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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】香料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61Q 13/00 20060101AFI20250424BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
A61Q13/00 101
A61Q15/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021553716
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040782
(87)【国際公開番号】W WO2021085591
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019200172
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019200173
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】三原 尚
(72)【発明者】
【氏名】桑原 裕香理
(72)【発明者】
【氏名】三木 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢哉
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-286428(JP,A)
【文献】特開2004-203839(JP,A)
【文献】国際公開第2019/101812(WO,A2)
【文献】特開2014-240441(JP,A)
【文献】特表2017-528120(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131789(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/101821(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制するための香料組成物であって、下記A群からなる群より選択される少なくとも1種の香料成分を含有し、さらに下記B群からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、香料組成物。
A群:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オー
B群:テトラヒドロ-4-メチル-2-(2-メチルプロペニル)-2H-ピラン、(3-メチルブチルオキシ)酢酸-2-プロペニル、エチル2-メチルペンタノエート、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、3,7-ジメチル-6-オクテナール、ベンジルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、4,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、5-ヘキシルオキソラン-2-オン、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-2-(シス-2-ペンテニル)-2-シクロペンテン-1-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、酢酸-1-フェニルエチル、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オン
【請求項2】
加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭抑制用である、請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の構成成分が、トランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、及び1,5-オクタジエン-3-オンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の香料組成物。
【請求項4】
カビ臭の構成成分が、1-オクテン-3-オール及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の香料組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の香料組成物を0.0001~30質量%含有する製品。
【請求項6】
加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、請求項1乃至のいずれか一項に記載の香料組成物を適用して前記悪臭を抑制することを含む、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物に関する。また、本発明は、該香料組成物を含む製品及び悪臭抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の中で不快に感じる身の回りの臭気・悪臭に対して、生活環境向上のため、より有効に消臭することが強く望まれており、その中でも近年体臭に関する意識が高まっている。
【0003】
体臭は、口臭、足臭、腋臭、頭皮臭等の「体の各部分の匂い」と「体幹より発せられる匂いを総合した匂い」に大別される。「体幹より発せられる匂いを総合した匂い」は、年齢と共に移り変わっていくことが知られており、中高年以降に認められる加齢臭は嫌われる傾向が非常に高くなっている。この加齢臭の原因物質としてトランス-2-ノネナール及びトランス-2-オクテナールなどの不飽和アルデヒドが原因であることが報告されている(特許文献1)。また、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン等のビニルケトン類は、におい閾値が非常に低く、強烈な金属臭を有し、腋臭に大きく関与することが報告されている(非特許文献1)。またノネナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン等はオフフレーバーとしても知られている(特許文献2、3、非特許文献2)。また、1-オクテン-3-オール、1,5-オクタジエン-3-オール等はカビ臭の原因物質としても知られている(非特許文献3)。
【0004】
特定のにおい物質に応答する嗅覚受容体を探索し、その活性化を特定物質で抑制するアンタゴニズムメカニズムに基づく、選択的な消臭技術の可能性が明らかになってきている。例えば嗅覚受容体OR2W1は、悪臭であるヘキサン酸に対して応答する。このOR2W1の活動を阻害する物質としてフロルヒドラールが該当し、フロルヒドラールは官能試験においてヘキサン酸による悪臭を抑制することが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-286423号公報
【文献】特開2017-153371号公報
【文献】特許第6168999号公報
【文献】特開2012-50411号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「体臭発生機構の解析とその対処(1)」飯田悟ら、J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.Vol.37,No.3(2003)
【文献】「食用油脂の臭気成分」遠藤泰志、日本油化学会誌、第48巻、第10号、(1999)
【文献】「Perfume and Flavor Cheminals(Aroma Chemicals)」S.Arctander,第1巻(1969)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知の悪臭原因物質に応答する嗅覚受容体を探索し、その嗅覚受容体を用いることで悪臭抑制素材の候補物質をスクリーニングできる可能性がある。しかし、悪臭の原因物質として知られる1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される1種以上の悪臭原因物質に応答する嗅覚受容体はこれまでに広くは知られていなかった。
このような状況の下、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される1種以上の悪臭原因物質に応答する嗅覚受容体を探索し、1-オクテン-3-オン臭、1,5-オクタジエン-3-オン臭、1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対する抑制素材の候補物質をスクリーニングする方法、及び加齢臭、腋臭、及びカビ臭の不快さを低減する悪臭抑制用の香料組成物、並びに飲食品由来のオフフレーバーを低減するフレーバー組成物を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行ったところ、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される1種以上の悪臭原因物質のそれぞれに応答する嗅覚受容体を新たに同定することに成功した。本発明者はさらに検討を進め、これらの嗅覚受容体を用いることで、嗅覚受容体アンタゴニストのマスキング効果による加齢臭、腋臭、及びカビ臭抑制素材及びオフフレーバー低減素材、さらには1-オクテン-3-オン臭抑制素材、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材、1-オクテン-3-オール臭抑制素材及び1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の評価及び選択が可能であることを見出し、OR2C1およびOR4Q3を含むこれらの嗅覚受容体の応答を抑制するアンタゴニスト候補化合物群に優れた加齢臭、腋臭及びカビ臭などの悪臭抑制効果を見出した。さらに驚くべきことに、OR2C1およびOR4Q3を含むこれらの嗅覚受容体の応答の抑制効果を示さない香料群の中の特定成分を併用することで、さらに優れた悪臭抑制効果を見出した。また、飲食品由来のオフフレーバーの低減効果を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す悪臭抑制用の香料組成物及びそれを含有する製品、並びに悪臭の抑制方法を提供するものである。
[1](a)OR2C1、OR4Q3、及び(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつトランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール、及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される少なくとも1種の悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドの前記悪臭原因物質の少なくとも1種に対する応答強度を抑制する香料成分を含有する香料組成物。
[2]前記嗅覚受容体ポリペプチドが、(a)OR2C1及び(b)OR2C1とアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、トランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール、及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される少なくとも1種の悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種である、前記[1]に記載の香料組成物。
[3]加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭抑制用である、前記[1]又は[2]に記載の香料組成物。
[4]加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の構成成分が、トランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、及び1,5-オクタジエン-3-オンからなる群より選択される少なくとも1種である、前記[3]に記載の香料組成物。
[5]カビ臭の構成成分が、1-オクテン-3-オール及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される少なくとも1種である、前記[3]に記載の香料組成物。
[6]前記香料成分が、下記A群からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の香料組成物。
A群:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、ユーカリプタス油、パチョリ油、ベチバー油
[7]前記香料成分が、さらに下記B群からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記[6]に記載の香料組成物。
B群:テトラヒドロ-4-メチル-2-(2-メチルプロペニル)-2H-ピラン、(3-メチルブチルオキシ)酢酸-2-プロペニル、エチル2-メチルペンタノエート、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、3,7-ジメチル-6-オクテナール、ベンジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、4,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、5-ヘキシルオキソラン-2-オン、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-2-(シス-2-ペンテニル)-2-シクロペンテン-1-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、酢酸-1-フェニルエチル、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オン
[8]加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制するための香料組成物であって、下記A群からなる群より選択される少なくとも1種の香料成分を含有する、香料組成物。
A群:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、ユーカリプタス油、パチョリ油、ベチバー油
[9]前記香料成分が、さらに下記B群からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記[8]に記載の香料組成物。
B群:テトラヒドロ-4-メチル-2-(2-メチルプロペニル)-2H-ピラン、(3-メチルブチルオキシ)酢酸-2-プロペニル、エチル2-メチルペンタノエート、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、3,7-ジメチル-6-オクテナール、ベンジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、4,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、5-ヘキシルオキソラン-2-オン、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-2-(シス-2-ペンテニル)-2-シクロペンテン-1-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、酢酸-1-フェニルエチル、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オン
[10]前記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の香料組成物を0.0001~30質量%含有する製品。
[11]加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の香料組成物を適用して前記悪臭を抑制することを含む、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の抑制方法。
【0010】
また、本発明は、以下に示す香料組成物及びそれを含有する製品、並びに悪臭の抑制方法を提供するものである。
[1]OR2C1及びこれとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに対する応答強度を抑制する香料成分を含有することを特徴とする香料組成物。
[2]加齢臭及び/又は腋臭抑制用である、[1]に記載の香料組成物。
[3]加齢臭及び/又は腋臭の構成成分がトランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[2]に記載の香料組成物。
[4]香料成分が下記A群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の香料組成物。
A群:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-2-ブテン-1-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、ユーカリプタス油、パチョリ油、ベチバー油
[5]さらに下記B群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする[4]に記載の香料組成物。
B群:テトラヒドロ-4-メチル-2-(2-メチルプロペニル)-2H-ピラン、(3-メチルブチルオキシ)酢酸-2-プロペニル、エチル2-メチルペンタノエート、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、3,7-ジメチル-6-オクテナール、ベンジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、4,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、5-ヘキシルオキソラン-2-オン、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-2-(シス-2-ペンテニル)-2-シクロペンテン-1-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、酢酸-1-フェニルエチル、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オン
[6][1]乃至[5]のいずれかに記載の香料組成物を0.0001~30質量%含有することを特徴とする製品。
[7]加齢臭及び/又は腋臭に対して、[2]乃至[5]のいずれかに記載の香料組成物を使用することを特徴とする加齢臭及び/又は腋臭の抑制方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の悪臭原因物質に対して応答性を示す嗅覚受容体ポリペプチドを用いて悪臭抑制素材の候補物質をスクリーニングすることで、前記悪臭原因物質に対する応答強度を抑制する香料成分を適切に選択することができ、選択された香料成分を有効成分として含有させることで、目的の悪臭抑制効果を有する香料組成物を提供することができる。
新しい香料素材を開発するために多数の候補物質の匂いを人間の嗅覚のみで評価することは、嗅覚疲労や個人差の問題があり、適切に候補物質を選択することに困難を伴う場合があるが、本発明によれば、このような問題を解消または軽減することができる。
さらに、本発明の好ましい態様によれば、OR2C1およびOR4Q3を含む前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制するアンタゴニスト候補化合物群と従来から香料等として用いられている特定の化合物群とを併用することで、アンタゴニスト候補化合物群のみを用いるよりも優れた悪臭抑制効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体OR2C1の応答の測定結果を示す図である。
図2】1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体OR4Q3の応答の測定結果を示す図である。
図3】1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体OR2C1の応答の測定結果を示す図である。
図4】1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体OR4Q3の応答の測定結果を示す図である。
図5】1-オクテン-3-オールに対する嗅覚受容体OR4Q3の応答の測定結果を示す図である。
図6】1,5-オクタジエン-3-オールに対する嗅覚受容体OR4Q3の応答の測定結果を示す図である。
図7】2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール(Hindinol(登録商標))の添加による、1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体OR2C1における応答抑制効果の結果を示す図である。
図8】1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール(Dextramber(登録商標))の添加による、1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体OR2C1の応答抑制効果の結果を示す図である。
図9】2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール(Hindinol(登録商標))の添加による、トランス-2-ノネナールに対する嗅覚受容体OR2C1における応答抑制効果の結果を示す図である。
図10】1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール(Dextramber(登録商標))の添加による、トランス-2-ノネナールに対する嗅覚受容体OR2C1の応答抑制効果の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に用いられる悪臭抑制素材のスクリーニング方法と共に、本発明の香料組成物、製品、並びに悪臭の抑制方法について具体的に説明する。
【0014】
1. 1-オクテン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法
本発明に用いられる1-オクテン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、1-オクテン-3-オンに対して応答性を示す嗅覚受容体ポリペプチドを用いて、試験物質の中から1-オクテン-3-オン臭抑制素材臭抑制素材の候補物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
(a)OR2C1、OR4Q3、及び(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び1-オクテン-3-オンを添加すること;
前記1-オクテン-3-オンに対する前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、
測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、すなわち、測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質が、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質であると同定すること、
を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いられる1-オクテン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、
(i)(a)OR2C1、OR4Q3、及び(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オンを接触させ、1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(ii)1-オクテン-3-オンに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(iii)工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答を低減させた試験物質を、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質として選択する工程と
を含む。
【0016】
本発明に用いられる1-オクテン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドに対する試験物質の応答性を指標として、試験物質の中から1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質を選択するものである。
本発明に用いられる1-オクテン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法において「試験物質」とは、特に限定するものではないが、1-オクテン-3-オン臭抑制効果の調査対象をいい、化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1-オクテン-3-オン臭抑制素材」とは、特に限定するものではないが、1-オクテン-3-オン臭を抑制することができる化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1-オクテン-3-オン臭」とは、1-オクテン-3-オンを原因物質とする臭いを意味し、例えば、マッシュルーム臭、鉄錆臭、腋臭、オフフレーバーなどを含む。以下、各工程について説明する。
【0017】
<工程(i)>
工程(i)では、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オンを接触させ、1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する。
【0018】
嗅覚受容体ポリペプチドとしては、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドが用いられる。
OR2C1はGenBankにNM_012368として登録されており、配列番号1で示される塩基配列の第53番目~第991番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)からなるポリペプチドである。
OR4Q3はGenBankにNM_172194として登録されており、配列番号3で示される塩基配列のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)からなるポリペプチドである。
これらのポリペプチドは、1-オクテン-3-オンに選択的に強く応答することから、OR2C1、OR4Q3を用いたスクリーニング方法は、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の開発に貢献できるものと期待される。
【0019】
嗅覚受容体としてこれらのポリペプチドが有するアミノ酸配列(すなわち、配列番号2、または4)と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドを用いてもよい。
【0020】
嗅覚受容体ポリペプチドは、一種で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明において嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オンを接触させ、1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されない。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で1-オクテン-3-オンと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で1-オクテン-3-オンと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オンを接触させる時間は、1-オクテン-3-オンの濃度や測定方法にも依存するため一概には言えないが、接触させた直後に応答を測定してもよく、通常、0~4時間、好ましくは2~4時間である。1-オクテン-3-オンに試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドと接触させる場合も同様である。
【0022】
嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞は、嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様では、嗅覚受容体ポリペプチドと共に、ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込んでもよい。ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込むことにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができる。
ウシロドプシンは、GenBankにNM_001014890として登録されている。ウシロドプシンは、配列番号5で示される塩基配列の第1番目から第1047番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)からなるポリペプチドである。
また、ウシロドプシンに代えて、配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができるポリペプチドを用いてもよい。
なお、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進できるものであれば、ウシロドプシンに限らず、他のポリペプチドのアミノ酸残基を用いてもよい。
【0024】
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されなく、当分野で用いられている任意の方法を用いることができる。例えば、香気化合物が嗅覚受容体ポリペプチドへ結合すると、細胞内のGタンパク質を活性化し、Gタンパク質がアデニル酸シクラーゼを活性化して、ATPを環状AMP(cAMP)へと変換し、細胞内のcAMP量を増加させることが知られている。したがって、cAMP量を測定することで嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ法等が用いられる。中でも、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することが好ましい。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、嗅覚受容体ポリペプチドの応答は、1-オクテン-3-オン存在下における測定結果を、1-オクテン-3-オンの非存在下における測定結果で割ることで求められるFoldIncrease値を指標として評価してもよい。例えば、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する場合、FoldIncrease値が好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは10以上となる濃度の1-オクテン-3-オンを使用して評価することができる。
【0026】
<工程(ii)>
工程(ii)では、1-オクテン-3-オンに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体の応答を測定する。
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は、1-オクテン-3-オンと試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドに接触させることを除いて、工程(i)で示した方法と同様の方法を用いることができる。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。工程(i)と(ii)における測定結果を適切に比較するために、工程(i)と(ii)における測定条件は、試験物質の有無を除いて、同じであることが好ましい。
【0027】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答が低減した試験物質を、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質として選択する。
本発明では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して応答の低減が見られた場合、工程(ii)で用いた試験物質を、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質として評価することができる。
【0028】
上記のようにして、試験物質の中から1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明によれば、人間の嗅覚によって行う官能評価による嗅覚疲労や個人差などによる問題を生じることなく、多数の試験物質の中から1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質を選択することができる。
選択された物質は、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の候補物質として用いることができる。選択された物質を基に必要に応じて改変等を行い、最適な匂いのする新規な化合物を開発することもできる。さらには、選択された物質を他の香料素材とブレンドして1-オクテン-3-オン臭を抑制することができ、かつ最適な匂いのする香料素材を開発することも可能である。上記スクリーニング方法を用いることにより、1-オクテン-3-オン臭抑制素材の新しい香料素材の開発に貢献することができる。
【0029】
2. 1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示す嗅覚受容体ポリペプチドを用いて、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
(a)OR2C1、OR4Q3、及び(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び1,5-オクタジエン-3-オンを添加すること;
前記1,5-オクタジエン-3-オンに対する前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、
測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、すなわち、測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質が、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質であると同定すること、
を含むことを特徴としている。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、
(i)(a)OR2C1、OR4Q3、及び(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オンを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(ii)1,5-オクタジエン-3-オンに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(iii)工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答を低減させた試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質として選択する工程と
を含む。
【0031】
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法は、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドに対する試験物質の応答性を指標として、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質を選択するものである。
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材のスクリーニング方法において「試験物質」とは、特に限定するものではないが、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制効果の調査対象をいい、化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材」とは、特に限定するものではないが、1,5-オクタジエン-3-オン臭を抑制することができる化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1,5-オクタジエン-3-オン臭」とは、1,5-オクタジエン-3-オンを原因物質とする臭いを意味し、例えば、マッシュルーム臭、鉄錆臭、腋臭、オフフレーバーなどを含む。以下、各工程について説明する。
【0032】
<工程(i)>
工程(i)では、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オンを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する。
【0033】
嗅覚受容体ポリペプチドとしては、OR2C1、OR4Q3、及びこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドが用いられる。
OR2C1はGenBankにNM_012368として登録されており、配列番号1で示される塩基配列の第53番目~第991番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)からなるポリペプチドである。
OR4Q3はGenBankにNM_172194として登録されており、配列番号3で示される塩基配列のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)からなるポリペプチドである。
これらのポリペプチドは、1,5-オクタジエン-3-オンに選択的に強く応答することから、OR2C1、OR4Q3を用いたスクリーニング方法は、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の開発に貢献できるものと期待される。
【0034】
嗅覚受容体としてこれらのポリペプチドが有するアミノ酸配列(すなわち、配列番号2、または4)と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オンに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドを用いてもよい。
【0035】
嗅覚受容体ポリペプチドは、一種で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オンを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されない。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で1,5-オクタジエン-3-オンと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で1,5-オクタジエン-3-オンと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オンを接触させる時間は、1,5-オクタジエン-3-オンの濃度や測定方法にも依存するため一概には言えないが、接触させた直後に応答を測定してもよく、通常、0~4時間、好ましくは2~4時間である。1,5-オクタジエン-3-オンに試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドと接触させる場合も同様である。
【0037】
嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞は、嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
【0038】
本発明の好ましい態様では、嗅覚受容体ポリペプチドと共に、ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込んでもよい。ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込むことにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができる。
ウシロドプシンは、GenBankにNM_001014890として登録されている。ウシロドプシンは、配列番号5で示される塩基配列の第1番目から第1047番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)からなるポリペプチドである。
また、ウシロドプシンに代えて、配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができるポリペプチドを用いてもよい。
なお、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進できるものであれば、ウシロドプシンに限らず、他のポリペプチドのアミノ酸残基を用いてもよい。
【0039】
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されなく、当分野で用いられている任意の方法を用いることができる。例えば、香気化合物が嗅覚受容体ポリペプチドへ結合すると、細胞内のGタンパク質を活性化し、Gタンパク質がアデニル酸シクラーゼを活性化して、ATPを環状AMP(cAMP)へと変換し、細胞内のcAMP量を増加させることが知られている。したがって、cAMP量を測定することで嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ法等が用いられる。中でも、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することが好ましい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、嗅覚受容体ポリペプチドの応答は、1,5-オクタジエン-3-オン存在下における測定結果を、1,5-オクタジエン-3-オンの非存在下における測定結果で割ることで求められるFoldIncrease値を指標として評価してもよい。例えば、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する場合、FoldIncrease値が好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは10以上となる濃度の1,5-オクタジエン-3-オンを使用して評価することができる。
【0041】
<工程(ii)>
工程(ii)では、1,5-オクタジエン-3-オンに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体の応答を測定する。
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は、1,5-オクタジエン-3-オンと試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドに接触させることを除いて、工程(i)で示した方法と同様の方法を用いることができる。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。工程(i)と(ii)における測定結果を適切に比較するために、工程(i)と(ii)における測定条件は、試験物質の有無を除いて、同じであることが好ましい。
【0042】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答が低減した試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質として選択する。
本発明では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して応答の低減が見られた場合、工程(ii)で用いた試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質として評価することができる。
【0043】
上記のようにして、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明によれば、人間の嗅覚によって行う官能評価による嗅覚疲労や個人差などによる問題を生じることなく、多数の試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質を選択することができる。
選択された物質は、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の候補物質として用いることができる。選択された物質を基に必要に応じて改変等を行い、最適な匂いのする新規な化合物を開発することもできる。さらには、選択された物質を他の香料素材とブレンドして1,5-オクタジエン-3-オン臭を抑制することができ、かつ最適な匂いのする香料素材を開発することも可能である。上記スクリーニング方法を用いることにより、1,5-オクタジエン-3-オン臭抑制素材の新しい香料素材の開発に貢献することができる。
【0044】
3.1-オクテン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法
本発明に用いられる1-オクテン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、1-オクテン-3-オールに対して応答性を示す嗅覚受容体ポリペプチドを用いて、試験物質の中から1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
(a)OR2C1、OR4Q3、および(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも一種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質および1-オクテン-3-オールを添加すること;
前記1-オクテン-3-オールに対する前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;および、
測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、すなわち、測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質が、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質であると同定すること、
を含むことを特徴としている。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いられる1-オクテン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、
(i)(a)OR2C1、OR4Q3、および(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オールを接触させ、1-オクテン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(ii)1-オクテン-3-オールに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(iii)工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答を低減させた試験物質を、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質として選択する工程と
を含む。
【0046】
本発明に用いられる1-オクテン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドに対する試験物質の応答性を指標として、試験物質の中から1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質を選択するものである。
本発明に用いられる1-オクテン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法において「試験物質」とは、特に限定するものではないが、1-オクテン-3-オール臭抑制効果の調査対象をいい、化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1-オクテン-3-オール臭抑制素材」とは、特に限定するものではないが、1-オクテン-3-オール臭を抑制することができる化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1-オクテン-3-オール臭」とは、1-オクテン-3-オールを原因物質とする臭いを意味し、例えば、マッシュルーム臭、カビ臭、鉄錆臭、腋臭、オフフレーバーなどを含む。以下、各工程について説明する。
【0047】
<工程(i)>
工程(i)では、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オールを接触させ、1-オクテン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する。
【0048】
嗅覚受容体ポリペプチドとしては、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドが用いられる。
OR2C1はGenBankにNM_012368として登録されており、配列番号1で示される塩基配列の第53番目~第991番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)からなるポリペプチドである。
OR4Q3はGenBankにNM_172194として登録されており、配列番号3で示される塩基配列のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)からなるポリペプチドである。
これらのポリペプチドは、1-オクテン-3-オールに選択的に強く応答することから、OR2C1、OR4Q3を用いたスクリーニング方法は、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の開発に貢献できるものと期待される。
【0049】
嗅覚受容体としてこれらのポリペプチドが有するアミノ酸配列(すなわち、配列番号2、または4)と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1-オクテン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドを用いてもよい。
【0050】
嗅覚受容体ポリペプチドは、一種で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明において嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オールを接触させ、1-オクテン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されない。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で1-オクテン-3-オールと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で1-オクテン-3-オールと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。嗅覚受容体ポリペプチドと1-オクテン-3-オールを接触させる時間は、1-オクテン-3-オールの濃度や測定方法にも依存するため一概には言えないが、接触させた直後に応答を測定してもよく、通常、0~4時間、好ましくは2~4時間である。1-オクテン-3-オールに試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドと接触させる場合も同様である。
【0052】
嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞は、嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
【0053】
本発明の好ましい態様では、嗅覚受容体ポリペプチドと共に、ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込んでもよい。ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込むことにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができる。
ウシロドプシンは、GenBankにNM_001014890として登録されている。ウシロドプシンは、配列番号5で示される塩基配列の第1番目から第1047番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)からなるポリペプチドである。
また、ウシロドプシンに代えて、配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができるポリペプチドを用いてもよい。
なお、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進できるものであれば、ウシロドプシンに限らず、他のポリペプチドのアミノ酸残基を用いてもよい。
【0054】
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されなく、当分野で用いられている任意の方法を用いることができる。例えば、香気化合物が嗅覚受容体ポリペプチドへ結合すると、細胞内のGタンパク質を活性化し、Gタンパク質がアデニル酸シクラーゼを活性化して、ATPを環状AMP(cAMP)へと変換し、細胞内のcAMP量を増加させることが知られている。したがって、cAMP量を測定することで嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ法等が用いられる。中でも、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することが好ましい。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、嗅覚受容体ポリペプチドの応答は、1-オクテン-3-オール存在下における測定結果を、1-オクテン-3-オールの非存在下における測定結果で割ることで求められるFoldIncrease値を指標として評価してもよい。例えば、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する場合、FoldIncrease値が好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは10以上となる濃度の1-オクテン-3-オールを使用して評価することができる。
【0056】
<工程(ii)>
工程(ii)では、1-オクテン-3-オールに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体の応答を測定する。
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は、1-オクテン-3-オールと試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドに接触させることを除いて、工程(i)で示した方法と同様の方法を用いることができる。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。工程(i)と(ii)における測定結果を適切に比較するために、工程(i)と(ii)における測定条件は、試験物質の有無を除いて、同じであることが好ましい。
【0057】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答が低減した試験物質を、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質として選択する。
本発明では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して応答の低減が見られた場合、工程(ii)で用いた試験物質を、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質として評価することができる。
【0058】
上記のようにして、試験物質の中から1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明によれば、人間の嗅覚によって行う官能評価による嗅覚疲労や個人差などによる問題を生じることなく、多数の試験物質の中から1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質を選択することができる。
選択された物質は、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の候補物質として用いることができる。選択された物質を基に必要に応じて改変等を行い、最適な匂いのする新規な化合物を開発することもできる。さらには、選択された物質を他の香料素材とブレンドして1-オクテン-3-オール臭を抑制することができ、かつ最適な匂いのする香料素材を開発することも可能である。上記スクリーニング方法を用いることにより、1-オクテン-3-オール臭抑制素材の新しい香料素材の開発に貢献することができる。
【0059】
4.1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示す嗅覚受容体ポリペプチドを用いて、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
(a)OR2C1、OR4Q3、および(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される少なくとも一種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質および1,5-オクタジエン-3-オールを添加すること;
前記1,5-オクタジエン-3-オールに対する前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;および、
測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、すなわち、測定された応答に基づいて前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質が、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質であると同定すること、
を含むことを特徴としている。
【0060】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、
(i)(a)OR2C1、OR4Q3、および(b)前記(a)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オールを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(ii)1,5-オクタジエン-3-オールに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程と、
(iii)工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答を低減させた試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質として選択する工程と
を含む。
【0061】
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法は、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ悪臭原因物質に対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドに対する試験物質の応答性を指標として、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質を選択するものである。
本発明に用いられる1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材のスクリーニング方法において「試験物質」とは、特に限定するものではないが、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制効果の調査対象をいい、化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材」とは、特に限定するものではないが、1,5-オクタジエン-3-オール臭を抑制することができる化合物、組成物または混合物をいうものとする。また、「1,5-オクタジエン-3-オール臭」とは、1,5-オクタジエン-3-オールを原因物質とする臭いを意味し、例えば、マッシュルーム臭、カビ臭、鉄錆臭、腋臭、オフフレーバーなどを含む。以下、各工程について説明する。
【0062】
<工程(i)>
工程(i)では、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オールを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する。
【0063】
嗅覚受容体ポリペプチドとしては、OR2C1、OR4Q3、およびこれらのいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドが用いられる。
OR2C1はGenBankにNM_012368として登録されており、配列番号1で示される塩基配列の第53番目~第991番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)からなるポリペプチドである。
OR4Q3はGenBankにNM_172194として登録されており、配列番号3で示される塩基配列のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)からなるポリペプチドである。
これらのポリペプチドは、1,5-オクタジエン-3-オールに選択的に強く応答することから、OR2C1、OR4Q3を用いたスクリーニング方法は、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の開発に貢献できるものと期待される。
【0064】
嗅覚受容体としてこれらのポリペプチドが有するアミノ酸配列(すなわち、配列番号2、または4)と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ1,5-オクタジエン-3-オールに対して応答性を示すポリペプチドからなる群より選択される嗅覚受容体ポリペプチドを用いてもよい。
【0065】
嗅覚受容体ポリペプチドは、一種で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明において嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オールを接触させ、1,5-オクタジエン-3-オールに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されない。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で1,5-オクタジエン-3-オールと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で1,5-オクタジエン-3-オールと接触させ、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。嗅覚受容体ポリペプチドと1,5-オクタジエン-3-オールを接触させる時間は、1,5-オクタジエン-3-オールの濃度や測定方法にも依存するため一概には言えないが、接触させた直後に応答を測定してもよく、通常、0~4時間、好ましくは2~4時間である。1,5-オクタジエン-3-オールに試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドと接触させる場合も同様である。
【0067】
嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞は、嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
【0068】
本発明の好ましい態様では、嗅覚受容体ポリペプチドと共に、ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込んでもよい。ウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込むことにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができる。
ウシロドプシンは、GenBankにNM_001014890として登録されている。ウシロドプシンは、配列番号5で示される塩基配列の第1番目から第1047番目のDNAによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)からなるポリペプチドである。
また、ウシロドプシンに代えて、配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進することができるポリペプチドを用いてもよい。
なお、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進できるものであれば、ウシロドプシンに限らず、他のポリペプチドのアミノ酸残基を用いてもよい。
【0069】
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は特に制限されなく、当分野で用いられている任意の方法を用いることができる。例えば、香気化合物が嗅覚受容体ポリペプチドへ結合すると、細胞内のGタンパク質を活性化し、Gタンパク質がアデニル酸シクラーゼを活性化して、ATPを環状AMP(cAMP)へと変換し、細胞内のcAMP量を増加させることが知られている。したがって、cAMP量を測定することで嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ法等が用いられる。中でも、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することが好ましい。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、嗅覚受容体ポリペプチドの応答は、1,5-オクタジエン-3-オール存在下における測定結果を、1,5-オクタジエン-3-オールの非存在下における測定結果で割ることで求められるFoldIncrease値を指標として評価してもよい。例えば、ルシフェラーゼなどの発光物質を用いたレポータージーンアッセイ法により嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する場合、FoldIncrease値が好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは10以上となる濃度の1,5-オクタジエン-3-オールを使用して評価することができる。
【0071】
<工程(ii)>
工程(ii)では、1,5-オクタジエン-3-オールに試験物質を混合して、工程(i)で用いた嗅覚受容体の応答を測定する。
嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する方法は、1,5-オクタジエン-3-オールと試験物質を混合して嗅覚受容体ポリペプチドに接触させることを除いて、工程(i)で示した方法と同様の方法を用いることができる。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドを発現している生体から単離された細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよいし、嗅覚受容体ポリペプチドを遺伝子操作により人為的に発現させた細胞上で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定してもよい。工程(i)と(ii)における測定結果を適切に比較するために、工程(i)と(ii)における測定条件は、試験物質の有無を除いて、同じであることが好ましい。
【0072】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して、応答が低減した試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質として選択する。
本発明では、工程(i)および(ii)における測定結果を比較して応答の低減が見られた場合、工程(ii)で用いた試験物質を、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質として評価することができる。
【0073】
上記のようにして、試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明によれば、人間の嗅覚によって行う官能評価による嗅覚疲労や個人差などによる問題を生じることなく、多数の試験物質の中から1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質を選択することができる。
選択された物質は、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の候補物質として用いることができる。選択された物質を基に必要に応じて改変等を行い、最適な匂いのする新規な化合物を開発することもできる。さらには、選択された物質を他の香料素材とブレンドして1,5-オクタジエン-3-オール臭を抑制することができ、かつ最適な匂いのする香料素材を開発することも可能である。上記スクリーニング方法を用いることにより、1,5-オクタジエン-3-オール臭抑制素材の新しい香料素材の開発に貢献することができる。
【0074】
3. 香料組成物
上記スクリーニング方法を用いることにより悪臭原因物質に応じて適切な悪臭抑制素材を選択することができ、該悪臭抑制素材を有効成分として用いることにより目的に応じた悪臭抑制組成物を得ることができる。
本発明の一実施態様において、本発明の香料組成物は、有効成分として下記(A)群からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
また、本発明の一実施態様において、本発明の香料組成物は、有効成分として、さらに下記(B)群の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、下記(A)及び(B)の2つの群からそれぞれ少なくとも一つ選ばれる化合物を有効成分として含有することが好ましい。
【0075】
(A)群としてはヒンジノール(Hindinol(登録商標): 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール(別名:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-2-ブテン-1-オール))、デキストランバー(Dextramber(登録商標): 1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール)、ムスクT(MUSK T(登録商標): 1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン)、ユーカリプタス油、パチョリ油、ベチバー油等が挙げられる。
本発明の香料組成物における(A)群の配合量は、厳密に制限されるものではなく、0.0001質量%以上が好ましく、0.001~20質量%であることがより好ましく、0.01~10質量%であることがさらに好ましい。
【0076】
(B)群としてはテトラヒドロ-4-メチル-2-(2-メチルプロペニル)-2H-ピラン(ローズオキサイド)、(3-メチルブチルオキシ)酢酸-2-プロペニル(アリルアミルグリコレート)、2-メチル吉草酸エチル(マンザネート)、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(ジヒドロミルセノール)、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル(シトロネラール)、酢酸ベンジル、-t-ブチルシクロヘキシルアセテート(ベルドックス)、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル(ゲラニルニトリル)、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン(フロロパール)、5-ヘキシルオキソラン-2-オン(γ-デカラクトン)、4-メチル-3-デセン-5-オール(ウンデカベルトール)、3-メチル-2-(シス-2-ペンテニル)-2-シクロペンテン-1-オン(シス-ジャスモン)、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール(シトロネロール)、酢酸-1-フェニルエチル(スチラリルアセテート)、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オン(β-ダマスコン)等が挙げられる。
本発明の香料組成物における(B)群の配合量は、厳密に制限されるものではなく、0.0001質量%以上が好ましく、0.001~20質量%であることがより好ましく、0.01~10質量%であることがさらに好ましい。
【0077】
A群とB群を併用する場合はA群:B群(質量基準)が95%:5%~5%:95%であることが好ましく、90%:10%~10%:90%であることがより好ましく、70%:30%~30%:70%であることがさらに好ましい。
【0078】
本発明の好ましい態様によれば、上記A群及びB群を含有する香料組成物は、トランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール、及び1,5-オクタジエン-3-オールから選ばれる少なくとも1種より構成される悪臭である加齢臭、腋臭、及びカビ臭を抑制する。
【0079】
本発明の香料組成物は、悪臭抑制用の香料組成物(すなわち、悪臭抑制組成物)として好適に用いられる。
例えば、本発明の香料組成物は、加齢臭、腋臭、及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭抑制用の香料組成物として好適に用いられる。前記悪臭の構成成分は、トランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1-オクテン-3-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール、及び1,5-オクタジエン-3-オールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】
本発明の香料組成物に、下記で説明するような公知の香料あるいは慣用の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内、すなわち加齢臭、腋臭、及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に伴う不快感を解消し得る、量的、質的範囲内で配合することが可能である。
公知の香料の例として、例えば、α-ピネン、リモネン、セドレンなどの炭化水素類;ノナノール、シス-3-ヘキセノールなどの脂肪族飽和又は不飽和アルコール類;ミルセノール、テトラヒドロリナロール、ネロールなどの飽和又は不飽和鎖状テルペンアルコール;α-ターピネオール、ボルニルメトキシシクロヘキサノールなどの環状テルペンアルコール;ファルネソール等のセスキテルペンアルコール;γ-フェニルプロピルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール等の芳香族アルコール;脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、芳香族アルデヒド、イソ・イー・スーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)等の脂肪族ケトン;テルペン系環状ケトン、環状ケトン、脂肪族エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、サリチル酸エステル、アンスラニル酸エステル等が挙げられる。これらの公知の香料の本香料組成物における配合量は、配合する香料の種類や目的等によって適宜選択することができ、特に限定されるものではない。
【0081】
本発明の香料組成物は、その形態や剤型に応じて、慣用の添加剤と共に香粧品等へ配合することができる。
【0082】
慣用の添加剤としては、例えば、公知の紫外線吸収剤;メントールやメチルサリチレート等の清涼剤;トウガラシチンキ、ノニルバニリルアミド等の皮刺激剤等を挙げることができる。これら慣用の添加剤の配合量は特に限定されるものではないが、本発明の香料組成物全体に対して、概ね0.005~5.0質量%の範囲である。
【0083】
4. 香料組成物を含有する製品
本発明の香料組成物を香気成分として、例えば、フレグランス製品、香粧品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、衣料用洗剤、衣料用柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、雑貨などの製品に、この業界で通常配合されている量を配合して、そのユニークな香気を付与でき、特定の悪臭に対する抑制作用を付与して製品の商品価値を高めることができる。
【0084】
例えば、フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、など;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落とし、など;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、口紅、リップクリーム、など;頭髪化粧品としては、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、など;日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品、など;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料、などを挙げることができる。
【0085】
ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、など;石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、など;身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ、など;浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド、等)、フォームバス(バブルバス、等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル、等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブ、などを挙げることができる。
【0086】
洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸、など;柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアー、など;洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤、など;台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤、など;漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤、等)、光学的漂白剤、など;エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレー、など;消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ、など;雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、などの種々の形態を挙げることができる。
【0087】
本発明の香料組成物を、前記製品に使用する場合、このままの状態、或いはこれらを、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解した液体状態;界面活性剤、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いて可溶化或いは分散化した可溶化状態或いは分散化状態;又はカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセル状態など;その目的に応じて任意の形状を選択して用いられている。
【0088】
さらに、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、上記香料組成物を安定化且つ徐放性にして用いることもある。これらは、最終製品の形態、例えば、液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などに適したもので適宜に選択して用いられる。
本香料組成物の配合量は特に限定されるものではないが、製品全体に対して、概ね0.0001~30質量%の範囲である。
【0089】
さらに、本発明の香料組成物は、それ自体が着臭剤ではないが、使用/適用条件下で、上記香料組成物を放出する能力を有したプロフレグランスに配合して用いられる。この場合の本香料組成物の配合量は特に限定されるものではないが、製品全体に対して、概ね0.0001~30質量%の範囲である。
【0090】
また、本発明の香料組成物をフレーバー組成物として飲食品に用いることもできる。
本発明のフレーバー組成物は、下記で説明するような公知の香料あるいは慣用の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内、すなわち飲食品のオフフレーバーを低減し得る、量的、質的範囲内で配合することが可能である。本発明のフレーバー組成物はまた、本発明の効果を損なわない範囲内で口腔用組成物に配合することが可能である。
本発明のフレーバー組成物に配合できる他の成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキスなどを挙げることができ、例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料、P88~131、平成12年1月14日発行」に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることが出来る。
本発明のフレーバー組成物には、必要に応じて通常使用されている、例えば、水、エタノール等の溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、クエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の保留剤を含有することが出来る。
【0091】
本発明の飲食品としては、
果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、クマザサ茶、桑茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶、コーヒー、ココアの如き茶飲料または嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類;各種インスタント飲料など;
アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;饅頭、羊羹、ウイロウなどの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;パン類;風味調味料;各種インスタント食品;各種スナック食品類など;
前記口腔用組成物としては、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;
が挙げられる。
本香料組成物のフレーバー組成物としての配合量は特に限定されるものではないが、飲食品全体に対して、概ね0.0001~30質量%の範囲である。
【0092】
5. 悪臭の抑制方法
本発明の香料組成物を用いることにより悪臭を抑制することができる。
本発明の一実施態様によれば、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記香料組成物を適用することで、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することができる。すなわち、本発明は、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記香料組成物を適用して加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することを含む、加齢臭、腋臭及びカビ臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の抑制方法を提供するものである。
本発明の一実施態様によれば、加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記香料組成物を適用することで、加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することができる。すなわち、本発明は、加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記香料組成物を適用して加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することを含む、加齢臭及び腋臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の抑制方法を提供するものである。
また、本発明の他の実施態様によれば、1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上のカビ臭などの悪臭に対して、前記香料組成物を適用することで、1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することができる。すなわち、本発明は、1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上の悪臭に対して、前記香料組成物を適用して1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上の悪臭を抑制することを含む、1-オクテン-3-オール臭及び1,5-オクタジエン-3-オール臭からなる群より選択される1種以上の悪臭の抑制方法を提供するものである。
本発明の香料組成物を悪臭に対して適用する方法は特に限定されない。例えば、前記香料組成物を含有する製品を使用することにより本発明の香料組成物を悪臭に対して適用することができる。使用方法は、製品の形態に応じて適宜選択することができる。
【実施例
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0094】
[実施例1]
1-オクテン-3-オンに対する嗅覚受容体応答の測定
(1)嗅覚受容体遺伝子クローニング
ヒト嗅覚受容体遺伝子はGenBankに登録されている配列情報を基に、HumanGenomicDNA:Female(Promega社)よりPCR法にてクローニングすることで得た。pME18SベクターにウシロドプシンのN末端20アミノ酸残基を組み込み、さらにその下流に、得られたヒト嗅覚受容体遺伝子を組み込むことで、ヒト嗅覚受容体遺伝子発現ベクターを得た。
(2)HEK293T細胞での嗅覚受容体遺伝子の発現
ヒト嗅覚受容体遺伝子発現ベクター0.05μg、RTP1Sベクター0.01μg、cAMP応答配列プロモーターを含むホタルルシフェラーゼベクターpGL4.29(Promega社)0.01μg、およびチミジンキナーゼプロモーターを含むウミシイタケルシフェラーゼベクターpGL4.74(Promega社)0.005μgをOpti-MEM I(gibco社)10μLに溶解して遺伝子溶液(1穴分)とした。HEK293T細胞を、24時間後にコンフルエントに達する細胞数で96穴プレート(Biocoat、Corning社)に100μLずつ播種し、Lipofectamine3000の使用法に従ってリポフェクション法によって遺伝子溶液を各穴に添加して、細胞に遺伝子導入を行い、37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で24時間培養した。
(3)ルシフェラーゼレポータージーンアッセイ
培養液を除去した後に、検体となる香気物質を測定する濃度になる様にCD293(gibco社)培地(20μM L-グルタミン添加)で調製したものを50μLずつ添加し、3時間の刺激を行った後に、Dual-LuciferaseReporterAssaySystem(Promega社)の使用方法に従ってルシフェラーゼ活性を測定した。嗅覚受容体ポリペプチドの応答強度は、香気物質の刺激によって生じたルシフェラーゼ活性を、香気物質を含まない試験系で生じたルシフェラーゼ活性で割ることで求められるFoldIncrease値で表現した。
(4)1-オクテン-3-オンに応答する嗅覚受容体ポリペプチドの同定
ヒト嗅覚受容体OR2C1およびOR4Q3を発現させた細胞で様々な濃度の1-オクテン-3-オンに対する受容体応答を、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイによって測定した。結果を図1および2にそれぞれ示す。2種の受容体はいずれも1-オクテン-3-オンに対して濃度依存的な応答を示した。一方で、嗅覚受容体を発現させない細胞を用いたMock試験では応答が見られなかった。すなわち、OR2C1およびOR4Q3は特異的に1-オクテン-3-オンに応答することが示された。
【0095】
[実施例2]
1,5-オクタジエン-3-オンに対する嗅覚受容体応答の測定
実施例1と同様にして、ヒト嗅覚受容体OR2C1およびOR4Q3を発現させた細胞で、様々な濃度の1,5-オクタジエン-3-オン対する受容体応答を、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイによって測定した。結果を図3および4にそれぞれ示す。2種の受容体はいずれも1,5-オクタジン-3-オンに対して濃度依存的な応答を示した。一方で、Mock試験では応答が見られなかった。すなわち、OR2C1およびOR4Q3は特異的に1,5-オクタジエン-3-オンに応答することが示された。
【0096】
[実施例3]
1-オクテン-3-オールに対する嗅覚受容体応答の測定
実施例1と同様にして、ヒト嗅覚受容体OR4Q3を発現させた細胞で、様々な濃度の1-オクテン-3-オール対する受容体応答を、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイによって測定した。結果を図5に示す。OR4Q3は1-オクテン-3-オールに対して濃度依存的な応答を示した。一方で、Mock試験では応答が見られなかった。すなわち、OR4Q3は特異的に1-オクテン-3-オールに応答することが示された。
【0097】
[実施例4]
1,5-オクタジエン-3-オールに対する嗅覚受容体応答の測定
実施例1と同様にして、ヒト嗅覚受容体OR4Q3を発現させた細胞で、様々な濃度の1,5-オクタジエン-3-オール対する受容体応答を、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイによって測定した。結果を図6に示す。OR4Q3は1,5-オクタジエン-3-オールに対して濃度依存的な応答を示した。一方で、Mock試験では応答が見られなかった。すなわち、OR4Q3は特異的に1,5-オクタジエン-3-オールに応答することが示された。
【0098】
[実施例5]
1-オクテン-3-オン臭に対するOR2C1応答の悪臭抑制素材による抑制効果の評価
実施例1と同様にして、30μMの1-オクテン-3-オンに悪臭抑制素材2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール(別名:2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-2-ブテン-1-オール)(Hindinol(登録商標))および1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール(Dextramber(登録商標))をそれぞれ、様々な濃度で混合し、OR2C1を発現させた細胞で受容体応答を測定した。悪臭抑制素材を混合しなかった試験でのFoldIncrease値を100とした際の、悪臭抑制素材を混合した試験でのFoldIncrease値の割合を求めた。結果を図7および8にそれぞれ示す。2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オールおよび1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールは、OR2C1の1-オクテン-3-オンに対する応答を、濃度依存的に低減させる効果を示した。
【0099】
[実施例6]
トランス-2-ノネナール臭に対するOR2C1応答の悪臭抑制素材による抑制効果の評価
実施例5と同様にして、60μMのトランス-2-ノネナールに悪臭抑制素材2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オール(Hindinol(登録商標))および1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール(Dextramber(登録商標))をそれぞれ、様々な濃度で混合し、OR2C1を発現させた細胞で受容体応答を測定した。結果を図9および10にそれぞれ示す。2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エニル)ブト-2-エン-1-オールおよび1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールは、OR2C1のトランス-2-ノネナールに対する応答を、濃度依存的に低減させる効果を示した。
【0100】
[実施例7]
〈A群の悪臭抑制能の評価〉
受容体活動阻害活性を有する試験物質の悪臭抑制能を、官能評価によって確認した。悪臭としてはクエン酸トリエチルで1000倍に希釈したトランス-2-ノネナール、1000倍に希釈したトランス-2-オクテナール、100倍に希釈した1-オクテン-3-オン、1000倍に希釈した1,5-オクタジエン-3-オン、100倍に希釈した1-オクテン-3-オール、又は100倍に希釈した1,5-オクタジエン-3-オールをそれぞれ10μl滴下、及び試験物質を1μl滴下した綿球をプラスチックボトル(竹本容器製OZO-40)に入れた。ボトルを1時間室温で静置し、匂い分子をボトル中に十分揮発させた。官能評価試験はパネル10で行い、悪臭を単独で滴下した場合の匂いの強さを8とし、試験物質を混合した場合の悪臭の強さを0から10として評価した。得られた数値より平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
OR2C1の1-オクテン-3-オン応答を抑制するヒンジノールは、1-オクテン-3-オンの臭いを著しく抑制させた。この1-オクテン-3-オンの抑制は、対照物質(ベンジルサリシレート)を混合した場合に比べ、顕著であった。またトランス-2-ノネナール、トランス-2-オクテナール、1,5-オクタジエン-3-オン、1-オクテン-3-オール、及び1,5-オクタジエン-3-オールについてそれぞれ調べた結果、やはりヒンジノールによって悪臭が抑制された。なお、OR2C1の応答を抑制する他の物質(デキストランバー、ムスクT、ユーカリプタス油、パチョリ油、ベチバー油)についても悪臭の抑制効果を検証したところ、いずれの物質も各悪臭を抑制することが明らかとなった。
【0103】
[実施例8]
〈A群とB群の組み合わせによる悪臭抑制能の評価〉
下記表2~7の処方に従い、香料組成物1~48を調製した。
これらの香料組成物1~48について、悪臭抑制能を官能評価によって確認した。悪臭は下記表8~10に示したモデル加齢臭、モデル腋臭、又はモデルカビ臭を100倍に希釈したものをそれぞれ10μl滴下、及び試験物質は香料組成物1~48を1μl滴下した綿球をプラスチックボトル(竹本容器製OZO-40)に入れた。ボトルを1時間室温で静置し、匂い分子をボトル中に十分揮発させた。官能評価試験はパネル10名で行い、悪臭を単独で滴下した場合の匂いの強さを8とし、試験物質を混合した場合の悪臭の強さを0から10として評価した。得られた数値より平均値を算出した。結果を表2~7に示す。
【0104】
OR2C1の応答を抑制するヒンジノールはモデル加齢臭及びモデル腋臭の強度を抑制した。さらにB群と併用することで、より優れたモデル加齢臭およびモデル腋臭の抑制効果を示すことが明らかとなった。なお、OR2C1の応答を抑制する他の物質(デキストランバー、ユーカリプタス油)についても悪臭の抑制効果を検証したところ、いずれの物質も各悪臭を抑制し、さらにB群と併用することで、さらなる抑制効果を有することが明らかとなった。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
【表9】
【0113】
【表10】
【0114】
[実施例9]
〈ボディソープ〉
下記表11の処方に従い、ユーカリプタス油を5質量%、ローズオキサイドを5質量%含有するフローラルフルーティ調香料組成物を香料組成物としてボディソープを常法により製造した。基剤の処方は表12のとおりである。なお、表11中のユーカリプタス油をA群のいずれかの化合物、ローズオキサイドをB群のいずれかの化合物に置き換えた処方とした香料組成物でも同様にボディソープを常法により製造した。
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
【0117】
[実施例10]
〈液体柔軟剤〉
下記表13の処方に従い、ユーカリプタス油を5質量%、ローズオキサイドを5質量%含有するフローラルバルサミック調香料組成物を香料組成物として液体柔軟剤を常法により製造した。基剤の処方は表14のとおりである。なお、表13中のユーカリプタス油をA群のいずれかの化合物、ローズオキサイドをB群のいずれかの化合物に置き換えた処方とした香料組成物でも同様に液体柔軟剤を常法により製造した。
【0118】
【表13】
【0119】
【表14】
【0120】
[実施例11]
〈シャンプー〉
下記表15の処方に従い、ユーカリプタス油を5質量%、ローズオキサイドを5質量%含有するシトラス調香料組成物を香料組成物としてシャンプーを常法により製造した。基剤の処方は表16のとおりである。なお、表15中のユーカリプタス油をA群のいずれかの化合物、ローズオキサイドをB群のいずれかの化合物に置き換えた処方とした香料組成物でも同様にシャンプーを常法により製造した。
【0121】
【表15】
【0122】
【表16】
【0123】
[実施例12]
〈ゲル芳香剤〉
表13の処方に従い、ユーカリプタス油を5質量%、ローズオキサイドを5質量%含有するフローラルバルサミック調香料組成物を香料組成物としてゲル芳香剤を常法により製造した。基剤の処方は表17のとおりである。なお、表13中のユーカリプタス油をA群のいずれかの化合物、ローズオキサイドをB群のいずれかの化合物に置き換えた処方とした香料組成物でも同様にゲル芳香剤を常法により製造した。
【0124】
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の香料組成物により、加齢臭、腋臭、及びカビ臭を含む悪臭の不快さの低減、さらには飲食品由来のオフフレーバーの低減に貢献できるものと期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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