(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】クロメン系化合物、それらの方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4188 20060101AFI20250425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250425BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
A61K31/4188
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2021577354
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020056131
(87)【国際公開番号】W WO2020261242
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/059156
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516116507
【氏名又は名称】ユニベルズィダード ドゥ ミンホ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO MINHO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】マルタ シウヴィア フレイタス ダ コスタ
(72)【発明者】
【氏名】マリア ジ ファティマ モンジニョ バルタザール
(72)【発明者】
【氏名】マリア フェルナンダ ジ ジェズース ヘーゴ パイヴァ プロエンサ
(72)【発明者】
【氏名】パトリーシア マシエル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィア アレシャンドラ エリアス ポンチェス
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/110860(WO,A1)
【文献】COSTA, M., et al.,Tetrahedron,2011年,Vol. 67,No. 10,pp.1799-1804.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬又は獣医薬における使用のための薬剤であって、
以下の式で示される、化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体からなる薬剤。
【化1】
(式中、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して選択され、
R
1は、アリールから選択され、
R
2は、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル又はアミンから選択され、
R
3は、H又は
【化2】
から選択される。
ただし、
【化3】
は除外される。)
【請求項2】
R
1が置換アリールである、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
R
1がヒドロキシフェニル、ヒドロキシ-メトキシフェニル、ヒドロキシ-ブロモフェニル、ヒドロキシ-クロロフェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、
4-クロロフェニル、フェニル、メトキシフェニル、ジフルオロ-ヒドロキシフェニル、エトキシフェニル又はブロモ-ヒドロキシ-メトキシフェニルから選択される、請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
R
1が2-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-5-ブロモフェニル、2-ヒドロキシ-5-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、4-ブロモフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシフェニル、2-メトキシフェニル、3,5-ジフルオロ-2-ヒドロキシフェニル、4-エトキシフェニル又は2-ブロモ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
R
2がH、5-メトキシ、7-メトキシ、7-ブロモ、7-クロロ又は7-フルオロから選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
R
3がクロメン単位又はHである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項7】
R
3がH、2-(4-フルオロフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位、2-(4-ブロモフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位又は2-(2-フルオロフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
前記化合物が
【化4-1】
【化4-2】
から選択される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項9】
医薬又は獣医薬における使用のための、請求項2~
8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項10】
良性若しくは悪性細胞の過増殖を特徴とする若しくは新血管形成若しくは過血管形成の領域を特徴とする疾患又はがんの治療、療法又は診断における使用のための、請求項1~
9のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項11】
過増殖組織又は新生物の治療、療法又は診断における使用のための、請求項1~
10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
乳がん、腎細胞がん、白血病、神経膠腫若しくは神経膠芽腫の治療、療法又は診断に使用される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項13】
腎細胞がん、白血病、神経膠腫、神経膠芽腫、乳がんの治療、療法又は診断における使用のための、請求項1~
12のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項14】
トリプルネガティブ乳がん、腎細胞がん、管腔乳がん、基底様乳がん、急性白血病の治療、療法又は診断における使用のための、請求項1~
13のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1つを含む医薬組成物。
【請求項16】
抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗生物質、利尿剤又はそれらの混合物をさらに含む、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
皮内若しくは局所若しくは全身若しくは経皮療法若しくは静脈内療法又はそれらの組み合わせにおける使用のための、請求項
15又は
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の化合物及び/又は請求項
15~
17のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むナノ粒子。
【請求項19】
以下の構造を有する請求項1に記載の化合物
【化5】
を生成するためのプロセスであって、以下の構造を有する化合物
【化6】
を、有機溶媒中で濃塩酸と反応させて、以下の構造を有する化合物
【化7】
を生成し、次いで、これを、有機溶媒中で構造R1-CHOを有するアルデヒドと反応させて、以下の構造を有する化合物
【化8】
を生成する工程を含む、プロセス、
又は
以下の構造を有する請求項1に記載の化合物
【化9】
を生成するためのプロセスであって、以下の構造を有する化合物
【化10】
を、有機溶媒中で構造R1-CHOを有するアルデヒドと反応させて、以下の構造を有する化合物
【化11】
を生成する工程を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物に関するものである。本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物の抗がん特性について記載する。本開示はさらに、新規クラスのクロメン系抗がん化合物を合成し、及び単離する方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
2018年に世界で約1,000万人が死亡した原因はがんであり、同年に新たに1,810万人のがん患者が認められた。15年後のこの病気の有病率は、4,300万人を超えると予想されている。これは、新しく、より良い治療法を見つけることの緊急性を正当化するものである。この問題は、症例数及びそれに伴う死亡率が全体的に増加していることから、世界規模で取り組まなければならない。2018年のがんによる死亡者数の6.6%を乳がんが占めている。乳がんは5番目に致死率の高いがんの種類であり、2018年には11.6%の新規症例が認められた(200万症例超)。2これは、罹患率では2番目に多いがんの種類である。治療の種類は常にがんの病期によって異なるが、基本的には手術、放射線、従来の化学療法、免疫療法又はER、PR及びHER-2などの分子マーカーが検出された場合には分子療法で構成される。しかし、乳がんの中でも非常に侵攻性が高く、乳がん全体の約15%~20%を占めるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の場合、従来の治療法では効果が限定的で、分子療法や個別療法もまだ開発されていない。このような予後の悪さから、この乳がんのサブタイプでは高い死亡率が認められている。3
【0003】
クロメン系骨格は、自然界に広く存在し、様々な生物学的特性を持っていることから、医薬化学者にインスピレーションを与えてきた。4この天然の骨格及びその合成誘導体の合成並びに生物学的重要性に関する研究は、ここ数年で注目を集めている。
【0004】
Costaらによる文書「Tetrahedron」には、サリチルアルデヒドとアリーリデンアミノアセトニトリルを用いたワンポットカスケード反応による2-アリール-1,9-ジヒドロクロメノ[3,2-d]イミダゾールの調製が記載されている。さらに、この文書では、薬理学的特性が改善された代替薬候補として、クロメンとイミダゾールを組み合わせた新規融合三環系について記載している。しかし、記載の系では、芳香族単位に異なる置換基を組み込んだ分子を生成することはできない。
【0005】
これらの事実は、本開示によって対処される技術的問題を説明するために開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物に関するものである。本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物の抗がん特性について記載する。本開示はさらに、新規クラスのクロメン系抗がん化合物を合成し、及び単離する方法を記載する。
【0007】
具体的には、本開示では、少なくとも2つの異なる分子を組み合わせることにより、興味深い関連する生物学的プロファイルを持つ化合物を生み出す新規クロメン系化合物の合成方法を記載している。
【0008】
先行技術に記載されているクロメン系化合物の合成プロセスでは、これらの新規化合物を単離することができない。本開示に記載の方法により、乳がん、腎細胞がん、急性白血病及び神経膠腫などのいくつかのがんのサブタイプにおいて、抗がん化合物として使用した場合に驚くほど効果的である新規クロメン系化合物の合成及び単離が可能となる。これらの化合物は、特に乳がん及び腎細胞がんに対して有効である。
【0009】
一実施形態では、合成された化合物を、適切な細胞株を用いたin vitroスクリーニングにより、その抗がん作用について試験した。化合物の活性は、細胞の生存率、増殖、移動、侵攻性、細胞死及び代謝への影響など、様々なレベルで検討した。
【0010】
一実施形態では、クロメン系化合物の毒性効果を非新生物細胞株でも試験した。
【0011】
一実施形態では、クロメン系化合物の初期段階のin vivo毒性スクリーニングに、セノラブディティス・エレガンス(C.エレガンス線虫)モデルを使用した。また、モデルとしてマウスを用いて、in vivo毒性を評価した。
【0012】
一実施形態では、クロメン系化合物の抗がん特性を、in vivo CAM(ニワトリ絨毛尿膜)アッセイを用いても特性評価し、新規クロメンの有効性及び血管新生特性を評価した。さらにモデルとしてマウスを用いてin vivo有効性を評価した。
【0013】
本主題の化合物は、ユニークで有望な抗がんプロファイルを示す。
【0014】
本開示の一態様は、以下の式を含む化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体に関するものである。
【化1】
(式中、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して選択され、
R
1は、H、アルキル、アリール、アルコキシル、アシル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、アミン、アミド、ケトン、エステル、複素環から選択され、
R
2は、H、アルキル、アリール、アルコキシル、アシル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、アミン、アミド、カルボニル、ケトン、エステル、複素環から選択され、
R
3は、H、アルキル、アリール、アルコキシル、アシル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、アミン、アミド、ケトン、エステル、複素環又は
【化2】
から選択される。)
【0015】
本開示の別の態様は、以下の式を含む化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体に関するものであり、
R
1は、アリール又は複素環から選択され、
R
2は、H、アルキル、アリール、アルコキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン、カルボニル又は複素環から選択され、
R
3は、H又は
【化3】
から選択される。
ただし、好ましくは、
【化4】
は除外される。
【0016】
一実施形態では、R1がアリールから選択され、R2がH、アルキル、アルコキシル、ハロゲン、ヒドロキシル又はアミンから選択される、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0017】
一実施形態では、前記二量体が好ましくはホモ二量体である、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0018】
一実施形態では、R1が置換アリールである、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0019】
一実施形態では、R1がヒドロキシフェニル、ヒドロキシ-メトキシフェニル、ヒドロキシ-ブロモフェニル、ヒドロキシ-クロロフェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、24-クロロフェニル、フェニル、メトキシフェニル、ジフルオロ-ヒドロキシフェニル、エトキシフェニル又はブロモ-ヒドロキシ-メトキシフェニルから選択される、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0020】
一実施形態では、R1が2-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-5-ブロモフェニル、2-ヒドロキシ-5-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、4-ブロモフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシフェニル、2-メトキシフェニル、3,5-ジフルオロ-2-ヒドロキシフェニル、4-エトキシフェニル又は2-ブロモ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニルである、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0021】
一実施形態では、R2が置換又は非置換アリールである、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0022】
一実施形態では、R2がH、5-メトキシ、7-メトキシ、7-ブロモ、7-クロロ又は7-フルオロから選択される、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0023】
一実施形態では、R3がクロメン単位又はHである、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0024】
一実施形態では、R3がH、2-(4-フルオロフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位、2-(4-ブロモフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位又は2-(2-フルオロフェニル)-5-メトキシ-1,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール単位から選択される、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0025】
一実施形態では、
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
から選択される、前記化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体。
【0026】
本開示の一態様では、本開示の化合物は、医学又は獣医学で使用される。
【0027】
本開示の一態様では、本化合物は、良性若しくは悪性細胞の過増殖を特徴とする若しくは新血管形成若しくは過血管形成の領域を特徴とする疾患又はがんの治療、療法又は診断に使用され得る。
【0028】
本開示の一態様では、本化合物は、過増殖組織又は新生物の治療、療法又は診断に使用され得る。
【0029】
本開示の一態様では、本化合物は、乳がん、腎細胞がん、白血病、神経膠腫若しくは神経膠芽腫の治療、療法又は診断に使用され得る。
【0030】
本開示の一態様では、本化合物は、腎細胞がん、白血病、神経膠腫、神経膠芽腫、乳がんの治療、療法又は診断に使用され得る。
【0031】
本開示の一態様では、本化合物は、トリプルネガティブ乳がん、急性腎細胞がん、管腔乳がん、基底様乳がん、急性白血病の治療、療法又は診断に使用され得る。
【0032】
本開示の別の態様は、本開示の化合物の少なくとも1つを含む医薬組成物に関する。
【0033】
一実施形態では、薬学的に許容される担体をさらに含む本開示の医薬組成物。
【0034】
一実施形態では、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤若しくは利尿剤又はそれらの混合物をさらに含む本開示の医薬組成物。
【0035】
一実施形態では、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤又はそれらの混合物をさらに含む本開示の医薬組成物。
【0036】
一実施形態では、皮内若しくは経皮療法又は局所若しくは全身若しくは静脈内療法又はそれらの組み合わせで使用される本開示の医薬組成物。
【0037】
本開示の別の態様は、本開示の化合物を得るための方法であって、以下の工程を含む方法に関する。
CH3CN1mL中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(0.150mg、0.79mmol)のオレンジ色溶液に、濃HCl(1.1当量)を加える工程と、
混合液を室温(20℃)で10~15分間撹拌する(すぐに沈殿が観察される)工程と、
固体を、好ましくは単純な濾過によって濾過し、3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリドを得る工程と、
CH3CN(1~2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(0.25~0.35mmol)の懸濁液に、アルデヒド(1.1~1.7当量)を加える工程と、
懸濁液を60℃で24~48時間撹拌する工程と、
得られた固体を濾過して純粋な生成物を分離し、好ましくはCH3CNで洗浄する工程と、
任意選択で、1H NMRスペクトルでHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄し、純粋な生成物2-(5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾールを得る工程。
【0038】
一実施形態では、5,5’-ジメトキシ-2,2’-ジフェニル-1,1’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾールの調製のために、CH3CN(1-2mL)中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミンの溶液にアルデヒド(1-1.2当量)を加え、溶液を80℃で7-24時間撹拌した。固体生成物が徐々に沈殿し始めたため、濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物である5,5’-ジメトキシ-2,2’-ジフェニル-1,1’’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾールとして同定した。
【0039】
本開示の別の態様は、本開示の化合物及び/又は本開示の医薬組成物を含むナノ粒子に関する。
【0040】
一実施形態では、本開示の化合物及び/又は医薬組成物を含むナノ粒子は、ナノ粒子によってカプセル化されている。
【0041】
本開示の別の態様は、本化合物及び/又は本開示の医薬組成物を含むキットに関する。
【0042】
本開示の別の態様は、医学又は獣医学における使用のための、本化合物又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、N-オキシド、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、アトロプ異性体、二量体若しくは多形体の使用に関する。具体的には、良性若しくは悪性細胞の過増殖を特徴とする若しくは新血管形成の領域を特徴とする疾患又はがんの治療又は療法に使用するためのものである。特に、がんに関連する過増殖組織などの過増殖組織の治療、療法又は診断に使用するためのものである。さらに、乳がん、腎細胞がん、急性白血病及び神経膠腫の治療、療法又は診断に使用するためのものである。さらに、神経膠芽腫及びトリプルネガティブ乳がんの治療、療法又は診断に使用するためのものである。
【0043】
国際純正応用化学連合(IUPAC)の定義に基づき、アルキル基は、アルカンの任意の炭素原子から水素原子を除去して得られる一価の基-nCH2n+1と定義されている。分岐していないアルカンの末端炭素原子から水素原子を除去して得られる基は、通常のアルキル(n-アルキル)基H(CH2)nのサブクラスを形成する。RCH2基、R2CH基(R≠H)及びR3C(R≠H)基は、それぞれ第一級、第二級及び第三級アルキル基である。アリール基は、アレーン(単環式及び多環式芳香族炭化水素)の環炭素原子から水素原子を除去して得られる。
【0044】
「アルキル」には「低級アルキル」が含まれ、最大30個の炭素原子を持つ炭素断片を包含するように拡大して適用される。アルキル基の例としては、オクチル、ノニル、ノルボルニル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、エイコシル、3,7-ジエチル-2,2-ジメチル-4-プロピルノニル、2-(シクロドデシル)エチル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0045】
「低級アルキル」とは、炭素原子数1~7のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2-メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチルなどが挙げられる。
【0046】
本開示において、ハロゲンとは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)からなるリストより選択される元素を指す。
【0047】
本開示において、用語「複素環」は、環骨格を形成する原子の少なくとも1つが炭素ではない環を意味する。特に明記しない限り、複素環は、飽和、部分的不飽和又は完全不飽和の環であり得る。「飽和複素環」とは、環員間に単結合のみを含む複素環を指す。「部分的に飽和した複素環」とは、少なくとも1つの二重結合を含む非芳香族複素環を指す。用語「芳香族複素環」とは、環骨格を形成する少なくとも1つの原子が炭素ではない完全な不飽和芳香族環を意味する。典型的には、芳香族複素環は、4個以下の窒素、1個以下の酸素及び1個以下の硫黄を含む。特に明記しない限り、芳香族複素環は、利用可能な任意の炭素又は窒素を介して、当該炭素又は窒素上の水素原子を置換することによって結合することができる。用語「芳香族複素二環式環系」は、2つの環のうち少なくとも1つが上記で定義された芳香族複素環である2つの縮合環からなる環系を意味する。
【0048】
用語「炭素環」は、環骨格を形成する原子が炭素からのみ選択される環を意味する。特に明記しない限り、炭素環は、飽和、部分的不飽和又は完全不飽和の環である。完全不飽和の炭素環がヒュッケル則を満たす場合、当該環は「芳香族環」とも呼ばれる。「飽和炭素環」とは、単結合で互いに結合した炭素原子からなる骨格を有する環を指し、特に指定のない限り、残りの炭素原子価は水素原子で占められる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下の図は、本開示を説明するための好ましい実施形態を提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【
図1】創傷治癒アッセイで評価したMCF-7細胞の遊走に対するクロメン系化合物の効果(12、24、48、72時間の処理で、各化合物についてそれぞれの1/2IC
50及びIC
50値)を示す図である。
【
図2】創傷治癒アッセイで評価したCaki-2細胞株の遊走に対するクロメン系化合物の効果(12、24、36、48時間の処理で、各化合物についてそれぞれのIC
50値)を示す図である。
【
図3】48時間の処理後の786-O細胞の増殖に対するクロメン系化合物の効果を示す図である。
【
図4】アネキシンV/PIアッセイで評価したMCF-7細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図4Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したMCF-7細胞又はIC
50濃度の化合物で12時間及び24時間処理したMCF-7細胞の代表的なドットプロットである。
図4Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。
【
図5】アネキシンV/PIアッセイで評価したHs578t細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図5Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したHs578t細胞又はIC
50濃度の薬剤で12時間及び24時間処理したHs578t細胞の代表的なドットプロットである。
図5Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。
【
図6】MCF-7細胞を、化合物MC409、MC408、MC406及びMC421で(A)24時間及び(B)48時間、対応するIC
50濃度を用いて処理した後の完全長PARP、カスパーゼ3及び9、BIM並びにBcl-xLについてのウェスタンブロット分析を示す図である。12%ポリアクリルアミドゲルを用いた、溶解液におけるウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出。
【
図7】Hs578t細胞を、化合物MC409、MC408、MC406及びMC421で(A)24時間及び(B)48時間、対応するIC
50濃度を用いて処理した後の完全長PARP、カスパーゼ3及び9、BIM、Bcl-xL並びにBaxについてのウェスタンブロット分析を示す図である。12%ポリアクリルアミドゲルを用いた、溶解液におけるウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出。
【
図8】MCF-7細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図8Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したMCF-7細胞又はIC
50濃度の薬剤で12時間及び24時間処理したMCF-7細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図8Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。
【
図9】Hs578t細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図9Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したHs578t細胞又はIC
50濃度の薬剤で12時間及び24時間処理したHs578t細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図9Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。
【
図10】Hs578t(A、B)及びMCF-7(C、D)細胞の微小管ネットワークに対する化合物MC408及びMC421の効果を示す図である。
【
図11】C.エレガンスにおける毒性効果の決定に用いた戦略を示す図である。蠕虫は、熱不活性化細菌(大腸菌OP50)を食料源として利用し、いくつかの濃度の化合物MC421、MC406、MC369及びMC408、MC409、MC407の存在下で、液体培地中で7日間培養した。3日目から5日目までの食物消費速度は、蠕虫の発育、健康状態、さらには3日目以降は蠕虫の子孫が食物量の急速な減少に寄与するため、繁殖力の指標として用いた。架空の化合物Xについての例を示す。DMSO1%及び5%を毒性の陰性及び陽性対照として使用した。
【
図12】C.エレガンスにおける化合物のin vivo毒性の欠如を示す図である。
【
図13】C57BI/6マウスに対する化合物MC408の効果を示す図である。
【
図14】化合物MC408で処理されたC57BI/6マウスで行った一連の福祉試験の結果を示す図である。
【
図15】C57Bl/6マウスの酵素肝機能に対するMC408処理の効果を示す図である。
【
図16】C57Bl/6マウスに対するMC408処理の効果-第2回目の実験を示す図である。
図16Aは、実験のタイムラインの概略図である。
図16Bは、マウスの体重を示している。
【
図17】乳がんHs578t細胞株に対するMC408及びMC421のin vivo治療効果を示す図である。
図17AはCAMアッセイの代表的な写真を示し、
図17Bは腫瘍成長率を示している。
【
図18】アネキシンV/PIアッセイで評価した786-O細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図18Aは、0.5%DMSO(対照)で処理した786-O細胞又はIC
50濃度の薬剤で24時間及び48時間処理した786-O細胞の代表的なドットプロットである。
図18Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。
【
図19】786-O細胞を、化合物MC408及びMC421で(A)24時間及び(B)48時間、対応するIC
50濃度を用いて処理した後のKDM4C、完全長PARP、Hsp90、完全長JNK、完全長p53、Bid及びp21についてのウェスタンブロット分析を示す図である。12%ポリアクリルアミドゲルを用いた、溶解液におけるウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出。
【
図20】786-O細胞を、2時間の飢餓期間と、セディラニブ、化合物MC350、MC415、MC412、MC408及びMC421で6時間、2μMの固有濃度を用いて処理した後のmTOR、ERK、VEGFR2、EGFR、AKT、PTEN及びAMPKの完全型並びにリン酸化型、PDK1、NF-κB及びp18のリン酸化型並びにc-Myc、Hsp90及びPRAS40タンパク質についてのウェスタンブロット分析を示す図である。10%ポリアクリルアミドゲルを用いた、溶解液におけるウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出。
【
図21】腎がん786-O細胞株に対するMC408及びMC421のin vivo治療効果を示す図である。
図21AはCAMアッセイの代表的な写真を示し、
図21Bは腫瘍成長率を示している。
【
図22】786-O細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図22Aは、0.5%DMSO(対照)で処理した786-O細胞又はIC
50濃度の薬剤で24時間及び48時間処理した786-O細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図22Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。
【
図23】A498耐性細胞株及び親細胞株を、選択した化合物の1/2IC
50又はIC
50で24時間及び48時間処理した後の、細胞増殖に対するクロメン系化合物の効果を示す図である。
【
図24】Caki-2耐性細胞株及び親細胞株を、選択した化合物の1/2IC
50又はIC
50で24時間及び48時間処理した後の、細胞増殖に対するクロメン系化合物の効果を示す図である。
【
図25】A498の親(P)及び耐性(R)細胞に対する、IC
50のラパマイシン及びセディラニブ、化合物MC350、MC413、MC408及びMC421での48時間の処理期間を経た後の、ERK及びGAPDH、HK2、LDHA、Hif2α、MCT1、PKM、PFKL、Hsp90及びc-Mycタンパク質の完全型並びにリン酸化型についてについてのウェスタンブロット分析を示す図である。10%ポリアクリルアミドゲルを用いた、溶解液におけるウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出。
【
図26】血管新生に対する化合物MC408及びMC421のin vivo効果を示す図である。13日目及び17日目のin ovo及びex ovoにおけるCAMアッセイの代表的な画像(倍率20倍)。
【
図27】同所性乳がんNSGマウス異種移植モデルの腫瘍体積及び重量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物に関するものである。本開示は、新規クラスのクロメン系抗がん化合物の抗がん特性について記載する。本開示はさらに、新規クラスのクロメン系抗がん化合物を合成し、及び単離する方法を記載する。
【0051】
具体的には、本開示では、少なくとも2つの異なる分子を組み合わせることにより、興味深い関連する生物学的プロファイルを持つ化合物を生み出す新規クロメン系化合物の合成方法を記載している。
【0052】
一実施形態では、19種類のクロメンイミダゾール系化合物を単離した。表1は、クロメン系骨格の構造と、合成及び単離した19種類のクロメンイミダゾール系化合物とを示している。
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
一実施形態では、単離した薬剤の抗増殖活性の評価の一環として、合成し、及び単離したクロメン系化合物の細胞増殖阻害率及びIC
50値を測定した。合成したすべての化合物について、構造活性相関に関する完全な研究を行った。MCF-7乳がん細胞株に対する抗増殖活性を分析した。表2は、乳がん細胞株MCF-7及び非新生物細胞株MCF-10Aに対する化合物のIC
50値(μM)及び選択性指数(SI)を示している。また、非新生物細胞株MCF-10Aを用いて、腫瘍細胞に対する化合物の選択性を調べた。IC
50値(細胞の生存率を50%低下させるのに必要な濃度)が20μMよりも高い化合物については、IC
50 値を決定しなかった。試験化合物の細胞毒性を評価するために、選択性指数(SI)を算出した。
【表2-1】
【表2-2】
【0054】
二量体化合物は、MCF-7細胞株に対して優れたIC50値を示し、それぞれの単量体よりも低い値を示した。イミダゾール部位に結合している芳香族環にハロゲン原子を有する、又は置換基のないモノマー化合物は、最も低いIC50値(<1μM)を示した。OH又はOCH3/OCH2CH3を有するイミダゾクロメンは、同じ芳香族部位にハロゲン原子が存在する場合でも、IC50値が著しく高くなった。
【0055】
非新生物細胞株MCF-10Aに対しても、いくつかのクロメンで有望なIC50値が得られ、高いSI値が算出された。非新生物細胞に対する毒性は、二量体化合物の方がはるかに低く、優れたSI値(60より高い)が得られた。SI値は全般的に非常に有望であった。
【0056】
一実施形態では、比較研究のために、単量体及びそれぞれの二量体を選択し、さらにHs578t及びMDA-MB-468乳がん細胞株で評価した。表3は、乳がん細胞株Hs578t及びMDA-MB-468に対する、選択したクロメン系化合物のIC
50値(μM)及び選択性指数(SI)を示している。これらの細胞株は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2)分子マーカーが陰性であることから、既知のトリプルネガティブサブタイプに含まれる乳がんの基底細胞様サブタイプに相当する。これらの乳がんのサブタイプの臨床的挙動は非常に侵攻性が高く、いまだに特定の分子療法はない。
【表3-1】
【表3-2】
【0057】
クロメン系化合物は、Hs578tに対して0.035~0.27μMと非常に低いIC50値を示した。臭素置換されたクロメン系化合物MC408及び二量体化合物MC421は、Hs578t細胞株及びMDA-MB468細胞株に対して非常に低いIC50値を示した。化合物MC408は特に活性が高い(IC50=0.027μM)。一般に、化合物は、これらの侵攻性の乳がんのサブタイプに対して、さらに興味深い抗増殖能を示し、SI値も優れていた。
【0058】
一実施形態では、化合物MC408、MC409、MC421及びMC406の抗増殖活性を、神経膠腫細胞株(U87、GAMG及びGL18)並びに急性白血病細胞株(HL-60、KG-1及びJurkat)に対してさらに測定した。これは、本化合物が他のがん細胞モデルにおいても同様に興味深い抗がんプロファイルを示すかどうかを評価するために行った。細胞の生存率は、細胞をそれぞれの化合物に適切な濃度範囲で72時間曝露した後、MTSアッセイを用いて測定し、それぞれのIC
50値を求めた。表4は、化合物MC408、MC409、MC421及びMC406の神経膠腫及び白血病のがん細胞モデルに対するIC
50値(μM)を示している。
【表4】
【0059】
これらの化合物は、すべての細胞株に対するIC50値がナノモル又は低マイクロモルの範囲であったことから、優れた抗増殖能を示した。化合物MC421は、神経膠腫細胞株、特にU87及びGAMGに対して非常に高い細胞増殖抑制を示した。化合物MC408は、他の化合物と比較して抗増殖能が低いが、IC50値は依然として低μMの範囲にあった。白血病モデルでは、すべての化合物がJurkat細胞株に対してより選択的であると思われるが、他の白血病細胞株をすべての化合物で処理しても、優れた増殖抑制が達成された。これらの結果から、これらの化合物はいくつかのがん細胞モデルにおいて有望であり、がん治療の候補として見なされ得ることが示された。
【0060】
一実施形態では、化合物の抗増殖活性を、腎がん細胞株及び非新生物性腎細胞株に対してさらに測定した。表5は、腎がん細胞株(786-O、Caki-2、A498)及び非新生物細胞株(HK2)に対するIC
50値(μM)及び選択性指数(SI)を示す。化合物M955、M1220、M1143及びM1221は、最初のスクリーニングで生物学的活性を示さず、IC
50の決定は追求されなかった。いくつかの化合物は、腎細胞がん(RCC)細胞株に対して高い活性と優れた選択性指数を示した。
【表5】
【0061】
一実施形態では、化合物MC421、MC409、MC408、MC350、MC416、MC410、MC411、MC415及びMC413の抗増殖活性を、薬剤耐性腎がん細胞株に対してさらに測定した。表6は、ラパマイシン耐性A498細胞株及びセディラニブ耐性Caki-2細胞株及び非新生物細胞株(HK2)に対するIC
50値(μM)及び選択性指数(SI)を示している。
【表6】
【0062】
一実施形態では、選択した4つの化合物(MC408、MC409、MC406及びMC421)の効果を、細胞遊走に対してさらに評価した(
図1)。MCF-7細胞をそれぞれのIC値
50及び当該IC
50値の半分で72時間処理し、創傷治癒アッセイを行った。各化合物のIC
50濃度の半分を使用し、濃度依存性効果を評価した。
図1は、MCF-7細胞遊走に対するクロメン系化合物の効果を、創傷治癒アッセイによって評価したものである(各化合物について、それぞれ1/2IC
50及びIC
50値で12、24、48、72時間処理した)。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均値±SDとして示し、対照(DMSO、0.5%)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
【0063】
すべての化合物について、わずか12時間のインキュベーションで、顕微鏡で広範囲の細胞死が観察された。72時間後には、大量の浮遊する死細胞が細胞遊走の正確な測定を妨げたため、写真を撮る前に各ウェルから培地を除去した。化合物MC409は、細胞遊走に対して早い段階で効果を示し、12時間後、この化合物は、細胞遊走の割合(0.5%DMSOの対照との比較)を、IC50及び1/2IC50値で約40%減少させることができた。しかし、細胞遊走の緩やかな回復が観察されるように、細胞は化合物の影響から回復するように思われる。72時間の処理後、IC50濃度を用いることにより、細胞遊走は対照よりも約12%まで抑制された。他の3つの化合物についても、24時間又は48時間の処理後に低い効果が観察された。IC50濃度及び1/250IC濃度を用いた化合物MC408及びMC406処理については、細胞遊走に対して同様の効果が得られ、72時間後には細胞遊走が対照と比べて20%減少した。化合物MC421は、濃度依存的に効果を示した。IC50及び1/2IC50濃度のいずれにおいても、時間の経過とともに細胞遊走にわずかな効果が見られた。細胞遊走の減少は、72時間の処理後にのみ観察された(対照より13%減少)。
【0064】
一実施形態では、化合物MC408、MC421、MC412及びMC415の効果は、腎細胞がん細胞株Caki-2における細胞遊走(
図2)についても、4つの異なる時点で評価した。参照薬物としてセディラニブを用い、すべての化合物をそれぞれのIC
50濃度値を用いて試験した。
図2は、Caki-2細胞株の遊走に対するクロメン系化合物の効果(各化合物のそれぞれのIC
50値で12、24、36、48時間処理)を、創傷治癒アッセイによって評価したものである。結果を対照(破線)に対して正規化し、平均値±SEMで示した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.002、****p<0.0001とした。異なるグループ間の差の有意性は、スチューデントのt検定で判定した。
【0065】
一実施形態では、細胞増殖に対する好ましいクロメン系化合物の効果を評価した。786-O細胞を、IC値
50及び1/2
50IC値で48時間処理した。DNA合成中のBrdU取り込み能力を測定し、結果を
図3に示した。
図3は、48時間処理した786-O細胞の増殖に対するクロメン系化合物の効果を示す。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均値±SDで表した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0005、****p<0.0001とした。異なるグループ間の差の有意性は、スチューデントのt検定で判定した。一般に、クロメンは、786-O細胞に対して、濃度依存的に細胞増殖の有意な減少を誘導した。化合物MC409、MC410及びMC368では例外が観察された。
【0066】
一実施形態では、化合物、特に化合物MC406、MC409及びMC408は、細胞増殖及び細胞死に対する明確な効果を示した。これは、形態学的変化(顕微鏡で観察される細胞)によって見ることができ、丸い浮遊細胞の存在によっても見ることができる。
【0067】
一実施形態では、細胞死に至るメカニズムを理解するために、細胞をフローサイトメトリーによるアポトーシス誘導について調べた。MCF-7細胞及びHs578t細胞を12時間及び24時間、786-O細胞を24時間及び48時間、それぞれのIC
50濃度の化合物とインキュベートした後、アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)で二重染色し、ホスファチジルセリンの外在化を検出した。ホスファチジルセリンの外在化は、アポトーシスの初期に起こる。アネキシンVがホスファチジルセリンに結合する一方で、PIは膜の完全性を失った細胞のみを染色するため、生細胞、初期アポトーシス細胞、後期アポトーシス/壊死細胞又は壊死細胞を識別することができる実験手順である。化合物MC408及びMC421は、
図9及び
図10に示すように、24時間後に3つの細胞株でアポトーシスによる細胞死(初期アポトーシス)を誘導し、関連する抗がん作用を示した。化合物MC406及びMC409は、Hs578t細胞株においてもアポトーシスによる細胞死を誘導した。
【0068】
図4は、アネキシンV/PIアッセイで評価したMCF-7細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示している。
図4Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したMCF-7細胞又はIC
50濃度の化合物MC408、MC409、MC406及びMC421で12時間及び24時間処理したMCF-7細胞の代表的なドットプロットである。
図4Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。この結果は、DMSOで処理した細胞を対照(100%)として、3回の独立した実験の平均値±SEMを用いて得られたものである。アネキシンV/PIのデータは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
図5は、アネキシンV/PIアッセイで評価したHs578t細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示している。
図5Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したHs578t細胞又はIC
50濃度の化合物MC408、MC409、MC406及びMC421で12時間及び24時間処理したHs578t細胞の代表的なドットプロットである。
図5Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。この結果は、DMSOで処理した細胞を対照(100%)として、3回の独立した実験の平均値±SEMを用いて得られたものである。アネキシンV/PIのデータは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
図18は、アネキシンV/PIアッセイで評価した786-O細胞の生存率のフローサイトメトリー分析を示している。
図18Aは、0.5%DMSO(対照)で処理した786-O細胞又はIC
50濃度の化合物MC408及びMC421で24時間及び48時間処理した786-O細胞の代表的なドットプロットである。
図18Bは、ドットプロットの各象限にある細胞の割合の定量化を示している。この結果は、0.5%DMSOで処理した細胞を対照(100%)として、3回の独立した実験の平均値±SEMを用いて得られたものである。アネキシンV/PIのデータは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
【0069】
一実施形態では、主要なアポトーシスマーカーのウェスタンブロット分析によるアポトーシス経路の検討を通じて、細胞死の誘導をさらに検討した。細胞をIC
50を用いて化合物で24時間及び48時間処理した後、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(Parp)、カスパーゼ3及び9を、誘導されたアポトーシスのマーカーとして評価した(
図6)。
【0070】
化合物で細胞を処理すると、カスパーゼ活性化の最終段階であり、アポトーシスの特徴と考えられているPARPの切断が起こった(
図6及び7)。また、2つの時点で、切断されたカスパーゼ3も観察された。これらのマーカーの存在によって観察されるように、アポトーシスはすべての化合物によって誘導される。
【0071】
Bimタンパク質も使用したところ、試験化合物でレベルの上昇が認められたが、Hs578t細胞株についてのみであった。Bimのような BH3ドメインタンパク質はチューブリンと相互作用し、初期段階では、微小管がダイニン軽鎖と結合してBimを隔離し、このようにしてアポトーシスシグナル伝達経路の開始を阻止すると言われている。Bimは、微小管から放出された後、ミトコンドリアに移動し、いくつかのタンパク質(例えば、Bax、Bcl-2及びBcl-xL)と相互作用し、最終的にアポトーシスを促進する。このことから、試験化合物で処理された細胞からは早期にアポトーシスシグナルが放出され、その結果、ミトコンドリア誘導アポトーシスに関与するアポトーシス促進性及び抗アポトーシス性タンパク質のレベルに影響を与えていることが示唆される。
【0072】
一実施形態では、細胞周期分析を行い、化合物MC408、MC409、MC406及びMC421の細胞増殖を阻害する能力を決定した。MCF-7及びHs578t細胞を、それぞれのIC
50濃度の化合物で12時間及び24時間処理した。786-O細胞を、それぞれのIC
50の化合物MC408及びMC421で24時間及び48時間処理した。細胞周期分析は、フローサイトメトリーを用いてDNA含量で評価した(
図8、9及び22)。
図8は、MCF-7細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示している。
図8Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したMCF-7細胞又はIC
50濃度のMC408、MC409、MC406及びMC421で12時間及び24時間処理したMCF-7細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図8Bは、化合物MC409を除く、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。結果は3回の独立した実験の平均値±SDで示した。データは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
【0073】
図9は、Hs578t細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示している。
図9Aは、0.5%DMSO(対照)で処理したHs578t細胞又はIC
50濃度のMC408、MC409、MC406及びMC421で12時間及び24時間処理したHs578t細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図9Bは、化合物MC409を除く、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。結果は3回の独立した実験の平均値±SDで示した。データは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
【0074】
図22は、786-O細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析を示している。
図22Aは、0.5%DMSO(対照)で処理した786-O細胞又はIC
50濃度のMC408及びMC421で24時間及び48時間処理した786-O細胞の細胞周期プロファイルを示す代表的なヒストグラムである。
図22Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞の定量化を示している。結果は、3回の独立した実験の平均値±SDで示した。データは、二元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定により分析した。対照(0.5%DMSO)と比較して、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001とした。
【0075】
一実施形態では、微小管動力学に対するクロメン系化合物の効果を分析した。
図10は、Hs578t(A、B)及びMCF-7(C、D)細胞の微小管ネットワークに対する化合物MC408及びMC421の効果を示している。未処理(対照)、パクリタキセル(Hs578tに12時間:0.25μM、24時間:0.01μM;MCF-7に12/24時間:1μM)並びに化合物MC408及びMC421をIC
50で12時間(A、C)又は24時間(B、D)処理した細胞を、β-チューブリンで染色し、4,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色した。微小管及び未集合のチューブリンは緑色で示されている。DAPIで染色したDNAは青で示されている。
【0076】
一実施形態では、セノラブディティス・エレガンス(C.エレガンス)をモデルとして、in vivoでの化合物の毒性評価を行った。食物クリアランスに基づくアッセイを実施した。このアッセイでは、経時的な細菌消費量が蠕虫の発育、健康及び繁殖力の代用となる(
図11)。
図11は、C.エレガンスにおける毒性効果の決定に用いた戦略を示している。蠕虫は、熱不活性化細菌(大腸菌OP50)を食料源として利用し、いくつかの濃度の化合物MC421、MC406、MC369及びMC408、MC409、MC407の存在下で、液体培地中で7日間培養した。3日目から5日目までの食物消費速度は、蠕虫の発育、健康状態、さらには3日目以降は蠕虫の子孫が食物量の急速な減少に寄与するため、繁殖力の指標として用いた。架空の化合物Xについての例を示す。DMSO1%及び5%を毒性の陰性及び陽性対照としてそれぞれ使用した。この実験では、化合物をDMSO1%(ビヒクル)に溶解させた。
【0077】
化合物は、いくつかの濃度で、可能な限り最も高い可溶性濃度である150μM(MC369、75μM)まで試験した(
図12)。
図12は、C.エレガンスにおけるMC421、MC406、MC369及びMC408、MC409、MC407のin vivo毒性の分析結果を示している。3~5日目の食物消費速度を、蠕虫の発育、健康及び繁殖力の指標として用い、1%DMSO(ビヒクル、毒性なし)と比較した。MC421、MC406、MC369及びMC408、MC409、MC407では、統計的差異は見られなかった(分散分析、続いてゲームス-ハウエルの事後検定)。3~5日目の食料消費速度については、いずれの化合物/化合物の濃度においても統計的差異は認められなかった。化合物がin vitro試験で使用される濃度よりも大幅に高い濃度でも十分に忍容されると思われることから、哺乳類モデルにおける毒性についての良い予測因子である可能性がある。
【0078】
一実施形態では、化合物の安全性プロファイルをげっ歯類で評価した。
図13は、C57Bl/6マウスに対するMC408処理の効果-第1回目の試験を示している。
図13Aは、実験のタイムラインの概略図である。5ヶ月齢の雌雄の動物を使用し(n=3/グループ/性別)、3mg/KgのMC408又はビヒクル(生理食塩水、Tween80及びメチルセルロース)のいずれかを7日間毎日注射した(腹腔内投与)。一連の福祉試験を毎日行った。
図13Bは、最初の注射の直後の様子を示している。この分析では、動物を10分間ビデオ撮影し、不動時間及び垂直運動(REARS)を実験者が数えた。ビヒクルマウスとMC408マウスの間に違いは見られなかった。
図13Bは、実験全体を通してモニターしたマウスの体重を示しており、処理グループ間で差は見られなかった。
図13Dは、マウスの垂直探索行動を示したものである。この行動は、観察瓶の中で測定され、5分間の垂直運動の数を数えた。
図13Eは、マウスの水平方向の行動を示している。この活動は、升目のラベルが貼られたオープンアリーナで記録し、動物が自由に探索している間の升目の数を1分間数えた。探索行動に差は見られなかった。
図13Fは、マウスの不安を間接的に測定したものである。不安を間接的に測定するために、行動設定中に動物が生成したボーラスフェカリスの数を数えたが、グループ間で差は見られなかった。
図13G及びHでは、水及び餌の摂取量をそれぞれ分析した。毎日、各ケージに0.300gの餌と200mLの水を入れた。試験終了時(7日目)に餌を計量し、水を測定したところ、両パラメータに差は見られなかった。データを平均値±SEで示した。
【0079】
図14は、C57Bl/6マウスに対するMC408処理の効果を示したものである。一連の福祉試験を実施し、ビヒクル動物と比較した場合のMC408による処理の毒性の兆候を評価した。評価したすべてのパラメータは、正常か異常か、存在するかしないかでスコア化し、すべての動物が同じスコア(MC408及びビヒクル)であったことから、本化合物がマウスの福祉に影響を与えていないことが示唆された。
【0080】
一実施形態では、C57Bl/6マウスの肝機能に対する処理の効果を分析した。
図15は、C57Bl/6マウスの酵素肝機能に対するMC408処理の効果を示したものである。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/TGO)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/TGP)を、(
図15A)雌と(
図15B)雄の血清中で標準的な手法を用いて測定した。血液は実験終了時(7日目)に採取した。化合物で処理した動物とビヒクルで処理した動物の間には、各性別において統計的差異は見られなかった。注目すべきは、MC408処理グループの1匹の雄が、同じグループの他の2匹の動物と比較して、ASTとALTの両方で高いレベルを示したことである。データを平均値±SEで示した。
【0081】
一実施形態では、C57Bl/6マウスに対する化合物処理の効果-第2回目の試験を分析した。
図16は、C57Bl/6マウスに対するMC408処理の効果-第2回目の試験を示す。
図16Aは、実験のタイムラインの概略図である。3ヶ月齢の雌雄の動物を使用し(n=6/グループ/性別)、3mg/KgのMC408又はビヒクル(生理食塩水、Tween80及びメチルセルロース)のいずれかを7日間毎日注射した(腹腔内投与)。この試験では、グループあたりの動物数を増やし、処理の前後に血液を採取する実験を考えた。
図16Bは、マウスの体重を示したものである。実験全体を通して体重をモニターし、各性別内のグループ間で差は見られなかった。データを平均値±SEで示した。
【0082】
一実施形態では、化合物のin vivo治療効率試験をCAMモデルを用いて分析した。
図17は、乳がんHs578t細胞株に対するMC408及びMC421のin vivo治療効果を示す。
図17Aは、in ovo及びex ovo(13日目及び17日目)でのCAMアッセイの代表的な写真(倍率10倍)を示している。
図14Bは、腫瘍成長率を示している。結果は、発生の13日目から17日目までの腫瘍成長率の平均値±SDで表した。****p<0.0001。データは一元配置分散分析検定により分析した。卵は、対照(DMSO 0.5%)、MC408(2xIC
50=0.094μM)又はMC421(2xIC
50=0.070μM)で処理した。
【0083】
一実施形態では、主要なアポトーシスマーカーのウェスタンブロット分析によるアポトーシス経路の検討を通じて、細胞死の誘導をさらに調査した。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(Parp)、熱ショックタンパク質90(Hsp90)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)、p53、BH3相互作用ドメインデスアゴニスト(Bid)及びp21を誘導されたアポトーシスマーカーとして、786-O細胞を化合物でIC
50を用いて24時間及び48時間処理した後に評価した(
図19)。
【0084】
一実施形態では、RTK受容体及びmTOR/PI3K/AKT経路との相互作用を、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、内皮増殖因子受容体(EGFR)、プロテインキナーゼB(AKT)、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、5’アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1(PDK1)、核内κB因子(NF-κB)、p18、c-Myc、Hsp90及び40kDaのプロリンリッチAkt基質(PRAS40)タンパク質の評価を通じてさらに検討した。これらのマーカーは、セディラニブ(腎細胞がんの治療に用いられる血管内皮増殖因子の強力な阻害剤)並びに化合物MC350、MC412、MC415、MC408及びMC421で独自の用量である2μMを用いて6時間処理した後に評価した(
図20)。
【0085】
786-O細胞をいくつかの化合物で処理したところ、リン酸化mTOR及びAKTタンパク質レベルが低下した。さらに、EGFR及びVEGFR2の両方で、対照及びセディラニブと比較してレベルが低下するケースが見られた。試験したいくつかの化合物は、mTOR/PI3K/AKT経路に影響を与え、様々なタンパク質マーカーを阻害する。
【0086】
VEGFR及びEGFRは、血管内皮増殖因子(VEGF)及び内皮(EGF)増殖因子ファミリーに特異的なチロシンキナーゼ(RTK)の受容体であり、腫瘍の成長及び転移に重要な役割を果たす。それらの自己リン酸化は、リン酸化されたチロシンに結合した多くの他のタンパク質による下流の活性化とシグナル伝達を刺激する。これらの下流のシグナル伝達タンパク質は、Akt経路を含むいくつかのシグナル伝達カスケードを開始し、遺伝子発現、細胞の増殖及び移動、脈管形成並びに血管形成を引き起こす。さらに、mTORは細胞の成長、増殖及び代謝を調節する。その活性は、ラパマイシンに感受性の高いmTORC1と、耐性があると考えられているか、高用量を長期間投与した場合にのみ阻害されると考えられているmTORC2の2つの多タンパク質複合体によって制御される。第二世代のデュアルmTOR阻害剤が開発されており、それらの新薬の最も重要な利点は、mTORC2遮断時のAKTリン酸化の大幅な減少と、mTORC1のより良好な阻害である。これらの結果を考慮すると、RTK、mTOR及びAKTの発現が減少すると、上述したすべての機能の主要な調節因子が減少することが示唆される。
【0087】
一実施形態では、CAMモデルを用いて、化合物のin vivo治療有効性を分析した。
図21は、腎がん786-O細胞株に対するMC408及びMC421のin vivo治療効果を示す。
図21Aは、in ovo及びex ovo(13日目及び17日目)のCAMアッセイの代表的な写真(倍率10倍)を示している。
図21Bは、腫瘍成長率を示している。結果は、発生の13日目から17日目までの腫瘍成長率の平均値±SDで表し、対照と比較してp<0.0001とした(統計分析は、一元配置分散分析検定を用いて行った)。卵は、対照(DMSO 0.5%)、MC408(2xIC
50=0.128μM)又はMC421(2xIC
50=0.154μM)で処理した。
【0088】
一実施形態では、セディラニブ、ラパマイシン及びクロメン系化合物の細胞増殖に対する効果を評価した。A498(親及びラパマイシン耐性)細胞並びにCaki-2(親及びセディラニブ耐性)細胞を、IC
50値及び1/2IC
50値で、24時間及び48時間処理した。DNA合成中のBrdUの取り込み能力を測定し、結果を
図23及び24に示した。
図23は、24時間及び48時間処理したA498(親及びラパマイシン耐性)細胞の増殖に対するクロメン系化合物の効果を示している。
図24は、24時間及び48時間の処理後のCaki-2(親及びセディラニブ耐性)細胞の増殖に対するクロメン系化合物の効果を示している。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均値±SDとして示す。
【0089】
概して、クロメンは、特に化合物MC408、MC421及びMC413で、親又は耐性A498細胞のいずれかに対して、濃度及び時間依存的に細胞増殖の有意な減少を誘導した(
図23)。
【0090】
親及び薬剤耐性Caki-2細胞(
図24)では、クロメンMC421、MC350及びMC413は、濃度及び時間依存的に細胞増殖を減少させることができた。
【0091】
一実施形態では、代謝機能との相互作用を、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ヘキソキナーゼ2(HK2)、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)、低酸素誘導因子2α(Hif2α)、モノカルボン酸トランスポーター1(MCT1)、ピルビン酸キナーゼアイソザイム(PKM)、6-ホスホフルクトキナーゼ(PFKL)、熱ショックタンパク質90(Hsp90)及びc-Mycタンパク質の完全型並びにリン酸化型を評価することでさらに調査した。これらのマーカーは、IC
50のラパマイシン及びセディラニブ、化合物MC350、MC413、MC408及びMC421でA498親細胞(P)及び耐性細胞(R)を48時間処理した後に評価した。10%ポリアクリルアミドゲルを用いた溶解液のウェスタンブロッティングによるタンパク質レベルの検出(
図25)。
【0092】
A498細胞を様々な化合物で処理すると、いくつかのタンパク質のレベルが低下した。実際、ラパマイシン耐性細胞では、GAPDH、Hif2α、c-Myc及びHsp90のタンパク質発現レベルが対照細胞及び親細胞に比べて有意に減少した。得られた結果を考慮して、クロメンは、現在利用可能なRCC療法に耐性がある場合でも、がん細胞の代謝反応を変化させる。
【0093】
一実施形態では、CAMモデルを用いて、血管新生を阻害する化合物のin vivo能力を分析した。血管新生への影響を評価するために、滅菌した直径5mmのフィルターディスクを、一定濃度(IC
50値の2倍)のクロメンMC408及びMC421又は0.5%DMSO(対照グループ)の培養液に含浸させ、CAMの血管領域に配置した。
図26は、in ovo及びex ovo(13日目及び17日目)でのCAMアッセイの代表的な写真(倍率10倍)を示している。
【0094】
新規クロメンでの処理の4日後、クロメンMC408及びMC421では、新規血管形成が減少した。さらに、既存の血管の破壊(
図26の黒矢印)が観察され、化合物がCAMモデルの血管新生を阻害していることが示唆された。
【0095】
一実施形態では、マウスモデルを用いて化合物MC408のin vivo治療有効性を分析した。
図27は、TNBC細胞株MDA-MB-231を用いた同所性乳がんマウス異種移植モデルにおけるMC408のin vivo治療効果を示している。MDA-MB-231細胞をNSGマウスの乳腺脂肪体に注射した(1グループあたりn=6又は7)。処理は、移植後3日目から1週間行った。NT=ビヒクル;用量1=3mg/kg;用量2=10mg/kg;用量3=50mg/kg。*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001(NTグループとの比較;二元配置分散分析テューキーの事後検定又はウェルチ補正を伴う対応のないt検定)。
【0096】
クロメンMC408は、同所性乳がん異種移植マウスモデルにおいて、用量依存的に腫瘍体積(
図27A)及び重量(
図27B)を有意に減少させた。50mg/kgの用量で、腫瘍体積及び重量ともに、ビヒクルグループと比較して40%を超える減少を示した。重要なことに、動物は、実験全体を通して、体重減少その他の副作用を示さなかった。
【0097】
一実施形態では、3つのヒト乳がん細胞株Hs578T、MDA-MB-468及びMCF-7並びに正常乳房細胞株MCF-10Aを、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)から入手した。がん細胞株は、10%加熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Gibco)及び1%抗生物質溶液(ペニシリン-ストレプトマイシン、Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地、4.5g/lグルコース(DMEM、Gibco)で培養した。正常細胞株は、5%加熱不活化FBS(Gibco)、1%抗生物質溶液(ペニシリン-ストレプトマイシン、Gibco)、1%ステロイドホルモン(ヒドロコルチゾン、Sigma-Aldrich)、0.1%ペプチドホルモン(インスリン、Sigma-Aldrich)及び0.01%タンパク質複合体(コレラ毒素、Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地:栄養混合物F-12(DMEM/F12、Gibco)で培養した。2つの異なるヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株、HL-60(FAB M2)及びKG-1(赤白血病-FAB M6)及び1つのヒトリンパ芽球性白血病(ALL)細胞株、Jurkat(T細胞型)も使用した。これら3つの細胞株は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DMSZ(登録商標)、ドイツ語でDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)から入手した。細胞は、10%加熱不活化FBS(Biochrom(登録商標)- Merck Millipore)と1%抗生物質/抗有糸分裂混合物(Invitrogen(登録商標))を添加したRPMI1640培地(Biochrom(登録商標)- Merck Millipore)で培養した。3種類のヒト神経膠芽腫(GBM)細胞株モデル、2つの確立された市販の細胞株(U87MG及びGAMG、Rui M. Reisからの贈物)及び1つの初代GBM培養液(GL18)も使用した。GBM細胞は、すべて10%FBSを添加したDMEM(Biochrom-Merck Millipore)で培養した。腎細胞がんの細胞株A498、786-O、Caki-2及びHK2はATCCから入手した。がん細胞株A498はMEM培地(Biochrom(登録商標)-Merck Millipore)で培養し、786-OはRPMI1640培地(Biochrom(登録商標)- Merck Millipore)で培養し、Caki-2はMc Coys培地(Biochrom(登録商標)-Merck Millipore)で培養し、HK2はRPMI1640培地(Biochrom(登録商標)-Merck Millipore)で培養した。すべての培地には、10%の熱不活化FBS(Biochrom(登録商標)-Merck Millipore)と1%の抗生物質/抗有糸分裂混合物(Invitrogen(登録商標))を添加した。すべての細胞は、37℃、5%CO2の加湿インキュベーターで培養した。すべてのアッセイにおいて、DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma-Aldrich)対照を使用した。
【0098】
一実施形態では、細胞生存率アッセイを行った。MCF-7、Hs578T及びMCF-10A細胞を、96マルチウェル培養プレートに、3000細胞/mLで、又はMDA-MB-468の場合は5000細胞/mLで、3連でプレーティングした(100μL/ウェル)。その後、完全培地で18~20時間かけて細胞を付着させた。続いて、新鮮培地で7種類の濃度(0.1~40μM若しくは5~60μM)の化合物又は対照で細胞を処理した。HL-60、KG-1及びJurkat細胞株は、96マルチウェル培養プレートに50.000細胞/100μL/ウェルでプレーティングし、様々な濃度(0.001~2μM)の化合物(又は対照)で処理した。細胞を、GAMGでは2000細胞/ウェル、GL18では4000細胞/ウェル及びU87MGでは6000細胞/ウェルの初期密度で、96ウェルプレートに3連でプレーティングし、18~20時間付着させた。その後、細胞を様々な濃度の化合物(0.005~100μM)又は対照で処理した。A498細胞及び786-O細胞を2000細胞/mL、Caki-2細胞を3000細胞/mL、HK2細胞を2000細胞/mLで96マルチウェル培養プレート(100μL/ウェル)に3連でプレーティングし、完全培地で18~20時間かけて付着させた。その後、細胞を新鮮培地で7種類の濃度(0.1~40μM又は5~60μM)の化合物又は対照で処理した。72時間培養した後、製造元の指示に従ってMTS(Promega)還元アッセイを行い、代謝細胞の生存率を介して生細胞の割合を間接的に評価した。37℃、5%CO2の加湿雰囲気においてMTSとともに1~2時間インキュベートした後、490nmで吸光度を測定した。RCC細胞株については、製造元の指示に従い、スルホローダミンBアッセイを使用した。データを対数変換し、GraphPad Prism 6ソフトウェアを用いて、対照に対する生細胞数を50%に減少させる各化合物の濃度(IC50)を算出した。
【0099】
一実施形態では、MCF-7細胞株及びMCF10A細胞株に対するすべての化合物のIC50値を用い、以下の数式を用いて選択性指数(SI)値を算出した。
(数式)
SI=(IC50正常細胞株-IC50がん細胞株)/IC50がん細胞株
【0100】
SI値>1では、がん細胞株に対する細胞毒性は、非新生物細胞株に対する場合よりも高くなる。
【0101】
一実施形態では、細胞遊走を、in vivoでの創傷治癒中の細胞遊走プロセスを模倣した創傷治癒アッセイによって評価した。この方法は、創傷を作り、細胞単層で創傷をシミュレートし、細胞遊走プロセスの初期及び一定の間隔において画像を撮影して創傷を閉じ、画像を比較して細胞遊走率を定量化することに基づいている。MCF-7及びCaki-2細胞を、6ウェルプレートにそれぞれ2mLあたり9.0x105及び3.0x105の密度でプレーティングし、5%CO2の加湿雰囲気において37℃で一晩増殖させた。200μLのピペットチップを用いて、コンフルエントな細胞の層に2本の創傷をつけた。細胞を500μLのPBSで1回穏やかに洗浄した。MCF-7細胞を、それぞれのIC50、1/2IC50の化合物又は0.5%DMSO(対照)で72時間処理した。0、12、24、48及び72時間後に、特定の創傷部位(各創傷につき4箇所)を写真撮影した。Caki-2細胞については、セディラニブを含む各化合物についてそれぞれのIC50又は0.5%DMSO(対照)を用いて48時間処理を行い、0、12、24、36及び48時間後に写真を撮影した。画像は、オリンパスDP20デジタルカメラシステムを搭載したオリンパスIX51倒立顕微鏡を用いて、100倍の倍率で撮影した。BeWound 1.7.1を用いて5つの移動距離の評価を行い、GraphPad Prism 6ソフトウェアを用いて、対照に対して正規化した細胞遊走の割合をプロットした。各化合物について3回の独立した実験を行った。異なるグループ間の差の有意性は、スチューデントのt検定で判定した。
【0102】
一実施形態では、増殖アッセイを行った。786-O細胞を、96ウェルプレートに7000細胞/10μlの密度でプレーティングし、5%CO2加湿雰囲気において37℃で一晩インキュベートした。その後、接着細胞を、IC50又は1/2IC50濃度の化合物MC350、MC408、MC412、MC415、MC409、MC410、MC413及びMC369又は0.5%DMSO(対照)で48時間処理した。インキュベーション後、10μl/ウェルのBrdU標識溶液(最終濃度:40μM BrdU)を加えて細胞を標識した。その後、細胞を16時間再インキュベートして、BrdUがチミジンに代わって増殖細胞のDNAに取り込まれた。標識後、培地を除去して細胞を固定し、200μlのFixDenat溶液とともに室温でインキュベートしてDNAを変性させた。DNAの変性は、取り込まれたBrdUに抗体コンジュゲートが結合するために不可欠である。FixDenatを除去した後、100μlの抗BrdU-POD抗体を室温で90分間インキュベートした。抗BrdU-POD抗体は、新たに合成された細胞DNAに取り込まれたBrdUと結合する。抗体コンジュゲートを除去した後、洗浄液でウェルを3回洗浄した。基質溶液(100μl/ウェル)を添加して免疫複合体を検出し、測光検出に必要な発色が得られるまでプレートを室温でインキュベートした(5~10分)。25μlの1M H2SO4を各ウェルに加え、穏やかに混合することで、基質反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(Tecan Infinite M200)で450nm(参照波長:690nm)の吸光度を測定し、反応生成物を定量した。ブランク試験は、各実験時点において、細胞を使用せず、上記のすべての工程を実行した。少なくとも3回の独立した実験(4連)の結果を、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて評価した。
【0103】
一実施形態では、タンパク質抽出及びウェスタンブロット分析を行った。MCF-7細胞及びHs578t細胞をT25フラスコで、786-O細胞を6ウェルプレートで増殖させ、細胞が70~80%コンフルエントに達したときに、細胞をそれぞれのIC50値の化合物で、又は0.5%DMSOで処理した(対照)。細胞を24時間及び48時間処理した。特にRTKs及びmTOR経路分析の場合、786-O細胞を2時間飢餓状態にした後、独自の用量である2μMのセディラニブ若しくは化合物で処理し、又は0.5%DMSO(対照)で処理した。処理後、接着細胞及び浮遊細胞を掻き集め、2000rpm、4℃で10分間遠心分離した。ペレットをPBSに再懸濁し、再び遠心分離した(1200rpm;5分、4℃)。上清を捨て、ペレットを溶解緩衝液(50mM Tris pH7.6-8、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM Na3VO4、10mM NaF、1%NP-40、1%Triton-X100及び1/7プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Sciences))に懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。溶解液を4℃で14000rpm、15分間遠心分離し、上清を回収してDCタンパク質アッセイキット(BioRad)を用いてタンパク質濃度を測定した。
【0104】
簡単に説明すると、各サンプルの総タンパク質30μgを10%、12%又は15%のポリアクリルアミドゲル(100V)で分離した後、ニトロセルロース膜に移した(100V、30分間)。この膜を1XTBS中の5%乳で60分間ブロックした後、特異的一次抗体(ウサギ抗PARP抗体(Cell Signaling、#9542)、1:1000 5%乳;マウス抗カスパーゼ9抗体(Cell Signaling、#9508)、1:500 5%乳;ウサギ抗カスパーゼ3抗体(Cell Signaling、#9665)、1:500 5%乳;マウス抗Bax抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-7480)、1:500 5%乳;マウス抗Bax抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-8392)、1:500 5%乳;ウサギ抗Bim抗体(Cell Signaling、#2933)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗Bid抗体(Cell Signaling、#2002)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗KDM4C抗体(Abcam、ab27532)、1:2000 5%BSA;ラット抗Hsp90抗体(Calbiochem、カタログ#386041)、1:500 5%BSA;ウサギ抗c-Myc抗体(Cell Signaling、#5605)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗p53抗体(Cell Signaling、#2527)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-p53抗体(Cell Signaling、#2521)、1:500 5%BSA;ウサギ抗p21抗体(Cell Signaling、#2947)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗JNK抗体(Cell Signaling、#92525)、1:500 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-JNK抗体(Cell Signaling、#46685)、1:500 5%BSA;ウサギ抗mTOR抗体(Cell Signaling、#2983)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-mTOR抗体(Cell Signaling、#5536)、1:500 5%BSA;ウサギ抗PRAS40抗体(Cell Signaling、#2691)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗VEGFR2抗体(Cell Signaling、#2479)、1:500 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-VEGFR2(Tyr1175)抗体(Cell Signaling、#2478)、1:500 5%BSA;ウサギ抗EGFR抗体(Cell Signaling、#4267)、1:1500 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-EGFR(Tyr1068)抗体(Cell Signaling、#2234)、1:1500 5%BSA;マウス抗ホスホ-NF-κB p65(Ser536)抗体(Cell Signaling、#3036)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗AMPKα抗体(Cell Signaling、#2532)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-AMPKα抗体(Thr172)(Cell Signaling、#2535)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗AKT抗体(Cell Signaling、#4691)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-AKT(Thr308)抗体(Cell Signaling、#13038)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗PTEN抗体(Cell Signaling、#9559)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-PTEN(Ser380)抗体(Cell Signaling、#9551)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-PDK1(Ser241)抗体(Cell Signaling、#3438)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-p38(Thr180/Tyr182)抗体(Cell Signaling、#4511)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗p44/42 MAPK(Erk1/2)抗体(Cell Signaling、#4695)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗ホスホ-p44/42 MAPK(Thr202/Tyr204)(ホスホ-Erk1/2)抗体(Cell Signaling、#4370)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗β-チューブリン抗体(Abcam、ab6046)、1:10000 5%BSA;マウス抗GAPDH抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-32233)、1:1000 5%BSA;マウス抗HK2(Abcam、ab104836)、1:1000 5%BSA;マウス抗LDHA抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-137243)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗Hif2α抗体(Cell Signaling、#36169)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗MCT1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-365501)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗PKM(Abcam、ab38237)、1:1000 5%BSA;ウサギ抗PFKL(Abcam、ab37583)、1:1000 5%BSA及びマウス抗β-アクチン抗体(Santa Cruz Biotechnology、#E1314)、1:500 5%乳)とともに4℃で一晩インキュベートした。0.1%Tween 20で5分間(2回)、さらに15分間(1回)洗浄した後、ブロットをそれぞれの二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした(Apoptosis抗体サンプラーキット-Cell Signaling(#9915):ヤギ抗ウサギIgG-HRP(7074)及びウマ-抗マウスIgG-HRP(7076)二次抗体、1:2000 5%乳、Cell Signaling;及びウサギ抗ラットIgG-HRP二次抗体(Abcam、ab6734)、1:30000、5%BSA)。TBS/0.1%Tween 20で5分間(2回)、さらに15分間(1回)洗浄した後、ChemiDoc XRS+システム(BioRad)で化学発光WesternBright(商標)シリウスキット(Advansta)を用いて免疫反応バンドを検出した。免疫ブロットの定量は、Quantity One 4.6.9で行った。
【0105】
一実施形態では、フローサイトメトリーによる細胞周期分布を行った。MCF-7細胞、Hs578t細胞及び786-O細胞を6ウェル培養プレートに播種した。完全DMEM(MCF-7及びHs578t細胞用)並びに完全RPMI(786-O細胞用)培地中で18~20時間かけて細胞を付着させ、IC50濃度の試験化合物又は0.5%DMSO(対照)で12時間及び24時間処理した。各実験は3連で行った。浮遊細胞と接着細胞を遠心分離で集めて合わせ、冷エタノール(70%)で固定した。細胞をPBSに再懸濁した。遠心分離して上清を除去した後、PBS、PI(50μg/mL、P1304MP、Invitrogen)、リボヌクレアーゼA(20mg/mL、12091-021、Invitrogen)及びTritonX100を含む溶液に再懸濁した。最終的に50℃の暗所で1時間インキュベートした後、488nmの励起レーザーによるFACS LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences(登録商標))を用いてPIシグナルを測定し、捕捉し、取得ソフトウェアとしてFACS Divaを使用した。各段階の細胞の割合は、FlowJo 7.6(Tree Star(登録商標))ソフトウェアを用いて分析した。3回の独立した生物学的複製を行った。
【0106】
一実施形態では、MCF-7、Hs578t及び786-O細胞を6ウェル培養プレートに播種し、完全DMEM(MCF-7及びHs578t細胞用)並びに完全RPMI(786-O細胞用)培地中で18~20時間かけて付着させ、フローサイトメトリー分析によってアポトーシスを検出した。細胞を、IC50濃度の試験化合物又は0.5%DMSO(対照)で12時間及び24時間処理した。各実験は3連で行った。浮遊細胞と接着細胞を遠心分離で集めて合わせた。上清を除去した後、1mLの結合緩衝液を加えた。8μLのFITCアネキシンV(556419、BD Pharmingen)及び30μLのPI(50μg/mL、P1304MP、Invitrogen)を細胞ペレットに加えた。サンプルを暗所で15分間、室温でインキュベートした。さらに200μLの結合緩衝液を各サンプルに加えた。PIシグナルは、488nmの励起レーザーによるFACS LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences(登録商標))を用いて測定した。アネキシンVシグナルは、488nmブロッキングフィルター、525nmバンドパスを有する550nmロングパスダイクロイックを通して収集した。シグナルを捕捉し、取得ソフトウェアとしてFACS Divaを使用した。各段階の細胞の割合は、FlowJo 7.6(Tree Star(登録商標))ソフトウェアを用いて分析した。3回の独立した生物学的複製を行った。
【0107】
一実施形態では、ブリストル株N2(アメリカ国立衛生研究所研究基盤プログラムが資金提供(P40 OD010440)をしたCGCによる提供)を用いて、C.エレガンスを用いた食物クリアランスアッセイに基づく各化合物の毒性を試験した。このアッセイは、96ウェルプレートで液体培養中で実施した(Voisineら2007年;Teixeira-Castroら2015年)。最終容量60μLの各ウェルには、卵期の蠕虫約20匹、最終ODを0.6~0.8(595nm)としたOP50菌及び適切な濃度の各化合物を入れた。蠕虫は180rpm/20℃(Shel lab Siシリーズインキュベーター)で連続振とうしながら7日間生育し、マイクロプレートリーダー(Tecan Infinite M200)で吸光度(OD595)を毎日測定した。C.エレガンスの生理機能に対する化合物の影響は、大腸菌の食物懸濁液が消費される速度によってモニターした(
図14)。同齢期の蠕虫の卵を、以下のように「卵調整」によって得た:成虫を次亜塩素酸アルカリ溶液(20%漂白剤、25%1M NaOH)で6分間処理した後、遠心分離し、M9緩衝液で2回洗浄した。その後、卵ペレットをS培地に再懸濁し、適切な卵濃度を得た後、96ウェルプレートに移した。OP50菌は、一晩培養したもの(37℃、180rpm、ルリアブロス培地)を4回の凍結融解サイクルで不活化して調製した。使用前に、OP50を補充したS培地(コレステロール、ストレプトマイシン、ペニシリン及びナイスタチン)に再懸濁した。化合物は100%DMSO(Sigma)で調製し、溶媒毒性を防ぐために1%DMSOの試験濃度まで希釈した。各化合物について、溶解性の問題からMC369(75-10μM)を除いて、いくつかの濃度(150-10μM)で試験を行った。
【0108】
各化合物について、いくつかの濃度を使用し、3~5日目の対応するOD595消費速度(勾配)を算出した。化合物は、96ウェルプレート(PlateLayout.xls、補足情報)で生育した蠕虫において、2回の独立した実験で検証した。統計分析には、両実験のデータを一緒にプールし、IBM SPSSを用いて分散分析(ブラウン・フォーサイスの平均の同等性ロバスト検定)、続いてゲームス-ハウエルの事後検定を適用し、各化合物及び5%DMSO(wt/v)に使用した様々な濃度を対照(1%DMSO(wt/v))と比較した。
【0109】
一実施形態では、C57/Bl6雌雄マウス(n=3/グループ/性別)にMC408(3mg/Kg)又はビヒクル(生理食塩水、Tween80及びメチルセルロース)を毎日7日間腹腔内投与し、マウスモデルにおける化合物の毒性を調べた。マウスの福祉を評価するための一連の試験を毎日実施した。最初の薬物投与の直後に、動物をビデオ撮影し、MC408の即時効果を記録した。垂直運動の回数及び不動時間を記録した。実験の7日間で、1日目に動物のホームケージに一定量の餌と水を加え、7日目に残りの量を測定することにより、水と餌の摂取量を評価した。動的マウススケールを用いて、体重を毎日測定した。水平及び垂直運動を分析し、動物の固有の探索行動を評価した。これらはそれぞれ、升目のラベルが貼られたオープンアリーナで1分間、観察瓶で5分間測定した。さらに、不安の指標として、動物が毎日の行動評価プロトコルを実行している間に、ボーラスフェカリスの数も数えた。実験者は、動物福祉に関連した一連の試験を適用し、(i)体位及び体の彎曲、(ii)自発行動、(iii)呼吸速度、(iv)眼瞼開裂及び反射、(v)脱水を分析するためのスキンピッキング、(vi)グルーミング、(vii)毛の起立、(viii)振戦、(ix)手足の把持及び(x)移動時の反応を測定した。7日目に、動物を安楽死させた。すべての動物を深部麻酔し(塩酸ケタミン(150mg/kg)及びメデトミジン(0.3mg/kg))、生理食塩水(NaCl 0.9%(wt/v))で経心的に灌流した。血液を大静脈から採取し、13.000rpmで10分間遠心分離した後、血漿を新規チューブに移し、標準的な手法で酵素肝機能測定用のさらなる処理を行うまで-80℃で保存した。臓器(腎臓、腸、胃、脳、肝臓、卵巣/精巣)を採取し、4%パラホルムアルデヒドを含むチューブに入れ、パラフィン包埋及び病理分析のためにさらに処理した。
【0110】
一実施形態では、CAMアッセイを行った。受精鶏卵を37℃でインキュベートし、発育3日目に、気室を穿孔した後、卵殻に穴を開けた。この穴をBTKテープで封じ、インキュベーターに戻した。発育9日目に、マトリゲル(10μL)を含むHs578t細胞(2×106細胞)又は786-O細胞(3.5×106細胞)をCAMに載せ、腫瘍を形成させて、卵を軽く叩いてインキュベーターに戻した。発育14日目に、腫瘍の写真を撮った。処理グループには、完全DMEM(Hs578t細胞の場合)又は完全RPMI(786-O細胞の場合)培地中の2×IC50濃度のMC408又はMC421を20μL与え、対照には完全DMEM又はRPMI中の0.5%DMSOを20μL与え、これらを形成された腫瘍に添加した。処置の72時間後(発育17日目)、腫瘍を再びin ovoで撮影した。ニワトリ胚の屠殺は、-80℃で10分間行い、CAMのみを4%のパラホルムアルデヒドで固定した後、再びex ovoで撮影した。
【0111】
一実施形態では、NSG(NOD Scid Gamma)雌マウス(3~6ヶ月)に、0.6x10個6のMDA-MB-231乳がん細胞とマトリゲルの混合物(比率1:1)を乳腺脂肪体に注入した。マウスの処理グループへの無作為的割り当てを(少なくともマウス6匹/グループ)、化合物MC408の3つの独立した用量(用量1=3mg/kg、用量2=10mg/kg及び用量3=50mg/kg)又はビヒクル(PBS1x及びマトリゲル、比率1:1)を使用して移植後3日目から開始し、7日間毎日投与した。マウスは標準的な実験室条件で飼育した。動物の腫瘍サイズ(2つの最大辺を測定し、L1を最大辺、L2を他方の辺とし、式v=3.14xL1xL2/6を適用して算出)を定期的に測定し、記録した。移植後47日目に動物を屠殺し、腫瘍を摘出した。すべての動物実験は、実験動物の飼育及び使用に関するガイドライン(欧州指令2010/63/EU)に準拠して行った。
【0112】
一実施形態では、すべての化学化合物の反応を、0.2mmのシリカゲル60プレート(Macherey-Nagel)及び蛍光指示薬を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターした。それらの暴露には、254nmのランプを備えたUVチャンバー(CN-6 Vilber Lourmat)を使用した。ドライフラッシュクロマトグラフィーは、MN Kieselgel 60(230 ASTM)のシリカゲル(粒子径<0.063mm)を用いて行った。温度を使用する反応には、ホットプレートスターラーIKAMAG RCTを用い、適切な磁気撹拌を行い、特定の手順に従って様々な温度で行った。溶媒は、Buchi RE 11ロータリーエバポレーターを用いて、真空状態及び可変浴温で蒸発させた。NMRスペクトルは、Bruker Avance III(
1H NMRでは400MHz、
13C NMRでは100MHz)で、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d
6)を溶媒として用いて25℃で測定した。化学シフトは、内部標準として残留溶媒ピークを用い、百万分率(ppm)で記録した。IRスペクトルは、FT-IR Bomem MB 104で、ヌジョールマル及びNaClセルを用いて記録した。融点はStuart SMP3装置で測定し、補正しなかった。元素分析はLECO CHNS-932機器で行った。
【化6】
【0113】
2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)並びにクロメン誘導体M1159、M955、M1220、M1221及びM1143は、上述の方法で合成することができる。
【0114】
一実施形態では、3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)の合成を行った。濃HCl(1.1当量)を、1mLのCH3CN中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)(0.150mg;0.79mmol)のオレンジ色溶液に加えた。すぐに沈殿が観察され、反応混合液を室温で10~15分間撹拌した。オレンジ色固体を単純な濾過で分離し、3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)と同定した。オレンジ色固体;収率91%;mp>300℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.93 (s, 3H), 7.12-7.15 (m, 2H), 7.18 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 1H), 7.32 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 11.48 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 56.02, 110.13, 113.52, 117.42, 122.21, 126.39, 130.57, 135.33, 146.55, 161.15; IR (ヌジョールマル) ν 3322, 3192, 1678, 1654, 1600, 1576, 1552, 1460 cm-1; C10H11N2O2Cl.0.2H2Oの分析計算値: C, 52.16; H, 4.96; N, 12.17. 実測値: C, 52.06; H, 4.77; N, 12.40.
【0115】
一実施形態では、クロメノ[2,3-d]イミダゾールを合成した。アルデヒド(1)(1.1~1.7当量)をCH3CN(1~2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.25~0.35mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で24~48時間撹拌した。固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルでHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。
【0116】
一実施形態では、2-(4-フルオロフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC409)を合成した。CH3CN(1.6mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.047mg;0.21mmol)の懸濁液に4-フルオロベンズアルデヒド(0.0375mg;0.30mmol)を加え、60℃で32時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率98%;mp191-192℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.12 (s, 2H), 6.94 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H), 6.86 (dd, J = 7.4, 1.8 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.25-7.32 (m, 2H), 7.86-7.92 (m, 2H), 12.44 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.64, 55.75, 103.64, 110.48, 115.77 (J = 21.7 Hz), 119.31, 121.82, 122.59, 126.29 (J = 8.3 Hz), 127.19 (J = 3.2 Hz), 138.88, 141.25, 148.19, 148.38, 161.78 (J = 243.4 Hz); IR (ヌジョールマル) ν 3348, 1700, 1650, 1608, 1578, 1538, 1500, 1461 cm-1; C17H13N2O2Fの分析計算値: C, 68.91; H, 4.42; N, 9.45. 実測値: C, 68.89; H, 4.65; N, 9.56.
【0117】
一実施形態では、2-(4-ブロモフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC408)を合成した。CH3CN(2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0758mg;0.34mmol)の懸濁液に4-ブロモベンズアルデヒド(0.0737mg;0.40mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M;2mL)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。黄色固体;収率99%;mp215-217℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.11 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 7.01 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.63 (dd, J = 6.8, 2.0 Hz, 2H), 7.80 (dd, J = 6.8, 2.0 Hz, 2H), 12.62 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.61, 55.77, 104.40, 110.54, 119.25, 120.87, 121.81, 122.70, 126.15 (2C), 129.53, 131.76 (3C), 138.51, 141.16, 148.36; IR (ヌジョールマル) ν 3435, 1717, 1639, 1603, 1576, 1536, 1463 cm-1; C17H13N2O2Br.1.9H2Oの分析計算値: C, 52.12; H, 4.29; N, 7.15. 実測値: C, 52.12; H, 3.93; N, 7.37.
【0118】
一実施形態では、2-(2-フルオロフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC407)を合成した。CH3CN(2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0571mg;0.25mmol)の懸濁液に2-フルオロベンズアルデヒド(0.0389mg;0.31mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率82%;mp102-103℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.10 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 2.4 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.26-7.40 (m, 3H), 7.95 (td, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 12.09 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.93, 55.79, 104.61, 110.54, 116.22 (J = 16.1 Hz), 118.22 (J = 8.6 Hz), 119.44, 121.85, 122.67, 124.94 (J = 2.3 Hz), 128.20 (J = 2.2 Hz), 129.61 (J = 6.2 Hz), 134.50, 141.24, 148.15, 148.38, 158.53 (J = 184.5 Hz); IR (ヌジョールマル) ν 3426, 1710, 1631, 1603, 1576, 1536, 1463 cm-1; C17H13N2O2F1.1H2Oの分析計算値: C, 64.60; H, 4.46; N, 8.87. 実測値: C, 64.36; H, 4.46; N, 8.91.
【0119】
一実施形態では、2-(3-フルオロフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC349)を合成した。3-フルオロベンズアルデヒド(0.0482mg;0.39mmol)をCH3CN(1mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0712mg;0.31mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で33時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率100%;mp198-200℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.12 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 7.13 (td, J = 8.6, 2.8 Hz, 1H), 7.44-7.51 (m, 1H), 7.73 (dt, J = 10.4, 2.8 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 12.58 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.60, 55.79, 104.46, 110.56, 110.68 (J = 18.4 Hz), 114.43 (J = 15.8 Hz), 119.24, 120.23 (J = 1.8 Hz), 121.81, 122.68, 130.95 (J = 6.4 Hz), 132.78 (J = 6.4 Hz), 138.39 (J = 2.3 Hz), 141.21, 148.31, 148.38, 162.52 (J = 180.8 Hz); IR (ヌジョールマル) ν 3356, 1707, 1652, 1628, 1522, 1508, 1461 cm-1; C17H13N2O2Fの分析計算値: C, 68.91; H, 4.42; N, 9.45. 実測値: C, 68.98; H, 4.58; N, 9.66.
【0120】
一実施形態では、2-(4-クロロフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC412)を合成した。CH3CN(1mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0417mg;0.18mmol)の懸濁液に4-クロロベンズアルデヒド(0.0291mg;0.21mmol)を加え、懸濁液を60℃で24時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋な生成物と同定した。ベージュ色固体;収率100%;mp212-214℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.12 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.86 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 12.53 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.62, 55.76, 104.18, 110.52, 119.25, 121.80, 122.62, 125.84 (2C), 128.84 (2C), 129.36, 132.18, 138.55, 141.22, 148.31, 148.36; IR (ヌジョールマル) ν 3352, 1700, 1656, 1601, 1532, 1489, 1462 cm-1; C17H13N2O2Clの分析計算値: C, 65.29; H, 4.19; N, 8.96. 実測値: C, 65.47; H, 4.23; N, 8.74.
【0121】
一実施形態では、5-メトキシ-2-フェニル-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC350)を合成した。ベンズアルデヒド(0.0520mg;0.49mmol)をCH3CN(1mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0653mg;0.29mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で33時間撹拌した。固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。ベージュ色固体;収率99%;mp162-162℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.83 (s, 3H), 4.12 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.31 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.86 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 12.43 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.68, 55.77, 110.50, 119.33, 121.83, 122.56, 124.20 (2C), 127.77, 128.75 (2C), 130.50, 139.62, 141.29, 148.23, 148.38; IR (ヌジョールマル) ν 3346, 1702, 1648, 1602, 1526, 1496, 1461cm-1; C17H14N2O2の分析計算値: C, 73.37; H, 5.07; N, 10.07. 実測値: C, 73.58; H, 5.12; N, 10.34.
【0122】
一実施形態では、3-(5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール-2-イル)フェノール(MC359)を合成した。3-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.0427mg;0.35mmol)をCH3CN(1.2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0679mg;0.30mmol)の懸濁液に加え、この懸濁液を60℃で28時間撹拌した。固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋な生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。薄緑色固体;収率94%;mp162-164℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.10 (s, 2H), 6.71 (dq, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 6.85 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.21 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.27-7.30 (m, 2H), 9.55 (s, 1H), 12.33 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.70, 55.75, 110.47, 111.23, 114.99, 115.07, 119.36, 121.84, 122.54, 129.74, 131.77, 139.76, 141.30, 148.10, 148.37, 157.62; IR (ヌジョールマル) ν 3351, 3218, 1702, 1659, 1611, 1523, 1507, 1460 cm-1; C17H14N2O3の分析計算値: C, 69.38; H, 4.79; N, 9.52. 実測値: C, 69.42; H, 4.88; N, 9.56.
【0123】
一実施形態では、4-(5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール-2-イル)フェノール(MC413)を合成した。CH3CN(2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0579mg;0.26mmol)の懸濁液に4-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.0388mg;0.32mmol)を加え、懸濁液を60℃で48時間撹拌した。固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。黄色固体;収率64%;mp245-246℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 4.09 (s, 2H), 6.81 (dd, J = 6.8, 2.0 Hz, 2H), 6.85 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 6.99 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.68 (dd, J = 6.8, 2.0 Hz, 2H), 9.63 (s, 1H), 12.11 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ23.76, 55.75, 102.26, 110.43, 115.48 (2C), 119.45, 121.86 (2C), 122.45, 125.88 (2C), 140.34, 141.36, 147.86, 148.37, 157.44; IR (ヌジョールマル) ν 3338, 3246, 1706, 1645, 1612, 1548, 1503, 1463 cm-1; C17H14N2O3の分析計算値: C, 69.38; H, 4.79; N, 9.52. 実測値: C, 69.39; H, 4.42; N, 9.54.
【0124】
一実施形態では、5-メトキシ-2-(2-メトキシフェニル)-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC411)を合成した。2-メトキシベンズアルデヒド(0.0632mg;0.46mmol)をCH3CN(1mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0780mg;0.34mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で47時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。黄色固体;収率85%;mp188-190℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 3.95 (s, 3H), 4.10 (s, 2H), 6.86 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 6.97-7.04 (m, 2H), 7.13 (dd, J = 8.0, 0.8 Hz, 1H), 7.30 (td, J = 7.7, 2.0 Hz, 1H), 7.99 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 11.63 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 24.30, 55.50, 55.78, 103.05, 110.47, 111.72, 118.44, 119.67, 120.78, 121.91, 122.51, 127.39, 128.95, 137.14, 141.34, 147.76, 148.38, 155.59; IR (ヌジョールマル) ν 3340, 1706, 1659, 1594, 1530, 1506, 1460 cm-1; C18H16N2O3の分析計算値: C, 70.12; H, 5.23; N, 9.09. 実測値: C, 70.44; H, 5.20; N, 9.16.
【0125】
一実施形態では、2,4-ジフルオロ-6-(5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール-2-イル)フェノール(MC410)を合成した。2,4-ジフルオロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.0493mg;0.31mmol)をCH3CN(2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.061mg;0.27mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で36時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。黄色固体;収率49%;mp260-262℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.83 (s, 3H), 4.15 (s, 2H), 6.87 (dd, J = 7.6, 2.4 Hz, 1H), 6.96 (dd, J = 8.2, 2.4 Hz, 1H), 7.04 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.24 (td, J = 10.0, 1.6 Hz, 1H), 7.51 (dt, J = 10.0, 1.6 Hz, 1H), 11.91 (s, 1H), 12.90 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.28, 55.70, 104.31 (dd, J = 20.6, 16.5 Hz), 104.39, 105.38 (dd, J = 18.8, 4.5 Hz), 110.59, 115.36 (dd, J = 7.9, 4.5 Hz), 119.03, 121.71, 123.14, 137.71-137.79 (m), 140.30 (J = 10.2, 4.5 Hz), 140.68, 145.62, 148.29, 150.80 (dd, J = 181.9, 10.0), 153.9 (dd, J = 175.9, 8.8); IR (ヌジョールマル) ν 3348, 3225, 1698, 1651, 1601, 1542, 1461 cm-1; C17H12N2O3F20.8H2Oの分析計算値: C, 59.23; H, 3.72; N, 8.13. 実測値: C, 59.13; H, 3.53; N, 8.42.
【0126】
一実施形態では、2-(4-エトキシフェニル)-5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC415)を合成した。CH3CN(2mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0614mg;0.27mmol)の懸濁液に4-エトキシベンズアルデヒド(0.0403mg;0.30mmol)を加え、懸濁液を60℃で47時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。黄色固体;収率96%;mp215-217℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 2.62 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.84 (s, 3H), 4.12 (s, 2H), 6.87 (dd, J = 7.2, 1.6 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 7.01 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.79 (dd, J = 6.6, 1.6 Hz, 2H), 12.36 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 15.43, 23.73, 27.94, 55.80, 103.30, 110.52, 119.41, 121.87, 122.59, 124.33 (2C), 128.08, 128.16 (2C), 139.87, 141.33, 143.60, 148.40; IR (ヌジョールマル) ν 3342, 1703, 1656, 1610, 1539, 1502, 1460 cm-1; C19H18N2O3の分析計算値: C, 70.81; H, 5.59; N, 8.70. 実測値: C, 70.74; H, 5.67; N, 8.77.
【0127】
一実施形態では、2-ブロモ-6-メトキシ-3-(5-メトキシ-3,9-ジヒドロクロメノ[2,3-d]イミダゾール-2-イル)フェノール(MC416)を合成した。2-ブロモ-3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(0.0780mg;0.34mmol)をCH3CN(1mL)中の3-アミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-2-イミニウムクロリド(5)(0.0607mg;0.27mmol)の懸濁液に加え、懸濁液を60℃で46時間撹拌した。この固体を濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。1H NMRスペクトルにHClの混入が観察された場合、固体をNaHCO3(0.05M)水溶液で洗浄し、濾過し、水で洗浄すると、純粋生成物が得られた。ベージュ色固体;収率71%;mp160-161℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.82 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 4.08 (s, 2H), 6.85 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 6.99 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03-7.08 (m, 2H), 9.55 (s, 1H), 11.97 (s, 1H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 23.82, 55.74, 56.23, 102.75, 109.30, 110.43, 110.54, 119.46, 121.38, 121.84, 122.46, 125.26, 139.04, 141.33, 144.05, 147.52, 148.29, 148.37; IR (ヌジョールマル) ν 3338, 3212, 1703, 1647, 1535, 1497, 1461 cm-1; C18H15N2O4Br1.8H2Oの分析計算値: C, 49.61; H, 3.86; N, 6.43. 実測値: C, 49.68; H, 3.91; N, 6.43.
【0128】
一実施形態では、5,5’-ジメトキシ-2,2’-ジフェニル-1,1’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾールを合成した。CH3CN(1-2mL)中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)の溶液にアルデヒド(1)(1-1.2当量)を加え、溶液を80℃で7-24時間撹拌した。固体生成物が徐々に沈殿し始めたため、濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物8と同定した。
【0129】
一実施形態では、2,2’-ビス(4-フルオロフェニル)-5,5’-ジメトキシ-1,1’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC406)を合成した。CH3CN(1mL)中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)(0.0962mg;0.51mmol)の溶液に4-フルオロベンズアルデヒド(0.0629mg;0.51mmol)を加え、溶液を80℃で7時間撹拌した。固体生成物が徐々に沈殿し始めたため、濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率18%;mp272-274℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.68 (s, 6H), 4.89 (s, 2H), 5.80 (dd, J = 7.8, 2.0 Hz, 2H), 6.71 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 6.80 (dd, J = 8.7, 1.6 Hz, 2H), 7.32-7.49 (m, 4H), 7.98-8.03 (m, 4H), 12.57 (s, 2H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 41.21, 55.64, 105.81, 111.00, 115.83 (2C, J = 21.2), 119.62, 120.44, 122.01, 126.80 (2C, J = 8.0), 127.12, 139.98, 141.90, 147.62, 150.12, 162.00 (J = 243.8); IR (ヌジョールマル) ν 3348, 1700, 1650, 1608, 1538, 1500, 1461 cm-1; C34H24N4O4F21.2H2Oの分析計算値: C, 64.23; H, 4.85; N, 8.82. 実測値: C, 64.21; H, 4.79; N, 8.80.
【0130】
一実施形態では、2,2’-ビス(4-ブロモフェニル)-5,5’-ジメトキシ-1,1’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC421)を合成した。CH3CN(1.5mL)中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)(0.0705mg;0.37mmol)の溶液に4-ブロモベンズアルデヒド(0.069mg;0.37mmol)を加え、この溶液を80℃で8時間撹拌した。固体生成物が徐々に沈殿し始めたため、濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率32%;mp266-268℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.68 (s, 6H), 4.89 (s, 2H), 5.78 (dd, J = 7.8, 1.6 Hz, 2H), 6.71 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 6.80 (dd, J = 8.2, 2.0 Hz, 2H), 7.71 (dd, J = 6.6, 1.4 Hz, 2H), 7.91 (dd, J = 6.9, 1.6 Hz, 2H), 12.69 (s, 2H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 41.24, 55.65, 106.33, 111.06, 119.52, 120.41, 121.14, 122.06, 126.58, 129.65, 131.80, 139.70, 141.86, 147.62, 150.25; IR (ヌジョールマル) ν 3352, 1703, 1654, 1610, 1543, 1508, 1461cm-1; C34H24N4O4Br2の分析計算値: C, 57.32; H, 3.40; N, 7.86. 実測値: C, 57.78; H, 3.37; N, 7.88.
【0131】
一実施形態では、2,2’-ビス(2-フルオロフェニル)-5,5’-ジメトキシ-1,1’,9,9’-テトラヒドロ-9,9’-ビクロメノ[2,3-d]イミダゾール(MC369)を合成した。2-フルオロベンズアルデヒド(0.0446mg;0.36mmol)をCH3CN(2mL)中の2-イミノ-8-メトキシ-2H-クロメン-3-アミン(4)(0.0590mg;0.31mmol)の溶液に加え、この溶液を80℃で24時間撹拌した。固体生成物が徐々に沈殿し始めたため、濾過し、CH3CNで洗浄し、純粋生成物と同定した。ベージュ色固体;収率15%;mp276-278℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.69 (s, 6H), 5.00 (s, 2H), 5.91 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 2H), 6.75 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 6.82 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 2H), 7.31-7.48 (m, 6H), 7.99 (td, J = 5.7, 1.6 Hz, 2H), 11.88 (s, 2H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 41.08, 55.65, 106.63, 110.99, 116.28 (J = 21.3), 118.24 (J = 11.4), 120.02, 120.45, 122.06, 124.98, 128.60 (J = 2.8), 129.98 (J = 8.2), 135.58, 141.90, 147.62, 149.93, 158.73 (J = 246.6); IR (ヌジョールマル) ν 3438, 3447, 1637, 1575, 1614, 1575, 1530, 1469 cm-1; C34H24N4O4F2.0.8H2Oの分析計算値: C, 67.51; H, 4.23; N, 9.26. 実測値: C, 67.58; H, 4.30; N, 9.11.
【0132】
本書で使用される「含む」という用語は、記載された特徴、整数、工程、構成要素の存在を示すことを意図しているが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらのグループの存在若しくは追加を排除するものではない。
【0133】
当業者であれば、特に明記しない限り、記載された工程の特定の順序は例示的にすぎず、本開示から逸脱することなく変更することができることが理解されるであろう。このように、別段の記載がない限り、記載された工程は順序付けられていないため、可能な場合には、任意の便利な又は望ましい順序で実行することができることを意味する。
【0134】
要素又は特徴の単数形が特許請求の範囲の明細書で使用されている場合、特に除外されない限り、その複数形も含まれ、その逆も同様である。例えば、「化合物」又は「前記化合物」という用語には、複数形の「化合物」又は「前記化合物」も含まれ、その逆も同様である。特許請求の範囲において、「a」、「an」及び「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ若しくは複数を意味することがある。グループの1つ又は複数のメンバー間に「又は」を含む請求項又は記述は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、複数若しくはすべてが所定の製品又はプロセスに存在し、採用され、又はその他の点で関連性があれば満たされると考えられる。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、所定の製品又はプロセスに存在し、採用され、又はその他の点で関連する実施形態を含む。また、本発明は、グループのメンバーのうちの複数、又はすべてが、所定の製品又はプロセスに存在し、採用され、又はその他の点で関連する実施形態を含む。
【0135】
さらに、本発明は、1つ若しくは複数の請求項から、又は本明細書の関連部分から、1つ若しくは複数の限定、要素、条項、説明用語などを別の請求項に導入するすべての変形、組み合わせ及び順列を包含することを理解されたい。例えば、他の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1つ又は複数の制限を含むように変更することができる。
【0136】
さらに、特許請求の範囲に組成物が記載されている場合、別段の指示がない限り、又は矛盾若しくは不整合が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている任意の目的に組成物を使用する方法が含まれ、本明細書に開示されている任意の製造方法又は当業者に知られている他の方法に従って組成物を製造する方法が含まれることを理解されたい。
【0137】
範囲が指定されている場合、端点も含まれる。さらに、別段の指示がない限り、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から別段に明らかでない限り、範囲として表現されている値は、文脈が明確に指示しない限り、本発明の異なる実施形態において、範囲の下限の単位の10分の1まで、記載の範囲内の任意の特定の値を想定することができることを理解されたい。また、別段の指示がない限り、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から別段に明らかでない限り、範囲として表現される値は、所定の範囲内の任意のサブ範囲を想定することができ、サブ範囲の端点は、範囲の下限の単位の10分の1と同程度の精度で表現されることを理解されたい。
【0138】
本開示は、記載された実施形態に何ら限定されるものではなく、当業者であれば、その変更に多くの可能性を予見するであろう。
【0139】
上述の実施形態は、組み合わせ可能である。
【0140】
(参照)
(1) https://www.uicc.org/new-global-cancer-data-globocan-2018 (02/01/2019)
(2)http://gco.iarc.fr (02/01/2019)
(3)Bao, B; Mitrea, C.; Wijesinghe, P.; Marchetti, L.; Girsch, E.; Farr, R.; Boerner, J.; Mohammad, R.; Dyson, G.; Terlecky, S. and Bollig-Fischer, A. Treating triple negative breast cancer cells with erlotinib plus a select antioxidant overcomes drug resistance by targeting cancer cell heterogeneity. Scientific Reports 2017, 7, 44125.
(4) Costa, M.; Dias, T.; Brito, A. And Proenca, F. Biological importance of structurally diversified chromenes. Eur. J. Med. Chem, 2016, 123, 487-507.
(5)Costa, M.; Rodrigues, A. I.; Proenca, F. Synthesis of 3-aminochromenes: the Zincke reaction revisited. Tetrahedron 2014, 70 (33), 4869.
(6)Costa, M.; Proenca, F. 2-Aryl-1,9-dihydrochromeno[3,2-d]imidazoles: a facile synthesis from salicylaldehydes and arylideneaminoacetonitrile. Tetrahedron 2011, 67 (10), 1799.