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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 5/16 20060101AFI20250424BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20250424BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20250424BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250424BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20250424BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
C08L5/16
C09K3/00 104
C08K5/13
A61K8/73
A61Q17/04
A61K8/365
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021053233
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150572
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(72)【発明者】
【氏名】菊地 徹
(72)【発明者】
【氏名】山口 信哉
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-057856(JP,A)
【文献】特開平05-105619(JP,A)
【文献】特開平06-199733(JP,A)
【文献】特開平07-207063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09K 3/00- 3/32
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABS値が波長375nmから波長351nmにおいては0.04以上、波長350nmから波長301nmにおいては0.30以上、波長300nmから波長250nmにおいては0.25以上であることを全て満たすエポキシ化合物架橋水不溶性シクロデキストリンポリマーとフェルラ酸からなる紫外線吸収剤。
ABS値:フェルラ酸の含有量が9.46±0.94mg/mLになるようにエポキシ化合物架橋水不溶性シクロデキストリンポリマー-フェルラ酸複合材をアルギン酸水溶液、又は流動パラフィンに混合した液を塗布した光路長20μmの石英製セルを、紫外/可視/近赤外分光光度計に付けた積分球の拡散透過測定用試料固定部にセットし、波長400nmの吸光度をゼロにして測定した時の波長250nmから波長375nmの波長毎の吸光度の値。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長250~375nmの紫外線範囲におけるフェルラ酸を使用する紫外線吸収技術に係り、波長250~375nmの紫外線波長範囲全般において紫外線吸収能が高く、フェルラ酸が不溶または難溶解性の水溶液、液状のパラフィン系、オレフィン系炭化水素に容易に分散する紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、気象庁の区分では、波長315~400nmのUV-A、波長280~315nmのUV-B、波長100~280nmのUV-Cに分けられている。UV-Aは、皮膚の老化を早め、しわやたるみの原因、UV-Bは、シミや皮膚がん、白内障、免疫低下の原因であり、UV-Cは、紫外線3区分の中で生物、物質に対し最も有害である。日常、私たちは、太陽からの日射に由来する紫外線として、UV-A、UV-Bを浴びている。太陽からの日射由来のUV-Cは、成層圏、オゾン層、酸素によりほとんど全てが吸収され、地上に届くことが無く、私たちが浴びることは無いと言われているが、オゾン層の破壊によるUV-Cの吸収の低下による地上への到達が危惧されており、また、バクテリアやウィルスを不活性化するために波長254nm付近の紫外線を照射する装置が市販され、私たちの周りで使用されている。
【0003】
フェルラ酸は、米、小麦、ライ麦、大麦、リンゴなどの植物に含まれている物質で、抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用があり、また紫外線吸収作用もあるため、化粧品のポジティブリストに登録されており、日射由来等の紫外線の皮膚への到達を防ぐための日焼け止めクリ-ムなどの化粧料に使用されている。
【0004】
フェルラ酸が添加された化粧料は、UV-Bの波長域の吸収能は高いが、UV-A波長域では315から375nmになるに従い、UV-C波長域では280から255nmになるに従い各波長の紫外線の吸収能が著しく低下し、また、フェルラ酸が不溶または難溶解性の水溶液や油性物質等においては、フェルラ酸が水溶液や油性物質等に分散せず、紫外線の吸収が少なくなる問題がある。
【0005】
特許文献1、特許文献2に、フェルラ酸を化粧料等に用いるための材料として、環状のオリゴ糖であるシクロデキストリンにフェルラ酸を包接させた包接化合物(以下、「CyD-FA包接化合物」という。)が開示されている。また、特許文献3には、水不溶性のシクロデキストリンの高分子体とγ-オリザノ-ルとの包接化合物を有効成分とする化粧料が例示されている。
【0006】
特許文献1、特許文献2で開示されているCyD-FA包接化合物は、「UV-A波長域では315から375nmになるに従い、UV-C波長域では280から255nmになるに従い各波長の紫外線の吸収能が著しく低下する問題」も、「フェルラ酸を水溶液や油性物質等に添加した材料の紫外線の吸収少なくなる問題」についても、開示も示唆もしておらず、当該問題を解決してもいない。また、特許文献3は、スクラブ剤として水不溶性シクロデキストリンポリマ-が添加された油性成分を含有する化粧料を開示したものであり、油性成分の一つの例としてフェルラ酸を化学構造の一部に有するγ-オリザノ-ルを例示しているもので、「UV-A波長域では315から375nmになるに従い、UV-C波長域では280から255nmになるに従い各波長の紫外線の吸収能が著しく低下する問題」も、「フェルラ酸を水溶液や油性物質等に添加した材料の紫外線の吸収少なくなる問題」についても、開示も示唆もしておらず、当該問題を解決してもいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特願平5-47公報
【文献】特願2001-237836公報
【文献】特願平3-42647公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、紫外線の波長域250~375nmにおいて優れた紫外線吸収能を有し、かつフェルラ酸が不溶または難溶解性の水溶液や油性物質等への添加においても波長250~375nmの紫外線に対し優れた紫外線吸収能を示す紫外線吸収剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水不溶性のシクロデキストリンポリマ-にフェルラ酸を接触させ、水不溶性シクロデキストリンポリマーとフェルラ酸の複合剤にすることにより、波長250~375nmの紫外線に対し高い紫外線吸収能を有するという知見を見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は以下のとおりである。
【0010】
(1) 水不溶性シクロデキストリンポリマーとフェルラ酸からなる紫外線吸収剤。
(2) 水不溶性シクロデキストリンポリマーが分散する水に、フェルラ酸が溶解し、かつ水と相溶性である溶媒に溶解したフェルラ酸を加えることにより水不溶性シクロデキストリンポリマーにフェルラ酸を接触させ、次に水不溶性シクロデキストリンポリマーを溶液から分離することにより得られる、紫外線吸収剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線吸収剤およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、容易に入手可能なシクロデキストリンとエポキシ系化合物等の架橋剤を用いて製造した水不溶性シクロデキストリンポリマーに、化粧料の原料等として販売されているフェルラ酸を吸着させることにより、波長250~375nm内の紫外線の吸収能を増強することができ、かつフェルラ酸が溶解しない水溶液や油性物質等への添加においても波長250~375nmの紫外線に対し優れた紫外線吸収能を発現させることができる。
【0012】
なお、本発明のエポキシ系化合物とは、分子内骨格にエポキシ環を有する有機化合物のことであり、例えば、エピクロロヒドリン、エチレングリコ-ルジグリシジルエ-テル、ブタンジオ-ルジグリシジルエ-テルなどがある。
【0013】
なおまた、本発明における吸着は、フェルラ酸分子もしくはフェルラ酸の分子内構造の一部が、水不溶性エポキシ系化合物架橋シクロデキストリン高分子を構成するシクロデキストリンが有する分子内部空間に包接される、シクロデキストリンに囲まれた空間に入る、水不溶性エポキシ系化合物シクロデキストリン高分子の表面に水素結合、ファンデルワ-ルス力等で固定化される、いずれかの状態を言う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】W-β-F-A混合溶液、W-β-F-H-A混合溶液、フェルラ酸混合溶液の紫外線吸光スペクトルである。(実施例1)
図2】W-β-F-A混合溶液の顕微鏡画像である。(実施例1)
図3】フェルラ酸混合溶液の顕微鏡画像である。(実施例1)
図4】W-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルである。(実施例2)
図5】W-β-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液、フェルラ酸混合溶液の紫外線吸光スペクトルである。(実施例3)
図6】D-3種-F-A混合溶液、W-β-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルである。(実施例4)
図7】D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液、フェルラ酸-P液混合溶液の紫外線吸光スペクトルである。(実施例5)
図8】D-β-F-P液の顕微鏡画像である。(実施例5)
図9】フェルラ酸-P液混合溶液の顕微鏡画像である。(実施例5)
図10】W-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液、フェルラ酸混合溶液の補正後の値と波長の曲線の図である。(実施例6)
図11】W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液、フェルラ酸混合溶液の補正後の値と波長の曲線の図である。(実施例6)
図12】D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液、フェルラ酸混合溶液の補正後の値と波長の曲線の図である。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の紫外線吸収剤に用いる水不溶性シクロデキストリンポリマー(以下、「CDP」という。)は、例えば、適当な粒径になるようにシクロデキストリンをエポキシ系化合物などで架橋反応させて製造すること、塊状になるようにシクロデキストリンをエポキシ系化合物などで架橋反応させ、そのままの湿潤状態もしくは乾燥処理を行った後の乾燥状態で、適当な粒径まで粉砕を行い製造することのいずれかの方法による製造物を使用することができる。また、CDPにフェルラ酸を吸着する操作で使用するCDPは、湿潤状態、乾燥状態のどちらでもよく、CDPにフェルラ酸を吸着する操作後のフェルラ酸吸着CDPは、そのままの湿潤状態でもよく、乾燥処理により乾燥状態にしてもよい。
【0016】
フェルラ酸吸着CDPを構成するCDPは、α-シクロデキストリンをエポキシ系化合物等で架橋した水不溶性高分子(以下、「α-CDP」という。)、β-シクロデキストリンをエポキシ系化合物等で架橋した水不溶性高分子(以下、「β-CDP」という。)、γ-シクロデキストリンをエポキシ系化合物等で架橋した水不溶性高分子(以下、「γ-CDP」という。)のいずれかの1つのものでもよく、α-CDP、β-CDP、γ-CDPのうち2つ、もしくは3つを任意の割合で混合したものでもよい。また、フェルラ酸吸着CDPを構成するCDPとして、α-、β-、γ-シクロデキストリンのうちの2種類または3種類のシクロデキストリンを混ぜたシクロデキストリンをエポキシ系化合物等で架橋した水不溶性高分子を用いることもできる。
【0017】
2種以上のCDPで構成されるフェルラ酸吸着CDPは、2種以上のCDPを混合した後にフェルラ酸を吸着してもよいし、各フェルラ酸吸着CDPを混合してもよい。
【0018】
乾燥処理工程は、空気が存在する雰囲気、ロ-タリ-ポンプ等のポンプで気体を吸引した真空雰囲気、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、二酸化炭素雰囲気のいずれの雰囲気で行ってもよい。
【実施例
【0019】
次に、本発明の実施例を説明する。以下に示す調製例は、本発明の技術的思想を具体化するための紫外線吸収剤、紫外線吸収剤に用いる水不溶性シクロデキストリンポリマーの調製方法を例示するものであって、本発明の技術的思想を下記のものに特定するものではない。また、以下に示す実施例1~実施例6では、本発明の技術的思想を具体化するために、分散媒として特定の水溶液、有機化合物を用いてフェルラ酸を吸着した水不溶性シクロデキストリンポリマーの紫外線吸光挙動について例示的に説明するが、本発明の紫外線吸収剤であるフェルラ酸を吸着した水不溶性シクロデキストリンポリマーの分散媒は、分散処理時に液体状であればよく、下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。以下において、水不溶性シクロデキストリンポリマーを、シクロデキストリンポリマ-とも称する。
【0020】
本発明の実施例では、築野ライスファインケミカルズ(株)社製のフェルラ酸を使用した。
【0021】
なお、実施例に係る各種の試験、値の算出は、次の方法で行った。
【0022】
(水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量の算出)
水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量(以下、「CDP-F量」という。)[mg/g―DRY]は、紫外可視近赤外分光光度計(V-770、日本分光)にて、水不溶性シクロデキストリンポリマ-と水とフェルラ酸のエタノ-ル溶液が入った溶液の遠心分離後の上清の波長315nmの吸光度を測定し、予め標準物質を用いて作成した波長315nmの吸光度とフェルラ酸濃度との検量線式に、得られた上清の波長315nmの吸光度を代入し、上清のフェルラ酸濃度C1[mg/mL]を求め、C1を式1に代入して算出した。なお、Vは、特に記載しない限り、使用した水とフェルラ酸のエタノ-ル溶液の総量の20mLである。
【0023】
(式1)
CDP-F量=(59.83-C1×V)/0.75 ・・・式1
【0024】
(紫外線吸光スペクトルの測定)
紫外線吸光スペクトルは、フェルラ酸吸着水不溶性シクロデキストリンポリマ-含有試料を塗布した後、カバ-した石英製の光路長20μmのセル(Type20/O/Q/0.02、スタ-ナ社)を、紫外/可視/近赤外分光光度計(V-770、日本分光社)に付けた積分球(ISN-923、日本分光社)の拡散透過測定用の試料固定部にセットし、測定波長範囲400~200nm、測定波長間隔1nmにて、測定波長を長波長から短波長に変えながら測定し、得た。なお、測定前に、400nmにおいて吸光度をゼロにする操作を行った。
【0025】
吸光度は、入射光の強度をI0、透過後の光の強度をIのとき、式2で計算される値である。
【0026】
(式2)
吸光度=-log10(I0/I) ・・・式2
【0027】
(顕微鏡画像の取得)
顕微鏡画像は、紫外線吸光スペクトルの測定時に用いた石英製の光路長20μmのセルに入れた状態の試料を、デジタルマイクロスコ-プ(HRX-01、ハイロックス社)を用いて観察し、画像の取得を行った。
【0028】
(含水率)
含水率は、含水率分析用の分析試料M[g]を、1ヘクトパスカル以下、50℃で12時間加熱処理した重量がM1[g]の時、式3に代入し算出した値である。
【0029】
(式3)
含水率[質量%]=((M-M1)/M1)×100・・・式3
【0030】
(体積モ-メント平均径)
体積モ-メント平均径は、水不溶性シクロデキストリンポリマ-を、分散媒に水を用いてレ-ザ回折式粒度分布測定装置(マスタ-サイザ-3000、マルバ-ン社)で測定し、本装置附属のソフトウェアで解析した値である。
【0031】
<粒状β-シクロデキストリンポリマ-の調製>
水酸化ナトリウム水溶液(NaOH200.0g/HO500.0g)にβ-シクロデキストリン150.0gを溶解した後、非晶質ケイ酸150.0gを加え、溶解した溶液を入れた3ッ口のセパラブルカバ-を付けた1L丸底セパラブルフラスコ(以下、「セパラブルフラスコ」という。)を、-5℃の冷却液中に入れ、セパラブルフラスコ内の溶液を幅90mmのフッ素樹脂製ラウンド型攪拌羽根付きの攪拌棒にて、回転数200rpmでの撹拌を行った。次に、セパラブルフラスコ内の溶液を0℃まで冷却した後、セパラブルフラスコ内にエピクロロヒドリン114.0gを入れ、-5℃の冷却液に入れた状態でセパラブルフラスコ内の溶液の冷却、回転数200rpmでの撹拌棒による撹拌を、240時間継続して行った。セパラブルフラスコの溶液を水2000gが入った3Lガラス製ビ-カ-に入れ、白色固体が水全体に分散するまでガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を行った。さらに、白色固体が入った3Lガラス製ビ-カ-に水2000gを入れ、ガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を、上清の水溶液のpHが中性になるまで行い、含水率70.6%、体積モ-メント平均径13.2μmの湿潤状態の白色の粒状β-シクロデキストリンポリマ-(以下、「W-β-CDP」という。)を得た。
【0032】
<粒状α-シクロデキストリンポリマ-の調製>
粒状β-シクロデキストリンポリマ-の調製と同様に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH200.0g/HO500.0g)にα-シクロデキストリン128.7gを溶解した後、非晶質ケイ酸150.0gを加え、溶解した溶液を入れたセパラブルフラスコを、-5℃の冷却液中に入れ、セパラブルフラスコ内の溶液を幅90mmのフッ素樹脂製ラウンド型攪拌羽根付きの攪拌棒にて、回転数200rpmでの撹拌を行った。次に、セパラブルフラスコ内の溶液を0℃まで冷却した後、セパラブルフラスコ内にエピクロロヒドリン114.0gを入れ、-5℃の冷却液に入れた状態でセパラブルフラスコ内の溶液の冷却、回転数200rpmでの撹拌棒による撹拌を、240時間継続して行った。セパラブルフラスコ内の溶液を水2000gが入った3Lガラス製ビ-カ-に入れ、白色固体が水全体に分散するまでガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を行った。さらに、白色固体が入った3Lガラス製ビ-カ-に水2000gを入れ、ガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を、上清の水溶液のpHが中性になるまで行い、含水率70.1%、体積モ-メント平均径9.0μmの湿潤状態の白色の粒状α-シクロデキストリンポリマ-(以下、「W-α-CDP」という。)を得た。
【0033】
<粒状γ-シクロデキストリンポリマ-の調製>
粒状β-シクロデキストリンポリマ-の調製と同様に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH200.0g/HO500.0g)にγ-シクロデキストリン171.5gを溶解した後、非晶質ケイ酸150.0gを加え、溶解した溶液を入れたセパラブルフラスコを、-5℃の冷却液中に入れ、セパラブルフラスコ内の溶液を幅90mmのフッ素樹脂製ラウンド型攪拌羽根付きの攪拌棒にて、回転数200rpmでの撹拌を行った。次に、セパラブルフラスコ内の溶液を0℃まで冷却した後、セパラブルフラスコ内にエピクロロヒドリン114.0gを入れ、-5℃の冷却液に入れた状態でセパラブルフラスコ内の溶液の冷却、回転数200rpmでの撹拌棒による撹拌を、240時間継続して行った。セパラブルフラスコ内の溶液を水2000gが入った3Lガラス製ビ-カ-に入れ、白色固体が水全体に分散するまでガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を行った。さらに、白色固体が入った3Lガラス製ビ-カ-に水2000gを入れ、ガラス棒で撹拌し、静置して白色固体を沈殿させた後、上清の水溶液を除く操作を、上清の水溶液のpHが中性になるまで行い、含水率79.6%、体積モ-メント平均径9.0μmの湿潤状態の白色の粒状γ-シクロデキストリンポリマ-(以下、「W-γ-CDP」という。)を得た。
【0034】
<微粉砕β-シクロデキストリンポリマ-の調製>
水酸化ナトリウム水溶液(NaOH63.0g/HO150.0g)にβ-シクロデキストリン150.0gを溶解した溶液を入れたセパラブルフラスコを、60℃の恒温液中に入れ、セパラブルフラスコ内の溶液を幅90mmのフッ素樹脂製ラウンド型攪拌羽根付きの攪拌棒にて、回転数200rpmでの撹拌を行った。次に、セパラブルフラスコ内の溶液を60℃まで冷却した後、セパラブルフラスコ内にエピクロロヒドリン114.0gを入れ、60℃の恒温液に入れた状態で、回転数200rpmでの撹拌棒による撹拌を、2時間継続して行い、析出物をろ過し、さらに洗浄液が中性になるまでろ過洗浄を行った後、アルミナ製乳鉢で粗粉砕を行った。粗粉砕析出物を、水中で、ホモジナイザ-(PT10-35にPTA10Sをセット、KINEMATICA社)を用いて粉砕を行った後、10分間静置し、上清を遠心分離用の500mLプラスチックボトルに入れ、高速冷却遠心機(CR22GIII型、日立工機社製)を用いて、24℃下12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、沈殿した白色固形物を集め、含水率73.4%、体積モ-メント平均径18.9μmの湿潤状態の白色の微粉砕β-シクロデキストリンポリマ-(以下、「W-β-CDP-C」という。)を得た。
【0035】
< 水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤の調製>
遠心分離用の蓋つき40mL容器に、水19mLと水不溶性シクロデキストリンポリマ-を乾燥物換算で0.75gを入れ、続いてエタノ- ル50mL中にフェルラ酸を2.992g含むエタノ- ル溶液1mLを入れて振とう撹拌した後、蓋をして室温下12時間静置した。次に高速冷却遠心機(CR22GIII型、日立工機社製)を用いて、24℃下15000rpm、20分間の条件で遠心分離を行い、沈殿した白色固形物を集め、水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤を得た。表に、調製した水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤とその調製条件、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量、含水を示した。
【0036】
【表1】
【0037】
なお、湿潤している水不溶性シクロデキストリンポリマ-を、水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤を調製する原料として使用しているが、調製した水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤と使用した水不溶性シクロデキストリンポリマ-との含水率の差がわずかであることから、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量の算出時に、水不溶性シクロデキストリンポリマ-に含まれる水による濃縮または希釈についての遠心分離後の上清の補正は行わなかった。
【0038】
<高フェルラ酸吸着β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤の調製>
遠心分離用の蓋つき40mL容器に、水17mLとW-β-CDPを乾燥物換算で0.75gを入れ、続いてエタノ-ル50mL中にフェルラ酸を2.992g含むエタノ-ル溶液3mLを入れて振とう撹拌した後、蓋をして室温下12時間静置した。次に高速冷却遠心機(CR22GIII型、日立工機社製)を用いて、24℃下、15000rpm、20分間の条件で遠心分離を行い、沈殿した白色固形物を集め、含水率70.5%、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量206.3mg/g-DRYの高フェルラ酸吸着β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤(以下、「W-β-F-H」という。)を得た。
【0039】
なお、湿潤しているβ-シクロデキストリンポリマ-を、高フェルラ酸吸着β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤を調製する原料として使用しているが、調製した高フェルラ酸吸着β―シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤と使用したW-β-CDPとの含水率の差がわずかであることから、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量算出時に、W-β-CDPに含まれる水による濃縮または希釈についての遠心分離後の上清の補正は行わなかった。
【0040】
<乾燥β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤の調製>
遠心分離用の蓋つき40mL容器に、水19mLと真空、50℃下、12時間乾燥処理を行ったW-β-CDPの乾燥物0.75gを入れ、続いてエタノ-ル50mL中にフェルラ酸を2.992g含むエタノ-ル溶液1mLを入れて振とう撹拌した後、蓋をして室温下12時間静置した。次に高速冷却遠心機(CR22GIII型、日立工機社製)を用いて、24℃下15000rpm、20分間の条件で遠心分離を行い、沈殿した白色固形物を集め、含水率70.3%、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量65.3mg/g-DRYのフェルラ酸吸着乾燥β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤(以下、「D-β-F」という。)を得た。
【0041】
また、W-β-CDPの代わりに、W-β-CDP-Cを用いて、D-β-Fの調製を同じ操作を行い、含水率73.5%、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量65.4mg/g-DRYのフェルラ酸吸着乾燥微粉砕β-シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤(以下、「D-β-C-F」という。)を得た。
【0042】
なお、D-β-F、D-β-C-Fのどちらの調製時にも、乾燥物のβ-シクロデキストリンポリマ-を原料として使用しており、調製後のD-β-Fは1.8g、D-β-C-Fは2.1gの水を含んでいたことから、D-β-F、D-β-C-Fそれぞれの水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量算出時に、D-β-F、D-β-C-Fのそれぞれに含まれている水の量を用いて遠心分離後の上清の濃縮による補正は行った。つまり、式1のVを、D-β-Fは18.2mL、D-β-C-Fは17.9mLにして、算出した。
【0043】
(水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤とアルギン酸ナトリウム水溶液の混合溶液の調製)
アルミナ製乳鉢に、水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤(以下、「CDP-フェルラ酸複合剤」という。)と水50mLにアルギン酸ナトリウム1.0gを溶かした水溶液1000μLを入れ、30秒間乳棒で撹拌を行い、CDP-フェルラ酸複合剤とアルギン酸ナトリウム水溶液の混合溶液(以下、「CDP-F-Aaq混合溶液」という。)を調製した。また、CDP-フェルラ酸複合剤の代わりにフェルラ酸を用いて、同じ操作により調製したフェルラ酸とアルギン酸ナトリウム水溶液の混合溶液(以下、「フェルラ酸混合溶液」という。)を調製した。表2に、調製した各CDP-F-Aaqとその調製条件、計算により求めたCDP-F-Aaq混合溶液1mLに含まれるフェルラ酸量(以下、「1mL_WF量」という。)を示した。なお、使用したCDP-フェルラ酸複合剤はW-β-F、W-β-F-H、D-β-F、W-β-C-F、D-β-C-F、W-α-F、W-γ-Fであり、調製したCDP-F-Aaqを順にW-β-F-A混合溶液、W-β-F-H-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液と示した。
【0044】
(表2)
【0045】
なお、1mL_WF量[mg/mL]は、使用したCDP-フェルラ酸複合剤の湿潤重量とその含水率とその水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量を、順にWw[g]とMc[%]とFc[mg/g-DRY]とし、乾燥状態のシクロデキストリンポリマ-の密度を1.3[g/mL]としたとき、式4で算出される値である。
【0046】
(式4)
1mL_WF量=((Ww×(1-Mc/100))×Fc)/(1+(Ww×(1-Mc/100))/1.3)・・・式4
【0047】
(水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤とアルギン酸ナトリウム水溶液の混合溶液の調製2)
CDP-F-Aaq混合溶液の調製と同様に、アルミナ製乳鉢に、真空、50℃下、12時間乾燥処理を行ったW-β-F、W-α-F、W-γ-Fをそれぞれ乾燥重量で51.3mg、50.7mg、54.3mgと水50mLにアルギン酸ナトリウム1.0gを溶かした水溶液1000μLを入れ、30秒間乳棒で撹拌を行い、3種のCDP-フェルラ酸複合剤とアルギン酸ナトリウム水溶液の混合溶液(以下、「D-3種-F-A混合溶液」という。)を調製した。D-3種-F-A混合溶液1mLに含まれるフェルラ酸量は、使用したW-β-F、W-α-F、W-γ-Fそれぞれの乾燥重量と水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量から計算し、9.71mg/mLである。
【0048】
(水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤と流動パラフィンの混合液の調製)
CDP-F-Aaq混合溶液の調製と同様に、アルミナ製乳鉢に、真空、50℃下、12時間乾燥処理を行ったシクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤(以下、「乾燥CDP-フェルラ酸複合剤」という。)と流動パラフィン1000μLを入れ、30秒間乳棒で撹拌を行い、乾燥CDP-フェルラ酸複合剤と流動パラフィンの混合液(以下、D-CDP-F-P液という。)を調製した。また、乾燥CDP-フェルラ酸複合剤の代わりにフェルラ酸を用いて、同じ操作により調製したフェルラ酸と流動パラフィンの混合液(以下、「フェルラ酸-P液」という。)を調製した。そしてまた、乾燥CDP-フェルラ酸複合剤の代わりW-β-F510.7mgを用いて、同じ操作により調製したW-β-Fと流動パラフィンの混合液(以下、「W-β-F-P液」という。)を調製した。W-β-F-P液の計算により求めたCDP-F-P液1mLに含まれるフェルラ酸量は、9.15[mg/mL]である。表3に、調製したD-CDP-F-P液とその調製条件、計算により求めたD-CDP-F-P液1mLに含まれるフェルラ酸量(以下、「1mL_DF量」という。)を示した。なお、使用したCDP-フェルラ酸複合剤はW-β-F、W-α-F、W-γ-Fであり、調製したD-CDP-F-P液を順にD-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液と示した。
【0049】
(表3)
【0050】
なお、1mL_DF量[mg/mL]は、乾燥CDP-フェルラ酸複合剤の乾燥重量と使用した水不溶性シクロデキストリンポリマ-の乾燥物換算1g当たりのフェルラ酸量を、順にWd[g]とFc[mg/g-DRY]とし、乾燥状態のシクロデキストリンポリマ-の密度を1.3[g/mL]としたとき、式5で計算した値である。
【0051】
(式5)
1mL_DF量=(Wd×Fc)/(1+Wd/1.3)・・・式5
【0052】
<実施例1>
調製したW-β-F-A混合溶液、W-β-F-H-A混合溶液と比較例1としてフェルラ酸混合溶液の紫外線吸光スペクトルの測定を行い、その結果を図1に示した。また、図2図3に、W-β-F-A混合溶液、フェルラ酸混合溶液の拡大倍率160倍の顕微鏡画像を示した。
【0053】
W-β-F-A混合溶液とフェルラ酸混合溶液の1mL_WF量は、W-β-F-A混合溶液の方が少ないにも関わらず、250~375nmの波長全域において、W-β-F-A混合溶液の方が高い紫外線吸収能を示した。また、同じ水不溶性シクロデキストリンポリマ-を使用し、1mL_WF量がW-β-F-H-A混合溶液の方が多い関係にあるW-β-F-A混合溶液とW-β-F-H-A混合溶液の波長250~375nmにおける吸光スペクトルは、W-β-F-H-A混合溶液の方が高い吸収能を示しており、それぞれの極大吸収波長は316nmと315nm、極小吸収波長264nmと262nmであり、極めて類似した紫外線吸光スペクトルパタ-ンを示した。マイクロスコ-プ画像より、W-β-F-A混合溶液はシクロデキストリンポリマ-の溶液全体への分散が認められ、フェルラ酸混合溶液はフェルラ酸の粒子の溶液全体への分散が認められなかった。
【0054】
<実施例2>
調製したD-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルの測定を行い、その結果を図4に示した。なお、W-β-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは、実施例1の測定デ-タである。
【0055】
微粒状β-シクロデキストリンポリマ-の湿潤物と乾燥物、微粉砕β-シクロデキストリンポリマ-の湿潤物と乾燥物を原料として調製した水不溶性シクロデキストリンポリマ--フェルラ酸複合剤で、1mL_WF量が8.52~9.15mg/mLの狭い範囲に入るW-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは、順に極大吸収波長が316nm、316nm、316nm、316nm、極小吸収波長が順に264nm、264nm、262nm、263nmを示し、そして極めて類似した紫外線吸光スペクトルパタ-ンを示した。
【0056】
<実施例3>
調製したW-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルの測定を行い、その結果を図5に示した。なお、W-β-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは実施例1の測定デ-タであり、比較例2として実施例1のフェルラ酸混合溶液の紫外線吸光スペクトルも示した。
【0057】
W-β-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液の1mL_WF量は、フェルラ酸混合溶液の1mL_WF量と同程度または少ないにも関わらず、250~375nmの波長全域において、W-β-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液の全てが、フェルラ酸混合溶液より高い紫外線吸収能を示した。また、水不溶性シクロデキストリンポリマ-の原料がβ-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンと異なったシクロデキストリンを使用し、1mL_WF量が8.98~10.4mg/mLの範囲に入るW-β-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは、順に極大吸収波長が316nm、327nm、316nm、極小吸収波長264nm、267nm、263nmであり、W-β-F-A混合溶液とW-γ-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルのパタ-ンは類似しているが、W-α-F-A混合溶液は異なる紫外線吸光スペクトルのパタ-ンを示した。
【0058】
<実施例4>
調製したD-3種-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルの測定を行い、その結果を図6に示した。なお、W-β-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは実施例1の測定デ-タ、W-α-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは実施例3の測定デ-タである。
【0059】
D-3種-F-A混合溶液に入っているW-β-F、W-α-F、W-γ-Fの総乾燥重量は156.3mg、W-β-F-A混合溶液に入っているW-β-Fの乾燥換算重量は152.6mg、W-α-F-A混合溶液に入っているW-α-Fの乾燥換算重量は152.7mg、W-α-F-A混合溶液に入っているW-α-Fの乾燥換算重量は151.7mgと同程度の乾燥重量である。D-3種-F-A混合溶液の紫外線吸光スペクトルは、W-β-F-A混合溶液、W-β-F-A混合溶液、W-β-F-A混合溶液それぞれの紫外吸光スペクトルの波長ごとの吸光度の平均値の点を結んだ曲線とほとんど同じパタ-ンを示した。
【0060】
<実施例5>
調製したD-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液と比較例3としてフェルラ酸-P液混合溶液の紫外線吸光スペクトルの測定を行い、その結果を図7に示した。また、また、図8図9に、D-β-F-P液、フェルラ酸-P液の拡大倍率160倍の顕微鏡画像を示した。
【0061】
250~375nmの波長全域において、フェルラ酸-P液は吸光度0付近の平坦な紫外線吸光スペクトルを示し、D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液全てが吸光度0.11以上の紫外線吸光スペクトルを示した。マイクロスコ-プ画像より、D-β-F-P液はシクロデキストリンポリマ-の液への分散状態が認められ、フェルラ酸―P液はフェルラ酸の粒子の液全体への分散状態が認められなかった。
【0062】
<実施例6>
実施例1~3、5のW-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液、D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液のそれぞれの波長範囲250~375nmの紫外線吸光スペクトルについて、最大吸収波長の吸光度を1として、その他の波長の吸光度の補正を行い、図10にW-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液の補正値と波長の曲線、図11にW-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液の補正値と波長の曲線、図12にD-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液の補正値と波長の曲線の図を示した。全ての図に、比較例3として、フェルラ酸混合溶液の補正値と波長との曲線を示した。
【0063】
なお、最大吸収波長の吸光度をAλmaxとし、その他の波長の吸光度をAλとすると、各波長の補正値は式6で算出される。
【0064】
(式6)
各波長の補正値=Aλ×(1/Aλmax)・・・式6
【0065】
W-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A 混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液、D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液全ての補正値と波長との曲線において、波長315 から375nmになるに従っての曲線の落ち込みと280から250nmになるに従っての曲線の落ち込みが、フェルラ酸混合溶液と比べて小さくなっていることを示した。また、W-β-F-A混合溶液、D-β-F-A混合溶液、W-β-C-F-A混合溶液、D-β-C-F-A混合溶液、W-α-F-A混合溶液、W-γ-F-A混合溶液、D-β-F-P液、D-α-F-P液、D-γ-F-P液全ての補正値と波長との曲線の極小値の値が、フェルラ酸混合溶液のそれらの値よりも大きいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、容易に入手可能なシクロデキストリンとエポキシ系化合物等の架橋剤を用いて製造した水不溶性シクロデキストリンポリマーに、化粧料の原料等として販売されているフェルラ酸を吸着させることにより、波長250~375nm内の紫外線の吸収能を増強することができ、かつフェルラ酸が溶解しない水溶液や油性物質等への添加においても波長250~375nmの紫外線に対し優れた紫外線吸収能を発現させることができる。したがって、産業上利用価値が高い発明である。
図1
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図12