(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】ポリウレタンディスパージョン、ガスバリア性コート材および積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250424BHJP
C08G 18/12 20060101ALI20250424BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20250424BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250424BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250424BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20250424BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20250424BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250424BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20250424BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/12
C08G18/28 065
C08G18/08 019
C08G18/76
C08G18/75 010
C09D175/04
C09D5/00 Z
B32B27/40
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021103929
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 朋治
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193657(JP,A)
【文献】特開2020-200430(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143889(WO,A1)
【文献】特開2001-098047(JP,A)
【文献】特開2005-139436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
B32B 27/00-27/42
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂の水分散体であるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、
芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、
炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含む活性水素基含有成分との反応生成物を含み、
前記アンモニアが、前記イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を封止し、かつ、前記アニオン性基を中和しており、
前記芳香環含有イソシアネートおよび前記脂環含有イソシアネートの総量に対して、前記芳香環含有イソシアネートが、50質量%以上であ
り、
前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量が、600以上1300以下である、
ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂の水分散体であるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、
芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、
炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含む活性水素基含有成分との反応生成物を含み
前記アンモニアが、前記イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を封止し、かつ、前記アニオン性基を中和しており、
前記脂環含有イソシアネートが、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、
前記芳香環含有イソシアネートおよび前記脂環含有イソシアネートの総量に対して、前記芳香環含有イソシアネートが、50質量%以上である、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量が、800以上1300以下である、
請求項1または2に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項4】
さらに、層状無機化合物を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含む、ガスバリア性コート材。
【請求項6】
基材と、基材の表面に配置されるポリウレタン層とを備え、
前記ポリウレタン層が、請求項
5に記載のガスバリア性コート材の乾燥物である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョン、ガスバリア性コート材および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に、ポリウレタン樹脂を含む樹脂層(以下、ポリウレタン層)を形成することにより、基材にガスバリア性を付与することが知られている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の製造方法としては、次のものが提案されている。まず、XDI112.9gと、NBDI185.5gと、エチレングリコール55.9gと、ジメチロールプロピオン酸40.2gとを反応させ、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを得る。次いで、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーに、25重量%アンモニア水61.2gを加え、イソシアネート残基を封鎖するとともに、カルボキシル基を中和させる。その後、反応生成物に水を加えて乳化分散させる。これにより、水分散型ポリウレタン樹脂を得る(例えば、特許文献1(製造例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリウレタン層としては、ガスバリア性のさらなる向上が要求される。
【0006】
本発明は、ガスバリア性に優れるポリウレタン層を形成できるポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材、さらに、ポリウレタン層を備える積層体である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ポリウレタン樹脂の水分散体であるポリウレタンディスパージョンであって、前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応生成物であり、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含む活性水素基含有成分との反応生成物を含み、前記アンモニアが、前記イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を封止し、かつ、前記アニオン性基を中和しており、前記芳香環含有イソシアネートおよび前記脂環含有イソシアネートの総量に対して、前記芳香環含有イソシアネートが、50質量%以上である、ポリウレタンディスパージョンを、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量が、800以上1300以下である、上記[1]に記載のポリウレタンディスパージョンを、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、さらに、層状無機化合物を含む、上記[1]または[2]に記載のポリウレタンディスパージョンを、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含む、ガスバリア性コート材を、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、基材と、基材の表面に配置されるポリウレタン層とを備え、前記ポリウレタン層が、上記[4]に記載のガスバリア性コート材の乾燥物である、積層体を、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応生成物である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基が、アンモニアにより封止されている。さらに、アニオン性基がアンモニアにより中和されている。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの原料のポリイソシアネート成分が、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを所定の比率で含んでいる。そのため、本発明のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア性に優れるポリウレタン樹脂を含む。
【0013】
その結果、本発明のポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材は、ガスバリア性に優れるポリウレタン層を形成できる。
【0014】
本発明の積層体では、ポリウレタン層が、上記ガスバリア性コート材の乾燥物である。そのため、本発明の積層体は、ガスバリア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂の水分散体である。ポリウレタン樹脂としては、例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が挙げられる。なお、ガスバリア性とは、酸素の透過率を低下させる性質である。
【0017】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応により得られる反応生成物である。イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応により得られる反応生成物である。
【0018】
つまり、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との一次反応生成物である。ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの二次反応生成物である。
【0019】
イソシアネート基末端プレポリマーは、分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。イソシアネート基末端プレポリマーは、上記の通り、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応によって、得られる。
【0020】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを含み、好ましくは、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートからなる。
【0021】
芳香環含有イソシアネートは、1分子中に1つ以上の芳香環と2つ以上のイソシアネート基とを含有するポリイソシアネートである。芳香環含有イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0022】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体および芳香族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート誘導体としては、芳香族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が、挙げられる。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0023】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0024】
芳香環含有イソシアネートは、単独使用または2種類以上併用できる。芳香環含有イソシアネートとして、好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられ、さらに好ましくは、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
【0025】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、例えば、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、および、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。キシリレンジイソシアネート(XDI)として、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、および、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)が挙げられる。
【0026】
脂環含有イソシアネートは、1分子中に1つ以上の脂環と2つ以上のイソシアネート基とを含有するポリイソシアネートである。脂環含有イソシアネートとしては、例えば、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0027】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環族ポリイソシアネート単量体および脂環族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート誘導体としては、脂環族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0028】
脂環含有イソシアネートは、単独使用または2種類以上併用できる。脂環含有イソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられ、さらに好ましくは、脂環族ジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が挙げられる。
【0029】
脂環含有イソシアネートとして、とりわけ好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)およびビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)の併用が挙げられる。メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)およびビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が併用される場合、それらの割合は、ガスバリア性の観点から、設定される。
【0030】
例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)およびビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)の総量100質量部に対して、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、15質量部以上である。また、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。また、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)およびビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)の総量100質量部に対して、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上である。また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が、例えば、99質量部以下、好ましくは、95質量部以下、より好ましくは、90質量部以下、さらに好ましくは、85質量部以下である。
【0031】
また、ポリイソシアネート成分は、任意成分として、鎖状脂肪族ポリイソシアネートを含むことができる。鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、1分子中に芳香環および脂環を含有せず、2つ以上のイソシアネート基を含有するポリイソシアネートである。鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体および鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0032】
ポリイソシアネート成分において、鎖状脂肪族ポリイソシアネートの含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、鎖状脂肪族ポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。すなわち、芳香環含有イソシアネートおよび/または脂環含有イソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネートを含有せず、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートからなる。
【0033】
ポリイソシアネート成分において、芳香環含有イソシアネートの含有割合は、脂環含有イソシアネートの含有割合よりも多い。
【0034】
より具体的には、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートの総量に対して、芳香環含有イソシアネートが、50質量%以上、好ましくは、50質量%を超過、より好ましくは、55質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上である。また、芳香環含有イソシアネートが、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。また、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートの総量に対して、脂環含有イソシアネートが、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上である。また、脂環含有イソシアネートが、例えば、50質量%以下、好ましくは、50質量%未満、より好ましくは、45質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0035】
芳香環含有イソシアネートの含有割合、および、脂環含有イソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、とりわけ優れたガスバリア性を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0036】
活性水素基含有成分としては、ポリオール成分が挙げられる。ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物とを含んでいる。
【0037】
炭素数2~6の短鎖ジオールは、水酸基を2つ有し、炭素数2~6の有機化合物である。なお、短鎖ジオールの分子量は、例えば、50以上であり、例えば、650以下、好ましくは、500以下、より好ましくは、400以下、さらに好ましくは、300以下である。なお、短鎖ジオールが分子量分布を有する場合、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0038】
短鎖ジオールとしては、例えば、炭素数2~6のアルカンジオール、炭素数2~6のエーテルジオールおよび炭素数2~6のアルケンジオールが挙げられる。
【0039】
炭素数2~6のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。炭素数2~6のエーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。炭素数2~6のアルケンジオールとしては、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンが挙げられる。これら短鎖ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。短鎖ジオールとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~6のアルカンジオールが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0040】
炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0041】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、アニオン性基と、活性水素基とを含有する化合物である。なお、アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)、および、スルホ基(スルホン酸基)が挙げられ、好ましくは、カルボキシ基が挙げられる。また、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。
【0042】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物が挙げられる。
【0043】
カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられる。カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。ポリヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸および2,2-ジメチロール吉草酸が挙げられる。これらカルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物として、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0044】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0045】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオールを含有できる。その他の低分子量ポリオールは、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物とを除く低分子量ポリオールである。低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有する、比較的低分子量の有機化合物である。なお、低分子量ポリオールの分子量は、50以上、650以下、好ましくは、500以下である。その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7以上のジオール、および、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0046】
炭素数7以上のジオールとしては、例えば、アルカン(炭素数7~20)-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAおよびビスフェノールAが挙げられる。これら炭素数7以上のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、3価アルコールおよび4価アルコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンおよび2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールが挙げられる。4価アルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)およびジグリセリンが挙げられる。これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
さらに、その他の低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が650以下のポリエーテルポリオール、数平均分子量が650以下のポリエステルポリオール、および、数平均分子量が650以下のポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0049】
その他の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。その他の低分子量ポリオールとして、耐水性および水分散安定性の観点から、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0050】
活性水素基含有成分が、3価以上のアルコールを含有する場合、活性水素基含有成分の総量に対して、3価以上のアルコールの割合が、例えば、0.1モル%以上、好ましくは、1モル%以上、より好ましくは、3モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下、より好ましくは、10モル%以下である。なお、活性水素基含有成分における3価以上のアルコールのモル割合は、水酸基当量(分子量/水酸基数)および配合量に基づいて、公知の方法で算出される。
【0051】
また、活性水素基含有成分が、その他の低分子量ポリオールを含有する場合、その他の低分子量ポリオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
【0052】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの併用割合は、それらの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0053】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0054】
その他の低分子量ポリオールの含有割合が上記範囲であれば、優れた分散性を確保できる。
【0055】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、高分子量ポリオールを含有できる。高分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物(重合物)である。なお、高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、650を超過し、例えば、20000以下である。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
しかし、高分子量ポリオールは、ポリウレタン樹脂(後述)のガスバリア性を低下させる場合がある。そのため、ポリオール成分は、好ましくは、高分子量ポリオールを含有しない。
【0057】
すなわち、ポリオール成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなるか、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0058】
イソシアネート基末端プレポリマーは、上記各成分を所定の当量比で反応させることによって、得られる。イソシアネート基末端プレポリマーの合成において、当量比とは、活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)である。
【0059】
当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1を超過し、好ましくは、1.1以上である。また、当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、20以下、好ましくは、10以下である。
【0060】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの合成では、公知の重合方法が採用される。重合方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。重合方法として、反応性を調整する観点から、好ましくは、溶液重合が採用される。バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して反応させる。反応温度は、例えば、75~85℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を、有機溶媒中で配合して反応させる。反応温度は、例えば、20~80℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。
【0061】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0062】
また、上記重合では、必要に応じて、触媒を添加できる。触媒としては、例えば、アミン系触媒および有機金属触媒が挙げられる。これら、触媒は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、触媒の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0063】
また、この方法では、上記重合を、例えば、反応生成物中のイソシアネート基濃度が後述の範囲に到達したときに、終了させる。また、この方法では、公知の除去方法で、未反応のポリイソシアネート成分を除去することができる。除去方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。
【0064】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0065】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、ポリウレタン樹脂の数平均分子量を後述する範囲に調整する観点から、例えば、1.5質量%以上、好ましくは、2.0質量%以上、より好ましくは、3.0質量%以上、さらに好ましくは、4.0質量%以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、8.0質量%以下、好ましくは、7.0質量%以下、より好ましくは、6.0質量%以下、さらに好ましくは、5.5質量%以下である。
【0066】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの酸価は、例えば、20mgKOH/g以上、好ましくは、25mgKOH/g以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの酸価は、例えば、45mgKOH/g以下、好ましくは、40mgKOH/g以下である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーの酸価は、原料成分の仕込み比から算出できる。
【0067】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上である。また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0068】
次いで、この方法では、イソシアネート基末端プレポリマー(一次反応生成物)と、アンモニアとを反応させて、ポリウレタン樹脂(二次反応生成物)を得る。
【0069】
より具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとを、例えば、水中で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基をアンモニアによって封止し、かつ、イソシアネート基末端プレポリマー中のアニオン性基をアンモニアによって中和することにより、ポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0070】
このような方法では、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる。イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる方法は、特に制限されない。例えば、水を撹拌しながら、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加する。この場合、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水が、100~1000質量部である。
【0071】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液に、アンモニアを供給し、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を、アンモニアによって封止する。すなわち、アンモニアは、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を封止する封止剤である。
【0072】
また、上記のイソシアネート基末端プレポリマーの合成において、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が原料として使用されているため、イソシアネート基末端プレポリマー中には、アニオン性基が含まれている。そのため、アンモニアは、アニオン性基を中和する中和剤として、兼用される。
【0073】
アンモニアは、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーに対し、気体として供給されてもよく、また、水溶液(アンモニア水)として供給されてもよい。好ましくは、アンモニアは、水溶液として供給される。アンモニアの水溶液(アンモニア水)におけるアンモニア濃度は、特に制限されず、例えば、1~30質量%である。
【0074】
アンモニアの水溶液は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液に滴下される。アンモニアの供給量は、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基とアニオン性基との総量に応じて、設定される。例えば、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基とアニオン性基との総量に対して、アンモニアの当量比(アンモニア/イソシアネート基+アニオン性基)が、例えば、0.6以上、好ましくは、0.8以上であり、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。反応温度は、例えば、10℃~40℃である。反応時間は、例えば、0.1~10時間である。
【0075】
また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、有機溶剤および/または水を除去できる。また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、水を添加できる。さらに、この方法では、固形分濃度を調整するために、溶剤を添加できる。溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端がアンモニアにより封止されたポリウレタン樹脂が得られる。また、ポリウレタン樹脂が水および/または有機溶剤に分散されたポリウレタンディスパージョン(PUD)が得られる。
【0077】
ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、比較的小さい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量を小さくすることにより、粘度上昇を抑制し、分散性の向上を図ることができる。さらに、ポリウレタン樹脂の数平均分子量を小さくすることにより、ガスバリア性(酸素バリア性)に加えて、水蒸気バリア性の向上を図ることができる。
【0078】
ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、例えば、600以上、好ましくは、700以上、より好ましくは、800以上、さらに好ましくは、900以上、とりわけ好ましくは、1000以上である。また、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、例えば、2000以下、好ましくは、1700以下、より好ましくは、1500以下、さらに好ましくは、1300以下、とりわけ好ましくは、1200以下である。ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、後述する実施例に準拠して、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により、ポリスチレン換算分子量として、測定される。
【0079】
ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0080】
ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上である。また、ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0081】
ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、50nm以上である。また、ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下である。
【0082】
また、ポリウレタンディスパージョンにおいて、ウレタン基濃度は、比較的高い。ウレタン基濃度およびウレア基濃度を高くすることにより、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0083】
ウレタン基濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ウレタン基濃度は、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。なお、ウレタン基濃度は、原料成分の仕込み比から算出できる。
【0084】
また、ポリウレタンディスパージョンは、添加剤を、適宜の割合で含むことができる。
【0085】
添加剤としては、例えば、フィラー、シランカップリング剤(後述の硬化剤を除く。)、アルコキシシラン化合物、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤、顔料、染料、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、層状無機化合物、レベリング剤、結晶核剤、架橋剤および硬化剤が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0086】
このようなポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基末端プレポリマーとアンモニアとの反応生成物である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基が、アンモニアにより封止されている。さらに、アニオン性基がアンモニアにより中和されている。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの原料のポリイソシアネート成分が、芳香環含有イソシアネートおよび脂環含有イソシアネートを所定の比率で含んでいる。そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア性に優れるポリウレタン樹脂を含む。
【0087】
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア性コート材として、好適に用いられる。
【0088】
ガスバリア性コート材は、上記のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0089】
ポリウレタンディスパージョンから水を除去することによって、ガスバリア性コート材の固形分濃度を調整することができる。また、ポリウレタンディスパージョンに水を添加することにより、ガスバリア性コート材の固形分濃度を調整することができる。さらに、ポリウレタンディスパージョンに、上記溶剤を添加することによって、ガスバリア性コート材の固形分濃度を調整することもできる。
【0090】
ガスバリア性コート材の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0091】
また、ガスバリア性コート材は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、フィラー、シランカップリング剤(後述の硬化剤を除く。)、アルコキシシラン化合物、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤、顔料、染料、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、層状無機化合物、レベリング剤、結晶核剤、架橋剤および硬化剤が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0092】
ポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材において、添加剤として、好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。ポリウレタンディスパージョンが層状無機化合物を含んでいれば、とりわけガスバリア性および水蒸気バリア性に優れるポリウレタン層が得られる。
【0093】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性および水蒸気バリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0094】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。膨潤性の層状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩、カオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物およびマイカ族粘土鉱物が挙げられる。これらは、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。これらは、単独使用または2種以上併用できる。膨潤性の層状無機化合物として、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物およびマイカ族粘土鉱物が挙げられ、より好ましくは、マイカ族粘土鉱物が挙げられる。
【0095】
層状無機化合物の配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、100質量部以上、さらに好ましくは、150質量部以上である。また、層状無機化合物の配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、例えば、500質量部以下、好ましくは、400質量部以下、より好ましくは、300質量部以下である。
【0096】
また、ポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材において、添加剤として、好ましくは、硬化剤が挙げられる。ポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材が、硬化剤を含んでいれば、ガスバリア性および水蒸気バリア性にとりわけ優れるポリウレタン層が得られる。
【0097】
硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤および反応性硬化剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。硬化剤として、好ましくは、エポキシ硬化剤、カルボジイミド硬化剤およびイソシアネート硬化剤が挙げられる。
【0098】
添加剤を添加するタイミングは、特に制限されない。例えば、添加剤は、保存前のポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材に対して添加されていてもよい。また、添加剤は、例えば、保存後のポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材(すなわち、使用直前のポリウレタンディスパージョンおよびガスバリア性コート材)に、添加されていてもよい。
【0099】
このようなガスバリア性コート材は、上記のポリウレタンディスパージョンを含むため、ガスバリア性に優れるポリウレタン層を形成できる。そのため、ガスバリア性コート材は、ガスバリア層としてのポリウレタン層を備える積層体を、好適に製造できる。
【0100】
図1において、積層体1は、基材2と、基材2の表面に配置されるポリウレタン層3とを備えている。基材2としては、例えば、プラスチック、金属蒸着プラスチック、紙、布、木、金属およびセラミックスが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0101】
基材2として、好ましくは、プラスチック、金属蒸着プラスチックおよび紙が挙げられる。プラスチックとしては、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびセルロース樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。熱可塑性樹脂として、好ましくは、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0102】
また、基材2としては、例えば、無延伸基材、一軸延伸基材および二軸延伸基材が挙げられる。また、基材2は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、基材2は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理およびアンカーコート処理が挙げられる。
【0103】
基材2の形状は、例えば、フィルム状、シート状、ボトル状およびカップ状が挙げられる。好ましくは、フィルム状が挙げられる。
【0104】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上である。また、基材2の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0105】
ポリウレタン層3は、上記のポリウレタン樹脂を含み、好ましくは、上記のポリウレタン樹脂から形成されている。ポリウレタン層3として、好ましくは、ガスバリア性コート材の乾燥物が挙げられる。
【0106】
すなわち、ポリウレタン層3は、製造効率の観点から、好ましくは、ガスバリア性コート材を基材2に塗布および乾燥させることによって、形成されている。より具体的には、ポリウレタン層3を形成するには、上記のガスバリア性コート材を、基材2の上に塗布し、乾燥させる。ガスバリア性コート材の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法およびインラインコート法が挙げられる。
【0107】
バリアコート材の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0108】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層3が形成される。その結果、基材2およびポリウレタン層3を備える積層体1が得られる。
【0109】
また、ポリウレタン層3は、必要に応じて、養生することができる。ポリウレタン層3の養生条件は、特に制限されない。例えば、養生温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。また、養生温度は、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、養生時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、養生時間は、例えば、10日間以下、好ましくは、7日間以下である。
【0110】
ポリウレタン層3の積層量は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.3g/m2以上である。また、ポリウレタン層3の積層量は、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下、より好ましくは、5g/m2以下である。
【0111】
また、積層体1において、ポリウレタン層3は、オーバーコート層であってもよく、アンカーコート層であってもよい。ポリウレタン層3がオーバーコート層である場合、ポリウレタン層3が、積層体1における最表層である。また、ポリウレタン層3がアンカーコート層である場合、ポリウレタン層3が、積層体1における中間層である。このような場合、積層体1は、さらに、ポリウレタン層3の上に積層される蒸着層(図示せず)を備えることができる。蒸着層は、公知の蒸着法によってポリウレタン層3に積層される。
【0112】
また、積層体1の合計厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上である。また、積層体1の合計厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0113】
このような積層体1は、上記のガスバリア性コート材を用いて得られるポリウレタン層3を備える。より具体的には、ポリウレタン層3は、上記ガスバリア性コート材の乾燥物である。
【0114】
すなわち、上記の積層体1では、ポリウレタン層3がポリウレタン樹脂を含んでいる。そのため、上記の積層体1は、ガスバリア性に優れる。そのため、積層体1は、各種産業分野において、好適に使用される。好ましくは、積層体1は、包装材として、好適に使用される。包装材としては、例えば、食品包装フィルム、医薬品包装フィルム、食品包装容器、光学フィルムおよび工業用フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0115】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0116】
実施例1
下記原料成分を、窒素雰囲気下、65~70℃で、イソシアネート基濃度(NCO%)が3.8質量%以下になるまで反応させた。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【0117】
原料成分
1,3-キシリレンジイソシアネート
(タケネート500、1,3-XDI、三井化学社製)121.4質量部
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
(コスモネート600、三井化学社製)52.2質量部
メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
(VestanatH12MDI、H12MDI、エボニック社製)14.1質量部
エチレングリコール39.1質量部
トリメチロールプロパン3.7質量部
ジメチロールプロピオン酸17.9質量部
メチルエチルケトン(溶剤)106.5質量部
【0118】
次いで、反応液に、アンモニア水(28質量%)66.9質量部を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーを中和させるとともに、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基を封止した。これにより、ポリウレタン樹脂を得た。
【0119】
次いで、反応液を、1019.6質量部のイオン交換水に分散させ、水分散液を得た。次いで、水分散液のフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端のイソシアネート基が封止されていることを確認した。
【0120】
その後、水分散液を、減圧下で1時間かけて40℃に昇温し、脱溶剤させることにより、固形分濃度を25質量%に調整した。これにより、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョン(PUD)を得た。ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度、粒子径、粘度およびpHを、表1に示す。
【0121】
さらに、ポリウレタンディスパージョン100質量部と、溶剤(イソプロパノール)16.67質量部と、イオン交換水50質量部とを混合した。これにより、ガスバリア性コート材を得た。
【0122】
加えて、基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム(商品名:東洋紡エステルフィルムE5102、東洋紡社製、厚み12μm)である。次いで、基材に、バーコーターを用いてガスバリア性コート材を塗布した。なお、塗布量は、乾燥時の厚み2g/m2とした。次いで、ガスバリア性コート材を塗布したフィルムを、90℃に設定した乾燥オーブンで、90秒乾燥させた。これにより、基材およびポリウレタン層を備える積層体を得た。
【0123】
実施例2~3および比較例1~5
表1~表2に記載の処方に従って、実施例1と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン、ガスバリア性コート材および積層体を得た。
【0124】
<評価>
(1)PUD外観
ポリウレタンディスパージョンの外観を、目視で確認した。
【0125】
(2)ポリウレタン樹脂の数平均分子量
0.1gのポリウレタンディスパージョンを10mLのジメチルアセトアミド(DMAc)の溶離液に溶解し、溶液を一晩静置した。この溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。ろ液を下記条件でGPC測定(ポリスチレン換算)して、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0126】
分析装置:TOSOH HLC-8320GPC+UV-8320
解析装置:TOSOH GPC Work station EcoSEC-WS
カラム:TOSOH TSK-GEL TSK gel α-M Column No.G0032+G0033
溶離液:0.01mol-LiBr/1000ml-DMAc(N,N-Dimethylacetamide)
検出器:RI 40℃
カラム温度:40℃
流速:0.6mL/min
注入量:100μL
【0127】
(3)ラミネートフィルムの製造
積層体のポリウレタン層に、接着剤としてタケラックA-969V(三井化学社製)とタケネートA-5(三井化学社製)との混合物(タケラックA-969V/タケネートA-5=3/1(質量比))を、乾燥厚み3.0g/m2となるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。次いで、接着剤の塗布面に、未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC-22(CPPフィルム)、#60、三井化学東セロ社製)をラミネートし、40℃で48時間養生し、ラミネートフィルムを得た。
【0128】
(4)ガスバリア性(OTR)
酸素透過測定装置(OX-TRAN2/22、MOCON社製)を用いて、各ラミネートフィルムの、それぞれの20℃における、相対湿度80%(80%RH)での1m2、1日および1気圧当たりの酸素透過量(OTR:cc/m2・day・atm)を測定した。また、各ラミネートフィルムを40℃で1ヶ月保管し、その後、同様にして酸素透過量(経時OTR)を測定した。
【0129】
(5)水蒸気バリア性(WVTR)
透湿カップ(テスター産業社製)を用いて、防湿包装材料の透湿度試験法(カップ法、JIS Z 0208に準拠)により、各ラミネートフィルムの40℃における、相対湿度90%(90%RH)での1m2および1日当たりの水蒸気透過量(WVTR:g/m2・day・atm)を測定した。
【0130】
【0131】
【0132】
実施例4~13
表3~表4に記載の処方で、ポリウレタンディスパージョンに層状無機化合物および/または硬化剤を添加した。また、溶剤(イソプロパノール)およびイオン交換水の添加量を変更した。さらに、基材を変更した。その他は、実施例1と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン、ガスバリア性コート材および積層体を得た。また、実施例1と同じ方法で、これらを評価した。
【0133】
【0134】
【0135】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
PUD:ポリウレタンディスパージョン
ME300-B4T:商品名ME300-B4T、層状無機化合物、固形分濃度7.8質量%、片倉コープアグリ社製
WD-725:商品名タケネートWD-726、硬化剤、イソシアネート硬化剤、固形分濃度80質量%、三井化学製
SV-02:商品名カルボジライトSV-02、硬化剤、カルボジイミド硬化剤、固形分濃度40質量%、日清紡ケミカル社製
KBM-403:商品名KBM-403、硬化剤、エポキシ硬化剤、信越化学製
CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム
LDPE:低密度ポリエチレンフィルム
VM-CPP:アルミニウム蒸着未延伸ポリプロピレンフィルム
AlOxPET:酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム
紙:グラシン紙
【符号の説明】
【0136】
1 積層体
2 基材
3 ポリウレタン層