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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20250424BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20250424BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C13/00 E
B60C1/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021109732
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006886
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100202636
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 麻菜美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】住友 謙太
(72)【発明者】
【氏名】大坂 岳史
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218096(JP,A)
【文献】特開2021-000855(JP,A)
【文献】特開平06-016017(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230560(WO,A1)
【文献】特開昭59-014502(JP,A)
【文献】特開2011-121587(JP,A)
【文献】特開2020-055459(JP,A)
【文献】特開2020-079041(JP,A)
【文献】特開2016-037236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60C 13/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部と、前記一対のビード部間に跨ってトロイド上に延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、を備えるタイヤであって、
それぞれ、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置を跨ぐように配置された、ゴム種の異なる2層以上のサイドゴムと、
前記2層以上のサイドゴムの少なくとも1つの境界に配置された通信装置と、
を有し、
前記タイヤは、前記ビード部のリムとの接触部分の少なくとも一部に配置された、ゴムチェーファを有し、
前記通信装置は、前記ゴムチェーファよりもタイヤ径方向外側に配置されており、
前記通信装置は、前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記2層以上のサイドゴムは、タイヤ幅方向内側の層よりもタイヤ幅方向外側の層の比誘電率が低い、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の硬度が低い、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の炭素の含有量が少ない、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の硬度が高い、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の炭素の含有量が多い、請求項1又は5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤは、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に位置するビードフィラーと、をさらに有し、
前記通信装置は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外端と同じタイヤ径方向位置に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の老化防止剤の含有量が多い、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記通信装置は、RFタグである、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記通信装置は、被覆ゴムによって被覆されていない、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤの空気圧などのタイヤの内部状態を検出するセンサや、タイヤの固有識別情報等を記憶可能な記憶部を備えるRFIDタグなど、の通信装置をタイヤ内面に取り付ける構成、又は、タイヤ内部に埋め込む構成、が知られている。例えば、通信装置としてのセンサにより、走行中のタイヤの状態を判定したり、通信装置としてのRFIDタグの記憶部から取得されるさまざまなタイヤ情報を保守サービス等に活用したりすることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、RFIDタグがカーカスプライ等の間に挟み込んで配置されたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-55450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のタイヤでは、RFIDタグがカーカスプライに接触しているため、タイヤ転動時におけるカーカスプライの変形がRFIDタグに影響し、RFIDタグの耐久性が損なわれる虞がある。
【0006】
この発明は、上述した課題を解決するためのものであり、通信装置の十分な耐久性を確保することができる、タイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイヤは、
一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部と、前記一対のビード部間に跨ってトロイド上に延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、を備えるタイヤであって、
それぞれ、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置を跨ぐように配置された、ゴム種の異なる2層以上のサイドゴムと、
前記2層以上のサイドゴムの少なくとも1つの境界に配置された通信装置と、を有することを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、通信装置の十分な耐久性を確保することができる。
【0008】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、タイヤ幅方向内側の層よりもタイヤ幅方向外側の層の比誘電率が低いことが好適である。
これにより、通信装置の十分な通信性を効果的に確保することができる。
【0009】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の硬度が低いことが好適である。

これにより、通信装置の十分な耐久性を長期的に確保しやすくなる。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の炭素の含有量が少ないことが好適である。
これにより、通信装置の十分な通信性を効果的に確保することができる。
【0011】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の硬度が高いことが好適である。
これにより、通信装置の十分な耐久性を効果的に確保することができるとともに、通信装置の、タイヤ外部からの影響による破損等を防止することができる。
【0012】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の炭素の含有量が多いことが好適である。
これにより、通信装置の、タイヤ外部からの影響による破損等を防止することができる。
【0013】
本発明のタイヤにおいては、
前記ビード部のリムとの接触部分の少なくとも一部に配置された、ゴムチェーファを有し、
前記通信装置は、前記ゴムチェーファよりもタイヤ径方向外側に配置されていることが好適である。
これにより、より効果的に十分な通信性を確保することができる。
【0014】
本発明のタイヤにおいては、
前記2層以上のサイドゴムは、前記タイヤ幅方向内側の層よりも、前記タイヤ幅方向外側の層の老化防止剤の含有量が多いことが好適である。
これにより、老化防止剤が通信装置に影響を与える虞を緩和することができるとともに、外的影響によるタイヤの劣化を効果的に防止することができる。
【0015】
本発明のタイヤにおいては、
前記通信装置は、RFタグであることが好適である。
これにより、タイヤの外部の所定の装置と無線通信することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、通信装置の十分な耐久性を確保することができる、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の各実施形態のタイヤを、適用リムに装着した状態における、幅方向断面図(半図)である。
図2】本実施形態のタイヤに配置される通信装置としてのRFタグを示す斜視図である。
図3】タイヤの転動時におけるカーカスプライのコードの挙動について説明するためのタイヤの周方向断面模式図であり、(A)は基準状態におけるタイヤを示し、(B)は、タイヤに所定の荷重を負荷した状態下での、転動時におけるタイヤを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤに利用できるものであるが、好適にはトラック又はバス用タイヤに利用できるものである。
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態のタイヤを、適用リムに装着した状態における、幅方向断面図(半図)である。
【0020】
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(すなわち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTOのSTANDARDS MANUAL 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「所定の内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
【0021】
本明細書において、「タイヤ最大幅位置」とは、一対のサイドウォール部でのカーカス同士の間のタイヤ幅方向距離が最大となるタイヤ径方向位置を意味する。
ここで、本明細書では、特に断りのない限り、タイヤ幅方向間距離等の各要素の寸法は、後述の「基準状態」で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤをリムに組み付け、上記所定の内圧を充填し、無負荷とした状態を指す。
【0022】
タイヤ1は、一対のビード部2と、一対のサイドウォール部3と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部4と、一対のビード部2間に跨ってトロイド上に延在する、少なくとも1枚(図1の例では1枚)のカーカスプライからなるカーカス5と、を備えている。ビード部2には、それぞれ一対のビードコア6が埋設されている。カーカスプライは、スチール製又は有機繊維等のコードをゴム被覆することにより形成される。図1の例において、カーカス5は、ビードコア6同士の間をトロイド状に延びる本体部5aと、本体部5aの両端から延びて、ビードコア6の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向けて折り返された一対の折り返し部5bとを含んでいる。トレッド部4の、カーカス5のクラウン域よりもタイヤ径方向外側には、複数のベルト層からなるベルト7及びトレッドゴム8が順次配置されており、このトレッドゴム8のタイヤ外表面には、例えばタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝4a等が形成されている。
【0023】
なお、図1に示すタイヤ1は、適用リムRに装着した状態である。本実施形態のタイヤ1は、ビード部2において、適用リムRに装着された際に、適用リムRと少なくとも一部が接触するように配置された、ゴムチェーファ9を備えていてもよい。また、本実施形態のタイヤ1は、ビード部2において、ビードコア6の周囲をカーカスの外側から覆う、ワイヤチェーファ10を備えていてもよい。
【0024】
図1の例において、トレッドゴム8は、ベースゴム8aと、ベースゴム8aのタイヤ径方向外側に位置するキャップゴム8bとを含むが、このような構成に限られず、トレッドゴム8は、1層のゴム又は3層以上のゴムからなるものとしてもよい。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1においては、カーカス5のタイヤ幅方向外側に、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置SWHを跨ぐように、2層以上のサイドゴム11(図1の例では、2層)が配置されている。本実施形態のタイヤ1において、サイドゴム11は、タイヤ幅方向外側の外側サイドゴム11aと、タイヤ幅方向内側の内側サイドゴム11bとを含む。サイドゴム11の層数は、2層以上であれば特に限定されず、3層以上とすることもできる。
【0026】
サイドゴム11は、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置SWHを跨ぐように配置されていれば、その配置は特に限定されない。図1の例において、サイドゴム11は、トレッド部4の両端部からサイドウォール部3に亘って延びている。
【0027】
より具体的には、図1の例において、外側サイドゴム11aのタイヤ径方向外側における端部は、ベースゴム8a及びキャップゴム8bと、タイヤ径方向位置が一部重複し、キャップゴム8bのタイヤ径方向内側における端部を、タイヤ幅方向外側から覆うように配置されている。
内側サイドゴム11bのタイヤ径方向外側における端部は、外側サイドゴム11aよりもタイヤ径方向内側に配置されている。
上記の構成に限られず、外側サイドゴム11aのタイヤ径方向外側における端部が、内側サイドゴム11bのタイヤ径方向外側における端部よりもタイヤ径方向内側に位置している等としてもよい。
また、本実施形態におけるタイヤ1では、タイヤ最大幅位置SWHにおいて、内側サイドゴム11bがカーカス本体部5aと接しているが、サイドゴム11が3層以上の場合、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b以外のサイドゴムの層が、カーカス本体部5aと接していてもよい。
【0028】
本実施形態のタイヤ1では、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)の少なくとも1つの境界(本実施形態では、外側サイドゴム11aと内側サイドゴム11bとの境界)に、通信装置12が配置されている。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合は、いずれの境界に通信装置12が配置されていてもよいが、通信性の観点から、少なくともタイヤ幅方向における最も外側の境界に、1つの通信装置12が配置されていることが好ましい。
【0029】
通信装置12は、タイヤ1の外部の所定の装置と無線通信可能な構成であればよく、通信装置12の構成は特に限定されるものではない。通信装置12は、例えば、RFタグとすることができる。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置12は、制御部及び記憶部を構成するICチップ13と、ICチップ13に接続される1つ以上のアンテナ12aと、を備える構成としてもよい。例えば、通信装置12は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナがICチップ13から互いに反対方向に延びるように設けられた、全体として長手状の形状を有していてもよい。
また、ICチップは、1つ以上のアンテナで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置12は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、通信装置12は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置12は、アクティブ型の通信装置であってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態のタイヤ1に配置される通信装置12としてのRFタグを示す斜視図である。図2に示すように、本実施形態のタイヤ1に配置される通信装置12としてのRFタグは、アンテナ12aを構成する第1アンテナ12a1及び第2アンテナ12a2と、これら第1アンテナ12a1及び第2アンテナ12a2で受信する電波により発生する誘電起電力により稼働する、制御部12b及び記憶部12cを構成するICチップ13と、このICチップ13が取り付けられている板状の支持部材12dと、ICチップ13と、第1アンテナ12a1及び第2アンテナ12a2それぞれと、を電気的に接続する導電性の導通部材12eと、を備えている。
なお、通信装置12は、被覆ゴムによって被覆されていてもよい。
【0031】
以下、本実施形態のタイヤ1の構成による作用効果について、図3を参照しながら説明する。
【0032】
図3は、タイヤの転動時におけるカーカスプライのコードの挙動について説明するためのタイヤの周方向断面模式図であり、図3(A)は基準状態におけるタイヤを示し、図3(B)は、タイヤに所定の荷重を負荷した状態下での、転動時におけるタイヤを示している。図に示す例では、実際のカーカスプライのコードの本数とは異なり、3本のコードを模式的に示している。
なお、図3においては、説明の便宜上、タイヤ周方向を矢印CDで示している。
【0033】
図3(A)に示すように、基準状態において、カーカスプライのコードは、タイヤの周方向断面において、リムから放射状に延びている。上記基準状態から、タイヤに所定の荷重を負荷した状態下で、転動させると、図3(B)に示すように、カーカスプライのコードは、接地面内において、タイヤ周方向の一方に凸となるような変形が生じる。従来の技術のように、通信装置をカーカスプライのコードに一部が接するように配置した場合においては、カーカスプライのコードの周方向の一方側への変形に伴って、通信装置の耐久性が損なわれる虞がある。
そこで、本実施形態のタイヤ1においては、2層の外側サイドゴム11aと内側サイドゴム11bとの境界に通信装置12を配置することによって、通信装置12を異なる2層のゴムで挟み込み、カーカスプライのコードの変形による影響を緩和することができ、通信装置12の十分な耐久性を確保することができる。
【0034】
ビードコア6及びその近傍には、ビードコア6及びワイヤチェーファ10等、金属部材がサイドウォール部3よりも多くなる傾向があり、これらの金属部材に起因して、サイドウォール部3よりも通信性が不安定になる虞がある。通信装置12が挟み込まれたサイドゴムは、上記の金属部材が多くなる領域よりもタイヤ径方向外側に位置しているのが一般的であり、通信装置12をサイドゴム11の境界に配置することによって、通信装置12の十分な通信性も確保することができる。
【0035】
また、サイドゴム11をゴム種の異なる2層以上のサイドゴム(本実施形態においては外側サイドゴム11aと内側サイドゴム11b)とすることによって、サイドゴムを1種のゴムからなるものとするよりも、通信装置12の十分な耐久性を確保しながら、タイヤに要求される性能や走行環境に応じた調整がしやすくなる。
【0036】
以下、第1の実施形態のタイヤ1における各構成要素の、好適な構成等について、説明する。
【0037】
本実施形態1のタイヤ1において、2層以上のサイドゴム11は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの比誘電率が低いことが好ましい。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合は、通信性の観点から、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムの比誘電率が最も低いことが好ましい。
ここで、ゴムの比誘電率は、ゴムに配合する炭素の量等を調整することによって適宜変更することができるが、比誘電率の調整方法については特に限定されない。
【0038】
比誘電率が相対的に低い外側サイドゴム11aをタイヤ幅方向外側に配置することによって、通信装置12の、タイヤ1の外部の所定の装置との十分な通信性を効果的に確保することができる。
【0039】
本実施形態のタイヤ1において、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの硬度が低いことが好ましい。
上記構成によれば、サイドゴム11の中で、タイヤ幅方向内側が相対的に高い剛性を有するものとなり、タイヤに所定の荷重を負荷した状態下での転動時において、タイヤ全体が撓むような変形が抑制される。そうすると、タイヤの変形が通信装置12へ与える影響も緩和されるため、通信装置12の十分な耐久性を長期的に確保しやすくなる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合は、通信装置12の耐久性を長期的に確保する観点から、タイヤ幅方向における最も内側のサイドゴムの硬度が最も高いことが好ましい。
ここで、ゴムの硬度とは、JIS K6253に準拠して、タイプAデュロメータ(A型)を用いて室温23℃下で測定されるJIS-A硬度を意味する。
【0040】
本実施形態のタイヤ1において、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの炭素の含有量が少ないことが好ましい。
炭素は、ゴムの比誘電率を高める要因の1つとなる虞があることから、外側サイドゴム11aの炭素の含有量を相対的に少ないものとすることで、ゴムの比誘電率が高まることを抑制し、通信装置12の十分な通信性を効果的に確保することができる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合には、通信性の観点から、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムの炭素の含有量を最も少ないものとすることが好適である。
ここで、炭素は、公知のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、カーボンブラックであり、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボン及びソフトカーボン等を用いることができる。
【0041】
本実施形態のタイヤ1において、通信装置12は、外側サイドゴム11aと内側サイドゴム11bとの境界に配置されていれば、タイヤ径方向位置については特に限定されない。タイヤ1は、上述のとおり、ビード部2のリムRとの接触部分の少なくとも一部に配置された、ゴムチェーファ9を有していてもよく、このとき、通信装置12は、ゴムチェーファ9よりもタイヤ径方向外側に配置されていることが好ましい。
【0042】
上記構成による作用効果について説明する。
ビードコア6及びその近傍には、ビードコア6及びワイヤチェーファ10等、金属部材がサイドウォール部3よりも多くなる傾向があり、これらの金属部材に起因して、サイドウォール部3よりも通信性が不安定になる虞がある。ゴムチェーファ9のタイヤ径方向外側における端部は、上記の金属部材が多くなる領域よりもタイヤ径方向外側に位置しているのが一般的であり、通信装置12をゴムチェーファ9よりもタイヤ径方向外側に配置することによって、より効果的に十分な通信性を確保することができる。
【0043】
なお、通信装置12の配置の向きについては特に限定されないが、通信装置12が、図2に示す、長手状の形状を有する場合においては、例えば、第1アンテナ12a1及び第2アンテナ12a2の長手方向が、タイヤ周方向に沿うように配置することができる。ここで、「タイヤ周方向に沿う」とは、アンテナの長手方向が、タイヤ周方向に平行である場合や、タイヤ周方向に対してわずかに傾斜している場合(例えば、タイヤ周方向に対する傾斜角度が5°以下)を含むものとする。
【0044】
本実施形態のタイヤ1において、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの老化防止剤の含有量が多いことが好ましい。
老化防止剤は、酸素やオゾン等の外的影響によるゴムの劣化を防止するためにタイヤのゴムに配合されるが、仮に、通信装置12をカーカスプライとサイドゴムの間や、老化防止剤の含有量の多いサイドゴムに埋設するように配置した場合には、長期的に、ゴムとの接触領域から、通信装置12に老化防止剤の成分が影響を及ぼす虞がある。しかしながら、サイドゴムの劣化を防止するためには、タイヤにおいて外的影響を受けやすい領域の老化防止剤を減らすことは困難である。そこで、外側サイドゴム11aの老化防止剤の含有量を相対的に高いものとすることによって、通信装置12が、老化防止剤の含有量が相対的に多いゴムと、老化防止剤の含有量が相対的に少ないゴムとの両方と接触することになり、通信装置12と老化防止剤の含有量が相対的に高いゴムとの接触領域を減らすことができ、老化防止剤が通信装置12に影響を与える虞を緩和することができる。さらに、老化防止剤を、タイヤにおいて外的影響を受けやすい領域に配置することができるので、外的影響によるタイヤの劣化を効果的に防止することができる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合には、ゴムの劣化を効果的に防止する観点から、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムの老化防止剤の含有量を最も高いものとすることが好適である。
ここで、老化防止剤は、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係るタイヤについて、図1を参照しながら説明する。第2の実施形態のタイヤ1は、サイドゴム11に用いられるゴムの、好適な硬度及び炭素の含有量に関する構成が異なる以外は、第1の実施形態のタイヤと同様の構成であり、第1の実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0046】
第2の実施形態のタイヤ1においては、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの硬度が高いことが好ましい。
上記構成によれば、通信装置12よりもタイヤ幅方向内側に、相対的に硬度が低いゴムが配置されるため、タイヤ転動時のカーカスプライのコードの変形の影響がさらに緩和され、通信装置12の十分な耐久性を効果的に確保することができる。
加えて、相対的にタイヤ幅方向外側に配置された外側サイドゴム11aの硬度を高めることによって、タイヤの走行時において、タイヤの外部からの入力に対する耐カット性及び耐摩耗性等を十分に確保することができる。そのため、通信装置12の、タイヤ外部からの影響による破損等を防止することができる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合には、カーカスプライのコードの変形の影響を緩和するとともに、通信装置12へのタイヤ外部からの影響を効果的に防止する観点から、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムの硬度が最も高く、タイヤ幅方向において最もカーカスプライに近いサイドゴムの硬度が最も低いことが好適である。
【0047】
第2の実施形態のタイヤ1においては、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの炭素の含有量が多いことが好ましい。
炭素の含有量を多くすることによる効果の1つとして、タイヤを形成するゴムの硬度を高めることが挙げられる。そこで、相対的にタイヤ幅方向外側に配置された外側サイドゴム11aの炭素の含有量を多くすることによって、外側サイドゴム11aの硬度を高め、タイヤの走行時において、タイヤの外部からの入力に対する耐カット性及び耐摩耗性等を十分に確保することができる。そのため、通信装置12の、タイヤ外部からの影響による破損等を防止することができる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合には、カーカスプライのコードの変形の影響を緩和するとともに、通信装置12へのタイヤ外部からの影響を効果的に防止する観点から、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムの炭素の含有量を最も多くすることが好適である。
【0048】
なお、第2の実施形態のタイヤ1においては、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aの炭素の含有量を多くしないものとしてもよい。この場合においては、2層以上のサイドゴム11(本実施形態では、外側サイドゴム11a及び内側サイドゴム11b)は、タイヤ幅方向内側の層である内側サイドゴム11bよりも、タイヤ幅方向外側の層である外側サイドゴム11aのシリカ含有量が多いことが好ましい。
上記構成によれば、タイヤの通信性を損なうことなく、タイヤの転がり抵抗を低減するとともに、十分なウェット性能を確保することができる。
なお、サイドゴム11が3層以上である場合には、タイヤの通信性とタイヤ本体の性能との両立を図る観点からは、タイヤ幅方向における最も外側のサイドゴムのシリカの含有量を最も多いものとすることが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤに利用できるものであるが、好適にはトラック又はバス用タイヤに利用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1:タイヤ、 2:ビード部、 3:サイドウォール部、 4:トレッド部、 4a:周方向溝、 5:カーカス、 5a:本体部、 5b:折り返し部、 6:ビードコア、 7:ベルト、 8:トレッドゴム、 8a:ベースゴム、 8b:キャップゴム、 9:ゴムチェーファ9、 10:ワイヤチェーファ、 11:サイドゴム、 11a:外側サイドゴム、 11b:内側サイドゴム、 12:通信装置、 12a:アンテナ、 12a1:第一アンテナ、 12a2:第二アンテナ、 12b:制御部、 12c:記憶部、 12d:支持部材、 12e:導電部材、 13:ICチップ
図1
図2
図3