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特許7671750担体及びFT合成触媒、並びにその調製方法、及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】担体及びFT合成触媒、並びにその調製方法、及びその応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/75 20060101AFI20250424BHJP
   B01J 2/04 20060101ALI20250424BHJP
   B01D 1/18 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20250424BHJP
   B01J 35/52 20240101ALI20250424BHJP
【FI】
B01J23/75 M
B01J2/04
B01D1/18
B01J37/00 F
B01J37/08
B01J23/745 M
B01J23/83 M
B01J23/46 301M
B01J23/63 M
B01J35/52
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022525356
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020124784
(87)【国際公開番号】W WO2021083267
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】201911053524.6
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911053472.2
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】侯朝鵬
(72)【発明者】
【氏名】李学鋒
(72)【発明者】
【氏名】徐潤
(72)【発明者】
【氏名】夏国富
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102249245(CN,A)
【文献】米国特許第04548912(US,A)
【文献】特開昭54-019485(JP,A)
【文献】特開昭51-106102(JP,A)
【文献】特開昭63-028392(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108144613(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108404970(CN,A)
【文献】Chinese Journal of Chemical Engineering,2014, 22, 1352-1356
【文献】New Journal of Chemistry,2013, 37, 784-789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
B01J2/00-2/30
C01B33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にを有する中空微小球である、ラズベリー状の酸化物微小球であって、上記中空微小球は、内部に中空構造を有し、上記と上記中空構造とが接続し、終端が開放した空洞を形成しており、
上記ラズベリー状の酸化物微小球中の上記酸化物は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよびチタニアからなる群より選択される1つ以上であり、
上記ラズベリー状の酸化物微小球の粉末は、粉砕率が0~1%であることを特徴とするラズベリー状の酸化物微小球。
【請求項2】
上記ラズベリー状の酸化物微小球は、3~2500μmの粒度を有し、上記中空構造は、1~2000μmの直径を有し、上記中空微小球のシェルは、0.2~1000μmの厚さを有し、上記は、0.2~1000μmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載のラズベリー状の酸化物微小球。
【請求項3】
上記ラズベリー状の酸化物微小球が、0.50~0.99の球形度を有することを特徴とする請求項1に記載のラズベリー状の酸化物微小球。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のラズベリー状の酸化物微小球を調製する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
分散剤に、硝酸塩、解こう剤、孔形成剤、上記酸化物および/またはその前駆体を添加し、撹拌して分散スラリーを得る工程;
分散スラリーをエージングする工程;および
エージングした分散スラリーを乾燥装置へ送り、入口ガス温度が400~1200℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃である条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る工程。
【請求項5】
上記硝酸塩は、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、および硝酸イットリウムからなる群から選択される1つ以上であり;
上記解こう剤は、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化第二鉄、水酸化鉛、水酸化コバルト、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化ニッケル、水酸化アンモニウム、無水炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、炭酸ナトリウム七水和物、炭酸ナトリウム十水和物、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、アミン化合物、アルコールのアルカリ金属塩、アルカロイド、アルキル金属リチウム化合物、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択される1つ以上であり;
上記孔形成剤は、デンプン、合成セルロース、高分子アルコールおよび界面活性剤からなる群から選択される1つ以上であり;
上記酸化物および/またはその前駆体は、アルミニウム源、ケイ素源、ジルコニウム源およびチタン源からなる群から選択される1つ以上であり、上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびメタアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上であり、上記ケイ素源は、ケイ酸エステル、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、およびシリカゾルからなる群から選択される1つ以上であり、上記ジルコニウム源は、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウムおよびジルコニウムテトラブトキシドからなる群から選択される1つ以上であり、上記チタン源は、二酸化チタン、メタチタン酸、硝酸チタン、硫酸チタニル、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン、塩化アルミニウムチタン、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、およびテトライソプロピルチタネートからなる群から選択される1つ以上であり;および
上記分散剤は、水、アルコール、ケトン、および酸からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の質量比は、(10~500):(1~10):(10~500):(10~1000)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記分散剤に発破剤を添加する工程をさらに含み、上記発破剤は、ピクリン酸、トリニトロトルエン、ニトログリセリン、ニトロセルロース、Dana爆薬、ヘキソゲンおよびC4プラスチック爆薬からなる群から選択される1つ以上であり、上記発破剤は、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに酸化物および/またはそれらの前駆体の総乾燥重量の0~1%の量で添加されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
上記乾燥装置は、フラッシュ乾燥装置または噴霧乾燥装置であることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記エージングは、0~90℃の温度で行われることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
担体と、担体上に担持された活性金属成分とを含み、上記活性金属成分は、Co、Fe、およびRuからなる群から選択される1つ以上であり、上記担体は、請求項1~3のいずれか1項に記載のラズベリー状の酸化物微小球であり、上記ラズベリー状の酸化物微小球中の酸化物は、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とするFT合成触媒。
【請求項11】
上記触媒の重量に基づいて、上記担体は、酸化物ベースで、25~95重量%の量で存在し、上記活性金属成分は、酸化物ベースで、5~75重量%の量で存在することを特徴とする請求項10に記載のFT合成触媒。
【請求項12】
上記担体の比表面積は、0.1~900m/gであり、細孔容積は、0.01~3.6ml/gであることを特徴とする請求項10に記載のFT合成触媒。
【請求項13】
請求項1012のいずれか1項に記載のFT合成触媒を調する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
ラズベリー状の酸化物微小球を準備する工程;
上記ラズベリー状の酸化物微小球を焼成して担体を得る工程;および
上記担体に、上記活性金属成分を含む化合物の含浸液を含浸させ、焼成により乾燥および活性化させて、FT合成触媒を得る工程。
【請求項14】
上記ラズベリー状の酸化物微小球を準備する工程は、以下の工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法:
分散剤に、硝酸塩、解こう剤、孔形成剤、アルミニウム源および/またはケイ素源を添加し、撹拌して分散スラリーを得る工程;
上記分散スラリーをエージングする工程;
エージングした分散スラリーを乾燥装置へ送り、入口ガス温度が400~1200℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃である条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る工程。
【請求項15】
上記硝酸塩は、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタンおよび硝酸イットリウムからなる群から選択される1つ以上であり;
上記解こう剤は、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化第二鉄、水酸化鉛、水酸化コバルト、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化ニッケル、水酸化アンモニウム、無水炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、炭酸ナトリウム七水和物、炭酸ナトリウム十水和物、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、アミン化合物、アルコールのアルカリ金属塩、アルカロイド、アルキル金属リチウム化合物、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択される1つ以上であり;
上記孔形成剤は、デンプン、合成セルロース、高分子アルコールおよび界面活性剤からなる群から選択される1つ以上であり;
上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびメタアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上であり;
上記ケイ素源は、ケイ酸エステル、ケイ酸ナトリウム、水ガラスおよびシリカゾルからなる群から選択される1つ以上であり;
上記分散剤は、水、アルコール、ケトンおよび酸からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びにアルミニウム源および/またはケイ素源の質量比は、(10~500):(1~10):(10~500):(10~1000)であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記分散剤に発破剤を添加する工程をさらに含み、上記発破剤は、ピクリン酸、トリニトロトルエン、ニトログリセリン、ニトロセルロース、Dana爆薬、ヘキソゲンおよびC4プラスチック爆薬からなる群から選択される1つ以上であり、上記発破剤は、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びにアルミニウム源および/またはケイ素源の総乾燥重量の0~1%の量で添加されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
上記乾燥装置は、フラッシュ乾燥装置または噴霧乾燥装置であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
上記エージングは、0~90℃の温度で行われ、上記焼成は、400~1300℃の温度で行われ、上記乾燥は80~200℃の温度で行われ、焼成による活性化は、200~800℃の温度で行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
FT合成反応における、請求項1012のいずれか1項に記載のFT合成触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、担持触媒に関する。特に、本開示は、ラズベリー状の酸化物微小球、担体として同酸化物微小球を含有するFT合成触媒、ならびにそれらの調製方法および応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
過去数十年間に、無機材料の中空微小球を研究または報告した多数の文献が存在していた。中空材料は、一般的な固体球体と比較して、密度が低く、比表面積が大きい。これらは、例えば、薬物および触媒のための担体、ならびにガスの吸着材として広く使用されてきた。近年、無機材料の中空微小球の研究および応用がますます注目されている。
【0003】
アルミナの中空微小球は、新しいタイプの高温耐性断熱材料である。これらは、電気炉内で工業用アルミナを製錬し吹き付けることによって調製され、α-Alの結晶形態を有する。アルミナの中空微小球を主体として用いることにより、様々な形状の物品を製造することができる。得られた物品は、一般的な軽量製品の数倍の高い機械的強度を有し得、固体生成物よりもはるかに小さい嵩比重を有し得る。これらは、石油化学工業におけるガス化炉、カーボンブラック工業における反応炉、冶金工業における誘導炉等の高温及び超高温炉に広く使用されてきた。それらは、省エネルギーに非常に満足のいく効果を実現している。現在、アルミナの中空微小球材料は、高温溶融および噴霧反応、鋳型法、レイヤー・バイ・レイヤー(L-b-L)法、およびマイクロエマルジョン法によって調製することができる。
【0004】
ケイ素の中空微小球は、良好な生体適合性、入手容易性、および低コストの原材料などの利点から、薬物担体、バイオシグナルマーカー、および塗工などの分野で広く使用されてきた。シリカの中空微小球の調製は、研究者から広範な注目を集めている。中でも最も広く提案されている方法は、ポリスチレンの微小球を鋳型として使用する工程、ポリスチレンの微小球の表面をケイ素のシェルでコーティングする工程、次いでポリスチレンのコアを除去して、ケイ素の中空微小球を得る工程を含む。現在、報告されている調製方法は、主に、(1)静電吸着法;(2)ケイ素ベースの架橋剤による修飾;(3)レイヤー・バイ・レイヤー法を含む。
【0005】
ジルコニアの中空微小球は、例えば、航空エンジン、ガスタービン、熱処理装置などの機械部品の表面改質に用いられるプラズマ溶射断熱材である。このような微小球から調製された塗膜は、良好な耐熱衝撃性および耐高温腐食性を有する。従って、航空エンジンのような高温の部品に噴霧すると、エンジンの機械的性能を向上させるだけでなく、高温下での部品の寿命を延ばすことができる。ジルコニアの多孔質中空微小球は、化学的に安定であり、それによって、活性物質(薬剤の徐放性製剤など)の放出を制御するためのミクロ担体として使用することができる。これらは、装填された薬物の有効成分と反応せず、良好な生体適合性を有し、環境を汚染しない。さらに、これらは、ナノサイズの細孔を有し、それによって粒度と細孔径とを効果的に制御することを可能にする。ジルコニアの中空微小球を製造するための現在の方法は、プラズマ球状化および噴霧乾燥による造粒を含む。プラズマ球状化は、中空微小球を得るために、他の方法で調製したジルコニアの多孔質凝集粉末を熱処理する熱源としてプラズマスプレーガンを用いる方法である。
【0006】
チタニアの中空微小球は、チタニアの比表面積を拡大することができ、それによって触媒反応のためのより多くの活性部位を提供することができる。さらに、これらのより高い結晶化度は、光生成電子と活性正孔との再結合の速度を低下させ、それによって触媒活性を改善することができる。さらなる態様では、改質に関して、中空構造はチタニア材料のさらなる改質のための空間を提供することができる。チタニアの中空微小球を合成するための多くの方法、例えば鋳型法、火炎燃焼法、非鋳型法などがある。これらの中でも、鋳型法は、微小球の孔径およびシェル厚を制御するのが容易であり、分散が比較的均一である。しかしながら、鋳型法のステップは複雑であり、微小球のシェルは、鋳型の除去中に損傷を受け易くなる。火炎燃焼法および非鋳型法は、調製プロセスが連続的である、操作が単純である、および汚染がないなどの利点を有する。しかしながら、調製された生成物は均一ではない。
【0007】
FT合成としても知られるフィッシャー・トロプシュ合成プロセスは、合成ガス(一酸化炭素と水素との混合ガス)を原料として、適切な条件下で触媒の存在下で液体炭化水素または炭化水素を合成するプロセスである。当該合成プロセスは、石炭、天然ガス、バイオマスなどの非石油資源を高品質な液体燃料や化学原料に間接的に変換する際の鍵となるステップである。
【0008】
FT合成生成物の理想的な分布を得るために、一般的に使用される方策の1つは、例えば、担体として無機材料の中空微小球を使用することによって、FT合成触媒を改良することである。しかしながら、無機材料の中空微小球を調製するための現在の方法は、一般に、小規模であり、拡張が容易ではないという問題を有する。同時に、いくつかの調製物は、原料において低い効率および高いコストを有し得る。これにより、触媒を調製する際の担体としての微小球の使用が実質的に制限される。さらに、調製された触媒は、性能に関する要件を満たすことができない場合がある。
【0009】
石油化学のような分野では、固定床反応器(マイクロリアクター、マイクロチャネルリアクター、マイクロケミカルリアクター、メゾスコピックリアクターなど)での使用に適したものにするために、触媒は、強度が高く、多孔性が高く、および圧力損失が低い必要がある。したがって、担体として使用することができる、高強度の、無機材料の中空微小球に対する需要が増大している。
【0010】
前述の背景において開示された情報は、本開示の理解を容易にするためにのみ使用されることに留意されたい。したがって、それは、当業者に知られている従来技術を構成しない情報を含むことができる。
【0011】
〔本開示の概要〕
本開示は、ラズベリー状の酸化物微小球、当該酸化物微小球を担体として含有するFT合成触媒、並びにその調製方法および応用を提供することによって、先行技術の問題を解決する。本開示は、質量および熱伝達特性が良く、強度が著しく向上した、中空構造を有する酸化物微小球を提供する。本開示による酸化物微小球は、特にFT合成触媒のための担体としての使用に適しており、マイクロリアクター、マイクロチャネルリアクター、マイクロケミカルリアクター、またはメゾスコピックリアクターなどの固定床反応器での使用に特に適している。
【0012】
上記の目的を達成するために、本開示は、以下の技術的解決策を採用する。
【0013】
一態様では、本開示は、その表面に大きな孔を有する中空微小球である、ラズベリー状の酸化物微小球であって、上記中空微小球は、内部に中空構造を有し、上記大きな孔と上記中空構造とが接続し、終端が開放した空洞を形成しており、上記ラズベリー状の酸化物微小球における上記酸化物は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、およびチタニアからなる群より選択される1つ以上であるラズベリー状の酸化物微小球を提供する。
【0014】
いくつかの実施形状態では、上記ラズベリー状の酸化物微小球は、3~2500μm、好ましくは10~500μmの粒度を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記中空構造は、1~2000μm、好ましくは1~400μmの直径を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記大きな孔は、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmの直径を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記中空微小球のシェルは、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmの厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記ラズベリー状の酸化物微小球は、0.50~0.99の球形度を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記ラズベリー状の酸化物微小球は、粉砕率が0~1%である。
【0020】
別の態様において、本開示は、上述のラズベリー状の酸化物微小球を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
分散剤に、硝酸塩、解こう剤、孔形成剤、上記酸化物および/またはその前駆体を順次添加し、撹拌して分散スラリーを得る工程;
分散スラリーをエージングする工程;および
エージングした分散スラリーを乾燥装置へ送り、入口ガス温度が400~1200℃、好ましくは450~700℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃、好ましくは120~200℃である条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る工程。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記硝酸塩が、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、および硝酸イットリウムからなる群から選択される1つ以上である。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記解こう剤は、酸、塩基および塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記孔形成剤は、デンプン、合成セルロース、高分子アルコールおよび界面活性剤からなる群から選択される1つ以上である。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記酸化物および/またはその前駆体は、アルミニウム源、ケイ素源、ジルコニウム源、およびチタン源からなる群から選択される1つ以上であり、上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびメタアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上であり;上記ケイ素源は、ケイ酸エステル、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、およびシリカゾルからなる群から選択される1つ以上であり;上記ジルコニウム源は、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウムおよびジルコニウムテトラブトキシドからなる群から選択される1つ以上であり;上記チタン源は、二酸化チタン、メタチタン酸、硝酸チタン、硫酸チタニル、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン、塩化アルミニウムチタン、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、チタン酸テトラ-n-プロピル、チタン酸テトラ-イソプロピルから成る群から選択される1つ以上である。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記分散剤は、水、アルコール、ケトン、および酸からなる群から選択される1つ以上である。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の質量比は、(10~500):(1~10):(10~500):(10~1000)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記分散剤に発破剤が添加されてもよく、上記発破剤は、ピクリン酸、トリニトロトルエン、雷酸水銀、ニトログリセリン、ニトロセルロース、Dana爆薬、ヘキソゲン、アジ化鉛、およびC4プラスチック爆薬からなる群から選択される1つ以上である。
【0028】
いくつかの実施形態では、発破剤は、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の総乾燥重量の0~1%の量で添加される。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記乾燥装置は、フラッシュ乾燥装置または噴霧乾燥装置である。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記エージングは、0~90℃、好ましくは20~60℃の温度で行われる。
【0031】
さらなる態様では、本開示は、担体と、上記担体上に担持された活性金属成分とを含み、上記活性金属成分は、Co、Fe、およびRuからなる群から選択される1つ以上であり、上記担体は、その表面に大きな孔を有する中空微小球である、ラズベリー状の酸化物微小球であって、上記中空微小球は、内部に中空構造を有し、上記大きな孔と上記中空構造とが接続し、終端が開放した空洞を形成しており、上記ラズベリー状の酸化物微小球中の上記酸化物は、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1つ以上である、FT合成触媒を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記触媒の重量に基づいて、上記担体は、触媒中に、酸化物ベースで、25~95重量%、好ましくは30~90重量%の量で存在し、上記活性金属成分は、触媒中に、酸化物ベースで、5~75重量%、好ましくは10~70重量%の量で存在する。
【0033】
いくつかの実施形状態では、上記ラズベリー状の酸化物微小球は、3~2500μm、好ましくは10~500μmの粒度、および0.50~0.99の球形状度を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記中空構造は、1~2000μm、好ましくは1~400μmの直径を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記大きな孔は、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmの直径を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、中空微小球のシェルは、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmの厚さを有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、ラズベリー状の酸化物微小球は、粉砕率が0~1%である。
【0038】
さらなる態様では、本開示が以下のステップを含む、上述のFT合成触媒を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
ラズベリー状の酸化物微小球および上記活性金属成分を含む化合物の含浸液を準備する工程;
ラズベリー状の酸化物微小球を焼成して担体を得る工程;および
上記担体に、上記含浸液を含浸させ、焼成により乾燥および活性化させて、FT合成触媒を得る工程。
【0039】
いくつかの実施形態では、上記ラズベリー状の酸化物微小球を準備する工程は、以下の工程を含んでもよい:
分散剤に、硝酸塩、解こう剤、孔形成剤、アルミニウム源および/またはケイ素源を添加し、撹拌して分散スラリーを得る工程;
上記分散スラリーをエージングする工程;および
エージングした分散スラリーを乾燥装置に送り、入口ガス温度が400~1200℃、好ましくは450~700℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃、好ましくは120~200℃である条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る工程。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記硝酸塩は、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、および硝酸イットリウムからなる群から選択される1つ以上である。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記解こう剤は、酸、塩基および塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記孔形成剤は、デンプン、合成セルロース、高分子アルコールおよび界面活性剤からなる群から選択される1つ以上である。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびメタアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上であり、上記ケイ素源は、ケイ酸エステル、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、およびシリカゾルからなる群から選択される1つ以上である。
【0044】
いくつかの実施形態では、上記分散剤は、水、アルコール、ケトン、および酸からなる群から選択される1つ以上である。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の質量比は、(10~500):(1~10):(10~500):(10~1000)である。
【0046】
いくつかの実施形態では、分散剤に発破剤が添加され得、上記発破剤は、ピクリン酸、トリニトロトルエン、ニトログリセリン、ニトロセルロース、Dana爆薬、ヘキソゲン、およびC4プラスチック爆薬からなる群から選択される1つ以上であり、上記発破剤は、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記アルミニウム源および/またはケイ素源の総乾燥重量の0~1%の量で添加される。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記乾燥装置は、フラッシュ乾燥装置または噴霧乾燥装置である。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記エージングは、0~90℃、好ましくは20~60℃の温度で行われる。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記焼成は、400~1300℃、好ましくは450~1100℃、より好ましくは500~700℃の温度で行われ、上記乾燥は、80~200℃、好ましくは100~150℃の温度で行われ、焼成による上記活性化は、200~800℃、好ましくは300~600℃の温度で行われる。
【0050】
さらなる態様において、本開示は、フィッシャー・トロプシュ合成における上記FT合成触媒の使用を提供する。
【0051】
本開示による、空洞構造を有するラズベリー状の酸化物微小球の調製方法は、制御性が強く、コストが低く、かつ効率が高く、大規模な工業用途に適している。
【0052】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球は、耐熱材料、生体材料、光化学材料などの様々な分野に適用することができ、全て特別な利点を示す。特に触媒の分野において、当該酸化物微小球は、より良好な質量および熱伝達特性を示し、同様の構造を有する既存の生成物の強度よりも著しく高い強度を有する。固定床反応器(マイクロリアクター、マイクロチャネルリアクター、マイクロケミカルリアクター、またはメゾスコピックリアクターなど)にて使用される場合、該酸化物微小球は、大きな多孔性および小さな圧力損失を示し、それによって、石油化学および他の分野で広く使用され得る。
【0053】
空洞構造により、本開示によるFT合成触媒は、拡散距離が短く、かつ表面積が大きくなる。これにより、FT合成反応における拡散問題が解決し、FT合成の転化率およびC5+炭化水素への選択性が改善し、メタンおよびCOへの選択性を減少させることができる。さらに、メタンに対する選択性は、温度の上昇のために著しく増加しないであろう。
【0054】
〔図面の説明〕
図1~4は、調製実施例1~4にて調製したラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を示す。
【0055】
図5は、調製実施例1にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0056】
図6は、調製実施例5にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0057】
図7は、調製実施例9にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0058】
図8は、調製実施例13にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0059】
図9は、比較調製実施例1にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である
図10は、比較調製実施例6にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0060】
図11は、比較調製実施例7にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である。
【0061】
図12は、操作実施例1にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
【0062】
図13は、操作実施例5にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
【0063】
図14は、比較操作実施例1にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
【0064】
〔詳細な説明〕
以下、本出願の実施の形態を参照して、本出願をさらに詳細に説明する。本明細書に記載される実施形態は単に例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。
【0065】
本開示では、明示的に記載されたものを除いて、記載されていない任意の主題または複数の主題は、いかなる変更もなしに、当該技術分野で知られているものに直接適用可能である。さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つは、本明細書に記載される他の実施形態のうちの1つまたは複数と自由に組み合わせることができ、結果として生じる技術的解決手段または技術的思想は、本開示の元の開示または元の説明の一部と見なされるべきであるが、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示または予想されなかった新しい事項と見なされるべきではない。
【0066】
なお、当業者であれば、これらの組み合わせが明らかに不合理であることが明らかでない限り、本開示に開示された特徴の全てを自由に組み合わせることができ、それらの組み合わせは、本開示に開示または記録された内容として理解されるべきである。本明細書に開示される範囲内の端点および任意の値は、厳密な範囲または値に限定されず、それらの範囲または値に近い値を包含することを理解されたい。数値範囲については、数値範囲のそれぞれの端点間、数値範囲のそれぞれの端点と個々の点との間、および個々の点の間を組み合わせて、これらの数値範囲が本明細書で具体的に開示されているかのように、1つまたは複数の新しい数値範囲を与えることが可能である。実施例以外では、本明細書中のパラメータの全ての数値は、「約」が実際に数値の前に現れるか否かにかかわらず、全ての場合において「約」という語によって修正されるものとして理解されるべきである。
【0067】
本開示の一態様によれば、本開示は、ラズベリー状の酸化物微小球を提供する。当該酸化物微小球は、ラズベリー様構造を有する中空微小球であり、上記中空微小球は、その表面に大きな孔を有し、内部に中空構造を有し、上記大きな孔と上記中空構造とが接続し、終端が開放した空洞を形成しており、上記ラズベリー状の酸化物微小球の粉末は、粉砕率が0~1%である。
【0068】
ラズベリー状の酸化物微小球中の酸化物は、無機酸化物であってもよい。当該酸化物は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよびチタニアからなる群から選択される1つ以上、好ましくはアルミナ、シリカ、ジルコニアおよびチタニアからなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0069】
ラズベリー状の酸化物微小球は、3~2500μm、好ましくは10~500μmの粒度を有し、上記中空構造は、1~2000μm、好ましくは1~400μmの直径を有し、上記表面にある上記大きな孔は、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmの直径を有する。ラズベリー状の酸化物微小球は、上記空洞を取り囲むシェル層を有し、その厚さは、0.2~1000μm、好ましくは0.5~200μmである。
【0070】
ラズベリー状の酸化物微小球は、球状の外観を有し、その球形度は0.50~0.99である。
【0071】
微小球の球形度は、以下の式に従って計算することができる:
σ=4πA/L
ここで、σは球形度であり、Aは微小球の投影面積(m)であり、Lは微小球の投影周長(m)であり、AおよびLは、微小球のSEM写真を画像処理ソフトウエアImage-Pro Plusで処理することによって得られる。
【0072】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球の粉末の粉砕率は、同様の強度について、標準Q/SH3360 226-2010に提供される方法に従って測定される。特に、本方法は以下を含む:
それぞれM1およびM2の目開きを有する篩S1およびS2を選択し(ここでM1<M2)、試験される微小球粉末を、M1の目開きを有する篩S1を介して篩い分けし、篩S1を通過した微小球粉末を、M2の目開きを有する篩S2を介してさらに篩い分けし、被験試料として、篩S2によってカットオフされた微小球粉末を使用する;
断面径10mmの鋼製円筒容器に被験試料を一定量加え、円筒により加圧して、被験試料である微小球粉末に、一定圧力、一定時間荷重を掛け、M2の目開きを有する篩S2によって、加圧した微小球粉末を篩い分け、篩S2を通過した微小球粉末の質量を記録し、篩S2を通過した微小球粉末の質量を、添加した微小球粉末の総質量で割ることにより微小球粉末の粉砕率を計算する。
【0073】
本開示では、M1は100メッシュであり、M2は150メッシュであり、圧力は100Nであり、時間は10秒である。
【0074】
粉砕率は、微小球の強度を評価するために使用され得る。粉砕率が低いほど、微小球の強度が高いことを示す。
【0075】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球の粉末は、上記条件下で、低い粉砕率を達成する。このことは、CN108404970Aに開示されているリンゴ状のモレキュラーシーブの中空微小球のような、現在知られている酸化物微小球よりも著しく高い強度を有することを示している。これは、使用される原料および調製方法の違いに起因する。本開示によるラズベリー状の酸化物微小球は、より大きな多孔性およびより高い強度を有する。固定床反応器に用いると、圧力損失を大幅に低減でき、優れた加工性と耐摩耗性能とを有する。これらを担体として用いて調製した触媒は、反応拡散距離が短く、有望な用途がある。それらはまた、高温耐性断熱材料、生体材料、および光化学材料に作製されてもよい。
【0076】
本開示のさらなる態様によれば、本開示は、担体と、担体上に担持された活性金属成分とを含むFT合成触媒を提供する。上記活性金属成分は、第VIII族金属成分であり、好ましくは、Co、FeおよびRuからなる群から選択される1つ以上である。上記活性金属成分は、Ru>Co>Feの順序で活性を有していてもよく、凡そRu>Co≒Feの順序で連鎖成長が可能であってもよい。上記担体は、上述のラズベリー状の酸化物微小球であってもよく、上記ラズベリー状の酸化物微小球中の酸化物は、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1つ以上である。
【0077】
本開示によるFT合成触媒において、上記触媒の重量に基づいて、上記担体は、酸化物ベースで、25~95重量%、好ましくは30~90重量%の量で存在し、上記活性金属成分は、酸化物ベースで、5~75重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは12~30重量%の量で存在する。
【0078】
本開示によるFT合成触媒は、フィッシャー・トロプシュ合成反応のために、マイクロチャネルリアクターなどの固定床反応器で使用することができる。
【0079】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球は、以下の工程を含み得る方法によって調製され得る:
分散剤に、硝酸塩、解こう剤、孔形成剤、並びに上記酸化物又はその前駆体を添加し、撹拌して分散スラリーを得る工程;
分散スラリーをエージングする工程;および
エージングした分散スラリーを乾燥装置へ送り、入口ガス温度が400~1200℃、好ましくは450~700℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃、好ましくは120~200℃である条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る工程。
【0080】
本開示による上記方法において、上記硝酸塩は、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタンおよび硝酸イットリウムからなる群から選択される1つ以上である。上記硝酸塩中の硝酸イオンは、高温条件下で上記孔形成剤の酸化剤として利用することができる。これらは、高温で自己伝播燃焼反応を受け、爆発的にガスおよび蒸気を発生させ、その結果、酸化物材料中に空洞が形成される。
【0081】
本開示による上記の方法において、上記解こう剤は、酸、塩基および塩からなる群から選択される1つ以上である。上記酸は、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸など)、有機酸(ギ酸、酢酸、シュウ酸など)、並びに、無機酸または有機酸の1つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。上記塩基は、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化第二鉄、水酸化鉛、水酸化コバルト、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化ニッケル、水酸化アンモニウム、ソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)、炭酸ナトリウム(一水和物、七水和物、および十水和物)、重炭酸ナトリウム(ベーキングソーダ)、炭酸カリウム、重炭酸カリウムなど)、有機塩基(アミン化合物、アルコールのアルカリ金属塩、アルカロイド、アルキル金属リチウム化合物など)、並びに、無機塩基または有機塩基の1つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。上記塩は、無機酸の塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩など)、有機酸の塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩など)、並びに、無機酸の塩または有機酸の塩の1つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0082】
本開示による上記の方法において、上記孔形成剤は、デンプン、合成セルロース、高分子アルコールおよび界面活性剤からなる群から選択される1つ以上である。上記合成セルロースは、好ましくは、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、およびヒドロキシセルロース脂肪アルコールポリビニルエーテルのうちの1つ以上である。上記高分子アルコールは、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロパノール、ポリビニルアルコールおよびポリプロピレンアルコール(PPG)のうちの1つ以上である。上記界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコールポリビニルエーテル、脂肪アルコールアミドおよびその誘導体、200~2000000の分子量を有するアクリル酸コポリマーおよびマレイン酸コポリマーのうち1つ以上である。
【0083】
本開示による方法では、上記酸化物および/またはその前駆体は、直接的に、アルミナ、シリカ、ジルコニアおよびチタニアであってもよく、あるいは、これらの酸化物を形成するための前駆体であってもよい。特に、上記酸化物および/またはその前駆体は、アルミニウム源、ケイ素源、ジルコニウム源およびチタン源からなる群から選択される1つ以上であり得る。上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびメタアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上である。上記ケイ素源は、ケイ酸エステル、ケイ酸ナトリウム、水ガラスおよびシリカゾルからなる群から選択される1つ以上である。上記ジルコニウム源は、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウムおよびジルコニウムテトラブトキシドからなる群から選択される1つ以上である。上記チタン源は、二酸化チタン、メタチタン酸、硝酸チタン、硫酸チタニル、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン、塩化アルミニウムチタン、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、およびテトライソプロピルチタネートからなる群から選択される1つ以上である。
【0084】
上述の、アルミニウム源、ケイ素源、ジルコニウム源およびチタン源を使用する場合、これらを沈殿またはゲル化させる化学試薬、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、または酢酸などの有機酸)、および/または塩基(炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなど)などをさらに含んでもよい。
【0085】
他の成分を含む酸化物組成物を調製する必要がある場合には、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅等の酸化物をさらに含んでもよい。これらの酸化物の前駆体を使用することができる。
【0086】
上記酸化物の上記前駆体は、本開示による方法の条件下で、対応する酸化物に変換されてもよい。
【0087】
本開示による方法において、上記分散剤は、水、アルコール、ケトンおよび酸からなる群から選択される1つ以上である。上記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールなどであってもよい。上記ケトンは、アセトン、ブタノンなどであってもよい。上記酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などであってもよい。好ましくは、上記分散剤は、水と少量のエタノールとの混合物である。上記少量のエタノールは、水中でより良好な分散効果を有し得、水を蒸発させる効果および液滴を収縮させる効果がより適合するように、分散剤を調整するための沸点調整剤として使用され得る。その結果、これらは、微小球の外観をより均一かつ滑らかにする。
【0088】
本開示による方法において、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の質量比は、(10~500):(1~10):(10~500):(10~1000)である。
【0089】
本開示による方法において、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体は、分散剤に順次添加されてもよく、あるいは同時に添加されてもよい。また、各原料の溶解度に応じて添加順序を調整することもできる。それらを添加しながら、それらを均等に混合するために撹拌することができる。
【0090】
本開示による方法は、酸化物の添加の前または後に、上記分散剤に発破剤を添加する工程をさらに含んでもよい。上記発破剤は、ピクリン酸、トリニトロトルエン、ニトログリセリン、ニトロセルロース、Dana爆薬、ヘキソゲンおよびC4プラスチック爆薬からなる群から選択される1つ以上である。上記乾燥による成形の前に、上記発破剤は、他の材料と均一に混合されるべきである。上記発破剤は、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに上記酸化物および/またはその前駆体の全乾燥重量の0~1%の量で存在する。
【0091】
本開示による方法では、上記硝酸塩、上記解こう剤、上記孔形成剤、並びに、上記酸化物またはその前駆体を分散剤に順次添加してスラリーを作製する。このスラリーを均等に撹拌した後、サンドミルまたはコロイドミルに投入して粉砕し、分散スラリーを得る。スラリーの製造中、一般に、スラリーは5~60重量%の固形分を有する。粉砕時間は、1~30分である。上記混合および粉砕後、スラリー中のアルミニウム源、ケイ素源、ジルコニウム源およびチタン源の粒子の平均粒度を0.01~10μmに粉砕することができる。
【0092】
上記混合および粉砕後、原料を完全に溶解および分散させ、分散スラリーを均一にする。使用される粉砕装置は、コロイドミル、サンドミルまたは他の装置であってもよい。選択基準は、必要な平均粒度、すなわち10μm未満に触媒の粉末を粉砕することである。
【0093】
その後、上記分散スラリーを、0~90℃の温度で0.1~24時間、好ましくは0.5~2時間エージングする。
【0094】
上記エージング後、上記分散スラリーを乾燥装置へ送り、入口ガス温度が400~1200℃、好ましくは450~700℃であり、かつ出口ガス温度が50~300℃、好ましくは120~200℃である、常圧条件下で乾燥して成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得る。
【0095】
本開示で使用される乾燥装置は、フラッシュ乾燥装置および噴霧乾燥装置、好ましくは噴霧乾燥装置であってもよい。フラッシュ乾燥および噴霧乾燥は、材料を乾燥するために使用される一般的な方法である。湿った材料を乾燥塔内に分散させた後、熱風と接触させることにより、水分を急速に蒸発させて乾燥生成物を得る。噴霧乾燥法は、水溶液およびエマルジョンを直接的に乾燥させて粉末状または顆粒状生成物にすることができ、エバポレーション、粉砕などの手順の必要性を排除する。
【0096】
噴霧乾燥の動作原理は、機械的作用(圧力、遠心力、空気の流通噴霧など)によって、非常に微細なミスト状粒子に被乾燥材料を分散させることである。これにより、水の蒸発面積が増加し、乾燥プロセスが促進する。熱風と接触させることにより、水の大部分が短時間で除去される。その結果、材料中の固形物が乾燥して粉末になる。
【0097】
本開示で使用される噴霧乾燥装置は、既存プロセスの従来の装置であってよい。本開示では、噴霧乾燥装置に、特別な制限はない。一般に、噴霧乾燥装置は、供給システム、高温ガスシステム、乾燥塔システム、受入システム、および密封システムを含んでもよい。上記供給システムは、上端中央にて、上記乾燥塔システムと接続し、上記高温ガスシステムは、上端の側面にて、乾燥塔システムと接続し、上記受入システムは、下端にて、上記乾燥塔システムと接続し、上記密封システムは、上記高温ガスシステムと接続する。一般に、噴霧乾燥プロセスは、必ず、3つの機能、すなわち、元の液体の噴霧、噴霧中の微小液滴の乾燥、並びに微粉末生成物の分離および回収を含み得る。噴霧乾燥装置は、通常、上記機能に対応する噴霧器、乾燥室、微粉回収装置を備えている。
【0098】
噴霧乾燥プロセスは、多くの制御パラメータおよび複雑な因子を含み得る。従って、噴霧乾燥後の生成物は、非常に複雑な粒度及び粒子形状を有することがある。一般に、生成物は、ミクロンオーダーの粒度を有してもよく、球形状、円盤形状、リンゴ形状、ブドウ形状、空洞状、半月状などを含む様々な形状の混合物であってもよい。とりわけ、生成物を空洞のような理想的な単一形状に選択的に成形することは困難である。
【0099】
従来技術の1つの方法は、界面活性剤の表面張力によってモレキュラーシーブ含有分散液から球状エマルジョンを形成する工程と、次いで上記球状エマルジョンを低温で噴霧することによって成形する工程と、を含む。噴霧による成形の間、球状エマルジョン中の孔形成剤は、気化または熱分解され得る。気化および熱分解によって生成されるガスにより、球状エマルジョンの内部が中空になり得る。上記ガスの緩やかな放出により、表面に大きな孔が形成され、当該大きな孔は、内部の中空構造に接続している。また、噴霧による成形の際に、モレキュラーシーブ粒子が二次的な集積された細孔を形成し得る。当該細孔は、モレキュラーシーブの微小球の表面でメソ細孔となる。その後の焼成と組み合わせて、モレキュラーシーブの中空微小球が大きな粒子として得られる。
【0100】
本開示では、上記乾燥による成形が、400~1200℃の入口ガス温度という高温で行われる。このプロセスにおいて、液滴内の上記硝酸塩および上記孔形成剤は、強い酸化還元反応を受け、自己伝播燃焼および強い爆発が生じる。したがって、瞬間的に大量のガスが発生する。それと同時に、液滴が高温領域に噴霧されると、表面で強い蒸発が生じる。結果として生じる表面張力により、液滴は急激に収縮し得る。強い内部爆発と強い外部収縮との組み合わせ効果により、非常に高い強度を有するラズベリー状の中空材料が形成される。したがって、調製されたラズベリー状の酸化物微小球は、高い強度、高い球形度、および生成物の高い認定率を有し得る。
【0101】
本開示のさらなる態様によれば、本開示は、上述した本開示による方法によって調製されたラズベリー状の酸化物微小球を提供する。
【0102】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球は、焼成後に、担体として使用することができる。対応する活性成分を装填することにより、種々の触媒に調製することができる。上記焼成は、400~1300℃、好ましくは450~1100℃、より好ましくは500~700℃の温度で、1~12時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~4時間行うことができる。
【0103】
本開示によるラズベリー状の酸化物微小球から調製される担体は、比表面積が約0.1~900m/g、好ましくは10~300m/gであり、細孔容積が約0.01~3.6mL/g、好ましくは0.1~0.9mL/gであり得る。
【0104】
さらに、本開示によるラズベリー状の酸化物微小球は、高温耐性断熱材料、生体材料、医薬材料、または光化学材料(例えば、光触媒材料)として使用することもできる。
【0105】
本開示によるFT合成触媒は、下記を含み得る方法によって調製することができる:
ラズベリー状の酸化物微小球を準備する工程;
上記ラズベリー状の酸化物微小球を焼成して担体を得る工程;および、
上記担体に、上記活性金属成分を含む化合物の含浸溶液を含浸させ、焼成により乾燥および活性化させて、FT合成触媒を得る工程。
【0106】
本開示による方法では、ラズベリー状の酸化物微小球を準備する工程は、上述の方法によって、ラズベリー状の酸化物微小球を調製する工程を含んでもよい。
【0107】
上記活性金属成分を含む化合物の含浸溶液中において、活性金属成分を含む化合物は、可溶性化合物(例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩基性炭酸塩、塩酸塩および活性金属成分を含む可溶性複合体のうち1つ以上、好ましくは、硝酸塩および/または塩基性炭酸塩)からなる群より選択される、1つ以上である。コバルトを例に挙げると、活性金属成分を含む化合物は、硝酸コバルト、酢酸コバルト、重炭酸コバルト、塩化コバルトおよびコバルトの可溶性複合体、好ましくは、硝酸コバルトおよび/または重炭酸コバルトからなる群より選択される、1つ以上である。
【0108】
前記担体に活性金属成分を含む化合物の含浸溶液を含浸させる工程は、下記を含んでもよい:活性金属成分を含む化合物の含浸溶液を調製する工程、次いで担体に溶液を含浸させる工程。含浸工程は、従来の方法(例えば、余剰液含浸法、細孔飽和含浸法など)によって行うことができる。活性金属成分を含む化合物の含浸溶液の濃度および量または担体の量を調整および制御することによって、特定の含有量の活性金属成分を有する触媒を調製することができる。このことは、当業者によって容易に理解され、達成される。
【0109】
含浸後、含浸した生成物を乾燥させる必要がある。乾燥工程は、80~200℃、好ましくは、100~150℃の温度で行うことができる。使用する乾燥装置および操作条件は、既存の乾燥技術で一般的に使用されているものである。本開示では、それらに特定の限定はない。
【0110】
触媒を得るために、乾燥した生成物を焼成によって活性化する必要がある。焼成による活性化は、200~800℃、好ましくは、300~600℃の温度で行うことができる。使用する装置および操作条件は、焼成に関連する先行技術で一般的に使用されているものである。本開示では、それらに特定の限定はない。
【0111】
ラズベリー状の酸化物微小球を使用することで、担体および触媒の浪費を減少させ、それによって材料を節約することができる。同時に、中空構造のために形状効率係数を向上することができ、それによって拡散を促進して反応効率および標的生成物への選択性を向上させることができる。比較的大きな熱効果を有する反応では、中空担体はホットスポットの生成を減少させることもでき、それによって良好な固有の安全性を有することができる。
【0112】
担体としてラズベリー状の酸化物微小球を使用することで、短い拡散距離および大きな表面積をもたらすことができる。従って、FT合成反応における拡散の課題を解決することができる。本開示によるFT合成触媒は、良好なFT合成性能を有する。FT合成の転化率およびC5+炭化水素への選択性を向上し、メタンおよびCOへの選択性を低下させることができる。さらに、メタンへの選択性は、温度上昇により著しく増加しない。さらに、本開示による方法は低コストであり、大規模工業用途に適用することができる。
【0113】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。しかし、本開示の範囲はそれによって限定されない。
【0114】
〔実施例〕
試薬、器具、および試験
下記の調製実施例および操作実施例で使用したいくつかの原材料の詳細を、下記に列挙する:
擬ベーマイト粉末(Changling Catalyst Factory製、固形含有量 69.5重量%、γ-Al含有量 98重量%以上);
アルミゾル(Zhoucun Catalyst Factory製、Al含有量 22重量%);
ケイ酸ナトリウム(Jinan Huifengda Chemical Co., Ltd.製、係数3.1~3.4、不溶性種の含有量 0.4%未満)
アンモニア水、塩酸、硝酸、硫酸、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニル、四塩化チタン、二酸化チタン(China National Pharmaceutical Group Chemical Reagent Co., Ltd.製、工業グレード);
ポリエチレングリコールPEG4000粉末(Wenzhou Shuangxiao Rubber and Plastic Material Co., Ltd.製);
メチルセルロース(Hubei Jiangmin Taihua Chemical Co、Ltd.製);
エチルオルトシリケート(TEOS、Jinan Huate Chemical Co、Ltd.製、約99%の含有量);
硝酸アルミニウム、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸イットリウム、硝酸マグネシウム(Yutai Qixin Chemical Co、Ltd.製、工業グレード)
試験方法:
1.担体粉末および触媒粉末の粉砕率は、以下の方法に従って測定した:試験する微小球粉末を、100メッシュの篩を介してふるい分けした。篩を通過した微小球粉末を、150メッシュの篩を介してさらに篩い分けした。150メッシュの篩でカットオフした微小球粉末を、試験対象サンプルとして使用した。一定量の微小球粉末(粒度100~150メッシュ)を、断面径10mmのスチールシリンダー容器に加えた。微小球粉末を、シリンダーを介して圧し、特定の圧力(100N)を特定の時間(10秒)かけた。圧した微小球粉末を、150メッシュの篩を介して篩い分けした。篩を通過した微小球粉末の質量を記録した。微小球粉末の破砕率は、篩を通過した微小球粉末の質量を、加えた微小球粉末の総質量で割ることにより求めた。
【0115】
2.触媒床の圧力損失は、下記を用いて測定した:
床の入口端に接続した精密標準圧力計。ここで、ガス空間速度は24000h-1、ガス媒体は窒素であった。
【0116】
3.触媒のFT合成反応性能を固定床反応器中で評価した。
【0117】
FT合成触媒を使用する前に、触媒を元素金属に還元した。触媒を還元する条件を、下記に挙げる:常圧、昇温速度5℃/分、水素空間速度600h-1、温度400℃、5時間。還元後、反応性能を下記条件下で試験した:H/CO/N=45%/45%/10%(体積比)の原料ガス組成、圧力2.5MPa、各々の温度200℃、210℃、220℃、合成ガス(原料ガス)空間速度24000h-1。各々の反応温度で操作し、12時間反応させた。次いで、クロマトグラフィー分析のためにガスサンプルを採取した。
【0118】
[調製実施例1]
20kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加して、次いで200gの濃硝酸、次いで2.3kgのPEG4000、最後に4kgの擬ベーマイト粉末を添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0119】
分散スラリーを撹拌し、35℃で1.5時間エージングした。
【0120】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は580℃、乾燥終了時の出口ガス温度は160℃であった。
【0121】
ラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を、図1に示した。それらの顕微鏡写真を、図5に示した。
【0122】
[調製実施例2]
20kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.5kgの硝酸ジルコンを添加して、次いで175gの濃硝酸、次いで2kgのPEG4000および5gのニトログリセリン、最後に4.6kgの擬ベーマイト粉末を添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0123】
分散スラリーを撹拌し、25℃で0.5時間エージングした。
【0124】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は140℃であった。
【0125】
ラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を、図2に示した。
【0126】
[調製実施例3]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加して、次いで200gの濃硝酸および4.5kgの炭酸ナトリウム、次いで2.3kgのメチルセルロースおよび10gのピクリン酸、最後に14kgの硫酸アルミニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0127】
分散スラリーを撹拌し、30℃で1時間エージングした。
【0128】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は580℃、乾燥終了時の出口ガス温度は130℃であった。
【0129】
ラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を、図3に示した。
【0130】
[調製実施例4]
40kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸イットリウムを添加して、次いで230gの濃硝酸および4.8kgの炭酸ナトリウム、次いで2.8kgのメチルセルロースおよび15gのニトロセルロース、最後に12.5kgの塩化アルミニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0131】
分散スラリーを撹拌し、30℃で1.5時間エージングした。
【0132】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は141℃であった。
【0133】
ラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を、図4に示した。
【0134】
[調製実施例5]
40kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加して、次いで200gの濃硝酸、次いで2kgのPEG4000および2gのニトロセルロース、最後に5.5kgのケイ酸ナトリウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0135】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1.5時間エージングした。
【0136】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は120℃であった。
【0137】
ラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真を、図6に示した。
【0138】
[調製実施例6]
40kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.5kgの硝酸アルミニウムを添加して、次いで200gの濃硫酸、次いで1kgのPEG4000および5gのピクリン酸、最後に3kgのケイ酸ナトリウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0139】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。
【0140】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガスの温度は600℃、乾燥終了時の出口ガスの温度は180℃であった。
【0141】
[調製実施例7]
20Lの水とエタノールとの溶液(水とエタノールとを3:1の体積比で含む)を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加し、次いで7Lの濃縮アンモニア水、次いで2kgのエチルセルロースおよび7gのニトログリセリン、最後に5kgのTEOSを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0142】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1.5時間エージングした。
【0143】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は700℃、乾燥終了時の出口ガス温度は160℃であった。
【0144】
[調製実施例8]
20Lの水とエタノールとの溶液(水とエタノールとを体積比4:1で含む)を反応オートクレーブに加えた。これに、0.3kgの硝酸ジルコンを添加して、次いで3Lの濃縮アンモニア水、次いで0.5kgのPEG4000および6gのピクリン酸、最後に2.6kgのTEOSを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0145】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。
【0146】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は660℃、乾燥終了時の出口ガス温度は140℃であった。
【0147】
[調製実施例9]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸ジルコンを添加して、次いで2.5kgのPEG4000、最後に7kgの水酸化ジルコニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0148】
分散スラリーを撹拌し、45℃で1.5時間エージングした。
【0149】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は110℃であった。
【0150】
ラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真を、図7に示した。
【0151】
[調製実施例10]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.7kgの硝酸ジルコンを添加して、次いで2Lの濃縮アンモニア水、次いで1.5kgのPEG4000および8gのピクリン酸、最後に7kgの水酸化ジルコニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0152】
分散スラリーを撹拌し、25℃で2時間エージングした。
【0153】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は140℃であった。
【0154】
[調製実施例11]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加して、次いで2Lの濃縮アンモニア水、次いで2kgのPEG4000および2gのトリニトロトルエン、最後に7kgの水酸化ジルコニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0155】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。
【0156】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は620℃、乾燥終了時の出口ガス温度は141℃であった。
【0157】
[調製実施例12]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.5kgの硝酸マグネシウムを添加して、次いで2.5Lの濃縮アンモニア水、次いで1kgのメチルセルロースおよび6gのニトログリセリン、最後に7.5kgの水酸化ジルコニウムを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0158】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。
【0159】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は140℃であった。
【0160】
[調製実施例13]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸チタンを添加して、次いで2.5kgのPEG4000および3gのニトロセルロース、最後に500gの濃硝酸および6kgの二酸化チタンを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0161】
分散スラリーを撹拌し、55℃で1.5時間エージングした。
【0162】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は480℃、乾燥終了時の出口ガス温度は120℃であった。
【0163】
ラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真を、図8に示した。
【0164】
[調製実施例14]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.7kgの硝酸チタンを添加して、次いで2.6Lの濃縮アンモニア水、次いで1.5kgのPEG4000および6gのピクリン酸、最後に500gの濃硝酸および7kgの硝酸チタンを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0165】
分散スラリーを撹拌し、25℃で2時間エージングした。
【0166】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は141℃であった。
【0167】
[調製実施例15]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、1.2kgの硝酸アルミニウムを添加し、次いで2.1Lの濃縮アンモニア水、次いで2kgのPEG4000および2gのトリニトロトルエン、最後に400gの濃硝酸および7kgの四塩化チタンを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0168】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1.5時間エージングした。
【0169】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は620℃、乾燥終了時の出口ガス温度は150℃であった。
【0170】
[調製実施例16]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、0.5kgの硝酸マグネシウムを添加して、次いで2.4Lの濃縮アンモニア水、次いで1kgのメチルセルロースおよび6gのニトログリセリン、最後に400gの濃硝酸および7kgの四塩化チタンを添加した。混合物を均一に撹拌し、粉砕して分散スラリーを得た。
【0171】
分散スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。
【0172】
エージングした分散スラリーを噴霧乾燥装置に送り、乾燥により成形し、ラズベリー状の酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は140℃であった。
【0173】
[比較調製実施例1]
20kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、4.5kgの擬ベーマイト粉末を添加した。混合物を均一に撹拌した。これに200gの濃塩酸を加えた。混合物を粉砕した。これに、2.3kgのPEG4000を添加した。混合物をスラリーにした。スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。噴霧乾燥装置で乾燥して成形し、酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は560℃、乾燥終了時の出口ガス温度は145℃であった。
【0174】
得られた酸化物微小球の顕微鏡写真を、図9に示した。図からわかるように、微小球は実質的に固体であり、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0175】
[比較調製実施例2]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、5.5kgのケイ酸ナトリウムを添加した。混合物を均一に撹拌した。これに濃塩酸200gを加えた。得られた分散液を濾過した。沈殿物をエタノールおよび脱イオン水でそれぞれ2回洗浄し、未反応の無機不純物および有機不純物を除去した。
【0176】
これに、20kgの水および2.0kgのPEG4000を添加した。混合物をスラリーにした。スラリーを撹拌し、25℃で1時間エージングした。噴霧乾燥装置で乾燥して成形し、酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は450℃、乾燥終了時の出口ガス温度は120℃であった。
【0177】
顕微鏡で観察したところ、生成物は比較調製実施例1と同様の構造を有していた。すなわち、実質的に固体であり、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0178】
[比較調製実施例3]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、7kgの水酸化ジルコンを添加した。混合物を、材料が完全に混合されるまで、30℃で激しく撹拌した。分散液をグラインダーで30分間粉砕した。
【0179】
混合粉砕後、pH値が約10になるまで、調整剤として濃縮アンモニア水を添加した。2時間反応させた後、分散液を得た。分散液を撹拌し、25℃で1時間エージングした。噴霧乾燥装置で乾燥して成形し、酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は650℃、乾燥終了時の出口ガス温度は150℃であった。
【0180】
顕微鏡で観察したところ、生成物は比較調製実施例1と同様の構造を有していた。すなわち、実質的に固体であり、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0181】
[比較調製実施例4]
30kgの水を反応オートクレーブに加えた。これに、6kgの二酸化チタンおよび500gの濃塩酸を添加した。混合物を、材料が完全に混合されるまで30℃で激しく撹拌した。得られた分散液をグラインダーで30分間粉砕した。
【0182】
混合、反応、粉砕後、pH値が約9になるまで、調整剤として濃縮アンモニア水を添加した。2時間反応させた後、2.5kgのPEG4000を添加し、分散液を得た。分散液を撹拌し、45℃で1時間エージングした。噴霧乾燥装置で乾燥して成形し、酸化物微小球を得た。ここで、噴霧乾燥の霧化圧力は0.3~3.0MPa、塔内圧力は-0.0010~-0.0090MPa、乾燥開始時の入口ガス温度は520℃、乾燥終了時の出口ガス温度は170℃であった。
【0183】
顕微鏡で観察したところ、生成物は比較調製実施例1と同様の構造を有していた。すなわち、実質的に固体であり、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0184】
[比較調製実施例5]
5.5kgのHZSM‐5モレキュラーシーブ(結晶サイズ300~350nm)、3kgのカオリン、1kgのセメントおよび0.5kgの炭酸アンモニウムを20kgの脱イオン水に加えた。混合物に対して均質乳化機を用いて2000rpmで2時間せん断乳化を行い、固形含有量31.7%の均一なコロイド状スラリーを形成した。
【0185】
300gのP123界面活性剤をコロイド状スラリーに添加した。さらに1時間撹拌を行い、微小球スラリーを得た。
【0186】
微小球スラリーを噴霧乾燥装置に送った。ここで、噴霧乾燥装置の霧化圧力は2.8MPa、噴霧乾燥装置の入口温度は280℃、出口温度は120℃であった。2~5秒後に噴霧乾燥装置の出口から流出させ、微小球粒子を得た。
【0187】
[比較調製実施例6]
5.5kgのHZSM‐5モレキュラーシーブ(結晶サイズ300~350nm)、3kgのカオリン、1kgのセメントおよび0.5kgの炭酸アンモニウムを20kgの脱イオン水に加えた。混合物に対して均質乳化機を用いて2000rpmで2時間せん断乳化を行い、固形含有量31.7%の均一なコロイド状スラリーを形成した。
【0188】
300gのP123界面活性剤をコロイド状スラリーに添加した。さらに1時間撹拌を行い、微小球スラリーを得た。
【0189】
微小球スラリーを噴霧乾燥装置に送った。ここで、噴霧乾燥装置の霧化圧力は2.8MPa、噴霧乾燥装置の入口温度は560℃、出口温度は140℃であった。2~5秒後に噴霧乾燥装置の出口から流出させ、微小球粒子を得た。
【0190】
得られた微小球粒子の顕微鏡写真を、図10に示した。図からわかるように、大部分の微小球粒子は不規則な形状であった。さらに、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0191】
[比較調製実施例7]
5.5kgの擬ベーマイト粉末、3kgのカオリン、1kgのセメントおよび0.5kgの炭酸アンモニウムを20kgの脱イオン水に添加した。混合物に対して均質乳化機を用いて2000rpmで2時間せん断乳化を行い、固形含有量31.7%の均一なコロイド状スラリーを形成した。
【0192】
300gのP123界面活性剤をコロイド状スラリーに添加した。さらに1時間撹拌を行い、微小球スラリーを得た。
【0193】
微小球スラリーを噴霧乾燥装置に送った。ここで、噴霧乾燥装置の霧化圧力は2.8MPa、噴霧乾燥装置の入口温度は280℃、出口温度は120℃であった。2~5秒後に噴霧乾燥装置の出口から流出させ、微小球粒子を得た。
【0194】
得られた微小球粒子の顕微鏡写真を、図11に示した。図からわかるように、微小球粒子は実質的に固体であり、その中心部分は外部と繋がる中空構造をほとんど含まなかった。
【0195】
〔操作実施例〕
以下の操作実施例を用いて、触媒性能についての担体として、調製実施例および比較調製実施例で得られた酸化物微小球を使用する効果を試験した。
【0196】
[操作実施例1]
調製実施例1で得られたラズベリー状の酸化物微小球を600℃で焼成し、担体ZT1を得た。その物性を表1に示す。
【0197】
担体ZT1に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT1を得た。その物性を表2に示す。
【0198】
触媒CAT1の微小球の顕微鏡写真を、図12に示した。
【0199】
[操作実施例2]
調製実施例2で得られたラズベリー状の酸化物微小球を500℃で焼成し、担体ZT2を得た。その物性を表1に示す。
【0200】
担体ZT2に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。110℃の温度で乾燥し、350℃で焼成して触媒CAT2を得た。その物性を表2に示す。
【0201】
[操作実施例3]
調製実施例3で得られたラズベリー状の酸化物微小球を500℃で焼成し、担体ZT3を得た。その物性を表1に示す。
【0202】
担体ZT3に硝酸第二鉄溶液を含浸させ、鉄含有量15.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT3を得た。その物性を表2に示す。
【0203】
[操作実施例4]
調製実施例4で得られたラズベリー状の酸化物微小球を700℃で焼成し、担体ZT4を得た。その物性を表1に示す。
【0204】
担体ZT4に硝酸第二鉄溶液を含浸させ、鉄含有量15.0%の触媒を調製した。130℃の温度で乾燥し、370℃で焼成して触媒CAT4を得た。その物性を表2に示す。
【0205】
[操作実施例5]
担体ZT3に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT5を得た。その物性を表2に示す。
【0206】
触媒CAT5の微小球の顕微鏡写真を、図13に示した。
【0207】
[操作実施例6]
担体ZT4に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製した。130℃の温度で乾燥し、380℃で焼成して触媒CAT6を得た。その物性を表2に示す。
【0208】
[操作実施例7]
調製実施例5で得られたラズベリー状の酸化物微小球を600℃で焼成し、担体ZT5を得た。その物性を表1に示す。
【0209】
担体ZT5に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT7を得た。その物性を表2に示す。
【0210】
[操作実施例8]
調製実施例6で得られたラズベリー状の酸化物微小球を500℃で焼成し、担体ZT6を得た。その物性を表1に示す。
【0211】
担体ZT6に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。110℃の温度で乾燥し、350℃で焼成して触媒CAT8を得た。その物性を表2に示す。
【0212】
[操作実施例9]
調製実施例7で得られたラズベリー状の酸化物微小球を500℃で焼成し、担体ZT7を得た。その物性を表1に示す。
【0213】
担体ZT7に硝酸第二鉄溶液を含浸させ、鉄含有量15.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT9を得た。その物性を表2に示す。
【0214】
[操作実施例10]
調製実施例8で得られたラズベリー状の酸化物微小球を700℃で焼成し、担体ZT8を得た。その物性を表1に示す。
【0215】
担体ZT8に硝酸第二鉄溶液を含浸させて鉄含有量15.0%の触媒を調製した。130℃の温度で乾燥し、370℃で焼成して触媒CAT10を得た。その物性を表2に示す。
【0216】
[操作実施例11]
担体ZT7に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒CAT11を得た。その物性を表2に示す。
【0217】
[操作実施例12]
担体ZT8に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製した。130℃の温度で乾燥し、380℃で焼成して触媒CAT12を得た。その物性を表2に示す。
【0218】
[操作実施例13]
調製実施例9で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体ZT13を得た。その物性を表1に示す。
【0219】
[操作実施例14]
調製実施例13で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体ZT14を得た。その物性を表1に示す。
【0220】
[比較操作実施例1]
比較調製実施例1で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体DBZT1を得た。その物性を表1に示す。
【0221】
担体DBZT1に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒DBCAT-Co-1を得た。その物性を表2に示す。触媒DBCAT-Co-1の微小球の顕微鏡写真を、図15に示した。
【0222】
担体DBZT1に硝酸第二鉄溶液を含浸させ、鉄含有量15.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥させ、420℃で焼成して、触媒DBCAT-Fe-1を得た。その物性を表2に示す。
【0223】
担体DBZT1に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒DBCAT-Ru-1を得た。その物性を表2に示す。
【0224】
[比較操作実施例2]
比較調製実施例2で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体DBZT2を得た。その物性を表1に示す。
【0225】
担体DBZT2に硝酸コバルト溶液を含浸させ、コバルト含有量16.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒DBCAT-Co-2を得た。その物性を表2に示す。
【0226】
担体DBZT2に硝酸第二鉄溶液を含浸させ、鉄含有量15.0%の触媒を調製した。120℃の温度で乾燥させ、420℃で焼成して、触媒DBCAT-Fe-2を得た。その物性を表2に示す。
【0227】
担体DBZT2に硝酸ニトロシルルテニウム溶液を含浸させ、ルテニウム含有量3.0%の触媒を調製し、120℃の温度で乾燥し、420℃で焼成して触媒DBCAT-Ru-2を得た。その物性を表2に示す。
【0228】
[比較操作実施例3]
比較調製実施例3で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体DBZT3を得た。その物性を表1に示す。
【0229】
[比較操作実施例4]
比較調製実施例4で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体DBZT4を得た。その物性を表1に示す。
【0230】
[比較操作実施例5]
比較調製実施例5で得られた酸化物微小球を600℃で3時間焼成し、担体DBZT5を得た。その物性を表1に示す。
【0231】
【表1】
【0232】
表1から分かるように、本発明による調製実施例で得られたラズベリー状の酸化物微小球は、担体として用いた際に、比較調製実施例で得られた酸化物微小球と同様の比表面積、細孔容積、および平均細孔径を有していた。しかし、調製実施例で得られた酸化物微小球は、球形度および強度について実質的な向上を達成した。調製実施例で得られた酸化物微小球は、比較調製実施例で得られた酸化物微小球の球形度および強度よりも有意に良好であった。
【0233】
【表2】
【0234】
操作実施例1~12および比較操作実施例1~2の触媒について、上述のように固定床反応器中にてFT合成反応性能との関連を評価した。FT合成触媒を使用する前に、触媒を元素金属に還元した。触媒の還元条件は、常圧、昇温速度5℃/分、水素空間速度600h-1、温度400℃、5時間であった。
【0235】
還元後、以下の条件で反応性能を試験した。
【0236】
コバルト系触媒の反応条件は、H/CO/N=45%/45%/10%(体積比)の原料ガス組成、圧力2.5MPa、各々の温度200℃、210℃、220℃、合成ガス(原料ガス)空間速度24000h-1であった。各々の反応温度で操作し、12時間反応させた。次いで、クロマトグラフィー分析のためにガスサンプルを採取した。反応性能の主な指標には、下記が挙げられる:COの転化率、メタンへの選択性、およびC5+炭化水素への選択性。
【0237】
鉄系触媒の反応条件は、下記が挙げられる:H/CO/N=45%/45%/10%(体積比)の原料ガス組成、圧力2.5MPa、各々の温度260℃、270℃、280℃、および合成ガス(原料ガス)空間速度15000h-1。各々の反応温度で操作し、12時間反応させた。次いで、クロマトグラフィー分析のためにガスサンプルを採取した。反応性能の主な指標には、下記が挙げられる:COの転化率、メタンへの選択性、C5+炭化水素への選択性およびCOへの選択性。
【0238】
ルテニウム系触媒の反応条件は、下記が挙げられる:H/CO/N=45%/45%/10%(体積比)の原料ガス組成、圧力2.5MPa、各々の温度200℃、210℃、220℃、合成ガス(原料ガス)空間速度15000h-1。各々の反応温度で操作し、12時間反応させた。次いで、クロマトグラフィー分析のためにガスサンプルを採取した。反応性能の主な指標には、下記が挙げられる:COの転化率、メタンへの選択性、およびC5+炭化水素への選択性。
【0239】
反応性能の試験結果を、表3に示す。
【0240】
【表3】
【0241】
【0242】
表3の試験結果は、本開示によるラズベリー状の酸化物微小球を担体として用いて調製したフィッシャー-トロプシュ合成触媒が、同じ条件下でのFT合成でより良好な性能を有することを示した。すなわち、フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、より高いCO転化率およびC5+炭化水素への選択性を達成した。しかし、フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、より低いメタンへの選択性およびCOへの選択性を達成した。さらに、本開示による触媒は、メタンへの選択性を達成した。この選択性は、温度上昇のために有意に増加しなかった。これにより、FT合成反応における拡散の課題を有意に解決した。
【0243】
当業者は、本明細書に記載された実施形態が単に例示的なものであることを理解すべきである。本開示の範囲内で、様々な置換、変更、および修正を行うことができる。従って、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。しかし、本開示は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0244】
図1図1~4は、調製実施例1~4にて調製したラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を示す。
図2図1~4は、調製実施例1~4にて調製したラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を示す。
図3図1~4は、調製実施例1~4にて調製したラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を示す。
図4図1~4は、調製実施例1~4にて調製したラズベリー状の酸化物微小球のSEM写真を示す。
図5図5は、調製実施例1にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図6図6は、調製実施例5にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図7図7は、調製実施例9にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図8図8は、調製実施例13にて調製したラズベリー状の酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図9図9は、比較調製実施例1にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である
図10図10は、比較調製実施例6にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図11図11は、比較調製実施例7にて調製した酸化物微小球の顕微鏡写真である。
図12図12は、操作実施例1にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
図13図13は、操作実施例5にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
図14図14は、比較操作実施例1にて調製した触媒の顕微鏡写真である。
図1
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