁気センサ134は、コイルを利用して、硬貨C1の材質を特定するものである。本実施の形態においては、図18に示すように、磁気センサ134は、搬送面の下方に配置される。
【0036】
識別部130の水平変位センサ131は、水平方向の変位量を制御部190のマイコン191に送る。マイコン191は、当該変化量の推移に基づいて、硬貨C1の直径を特定する。
【0037】
識別部130の表面変位センサ132は、上方向の変位量を制御部190のマイコン191に送る。マイコン191は、当該変化量の推移に基づいて、図20に示すように、硬貨C1の表面側の高さの推移を取得する。
【0038】
識別部130の裏面変位センサ133は、下方向の変位量を制御部190のマイコン191に送る。マイコン191は、当該変化量の推移に基づいて、図20に示すように、硬貨C1の裏面側の高さの推移を取得する。
【0039】
識別部130の磁気センサ134は、磁気の変化量を制御部190のマイコン191に送る。マイコン191は、当該変化量に基づいて、硬貨C1の材質を特定する。
【0040】
本実施の形態にかかるマイコン191は、硬貨の種類毎の、直径と、表面の高さの推移と、裏面の高さの推移と、材質と、を記憶している。そして、マイコン191は、今回計測した硬貨C1の直径と、硬貨C1の表面の高さの推移と、硬貨C1の裏面の高さの推移と、硬貨C1の材質と、にマッチする硬貨の種類を特定する。本実施の形態においては、4つの要素に基づいて硬貨C1の種類を特定するため、より正確に硬貨を判別することができる。
【0041】
本実施の形態においては、マイコン191のメモリは、硬貨の種類毎に、搬送経路または収納ケースの位置などを記憶している。マイコン191は、判断結果や特定結果に基づいて、特定に失敗した硬貨C1をリジェクト経路に搬送したり、種類が特定できた硬貨C1を当該種類に応じた搬送経路や格納場所に搬送したりする。
【0042】
たとえば、図3に示したように、本実施の形態にかかる硬貨処理装置100は、円形の選別部の外側に向けて4種類の硬貨を搬送し、下側に向けて4種類の硬貨を搬送する。
<まとめ>
【0043】
上記の実施の形態においては、複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌き部を備える硬貨処理装置が提供される。捌き部は、硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、回動部材の下方に配置され、硬貨を排出口に案内するための凸部と、排出口を閉じる向きに付勢され、凸部によって案内された硬貨によって押しのけられるシャッタと、孔部内における、回動部材の外側部分に、上方に向けた凸部が形成された部材と、を含む。
【0044】
あるいは、上記の実施の形態においては、複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌き部を備える硬貨処理装置が提供される。捌き部は、硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、回動部材の下方に配置され、硬貨を排出口に案内するための凸部と、排出口を閉じる向きに付勢され、凸部によって案内された硬貨によって押しのけられるシャッタと、を含む。孔部内に、孔部内の外側に位置する硬貨を持ち上げるためのリブが形成される。
【0045】
あるいは、上記の実施の形態においては、複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌きユニットが提供される。捌きユニットは、硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材と、回動部材の下方に配置され、硬貨を排出口に案内するための凸部と、排出口を閉じる向きに付勢され、凸部によって案内された硬貨によって押しのけられるシャッタと、孔部内における、回動部材の外側部分に、上方に向けた凸部が形成された部材と、を備える。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
100 :硬貨処理装置
101 :筐体
102 :硬貨投入口
103 :硬貨排出口
104 :回収口
105 :硬貨識別選別部
106 :駆動モータ
110 :捌き部
111 :ベース
112 :側壁
112X :排出口
113 :取込回転盤
113X :硬貨収納孔
113Y :硬貨排出口
114 :ガイドピン
115 :スクレーパ
115X :斜面
119 :ベースガイド
120 :選別部
121 :ベース
122 :側壁
123 :搬送回転体
123X :搬送ピン
130 :識別部
131 :水平変位センサ
131X :水平検知レバー
132 :表面変位センサ
132X :表面検知レバー
133 :裏面変位センサ
133X :裏面検知レバー
134 :磁気センサ
139 :搬送ガイド
150 :硬貨払出部
151 :上払出部
152 :下払出部
190 :制御部
191 :マイコン
1510 :リジェクト搬送経路
1511 :第1の搬送経路
1512 :第2の搬送経路
1513 :第3の搬送経路
1514 :第4の搬送経路
1515 :第5の搬送経路
1516 :第6の搬送経路
1517 :第7の搬送経路
1518 :第8の搬送経路
1519 :オーバーフロー搬送経路
C1 :硬貨
C2 :硬貨
【要約】
【課題】より正確に硬貨を1枚ずつ送り出すことができる技術を提供する。
【解決手段】複数の硬貨を受け付けて1枚ずつ間隔をあけて送り出すための捌き部110を備える硬貨処理装置100が提供される。捌き部は、硬貨がセットされる孔部が間隔をあけて複数形成された回動部材113と、回動部材の下方に配置され、硬貨を排出口113Yに案内するための凸部114と、排出口を閉じる向きに付勢され、凸部によって案内された硬貨によって押しのけられるシャッタ115と、孔部内における、回動部材の外側部分に、上方に向けた凸部119Xが形成された部材119と、を含む。
【選択図】図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20