(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】合成回路
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20250424BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20250424BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
H04B5/48
H04B1/59
G06K19/07 230
G06K19/07 170
(21)【出願番号】P 2024502995
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2023004029
(87)【国際公開番号】W WO2023162681
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2022027223
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 昇
(72)【発明者】
【氏名】磯山 伸治
(72)【発明者】
【氏名】水流 槙介
(72)【発明者】
【氏名】戸羽 辰夫
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-202721(JP,A)
【文献】特開2013-191913(JP,A)
【文献】特開2011-155427(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113383(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0139159(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357832(US,A1)
【文献】特開2014-042389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/48
H04B 1/59
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、
前記伝送回路は、
複数のインダクタを含むインダクタンス値切替回路と、
前記複数のインダクタの各々に接続される複数の第1スイッチ素子と、
複数のキャパシタを含む容量値切替回路と、
前記複数のキャパシタの各々に接続される複数の第2スイッチ素子と、を含み、
前記制御回路は、
前記第1スイッチ素子の各々に接続された複数の第1コンパレータと、
前記第2スイッチ素子の各々に接続された複数の第2コンパレータと、
基準電圧を分圧して、前記複数の第1コンパレータ及び前記複数の第2コンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、
前記第1コンパレータは、前記分圧電圧と、のこぎり波形の入力電圧とを比較し、前記のこぎり波形の入力電圧が前記分圧電圧よりも低い場合に、前記第1スイッチ素子を閉状態に制御するように構成され、
前記第2コンパレータは、前記分圧電圧と、前記のこぎり波形の入力電圧とを比較し、前記のこぎり波形の入力電圧が前記分圧電圧よりも高い場合に、前記第2スイッチ素子を閉状態に制御するように構成されている、
合成回路。
【請求項2】
請求項1に記載の合成回路において、
前記分圧回路は、前記伝送回路のインピーダンスを変化させて、前記アンテナとの反射係数が複素平面において基準点の周囲を回転するように制御可能に構成されている、合成回路。
【請求項3】
請求項2に記載の合成回路において、
前記のこぎり波形の入力電圧が立ち上げ信号である場合には、前記分圧回路は、前記容量値切替回路を制御して前記基準点の下半円上を右回りに回転させ、かつ前記インダクタンス値切替回路を制御して前記基準点の上半円を右回りに回転させるように構成されている、合成回路。
【請求項4】
請求項2に記載の合成回路において、
前記のこぎり波形の入力電圧が立ち下げ信号である場合には、前記分圧回路は、前記インダクタンス値切替回路を制御して前記基準点の上半円上を左回りに回転させ、かつ前記容量値切替回路を制御して前記基準点の下半円を左回りに回転させるように構成されている、合成回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の合成回路において、
前記のこぎり波形の入力電圧の電圧値に応じて、前記インダクタンス値切替回路と、前記容量値切替回路との出力を切り替えて前記アンテナに出力するように構成された選択回路を含む、合成回路。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の合成回路において、
前記分圧回路は、前記複数の第1コンパレータ及び前記複数の第2コンパレータの各々に対して電圧値の異なる分圧電圧を出力するように構成されている、合成回路。
【請求項7】
アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、
前記伝送回路は、
複数のキャパシタを含む容量値切替回路と、
前記複数のキャパシタの各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含み、
前記制御回路は、
前記スイッチ素子の各々に接続された複数のコンパレータと、
基準電圧を分圧して、前記複数のコンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、
前記伝送回路の出力端子と、前記アンテナとの間には、インダクタが接続するように構成されている、
合成回路。
【請求項8】
アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、
前記伝送回路は、
複数のインダクタを含むインダクタンス値切替回路と、
前記複数のインダクタの各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含み、
前記制御回路は、
前記スイッチ素子の各々に接続された複数のコンパレータと、
基準電圧を分圧して、前記複数のコンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、
前記伝送回路の出力端子と、前記アンテナとの間には、キャパシタが接続するように構成されている、
合成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置のデータ通信方法として、バックスキャッタ方式が知られている。例えば、特許文献1には、分波/合成器を用いて、USB(Upper Side Band)信号およびLSB(Lower Side Band)信号のいずれか一方の信号を抑制して、シングルサイドバンドを実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る合成回路は、アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、前記伝送回路は、複数のインダクタを含むインダクタンス値切替回路と、前記複数のインダクタの各々に接続される複数の第1スイッチ素子と、複数のキャパシタを含む容量値切替回路と、前記複数のキャパシタの各々に接続される複数の第2スイッチ素子と、を含み、前記制御回路は、前記第1スイッチ素子の各々に接続された複数の第1コンパレータと、前記第2スイッチ素子の各々に接続された複数の第2コンパレータと、基準電圧を分圧して、前記複数の第1コンパレータ及び前記複数の第2コンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、前記第1コンパレータは、前記分圧電圧と、のこぎり波形の入力電圧とを比較し、前記のこぎり波形の入力電圧が前記分圧電圧よりも低い場合に、前記第1スイッチ素子を閉状態に制御するように構成され、前記第2コンパレータは、前記分圧電圧と、前記のこぎり波形の入力電圧とを比較し、前記のこぎり波形の入力電圧が前記分圧電圧よりも高い場合に、前記第2スイッチ素子を閉状態に制御するように構成されている。
【0005】
本開示の一態様に係る合成回路は、アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、前記伝送回路は、複数のキャパシタを含む容量値切替回路と、前記複数のキャパシタの各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含み、前記制御回路は、前記スイッチ素子の各々に接続された複数のコンパレータと、基準電圧を分圧して、前記複数のコンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、前記伝送回路の出力端子と、前記アンテナとの間には、インダクタが接続するように構成されている。
【0006】
本開示の一態様に係る合成回路は、アンテナに接続されるように構成される伝送回路と、前記伝送回路のインピーダンスを制御するように構成される制御回路とを含む合成回路であって、前記伝送回路は、複数のインダクタを含むインダクタンス値切替回路と、前記複数のインダクタの各々に接続される複数のスイッチ素子と、を含み、前記制御回路は、前記スイッチ素子の各々に接続された複数のコンパレータと、基準電圧を分圧して、前記複数のコンパレータの各々に分圧電圧を出力するように構成される複数の抵抗素子から構成されている分圧回路と、を含み、前記伝送回路の出力端子と、前記アンテナとの間には、キャパシタが接続するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る複素平面においてインピーダンスを回転制御する方法を説明するための図である。
【
図3A】
図3Aは、バックスキャッタ信号の変化を説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、バックスキャッタ信号の変化を説明するための図である。
【
図3C】
図3Cは、バックスキャッタ信号の変化を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る入力信号の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る入力信号の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る伝送回路の動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る伝送回路の動作を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
[実施形態]
図1を用いて、実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、無線通信装置1は、アンテナ10と、BPF(Band Pass Filter)11と、RFBS(Radio Frequency Backscatter)デバイス20と、制御装置30と、センサ40と、を含む。無線通信装置1は、RFIDなどのバックスキャッタ方式の無線通信をするように構成される通信装置である。
【0011】
アンテナ10は、無線通信装置1に対して送信された信号を受信するように構成される。アンテナ10は、無線通信装置1の外部に向かって電波を送信するように構成される。BPF11は、所望の周波数帯域の信号を通過させるように構成されるフィルタである。
【0012】
RFBSデバイス20は、高周波スイッチ21と、アンプ22と、復調部23と、発振部24と、LPF(Low Pass Filter)25と、LPF26と、制御回路27と、伝送回路28と、を含む。RFBSデバイス20は、バックスキャッタ方式のデータ通信に対応している無線通信デバイスである。バックスキャッタ方式のデータ通信では、送信されてきた電波の反射を利用して通信を行う。
【0013】
高周波スイッチ21は、アンテナ10と、送信回路系または受信回路系との接続を切り替えるように構成される。高周波スイッチ21は、アンテナ10に送信回路系を接続可能に構成される。無線通信装置1は、アンテナ10と送信回路系とが接続されているときに、送信するように構成される。高周波スイッチ21は、アンテナ10に受信回路系を接続可能に構成される。送信回路系は、発振部24と、LPF25と、LPF26と、制御回路27と、伝送回路28と、を含む。受信回路系は、アンプ22と、復調部23と、を含む。
【0014】
アンプ22は、アンテナ10から受けた信号を増幅して出力するように構成される。アンプ22は、増幅した信号を復調部23に出力するように構成される。復調部23は、入力された信号に対して、復調処理を実行するように構成される。復調部23は、アンプ22から受けた信号を復調するように構成される。例えば、復調部23は、アンプ22から受けた信号(ASK(Amplitude Shift Keying)などの変調信号)に対して、復調処理を実行するように構成される。
【0015】
制御装置30は、例えば、プロセッサ等によって、内部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。制御装置30は、コントローラ(Controller)であり得る。制御装置30は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御装置30は、ソフトウェアと、ハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0016】
制御装置30は、センサ40からの出力データに基づいたシリアルデータS1を、LPF25を介して、制御回路27に出力するように構成される。制御装置30は、センサ40からの出力データに基づいたシリアルデータS2を、LPF26を介して制御回路27に出力するように構成される。シリアルデータS1と、シリアルデータS2とは位相が概ね90°異なる。
【0017】
制御装置30は、キャリア信号に対するUSB信号及びLSB信号のいずれか一方を抑圧させるための制御信号S3を制御回路27に出力するように構成される。制御装置30は、通信に用いるチャネルを制御するための制御信号S4を発振部24に信号を出力するように構成される。
【0018】
センサ40は、各種の物理量を検出するように構成される。センサ40が検出する物理量に特に制限はない。センサ40は、例えば、無線通信装置1の周囲の温度を検出するように構成される温度センサ、及び無線通信装置1に生じた加速度を検出するように構成される加速度センサの一方又は両方を含み得る。センサ40は、その他のセンサを含んでよい。
【0019】
発振部24は、所定の周波数の発振信号を生成するように構成される。発振部24は、制御信号S4に従って、発振信号S5を生成するように構成される。発振部24は、発振信号S5とは位相が90°異なる発振信号S6を生成するように構成される。
【0020】
制御回路27は、伝送回路28を制御するように構成される。制御回路27は、シリアルデータS1と、シリアルデータS2と、制御信号S3とに基づいて、伝送回路28のインピーダンスの値を制御するように構成される。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを変化させるように構成される。インピーダンスの変化によって、アンテナ10側の出力端子の反射係数は、複素平面において回転する。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを変化させて、出力端子の反射係数が複素平面において回転するように制御する。例えば、反射信号(以下、バックスキャッタ信号とも呼ぶ)におけるキャリア信号に対するUSB信号またはLSB信号を低減して、シングルサイドバンドを実現するように、制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。
【0021】
図2のポーラーチャート(極座標)を用いて、制御回路27が伝送回路28のアンテナ10側の出力端子の反射係数がポーラーチャートの複素平面上を回転するように制御する方法について説明する。
図2は、制御回路27が伝送回路28のインピーダンスを変化させ、その出力端子の反射係数を回転するように制御する方法を説明するための図である。
【0022】
図2は、インピーダンスの変化による反射係数Γの変化をポーラーチャート上に示した図である。インピーダンスは、次の式(1)で算出される。式(1)において、Zはインピーダンス、Rはレジスタンス、jは虚数、ωは角周波数、Lはインダクタンス、Cはキャパシタンスである。
Z=R+j(ωL-1/ωC)・・・(1)
【0023】
また、反射係数Γは、次式で表せる。
Γ=(Z-Z0)/(Z+Z0)・・・(2)
ここで、Z0はアンテナ10またはBPF11のインピーダンスである。
【0024】
制御回路27は、インピーダンスZを選択制御して、反射係数Γが基準点の周囲を回るよう制御する。基準点は、原点を含むが、原点に限定されず、任意の点を含む。伝送回路は、基準点が原点に近いほど、理想に近い信号を得られうる。伝送回路は、基準点の周囲を円状に回すように制御するほど、理想に近い信号を得られうる。スミスチャートで考えると、下半円領域が容量性を示し、上半分がインダクタンス性を示す。実軸上の変化は抵抗値の変化を表すことになる。
【0025】
制御回路27は、伝送回路28が備えている複数のインピーダンスを選択制御することができる。例えば、制御回路27は、インピーダンスを0°、45°、90°、135°、180°、-135°、-90°、-45°の45°刻みで伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。制御回路27は、インピーダンスを制御することで反射係数Γを制御するように構成される。制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスを順次変更することで、インピーダンスが離散的に回転するように制御可能に構成される。制御回路27は、インピーダンスの離散的な回転に応じて、反射係数Γが離散的に回転する。
【0026】
制御回路27は、伝送回路28のインピーダンスの変更順によって、当該インピーダンスを左回転で変更可能に構成される。制御回路27は、インピーダンスの左回転によって、反射係数Γを左回転で変更可能に構成される。反射係数の制御が左回転の場合、RF(Radio Frequency)に対する反射信号は、USB(Upper Side Band)信号のみとなる。反射係数が右回転となるように制御すると、LSB(Lower Side Band)信号のみが得られることになる。その際、反射信号の周波数は、RF信号周波数から回転速度周波数分、離調した周波数となる。
図3Aと、
図3Bと、
図3Cとを用いて、インピーダンスを変化させ反射係数を制御することによる、バックスキャッタ信号の変化についていくつかの例を説明する。
【0027】
図3Aは、制御回路27がインピーダンスの抵抗成分のみを制御し、反射係数Γをポーラーチャート(
図2)の実軸上で変化させた場合のバックスキャッタ信号の様子を説明するための周波数スペクトラムを示す図である。横軸は周波数、縦軸はRF信号および反射信号の強度を示す。
図3Aには、キャリア信号51と、USB信号52と、LSB信号53とが示される。抵抗成分が制御されると、反射係数Γは、0°と、180°との実軸上のいずれかに制御される。抵抗成分のみでインピーダンスを変えて反射係数Γを制御する場合、
図3Aに示すように、例えば、0°から180°に切り替わる際に、右回りの信号成分と、左回りの信号成分と、が内在する。2つの回転方向の信号成分が内在することによって、USB信号52及びLSB信号53を同時に出現し、一方の信号のみを選択的に抑制することができない。結果として、SSB信号は、抵抗成分のみの制御で得ることができない。
【0028】
図3Bは、制御回路27がインピーダンスのインダクタンス/キャパシタンスを変化させ反射係数Γの軌跡が円を描くように制御した場合のバックスキャッタ信号の変化を説明するための周波数スペクトラムを示す図である。横軸は周波数、縦軸はRF信号および反射信号の強度を示す。式(1)、(2)に基づき、制御回路27は、インダクタンスの値を制御することで、インピーダンスを左回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、0°から45°、90°、135°と左回りに回転する。制御回路27は、さらにキャパシタンスの値を制御することで、インピーダンスを左回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、180°から-135°、-90°、-45°と左回りに回転する。
図3Bに示すように、制御回路27は、インピーダンスを左回りに回転するように制御することで、LSB信号53を抑圧するように、送信されてきたRF信号を反射させることができる。言い換えれば、制御回路27は、インピーダンスの左回りの回転制御によって、USB信号52にSSB化されたバックスキャッタ信号を得ることができる。
【0029】
図3Cは、制御回路27がインピーダンスのキャパシタンス/インダクタンスを変化させ、反射係数Γの軌跡が円を描くように制御した場合のバックスキャッタ信号の変化を説明するための図である。式(1)、(2)に基づき、制御回路27は、キャパシタンスの値を制御することで、インピーダンスを右回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、0°から-45°、-90°、-135°と右回りに回転する。制御回路27は、さらにインダクタンスの値を制御することで、インピーダンスを右回りに回転するように制御可能である。このとき、インピーダンスは、例えば、180°から、135°、90°、45°と右回りに回転する。
図3Cに示すように、制御回路27は、インピーダンスを右回りに回転するように制御することで、USB信号52を抑圧するように、送信されてきたRF信号を反射させることができる。言い換えれば、制御回路27は、インピーダンスの右回りの回転制御によって、LSB信号53にSSB化されたバックスキャッタ信号を得ることができる。
【0030】
伝送回路28は、無線通信装置1のフロントエンドに配置されている。伝送回路28は、送信されてきた電波をバックスキャッタ信号として反射するバックスキャッタ通信を行うように構成される回路である。伝送回路28は、アンテナ10に接続されるように構成されている。伝送回路28は、各々のインピーダンスが異なる複数のインピーダンス回路を含む。複数のインピーダンス回路の各々は、スイッチ素子を含む。スイッチ素子は、当該インピーダンス回路の接続を切り替えるように構成される。制御回路27は、複数のスイッチ素子を制御することで、複数のインピーダンス回路の接続を切り替えるように構成される。制御回路27は、複数のスイッチ素子を制御することで、伝送回路28のインピーダンスを制御するように構成される。
【0031】
[第1実施形態]
[インピーダンスの制御方法]
図4を用いて、第1実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法について説明する。
図4は、第1実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。制御回路27は、外部の装置に送信すべき送信データに応じた入力信号を受ける。制御回路27は、制御信号に応じて、伝送回路28のインピーダンスを制御するための制御信号を出力する。
【0032】
本実施形態では、制御信号に入力される入力信号は、のこぎり波形の入力信号(以下、単にのこぎり波とも呼ぶ)である。のこぎり波は、立ち上がりを示す立上のこぎり波であってもよいし、立ち下がりを示す立下のこぎり波であってもよい。本実施形態では、のこぎり波が、立上のこぎり波である場合と、立下のこぎり波である場合とで、インピーダンスを制御する方法を変更する。
【0033】
図4には、
図1の制御回路27の出力部に該当する駆動制御回路29と、伝送回路28の構成が示されている。駆動制御回路29は、インピーダンスを切り替え、反射係数Γを複素平面上で回転するように制御する伝送回路28の駆動制御回路である。駆動制御回路29と、伝送回路28とは、合成回路とも称され得る。
【0034】
図4に示すように、駆動制御回路29は、基準電源Vと、抵抗素子R1と、抵抗素子R2と、抵抗素子R3と、抵抗素子R4と、抵抗素子R5と、抵抗素子R6と、抵抗素子R7と、抵抗素子R8と、抵抗素子R9と、抵抗素子R10と、抵抗素子R11と、抵抗素子R12と、抵抗素子R13と、抵抗素子R14と、抵抗素子R15と、抵抗素子R16と、抵抗素子R17と、を備える。また、駆動制御回路29は、コンパレータCML1と、コンパレータCML2と、コンパレータCML3と、コンパレータCML4と、コンパレータCML5と、コンパレータCML6と、コンパレータCML7と、コンパレータCML8と、コンパレータCMC1と、コンパレータCMC2と、コンパレータCMC3と、コンパレータCMC4と、コンパレータCMC5と、コンパレータCMC6と、コンパレータCMC7と、コンパレータCMC8と、を備える。
【0035】
駆動制御回路29には、入力信号S11が入力される。
図5と、
図6とは、第1実施形態に係る入力信号の一例を示す図である。
図5および
図6は、横軸が時間(S)、縦軸が信号レベル(V)である。
図5は、波形W1を示す。波形W1は、立上のこぎり波の一例である。
図6は、波形W2を示す。波形W2は、立下のこぎり波の一例である。第1実施形態では、入力信号S11は、波形W1または波形W2に示すように、立上のこぎり波または立下のこぎり波であり得る。
【0036】
伝送回路28は、インダクタンス値切替回路110と、容量値切替回路120と、を含む。インダクタンス値切替回路110と、容量値切替回路120とは、インピーダンス回路の一種である。
【0037】
抵抗素子R1から抵抗素子R9とは、それぞれ、直列に接続されている。抵抗素子R1は、基準電源Vに接続されている。抵抗素子R9は、基準電位に接続されている。抵抗素子R1から抵抗素子R9と、コンパレータCML1からコンパレータCML8とは、インダクタンス値切替回路110に対して制御信号を出力する分圧回路を構成している。
【0038】
ノードN1は、入力信号S11が入力されるノードである。ノードN2は、抵抗素子R1と、抵抗素子R2との間のノードである。ノードN3は、抵抗素子R2と、抵抗素子R3との間のノードである。ノードN4は、抵抗素子R3と、抵抗素子R4との間のノードである。ノードN5は、抵抗素子R4と、抵抗素子R5との間のノードである。ノードN6は、抵抗素子R5と、抵抗素子R6との間のノードである。ノードN7は、抵抗素子R6と、抵抗素子R7との間のノードである。ノードN8は、抵抗素子R7と、抵抗素子R8との間のノードである。ノードN9は、抵抗素子R8と、抵抗素子R17との間のノードである。ノードN1からは、入力信号S11の電圧値に応じた基準信号が出力され得る。ノードN2からノード9からは、基準電源Vの電圧値と、抵抗素子R1から抵抗素子R8の抵抗値に応じた分圧電圧が出力信号として出力され得る。
【0039】
コンパレータCML1の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML1の他方の入力端子には、ノードN2が電気的に接続されている。コンパレータCML1の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL1に電気的に接続されている。コンパレータCML1は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN2から入力された制御信号としての第1分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML1は、入力信号S11よりも第1分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL1を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML1は、入力信号S11よりも第1分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL1を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0040】
コンパレータCML2の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML2の他方の入力端子には、ノードN3が電気的に接続されている。コンパレータCML2の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL2に電気的に接続されている。コンパレータCML2は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN3から入力された制御信号としての第2分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML2は、入力信号S11よりも第2分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL2を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML2は、入力信号S11よりも第2分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL2を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0041】
コンパレータCML3の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML3の他方の入力端子には、ノードN4が電気的に接続されている。コンパレータCML3の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL3に電気的に接続されている。コンパレータCML3は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN4から入力された制御信号としての第3分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML3は、入力信号S11よりも第3分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL3を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML3は、入力信号S11よりも第3分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL3を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0042】
コンパレータCML4の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML4の他方の入力端子には、ノードN5が電気的に接続されている。コンパレータCML4の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL4に電気的に接続されている。コンパレータCML4は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN5から入力された制御信号としての第4分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML4は、入力信号S11よりも第4分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL4を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML4は、入力信号S11よりも第4分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL4を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0043】
コンパレータCML5の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML5の他方の入力端子には、ノードN6が電気的に接続されている。コンパレータCML5の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL5に電気的に接続されている。コンパレータCML5は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN6から入力された制御信号としての第5分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML5は、入力信号S11よりも第5分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL5を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML5は、入力信号S11よりも第5分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL5を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0044】
コンパレータCML6の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML6の他方の入力端子には、ノードN7が電気的に接続されている。コンパレータCML6の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL6に電気的に接続されている。コンパレータCML6は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN7から入力された制御信号としての第6分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML6は、入力信号S11よりも第6分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL6を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML6は、入力信号S11よりも第6分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL6を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0045】
コンパレータCML7の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML7の他方の入力端子には、ノードN8が電気的に接続されている。コンパレータCML7の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL7に電気的に接続されている。コンパレータCML7は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN8から入力された制御信号としての第7分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML7は、入力信号S11よりも第7分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL7を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML7は、入力信号S11よりも第7分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL7を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0046】
コンパレータCML8の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCML8の他方の入力端子には、ノードN9が電気的に接続されている。コンパレータCM8の出力端子は、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL8に電気的に接続されている。コンパレータCML8は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN9から入力された制御信号としての第8分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCML8は、入力信号S11よりも第8分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWL8を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCML8は、入力信号S11よりも第8分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWL8を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0047】
すなわち、コンパレータCML1からコンパレータCML8は、入力信号S11が分圧電圧よりも低い場合に、スイッチ素子を閉状態に制御するように構成されている。
【0048】
抵抗素子R9から抵抗素子R17とは、それぞれ、直列に接続されている。抵抗素子R1から抵抗素子R8と、抵抗素子R9から抵抗素子R17とは、直列に接続されている。抵抗素子R9は、基準電位に接続されている。抵抗素子R9から抵抗素子R17と、コンパレータCMC1からコンパレータCMC8とは、容量値切替回路120に対して制御信号を出力する分圧回路を構成している。
【0049】
ノードN17は、抵抗素子R9と、抵抗素子R10との間のノードである。ノードN18は、抵抗素子R10と、抵抗素子R11との間のノードである。ノードN19は、抵抗素子R11と、抵抗素子R12との間のノードである。ノードN20は、抵抗素子R12と、抵抗素子R13との間のノードである。ノードN21は、抵抗素子R13と、抵抗素子R14との間のノードである。ノードN22は、抵抗素子R14と、抵抗素子R15との間のノードである。ノードN23は、抵抗素子R15と、抵抗素子R16との間のノードである。ノードN24は、抵抗素子R16と、抵抗素子R17との間のノードである。
【0050】
コンパレータCMC1の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC1の他方の入力端子には、ノードN17が電気的に接続されている。コンパレータCMC1の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC1に電気的に接続されている。コンパレータCMC1は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN17から入力された制御信号としての第9分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC1は、入力信号S11よりも第9分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC1を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC1は、入力信号S11よりも第9分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC1を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0051】
コンパレータCMC2の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC2の他方の入力端子には、ノードN18が電気的に接続されている。コンパレータCMC2の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC2に電気的に接続されている。コンパレータCMC2は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN18から入力された制御信号としての第10分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC2は、入力信号S11よりも第10分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC2を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC2は、入力信号S11よりも第10分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC2を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0052】
コンパレータCMC3の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC3の他方の入力端子には、ノードN19が電気的に接続されている。コンパレータCMC3の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC3に電気的に接続されている。コンパレータCMC3は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN19から入力された制御信号としての第11分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC3は、入力信号S11よりも第11分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC3を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC3は、入力信号S11よりも第11分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC3を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0053】
コンパレータCMC4の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC4の他方の入力端子には、ノードN20が電気的に接続されている。コンパレータCMC4の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC4に電気的に接続されている。コンパレータCMC4は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN20から入力された制御信号としての第12分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC4は、入力信号S11よりも第12分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC4を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC4は、入力信号S11よりも第12分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC4を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0054】
コンパレータCMC5の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC5の他方の入力端子には、ノードN21が電気的に接続されている。コンパレータCMC5の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC5に電気的に接続されている。コンパレータCMC5は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN21から入力された制御信号としての第13分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC5は、入力信号S11よりも第13分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC5を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC5は、入力信号S11よりも第13分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC5を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0055】
コンパレータCMC6の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC6の他方の入力端子には、ノードN22が電気的に接続されている。コンパレータCMC6の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC6に電気的に接続されている。コンパレータCMC6は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN22から入力された制御信号としての第14分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC6は、入力信号S11よりも第14分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC6を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC6は、入力信号S11よりも第14分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC6を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0056】
コンパレータCMC7の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC7の他方の入力端子には、ノードN23が電気的に接続されている。コンパレータCMC7の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC7に電気的に接続されている。コンパレータCMC7は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN23から入力された制御信号としての第15分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC7は、入力信号S11よりも第15分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC7を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC7は、入力信号S11よりも第15分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC7を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0057】
コンパレータCMC8の一方の入力端子には、ノードN1が電気的に接続されている。コンパレータCMC8の他方の入力端子には、ノードN24が電気的に接続されている。コンパレータCMC8の出力端子は、容量値切替回路120のスイッチ素子SWC8に電気的に接続されている。コンパレータCMC8は、ノードN1から入力された入力信号S11と、ノードN24から入力された制御信号としての第16分圧電圧とを比較して、比較結果に応じたスイッチ制御信号を出力するように構成される。例えば、コンパレータCMC8は、入力信号S11よりも第16分圧電圧の方が大きければ、スイッチ素子SWC8を開状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。コンパレータCMC8は、入力信号S11よりも第16分圧電圧の方が小さければ、スイッチ素子SWC8を閉状態とするスイッチ制御信号を出力するように構成される。
【0058】
すなわち、コンパレータCMC1からコンパレータCMC8は、入力信号S11が分圧電圧よりも高い場合に、スイッチ素子を閉状態に制御するように構成されている。よって、本開示では、コンパレータCML1からコンパレータCML8と、コンパレータCMC1からコンパレータCMC8とは、比較動作が逆に構成されている。
【0059】
[インダクタンス値切替回路]
インダクタンス値切替回路110の構成について説明する。インダクタンス値切替回路110は、スイッチ素子SWL1と、スイッチ素子SWL2と、スイッチ素子SWL3と、スイッチ素子SWL4と、スイッチ素子SWL5と、スイッチ素子SWL6と、スイッチ素子SWL7と、スイッチ素子SWL8と、インダクタL1と、インダクタL2と、インダクタL3と、インダクタL4と、インダクタL5と、インダクタL6と、インダクタL7と、高抵抗素子RLと、を備える。
【0060】
スイッチ素子SWL1の入力端子は、コンパレータCML1の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL1の出力端子の一端は、インダクタL1の一端および高抵抗素子RLを介して基準電位に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL1の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL1の他端は、インダクタL2からインダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL1は、閉状態となると、インダクタL1と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL1が閉状態となり、スイッチ素子SWL2~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL1からインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0061】
スイッチ素子SWL2の入力端子は、コンパレータCML2の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL2の出力端子の一端は、インダクタL1の他端およびインダクタL2の一端に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL2の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL2の他端は、インダクタL3からインダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL2は、閉状態となると、インダクタL2と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL2が閉状態となり、スイッチ素子SWL3~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL2からインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0062】
スイッチ素子SWL3の入力端子は、コンパレータCML3の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL3の出力端子の一端は、インダクタL2の他端およびインダクタL3の一端に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL3の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL3の他端は、インダクタL4からインダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL3は、閉状態となると、インダクタL3と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL3が閉状態となり、スイッチ素子SWL4~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL3からインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0063】
スイッチ素子SWL4の入力端子は、コンパレータCML4の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL4の出力端子の一端は、インダクタL3の他端およびインダクタL4の一端に接続されている。スイッチ素子SWL4の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL4の他端は、インダクタL5からインダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL4は、閉状態となると、インダクタL4と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL4が閉状態となり、スイッチ素子SWL5~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL4からインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0064】
スイッチ素子SWL5の入力端子は、コンパレータCML5の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL5の出力端子の一端は、インダクタL4の他端およびインダクタL5の一端に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL5の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL5の他端は、インダクタL6およびインダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL5は、閉状態となると、インダクタL5と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL5が閉状態となり、スイッチ素子SWL6~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL5からインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0065】
スイッチ素子SWL6の入力端子は、コンパレータCML6の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL6の出力端子の一端は、インダクタL5の他端およびインダクタL6の一端に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL6の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL6の他端は、インダクタL7を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL6は、閉状態となると、インダクタL6と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SW6が閉状態となり、スイッチ素子SWL7~SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL6とインダクタL7の各インダクタのインダクタンスの総和となる。
【0066】
スイッチ素子SWL7の入力端子は、コンパレータCML7の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL7の出力端子の一端は、インダクタL6の他端およびインダクタL7の一端に接続されている。スイッチ素子SWL7の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。インダクタL7の他端は、選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL7は、閉状態となると、インダクタL7と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWL7が閉状態となり、スイッチ素子SWL8が開状態となることにより、インダクタンス値切替回路110のインピーダンスは、インダクタL7のインダクタンスとなる。
【0067】
スイッチ素子SWL8の入力端子は、コンパレータCML8の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWL8の出力端子の一端は、インダクタL7の他端および選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWL8の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。スイッチ素子SWL8は、閉状態となると、選択回路130に基準電位を電気的に接続するように構成される。
【0068】
インダクタンス値切替回路110において、インダクタL1からインダクタL7とは、直列に接続されるように構成されている。すなわち、各スイッチ素子が閉状態となることで、直列に接続されたインダクタの和が変化する。スイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL8は、入力信号S11が0Vから高電圧に変化するに連れて、スイッチ素子SWL8からスイッチ素子SWL1の順に開状態となる。インダクタンス値切替回路110においては、比較的大きな抵抗値(例えば、10キロオーム)の接地抵抗である高抵抗素子RLを含むため、閉状態となるスイッチ素子よりも後段のインダクタを無視することができる。すなわち、スイッチ素子SWL8が閉状態となると、インダクタL1からインダクタL7のインダクタンスを無視することができる。インダクタンス値切替回路110は、各スイッチ素子の開閉状態に応じたインピーダンス状態を、ノードNLを介して選択回路130に出力する。
【0069】
[容量値切替回路]
容量値切替回路120の構成について説明する。容量値切替回路120は、スイッチ素子SWC1と、スイッチ素子SWC2と、スイッチ素子SWC3と、スイッチ素子SWC4と、スイッチ素子SWC5と、スイッチ素子SWC6と、スイッチ素子SWC7と、スイッチ素子SWC8と、キャパシタC1と、キャパシタC2と、キャパシタC3と、キャパシタC4と、キャパシタC5と、キャパシタC6と、キャパシタC7と、高抵抗素子RCと、を備える。容量値切替回路120において、ノードN25からノードN32と、選択回路130とは、電気的に接続されている。
【0070】
スイッチ素子SWC1の入力端子は、コンパレータCMC1の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC1の出力端子の一端は、ノードN25に電気的に接続されている。ノードN25は、高抵抗素子RCを介して基準電位およびノードN26からノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC1の出力端子の他端は、キャパシタC1を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC1は、閉状態となると、キャパシタC1と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC1は、開状態となると、キャパシタC1と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC1が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC1のキャパシタンスが付加される。
【0071】
スイッチ素子SWC2の入力端子は、コンパレータCMC2の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC2の出力端子の一端は、ノードN26に電気的に接続されている。ノードN26は、ノードN27からノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC2の出力端子の他端は、キャパシタC2を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC2は、閉状態となると、キャパシタC2と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC2は、開状態となると、キャパシタC2と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC2が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC2のキャパシタンスが付加される。
【0072】
スイッチ素子SWC3の入力端子は、コンパレータCMC3の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC3の出力端子の一端は、ノードN27に電気的に接続されている。ノードN27は、ノードN28からノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC3の出力端子の他端は、キャパシタC3を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC3は、閉状態となると、キャパシタC3と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC3は、開状態となると、キャパシタC3と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC3が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC3のキャパシタンスが付加される。
【0073】
スイッチ素子SWC4の入力端子は、コンパレータCMC4の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC4の出力端子の一端は、ノードN28に電気的に接続されている。ノードN28は、ノードN29からノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC4の出力端子の他端は、キャパシタC4を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC4は、閉状態となると、キャパシタC4と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC4は、開状態となると、キャパシタC4と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC4が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC4のキャパシタンスが付加される。
【0074】
スイッチ素子SWC5の入力端子は、コンパレータCMC5の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC5の出力端子の一端は、ノードN29に電気的に接続されている。ノードN29は、ノードN30からノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC5の出力端子の他端は、キャパシタC5を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC5は、閉状態となると、キャパシタC5と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC5は、開状態となると、キャパシタC5と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC5が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC5のキャパシタンスが付加される。
【0075】
スイッチ素子SWC6の入力端子は、コンパレータCMC6の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC6の出力端子の一端は、ノードN30に電気的に接続されている。ノードN30は、ノードN31およびノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC6の出力端子の他端は、キャパシタC6を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC6は、閉状態となると、キャパシタC6と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC6は、開状態となると、キャパシタC6と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC6が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC6のキャパシタンスが付加される。
【0076】
スイッチ素子SWC7の入力端子は、コンパレータCMC7の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC7の出力端子の一端は、ノードN31に電気的に接続されている。ノードN31は、ノードN32を介して選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC7の出力端子の他端は、キャパシタC7を介して基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC7は、閉状態となると、キャパシタC7と、選択回路130とを電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC7は、開状態となると、キャパシタC7と、選択回路130とを電気的に離すように構成される。すなわち、スイッチ素子SWC7が閉状態となることにより、容量値切替回路120のインピーダンスには、キャパシタC7のキャパシタンスが付加される。
【0077】
スイッチ素子SWC8の入力端子は、コンパレータCMC8の出力端子と電気的に接続されている。スイッチ素子SWC8の出力端子の一端は、ノードN32に電気的に接続されている。ノードN32は、選択回路130に電気的に接続されている。スイッチ素子SWC8の出力端子の他端は、基準電位に接続されている。スイッチ素子SWC8は、閉状態となると、選択回路130に基準電位を電気的に接続するように構成される。スイッチ素子SWC8は、開状態となると、選択回路130から電気的に離すように構成される。
【0078】
容量値切替回路120において、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC7には、それぞれ、キャパシタC1からキャパシタC7が電気的に接続されているので、各スイッチ素子が閉状態となることで、キャパシタンスの総和が変化する。スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8は、入力信号S11が0Vから高電圧に変化するに連れて、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8の順に閉状態となる。容量値切替回路120においては、比較的大きな抵抗値(例えば、10キロオーム)の接地抵抗である高抵抗素子RCを含むため、全てのスイッチ素子が開状態となるとOpenとなる。スイッチ素子SWC8が閉状態となると、キャパシタC1からキャパシタC7のキャパシタンスを無視することができる。容量値切替回路120は、各スイッチ素子の開閉状態に応じたインピーダンス状態をノードNCの接続を介して選択回路130に出力する。
【0079】
伝送回路28において、インダクタンス値切替回路110のスイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL8または容量値切替回路120のスイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8は、各々に接続されているコンパレータの出力結果に応じて、開閉制御されうる。
【0080】
[伝送回路の動作]
図7を用いて、第1実施形態に係る伝送回路の動作について説明する。
図7は、第1実施形態に係る伝送回路の動作を説明するための図である。
【0081】
図7は、実施形態に係る伝送回路28のインピーダンスによる反射係数Γの極座標(ポーラーチャート)における位置を示している。
図7には、極座標における点P1から点P16が示されている。制御回路27は、スイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL8およびスイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8を制御することで、伝送回路28のインピーダンスを点P1から点P16のいずれかの位相に位置させるように構成される。
【0082】
図7において、点P1の位相は0°である。点P2の位相は22.5°である。点P3の位相は45°である。点P4の位相は67.5°である。点P5の位相は90°である。点P6の位相は112.5°である。点P7の位相は135°である。点P8の位相は157.5°である。点P9の位相は180°である。点P10の位相は202.5°である。点P11の位相は225°である。点P12は247.5°である。点P13の位相は270°である。点P14の位相は292.5°である。点P15の位相は315°である。点P16の位相は337.5°である。
【0083】
点P1は、スイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL8が開状態であり、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8が開状態となった場合のインピーダンスを示す。この場合、伝送回路28のインピーダンスは、原理的に無限大となる。点P9は、スイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL8およびスイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8の全てのスイッチ素子が閉状態となった場合のインピーダンスを示す。この場合、伝送回路28のインピーダンスは原理的に0となる。
【0084】
図7において、実線の矢印V1および矢印V2は、入力信号S11が立上のこぎり波である場合の、インピーダンスの回転方向を示す。矢印V1および矢印V2で示すように、入力信号S11が立上のこぎり波である場合のインピーダンスの回転方向は、右回りの回転方向となる。点線の矢印V3および矢印V4は、入力信号S11が立下のこぎり波である場合のインピーダンスの回転方向を示す。矢印V3および矢印V4に示すように、入力信号S11が立下のこぎり波である場合のインピーダンスの回転方向は、左回りの回転方向となる。すなわち、入力信号S11が立上のこぎり波である場合と、立下のこぎり波である場合とでは、インピーダンスの回転方向は逆になる。
【0085】
図7に示す円領域において、上半円領域はインダクタンス値切替回路110の動作領域を示し、下半円領域は容量値切替回路120の動作領域を示す。本実施形態では、入力信号S11の電圧値の変化に応じて、インダクタンス値切替回路110と、容量値切替回路120との動作を切り替える。
【0086】
(立上のこぎり波)
入力信号S11が立上のこぎり波である場合の、伝送回路28の動作について説明する。立上のこぎり波は、入力電圧が0[V]から高電圧のX[V]まで立ち上がる信号であるものとする。
【0087】
まず、入力信号S11の電圧値が0VからX/2[V]まで立ち上がるときには、容量値切替回路120を動作させて、インピーダンスを回転させる。具体的には、駆動制御回路29は、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8を順次開状態から閉状態に切り替えることにより、キャパシタC1からキャパシタC8の容量値を順次、伝送回路28に付加する。このとき、ノードNCのインピーダンスは、
図7の下半円上の外周を、点P16、点P15、点P14、点P13、点P12、点P11、点P10、および点P9の順に矢印V1に沿って右回りで推移する。
【0088】
次に、入力信号S11の電圧値がX/2[V]からX[V]まで立ち上がるときには、インダクタンス値切替回路110を動作させて、インピーダンスを回転させる。具体的には、駆動制御回路29は、スイッチ素子SWL8からスイッチ素子SWL1を順次閉状態から開状態に切り替えることにより、インダクタL7からインダクタL1のインダクタンス値を順次、伝送回路に付加する。このとき、ノードNLのインピーダンスは、
図7の上半円上を、点P8、点P7、点P6、点P5、点P4、点P3、点P2、および点P1の順に矢印V2に沿って右回りで推移する。
【0089】
(立下のこぎり波)
入力信号S11が立下のこぎり波である場合の、伝送回路28の動作について説明する。立下のこぎり波は、高電圧の入力電圧がX[V]から0[V]まで立ち下げる信号であるものとする。
【0090】
まず、入力信号S11の電圧値がX[V]からX/2[V]まで立ち下がるときには、インダクタンス値切替回路110を動作させて、インピーダンスを回転させる。具体的には、駆動制御回路29は、スイッチ素子SWL1からスイッチ素子SWL7を順次開状態から閉状態に切り替えることにより、インダクタL1からインダクタL7のインダクタンス値を順次、伝送回路28から削除する。このとき、ノードNLのインピーダンスは、
図7の上半円上の外周を、点P2、点P3、点P4、点P5、点P6、点P7、点P8、および点P9の順に矢印V3に沿って左回りで推移する。
【0091】
次に、入力信号S11の電圧値がX/2[V]から0[V]まで立ち下がるときには、容量値切替回路120を動作させて、インピーダンスを回転させる。具体的には、駆動制御回路29は、スイッチ素子SWC8からスイッチ素子SWC1を順次閉状態から開状態に切り替えることにより、キャパシタC8からキャパシタC1の容量値を順次、伝送回路から削除する。このとき、ノードNCのインピーダンスは、
図7の下半円上を、点P10、点P11、点P12、点P13、点P14、点P15、点P16、および点P1の順に矢印V4に沿って左回りで推移する。
【0092】
[選択回路の動作]
図4を再び参照し、選択回路130の動作について説明する。
【0093】
選択回路130は、インダクタンス値切替回路110と、容量値切替回路120との出力を入力信号S11の電圧に応じて切り替える動作を実行する。選択回路130は、入力信号S11の電圧値が0[V]からX/2[V]の場合と、X/2[V]からX[V]の場合とで、容量値切替回路120とインダクタンス値切替回路110の出力を入力信号S11の電圧に応じて切り替えることでSSB信号を得ることができる。具体的には、選択回路130は、入力信号S11が立上のこぎり波である場合にはLSB信号が得られ、入力信号S11が立下のこぎり波である場合にはUSB信号が得られる。すなわち、本実施形態は、のこぎり波を反転させることで、LSB信号とUSB信号との切り替えが可能である。選択回路130は、得られた信号を出力信号S12として、
図1に示す高周波スイッチ21に出力する。
【0094】
[バックスキャッタ信号]
図8と、
図9とを用いて、第1実施形態に係るバックスキャッタ信号の一例について説明する。
図8と、
図9とは、第1実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
図8と、
図9とにおいて、横軸は周波数(GHz(ギガヘルツ))、縦軸は信号レベル(V)を示している。
【0095】
図8は、スペクトル波形W11を示す。スペクトル波形W11は、入力信号S11が
図5に示すような、立上のこぎり波である場合のスペクトル波形である。スペクトル波形W11は、キャリア信号RF1と、USB信号US1と、LSB信号LS1と、を含む。キャリア信号RF1の周波数は、1.00[GHz]である。LSB信号LS1の周波数は、0.99[GHz]である。USB信号US1の周波数は、1.01[GHz]である。
図8に示すように、USB信号US1は、LSB信号LS1に比べて抑圧されている。すなわち、
図8に示すスペクトル波形W11では、LSB信号LS1のSSBが実現されている。
【0096】
図9は、スペクトル波形W12を示す。スペクトル波形W12は、入力信号S11が
図6に示すような、立下のこぎり波である場合のスペクトル波形である。スペクトル波形W12は、キャリア信号RF2と、USB信号US2と、LSB信号LS2と、を含む。キャリア信号RF2の周波数は、1.00[GHz]である。LSB信号LS2の周波数は、0.99[GHz]である。USB信号US2の周波数は、1.01[GHz]である。
図9に示すように、LSB信号LS2は、USB信号US2に比べて抑圧されている。すなわち、
図9に示すスペクトル波形W12では、USB信号US2のSSBが実現されている。
【0097】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
【0098】
[インピーダンスの制御方法]
図10を用いて、第2実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法について説明する。
図10は、第2実施形態に係る伝送回路のインピーダンスを制御する方法を説明するための図である。制御回路27は、外部の装置に送信すべき送信データに応じた入力信号を受ける。制御回路27は、制御信号に応じて、伝送回路28のインピーダンスを制御するための制御信号を出力する。
【0099】
図10には、
図1の制御回路27の出力部に該当する駆動制御回路29Aと、伝送回路28Aの構成が示されている。駆動制御回路29Aは、インピーダンスを切り替え、反射係数Γを複素平面上で回転するように制御する伝送回路28Aの駆動制御回路である。駆動制御回路29Aと、伝送回路28Aとは、合成回路とも称され得る。
【0100】
図10に示すように、駆動制御回路29Aは、基準電源Vと、抵抗素子R1から抵抗素子Rn+1(nは自然数)と、コンパレータCMC1からコンパレータCMCnと、を備える。駆動制御回路29Aは、コンパレータCMLを含まない点で、
図4に示す駆動制御回路29と異なる。駆動制御回路29Aの構成は、コンパレータCMLを含まない点を除いて、
図4に示す駆動制御回路29と同一なので、説明を省略する。
【0101】
伝送回路28Aは、容量値切替回路120Aを含む。伝送回路28Aは、インダクタンス値切替回路110を含まない点で、
図4に示す伝送回路28と異なる。
【0102】
[共振回路]
容量値切替回路120Aの構成について説明する。容量値切替回路120Aは、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWCnと、高抵抗素子RCと、を備える。容量値切替回路120Aにおいて、ノードN1AからノードNnAと、インダクタLrの一端とは、電気的に接続されている。すなわち、容量値切替回路120Aと、インダクタLrとは、共振回路を構成している。インダクタLrの他端からは、出力信号S13が
図1に示す高周波スイッチ21に出力される。
【0103】
インダクタLrは、伝送回路28Aと、
図1に示す高周波スイッチ21との間に設けられたインダクタである。すなわち、インダクタLrは、伝送回路28Aの外部に設けてもよい。インダクタの使用数が削減されるため、伝送回路28Aは、例えば、集積回路化する際などに、
図4に示す伝送回路28と比べて、集積回路化に有利な構成となる。
【0104】
駆動制御回路29Aは、伝送回路28Aのインピーダンスを選択制御することができる。駆動制御回路29Aは、伝送回路28Aが備える複数のキャパシタをインダクタLrに選択的に接続させることにより、伝送回路28Aと、インダクタLrとの共振周波数を切り替えることができる。駆動制御回路29Aは、伝送回路28Aと、インダクタLrとの共振周波数を切り替えることで、インピーダンスが離散的に回転するように制御可能に構成される。
【0105】
なお、
図10に示す例では、伝送回路28Aは、複数のキャパシタを含むものとして説明したが、本開示はこれに限定されない。伝送回路28Aは、例えば、複数のインダクタを含むものであってもよい。この場合、伝送回路28Aには、インダクタLrに代えて、キャパシタを接続するように構成すればよい。
【0106】
[伝送回路の動作]
図11を用いて、第2実施形態に係る伝送回路の動作について説明する。
図11は、第2実施形態に係る伝送回路の動作を説明するための図である。
【0107】
図11は、第2実施形態に係る伝送回路28Aのインピーダンスによる反射係数Γの極座標(ポーラーチャート)における位置を示している。
図11には、極座標における点P1から点P16が示されている。
【0108】
(立上のこぎり波)
入力信号S11が立上のこぎり波である場合の、伝送回路28Aの動作について説明する。
【0109】
まず、入力信号S11の電圧値が0[V]からX/2[V]まで立ち上がるときには、駆動制御回路29Aは、伝送回路28Aが備える複数のキャパシタの容量値を伝送回路28Aに順次付加するように、スイッチ素子SWC1からスイッチ素子SWC8(16点なので、n=16)を制御する。このとき、インピーダンスは、
図11の上半円上の外周を、点P1、点P16、点P15、点P14、点P13、点P12、点P11、および点P9の順に矢印V11に沿って右回りで推移する。
【0110】
次に、入力信号S11の電圧値がX/2[V]からX[V]まで立ち上がるときには、駆動制御回路29Aは、スイッチ素子SWC9からスイッチ素子SWC16を制御して、伝送回路28Aに付加された複数キャパシタの容量値を更に付加するように、スイッチ素子SWC9からスイッチ素子SWC16を制御する。このとき、インピーダンスは、
図11の上半円上を、点P8、点P7、点P6、点P5、点P4、点P3、点P2、および点P1の順に矢印V12に沿って右回りで推移する。
【0111】
(立下のこぎり波)
入力信号S11が立下のこぎり波である場合の、伝送回路28Aの動作について説明する。立上のこぎり波は、高電圧の入力電圧がX[V]から0[V]まで立ち下げる信号であるものとする。
【0112】
まず、入力信号S11の電圧値がX[V]からX/2[V]まで立ち下がるときには、駆動制御回路29Aは、スイッチ素子SWC16からスイッチ素子SWC9を制御して、伝送回路28Aに付加された複数キャパシタの容量値を順次削除するように、スイッチ素子SWC16からスイッチ素子SWC9を制御する。このとき、インピーダンスは、
図11の上半円上を、点P2、点P3、点P4、点P5、点P6、点P7、点P8、および点P9の順に矢印V13に沿って左回りで推移する。
【0113】
次に、入力信号S11の電圧値がX/2[V]から0[V]まで立ち下がるときには、駆動制御回路29Aは、伝送回路28Aが備える複数のキャパシタの容量値を伝送回路28Aに順次削除するように、スイッチ素子SWC8からスイッチ素子SWC1を制御する。このとき、インピーダンスは、
図11の下半円上の外周を、点P10、点P11、点P12、点P13、点P14、点P15、点P16、および点P1の順に矢印V14に沿って左回りで推移する。
【0114】
[バックスキャッタ信号]
図12と、
図13とを用いて、第2実施形態に係るバックスキャッタ信号の一例について説明する。
図12と、
図13とは、第2実施形態に係るバックスキャッタ信号のスペクトル波形の一例を示す図である。
図12と、
図13とにおいて、横軸は周波数(GHz)、縦軸は信号レベル(V)を示している。
【0115】
図12は、スペクトル波形W13を示す。スペクトル波形W13は、入力信号S11が
図5に示すような、立上のこぎり波である場合のスペクトル波形である。スペクトル波形W13は、キャリア信号RF3と、USB信号US3と、LSB信号LS3と、を含む。キャリア信号RF3の周波数は、1.00[GHz]である。LSB信号LS3の周波数は、0.99[GHz]である。USB信号US3の周波数は、1.01[GHz]である。
図12に示すように、USB信号US3は、LSB信号LS3に比べて抑圧されている。すなわち、
図12に示すスペクトル波形W13では、LSB信号LS3のSSBが実現されている。
【0116】
図13は、スペクトル波形W14を示す。スペクトル波形W14は、入力信号S11が
図6に示すような、立下のこぎり波である場合のスペクトル波形である。スペクトル波形W14は、キャリア信号RF4と、USB信号US4と、LSB信号LS4と、を含む。キャリア信号RF4の周波数は、1.00[GHz]である。LSB信号LS4の周波数は、0.99[GHz]である。USB信号US4の周波数は、1.01[GHz]である。
図13に示すように、LSB信号LS4は、USB信号US4に比べて抑圧されている。すなわち、
図13に示すスペクトル波形W14では、USB信号US4のSSBが実現されている。
【0117】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0118】
1 無線通信装置
10 アンテナ
11 BPF
20 RFBSデバイス
21 高周波スイッチ
22 アンプ
23 復調部
24 発振部
25,26 LPF
27 制御回路
28 伝送回路
29 駆動制御回路
30 制御装置
40 センサ
110 インダクタンス値切替回路
120 容量値切替回路
SWL1からSWL8,SWC1からSWC8 スイッチ素子
CML1からCML8,CMC1からCMC8 コンパレータ