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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】シクロペンタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/333 20060101AFI20250425BHJP
   C07C 13/15 20060101ALI20250425BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20250425BHJP
   B01J 29/035 20060101ALI20250425BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20250425BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20250425BHJP
   C01B 37/02 20060101ALI20250425BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250425BHJP
【FI】
C07C5/333
C07C13/15
B01J23/42 Z
B01J29/035 Z
B01J29/70 Z
B01J29/74 Z
C01B37/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021102303
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001522
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 匡
(72)【発明者】
【氏名】吉原 透容
(72)【発明者】
【氏名】大内 太
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0319722(US,A1)
【文献】特表2018-533587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,B01J
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5のオレフィンを含む原料組成物をMFI構造のゼオライト触媒に接触させて、シクロペンタジエンを含む反応生成物を得る環化脱水素工程を備え、
前記ゼオライト触媒が、ゼオライト骨格中に、Zn原子を含み、ルイス酸性と強い固体塩基性を有する、
シクロペンタジエンの製造方法。
【請求項2】
前記原料組成物が炭素数5のジオレフィンを含む、請求項1に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【請求項3】
前記原料組成物中の前記炭素数5のジオレフィンの含有量が、5質量%以上である、請求項2に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【請求項4】
Zn原子の含有量は、Si原子に対して1~15atom%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライト触媒は、アルカリ金属を含有しないか又は前記ゼオライト骨格のSi原子に対して1atom%以下のアルカリ金属を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライト触媒は、Ptが担持されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【請求項7】
前記環化脱水素工程において、反応系に供給する前記原料組成物と分子状水素とのガス流量(ml/min)比が1:0.001~1:3である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素数5の炭化水素には、従来から様々な利用法が提案されている。例えば、シクロペンタジエンは、工業的に農薬、殺虫剤、各種樹脂可塑剤の合成原料に多く利用されている。シクロペンタジエンは、例えば、液体供給水蒸気分解(例えば、ナフサ及びより重質の供給原料)によりエチレンを生産する際に副生する炭素数5の炭化水素を主成分とするC5留分から、二量化工程及び蒸留工程によって回収することで得ることができる。しかしながら、C5留分に含まれるシクロペンタジエンの含有量は低い上に、現存する液体供給水蒸気分解装置はナフサに対してより軽質な供給原料へシフトしているため、シクロペンタジエンの需要に対して十分な供給量とならないことが見込まれることから、既存の製法による供給限界に制約されないシクロペンタジエンの製造方法が検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、Pt/SiO触媒を用い、n-ペンタン、n-ペンテン、及び1,3-ペンタジエンからシクロペンタジエンを製造する方法が記載されている。シクロペンタジエンへの収率は、600℃にてn-ペンタン、n-ペンテン、及び1,3-ペンタジエンの変換についてそれぞれ21%、35%、及び53%の高さであり、オレフィンがシクロペンタジエンへの変換に優位であることがわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】V. Sh. Fel’dblyum et al., Doklady Chemistry, 424(2), 27-30 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では触媒が短時間(例えば15分以内)で劣化することが、当該文献中で報告されている。これは、オレフィンを脱水素反応させると、反応中にコークが生成されやすく、生成したコークが触媒表面に蓄積されることにより、触媒が失活されてしまうためと考えられる。このため、従来のシクロペンタジエンの製造方法においては、オレフィンの共存下において高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造することに関しては検討が十分とはいえず、未だ改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、シクロペンタジエンの新規製造方法として、オレフィンの共存下においてゼオライト触媒を用いて高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のゼオライト触媒を用いることで、炭素数5のオレフィンを含む原料組成物から高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の一側面は、炭素数5のオレフィンを含む原料組成物をMFI構造のゼオライト触媒に接触させて、シクロペンタジエンを含有する反応生成物を得る環化脱水素工程を備える、シクロペンタジエンの製造方法に関する。この製造方法において、上記ゼオライト触媒は、当該ゼオライト骨格中に、遷移金属又はポスト遷移金属から選ばれる少なくとも一種の金属原子を含み、ルイス酸性と強い固体塩基性を有する。
【0009】
一態様において、上記原料組成物が炭素数5のジオレフィンを含んでいてもよい。
【0010】
一態様において、上記原料組成物中の上記炭素数5のジオレフィンの含有量が、5質量%以上であってもよい。
【0011】
一態様において、上記金属原子は、Zn原子、Fe原子、Ni原子から選択される1種以上であり、上記金属原子の含有量は、Si原子に対して1~15atom%であってもよい。
【0012】
一態様において、上記ゼオライト触媒は、アルカリ金属を含有しないか又は上記ゼオライト骨格のSi原子に対して1atom%以下のアルカリ金属を含有していてもよい。
【0013】
一態様において、上記ゼオライト触媒は、Ptが担持されたものであってもよい。
【0014】
一態様において、上記環化脱水素工程において、反応系に供給する上記原料組成物と分子状水素とのガス流量(ml/min)比が1:0.001~1:3であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シクロペンタジエンの新規製造方法として、オレフィンの共存下においてゼオライト触媒を用いて高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例に係るゼオライト触媒及びZn含浸担持触媒のシンクロトロンXRD分析の結果を示す図である。
図2】実施例に係るゼオライト触媒の29Si MAS NMR測定の結果を示す図である。
図3】実施例に係るゼオライト触媒、ZnO結晶、及びZn含浸担持触媒のFT-IR分析の結果を示す図である。
図4】実施例に係るゼオライト触媒、ZnO結晶、及びZn含浸担持触媒にピリジンを吸着させたもののFT-IR分析の結果を示す図である。
図5】実施例に係るゼオライト触媒及びZn含浸担持触媒のCO-TPD分析の結果を示す図である。
図6】実施例に係るゼオライト触媒及びZn含浸担持触媒のNH-TPD分析の結果を示す図である。
図7】実施例に係るゼオライト触媒及びZnO結晶のUV-vis分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るシクロペンタジエンの製造方法は、炭素数5のオレフィンを含む原料組成物をMFI構造のゼオライト触媒に接触させて、シクロペンタジエンを含む反応生成物を得る環化脱水素工程を備える。
本実施形態に係る製造方法によれば、特定のゼオライト触媒を用いることで、高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造することができる。
【0019】
(ゼオライト触媒)
本実施形態に係るゼオライト触媒は、ゼオライト骨格中に、遷移金属又はポスト遷移金属から選ばれる少なくとも一種の金属原子を含み、ルイス酸性と強い固体塩基性を有する。
【0020】
本実施形態に係るゼオライト触媒は、ゼオライト触媒中にはブレンステッド酸はほとんど存在しておらず、ルイス酸のみが存在している。一般的に、環化脱水素反応の副生成物はブレンステッド酸の存在により生成量が増減することが知られているが、本実施形態に係るゼオライト触媒ではブレンステッド酸がほとんど存在していないことから、副反応の制御が可能であり、副生成物の発生を抑制することができる。本実施形態に係るゼオライト触媒をシクロペンタジエンの製造に用いることで、例えば副反応が抑制されシクロペンタジエン選択率が向上する、分解副生成物の重合によるコークの発生が抑制されること等が考えられ、これにより長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造することができる。さらに、本実施形態に係るゼオライト触媒は環化脱水素反応の活性サイトとなりうるルイス酸点が高分散に配置されていること等から、本実施形態に係るゼオライト触媒をシクロペンタジエンの製造に用いることで、シクロペンタジエンを高収率で製造することができる。
【0021】
ここで、ゼオライトとは、四面体構造をもつTO単位(Tは中心原子)がO原子を共有して三次元的に連結し、規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を意味する。
【0022】
遷移金属とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第3族元素から第12族元素に属する金属を意味する。
ポスト遷移金属とは、周期表における周期表第4周期、第5周期、第6周期の遷移金属よりも後の原子番号の卑金属を意味する。
【0023】
ゼオライト骨格中に金属原子を含むとは、水熱合成の原料として目的の金属原子を含む化合物を混合する方法等により、ゼオライト骨格中にケイ素(Si)と同様に金属原子が導入されていることを意味する。ゼオライト骨格中に金属原子を含んでいる状態は、例えば、XRD(X-ray Diffraction)、NMR(Nuclear Magnetic Resonance spectroscopy)、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)及びESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)等の各種測定方法により把握することができる。
【0024】
ルイス酸性とは、非共有電子対を受容し得る性質を意味し、例えば、ゼオライト触媒にピリジンを吸着させてFT-IR分析した際に、1450cm-1付近に吸収バンドが検出されることを意味する。
【0025】
固体塩基性とは、ゼオライト触媒の表面が塩基性を示すことを意味する。固体塩基性が強いとは、ゼオライト触媒の表面の塩基性が強いことを意味し、例えば、TPD(Temperature Programmed Desorption)分析装置でCO-TPD分析した際に、500℃以上の高温域にゼオライト触媒に吸着していたCOの脱離ピークが検出されることをいう。
【0026】
本実施形態に係るゼオライト触媒は、10員環構造のゼオライトであり、MFI構造を有する。MFI構造のゼオライトは、特に限定されるものではないが、好ましくは結晶性メタロシリケートである。なお、MFI構造のゼオライトとは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)でデータベース化されている構造コ-ドでMFIに該当するゼオライトを意味する。
ゼオライトが10員環構造、特にMFI構造のゼオライトであることは、例えばX線回折等により確認することができる。
【0027】
ゼオライト骨格中に含まれる金属原子は、遷移金属原子、ポスト遷移金属原子であれば特に限定されず、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)等を用いることができる。これらの中でも、環化脱水素反応の反応性に優れる観点から、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)を用いるのが好ましい。ゼオライト骨格中に含まれる金属原子は、1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0028】
ゼオライト骨格中に含まれる金属原子の含有量は、特に限定されないが、ケイ素(Si)原子に対して1~15atom%が好ましく、1~10atom%がより好ましく、1~3atom%が更に好ましい。ゼオライト骨格中に含まれる金属原子の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、ゼオライト触媒の固体塩基点が多くなり、環化脱水素反応の反応性に優れる傾向がある。ゼオライト骨格中に含まれる金属原子の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、金属含有量に対する原料の環化脱水素反応の反応効率に優れる傾向がある。
【0029】
ゼオライト触媒中に含まれるアルカリ金属の含有量は、アルカリ金属を含有しないか又はSi原子に対して1atom%以下であることが好ましく、0.1atom%以下であることがより好ましい。上記上限値以下であれば、ゼオライトの結晶化の促進を維持しつつ、環化脱水素反応の反応性を高く維持することができる傾向がある。
【0030】
ゼオライト触媒は、成形性を向上させる観点から、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、成形助剤を更に含有していてもよい。成形助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水剤、可塑剤、バインダー原料等からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。ゼオライト触媒を成形する成形工程は、成形助剤の反応性を考慮してゼオライト触媒の製造工程の適切な段階で行ってよい。
【0031】
ゼオライト触媒は、白金(Pt)源を用いて、担体に白金を担持させたものであってよい。白金源としては、例えば、テトラアンミン白金(II)酸、テトラアンミン白金(II)酸塩(例えば、硝酸塩等)、テトラアンミン白金(II)酸水酸化物溶液、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸エタノールアミン溶液等が挙げられる。白金源としては、塩素原子を含まない金属源を用いることが好ましい。塩素原子を含まない金属源を用いることで、装置の腐食を抑制でき、より効率的に環化脱水素反応を行うことができる。
【0032】
ゼオライト触媒に白金を担持させる場合、ゼオライト担持白金触媒における白金の含有量は、ゼオライト担持白金触媒の全量基準で0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、ゼオライト担持白金触媒の全量基準で3.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。ゼオライト担持白金触媒における白金の含有量が上記範囲内であると、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる傾向がある。
【0033】
ゼオライト触媒は、前処理として還元処理が行われたものを用いてもよい。還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下、40~600℃でゼオライト触媒を保持することで行うことができる。保持時間は、例えば0.05~24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等を含むものであってよい。還元処理を行ったゼオライト触媒を用いることで、環化脱水素反応の初期の誘導期を短くすることができる。環化脱水素反応の初期の誘導期とは、ゼオライト触媒中の担持金属のうち、還元されて活性状態にあるものが非常に少なく、触媒の活性が低い状態を意味する。
【0034】
<ゼオライト触媒の調製方法>
本実施形態に係るゼオライト触媒は、シリカゲルの熟成工程、水熱合成工程、及び焼成工程を組み合わせて処理することにより調製することができる。これによりアルカリ金属、ホウ素又はアルミニウムを使用せずにゼオライト触媒を調製することができる。
【0035】
本実施形態に係るゼオライト触媒の好適な調製例の一例としては、例えば、シリカ源と有機構造規定剤(OSDA)と、水とを混合し、100℃以下で10時間以上熟成(撹拌)し、その後、遷移金属原子又はポスト遷移金属原子を金属源として混合した後に、100℃以上にて水熱合成し、その後、500℃以上で5時間以上焼成すること等が挙げられる。
ゼオライト触媒に白金を担持させる場合、白金の担持方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法等を用いることができる。
【0036】
シリカ源としては、例えば、シリコンアルコラート、シラン、四塩化ケイ素、水ガラス等の加水分解するシリコン化合物等を用いることができる。
有機構造規定剤としては、MFI構造のゼオライトが得られれば特に制限されず、例えば、4級アルキルアンモニウム塩、アミン等を用いることができる。有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本実施形態に係るゼオライト触媒の好適な調製例の一例としては、水熱合成後に得られた合成物を焼成する前に、合成物を水洗浄する工程を更に含むのが好ましい。水洗浄する工程を含むことにより、ゼオライト触媒に対するナトリウム等のアルカリの影響を小さくすることができる。
【0038】
上記方法は、アルカリ金属、ホウ素又はアルミニウムを使用せずにゼオライト触媒を調製する好適な調製例の一例であるが、本実施形態の調製方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、アルカリ金属、ホウ素又はアルミニウムの使用を制限するものではない。例えば、水熱合成する際に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、アルカリ金属を混合してもよい。アルカリ金属を混合することにより、ゼオライトの結晶化の促進が維持され、遷移金属原子又はポスト遷移金属原子がゼオライト骨格中に導入されたMFI構造のゼオライト触媒を得られ易い傾向がある。
アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム(Na)が好ましい。アルカリ金属の混合量としては、上述したように、ゼオライト触媒中のSi原子に対して1atom%以下となる量を混合するのが好ましい。
【0039】
以上説明した方法により、遷移金属原子又はポスト遷移金属原子がゼオライトの骨格中に導入され、活性サイトが高分散されたゼオライト触媒を得ることができる。さらに、ブレンステッド酸がほとんど存在せず、ルイス酸のみが存在する、強い固体塩基性を有するゼオライト触媒を得ることができる。
【0040】
(シクロペンタジエンの製造方法)
本実施形態に係る製造方法では、環化脱水素工程において、炭素数5のオレフィンを含む原料組成物を上記のゼオライト触媒に接触させる。これにより、炭素数5のオレフィンの環化脱水素反応が生じ、シクロペンタジエンを含む反応生成物が得られる。
【0041】
<原料組成物>
原料組成物としては、少なくとも炭素数5のオレフィンを含有していればよい。炭素数5のオレフィンは、炭素-炭素二重結合を分子内に一つ以上有するもので、通常は官能基を有しない有機化合物であって、直鎖及び/又は分岐鎖の炭素数5の炭化水素を意味する。本実施形態に係る炭素数5のオレフィンは、炭素数5のモノオレフィン及び/又はジオレフィンであることが好ましい。
【0042】
炭素数5のモノオレフィンは、炭素-炭素二重結合を分子内に一つのみ有するもので、通常は官能基を有しない有機化合物であって、直鎖及び/又は分岐鎖の炭素数5の炭化水素を意味する。
本実施形態に係る炭素数5のモノオレフィンは、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテンが挙げられ、これらの中でも1-ペンテンを用いるのが好ましい。炭素数5のモノオレフィンは、上記のうち1種単独であってよく、2種以上を含む混合物であってもよい。
【0043】
炭素数5のジオレフィンは、炭素-炭素二重結合を分子内に二つ以上有するもので、通常は官能基を有しない有機化合物であって、直鎖及び/又は分岐鎖の炭素数5の炭化水素を意味する。
本実施形態に係る炭素数5のジオレフィンは、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエンが挙げられ、これらの中でも1,3-ペンタジエンを用いるのが好ましい。炭素数5のジオレフィンは、上記のうち1種単独であってよく、2種以上を含む混合物であってもよい。
【0044】
原料組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、炭素数5のオレフィン以外の他の化合物を更に含有していてもよい。例えば、ナフサ熱分解炉等で得られる炭素数5の炭化水素を主成分とするC5留分を含むものであってもよい。原料組成物は、製造方法に起因する炭素数5のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したものを用いてもよい。
原料組成物中の炭素数5のオレフィンの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0045】
原料組成物中の炭素数5のモノオレフィンの含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0046】
原料組成物中の炭素数5のジオレフィンの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、同含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
ジオレフィンの含有量が上記下限値以上であれば、シクロペンタジエンの収率が高くなる傾向がある。また、ジオレフィンの含有量が上記上限値以下であれば、環化脱水素反応におけるコーク生成を効率的に抑制できる傾向がある。
【0047】
炭素数5のオレフィンは、炭素数5のモノオレフィンと炭素数5のジオレフィンとの混合物であってもよい。炭素数5のモノオレフィンと炭素数5のジオレフィンとの混合比率(質量比)は特に限定されず、製造方法に起因する割合に依存したものであってもよい。炭素数5のモノオレフィンと炭素数5のジオレフィンとの混合比率(質量比)は、20:80~95:5が好ましく、25:75~90:10がより好ましく、30:70~85:15が更に好ましい。
【0048】
<環化脱水素工程>
環化脱水素工程は、例えば、ゼオライト触媒が充填された反応器を用い、当該反応器に原料組成物を流通させることにより環化脱水素反応を実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床断熱型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0049】
環化脱水素反応の反応形式は、原料組成物を連続的に供給する連続式の反応形式であって、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点から固定床式が好ましい。
【0050】
原料組成物をゼオライト触媒に接触させる際の温度(環化脱水素反応の反応温度、又は、反応器内の温度ということもできる。)は、反応効率の観点から、350~800℃が好ましく、400~700℃がより好ましく、450℃~650℃が更に好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、シクロペンタジエンの収率が一層向上する傾向がある。反応温度が上記上限値以下であれば、コークの生成速度が抑制され、ゼオライト触媒の高い環化脱水素活性をより長期にわたって維持することができる傾向がある。
【0051】
原料組成物をゼオライト触媒に接触させる際の圧力(環化脱水素反応の反応圧力、又は、反応器内の圧力ということもできる。)は、0.01~4.0MPaが好ましく、0.03~0.5MPaがより好ましく、0.05~0.3MPaが更に好ましい。反応圧力が上記範囲にあれば環化脱水素反応が進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
【0052】
反応系に供給する原料組成物は、気体であるのが好ましい。原料組成物が気体である場合、原料組成物以外の気体と混合し、原料組成物を含む気体として反応系に供給することができる。原料組成物以外の気体としては、環化脱水素反応条件下において実質的に不活性な気体であればよい。環化脱水素反応条件下において実質的に不活性な気体としては、例えば、分子状水素、窒素、アルゴン、ネオン、二酸化炭素、ヘリウム、スチーム等が挙げられる。また、原料組成物以外の気体に加えて、環化脱水素反条件下において実質的に不活性な任意の希釈剤を反応系に供給してもよい。
【0053】
環化脱水素工程を、原料を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、反応系に供給する原料組成物と、環化脱水素反応条件下において実質的に不活性な気体とのガス流量(ml/min)比は、1:0.1~1:20が好ましく、1:0.5~1:10がより好ましい。特に、環化脱水素反応条件下において実質的に不活性な気体の中でも分子状水素を用いる場合においては、反応系に供給する原料組成物と分子状水素とのガス流量(ml/min)比は、1:0.001~1:3が好ましく、1:0.001~1:0.5がより好ましい。
なお、固体酸触媒を用いた脱水素反応においては、コーク生成による触媒の失活を抑制するために反応系に分子状水素を供給するのが通常である。しかし、本実施形態の製造方法は、後述する実施例に示すように、反応系に分子状水素を供給しなくても触媒の失活がほとんど認められない。このため、本実施形態の製造方法においては、反応系に分子状水素を実質的に供給しなくてもよい。なお、本明細書中、反応系に分子状水素を実質的に供給しないとは、意図的に分子状水素を反応系に供給することをしないことを意味し、例えば、反応系に供給する原料組成物と分子状水素とのガス流量(ml/min)比が、1:0.001未満であることを意味する。これにより、シクロペンタジエンの製造コストを抑えることができ、工業的に有用である。
【0054】
環化脱水素工程を、原料を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、質量空間速度(以下、「WHSV」と称する場合がある。)は、原料の転化率を向上させる観点から、0.01h-1以上が好ましく、0.1h-1以上がより好ましい。また、WHSVは、反応器サイズを小さくさせる観点から、100h-1以下が好ましく、20h-1以下がより好ましい。
ここで、WHSVとは、連続式の反応装置における、ゼオライト触媒の質量Wに対する原料の供給速度(供給量/時間)Fの比(F/W)である。なお、原料組成物及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、WHSVは上記範囲に限定されるものではない。
【0055】
環化脱水素工程により得られた反応生成物からのシクロペンタジエンの分離精製方法は、特に制限されず、公知の蒸留操作などによって精製することができる。なお、シクロペンタジエンを分離した後の反応生成物より未反応の原料を回収し、回収された原料を新たな原料と混合して再利用してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る製造方法によれば、特定のゼオライト触媒を用いることで、炭素数5のオレフィンを含む原料組成物から高い収率で長時間に亘って安定的にシクロペンタジエンを製造することができる。
【実施例
【0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0058】
[触媒調製例1]
<Pt/[Zn]-MFI触媒の調製>
(1)熟成工程
ステンレス製耐圧容器の内部に、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)20.0g、25質量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TPAOH、有機構造規定剤)20.3gを加え、密閉し、80℃にて24時間撹拌(熟成)を行った。撹拌後の混合物の状態は液状であった。
【0059】
(2)水熱合成工程
硝酸亜鉛6水和物2.2gをイオン交換水4.7gに溶解した。その後、熟成工程で得られた混合物に加え、室温(25~30℃)で均一化するまで撹拌を行った。撹拌後の混合物をオートクレーブに投入し、20rpmで回転させながら175℃で24時間水熱合成を行った。
【0060】
(3)焼成工程
水熱合成工程後の混合物を遠沈管に投入し、遠心分離によりゲル状のサンプルを得た。その後、このゲル状のサンプルを、イオン交換水を用いて洗浄した。
洗浄は、ゲル状のサンプルにイオン交換水を加えて洗浄した後、遠心分離することにより行った。遠心分離後の上澄み液のpHを測定し、pHが7~8の範囲になるまで洗浄・遠心分離を繰り返した。
洗浄後のゲル状のサンプルを90℃で一晩乾燥させた。乾燥後のサンプルをマッフル炉に投入し、550℃で8時間、空気環境下で焼成を行うことで、有機物(テトラプロピルアンモニウムイオン(カチオン))を除去し、ゼオライト触媒([Zn]-MFI触媒)を得た。
【0061】
得られたゼオライト触媒について、次の測定を行った。
(a)シンクロトロンXRD分析
シンクロトロンXRD装置にてXRD分析を行った。
(b)固体NMR分析
NMR(日本電子株式会社製、ECA-600)にて29Si MAS NMR測定を行った。
(c)FT-IR分析
FT-IR(日本分光株式会社製、FT/IR-4600)にて構造解析を行った。このとき、前処理として、450℃で1時間真空排気を行った。
(d)CO-TPD分析
TPD分析装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、BELCAT II)にてCO-TPD分析を行った。ゼオライト触媒約30mgを、ヘリウムガスを流量50mL/minで流通させながら500℃1時間の前処理を行った。その後、40℃未満まで冷却し、1vol%CO/Heガスを流量50mL/minで流通させてゼオライト触媒にCOを吸着させた後、ヘリウムガスを流量50mL/minにて5分間流通させた。その後、ヘリウムガスを30mL/minにて流通させながら、800℃まで昇温速度10℃/minにて昇温させ、COの離脱をTCD(Thermal Conductivity Detector)とMASSにて分析を行った。MASSは、マイクロトラック・ベル株式会社製、BELMassを用いた。
塩基量の測定は、CO-TPDによるピーク面積から算出した。
(e)NH-TPD分析
TPD分析装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、BELCAT II)にてNH-TPD分析を行った。ゼオライト触媒約30mgを、ヘリウムガスを流量50mL/minで流通させながら500℃1時間の前処理を行った。その後、100℃まで冷却し、1vol%NH/Heガスを流量50mL/minで流通させてゼオライト触媒にNHを吸着させた後、ヘリウムガスを流量50mL/minにて15分間流通させた。その後、ヘリウムガスを30mL/minにて流通させながら、700℃まで昇温速度10℃/minにて昇温させ、NHの離脱をTCDとMASSにて分析を行った。MASSは、マイクロトラック・ベル株式会社製、BELMassを用いた。
ルイス酸量の測定は、NH-TPDによるピーク面積から算出した。
(f)UV-vis分析
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-660)にてUV-vis分析を行った。測定方法は拡散反射法で行い、室温で分析を行った。
【0062】
(a)シンクロトロンXRD分析
シンクロトロンXRD分析の結果を図1に示す。後述する触媒調製例2で示す、Zn/[Si]-MFI触媒では、点線で示す位置に、ZnO結晶に起因するピークが見られたが、[Zn]-MFI触媒では、ZnO結晶に由来するピークは見られなかった。
(b)固体NMR分析
29Si MAS NMR分析の結果を図2に示す。Si、O、Znで構成されるゼオライトを29Si MAS NMRで測定すると、Si原子の4つの結合が-O-Siのみの場合には-110~-120ppmにピークが現れ、Si原子の4つの結合のうち少なくとも1つの結合が-O-Znである場合には-100ppm付近にピークが現れる(「Synthesis and Characterization OF Zincosilicates with the SOD Topology」M.A.Camblor,R.F.Lobe,H.Koller,M.E.Davis,Chemistry of Materials,6,P.2193-2199(1994))。[Zn]-MFI触媒では、この-100ppmのピークが見られた。
(c)FT-IR分析
450℃で1時間真空排気して前処理を行った後の室温でのFT-IR分析の結果を図3に示す。Zn同士が近くに存在すれば、前処理によりZn-O-Znとなる。ZnO結晶やZn含浸担持触媒では、FT-IR分析において、3600~3700cm-1の領域に吸収バンドを有さない。しかし、[Zn]-MFI触媒においては、ZnのZn-OH振動に由来する3640cm-1付近の吸収バンドが見られ、ゼオライト骨格内に取り込まれて、Zn同士は孤立しているとみられる。
また、前処理後に150℃まで冷却し、ピリジンを導入し、真空排気しながら250℃まで昇温させた後にFT-IR分析を行った。その結果を図4に示す。ブレンステッド酸が存在する場合、ゼオライト触媒にピリジンを吸着させてFT-IRで測定すると、1560cm-1付近にCN-Hの振動に由来する吸収バンドが見られることが知られている。しかしながら、[Zn]-MFI触媒では、当該吸収バンドが見られなかった。
ルイス酸が存在する場合、ゼオライト触媒にピリジンを吸着させてFT-IRで測定すると、1450cm-1付近に吸収バンドが見られることが知られている。そして、[Zn]-MFI触媒では、1450cm-1付近に吸収バンドが見られた。このことから、[Zn]-MFI触媒は、ブレンステッド酸を有さず、ルイス酸のみを有することが判明した。
(d)CO-TPD分析
CO-TPD分析の結果を図5に示す。CO-TPD分析において、一般的なアルミニウムを含むゼオライト触媒では、100℃付近の低温域にピークは示すものの、500℃以上の高温域ではピークは見られない。また、Zn含浸担持触媒では、100℃付近にのみピークが見られる。しかしながら、[Zn]-MFI触媒では、500℃以上の高温域においてもピークが見られ、このゼオライト触媒の固体塩基性が強いことが確認された。なお、CO-TPDによる500℃以上の高温域のピーク面積から算出した固体塩基量は、0.001~0.035mmol/gであった。
(e)NH-TPD分析
NH-TPD分析の結果を図6に示す。NH-TPD分析において、Zn含浸担持触媒では200℃付近にブロードなピークが見られた。一方、[Zn]-MFI触媒では、150℃~500℃までの大きいブロードのピークが見られた。FT-IR分析において、[Zn]-MFI触媒は、ブレンステッド酸を有さず、ルイス酸のみを有することが確認されているため、このピークはルイス酸に吸着したNHの離脱に由来すると考えられる。また、ピーク面積から算出した酸量は、0.01~0.2mmol/gであった。
(f)UV-vis分析
UV-vis分析の結果を図7に示す。UV-vis分析において、ZnO結晶のピークは255~322nm、ゼオライト細孔内ZnOクラスターのピークは240nmに帰属される。ZnO結晶、ゼオライト細孔内ZnO結晶のピークは[Zn]-MFI触媒には確認されず、Zn原子がゼオライト骨格内に高分散に存在していると考えられる。
【0063】
以上の結果より、得られた[Zn]-MFI触媒は、ブレンステッド酸を有さずルイス酸のみを有し、固体塩基性が強い、MFI構造のゼオライト触媒であることが確認された。
【0064】
(4)白金担持工程
次に、焼成後のゼオライト触媒1gに対して、白金含有量4.557質量%のジニトロジアミン白金(II)硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH(NO]/HNO)を添加して、白金の担持量がそれぞれ0.2質量%、0.5質量%、1.0質量%及び2.0質量%になるよう白金を含浸担持した。その後130℃で一晩乾燥させ、550℃で3h、空気中で焼成し、0.2質量%、0.5質量%、1.0質量%及び2.0質量%の白金がそれぞれ担持されたゼオライト担持白金触媒である、Pt/[Zn]-MFI触媒を調製した。
【0065】
[触媒調製例2]
<Zn/[Si]-MFI触媒の調製>
水酸化ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)、イオン交換水を混合(TEOS:TPAOH:イオン交換水=1:0.12:70(mol比))して調製したゲルを80℃で24h撹拌(熟成)を行った。得られた混合物を175℃で24時間水熱合成を行った後、繰り返し水で洗浄した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3h焼成を行った。これにより、アルミニウムを含まないシリカライトを得た。なお、得られたシリカライトについてはX線回折測定(X線源:CuKα、装置:リガク社製、RINT 2500)により、MFI構造を有することを確認した。続いて1M硝酸亜鉛六水和物の水溶液を用いて亜鉛の担持量が10.0質量%になるよう亜鉛を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3h焼成を行ってZn/[Si]-MFI触媒を調製した。
【0066】
[触媒調製例3]
<Pt/MgAl触媒の調製>
市販のγ-アルミナ(ネオビードGB-13、水澤化学工業製)10.0gと、硝酸マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製、Mg(NO・6HO)12.5gを100mLの水に溶解した水溶液とを混合した。得られた混合液を、エバポレータを用いて、50℃で180分間撹拌し、その後減圧下で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3h焼成を行い、続けて800℃で3h焼成を行った。これにより、スピネル型構造を有するアルミナ-マグネシア担体を得た。なお、得られたアルミナ-マグネシア担体は、X線回折測定(X線源:CuKα、装置:リガク社製、RINT 2500)により、2θ=36.9、44.8、59.4、65.3degにMgスピネルに由来する回折ピークが確認された。
次いで、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(田中貴金属工業株式会社製、[P
t(NH(NO]/HNO)を用いて、白金の含有量が1.0質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3h焼成を行い、Pt/MgAl触媒を調製した。
【0067】
[シクロペンタジエンの製造]
触媒調製例1及び3で得られた触媒を用いて、シクロペンタジエンの製造を行った。
【0068】
(実施例1)
1.0質量%の白金が担持されたPt/[Zn]-MFI触媒0.1gを管型反応器に充填し、管型反応器を固定床流通式反応装置に接続した。分子状水素を30mL/minで流通させながら、管型反応器を550℃まで昇温した後、1.0h保持した。その後、原料組成物として炭素数5のオレフィン(1-ペンテン:1,3-ペンタジエン=50:50(質量比))及び窒素をそれぞれ管型反応器に供給し、反応温度500℃、常圧にて環化脱水素反応を行った。WHSVは、1.1h-1とした。ガス流量(mL/min)比は、原料組成物:窒素(N)=1:12とした。
【0069】
反応開始時から0.5、2.5、4.5及び6.5時間が経過した時点で、環化脱水素反応の生成物を水素炎検出器を備えたガスクロマトグラフ(FID-GC)を用いて分析した。ガスクロマトグラムに基づき、採取された反応生成物の各成分(単位:質量%)を定量し、原料の合計転化率(各原料の転化率を合算した値、単位:質量%)及びシクロペンタジエンの収率(原料の炭素数5のオレフィンの使用量に対する収率、質量%)を算出した。結果を表1に示す。合計転化率は以下の式(1)により算出した。
【0070】
合計転化率(質量%)=(1-(C生成1-ペンテン+C生成1,3-ペンタジエン)/(C原料1-ペンテン+C原料1,3-ペンタジエン))×100 (1)
式(1)において、C原料1-ペンテン及びC原料1,3-ペンタジエンは原料中に含まれる1-ペンテン及び1,3-ペンタジエンの質量%、C生成1-ペンテン及びC生成1,3-ペンタジエンは生成物中に含まれる1-ペンテン及び1,3-ペンタジエンの質量%である。
【0071】
(実施例2~11)
実施例1において、原料組成物、触媒、WHSV、及びガス流量比を表2~5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、シクロペンタジエンの収率を算出した。得られたシクロペンタジエンの収率からシクロペンタジエンの収率比(反応時間6.5hrにおけるシクロペンタジエンの収率/反応時間2.5hrにおけるシクロペンタジエンの収率)を算出した。結果を表2~表5に示す。
【0072】
(実施例12、13及び比較例1~3)
実施例1において、原料組成物、触媒、WHSV、及びガス流量比を表1及び表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、原料の転化率又は原料の合計転化率、及びシクロペンタジエンの収率をそれぞれ算出した。結果を表1及び表6に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、実施例1のゼオライト骨格中に遷移金属が導入されたゼオライト触媒に貴金属を担持した触媒を使用して反応を行ったところ、比較例1の結晶性メタロシリケートを担体としない、担持貴金属触媒と比較して、原料の合計転化率及びシクロペンタジエンの収率が高い傾向を示した。
さらに実施例1の触媒では、6.5時間経過後であってもシクロペンタジエンの収率を高く維持しており、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。一方、比較例1の触媒は反応開始直後にコーク劣化により失活し、シクロペンタジエン収率が低く推移する傾向が認められた。
【0075】
【表2】
【0076】
表2は、ゼオライト触媒における白金の含有量が、シクロペンタジエンの収率比に及ぼす効果を示している。
表2に示すように、ゼオライト触媒における白金の含有量が0.2質量%であっても、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。
【0077】
【表3】
【0078】
表3は、WHSVがシクロペンタジエンの収率比に及ぼす効果を示している。
表3に示すように、WHSVが0.5~5.0h-1の幅広い範囲において、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。
【0079】
【表4】
【0080】
表1の実施例1及び表4の実施例8は、原料組成物中の炭素数5のジオレフィンの含有量が、シクロペンタジエンの収率比に及ぼす効果を示している。
ここで、実施例1のシクロペンタジエンの収率比(6.5hr/2.5hr)は、1.09であった。
表1の実施例1及び表4の実施例8に示すように、原料組成物中の炭素数5のジオレフィンの含有量が33質量%及び50質量%であっても、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。
【0081】
【表5】
【0082】
表1の実施例1及び表5の実施例9~11は、反応系に供給するガス流量比がシクロペンタジエンの収率比に及ぼす効果を示している。
表1の実施例1及び表5の実施例9~11に示すように、反応系に分子状水素を供給しない場合であっても、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。
【0083】
【表6】
【0084】
表6の実施例12及び13に示すように、実施例1の、原料組成物として炭素数5のモノオレフィンのみであっても、原料の転化率及びシクロペンタジエンの収率が高く、反応時間の経過に対して安定したシクロペンタジエンの生成が認められた。
一方、表6の比較例2及び3の方法は、実施例12及び13ほどの高い原料の転化率及びシクロペンタジエンの収率が得られておらず、特に比較例3の方法は経時的なシクロペンタジエン収率の低下が認められた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7