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特許7671943情報処理システム、情報処理方法、および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、および物品
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20250425BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
G01N21/78 Z
G01N33/483 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024566791
(86)(22)【出願日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2024022150
【審査請求日】2024-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515163313
【氏名又は名称】株式会社メタジェン
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】野間口 達洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 優
(72)【発明者】
【氏名】溝口 明祐
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0104704(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113970546(CN,A)
【文献】Furusawa et al.,Decoding gut microbiota by imaging analysis of fecal samples,iScience,2021年12月17日,Vol.24/Iss.12,PP.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/78
G01N 33/483
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像に基づいて、前記対象の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定する判定部と
を備え
前記判定部は、前記腸内環境情報として、酢酸、コハク酸、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸のうち少なくとも一つの腸内代謝物質の濃度または存在量を判定する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記撮影画像に基づいて、前記色を数値化した特徴量を算出する算出部を更に備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定部は、訓練用データを提供する複数の被験体について、前記被験体の前記特徴量と、前記被験体の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を用いて学習された学習済みモデルに対して、前記対象の前記特徴量を入力することで、前記対象の腸内環境情報を判定する、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記判定部は、更に、前記腸内環境情報として、腸内代謝物質の濃度または存在量、および、腸内細菌の存在比率、存在量、およびShannon indexのうち少なくとも一つを判定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記腸内細菌として、Bifidobacterium属の細菌の存在比率または存在量、および、Shannon indexのうち少なくとも一つを判定する、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記対象は、1歳未満の乳児である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記呈色試薬は、前記糞便に基づく生体試料のpHまたは極性により色が変化する試薬である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記色は、RGB色空間、Lab色空間、CMYK色空間、HSV色空間、およびGray色空間のうち少なくとも1種の色空間の画素値で表される、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記呈色試薬は、3種以上5種以下の呈色試薬である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記呈色試薬は、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ライハルト試薬、ブロモクレゾールパープル、ブロモピロガロールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッドおよびクロロフェノールレッドのうちの3種以上5種以下の呈色試薬である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記腸内環境情報に基づいて、前記対象の健康に関する健康指標を評価する評価部を更に備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記取得部は、複数の呈色試薬それぞれが個別の位置に配置されたカラーセンサーアレイを用いて前記呈色反応が実施された後の呈色試薬の色が撮影された前記撮影画像を取得する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項13】
対象の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得し、
前記撮影画像に基づいて、前記対象の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定する
ことを含
前記判定する処理は、前記腸内環境情報として、酢酸、コハク酸、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸のうち少なくとも一つの腸内代謝物質の濃度または存在量を判定する、
情報処理方法。
【請求項14】
前記腸内環境情報に基づいて、前記対象の健康に関する健康指標を評価する、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記撮影画像を取得する処理は、複数の呈色試薬それぞれが個別の位置に配置されたカラーセンサーアレイを用いて前記撮影画像を取得する、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記呈色試薬は、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ライハルト試薬、ブロモクレゾールパープル、ブロモピロガロールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッドおよびクロロフェノールレッドのうちの3種以上5種以下の呈色試薬である、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項17】
対象の糞便を用いた呈色反応に使用するための呈色試薬を含み、複数の前記呈色試薬の色の変化を観察可能な物品であって、
前記呈色試薬は、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ライハルト試薬、ブロモクレゾールパープル、ブロモピロガロールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッドおよびクロロフェノールレッドのうちの1種以上の呈色試薬であ
前記色の変化に基づいて、前記対象の腸内環境情報として、酢酸、コハク酸、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸のうち少なくとも一つの腸内代謝物質の濃度または存在量を判定することに用いられる、
物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法、および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
糞便の分析方法の一つとして、試料と混合することにより呈色反応を示す呈色試薬(色素)を用いる手法がある。例えば、呈色反応後の反応溶液の色を色凡例と目視で比較したり、スペクトル吸光度を測定したりすることで、糞便中に含まれる各種成分の分析が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/097043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、扱う呈色試薬が多いほど多面的な分析が可能となる反面、色の変化を目視で観察したり、測定したりする手間が増大してしまう。
【0005】
本発明は、呈色反応を用いた糞便の分析を簡便に行うことができる情報処理システム、情報処理方法、および物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得する取得部と、前記撮影画像に基づいて、前記対象の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定する判定部とを備える、情報処理システムである。
【0007】
また、本発明は、対象の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得し、前記撮影画像に基づいて、前記対象の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定することを含む、情報処理方法である。
【0008】
また、本発明は、訓練用データを提供する複数の被験体について、前記被験体の特徴量と、前記被験体の腸内環境の状態に関する腸内環境情報とを用いて機械学習を行う学習部を備える、情報処理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、呈色反応を用いた糞便の分析を簡便に行うことができる情報処理システム、情報処理方法、および物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、情報処理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、算出部の処理を説明するための図である。
図5図5は、情報処理システムの学習済みモデルについて説明するための図である。
図6図6は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図7図7は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に係る情報処理システム、情報処理方法、および物品を説明する。なお、以下の各実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0012】
なお、以下の実施形態において、「対象者」とは、呈色反応を用いた糞便(生体試料)の分析の対象となる者であり、典型的には患者であるが、健康状態を把握する目的で分析の対象となる健常者であってもよい。また、対象者としては、成人と比較して腸内環境情報を得られにくく、より健康管理に注意が必要となる1歳未満の乳児であってもよい。
【0013】
また、分析対象は、必ずしも人間に限定されるものではなく、例えば、ペットや家畜などの動物であってもよい。分析対象に人間以外の動物も含める場合、「対象」又は「被検体」と表記する。
【0014】
また、「利用者」とは、実施形態に係る情報処理システムを利用する者であり、典型的には医療従事者であるが、必ずしも医療従事者でなくてもよい。例えば、利用者は、対象者本人であってもよいし、対象者の近親者や友人、知人などでもよい。
【0015】
(実施形態)
図1を用いて、本発明に係る情報処理システム1の構成について説明する。図1は、情報処理システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る情報処理システム1は、情報処理装置10、および撮影装置20を備える。情報処理装置10、および撮影装置20は、任意の通信手段によって相互に接続される。通信手段としては、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等、任意のネットワークが適用可能である。
【0016】
情報処理装置10は、呈色反応を用いた糞便を分析する処理をサービスとして提供するサーバ装置である。例えば、情報処理装置10は、取得部101、算出部102、判定部103、評価部104、及び出力制御部105を備える。なお、取得部101、算出部102、判定部103、評価部104、及び出力制御部105については後述する。なお、本願における「呈色反応」とは、発色または変色の現象を伴う反応を意味する。また、発色または変色の現象とは、光の波長の違いとして検出可能な現象であり、例えば呈色反応後のサンプルを撮影用カメラ(例えばSONY製のCyber-shot(DSC-WX500, WW220188))を用いて撮影した際に得られた画像データの値(例えばRGB色空間、Lab色空間、CMYK色空間、HSV色空間、およびGray色空間の少なくとも1種の色スコア)が変化する現象を意味する。
【0017】
撮影装置20は、可視光により視認可能な光学画像(撮影画像)を撮影する装置である。例えば、撮影装置20は、光学画像を撮影可能なカメラモジュールを搭載したスマートフォンや、光学画像を撮影可能なカメラに対応する。例えば、撮影装置20は、対象者の生体試料との呈色反応が実施されたカラーセンサーアレイを撮影し、撮影画像を情報処理装置10へ送る。
【0018】
カラーセンサーアレイは、複数の呈色試薬それぞれが個別のウェル(孔)に配置された多孔プレート(例えば96ウェルプレート)である。多孔プレートは、各ウェルの底面が透明であり、各ウェルの呈色試薬の色の変化が底面側から視認可能である。
【0019】
ここで、糞便用の呈色試薬としては、1種以上の公知の呈色試薬が適宜選択可能である。例えば、呈色試薬は、ピクリン酸、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、o-クレゾールレッド、チモールブルー、2,4-ジニトロフェノール、コンゴーレッド、メチルオレンジ、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、ブロモフェノールレッド、メチルレッド、リトマス(青)、リトマス(赤)、メチルパープル、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモチモールブルー、p-ニトロフェノール、ニュートラルレッド、フェノールレッド、p-ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエロー、1,3,5-トリニトロベンゼン、ニトラジンイエロー、ロソール酸、ブロモピロガロールレッド、ピロカテコールバイオレット、4-(4-ジエチルアミノスチリル)-1-メチルピリジニウムヨージド、ブルッカーメロシアニン染料、ナイルレッド、2-[2-シアノ-4-[(N-スクシンイミジルオキシ)カルボニル]フェニル]-1,3a,6a-トリアザペンタレン、ライハルト試薬、4-ジメチルアミノ-4-ニトロスチルベン、フタロシアニン、15-クラウン4[4-(2,4-ジニトロフェニルアゾ)フェノール]、18-クラウン5[4-(2,4-ジニトロフェニルアゾ)フェノール]、ディスパースオレンジ25、フラボン、3-ヒドロキシフラボン、カルコン、塩化シアニジン、シアニン、ペラルゴニジンクロリド、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジン、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、ε-カロテン、リコペン、9-アントリルジアゾメタン、DMEQ-ヒドラジド、ローダミンB、アルシアンブルー、フルオレセイン、アクリジンオレンジベース、ピグメント・ブルー15、鉄(II)フタロシアニン、マグネシウム(II)フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、スズ(II)フタロシアニン、ナトリウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、鉛(II)フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、マンガン(III)テトラフェニルポルフィリンクロリド、5,10,15,20-テトラフェニルポルフィリナト亜鉛、5,10,15,20-テトラキス(2,4,6-トリメチルフェニル)ポルフィリナト亜鉛、5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリナト亜鉛および5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルトのうちの1種以上が挙げられ、これらの中でも3種以上5種以下の呈色試薬を選択するのが好適である。また、上記呈色試薬のうち、より好ましいものとしては、チモールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ブロモピロガロールレッド、ナイルレッド、ライハルト試薬、ローダミンB、アルシアンブルー、マグネシウム(II)フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、ナトリウムフタロシアニンおよびフタロシアニンクロロアルミニウムのうち1種以上が挙げられ、これらの中でも3種以上5種以下の呈色試薬を選択するのが好適である。また、上記呈色試薬のうち、最も好ましいものとしては、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ライハルト試薬、ブロモクレゾールパープル、ブロモピロガロールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッドおよびクロロフェノールレッドのうちの1種以上が挙げられ、これらの中でも3種以上5種以下の呈色試薬を選択するのが好適である。
【0020】
また、呈色試薬は、糞便に基づく生体試料のpHまたは極性により色が変化するものであってもよく、pHおよび極性の双方により色が変化するものがより好適である。このような呈色試薬を用いることにより、腸内代謝物質の濃度または存在量、および、腸内細菌の存在比率、存在量、またはShannon index、を高精度に判定できる。糞便に基づく生体試料のpHにより色が変化する呈色試薬としては、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモピロガロールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッドおよびクロロフェノールレッドが挙げられ、糞便に基づく生体試料の極性により色が変化する呈色試薬としては、ライハルト試薬が挙げられる。
【0021】
なお、図1にて説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮影装置20は、必ずしも情報処理装置10に接続されなくともよい。撮影装置20によって撮像された撮影画像は、DVD(Digital Versatile Disc)等、任意の可搬性記録媒体を介して情報処理装置10に格納されてもよい。
【0022】
また、カラーセンサーアレイは、多孔プレートに限らず、複数の呈色試薬それぞれが個別の位置に配置された試験片(ペーパーデバイス等)やその他物品であってもよい。試験片は、例えば紙、プラスチック(樹脂)、ガラス、繊維、セラミックや金属など、任意の材質により形成可能である。また、例えばその他物品としては糞便に接触し得るものであれば特に制限されないが、マイクロフルイデックス、検出キット、おむつ、便器、トイレットペーパー、採便キット、浣腸、愛玩動物用トイレ砂、愛玩動物用トイレシート等が挙げられ、好ましくはマイクロフルイデックス、おむつ、便器、愛玩動物用トイレシートが挙げられる。
【0023】
次に、図2を用いて、情報処理システム1に備えられる情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0024】
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、補助記憶装置14と、入力装置15と、表示装置16と、外部I/F(Interface)17とを備える。
【0025】
CPU11は、プログラムを実行することにより、情報処理装置10の動作を統括的に制御し、情報処理装置10が有する各種の機能を実現するプロセッサ(処理回路)である。例えば、情報処理装置10が有する取得部101、算出部102、判定部103、評価部104、及び出力制御部105の各機能は、CPU11により実現される。
【0026】
ROM12は、不揮発性のメモリであり、情報処理装置10を起動させるためのプログラムを含む各種データ(情報処理装置10の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。RAM13は、CPU11の作業領域を有する揮発性のメモリである。補助記憶装置14は、CPU11が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
【0027】
入力装置15は、情報処理装置10を操作する者が各種の操作を行うためのデバイスである。入力装置15は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル又はハードウェアキーで構成される。
【0028】
表示装置16は、各種情報を表示する。例えば、表示装置16は、画像データやモデルデータ、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像等を表示する。表示装置16は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はブラウン管ディスプレイで構成される。なお、例えばタッチパネルのような形態で、入力装置15と表示装置16とが一体に構成されても良い。
【0029】
外部I/F17は、サーバ装置20等の任意の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。
【0030】
なお、図2にて説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10のハードウェア構成としては、公知のコンピュータやワークステーションなどの構成を任意に適用可能である。
【0031】
図3を用いて、情報処理システム1に備えられる情報処理装置10の処理手順を説明する。図3は、情報処理システム1の処理手順を示すフローチャートである。なお、図3の説明では、図4、および図5を適宜参照しつつ説明する。
【0032】
図3に示すように、利用者は、対象者の糞便を用いて呈色反応を実施する(ステップS101)。例えば、利用者は、対象者から取得した糞便と、カラーセンサーアレイとを接触させ、呈色反応を実施する。
【0033】
続いて、利用者は、対象者の呈色反応の結果を撮影する(ステップS102)。例えば、利用者は、撮影装置20を用いて、呈色反応後のカラーセンサーアレイ22を撮影する。
【0034】
そして、撮影装置20は、撮影画像を情報処理装置10へ送信する(ステップS103)。この結果、情報処理装置10の取得部101は、呈色反応後のカラーセンサーアレイ22が撮影された撮影画像を取得する。なお、この処理は、任意の通信手段によって行われてもよいし、任意の可搬性記録媒体を介して行われてもよい。
【0035】
そして、情報処理装置10の算出部102は、撮影画像に基づいて、対象者の色スコアを算出する(ステップS104)。なお、色スコアとは、呈色試薬の色を数値化した「特徴量」の一例である。呈色試薬の色は、RGB色空間、Lab色空間、CMYK色空間、HSV色空間、およびGray色空間それぞれの画素値で表される。
【0036】
ここで、図4を用いて、情報処理装置10の算出部102の処理を説明する。図4は、算出部102の処理を説明するための図である。
【0037】
算出部102は、取得部101によって取得された撮影画像から、RGB色空間、Lab色空間、CMYK色空間、HSV色空間、およびGray色空間それぞれで表される5つの撮影画像を生成する。例えば、取得部101によって取得された撮影画像がRGB色空間で表される画像であれば、この画像を残りの4つの色空間の画像それぞれに変換する。この変換処理としては、公知の画像変換技術を適宜適用可能である。
【0038】
そして、算出部102は、各色空間の画像それぞれにおいて、複数の呈色試薬それぞれの色が描出された領域R1をそれぞれ特定する。具体的には、算出部102は、カラーセンサーアレイ22が描出された撮影画像から、カラーセンサーアレイ22の各ウェル22aの領域をパターンマッチング処理等によって特定する。そして、算出部102は、各ウェル22aの中心を含む所定数の画素(例えば50画素×50画素)を含む領域R1を特定する。
【0039】
そして、算出部102は、特定したそれぞれの領域R1に含まれる所定数の画素の画素値の統計値を色スコアとして算出する。例えば、算出部102は、領域R1に含まれる所定数の画素の画素値の中央値を色スコアとして算出する。
【0040】
ここで、色スコアは、5つの色空間で表される5つの画像から算出される次元数の値が並ぶ数値データとなる。例えば、RGB色空間で表される画像は、R、G、およびBの3次元の画素値を有するので、RGB色空間で表される画像から算出される中央値(統計値)は3次元、例えば(x1,x2,x3)となる。同様に、Lab色空間で表される画像から算出される中央値は3次元であるので、例えば(x4,x5,x6)となる。CMYK色空間で表される画像から算出される中央値は4次元であるので、例えば(x7,x8,x9,x10)となる。HSV色空間で表される画像から算出される中央値は3次元であるので、例えば(x11,x12,x13)となる。Gray色空間で表される画像から算出される中央値は1次元であるので、例えば(x14)となる。すなわち、色スコアは、(x1,x2,x3,x4,x5,x6,x7,x8,x9,x10,x11,x12,x13,x14)という14次元の数値データである。
【0041】
このように、算出部102は、ウェル(呈色試薬)ごとに、14次元の数値データである色スコアを算出する。
【0042】
なお、上述した算出部102の処理内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の例では、5つの色空間で表される5つの画像を全て利用して色スコアを算出する処理を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、算出部102は、5つの色空間で表される5つの画像のうち少なくとも一つの画像を利用して色スコアを算出することができるし、2つ以上、3つ以上、または4つ以上の複数の色空間で表される画像を利用して色スコアを算出することもできる。
【0043】
また、上記の例では、色スコアとして中央値を算出する処理を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、算出部102は、中央値以外にも、平均値や最頻値などの任意の統計値を色スコアとして算出することができる。また、算出部102は、中央値と平均値、最頻値など、任意の統計値を組み合わせて色スコアを算出してもよい。この場合、平均値を用いた場合にも14次元の数値データが得られるので、中央値と平均値を組み合わせる場合には色スコアは28次元の数値データとなる。すなわち、算出部102は、中央値、平均値、および最頻値のうち少なくとも一つを色スコアとして算出してもよい。
【0044】
また、例えば、呈色反応が実施される前のカラーセンサーアレイを撮影して得られるデータを用いて、適宜、色スコアを補正することも可能である。具体例を挙げると、呈色反応後のカラーセンサーアレイ22の撮影画像の画素値から呈色反応前の撮影画像の画素値を減算することにより補正し、補正後の画素値を用いて上述した色スコアを算出することができる。このような色スコアの補正をすることにより、撮影環境が影響し得る色スコアのずれ等を抑制できる場合もある。
【0045】
図3の説明に戻る。情報処理装置10の判定部103は、対象者の色スコアを学習済みモデルに入力することで、判定結果を生成する(ステップS105)。この学習済みモデルは、訓練用データを提供する複数の提供者について、提供者の色スコアと、提供者の腸内環境情報とを用いて学習されたものである。すなわち、判定結果は、対象者の腸内環境情報である。腸内環境情報は、対象者(提供者)の腸内環境の状態に関する情報である。
【0046】
ここで、図5を用いて、情報処理システム1の学習済みモデルについて説明する。図5は、情報処理システム1の学習済みモデルについて説明するための図である。図5の上段には学習済みモデルの学習時の処理を示し、図5の下段には学習済みモデルの運用時の処理を示す。ここで、学習済みモデルは予め構築され、判定部103が利用可能な所定の記憶領域(例えば、ROM12)に保存されている。なお、学習済みモデルを構築するための「学習部」の処理については、後述する。
【0047】
図5の上段に示すように、学習時には、例えば、複数の提供者1~Nの糞便に基づく色スコア、及び腸内環境情報を用いて機械学習が行われる。ここで、提供者の色スコアは、提供者の生体試料を用いた呈色反応に基づいて算出される。提供者の色スコアの算出方法は、算出部102による対象者の色スコアの算出方法と同様であるので説明を省略する。また、提供者の腸内環境情報は、生体試料のうち分析対象となる成分の測定値であり、例えば糞便中の短鎖脂肪酸の濃度または存在量、糞便中の腸内細菌の存在比率、存在量またはShannon index、である。なお、これら腸内環境情報の中でも、本発明は糞便中の短鎖脂肪酸の濃度または存在量を用いた場合、有用な結果が得られる。糞便中の短鎖脂肪酸としては、酢酸、コハク酸、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸から選択される少なくとも1種を挙げられ、また糞便中の腸内細菌としては、Bifidobacterium属が挙げられる。これらの測定値の中でも特に乳酸、酢酸、酪酸およびプロピオン酸から選択される少なくとも1種を用いた場合、特に有用な結果が得られる。なお、糞便中の短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギー源、腸の健康状態の指標となることが知られているが、特に、乳酸等を測定して管理指標とすることで、抗炎症作用、免疫細胞の機能促進、および代謝疾患のリスク削減(インスリン感受性の改善など)などに繋がると考えられている。腸内環境情報は、公知の測定技術により測定可能である。また、機械学習モデルとしては、公知の分類モデルや公知の回帰モデルを適宜適用可能である。
【0048】
そして、図5の下段に示すように、運用時には、判定部103は、機械学習によって構築した学習済みモデルに対して対象者の色スコアを入力することで、対象者の腸内環境情報を示す判定結果を学習済みモデルに出力させる。例えば、提供者の糞便中の酢酸の濃度を用いて学習された機械学習モデルは、対象者の糞便中の酢酸の濃度の推定値を判定結果として出力する。このように、判定部103は、色スコアに基づいて、対象者の腸内環境情報を判定する。
【0049】
なお、上述した判定部103の処理内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の説明では、腸内環境情報として糞便中の酢酸の濃度が推定される場合を説明したが、これに限定されるものではない。機械学習の教師データとして公知の測定技術により測定可能な糞便中の短鎖脂肪酸や細菌量、腸内細菌叢の多様性指数の一つであるシャノン指数(Shannon index)などであれば、任意の指標が適用可能である。なお、シャノン指数とは、群集内の種の多様性とバランスを測定した値である。
【0050】
また、図6にて説明した学習時の処理は、運用時の処理が実行される前であれば、任意のタイミングで実行可能である。また、学習時の処理は、既に生成された学習済みモデルを更新(追加学習)させるために実行することも可能である。
【0051】
図4の説明に戻る。評価部104は、腸内環境情報に基づいて、対象者の健康指標を評価する(ステップS106)。ここで、健康指標とは、対象者の健康状態を示す指標(スコア)であり、腸内環境情報に基づいて算出される。
【0052】
例えば、短鎖脂肪酸やBifidobacterium属の細菌の存在比率(または存在量)は、測定値(推定値)が高いほど健康であると考えられている。このため、評価部104は、短鎖脂肪酸やBifidobacterium属の細菌の存在比率の推定値が大きい方から「A」、「B」、「C」・・・などの任意数のランクに分類し、分類したランクを健康指標として出力する。
【0053】
また、例えば、腸内細菌のシャノン指数は、測定値(推定値)に好適な範囲があると考えられている。このため、評価部104は、腸内細菌のシャノン指数が好適な範囲に含まれる場合を「A」、範囲から外れた値の大きさに応じて「B」、「C」・・・などの任意数のランクに分類し、分類したランクを健康指標として出力する。
【0054】
このように、評価部104は、腸内環境情報に基づいて、対象者の健康に関する健康指標を評価する(ステップS106)。
【0055】
そして、出力制御部105は、健康指標を出力する(ステップS107)。例えば、出力制御部105は、健康指標を表示装置16に表示させたり、ROM12に格納したりする。また、出力制御部105は、利用者が閲覧可能な情報処理端末へ健康指標を送信してもよい。情報処理端末は、出力制御部105から送信された健康指標を所定の表示装置に表示させたり、所定の記憶装置に格納したりする。
【0056】
なお、出力制御部105の出力対象は健康指標に限らず、例えば、腸内環境情報の判定結果であってもよい。健康指標が出力されない場合には、評価部104の構成および処理は不要である。
【0057】
上述してきたように、本発明に係る情報処理システム1において、情報処理装置10の取得部101は、対象者の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得する。判定部103は、撮影画像に基づいて、対象者の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定する。これによれば、本発明に係る情報処理システム1は、呈色反応を用いた糞便の分析を簡便に行うことができる。例えば、情報処理システム1は、呈色試薬を用いた多面的な糞便の分析を簡便に行うことができる。
【0058】
また、情報処理システム1において、算出部102は、撮影画像に基づいて、前記色を数値化した特徴量を算出する。これによれば、情報処理システム1は、呈色試薬の色の変化を容易に数値化することができる。
【0059】
また、情報処理システム1は、人間の生体試料に限らず、ペットや家畜などの動物から得られた生体試料についても同様に、生体試料中の分析対象となる成分検出に適切な呈色試薬を用いて多面的な分析を簡便に行うことができる。これは問診を行うことができない動物の健康状態を把握する上で特に有用であると考えられる。
【0060】
なお、上記の実施形態で説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、呈色反応後のカラーセンサーアレイ22の撮影画像を用いて色スコアを算出する処理を説明したが、呈色反応前のカラーセンサーアレイ22の撮影画像も用いることができる。例えば、呈色反応の前後の撮影画像の差分画像を生成し、この差分画像から色スコアを算出することも可能である。
【0061】
また、上記の実施形態では、情報処理装置10の機能がサーバ装置として提供される場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10の機能は、利用者個人が所有するパーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォン等の情報処理端末に備えられていてもよい。
【0062】
(変形例)
また、上記の実施形態では、情報処理装置10と撮影装置20とが個別の装置として情報処理システム1に備えられる場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10と撮影装置20とは、一体の装置として提供されてもよい。
【0063】
図6を用いて、変形例に係る情報処理システム2の構成について説明する。図6は、情報処理システム2の構成の一例を示す図である。図6に示すように、情報処理システム2は、撮影機能を備えたパーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォン等に対応する情報処理装置30を備える。情報処理装置30のハードウェア構成は、図2に示した情報処理装置10のハードウェア構成と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0064】
情報処理装置30は、取得部301、算出部302、判定部303、評価部304、及び出力制御部305を備える。図6に示す算出部302、判定部303、評価部304、及び出力制御部305の構成は、図1に示した算出部102、判定部103、評価部104、及び出力制御部105の構成と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0065】
取得部301は、取得部101の構成と同様の構成を備えるとともに、情報処理装置30の撮影機能を担う撮影部301Aを備える。撮影部301Aは、光学画像を撮影可能なカメラモジュール(光学センサ)であり、撮影装置20の機能と同様の機能を有する。
【0066】
すなわち、取得部301は、撮影部301Aの機能を制御することにより、呈色反応後のカラーセンサーアレイ22が撮影された撮影画像を取得する。具体的には、撮影部301Aは、取得部301の制御のもと、対象者の生体試料との呈色反応が実施されたカラーセンサーアレイを撮影する。取得部301は、撮影部301Aによって撮影された情報に基づいて撮影画像を生成する。生成された撮影画像は、算出部302に送られ、以後の処理に利用される。なお、撮影画像を生成する機能は、撮影部301Aが備えていてもよい。
【0067】
(学習部)
また、本発明に係る情報処理システムは、上記の実施形態にて説明した学習済みモデルを構築するための学習機能を備えていてもよい。
【0068】
図7を用いて、本発明に係る情報処理システム3の構成について説明する。図7は、情報処理システム3の構成の一例を示す図である。図7に示すように、情報処理システム3は、情報処理装置40、および撮影部50を備える。情報処理装置40のハードウェア構成は、図2に示した情報処理装置10のハードウェア構成と基本的に同様であるので説明を省略する。また、撮影部50の構成は、図2に示した撮影装置20の構成と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0069】
情報処理装置40は、対象者の健康指標を判定するための学習済みモデルを構築するサーバ装置である。例えば、情報処理装置40は、取得部401、算出部402、学習部403、および出力制御部404を備える。図7に示した取得部401、算出部402、および出力制御部404の構成は、図1に示した取得部101、算出部102、および出力制御部105の構成と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0070】
ここで、学習部403は、複数の提供者1~Nの糞便に基づく色スコア、および腸内環境情報を用いて機械学習を行って、対象者の腸内環境情報を判定するための学習済みモデルを構築する。例えば、学習部403は、図5の上段で説明した機械学習を行うことにより、対象者の色スコアが入力されることにより、対象者の腸内環境情報を示す判定結果を出力する学習済みモデルを生成する。学習部403は、生成した学習済みモデルを、判定部103が利用可能な任意の記憶領域に格納する。
【0071】
すなわち、本発明に係る学習方法は、訓練用データを提供する複数の提供者について、提供者の特徴量と、提供者の腸内環境情報とを用いて機械学習を行う。
【0072】
なお、ここでは情報処理装置40が学習部403を備える場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、学習部403は、情報処理装置10に備えられていてもよい。
【0073】
また、ペットや家畜などの動物の健康指標を示す判定結果を出力する学習済みモデルを生成する場合、学習用の生体試料を提供する生体も人間ではなく動物にするのが好適である。学習用の生体試料を提供する生体に人間以外の動物も含める場合、「被験体(実験体)」と表記する。
【0074】
以上説明した実施形態及び変形例によれば、呈色反応を用いた糞便の分析を簡便に行うことができる。
【0075】
また、上述した実施形態及び変形例に係る情報処理システム1,2,3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良いし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、各種プログラムを、例えばROM等の不揮発性の記憶媒体に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0076】
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせても良い。
【0077】
[実施例]
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。本実施例では、表1、表2、および表3に示す実施例1~16にそれぞれ対応する試薬条件、変化要因、目標変数に対応する機械学習モデルの構築を行い、その推定精度の指標として決定係数の評価を行った。なお、表1、表2、および表3には、各実施例に係る試薬条件、変化要因、色空間、目標変数、決定係数(R2値)の結果を示す。
【0078】
本実施例では、ヒト糞便(生体試料)としては、生後1年以内の乳児から回収した100検体を用いた。
【0079】
本実施例で用いた呈色試薬は、下記の通りである。
CR:クロロフェノールレッド(東京化成(TCI))をエタノールで1mMの濃度で溶解したもの。
BB:ブロモチモールブルー(富士フイルム和光)をエタノールで1mMの濃度で溶解したもの。
BG:ブロモクレゾールグリーン(富士フイルム和光)をエタノールで1mMの濃度で溶解したもの。
BP:ブロモクレゾールパープル(富士フイルム和光)をエタノールで1mMの濃度で溶解したもの。
MR:メチルレッド(富士フイルム和光)をエタノールで1mMの濃度で溶解したもの。
PR:フェノールレッド(富士フイルム和光)をエタノールで0.8mMの濃度で溶解したもの。
BR:ブロモピロガールレッド(東京化成(TCI))をエタノールで0.6mMの濃度で溶解したもの。
RDE:ライハルト試薬(Sigma)をエタノールで2mMの濃度で溶解したもの。
RDM:ライハルト試薬(Sigma)をメタノール(富士フイルム和光)で2mMの濃度で溶解したもの。
RDI:ライハルト試薬(Sigma)をイソプロピルアルコール(富士フイルム和光)で2mMの濃度で溶解したもの。
【0080】
糞便を用いた呈色反応の操作について説明する。-80℃で凍結されたサンプルを37℃の水浴で融解した後、2mLのエッペンチューブに20~25mgはかりとり、秤量した重量1mgにつき、24μLのPBSを添加し、ボルテックスで30秒間懸濁させた。その後、9,000Gで10min遠心を行い、上清だけを採取した。96ウェルプレート上で、RDE, RDM, RDI以外については、上清30uLと呈色試薬30uLを混合し、1分間シェーカーで攪拌した後、撮影用カメラで撮影を行うことによって、画像の取得を行った。RDE, RDM, RDIについては、上清54uLと呈色試薬6uLを混合し、1分間シェーカーで攪拌した後、撮影用カメラで撮影を行うことによって、画像を取得した。
【0081】
色スコアの取得については、上記で得られた画像の96ウェルプレートのウェル部分を50ピクセル×50ピクセルでトリミングし、得られた画像をPython(ver.3.9.18, python.org.)のPillow(ver.9.4.0)用いて、RGB, HSV, Lab, CMYK, grayの色空間について、2500ピクセルの平均値、中央値、最頻値を取得した。
【0082】
糞便中の腸内細菌由来の代謝産物(短鎖脂肪酸)の測定は、下記の手法によって行った。すなわち、凍結乾燥させた糞便検体をビーズ破砕機(シェイクマスター、バイオメディカルサイエンス)を用いて、3.0mmのジルコニアビーズと共に強力に振動させる(1,500G、10min)ことで破砕した。破砕した糞便試料10mgを、内部標準試料であるクロトン酸1,000μLに加え懸濁し、塩酸500μLおよびエーテル2,000μLを加えた。次に、チューブをビーズ破砕機で強力に振動させ(1,500G、10min)、その後、10,000Gで10min遠心分離を行った。遠心分離後、上層のエーテル層80μLを採取し、N-tert-ブチルジメチルシリル N-メチルトリフルオロアセトアミド16μLが含まれるAgilent社製クリンプキャップバイアルに加えた。バイアルを密封後、80℃の水浴中で20min加熱した。加熱後、室温で一晩静置し、ヒドロキシル基のt-ブチルジメチルシリル化を行った。校正は、試験試料と同様に誘導体化された標準溶液(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、乳酸、コハク酸)を使用して行った。誘導体化された資料はDB-5msカラム(0.25mm×30m×0.25μm;Agilent Technologies)を装着したAgilent Technologies社の7890シリーズGC-MSシステムを用いて分析した。測定はAgilent MassHunter Workstation Data Acquisitionソフトウェア(バージョン10.0、Agilent Technologies)を使用し、得られたデータはAgilent MassHunter Quantitative Analysisソフトウェア(バージョン10.1、Agilent Technologies)を使用して分析した。
【0083】
腸内細菌叢を解析する方法について説明する。まず、96 MagBead DNA / RNA Kit(Zymo Research)を用いて、糞便サンプルから腸内細菌のDNA(deoxyribonucleic acid)抽出を行った。これを16SrRNA遺伝子の可変領域、v1-v2領域をカバーするように設計したプライマー(27Fmod:5’-agrgtttgatymtggctcag-3’、338R:5’-tgctgcctcccgtaggagt-3’)を用いてPCR(polymerase chain reaction)により増幅したのち、illumina社Miseq(登録商標)で250bpのPaired endにてシーケンスを実施した。得られた遺伝子配列はQiime2(ver.2021.11,)Pipelineに沿って、マージ、フィルタリング、トリミング、クラスタリングを行い、Amplicon sequence variant(ASV)を得た。それぞれのASVはSilva-138-99データベースを参照して、分類学的に分けられ、生物情報学的な菌叢解析を行った。
【0084】
本実施例における呈色反応の操作について説明する。
【0085】
機械学習評価について説明する。すべての試薬条件の組み合わせについて、ダブルクロスバリデーションで評価を行った。ダブルクロスバリデーションについては、全サンプルのうち訓練データとテストデータを9:1に分割し、さらに、訓練データを5分割し、4分割を使用して学習、残りの1分割でテストして決定係数を算出することを、ハイパーパラメータを変えながら、5つの組み合わせ全てに対して行い、ハイパーパラメータを決めた。ここで決まったハイパーパラメータを使って、訓練データで訓練し、テストデータでテストを行い、これを10通りすべての組み合わせで実施して、決定係数R^2を算出し、中央値を評価した。
【0086】
表1は、呈色試薬および色空間に関する検証結果である。
【0087】
【表1】
【0088】
「試薬条件」は、糞便との呈色反応に用いた呈色試薬の種類を示す項目である。なお、表1には、複数の呈色試薬のうち一部の組み合わせについて記載しているが、実際には全ての呈色試薬の色調変化データの組み合わせ(3,628,800通り)を用いて機械学習モデルを構築し、その精度を検証した。
【0089】
「変化要因」は、用いられた呈色試薬が色調変化を示す要因を示す項目であり、「pH」および「極性」のうち少なくとも一つに対応する。pHに寄与する要因としては、短鎖脂肪酸、乳酸、アンモニア、硫化水素、ビリルビン代謝物、胆汁酸、水素ガス、およびメタンガスが挙げられる。また、極性に寄与する要因としては、短鎖脂肪酸、胆汁酸、脂質代謝産物、アミノ酸、アミノ酸代謝産物、多糖類、オリゴ糖、およびポリフェノール類が挙げられる。
【0090】
「色空間」は、色スコアの算出に用いられる色空間の種類数に関する項目である。「5種」は、RGB色空間、Lab色空間、CMYK色空間、HSV色空間、およびGray色空間の5種類の色空間を用いて色スコアが算出されることを示す。「1種」は、RGB色空間のみを用いて色スコアが算出されることを示す。
【0091】
「目標変数」は、分析対象とした生体試料中の成分を示す項目である。具体的には、糞便中の腸内細菌により生産される代謝産物、Bifidobacterium属、Shannon indexのうち少なくとも一つに対応する。なお、「代謝産物」は、酢酸、コハク酸、乳酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、吉草酸のうち少なくとも一つに対応する。「Bifidobacterium属」は、Bifidobacterium属の細菌の存在比率または存在量に対応する。「Shannon index」は、腸内細菌のシャノン指数(腸内細菌叢の多様性指数)に対応する。
【0092】
「回帰におけるR2値」は、回帰モデルの評価結果を示す項目であり、決定係数R^2の値に対応する。R2値が0.5以上である場合を「A」、0.3以上0.5未満である場合を「B」、0.3未満である場合を「C」として表記した。
【0093】
表1に示すように、実施例1および実施例1’は、色空間を5種とし、糞便中の酢酸量を予測する機械学習モデルを構築し、予測結果の評価を決定係数R2値で行う検証を全ての呈色試薬の組み合わせについて実施し、特に良好な評価結果が得られたものである。表1中の実施例1の試薬条件はBG、MR、RDE、およびRDIの組み合わせであり、実施例1’の試薬条件はPRおよびRDEの組み合わせであった。実施例1および実施例1’のR2値はいずれも「A」判定であったが、実施例1の方が特に良好な評価結果であった。
【0094】
一方、実施例1と比較して、試薬条件を1種(RDE)とした実施例2、試薬条件を10条件(CR、BB、BG、BP、MR、PR、BR、RDE、RDM、およびRDI)とした実施例3、pHのみに起因する試薬を組み合わせた実施例4、極性のみに起因する試薬を組み合わせた実施例5、およびRGB色空間のみを用いた実施例6では、いずれもR2値が「B」であった。表1の結果、糞便中の酢酸を機械学習によって予測(推定)する上で最も好適な条件の組み合わせは、実施例1の条件であると言える。
【0095】
表2および表3は、他の分析対象それぞれについて最適な呈色試薬の組み合わせを検証したものである。機械学習によって評価結果を判定することにより、分析対象に対し複数の試薬組み合わせを選択し分析できる。その結果、複数の分析対象を測定する場合、試薬の組み合わせを最適化することで最小の試薬数で複数の分析対象を測定できる。また、所望の検出精度や撮像装置の性能に応じて(例えば、いくつかの「A」判定の試薬組み合わせの中から選択)、安価な試薬数を選びコストを減らすこともできる。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表2および表3に示すように、実施例7~実施例16’は、変化要因および色空間の条件を実施例1と揃え、他の分析対象について全ての呈色試薬の組み合わせを検証し、R2値が良好な試薬条件の組み合わせを検証し、主な組み合わせを特定したものである。表2および表3に記載した実施例7~実施例16’は、各分析対象(目標変数)について良好な評価結果が得られた呈色試薬の組み合わせを示すものである。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3 情報処理システム
10,30 情報処理装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 補助記憶装置
15 入力装置
16 表示装置
17 外部I/F
20,50 撮影装置
101,301,401 取得部
102,302,402 算出部
103,303 判定部
104,304 評価部
105,305,404 出力制御部
403 学習部

【要約】
実施形態の情報処理システム(1,2)は、対象の糞便を用いた呈色反応における呈色試薬の色が撮影された撮影画像を取得する取得部(101,301)と、前記撮影画像に基づいて、前記対象の腸内環境の状態に関する腸内環境情報を判定する判定部(103,303)とを備える。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7