(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】施工方法および継手構造体
(51)【国際特許分類】
F16L 21/00 20060101AFI20250425BHJP
F16L 55/16 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
F16L21/00 C
F16L21/00 F
F16L55/16
(21)【出願番号】P 2023137538
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508367315
【氏名又は名称】キンキ道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高内 義章
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-150528(JP,U)
【文献】特開平05-052278(JP,A)
【文献】特開2002-181260(JP,A)
【文献】特開昭57-051419(JP,A)
【文献】実開昭52-023719(JP,U)
【文献】実開昭63-178684(JP,U)
【文献】特開2003-253721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00
F16L 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された第1管の第1開口と、固定された第2管の第2開口とを接続するための継手構造体を設ける施工方法であって、
前記第1管と前記第2管とは、前記継手構造体の施工前に既に固定されており、
前記継手構造体は、前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆う、複数のリング部材が互いに係合して積層する積層リング部材を備え、
前記複数のリング部材である第1リング部材と第2リング部材と
複数の第3リング部材とを準備する準備工程と、
前記第1リング部材を前記第1管と前記第2管との隙間に挿入し、前記第1リング部材を前記第1管の周囲を囲む位置に配置する第1挿入工程と、
前記第2リング部材を前記第1管と前記第2管との隙間に挿入し、前記第2リング部材を前記第2管の前記第2開口を囲む位置に配置する第2挿入工程と、
前記複数の第3リング部材のそれぞれを前記第1管と前記第2管との隙間に挿入し、前記第1リング部材が配置される位置と前記第2リング部材が配置される位置との間の位置に前記複数の第3リング部材を配置して前記積層リング部材の長さを調整する第3挿入工程と、
前記積層リング部材が前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆うように、前記複数のリング部材を互いに係合させる係合工程と、を含む施工方法。
【請求項2】
前記第1挿入工程の前に、繋がった管の一部を除去することにより、前記第1管と前記第2管とに分ける除去工程を含む、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記係合工程の後に、前記第1管の一部、前記第2管の一部、および前記積層リング部材の周囲を熱収縮フィルムで被覆する被覆工程をさらに含む、請求項1または2に記載の施工方法。
【請求項4】
第1管の第1開口と、第2管の第2開口とを接続するための継手構造体であって、
前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆う、複数のリング部材が互いに係合して積層する積層リング部材を備え、
前記複数のリング部材は、前記第1開口の周囲を囲う第1リング部材と、前記第2開口の周囲を囲う第2リング部材と、を含み、
前記第2リング部材は、前記第2管を挿入可能な部分と、内側面から径方向内側に延び、前記第2管が突き当たる内側延伸部とを有し、
前記第1リング部材の全体は、前記第1管を挿入可能であり、
前記複数のリング部材は、前記第1リング部材と前記第2リング部材との間に位置する少なくとも1つ以上の第3リング部材をさらに含む、継手構造体。
【請求項5】
前記積層リング部材における前記第1リング部材の外径と前記第2リング部材の外径と前記第3リング部材の外径とは同じである、請求項4に記載の継手構造体。
【請求項6】
前記複数のリング部材のそれぞれは、他のリング部材と螺合するためのネジ山を有する、請求項4または5に記載の継手構造体。
【請求項7】
第2管と前記第2リング部材との間をシールする第2パッキンをさらに備える、請求項4または5に記載の継手構造体。
【請求項8】
第1管と前記第1リング部材との間をシールする第1パッキンをさらに備える、請求項4または5に記載の継手構造体。
【請求項9】
前記第1リング部材の最小内径は、前記第2リング部材の前記内側延伸部の内径より大きい、請求項4または5に記載の継手構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造体の施工方法および継手構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路(高架道路)等において路面に降った雨水等を、床版に埋設され床版の下面から下方に延伸する鋼管と、橋脚に沿って設置され当該鋼管と接続される塩ビ(塩化ビニル)管とにより排水する排水構造が知られている。ここで、塩ビ管の上端の内径は、鋼管の下端の外径よりわずかに大きく、塩ビ管の上端が鋼管の下端を覆うことにより、塩ビ管は鋼管に接続される。引用文献1には、高速道路における排水構造として、床版の下面から下方に延伸する桝本体と、当該桝本体の下部と接続する管とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速道路における排水構造において、典型的に、上記鋼管と上記塩ビ管との接続部に亀裂等の欠陥が生じやすい。この原因としては、塩ビ管の紫外線による硬化、鋼管の錆びによる膨張、および床版に埋設される鋼管と橋脚に沿って設置される塩ビ管との振動の差異等が挙げられる。
【0005】
そして、従来の排水構造においては、当該接続部に欠陥が生じた場合、当該接続部を含む塩ビ管全体を交換しなければならない。しかしながら、橋脚に沿って設置される塩ビ管は、高速道路の構造に対応した固有の形状のものであることが多い。このような固有の形状を有する塩ビ管を製造するには多大な時間およびコスト、並びに作業者の熟練を要する。したがって、従来の排水構造においては鋼管および塩ビ管の接続部の補修を容易に行えないといった問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、2つの管の接続部の補修を容易にすることができる継手構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る施工方法は、固定された第1管の第1開口と、固定された第2管の第2開口とを接続するための継手構造体を設ける施工方法であって、前記継手構造体は、前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆う、複数のリング部材が互いに係合して積層する積層リング部材を備え、前記複数のリング部材である第1リング部材と第2リング部材とを準備する準備工程と、前記第1リング部材を前記第1管と前記第2管との隙間に挿入し、前記第1リング部材を前記第1管の周囲を囲む位置に配置する第1挿入工程と、前記第2リング部材を前記第1管と前記第2管との隙間に挿入し、前記第2リング部材を前記第2管の前記第2開口を囲む位置に配置する第2挿入工程と、前記積層リング部材が前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆うように、前記複数のリング部材を互いに係合させる係合工程と、を含む。
【0008】
本発明の態様2に係る施工方法は、上記態様1において、前記係合工程の後に、前記第1管の一部、前記第2管の一部、および前記積層リング部材の周囲を熱収縮フィルムで被覆する被覆工程をさらに含んでもよい。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の態様3に係る継手構造体は、第1管の第1開口と、第2管の第2開口とを接続するための継手構造体であって、前記第1開口と前記第2開口との隙間を覆う、複数のリング部材が互いに係合して積層する積層リング部材を備え、前記複数のリング部材は、前記第1開口の周囲を囲う第1リング部材と、前記第2開口の周囲を囲う第2リング部材と、を含み、前記第2リング部材は、前記第2管を挿入可能な部分と、内側面から径方向内側に延び、前記第2管が突き当たる内側延伸部とを有し、前記第1リング部材の全体は、前記第1管を挿入可能である。
【0010】
本発明の態様4に係る継手構造体では、上記態様3において、前記複数のリング部材は、前記第1リング部材と前記第2リング部材との間に位置する少なくとも1つ以上の第3リング部材をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明の態様5に係る継手構造体では、上記態様3または4において、前記複数のリング部材のそれぞれは、他のリング部材と螺合するためのネジ山を有してもよい。
【0012】
本発明の態様6に係る継手構造体は、上記態様3から5のいずれかにおいて、第2管と前記第2リング部材との間をシールする第2パッキンをさらに備えてもよい。
【0013】
本発明の態様7に係る継手構造体は、上記態様3から6のいずれかにおいて、第1管と前記第1リング部材との間をシールする第1パッキンをさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の態様8に係る継手構造体では、上記態様3から7のいずれかにおいて、前記第1リング部材の最小内径は、前記第2リング部材の前記内側延伸部の内径より大きくてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、2つの管の接続部の補修を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る継手構造体の構成を示す矢視断面図である。
【
図2】上記継手構造体の積層リング部材における下部リング部材および上記継手構造体の第2パッキンの詳細な構成を示す断面図である。
【
図3】上記継手構造体の施工方法の流れを示す模式図である。
【
図4】上記継手構造体の施工方法の流れを示す模式図である。
【
図5】上記継手構造体の施工方法の流れを示す模式図である。
【
図6】上記継手構造体の施工方法の流れを示す模式図である。
【
図7】上記継手構造体の施工方法の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
(排水構造100の概略構成)
図1は、高速道路(高架道路)等において路面に降った雨水等を排水するための排水構造100に適用される継手構造体10の構成を示す矢視断面図である。排水構造100は、第1管1と第2管2と継手構造体10とを備える。第1管1は、床版に埋設され床版の下面から下方に延伸する管部材である。第1管1は、典型的には、鋼管である。第2管2は、橋脚に沿って設置される管部材である。第2管2は、典型的には、塩ビ管である。なお、
図1では、第1管1の一部(床版の下面から下方に延伸する部分)および第2管の一部(上端部)のみを示している。
【0018】
第1管1は、下方に向かう第1開口1aを有する。また、第2管2は、上方に向かう第2開口2aを有する。第1開口1aと第2開口2aとは、所定の間隔を空けて離間している。
【0019】
第1管1および第2管2はそれぞれ、従来の排水構造における、固定された既存の第1管1Aおよび固定された既存の第2管2Aに基づいたものである(
図3参照)。具体的には、第1管1は、従来の(補修前の)排水構造における既存の第1管1Aそのものである。一方、第2管2は、従来の(補修前の)排水構造における既存の第2管2Aから既存の第1管1Aとの接続部であるスリーブ部21Aを取り除いたものである。スリーブ部21Aの内径は、既存の第1管1Aの外径よりわずかに大きく、スリーブ部21Aが既存の第1管1Aの下端を覆うことにより、既存の第2管2Aは既存の第1管1Aに接続されている。
【0020】
例えば、高速道路等において設けられる従来の排水構造において、既存の第1管1Aは、床版に埋設され床版の下面から下方に延伸する鋼管である。また、既存の第2管2Aは、橋脚に沿って設置され当該既存の鋼管と接続される塩ビ管である。このような高速道路等において設けられる従来の排水構造においては特に、床版に埋設される鋼管と橋脚に沿って設置される塩ビ管との振動の差異を起因として、スリーブ部21Aにおける欠陥が生じやすい。
【0021】
(継手構造体10の詳細な構成)
継手構造体10は、第1管1の第1開口1aと第2管2の第2開口2aと接続するための部材である。
図1に示すように、継手構造体10は、積層リング部材3と第1パッキン4と第2パッキン5とを備える。
【0022】
積層リング部材3は、正面視(第1管1および第2管2の外側面の法線方向から見た場合)において、第1開口1aと第2開口2aとの隙間を覆う。言い換えると、積層リング部材3の上端は、第1開口1aより上側にあり、積層リング部材3の下端は、第2開口2aより下側にある。また、積層リング部材3は、複数のリング部材が互いに係合して積層している。複数のリング部材のそれぞれの高さは、第1開口1aと第2開口2aとの間の高さ(隙間)より小さい。これは、
図4~
図5を参照して後述するように、複数のリング部材のそれぞれを第1管1と第2管2との隙間に挿入するためである。積層リング部材3の材質は、例えば塩ビ等の樹脂、またはステンレス鋼(SUS)等の金属である。
【0023】
このような構成によれば、第1管1と第2管2との接続を、第1管1および第2管2とは別部材の継手構造体10によって実現できる。そのため、既存の第2管2Aのスリーブ部21Aに欠陥が生じた場合、当該スリーブ部21Aを取り除き、第1管1と第2管2との間に継手構造体10を設けることにより、第1管1および第2管2の接続部の補修を実現できる。すなわち、既存の第2管2Aのスリーブ部21Aに欠陥が生じた場合、従来のように既存の第2管2A全体を交換する必要がない。したがって、第1管1および第2管2の接続部の補修を容易に行うことができる。
【0024】
複数のリング部材は、少なくとも、第1開口1aの周囲を囲う上部リング部材31(第1リング部材)と、第2開口2aの周囲を囲う下部リング部材34(第2リング部材)とを含む。複数のリング部材は、上部リング部材31と下部リング部材34との間に位置する少なくとも1つ以上の中間部リング部材(第3リング部材)をさらに含んでもよい。
図1に示す一例では、少なくとも1つ以上の中間部リング部材は、上部リング部材31側の第1中間部リング部材32と、下部リング部材34側の第2中間部リング部材33とからなる。すなわち、
図1に示す一例では、積層リング部材3は、4つのリング部材からなる。
【0025】
下部リング部材34は、第2管2を挿入可能な部分(後述する第2内側延伸部343および下方延伸部344)と、内側面から径方向内側に延び、第2管2が突き当たる第1内側延伸部342(内側延伸部)とを有する。すなわち、第1内側延伸部342は、少なくとも第2管2の上縁部まで延伸し、第2管2に載置される。第1内側延伸部342における下部リング部材34の内径は、第2管2の外径より小さい(
図1に示す一例では、第2管2の内径と略等しい)。また、下部リング部材34は、第1内側延伸部342の下に、内側面から径方向内側に延びる第2内側延伸部343を有する。第2内側延伸部343における下部リング部材34の内径は、第2管2の外径と略同じか、第2管2の外径よりわずかに大きい。このような構成によれば、積層リング部材3は、第2管2に確実に支持される。
【0026】
一方、上部リング部材31の全体は、第1管1を挿入可能である。すなわち、上部リング部材31の最小内径は、第1管1の外径より大きい。上部リング部材31の最小内径は、下部リング部材34の第1内側延伸部342の内径より大きくてもよい。このような構成によれば、互いに略同じ外径を有する第1管1および第2管2を接続することができる。また例えば、第1管1と上部リング部材31との間には、隙間が形成される。そのため、第2管2に対する第1管1の左右方向の振動を当該隙間により吸収することができる。したがって、第2管2に対する第1管1の左右方向の振動によって欠陥が生じる可能性を低減できる。なお、当該隙間は、後述する第1パッキン4によりシールされる。
【0027】
複数のリング部材のそれぞれは、他のリング部材と螺合するためのネジ山を有する。詳細には、下部リング部材34を除く複数のリング部材のそれぞれは、下端の側面において第1ネジ山(例えば雄ネジ山)を有する。また、上部リング部材31を除く複数のリング部材のそれぞれは、上端の側面において第2ネジ山(例えば雌ネジ山)を有する。各第1ネジ山が対応する第2ネジ山と噛み合うことにより、複数のリング部材は、互いに係合する。止水性向上のため、第1ネジ山と第2ネジ山とが噛み合う箇所に接着剤を充填させてもよい。
【0028】
図1に示す一例では、上部リング部材31は、下端312において他の部分よりも外径が小さくなるように形成されている。下端312の外側面には、第1ネジ山312aが形成されている。第1中間部リング部材32は、上端321において他の部分よりも内径が大きくなるように形成されている。上端321の内側面には、上部リング部材31の第1ネジ山312aと噛み合う第2ネジ山321aが形成されている。第1ネジ山312aが第2ネジ山321aと噛み合うことにより、上部リング部材31は、第1中間部リング部材32に係合する。なお、下端312の内側面に、第1ネジ山312aが形成され、上端321の外側面に、第2ネジ山321aが形成されてもよい。
【0029】
同様に、第1中間部リング部材32は、下端322において他の部分よりも外径が小さくなるように形成されている。下端322の外側面には、第1ネジ山322aが形成されている。第2中間部リング部材33は、上端331において他の部分よりも内径が大きくなるように形成されている。上端331の内側面には、第1中間部リング部材32の第1ネジ山322aと噛み合う第2ネジ山331aが形成されている。第1ネジ山322aが第2ネジ山331aと噛み合うことにより、第1中間部リング部材32は、第2中間部リング部材33に係合する。
【0030】
同様に、第2中間部リング部材33は、下端332において他の部分よりも外径が小さくなるように形成されている。下端332の外側面には、第1ネジ山332aが形成されている。下部リング部材34は、上端341において他の部分よりも内径が大きくなるように形成されている。上端341の内側面には、第2中間部リング部材33の第1ネジ山332aと噛み合う第2ネジ山341aが形成されている。第1ネジ山332aが第2ネジ山341aと噛み合うことにより、第2中間部リング部材33は、下部リング部材34に係合する。
【0031】
このような構成によれば、作業者は、複数のリング部材のそれぞれを他のリング部材に対して軸周りに回転させるだけで容易に、複数のリング部材のそれぞれを他のリング部材に係合させることができる。
【0032】
上部リング部材31の、内側面の上下方向における中間部には、周方向に沿って溝311が形成されている。そして、第1管1と上部リング部材31の溝311との間には、リング状の第1パッキン4が設けられている。第1パッキン4は、第1管1と上部リング部材31との間をシールする。第1パッキン4は、ゴム等の柔軟な材料を含む。このような構成によれば、第1パッキン4により、上部リング部材31を第1管1に固定しつつ、第1管1と上部リング部材31との間から排水が漏れるのを回避できる(すなわち、積層リング部材3の止水性を向上できる)。
【0033】
下部リング部材34は、第2内側延伸部343から下方に延伸する下方延伸部344を有する。下方延伸部344における下部リング部材34の内径は、第2管2の外径より大きい。すなわち、第2管2と下部リング部材34の下方延伸部344との間には、隙間が形成されている。そして、第2管2と下部リング部材34の下方延伸部344との間には、リング状の第2パッキン5が設けられている。第2パッキン5は、第2管2と下部リング部材34との間をシールする。第2パッキン5は、ゴム等の柔軟な材料を含む。このような構成によれば、第2パッキン5により、下部リング部材34を第2管2に固定しつつ、第2管2と下部リング部材34との間から排水が漏れるのを回避できる(すなわち、積層リング部材3の止水性を向上できる)。なお、第2パッキン5の詳細な構造については、
図2を参照して後述する。
【0034】
図2は、下部リング部材34および下部リング部材34に設置される第2パッキン5の詳細な構成を示す断面図である。
図2の符号2001は、下部リング部材34の構成の一例を示す。
図2の符号2002は、下部リング部材34の構成の他の例を示す。なお、
図2の符号2001において、第2パッキン5の図示を省略している。また、
図2は、リング状である下部リング部材34および第2パッキン5の縦断面の一方のみを示している。
【0035】
図2の符号2001に示すように、下部リング部材34は、下方延伸部344の上下方向における中間部に、径方向内側に突出する中間突出部344aを有してもよい。また、下部リング部材34は、下方延伸部344の下端に、径方向内側に突出する下端突出部344bを有してもよい。このとき、第2パッキン5は、第2内側延伸部343と下端突出部344bとの間に設けられる。そして、第2パッキン5には、中間突出部344aに対応する位置に、中間突出部344aと嵌合する溝部が形成されている。このような構成によれば、第2パッキン5を第2管2と下方延伸部344との間に、より強固に固定することができる。
【0036】
または、
図2の符号2002に示すように、下部リング部材34は、下方延伸部344の下端に、径方向内側に突出する下端突出部344bを有してもよい。
図2の符号2002に示す一例では、下部リング部材34は、中間突出部344aを有しない。一方、第2パッキン5は、第1部分5a、第2部分5bおよび第3部分5cを有する。第1部分5aは、下方延伸部344の内側面の一部および下端突出部344bの上面に当接する。第2部分5bは、第1部分5aから上方に向かうにつれて外側に延伸し、下方延伸部344の内側面の一部および第2内側延伸部343の下面に当接する。第3部分5cは、第1部分5aから上方に向かうにつれて内側に延伸する。下部リング部材34に第2管2を挿入すると、第3部分5cは、第2管2の外側面によって外側に押し付けられる。このような構成によれば、第2パッキン5による止水性をより向上できる。
【0037】
(継手構造体10の施工方法)
図3~
図7は、継手構造体10の施工方法の流れを示す模式図である。以下、
図3~
図7を参照し、(
図3の符号S1に示すように、)従来の排水構造において、既存の第1管1Aと既存の第2管2Aとの接続部であるスリーブ部21Aに欠陥が生じている場合に、当該接続部を補修する施工方法を説明する。
【0038】
まず、作業者は、
図3の符号S1に示すように、既存の第2管2Aからスリーブ部21Aを取り除くために、既存の第2管2Aの切断面の位置を決定する。切断面は、既存の第2管2Aの軸方向に直交する面である。切断面の位置は、第1管1の第1開口1aと第2管2の第2開口2aとが所定の間隔を空けて離間するように決定される。切断面の位置は、
図3の符号S1において点線で示されている。
【0039】
次に、作業者は、
図3および
図4の符号S2に示すように、決定された切断面の位置に基づき、既存の第2管2Aを切断する。これにより、排水構造100において、第1管1と第2管2とが残る。ここで、第1管1の第1開口1aと第2管2の第2開口2aとは、所定の間隔を空けて離間している。
【0040】
次に、作業者は、上部リング部材31と下部リング部材34とを準備する(準備工程)。ここで、作業者は、第2パッキン5を下部リング部材34に(例えば、
図2を参照して上述したように)設置する。本実施形態において、作業者は、第1開口1aと第2開口2aとの間の所定の間隔に応じて、第1中間部リング部材32と第2中間部リング部材33とをさらに準備する。すなわち、作業者は、第1開口1aと第2開口2aとの間の所定の間隔に応じて、4つのリング部材を準備する。なお、準備する複数のリング部材の数としてはこれに限定されず、第1開口1aと第2開口2aとの間の所定の間隔に基づき適宜選択されるとよい。
【0041】
次に、作業者は、
図4の符号S3に示すように、第1パッキン4を第1管1と第2管2との隙間に挿入する。次に、作業者は、第1パッキン4を上方に移動し、リング状の第1パッキン4に第1管1を挿入する。そして、作業者は、第1パッキン4を第1管1の周囲を囲む位置に配置する。
【0042】
次に、作業者は、
図4の符号S4に示すように、上部リング部材31を第1管1と第2管2との隙間に挿入する(第1挿入工程)。次に、作業者は、上部リング部材31を上方に移動し、上部リング部材31に第1管1を挿入する。そして、作業者は、上部リング部材31を第1管1の周囲を囲む位置に配置する。
【0043】
次に、作業者は、
図4および
図5の符号S5に示すように、同様にして第1中間部リング部材32および第2中間部リング部材33を順に第1管1の周囲を囲む位置に配置する。符号S3~S5に示す作業により、第1パッキン4、上部リング部材31、第1中間部リング部材32、および第2中間部リング部材33は、いったん第1管1の第1開口1aより上側に配置される。これにより、下部リング部材34を第1管1と第2管2との隙間に挿入するためのスペースが確保される。
【0044】
次に、作業者は、
図5および
図6の符号S6に示すように、下部リング部材34を第1管1と第2管2との隙間に挿入する(第2挿入工程)。次に、作業者は、下部リング部材34を下方に移動し、下部リング部材34の一部(第2内側延伸部343および下方延伸部344)に第2管2を挿入する。そして、作業者は、下部リング部材34を第2管2の第2開口2aを囲む位置に配置する。すなわち、作業者は、下部リング部材34を第2管2の第2開口2aの径方向を囲む位置に配置する。詳細には、下部リング部材34の第1内側延伸部342が、第2管2に載置されることにより、下部リング部材34の下方への移動は制限される(
図1を参照)。なお、下部リング部材34の一部に第2管2を挿入する際、下部リング部材34に設置された第2パッキン5は、第2管2と下方延伸部344との間に配置される。
【0045】
次に、作業者は、
図6の符号S7およびS8に示すように、積層リング部材3が第1開口1aと第2開口2aとの隙間を覆うように、複数のリング部材を互いに係合させる(係合工程)。すなわち、
図6の符号S7に示すように、第2中間部リング部材33および第1中間部リング部材32を順に下方に移動させ、それぞれ下部リング部材34および第2中間部リング部材33と係合させる。そして、作業者は、
図6の符号S8に示すように、上部リング部材31を下方に移動させ、第1中間部リング部材32と係合させる。なお、符号S7およびS8に示す工程において、作業者は、各第1ネジ山と対応する第2ネジ山とが噛み合う箇所に接着剤を充填させてもよい。
【0046】
次に、作業者は、
図6および
図7の符号S9に示すように、第1パッキン4を下方に移動させ、第1管1と溝311との間に嵌め込む(
図1を参照)。
【0047】
以上の構成によれば、複数のリング部材を逐一、第1管1と第2管2との隙間に挿入して、複数のリング部材を互いに係合させることで、第1開口1aと第2開口2aとの隙間を覆う積層リング部材3を形成できる。そのため、既存の第2管2A全体を交換する従来の施工方法と比較し、本実施形態に係る施工方法において扱う材料(継手構造体10を構成する各部材)は、作業者一人が扱える程度の大きさとなる。したがって、継手構造体10の設置施工を容易とすることができる。特に、高速道路における排水構造100の補修などの高所における施工において、扱う材料の大きさを作業者一人が扱える程度の大きさとすることは、効率の面において有利である。また、場所ごとに曲げ形状が異なる既存の第2管2Aの交換品を準備する必要がなくなる。さらに、既存の第2管2Aのスリーブ部21Aのみを取り除くといった最小限の切断作業により継手構造体10の施工が可能である。
【0048】
なお、符号S9で示した工程の後に、作業者は、
図7の符号S10に示すように、第1管1の一部、第2管2の一部、および積層リング部材3の周囲を熱収縮フィルム6で被覆してもよい(被覆工程)。詳細には、作業者は、第1管1の一部、第2管2の一部、および積層リング部材3の周囲を熱収縮フィルム6で囲む。そして、作業者は、熱収縮フィルム6を熱収縮温度まで加熱する。このような構成によれば、排水構造100の止水性をより向上させることができ、積層リング部材3を第1管1および第2管2にしっかり固定することができる。
【0049】
また、第1パッキン4は、予め(継手構造体10の施工前に)上部リング部材31に取り付けられてもよい(例えば、溝311に嵌め込まれていてもよい)。この場合、
図4の符号S3に示す工程は省略され、
図4の符号S4に示す工程により、上部リング部材31とともに第1パッキン4は第1管1の周囲を囲む位置に配置される。また、
図6の符号S8に示す工程により、上部リング部材31とともに第1パッキン4は下方に移動し、
図6および
図7の符号S9に示す工程は省略される。
【0050】
(付記事項)
上記実施形態では、高速道路(高架道路)の排水構造100に継手構造体10を適用した一例を説明したが、適用例としてはこれに限定されない。例えば、継手構造体10は、橋梁などにおける排水管の補修に用いることができる。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 第1管
1a 第1開口
2 第2管
2a 第2開口
3 積層リング部材
4 第1パッキン
5 第2パッキン
6 熱収縮フィルム
10 継手構造体
31 上部リング部材(第1リング部材)
32 第1中間部リング部材(第3リング部材)
33 第2中間部リング部材(第3リング部材)
34 下部リング部材(第2リング部材)
100 排水構造
312a、322a、332a 第1ネジ山(ネジ山)
321a、331a、341a 第2ネジ山(ネジ山)
342 第1内側延伸部(内側延伸部)
343 第2内側延伸部