(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】ディスプレイ要素用駆動装置.
(51)【国際特許分類】
G04B 19/253 20060101AFI20250424BHJP
【FI】
G04B19/253 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019232188
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー, クリスチャン
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-68240(JP,A)
【文献】特開2012-21987(JP,A)
【文献】特開2014-215299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素(10)用駆動装置(100)であって、
第1軸(A3)周りを旋回し前記ディスプレイ要素(10)の運動を駆動するよう設計されたカムであり、頂点(3b)を含むカム(3)と、
第2軸(A4)周りを旋回するレバー(4)と、
前記レバーを前記カムと接触するよう戻すよう設計された、ばね(5)と、
を含み、
角度(α)は、前記第1及び第2軸に垂直な平面内で、前記頂点(3b)と前記レバー(4)とが接触する場合の、
前記頂点(3b)と前記レバー(4)との間の接点、及び
前記第1軸(A3)
を通過する直線と、
前記第1軸(A3)及び前記第2軸(A4)を通過する直線
との間で形成され、
前記角度(α)は
、30°以上60°以下
であり、
前記装置は、駆動歯車(6)と、前記駆動歯車(6)と前記カム(3)との間に自由度を提供する連結を含むことを特徴とする、
時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素用駆動装置。
【請求項2】
前記駆動歯車(6)と前記カム(3)との間に自由度を提供する連結は、長切欠き(6a)と協働するピン(9)を有するタイプの連結を含み、前記長切欠きの一端と前記ピンが協働することにより前記駆動歯車は前記カムを運ぶことを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記角度(α)は
、35°以上、または40°以上である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記レバー(4)は、前記カム(3)と接触することが意図されるローラ(4a)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素(10)用駆動装置(100)であって、
第1軸(A3)周りを旋回し前記ディスプレイ要素(10)の運動を駆動するよう設計されたカムであり、頂点(3b)を含むカム(3)と、
第2軸(A4)周りを旋回するレバー(4)と、
前記レバーを前記カムと接触するよう戻すよう設計された、ばね(5)と、
を含み、
前記レバー(4)は、前記カム(3)と接触することが意図されるローラ(4a)を含み、
角度(α)は、前記頂点(3b)と前記レバー(4)の前記ローラ(4a)とが接触する場合の、
前記第1軸(A3)と前記第2軸(A4)とを通過する直線と、
前記ローラ(4a)の中心(A4a)と前記第1軸(A3)とを通過する直線、
の間の角度として定義され、
前記角度(α)は
、30°以上60°以下
であり、
前記装置は、駆動歯車(6)と、前記駆動歯車(6)と前記カム(3)との間に自由度を提供する連結を含むことを特徴とする、
時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素用駆動装置。
【請求項6】
前記駆動歯車(6)と前記カム(3)との間に自由度を提供する連結は、長切欠き(6a)と協働するピン(9)を有するタイプの連結を含み、前記長切欠きの一端と前記ピンが協働することにより前記駆動歯車は前記カムを運ぶことを特徴とする、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ローラ(4a)は、第3軸(A4a)周りを旋回するように、前記レバー上に取り付けられる、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記ローラ(4a)は、1mm以下の半径を有する、
請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記頂点(3b)は、0.1mmより小さい半径を有する円形表面(3b)である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記カムは、前記頂点(3b)に隣接する少なくとも1つの凹面(3a)を有する、または前記カム(3)は、前記頂点の両側に2つの凹面(3a、3c)を有する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カムは、少なくとも1つのディスプレイ要素用爪(2)を含む、及びまたは前記時刻に関連するまたは時刻から派生する数は、時計カレンダーの日付を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第2軸(A4)と前記レバー(4)の前記カム(3)との接点との間の距離は、前記カム(3)の最大半径または前記第1軸(A3)と前記頂点(30b)との間の距離の4倍以下である、または、前記カム(3)の最大半径または前記第1軸(A3)と前記頂点(30b)との間の距離の3倍以下である、または、前記カム(3)の最大半径または前記第1軸(A3)と前記頂点(30b)との間の距離の2.5倍以下である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置を含む、時計カレンダーシステムまたはモジュール(200)。
【請求項14】
ディスプレイ円板(10)を含む、ディスプレイ要素を含む、
請求項13に記載のシステムまたはモジュール。
【請求項15】
請求項13または14に記載のシステムまたはモジュール、及びまたは請求項1から12のいずれか一項に記載の装置を含む、時計ムーブメント(300)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント(300)、及びまたは請求項13または14に記載のシステムまたはモジュール、及びまたは請求項1から12のいずれか一項に記載の装置を含む、時計(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ要素用駆動装置に関する。本発明はまた、当該装置を含む、カレンダーシステムまたはモジュールに関する。本発明はまた、当該装置または当該システムまたは当該モジュールを含む、時計ムーブメントに関する。最後に、本発明は、当該装置または当該システムまたは当該モジュールまたは当該ムーブメントを含む、時計に関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば日付または時といった、時刻に関連するまたは時刻から派生する数の1つの値から、他の値にディスプレイを瞬時に変更するための駆動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、カムに固定された爪から構成される駆動部材を有する装置が知られており、当該カムは、当該部材が少なくとも1角度ステップにわたり、ディスプレイ部材の歯列を瞬時に駆動できるように、エネルギー蓄積器と協働し、当該歯列は、ジャンパにより角度的に割り出されている。エネルギー蓄積器は、通常、レバーと協働する弾性戻し手段から構成され、当該レバーは当該弾性戻し手段の効果の下、カムの側面に当接し、時刻に関連するまたは時刻から派生する数の1つの値から他の値へのディスプレイの瞬時の変更にあたり、当該弾性手段が復元するトルクの影響下で、当該ジャンパが生成するトルクを克服可能にする。
【0004】
時刻に関連するまたは時刻から派生する数の1つの値から他の値へのディスプレイの瞬時変更の時間は、例えば駆動装置に関与する、特に駆動カムを旋回させる手段と蓄積器を構成する要素に関する、要素間の摩擦係数といった複数のパラメータに依拠する。このため、瞬時変更の時間は、特に時計のフレームに対する駆動カムの速度に依拠して変化する。
【0005】
このため、カレンダー機構の場合、日付の瞬時変更の時間は、カレンダー機構が搭載されたムーブメントの様々な歯車列の速度に依拠して変化可能である。従来の時刻表示モードでは、駆動カムの速度は、当該カムを駆動するムーブメントの時方輪列の速度により明確に定義される。しかしながら、時刻調整モードにおいては、例えば、駆動カムの速度は、同様に当該カムを駆動する時刻設定歯車列の速度により可変である。このため、日付の瞬時変更の時間は、ムーブメントの動作モードに依拠してわずかに変化することができる。このため、日付のジャンプは、時計が、特に時及び分針が、正確に真夜中を示していないときに、実行されることがある。同様に、ジャンピングアワーを有する時計の場合、時表示のジャンプは、時計が、特に分針が、ちょうど0分を示していないときに、実行されることがある。
【0006】
これは、実務上、例えば日付ジャンプを始動させるカムプロファイル頂点の位置を明確に定義することは細心の注意を要するためである。また実務上、頂点は、カムの製造方法、特に仕上げ方法が原因で、点または縁よりむしろ平面に、特に曲面に近い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第1746470号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2015146号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術から既知の装置を改善可能にする、ディスプレイ要素用駆動装置を提供することである。特に本発明は、その動作が信頼性と正確性に関して最適化された、ディスプレイ要素用駆動装置を提案する。特に本発明は、時計の通常動作モードと修正モードとの間で区別なくまたは実質的に区別なく、他のディスプレイ要素の規定のかつ所定の位置への表示のジャンプを始動させることが可能なディスプレイ要素用駆動装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本発明にかかる駆動装置は請求項1で定義される。
【0010】
装置の様々な実施形態は請求項2から12で定義される。
【0011】
本発明によれば、本発明にかかる時計カレンダーシステムまたはモジュールは請求項13で定義される。
【0012】
時計カレンダーシステムまたはモジュールの実施形態は請求項14で定義される。
【0013】
本発明によれば、本発明にかかる時計ムーブメントは請求項15で定義される。
【0014】
本発明によれば、本発明にかかる時計は請求項16で定義される。
【0015】
添付の図面は、本発明にかかる時計の実施形態を例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、日付ジャンプ直前の、時計の第1実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は、日付ジャンプ直前の、カレンダーディスプレイ要素用駆動装置のレバー及びカムの第1例の詳細図である。
【
図3】
図3は、カレンダーディスプレイ要素用駆動装置のカムの例の詳細図である。
【
図4】
図4は、日付ジャンプ直後の、時計の第1実施形態の模式図である。
【
図5】
図5は日付ジャンプ中の一時的構成の、カレンダーディスプレイ要素用駆動装置のレバーとカムの第1例の詳細図である。
【
図6】
図6は、カレンダーディスプレイ要素用駆動装置のカムのプロファイルを最適化する原則を示すグラフである。
【
図7】
図7は、日付ジャンプ直前の、時計の第2実施形態の模式図である。
【
図8】
図8は、日付ジャンプ中の一時的構成の、カレンダーディスプレイ要素用駆動装置のレバーとカムの第2例の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から5を参照して、時計400の第1実施形態を以下に説明する。時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、時計ムーブメント300を含む。時計ムーブメントは、機械式ムーブメント、特に自動式ムーブメントであってもよい。時計ムーブメントは代替的に電子式であってもよい。
【0018】
ムーブメントは、時計カレンダーシステム200または時計カレンダーモジュール200を含んでもよい。
【0019】
ムーブメント300または時計カレンダーシステム200または時計カレンダーモジュール200は、時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素10用駆動装置100を含む。
【0020】
時計、時計ムーブメント、時計カレンダーシステム200または時計カレンダーモジュール200は、時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素10を含む。
【0021】
時刻に関連するまたは時刻から派生する数は、年表示、月表示、曜日表示、日表示、時表示、分表示を含んでもよく、または特にそれら表示であってもよい。
【0022】
ディスプレイ要素は、数字およびまたはアルファベット及びまたは英数字表示が付された円板、特に開口と協働する円板であってもよくまたはそれを含んでもよい。代替的に、ディスプレイ要素は、針、特に目盛り環と協働する針といったインジケータであってもよい。ディスプレイ要素は、好ましくは、時計の、時計ムーブメントの、時計カレンダーシステム200の、または時計カレンダーモジュール200のフレーム上を旋回する。
【0023】
時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素10用駆動装置100は、
- 第1軸A3周りを旋回しディスプレイ要素10の運動を駆動するよう設計されたカムであり、頂点3bを含むカム3と、
- 第2軸A4周りを旋回するレバー4と、
- レバー4をカム3と接触するよう戻すよう設計された、ばね5と、
を含む。
【0024】
カム3は、好ましくは、時計の、時計ムーブメントの、時計カレンダーシステム200の、または時計カレンダーモジュール200のフレーム上を旋回する。
【0025】
レバー4は、好ましくは、時計の、時計ムーブメントの、時計カレンダーシステム200の、または時計カレンダーモジュール200のフレーム上を旋回する。
【0026】
駆動装置100は、好ましくはばねといったエネルギー蓄積器5と、レバー4を介してエネルギー蓄積器5と協働するカム3に固定された駆動部材または爪2が設けられた駆動可動部1とを含み、駆動爪2はディスプレイ要素10を、特にディスプレイ要素10の歯列10aを、角度ステップで瞬時に駆動(または1秒の何分の1で駆動)可能なようにされ、当該歯列は、ジャンパ20のくちばし20aにより角度的に割り出される。
【0027】
駆動可動部1はまた、基本ムーブメントの時方輪列7に接続され、ムーブメントの従来の動作中に24時間で1回の完全な回転を実行する、歯車6を含む。当該歯車6はまた、修正または時刻設定動作中は、予め定義されず、装着者の調整習慣に依存する速度で当該歯車6を駆動可能な、修正列または時刻設定歯車列8に接続される。歯車6は、長切欠き6aを含み、長切欠きの端部の1つは、カムに固定されたピン9を介してカム3と駆動爪2とを駆動することが意図される。このため、一方ではカム3と爪2は、他方では歯車6は、異なる回転速度で駆動されることが可能である。
【0028】
エネルギー蓄積器は、例えば、レバー4と協働するばね5を含む。レバー4は、ローラ4a、特にレバー上で軸A4a周りで旋回されるローラ4aを含む。軸A4aとA3は、好ましくは平行である。レバーは、ローラ4aがカムの側面またはプロファイルに対して押圧されるように設計される。カム3へのレバー4の作用は、カム3と爪2とを回転駆動可能にし、当該爪2は次にディスプレイ要素10を駆動する。ばね5によりもたらされるレバー4の当該作用は、ディスプレイ要素10の駆動中に、ジャンパ20が生成するトルクを克服可能にする。
【0029】
例えば、長切欠き6aの一端と協働するピン9を介して、歯車6はカム3を運び、爪がディスプレイ要素10の瞬時ジャンプを引き起こすためにディスプレイ要素10に短時間の作用を及ぼすように、爪2の突然の変位に必要なエネルギーを蓄積する。必要なエネルギーは、ばね5を、カム3のプロファイルの第1部分3aとレバー4を介して装着することで蓄積される。ディスプレイ要素10の位置の変化直前に、すなわちディスプレイ要素が表示する情報を変更するためのディスプレイ要素のジャンプの直前に、レバー4はカム3のプロファイルの頂点3bと、すなわちカム3の回転の軸A3から最も遠いカムの点である点30bを含む部分3aの一端の区域3bと接触する。当該区域3bは、例えば、カム3の回転の軸A3から最も遠い点30bを含む、曲面または円形部分3bの形状であってもよい。代替的に、当該区域3bは、カム3の回転の軸A3から最も遠い点30bまで減少されてもよい。カム3、爪2、及びディスプレイ要素10の運動は、ばね5が蓄積したエネルギーを復元すると、1秒の何分の1で行われる。このエネルギーにより、カム3のプロファイルの第2部分3cと協働するためにローラ4aが区域3bを通過すると、レバー4とそのローラ4aとを介して、カム3と爪2へ、突然の回転運動を伝えることが可能となる。
【0030】
一方では爪2とカム3との間の、他方では歯車6との間の相対運動は、切欠6aが提供する自由度により可能になる。代替的に、当該自由度は、一方では爪2とカム3との間に、他方では歯車6との間に配置される、「フリーホイール」タイプの解決策により提供されてもよい。
【0031】
ディスプレイのジャンプが実施されると、爪2は好ましくはレバー4により歯列10a内に位置されて保持され、ローラ4aは、(
図3及び4に示すように)凹部の形状を取るカム3の輪郭の第3部分3dに押圧される。このように位置された爪2は、ディスプレイ要素10が制動されることを許容し、ディスプレイのダブルジャンプのあらゆる危険性を回避する。
【0032】
このため、区域3bは、(
図2及び3に示すように)カム3の部分3aと3cとの間の移行区域を構成する。
【0033】
カムとのレバーの接点が区域3bを超える前は、カム3は、歯車6を介して、歯車列7、8の一方または他方の影響下で、レバー4とばね5に対して駆動される。区域3bを超えると、カムは、ばね5とレバー4が復元する力の影響下で駆動される。換言すると、区域3bは、レバーからカム3に対して与えられるトルクの正負が変更してゼロを通過する移行区域を構成する。
【0034】
当該駆動装置内で関与する部品同士の摩擦による変動に対する駆動装置の感度を最小化するため、そして日付の瞬間的変更の時間を最大限明白に且つ再現可能に定義するため、発明者による研究によって、カムの回転の所定の角度範囲において、レバーからカム3に対して与えられるトルクの変動を最大限にすることが望ましいことが発見された。
【0035】
換言すれば、カムの回転dC3/dγに対して、レバーからカムに対して与えられるトルクの導関数を最大化することが望ましく、ここで、
C3は、レバーからカムに与えられるトルク、またはカム3のトルク、
γは、第1軸A3周りのカム3の回転角度である。
【0036】
この目的のため、カム3の所定の回転γについての、カム3のトルクC3とレバー4のトルクC4との間の比率の変動を、レバー4、特にローラ4aが区域3bと接触する限り、できる限り最大化しなければならない。
【0037】
更に、比率C3/C4は、長さA3P/A4Pの比率に比例することが判明し、ここでPは、ローラ4aとカム3の区域3bとの間の反力Fと、カム3の回転軸A3とレバー4の回転軸A4とを接続する中心線A3A4との交点であり、反力Fは、任意で接点Nの垂線に対して摩擦角にわたり回転される。このため、カム3が駆動されるときのカム3のトルクC3への所定の増加は、中心線A3A4上の交点Pの変位に対応する。
【0038】
角度αは、第1及び第2軸A3、A4に垂直な平面内で、カム3の頂点3b、特にカム3の軸A3から最も遠い点30bと、レバー4との間の接点と、第1軸A3とを通過する第1直線と、第1軸A3及び第2軸A4を通過する第2直線との間で、定義される。
【0039】
より具体的には、図に示される特定の実施形態において、角度αは、ローラ4aがカム3の点30bと接触する時点で、反力Fが発生するときに、線分[A330b]と[A3A4]の間で定義可能である。より具体的には、問題の角度αは、ローラ4aがカム3の点30bと接触する時点で、点A3、A4、及び30bで形成される三角を部分的に特徴づける角度である(
図2参照)。
【0040】
頂点3bが表面3bの形状であるとき、角度αは、線分[A3A4]と、軸A3、表面3bまたは頂点3bの曲率中心A3b、及びローラ4aの中心軸A4aを通過する線との間で定義可能である(
図2)。頂点3bが曲面または円形部分3bである特定の場合、角度αは、線分[A3A4]と、軸A3、円形部分3bの中心A3b、及びローラ4aの中心A4aを通過する線との間で定義可能である(
図2)。
【0041】
もちろん、レバー4とカム3との間の接触は、ローラ4aと独立して、直接行われてもよい。例えば、レバー4は、カム3と直接協働することが意図される接触面を含んでもよい。この接触面は、例えば、ローラ4aの中心A4aと同等の曲率中心を有してもよい。
【0042】
発明者による研究によって、角度αが減少すると、交点Pの変位を引き起こすために必要なカムの回転の角度γも減少することが判明した。
【0043】
駆動装置100*の第2実施形態を含む時計の第2実施形態は
図7及び8に図示され、以下に説明される。
【0044】
図6は、構成要素が70°の角度αで配置される第1実施形態100と、構成要素が実質的に70°よりも小さい、おおよそ40°の角度α*で配置される第2実施形態100*との間の比較を示し、ここで軸A3、A4の位置は両実施形態で共通である。各実直線は、駆動装置100と100*のそれぞれのカムの所定の回転γ、γ*の前後での、力Fの方向を示す。点Pの中心線A3A4上の所定の位置P’への全く同一の変位により、装置100の第1実施形態の力Fのベクトルは、装置100*の第2実施形態の角度β*よりも大きな角度βにわたり回転しなければならないことが見て取れる。このため、全く同一のトルク変動について、γ>γ*である。
【0045】
このため、角度αを最小化することが望ましい。
【0046】
特許文献は、角度αの値がおおよそ90°である駆動装置の例を開示する。ローラが案内される個所の摩擦がない限り、カムのトルクの変動は、90°に近い角度αで最小になることが見て取れる。
【0047】
例として、特許文献1は、ディスプレイ用の改善された駆動装置に関する。文献の
図1は、おおよそ98°の鈍角αを示す。更なる例として、特許文献2は、ディスプレイを迅速に修正することを容易にするよう設計された、ディスプレイ用駆動装置に関する。文献の
図1は、おおよそ110°の鈍角αを示す。これら文献には、角度αの値を最小化することを促すような教示はない。
【0048】
このため、本発明の駆動装置の実施形態において、角度αは、第1及び第2軸A3、A4に垂直な平面内で、
〇 カム3の頂点3b、特に第1軸A3から最も遠い点30bと、レバー4との間の接点、及び
〇 第1軸A3
- を通過する、第1直線と、
- 第1軸A3及び第2軸A4を通過する、第2直線
との間で形成される。
【0049】
角度αは、これら第1及び第2直線の間の、凸角である。
【0050】
当該角度αは、70°以下、または65°以下、または60°以下、または57°に等しいまたは実質的に等しい。
【0051】
上述の通り、時計400*の第2実施形態を、
図7及び8を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は、時計ムーブメント300*を含む。時計ムーブメントは、機械式ムーブメント、特に自動式ムーブメントであってもよい。時計ムーブメントは、代替的に電子式でもよい。
【0052】
ムーブメントは、時計カレンダーシステム200*または時計カレンダーモジュール200*を含んでもよい。
【0053】
ムーブメント300*または時計カレンダーシステム200*または時計カレンダーモジュール200*は、時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素用駆動装置100*の第2実施形態を含む。
【0054】
時計、時計ムーブメント、時計カレンダーシステム200*または時計カレンダーモジュール200*は、時刻に関連するまたは時刻から派生する数を表示するためのディスプレイ要素を含む。
【0055】
第2実施形態において、駆動装置は、好ましくは角度αの値のみが、第1実施形態と異なる。第2実施形態において、αは57°に等しい。
【0056】
このような実施形態は、有利には、dC3/dγを最大化することを可能にする。例えば、
図7及び8に示す構成は、カムでのトルクの変動が、
図1から5に示す構成のそれよりも3倍大きい。
【0057】
第2実施形態において、第1実施形態の要素と同一の構造及びまたは機能を有する要素は、同一の符号に「*」を付して特定される。
【0058】
駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、レバー4がカムの頂点3bと接触するとき、特にローラ4aが区域3bと、特に円形表面3bと接触するとき、dC3/dγは好ましくはカムの回転の角度毎に110μNm以上、またはdC3/dγはカムの回転の角度毎に150μNm以上、またはdC3/dγはカムの回転の角度毎に200μNm以上である。
【0059】
駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、レバーとばねは、
図1から5に示す第1実施形態と同様に2つの別個のパーツでもよい。代替的に、駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、レバーとばねは、
図7及び8に示す第2実施形態と同様に全く同一のパーツで形成されてもよい。
【0060】
駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、角度αは、30°以上、または35°以上、または40°以上である。これにより、駆動装置の十分な全体性能を得ることが可能になる。特に、発明者による研究により、小さすぎる角度αは、カム3での過剰な摩擦トルクをもたらすことが示された。このため、αは、駆動装置の十分な全体性能を得ることを可能にすると共に、取り上げた技術的問題を解決するように、決定される。
【0061】
駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、レバーは好ましくはローラ4aを含む。このため、レバー4とカム3との間の接触は、ローラ4aを介して行われる。当該ローラは、有利には、レバーの残りに対して可動である、特に回転可能である。このため、ローラは、カムの輪郭を転動することができる。代替的に、ローラは、レバーの残りに固定された態様で取り付けられてもよい。ローラは、カムとの摩擦を最小化する硬質素材製、例えば合成ルビー製であってもよい。ローラは、好ましくは1mm以下の半径を有する。
【0062】
駆動装置の実施形態または変形実施形態が何であれ、頂点3bは、0.1mmより小さい半径の円筒の一部分であってもよい。カムは、頂点に隣接する少なくとも1つの凹面3a、3cを、または頂点の両側に2つの凹面3a、3cを有してもよい。更に好ましくは、カム3の頂点3bは、
図9に示すように、部分3a及び3cのそれぞれの屈曲区域30a、30cにより制限される。このようなデザインは、カムの製造方法にかかわらず、そして特にカムの仕上げ方法にかかわらず、カム頂点3bを形成する円形部分をよりよく制御することを可能にする。
【0063】
実施形態または変形実施形態が何であれ、駆動装置は、駆動歯車6を、特に24時車6と、駆動歯車とカムとの間に自由度を提供する連結とを含む。連結は、カムと駆動歯車とを固定するよう設計された、長切欠き6aと協働するピン9を有するタイプでもよい。代替的に、連結は、カムと駆動歯車とを固定するよう設計された、フリーホイールタイプでもよい。
【0064】
実施形態または変形実施形態が何であれ、上述の改善点に加えて、カム3とレバー4の設計と配置は、装置の主面において、すなわち第1及びまたは第2軸に直角な平面において特に小型である、駆動装置100を提供することを可能にする。好ましくは第2軸A4とレバーのカムとの接点との間の距離または第2軸A4と軸A4aとの間の距離は、カムの最大半径または第1軸A3と点30bとの間の距離の4倍以下である、または、カムの最大半径または第1軸A3と点30bとの間の距離の3倍以下である、または、カムの最大半径または第1軸A3と点30bとの間の距離の2.5倍以下である。
【符号の説明】
【0065】
2 爪
3 カム
4 レバー
5 ばね
10 ディスプレイ要素
100 駆動装置