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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】トンネル覆工方法及びトンネル覆工構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20250424BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021084060
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177650
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 貴志
(72)【発明者】
【氏名】羽田 滋
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-120395(JP,A)
【文献】特開平07-034791(JP,A)
【文献】特開平10-184284(JP,A)
【文献】特開2018-053449(JP,A)
【文献】特開平02-183094(JP,A)
【文献】特開平04-161599(JP,A)
【文献】特開平02-171496(JP,A)
【文献】特開平04-238999(JP,A)
【文献】特開2004-300893(JP,A)
【文献】特開2017-031620(JP,A)
【文献】特開平10-115195(JP,A)
【文献】特開2015-113598(JP,A)
【文献】特開平05-202698(JP,A)
【文献】特開平02-024493(JP,A)
【文献】特開平02-178500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き付けて構築された一次覆工コンクリートによって形成されたトンネル坑の内側に前記トンネル坑の軸方向に順次、二次覆工コンクリートであるトンネル覆工コンクリートを構築するトンネル覆工方法であって、
前記トンネル坑の内壁と、前記トンネル坑の周方向に延び前記トンネル坑の所定の位置に設けられる鋼製の第1妻板の一面と、前記トンネル坑の内壁との間に所定の隙間を形成する内周型枠と、によって区画された第1領域にコンクリートを打設し、第1二次覆工コンクリートを構築する工程と、
前記第1妻板の他面と所定の間隔をあけた位置に前記トンネル坑の周方向に延びる鋼製の第2妻板を配置する工程と、
前記第1二次覆工コンクリートが硬化した後、前記内周型枠を前記トンネル坑の前記軸方向に移動させて、前記内周型枠の端部が前記第2妻板に対向するように前記内周型枠を配置する工程と、
前記トンネル坑の内壁と、前記内周型枠と、前記第1妻板と、前記第2妻板と、によって区画された第2領域にコンクリートを打設し、前記第1妻板を前記第1二次覆工コンクリートとの間で完全に埋設して第2二次覆工コンクリートを構築する工程と、を有するトンネル覆工方法。
【請求項2】
前記第2領域にコンクリートを打設する前に、前記第2妻板の内径側に、前記第2妻板の内周側の端部と前記内周型枠との間の隙間を覆う補助妻板を設ける工程と、
前記第2二次覆工コンクリートが硬化した後に、前記補助妻板を除去する工程と、をさらに有する請求項1に記載されたトンネル覆工方法。
【請求項3】
前記第2二次覆工コンクリート内に埋設される鉄筋を前記第1領域にコンクリートを打設する前に前記第2領域に配置する工程をさらに有する請求項1または2に記載されたトンネル覆工方法。
【請求項4】
吹き付けて構築された一次覆工コンクリートによって形成されたトンネル坑の内側に、型枠及び妻板によって区画された空間にコンクリートを打設して構築される二次覆工コンクリートを有するトンネル覆工構造であって、
前記トンネル坑の内壁の周方向に沿って打設されたコンクリートと、
前記トンネル坑の内壁の前記周方向に延在するとともに、前記トンネル坑の軸方向に所定の間隔をあけて設けられ、前記コンクリート内に完全に埋設された鋼製の複数の前記妻板と、を備えるトンネル覆工構造。
【請求項5】
前記妻板の内周側の端部に、前記コンクリートが打設されている請求項4に記載されたトンネル覆工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工方法及びトンネル覆工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、トンネル覆工方法として、スチールフォーム(セントル)の端部に妻板を固定し、トンネル坑の内壁とセントルと妻板で覆われた領域にコンクリートを打設することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭49-93531号(実願昭47-137027号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、コンクリートが硬化した後に妻板を除去しているので、その分、作業時間を必要としていた。
【0005】
本発明は、トンネルのコンクリート覆工作業の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトンネル覆工方法は、吹き付けて構築された一次覆工コンクリートによって形成されたトンネル坑の内側に前記トンネル坑の軸方向に順次、二次覆工コンクリートであるトンネル覆工コンクリートを構築するトンネル覆工方法であって、トンネル坑の内壁と、トンネル坑の周方向に延びトンネル坑の所定の位置に設けられる鋼製の第1妻板の一面と、トンネル坑の内壁との間に所定の隙間を形成する内周型枠と、によって区画された第1領域にコンクリートを打設し、第1二次覆工コンクリートを構築する工程と、第1妻板の他面と所定の間隔をあけた位置にトンネル坑の周方向に延びる鋼製の第2妻板を配置する工程と、第1二次覆工コンクリートが硬化した後、内周型枠をトンネル坑の軸方向に移動させて、内周型枠の端部が第2妻板に対向するように内周型枠を配置する工程と、トンネル坑の内壁と、内周型枠と、第1妻板と、第2妻板と、によって区画された第2領域にコンクリートを打設し、第1妻板を第1二次覆工コンクリートとの間で完全に埋設して第2二次覆工コンクリートを構築する工程と、を有する。
【0007】
また、本発明のトンネル覆工構造は、トンネル坑の内壁の周方向に沿って打設されたコンクリートと、トンネル坑の内壁の周方向に延在するとともに、トンネル坑の内壁の軸方向に所定の間隔をあけて設けられ、コンクリート内に埋設された鋼製の妻板と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、妻板を取り外さず、そのままコンクリート内に埋設しているので、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のトンネル坑の軸方向における断面図である。
図2】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑を軸方向から見た断面図である。
図3A】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図3B】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図3C】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図3D】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図3E】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図3F】本実施形態の覆工工程におけるトンネル坑の図2に示すIII-III線に沿う部分断面図である。
図4】本実施形態の木製の補助妻板の正面図である。
図5】比較例に係る妻板の支持構造を示す図である。
図6】比較例に係る妻板の支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態に係るトンネル覆工方法は、トンネルTを造成する際に、地山10を掘削することにより生じた掘削坑10aの内壁10bにコンクリートを覆工する方法に関するものである。具体的には、本実施形態に係るトンネル覆工方法は、地山10を爆薬を用いて爆破して掘削することにより生じた掘削坑10a、あるいは地山10を掘削機などによって掘削することにより生じた掘削坑10aの内壁10bに対してコンクリートを吹き付ける一次覆工後に行う二次覆工に関するものである。以下に、図1から図4を参照しながら、本実施形態に係るトンネル覆工方法について具体的に説明する。
【0012】
本実施形態のトンネル覆工方法では、二次覆工コンクリート打設用のセントル2(移動式型枠装置)(図2参照)を、トンネルTの軸方向(掘削坑10aの軸方向)に所定距離ずつ移動させて、掘削坑10aの軸方向に順次、二次覆工コンクリート12を構築する。二次覆工コンクリート12は、一次覆工コンクリート11の内壁11aの形状に沿う略円弧状に形成される。なお、以下の説明では、掘削坑10aの内壁10bに対してコンクリートを吹き付けて一次覆工コンクリート11が既に構築され、その一次覆工コンクリート11の内壁11aに既に防水シートSが装着された後の工程について説明する。また、本実施形態では、一次覆工コンクリート11によって形成された坑をトンネル坑1という。
【0013】
まず、図2を参照して、セントル2及び内周型枠20について説明する。
【0014】
セントル2は、車輪(図示せず)を備えており、掘削坑10a内に敷設されているレール(図示せず)に沿って移動可能に構成される。また、セントル2は、任意の位置で固定可能であり、内周型枠20をトンネルTの径方向(掘削坑10aの径方向)に移動させる油圧ジャッキ(図示せず)を備える。
【0015】
内周型枠20は、防水シートSによって覆われた一次覆工コンクリート11の内壁11aとの間に所定の隙間(空間)を空けて配置される。内周型枠20は、トンネルTの軸方向において、二次覆工コンクリート12と同程度の長さを有する(図3Aから図3F参照)。内周型枠20の長さは、例えば、10m程度であるが、これに限らず、内周型枠20の長さは、10m以上あるいは10m以下であってもよい。
【0016】
次に、二次覆工コンクリート12の具体的な覆工方法について説明する。本実施形態のトンネル覆工方法では、トンネルTの軸方向に沿う異なる領域に、二次覆工コンクリート12、妻板31、補助妻板32、鉄筋4などの同一の要素が設けられるため、以下では、便宜上、二次覆工コンクリート12A、二次覆工コンクリート12B、妻板31A、妻板31Bのように同一の要素であってもA,Bなど異なる付番を付して説明する。
【0017】
図3Aに示すように、二次覆工コンクリート12A内に埋設される鉄筋4Aを、所定の位置に配置する。鉄筋4Aは、二次覆工コンクリート12Aを含むトンネル覆工体の剛性を向上させるものである。鉄筋4Aは、例えば、一次覆工コンクリート11を介して支持されたアンカーである固定部材(図示せず)に固定される。
【0018】
次に、図3Aに示すように、トンネル坑1の所定の位置に、妻板3A及び妻板3Bを配置する。妻板3Aと妻板3Bとは、トンネル坑1の軸方向に所定の間隔をあけて配置される。本実施形態では図3A~Fの矢印Yの方向に順番に二次覆工コンクリート12が打設される。
【0019】
妻板3Aは、内周型枠20の一端部20a側に設けられ、防水シートSによって覆われた一次覆工コンクリート11の内壁11aと内周型枠20との間の隙間を覆い区画する。妻板3Aは、トンネル坑1の坑口部を含めて坑内において二次覆工コンクリート12を構築する場合に用いられる。妻板3Aは、トンネル坑1の周方向に一次覆工コンクリート11の内壁11a沿うように複数のユニットにより構成されて設けられる(図示せず)。周方向に隣り合う妻板3Aの間は、コンクリートCが漏れ出ないようにシール材などを設けるなどの処置が施される。なお、周方向に隣り合う妻板3Aを密着させて配置する(例えば、隣り合う妻板3A同士を溶接する、あるいは隣り合う妻板3A同士を嵌合させる)ことができる場合には、シール材は不要である。
【0020】
図2及び図3Aなどに示すように、妻板3Bは、トンネル坑1の周方向に延びる鋼製の妻板31と、妻板31の内径側に設けられ、妻板31の内周側の端部31aと内周型枠20との間の隙間を覆う木製または鋼製の補助妻板32と、を備える。図2に示すように、複数の妻板31が、トンネル坑1の周方向に一次覆工コンクリート11の内壁11aに沿うように並んで設けられる。また、複数の補助妻板32が、妻板31の内周縁とオーバーラップするようにして、トンネル坑1の周方向に並んで設けられる。周方向に隣り合う妻板31の間及び周方向に隣り合う補助妻板32の間は、コンクリートCが漏れ出ないようにシール材などを設けるなどの処置が施されている。なお、隣り合う妻板31同士、及び隣り合う補助妻板32同士を密着させて配置する(例えば、隣り合う妻板31同士を溶接する、あるいは隣り合う妻板31,補助妻板32同士を嵌合させる)ことができる場合には、シール材は不要である。
【0021】
妻板31Aは、鉄筋4Aに鋼製の支持部材5Aを介して固定される。具体的には、支持部材5Aは、一端が鉄筋4Aに結束部材などによって固定され、妻板31Aを貫通するようにして妻板31Aに支持される。支持部材5Aの外周には、おねじが形成されており、妻板31Aの両側面からナット6を締め付けることで、妻板31Aが所定の位置に固定される。なお、これに限らず、妻板31Aを、例えば、トンネル坑1の一次覆工コンクリート11の内壁11aに防水シートSを介在させて支持されたアンカー(図示せず)などに固定する、あるいは、これらの両方の手段を用いて妻板31Aを固定するようにしてもよい。
【0022】
次に、内周型枠20を備えたセントル2(移動式型枠装置)(図2など参照)をトンネル坑1の軸方向に移動させ、二次覆工コンクリート12Aを構築する位置に配置する。具体的には、図3Aに示すように、内周型枠20の他端部20bが妻板31Aに対向するように内周型枠20を配置する。なお、セントル2を移動させる工程と妻板3Aを配置する工程との順序を入れ替えてもよい。
【0023】
上述のようにして、二次覆工コンクリート12Aを構築する位置に内周型枠20を配置した後、図3Aに示すように、補助妻板32Aを妻板31Aと内周型枠20とに支持、固定し、妻板31Aの内周側の端部31aと内周型枠20との間の隙間を覆うように配置する。
【0024】
図4に示すように、補助妻板32(補助妻板32A)の一端側(妻板31側)には、切り欠き32aが設けられ、補助妻板32(補助妻板32A)の他端側(内周型枠20側)には、切り欠き32bが設けられる。図3Aなどに示すように、補助妻板32Aの一端は、妻板31Aに固定されたボルト31bを切り欠き32aに挿入した状態でナット7を締め付けることによって支持、固定される。また、補助妻板32Aの他端は、内周型枠20に固定されたボルト21を切り欠き32bに挿入した状態で、ボルト21の先端に取り付けられたブラケット22と補助妻板32Aとの間にくさび8を打ち込むことにより、内周型枠20の他端部20b側の側面に押し付けられることで支持、固定される。
【0025】
このようにして、防水シートSによって覆われた一次覆工コンクリート11の内壁11aと、妻板3Aの側面と、妻板31Aの鉄筋4A側の側面(一面31c)と、補助妻板32Aの鉄筋4A側の側面と、内周型枠20と、によってコンクリートC(二次覆工コンクリート12A)を打設するための第1領域R1が区画される。
【0026】
次に、図3Bに示すように、この第1領域R1にコンクリートCを打設する。そして、このコンクリートCが硬化することにより、二次覆工コンクリート12Aを含むトンネル覆工体が構築される。
【0027】
本実施形態のトンネル覆工方法では、図3Cに示すように、第1領域R1内のコンクリートCが硬化するまでの間に、次に構築する二次覆工コンクリート12B内に埋設される鉄筋4Bを配置する。鉄筋4Bは、鉄筋4Aと同様に、例えば、一次覆工コンクリート11を介して支持されたアンカーである固定部材(図示せず)に固定される。
【0028】
次に、図3Dに示すように、鉄筋4Bに鋼製の支持部材5Bを固定し、支持部材5Bに妻板31Bを固定する。新たに配置する妻板31Bは、第1領域R1を区画する妻板31Aの他面31dから所定の間隔をあけた位置に配置される。なお、支持部材5Bを用いた妻板31Bの固定方法は、妻板31Aの固定方法と同様であるので説明を省略する。また、所定の間隔は、内周型枠20の軸方向の長さより短くなるように設定される。このような設定とすることにより、二次覆工コンクリート12BのコンクリートCを打設してトンネル覆工体を構築する際に、内周型枠20と二次覆工コンクリート12Aを打設する領域とをオーバーラップさせることができる(図3E図3F参照)。これにより、二次覆工コンクリート12Bを構築する際に、二次覆工コンクリート12Aと二次覆工コンクリート12Bとの間や、二次覆工コンクリート12Aと内周型枠20との間に隙間が生じることを防止できる。
【0029】
そして、第1領域R1における二次覆工コンクリート12Aが硬化した後、補助妻板32Aを除去する。補助妻板32Aは、ナット7とくさび8を取り外すことにより簡単に除去することができる。なお、このとき、妻板31A及び支持部材5Aは除去しない。
【0030】
次に、図3Eに示すように、内周型枠20をトンネル坑1の軸方向に移動させて、内周型枠20の他端部20bが妻板31Bの内周側の端部31aに対向するように内周型枠20を配置する。
【0031】
その後、図3Eに示すように、補助妻板32Bを妻板31Bと内周型枠20とに支持、固定し、妻板31Bの内周側の端部31aと内周型枠20との間の隙間を覆うように配置する。これにより、防水シートSによって覆われた一次覆工コンクリート11の内壁11aと、妻板31Aの側面(他面31d)と、二次覆工コンクリート12Aと、内周型枠20と、妻板31Bの鉄筋4B側の側面(一面31c)と、補助妻板32Bの鉄筋4B側の側面と、によってコンクリートC(二次覆工コンクリート12B)を打設するための第2領域R2が区画される。
【0032】
次に、図3Fに示すように、この第2領域R2にコンクリートCを打設する。このとき、コンクリートCを妻板31Aが埋設されるように打設する。そして、このコンクリートCが硬化することにより、二次覆工コンクリート12Bが構築される。
【0033】
以降は、順次同様の工程を繰り返し行って、二次覆工コンクリート12を含むトンネル覆工体をトンネル坑1の軸方向に沿って順次覆工していく。
【0034】
このように、本実施形態のトンネル覆工方法では、妻板31(妻板31A)を取り外さず、そのままコンクリートC(二次覆工コンクリート12)内に埋設している。これにより、妻板31を取り外す作業時間を短縮することができるので、作業効率を向上させることができる。また、妻板31を埋設することで、二次覆工コンクリート12A、12Bの間の目地として妻板31は確実に機能する。
【0035】
また、本実施形態のトンネル覆工方法では、妻板31(妻板31A)を配置した状態で、鉄筋4(鉄筋4B)を配置している。これにより、例えば、二次覆工コンクリート12Aを打設した後、妻板31Aを撤去してから、鉄筋4Bを配置する場合に比べて、作業効率を向上させることができる。
【0036】
支持部材5A,5Bを設けない場合には、例えば、図5及び図6に示すように、次に二次覆工コンクリート12が構築される領域(以下では、この領域を「次の構築領域」という。)に、妻板31Aを支持する支持部材50,150を設けることが考えられる。具体的に説明すると、図5に示す支持部材50は、一端50aがトンネル坑1の内壁1aに固定され、他端50bが妻板31Aを側面から支持する。また、図6に示す支持部材150は、一端150aが次の構築領域に設置された足場Fに固定され、他端150bが妻板31Aを側面から支持する。このような支持部材50あるいは支持部材150を設けた場合には、次の構築領域で行う作業(例えば、鉄筋4の設置など)の妨げとなるおそれがある。これに対し、本実施形態では、妻板31A,31Bを支持する支持部材5A,5BをコンクリートC内に埋設される鉄筋4A,4Bに固定する構造としている。よって、次の構築領域に支持部材50あるいは支持部材150(足場F)のような作業の妨げとなるような部材が存在しないので、作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態のトンネル覆工方法では、妻板31を二次覆工コンクリート12内に完全に埋没させて、妻板31の内周側の端部31a(トンネル坑1の内径側の端面)である端面をコンクリートCを打設することによって覆っている。妻板31は鋼製であるため、妻板31の内周側の端部31aが外部に露出すると腐食するおそれがある。このため、妻板31を二次覆工コンクリート12内に完全に埋没させることにより、妻板31が腐食することを防止できる。
【0038】
なお、上記実施形態における一次覆工コンクリート11の内壁11aが、特許請求の範囲の記載におけるトンネル坑の内壁に相当し、二次覆工コンクリート12が、特許請求の範囲の記載におけるトンネル覆工コンクリートに相当する。また、上記実施形態における二次覆工コンクリート12A及び二次覆工コンクリート12Bが、特許請求の範囲の記載における第1二次覆工コンクリート及び第2二次覆工コンクリートにそれぞれ相当する。さらに、妻板31A及び妻板31Bが、特許請求の範囲の記載における第1妻板及び第2妻板にそれぞれ相当する。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0040】
上記実施形態では、二次覆工コンクリート12A、12B内に鉄筋4A,4Bを埋設する構成を例に説明したが、二次覆工コンクリート12A、12Bの強度が十分に確保されていれば、鉄筋4A,4Bを設けなくてもよい。
【0041】
上記実施形態では、防水シートSを設けた場合を例に説明したが、他の防水処理などによって一次覆工コンクリート11の防水性が確保されていれば、防水シートSを設けなくてもよい。
【0042】
上記実施形態では、第1領域R1にコンクリートCを打設した後、二次覆工コンクリート12B内に埋設される鉄筋4Bを配置する場合を説明したが、これに限らず、例えば、第1領域R1にコンクリートCを打設する前に第2領域R2に鉄筋4Bを配置するようにしてもよい。さらに、第1領域R1にコンクリートCを打設する前に第2領域R2の次に二次覆工コンクリート12が構築される領域にも鉄筋4を配置するようにしてもよい。また、第1領域R1にコンクリートCを打設する前に、支持部材5Bを介して鉄筋4Bに妻板31Bを固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・トンネル坑
2・・・セントル
3A,3B・・・妻板
4,4A,4B・・・鉄筋
5,5A,5B・・・支持部材
11・・・一次覆工コンクリート
11a・・・内壁
12・・・二次覆工コンクリート
12A・・・二次覆工コンクリート(第1二次覆工コンクリート)
12B・・・二次覆工コンクリート(第2二次覆工コンクリート)
20・・・内周型枠
20a・・・一端部
20b・・・他端部
31・・・妻板
31A・・・妻板(第1妻板)
31B・・・妻板(第2妻板)
31a・・・端部
31c・・・一面
31d・・・他面
32,32A,32B・・・補助妻板
R1・・・第1領域
R2・・・第2領域
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6