IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トライケアスの特許一覧

特許7671582二重操縦可能シースおよび医療デバイスの展開のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】二重操縦可能シースおよび医療デバイスの展開のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20250424BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61F2/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020511337
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018072686
(87)【国際公開番号】W WO2019038337
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】17001430.2
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518021632
【氏名又は名称】トライケアス
【住所又は居所原語表記】27avenue deI’Opera,75001 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ナディーネ シュタッペンベック
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート シュトラウビンガー
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】土田 嘉一
【審判官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0287187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0041188(US,A1)
【文献】特開2012-70882(JP,A)
【文献】特開平5-115426(JP,A)
【文献】特開平5-185428(JP,A)
【文献】特開平10-33688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いシースと、
少なくとも2つのアクチュエータと、
少なくとも2つの異なるシース操縦点と、
前記少なくとも2つのアクチュエータを前記2つの異なるシース操縦点に接続するための手段と、を備え、
前記アクチュエータが近位ハンドルと組み合わされ、少なくとも2つの異なるシース操縦点は、前記シースの円周方向にか前記シースの長手方向に沿って離間させられ、前記2つの異なるシース操縦点が前記2つのアクチュエータによってカウンタ作用的に可動であり、前記シースが、カウンタ曲げ可能かつ二重作動可能となるように180°の角度のカッティングをそれぞれ逆側に有する少なくとも2つのハイポチューブを含み、
前記2つの異なる操縦点のうちの一方は、前記2つのハイポチューブよりも遠位側に設けられており、前記2つの異なる操縦点のうちの他方は、前記2つのハイポチューブの間に設けられており、
前記2つの異なるシース操縦点のそれぞれは、互いに隣り合う2つの穴の組を異なる部分に有する、前記シース内に固定された引張りリングによって形成され、前記接続するための手段は、2つのケーブルによって形成され、前記ケーブルは、前記引張りリングの近位側から前記2つの穴のうちの一方の穴に挿入され、前記引張りリングの遠位側から他方の穴にループされることにより、前記引張りリングに取り付けられ、2つの前記引張りリングのうちの遠位の引張りリングの2つの穴の組に取り付けられたケーブルは、近位の引張りリングで使用されない2つの穴の組を通過し、前記2つの異なるシース操縦点を形成する2つの引張りリングは同じ形態を有する、
操縦可能シース。
【請求項2】
2つ、3つまたは4つの前記アクチュエータを備える、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項3】
前記少なくとも2つのシース操縦点は遠位に位置されている、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項4】
前記細長いシースは、生体適合性材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、異なるデュロメータを有するポリマ、ステンレス鋼、ニチノール、PEBAX(登録商標)、または/およびポリアミド、例えばGrilamid(登録商標)から選択された材料から作られるか、またはそれらの組合せを備える、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項5】
より柔らかい材料が前記シースの遠位端部に使用され、より硬い材料が前記シースの近位側に使用されている、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項6】
2つの前記アクチュエータと、
2つの前記シース操縦点と、
接続するための2つの手段と、を備える、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項7】
前記接続するための手段は、ワイヤ、ケーブル、フィラメント、または織物である、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項8】
前記接続するための手段は、1つまたは複数の前記アクチュエータによって近位方向に引っ張られることができる、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項9】
2つ、3つ、または4つの前記シース操縦点を備える、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項10】
前記少なくとも2つの異なるシース操縦点のうちの2つの異なるシース操縦点は、10°、20°、30°、45°、90°、120°、140°、160°、または180°の角度で離間している、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項11】
前記少なくとも2つの異なるシース操縦点のうちの2つの異なるシース操縦点は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10cmの距離をもって離間している、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項12】
前記少なくとも2つの異なるシース操縦点のうちの2つの異なるシース操縦点は、請求項10記載の前記角度と、請求項11記載の前記距離との組合せで離間している、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項13】
前記2つの異なるシース操縦点は、180°の角度で、または180°の角度でかつ5~10cmの距離でもって位置させられている、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項14】
2つのカウンタ作用アクチュエータは、該2つのアクチュエータによる両方の曲げを調節することによって、1つの水平面のさまざまな標的点に到達させることを可能とする、請求項1記載の操縦可能シース。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の操縦可能シースを備える、心臓弁プロテーゼの展開のためのカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重操縦可能シース、そのようなシースを備える送達システム、および患者の心臓における、例えば心臓弁プロテーゼなどの医療デバイスの展開のための方法に関する。
【0002】
過去数十年において、低侵襲技術は進歩してきており、現在では多くの医療分野で受け入れられている。
【0003】
現在では、多くの医療分野で低侵襲技術によって患者を治療することが可能であり、また患者の身体状態および手術に関連したリスクのために別の方法では適切に治療できないであろう患者の治療が可能になっている。そのような低侵襲法の多くは、医療デバイスを所望の標的部位に送達することを意図した送達システムを用いる。
【0004】
特に、近年では、心臓弁の疾患および欠陥の治療はますます成功を収めている。実例として、例えば大動脈心臓弁治療または僧帽心臓弁治療などの心臓弁置換療法のための経心尖処置、経頸静脈処置および経大腿処置がある。
【0005】
多くの場合、組織ベースの置換弁を有するステントベースのプロテーゼが、天然の心臓弁の置換のために使用され、移植される。置換心臓弁は、カテーテルまたは送達システムによって移植される。
【0006】
置換心臓弁は、縮められ、そして送達システムに装填されなければならない。その後、送達システムは、例えば患者の脈管構造内に導入され、標的部位に向けられる。標的部位では、患者の特別のジオメトリのため、置換心臓弁を搭載する送達システムの遠位部分は、間違いのない展開を達成するため、展開前に非常に正確に位置決めされなければならない。移植されたデバイスの機能を成功させるためには、間違いのないかつ正確な展開が非常に重要である。
【0007】
既知の送達システムでは、より正確な展開のための操縦可能な遠位部分を提供するために、さまざまな設計が開発されてきた。
【0008】
医療デバイスの間違いのない展開は非常に複雑であり、なぜならば、医療デバイスを患者の脈管構造を通して押し込まなければならないだけでなく、方向を変更したり角度を変更したりするなど、医療デバイスを曲げ、標的部位に進行させなければならないからである。最終的には、間違いのない部位に到達させなければならないだけでなく、特定の三次元位置決めであって、とりわけそのような位置、ある一定の角度、および例えばキャビティ内の天然の組織からの均一な距離を含む特定の三次元位置決めを達成することも望ましい。
【0009】
したがって、医療デバイスを搭載する遠位部分の正確な三次元位置決めを可能にし、かつ医療デバイスの、規定されかつ制御された展開を可能にするデバイスに対する要求が存在する。
【0010】
現在の送達システムにおける1つの問題は、医療デバイスを所望の標的部位に精度よく配置できないことである。
【0011】
特に、送達システムの遠位部分の位置決めをすべての所望の三次元レベルで達成できるように、または/かつ後続の展開ステップのために、医療デバイスを搭載するカプセルの間違いのない、所望の位置決めを達成できるように、送達システムの遠位部分を位置決めすることは問題である。
【0012】
特に、従来技術の操縦可能な解決策でさえ、置換デバイスのある一定の角度および/または天然の環境に対するその距離および/または展開面に対する所望の角度に関しての所望のかつ最適な位置決めを可能にすることはできないことは問題である。
【0013】
したがって、既知の送達システムでは、その送達システム内の置換デバイスを、解放ステップの前に最適な三次元位置に向けるとともに位置させることはできない。これは、最終的な移植位置に間違いが生じるという不利点を意味し、患者内での最適ではない最終的な位置決めの誘因となる。
【0014】
したがって、1つの目的は、プロテーゼのより良好な送達および標的部位での該プロテーゼのより正確な位置決めを可能にする手段を提供すること、あるいは従来技術の不利点の低減またはこれらの不利点の本質的な回避を少なくとも達成することである。
【0015】
別の目的は、展開前の医療置換デバイスのより良好な三次元作動および位置決めのための、あるいは従来技術の不利点を少なくとも低減するかまたはこれらの不利点を本質的に回避するための手段を提供することである。
【0016】
別の目的は、送達システムと組み合わせることができる手段であって、展開前の医療置換デバイスのより良好な三次元作動および位置決めのための、あるいは従来技術の不利点を少なくとも低減するかまたはこれらの不利点を本質的に回避するための手段を提供することである。
【0017】
別の目的は、展開前の医療置換デバイスのより良好な三次元作動および位置決めのための、あるいは従来技術の不利点を少なくとも低減するかまたはこれらの不利点を本質的に回避するための方法を提供することである。
【0018】
本開示の概要
一態様において、本開示は、2つの異なる方向で二重作動可能かつ二重曲げ可能、例えば本質的にカウンタ曲げ可能かつ二重作動可能に設計されたシースに関する。
【0019】
別の態様では、本開示は、二重操縦可能シースまたはS字操縦可能シースと、例えば置換心臓弁などの医療デバイスのための送達カテーテルとからなる送達システムに関する。
【0020】
別の態様では、本開示は、二重またはS字操縦可能シースと、例えばプロテーゼや置換心臓弁などの医療デバイスと、カテーテルとを備えたシステムに関する。
【0021】
別の態様では、本開示は、改善された展開のために、操縦シースの遠位部分および/または例えば心臓弁などの医療デバイスを搭載する遠位カテーテルカプセルを三次元位置決めする方法に関する。
【0022】
別の態様では、本開示は、医療デバイスを、患者内の標的部位に、例えば置換されるべき天然の心臓弁に展開する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示の好ましい実施形態は、図によって例示される。
図1】従来技術と比較して理想的な曲げを有する操縦可能シースおよび本発明の開示による実施形態を例示する図である。左図:左のイメージは、理想的な一方向シース曲げを示す。この曲げは、操縦可能シースの全長を通って延びる引張りワイヤによって達成されることを目標としており、そのために、より柔らかい材料がシースの遠位端部に使用されるとともにより硬い材料がシースの近位側で使用される。これは、理論上、シースの遠位端部のみを曲げる。中央の図:しかしながら、引張りワイヤはシースの全長を通って延びるため、シース全体にも影響を与え(中央のイメージ)、その結果、シースの先端部を曲げるだけでなく、シース全体が前方に撓むことになる。シースの近位側は、硬い材料のため少なくしか曲がらないが、それでも僅かに撓む。これによりシースの先端部は下方に突っ込み、所望の標的点に一致しなくなる。右図:右のイメージは、本発明の開示による好ましい実施形態を示しており、第2の、カウンタ作用曲げが導入され、有利には、シースの近位端部の望ましくない曲げの直線化を達成でき、それにより所望の三次元位置で所望の標的点にシースの先端部を一致させることができる。
図2】従来技術による操縦可能シースの曲げの可能性を例示する図である。この図は、1本の引張りワイヤによって達成される望ましくない曲げを伴う、シースが達成可能な曲げの範囲を示す。この設計は、水平面および垂直面ごとに1つの標的点にしか到達させることができない。
図3】本開示による好ましい実施形態を例示する図である。カウンタ作用曲げ機構を組み込むことで、両方の曲げを調節することにより、1つの水平面内でさまざまな標的点に有利に到達させることができる。
図4】本開示による好ましい実施形態を例示する図である。遠位および近位の曲げを調節することで、さらに多くの潜在的な標的点に到達させることができる。さらに、両方の曲げを作動させることで、より小さな全体半径を達成することができ、これは、有利には、より小さな解剖学的構造内での曲げを可能にする。
図5】本開示による好ましい実施形態を例示する図である。典型的には、インプラント、例えば心臓弁プロテーゼを展開するとき、送達システムの最良の位置は、移植面も意味し得る移植部位(104)に対して垂直(90°)である。これにより、インプラントが傾いて展開されないことが保証される。中間デバイスを搭載するカテーテルによる、妨げられていない展開を可能とするため、すなわちインプラントがシース内に展開されるのを回避するため、操縦可能シースの遠位端部と移植部位との間にある一定の所定の距離が必要とされる。したがって、距離「X」は、例えばカテーテルのカプセル内の医療デバイスの縮長によって決定される。シース(105)の二重の操縦によって、操縦可能シース(105)の遠位端部を、所望の標的点(106)に向けることができる。したがって、本発明は、医療デバイスが取り付けられたカテーテルを操縦可能シースから遠位方向に押し出し、標的面(104)に間違いなく位置決めできることを有利に達成する。さらに、本開示による二重操縦シースは、今度は、例えば置換心臓弁などの医療デバイスの最適な三次元位置決めならびに容易な解放および展開のための十分なスペースを可能にする。
図6】一方向操縦可能シースの従来技術による実施形態を例示する図である。一方向シースを用いた位置決めに関する制限が示されている。(i)移植部位(104)内での送達システム(102)の中心位置合わせ、(ii)移植部位に対する垂直な方向付け(90°)および(iii)医療デバイスまたはインプラント(103)の障害のない展開を保証するための、操縦可能シース(101)の遠位端部と移植部位(104)との間の所定の距離(図5において「X」で示される)が重要である。カテーテル(102)を含む、イメージ内の下側のシース(101)は、移植部位内で中心位置合わせされる。しかしながら、シース(101)の遠位端部は移植部位のまさしくその位置にあり、そのため医療デバイス(103)がシース(101)内に展開されることになり、したがって、医療デバイス(103)を自由に解放することができなければ、間違いなく展開することもできない。シースを上に動かすと、シース(101)の遠位端部と移植部位(104)との間の必要な距離が容易になる。しかしながら、それにより、送達システム(102)は移植部位(104)内でのその中心位置合わせを失う。曲げをさらに作動させれば(イメージ内に示されず)、送達システムは、移植部位の中心を通るように交差できるかもしれないが、90°の角度ではない。
図7】従来技術の一方向シース(下側のシース)と比較して、本開示による二重操縦可能シースの好ましい実施形態(上側のシース)を例示する図である。この図は、一方向シース(101)とS字形の操縦シース(105)との直接比較を示している。一方向シース(101)は移植部位内での中心位置決めを達成できる。しかしながら、(従来技術に関して前述したように)全長にわたるその曲げによって、シースの遠位端部は、移植部位の面で終端する。これにより、カテーテル(102)がシース(101)の遠位部分から完全に離れず、したがって医療デバイス(103)を搭載するカプセルが未だシース(101)内に少なくとも部分的にあるため、インプラントはシース(101)内で展開されることになる。それに対して、S字形の操縦シース(105)は、移植部位(104)または移植面に対する中心および垂直位置合わせを達成でき、加えてその遠位端部と移植部位(104)との間の必要な距離を維持できるため、容易な解放および改善された展開を可能にすることができる。
図8】従来技術の一方向シース(下側のシース)と比較して、本開示による二重操縦可能シースの好ましい実施形態(上側のシース)を例示する図である。この図は、単一曲げシース(101)を示し、このシースは、その全長にわたる僅かな曲げに起因して、その遠位端部が標的点、例えば心臓弁を標的とする場合は弁輪の20mm上方ではなく、移植部位または面(104)で終端する。この位置は移植部位(104)に対して垂直でありかつ中心にあるにもかかわらず、インプラント(103)は、今度は、展開するには低すぎる。最適な展開を達成するために、移植面(破線104)がプロテーゼの中心にある必要があることに留意されたい。実用レベルでは、インプラントの中心が、標的を目的とする標的面(104)に位置合わせされるように、カテーテル(102)が引き込まれる場合、プロテーゼは未だ少なくとも部分的にシースによって覆われており、該プロテーゼを解放させることも展開させることもできない。本開示による二重操縦シース(105)を使用することによってのみ、操縦シース(105)の端部を、十分なスペースをもって間違いのない距離に位置決めすることができ、展開されるべき医療デバイスを搭載するカプセルを有するカテーテル(図示せず)を適切な面(104)に位置決めするとともにインプラントを解放および展開するための十分なスペースを設けることができる。
図9】従来技術の一方向シース(101)と比較して、本開示による二重操縦可能シース(105)の好ましい実施形態を例示する図である。この図は、従来技術の単一曲げシース(101)を上に動かして弁輪/移植部位/面(104)まで20mmの距離を達成できることを示している。しかしながら、そのようにすることで、シースの全長にわたる曲げの影響がより明らかになるため、インプラント(103)は中心から外れる。対照的に比較すると、二重操縦可能シース(105)は、中心に配置されることができるとともに移植面(104)に対して必要な距離を保つことができるので、医療デバイス(103)(ここでは図示せず)の自由な解放ならびに間違いのない位置決めおよび展開を有利に可能にする。
図10】従来技術の一方向シース(101)と比較して、本開示による二重操縦可能シース(105)の好ましい実施形態を例示する図である。前の図9に基づき、従来技術の単一曲げシース(101)をさらに作動させることでプロテーゼ(103)が移植部位(104)の中心にもたらされることもあり得る。しかしながら、この時点では、プロテーゼ(103)は、移植部位に対して直角(90°)にならない。したがって、カテーテル(102)からプロテーゼ(103)を展開することはできず、できたとしても、患者内でのその最終的な位置決めに関して悪影響を与えるような傾斜した状態で展開することになる。
図11a】本開示の好ましい実施形態の本開示による操縦可能シース(105)内に固定される引張りリング(109)での引張りケーブル(110)の取付け部を例示する図であり、図11aには、互いに隣り合う2つの穴を引張りリングの異なる部分に2回呈し、一方が操縦点を表す引張りリング(109)が描写されている。ケーブルは、引張りリングの近位側から一方の穴に挿入され、それから引張りリングの遠位側から他方の穴にループされ、このようにして引張りリングに固定手段を必要とせずに引張り方向に二重ケーブルが創生される。遠位引張りリングに取り付けられた引張りケーブルは、近位引張りリングで使用されない2つの穴を通過できる。代替実施形態では、引張りリング、または少なくとも近位引張りリングは、1つの位置に2つの穴がありかつ第2の位置に開口がある例えば330°リングとして設計されることができ、有利には、該開口は、遠位操縦点に取り付けられた遠位引張りケーブル/ワイヤを近位引張りリングと干渉することなく通過させるとともに遠位引張りケーブル/ワイヤのための十分なスペースを与えるものである。しかしながら、引張りリングは、例えば270°として、または270°と330°との間のバリエーション、例えば290°、300°、310°として設計されることもできる。
図11b】本開示の好ましい実施形態の本開示による操縦可能シース(105)内に固定される引張りリング(109)での引張りケーブル(110)の取付け部を例示する図であり、図11bには、引張りケーブル(110)を含む2つの穴を呈する引張りリング(109)が描写されており、引張りケーブル(110)が穴を通して逆方向に配置されることで引張りリング(109)を引っ張るための取付け部として機能し、したがって、それぞれの方向において操縦可能シースとして機能する。
図12】本開示の好ましい実施形態と、所望に応じて特定の曲げ要求に適合した操縦可能シース(S字形シース)において、特定の曲げ特性を達成するため変更可能な異なる材料(25D,40D,72D,Gr)の使用とを例示する図であり、Proximal Grilamid(登録商標)が使用される。Proximal Grilamid(登録商標)は比較的硬い材料であるからである。さらに遠位の規定の区域では、異なる剛性のPebax(登録商標)が使用される。72D,40Dおよび25Dは異なる剛性の材料を指す。ここで、材料は遠位方向でますます柔らかくなるよう選択される。したがって、ポリマジャケットが、デバイスの曲げ要求、すなわち曲げ半径および曲げ角度に応じて選択される補強材を含めて、形成され、使用される。遠位に含まれるのは、レーザカットされたハイポチューブ(115)である。S字形シース(105)の各方向は、意図する曲げ方向に応じて、その特定のハイポチューブを示す。各ハイポチューブの遠位には、引張りワイヤを接続するために引張りリング(109,111)が配置される。操縦可能シースの近位部分は編組(braiding)を呈する。内側にPTFEライナを追加して、カテーテルと接続して操作するときの摩擦を減らすことができる。
図13】2のハイポチューブと、本開示の好ましい実施形態の材料態様とを例示する図である。この場合、1つまたは複数のハイポチューブのカッティングは180°の角度になっており、これにより直接のカウンタ曲げが可能になる。このカッティングは、1つまたは2つのハイポチューブで作成されることができ、2つのハイポチューブは、例えばポリマジャケットによって組み合わされることができる。引張りリング(遠位109;近位111)およびそれぞれの引張りケーブル(110;112)が示されている。
図14】本開示の好ましい実施形態のハイポチューブ(115)を例示する図である。遠位引張りリング(109)および引張りワイヤまたはケーブル(110)が表されており、引張りワイヤ(110)はハイポチューブ(115)の内側を延びる。
図15a】本開示の好ましい実施形態による操縦可能シースの異なる曲げ状態を示す図であり、図15aでは、遠位曲げ機構のみが操作され、それによって遠位曲げのみがもたらされるが、近位部分もところどころ右方向の曲げにつながる二次的影響として曲がる。
図15b】本開示の好ましい実施形態による操縦可能シースの異なる曲げ状態を示す図であり、図15bでは、近位ケーブルもある程度引っ張られて、部分的なカウンタ曲げがもたらされる。
図15c】本開示の好ましい実施形態による操縦可能シースの異なる曲げ状態を示す図であり、近位引張りケーブルでさらに引っ張ると、S字カーブを達成することができる(図15c)。シースの遠位部分も遠位引張りケーブル(110)によって遠位引張りリング(109)(図示せず)を介してさらに引っ張ることができるので、作動させ曲げることができる。
図16】少なくとも2つのまたは2つのアクチュエータ(113,114)を有するハンドルに接続された、本開示による操縦可能シースの態様を有する好ましい実施形態を描写する図である。これらのアクチュエータは、操縦シースの二重操縦を操作するのに使用される。異なる材料(25D,40D,72D,Gr)および引張りリング(109,111)が表されている。
図17】遠位引張りリング(109)および近位引張りリング(111)および遠位引張りリングのケーブル(110)および近位引張りリングのケーブル(112)を描写する図であり、ケーブル(110)は、引張りリング(111)の開口スペースを通過している。直径部に追加のスペースが不要であるとともに、ケーブルまたはワイヤの、近位引張りリング(111)との干渉が回避されるという利点がある。
図18図17の引張りリング(109/111)の隠れたエッジを可視化した図面を描写し、引張りケーブルの取付け部のための1つの位置での2つの穴と、引張りリング(109/111)の開口スペース(116)であって、遠位側から近位側へいかなるケーブルまたはワイヤを通過させるための、場合によっては上記引張りリング(111)との干渉なくデバイスのハンドルを通過させるための、引張りリング(109/111)の開口スペース(116)とを呈している。
【0024】
詳細な説明
以下の説明では、本開示のある一定の用語が規定されるだろう。さもなければ、本開示の文脈における技術用語は、該当する当業者によって理解されるものとする。
【0025】
本開示の意味における「プロテーゼ」または「医療デバイス」または「インプラント」という用語は、低侵襲的に送達され得るいかなる医療デバイスとして理解されるべきである。これらの用語は、同じ意味で使用することができる。プロテーゼまたは医療デバイスまたはインプラントは、ステントまたはステントベースのプロテーゼあるいは大動脈心臓弁、僧帽心臓弁もしくは三尖心臓弁のようなステントベースの置換心臓弁であり得る。
【0026】
本開示の意味における「カテーテル」または「送達デバイス」という用語は、例えば、大動脈心臓弁、僧帽心臓弁または三尖心臓弁のような心臓弁を置換するために、患者内の所定の部位でプロテーゼを展開するのに使用されるデバイスとして理解されるべきである。
【0027】
「S字シース」または「S字形シース」または「操縦可能シース」または「二重操縦可能シース」または「S字形操縦シース」または「S字形操縦可能シース」または「二重操縦可能シース」は、具体的には、少なくとも2つの点、例えば2つの点または2つの操縦点で作動させられ、置換医療デバイスの特定のかつ向けられた本質的に正確な位置決めを達成する操縦可能シースを指す。これらの用語は、同じ意味で使用することができる。多数の操縦点、例えば3つまたは4つの操縦点がある場合もあり、したがって「多重操縦可能シース」と表現することができる。
【0028】
本開示の意味における「引張り手段」または「引張りワイヤ」または「引張りケーブル」という用語は、例えばワイヤまたはケーブルなどの引張り力を呈するのに有用ないかなる手段または部品として理解されるべきである。
【0029】
本開示の意味における「装填」という用語は、カテーテルが患者への送達および展開過程を開始する準備が整うようにプロテーゼをカテーテルに配置することとして理解されるべきである。
【0030】
本開示の意味における「有用な材料」という用語は、互いに適合性があり、場合によっては滅菌されることができ、かつ/または低摩擦材料であるいかなる材料として理解されるべきである。
【0031】
本開示の意味における「細長いシース」は、異なる複数の材料で作成されることができ、かつ医療デバイスに使用され得るという意味で生体適合性があるチューブである。シースは、カテーテル技術で通常適用されるとともに当業者に知られているように、所望の剛性および/または柔軟性を提供する、複数の材料の組合せから構成されることができる。
【0032】
本開示の意味における「アクチュエータ」は、アクチュエータから遠位の部分の操作を可能にする手段であり、例えば、アクチュエータは近位にあるとともにハンドルに配置され、操作される当該部分は遠位にあり、ある手段、例えば引張りワイヤが2つの部分を接続する。1つのアクチュエータは、2つの部分を同時にまたは順次にまたは互いに独立して作動させるように設計されることができる。代替的に、2つのアクチュエータはそれぞれ、1つの遠位部分を協調的に作動させることができ、または該2つのアクチュエータは、複数の遠位部分を同時にまたは順次に作動させるように連結されることもできる。
【0033】
本開示の意味における「操縦点」は、操作されることを意図された遠位部分にアクチュエータを接続する手段の標的点である。所望の操縦点に、例えば、アクチュエータによって順番に作動させられる引張りワイヤに接続される引張りリングを取り付けることができる。本発明の開示による操縦シースに、2つまたは3つまたは4つの操縦点を設けることができ、これらの操縦点は、シースの所望の二重曲げに応じて位置決めされることができる。例えば、複数の操縦点は、離間されることができるとともに、これらはシース上で互いにある一定の角度、例えば180°または90°に位置決めされることができる。操縦可能シースが2つまたは3つの操縦点を含む場合、これらの操縦点は、1つまたは2つのアクチュエータによって独立して、順次にまたは同時に作動されることができる。
【0034】
本開示の意味における「望ましくない二次的曲げ」は、一方向に能動的に撓むシースまたはカテーテルの動きであり、その撓みに起因してかつシースまたは/およびカテーテルの柔軟性に起因して、結果として、シースまたはカテーテルの他の部分も曲がることである。そのような二次的曲げは通常望ましくないが、材料の特性に起因して発生し、位置決め過程および精度に悪影響を与える。
【0035】
本開示の意味における「アクチュエータ」は、例えば引張りワイヤによって引張りリングに接続される手段であり、所定の方向に操縦シースを曲げるために、例えば、引張りリングに接続された引張りワイヤに張力を加えることによって、引張りリングを操作するよう機能する。1つのアクチュエータは、1つの引張りリングを操作でき、操縦シースは1つ、2つまたはそれ以上のアクチュエータを有するハンドルを含むことができ、1つのアクチュエータは、例えば引張りワイヤを介して1つの引張りリングを独立して操作するか、または1つのアクチュエータは、2つの引張りリングを操作するとともに、例えば、2つの引張りリングを、例えば引張りワイヤであって1本の引張りワイヤが1つの引張りリングに(すなわち操縦点で)独立して接続された引張りワイヤによってカウンタ操作するよう設計されることができる。アクチュエータは、遠位先端部が、標的領域内のある一定の標的面上のある一定の標的点に向くように、操縦シースを操作するよう機能する。
【0036】
本開示の意味における「カウンタ作動」は、例えば引張りリングの配置および例えば引張りワイヤへの接続の位置に応じた操縦可能シースの協調した曲げに関連し、その結果、曲げおよびカウンタ曲げが生じる。例えば引張りワイヤによる2つの引張りリング接続点を180°で位置決めし、かつ操縦可能シース上に長手方向でスペースがある場合には、図15cに描写されたカウンタ曲げまたはカウンタ作動は、シースのS字カーブを創生する。
【0037】
本開示の意味における「標的領域」は、例えば三尖心臓弁であり得る天然の心臓弁のような天然の臓器を取り囲むかまたはその内部にある三次元スペースである。
【0038】
本開示の意味における「標的面」は、操縦シースによって、操縦シースそれ自体と、例えば心臓弁プロテーゼのような医療デバイスを搭載する例えばカプセルのような遠位のカテーテル部分とのいずれか一方のある一定の部分が向けられることを意図した2次元の面である。この「標的面」は、天然の心臓弁の弁輪面であり得る。
【0039】
本開示の意味における「標的点」は、カテーテルの特定の部分、および医療デバイスを搭載するカプセルのようなカテーテルの遠位部分の特定の領域が到達させられる標的面上の正確な点である。この「標的点」は、特定の場合には、操縦可能シースの遠位端部が到達させられる点であり得る。
【0040】
本開示の意味における「曲げ点」は、複数の材料とレーザカットされたハイポチューブとに応じて曲がるシース内の点であり、該曲げ点は、ポリマジャケットおよびレーザカットパターンによって相応に規定されることができ、またはその材料は、本開示の目的を果たすいかなる有益な材料であることができ、例えばいかなる形式の補強材、例えば異なるPPIを有する編組(braiding)または異なる材料特性を呈するコイルなどを用いることができる。
【0041】
一態様において、本出願の根底にある問題は、細長いシースと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも2つの異なるシース操縦点と、上記少なくとも1つのアクチュエータを上記2つの異なるシース操縦点に接続するための手段と、を備える操縦可能シースによって解決される。操縦シースは、二重操縦可能シースとも表現され得る。
【0042】
本発明は、操縦シースの規定の点もしくは領域、または/および操縦シースを通って患者内の標的領域内の標的点に導入されるカテーテルの遠位部分の規定の点もしくは領域の位置決めを有利な方法で達成する。したがって、本開示による操縦シースを使用することによって、例えば三尖心臓弁プロテーゼのような例えば心臓弁プロテーゼなどの医療デバイスを、三次元スペース内で非常に正確に展開することが可能になり、したがって、患者内での上記医療デバイスの最適な展開を達成することが可能になる。
【0043】
したがって、例えば置換心臓弁などの医療デバイスのある一定の面または点を標的部位のある一定の面に正確に向けることが可能になるので、例えば、置換プロテーゼに固定された置換心臓弁弁尖を弁輪にかつ/または天然の心臓弁の弁尖に位置合わせすることが可能になる。
【0044】
現開示による操縦シースは、医療デバイスの低侵襲展開のための既知の展開システムの不利点を少なくとも部分的にまたは本質的に完全に回避する。
【0045】
現開示による操縦シースは、三次元標的領域内のさまざまな三次元方向に有利に作動させられることができる。したがって、遠位シース、および医療デバイスを搭載する遠位カテーテル部分を、標的部位に対する所望の位置、面および角度に関して巧みに操ることが可能である。したがって、それにより、医療デバイスの展開を、例えば心臓弁などの天然の臓器および弁輪のようなその標的面に対して最適な位置合わせでもって達成することができ、最適な展開が可能になる。
【0046】
本発明は、シースの遠位部分を、またはシース内に遠位方向に押し込まれたカテーテルの遠位部分をさまざまな面にかつ標的領域の三次元領域内の標的点に位置決め可能であることを有利に達成する。したがって、本発明によって、シースまたはカテーテルの遠位部分を標的領域内で、本質的に三次元に向けることができる。三次元位置決めに関して記載された利点は、例えば、図5~10および15から明らかである。
【0047】
遠位部分は、近位ハンドルに接続され得る既知の手段によって作動させられてよい。好ましい実施形態では、操縦可能シースは、少なくとも1つのアクチュエータに接続されてよく、例えば、1つまたは複数のアクチュエータは、より容易な操作のためにハンドルの一部であり得る。本開示による操縦可能シースは、2つ、3つまたは4つのアクチュエータを備えることができ、好ましくは、1つのアクチュエータは1つシース操縦点に独立して接続され、または2つの独立したアクチュエータは2つの操作点を独立して作動させる。
【0048】
本開示による操縦可能シースは、近位ハンドルと組み合わされることができ、アクチュエータは、近位ハンドルと組み合わされている。
【0049】
ハンドルは、ねじやレバーのような、引張りワイヤまたは他のいかなる既知の有用な引張り機構を作動させる、当業者に既知のアクチュエータおよび機構を搭載することができる。本開示による操縦可能シースは、所望に応じて、少なくとも2つ方向で独立してまたは同時にまたは順次にシースを作動させる有用な数の操縦点を呈してよく、該少なくとも2つのシース操縦点は遠位に位置されている。操縦点位置は、二方向曲げを達成するために選択され、該曲げは、原理的には、望ましくない二次的曲げを補償するため互いにカウンタ曲げである。加えて、少なくとも2つの操縦点という本発明の概念により、三次元スペース内の標的領域内でのシースの遠位部分の正確な作動が可能になる。
【0050】
本開示の好ましい態様による操縦可能シースは、1つまたは複数の材料から構築されてよい。複数の材料は、シースの所望の曲げおよびカウンタ曲げを有利に支援するよう組み合わされてよい。細長いシースは、生体適合性材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、異なるデュロメータを有するポリマ、ステンレス鋼、ニチノール、PEBAX(登録商標)、または/およびポリアミド、例えばGrilamid(登録商標)から選択された材料から作られてよく、またはそれらの組合せを備える。
【0051】
より柔らかい材料およびより硬い材料を組み合わせて、シースおよびその中に含まれるカテーテルを撓ませる所望の機能を支援してもよい。本開示による操縦可能シースは、より柔らかい材料がシースの遠位端部に使用され、より硬い材料、好ましくはステンレス鋼、PEBAX(登録商標)、好ましくはGrilamid(登録商標)がシースの近位側に使用されるように設計されてよい。
【0052】
本開示による特定の実施形態では、本発明は、2つのアクチュエータと、2つの操縦シース点と、各アクチュエータをシース操縦点の各一方に独立して接続するための2つの手段とを備えた操縦可能シースに関する。
【0053】
本開示による操縦可能シースは、遠位操縦点を作動させ操作するために他の部品および構成要素と適合性のあるいかなる手段も使用することができ、接続するための該手段は、例えばワイヤ、例えば、平ワイヤ、丸ワイヤ、ケーブル、フィラメント、または織物である。
【0054】
各操縦点は、1つのアクチュエータに、好ましくは2つ、3つまたは4つのアクチュエータに接続されることができ、すなわち各操縦点がアクチュエータに、異なる方法で接続されることができ、各操縦点を引っ張ることで、操縦可能シースを、シースの操作に有用であるように2つ、3つまたは4つの操縦点を使用して、さまざまな方向にまたは方向の組み合わせで作動させることができ、したがって、操縦シースまたは/およびその中に含まれるカテーテルの規定の点を所望の標的点に向けることができる。本開示による操縦可能シースは、1つまたはそれ以上のアクチュエータによって近位方向に引っ張ることができる接続するための手段を含むことができる。
【0055】
上述のように、操縦点は、特定の撓みを達成するのに有利なように位置決めされることができる。本開示による操縦可能シースは、少なくとも2つないしいくつかの操縦点を含むことができ、該少なくとも2つの異なるシース操縦点は、シースの円周方向にまたは/かつシースの長手方向に沿って離間させられている。
【0056】
本開示の特定の実施形態では、操縦可能シースは、2つ、3つ、または4つのシース操縦点、好ましくは2つのシース操縦点を備えてよくまたは呈してよい。
【0057】
操縦可能シースに特定のパターンの操縦点を設計することが有利な場合がある。本開示による操縦可能シースは、少なくとも2つのまたは2つの異なるシース操縦点を有していてよく、該操縦点は、10°、20°、30°、45°、90°、120°、140°、160°、または180°の角度で離間している。
【0058】
さらに、本開示による操縦可能シースでは、少なくとも2つのまたは2つの異なるシース操縦点は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10cmの距離をもって離間している。このスペースは、上述のように、ある一定の角度にあり、円周方向または長手方向のある一定の距離と組み合わされることができる。
【0059】
したがって、本開示の好ましい実施形態は、上記少なくとも2つの異なるシース操縦点が、180°の角度と、約15~40cm、より好ましくは15~20cmの距離との組合せで離間した操縦可能シースである。
【0060】
本開示による操縦可能シースが、180°の角度で、または180°の角度でかつ5~10cm、好ましくは7cmまたは8cmのスペースをもって位置させられた2つの異なるシース操縦点を呈する場合、有利であることが示されている。
【0061】
作動時の操縦点は、協調して動く。本開示による操縦可能シースは、上記2つの異なるシース操縦点が、上記2つのアクチュエータによってカウンタ作用的に可動であることを特徴とする。
【0062】
2つのカウンタ作用アクチュエータは、該2つのアクチュエータによる両方の曲げを調節することによって、好ましくは1つの水平面内のさまざまな標的点にまたは1つの標的点に到達させることを可能にするよう、本開示による操縦可能シースを設計することが非常に有利であることが証明されている。
【0063】
一態様において、本出願の根底にある問題は、本開示による操縦可能シースを備える、例えば置換心臓弁などの医療デバイスの展開のためのカテーテルシステムによって解決される。操縦可能シースをカテーテルシャフト内に組み込むか、シース操縦点をカテーテル外側シャフト内に組み込むことが可能な場合がある。
【0064】
カテーテルは、操作に必要なすべての構成要素を備えており、それらは当業者によく知られているので、ここで詳細に説明する必要はない。
【0065】
医療デバイスを搭載するカテーテル部分(遠位で、カプセル内で可能)は、医療デバイスを解放できるようにするために、操縦可能シースの遠位端部から遠位方向に押されなければならない。したがって、医療デバイス(例えばカプセル内に装填された心臓弁プロテーゼ)を搭載する部分は、天然の弁の間違いのない面に位置決めされる。
【0066】
二重操縦可能シースは、直径および長さにおいて、プロテーゼやカテーテルなどの他の構成要素に適合する寸法を有し、該寸法は、デバイスを操作し、またプロテーゼの送達および展開を実行するのに適している。
【0067】
一態様において、二重操縦可能シースは、40フレンチ以下、好ましくは30または20フレンチ以下の外径を有し、または該外径は18フレンチである。本開示の操縦可能シースの1つの利点は、例えば心臓弁プロテーゼなどの医療デバイスの信頼性のある展開の機能を達成できることである。
【0068】
患者の脈管構造内で操作されかつ異なる方向に曲がるべき医療デバイスの、直径および長さにおけるより大きな寸法は、医療デバイスを操作するためにより大きな力を必要とする点で課題を表すことが理解されよう。さらに、押す力、引っ張る力および曲げる力を受ける部分は、このような増加した力に耐えることができる必要がある。デバイスの寸法が大きければ大きいほど、操縦可能シースの構成要素にかかる力も大きくなる。
【0069】
さらに、二重曲げまたはS字操縦の特徴を呈する開示されたデバイスにおいて、異なる方向またはカウンタ作用方向に作用する力は、この問題をさらに増大させる。
【0070】
したがって、本開示の二重操縦シースをいかなる重大な問題なしに操作することができ、また本システムが、最大40フレンチまでの寸法において増大した力要件下で、心臓弁プロテーゼのような医療デバイスを操縦するタスクと操作性とを達成できることは、予想外であった。
【0071】
特に有利な点は、外径寸法が最大40フレンチまでのまたは最大30フレンチまでの二重操縦シースにおいて機能が達成されることである。本開示のそのような操縦可能シースは、引張り手段としてケーブルを備え、該引張りケーブルは、操縦可能シースの遠位部分において引張りリングを通してループされることで、ハンドルに配置されたアクチュエータによって操作される引張り手段を形成する。
【0072】
本開示によるそのような操縦可能シースは、有利かつ驚くほど操作可能であり、例えば心臓弁プロテーゼのような医療デバイスの展開の機能を維持するように設計されている。すべての構成要素は、重大な品質問題や構成要素の破損なしに完全に機能するように設計されかつ有利には連携する。
【0073】
特に、本開示の操縦可能シースは、医療デバイスの信頼性のある展開のタスクを達成する。一実施形態では、操縦可能シースは、1つまたは複数の引張りリングを通してループされるケーブルを備えており、シースは、所定の曲げ方向を実行するためのハイポチューブを含む。ハイポチューブのような、本開示による操縦可能シースの構成要素および構成要素の組合せはまた、曲げ力、あるいは操縦可能シースおよび/またはその中に含まれるカテーテルの遠位部分を向けるのに必要な力を減らすことを可能にする。操縦可能シースおよび他の構成要素は、有利には、引張り動作や押し動作、角度曲げ、標的部位での医療デバイスの位置決めおよび展開中のシースの安定性に関連して操縦可能シースの構成要素に加えられる力に耐えるとともに支えることができ、また操縦可能シースの構成要素は、操縦可能シースの使用中に良好な信頼性を示す。
【0074】
したがって、本開示の操縦シースの構成要素の選択された組合せは、例えば心臓弁プロテーゼなどの有利なかつ信頼性のある展開を達成する。
【0075】
一態様において、本出願の根底にある問題は、本開示による操縦可能シースが使用され、規定のカテーテル点が規定の標的点に作動させられる、心臓弁プロテーゼの展開のための方法によって解決される。
【0076】
現開示による方法は、シースの遠位部分を、したがって導入されたカテーテルを、三次元標的領域内のさまざまな三次元方向に位置決めすることを有利に達成することができる。したがって、遠位シース、および医療デバイスを搭載する遠位カテーテル部分を、標的部位に対する所望の位置、面および角度に関して巧みに操ることが可能である。したがって、それにより、医療デバイスの展開を、例えば心臓弁などの天然の臓器および好ましくは弁輪または標的面に対して最適な位置合わせでもって達成することができ、最適な展開が可能になる。
【0077】
本開示による方法では、各アクチュエータをカウンタ方向に調節することによって平面内または三次元スペース内でさまざまな標的点に到達させるために、アクチュエータはカウンタ作動させられる。これは、例えば図15cに例示されている。
【0078】
本開示による方法の一態様では、シース操縦点は、必要に応じて作動させられることができ、操縦可能シースの遠位部分または遠位カテーテル部分を、間違いのない、所望の展開および解放位置のために所望の標的点に到達させることができ、アクチュエータは、シースのS字形または操縦シースのS字状のジオメトリが本質的にもたらされるようにカウンタ作動させられる。
【0079】
本開示による方法の一態様では、標的点は、カテーテル内のプロテーゼまたは医療デバイスが移植部位の移植面に垂直となるように標的化されることができる。
【0080】
本開示による方法の一態様では、例えば置換心臓弁などの展開されるべきプロテーゼまたは医療デバイスは、天然の弁輪の本質的に中央にかつ/または天然の弁輪面に対して本質的に垂直に展開される。
【0081】
一態様において、本開示は、心臓弁が、本開示による操縦可能シースまたは/および上述のもしくは当業者に知られたカテーテルシステムを使用して展開される、心臓弁プロテーゼの展開のための方法に関する。
【0082】
実施例
以下は、本開示の好ましい態様を説明するものであり、いかなる態様または方法でも限定するものと解釈されるべきではない。さらに、当業者は、本開示の上記および下記の任意の態様および特徴を、本開示で開示された残りの特徴のいずれかと一緒に使用することができ、また組み合わせることができることを理解するであろう。本開示は、そのようないかなる特徴を、特徴の組合せに関して、いかなる意味においても拘束されることなくまたは制限されることなく、本開示で開示された他のいかなる特徴と組み合わせることができる、と理解されるべきである。
【0083】
実施例1
好ましい実施形態において、操縦可能シースは、デュロメータを異にするいくつかのポリマを備えてなるシースの外側部分を備えることができる。シースの近位側にはより高いデュロメータの材料が使用される一方、材料のデュロメータは、遠位端部に近づくほど減少する。遠位端部のより柔らかい材料は、シースの曲げを容易にする。シースは内側にPTFEライナを含み、該PTFEライナは、シースを通って進行するカテーテルに対する摩擦を低減する。PTFEライナとポリマジャケットとの間では、補強構造がシースの挙動にさらに影響を与える。可能な補強材は、編組、コイルおよびレーザカットされたハイポチューブである。一般的な材料は、金属、ほとんどがステンレス鋼であるが、ポリマモノフィラメントを用いることもできる。補強材の設計により、遠位区域における所望の曲げ半径および曲げ角度と、概して各区域における剛性とが決まる。上記2つの操縦点の距離は、15~90mmであり、好ましくは70または80mmである。
【符号の説明】
【0084】
25D Pebax(登録商標)の材料剛性(=ポリエーテル-ブロック-アミド-ブロック-コポリマ=熱可塑性エラストマ)
40D Pebax(登録商標)の材料剛性(=ポリエーテル-ブロック-アミド-ブロック-コポリマ=熱可塑性エラストマ)
72D Pebax(登録商標)の材料剛性(=ポリエーテル-ブロック-アミド-ブロック-コポリマ=熱可塑性エラストマ)
101 一方向シース
102 送達システム/カテーテル
103 インプラント/プロテーゼ
104 移植部位
105 S字形シース(二重操縦可能シース)
106 シースの遠位端部の標的点(移植部位に対して直角であり、距離X離れる)
107 遠位曲げ
108 近位曲げ
109 遠位引張りリング
110 遠位引張りリングのケーブル
111 近位引張りリング
112 近位引張りリングのケーブル
113 (遠位引張りリングのケーブルを作動させる)第1アクチュエータ
114 (近位引張りリングのケーブルを作動させる)第2アクチュエータ
115 レーザカットされたハイポチューブ
116 引張りリングの開口
Gr Grilamid(登録商標)(=ポリアミド)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18